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精神障害とリハビリテーション

精神障害/精神医療


◆織田 淳太郎 20121023 『なぜ日本は、精神科病院の数が世界一なのか』,宝島社新書,221p. ISBN-10: 4796695923 ISBN-13: 978-4796695923 800+ [amazon][kinokuniya] ※ m. i01m.

 「――F病院で外動を制限され始めたのほいつ頃から?
箕輸「平成に入る頃からかな。外勤を制限して、OTを積極的に取り入れるようになったんだ。でも、おれはOTなんか必要ないと思うよ。患者にとって少しもお金にならないし、OTに集まるのは患者だけだ。しかも、作業療法士が先生みたいに指示するし、スタッフにも監視されているし。カラオケとか囲碁とか塗り絵とか子供の遊びみたいのばかりで、<0191<大したことやってないしな。おまけに患者は、参加するのも途中で抜け出すのも自由。結局、食っちや寝の状態になってしまう患者も多いんだ。おれはOTが導入されたのが、患者の社会復帰が遅れた大きな原因だと思うよ」
――たしかに、OTでは地域との接点はないけど、外勤は外部の人間と接することができる。精神障害者に対する偏見も、それだけ少なくなるかもしれない。
箕輸「外勤をやることで地域に馴染むことができるんだな。外の知り合いもたくさんできるし、患者の社会的な視野もそれだけ広がる。院内作業もそうだけど、朝から晩まで体動かして働くことで、ストレス解消にもなるんだ。それに、中小企業の経営者は精神障害者を安い賃金で雇うことができる。外勤は経営者と患者、双方にとってもプラスなんだよ。OTは働けない入院者や老人のためにやればいい」

 OTが保険点数化したのは、箕輪さんがF病院に収容された翌1974年のことである。以来、全国の精神病院が貴重な収入源とすべくこのOTに目を付け、外勤や院内作業の「労働力」をOTへと組み入れていったのは、むしろ当然の成り行きだったのだろう。
 しかし、OT導入による外勤の制限が、逆に入院者の生きる道を狭めてしまったと主張するのは、箕輪さんだけではない。第二章に登場する入院歴路年の潮田良夫さんが、外勤<0194<生活を「社会と繋がっているという喜びを与えてくれるもの」として捉え、外勤から離れてからは「心にボッカリ穴が開いた日々が続いている」と嘆くように、多くの長期入院者にとって地域との交流が一番の良薬であることに変わりはない。
外勤はそのための貴重なツールだった。」(織田[2012:193-195])


UP: 20131009 REV:
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