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膿疱性乾癬(汎発型)


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last update:20180908


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■紹介  膿疱性乾癬(汎発型)

◆定義(平成30年度 難病情報センターより)
・概要:「乾癬(かんせん)」という皮膚病のうち、発熱や皮膚の発赤とともに「膿疱(のうほう〜皮膚に膿がたまったもの)」がたくさん出現する病型を「膿疱性乾癬」と呼び、尋常性(じんじょうせい)乾癬(最も多いタイプの乾癬)と区別しています。膿疱は血液中の白血球が集まったものですが、細菌感染ではありません(無菌性膿疱と呼ばれます)ので、他人に伝染する心配はありません。膿疱性乾癬はさらにいくつかの病型に区別されます。膿疱性乾癬の皮疹が、体の一部だけ(てのひら、足の裏、指先など)にみられる病型(限局型と呼ばれます)や、環状の乾癬皮疹に小膿疱が混じる病型があります。また、尋常性乾癬の患者さんに一時的に膿疱を生じることがあります。これらの病型は、通常、全身症状は軽度で、一時的であるため特定疾患の対象外です。一方、発熱、全身倦怠感、発赤や四肢のむくみとともに全身に膿疱が出現する重症な病型があります。このような病型は「膿疱性乾癬(汎発型)」と呼ばれます。また、妊娠中に生じる膿疱性乾癬(汎発型)は、「疱疹状膿痂疹(ほうしんじょうのうかしん)」という病名で呼ばれることがあります。これらは特定疾患の受給対象です。以下に、膿疱性乾癬(汎発型)について解説します。膿疱性乾癬(汎発型)の特定疾患受給を受けている患者さんは、全国で約1,800人−1,900人います。1年間に80名ぐらいが新規に特定疾患受給対象者になっています。尋常性乾癬(最も多い病型)は男性患者が女性患者の2倍多いのですが、膿疱性乾癬(汎発型)の場合には男女差はありません。特定疾患の受給者をみると50−70歳代に患者さんのピークがあります。20−30歳代の患者さんは、妊娠中の膿疱性乾癬(汎発型)(別の病名は「疱疹状膿痂疹」)が発症するために女性患者が多くみられます。つまり、妊婦さんは膿疱性乾癬(汎発型)を発症しやすくなります。幼児や小児期にも膿疱性乾癬(汎発型)が発症することがあります。
・原因:一部の膿疱性乾癬(汎発型)患者さんには、炎症反応を抑える物質の一つである「インターロイキン(IL)‐36受容体拮抗分子(IL‐36Ra:IL‐36受容体アンタゴニストと呼びます)」が遺伝的に欠損してる例や、炎症を起こすCARD14遺伝子の機能が高いことが分かりました。つまり、炎症を止めるブレーキ役の物質が不足するか、炎症のアクセル役の分子が増加しているために、容易に全身性炎症を起こし、皮膚には発赤やむくみを生じるのです。そのほかの原因は、はっきり分かってはいません。感染症や妊娠などを契機として、皮膚の細胞やリンパ球が分泌するある種の物質(サイトカイン)が高熱の原因となり、血液中の白血球を皮膚に呼び寄せて膿疱を形成すると考えられています。
・遺伝について:一部の膿疱性乾癬(汎発型)や尋常性乾癬では家族内で発生する(遺伝する)ことが知られ、いくつかの遺伝的因子があることが分かってきました(乾癬疾患感受性遺伝子:PSORSと呼ばれています)。最近、膿疱性乾癬の一部では、炎症反応を抑える物質の一つであるインターロイキン(IL)36受容体拮抗分子(IL‐36Ra)が作れない患者さんがいることが分かりました。IL36RNというIL‐36受容体拮抗分子を作り出す遺伝子は、両親から受け継いだ二対の遺伝子からなりますが、その両方に何らかの異常がみられると、この分子を作れません。どちらか片方だけ異常の場合でも膿疱性乾癬(汎発型)を発症することもあります。不思議なことに両方の遺伝子に異常があっても発症するとは限りません。もう一つ、CARD14という遺伝子の機能が高いために、炎症を起こしやすい患者さんがいることが分かりました。乾癬で知られている他の遺伝子異常とIL36RN遺伝子やCARD14遺伝子異常が組み合わされた場合にどのような病型をとるのか未だ不明です。しかし、これらの遺伝子が正常であっても膿疱性乾癬(汎発型)が発症することも多いので、未知の遺伝的要因やその他の要因が発症に関連していると思われます。
・症状:最初に灼熱感とともに全身に紅斑(こうはん〜皮膚の赤み)ができます。多くの患者さんは、この時に寒気がして高い熱が出ます。また、全身がむくんだり、関節が痛んだりすることもあります。それに引き続いて、紅斑の上にたくさんの膿疱が出てきます。一部の患者さんでは、眼の炎症(結膜炎、虹彩炎、ブドウ膜炎など)が一緒に出ることもあります。皮膚に膿疱が多発すると、皮膚の大切な機能であるバリア機能が下がり、体内の水分バランスは崩れやすくなります。また、高い熱が出ることが多く、体力を消耗してしまいます。こういった状態が長く続くと、心臓や腎臓に負担がかかり、特に高齢の患者さんでは命にかかわることもあります。適切な治療によって、皮膚の赤みは徐々に消え、膿疱は破れて皮がむけて治ってきます。その後は、全く正常の皮膚に戻る場合、通常の乾癬(尋常性乾癬)の発疹に変化していく場合、あるいは手足に膿疱が出たり消えたりを繰り返す場合などいろいろです。
・治療法:同じ膿疱性乾癬(汎発型)でも患者さんの年齢、妊娠や他の病気の有無、重症度、使用する薬剤の副作用などを総合的に判断して治療法を選択する必要があります。現在は、 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドラインが作成されているので、それぞれの患者さんに適した治療を選択することが可能です。膿疱性乾癬(汎発型)のほとんどの患者さんでは、入院治療が必要です。安静を保ち、高熱に対して解熱剤を使用し、点滴で水分バランスを補正し、皮膚のバリア機能を補うために軟膏を外用します。膿疱性乾癬に効果のあるいくつかの治療薬や治療機器が開発されていますが、妊婦・授乳婦や小児の患者には使用できない薬剤や、長期使用に注意が必要な場合がありますので、医師の指示に従ってください。膿疱性乾癬では、ビタミンA酸の誘導体であるエトレチナート(商品名チガソン)という内服薬が最も使用されています。免疫抑制剤であるメトトレキサート(平成26年、保険適応なし)やシクロスポリンが使われることもあります。最近では、生物学的製剤のうちTNFα阻害薬も用いられます。さらに、血液を体外で専用カラムに活性化した好中球や単球を吸着させる療法(顆粒球・単球吸着除去療法:GMA)が保険適応になりました。紫外線治療(PUVAやNBUVB)が併用される場合もあります。これらの治療が無効なときや、患者さんの全身状態がおもわしくない場合は、副腎皮質ホルモン剤の全身投与が使用されることもあります。さらに、これらの治療法を組み合わせることもあります。


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■関連サイト

◆難病情報センター 膿疱性乾癬(汎発型) (平成30年度)
 [外部リンク]膿疱性乾癬(汎発型)
[外部リンク]稀少難治性皮膚疾患研究 稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班
[外部リンク]公益社団法人 日本皮膚科学会
[外部リンク]乾癬ネット
[外部リンク]小児慢性疾患情報センター


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■文献



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■ニュース

◆2018/5/25 「アッヴィ、乾癬の治療薬として「リサンキズマブ」を日本で医薬品製造販売承認申請」
『日本経済新聞』
 ・リサンキズマブはIL‐23のp19サブユニットに結合し、IL‐23を選択的に阻害するよう設計された開発中の化合物で、12週間に1回投与の乾癬治療薬。
・4つの乾癬の適応症(既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症)について同時に申請。
・国内と海外の第V相臨床試験を合わせ、2,000人以上の患者さんにおける有効性と海外の第V相臨床試験の結果から、リサンキズマブ投与群は対照薬群(プラセボ群、アダリムマブ群、ウステキヌマブ群)と比較して、有意に高い皮膚症状(PASI90、sPGA0/1)の改善率を達成。
アッヴィ合同会社(本社:東京都港区、社長:ジェームス・フェリシアーノ)は、本日、開発中のインターロイキン23(IL‐23)阻害剤、リサンキズマブ(遺伝子組換え)(以下、リサンキズマブ)について、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応症として、日本国内における医薬品製造販売承認申請をしました。リサンキズマブが承認された場合、日本で承認される乾癬に適応をもつ生物学的製剤のうち最も投与頻度が少ない12週間に1回の皮下注射による治療法となります。本申請は、国際共同治験と国内臨床試験に基づいたものです。中等症から、重症の尋常性乾癬患者さん(関節症状のある患者さんも含む)2,000人以上を評価したリサンキズマブの国際共同治験の第V相試験は、主要な4つの臨床試験、ultIMMa‐1、ultIMMa‐2、IMMhance、IMMVentで構成されました。4つの試験の主要評価項目を通して、新たな安全性のシグナルを検出することなく、リサンキズマブは全ての主要評価項目と重要な副次評価項目を満たしました。国内の臨床試験では、中等症から重症の尋常性乾癬及び関節症性乾癬の患者さんに対するリサンキズマブの評価に加え、乾癬症紅皮症と膿疱性乾癬の患者さんについても有効性と安全性が検討されました。この結果から、患者さんの慢性的な皮膚症状の負担を長期的に軽減する一助となることが期待されます。リサンキズマブは現在開発中の治療薬であり、有効性と安全性は確立していません。

◆2018/3/23 「ヤンセンファーマ、「トレムフィア皮下注100rシリンジ」が乾癬治療薬として製造販売承認を取得」
『日本経済新聞』
 ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:クリス・フウリガン、以下、「ヤンセン」)は本日、ヒト型抗ヒトインターロイキン(IL)‐23p19モノクローナル抗体製剤、「トレムフィア(R)皮下注100rシリンジ」(一般名:グセルクマブ[遺伝子組換え]、以下、「トレムフィア」)について、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症を適応症として製造販売承認を取得しました。トレムフィアは、日本初の、IL‐23のサブユニットタンパク質であるp19を特異的に阻害するモノクローナル抗体です。乾癬は正常の約30倍にも及ぶ表皮細胞の異常増殖が特徴で、その病態にはヘルパーT細胞17(Th17)が大きく関与していると考えられています。IL‐23は、Th17の分化、増殖およびその維持に関与するサイトカインであり(1)、トレムフィアは、IL‐23のp19サブユニットに結合することによってIL‐23の活性を特異的に阻害し、IL‐23の下流にあるTh17へのシグナル伝達を抑制します(2)。今回の承認は、中等症から重症の局面型皮疹を有する乾癬患者(関節症性乾癬患者を含む)を対象にした国内第V相試験(PSO3004試験)において、トレムフィアの有効性および安全性が確認されたことに基づくものです。PSO3004試験では、プラセボ(64例)、本剤50r(65例)、本剤100r(63例)を0および4週、その後8週間隔で皮下投与しました。本剤100r群においてPASIスコアがベースラインから90%以上、100%改善した患者さんの割合(以下、PASI90、PASI100)は、投与16週後でPASI90が69.8%、PASI100が27.0%であり、主要評価項目の一つである投与16週後のPASI90でプラセボ投与群(16週後でPASI90は0%)に比べて統計学的に有意に高い結果となりました。さらに投与52週後の観察においても、PASI90は77.8%、PASI100は47.6%で、効果の継続が確認されました。また、関節症性乾癬患者に関しては、PSO3004試験および海外第U相試験(PSA2001試験)において、膿疱性乾癬患者および乾癬性紅皮症患者に関しては、国内第V相試験(PSO3005試験)において、トレムフィアの有効性および安全性が確認されました。ヤンセンの代表取締役社長であるクリス・フウリガンは、次のように述べています。「私たちは、乾癬など免疫疾患の薬剤に科学的進歩をもたらすことをコミットしています。そこには、薬剤による治療効果や患者さんの治療経験をより改善できる機会が残されているからです。この革新的な新薬であるトレムフィアによって、一人でも多くの乾癬患者さんに貢献できることを期待しています。」

◆2016/11/25 「【新薬品】乾癬治療薬「トルツ皮下注」ようやく発売 日本イーライリリー、鳥居薬品」
『薬事日報』
 日本イーライリリーと鳥居薬品は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症を適応症とした抗IL‐17A抗体「トルツ皮下注80mgオートインジェクター・同シリンジ」(一般名:イキセキズマブ)を新発売した。乾癬治療薬として国内初承認のオートインジェクター型注入器のある製剤となっている。イーライリリーにとっては、自己免疫疾患領域で国内初参入となる。トルツは、乾癬の病態に深く関与しているIL‐17Aに高い親和性で結合し、その活性を中和するモノクローナル抗体。日本イーライリリーと鳥居薬品は、国内で皮膚科領域における販売提携契約を結んでおり、トルツの皮膚科領域は両社で、関節症性乾癬についてはリウマチ疾患領域の医療従事者に対して日本イーライリリーが情報提供を行う。トルツをめぐっては、中央社会保険医療協議会の審議で、類似薬と比較して高い薬価が設定されたことから、日本イーライリリー側が薬価収載申請を一度取り下げ、薬価の再申請が行われていた。

◆2006/11/04 「皮膚難病 正しく理解を 岡山大附属病院・岩月科長に聞く 患者会や診療連携 支援の輪広げたい」
『山陽新聞digital』
 皮膚病の中にも、そのイメージからなかなか結び付かないが難病がある。どのようなものがあり、また岡山県における医療機関の取り組みはどうなっているのか。岡山大附属病院(岡山市鹿田町)皮膚科科長で、岡山皮膚難病支援ネットワーク責任者の岩月啓氏さんに聞いた。―けが、やけどで皮膚を傷めたとしても、大抵は治る。難病とはどういうものなのか。 皮膚の構成に必須の成分に生まれつき異常があるか、免疫に異常がおきると、時として命にかかわる難病になる。角層の先天異常だと、体内の水分が失われて生存できない場合もある。表皮細胞同士の接着異常があると、こすったりする刺激で皮膚が容易にはがれて水疱(すいほう)が形成される。コントロールが難しい皮膚の炎症が生じる病気や、遺伝子異常で皮膚に次々に腫瘍(しゅよう)ができる病気もある。―いわゆる難病は、厚生労働省特定疾患事業で認定されているもの。その中に皮膚難病はあるのか。 特定疾患は現在四十五あり、そのうち皮膚病変を生じる難病は約三分の一。認定されている先天性異常に先天性表皮水疱症、自己免疫性疾患に天疱瘡(てんぽうそう)や、激しい皮膚病変と全身性炎症を伴う汎発性(はんぱつせい)膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)などがある。皮膚や神経系に異常が見られる神経線維腫症も皮膚科で扱う難病。また、研究事業のみの対象疾患に水疱型魚鱗癬様(ぎょりんせんよう)紅皮症(こうひしょう)などがある。―岡山県内に皮膚難病の患者はどのくらいいるのか。 しっかりとした登録制度がないため、正確な患者数をつかむことは難しい。データとして利用できるのは特定疾患の受給者数だが、これも正確なデータとは言えない。参考までに受給者数(二〇〇四年度末)を挙げると、天疱瘡七十三人、神経線維腫症四十一人、汎発性膿疱性乾癬二十一人、先天性表皮水疱症五人。―岡山県における難病の取り組みはどのようになっているのか。 岡山大皮膚科教室は、厚生労働省の稀少(きしょう)難治性皮膚疾患調査研究班とベーチェット病研究班に属している。研究班では病態解明や治療開発、地域で患者をいかに支援するかをテーマにしている。そこで二〇〇三年に、同大付属病院皮膚科を中心にして関連病院皮膚科の協力を得て「岡山皮膚難病支援ネットワーク」を設立した。―具体的な活動は。 遠隔施設から依頼された診断的検査や他科との診療連携、患者会の開催や、遺伝相談、就学就労相談にのることもある。五日の集いでは、難病相談コーナーを設ける。今後の集いでも毎年コーナーを設置する予定。皮膚難病を一般にも正しく理解してもらい、支援の輪を広げたい。※登場する人物・団体は掲載時の情報です。



*作成:戸田 真里
UP:20180908 REV:
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