HOME > ホームページ >

孤独(Loneliness/Solitude)


last update:20100704

■目次

作田啓一の孤独論
ハンナ・アーレントの孤独論
孤独と社会的排除の違い(岩田正美)

>TOP


■作田啓一の孤独論「孤独の諸形態」(1967年)

・孤独の定義
「他者,とりわけその個人にとって重要な意味をもつ他者に,コミュニケーションができないこと,愛されなかったり尊重されなかったりすることから生ずる心の状態(たとえば寂寥感)である.」作田[1967:27]

→しかし,孤独はコミュニケーションがあっても感じられるものである.コミュニケーションがあるにもかかわらず感じられる「孤独」とは何か?
 →「役割を遂行することを期待されている個人は,残余部分としての自己…の諸層に根ざしているさまざまの感情や願望をそのまま表現することは許されない.彼の自己は沈黙を余儀なくされる.」(同上 p31)
  →具体例.伊藤整
   「彼は自分の経歴を,見も知らぬ青年たちの前で喋ったことを後悔した.自分の表面の生活を語ることは,自分の内面の生活を隠蔽することであった.喋ることは偽ることであり,出口を求めてむらがり起る自分の本当の苦しみを窒息させることであった.彼はいま,長いこと願っていた大学院講師になり,学位も手に入れることになったのだ.しかし人の前に立ってものを言ふといふことは,彼に,予想もしなかった躓きとなって現れた.ある痛切なことに口を閉ざすといふ,偽りに耐へることが,教師という仕事につきまとっていたのだ.だがその出口を求める真実が公然と生きることのできる場所は,この世にはどこにもないやうであった.」(伊藤整「氾濫」)(同上 p31)

>TOP


■ハンナ・アーレントの孤独論

・見棄てられた境遇(Verlasscenheit)と孤独(Einsamkeit)
「すべて孤独というものにはVerlassenheitに転化する危険があり,同様にすべてのVerlassenheitには孤独になる可能性があるにもかかわらず,Verlassenheitと孤独Einsamkeitは同じものではない。孤独のなかでは実は私は決して一人ではない。私は私自身とともにあり,そして身体的に他のものと交換不可能の特定者には決してなり得ないこの『自身』は同時にまた『各人』jedermanでもある。まさに孤独な思考は弁証法的であり,『各人』と交わっている。これは孤独の自己分裂性であって,このなかで私は常に自分自身にひきもどされながらも,決して一者として,そのアイデンティティにおいて交換不可能なものとして,本当に一義的なものとして私を感じ得ない。まさにこの一者として,交換不可能なものとして,一義的なものとして私を認め,私に話しかけ,それを考慮してくれることで私のアイデンティティを確認してくれる他の人々と出逢によって,私は孤独の分裂性と多義性から救い出される。彼らとの関係に組みこまれ彼らと結びついて,はじめて私は現実に世界における一者であり,他のすべての人々から私の持分の世界を受け取るのである。」(Arendt 1951: 298)

>TOP


■孤独と社会的排除の違い(岩田正美)

・社会的排除の定義
「社会参加の欠如」
「社会へ参加するとは,こうした複雑な関係の網の目の中で,その人らしく生きていくために,必要な関係を選び取って,その網の目の中に入り込んでいくことであり,またそれを変更していく行為でもある。」(岩田 2008: 8)

・孤立との違い
「社会的排除が社会への参加が阻止されている状態だとすれば,当然孤立状態である,と判断されるため,社会的排除の主な要素としてこれを挙げる人もいる。だが,先のリスターはイギリスの三つの団地で行なわれた調査結果を例に引いて,地域の近隣ネットワークへの接続と,社会の主要な制度への参加は異なったものであって,前者のネットワークがあっても,後者の参加が阻止されている場合が少なくないと指摘している(Lister 2004: 85-6)。社会的排除を主要な制度への参加問題と見れば,孤立がなくても社会的排除があるということになる。もっとも,先に指摘した通り,すべてのネットワークと切断している人は,社会調査の対象にはならないだろうから,社会的排除があっても,近隣ネットワークはあると単純に結論づけるのは危険であろう。むしろ,貧困や差別と同様,孤立と社会的排除も,重なっている部分と重ならない部分があると整理したほうがよいかもしれない。
 なお,孤立概念は,あくまで社会の中の個人の状態を把握する概念であって,社会的排除のような,社会そのものを問う概念とはなりにくいことにも注意する必要があろう。」(岩田 2008: 55)

>TOP


■引用参考文献表

Arendt, Hannah 1951 The Origins of Totalitarianism, George Allen and Unwin =1981 大久保和郎・大島かおり訳,『全体主義の起原3 全体主義』,みすず書房
岩田正美 2008『社会的排除-参加の欠如・不確かな帰属 』,有斐閣
Lister, R 2004 Poverty, Polity Press
齋藤純一 2000『公共性』,岩波書店
作田啓一 1967「孤独の諸形態」『恥の文化再考』筑摩書房



*作成:八木 慎一
UP:20090731 REV:20091018 20100704
愛 love/帰属 belonging/承認 recognition 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)