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ノーマライゼーション/ノーマリゼーション normalization


 ◇居住/住居
 ◇施設/脱施設
 ◇障害学 
立岩 真也 2002/08/22 「ノーマライゼーション」
 市野川容孝編『生命倫理とは何か』,平凡社,pp.151-157
立岩 真也 2006/12/15  「ノーマライゼーション」
 『現代倫理学事典』,弘文堂
 「1950年代のデンマークで、巨大な収容施設での知的障害者の暮らせられ方を親たちが批判し、バンク=ミケルセンがそれを支持して登場した。1960年代以降スウェーデン他に波及し、国際的に普及した。もとの語の読みを継いでノーマリゼーションと読まれることもある。障害者に、普通の市民の通常の生活状態を提供することを目的に掲げる。日本では1970年代に使われ始め、1981年の国際障害者年の前後からよく知られる言葉になった。この語は、初期には施設での生活は前提とした上でその小規模化とその中での生活の諸条件の改善を目指したが、後には自立生活運動の流れも受けて脱施設を射程に入れるものとなった。しかし日本の1970年代以降はむしろ施設が作られていく時期であり、施設をどうするかという具体的で厳しい論点をおおむね回避しつつ、普通にするという穏当な語感がよかったのか、表立っては誰にも反対されることのない言葉として普及することになった。」(400字)

◆「わが国で「ノーマラリゼーション」という語が文献等に初めてみられたのは、おそらく一九七四年の『愛護』という知的障害者親の会の誌上座談会からだろうといわれています。
 しかしバンク−ミケルセンについては、一九七八年に、彼の論文"The Principle of Normalization"(ノーマリゼーションの原理)を四国学院の中園康夫教授が訳し、その中で略歴を紹介したのが初めてでしょう。」(花村 p.97)

◆三島 亜紀子 1999 「社会福祉の学問と専門職」
 (大阪市立大学大学院修士論文)より引用(pp.82-83)

 「……以上のように、反専門職主義の立場が一枚岩として存在したのではないことを認識しつつ、この節ではその反専門職主義の及ぼしたソーシャルワーク理論への影響について検討していきたい。それは、社会福祉学創立以来の大規模な刷新として存在している。
 例えば「ノーマリゼーション」という単語一つにしても、その意味内容の歴史的変遷を辿ると、その影響が大きかったことがわかる。ヴォルフェンスベルガーも指摘しているように、「北欧型ノーマリゼーション」とは、「質の高い施設福祉」という伝統の延長線上に位置するものであった。ミケルセン(Bank-Mikkelsen, N.E.)やニーリエ(Nirje, B.)に代表される、北欧における初期のノーマリゼーションは施設サービスのノーマル化を目指したものであった(秋山[1981]、中園[1982])。そこでは、「『社会防衛的隔離型施設』22)から『保護福祉型施設』への移行」(杉野[1992:193])がくわだてられ、主に施設内生活のQOLの改善が目標に据えられた。それは、脱施設化や自立生活運動、あるいは反専門職運動といった考えとは本質的に相反するものである。
 初期の北欧型ノーマリゼーションとは、一定限度の「分離処遇」(セグリゲーション)を不可欠としていたが、これが批判されるようになるのは1970年代に入ってからである。それらの批判は、本章の第一節で検討したアメリカを中心に起こった「反専門職主義」らの唱えるソーシャルワーカー批判と連関するものであった。こうした新しい潮流を受けたノーマリゼーションは、自立生活を最善のものとし、地域生活を中心とした在宅福祉を根拠付ける理念へと変化していき、その概念は再構成されていく。そこで、脱施設化や自立生活運動、あるいは反専門職運動と対立していたはずの北欧型ノーマリゼーションは、いわば「逆輸入」のかたちでアメリカ型のノーマリゼーションの影響下におかれることになっ(p.82)た。ヴォルフェンスベルガー(Wolfensberger,W.)のノーマリゼーション(後にソーシャル・ロール・ヴァロリゼーション)論(Wolfensberger[1972=1982]、[1994=1995])の変遷も、同様の圧力を受けて再構成し続けてきたことを浮き彫りにしている(横須賀[1996])。」
「22) 「社会防衛的隔離型施設」とは、ナチズムを思い起こさせる優生学の影響が色濃く、隔離収容主義的施設である。」

杉野 昭博 199210 「『ノーマライゼーション』の初期概念とその変容」,『社会福祉学』33巻2号 pp.187-203
◇Wolfensberger, Wolf 1981 The Principle of Normalization in Human Services, National Institute on Medical Retardation=19820925 中園康夫・清水貞夫編訳,『ノーマリゼーション――社会福祉サービスの本質』,学宛社,365p. 3800

 

◆ノーマライゼイション〔英〕normalization

『福祉社会事典』,弘文堂  1999/05/15 pp.800-801
http://koubundou.co.jp/

 「通常化や正常化等と邦訳されるこの思想は1950年代のデンマークで知的障害者に対する巨大な収容施設保護による諸弊害の批判や反省の中から誕生し、60年代以降スウェーデンその他の北欧諸国に波及し、今日では国際的に普及している。知的障害者の領域から始まったこの理念は、一般的には障害者を含む社会的支援の必要なすべての人達に、普通の市民の通常の生活状態を提供することを目的に掲げている。B.ニルジェ(Bengt Nirje)はこの基本的原理として、正常な日々の及び1週間・1年間のリズムが保たれること、一生涯を通じての通常な発達機会の保障、知的障害者の無言の願望や自己決定の表現の尊重、男女両性のある世界で暮らすこと、正常な経済生活・住環境水準の保障をあげている。要するにこの原理は、知的障害者の独自的ニーズの充足に加えて、平均的市民の住宅、所得、教育等々の標準的生活水準をかれらにも保障することを意味し、劣等処遇の原則(公的な福祉サービス利用者の生活は、平均的生活水準よりも絶対的に以下であるべきとする原則)の否定を前提として成り立っているのである。
 一方、米国にこの理念を導入したヴォルフェンスベルガー(Wolf Wolfensberger)は、「可能な限り文化的に通常である身体的な行動や特徴を維持したり、確立するために、可能な限り文化的に通常となっている手段を利用すること」と規定し、通常に近い行動や外観をとることさえ強調している。この原理は障害者の生活水準を現実に高める役割を果たすとはいえ、適応主義・同化主義に陥る等の問題性が指摘される。しかし上述したように、この理念は「ある社会からその構成員のいくらかの人々を締め出す場合、それは弱くてもろい社会である」と表現されるように、障害者等を排除、差別した社会への反省にたって、障害者等も共に対等平等に生き得るように社会を変革していくという視点が含まれている。
 そして以上の定義や理念から派生する社会的原理として次の諸点が指摘される。その題1はこの理念は、能力主義的自由競争等の結果生じる社会的不平等に積極的に介入し、徹底的な垂直的所得再分配政策や公的責任による社会保障、社会福祉サービス等の充実によって、すべての国民の実質的平等保障を目指していることである。第2に重度の知的障害者の福祉と人権を優先的に重視するこの思想は、経済的効率性を重視する社会効用的処遇観と対決しており、したがって、生まれながらの能力の違いによる人間の序列化、不平等の発生という事態を差別として捉え、そのような状況の改善を目標としている。第3にこの理念はラディカルな地域福祉思想の具現化を目指している。最近のスウェーデンの障害者施策に典型的に見られるように、24時間常時介助の必要な最重度障害者の在宅独立生活を可能にする介助手当ての支給や、最重度級の知的障害者や心身障害者が長期間利用可能なグループホーム施策の充実等により、最重度障害者でも通常の地域生活の営みが実現している。これは、ノーマライゼイション理念と脱施設化政策の運動により可能となったのである。第4にこの理念は共生原理に基づく新たな地域連帯思想として結実している。実質平等を権利として承認する社会は、障害の有(p.801)無にかかわらず、一人一人が生活主体者として認識され、相互に個性を尊重しあう社会を基盤としている。換言すればこの原理は、平均的な状況からの逸脱を許さない社会、少数者を偏見により差別しようとする社会が、いかに非人間的で不正常な社会であるか、を認めることにより成り立ち得る。したがって、価値観の異なるいかなる少数者もお互いに違うことこそ誇りをもちつつ相互に尊重し、多様性こそを認めあいつつ共生し得る地域社会を築くことがノーマライゼイションのゴールとされるのである。その意味ではこの理念は、国家社会間や多民族間の共生原理としての今日的意義をもっている。
 ノーマライゼイションの先進地域である北欧社会も資本主義社会であり、階級社会として能力主義や経済的効率主義を一定の社会的原理としている以上、ノーマライゼイション理念の目標と現実の関係はさまざまな乖離現象を生み出しているとはいえ、ノーマライゼイションの理念は高度の障害者の人権思想及び社会福祉の基本的思想の一つの到達点として評価されるものである。」(定藤丈弘


◆ノーマリゼーション【normalization】  http://dictionary.goo.ne.jp/search/%A4%CE056182240422759600/jn/5/topic/
「〔常態化の意〕障害者に,すべての人がもつ通常の生活を送る権利を可能な限り保障することを目標に社会福祉をすすめること。デンマークの知的障害者福祉の取り組みから生まれた理念で,バンク=ミケルセンが提唱。ノーマライゼーション。」


「1950年代のデンマークで、巨大な収容施設での知的障害者の暮らせられ方を親たちが批判し、バンク=ミケルセンがそれを支持して登場した。1960年代以降スウェーデン他に波及し、国際的に普及した。もとの語の読みを継いでノーマリゼーションと読まれることもある。障害者に、普通の市民の通常の生活状態を提供することを目的に掲げる。日本では1970年代に使われ始め、1981年の国際障害者年の前後からよく知られる言葉になった。この語は、初期には施設での生活は前提とした上でその小規模化とその中での生活の諸条件の改善を目指したが、後には自立生活運動の流れも受けて脱施設を射程に入れるものとなった。しかし日本の1970年代以降はむしろ施設が作られていく時期であり、施設をどうするかという具体的で厳しい論点をおおむね回避しつつ、普通にするという穏当な語感がよかったのか、表立っては誰にも反対されることのない言葉として普及することになった。」(400字)


 

■本

◆Wolfensberger, Wolf 1981 The Principle of Normalization in Human Services, National Institute on Medical Retardation
 =19820925 中園康夫・清水貞夫編訳,『ノーマリゼーション――社会福祉サービスの本質』,学宛社,365p. 3800 真砂369
◆江草 安彦 19820818 『ノーマリゼーションへの道』,全国社会福祉協議会,145p. 800 
◆江草 安彦 19830620 『ノーマリゼーションへの道 改訂版』,全国社会福祉協議会  
◆Socialstyrelsen, 1986, Allmänna rad fran Socialstyrelsen: Integritet-Om Respekten för Vuxna Utvecklingsstörda, undre upplagan, Stockholm: Socialstyrelsen, 114p. ISBN-10: 9138095661 ISBN-13: 978-9138095669 n07 r03
(=19980720 二文字理明訳『人間としての尊厳――ノーマライゼーションの原点・知的障害者とどうつきあうか』障害者人権文化室,86p. \1000 ※ i01 i01r n07 r03)
◆江草 安彦 19860220 『ノーマリゼーションへの道 改訂第2版』,全国社会福祉協議会,170p. 960 東社369.27・
◆江草 安彦 198809 『ノ−マリゼ−ションへの道 改訂増補版』,全国社会福祉協議会,178p. 1000 
◆石倉 康次・鈴木 勉・平野 由子・松田 泰 編 19880210 『市民がつくった障害者プラン――広島市ノーマライゼーションプランへの提言』,北大路書房,237p. 2300+税 ISBN-10: 4762820962 ISBN-13: 978-4762820960 [amazon] ※ n07
◆Walujo, S. 199103・ SIVUS Group-dynamic method for social integration & normalization.2nd. rev. ed.
(=199103 山下勝弘訳,『シーヴス法の理論と実際――スウェーデンで開発されたノーマリゼーションを育てるソフトウエア』,瑞穂社,212p. 3500)
◆ノーマライゼーションの現在シンポジウム実行委員会 編 19910601 『「ノーマライゼーションの現在――世界の到達点は」資料集』
 ノーマライゼーションの現在シンポジウム実行委員会(福祉労働編集委員会内 03-3261-0778) 300 ※
◆柴田 洋弥・尾添 和子 19920720 『知的障害をもつ人の自己決定を支える――スウェーデン・ノーマリゼーションのあゆみ』
 大揚社,184p. 2000 ※
◆河東田 博 19921131 『スウェーデンの知的しょうがい者とノーマライゼーション――当事者参加・参画の論理』
 現代書館,238p. 2200 ※
◆一番ケ瀬 康子 19940325 『一番ケ瀬康子社会福祉著作集3 生涯福祉・ノーマライゼーション』
 労働旬報社,295p. 6000 千葉社5043-3共通
◆花村 春樹 訳・著 19940915 『「ノーマライゼーションの父」N・E・バンク・ミケルセン――その生涯と思想』
 ミネルヴァ書房,231p. 1800 ※
◆福島 智 19971125 『盲ろう者とノーマライゼーション――癒しと共生の社会をもとめて』
 明石書店,332p. 2800 ※
◆Nirje, Bengt 著,河東田 博・橋本 由紀子・杉田 穏子・和泉 とみ代 訳編 20000120 『ノーマライゼーションの原理――普遍化と社会変革を求めて』
 現代書館,197p. 1800 ※ ** d


■論文等

◆八代 英太 19790325 「ノーマライゼーション――福祉社会への合言葉?」(連載2)
 『季刊福祉労働』02:075-077
◆中園 康夫 198103 「ノーマリゼーションの原理について(1)――特に一九七〇年代における若干の文献を中心にして」
 『四国学院大学論集』48
◆中園 康夫 19810300 「ノーマリゼーションの原理について (T) ――特に1970年代における若干の文献を中心にして」
 『四国学院大学論集』48:142-165
◆中園 康夫 19821001 「ノーマリゼーションの課題とその実現方法――特に主要な定義との関連において」
 『社会福祉研究』31:25-29
◆松井 二郎 19830331 「地域福祉システム化のための思想――ノーマライゼーションの視点をふまえて」
 『地域福祉研究』11:03-07
◆堀 利和 19840625 「ノーマライゼーション研究会が誕生」
 『季刊福祉労働』23:112-113
◆『季刊福祉労働』 19841215 特集:ノーマライゼーションとは★
 『季刊福祉労働』25 950
◆渡辺 鋭氣 19841215 「単純で誤解されやすいノーマライゼーション」
 『季刊福祉労働』25:058-069
◆Bank-Mikkelsen  Neills Erik 1985 「障害をもつ人々への福祉のあり方――ノーマライゼーションの思想と実践に学ぶ」
 『日本ソーシャルワーカー協会会報』07
◆楠 敏雄 1985 「「障害」者運動と住民運動との接点――ノーマライゼーションをめざして」
 『月刊地域闘争』177 (1985-9):36-41
◆岡本 栄一 19861116 「ノーマライゼーションと参加」
 『あくしょん』1:24-27
◆一番ケ瀬 康子 19870125 「”障害者の福祉”思想――ノーマライゼーションをめぐって」
 一番ケ瀬・佐藤編[1987:29-42]→一番ケ瀬[199403:11-26](題:ノーマライゼーションの思想)
◆堀 正嗣 19871125 「ノーマライゼーションを考え直す」
 『共生の理論』08:35-49
◆小宮山 至 19900325 「子どもたちが,また分けられる――理念はノーマライゼーション,施策は分離」
 『季刊福祉労働』46:049-059
◆妹尾 正 1990 「ノーマリゼーション(ノーマライゼーション)」
 『発達障害研究』01-4
◆實本 博次 19910601 「ノーマライゼーションと措置制度」
 『月刊福祉』74-06(1991-06):010
◆山本 勝美 19910925 「シンポジウム「ノーマライゼーションの存在――世界の到達点は」よもやま話」
 『季刊福祉労働』52:106-107
杉野 昭博 199210 「『ノーマライゼーション』の初期概念とその変容」
 『社会福祉学』33巻2号 pp.187-203 '92. 10
◆大谷 強 19920625 「ノーマライゼーション概念の受入れと今後の方向」
 『ノーマライゼーション研究』1992年年報:008-015
◆枝本 信一郎 19920625 「施設はノーマライゼーションへのステップとなるか」
 『ノーマライゼーション研究』1992年年報:018-032
◆生瀬 克巳 19920625 「日本のノーマライゼーション――私の考える難問」
 『ノーマライゼーション研究』1992年年報:047-057
◆堀 正嗣 19920625 「教育におけるノーマライゼーションの可能性」
 『ノーマライゼーション研究』1992年年報:058-078
◆山田 富秋 19920625 「精神障害者とノーマライゼーション――精神障害者に対する透析拒否事件について」
 『ノーマライゼーション研究』1992年年報:079-089
◆高田 剛 19920901 「全盲先生,ノーマライゼーションのふところをいく2」
 『そよかぜのように街で出よう』048:38-41
◆高田 剛 19930305 「全盲先生,ノーマライゼーションのふところをいく3――視覚「障害」者の教師たち(アメリカ篇)」
 『そよかぜのように街で出よう』049:44-48
◆本間 弘子 19930501 「(ブックレビュー)――知的ハンディをもつ当事者が福祉を変革する――河東田博著『スウェーデンの知的しょうがい者とノーマライゼーション』」
 『障害者の福祉』13-05(142):47-47
◆定藤 丈弘 19931030 「日本的ノーマライゼーションの課題――重度肢体不自由者通所施設「青葉園」の実践を通して」
 定藤・岡本・北野編[1993:289-306] ※/千葉社4850共通



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