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臓器移植・脳死 メディア報道 2009年4月

臓器移植・脳死 2009



◆2009年4月10日 読売新聞 「15歳未満でも臓器提供を」遺族ら、法改正求め請願書
◆2009年4月12日 読売新聞 臓器法案5月採決へ
◆2009年4月15日 読売新聞 米病院、日本人の2歳児の移植拒否
◆2009年4月20日 読売新聞 臓器移植、新改正案作成へ…与野党理事
◆2009年4月21日 読売新聞 臓器改正法案、民主が勉強会
◆2009年4月21日 読売新聞 臓器移植改正案に意見、衆院委に医師ら6人参考人
◆2009年4月22日 読売新聞 臓器移植、なぜ改正機運…見直し案 3年以上たなざらし
◆2009年4月23日 読売新聞 臓器移植法、第4の改正案5月中旬にも国会提出へ
◆2009年4月25日 読売新聞 臓器移植、年齢制限を撤廃
◆2009年4月28日 読売新聞 臓器移植の年齢制限撤廃、小児科学会委が反対
◆2009年4月30日 読売新聞 臓器移植「特定案支持せず」
 
 
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■「15歳未満でも臓器提供を」遺族ら、法改正求め請願書(2009年4月10日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090410-OYT8T00270.htm

 臓器移植を受けるために渡米した1歳の長男を移植直前に亡くした横浜市の会社員中沢啓一郎さん(37)、奈美枝さん(34)夫婦と支援者が9日、15歳未満の臓器提供を禁じる臓器移植法の早期改正を求める請願書と、署名約3万8000人分を衆参両議院議長に提出した。
 世界保健機関(WHO)は5月、各国で提供臓器が不足しているとして、国外での移植自粛を促す指針を採択する方針だ。これを受け、中沢さん夫婦は、同じく移植を受けられずに娘を亡くした神奈川、埼玉県の遺族らと協力し、3月中旬から首都圏を中心とする街頭活動などで署名を募った。
 衆院厚生労働委員会は1日、同法改正の是非を議論する小委員会を設置した。

 
 
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■臓器法案5月採決へ(2009年4月12日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090412-OYT8T00296.htm

与党・民主党 議拘束外す方針

 図:現行の臓器移植法と改正案(略)

 与党は5月中に臓器移植法改正案を衆院で採決する方向で調整に入った。改正案は現在、3種類が提出されており、すべてを採決するのかどうかなど、調整には時間もかかりそうだ。
 提出されているのは、2006年に与党の有志が臓器移植を容易にするために出した2本の改正案と、07年に民主、社民両党の臓器移植に慎重な有志が出した改正案の計3本だ。関係者の間で、与党議員の案はA、B案、野党議員の案はC案と呼ばれている。A案は、臓器提供が認められる条件を緩和し、年齢制限も撤廃するなどの内容だ。B案は、提供可能な年齢を「15歳以上」から「12歳以上」に引き下げている。一方、C案は、脳死の定義をさらに厳格にするものだ。
 与党でここへ来て採決の機運が高まったのは、世界保健機関(WHO)が他国に渡って移植を受ける「渡航移植」の自粛を促す指針を5月に決める見通しとなり、患者団体などから14歳以下の臓器提供を可能にする改正を求める声が強まったためだ。
 自民党執行部は移植の範囲を拡大する考えで、B案を取り下げ、A案に一本化して採決に臨むことも検討している。一方、民主党には臓器移植を容易にすることに賛否両論があり、与党側の案が衆院を通過しても、最終的に成立するかどうかは不透明なのが現状だ。
 与党や民主党は「個人の死生観などにかかわる」とし、採決に当たっては党議拘束を外す考えだ。民主党の鳩山幹事長は10日の記者会見で、「党議拘束を外すなら(審議を)進めるべきではないかと個人的には思う」と、今国会での採決に前向きな姿勢を示した。

 
 
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■米病院、日本人の2歳児の移植拒否(2009年4月15日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090415-OYT8T00291.htm

受け入れ規則厳格化

 東京都内の男性が、重い心臓病を抱える2歳の長男の心臓移植を米コロンビア大に依頼したところ、拒否されていたことが14日、わかった。
 世界保健機関(WHO)は来月、渡航移植の自粛を求める指針を発表する予定で、日本移植学会幹部は「米国も外国人の受け入れを厳しく制限し始めた」とみている。
 拒否されたのは、東京都三鷹市の会社員片桐泰斗さん(31)の長男、鳳究(ほうく)ちゃん。14日、患者団体が都内で開いた臓器移植法改正を訴える集会で明らかにした。鳳究ちゃんは昨年10月、難病の拘束型心筋症と診断され、片桐さんが今年2月、同大に移植を依頼した。
 日本人の心臓病患者を受け入れる国は現在、米国だけで、同大はその主要施設の一つ。
 米国の医療機関は、年間移植件数の5%まで外国人を受け入れている。だが、欧州で唯一日本人を受け入れていたドイツが3月で中止した影響もあり、同大には今年、日本人患者5人が集中。片桐さんは同大側から「既に今年の『5%枠』は埋まった」と言われたという。
 鳳究ちゃんが入院する大阪大の福島教偉准教授は、「これまでは5%枠より1、2人の超過は黙認されていた。WHOなどの動きもあって厳格化したのだろう」とみている。
 片桐さんは今後、鳳究ちゃんの受け入れ施設を探しながら、募金活動を始める。片桐さんは「なぜ日本で子供を救えないのか。臓器移植法を改正してほしい」と訴えている。

 
 
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■臓器移植、新改正案作成へ…与野党理事(2009年4月20日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090420-OYT8T00651.htm

年齢制限撤廃/定義は厳格化

 臓器移植法の改正案を審議する衆院厚生労働委員会の与野党筆頭理事である自民党の鴨下一郎・前環境相と民主党の藤村修衆院議員は、新たな改正案を作成することで合意した。
 臓器提供年齢の制限を撤廃する一方で脳死の定義を厳格化する方向だ。
 臓器移植法改正案を巡っては与党内で今国会での採決を目指し協議が進められているが、民主党が参加したことで、今後、野党も含めて議論が広がりそうだ。
 現在、国会には臓器提供は「15歳以上」に限定されている臓器移植法の改正案として、〈1〉家族の同意があれば0歳から臓器提供が可能なA案〈2〉「12歳以上」に引き下げるB案〈3〉年齢は引き下げずに逆に脳死の定義を厳格化するC案――の3案が議員立法で提出されている。
 鴨下、藤村両氏はA案の修正を念頭に、臓器提供が可能な年齢制限を撤廃するものの脳死の定義を厳格化し、さらに一定の条件を満たした上で脳死を人の死とすることで、C案に歩み寄り、改正への支持の拡大を狙っている。
 ただ、脳死の概念は死生観など個人の信条に基づいておりA、C両案の支持者とも、それぞれ自身の主張を変更することは容易ではない。新たな改正案への支持が、どの程度広がりを見せるかは不透明だ。

 
 
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■臓器改正法案、民主が勉強会(2009年4月21日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090421-OYT8T00304.htm

 民主党は20日、国会内で臓器移植法改正案に関する勉強会をスタートさせた。今国会で臓器移植法改正案を採決する機運が高まっていることを受けたものだ。
 直嶋政調会長は今後、毎週勉強会を開き、弁護士団体、宗教関係者などから意見を聞く考えを示したが、採決については「それほど急いで採決する状況ではない。勉強会を続けながら、機が熟せばあると思う」と述べるにとどめた。
 国会には現在、臓器提供を「15歳以上」に限定している臓器移植法の改正案として、〈1〉家族の同意があれば0歳から臓器提供が可能なA案〈2〉「12歳以上」に引き下げるB案〈3〉年齢は引き下げずに逆に脳死の定義を厳格化するC案――の3案が議員立法で提出されている。
 20日の勉強会では、衆院法制局から各案の内容や脳死移植の現状などについて説明を聞いた。
 この問題では、改正案を審議する衆院厚生労働委員会の与野党筆頭理事が、今月に入り、臓器提供年齢の制限を撤廃する一方、脳死の定義を厳格化する方向で、新たな改正案を作成することで合意している。
 自民党の細田幹事長は20日の党役員会で、「理解が深まって多数を得られる法案を作らなければならない」と述べ、新案作成に期待感を示した。

 
 
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■臓器移植改正案に意見、衆院委に医師ら6人参考人(2009年4月21日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090421-OYT8T00596.htm

図:臓器移植法 現行法と改正3法案の相違点(略)

 臓器移植法の改正案を審議する衆院厚生労働委員会の小委員会は21日、医師ら6人の参考人質疑を行った。今国会で改正案を採決する機運が高まる中、参考人は現行法の問題点や改正案への賛否について意見を述べた。
 現行法については、〈1〉15歳未満の脳死臓器提供を認めていない〈2〉本人の生前の意思表示と家族の同意を求めており、提供条件が厳しい――などの問題点が指摘されている。これに対し、衆院には現在、年齢制限をなくし、家族の同意で提供可能にするA案、本人の意思表示など現行法の条件を維持し、提供可能年齢を12歳以上にするB案、脳死の定義を厳格化するC案――の3改正案が議員立法で提出され、ほかに新たな改正案の議論も進んでいる。
 参考人質疑では、旧国立小児病院小児医療研究センターの雨宮浩・元センター長が、移植医の立場から「臓器移植法の施行後も多くの患者が亡くなっている。提供数増加を期待できるA案を採用すべきだ」と訴えた。日本弁護士連合会人権擁護委員会の光石忠敬・特別委嘱委員は「脳死判定は厳格化すべきだ」とC案に同調し、本人の意思表示なしの臓器提供や、年齢制限の撤廃・引き下げには反対する考えを述べた。
 日本医科大の横田裕行教授は救急医の立場から、脳死判定を担う病院に対する人的支援を呼びかけた。大阪医科大の田中英高准教授は小児科医の立場から、小児の脳死判定の難しさなどを説明した

臓器移植法改正、来月採決目指す…自民国対委員長

 自民党の大島理森国会対策委員長は21日午前の党国対正副委員長会議で、臓器移植法改正案について、「5月11日から始まる週に衆院本会議で各議員の意見を伺う機会を持つようにもっていきたい」と述べ、5月中旬の採決を目指す考えを示した。また自民党は21日午前、党本部で臓器移植法改正案に関する勉強会を開き、約100人の国会議員が参加。党執行部は今後も定期的に勉強会を開催する考えだ。

 
 
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■臓器移植、なぜ改正機運…見直し案 3年以上たなざらし(2009年4月22日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090422-OYT8T00334.htm

「渡航自粛」WHOが来月指針

 写真:臓器移植法改正についての自民党の勉強会に臨む細田幹事長(左から2人目)ら(21日午前)(略)

 臓器移植法改正案を今国会で成立させようという機運が高まってきた。衆院厚生労働委員会の小委員会は21日、国会に提出されている三つの改正案に関する参考人質疑を10か月ぶりに行い、各党も独自に勉強会を始めた。
 海外での脳死臓器移植の道が閉ざされかねない状況が迫り、この問題を放置していた国会がようやく動き出した格好だ。

 各党とも猛勉強

 図:臓器移植法をめぐる動き(略)

 「この国会は、いいチャンスではないか。なんとか今国会で(改正案を)成立させて多くの命を救っていただきたい」
 21日午前、自民党本部9階で開かれた臓器移植法改正案に関する勉強会で、細田幹事長は今国会での改正案成立に期待感を示した。
 自民党のほかにも臓器移植法の勉強会が与野党を問わず目白押しだ。民主党は20日に全議員を対象にした勉強会を開き、今後も毎週月曜日に有識者を招いて意見を聴取する。公明党も24日に勉強会を開く予定だ。 各党の動きがにわかに活発になった背景には、臓器移植を取り巻く国際状況の変化がある。
 昨年5月に移植医らで作る国際移植学会が自国外での移植の自粛を各国に求めた「イスタンブール宣言」を発表し、世界保健機関(WHO)も来月18日からの総会で、自粛を各国に促す新指針を採択する方針だ。現行法で臓器提供が可能な年齢を15歳以上としている日本は特に、小児患者の臓器を海外に依存してきたため、新指針が厳格に運用されると移植が不可能な状況になる恐れがある。
 そもそも小児患者への移植が国内で事実上閉ざされている問題は、1997年の臓器移植法成立直後から指摘されてきた。同法の付則にも「施行後3年をめどに」見直すとの記述があり、患者団体などは年齢制限を撤廃するよう求め続けてきた。
 現在国会に提出されている改正3法案のうち2案は年齢制限を緩和するものだが、いずれも国会提出は2006年3月で、すでに3年以上たなざらしになっていた格好だ。自民党の大島国会対策委員長も率直に、「国会の不作為が問われている」としており、自民党執行部が負い目を感じているのも事実だ。

 採決へ動き急に

 大島国対委員長は21日の与野党国対委員長会談で、改正案の採決を5月11日の週に衆院本会議で行うことを野党側に申し入れた。民主党の山岡賢次国対委員長が「機が熟したなら採決に進むことはやぶさかではないが、見切り発車するわけにはいかない」と述べるなど、合意には至らなかった。
 11日の週に採決する場合、4月下旬から大型連休が始まるため、衆院厚労委で改正案を十分に審議する時間はない。
 同委員会の与党理事は「全国会議員が個人の考えに基づいて判断する問題で、委員会審議にはなじまない」として、委員会審議を長々とする性質の法案ではないと強調するが、日本弁護士連合会人権擁護委員会の光石忠敬弁護士は「人の生死について、そんなに単純に結論が出るわけがない」と、今国会での採決自体に疑問を投げかける。
 同委員会の自民、民主の筆頭理事の間では、最大の論点となりつつある年齢制限撤廃を最優先に考え、多数の支持を得るための折衷案の作成を模索する動きもある。ただ、A案の提出者、河野太郎衆院議員が「考え方が違う。折衷なんてできない」と強硬に主張するなど、今後それぞれの案に対する支持を広げようとする動きが出てきそうだ。


提出3法案 提供年齢などに違い
 三つある改正案はそれぞれ、どう違うのか。

 図:臓器移植法 現行法と改正3法案の相違点(略)

A案

 特徴は〈1〉脳死は一律に人の死〈2〉臓器提供者の年齢制限の撤廃〈3〉家族の同意があれば臓器提供できる――とした点だ。最も提供者が増えると見込まれ、15歳未満の移植も可能になる。
 患者らでつくる日本移植者協議会の大久保通方(みちかた)理事長は「この案が成立すれば脳死臓器提供は1年目で30例、3年目で100例まで増える」と試算する。21日の衆院厚生労働委員会小委員会で参考人として発言した旧国立小児医療研究センターの雨宮浩・元センター長は、「体が大きい子は成人の心臓を移植できるが、小さい子は海外に渡らざるを得ない」として、同案を軸とした改正を求めた。
 「これ以上、息子のような悲劇を繰り返してほしくない」。重い心臓病を患う1歳の長男に臓器移植を受けさせようと、米国へ渡ったものの、移植直前に亡くした横浜市の中沢啓一郎さん(37)は14日の患者団体集会でこう述べ、同案に沿った改正を訴えた。

B案

 臓器を提供できる年齢を「12歳以上」とした。小児脳死移植についての理解が深まっていないとして、段階的に普及させる考えだった。しかし、「12歳以上では増える提供臓器はごくわずか」とする意見が多く、現在は同案支持を広める活動は退潮している。

C案

 脳死定義を「脳全体のすべての機能が不可逆的に喪失した状態」とし、判定基準に「脳血流と脳代謝の停止」も追加する。現行法より厳しい内容で、臓器提供数は現状より減るのは確実だ。
 同案を提案した阿部知子衆院議員(社民)は、同案によって患者の治療法がさらに限定される点を問われると明言を避け、「乳児の拡張型心筋症の場合、ペースメーカーを使った治療で良好な結果も出ている」などと述べるにとどまった。
 A案の反対者は虐待されて脳死になった子供の臓器が提供されると懸念する。21日の小委員会でも、大阪医科大の田中英高准教授(小児科学)が「小児の虐待を見分けられると言っている小児科医は約1割しかいない」「小児の脳死判定基準では、脳機能が戻らないと断言はできない」などと述べた。
 これに対し、大阪大の福島教偉(のりひで)准教授(外科学)は「虐待を見分けることは臓器移植に限らず必要。脳死と診断された人の心臓が1年以上動いたとしても、意識が回復することはあり得ない」と反論している。

 
 
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■臓器移植法、第4の改正案5月中旬にも国会提出へ(2009年4月23日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090423-OYT8T00325.htm

   臓器移植法改正案を審議する衆院厚生労働委員会の与野党筆頭理事である自民党の鴨下一郎・前環境相と民主党の藤村修衆院議員は22日、すでに国会に提出済みの3本の改正案とは別に、新たな改正案を5月の大型連休明けに衆院に提出する方針を固めた。
 両氏が提出する4本目の改正案は、現在15歳以上となっている臓器提供が可能な年齢の制限を撤廃する一方で、家族の同意を得て移植を行う場合に限り脳死を「人の死」と定義する方向だ。5月中旬にも自民、民主の両党の党内手続きを経て、国会に提出する段取りを描いている。
 21日に改正案に関する参考人質疑を行った衆院厚労委の小委員会は28日に、これまでの論点整理をまとめて実質的に終了する。4案についての実質的な審議は衆院厚労委で行われるが、自民党執行部の主張通り、5月11日の週に衆院本会議で採決できるかどうかは不透明だ。
 また、4案それぞれで支持を広げようとする動きが活発化すれば票が分散し、本会議の採決でいずれの改正案も過半数に達しないまま、すべて廃案となる可能性もある。このため4案の提出者の間で改正案の一本化を図る動きも出てきそうだ。

 
 
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■臓器移植、年齢制限を撤廃(2009年4月25日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090425-OYT8T00223.htm

脳死定義は現状維持…法改正第4案

 臓器移植法の今国会改正を目指す自民、民主両党の関係議員が作成している新たな改正案の概要が24日、明らかになった。
 臓器提供が可能な年齢の制限を撤廃する一方、脳死の定義は現行法のまま、移植の場合に限って「人の死」とする内容だ。すでに提出されている3案のうち移植範囲の拡大を目指す2案を反映した内容で、大型連休明けに公明党を加えた3党の有志で国会に提出したい考えだ。
 同案の作成を進めているのは、衆院厚生労働委員会の筆頭理事である自民党の鴨下一郎・前環境相と民主党の藤村修衆院議員だ。
 国会には、〈1〉脳死を一律に人の死とし、提供年齢の制限を撤廃するA案〈2〉脳死の定義は現行のまま、提供年齢を「15歳以上」から「12歳以上」に引き下げるB案〈3〉脳死の定義を厳格化するC案――の3案が提出されている。新たな案は、提供年齢はA案、脳死の定義はB案を採用している。
 今回の改正論議は、国外での移植の道が狭まり、日本で乳幼児からの臓器提供を実現する必要性が強まってきたのが発端だ。新案をA、B両案の折衷案としたのも、乳幼児からの臓器提供に道を開きつつ、A案とB案の賛同者からともに支持を得る狙いからだ。
 鴨下氏らは当初、C案の脳死の定義の厳格化も取り込む方向だったが、最終的には見送った。A、B両案の賛同者を合わせれば過半数を確保できるが、移植範囲を狭めるC案の要素を入れると、かえって支持が減ると判断したためだ。
 新案では、臓器提供の条件も現在と同様、本人の生前の文書による意思表示と家族の同意を求める。ただ、新たに臓器提供が可能となる15歳未満の子どもについては、本人の生前の文書による意思表示は必要としないが、家族の同意だけでは虐待などの事態を見抜けない恐れがあると判断し、病院に倫理委員会などの設置を義務づけて審査させる仕組みを盛り込む方向だ。
 与党は、5月中旬以降の決着を目指している。新案にはA案、B案の賛同者から不満の声も出ており、成立にこぎ着けられるかどうかは不透明だ。

 
 
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■臓器移植の年齢制限撤廃、小児科学会委が反対(2009年4月28日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090428-OYT8T00254.htm

 国会審議が進む臓器移植法改正案に関して、日本小児科学会の倫理委員会が28日にも、「緊急見解」を発表することが明らかになった。
 15歳未満の臓器提供を解禁するA案は「現場が混乱する」として反対し、「12歳以上」に引き下げるB案を支持している。法改正の焦点は小児の脳死判定など小児科医が扱う領域だけに、法改正の行方に大きな影響を与えそうだ。
 緊急見解は学会理事会の承認を得ておらず、倫理委独自で発表する。こうした事態は異例だが、同学会ではA案への賛否をめぐって内紛が起き、統一見解をまとめきれなかった。倫理委員長を務める谷沢隆邦・兵庫医科大教授は、「このままでは小児科医の意見が国会に伝わらないうちに法律が決まってしまう」と述べている。
 緊急見解は、小児への移植拡大は必要としながらも、A案が成立すると想定される〈1〉親に虐待された子供の臓器提供を防ぐ診断体制〈2〉小児脳死判定の基準〈3〉子供の意思表示方法――が確立されていないと主張。「B案を数年間施行し、国の主導で体制を整えた後で、より低年齢にも臓器提供を拡大するべきだ」として、段階的な法整備を求めている。
 同学会では昨年4月、横田俊平・横浜市立大教授が会長に就任。今年2月の記者会見で、「学会も脳死移植を再考する時期が来た」とA案容認と取れる発言をした。これまで小児脳死移植のあり方を倫理委員会の下で審議してきた検討委員会も昨年11月末に解散させ、新たな検討委設置を表明。しかし、4月18日に開かれた同学会代議員総会で、激しい批判を受け、「学会の見解は白紙状態」と発言を修正させられていた。
 A案については、日本医師会のほか、日本移植学会、日本外科学会など主要24学会で作る「臓器移植関連学会協議会」が支持している。小児科学会は同協議会に加盟したが、06年に脱退。同年、国会にA、B案が提出された際は、B案支持の見解を示していた。

 
 
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■臓器移植「特定案支持せず」(2009年4月30日) 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090430-OYT8T00273.htm

倫理委見解を修正…小児科学会

 国会審議中の3種類の臓器移植法改正案に対し、日本小児科学会倫理委員会が臓器提供者の年齢制限を「12歳以上」に引き下げる案を支持する見解を表明したことについて、同学会の横田俊平会長は29日、東京都内で記者会見し、「学会としては特定の法案を支持しない」と事実上修正する公式見解を発表した。
 同法改正では、現行法が禁じる「15歳未満の臓器提供」の解禁が焦点となっている。公式見解は、子供への脳死移植の必要性は認めたものの、年齢制限の見直しについては明言を避けた。
 約2万人の会員を抱える同学会内では、年齢制限を全廃するA案と、「12歳以上」に緩和するB案とで支持が分かれている。横田会長は、倫理委が学会理事会の承認を得ずに見解を発表したことを不服とし、理事20人の過半数の同意を得て、公式見解を発表した。




*このファイルは生存学創成拠点の活動の一環として作成されています(→計画:T)。

*作成:伊藤 未弥(立命館大学大学院社会学研究科・2009入学)
UP:20090630 REV:20091013
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