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ハンセン病・2015

障害者と政策

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◆2015/01/25 「ハンセン病療養所の歴史保存」
 『朝日新聞社』2015/01/25
 http://apital.asahi.com/article/story/2015012400010.html

 【北野隆一、高木智子】 ハンセン病療養所を、隔離や差別など社会の「負の歴史」を刻んだ遺産として保存しようと、国内外で取り組みが進んでいます。海外では日本の経験を教訓に、各国で資料館建設や遺構保存、回復者による語り部活動などが始まりました。日本では療養所の世界遺産登録をめざす活動も本格化していますが、実現までの道のりは厳しそうです。

 岡山県瀬戸内市の国立ハンセン病療養所長島愛生園。隔離政策の歴史や入所者の暮らしを伝える施設「歴史館」には昨年、1万2千人が訪れた。年間来館者数が初めて1万人を超え、2003年の開館以来の累計は昨年11月に10万人を突破した。
 来館者の増加は「世界遺産運動の効果」と、歴史館の田村朋久学芸員(38)は話す。同じ長島にある邑久光明園と愛生園の関係者が13年9月に「長島の世界遺産登録をめざす準備会」を発足させると世界遺産がらみの報道が増え、人権研修や社会見学など団体の訪問が急増したという。
 準備会は世界遺産登録の意義について(1)偏見と差別、人権侵害の歴史を継承する(2)入所者らの差別に立ち向かう姿を示せる(3)建築、遺構、文書や生活資料など全てが保存対象となる(4)市民の関心が高まる(5)日本が過ちを認める成熟した国と示せる――ことをあげている。
 背景には入所者の高齢化と減少がある。国内13カ所の国立療養所入所者数は昨年5月現在で1840人に減り、平均年齢は83歳。230人が住む愛生園で隔離の歴史や体験を証言した入所者はかつて25人いたが、いまも語り部を務めるのは5人だ。
 資料の収集や展示は当初、入所者自身の取り組みとして進められてきた。しかし高齢化が進み、02年以降は東京都東村山市の国立ハンセン病資料館▽熊本県合志市の菊池恵楓園社会交流会館▽群馬県草津町の栗生楽泉園重監房資料館▽愛生園歴史館――の4カ所で学芸員が着任。資料整理や展示の業務を引き継いだ。他の療養所でも、資料室や展示室の設置が相次いでいる。
 歴史館が開館した03年に学芸員資格を取得した田村さんは、啓発活動について「以前は入所者自身の名誉回復が重視されていたが、それとともに今は市民が自分の問題として社会の差別を考える時代に入ったのではないか」と語る。
 歴史保存の道は平坦(へいたん)ではない。愛生園は国立療養所を所管する厚生労働省に対し、04年から施設内の建造物の保存措置を求めてきた。11年には、地元の岡山県や瀬戸内市の教育委員会に登録有形文化財の申請を打診した。世界遺産をめざす運動も、こうした取り組みの延長上にある。ただ、全国13療養所の入所者自治会でつくる全国ハンセン病療養所入所者協議会で結論が出ていないため、厚労省は「まだ正式に要望された段階ではない」との立場だ。
 「それでも、世界遺産をめざす意義は大きい。差別の解消には関心の高まりが大切。運動を始めたことで新たな人的つながりが増え、療養所が、差別の歴史を市民が学べる『負の遺産』でもあるとの理解が広まってきた」と田村さんは説く。…「続きはログイン・ご購入後に読めます」



UP:20150125 REV:
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