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個人加盟ユニオン

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last update: 20150316
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「個人加盟ユニオン」
橋口 昌治

 日本における主流の労働組合のあり方は企業別組合であり、それは企業内、特に大企業の正規社員によって構成されてきました。それゆえ、中小企業の労働者や非正規労働者の多くは労働組合から排除されてきました。そのような労働者の受け皿として活動してきたのが、個人加盟ユニオンです。それゆえ日本では、個人加盟ユニオンは「一人でも誰でも入れる労働組合」として語られてきました。「一人でも誰でも入れる労働組合」という言い方は、正社員以外を排除する企業別組合との違いを意識した表現です。他国の一般労働組合(general union)が近い存在で、実際に「○○一般労働組合」と名乗っている個人加盟ユニオンは多いです。しかし、日本特有の企業別組合に対抗するかたちで生まれてきた点と、後述する日本独特の団体交渉法制を根拠に活動してきた点で、他国の一般組合とは異なります。
 また労働組合に個人資格で加入することは過去にも見られましたが、個人加盟ユニオンという労働運動のあり方が始まったのは1980年代です。その母体の一つとなったのは、かつて存在したナショナルセンターの総評が、中小企業労働者を組織化するために日本各地に設立した合同労組です。合同労組とは、中小零細企業の企業別組合が地域ごとに集まって作られたもので、企業別組合の連合体、個人加盟と連合体の混合型、完全な個人加盟の三種類が存在していました。1980年代に入り、パート労働者を中心に非正規労働者が急増し始めたこと、総評の解散が決定したことなどから、個人加盟ユニオンをパート労働者の受け皿として捉える運動が始まりました。それは地域コミュニティを組織化の対象としたので、コミュニティユニオン運動と自らを呼びました。そして労働相談活動を積極的に行い、非正規雇用労働者の増加に合わせてコミュニティユニオンの数と組合員は数が増えていきました。現在は全国各地に73組合あり、組合員数は1万5000人います(呉 2010)。またコミュニティユニオン運動の活躍に触発され、主に企業別組合によって構成されてきたナショナルセンターの連合や全労連も、個人加盟ユニオンを傘下に結成してきました。それぞれ全国で1万5000人ほどの組合員を擁しています(呉 2010)。
 個人加盟ユニオンの活動を支えているのは、日本特有の団体交渉法制です。日本では、日本国憲法第28条で団結権が誰にでも認められているとされ、たとえ少数派組合の組合員であっても、企業と団体交渉ができるとされています。それゆえ、仮に企業に組合員が一人しかいない場合であっても、組合は企業に対して団体交渉の申し入れを行うことができ、企業は正当な理由なく申し入れを断ることができません。このことによって、企業との団交によって、個人の労働相談の解決を支援することが可能なのです。呉(2010)は、2008年の1年間に合同労組が事業主との団交により自主解決した紛争解決件数を2387件と推定しています。これは労働局の紛争調整委員会3234 件(あっせん成立2647件+取下げ587 件29))よりは少ないですが、労働委員会271 件(解決212 件+取下げ59 件)、労働審判1028 件(2007 年)、労働関係の通常訴訟1114件(2007 年)より多いです。そしてパート労働者、過労死、派遣労働、名ばかり管理職など、1980年代以降社会問題になった労働問題のほとんどが個人加盟ユニオンの活動(と弁護士やジャーナリストの連携)によって社会に広く知られるようになりました。
 このように非常に大きな役割を果たしている個人加盟ユニオンですが、労働問題の解決した組合員の多くが退会し、組合が大きくならないことが主要な問題点です。多くの労働者にとって、ユニオンに加入している期間は労働問題を抱えている期間を意味し、その解決とともにユニオンを脱退することは自然なことかもしれません。ただ再度問題が発生したときに、ユニオンに相談をするという事例は見られます。しかし組合員数が増加しないことによって、都市部にある有名な組合であっても常に財政難や後継者不足を抱えています。また、企業の労働法違反や非倫理的な行為の摘発(マイナスを減らすこと)が主で、企業内での組合員を増やし賃上げなどの労働条件の向上を実現できないという問題点も指摘されてきました。これらの問題点はユニオンの活動家自身も意識しており、より洗練されたメディア戦略の採用、共済制度の設立、交流会の開催、組合活動に参加しやすい制度(交通費支給など)や雰囲気の醸成など、相談件数を増やしたり組合員を定着させるための工夫と努力が日々取り組まれています。

呉学殊,2010,「合同労組の現状と存在意義――個別労働紛争解決に関連して」『日本労働研究雑誌』No.604,47-65.


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*作成:橋口 昌治小川 浩史
UP: 20150312  REV: 20150316
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