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Marxism|マルクス主義



■関連項目

搾取
経済学
アナリティカル・マルキシズム analytical marxism
Marx, Karl

■引用

稲葉 振一郎立岩 真也 20060830 『所有と国家のゆくえ』,日本放送出版協会,NHKブックス1064,301p. ISBN-10: 414091064X ISBN-13: 978-4140910641 1176 →gumroad経由:1000円

第三章 なぜ不平等はいけないのか 125
2 マルクス主義からの教訓 161
 マルクス主義の二枚舌構造 分析的マルクス主義者の青写真主義
 何をするか、しないかを考える 乱暴に考えないこと 実行可能性について
 合意は大切だが合意でしかない 体制変革論の気分的な根拠
 搾取理論の間題点 不平等こそ問題である 人間改造思想への危倶
 マルキシズムおよびマルクス 変革のもとについて 世界主義


「▽161 2 マルクス主義からの教訓

マルクス主義の二枚舌構造

稲葉 ぼくもそれに近いことを言ったわけですが、今おっしゃった意味での協同組合主義批判というのは実はかつての全盛期のマルクス主義のオハコだったわけですよね。実はマルクスの将来社会像っていうのも多義的で、協同組合的ヴィジョンもあったんですけれども、彼が自分の先駆者たちを批判するときに「ユートピア的だ」って言い方をしたときの一つの理由は、ローカルにコツコツやってても、結局開かれた市場でのふつうの資本家企業との競争には勝てないのだ、ということですね。たとえばロバート・オーウェン(13)やフーリエ(14)なんかも、要するにコミュニティ実験をいろいろやるんですが、局所的なコミュニティでは、結局世界全体を変革できないし、全体に広がらないどころか、周りからの圧力に負けて、生き延びられないよという批判をしてきたわけですね。だから、マルクス主義の場合、全体的、一挙的な革命を提唱したわけです。
 マルクス主義の強みというのは、そういう二枚舌構造にあったわけですね、悪くいうと。つまり、「資本主義偉い、資本主義強い、資本主義最高!」って言い続けるわけですよ、ひたすら。でも、最終的にはダメっていうわけです。資本主義を超えるのは俺たち。俺たち以外の資本主義への対抗者▽162は全部ダメ、資本主義の強さをわかってない、ダメダメ。これがマルクス主義のえんえんと二十世紀末くらいまで続いたやり口なわけです、非常にお下品に言えば。でも、マルクス主義がふった証文は結果的に空証文であったわけで、いっきょにその信頼は失墜しちゃったんですけれども、マルクス主義の協同組合主義に対する批判が当たってないかというと、必ずしもそうではない。しかしそれはオーソドックスな市場経済の信奉者たちによる批判と、結局は同じ論点を指摘しているに過ぎない。
 現代の再分配志向のリベラリストとか、ローマーのようないわゆる分析的マルクス主義者たちの場合にも、市場経済の基本的な強さとか合理性ってものは前提になっていて、いわばその市場経済の不完全性を補填したり、より拡張したりするようなかたちで社会主義的な理念を追究する以外にはなさそうだという方向で、いま話は来てるんですね。ただ、それは具体的にどういうものになるのかというのは非常に厄介である。

分析的マルクス主義者の青写真主義

稲葉 それからもう一つ指摘しときますと、分析的マルクス主義者の非常に特徴的なところ、とくに従来のマルクス主義と異なるところはですね、青写真主義、社会主義の青写真をしっかり描くというところなんです。伝統的なマルクス主義の強みであると同時に弱みでもあった二枚舌構造においては、将来ヴィジョンについての禁欲があったんですね。[…]」

「マルキシズムおよびマルクス

立岩 稲葉さんたちの本がいわゆるアナリティカル・マルキシズムについての本で、それを一つの参照点にして今日の話が進んでいるので、珍しくマルキシズムということばがたくさん出てきたか▽183と思います。その件に関して、ぼくはほとんど書いたことがないのだけれど、いくつか列挙します。
 一つ、搾取の議論に関しては最初の方でも少し言いましたし、先ほど稲葉さんの解説にもあったし、これをそのままで使わないというか使えないというのはぼくとしては出発点にあったんですね。そういう意味では同じと言ったら同じところがある。加えると、ぼくがそういうふうに考え始めた後で、たとえばローマーが、それ以前に森嶋さんであるとか置塩さんという人がいたというのは聞いてはいた。特殊な条件で搾取が成り立つ、逆に言えばかなり一般的には成り立たないとも読めるわけですけれども、そういった議論があるのは知っていて、先ほどの話に戻すと、その類いの思想全般がペケだということにもならないでしょう。と同時にそれを立脚点として議論を立てていくということはすべきでないとぼくは論を立ててきたところがあって、そういう意味で言えば、そういう話をされて、まあそうだったよね、わかってました、と。若干傲慢ですがそんなところがぼくにはある。
 二つめですが、ではマルクスという人が面白くないかといえば、そんなことはなくて、ぼくは『資本論』とかその類いのものをきちんと読んだ記憶がないのだけれども、いろんな政治文章とか、あるいは歴史物と言ったらいいのかな、において、まずイデオローグとして、そして文筆家として、鋭意の分析家としてマルクスというのは魅力的で面白い人間だなとは前から思っていました。
 と同時に、何がどれだけ人を引きつけたのかっていえば、今のシステムはどういうシステムかっていう分析もさることながら、やっぱりこれがいいんじゃないのっていうことを言ったからだと思▽184います。未来を具体的に語らないっていうある種の禁欲というか、ある種のズルさがあったと同時に、ぽろっとというか漠然とというか、言っている部分もある。ぼくは今までたぶん二〇年くらい文章を書いてきていると思いますが、マルクスに言及しているのは一回だけかもしれなくて、『自由の平等』で有名なところを引いてて、それは「ゴータ綱領批判」の「働ける人は働き、必要な人はとる」という、まあ簡単と言えば簡単な、しかし詰めていけばいろいろ面白い論点がたくさん出てくるアイディアです。それは基本的にぼくはオッケーだと思っていて、共感する部分はあったし、今でもある。これが三つめ。

変革のもとについて

立岩 で四つめで、人間改造思想に関して言えば、[…]」


UP: REV:20130427
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