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「難病」 2012


last update:20121227

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厚生労働科学研究 難治性疾患等克服研究事業 患者情報登録サイト
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■関連頁作成増補記録

・2012/12/27
「難病」2012政策関連等文書・資料増補
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難病」2012ニュース12月分増補
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「難病」2012資料掲載
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「難病」2012資料掲載
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◆難病関連新聞記事DB公開開始
・2012/08/23
シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease: CMT)(新規)
「難病」2012ニュース8月分増補
・2012/08/12
遠位型ミオパチー(新規)
進行性骨化性線維異形成症(FOP)(増補)
・2012/08/11
スティーブンス・ジョンソン症候群 (Stevens-Johnson syndrome:SJS)(増補)
・2012/07/31
進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva:FOP)
・2012/07/16
「難病」更新→ スティーブンス・ジョンソン症候群 (Stevens-Johnson syndrome:SJS)にリンク
・2012/07/15
「難病」更新

フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病

遠位型ミオパチー
・2012/07/03
難病 2012更新


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■文献・成果等


◆2012/03/25 「人工呼吸器をつけた子の親の会<バイバクの会>の成り立ちと現在(第二部)」(公開インタビュー・司会)
 『季刊福祉労働』134:8-31

◆2012/02/07 障害児・者に対するたんの吸引等の研修および制度の在り方に関するシンポジウム 於:東京 広告


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■政策関連等文書・資料


◆「医療費助成 300種超に拡大 難病対策の見直し どうなる」  (2012.12.24読売新聞)
 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=70117

 「難病の患者を支え、治療法の研究開発を後押しする国の難病対策が、大きな転換期を迎えています。医療費の公費助成が受けられる病気を増やすのをはじめ、制度の大幅な見直しが具体化しつつあるのです。

 ――「難病」とは、どういう病気のことをいうのですか。

 「医学的に明確な定義はありませんが、治療が難しい病気の呼び名として、一般的に使われてきた言葉が『難病』です。国が統一的な難病対策に乗り出した1972年、難病対策要綱が定められました。そこでの定義は、
〈1〉原因不明で治療法が確立されておらず、後遺症の恐れが少なくない
〈2〉慢性的で家族の介護や経済的負担、精神的な負担が大きい
――といった内容です」

 ――国の難病対策は、どのようなものなのですか。

 「日本の難病対策は71年、整腸剤・キノホルムの薬害であるスモンの患者支援をきっかけに始まりました。その後、対象となる病気を徐々に増やしながら、医療費助成、研究費の助成、医療施設の整備、福祉の充実などを目指す対策が行われるようになってきたのです。現在、研究費の助成は130の病気が対象で、このうち56の病気は医療費助成の対象にもなっています」

 ――なぜ見直しが必要になったのでしょうか。

 「時代とともに様々な課題が明らかになり、今のままでは実情にそぐわないことがわかってきたからです。助成対象でない病気との公平性や財政難が、見直し論議の大きな要因になりました。さらには、医療の進歩で、難病を抱えながら長く療養生活を送る人が増えたことや、病気であっても仕事を続ける患者の社会生活を支援すべきだという考え方が広がってきたことも背景にあります。社会、経済情勢の変化や患者とその家族のニーズの多様化に合わせた支援体制づくりが求められているのです」

 ――見直しの内容は、どういったものですか。

 「現在、厚生労働省の審議会(厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会)が具体的な内容を検討中ですが、医療費助成の対象が300を超える病気に拡大され、それぞれ重症度に応じて対象患者が認定される見込みになりました。対象になる病気は、新しい基準に当てはまることが条件です。新基準は、患者数が人口の0・1%程度(約12万人)以下で、診断基準があることなど、5項目の条件を満たす必要があります。これまで厚労省が、研究費と医療費の助成をしたことのある482の病気のうち、新基準に照らし合わせて分類すると、300超の病気が対象範囲に入るとみられています」

 ――ほかにはどのような見直しがありますか。

 「医療費助成の水準を見直し、これまで自己負担ゼロだった重症患者も含め、すべての対象患者に、所得に応じた自己負担を求める方針が決まりました。入院した時の食事代や院外調剤の薬代も患者の自己負担になりそうです。これは、障害者や高齢者を対象にした他の支援制度とつり合いがとれるようにし、広く国民の理解を得られる制度にするための対応のようです。ほかにも、難病患者や家族への福祉サービスや就労支援の充実、治療法開発のための研究促進のあり方が検討されています」

 ――今後の見通しは。

 「厚労省の難病対策委員会は来年1月に最終報告案をまとめる予定で、それを基に、来年度以降、対策が具体化されることになります。対策のための予算を安定的に確保するには根拠となる法律があったほうがよいとの考えから、難病対策の法制化も目指しています。ただ、難病は5000〜7000種類あるといわれ、今回の見直しでも対象から外れる病気があり、これですべての課題が解決するわけではありません。今後も必要に応じ、改善が求められていくことになりそうです」(高梨ゆき子)

(2012年12月24日 読売新聞」(全文)

◆難病患者への福祉サービス暫定的に130疾患対象 厚労省
 (2012.12.13シルバー新報)
http://www.silver-news.com/ps/qn/guest/news/showbody.cgi?CCODE=12&NCODE=2154
 [関連資料]
 ○厚生労働省厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会
  第27回(2012.12.06)資料 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ql9f.html
  資料3 障害者総合支援法の対象となる難病等の範囲(案)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ql9f-att/2r9852000002qlcw.pdf
  障害者総合支援法の対象疾患一覧(案)130疾患

◆厚生労働省健康局厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(金澤一郎・委員長)第26回(2012.11.15)議事録
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002sqso.html

◆厚生労働省健康局厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(金澤一郎・委員長)第25回(2012.11.06)議事録
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002sqqz.html

◆厚生労働省健康局厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(金澤一郎・委員長)第24回(2012.10.30)議事録
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002sqpg.html

◆厚生労働省
  厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会
  (金澤一郎・委員長)
  第25回(2012.11.06)資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002nr5h.html
  資料 国民の理解の促進と社会参加のための施策の充実について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002nr5h-att/2r9852000002nr7q.pdf
   1.難病に関する普及啓発
   2.難病手帳(カード)(仮称)の検討
   3.日常生活における相談・支援の充実
   4.保健所を中心とした地域支援ネットワークの構築
   5.福祉サービスの充実(障害福祉サービスの利用)
   6.就労支援の充実
   7.難病を持つ子ども等への支援の在り方

 [関連記事]
 □難病患者の療養支援で「地域協議会」設置を
  厚労省が提案
  (2012.11.06キャリアブレイン)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38509.html

◆今後の難病対策の在り方(中間報告) [外部リンク]PDF
 平成24年8月16日
 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会

はじめに
 我が国の難病対策は、昭和47年に策定された「難病対策要綱」を踏まえ、@「調査研究の推進」、A「医療機関の整備」、B「医療費の自己負担の軽減」の三点を柱として進められ、平成元年度にC「地域保健医療の推進」が加えられ、また、平成8年度に「地域保健医療の推進」が「地域における保健医療福祉の充実・連携」とされ、D「QOLの向上を目指した福祉施策の推進」が加えられた。現在、この5本の柱に基づき、各種の事業を推進している。
 その結果、難病の実態把握や治療法の開発、難病医療の水準の向上、患者の療養環境の改善及び難病に関する社会的認識の促進に一定の成果をあげてきた。
 しかしながら、医療の進歩や患者及びその家族のニーズの多様化、社会・経済状況の変化に伴い、原因の解明すら未確立の疾患でも研究事業や医療費助成の対象に選定されていないものがあることなど難病の疾患間で不公平感があることや、難病に対する普及啓発が不十分なこと等により国民の理解が必ずしも十分でないこと、難病患者の長期にわたる療養と社会生活を支える総合的な対策が不十分であることなど様々な課題が指摘されており、難病対策の見直しが強く求められている状況にある。
 そのため、本委員会は、今後の難病対策の在り方について昨年9月より審議を行い、12月には「今後の難病対策の検討に当たって(中間的な整理)」を取りまとめた。この中間的な整理においては、「希少・難治性疾患の患者・家族を我が国の社会が包含し、支援していくことが、これからの成熟した我が国の社会にとってふさわしい」ことを基本的な認識とした。
 この中間的な整理を基に、その後も、「社会保障・税一体改革大綱」(平成24年2月17日閣議決定)や難病研究・医療ワーキンググループ及び難病在宅看護・介護等ワーキンググループにおける検討状況の報告も踏まえ、「難病対策の必要性と理念」、「「難病」の定義、範囲の在り方」、「医療費助成の在り方」、「福祉サービスの在り方」、「難病相談・支援センターの在り方」、「難病手帳(カード)(仮称)の在り方」、「難病研究の在り方」、「難病医療の質の向上のための医療・看護・介護サービスの提供体制の在り方」、「就労支援の在り方」、「難病を持つ子どもへの支援の在り方」、「小児慢性特定疾患治療研究事業の対象者等小児期から難病に罹患している者が成人移行(トランジション)する場合の支援の在り方」の各々の項目について議論を行い、論点・課題の整理を行った。
 今般、これまでの検討結果を「今後の難病対策の在り方(中間報告)」として取りまとめたので報告する。

1.難病対策の必要性と理念
 ○ いわゆる難病は、まれではあるが国民の中に一定の割合で発症する可能性のあるものである。難病患者は、治療方法が確立していない疾患に罹患し、往々にして生涯にわたる長期間の療養を必要とすることから、生活面における制約や経済的な負担が大きい。また、病名や病態が知られていないために、社会の理解が進んでおらず、就業など社会生活への参加が進みにくい状態にある。
 ○ このため、難病対策の見直しに当たっては、難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指す。また、患者の長期かつ重度の精神的・身体的・経済的負担を社会全体で支えることを目指し、中間的な整理で示した「今後の難病対策の見直しの方向性」を踏まえ、時代に合った新たな難病対策の構築を目指す。

2.「難病」の定義、範囲の在り方
 ○ 総合的な難病対策の外縁となる「難病」の定義については、「難病対策要綱」(昭和47年10月厚生省)をも参考にしつつ、できるだけ幅広くとらえるべきである。一方で、個別施策の対象となる疾病の範囲については、広く国民の理解を得られるよう、それぞれの施策の趣旨・目的等も踏まえ、比較的まれな疾病を基本に選定すべきである。
○ 今後、「難病」の定義については、個別施策の対象となる疾病の範囲の議論を深めつつ、引き続き検討する。

3.医療費助成の在り方
(1)基本的な考え方
 ○ 現行の「特定疾患治療研究事業」は、患者の医療費負担の軽減という福祉的な面を持つものの、その主たる目的は、難治性の疾患を克服するための治療研究の推進にある。
 ○ しかしながら、本施策については、患者等からは、福祉的施策ととらえられている現状もあり、できるだけ安定的な仕組みとすることが必要との指摘もなされている。このような観点から、今後、福祉的な面をどのように位置づけるか、また、そのための財源をどう確保していくかを含め、本施策の在り方について検討する必要がある。
 ○ なお、検討に当たっては、がんなど他の慢性疾患との関係等を含め、改めて本施策の趣旨・目的を整理し、公平性の観点から、広く国民の理解が得られるものとする必要がある。
(2)基本的な枠組み
 @ 対象疾患の在り方
  ○ 医療費助成の対象疾患については、「今後の難病対策の在り方について(中間報告)」(平成14年8月23日厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会)においてまとめられた、@症例が比較的少ないために全国的な規模で研究を行わなければ対策が進まない、A原因不明、B効果的な治療法未確立、C生活面への長期にわたる支障(長期療養を必要とする)の4要素を基本的には踏襲することが適当である。
  ○ 対象疾患の範囲の拡大を含めた見直しにあたっては、より公平に対象疾患を選定する必要がある。一方で、効果的な治療方法が確立するなど治療成績等の面で状況の変化が生じた対象疾患については、引き続き対象疾患として取り扱うことが適当かどうか定期的に評価し、見直していくことも必要である。
  ○ このため、対象疾患の選定及び見直し方法について具体的に検討し、広く国民の理解を得られる公平な仕組みとすることが必要である。その際、同じような性格の疾患にもかかわらず、疾患名の違いにより対象疾患の選定に差が生じることがないようにする必要がある。
  ○ また、対象患者の範囲については、重症度等の基準を設定することが必要であり、具体的な基準の内容について検討する必要がある。
  ○ 対象疾患の具体的な範囲については、現在、難治性疾患克服研究事業「今後の難病対策のあり方に関する研究班」において調査・分析を行っており、その結果等も参考に、今後更に検討する。
 A 対象患者の認定等の在り方
  ○ 医療費助成の対象疾患に罹患しているかどうかについては、専門医が診断基準に基づき的確に診断すべきであり、自治体の指定を受けた専門医の診断を要件とすることが必要である。また、良質かつ適切な医療を受けられるようにするため、緊急時を除き、自治体の指定を受けた医療機関で受診した場合に医療費助成を行うこととする必要がある。
 この場合、病気の診断や治療の質等の担保と患者の利用のしやすさとの両立をどのように図るかについて留意する必要がある。
  ○ 科学的根拠に基づく治療の適正化を行うため、疾患ごとの治療ガイドラインを策定し、周知徹底することが必要である。
 その際、様々な新しい治療の試みを縛ってしまわないような配慮も必要である。
  ○ 医療費助成の対象となる医療の範囲については、対象疾患及び対象疾患に付随して発現する傷病に対する医療に限定し、対象疾患に関係しない医療は対象外とする必要がある。
  ○ 医療費助成を受ける前提として、本施策の目的である治療法の開発研究等に役立てるため、引き続き患者データの提供が行われるようにする必要がある。
 この場合、精度の向上や有効活用の観点から、現行の臨床調査個人票の内容及びデータ収集の方法については見直しを行う必要がある。
 なお、収集される患者データは災害時の対応等にも役立て得る正確なものとすべきとの意見があった。
  ○ 医療費助成の認定手続ができるだけ患者や医療関係者、自治体の負担とならないよう検討する。
 B 給付水準の在り方
  ○ 難病の特性を踏まえつつ他制度との均衡を図るとともに、施策の安定性を確保し、国民の理解を得られるよう、給付水準(公費で負担される額)の見直しを検討する必要がある。
   <主な検討事項>
   ・ 入院時の食事及び生活に係る自己負担
   ・ 薬局での保険調剤に係る自己負担
   ・ 対象患者が負担する一部負担額(重症度基準、高額所得者、重症患者の取扱い等)

4.福祉サービスの在り方
 ○ 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者総合支援法」という。)において、治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者も、障害児・者の範囲に加えられたことから、平成25年4月以降、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスに係る給付対象となる。
 なお、児童福祉法上の障害児通所支援及び障害児入所支援についても同様の取扱いとなる。
 ○ 障害者総合支援法の「治療方法が確立していない疾病」であって「政令で定めるもの」の疾病の具体的な範囲については、現在、難治性疾患克服研究事業「今後の難病対策のあり方に関する研究班」において調査・分析を行っており、その結果等の他、新たな難病対策における医療費助成の対象疾患の範囲も参考にしつつ、障害者総合支援法の施行に向け、検討する。
 ○ 障害程度区分の認定に当たっては、難病ごとの特性(病状の変化や進行等)についてきめ細かく配慮する必要がある。

5.難病相談・支援センターの在り方
 ○ 難病相談・支援センターは、すべての難病を幅広くカバーし、あらゆる相談に自ら対応するばかりではなく、医療、福祉、行政など様々な機関と連携し、患者を適切なサービスに結びつけていく役割を担う必要がある。特に、医療機関、保健所、就労支援機関、子どもの相談支援機関等との連携の強化を図る必要がある。
 ○ 難病相談・支援センターは、引き続き都道府県ごとに設置することとし、その運営は地域の実情に合わせて委託できることとするが、どの都道府県においても基本的な機能を果たせるよう必要な体制を確保する必要がある。
 ○ 難病相談・支援センターの質の向上のため、職員の研修等を充実させるとともに、全国の難病相談・支援センターが連携し、互いに支援しあうことも必要である。
 ○ 同じ病気の人の経験を聞く(ピアサポート)など患者の視点に立った相談・支援が行われるよう留意することが必要であり、そのためにも、患者間の相互支援の取組や相談・支援を担う人材の育成が重要である。
 ○ 各都道府県の難病相談・支援センターの中心的な機能を担うセンターの在り方について検討する。

6.難病手帳(カード)(仮称)の在り方
 ○ 昨年の障害者基本法改正により、障害者の定義が見直され、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とされ、難病に起因する障害についても「その他の心身の機能の障害」に含まれると解されている。
 ○ 身体障害、知的障害及び精神障害については、既に手帳制度が設けられているところ、難病手帳(カード)(仮称)の在り方については、その目的、効果、事務負担等を他制度の例も参考にしつつ、今後更に検討する。

7.難病研究の在り方
(1)難病研究の対象
 ○ 難病研究の対象については、引き続き、診断基準が確立されていないものも含め対象とすべきである。
 ○ 現行の130疾患を指定し研究対象とする「臨床調査研究分野」とそれ以外の希少難治性疾患を研究対象とする「研究奨励分野」の区分けについては、総合的な難病対策を構築する際に根本的に見直すべきである。
(2)難病研究の重点化
 ○ 診断基準の作成や病態解明等に加え、研究の最終目標として、治療法開発、創薬を重点的に目指すべきであり、特に医師主導治験を行う創薬実用化研究を推進する必要がある。
 ○ 製薬企業等が難病の治療薬の開発に積極的に参加しやすくなるための環境整備が必要である。
(3)患者の参加と研究成果の還元
 ○ 難病患者が治験を含めた研究に参加しやすくなるような仕組みが必要である。
 ○ 研究の進捗状況や成果を患者、国民にわかりやすく伝えることが必要である。
(4)総合的な難病研究の実施と国際協力の推進
 ○ 関係各省、関係者が一体となった難病研究開発の総合戦略が必要である。
 ○ 難病の病態解明、治療方法の開発、創薬研究を促進するため、欧米をはじめとした国際協力を進めることが必要である。また、患者団体間の国際連携も重要である。

8.難病医療の質の向上のための医療・看護・介護サービスの提供体制の在り方
(1)「新・難病医療拠点病院(仮称)」の整備
 ○ どこに行っても診断がつかない、治療経験のある医師が見つからない等の難病患者が医療を受ける上での困難を克服するため、都道府県は、現在の難病医療拠点病院をさらに発展させ、医療費助成のために指定された医療機関の中から、難病の診断・治療に関して高い専門性と経験を有する拠点的な医療機関(新・難病医療拠点病院(仮称))を整備することが必要である。(医療費助成は必ずしも「新・難病医療拠点病院(仮称)」での診断・治療に限定するものではない。)
 ○ 「新・難病医療拠点病院(仮称)」には、概ねすべての疾患領域に対応し得る「総合型(仮称)」と特定の疾患群について専門性の高い「特定領域型(仮称)」を含める必要がある。
(2)難病患者の長期にわたる治療・療養を支える体制(環境)の整備
 ○ 様々な病態やステージにある難病患者に対し、長期にわたり適切な外来・入院医療を提供するためには、「新・難病医療拠点病院(仮称)」等の一部の限定された医療機関だけでなく、地域の様々な専門性・役割を持つ医療費助成のために指定された医療機関が連携し、難病医療を担う必要がある。また、連携を促進する手段として、例えば、連携パスのような仕組みを構築することも有用である。
 ○ 難病患者が地域で包括的な医療、看護、介護サービスを受けることができるよう、都道府県は、現在の難病医療拠点病院や難病医療協力病院をさらに発展させ、医療費助成のために指定された医療機関の中から、地域の実情を踏まえつつ、概ね二次医療圏に1か所程度「難病医療地域基幹病院(仮称)」を整備し、「新・難病医療拠点病院(仮称)」や地域の様々な医療機関と連携し、地域で難病医療・福祉サービスを提供する人材の育成や入院・療養施設の確保を進める必要がある。
 ○ 現在の難病医療専門員をさらに発展させ、「難病医療地域基幹病院(仮称)」等に、在宅難病患者の地域の医療機関等での受け入れ調整や入院患者の退院調整等を行う難病医療コーディネーター(仮称)を置くことも有用と考えられる。
 ○ 地域で生活する難病患者が安心して療養できるよう、地域の診療医、看護、介護、福祉サービスの担い手の量及び質を高めるとともに、関係機関のネットワークを充実させる必要がある。このため、地域の特性を把握し、難病患者に対する支援体制を整備するため、現在の地域の取組をさらに発展させ、保健所を中心とした「難病対策地域協議会(仮称)」を設置することについて検討する。
 ○ 特に極めて希少な疾患については、全国的にも患者数が数名という場合もあり、これら希少疾患に対し高度専門的な対応ができるセンター(難病治療研究センター(仮称))の在り方について検討する。
 ○ 難病医療・福祉サービスの地域間格差を是正するため、医療福祉従事者の教育研修、患者・家族を含む関係者間のネットワークによる情報共有、助言・協力等を促進する必要がある。
 ○ 難病患者・家族が地域で安心して生活し続けることができるよう、難病の在宅医療・看護・介護の在り方について、当事者も参画の上、引き続き、研究・検討する。さらに、コミュニケーション支援、災害対策、レスパイトの場の確保、在宅療養の安全確保等、難病患者の特殊性に配慮した支援についても考える必要がある。

9. 就労支援の在り方
 ○ 難病患者の就職・復職や就職後の雇用管理については、まずは、難病に関する知識(通院への配慮等)や既存の支援策(難治性疾患患者雇用開発助成金(注)等)の普及啓発が重要であり、事業主や関係機関への周知が必要である。
 ○ 加えて、既存の支援策の充実や難病相談・支援センターと就労支援機関等の関係機関との連携体制の強化を行うべきである。
また、民間の職業紹介事業者等の活用について検討すべきとの意見があった。
(注)難病のある人の雇用を促進し、職業生活上の課題を把握するため、難病のある人をハローワークの職業紹介により常用労働者として雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対する助成を行うもので、平成21年度に創設。

10.難病を持つ子どもへの支援の在り方
 ○ 難病相談・支援センターにおいて、子どもの相談支援機関や小児の難病に対応できる医療機関等と連携しつつ、難病の子どもや保護者の相談(学校との連携、社会性の育成等を含む)に引き続き対応すべきである。
 ○ 治療研究において、小児の難病の研究も引き続き行うべきである。また、極めて希少な疾患に高度専門的な対応ができるセンターの検討に際して、小児の極めて希少な難病についても考慮するべきである。
 ○ 「新・難病医療拠点病院(仮称)」の「特定領域型(仮称)」に小児の難病に対応できる医療機関を含めるとともに、「総合型(仮称)」において小児の難病への対応及び必要に応じて小児期の担当医師と成人疾患を担当する医師との連携を図るべきである。また、連携を促進する手段として、例えば、連携パスのような仕組みを構築することも有用である。
 ○ 総合的な難病対策の在り方の検討に当たっては、小児期の難病患者の特性にも配慮するとともに、教育支援、就労支援を含む総合的な自立支援についても検討を行う必要がある。

11.小児慢性特定疾患治療研究事業(注)の対象者等小児期から難病に罹患している者が成人移行(トランジション)する場合の支援の在り方
 ○ 患者は小児から成人にかけて継続して治療が必要となる場合もあることから、切れ目のない支援の在り方を検討すべきである。
 ○ 小児期に発症する難病の成人後の医療・ケアに携わる医療従事者に対する研修等を行うとともに、小児期からの担当医師等との連携を促進する必要がある。
 ○ 総合的な難病対策の在り方の検討に当たっては、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象者等小児期から難病に罹患している者については、小児期に長期の療養生活を余儀なくされてきたなどの特性にも配慮するとともに、教育支援、就労支援を含む総合的な自立支援についても検討を行う必要がある。
 (注)「治療が長期間にわたり、医療費の負担も高額となり、これを放置することは児童の健全な育成を阻害することとなる」疾患を対象として、医療保険の自己負担分を公費で助成している。対象年齢は18歳未満であるが、18歳になるまでに認定を受けており、引き続き治療が必要と認められる人については、20歳未満まで延長されている。

おわりに
 本委員会は、総合的な難病対策の在り方について審議を行い、本中間報告をとりまとめた。
 本委員会の中間報告に対して、関係各方面からの積極的な御意見を期待するとともに、本委員会としても、総合的な難病対策の構築を目指し、さらに専門的な立場から検討を続けていきたい。
 なお、行政関係者におかれては、この中間報告に記載された事項のうち、法制化の要否の検討が必要なものについては、早急に検討作業に取り組んでいただくよう要請する。
 今後、本委員会としては、これまでの審議経過を踏まえ、厚生科学審議会疾病対策部会へ報告を行い、さらに事務局より今後の検討課題及びその手順について整理を得た上で検討を進め、本委員会としての最終報告を厚生科学審議会疾病対策部会に提出することとしたい。

◆資料3 「今後の難病対策の在り方(中間報告)」の概要 [外部リンク]PDF
(平成24年8月16日厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会)
1.難病対策の必要性と理念
○ 難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指す。また、患者の長期かつ重度の精神的・身体的・経済的負担を社会全体で支えることを目指す。

2.「難病」の定義、範囲の在り方
○ 総合的な難病対策の外縁となる「難病」の定義については、「難病対策要綱」をも参考にしつつ、できるだけ幅広くとらえるべきである。一方で、個別施策の対象となる疾病の範囲については、広く国民の理解を得られるよう、それぞれの施策の趣旨・目的等も踏まえ、比較的まれな疾病を基本に選定すべきである。

3.医療費助成の在り方
@ 対象疾患の在り方
○ 対象疾患については、4要素(@症例が比較的少ないために全国的な規模で研究を行わなければ対策が進まない、A原因不明、B効果的な治療法未確立、C生活面への長期にわたる支障)を基本的に踏襲することが適当。
○ 対象疾患の範囲の拡大を含めた見直しにあたっては、より公平に対象疾患を選定する必要がある。一方で、効果的な治療方法が確立するなどした対象疾患については、引き続き対象疾患とするかどうか定期的に見直すことも必要。
○ 対象患者の範囲については、重症度等の基準を設定することが必要。
○ 対象疾患の具体的な範囲については、研究班の調査結果等も参考に、今後更に検討する。
A 対象患者の認定等の在り方
○ 自治体の指定を受けた専門医の診断を要件とし、緊急時を除き、指定医療機関で受診した場合に医療費助成を行う必要。
○ 治療の適正化を行うため、治療ガイドラインを策定し、周知することが必要。
○ 患者データの精度向上や有効活用の観点から、現行の調査票の内容及びデータの収集方法の見直しが必要。
B 給付水準の在り方

○ 難病の特性を踏まえつつ他制度との均衡を図るとともに、施策の安定性を確保し、国民の理解を得られるよう、給付水準の見直しを検討する必要。(入院時の食事・生活に係る自己負担等)

4.福祉サービスの在り方
○ 障害者総合支援法の対象疾患の範囲については、研究班の調査結果の他、新たな難病対策における医療費助成の対象疾患の範囲も参考にしつつ、検討。
○ 障害程度区分の認定に当たっては、難病ごとの特性についてきめ細かく配慮する必要。
5.難病相談・支援センターの在り方
○ 患者を適切なサービスに結びつけていくため、特に、医療機関、保健所、就労支援機関、子どもの相談支援機関等との連携の強化を図る必要。
○ どの都道府県においても基本的な機能を果たせるよう、必要な体制を確保する必要。
○ 同じ病気の人の経験を聞く(ピアサポート)など、患者の視点に立った相談・支援が行われるよう留意することが必要。
○ 各都道府県の難病相談・支援センターの中心的な機能を担うセンターの在り方について検討。

6.難病手帳(カード)(仮称)の在り方
○ 目的、効果、事務負担等を他制度の例も参考にしつつ、今後更に検討。

7.難病研究の在り方
○ 臨床調査研究分野と研究奨励分野の区分けを根本的に見直すべき。
○ 診断基準の作成や病態解明等に加え、治療法開発、創薬の研究を重点的に目指すべき。
○ 患者が治験などの研究に参加しやすくなる仕掛けが必要であり、研究の成果を患者等にわかりやすく伝えることが必要。
○ 関係各省、関係者が一体となる研究の総合戦略が必要であり、難病研究について国際協力を進めることが必要。

8.難病医療の質の向上のための医療・看護・介護・福祉サービスの提供体制の在り方
○ 診断がつかない等の困難を克服するため、指定医療機関の中から、高い専門性を有する「新・難病医療拠点病院(仮称)」を整備することが必要。
○ 地域で医療、介護サービスが受けられるよう、指定医療機関の中から、「難病医療地域基幹病院(仮称)」を整備する必要。
○ 「難病医療地域基幹病院(仮称)」に、難病患者の受け入れ・退院調整を行う「難病医療コーディネーター(仮称)」を置くことも有用。
○ 難病患者に対する地域の支援体制を整備するため、保健所を中心とした「難病対策地域協議会(仮称)」を設置することについて検討。
○ 極めて希少な疾患について高度専門的な対応を行うセンター(難病治療研究センター(仮称))の在り方について検討。

9. 就労支援の在り方
○ 難病に関する知識(通院への配慮等)や既存の支援策(助成金等)の普及啓発が重要。
○ 既存の支援策の充実や、難病相談・支援センターと就労支援機関等との連携体制の強化を行うべき。

10.難病を持つ子どもへの支援の在り方
○ 難病相談・支援センターにおいて、子どもの相談支援機関等と連携し、難病の子どもや保護者の相談に引き続き対応すべき。
○ 治療研究において、小児の難病の研究も引き続き行うべき。
○ 小児期のかかりつけの医師と成人疾患を担当する医師との連携を図るべき。
○ 総合的な難病対策の在り方の検討に当たっては、小児期の難病患者の特性にも配慮するとともに、教育支援、就労支援を含む総合的な自立支援についても検討を行う必要。

11.小児慢性特定疾患治療研究事業の対象者等小児期から難病に罹患している者が成人移行(トランジション)する場合の支援の在り方
○ 患者は小児から成人にかけて継続して治療が必要となる場合もあることから、切れ目のない支援の在り方を検討すべき。
○ 医療従事者に対する研修等を行うとともに、小児期からのかかりつけの医師等との連携を促進する必要。
○ 総合的な難病対策の在り方の検討に当たっては、小児期から難病に罹患している者については、小児期に長期の療養生活を余儀なくされてきたなどの特性にも配慮するとともに、教育支援、就労支援を含む総合的な自立支援についても検討を行う必要。

◆資料4 今後の難病対策の在り方(中間報告) [外部リンク]PDF
 平成24年8月16日
 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会

はじめに
 我が国の難病対策は、昭和47年に策定された「難病対策要綱」を踏まえ、@「調査研究の推進」、A「医療機関の整備」、B「医療費の自己負担の軽減」の三点を柱として進められ、平成元年度にC「地域保健医療の推進」が加えられ、また、平成8年度に「地域保健医療の推進」が「地域における保健医療福祉の充実・連携」とされ、D「QOLの向上を目指した福祉施策の推進」が加えられた。現在、この5本の柱に基づき、各種の事業を推進している。
 その結果、難病の実態把握や治療法の開発、難病医療の水準の向上、患者の療養環境の改善及び難病に関する社会的認識の促進に一定の成果をあげてきた。
 しかしながら、医療の進歩や患者及びその家族のニーズの多様化、社会・経済状況の変化に伴い、原因の解明すら未確立の疾患でも研究事業や医療費助成の対象に選定されていないものがあることなど難病の疾患間で不公平感があることや、難病に対する普及啓発が不十分なこと等により国民の理解が必ずしも十分でないこと、難病患者の長期にわたる療養と社会生活を支える総合的な対策が不十分であることなど様々な課題が指摘されており、難病対策の見直しが強く求められている状況にある。
 そのため、本委員会は、今後の難病対策の在り方について昨年9月より審議を行い、12月には「今後の難病対策の検討に当たって(中間的な整理)」を取りまとめた。この中間的な整理においては、「希少・難治性疾患の患者・家族を我が国の社会が包含し、支援していくことが、これからの成熟した我が国の社会にとってふさわしい」ことを基本的な認識とした。
 この中間的な整理を基に、その後も、「社会保障・税一体改革大綱」(平成24年2月17日閣議決定)や難病研究・医療ワーキンググループ及び難病在宅看護・介護等ワーキンググループにおける検討状況の報告も踏まえ、「難病対策の必要性と理念」、「「難病」の定義、範囲の在り方」、「医療費助成の在り方」、「福祉サービスの在り方」、「難病相談・支援センターの在り方」、「難病手帳(カード)(仮称)の在り方」、「難病研究の在り方」、「難病医療の質の向上のための医療・看護・介護サービスの提供体制の在り方」、「就労支援の在り方」、「難病を持つ子どもへの支援の在り方」、「小児慢性特定疾患治療研究事業の対象者等小児期から難病に罹患している者が成人移行(トランジション)する場合の支援の在り方」の各々の項目について議論を行い、論点・課題の整理を行った。
 今般、これまでの検討結果を「今後の難病対策の在り方(中間報告)」として取りまとめたので報告する。

1.難病対策の必要性と理念
○ いわゆる難病は、まれではあるが国民の中に一定の割合で発症する可能性のあるものである。難病患者は、治療方法が確立していない疾患にり患し、往々にして生涯にわたる長期間の療養を必要とすることから、生活面における制約や経済的な負担が大きい。また、病名や病態が知られていないために、社会の理解が進んでおらず、就業など社会生活への参加が進みにくい状態にある。
○ このため、難病対策の見直しに当たっては、難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指す。また、患者の長期かつ重度の精神的・身体的・経済的負担を社会全体で支えることを目指し、中間的な整理で示した「今後の難病対策の見直しの方向性」を踏まえ、時代に合った新たな難病対策の構築を目指す。

2.「難病」の定義、範囲の在り方
○ 総合的な難病対策の外縁となる「難病」の定義については、「難病対策要綱」(昭和47年10月厚生省)をも参考にしつつ、できるだけ幅広くとらえるべきである。一方で、個別施策の対象となる疾病の範囲については、広く国民の理解を得られるよう、それぞれの施策の趣旨・目的等も踏まえ、比較的まれな疾病を基本に選定すべきである。
○ 今後、「難病」の定義については、個別施策の対象となる疾病の範囲の議論を深めつつ、引き続き検討する。

3.医療費助成の在り方
(1)基本的な考え方
○ 現行の「特定疾患治療研究事業」は、患者の医療費負担の軽減という福祉的な面を持つものの、その主たる目的は、難治性の疾患を克服するための治療研究の推進にある。
○ しかしながら、本施策については、患者等からは、福祉的施策ととらえられている現状もあり、できるだけ安定的な仕組みとすることが必要との指摘もなされている。このような観点から、今後、福祉的な面をどのように位置づけるか、また、そのための財源をどう確保していくかを含め、本施策の在り方について検討する必要がある。
○ なお、検討に当たっては、がんなど他の慢性疾患との関係等を含め、改めて本施策の趣旨・目的を整理し、公平性の観点から、広く国民の理解が得られるものとする必要がある。
(2)基本的な枠組み
@ 対象疾患の在り方
○ 医療費助成の対象疾患については、「今後の難病対策の在り方について(中間報告)」(平成14年8月23日厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会)においてまとめられた、@症例が比較的少ないために全国的な規模で研究を行わなければ対策が進まない、A原因不明、B効果的な治療法未確立、C生活面への長期にわたる支障(長期療養を必要とする)の4要素を基本的には踏襲することが適当である。
○ 対象疾患の範囲の拡大を含めた見直しにあたっては、より公平に対象疾患を選定する必要がある。一方で、効果的な治療方法が確立するなど
治療成績等の面で状況の変化が生じた対象疾患については、引き続き対象疾患として取り扱うことが適当かどうか定期的に評価し、見直していくことも必要である。
○ このため、対象疾患の選定及び見直し方法について具体的に検討し、広く国民の理解を得られる公平な仕組みとすることが必要である。その際、同じような性格の疾患にもかかわらず、疾患名の違いにより対象疾患の選定に差が生じることがないようにする必要がある。
○ また、対象患者の範囲については、重症度等の基準を設定することが必要であり、具体的な基準の内容について検討する必要がある。
○ 対象疾患の具体的な範囲については、現在、難治性疾患克服研究事業「今後の難病対策のあり方に関する研究班」において調査・分析を行っており、その結果等も参考に、今後更に検討する。
A 対象患者の認定等の在り方
○ 医療費助成の対象疾患にり患しているかどうかについては、専門医が診断基準に基づき的確に診断すべきであり、自治体の指定を受けた専門医の診断を要件とすることが必要である。また、良質かつ適切な医療を受けられるようにするため、緊急時を除き、自治体の指定を受けた医療機関で受診した場合に医療費助成を行うこととする必要がある。
この場合、病気の診断や治療の質等の担保と患者の利用のしやすさとの両立をどのように図るかについて留意する必要がある。
○ 科学的根拠に基づく治療の適正化を行うため、疾患ごとの治療ガイドラインを策定し、周知徹底することが必要である。
その際、様々な新しい治療の試みを縛ってしまわないような配慮も必要である。
○ 医療費助成の対象となる医療の範囲については、対象疾患及び対象疾患に付随して発現する傷病に対する医療に限定し、対象疾患に関係しない医療は対象外とする必要がある。
○ 医療費助成を受ける前提として、本施策の目的である治療法の開発研究等に役立てるため、引き続き患者データの提供が行われるようにする必要がある。
この場合、精度の向上や有効活用の観点から、現行の臨床調査個人票の内容及びデータ収集の方法については見直しを行う必要がある。
なお、収集される患者データは災害時の対応等にも役立て得る正確なものとすべきとの意見があった。
○ 医療費助成の認定手続ができるだけ患者や医療関係者、自治体の負担とならないよう検討する。
B 給付水準の在り方
○ 難病の特性を踏まえつつ他制度との均衡を図るとともに、施策の安定性を確保し、国民の理解を得られるよう、給付水準(公費で負担される額)の見直しを検討する必要がある。
<主な検討事項>
・ 入院時の食事及び生活に係る自己負担
・ 薬局での保険調剤に係る自己負担
・ 対象患者が負担する一部負担額(重症度基準、高額所得者、重症患者の取扱い等)

4.福祉サービスの在り方
○ 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者総合支援法」という。)において、治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者も、障害児・者の範囲に加えられたことから、平成25年4月以降、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスに係る給付対象となる。
 なお、児童福祉法上の障害児通所支援及び障害児入所支援についても同様の取扱いとなる。
○ 障害者総合支援法の「治療方法が確立していない疾病」であって「政令で定めるもの」の疾病の具体的な範囲については、現在、難治性疾患克服研究事業「今後の難病対策のあり方に関する研究班」において調査・分析を行っており、その結果等の他、新たな難病対策における医療費助成の対象疾患の範囲も参考にしつつ、障害者総合支援法の施行に向け、検討する。
○ 障害程度区分の認定に当たっては、難病ごとの特性(病状の変化や進行等)についてきめ細かく配慮する必要がある。

5.難病相談・支援センターの在り方
○ 難病相談・支援センターは、すべての難病を幅広くカバーし、あらゆる相談に自ら対応するばかりではなく、医療、福祉、行政など様々な機関と連携し、患者を適切なサービスに結びつけていく役割を担う必要がある。特に、医療機関、保健所、就労支援機関、子どもの相談支援機関等との連携の強化を図る必要がある。
○ 難病相談・支援センターは、引き続き都道府県ごとに設置することとし、その運営は地域の実情に合わせて委託できることとするが、どの都道府県においても基本的な機能を果たせるよう必要な体制を確保する必要がある。
○ 難病相談・支援センターの質の向上のため、職員の研修等を充実させるとともに、全国の難病相談・支援センターが連携し、互いに支援しあうことも必要である。
○ 同じ病気の人の経験を聞く(ピアサポート)など患者の視点に立った相談・支援が行われるよう留意することが必要であり、そのためにも、患者間の相互支援の取組や相談・支援を担う人材の育成が重要である。
○ 各都道府県の難病相談・支援センターの中心的な機能を担うセンターの在り方について検討する。

6.難病手帳(カード)(仮称)の在り方
○ 昨年の障害者基本法改正により、障害者の定義が見直され、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とされ、難病に起因する障害についても「その他の心身の機能の障害」に含まれると解されている。
○ 身体障害、知的障害及び精神障害については、既に手帳制度が設けられているところ、難病手帳(カード)(仮称)の在り方については、その目的、効果、事務負担等を他制度の例も参考にしつつ、今後更に検討する。

7.難病研究の在り方
(1)難病研究の対象
○ 難病研究の対象については、引き続き、診断基準が確立されていないものも含め対象とすべきである。
○ 現行の130疾患を指定し研究対象とする「臨床調査研究分野」とそれ以外の希少難治性疾患を研究対象とする「研究奨励分野」の区分けについては、総合的な難病対策を構築する際に根本的に見直すべきである。
(2)難病研究の重点化
○ 診断基準の作成や病態解明等に加え、研究の最終目標として、治療法開発、創薬を重点的に目指すべきであり、特に医師主導治験を行う創薬実用化研究を推進する必要がある。
○ 製薬企業等が難病の治療薬の開発に積極的に参加しやすくなるための環境整備が必要である。
(3)患者の参加と研究成果の還元
○ 難病患者が治験を含めた研究に参加しやすくなるような仕掛けが必要である。
○ 研究の進捗状況や成果を患者、国民にわかりやすく伝えることが必要である。
(4)総合的な難病研究の実施と国際協力の推進
○ 関係各省、関係者が一体となった難病研究開発の総合戦略が必要である。
○ 難病の病態解明、治療方法の開発、創薬研究を促進するため、欧米をはじめとした国際協力を進めることが必要である。また、患者団体間の国際連携も重要である。

8.難病医療の質の向上のための医療・看護・介護サービスの提供体制の在り方
(1)「新・難病医療拠点病院(仮称)」の整備
○ どこに行っても診断がつかない、治療経験のある医師が見つからない等の難病患者が医療を受ける上での困難を克服するため、都道府県は、現在の難病医療拠点病院をさらに発展させ、医療費助成のために指定された医療機関の中から、難病の診断・治療に関して高い専門性と経験を有する拠点的な医療機関(新・難病医療拠点病院(仮称))を整備することが必要である。(医療費助成は必ずしも「新・難病医療拠点病院(仮称)」での診断・治療に限定するものではない。)
○ 「新・難病医療拠点病院(仮称)」には、概ねすべての疾患領域に対応し得る「総合型(仮称)」と特定の疾患群について専門性の高い「特定領
域型(仮称)」を含める必要がある。
(2)難病患者の長期にわたる治療・療養を支える体制(環境)の整備
○ 様々な病態やステージにある難病患者に対し、長期にわたり適切な外来・入院医療を提供するためには、「新・難病医療拠点病院(仮称)」等の一部の限定された医療機関だけでなく、地域の様々な専門性・役割を持つ医療費助成のために指定された医療機関が連携し、難病医療を担う必要がある。また、連携を促進する手段として、例えば、連携パスのような仕組みを構築することも有用である。
○ 難病患者が地域で包括的な医療、看護、介護サービスを受けることができるよう、都道府県は、現在の難病医療拠点病院や難病医療協力病院をさらに発展させ、医療費助成のために指定された医療機関の中から、地域の実情を踏まえつつ、概ね二次医療圏に1か所程度「難病医療地域基幹病院(仮称)」を整備し、「新・難病医療拠点病院(仮称)」や地域の様々な医療機関と連携し、地域で難病医療・福祉サービスを提供する人材の育成や入院・療養施設の確保を進める必要がある。
○ 現在の難病医療専門員をさらに発展させ、「難病医療地域基幹病院(仮称)」等に、在宅難病患者の地域の医療機関等での受け入れ調整や入院患者の退院調整等を行う難病医療コーディネーター(仮称)を置くことも有用と考えられる。
○ 地域で生活する難病患者が安心して療養できるよう、地域の診療医、看護、介護、福祉サービスの担い手の量及び質を高めるとともに、関係機関のネットワークを充実させる必要がある。このため、地域の特性を把握し、難病患者に対する支援体制を整備するため、現在の地域の取組をさらに発展させ、保健所を中心とした「難病対策地域協議会(仮称)」を設置することについて検討する。
○ 特に極めて希少な疾患については、全国的にも患者数が数名という場合もあり、これら希?疾患に対し高度専門的な対応ができるセンター(難病治療研究センター(仮称))の在り方について検討する。
○ 難病医療・福祉サービスの地域間格差を是正するため、医療福祉従事者の教育研修、患者・家族を含む関係者間のネットワークによる情報共有、助言・協力等を促進する必要がある。
○ 難病患者・家族が地域で安心して生活し続けることができるよう、難病の在宅医療・看護・介護の在り方について、当事者も参画の上、引き続き、研究・検討する。さらに、コミュニケーション支援、災害対策、レスパイトの場の確保、在宅療養の安全確保等、難病患者の特殊性に配慮した支援についても考える必要がある。

9. 就労支援の在り方
○ 難病患者の就職・復職や就職後の雇用管理については、まずは、難病に関する知識(通院への配慮等)や既存の支援策(難治性疾患患者雇用開発助成金(注)等)の普及啓発が重要であり、事業主や関係機関への周知が必要である。
○ 加えて、既存の支援策の充実や難病相談・支援センターと就労支援機関等の関係機関との連携体制の強化を行うべきである。
また、民間の職業紹介事業者等の活用について検討すべきとの意見があった。
(注)難病のある人の雇用を促進し、職業生活上の課題を把握するため、難病のある人をハローワークの職業紹介により常用労働者として雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対する助成を行うもので、平成21年度に創設。

10.難病を持つ子どもへの支援の在り方
○ 難病相談・支援センターにおいて、子どもの相談支援機関や小児の難病に対応できる医療機関等と連携しつつ、難病の子どもや保護者の相談(学校との連携、社会性の育成等を含む)に引き続き対応すべきである。
○ 治療研究において、小児の難病の研究も引き続き行うべきである。また、極めて希?な疾患に高度専門的な対応ができるセンターの検討に際して、小児の極めて希?な難病についても考慮するべきである。
○ 「新・難病医療拠点病院(仮称)」の「特定領域型(仮称)」に小児の難病に対応できる医療機関を含めるとともに、「総合型(仮称)」において小児の難病への対応及び必要に応じて小児期のかかりつけの医師と成人疾患を担当する医師との連携を図るべきである。また、連携を促進する手段として、例えば、連携パスのような仕組みを構築することも有用である。
○ 総合的な難病対策の在り方の検討に当たっては、小児期の難病患者の特性にも配慮するとともに、教育支援、就労支援を含む総合的な自立支援についても検討を行う必要がある。

11.小児慢性特定疾患治療研究事業(注)の対象者等小児期から難病に罹患している者が成人移行(トランジション)する場合の支援の在り方
○ 患者は小児から成人にかけて継続して治療が必要となる場合もあることから、切れ目のない支援の在り方を検討すべきである。
○ 小児期に発症する難病の成人後の医療・ケアに携わる医療従事者に対する研修等を行うとともに、小児期からのかかりつけの医師等との連携を促進する必要がある。
○ 総合的な難病対策の在り方の検討に当たっては、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象者等小児期から難病に罹患している者については、小児期に長期の療養生活を余儀なくされてきたなどの特性にも配慮するとともに、教育支援、就労支援を含む総合的な自立支援についても検討を行う必要がある。
(注)「治療が長期間にわたり、医療費の負担も高額となり、これを放置することは児童の健全な育成を阻害することとなる」疾患を対象として、医療保険の自己負担分を公費で助成している。対象年齢は18歳未満であるが、18歳になるまでに認定を受けており、引き続き治療が必要と認められる人については、20歳未満まで延長されている。

おわりに
 本委員会は、総合的な難病対策の在り方について審議を行い、本中間報告をとりまとめた。
 本委員会の中間報告に対して、関係各方面からの積極的な御意見を期待するとともに、本委員会としても、総合的な難病対策の構築を目指し、さらに専門的な立場から検討を続けていきたい。
 なお、行政関係者におかれては、この中間報告に記載された事項のうち、法制化の要否の検討が必要なものについては、早急に検討作業に取り組んでいただくよう要請する。
 今後、本委員会としては、これまでの審議経過を踏まえ、厚生科学審議会疾病対策部会へ報告を行い、さらに事務局より今後の検討課題及びその手順について整理を得た上で検討を進め、本委員会としての最終報告を厚生科学審議会疾病対策部会に提出することとしたい。

◆資料5 難病対策に関する意見交換会の概要 [外部リンク]PDF

日時:平成24年8月18日(土)13:00〜17:45
場所:(社)全国社会保険協会連合会研修センター
参加者:難病患者団体等50団体の方々
     ※厚生労働省 辻副大臣、外山健康局長、松岡総務課長、山本疾病対策課長、泉母子保健課長、他
概要:全国の難病患者団体の方が参加し、日常生活において難病患者が抱える困難さや、医療や介護・福祉サービス等に関する厚生労働省への要望などについて意見交換を実施。

主なご意見
●難病対策全般について
・難病患者の実態を踏まえたうえで、難病患者が安心して暮らせるような医療や福祉等総合的な対策を行ってほしい。
・制度設計において、患者等当事者を排除しないでほしい。
・難病に関する普及啓発を推進し、難病の認知度を上げ、働きにくさやいじめ・差別を解消してほしい。
・患者会を社会資源として活用できるような体制づくりをしてほしい。
・難病を患う親の育児を支援する仕組みがほしい。

●「難病」の定義、範囲の在り方について
・要件を満たす疾患は全ての難病の範囲となるようにするべき。
・研究と福祉は分けて考えるべき。

●医療費助成の在り方について
・対象疾患の範囲について、公平、公正に選定すべき。
・患者数が増えたからといって、対象から外さないでほしい。
・(現行の医療費助成の対象外の疾患について)医療費助成を行ってほしい。
・医療費だけでなく、通院等の際に必要となる交通費の助成も行ってほしい。

●福祉サービスの在り方について
・障害・疾患別に福祉サービスのメニューを決めるのではなく、患者個々の状況に応じて必要なサービスが提供されるような仕組みにしてほしい。
・制度の谷間になる人が出ないような仕組みを考えてほしい。
・難病患者に特化したケア(グループ)ホームを整備してほしい。

●難病相談・支援センターの在り方について
・現行の難病相談・支援センターの均一化、レベルアップを図るため、全国難病相談・支援センターを設置してほしい。
・人員体制の強化・拡充を図ってほしい。

●難病手帳(カード)(仮称)の在り方について
・難病患者への福祉・就労支援策を充実するため、難病手帳を実現してほしい。
・身体障害者手帳と同等の難病手帳を作ってほしい。
・新たな谷間をつくるような手帳制度はつくるべきでない。

●難病研究の在り方について
・治療方法の確立に向け、治療研究が継続されるよう安定的に研究費を助成していただきたい。
・少数例でも治療法確立が見込める疾患については、積極的に研究支援してほしい。
・治験など、早く結果が出るようにしてほしい。

●難病医療の質の向上のための医療・看護・介護サービスの提供体制の在り方について
・専門医を計画的に養成するとともに、医療関係者や医学生に対して難病に関する知識を普及させてほしい。
・全国どこでも、安心して入院・治療できる環境を整備してほしい。
・遺伝子診断を充実させ、またその相談支援を拡充してほしい。

●就労支援の在り方について
・障害者手帳の有無にかかわらず、難病患者を障害者の法定雇用率の対象に加えてほしい。
・難病患者に関する助成金の対象範囲を拡大してほしい。
・通院への配慮や休暇制度など、難病にり患していても働ける環境をつくってほしい。

●難病を持つ子どもへの支援の在り方、小児慢性疾患特定疾患治療研究事業の対象者等小児期から難病に罹患している者が成人移行する場合の支援の在り方について
・成人になると医療費助成等の支援が受けられなくなる問題を解消してほしい。
・難病の子どもをもつ親、家族への支援を充実させてほしい。

●障害者施策全般関係
・障害者手帳の交付基準や等級認定基準について、医学モデルではなく、社会モデルに基づく患者の実態に見合った制度へ改善してほしい。
・障害者手帳の交付基準や等級認定基準について、患者目線で緩和、見直してほしい。

●医療保険制度関係
・高額療養費制度などの見直しが必要。
・高額療養費の所得区分は本人所得のみで判定してほしい。
・先進的な治療薬等について、早期に承認・保険適用してほしい。

●薬事関係
・外国で品質、有効性、安全性の確認がなされている薬が早期承認されるようにしてほしい。
・希少疾病用医薬品や希少疾病用医療機器の開発を支援してほしい。


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■ニュース


12月

◆2012/12/21 「トシリズマブ,カナキヌマブが全身型JIAで好成績 小児対象の3件の第V相試験結果が発表」
 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1212/1212059.html

 「若年性特発性関節炎(JIA)の中でも全身型JIAは最も重症のサブタイプで治療法は限られており,発症にはインターロイキン(IL)-1βやIL-6が関与しているとされている。小児患者を対象に,これらのサイトカインを標的とした薬剤の有効性を検証する臨床試験が進められているが,ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体であるトシリズマブ,ヒト化抗IL-1βモノクローナル抗体カナキヌマブを対象とした計3件の第V相臨床試験の成績が12月20日発行のN Eng J Medに発表され,いずれも他の治療法が奏効しない患児に対して有効な治療選択であることが示された。」

◆2012/12/20 「パーキンソン病患者会がiPS細胞研究に協力体制 「臨床データベース」設立へ」
 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1212/1212056.html&ct=ga&cad=CAEQAhgAIAAoATAAOABA-7_NhgVIAVAAWABiAmph&cd=nBRF3aKFtV4&usg=AFQjCNG86bV66CJ7onz0Wlv-LF6zysUThg

 「人工多能性幹(iPS)細胞の樹立で研究環境が大きく変化したことを受けて,従来の治験だけでなく,今後は研究開発にも協力していく必要があると判断した全国パーキンソン病友の会(代表理事・会長:中村博氏)は,昨日(12月19日)東京都で記者会見を開き,「パーキンソン病患者臨床データベース」の設立を発表した。同意が得られた会員の個人情報を同データベースにあらかじめ登録しておくことで,研究者から細胞提供などの研究協力依頼があれば,該当者を速やかに選定し,協力に応じる体制づくりを目指す。記者会見には,同会を支援してきた順天堂大学脳神経内科教授の服部信孝氏,慶應義塾大学生理学教授の岡野栄之氏も出席した。両氏は,パーキンソン病(PD)患者から作製したiPS細胞を用いて病態メカニズムの再現に成功し,その内容をMol Brain 2012年10月6日オンライン版に発表したばかりだ。 …この続きを読むには,MT Proにログインまたはご登録ください」
9月

◆2012/9/9 難病カルテ:患者たちのいま/55 多発性硬化症(MS) /佐賀
 『毎日新聞』佐賀 29頁
 ◇家族と「楽しく生きる」 踊り断念し落胆も
 約2年前、増田志津さん(37)=伊万里市=は両膝下、肘下が「正座した後のように」ビリビリとしびれるのを感じた。「すぐに治る」と思っていたが、飼っていたブンチョウが左手に乗った時、その重みで上げられなくなった。病院に駆けつけた時には左足のマヒ症状も出て、車いすに。「脳梗塞(こうそく)の可能性がある」と告げられた。
 長崎県の別の病院へ移ったが、詳しい検査をしても原因が分からなかった。病名が確定しないまま数カ月が過ぎた。「自分で自分の体が分からない。なぜ私は病院にいるのか説明できない」。体調が悪くても、周囲に伝わらず、苦しんだ。
 「できないことを言い出せばきりがないから」と今は気丈に振る舞うものの「踊れなくなったのは本当につらかった」。
 子供が始めた「よさこい踊り」。付き添ううち、次第に自分がのめり込んだ。週3回、汗を流して踊った。発症当時は踊りの新団体を設立したばかり。佐賀市の「栄の国祭り」に出演し、次のイベントに向けて準備を進めていた頃だった。
 体調悪化後、踊ろうと挑戦したこともあったが、周囲についていけなかった。「もっともっとしたかった……。でも全部だめになってしまった」。踊りができなくなったことでそれを実感し「死にたい」と気力を失いかけた。「私がおらんようになった方が、主人にも子供にも負担にならないのではないか」とも考えた。
 いったんは症状が落ち着いたが、その年の11月に全身に鉛が付いたような倦怠(けんたい)感と痛みに襲われ、多発性硬化症(MS)の診断が正式に出された。
 病名判明で「吹っ切れた」。医師から丁寧な説明を受けたことで「なってしまったら仕方ない。これからどう生きよう」と覚悟を決めることができた。
 病気になることで「人とのつきあい方を学んだ」という。離れていく人、関係が続く人、手を差し伸べてくれる人。「病気はプラスではないけれど、病気だからこそ、見えてくるものもあった」と感じている。
 運転できる距離が徐々に短くなり、左半身のしびれが強くなっている。8月下旬、強い自覚症状はなかったが、治療のために入院することが決まった。ただ「先の不安を考えるよりも、楽しく生きたい」と強く思う。
 今夏、発症後初めての家族旅行をした。福岡で野球観戦し、1泊。車いすを使うなどしたが「制限がある中でも楽しめる」と実感できた。「次は、東京ディズニーランドに行きたいね」。三女京ちゃん(6)の顔を見てほほ笑んだ。【蒔田備憲】
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 ◇多発性硬化症(MS)
 神経を覆う髄鞘(ずいしょう)が壊れる「脱髄疾患」があちこちにでき、再発を繰り返す病気。欧米の白人に発生頻度が高いと考えられている。また、若年成人に発症することが最も多く、平均の発病年齢は30歳前後とされる。医療費助成の対象になる特定疾患に指定されており、10年度の受給者数は1万4492人。

◆2012/9/6 [外部リンク]難病対策推進の超党派議連発足 来年通常国会での法制化めざす
 『excite.ニュース』(2012年9月8日 08時56分 更新)
 難病の新たな総合対策を推進し、法制化をめざす「新しい難病対策の推進を目指す超党派国会議員連盟」の設立総会が6日、参院議員会館で開かれた=写真。日本難病・疾病団体協議会(JPA)が中心となって働き掛けてきたもので、8月に厚生科学審議会難病対策委員会(金澤一郎委員長)が「中間報告」をまとめたのを機に、立法府としても来年の通常国会を目標に法制化を目指すことになった。
 同連盟には民主、自民、生活、公明、共産、社民、国民新、みんななどの各党衆参議員107人(6日現在)が会員となり、この日は52人が出席。患者側からはJPA傘下の難病患者団体など55団体、約150人が参加した。
 江田康幸氏(公明)の司会で、事務局から議連結成の経緯、設立趣旨、規約、役員などについて提案があり、原案通り承認された。役員は、会長に衛藤晟一氏(自民)、幹事長に岡崎トミ子氏(民主)、事務局長に江田氏が就任。顧問として長妻昭(民主)、細川律夫(同)、鴨下一郎(自民)、坂口力(公明)の4氏が名を連ねた。
 衛藤会長は、自ら介護保険制度の創設に携わった経験を踏まえ、「当時の介護制度創設と同様に、難病にも抜本的な対策が必要な時期に来た。医療、介護、福祉サービスを合わせた総合的な対策を打ち出さなければならない」とあいさつした。JPAの伊藤たてお代表理事は「難病対策は大きく変わろうとしている。10年後に、再び世界に誇れるような内容の対策にして欲しい」と述べた。
 日本の難病対策は1972年の「難病対策要綱」に基づいて運用されているが、法的な裏付けがないことなどから、財源問題などで“制度疲労”をきたしており、患者団体などから新たな制度構築の必要性を訴える声が強まっている。これを受けて、難病対策委は「中間報告」を基に、近く具体的な基準などについて議論を再開する見通しだ。

◆2012/9/6 [外部リンク]【大阪府薬】お薬手帳の電子化事業、今月から本格的にスタート‐携帯端末の標準システム開発へ
 『薬事日報』(無料箇所のみ)
 大阪府薬剤師会は、今月から「大阪e‐お薬手帳事業」を本格的に開始した。同事業は、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末を活用して、お薬手帳記載内容の一部である調剤日、投薬した薬剤の名称、用法、用量等の電子化を行い、府民の健康増進や災害時への対応力向上を図ることを目的としたもの。
 大阪府薬が国の予算を得て先駆的に全国標準システムを開発し、全国への拡大を目指す。今後は、年内をメドにシステム開発を行い、モデル地域での試行運用を経て、来年9月に運用を開始する。完成したシステムや活用方法については、来年9月に大阪で開かれる第46回日本薬剤師会学術大会で発表される。

◆2012/9/2 難病カルテ:患者たちのいま/54 後縦靱帯骨化症 /佐賀
 『毎日新聞』 佐賀 21頁
 ◇仲間との交流生きがい イベント、渉外でリーダー役
 パーキンソン病の友人らとともに、食事会をしたり、カラオケをしたり、フラメンコを鑑賞したりする。岸川薫さん(78)=佐賀市=は「こうしてみんなと過ごしているのが、何より楽しいですね」と笑顔になる。
 12、13年前、肩こりと首をひねったような痛みが続いた。しびれが手の指の先まで広がり「このまま放っておいたら動けなくなる」と感じ、通院。「後縦靱帯(じんたい)骨化症」と告げられ、症状の進行を防ぐ手術を受けた。「もうようならんと思っていくらか悩んだけど、とやかく考えても仕方なか」と思うようにした。
 退院後、保健所主催の患者の集いに参加した。車椅子に乗る人がいれば、別の人はパーキンソン病で体の震えが止まらない。自分よりずっとひどい症状だった。「自分はたいしたことはない。お世話できて、少しでも力になりたい」。そう思うようになった。
 以来、参加して約10年。月1回、20人弱が集まる。「この時だけは自分が病気であることを忘れられるんです」。イベントを企画したり外部団体との渉外を担うリーダー役を務めたりするようになった。「仕事もしていないし、押しつけられただけだよ」と顔を真っ赤に染めて謙遜しながらも「ただ傷をなめ合うだけではなく、その日だけでも楽しく過ごしたいからね」。
 高校卒業後、福岡県内の短大へ。「東京に行きたい」という憧れから都内の大学へ移るが「マージャンばかりしていた」。大阪の印刷会社に勤め、結婚後、佐賀に戻って印刷業などに従事し、仕事を辞めた頃の発症だった。
 手術後、目立った症状の悪化はないが、痛み、しびれは取れない。歩くのに支障はないものの、湿度が高かったり、治療のための通院ができない日が続いたりすると、手のしびれが強くなる。
 糖尿病や高血圧など複数の持病がありながら「病気で困っているというのはないですねえ。たくさん薬を飲まなければならないのが大変だけど」と鷹揚(おうよう)に笑う。
 毎日、通院の帰りに県難病相談・支援センターでコーヒーを飲んで新聞を読み、職員と雑談する。時に患者会の集いに参加する。妻に「遊んでばかりいて」とあきれられているが「みなさんと楽しく、一日ずつ過ごせれば、これ以上のことはありませんね」。【蒔田備憲】
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 ◇後縦靱帯骨化症
 脊椎(せきつい)の背中側にある靱帯が骨のように硬くなり、脊髄や神経を圧迫する。肥満や糖尿病の患者に発生頻度が高いが、原因の特定には至っていない。医療費助成の対象になる特定疾患に指定されており、10年度の受給者数は2万9647人。

8月

◆20128/30 網膜色素変性:目の難病、遺伝子治療 日本初、九大病院が来春にも
 『毎日新聞』西部朝刊 27頁
 九州大病院(福岡市)は29日、光を感じる網膜の視細胞が徐々に失われ、失明する恐れのある難病、網膜色素変性(色変)の患者に、日本初となる遺伝子治療の臨床研究を来春にも開始すると発表した。
 治療を計画した石橋達朗教授によると、色変は約5000人に1人の割合で起こる遺伝性の病気。約50種の遺伝子異常が原因だが、これまで有効な治療法はなかった。
 石橋教授らは、視細胞を保護するタンパク質の遺伝子を組み込んだウイルスベクター(遺伝子の運び役)を患者の網膜に注射することで、視細胞の喪失を防ぎ、視力の低下を遅らせる考え。
 まず低濃度のベクター溶液を患者5人に注射し、異常がなければ、治療に有効な濃度の溶液を患者15人に投与してそれぞれ2年間、問題がないか調べる。計画は7月、厚生労働省の厚生科学審議会の部会で承認された。
 治療には、世界で初めてサル由来のウイルスベクターを使用。ベクターは茨城県つくば市のベンチャー企業が開発した。

◆2012/8/29 ザ・新鋭:介護医療機器製造、徳永装器研究所 苦痛ない、たん吸引器
 『毎日新聞』西部朝刊 28頁
 難病患者や高齢者向けに気管内のたんを自動で吸引する機器を徳永装器研究所(大分県宇佐市)が開発した。自動たん吸引器は世界で初めてで、本人の苦痛はなく、介護側の負担も軽減されるのが特徴という。来年度には機種を増やして販売拡大する方針。
 徳永修一社長(62)は日立製作所の設計開発技術者だったが、35歳でUターン。友人の家族に難病患者がおり、介護機器を作ろうと会社を設立した。今回の開発は約11年前に医師から「たんを自動で吸引できないか」と相談されたのがきっかけ。医師のアドバイスを受けながら、試作器を作り直す作業を繰り返した。08年に薬事承認を得て、約2年前に売り出した。
 たん吸引は、チューブを気管内に挿入し断続的に勢いよく吸引する方法が一般的だ。昼夜問わず1〜2時間ごとに必要で、本人はつらく、家族ら介護者の負担も大きいという。
 自動たん吸引器は24時間、少しずつたんや唾液を吸引。気管粘膜に吸着せず、呼吸にも影響しないという。吸引の圧力や流量を簡単に調整でき、医師の管理下で患者の状況に合わせて使用できる。
 商品名は「アモレSU1」。徳永社長が好きな言葉「愛はすべてに打ち勝つ」にちなむ。1台16万円。2年間の販売実績は360台。3年後には年間1000台を目指す。

◆2012/8/23 [外部リンク]生命倫理、研究倫理を通じて研究者と患者、社会をつなぐ
 『naturejapanjobs』

◆2012/08/22 パーキンソン病:発症抑制の仕組み解明 治療に光−−都医学総研
 『毎日新聞』東京朝刊 28頁
 神経難病「パーキンソン病」の発症を抑える仕組みを、田中啓二・東京都医学総合研究所長らのチームが解明し、21日の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に発表した。原因となる細胞内の小器官「ミトコンドリア」の異常を早期に見つけることが可能になり、病気の早期発見、治療に役立つという。
 20〜30代で発症する「若年性パーキンソン病」は、二つの遺伝子が働かないことでミトコンドリアの異常が蓄積し、運動障害が起きる。
 チームは二つの遺伝子のうち「ピンク1」の働き方を調べた。正常なピンク1は、ミトコンドリアに異常が起きるとリン酸と結び付いて働き、異常ミトコンドリアが分解された。若年性パーキンソン病患者のピンク1はリン酸と結び付かず機能しなかった。チームの松田憲之主席研究員は「異常ミトコンドリアの増加や分解が進まないとき、リン酸と結びついたピンク1を検出する方法を開発すれば早期発見につながる」と話す。【永山悦子】

◆2012/08/21 医療機関限定を厚労省検討 iPS細胞使う治療
 『朝日新聞』朝刊 007頁
 医療機関限定を厚労省検討 iPS細胞使う治療
 iPS細胞(人工多能性幹細胞)などの幹細胞を使った再生医療を安全に進めるため、厚生労働省は、実施施設を人材や設備の整った医療機関に限定する仕組み作りを検討する。20日の厚生科学審議会の科学技術部会で、専門委員会の設置を決めた。来年夏にも結論をまとめ、2014年度にも新制度を導入する方針。
 京都大の山中伸弥教授が開発したiPS細胞は、体の様々な組織の細胞に変化でき、難病の治療など幅広い応用が期待され、13年度にも臨床研究が始まる。その一方で、がん化など副作用の危険もある。
 そのため、当面は、態勢が整い、不測の事態にも対応できる医療機関に限定したい考え。同省は「事故のために再生医療全体が遅れるのは避けたい」とする。
 国の指針は、幹細胞を使った臨床研究を計画する医療機関に、自前の倫理委員会と国と、二重の審査を受けることを求めている。一方、自由診療では規制はなく、科学的根拠が乏しい治療が一部で行われている。こうした医療を制限し、日本発の再生医療を育てたいとの意向がある。ただ、規制が逆に推進を妨げるとの懸念も出ている。(下司佳代子)

◆2012/08/20 難病カルテ:患者たちのいま/52 進行性骨化性線維異形成症(FOP) /佐賀
 『毎日新聞』地方版/佐賀 23頁
 ◇症状悪化で離職 在宅で働く道を模索
 神埼市の小山健司さん(37)は、母美津子さん(70)を呼ぶ。「立っている方が、楽なこともあって」。「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」を抱え足がほとんど曲がらない。介護ベッドの角度を上げ、美津子さんが支柱のようになりながら、体を少しずつ起こしていった。
 3歳の頃、口が開きにくくなり、次第に足を引きずるようになった。指をさして笑われることもあったが、そんな時は、つかみかかってケンカした「やんちゃな子供」だった。
 医師から「学校に行かせず、家で好きなことをさせた方がいい」と助言を受けたこともあるが「学校が楽しくて仕方なかった」。生活に支障が出る進行はなく、病気の自覚もなかった。高校生の頃は、病院にも行かなくなっていた。
 壁を感じたのは卒業も近くなり、運転免許を取るため教習所へ通おうとした時。相談に行った警察の担当者から「わけの分からん病気には出せない」と断られた。約2年後、適性検査に合格したことから取得できたが、当時は「死ぬごた」と強いショックを受けた。
 就職活動でも悩んだ。専門学校を卒業後、ハローワークで仕事を探すため病気を告げると「紹介できる仕事はない」と、とりつく島もなかった。知人の紹介、協力を経て、銀行の電算業務を担う会社に就職した。
 同僚の理解もあり、仕事は楽しかった。休日も満喫した。ゴルフ、野球観戦、ドライブ……。高校の旧友らと遊び回った。
 就職してから3、4年たった頃から、症状が悪化し始めた。足の骨化で膝が曲がらなくなった。座ると体がつらくなるためデスクを改造してもらい、立ったままキーボードを打った。通勤も、家族に送迎を頼むようになった。
 体のバランスが悪くなり頻繁に転ぶようになった。昨年3月、自宅で転んで頭を打ったことなどもあり「責任を取れないし、辞めてほしい」と告げられた。
 勤めて15年。やりがいもあり、充実していたので続けたかった。一方で「あまり長く持たないかもしれない。いつまで勤められるだろう」という気持ちもあり「来るときが来たか」と感じた。
 現在、一人でベッドから起き上がることはできず、トイレも食事も介助が必要だ。美津子さんは「この人の手足にならないといけない。だから、健康でいられるのかもしれませんね」と言うが、先への不安も大きい。
 失業保険が7月に切れた。「ロングバケーション、ですね」と笑いながら「仕事がしたい。受け入れてくれるなら、外に出て行きたいけれど……」。見込めない今は、パソコンの技術を活用し、在宅で働く道を模索する。【蒔田備憲】
 ◇進行性骨化性線維異形成症(FOP)
 全身の筋肉やその周囲の膜、靱帯(じんたい)などが徐々に硬くなって骨に変わる。発症は人口200万人に1人とされるが正確な患者数は不明。07年に国の難治性疾患克服研究事業の対象疾患に選ばれたが、医療費助成は対象外。詳細は研究班のホームページ(http://fop.umin.jp/index.html)。

◆2012/08/19 患者少ない病気「治療薬開発を」 遠位型ミオパチー患者、国に訴え /滋賀県
 『朝日新聞』朝刊 029頁
 手や足の先から徐々に筋力が失われる病気「遠位型ミオパチー」の患者たちが国に対し、治療薬の開発を求めて活動している。国内の患者はわずか800人ほどで、製薬会社は採算の取れない新薬開発に及び腰。現状打破のため、開発の支援制度の創設を目指しており、これを後押しする国への意見書を7月、滋賀県議会が全国に先駆けて採択した。
 県庁2階の議員室で7月4日、遠位型ミオパチー患者会の代表を務める辻美喜男さん(51)=彦根市=は約20人の議員を前に訴えた。「患者の特に少ない希少疾病用医薬品の開発を支援する法整備をして、創薬につなげてほしい」
 遠位型ミオパチーは、20〜30歳代で発症する場合が多く、全身の筋肉が次第に弱まることで、杖から車いす、そして寝たきりになり、食事やトイレなど生活全般に介助が必要になる。
 患者会は2008年に設立。原因不明だったこの病気の治療薬の開発を目指し、研究費増額や研究推進のほか、難病や特定疾患への指定を求め、街頭署名や国への要請活動を始めた。
 その後の研究で、原因が細胞の表面にあるシアル酸という糖の一種を取り込めないため、細胞がつぶれ、筋力が弱くなると判明。シアル酸の補充で進行を抑えられることも分かり、第一段階の治験で薬の安全性は確認されたが、治療薬の開発には新たに10億〜20億円の研究費がかかるという。
 患者会は、患者が特に少なく、市場規模が小さいため、新薬開発が進まない希少疾病の状況を改善しようと、開発経費を助成する法整備を国に求めている。全国の地方議会に対し、意見書の採択も求めていく。
 辻さんは「自分たちの治療薬ができればいいというのではない。ほかの希少疾病も、同じ道をたどれば治療薬ができるという道筋を作りたい」と話す。
 ●「恐怖抱えながら生活」患者会の代表、辻美喜男さん
 「一つ、またひとつ物事ができなくなる恐怖感を抱えながら生活している」。遠位型ミオパチー患者会の代表で彦根市の会社員、辻美喜男さん(51)は、治療薬の開発への道が開けない現状に焦りを感じている。
 体に異変を感じたのは大学生だった20歳のころ。印刷会社の商品を届けるアルバイトで、2〜3個持っても平気だった荷物が1個でもよろけ、少しの段差でつまずくようになった。
 最初は同じような症状が出る筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された。納得できず、鍼(はり)や柿の葉エキスなど効果があると聞いたものを次々と試したが、症状は進行した。将来に備え、大学を辞めてプログラミングを学び、就職した。
 20代後半から車いす生活に。30代半ばになると電動車いすが必要になった。筆圧も弱まり、今はパソコン画面のキーボードに親指で触れるのがやっとだ。生活全般に妻のまゆみさん(52)の介助が欠かせない。
 「その時々にできることを大事にして過ごしてきたから、悲観的に考えた時期はあまりなかった」。ただ、今年成人式を迎えた長女が生まれた時、しっかり抱きしめられなかった時はやるせなかったという。
 インターネットで患者同士の集まりを知った。患者会の設立から半年後の2008年10月、周囲に推されて2代目の代表に就いた。活動には患者仲間の将来がかかる。「治療法は今、基礎研究と臨床試験の間の『死の谷』に落ち込んでいる。何とかはい上がらせたい」(千種辰弥)

◆2012/08/17 難病、助成の病気拡大へ 認定は重症度加え厳しく
 『朝日新聞』朝刊 003頁
 厚生労働省の難病対策委員会は16日、難病患者への医療費助成の対象となる病気を拡大したうえで、重症度などをもとに認定基準を作るよう求める中間報告をまとめた。難病でありながら対象外だった病気の患者に間口が広がる一方、対象の病気でも症状の軽い患者は助成額が今より減る可能性も出てくる。
 難病は5千〜7千疾患あると言われているが、医療費助成の対象は56疾患70万人に限られている。新たに対象となる病気や、具体的な助成内容や基準は今後詰める。厚労省は安定して予算を確保するため法制化も検討する。
 難病の医療費助成は原因不明の病気の研究の一環として1972年に8疾患を対象にスタート。国と都道府県が医療費の自己負担分の全額や一部を助成している。患者が年々増え続けて予算が追いつかないことや、対象外の病気との公平性が課題になっている。
 中間報告では、医療費の助成対象となる病気について、従来と同様に(1)患者が少ない(2)原因不明(3)治療法が未確立(4)長期療養の計4条件を満たすと規定。そのうえで、治療法などの進歩により病状が改善できるようになった病気は、定期的に見直すよう求めた。
 さらに、個別の患者が対象になるかどうかは、重症度などの基準を設け、専門医の診断が必要とした。
 医療費助成の今年度の総事業費は1278億円になる見込み。国と都道府県が半分ずつ負担することになっているが、国は予算を確保できず、都道府県の持ち出しが続いている。助成対象の56疾患も含め国が研究費を出している難病は130疾患で、750万人の患者がいる。さらに、実態把握などをする研究対象が234疾患あり、患者から医療費助成の対象に含めるよう求められている。
 委員会はこのほか、助成対象になっている入院時の食事などの見直しを検討するよう提言。各種割引を受けられる「難病手帳」の創設や拠点病院のあり方もさらに議論する。
 委員でもある伊藤たてお日本難病・疾病団体協議会代表理事は「難病を限定せず対象を幅広くとらえられたのは前進。その人の状態に合った必要な支援を得られる制度になるようにしたい」と話した。(佐々木英輔)

◆2012/08/17 人工遺伝子:難病抑制、「肺線維症」の新薬に期待 三重大グループ、開発し特許取得
 『毎日新聞』中部夕刊 6頁
 三重大医学部のガバザ・エステバン教授(免疫学)らの研究グループは16日、難病指定されている肺線維症などの原因となるたんぱく質抑制に効果を持つ新たな人工遺伝子を開発し、共同研究した福岡県久留米市の創薬会社「ボナック」とともに特許を取得したと発表した。
 グループによると、「リボ核酸(RNA)干渉」という現象を利用して、病気を引き起こすたんぱく質をつくる作用を持つ遺伝子を抑えるため、合成した2本のRNAをかみ合わせて別の遺伝子「siRNA」を人工的につくり、新薬につなげる研究が世界各地で行われている。
 グループは今回、独特の塩基配列を持った1本鎖のRNAをつくることに成功。このRNAが自然に変化してできる「nkRNA」などと呼ばれる新たな人工遺伝子を、発症したマウスに投与した結果、siRNAを投与した場合と同等の抑制効果が確認された。
 新しい人工遺伝子をつくるには、siRNAと比べて時間や費用がかからないという。グループの三重大医学部付属病院呼吸器内科の小林哲講師は「3〜5年で、日本オリジナルの新薬開発につなげたい」としている。

◆2012/08/17 難病:助成の拡大提言、対策委が中間報告 厚労省、年内にも結論
 『毎日新聞』西部朝刊 26頁
 厚生労働省の難病対策委員会は16日、国が医療費を助成する難病の指定対象を拡大することを視野に入れ、難病対策の制度を見直すべきだとする中間報告をまとめた。
 これまで対象から漏れ、多額の医療費負担を強いられてきた患者を救済するのが狙い。厚労省は医療費や研究費の助成をしたことのある約400疾患について、患者数や治療技術の確立状況を評価して抜本的に見直し、年内をめどに新たな助成対象を決める。
 今後の検討次第では国の医療費助成を受ける「特定疾患治療研究事業」の対象が現行の56疾患から大幅に拡大する。しかし、中間報告では給付水準の見直しを求める記述もあり既に助成を受けている患者からは、対象から外されたり支給額が削減されたりすることへの懸念が出そうだ。
 厚労省によると、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病など56疾患での受給者数は10年度末で約70万人、本年度の総事業費は国と都道府県で計1278億円を見込む。
 対象範囲の拡大には財源の確保が必要で、厚労省は来年度の予算要求に向け財務省との調整を続ける。
 中間報告には今後の検討課題として、専門性の高い拠点病院の整備や難病患者への就労支援の仕組みづくり、治療が長期間で医療費負担も高額になる疾患を抱えた小児が成人後も十分な支援を受けられる制度の在り方などが盛り込まれた。

◆2012/08/17 難病:指定、抜本見直し 対象の拡大視野−−厚労省委中間報告
 『毎日新聞』大阪朝刊 26頁
 厚生労働省の難病対策委員会は16日、国が医療費を助成する難病の指定対象を拡大することを視野に入れ、難病対策の制度を見直すべきだとする中間報告をまとめた。
 これまで対象から漏れ、多額の医療費負担を強いられてきた患者を救済するのが狙い。厚労省は医療費や研究費の助成をしたことのある約400疾患について、患者数や治療技術の確立状況を評価して抜本的に見直し、年内をめどに新たな助成対象を決める。
 今後の検討次第では国の医療費助成を受ける「特定疾患治療研究事業」の対象が現行の56疾患から大幅に拡大する。しかし、中間報告では給付水準の見直しを求める記述もあり、既に助成を受けている患者からは、対象から外されたり支給額が削減されたりすることへの懸念が出そうだ。
 厚労省によると、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病など56疾患での受給者数は10年度末で約70万人、本年度の総事業費は国と都道府県で計1278億円を見込む。対象範囲の拡大には財源の確保が必要で、厚労省は来年度の予算要求に向け財務省との調整を続ける。
 ◇難病対策委の中間報告の骨子◇
・難病の定義は幅広にとらえるが、対象は比較的まれな疾病を選定すべきだ
・医療費助成の対象疾患は範囲拡大を含め見直し。対象患者の選定に重症度などの基準を設定。給付水準の見直しを検討する必要がある
・都道府県は拠点的な医療機関を整備。ネットワークを充実させる
・小児慢性特定疾患の患者には、成人後も切れ目のない支援を検討

◆2012/08/17 難病:助成対象拡大へ 給付水準見直しも−−厚労省委中間報告
 『毎日新聞』東京朝刊 26頁
 厚生労働省の難病対策委員会は16日、国が医療費を助成する難病の指定対象を拡大することを視野に入れ、難病対策の制度を見直すべきだとする中間報告をまとめた。
 これまで対象から漏れ、多額の医療費負担を強いられてきた患者を救済するのが狙い。厚労省は医療費や研究費の助成をしたことのある約400疾患について、患者数や治療技術の確立状況を評価して抜本的に見直し、年内をめどに新たな助成対象を決める。
 今後の検討次第では国の医療費助成を受ける「特定疾患治療研究事業」の対象が現行の56疾患から大幅に拡大する。しかし、中間報告では給付水準の見直しを求める記述もあり、既に助成を受けている患者からは、対象から外されたり支給額が削減されたりすることへの懸念が出そうだ。
 厚労省によると、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病など56疾患での受給者数は10年度末で約70万人、本年度の総事業費は国と都道府県で計1278億円を見込む。近年は国の事業予算の伸びが鈍く、地方の負担が深刻化している。対象範囲の拡大には財源の確保が必要で、厚労省は来年度の予算要求に向け財務省との調整を続ける。中間報告には今後の検討課題として、専門性の高い拠点病院の整備などが盛り込まれた。

◆2012/08/17 難病治療 助成を拡大 厚労省委、年内めどに対象決定
 『読売新聞』東京朝刊 29頁
 症例が少なく治療法が見つかっていない難病の患者支援制度の改革を議論している厚生労働省の専門家委員会は16日、現在は56の難病に限られている医療費助成の対象を拡大することを柱とした中間報告をまとめた。年内をめどに、新たに助成対象とする難病の種類や数などを決める。
 難病は現在、国が治療法の研究を推奨しているものなどを含めて約400種類あるが、医療費助成の対象はパーキンソン病や潰瘍性大腸炎など56にとどまっており、不十分だと指摘されてきた。
 同省は予算を確保するために、法整備も検討するという。
 中間報告では、助成対象の難病について、〈1〉症例が比較的少なく、全国規模の研究でなければ対策が進まない〈2〉原因不明〈3〉効果的な治療法が確立されていない〈4〉患者は長期療養が必要??の4要素に当てはまるものとし、「対象範囲の拡大を含めた見直しには、より公平に対象を選定する必要がある」とした。

◆2012/08/17 肺線維症進行抑止の人工遺伝子を開発 三重大研究グループ=中部
 『読売新聞』中部朝刊 25頁
 三重大のガバザ・エステバン教授らの研究グループは16日、特定のたんぱく質の生成を抑える新たな人工遺伝子を開発したと発表した。マウスを使った実験で、肺が縮んで硬くなる難病「肺線維症」の進行を抑える効果を確認したという。研究成果は、16日付の米科学誌「プロスワン」電子版に掲載された。
 肺線維症は、肺の組織が硬くなり、酸素と二酸化炭素の交換ができずに呼吸不全につながる難病。5年生存率は3割と低く、有効な治療法がなかった。
 グループは昨年、欧米に基本特許のある人工遺伝子を使って同様の成果を上げている。今回新たに開発した人工遺伝子は分子構造が壊れにくいのが特徴で、日本で特許を取得したため、国内でのスムーズな医薬品開発が期待できるという。今後、福岡県久留米市の企業と共同で開発を進め、3?5年後の完成を目指す。

◆2012.08.14 ALS:進行抑制、遺伝子を特定−−岐阜薬科大など
 『毎日新聞』東京朝刊 24頁
 岐阜薬科大を中心とする6大学などでつくる研究グループは、「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)の進行を遅らせる遺伝子「膜貫通糖たんぱく質nmb」(GPNMB)を突き止めたと発表した。岐阜薬科大の原英彰教授は「ALSの進行を遅らせる治療薬開発の手掛かりになる」と話している。
 ALSは、筋肉が萎縮して動かなくなる国指定の難病。進行が速く、発症後3〜5年で呼吸筋のマヒで死亡することもある。有効な治療法は確立されていない。約1割が遺伝性という。
 グループは、ALSを引き起こす遺伝子を組み込んだマウス十数匹に、遺伝子組み換え技術でGPNMBを多く組み込んだ。組み込んでいないマウスと比べて最大約10日長生きしたことから、進行を遅らせる効果が分かったという。13日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に掲載された。【立松勝】

◆2012/08/13 ALSを抑制、たんぱく質特定 岐阜薬科大など、新薬開発に期待
 『朝日新聞』夕刊 010頁
 全身の運動神経が徐々に衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者の体内で増加し、進行を遅らせる働きがあるたんぱく質を、岐阜薬科大などの研究チームが特定した。新薬の開発や病気の早期発見につながることが期待される。13日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)で発表した。
 このたんぱく質は「膜貫通糖たんぱく質nmb」(GPNMB)。岐阜薬科大薬効解析学研究室の原英彰教授らの研究チームが、ALSの原因遺伝子の一つとされる酵素SOD1の変異型遺伝子を過剰に発現させたマウスを調べたところ、GPNMBが通常より多くなっていた。
 さらに、このマウスにGPNMBを過剰に発現させたところ、通常のマウスよりも病気の発症時期が遅くなり、生存期間も長くなることが判明。GPNMBを細胞に加えると運動神経細胞への障害が改善されるほか、ALS患者の血清や脳脊髄(せきずい)液などでGPNMBの発現量が増えることもわかった。
 このため研究チームは、GPNMBがALSの発症や病態に深く関わり、運動神経細胞の障害を防ぐ役割があると結論づけた。
 長年ALSを研究する宮崎大の西頭英起教授(生化学)は「早い段階で診断できれば発症前に治療を始められる可能性もあり、非常に効果がある」と話している。
 (田嶋慶彦)

◆2012/08/13 ALSの進行抑制、たんぱく質特定 岐阜薬科大など 【名古屋】
 『朝日新聞』朝刊 026頁
 全身の運動神経が徐々に衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者の体内で増加し、進行を遅らせる働きがあるたんぱく質を、岐阜薬科大などの研究チームが特定した。新薬の開発や病気の早期発見につながることが期待される。13日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)で発表した。
 このたんぱく質は「膜貫通糖たんぱく質nmb」(GPNMB)。岐阜薬科大薬効解析学研究室の原英彰教授らの研究チームが、ALSの原因遺伝子の一つとされる酵素SOD1の変異型遺伝子を過剰に発現させたマウスを調べたところ、GPNMBが通常より多くなっていた。
 さらに、このマウスにGPNMBを過剰に発現させたところ、通常のマウスよりも病気の発症時期が遅くなり、生存期間も長くなることが判明。GPNMBを細胞に加えると運動神経細胞への障害が改善されるほか、ALS患者の血清や脳脊髄(せきずい)液などでGPNMBの発現量が増えることもわかった。
 このため研究チームは、GPNMBがALSの発症や病態に深く関わり、運動神経細胞の障害を防ぐ役割があると結論づけた。
 ALSには1年間で10万人に1〜2人が新たにかかり、現在国内の患者数は約8500人にのぼるとされている。
 ALSの診断は発症後、他の病気の可能性も検討しながら判断されてきた。研究チームは、ALS患者の体内でGPNMBの増加が確認できれば症状が本格的に発症する前の診断や早期の治療につながるとみて、新たな治療薬の開発などを進める。
 長年ALSを研究する宮崎大の西頭英起教授(生化学)は「ALSの問題は、運動神経細胞が死んでいくこと。早い段階で診断できれば発症前に治療を始められる可能性もあり、非常に効果がある」と話している。(田嶋慶彦)

◆2012/08/13 ALS:進行遅らす遺伝子究明 岐阜薬科大など、チームマウス実験で効果確認
 『毎日新聞』中部朝刊 22頁
 岐阜薬科大を中心とする6大学と大学病院などでつくる研究グループは、「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)の進行を遅らせる遺伝子「膜貫通糖タンパク質nmb」(GPNMB)を突き止めたと発表した。岐阜薬科大の原英彰教授は「ALSの進行を遅らせる治療薬開発の手掛かりになる」と話している。
 ALSは、筋肉が萎縮して動かなくなる国指定の難病。進行が速く、発症後3〜5年で呼吸筋のマヒで死亡することもある。人工呼吸などによる延命は可能だが、有効な治療法は確立されていない。約1割が遺伝性という。
 研究グループは、ALSを引き起こす遺伝子を組み込んだマウス十数匹に、遺伝子組み換え技術でGPNMBを多く組み込んだ。組み込んでいないマウスと比べて最大約10日長生きしたことから、進行を遅らせる効果が分かったという。
 13日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に掲載される。【立松勝】

◆2012/08/13 筋肉が徐々に萎縮 難病ALS 進行抑制たんぱく質発見 岐阜薬科大など=岐阜
 『読売新聞』中部朝刊 23頁
 岐阜薬科大などの研究グループは、全身の筋肉が徐々に萎縮する難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の進行を抑えるたんぱく質を発見したと発表した。新しい治療薬の開発につながる成果としている。研究成果は英科学誌「ネイチャー」の姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ」の13日付電子版に掲載される。
 グループは、ALSを発症させたマウスを使った実験で、「膜貫通糖たんぱく質(GPNMB)」と呼ばれる遺伝子を働かせると、ALSの進行を抑制できることを突き止めた。GPNMBを働かせたマウスは、働かせないマウスよりも発症時期が遅く、生存期間が10日ほど長くなった。さらに、運動神経細胞にGPNMBを加えたところ、障害が改善されたとしている。
 また、遺伝性でないALS患者の脊髄の組織などに、GPNMBが多く含まれていることも確認。同大の原英彰教授(薬効解析学)は「ALSは早期に発症を把握することが難しく、治療が遅れる例も多い。GPNMBの研究が進めば、早期の診断が可能になる」と指摘。今後、発症のメカニズムの解明とともに、早い時期に患者に治療の手を差し伸べることもできると期待している。
 〈筋萎縮性側索硬化症=ALS〉
 運動神経が徐々に機能を失い、次第に全身の筋肉が動かなくなる難病。国内には約8500人の患者がいるとされるが、詳しい原因は不明で、有効な治療法も見つかっていない。

◆2012.08.12 難病カルテ:患者たちのいま/51 若年性パーキンソン病 /佐賀
 『毎日新聞』地方版/佐賀 21頁
 ◇「働く姿見てほしい」 病気隠さず前向きに
 佐賀市のJR佐賀駅前の駐輪場で、原武禎治さん(53)=福岡県久留米市=が腕や首を小刻みに震わせ、自転車の整理をする。汗をぬぐい、ツエを使って一歩ずつ歩きながら、見回し、時には顔なじみの利用者と笑顔で言葉を交わす。
 専門学校卒業後、電気関係の会社に勤めたが、東京へ行き、子供たちに影絵を披露する児童劇団に所属した。固定給は月7万円程度。月の半分は北海道から沖縄までマイクロバスに乗って巡業した。
 1990年ごろ、影絵を表現する際、右手の人さし指がうまく動かなくなった。病院を巡り原因を探し求めた中で約1年後、「パーキンソン病の疑いがある」と診断された。ただ、自覚症状も強くなかったため、それ以降約3年間、通院せずに過ごした。
 営業担当に配置転換され、九州担当として地元に戻った約15年前、正式に「若年性パーキンソン病」と診断された。次第に手の震えが強くなり、営業先の担当者から「アルコール中毒ですか」と言われたりもした。
 約10年前、勤務中に交通事故に遭った。上司から「病気があるから事故を起こしたのではないか」と責められた。退職せざるをえなくなった。
 自暴自棄になり、やる気がなくなった。足を上げにくくなり、つまずくことも多くなったことから、外に出るのが怖くなった。家にこもり、テレビを眺めてばかりいた。
 仕事がなかったことが一番つらかった。「白い目で見られている気がした」。ハローワークに行き就職活動もしたが、不合格が続いた。後ろめたかった。
 転機は、同じ病気の患者から誘われ、県難病相談・支援センターに行ったこと。アルバイトの誘いを受け、飛びついた。
 今の仕事は、収入の手段であるとともに「社会貢献」につながると思っている。「病気があっても働くことができる姿を示したい。偏見をなくしたいから」と、病気であることを隠さず「どんどん見せていく」と決めている。「いずれあなたも、病気になるかもしれない」。そんなメッセージも込めている。
 仕事への思いは、自信にもつながった。身の回りのことを自分でこなすため、平日は午前4時半に起き1時間かけて着替え、1時間かけて食事をする。生活のリズムをつかむことで「前向きに生きられる」と思える。
 「一生懸命生きることが、格好良い」が信条。「生きていてよかった、と思える人生にしたいから、自分に負けないよう頑張りたいんです」【蒔田備憲】
 ◇若年性パーキンソン病
 症状はパーキンソン病と同じ。脳内でドーパミンという神経伝達物質を作る神経細胞が減ることで、体の震えが出たり動作が緩慢になったりする。通常のパーキンソン病は50〜65歳の発症率が高いが、40歳未満で発症するケースを若年性パーキンソン病と呼ぶ。ハリウッドスターのマイケル・J・フォックスが発症したことも有名。

◆2012/08/12 筋萎縮性の難病 原因遺伝子特定 東大などのチーム
 『読売新聞』東京朝刊 30頁
 全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の一種とされる難病「近位型遺伝性運動感覚ニューロパチー」の原因遺伝子を、東京大と徳島大などの研究チームが発見した。ALS治療薬の開発などへの応用も期待される成果。米遺伝学誌に掲載された。
 東大の辻省次教授と徳島大の梶龍兒(りゅうじ)教授らは、この病気の患者らのゲノム(全遺伝情報)を調査。その結果、13人の患者は全員、「TFG」と呼ばれる遺伝子が変異していることが判明した。TFGを人の細胞で人工的に変異させる実験では、細胞内に特定のたんぱく質が異常にたまっていることもわかった。
 TFGは、細胞内で、こうしたたんぱく質が分解される部分へ運ぶ役割を担っている。研究チームは、TFGの変異で運搬機能が低下した結果、たんぱく質の異常な蓄積が起き、筋肉を動かす細胞が働かなくなると見ている。たんぱく質の蓄積はALS患者でも確認されている。

◆2012/08/10 富山大病院:「モヤモヤ病」手術成功 5歳女児、笑顔の退院 /北陸
 『毎日新聞』地方版/石川 24頁
 富山大病院(富山市)の黒田敏医師(脳神経外科)らがこのほど、脳の血管が細くなる難病「モヤモヤ病」を患ったデンマークの5歳女児の手術に成功した。3日に退院した女児は「帰ったら、幼稚園で友達と会いたい。大好きな乗馬や水泳をするのが楽しみ」と笑顔を見せた。
 モヤモヤ病は脳の血管が細くなり血流が行き届かず、頭痛や手足の脱力発作を起こす。女児はビクトリアちゃんで、3歳のころに脳梗塞(こうそく)を2度発症し、右半身の脱力発作が現れた。ドイツでの手術後も発作が続いたため、約200回の手術経験がある黒田医師を頼って6月に来日した。
 今回、脳の血流を確保するバイパス手術を2度受けた後は、発作もほとんどなく、順調に回復しているという。
 モヤモヤ病は、脳卒中や脳梗塞の可能性が高まる。東アジアで発症例が多く、日本は治療の実績を積んでいる。

◆2012/08/10 毎日起業家新聞:成長ホルモン剤注入、ボタン一つで手軽に−−日本ケミカルリサーチ
 『毎日新聞』東京朝刊 13頁
 難病治療のオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の研究開発に取り組む日本ケミカルリサーチ(JCR、兵庫県芦屋市、芦田信会長兼社長)は、成長ホルモン製剤の電動式注入器を医療機関向けに新発売した。対象は成長障害の「成長ホルモン分泌不全性低身長症」の患者で、これまで注射の前に手作業でしていた粉末状の薬と液体を混ぜる溶解操作が、ボタン一つでできるようになったという。
 新発売の注入器「グロウジェクター2」=写真=は、ハンディータイプで「パナソニックヘルスケア」(東京都港区)と共同開発した。ボタンを押すと針を刺し、製剤を注入、抜針。針が器具で隠されているため、注射の苦手な子どもの恐怖心を和らげられるという。新製品は従来、手作業だった刺針以前の溶解操作を自動化。JCRは「微妙な力加減やスピード調整が不要になり、液漏れなどを減らし、より患者さんの使い勝手の良さを目指しました」とPRする。
 成長ホルモン製剤は、ホルモン分泌の少ない低身長症の子どもに投与。就学前や小学校低学年の患者が、平均的な身長に伸びるまで、毎日のように家族の手助けなどを受けながら注射。より確実さが求められていた。

◆2012/08/06 細胞活性の要 セマフォリン 過不足、症状悪化に影響も
 『読売新聞』大阪朝刊 31頁
 「アトピー性皮膚炎が治る」「骨粗しょう症を防ぐ」「多発性硬化症の診断・治療に役立つ」「脊髄損傷の治療に道」??。どれも体内に存在する「セマフォリン」というたんぱく質について、最近、相次いで発表された研究成果だ。セマフォリンとはどんな物質で、なぜ急に研究が進み出したのだろうか。(今津博文)
 ◇神経の手旗信号
 発見は1990年代初頭。神経細胞を培養すると、細長い突起が四方八方に伸びて別の神経細胞とつながろうとするが、この時、近くにセマフォリンを出す細胞があると、突起はその細胞を避けることがわかった。
 セマフォリンの語源はsemaphore(手旗信号)。船から船へ情報を伝えた手旗信号のように、セマフォリンは細胞から細胞へ「こちらへ来るな」という信号を送っていたのだ。
 セマフォリンは、神経細胞が正しい回路を作るよう<道案内役>を果たし、脳などの神経回路を形成するうえで重要な物質と考えられるようになった。
 ◇免疫にも働く
 ところがセマフォリンの役割は、それだけではなかった。
 大阪大の熊ノ郷淳教授らは96年、ウイルス感染などから体を守る抗体を作る「B細胞」の働きが、セマフォリンによって活性化されていることを発見。この物質がないマウスは免疫の働きが弱く、逆に多すぎるマウスでは、免疫が自分自身の体を攻撃する多発性硬化症などの自己免疫疾患を発症したのだ。
 同大学の中辻裕司講師らは今年5月、血中のセマフォリン濃度が高い多発性硬化症の患者には現在主流の治療薬が効きにくく、逆に症状が悪化する場合もあることを突き止めた。
 米国では昨年、この物質を抑制する薬を多発性硬化症の治療薬とする臨床試験が始まるなど、臨床応用への動きも加速している。
 ◇ブレークした研究
 セマフォリンの多様な働きがわかってくると、様々な病気の研究者が注目。研究が一気に進んだ。
 慶応大の福田恵一教授らは2007年、胎児の段階でセマフォリンに過不足があると不整脈になりやすくなることを、マウスの実験で突き止めた。「手旗」の機能が狂い心臓の拍動を制御する交感神経の配置がおかしくなるという。
 横浜市立大の五嶋良郎(ごしまよしお)教授らは08年、アトピー性皮膚炎のマウスの皮膚にセマフォリンを注射すると、かゆみが改善されることを明らかにした。
 今年5月には東京大の高柳広教授らが、骨粗しょう症のマウスにセマフォリンを注射すると、骨の状態が大幅に改善されることを発表した。骨を再生する細胞を活性化するからだという。
 体内物質の運搬も担っていた。大阪大の豊福利彦准教授らは3月、セマフォリンが栄養素を運び、視細胞を保護している仕組みを解明した。欠損すると、失明につながる難病「網膜色素変性症」を発症する。
 セマフォリンは、がん細胞の動きを活発にし、転移しやすくする。逆にセマフォリンの濃度を低くすればがん細胞は不活化することになる。熊ノ郷さんは「特に治療が難しい肺がんの転移を抑え込めるような薬の開発につなげたい」と話している。
 ◇多彩な役割、なぜ? 
 セマフォリンは約30種類見付かっている。共通して風車のような形の構造を持っている。細胞の表面にある別のたんぱく質(受容体)と緩やかに結合するのが特徴だ。セマフォリンと受容体がくっついたり離れたりすると、細胞の内側で何らかの変化が起こり、信号が伝わるらしい。
 セマフォリンはなぜ、これほど多彩な働きをし、幅広い組織や病気とかかわっているのだろうか。
 セマフォリンの立体構造の解析に取り組む大阪大の高木淳一教授は「共通する点は、細胞が体内をダイナミックに動く時に働いていることだ。動物の体が複雑になるにつれて細胞の動きの制御が重要になり、役割が多様化していったのではないか」と話す。
 ◇脊髄損傷治療に光見える 
 セマフォリンは、神経が伸びてくるのを阻むことにより、無秩序な配線を防ぐらしい。京都大の生沼泉助教らは、マウスの実験で、神経の突起の<骨格>となる物質を消失させて伸びを防ぐ仕組みを突き止めた。
 脊髄損傷の場合は、この仕組みは、切れた神経の再生に邪魔になる。セマフォリンの働きを少し弱めてやれば、脊髄損傷の治療が可能になるかもしれない。
 慶応大の岡野栄之教授らと大日本住友製薬は、セマフォリンの働きを阻害する化合物を発見。脊髄損傷のラットに4週間投与すると傷ついた神経が一部再生し、後ろ足の動きが改善したという。 (木須井麻子、今津博文)

◆2012/08/03 神経の難病、治療薬に道 iPS細胞から有効な物質 京大チーム
 『朝日新聞』朝刊 038頁
 全身の運動神経が衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者のiPS細胞から運動神経の細胞をつくり、薬の候補となる化合物を見つけることに京都大チームが成功した。ほかの病気も含め患者のiPS細胞をもとに治療効果のある物質にたどり着いたのは初めてという。
 米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(電子版)で2日、報告した。京大iPS細胞研究所の井上治久准教授(神経内科)らは、特定のたんぱく質をつくる遺伝子に生まれつき異常がある50代の患者3人に皮膚を提供してもらい、iPS細胞から運動神経の細胞をつくった。
 この細胞は多くのALS患者の運動神経細胞と同じ特徴をもち、患者でない人からつくった細胞に比べて突き出ている突起が短く、老化につながるような刺激を与えると細胞死が起きやすかった。
 このたんぱく質に異常があると、遺伝子素材のリボ核酸(RNA)がうまくつくれなくなることがわかった。そこで、RNAづくりに関係する4種類の化合物を細胞に加えると、カシューナッツの殻に含まれるアナカルジン酸を使ったときに突起が長くなり、細胞死が起きにくくなるなど、正常に近づいた。
 アナカルジン酸の安全性はよく分かっておらず、そのまま治療に使えるかは不明。チームは今後、効果の仕組みや副作用について調べ、治療薬につなげたいという。
 (鍛治信太郎)

◆2012/08/02 (追う)計画停電、どうなる 難病患者に発電機届かず /佐賀県
 『朝日新聞』朝刊 033頁
 九州電力管内の原発が止まっている中、電気の需要が高まり供給が追いつかなくなりそうになると計画停電が実施されることになっている。電気が欠かせない難病患者や畜産関係者の不安は大きいが、九電の対応は遅い。一方、梅雨明け以降、猛暑が続くが、電力供給に余裕はあり、計画停電の可能性は低そうだ。
 「停電は未知の世界。体調を崩さないか心配だ」
 全身の筋肉が衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を患う佐賀市大和町の中野玄三さん(57)は不安を口にする。2006年から人工呼吸器で命をつなぐ。機材の熱で室温が上がらないよう、エアコンは常にかけっぱなしだ。
 停電になると、人工呼吸器は予備電源で10時間以上はもつが、エアコンは使えなくなる。「熱中症も怖いし、機材が止まらない保証はなく不安は大きい」
 県などによると、停電の対象地区に住む難病患者のうち、自宅でたん吸入器を使う6人が予備電源を持たず停電時間を持ちこたえられない可能性がある。
 九電から発電機を借りられる。当初、県は「梅雨明けごろには配備を済ませる」としていたが、まだゼロだ。九電によると、発電機による電力は周波数が変動する恐れがあり、設置時にはたん吸入器のメーカーと看護師の立ち会いが必要という。九電は「立ち会いの日程調整ができておらず、完備のめどが立っていない」と釈明する。配備が間に合わずに計画停電になった場合は病院への搬送も計画しているという。
 これに対し、NPO法人県難病支援ネットワークの三原睦子理事長(52)は「配備済みと思っていたので驚いた。本来は計画停電の対象期間前にすべきことで、人の命をなんと思っているのか。早急に配備するべきだ」と批判した。
 約1万5千羽の鶏を飼う佐賀市の増田養鶏場の増田朝子さん(60)は「鶏は暑さにすごく弱い。ストレスを感じて産卵に影響が出ないか心配だ」と話す。鶏舎では33度を超えると自動的に扇風機が回り、空気を循環させ、30度以下に保つ仕組みを導入している。
 停電になれば、散水したり、鶏の飲み水を常に入れ替えて冷たさを保ったりするというが、どこまで有効なのかは不明だという。
 県内では猛暑となった10年7〜9月に計3万7千羽の鶏が死んだ。県では、鶏舎の風通しを良くするほか、屋根に消石灰を塗ったり散水したりすることで照射熱を緩和するよう呼び掛けている。
 ●猛暑でも供給に余力
 九電は「計画停電は万が一の備え」として実施の可能性は低いとしている。
 九電で今夏最大の電力需要となったのは佐賀や福岡などで35度を超える猛暑となった7月26日で1521万キロワット。当日の最大供給力1627万キロワットに比べ約7%余裕があった。
 また、佐賀市で今年最高の37・3度を記録した31日は最大供給力1681万キロワットに対し、最大電力需要は10%ほど低い1509万キロワットにとどまった。
 九電管内では、気温が1度上がると、電力需要は40万キロワットほど増えるとされているが、他社からの電力の融通が期待できるため、中・西日本全体で相当な猛暑にならない限りまかなえるとみられる。
 このまま節電効果が続けば、計画停電の実施確率は極めて低くなる。
 仮に実施する場合、九電は前日の午後6時をめどに「予告」をして対象地域や時間帯を発表。当日は2時間前までに実施を決定する。対象地区には広報車を走らせて周知徹底を図る。
 県では、供給予備率が1%を下回る見通しになると対策本部を設置し、問い合わせ窓口を開くほか、防災・防犯情報をメールで知らせる「防災ネットあんあん」でも情報を流す。九電は臨時窓口(0120・187・333、平日午前9時〜午後8時)を設けたほか、県内の各営業所でも、問い合わせに応じている。
 計画停電になった場合は、飲料水の確保や家電製品の取り扱いに注意が必要だ=表参照。ただ、これらは台風など通常の防災対策と変わらず、計画停電だからといって新たな対策が必要になるわけではない。
 (東郷隆)
 ●信号ほぼ停止、交差点に注意
 昨年、東京電力管内であった計画停電では、交差点や踏切で事故が起きた。
 県警によると、県内の信号のうち自家発電装置があるのは3%ほど。危険な交差点から順次、発電機や警察官を配置して対応するが、台数や人数が限られるため、ほとんどカバーできない。県警では「速度を落として、安全運転を心がけて欲しい」と呼び掛けている。
 一方、JR九州によると、管内の踏切の約4割が停電の対象だが、非常用の蓄電池が備え付けられており、停電の2時間は持ちこたえられるという。
 □万が一の計画停電で注意が必要なこと(注意事項、主な対策の順)
 【事前準備】 熱中症予防のため飲料水や保冷剤を用意。ラジオの乾電池の用意や携帯電話の充電をしておく
 【水】 停電対象地区の一軒家では基本的に水は出る。電動ポンプを使う高層マンションやビルでは断水の可能性。飲料水やトイレ用水のくみ置きを
 【食品】 冷蔵・冷凍庫が使えなくなる。庫内温度の上昇を防ぐため扉の開閉は最小限に。事前に保冷剤や氷を入れて温度変化も小さくする
 【防犯・火災】 マンションのオートロックが解除され、火災報知機が作動しなくなる可能性も。夜間停電の可能性は低いが、懐中電灯の用意も
 【エレベーターやコインパーキング】 昨年、東京電力管内であった計画停電ではエレベーター内に人が閉じ込められる事故が発生し、駐車場では車が出られなくなった。停電時間帯の使用は避ける
 【家電製品】 ドライヤーや電子レンジなどの電気機器は停電解消後の加熱で火災の危険性。プラグをコンセントから抜いておく。出かける際はブレーカーを切っておくとよい
 【停電解消の確認】 冷蔵庫のモーター音やインターネット回線のルーターランプ点灯で確認できる。隣近所が通電しているのに停電している場合は九電に連絡を

◆2012/08/02 iPS細胞からALS薬の候補 京大チームが発見 【大阪】
 『朝日新聞』朝刊 033頁
 全身の運動神経が衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者のiPS細胞から運動神経の細胞をつくり、薬の候補となる化合物を見つけることに京都大チームが成功した。患者のiPS細胞をもとに治療効果のある物質にたどり着いたのは初めてという。
 米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(電子版)で2日、報告する。
 京大iPS細胞研究所の井上治久准教授(神経内科)らは、特定のたんぱく質をつくる遺伝子に生まれつき異常がある50代の患者3人に皮膚を提供してもらい、iPS細胞から運動神経の細胞をつくった。
 この細胞は多くのALS患者の運動神経細胞と同じ特徴をもち、患者でない人からつくった細胞に比べて突き出ている突起が短く、老化につながるような刺激を与えると細胞死が起きやすかった。このたんぱく質に異常があると、遺伝子素材のリボ核酸(RNA)がうまくつくれなくなることがわかった。そこで、RNAづくりに関係する4種類の化合物を細胞に加えると、カシューナッツの殻に含まれるアナカルジン酸を使ったときに突起が長くなり、細胞死が起きにくくなるなど、正常に近づいた。
 アナカルジン酸の安全性はよく分かっておらず、そのまま治療に使えるかは不明。チームは今後、効果の仕組みや副作用について調べ、治療薬につなげたいという。(鍛治信太郎)

◆2012.08.02 iPS細胞:ALS治療に道 神経突起、修復物質確認−−京大研究所
 『毎日新聞』大阪朝刊 2頁
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬開発につながる物質を、患者から作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って世界で初めて確認したと、京都大iPS細胞研究所の井上治久准教授(神経内科)らが発表した。「アナカルジン酸」という物質で、神経の異常を改善する働きがあるという。米科学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」電子版に1日掲載された。【榊原雅晴】
 ALSは脳の指令を筋肉に伝える神経細胞(運動ニューロン)に異常が生じ、徐々に全身の筋肉が動かなくなる難病。国内の患者は約8500人とされ、有効な治療法がない。
 研究グループはALS患者のiPS細胞から分化した運動ニューロンの性質を調べた。その結果、信号を伝える神経突起の長さが正常な場合の約半分しかなく、細胞質に「TDP―43」という特殊なたんぱく質が凝集するなど、実際の病理組織と同じ特徴が観察された。このたんぱく質が増えると、神経細胞の形成に関係する遺伝子の働きに異常が生じることも分かった。
 さらに各種の試薬をニューロン細胞の培養液に加える実験を繰り返した結果、アナカルジン酸が「TDP―43」の合成を抑えることが判明。神経突起の長さも16時間後には通常の長さに回復した。
 井上准教授は「動物実験でなく、患者のiPS細胞から作ったニューロンで効果を確認した意味は大きい。安全性の確認など課題はあるが、一日も早く新薬を開発したい」と話している。

◆2012.08.02 iPS細胞:神経異常の改善、確認 ALS治療に光−−京大准教授ら発表
 『毎日新聞』東京朝刊 4頁
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬開発につながる物質を、患者から作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って世界で初めて確認したと、京都大iPS細胞研究所の井上治久准教授(神経内科)らが発表した。「アナカルジン酸」という物質で、神経の異常を改善する働きがあるという。米科学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」電子版に1日掲載された。
 ALSは脳の指令を筋肉に伝える神経細胞(運動ニューロン)に異常が生じ、徐々に全身の筋肉が動かなくなる難病。国内の患者は約8500人とされ、有効な治療法がない。
 研究グループはALS患者のiPS細胞から分化した運動ニューロンの性質を調べた。その結果、信号を伝える神経突起の長さが正常な場合の約半分しかなく、細胞質に「TDP―43」という特殊なたんぱく質が凝集するなど、実際の病理組織と同じ特徴が観察された。このたんぱく質が増えると、神経細胞の形成に関係する遺伝子の働きに異常が生じることも分かった。
 さらに各種の試薬をニューロン細胞の培養液に加える実験を繰り返した結果、アナカルジン酸が「TDP―43」の合成を抑えることが判明。神経突起の長さも16時間後には通常の長さに回復した。
 井上准教授は「動物実験でなく、患者のiPS細胞から作ったニューロンで効果を確認した意味は大きい。一日も早く新薬を開発したい」と話している。【榊原雅晴】

◆2012/08/02 〈解〉筋萎縮性側索硬化症=ALS
 『読売新聞』東京朝刊 01頁
 運動神経が徐々に機能を失い、全身の筋肉が動かなくなる病気で、有効な治療法はない。難病情報センターによると、50〜60歳代で発症することが多く、国内には、約8500人の患者がいる。米国では大リーガーのルー・ゲーリッグ選手が発症したことから「ゲーリッグ病」とも呼ばれる。

◆2012/08/02 iPS使い、ALS新薬 京大グループ 有効な物質特定
 『読売新聞』東京朝刊 01頁
 全身の筋肉が徐々に萎縮していく難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者の皮膚から作製したiPS細胞(新型万能細胞)を使い、ALSの発症を抑える治療薬の候補となる化合物を特定することに、京都大iPS細胞研究所などの研究グループが、初めて成功した。iPS細胞の技術が、治療法がない難病の解明や新薬開発の突破口となることを改めて示した成果で、2日の米医学誌電子版に発表する。
 同グループによると、ALS患者の約9割は、脳からの指令を筋肉に伝える運動神経の細胞内で、遺伝子の働きの強弱を調節するたんぱく質「TDP―43」が変性し、蓄積することがわかっていた。グループの井上治久・准教授らは、50歳代のALS患者3人の皮膚から様々な種類の細胞に変化できるiPS細胞を作製。さらに運動神経の細胞に変化させたところ、変性したTDP―43が大量に蓄積しているのを確認。その影響で、運動神経の突起部分が、健康な人より短くなっていたことを突き止めた。このALS患者の細胞に、TDP―43の正常な働きを補うことで知られる4種類の化合物を加えたところ、そのうちカシューナッツの殻から抽出した「アナカルジン酸」によって、変性したTDP―43が減少、突起の長さも2倍になり、健康な人の細胞と同じ長さになった。
 山中伸弥・京都大iPS細胞研究所長の話「今後、ALSや他の難病の新しい治療薬開発を実現するために、さらに研究を進めたい」
 ◇難病研究 真価を発揮(解説)
 京都大iPS細胞研究所が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬の候補を見つけた今回の研究は、iPS細胞の真価を最も発揮した分野と言える。
 iPS細胞を開発した同研究所の山中伸弥所長は「ALSのように患者数が少なく、製薬企業が治療薬の開発に消極的な難病の治療薬を開発したい」と、重要テーマの一つにしている。
 ALSに有効な治療法がない最大の理由は、神経細胞が皮膚や血管などと違ってほとんど再生せず、患者の脳や脊髄から病気の神経細胞を採取できたとしても、培養して研究に使うことができないからだ。しかし、iPS細胞なら、患者の皮膚から簡単に作製し、大量に増やせるので、動物実験よりも正確な治療薬の検証を何度も繰り返すことができる。
 今回の成果がすぐに治療につながるわけではないが、新薬開発の大きな手がかりとなるだろう。(大阪科学部 今津博文)
 〈筋萎縮性側索硬化症(ALS)〉
 運動神経が徐々に機能を失い、全身の筋肉が動かなくなる病気で、有効な治療法はない。難病情報センターによると、50〜60歳代で発症することが多く、国内には、約8500人の患者がいる。米国では大リーガーのルー・ゲーリッグ選手が発症したことから「ゲーリッグ病」とも呼ばれる。

◆2012/08/02 iPS使い、ALS抑制 新薬候補物質を発見 京大グループ
 『読売新聞』大阪朝刊 01頁
 全身の筋肉が徐々に萎縮していく難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者の皮膚からiPS細胞(新型万能細胞)を作製し、ALSの症状を抑える治療薬の候補となる化合物を見つけ出すことに、京都大iPS細胞研究所などの研究グループが、初めて成功した。すぐに治療に使えるわけではないが、iPS細胞の技術が、難病の解明や新薬開発につながることを確認した成果で、2日の米医学誌電子版に発表する。
 同グループによると、ALS患者の約9割は、脳からの指令を筋肉に伝える運動神経の細胞内で、遺伝子の働きの強弱を調節する「TDP―43」というたんぱく質が変性し、蓄積することがわかっていた。
 グループの井上治久・准教授らは、50歳代のALS患者3人の皮膚から様々な種類の細胞に変化できるiPS細胞を作製した。さらに運動神経の細胞に変化させたところ、変性した大量のTDP―43を確認。その影響で、運動神経の突起部分が、健康な人より短くなっていたことを突き止めた。
 このALS患者の細胞に、TDP―43の正常な働きを補うことで知られる4種類の化合物を加えたところ、そのうちの一つ「アナカルジン酸」という化合物でTDP―43が減少、突起の長さも2倍になり、健康な人の細胞と同じ長さになった。
 iPS細胞を開発した山中伸弥・京都大iPS細胞研究所長の話「研究所は10年間の目標の一つとして患者由来のiPS細胞を使った難病の治療薬開発を掲げており、一歩前進した。ALSや他の難病の新しい治療薬開発を実現するために、さらに研究を進めたい」
 ◇難病治療手がかりに(解説)
 京都大iPS細胞研究所による今回の研究は、iPS細胞の真価を最も発揮できる分野と言える。山中伸弥・同研究所長は「ALSのように患者数が少なく、製薬企業が、研究費の投資に消極的な難病の治療薬を開発したい」と、重要テーマの一つにしている。
 ALSに有効な治療法がない最大の理由は、神経細胞が皮膚や血管などと違ってほとんど再生せず、患者の脳や脊髄から病気の神経細胞を採取できたとしても培養して研究に使うことができないからだ。しかし、iPS細胞なら、患者の皮膚から簡単に作製し、大量に増やせるので、動物実験よりも正確な治療薬の検証を何度も繰り返すことができる。今回の成果は、新薬開発の大きな手がかりとなるだろう。(科学部 今津博文)
 〈筋萎縮性側索硬化症〉=ALS
 脳と筋肉を結ぶ運動神経が徐々に機能を失い、全身の筋肉が動かなくなる病気で、有効な治療法はない。難病情報センターによると、50〜60歳代で発症することが多く、国内には、約8500人の患者がいる。米国では大リーガーのルー・ゲーリッグ選手が発症したことから「ゲーリッグ病」とも呼ばれる。


*この頁は平成24年度 厚生労働科学研究 難治性疾患克服研究事業「患者および患者支援団体等による研究支援体制の構築に関わる研究」の一環として、その資金を得て作成されています。
UP:2012 REV:上掲
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