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神経線維腫症U型


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last update:20180910


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■紹介  神経線維腫症U型

◆定義(平成30年度 難病情報センターより)
・概要:左右両側に聴神経腫瘍(正確には前庭神経鞘腫)が発生する遺伝性疾患です。脳神経・脊髄神経・末梢神経の神経鞘腫、頭蓋内や脊髄に髄膜腫など多数の腫瘍が発生します。MRIあるいはCTで両側聴神経腫瘍が見つかれば診断は確定します。また、親・子供・兄弟姉妹のいずれかに神経線維腫症U型の方がおられ、本人に(1)片側性の聴神経腫瘍、または(2)神経鞘腫・髄膜腫・神経膠腫・若年性白内障のうちいずれか一つ、のうち2つが見られる場合には神経線維腫症U型の可能性があります。外国の報告によれば、発生率は25,000〜60,000人に1人と言われています。日本でも同様の発生率と考えられますが、国内で2009年〜2013年に臨床調査個人票を提出した方は約800人でした。人種差や男女差はありません。また、家族歴以外に発症に関与する因子は報告されていません。発症年齢は10歳以下から40歳以上とまちまちですが、多くの方は10〜20歳代で発症します。
・原因:神経線維腫症U型の原因は、体の細胞の中にある染色体のうち第22染色体長腕に存在する遺伝子の異常です。この遺伝子が作り出す蛋白質はMerlinと名付けられています。Merlinは細胞内の情報伝達などに重要であり、正常では腫瘍の発生を抑制する働きがあります。神経線維腫症U型の方では、Merlinの遺伝子に異常が生じ、正常なMerlinができないために腫瘍が多発すると考えられています。ただ、どうしてこの遺伝子に異常が起こるのかは分かっていません。
・遺伝について:この病気は遺伝します。対になった第22染色体のうち、異常のある方が伝わるとお子さんも神経線維腫症U型になります。(常染色体優性の遺伝性疾患といいます)。従って、両親のいずれかにこの病気があれば、子供の半数はこの病気になります。一方で、家族歴がない方も半数以上おられます。これらの方は、個人の胎内での発生過程でMerlin遺伝子に新たに異常が生じたと考えられます。これらの方の両親のMerlin遺伝子には異常が無く、従って、これらの方の兄弟姉妹には神経線維腫症U型は遺伝しません。
・症状:この病気では、各種の中枢神経腫瘍が生じます。最も多い腫瘍は神経鞘腫で、聴神経鞘腫はほとんどの方に、脊髄神経鞘腫も多くの方に見られ、三叉神経鞘腫もしばしば伴います。また、髄膜腫は約半数の方に合併し、頭蓋内や脊椎管内に多発することがしばしばです。他に脊髄内神経膠腫も伴うことがあります。また、皮下や皮内の神経鞘腫も合併することがあります。従って、最も多い症状は聴神経鞘腫による症状です。これには、難聴・めまい・ふらつき・耳鳴などがあります。次いで多いのは脊髄神経鞘腫の症状で、これには手足のしびれ・知覚低下・脱力などがあります。また、三叉神経鞘腫の症状として顔面のしびれや知覚低下もおこります。その他、痙攣や半身麻痺、頭痛を伴うことや、若年性白内障のため視力障害を伴うこともあります。
・治療法:この病気に伴う腫瘍はほとんどが良性腫瘍ですが、腫瘍による症状が出現したら、手術による摘出が必要です。最も問題になるのは聴神経鞘腫の治療です。聴神経鞘腫を摘出せずに経過を見ると、いずれ聴力はなくなり(何年も変わらず経過することもありますが)、腫瘍が大きくなると生命の危険があります。しかし、手術して腫瘍を摘出すると、多くの場合聴力はなくなり、顔面神経麻痺を合併することもあります。腫瘍が小さい内に手術すれば、術後顔面神経麻痺の可能性は低く聴力温存の可能性もありますが、無症状の聴神経鞘腫を手術すべきかどうかは経過をよく見て決める必要があります。腫瘍の成長が明らかな場合や、聴力が低下した場合には、治療が必要です。外科手術の他に、ガンマ―ナイフなどのなどの放射線手術も小さな腫瘍には有効で、多くの場合腫瘍の成長をコントロールすることができます。ただし、聴力の温存率は高くありません。最近、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対する抗体薬であるベバシズマブの有効性が海外から報告されています。この薬を点滴すると、約半数の方で腫瘍の縮小や(有効聴力が残っているときには)聴力の改善がみられます。国内では保険適応がありません。

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■関連サイト

◆難病情報センター 神経線維腫症U型
 [外部リンク]神経線維腫症U型
[外部リンク]小児慢性疾患情報センター
[外部リンク]専門医師のホームページ@
[外部リンク]専門医師のホームページA
[外部リンク]稀少難病者の会 あせび会(相談事業部)


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■文献

◆荒 美有紀 2015/03/26 『手のひらから広がる未来 ヘレン・ケラーになった女子大生』, 朝日新聞出版, 256p. ¥1200+税 [amazon]/[kinokuniya]


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■引用



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■ニュース

◆2016/2/8 「難病 見えない症状 理解を 患者団体 28日シンポやライブ 福岡」
『西日本新聞』
 2月の最終日(今年は29日)は「世界希少・難治性疾患の日」(レアディジーズデー、RDD)。難病患者でつくる団体「難病ネット・リーディング福岡」(福岡県宇美町)は28日、福岡市・天神でシンポジウムやライブなどのイベントを開く。テーマは「サイン〜病気のわたしの伝え方」。外見には表れにくい「見えない症状」をどう伝え、どう理解を広めていくか、考える。主催団体の副代表、作業療法士の田中美穂さん(34)=福岡県古賀市=は、30歳のときに受けた人間ドックで、神経線維腫症2型という遺伝性の指定難病であると診断された。「何も症状がなく、衝撃でした」難病情報センターによると、この病気は左右両側の聴神経に腫瘍ができるのが主な特徴だ。難聴、めまい、ふらつき、耳鳴りなどの症状がある。腫瘍を放っておくといずれ聴力がなくなるが、手術で摘出しても聴力を失うことが多いという。脊髄神経や三叉(さんさ)神経に腫瘍が発生すると、手足や顔面にしびれなどが起こる。田中さんの脳と脊髄には七つの腫瘍がある。医師からは「35歳までには聴力を失うだろう」と言われたが、今も検査の数値に異常はない。ただ、家でテレビを見るときや車で音楽をかけるとき、「音が大きい」と言われる。「普通の人よりは聞こえづらいのかもしれない」と感じている。診断されたのは結婚した翌年だった。夫に耳が聞こえなくなること、腫瘍の場所によっては手足にまひが出ることなどを伝えたが、想像がつかない様子だった。医師は「妊娠したらホルモンの影響で腫瘍が大きくなるだろう」と言った。病気が遺伝性のため、影響を懸念したが、子どもは自然に任せることにした。難病とは、治療法が確立していない、長期の療養を必要とする‐など、四つの条件に当てはまる疾患を指す。2015年1月に施行された難病法では、306疾患が公費負担対象の「指定難病」に定められた。指定医の診断を受け、一定の症状がある場合など、都道府県に申請をすると医療費の助成を受けられる。難病ネットが今回、「見えない症状」をテーマにしたのは、個人や行政、企業など社会全体に、難病の実態がなかなか理解されていないためだ。田中さんが病名を告げられたとき、頭に浮かんだのは同じ病気で苦労していた父の姿だった。20年前、父は聴神経にできた腫瘍を神経ごと切除し、聴力を失った。聴力の低下は目には見えない。「聞こえない、と言っているのに、市役所でも病院でも大きな声で話されて、周りの目が気になった」。「見えない症状」への理解が広まれば、こうした不都合は乗り越えられるのではないか。今回のイベントで、田中さんは2人組「miho&nozomi」の一人として歌を披露する。気分が落ち込んでいたとき、ふと、好きなことを紙に書き出したことがある。大好きな歌を歌うこと、高齢者の役に立つこと、人と話すこと。できることはたくさんあった。「できることが目に見えたとき、これをやらなきゃ」と思った。10年前から習っている歌で、いつか自分のライブを開きたい。先日、福岡市のバーで開いた初めてのライブには、友人たちが来てくれた。「自分の声が聞こえなくなったら、そのときが期限かな」。それまでは精いっぱい、歌う。イベントは28日午後1〜3時、同市役所1階多目的スペースで。当事者と支援者によるパネルディスカッションの後、田中さんたちのライブがある。難病法などについての展示は午前11時から。参加費無料。事前申し込み不要。




*作成:戸田 真里
UP:20180910 REV:
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