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肝移植/生体肝移植



 製作:長谷川唯(立命館大学大学院先端総合学術研究科*)
 *http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce

■■

・脳死状態からの摘出を前提 1963 米国のT・E・スターズル博士により初めて行われる
 米国の他、イギリス、ドイツ 日本では小児に対して2例ほど(三輪[1983:73-76])
・1963の移植は手術中死亡 毎年20〜30例 生存率10%(渥美・稲生[86:152-155])
・海外での移植
1986年ころから日本の胆道閉鎖の患者20数人がオーストラリアのクインズランド州ブリスベーン市のロイヤル・チルドレンズ病院に。20人近くが脳死者 から肝臓の移植を受けている。(「胆道閉鎖症の子どもを守る会」による→朝日890730:30→FAIL)
同病院では85年以来100例以上の肝臓移植が行われた(朝日890731:26→FAIL)
豪ブリスベーン市のプリンセンス・アレクサンドラ病院と王立子供病院の移植チーム(R・ストロング博士ら5人)が「胆道閉鎖症の子供を守る会」などの招き で来日。神戸・熊本などで移植推進を訴える講演をしたほか、東京でも890923シンポジウムを予定。同州から93、隣接のニューサウスウェールズ州から 19、南オーストラリア州から16、ニージーランドから17人、日本から28人。85年からの 104例のうち大人57・子供47。87年から部分肝移植が開発されたため子供の移植が増えている。生存率3年目で約70%。子供の方が少し高い。臓器提 供に同意するドナーカードは腎臓財団発効のカードと運転免許証に臓器提供の同意を書き込む方式を採用。しかし臓器移植が社会的に認知されている同国でも脳 死からの臓器提供は2割程度。移植用の臓器は不足(交通事故が減ったなどの関係で最近6か月で臓器提供者が40%も減少)。移植を希望する外国人の枠が定 められていない代わりに、政府のガイドラインで、脳死者の臓器はまず自国の患者に振り分け、その中に臓器の合う対象者(大きさ・血液型)がいない場合に限 り、臓器を外国人にも分けるように定められている。(朝日890920E:5)
守る会の調査によると肝臓移植のために海外に出掛けた患者は39。うち31が移植を受けた。豪21・米07・加02・英01・西独01。豪が多いのは費用 のため。豪では豪ドルで11万ドル(約1270万円)が必要。予後が悪く集中治療を受けても、再び肝臓移植を受けても後は費用はがいらない、渡航費・生活 費などを足して約2000万あればどうにか受けられる しかし誰もが出せるわけでなく半分以上が募金頼み(豪州人の場合は移植費用は無料)米では基本的な 移植費用で18万ドル(約2700万円)、そのほかの予後管理などは別途料金に 集中治療室に入れば1日20万円。(朝日890920E: 5→FAIL)・生体肝移植:鶴山威一郎→「生体肝移植」
・19890930〜1002にかけ 豪ブリスベーンの医療チーム 1つの肝臓(脳死の人)を2つに分割し日本人(神奈川県の男児1歳半…生まれながらの 胆道閉鎖症で10か月前に来豪、提供者を待っていたが見つからないため分割移植を受ける)を含む2人(もう1人は豪の成人女性)に移植することに成功。2 人とも経過は順調、1か月半から2か月後には退院できる見込み。世界では既に10例前後の成功例。(朝日890914:3→FAIL)


■日本の生体肝移植の歴史

 長谷川 唯 2007/03/21 「日本における移植コーディネーターの成立」
 立命館大学大学院先端総合学術研究科博士予備論文  などより作成

・198812 世界初の生体部分肝移植がブラジルで母子に実施、後、子は死亡
 198907 ブラジルで1歳7月の女子に男性40歳の肝臓の一部を移植 世界で2番目の生体部分肝移植(朝日891122E:5)

・豪での
生まれなからの胆道閉塞症の鶴山威一郎(1歳5月)。198804・8807熊本病院で手術受けるが思わしくなく、8901豪に渡り、肝臓の提供者待って いたが、みつかる前に容態が悪化 豪上記病院で890727朝から28にかけ20時間に渡りに母親の鶴子(29・熊本県八代郡)の肝臓の左側約4分の1を 移植(生体部分肝移植は世界3例目)。手術・入院・薬などの費用は合計11万豪ドル(約1200万円)。母親0927集中治療室から一般病室に移り流動食 を食べる、0805朝退院。(朝日890730:30,0731:26,0802:26,890920E:5→いずれもFAIL)医師来日(上記)時の説 明:0型…豪で一番移植希望の多い血液型、提供者の減少(上記)のため、待っても回ってくる可能性がなく、動物実験も行わず緊急避難的に行う。
部分肝移植を多く手掛けていたから出来たが、経験のない日本では最初から行うべきではない。親の体を傷つけることは、普通の移植よりはるかに倫理的問題が ある(朝日890920E:5→FAIL)891213帰国(朝日891214:30→FAIL)母親へのインタヴュー:夫と血液型同じの移植の条件は一 緒 帰国後夫に障害が出れば一家の生活が影響を受ける。「いちかばちか、かけてみよう」…(朝日891229:3「ひと」欄→FAIL)
900512再手術(脳死になった3歳児から肝臓提供)(朝日900513:30→FAIL)17時間かかり(腸と肝臓の癒着がひどかったため)成功(朝 日900514:30)黄疸の症状もとれ、口から栄養をとっている。そろそろ集中治療室から出られるかもしれない(朝日900615E:23)

・19891113 島根医科大の第二外科で杉本裕太(男・1歳・山口県岩国市・先天性胆道閉鎖症)に父親(杉本明弘・26歳)の肝臓の一部を移植:生後 35日で胆道閉鎖症と診断、岩国市内の国立岩国病院で881227に肝臓内部の悪化している胆道を取り除き、肝臓と腸をつなぐ手術をしたが、その後の経過 が思わしくなく、再手術が8902中旬に行われる。しかし8908には肝臓も悪化、内部の血液の流れが悪くなっており、周囲の血管が破裂する恐れがあっ た。このため、臓器移植しか方法がないと勧め、891206に島根医科大付属病院に入院 同医大では豪などへ渡航しての手術を勧めたが4、5日前から容体 が急速に悪化。下血も始まり食道整脈りゅう破裂も予想される事態になったため、手術 13朝から15時間半後14午前零時半、終了 中村輝久教授によれ ば、生体部分肝移植は父の強い求めがあったためで、移植手術でしか助からない状態であり、生体肝移植なら脳死の問題もクリアできるので手術を決意した 学 内の「医の倫理委員会」には申請を出していなかった 中村教授:脳死の問題が絡まないため、桧学長と藤田英輔副学長(=倫理委員会委員長)には手術の実施 を伝えた(朝日891113:E14…手術が開始されたことを伝える 891114:1…より詳しく先天性胆道閉鎖症の説明も)900122小腸に小さな 穴があき内容物が漏れ出し腹膜炎を起こしている疑いから開腹手術(900122E:14)約4時間、穴は直径5ミリほど、縫ってふさいだ 医師団は免疫抑 制剤の副作用で小腸に潰瘍ができ、穴があいたとみている(朝日900123:30) 徐々に回復 免疫抑制剤の投与を半分近くに減らす 人工呼吸器は外せない(朝日900123E:12)呼吸状態に改善見られず、高酸素濃度の人工呼吸を続 ける(朝日900130:30) 改善の兆し見えず サイトメガロウイルスの感染で肺炎を起こしたという見方を強め、厚生省の許可を得て、未承認薬「ガンシクロビル」の投与を始める(朝日 900130E:14)ウイルス感染を確認(朝日900131:30) 募金届く(朝日900205:30) 新薬投与が効果 肺炎の感染症ほぼ克服…解説(朝日900207E:7) 自力呼吸始める 医師団は肺炎の危機はほぼ乗り越えられたと語る(朝日900210:30) 900322弟産まれる(朝日900223:30) 3月末に集中治療室を出て一般病棟に移る 術後半年 弱い拒絶反応の症状が時折出ているほかは安定した容体(朝日900512:30) 900530夜か ら断続的に肝臓から約 300CCの出血 900601未明集中治療室に移される 肝臓近くに血が固まってできた血腫があり痛がってあばれるため、人工呼吸にして鎮静させながら 輸血するための措置、胆汁を抜き取るために挿入しているチューブを入れ替える際に肝臓内の動脈を傷つけ出血したらしい、集中治療室に収容したのは一時的な 措置、と医師団は説明(朝日900601E:18)その後の検査で肝臓に拒絶反応を起こしている疑いが強まる(朝日900602:30)900603容体 悪化 ステロイド剤の投与を増やす、効果が出ないため、900604全身の血漿交換(朝日900604:30)900604約70CC吐血、腹水がたま り、腎臓障害の疑いが強まる 全身の血液を交換する予定(朝日900604E:19)900604血しょう交換、全身の血液の8割を入れ替える全血交換輸 血が功を奏し、意識を取り戻すなど当面の危機を脱する 人工透析 05には打ち切り、血漿交換再開予定(朝日900605:30)0605再び悪化:溶血 反応が強まり、胃内からも再び多量に出血していることが分かる 2回目の血漿交換 交換輸血 肝臓の拒否反応が依然続いている他、免疫力が弱まった時に活 性化するサイトメガロウイルスによる肺炎も確認(900606:30)病状は一進一退(900606E:16)0607医師団により治療の様子報告・ 0607溶血性貧血続く、約1000CCの血漿交換 全体として小康状態(900608:30) 0608溶血原因は自分を含めほとんどのすべての人の赤血球を殺してしまう特異抗体であることを明らかにする 200CC緊急輸血 1000CCの血漿交換 600CCの全血交換輸血(900609:30) 0615集中治療室 末永助教授、京大の手術実施に「これでまた、日本の子どもが、日本で救われる」(900615E:22) 0625腎不全、肝臓もそれに近い状態(900626:30) 0710血圧が40台、一時危険な容体に 大腸炎を併発した疑いが強いとみて、新たな抗生物質の投与を始める(900711:30)

・19891120 九州大学医学部第二外科の杉町圭蔵教授、末期の肝臓病患者の血縁者からの生体部分肝臓移植の臨床応用を認めるよう、九州大学医学部倫 理委員会(委員長:森良一医学部長)に申請 現在希望している患者がいるわけではないが、今後そうしたケースが出るケースにそなえて(朝日 891120E:1)891227 条件つきで承認(朝日891228:26 反応も紹介)900110患者、家族の同意取り付けを2段階で行ったうえ、 2週間後に再び確認するなどの条件を付けて正式に承認。倫理委の審議を経て生体部分肝移植を承認したのは日本で初めて(朝日900111:30)

・19900615 京大第二外科、小沢和恵教授らのグループ、胆道閉鎖症の子ども(大阪府内の男児・9歳)に父親の肝臓の一部を移植する生体部分肝移植 手術 国内で第2例目(朝日890615E:1,22,23、900616:1,31,900616E:19,900617:30,900618: 3,900618E:15,900619 :30→FAIL)
・19900619 信州大学医学部第一外科の幕内雅敏教授らのチーム、胆道閉鎖症の子ども(女児・7歳)に父親(36歳)の肝臓の一部を移植する生体部 分肝移植 国内で第3例目(朝日900619E:1…)
・19900629 京大第二外科、小沢和恵教授らのチーム、胆道閉鎖症などの子ども(島根県に住む男児・3歳10月)に母親(38歳)の肝臓の一部を移 植する生体部分肝移植 国内で4例目(朝日900629E:22……)
・他にimidas90:631
・19900615 京大第二外科、小沢和恵教授らのグループ、胆道閉鎖症の子ども(大阪府内の 男児・9歳)に父親の肝臓の一部を移植する生体部分肝移 植手術 国内で第2例目(朝日890615E:1,22,23、900616:1,31,900616E:19,900617:30,900618: 3,900618E:15,900619:30→FAIL)
・19900619 信州大学医学部第一外科の幕内雅敏教授らのチーム、胆道閉鎖症の子ども(女児・7歳)に父親(36歳)の肝臓の一部を移植する生体部 分肝移植 国内で第3例目(朝日900619E:1…)
・19900629 京大第二外科、小沢和恵教授らのチーム、胆道閉鎖症などの子ども(島根県に住む男児・3歳10月)に母親(38歳)の肝臓の一部を移 植する生体部分肝移植 国内で4例目(朝日900629E:22……)
・他にimidas90:631

1989年11月
先天性胆道閉鎖症だった当時1歳の男児に対して、第一例目となる生体肝移植を実施。
以後、脳死の議論に時間が費やされて、脳死肝移植体制が整備されるまでに時間がかかったため、第1例目実施後の10年間は、生体肝移植のみが実施されてい た。

1990年
京都大学と信州大学でも生体肝移植が開始。

1993年
信州大学で第一例目となる成人間での生体肝移植を実施。
※ それにより、これまで小児を対象として実施されていた親子間での生体肝移植が、成人間へと拡大された。それからは末期の肝不全患者に対する救命手段と して定着してきた。
  1994年
   容量の大きい肝右葉の移植を実施。
※ この技術が広まり、成人への移植の治療成績が飛躍的な向上をみせた。
※ 以後、慢性的な臓器不足の現状もあり、生体肝移植症例数は世界的に急増した。
※ 日本肝移植研究会の報告によると2004年末までに3.218例の生体肝移植が実施されている(「肝移植症例報告」日本肝移植研究会[2005: 518-526])

※ この間、日本では並行して、脳死に関する議論が行われる。

  1985年12月
   厚生省の「脳死の研究班」により、「脳死の判定指針および判定基準」が定められる。
  1988年1月
   日本医師会生命倫理懇談会が脳死を「人の死」として、脳死での臓器提供を容認。
  1990年3月
   厚生省が「脳死臨調及び臓器移植調査会」脳死臨調を発足。


1992年1月
 約2年間におよぶ議論が重ねられた結果、脳死者からの臓器移植認める最終答申を提出。
1994年4月
 「臓器の移植に関する法律案」を議員立法として国会に提出。
1997年6月
 「臓器の移植に関する法律」(臓器移植法)成立。
1997年10月
 「臓器の移植に関する法律」(臓器移植法)施行。
※ しかし、生体ドナーに関しては言及されていない。
※ 脳死ドナーからの臓器提供は、本人の書面にとる意思表示に限定し、家族の拒否権が保障されている。
※ 脳死肝移植は増加せず、臓器不足のために生体肝移植の実施件数が増加する一方であり、現在もその状態が続いている(中山[1992]、町野編 [1993]、浦田・川崎[2003:24-30])。
1999年
   臓器移植法成立後、第一例目となる脳死肝移植を実施。
※ 以後、年間の実施件数は6から7件程度に留まり、2003年には2例に減少。

1998年
 生体肝移植を受けるレシピエントの医療費、保険適応開始。
1999年
 保険適応になったことで、成人(18歳以上)のレシピエントへの移植例が小児の移植例を上回る。
※ 2002年以降は、成人の移植例が小児の移植例の2倍以上も上回る。
2001年
 レシピエント生前指定移植をめぐる議論が起こる。
2002年4月
 New England Journal of Medicine誌によって、米国での生体肝移植手術において7人の生体ドナーの死亡が明らかになる。
 米国でのドナー死亡例の報告を受けて、日本肝移植研究会がドナーの術後合併症の調査を実施。
2003年1月
 娘に肝臓の一部を提供した女性が肝不全のため重体、京都大学でドミノ移植が行われる。
  2003年2月
 「生体肝移植ドナー体験者の会」有志が「生体肝移植ドナー調査に関する要望書」を厚生労働省に提出。
2003年3月
 米国での成人間の生体肝移植で、ドナーの約7人に1人が手術後の合併症に苦しんでいることが明らかになる。
2003年5月
 重体であった、京都大学で娘に肝臓を提供した母親が、移植手術後に亡くなるという、日本で初めてとなるドナーの死亡が報告
※ このような経緯の中で、徐々にドナー保護に関しての取り組みの必要性が問われるようになった。
2003年6月
 生体肝移植ドナーとなった人たちが「生体肝移植ドナー体験者の会」を結成。
 行政や医療機関に対してドナーの実態調査や術後のフォローアップを求める活動を開始。
2003年10月
 生体肝移植ドナー経験者たちの要望を受けて、日本肝移植研究会が初めて、ドナーの術後の健康状態についての追跡調査を実施することを決定。
 日本移植学会が臓器提供者の範囲を広げる倫理指針改定を承認。親族以外からの臓器提供も条件付で容認。
2003年12月
 厚生省が肝硬変などの患者に対する生体肝移植において、16歳未満に適応していた医療保険を、成人にも拡大することを決定。
2004年1月
 生体肝移植のレシピエントへの保険適応が拡大。
2004年2月
 生体肝移植ドナー体験者の会が、自民党脳死・生命倫理及び臓器移植調査会会長に要望書を提出し、ドナーの法的保護と術後のフォローアップの保証を求め た。
2004年
 日本肝移植研究会、ドナーの術後の健康状態についての追跡調査を開始。
2005年3月
 日本肝移植研究会、「生体肝移植ドナーに関する調査報告書」を提出。
健康面への配慮や費用などの経済面、家族関係やレシピエントとの関係の変化に対して、これまでほとんど考慮されてこなかったことが明らかになった(「生体 肝移植ドナーに関する調査報告書」日本肝移植研究会ドナー調査委員会[2005])。
  2005年8月
   臓器移植法改正案を衆議院に提出。
※ 改正案は、脳死臓器移植が進まず生体臓器移植が移植件数の大半を占める現状に対して、健康な人間の体を傷つける生体臓器移植は最終手段であるという見 地から作成され提出。
※ 脳死体からの臓器提供を現実的な選択肢とするために、脳死下での臓器提供の条件を緩める内容になっている。
※ 生体ドナーの保護規定の言及はされておらず、改正案も廃案となったため、現在でも脳死体からの臓器提供は49例に留まっており、生体肝移植の実施件数 は増加する一方である。


 
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■文献

 *近日中掲載予定

堀田 義太郎 200610 「生体間臓器提供の倫理問題――自発性への問い」, 『医学哲学・医学倫理』24:31-41
一宮 茂子 200603 「ドナーからみた生体肝移植――ラウンデッド・セオ リー・アプローチによる家族・医療者との相互作用過程の分析」,立命館大学大学院応用人間科学研究科修士論文 要旨・文献表
◆後藤 正治 20020920 『生体肝移植――京大チームの挑戦』,岩波書店,224p. ISBN-10: 4004308046 ISBN-13: 978-4004308041  \777 [amazon][kinokuniya]


 
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■報道

 ……

◆2001/04/12 家族腎臓提供で患者移植順位繰り上げ…米で賛否
 『読売新聞ニュース』

 【ワシントン11日=館林牧子】患者の家族が腎臓(じんぞう)を提供すれば、患者が腎臓をもらえるチャンスが増えます――。こんなプログラムを米ボスト ンの病院「ニューイングランド・メディカルセンター」が始めた。移植の臓器分配を仕切る全米臓器配分ネットワーク(UNOS)の承認を得ており、「深刻な 臓器不足に対する画期的なプログラム」と称賛する声がある一方、米連邦法が禁じる売買に準じ「倫理的に問題だ」と疑問視する関係者もある。
 腎臓は免疫型などが適合していないと移植できないため、家族でも提供が難しい。家族などから生体腎移植ができない場合、死者からの提供を待つしかない が、米国では現在約四万八千人の待機患者がおり、提供まで平均五年間待たなければならない。
 「分かち合う希望」と命名されたこのプログラムでは、家族が第三者に、二つある腎臓の一つを提供した場合、患者が病院の待機リストの最上位にランクさ れ、数週間で腎臓をもらうことも可能だという。
[2001-04-12-12:14]

◆2001/06/11 「男性に自分の子供(成人)2人から生体肝移植 京大病院」
 朝日新聞ニュース速報

 「京都大で4月下旬、男性患者が自分の子供2人(ともに成人)から肝臓の一部の提供を受けた生体肝移植手術が行われたと11日、同大の「医の倫理委員 会」が発表した。2人の臓器提供者による生体肝移植手術は「国内では初めて」(京大)という。
 京大によると、患者は急性肝不全で京大病院に入院していた。生体肝移植では移植された肝臓の重さが患者の体重の1%以下だと、肝臓への負担が増し手術の 成功率が低くなるという。男性患者は80〜90キロ程度で、提供者1人の肝臓では1%に達しなかったため、2人からの移植を決めた。それぞれ肝臓の右半分 の一部と左半分の一部を提供した。提供者はすでに退院しているという。」[2001-06-11-22:36]

◆2001/06/11 「国内初、京大で2人の子供から父に生体肝移植」
 読売新聞ニュース速報

 「京都大病院(京都市左京区)は十一日、「医の倫理委員会」(赤林朗委員長)で、B型肝炎の急性肝不全の父親に四月末、成人した子供二人の肝臓を移植し たと報告した。二人から提供を受けた生体肝移植は、国内で初めて。
 移植した肝臓は、移植患者の体重の一%に満たないと定着せず拒絶反応などが起きる可能性が高い。この父親は約八十キロで、一人分の肝臓では重さが不足す ると判断、二人から同時に提供を受けることにした。術後の経過は順調という。
 京都大によると、二人からの移植は技術的には一人からと変わらないといい、韓国ではすでに十数例が報告されている。」[2001-06-11-21: 54]

◆2001/06/11 「<生体肝移植>子供2人の肝臓を父親に 京大病院で国内初の」
 毎日新聞ニュース速報

 「京都大(京都市左京区)の医の倫理委員会は11日、同大病院で今年4月、B型肝炎による急性肝不全の父親に対し、成人した子ども2人からの生体肝移植 が行われていたことを明らかにした。2人のドナーからの生体肝移植は国内で初めて。
 同委によると、当初は1人からの移植を予定していたが、移植できる肝臓が父親の体重の1%に満たないことが事前の検査で判明。1%未満の場合、肝臓の定 着率が悪く成功が危ぶまれたため、急きょもう1人の同意を得て、2人から提供を受けたという。父親の経過は良好で、子ども2人は既に退院している。
 同委は「今回のケースは緊急に委員会を開き承認したが、2人からの移植はリスクも2倍になることなので、今後も慎重に検討したい」と話している。」【高 田房二郎】
[2001-06-11-20:30]

◆2002/06/19 18:48 肝細胞を凍結保存して移植 広島大教授ら、臨床研究へ
 共同通信ニュース速報

 「広島大医学部の浅原利正教授(消化器外科)、理学部の吉里勝利教授(動物科学)らの共同研究グループは十九日、患者の肝細胞を取り出して凍結保存して おき、肝機能が落ちた場合に肝臓に戻す新しい治療法を確立したと発表した。
 患者に応用する臨床研究計画が既に同大医学部倫理委員会で承認されており、適応患者が現れ次第、実施する方針。凍結保存による自己肝細胞移植は世界でも 例がないという。
 治療は、主に肝臓がんの患者が対象。手術時に、がん細胞と一緒に正常な肝細胞を一部摘出し、皮膚などで実用化している技術を使って凍結保存する。
 患者の肝機能が落ちた場合に、保存した細胞を解凍して門脈などの血管から肝臓や脾臓(ひぞう)に注入、肝機能を補うのが狙い。既にラットの実験などで効 果を確かめたとしている。
 患者が肝移植を受けられない場合にも、肝臓全体の細胞の0・5―1%という少量で機能を補えるのが利点。自分の細胞を使うため、拒絶反応もないという。
 浅原教授らは「生体肝移植で、移植する肝臓の大きさが不十分な場合にも有用だ」と話している。
 研究グループは今後、他人の肝細胞でも同様の保存、治療ができないかを研究する。
(了)」
[2002-06-19-18:48]

◆2002/11/11<脳死移植>50代女性から心臓、肺 脳死で初のドミノ肝移
 毎日新聞ニュース速報
 岡山県倉敷市の川崎医科大病院で、脳死と判定された50代女性の心臓、肺、肝臓の移植手術は11日、国立循環器病センター(大阪府吹田市)など3施設で 行われた。肝臓は、北海道大病院(札幌市北区)で40代の男性患者に移植され、さらにこの患者から摘出された肝臓を50代の男性患者に移植するドミノ肝移 植が行われている。生体でのドミノ肝移植は12例(日本肝移植研究会調べ)実施されているが、脳死でのドミノ肝移植は初めて。
 脳死と判定された女性の肝臓を移植された男性は、肝臓が生まれつき有害なたんぱく質を作るアミロイド・ポリ・ニューロパシー(FAP)という難病で、有 効な治療は肝移植しかない。ただ、有害たんぱく質を作る以外に肝臓は正常で、FAP患者から別の患者に移植しても20年は発病しないとされ、重い肝臓病患 者に移植すると延命につながる。北大の倫理委員会は今年2月、この患者間で脳死からのドミノ肝移植手術を承認した。  このほか、心臓は国立循環器病センターで30代男性に移植された。肺は岡山大病院(岡山市)で20代女性に移植されている。
【臓器移植取材班】[2002-11-11-21:4]

 

◆2003/01/27 「娘に肝臓提供の母が重体 京大、ドミノ移植実施へ」
 共同通信ニュース速報

 「京都大病院(京都市左京区)は二十七日、同病院で昨年八月に実施した生体肝移植手術で、娘に肝臓の一部を提供した四十代後半の母親が手術後に肝不全を 起こして重体になっていると発表した。
 同日、名古屋大で生体肝移植を受ける三十代の患者から摘出し肝臓をさらに移植する「ドミノ移植」を受ける。
 母親は脂肪肝や高血圧などの問題があったが、再移植が必要な娘のために強く移植を希望。同病院は緊急手術として要望を受け入れ、臓器提供者(ドナー)と しては初めて、集中治療室を用意した難手術だった。
 一九八九年に始まった生体肝移植は国内二千例を超え、移植患者が死亡したり、ドナーが合併症を起こす例はあったが、移植が必要なほど深刻な健康障害が報 告されたのは国内では初めて。当初から指摘された健康な体にメスを入れることの懸念が現実になった形で、今後適応基準の在り方が問われそうだ。
 二十七日午後、名古屋大から肝臓が届き次第、手術を始める。終了は早くても二十八日未明の見通し。
 娘は胆道閉鎖症で、九四年に同病院で父から移植を受けたが、肝不全で容体が悪化。再移植が必要になり昨年八月、母親が肝臓の右葉を提供した。全体の 37%を残す計画だったが、残った肝臓は予定より小さい30%程度。娘は手術後に回復したものの、母親は手
術後、二カ月すぎから腹水がたまり、肺炎などの合併症も起きてこん睡状態という。
 田中紘一院長(臓器移植医療部長)は「脂肪肝の影響や残った肝臓の容量が少なかったことが原因。感染症があり、術後の回復もかなり厳しい」としている。
 医学部倫理委員会は同日、「ドナーの生命を最優先する原則に従い、緊急避難のケースとして実施する」として、手術を承認した。
 名古屋大の手術は、代謝異常の肝臓病の患者に健康な人の肝臓の一部を移植。この患者の、まだ機能する肝臓を京大に送る。
 京大は九○年に生体肝移植を開始。中心的施設として約九百回の実績があり、国内外に手術を普及するけん引役となってきた。(了)」
[2003-01-27-12:30]

◆2003/01/27 <ドミノ肝移植>重体のドナーに再手術 京大病院
 毎日新聞ニュース速報
 「京都大病院(京都市左京区)で昨年8月、自分の娘への生体肝移植のドナーとして肝臓の一部を摘出した40歳代後半の女性が肝不全で重体になり、同病院 は27日午後、名古屋大病院で生体肝移植を受けた代謝性肝疾患の30歳代の患者から摘出した肝臓を用いたドミノ肝移植を始めた。28日未明に終わる見込 み。国内で約2000例ある生体肝移植で、ドナーが重体になり、再手術が必要になるのは初めて。健康な体にメスを入れる移植治療のあり方に改めて論議を呼 びそうだ。
 京大病院によると、女性が臓器提供した娘は10歳代後半。胆道閉鎖症のため94年に父親から生体肝移植を受けており、2度目のドナーは近親者ではこの女 性しかいなかった。
 生体肝移植で肝臓が再生するには通常35%以上残す必要があるが、この女性は高血圧のうえ中等度の脂肪肝だったため摘出量が多くなり、約30%しか残ら なかったという。
 女性は摘出手術後、歩けるまで回復。一度は一般病棟に移り肝容積も再生したが、腹水が止まらず、化のう性胆管炎と肺炎を合併して肝不全が進行。今月に 入ってこん睡状態に陥っていた。
 ドナーの生命を優先するため、同大医の倫理委員会は「緊急避難」としてドミノ肝移植を承認した。移植は27日午後2時40分から始まり、名古屋大病院か らは同4時半に肝臓が到着した。手術は28日未明に終了する予定だが、女性は感染症や意識障害があるため、手術に耐え、回復できるか厳しい状態。担当する 田中紘一病院長は「ドナーや家族のため、全力で手術に当たりたい」と話している。【山崎明子】」
[2003-01-27-20:02]

◆2003/01/27 「<ドミノ肝移植>40代女性のドナーに再手術 京都大病院」
 毎日新聞ニュース速報

 「京都大病院(京都市左京区)は27日、昨年8月に生体肝移植のドナーとして肝臓の一部を摘出した40歳代後半女性に対し、生体ドミノ肝移植を行うと発 表した。国内で約2000例ある生体肝移植で、ドナーに再手術が必要になるのは初めてという。移植には、名古屋大病院で同日午後行われる代謝性肝疾患の手 術で生体肝移植移植を受ける30歳代の患者から取り出す肝臓が用いられる。
 同病院によると、女性は10歳代の娘に生体肝移植をするため、肝臓の一部を摘出。その際、通常は35%残す肝臓を、高血圧のうえ中等度の脂肪肝だったた め、約30%しか残さなかったという。
 女性は摘出手術後歩けるまで回復。一度は一般病棟に移り、肝容積も回復したが化のう性胆管炎、肺炎を合併して肝不全が進行していた。昨年12月からこん 睡状態に陥っていた。
 ドミノ肝移植は27日午後から28日未明に行われる予定。女性は感染症や意識障害があるため、手術に耐え、回復できるか厳しい状態。ドナーの生命を優先 するため、同大医の倫理委員会では「緊急避難」のケースとして移植を承認した。【山崎明子】」
[2003-01-27-13:37]

 

◆2003/02/28 20:20 <生体ドミノ移植>手術受けた肝臓の一部を別の患者に 新潟
 毎日新聞ニュース速報

 「新潟市の新潟大医学部付属病院(下條文武院長)は28日、今年1月に生体ドミノ肝移植を受けた60代男性の肝臓の一部を、新たに重症の代謝性肝障害の 30代男性に移植したと発表した。手術後の経過は2人とも順調。新潟大などによると、このような時間差のあるドミノ移植は非常に珍しい。
 同病院によると、60代男性は肝臓が異常たんぱく質を分泌する難病「家族性アミロイド・ポリ・ニューロパシー」(FAP)のため、1月に健康なおいの肝 臓を移植。男性の肝臓の一部をさらに、10代女性に移植するドミノ移植を行った。
 今回は、60代男性自身の肝臓のうち、前回手術で残しておいた部分を30代男性に移植。手術は27日午前9時過ぎに始まり、28日午前8時過ぎに終了し た。
 残っていた肝臓は近く摘出する予定だった。しかし、同病院は、この肝臓が前回手術後も正常に機能していることを確認して、同大医学部倫理室に移植の実施 を申請し、承認された。60代男性の肝臓はFAPだが、発症するまでは20年前後かかるとみられている。一方、30代男性は生命に危険が迫っていた。
 手術を担当した畠山勝義・第1外科診療科長は「今後も条件が合えば、(同様な手術を)行いたい。一つの肝臓で2人を助けられる」と話している。【柴田真 理子】」
[2003-02-28-20:20]

 
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◆2003/05/07 「生体肝移植―提供者の死の重み」
 朝日新聞ニュース速報

 「10代後半の娘に肝臓を提供した40代の母親が京大病院で亡くなった。
 生まれつきの病気を持った娘は、94年に父親の肝臓の一部を移植する手術を受けた。だが、再び肝機能が悪化し、昨年8月に今度は母親から肝臓をもらっ た。
 ところが母親は手術が原因で昨年末から意識不明の重体に陥り、快復しなかった。
 今は退院している娘さんにとって、あまりにつらい知らせだろう。家族の悲しみ、やりきれなさを思うと、言葉がない。
 健康な人の肝臓をもらう生体肝移植は国内ですでに2300例を超えている。提供者が亡くなったのは初めてだ。
 きわめてまれな事態ではある。しかし、健康な人が臓器を提供したために亡くなった事実は、重く受け止めざるをえない。
 専門医らでつくる日本肝移植研究会はすでに今回のケースについて詳しく調査している。母親の肝臓を多く取りすぎたこと、母親自身が肝臓病だったのに手術 前にそれを突き止める検査をしなかったこと、残った肝臓の量が少ない場合の危険性について母親らに対して十分説明しなかったこと。そうした問題点を指摘し た。
 生体肝移植は80年代末から始まった。世界的には、健康な体にメスを入れること自体を非倫理的だとする考えが根強い。しかし、脳死者からの臓器提供が少 ない日本では、生体肝移植が年々増えた。当初は親から幼い子への移植に限られていたが、次第に大人から大人への提供も一般化した。
 大人同士だと、提供者の肝臓は半分以上切り取ることが多い。移植した先で機能するためには十分な大きさが必要だからだ。
 提供者の肝臓は3分の1程度を残せば大丈夫といわれているが、今回は4分の1しか残っていなかった。生体肝移植をリードしてきたと自負する京大に、慣れ から来る慢心や過信がなかったのだろうか。
 手術前の説明が不十分だったことは、京大も認めている。
 患者を抱えた家族は追いつめられた気持ちになりがちだ。だからこそ、危険性も含めて、説明を尽くすべきである。
 そのうえで、医療チームとは独立した専門家が相談に乗り、当事者が冷静に判断できるよう援助する仕組みが欲しい。
 昨年、父親の河野洋平元外相に肝臓を提供した河野太郎衆院議員が「生体肝移植を美談にしないでほしい」と訴えているのは傾聴に値する。
 自分の体を傷つける決断は重い。手術について最新情報を入手したうえで、だれからも圧力をかけられずに決断できる環境が保障されなければならない。提供 者になる勇気と同じくらい、自分の体と家族を守っていく勇気も大切だ、というのだ。
 患者を助けたい一心から、提供者の健康と生活が二の次になる。それは、あってはならないことだ。移植医療にかかわる人々は、この原則を忘れないでほし い。」
[2003-05-07-00:29]

 
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◆2003/05/20 ドナーへの説明法見直しへ 女性の死亡受け京大
 共同通信ニュース速報

 「生体部分肝移植で肝臓の一部を提供した女性が手術後に死亡した問題で、京都大医学部の倫理委員会が二十日開かれ、手術の経緯を検証し、臓器提供者(ド ナー)や患者にリスクを説明する方法の見直しを議論した。
 学外の専門家でつくる日本肝移植研究会の調査で、容体悪化の原因は女性が肝硬変に進行する非アルコール性脂肪性肝炎だったことが手術前の診断で分からな かったことや、摘出された肝臓が計画より多く、機能の維持に十分な肝臓が残らなかったためだと指摘されている。
 京大の調査委員会も倫理委にほぼ同じ結論を報告しており、倫理委では事前に肝臓を大きく摘出した場合の危険性を説明するなど、インフォームドコンセント (十分な説明と同意)の方法を再検討する。
 生体肝移植は国内で二千例以上になるが、女性は臓器提供者が死亡した初めてのケースだった。(了)」[2003-05-20-19:08]

◆2003/05/20 <生体肝移植>残存肝少なく肝不全 ドナー死亡で京大倫理委
 毎日新聞ニュース速報

 「京都大病院で肝臓の一部を娘に提供した40歳代後半の女性が肝不全で死亡した問題で、京大「医の倫理委員会」(赤林朗委員長)は20日、女性が非アル コール性脂肪性肝炎(NASH)で、摘出後の残存肝が少なかったため、術後の肝不全を誘発した可能性があるなどとする内部検証をまとめた。また、京大は、 移植外科チームが、医学的情報が少ないため、NASHについては念頭に置いていなかったことを明らかにした。
 京大によると、女性は、手術方式の変更で、摘出後の残存肝が予定より少ないわずか28%だった。委員会は、「今回は緊急の症例だった」と位置づけたが、 同病院で通常3回行っているインフォームド・コンセントを2回しかしなかったことや、残存肝が少ない場合の危険性についての説明が不十分だったことを認め た。倫理委は、今後のインフォームドコンセントの際は、日本でもドナーの死亡例があることを患者に十分説明することなどを提言した。【山崎明子】」
[2003-05-20-23:52]

 
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◆2003/10/07 「生体移植の適用「16歳以上」に拡大…学会が改正案」
 読売新聞ニュース速報

 「日本移植学会(深尾立理事長)は7日、親族間を原則としていた、肝臓や腎臓などの生体臓器移植の適用範囲を拡大する倫理指針の改正案を公表した。
 親族以外からの提供に道を開くほか、特例として16歳以上20歳未満の未成年からの提供も認める。今月27日の同学会総会で正式に決定する。
 改正案によると、親族以外から提供を受ける場合は、実施する医療機関の倫理委員会で個別に承認を受けるのが条件。16歳以上の未成年が提供者となる場 合、十分な説明を受けた上で精神科医などが成人に匹敵する判断能力があることを認定することなどを条件とした。」[2003-10-07-20:15]

 
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◆「生体肝移植:「途中辞退」の権利、4割が説明文に記載せず」
 毎日新聞 2006年7月23日 3時00分

 健康な人が肝臓の一部を提供する生体肝移植で、実施医療機関の約4割が、提供者(ドナー)への説明文書で、提供を途中でやめる権利があることを記載して いないことが、厚生労働省の研究班(班長=里見進・東北大教授)の調査で分かった。事態を重視した日本肝移植研究会は、同研究班が試作した「自己点検シー ト」を各医療機関へ配布し、ドナーの意思確認の徹底を求めていく。
 生体肝移植は、家族や親族間で行われるケースが多い。特に法令などによる基準はないが、ドナーの判断で断念することも当然の権利とされている。
 調査は、全国の生体肝移植を実施している56医療機関を対象に実施し、提供者に説明する際に使っている資料の送付を求めた。回答は、41施設からあっ た。
 資料を分析した結果、提供を途中で辞退する権利があることについて、資料に記載されていたのは59%(24施設)にとどまり、不徹底さが浮き彫りになっ た。
 このほか資料への記載率が低かったのは、「移植のおおまかな流れ」(17%)、「傷や痛み」(12%)など。逆に記載率が高かったのは、「術後の合併症 と治療」(93%)、「入院期間」(76%)などだった。
 日本肝移植研究会が04年にまとめた調査では、提供者の半数近くが術後に傷口のまひなどの自覚症状を訴えている。
 研究班が試作した点検シートは、肝移植に関する理解や移植の意思を再確認することを目指すもので、手術に要する期間や体調への影響、提供者の精神状態、 周囲の理解、相談相手の有無などをチェックする内容になっている。
 里見班長は「辞退の権利や術後の体調について、口頭ではどの施設でも伝えていると思う。しかし、提供者は家族や親族を救う立場にあるため、精神的に高 ぶっている可能性がある。疑問やわだかまりを解消し、冷静に判断するため、点検シートを活用してもらいたい」と話している。【永山悦子】」

◆「夫へ生体肝移植、ドナーの妻両足マヒ…群大で投薬ミス」
 読売新聞 2006/07/24 23時58分更新

 「前橋市の群馬大医学部付属病院(森下靖雄院長)で昨年11月、夫に生体肝移植を行うため、肝臓の一部切除手術を受けた群馬県内の50歳代の女性に、投 薬ミスから両足マヒの後遺症が残ったことが24日、わかった。
 厚生労働省によると、生体肝移植で手術ミスにより臓器提供者(ドナー)が後遺症になったのは初めて。同病院では当面、生体肝移植を見合わせるという。
 病院の説明によると、30歳代の男性執刀医は、女性の体質などから血栓症を起こす可能性が高いと判断し、血液を凝固しにくくする薬剤「ヘパリン」を運用 指針の3〜5倍の量を投与するよう看護師に指示。
 このため、麻酔用のカテーテルを挿入した際に脊髄(せきずい)付近で多量の出血があり、血腫(けっしゅ)ができた。この血腫が脊髄を圧迫し、神経を損 傷。女性は半年間リハビリを続けたが、両足マヒは回復しなかった。」

◆「生体肝ドナー女性が両下肢まひ=術後に薬品過剰投与−群馬大病院」
 時事通信 2006/07/24 23時0分更新

 前橋市の群馬大学医学部付属病院(森下靖雄院長)で、2005年11月、夫に肝臓を提供した県内の50代女性が、移植手術後の薬の過剰投与で両下肢にま ひが残る後遺障害に陥っていたことが24日、分かった。病院側はミスを認め、家族や患者に謝罪した。
 生体肝移植の提供者(ドナー)が医療ミスで重い後遺症になったことが確認されたのは初めて。 

◆「<生体肝移植>女性に薬剤過量投与で重い後遺症 群馬大病院」
 毎日新聞 2006/07/24 20時54分/2006/07/25 00時7分更新
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060724-00000105-mai-soci

 「群馬大学医学部付属病院は24日、生体肝移植ドナーの患者に薬剤の過量投与から両下肢まひの重い後遺症が残ったと発表した。森下靖雄院長は医療ミスと 認め、「患者と家族に深くおわびする」と陳謝した。日本肝移植研究会(会長、門田守人大阪大教授)によると、生体肝移植でドナーに重い後遺症が残るのは初 めて。
 同病院によると、患者は群馬県内に住む50代の女性で、昨年11月に生体部分肝移植ドナーの手術を受けた。術後2日目に麻酔剤を流すための硬膜外カテー テルを差し込んだ脊髄付近から多量の出血があり、両下肢の完全まひが確認された。
 調査の結果、肺血栓などの合併症予防のための血液凝固阻止剤「ヘパリン」を通常の2〜5倍投与したことにより、副作用の出血が増え、脊髄損傷を引き起こ したという。提供を受けたのは50代の夫で、手術の3カ月後に感染症で死亡した。
 手術を担当したのは第1外科の医療チームで、30代の担当医がヘパリンの投与量を決め、執刀は別の医師が行った。同病院は「担当医の判断が甘かったと言 わざるを得ない」と説明した。【伊澤拓也】
 ◇「ドナー安全対策委員会」で調査
 群馬大病院での医療ミスを受け、日本肝移植研究会は内部の「ドナー安全対策委員会」で同病院から報告受けるなど調査することを決めた。
 研究会によると、国内での生体肝移植は89年に島根医大(当時)で初めて行われて以降、毎年増え続け、05年末までに約3800例が実施された。過去の 事故では03年に京都大で娘に肝臓の一部を提供した女性が、死亡したケースがある。この時は、移植する臓器の機能を確保するため、ドナーの体内に残した肝 臓が通常より少なかったことなどか ら、肝不全を発症して死亡した。
 同研究会がドナー経験者(2667人)を対象に04年に実施した調査によると、約14%の人が「術後の経過が悪い」と答えており、具体的には傷跡の引き つれ、感覚のまひ、疲れやすさなどで、ドナーの健康管理が課題となっていた。
 安全対策委の清沢研道委員長(信州大医学部教授)は「生体肝移植は、健康な人から肝臓の一部の提供を受けるため、通常以上に注意深く手術しないといけな い。このような障害の残るミスはあってはならないことで厳粛に受け止めないといけない。委員会で徹底的に調査したい」と話している。
 また、同研究会ドナー調査委員会の委員を務める信州大病院の橋倉泰彦・移植医療センター長は「健康な方への肝切除という手術には元々、一定のリスクがあ ることを改めて認識させられる事例だ。これからドナーになろうという方への心理的な影響は否めないだろう」と懸念する。【大場あい、須田桃子、根本毅】」

◆「生体肝ドナー下半身不随 群馬大、薬過剰投与で」
 共同通信 2006/07/24 21時6分更新

 【写真】記者会見で頭を下げる群馬大病院の森下靖雄院長(中央)ら
 =24日午後7時ごろ、群馬県前橋市の同病院

 「群馬大病院で昨年11月に行われた生体肝移植手術で、夫に肝臓を提供した50代女性が手術後、血液凝固阻止剤「ヘパリン」の過剰投与が原因で脊髄(せ きずい)を損傷し下半身不随になっていたことが24日、分かった。
 同病院は医療ミスを認め、女性や家族に謝罪。夫は手術後の今年3月に感染症のため死亡した。
 日本肝移植研究会によると、生体肝移植は国内で4000例弱実施。京都大病院で提供者(ドナー)となった40代女性が多臓器不全で死亡した例はあるが、 ドナーが医療ミスで重い後遺症になったのは初めて。また、移植を受けた患者の生存率も1年後は約82%、3年後は約78%と高い。」

◆2006/07/26 「ドミノ肝移植患者、6年半で難病発症…想定は20年後」
 読売新聞 2006.7.26

 「玉突き式に移植を行う生体ドミノ肝移植を1999年に受けた患者が、移植した肝臓に原因のある神経障害の難病を6年半後に発症していたことがわかっ た。
 熊本大の医療チームが国内で初めて確認した。
 これまで実施されたドミノ肝移植ではすべて、同じ難病の患者の肝臓が利用されてきたが、20年程度とみられていた予想よりかなり早い発症だった。
 移植後の生存率を高めるため、過去の患者の追跡調査を徹底し、どのような患者を対象にすべきか、指針の策定が求められそうだ。
 熊本大大学院の安東由喜雄教授によると、患者は50代の女性。肝硬変のため1999年7月、国内で初めて、ドミノ肝移植を京都大病院で受けた。」
(読売新聞) - 7月26日14時38分更新

 ……


 
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■研究者


UP:20070411 REV:0419,20, 20101019
臓器移植  ◇歴史・年表
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