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脱施設 2006

施設/脱施設


■文献等
■ニュース など

◆20060131 船形コロニー「2010年解体、困難」 村井知事が視察、見直し示唆 /宮城県――朝日新聞

◆20060131 船形コロニー:知事が視察「4年後の閉鎖難しい」 計画の見直し意向示唆 /宮城――毎日新聞

◆20060131 「2010年までに閉鎖は困難」 船形コロニー視察、村井知事が表明=宮城――読売新聞

◆20060206 (ニュースインサイド)一家、地域から孤立 北九州の通院男性、両親殺傷事件/福岡県――朝日新聞

◆20060207 船形コロニー解体:計画見直し求める意向表明−−村井知事 /宮城――毎日新聞

◆20060207 船形コロニーの「解体宣言」見直し表明へ あす村井知事と浅野氏会談=宮城――読売新聞

◆20060209 障害者自立、国が目標値 「脱・施設」鮮明に――朝日新聞

◆20060209 宮城県の知的障害者施設、「解体」期限を知事撤回――朝日新聞

◆20060209 船形コロニー:「10年まで閉鎖」計画撤回で合意−−村井知事、浅野前知事 /宮城――毎日新聞

◆20060209 船形コロニー「解体宣言」見直し表明 会談で知事、浅野氏も受け入れへ=宮城――読売新聞

◆20060215 県:一般会計は1兆4268億1600万円−−新年度県予算案 /千葉――毎日新聞

◆20060220 船形コロニー:「存続を」 育成会が要請方針確認 /宮城――毎日新聞

◆20060315 施設の障害者を地域生活に 来年度から計6万人/厚労省発表――読売新聞

◆20060319 (船形コロニーから 揺れる「施設解体」:上)地域移行、悩む家族 /宮城県――朝日新聞

◆20060320 (船形コロニーから 揺れる「施設解体」:下)退所後、どう支える /宮城県――朝日新聞

◆20060321 (社説)精神障害者 まちで暮らせるために――朝日新聞

◆20060404 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:1)脱施設 新法施行、家族に不安 /福島県――朝日新聞

◆20060405 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:2)グループホーム 整備に遅れ /福島県――朝日新聞

◆20060406 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:3)就労支援 低賃金、進まぬ雇用 /福島県――朝日新聞

◆20060407 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:4)日中活動の場 求められる安定 /福島県――朝日新聞

◆20060408 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:5)地域連携 職員派遣し人材育成 /福島県――朝日新聞

◆20060805 県、施設定員1割減へ 11年度までに49施設の270人分 障害福祉計画 /栃木県――朝日新聞

◆20060805 [ルポ・福祉の現場](3)「地域移行」停滞も(連載)=千葉――読売新聞

◆20060807 [ルポ・福祉の現場](5)理念良いが実現困難(連載)=千葉――読売新聞

◆20060823 精神科患者:病棟に退院支援施設、厚労省検討 「数字合わせ」批判も――毎日新聞

◆20060824 精神科患者・退院支援施設計画:撤回を 患者団体が交渉――毎日新聞

◆20060902 (私の視点ウイークエンド)障害者自立支援法 福祉共生社会に逆行 山田雅人――朝日新聞

◆20060916 (土曜特集)負担増やはり、不安募る 障害者自立支援法、利用者は… /新潟県――朝日新聞

◆20060927 精神科病院の退院支援施設転換 計画実施は来年4月に/厚労省――読売新聞

◆20061118 検証:村井県政の1年/中 知事のカラー /宮城――毎日新聞

◆20061122 [検証・村井県政1年](上)リーダーシップ(連載)=宮城――読売新聞

◆20061124 [検証・村井県政1年](下)知事インタビュー(連載)=宮城――読売新聞


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◆20060131 船形コロニー「2010年解体、困難」 村井知事が視察、見直し示唆 /宮城県――朝日新聞

県福祉事業団(現在の県社会福祉協議会)が2010年に解体すると宣言した知的障害者の入所施設「船形コロニー」(大和町)で、入所者の家族が解体方針の見直しを求めている問題で、村井嘉浩知事は30日、コロニーなどを視察し、「10年の解体は物理的に難しいのではないか」と見直す考えを示唆した。2月中旬に開会する県議会前にも、社協会長の浅野史郎・前知事と会談し、最終的な対応を決めるとしている。
 村井知事はこの日、船形コロニーを視察し、入所者の家族で構成する「船形コロニー育成会」や社協の職員と意見を交わした後、大和町内のグループホームを回った。
 意見交換会では、育成会のメンバーが、施設からグループホームなど地域に移った元入所者の家族を対象に実施したアンケート結果を公表した。164通を送付し、83通の回答を得たという。
 それによると、「地域移行をしてどう感じているか」との質問に、「移行してよかった」が34%、「どちらともいえない」が38%、「コロニーにいた方がよかった」が28%。メンバーらは「必ずしも地域移行が望まれているわけではない」などとコロニー存続を要望した。
 視察後、村井知事は報道陣の質問に答え、「社協も育成会も地域移行を進めていくという方向性は同じだ」とした上で、10年までのコロニー解体の撤回のほか、今後は新たな入所者の受け入れを認めることも検討する考えを示した。施設解体宣言についても、「名前が誤解を産んでいるのではないか。例えば、『地域移行宣言』などと表現を変えることも検討してみたい」と話した。

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◆20060131 船形コロニー:知事が視察「4年後の閉鎖難しい」 計画の見直し意向示唆 /宮城――毎日新聞

村井嘉浩知事は30日、入所者の地域移行計画の是非が課題となっている知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)を訪問した。村井知事は記者団に対し「理念はすばらしいが、2010年までにコロニーを閉鎖するのは難しいという印象を受けた」と述べ、運営する県社会福祉協議会(浅野史郎会長)に計画の見直しを求める意向を示唆した。

 知事が同施設を訪問したのは、就任後初めて。

 知事は入所者の部屋や食堂を見学し、入所者に声をかけるなどして施設を視察。その後、同施設職員や入所者の保護者でつくる「県船形コロニー育成会」(高見恒憲会長)の関係者との意見交換に臨んだ。

 施設側からは「本人の幸せの実現のためにも、地域への移行を着実に進めるべきだ」などの意見があがった。一方、育成会は保護者を対象にしたアンケートを提示。地域に移行した元入所者の保護者の9割が施設の存続を求めていることなどを示し「どうしても地域への移行ができない人のための場所として残してほしい」と訴えた。

 施設には当初、約500人の入所者がいたが、02年12月に旧県福祉事業団(現県社協)が10年までに施設を解体する計画を発表。その後、グループホームなど入所者の地域移行が進み、今月16日現在で287人が施設で生活している。

 一方、計画に反対する育成会は昨年12月、村井知事に見直しを求める要請文を提出。県議会保健福祉委員会も、知事に見直しを求めている。【石川貴教】

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◆20060131 「2010年までに閉鎖は困難」 船形コロニー視察、村井知事が表明=宮城――読売新聞

浅野史郎前知事が打ち出した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」に施設入所者の保護者らが反発している問題で、村井知事は30日、心身障害者施設「船形コロニー」(大和町)を視察した。宣言は船形コロニーの2010年までの解体を明記しているが、知事は「2010年までに閉鎖するのはかなり難しいという印象を受けた」と述べた。
 知事は船形コロニーのうち、重度、高齢の障害者が入所する「とがくら園」を視察。施設職員から説明を聞いたり、入所者に話しかけたりした後、施設側と、宣言に反発する保護者でつくる「船形コロニー育成会」の会員たちのそれぞれの考えを聞いた。
 施設側は、地域のグループホームなどに移り、いきいきと生活している元入所者の事例を紹介し、地域移行の必要性を強調。地域の受け皿が整っていない現状で移行を進めていることについては、「移行しながら、受け皿を整備していく必要がある」などと話した。
 一方、育成会側は、地域移行した元入所者の保護者らに対するアンケート調査結果を提示。「実際に移行して利用者はどう感じているか」との質問で、「コロニーのときより喜んでいる」が34%だったのに対し、「あまり変わらない」が48%、「コロニーのほうが喜んでいる」が18%もあった。このため「受け皿が不十分なまま、重度の障害者が地域移行しても、本人、保護者とも安心して暮らせない」などと述べ、拙速な解体を行わないよう求めた。
 知事は「双方とも地域移行を進めていく点では同じ方向性だが、2010年という目標年限を定めていることで齟齬(そご)が生じている」と述べた。今後、地域移行の方法を含めた県の福祉政策や宣言の見直しなどについて検討し、県社会福祉協議会長の浅野前知事とも意見交換する考えを表明した。

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◆20060206 (ニュースインサイド)一家、地域から孤立 北九州の通院男性、両親殺傷事件/福岡県――朝日新聞

 北九州市の民家で1月、無職の男性(37)が両親を包丁で刺す事件があった。男性は駆けつけた警察官に逮捕され、母親は死亡した。男性は統合失調症の治療を受けながら両親と暮らしていたが、近所では存在すら知らない人のほうが多かった。一家は、なぜ地域から孤立していったのか。事件の背景と課題を探った。(藤井裕介)

 1月9日午後10時20分ごろ、男性の父親(当時81)から110番通報があった。警察官が急行すると、平屋建ての住宅の居間で母親(当時75)が、和室で父親がいずれも包丁で背中を刺されて倒れていた。母親は約2時間後に死亡し、父親も大けがをして入院している。
 県警の調べでは、男性は83年から03年にかけて複数回、統合失調症で市内の病院に入院していた。03年以降も通院していた。
 調べには「自分が作ったみそ汁を飲んでもらえなかったから」「両親がけんかをして眠れなかった」と動機を供述。地検小倉支部は1月31日、責任能力はあるとして男性を殺人罪などで起訴した。
 自宅近くの住民は口をそろえる。「息子さんが一緒に暮らしていたなんて、知らなかった」。隣家の人だけは「お母さんが『息子がご飯を作ってくれる』と話していて、同居は知っていた」と語るが、「回覧板を回す時、家に行っても息子さんの声は聞いたことがなかった」。
 県警によると、一家は両親の年金と男性の障害年金で暮らしていた。男性はテレビゲームなどをして、月1回の通院以外、ほとんど家から出ることはなかった。区役所保健福祉課の精神保健福祉相談員や、精神障害者の家族会に家族が相談することもなかった。
 北九州市にある家族会の一つ、「あかつき会」の事務局長、守谷栄二さん(64)は指摘する。「精神障害への偏見からか、ご両親は世間体を気にして周囲に相談もできず、息子さんを家に閉じこめることになったのではないか。それではお互いにストレスがたまってしまう」
 家族が患者と一緒に閉じこもらず、一歩外に踏み出せば、家族会のような場所でストレスを解消できるという。「家族が楽になれば、患者も楽になる。男性の両親もそれに気づいてくれれば良かったのだが」
 厚生労働省は02年、「新障害者プラン」を打ち出し、07年度までの5年間で精神障害への偏見を解消し、社会復帰を施設の中ではなく地域社会で行う「脱施設」の取り組みを進めている。
 北九州市立精神保健福祉センターの保健師、肥塚美由紀さんによると、授産施設や共同作業所といった地域の拠点は整備されつつあるが、雇用の受け皿になる企業は少ない。誤解や偏見を解くために、講演会や交流事業で「薬を飲めば症状は抑えられる」「誰でもかかる可能性があり、特別な病気ではない」と説いている。
 守谷さんの家族会は、授産施設やグループホームの設置を進めている。民家やアパートをよく利用するが、住民の多くは理解を示し、活動に参加してくれる人もいるという。
 「『精神障害者だから嫌がられるのでは』と、こちらが逆に思い込んでいた部分もあった。周囲に理解を求めていくとともに、患者と家族も偏見をなくすことから始めたい」。守谷さんは、自分に言い聞かせるように話した。

 ◆キーワード
 <統合失調症> 全国精神障害者家族会連合会の資料によると、脳(神経)の働きが活発になりすぎて、車で例えるとエンジンがオーバーヒートした状態になる病気。不眠や幻聴などの症状がある。厚生労働省の調査によると、入院または外来で治療を受けた推計患者数は全国で約23万9千人(02年)。

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◆20060207 船形コロニー解体:計画見直し求める意向表明−−村井知事 /宮城――毎日新聞

村井嘉浩知事は6日の定例会見で、入所者の地域移行計画の是非が課題となっている知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)について、運営する県社会福祉協議会に対し計画の見直しを求める意向を表明した。浅野史郎会長と8日会談し正式に伝える。

 先月30日に同コロニーを視察した村井知事は「(計画していた)10年までの閉鎖は難しいと考えた」と理由を説明した。浅野会長は見直しに否定的な考えを示しているが「イニシアチブは県にあるし、責任を取るのも私。私の考えを優先していただかざるを得ないと思う」と述べた。

 知事はまた、民間からの副知事採用については、県議会の2月定例会での提案にはこだわらない意向を示した。【石川貴教】

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◆20060207 船形コロニーの「解体宣言」見直し表明へ あす村井知事と浅野氏会談=宮城――読売新聞

浅野史郎前知事が打ち出した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」に施設入所者の保護者らが反発している問題で、村井知事は8日、県社会福祉協議会会長の浅野前知事と会談する。「解体宣言」の名称や、同宣言に明記された県の心身障害者施設「船形コロニー」(大和町)を2010年までに解体するとした数値目標について、見直す考えを伝える方針だ。
 知事は6日の会見で、「(施設入所者の)家族にどうしても反対の方がいる以上、2010年の解体は非常に難しい」と説明。施設入所者の地域移行の理念は浅野前知事と「同じ方向を目指す」としながらも、名称についても「誤解を与える可能性もあり、改めたい」と述べた。
 また新規入所について、船形コロニーは原則として受け入れていないが、知事は「どこの施設にも入所できない方を、駆け込み寺的に受け入れざるを得ないのではないか」と話した。
 船形コロニーは県が県社会福祉協議会に管理運営を委託している。このため、知事は「イニシアチブ(主導権)は県にあり、最終的に責任を取るのも私なので、私の考えを優先してもらわざるを得ない」とする。
 ただ、浅野前知事が会長を務めていることもあって、「浅野会長の話で納得できる部分があれば、私の考えを変える場合もあると思う」と配慮を見せている。

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◆20060209 障害者自立、国が目標値 「脱・施設」鮮明に――朝日新聞

厚生労働省は9日、4月からの障害者自立支援法施行に伴って都道府県や市町村が定める「障害福祉計画」のもととなる国の基本方針をまとめた。障害者施設の入所者約15万人を11年度までに約7%減らすことや、精神科病院の入院患者の5万人削減、現在年間2千人の新規民間雇用を4倍に増やすなどの数値目標を初めて設定。障害者が地域で暮らせるようにする「脱施設」の姿勢を鮮明に打ち出した。自治体が今後、この計画に基づいて必要なサービスの基盤整備を進める。(清井聡)

 厚労省が昨年10月に行った実態調査では、障害者施設の入所者は身体障害者3万9500人、知的障害者10万1800人、精神障害者4500人の計14万5800人。基本方針はこのうち1万人を11年度までに削減するとしている。
 精神科病院の入院患者については、受け入れ環境の整備など条件が整えば退院できる人を約7万人と推計、うち5万人を退院させるとした。退所・退院者は、地域のグループホームや一般住宅などに移ることになる。
 障害者の雇用は、昨年6月時点で58%の企業が法定雇用率を達成していないなど進んでいない。NPO法人などと雇用促進のネットワークをつくって職業紹介や訓練をしている自治体もあり、基本方針はこうした取り組みで雇用増を求める。
 障害者自立支援法は障害によって異なる福祉サービスを一本化。都道府県や市町村に、施設数や必要なサービス量を盛り込んだ3年ごとの障害福祉計画をつくり、サービス提供態勢を整備するよう求めている。
 今回の国の基本方針はこの計画づくりのもとになるもので、自治体には計画達成のために目標値を超える入所施設の指定拒否や、入所施設をグループホームに建て替える際の助成、ホームヘルプサービスなどの充実を図るなどの施策が求められることになる。
 これまで障害福祉予算の多くは施設に使われ、精神障害者向けのグループホームのある自治体も3割以下。このため施設で長期間過ごす障害者が多く、グループホームなど地域で暮らす「脱施設」が欧米諸国に比べ遅れていると指摘されてきた。
 02年末に閣議決定された「新障害者プラン」でも「入所施設は真に必要なものに限定する」として「脱施設」の方向性は打ち出したが、家族が施設を希望するケースも多く、その後も施設入所者は増え続けていた。
 障害者自立支援法は、自立した生活に必要な福祉サービス提供などが目的で、障害者が地域で安心して暮らせる「ノーマライゼーション」の考え方に沿ったものだが、自己負担をサービス利用量に応じた「原則1割」とする点に障害者団体などが反発していた。

■障害者の「脱施設」へ向けた居住系サービスの数値目標
<05年度(計25万人)>
施設入所者                15万人
精神科入院患者のうち退院可能と思われる人  7万人
グループホーム・ケアホーム         3万人

<11年度(計28万人)>
施設入所者         14万人
精神科入院患者        2万人
グループホーム・ケアホーム(計9万人)
 入院・入所からの移行    3万人
 それ以外          6万人(自然増3万人含む)

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◆20060209 宮城県の知的障害者施設、「解体」期限を知事撤回――朝日新聞

 宮城県福祉事業団(現在の宮城県社会福祉協議会)が02年に、2010年までの「解体」を宣言していた知的障害者入所施設「宮城県船形コロニー」(同県大和町)について、宮城県の村井嘉浩知事は8日、解体期限にこだわらずに地域移行を進めていく考えを示した。
 同県は浅野史郎前知事時代に、施設の障害者を地域に移行するとして、全国で初めて県内にある知的障害者施設の「解体」を宣言した。同コロニーは同県内の施設の象徴的存在とされている。
 同コロニーでは解体宣言に沿って、宣言当時485人いた入所者のうち今年1月中旬時点で168人がグループホームなどに地域移行したが、現在、コロニーに残っている入所者の多くは重度の障害者とされ、入所者の家族から「地域移行は無理」との声が上がっていた。

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◆20060209 船形コロニー「解体宣言」見直し表明 会談で知事、浅野氏も受け入れへ=宮城――読売新聞

浅野史郎前知事が打ち出した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」に施設入所者の保護者らが反発している問題で、村井知事は8日、県社会福祉協議会会長の浅野前知事と会談した。知事は「解体宣言」の名称使用と、2010年を期限とする県の心身障害者施設「船形コロニー」(大和町)の解体計画を見直す考えを伝えた。浅野前知事は受け入れる方針。
 会談で知事は、〈1〉10年の解体期限にこだわらず地域への移行を進める〈2〉「解体宣言」の名称を「地域移行」に変更する〈3〉障害者の新規受け入れを認める――の3点を説明。会談終了後、「『解体宣言』の文言は変更するが、浅野さんの福祉政策は踏襲する」と話した。
 一方、浅野前知事は「2010年解体の設定には無理をしないという前提があった」と説明。ただ、「コロニーには『終(つい)の棲家(すみか)』という意味があり、入所者が死ぬまで住むことを我々が決めていいのか」とし、最終的には施設を解体する必要があるとの考えを改めて示した。

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◆20060215 県:一般会計は1兆4268億1600万円−−新年度県予算案 /千葉――毎日新聞

◇1人当たり県債残高、過去最高の40・2万円
 県は14日、06年度当初予算案を発表した。一般会計は1兆4268億1600万円で、前年度(1兆4385億100万円)に比べ0・8%減となった。法人税など県税収入で約641億円(約11%)の大幅増収を見込むが、地方交付税が前年度比約600億円(約3割)減となるなど、増収に見合う予算が組めない状況。財源不足も約180億円発生し、県民1人当たりの県債(借金)残高は過去最高の40・2万円となった。【森禎行】
 □特徴

 不要事業を判別する民間シンクタンクによる「仕分け」などに基づき、廃止や見直しを実施。「選択と集中」でメリハリを付けた。約8億円の立地企業補助金を新設し、企業投資や雇用増加を見込んだ。障害者の地域移行のため、福祉作業所関係事業などにも重点配分。県立学校耐震改修事業や「空き交番」解消対策などにも力点を置いた。

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◆20060220 船形コロニー:「存続を」 育成会が要請方針確認 /宮城――毎日新聞

大和町の知的障害者施設「船形コロニー」の入所者の親などでつくる「県船形コロニー育成会」(高見恒憲会長)は19日の集会で、県に施設存続を求めていく方針を改めて確認した。同会のメンバーは「退所後も、問題があれば戻って来られるようにコロニーは必要。本人や親の将来への不安を減らしてほしい」と訴えた。

 コロニーは、浅野史郎前知事が「解体宣言」で10年までの閉鎖を発表。当初約500人いた入所者は、グループホームなどへの地域移行で約300人に減少した。一方、村井嘉浩知事は「(地域移行の)方針は同じ」としながらも、地域の受け入れ体制が整っていないことから、閉鎖時期などを見直す意向を示している。

 集会では「地域移行と並行して、コロニーの管理が手薄になってきた」「障害者も安心して暮らせるようにするのが行政の義務」などの意見が出された。

 高見会長は「解体宣言の見直しは歓迎している。今後は施設の存続を前提に、地域移行しやすい環境づくりを求めていきたい」と話した。【青木純】

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◆20060315 施設の障害者を地域生活に 来年度から計6万人/厚労省発表――読売新聞

施設や病院にいる障害者の地域移行を進めている厚生労働省は、来年度からの具体的な移行計画を公表した。施設入所の知的、身体障害者と、精神科病院で社会的入院状態になっている精神障害者の計22万人を、2011年度までの6年間で16万人に減らす。
 同省によると、施設入所者は現在15万人、精神科病院の社会的入院患者は7万人。
 計画では、このうち施設入所者1万人、社会的入院患者5万人の計6万人について、支援があれば地域で普通に暮らせるとして、地域生活に移行してもらう。行き先は、3万人はグループホームやケアホーム、残りの3万人は一般住宅や福祉ホームなどを予定している。
 必要な受け皿は、4月に施行される障害者自立支援法により、自治体と協力して整備する。
 都道府県や市町村は、地域生活を送る上で必要な福祉サービスのニーズを調べ、来年度中に障害福祉計画を策定する。

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◆20060319 (船形コロニーから 揺れる「施設解体」:上)地域移行、悩む家族 /宮城県――朝日新聞

 知的障害者施設の入所者を地域での生活に移行させようと、県が宣言した「施設解体」が揺らいでいる。施設内での閉じられた生活から、障害者自らが選んだ自立した生活への転換をめざす宣言だったが、「2010年までに」とされた目標は取り下げられた。「解体」推進の場となってきた入所施設「船形コロニー」(大和町)などを訪ね、この問題の現状をみた。
     ◇
 丘の上に続くなだらかな坂をたどると、広大な敷地にいくつもの建物が並んでいるのが目に入ってくる。「園」と呼ばれる施設が四つあり、知的障害者281人が分かれて暮らす。
 敷地の西端にある「とがくら園」。最も症状が重く、投薬や定期的な診療など医療的なケアが必要な81人が入る。
 午後6時、夕食。職員6人が二手に分かれ、食堂に集まった入居者に食事を配る。おかゆやペースト状に刻んだおかず、とろみをつけたみそ汁。症状に合わせてスプーンやストロー付きのコップが用意され、同じ献立でも一人ひとり違う食べ物のようだ。
 大勢を一度にみられないため、一部の人は自室で待ってもらい、順番に介助する。待ちきれなくなった女性(33)が、上半身裸になって泣き声を上げながら食堂に入ってきた。職員は自室に連れ帰り、服を着せる。配膳(はいぜん)だけでは済まされない現実がのぞく。
 コロニーでは、25人前後が男女別で一つのファミリーを構成する。とがくら園では、ファミリーごとに10人の職員が配置され、1日3交代で世話をする。夕食の介助を手早く済ませると、寝間着に着替えさせたりオムツを替えたり。消灯時刻の午後9時はあっと言う間に過ぎていく。
 この日当直だった係長の女性(52)は、コロニーに勤務して5年目。「小さいグループで暮らした方が良いと思う。自宅に近くて家族とも面会しやすいし、外出を楽しみにしている。何年もここにいて、施設が終(つい)のすみかになるのは、何だか悲しい」と話す。
     ◇
 知的障害者の介護の担い手は、もとは家族だった。障害者の親の働きかけなどで法整備が進んだ70年代、家族の負担を軽減するため、大型施設が取って代わった。全国に知的障害者の入所型施設が作られ、宮城県も73年に船形コロニーを開設した。民間施設では対応が難しい障害者が優先的に入所し、ピーク時は定員500人の規模になった。
 入所者は地域移行に先立ち、自立訓練を受ける。住宅風の建物やアパートなどに職員らとともに暮らし、生活習慣を身につける。2カ月から半年ほど過ぎると、県内に七つある地域支援センターの世話人に引き継がれ、地域での暮らしをフォローしていく仕組みだ。
 解体宣言以降の3年間で、これまで171人が地域に出た。現在は、意思表示が難しい入居者が数多く残り、65歳以上の高齢者が15%を占める。
     ◇
 地域移行を進める場合の課題は障害の重さだけではない。入居者の家族でつくる「船形コロニー育成会」は昨年末、解体宣言の見直しを求める活動を始めた。この1月には家族など約430人にアンケートを実施。回答した会員186人の74%が「施設での生活の方が本人にとって良い」と答えた。
 次女(32)が入所する高見恒憲・育成会会長は「家族介護で限界を感じた我々親は、コロニーができて助けられた。看護師が常駐し、安心して預けられる。地域移行を否定するわけではないが、現時点で施設を解体するのは拙速だ」と主張する。
 20年以上長男(42)を預けてきた母親(71)は、障害の重い息子の将来を思い、悩み続けている。「息子が亡くなるまでコロニーでお世話してほしい。でも、内心では、外の生活もやってみないと分からないとも思う。地域と施設とどっちが良いのか、分からないんです」
 (この連載は田中美保が担当します)

 <知的障害者施設の解体宣言> 県福祉事業団(現在の県社会福祉協議会)が02年、県から委託されて運営している「船形コロニー」の全入所者を2010年までに地域に移すことを目指す「解体宣言」を発表。04年には当時の浅野史郎知事が、県内すべての知的障害者施設の入所者を地域に移すと宣言した。現在の村井嘉浩知事は、入所者の家族らが宣言見直しを求めたことなどを受け、移行を進める上では10年までとした期限にこだわらない方針に改めた。
 県内で知的障害の療育手帳を持つ人は1万1895人(05年度)。県内の入所施設の定員は1639人(同)。

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◆20060209 船形コロニー:「10年まで閉鎖」計画撤回で合意−−村井知事、浅野前知事 /宮城――毎日新聞

◇村井知事、浅野前知事が会談

 村井嘉浩知事は8日、県社会福祉協議会の浅野史郎会長と仙台市内で会談し、入所者の地域移行計画の是非が課題となっている知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)について、計画していた10年までの閉鎖を撤回することで合意した。

 村井知事は会談で(1)10年までのコロニー閉鎖の方針を撤回する(2)「知的障害者施設解体宣言」の名称を変更する(3)他の施設での受け入れが困難な人のためにコロニーが受け入れ先となる−−の3点を提示。浅野会長はそれぞれについて了承したという。

 会談後、村井知事は「解体宣言」は「地域移行宣言」などに変更する意向を示したうえで、「表現は変えたが目指す方向は一緒だ」と述べた。

 一方、浅野会長は「名称を変えるのは趣味の問題で問題は中身だ」と指摘。しかしながら、コロニーの閉鎖については「10年の目標に向けて順調に進んでいるので(目標は)達成できると思う」とこだわりをみせた。

 「解体宣言」は浅野会長が知事時代に策定し、発表した。【石川貴教、青木純】

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◆20060320 (船形コロニーから 揺れる「施設解体」:下)退所後、どう支える /宮城県――朝日新聞

石巻市のグループホーム「こもれび」は、今月6日に開所したばかりの新しいホームだ。
 平屋建ての民家を改修し、知的障害者の入所施設「船形コロニー」から男性2人と、別の施設から比較的障害の軽い男女3人が加わり、計5人が暮らす。コロニーにはなかった個室もあり、週2日は世話人の運転する車でデイサービスに出かける。
 昨年10月にコロニーを出て、開所準備の段階からこもれびで自立訓練を受け始めた男性(44)は、小学生のときから白石市の施設に入り、その後20年近くコロニーで過ごした。心臓病も患い、医師の診察や投薬が欠かせない。
 石巻市内に住む母親(70)は「できればずっとコロニーにいさせたかった。不安もあったけれど、どうせ出るなら近くにいてほしかった」と話す。このホームを見学し、近所の医師がかかりつけ医になるなど支援が整っていたため、こもれびを選んだ。自宅から車で40分ほど。
 男性を担当したコロニーの職員は「離れて暮らしていたのが長いから、その分、お母さんはめんこい、めんこいと可愛がるんです」と説明した。
     ◇
 地域での生活につまずき、再びコロニーに戻った人もいる。
 今、コロニーの「おおくら園」で暮らす男性(45)は昨年7月、仙台市内のグループホームで先に自立訓練を受けていた男性4人に合流し、共同生活を始めた。コロニーの職員のほか世話人7人がついて2カ月を過ごした。しかし、世話人だけでケアをするようになった11月から、様子が変わったという。トイレでの排泄(はいせつ)ができなくなったり、すぐに服を脱いで裸になったり。11月末、コロニーに戻った。
 コロニーの野内信夫・地域移行推進部長は「世話人との関係や連携が不十分で、支える側に問題があった」と話す。現在は職員が週1回ホームを訪ねるようにしてフォローする態勢を強化した。
 この男性のように再入所した人は3年間で2人。もう一人はてんかんの発作で入院治療が必要になり、退院後、コロニーに戻ったという。
     ◇
 グループホームでの生活そのものが目標ではない。大郷町のグループホーム「おおさとホーム」で4人暮らしの男性(37)は10年前、コロニーから出た。週5日、バスで隣町まで清掃の仕事に出ているが、次は徒歩で通える近くの職場を探そうと思っている。「いい人が見つかれば、結婚もしてみたい」とはにかむ。
 おおさとホームなどのコロニー退所者をフォローする仙台北地域福祉サービスセンター「ぱれっと」(大和町)の三浦毅センター長は「施設では受け身で過ごせたが、そのままの意識で地域に出て働き始めても続かない。自信や責任を育て、やる気や意欲を引き出すことが重要になる」と指摘する。
     ◇
 障害者本人の努力だけでなく、受け入れる環境も必要だ。就労先や、生活を楽しむ活動の場の確保、グループホームへの住民の理解――。「ぱれっと」では、昨年からグループホームの世話人を予備登録する制度も始めた。三浦センター長は「街の中にもっと支援機関を作り、地域にとけ込んで理解者を増やしていく必要がある」と言う。
 コロニーでは今、3年間に退所した全員の聞き取り調査を続けている。職員が手分けし、本人だけでなく家族や世話人と会い、支援が足りない部分の改善や分析を進める。
 コロニー内のとがくら園の千葉俊夫園長は「我々が地域での生活が有効だといくら説明しても、納得してもらうには時間がかかる。実績を作っていかなければ、地域の理解も進まないと思うのです」と話した。

 <グループホーム> 知的障害者や認知症の高齢者など介助の必要な数人が集まり、世話人の助けを借りながら住宅施設で共同生活する場。家庭的な雰囲気とともに、個室でプライバシーも保てるのが一般的。
 県内に知的障害者のグループホームは今年度末で184カ所(入所者数777人)。県は05年度から5年間で500人分のグループホーム新設を計画している。

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◆20060321 (社説)精神障害者 まちで暮らせるために ――朝日新聞

治療が進んだり、すでに終わったりして入院の必要がないのに病院で暮らしている。そんな精神障害者が地域で安心して生活できるように、厚生労働省が計画を進めている。
 昨年成立した障害者自立支援法によって、精神障害者も地域で福祉サービスを受けられるようになったからだ。その費用は国と地方が責任を持って賄う。
 自治体は「障害福祉計画」をまとめ、受け皿を整える。厚労省は少人数で暮らすグループホームやホームヘルプサービスなどの整備目標を設定する。国と自治体の連係プレーで、7年をかけて街に移れるようにするのだ。
 そううつ病や統合失調症(精神分裂病)などで入院している患者は約32万人。そのうち7万人は地域に受け入れ態勢があれば退院できる「社会的入院」とみられてきた。
 入院期間は欧米より長く、人口あたりのベッド数は増える一方だった。欧米が患者を地域で支え、ベッド数を減らす努力を重ねてきたのとは対照的だ。無駄な医療費が使われていることにもなる。
 遅すぎたとはいえ、厚労省の方針を歓迎したい。病状が安定し通院で済むようになった人にとって、病室よりも住まいで暮らすのが自然だし、気持ちも落ち着くだろう。
 厚労省は知的障害者などについても「脱施設」を図り、地域で当たり前に暮らすことのできるノーマライゼーションを進める。
 このうち精神病にかかった人々については、地域のなかに周囲とのトラブルや犯罪などを不安がる声が小さくないことは確かだ。
 だが、誰でもかかる可能性がある病気で、効果の高い薬も開発された。適切な治療を続ければ症状は安定する。必要な支援を受けることで普通に暮らせるというのは精神医療の常識だ。
 厚労省はこうした知識をもっと広め、偏見をなくす努力が必要だ。私たちも、精神病に対する正しい理解に努めたい。そうでないと、せっかくの試みは画(え)に描いた餅で終わってしまう。
 実際に退院を進めるにあたって、いくつか気がかりな点がある。
 その一つが新たに精神障害者の福祉を担う市町村の対応だ。街に迎え入れることには住民の反発があるかもしれない。自治体は根気強く住民の理解と納得を得る姿勢が求められる。
 精神障害者を支える人材の確保も大事だ。ホームヘルプなどの知識や技量が求められる。厚労省は、専門ヘルパーの養成や技能の向上を急ぐべきだ。
 もちろん通院や投薬が必要な人には、それを途中でやめてもらっては困る。治療を中途半端に終わらせないよう、しっかり見守る態勢が欠かせない。
 精神病院はこれに合わせてベッドを減らし、従来の入院中心の医療を改めるべきだ。医療改革を進めるうえで、社会的入院の解消は欠かせない。

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◆20060404 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:1)脱施設 新法施行、家族に不安 /福島県――朝日新聞

 西郷村にある、県の総合社会福祉施設「太陽の国」。知的障害者や身体障害者の施設、特別養護老人ホームなど、約90ヘクタールの敷地に8施設が整備され、約850人が生活している。県内最大の入所施設だ。
 3月上旬、8棟のうちの一つ、知的障害者更生施設「けやき荘」で、入所者の家族の集会が開かれた。参加者は、村職員、太陽の国を運営する県社会福祉事業団から、障害者自立支援法について説明を受けた。
 「要は負担が増えるということです」。入所者家族会の会長を務める渡辺力蔵さん(75)は、説明を聞き、そう嘆いた。
 新法は、障害者が施設を出て地域の中で暮らすことを促すのが目的。就労支援をさらに進め、自立した生活に必要な福祉サービスを提供する基盤を整備する。一方、サービスの財源を確保するため、利用者が、原則1割を負担しなければならない。低所得者に配慮した軽減措置もあるが、預貯金が350万円以上ある場合、適用されない。
 「障害年金をコツコツためたら、そこそこの貯金ができる。でも、それは『親亡き後』を考えて倹約したもの。ここで暮らすほとんどの人は、軽減措置を受けられず、将来は貯金が目減りする」と渡辺さんは言う。
   ■   ■
 太陽の国の整備が始まったのは1973年。当時、介護する家族の負担を軽減するため、障害者が共同生活する「コロニー」の建設が、全国で進んだ。
 だが90年代から、施設への入所を基本とした政策に対し、見直し議論が盛んになる。
 政府は02年末、「新障害者プラン」を閣議決定し、「入所施設は真に必要なものに限定する」として、「脱施設」の方向を打ち出した。
 宮城県では、知的障害者の入所施設「船形コロニー」を運営する県福祉事業団が02年、全入所者を地域に移すことを目指した「コロニー解体宣言」を発表。04年には、当時の浅野史郎知事が、県内すべての知的障害者施設の入所者を地域に移すと宣言した。
 福島県が、太陽の国を段階的に縮小する方針を打ち出したのも、同年だった。
 自立支援法の施行を控えた05年度末、県は「地域生活移行促進プログラム」をまとめ、5年間に県内で300人が地域で暮らす目標を設定した。
 目標数は、05年の入所者への意向調査が基になっている。回答した2200人のうち、地域移行を希望した人は779人、約35%にのぼる。
   ■   ■
 だが脱施設に対し、入所者の家族が、不安をぬぐえないのも現実だ。
 障害者の保護者を対象に、県が04年に実施した調査では「今のまま」を望む回答が、7割以上に達した。
 太陽の国の知的障害者厚生施設の一つ「かしわ荘」の家族会会長・安斎高志さん(78)が代弁する。
 「30年以上暮らす人もいる。施設に慣れた人には、(脱施設に)ついていけない人もいる。高齢化した重度の人たちが施設から出られるような環境整備が、進んでいるとも思えない」
    ◇
 1日に施行された障害者自立支援法で、県内の障害者施設でも脱施設が本格化する。太陽の国の取り組みを通し、脱施設の現状と課題を追う。
 (この連載は、永沼仁が担当します)

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◆20060405 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:2)グループホーム 整備に遅れ /福島県――朝日新聞

白河市内にある「地域生活体験ハウス」。太陽の国を運営する県社会福祉事業団が昨年5月、入所者に地域で暮らす準備をさせるため、民家を借り上げて設置した。
 1月下旬の夕方。知的障害者更生施設に入所する50歳代と40歳代の男性2人が、通所授産施設から帰ってきた。
 一人の男性は、台所で食事の準備。もう一人は、風呂掃除を終え、それを見守る。コメのとぎ方、サラダに使う野菜の切り方、総菜を温めるための電子レンジの使い方など、事業団の職員が付き添って教える。
 約1時間かけて「チキンのあぶり焼き」が出来上がり、2人は居間でゆっくり食事を始めた。2人とも「(施設の暮らしよりも)こっちの方が楽しい」と話した。
   ■   ■
 ハウスでの体験は、数人の障害者同士がグループホームで生活することを想定している。事業団によると、3月中旬までに20人がハウスを利用したという。1回あたり3泊か4泊で、3、4回利用する入所者が多かったとしている。
 「グループホームの生活については、今までビデオなどを使って説明してきましたが、体験した方が分かりやすい」と、事業団の職員・久保良知さんは話す。
 県内ではグループホームの整備に、まだ課題が残る。
 県によると、グループホームは現在70カ所。県の「地域生活移行促進プログラム」では、5年後に、さらに61カ所増やすという目標が設定されている。だが、施設を出て地域で暮らすことを希望している入所者が800人近くいる現状で、十分とは言えない。
 「目標は、あくまで最低限のもの。既存の施設の改修も進める」。県障がい者支援グループでは意気込むが、法改正で可能になった公営住宅のグループホームへの活用も進んでいない。
 「自治体のサポート態勢の見通しなどがつかないため」(県建築住宅企画グループ)という。
   ■   ■
 昨年秋、事業団は、西郷村内の空き家を活用して「グループホームやしお」を設けた。「身体・知的・精神」という異なる障害を持つ女性5人が、洗濯や掃除などを分担しながら生活している。
 村内に住む女性2人が世話人となり、交代で食事の支度などに来ているが、夜は5人だけとなる。世話人の一人、大塚真知子さん(53)は「今のところはトラブルはほとんどありません。でも帰る時は、やっぱり心配ですね」と話す。
 事業団では、グループホームなどで暮らす障害者からの電話相談を24時間受け付けるため、6月に「地域生活支援センター(仮称)」を設置する予定だ。
 「仕事の愚痴でも悩みでも、とにかく聞いてあげる『いのちの電話』のようなものです」と、事業団の永沢裕二副理事長はいう。
 将来は、社会福祉協議会やNPOなどとネットワークをつくり、障害者の暮らしを見守る態勢をつくることも考えているという。

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◆20060406 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:3)就労支援 低賃金、進まぬ雇用 /福島県――朝日新聞

 矢吹町で県社会福祉事業団が運営する「矢吹しらうめ通勤寮」には、知的障害者19人が生活する。入寮者は一般企業などで仕事をしており、「自立」に近い形で暮らす。
 だが入寮者の一人、スーパーでアルバイトをしている女性(21)は、少し不満を感じている。午前6時前に起床し、午前8時半から1日7時間、商品の管理をする。
 「残業しても月に8万から9万円。なかなか時給も上がらない」
 アパートで一人暮らしするという夢は、実現の見通しが立たない。
 同寮の入居期間は、平均で2年6カ月。だが中には、6年以上在籍する人もいる。入寮者の賃金は、平均すると月5万5千円。寮費の負担は、障害者自立支援法の施行で月に7、8千円ほど増えるという。
 職員の木戸馨さんがつぶやく。「少ない賃金なので、本人にはきついでしょうね」
 ■ ■
 新法は、就労支援をさらに強化していくことを目指している。だが、雇用の現実は厳しい。
 障害者雇用促進法は法定雇用率として、常用労働者(雇用期間の定めがないか、一定の定めがあっても、期間が反復更新される労働者)が56人以上いる企業に対し、56人に1人(1・8%)の割合で、障害者を雇用するよう定めている。05年6月現在、県内の民間企業の障害者雇用率は、平均で1・47%と、法的雇用率を下回っている。
 子会社が障害者を採用した場合、親会社の採用率に反映できる「特例子会社」を利用している企業も、県内では皆無だ。
 県は、法定雇用率の達成に向け、08年度に6300人雇用という目標を掲げているが、「景気は上向きでも、県内には小さな会社が多く、難しい面もある」(県雇用対策グループ)としている。
 しらうめ通勤寮には障害者の就職をハローワークなどと連携しながら支援する、県の障害者就業サポートセンターも設置されている。
 センターで企業回りを担当している職員は「企業は実習に協力してくれても、雇っていただけるのは一握り。雇用した場合の助成制度を知らない事業主も少なくない」と漏らす。
 同センターには3年間で124人が登録し、実習などを経て、約半数が就職した。だが、職場に定着する前に、辞めさせられたケースもあり、満足できる結果とはいえないという。
 ■ ■
 企業への就職が進まない中、県は、障害者にホームヘルパーの資格を取得してもらう事業を02年度から始めている。
 事業団などで実施した養成研修で、計40人が3級ヘルパーの資格を取得したが、実際に就労につながるケースは、まだ少ない。
 そこで、事業団では今年度、福島市、猪苗代町、西郷村内で運営する特別養護老人ホームなどで、3人の知的障害者をヘルパーとして雇用することにした。
 8時間労働で日給6500円。2年間働いてもらい、ヘルパーとしての専門技術を高めてもらう予定だ。事業団の永沢裕二副理事長は言う。「まず、『隗(かい)より始めよ』ですね」

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◆20060407 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:4)日中活動の場 求められる安定 /福島県――朝日新聞

 太陽の国にある救護施設「からまつ荘」。窯詰め前の皿や花器が並ぶ棚の前で、入所者4人が一心に粘土と向き合っていた。同施設の陶芸班のメンバーだ。
 「以前は水漏れする作品もありましたが、完成度も高くなりました。地域の美術展に入選する人もいますよ」
 陶芸家で施設職員の菊地隆さんが昨年春から4人を指導している。「太陽窯」の名で、作品は施設の展示室などで販売されている。
 県社会福祉事業団では今年度、知的障害者に陶芸や木工、手工芸品を作ってもらう「日中活動の場」を設ける。定員は20〜30人。講師役に、からまつ荘の陶芸班の手も借りる。
 太陽の国では、これまでも自立訓練の一環として創作や軽作業に取り組んできた。だが、それぞれの施設内で行われていたため、施設の外に出るという体験にはつながらなかった。「日中活動の場」の狙いの一つは、施設外へ踏み出してもらうことだという。
 事業団の永沢裕二副理事長は「生活の幅を広げることが大事。一般の人も利用できるカルチャーセンター的なものにしていきたい」と話す。
     ■     ■
 障害者が施設を出たものの、一般企業などで働くのが難しい場合は、授産施設や小規模作業所など、「日中活動の場」に通うことになる。だが県内では、そうした活動の場も、まだ不十分だ。
 県障がい者支援グループによれば、無認可の小規模作業所を除く県内の授産施設は、05年度末で90カ所。今年度から5年間で300人の地域移行という目標実現には、新たに25カ所を整備する必要があるとする。
 工賃も低い。全国社会就労センター協議会によれば全国の平均工賃は月1万5524円。障害者自立支援法では、授産施設に通う場合も、利用料の1割負担が求められるため、利用を控える動きもあるという。
     ■     ■
 また、小規模作業所も厳しい経営に直面しそうだ。国は今年度から、障害者団体を通して支給してきた年間110万円の補助金を廃止する。「安定した組織でのサービス提供が必要」(厚生労働省障害福祉課)とするためだ。
 「利用者を増やさないと補助金が入らず、立ちゆかなくなる」
 太陽の国の事業にも協力している、白河市表郷地区の小規模作業所「結(ゆい)工房」の指導員高橋有紀子さんがため息をつく。
 結工房の利用者は現在6人。市と県が支給する補助金も、経過措置の過ぎる07年度から、「おおむね10人」の利用者確保が条件となるという。
 今後、送迎サービスなどに力を入れて拡大しなければ、利用料を値上げするか、他の法人の傘下に入ることを迫られる。
 「新法の理念は、障害者へのサービス拡充。地域の受け皿、選択肢として身近で通いやすい『すき間』施設は、地方でこそ必要なはず。どうして経営効率だけで進めようとするのか」。高橋さんは割り切れない思いでいる。

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◆20060408 (太陽の国から 障害者「自立」の行方:5)地域連携 職員派遣し人材育成 /福島県――朝日新聞

 満開の桜の下を走る馬車の中で、入所者と地元の人たちが、ともに体を揺らす。模擬店のテントも、大勢の花見客でにぎわった。
 昨年4月。西郷村の太陽の国は、施設を一般開放した。600本を超す桜の咲く敷地で、初めて「桜まつり」を開いた。
 「将来に備えて、できるだけ施設以外の人たちと接する機会を増やしたかった」
 「脱施設」を念頭に置いた祭りの狙いを、県社会福祉事業団の永沢裕二副理事長が語る。「この春は、もっと盛大にやりますよ」
 今年は、村や商工会などが参加した実行委員会の主催となる。15日からライトアップ、22、23日は、太鼓やバトントワリングなどのイベントを実施し、特産品の販売などにも力を入れる。
 村の担当者は「同時にウオーキング大会なども開催します。花見を楽しむ、村全体の祭りになりそうです」と期待する。
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 村との交流は、教育分野にも及ぶ。
 事業団では今年度、村内の中学生を対象に、ホームヘルパー養成研修を始める。介護についての学習や体験実習を約50時間行い、3級ヘルパーの資格を取ってもらう予定にしている。
 事業団の長谷川京子地域福祉課長は「これまでは知識がなくて断ってきた中学生ボランティアを受け入れやすくなる。将来の人材育成にもつながる」と狙いを語る。
 村教委も「子供たちが福祉に関心を持つのはいいこと」と歓迎する。
 受け皿整備の遅れている過疎・中山間地域との連携も探る。
 例えば、田村地区。これまで知的障害者向けの地域資源がなく、「空白区」とされていたが、事業団では今年度から、グループホームなどの建設支援を進める。
 職員を直接地域に派遣し、自治体や保健福祉事務所、福祉関係者と調整していくという。
 「地域格差は、人材格差でもある。高齢者の介護から障害者への対応まで、事業団には様々なノウハウを持った職員がいる。職員を派遣し、地元で人材を育てたい」と永沢副理事長は話す。
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 事業団では、奥会津地区でも、高齢者向けに夜間介護などに対応した小規模多機能型サービスを展開するために、地域に職員を派遣する予定だ。
 それでも、職員派遣について、高崎健康福祉大の北沢清司教授(障害者福祉)は、「福島は、福祉資源の配置バランスが悪い。さらに進めるべきでは」とする。
 北沢教授が委員長を務めた「県地域生活移行に関する検討会」は昨年の秋、施設入所者らが地域で暮らすための支援策をまとめた。
 報告書には、障害者の地域生活を支援する情報やサービスの窓口となる拠点を、六つの圏域ごとに整備する必要性も記した。
 北沢教授は、拠点づくりに、事業団が絡む展開も予想する。「縮小された太陽の国の職員たちが、廃校や空き家など、地域の障害者の近くに引っ越していくようなことも必要かもしれません」=おわり
 (この連載は、永沼仁が担当しました)

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◆20060805 県、施設定員1割減へ 11年度までに49施設の270人分 障害福祉計画 /栃木県――朝日新聞

県は、障害者自立支援法が4月に施行されたのを受け、県内の障害者施設の定員を2011年度までに10%減らすことを柱とする県障害福祉計画案をまとめた。グループホームやケアホームなど、地域で生活を送ることのできる環境を整備することで「脱施設」の環境づくりを進め、障害者の自立を支援したいとしている。
 厚労省は11年度までに障害者施設の定員を国全体で7%減らす方針を打ち出し、各都道府県に同様の目標設定を求めている。
 県障害福祉課によると、身体障害者療護施設や身体障害者授産施設など、長期の入所が常態化している県内49施設の入所定員は、現在2758人。県の目標では、このうち410人(15%)程度が11年度までに退所し、生活の拠点をグループホームやケアホーム、一般住宅といった地域での生活に移れるように基盤整備を進める。その結果、施設の入所定員を270人分(10%)程度減らすことをめざす。
 県が県内施設に聞き取り調査をしたところ、このうち45施設は、障害者の生活訓練などを重ねることで、11年度までに全体の25%に当たる657人の退所が可能で、入所定員も13%に当たる339人が削減可能と回答した。
 県はこれを受け、厚労省の方針を上回る施設定員の10%削減が可能と判断した。
 県はまた、地域の受け入れ基盤を整え、精神科病院の入院患者を670人程度減少させることや、施設から一般企業への就職者を現在の年間30人程度から、120人程度に増やすことも目標に掲げた。
 県内各市町は県の目標値を踏まえ、施設の定員などを定める独自の障害福祉計画をまとめる方針。各市町の計画を積み上げる形で今年度中には県の計画が決まることになっている。
 障害者自立支援法は障害によって異なるサービスを一本化させ、都道府県や市町村に施設数や必要なサービス量を盛り込んだ3年ごとの障害福祉計画を策定し、サービス提供の基盤整備をするよう求めている。

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◆20060805 [ルポ・福祉の現場](3)「地域移行」停滞も(連載)=千葉――読売新聞

◇自立支援法の波紋
 「今のホームと前にいたセンター、どっちがいい?」
 7月半ば、袖ケ浦市内のあるグループホーム。運営するNPO(非営利組織)法人の代表が、夕食を終えた2人の入居者に尋ねた。2人は「こっち」と即答し、理由を「ご飯がおいしい」「静か」「あんたは夜更かしができるからでしょ」「だから朝眠い」などと答えながら笑い出した。
 重度の知的障害がある和子さん(仮名、53歳)と中度の美智子さん(同、40歳)は以前、県袖ケ浦福祉センター(袖ケ浦市)の知的障害者更生施設にいた。施設が進める地域移行事業でグループホームに移ったのだ。
 平日の日中はデイサービスに通って様々な活動に取り組み、帰ってくると世話人が作ってくれる温かい食事を皆で囲む。休日はヘルパーと一緒に近所のショッピングセンターに行き、身の回りの品や洋服などの買い物を楽しんだりもする。
 「センターに帰りたい?」。世話人が聞くと、美智子さんは笑い、和子さんは「嫌だよ!」と言った。
 福祉センターの更生施設は1966年に開設され、利用者は最大270人まで増加。04年に県が第3次障害者基本計画を策定した際、堂本知事の「今後2年間で100人程度の地域への移行を実現したい」との発言をきっかけに、05年度までの2年間で入所者105人が退所。今年10月からは定員を120人に減らす。
 退所者の行き先は、自宅が3人、グループホーム62人、他施設31人、高齢者施設5人、グループホームに似た「生活ホーム」が4人。「私が知る限り、自分から『センターに戻りたい』という人はいません」と地域移行を担当した飯田厚子さん(49)は言う。
 障害者自立支援法は「だれもが地域で普通に暮らす」を旗印に掲げる。国は施設入所中の知的、身体障害者、社会的入院中の精神障害者の地域移行を目指し、支援法によって必要な受け皿を整備する方針だ。受け皿になるのは、グループホームなど。センターの地域移行は、法の理念を先取りする実践といえる。
 ただ、センターで地域移行が進んだのは、受け皿があったからこそ。君津地域には県内のグループホームの36%が集中。更生施設を出る人のためホームを新設し、慢性疾患の栄養管理のため管理栄養士を雇うNPO法人もあった。
 しかしいま、自立支援法によって、グループホームの新設にブレーキがかかっている。報酬単価が低く、運営が難しいとの見方が強いからだ。新設のための県への7月の申請数はゼロ。「申請を凍結したり取り下げたりする事業者が相次いでいる」(県内のある自治体関係者)状況だ。
 船橋市内で入所更生施設と7か所のグループホームなどを運営する社会福祉法人「大久保学園」学園長で県知的障害者福祉協会の中原強理事長は、「うちの法人では、年に2か所ぐらいのグループホームを新設してきたが、新報酬ではとても計画を進められない。他の事業者も同じ。自立支援法の『地域移行推進』という理念は評価するが、それを促進する仕組みにしてほしい」と話している。
 
 〈地域移行〉
 入所施設や精神科病院にいる障害者の退所・退院を促し、グループホームや一般住宅などで生活させること。国は2011年までに知的、身体障害者1万人、精神障害者5万人の地域移行という目標を設定。自立支援法の中で、受け皿となるグループホームやケアホームの整備を進め、就労を含めた地域生活の支援を行うとしている。
 
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◆20060807 [ルポ・福祉の現場](5)理念良いが実現困難(連載)=千葉――読売新聞

◇自立支援法の波紋
 ◆東洋大ライフデザイン学部・北野誠一教授に聞く 
 障害者自立支援法は、障害者にどういう影響を与えるのか。障害者福祉に長く携わり、多くの自治体の地域福祉計画や障害福祉計画の策定委員長を務める北野誠一・東洋大ライフデザイン学部教授に聞いた。
 ――障害者自立支援法をどう評価するか。
 法の理念である「全国どこでも必要な訪問系サービスや日中活動の場を保障する」「施設、病院から地域に移行」――などは評価できる。問題は、その理念が実現可能かどうかだ。
 支援費制度で障害者サービスは一気に拡充し、この傾向が自立支援法でも続くかと注目したが、財政的基盤は十分に確立されなかった。むしろ、障害程度区分や区分に基づくサービス利用者の限定などによるサービスの抑制感は否めない。
 ――障害者福祉では初めての定率(1割)負担が導入された。
 高齢者も障害者も、以前は「社会的弱者」ということで費用負担が免除されてきた。それが、高齢者は所得形成ができているので応分の負担は当然とされ、介護保険制度で1割負担が導入された。しかし、障害者は所得形成ができていない。就労支援策もまだ展開されていない時点で、1割の自己負担を求めるのは理屈に合わない。
 ――就労支援はどの程度効果があるだろうか。
 実際は非常に難しいと思う。いくら障害者がトレーニングを受けても、就労には相手(企業)がある。養護学校を卒業して就職しても、補助金などが切れる1年半後には多くの人が辞めてしまう。その人たちを再訓練してまた企業に送り出すには、新たな支援策が必要となる。
 ――知的障害者や精神障害者からは、障害程度区分判定で結果が正しく出ないという批判が出ている。
 障害程度区分は、介護保険の要介護認定を踏まえたものだが、要介護認定自体の矛盾がまず大きい。最大の問題は、食事や排せつ介助が必要かどうかが、全体の結果に大きな影響を与えてしまう点だ。身体障害者であればある程度反映されるが、精神や知的などの場合は、彼らに必要な見守り等の介助が全く評価されないことになってしまう。全面的な見直しが必要だ。
 ――地域移行は進むだろうか。
 地域移行の受け皿として想定されているのは、グループホームとケアホームだが、報酬単価はかなり低い。このままだと、一つや二つのグループホームを持っている事業所は立ちゆかなくなり、新たに事業を展開するところも出ないだろう。国の報酬見直しが必要だが、自治体も、東京都などのように、設置費をある程度補助したり、報酬の上乗せをしたりしないと、地域移行は進まないだろう。
 ――法の理念を実現するには、何が必要だろうか。
 まず、障害程度区分と報酬の見直しが必要だ。知的障害者や精神障害者に必要な介助が確保されるような判定基準を作り、報酬も事業者が成り立つ額にしなければならない。
 また、懸念しているのは、自立支援法では、費用負担が家族にも求められることだ。障害者本人はサービスを利用したくても、家族は費用負担のせいでサービスを抑えようとするなど、本人と家族の利益相反が起き、亀裂が入りかねない。この点についても再検討が必要ではないか。(おわり) (この連載は、針原陽子が担当しました)

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◆20060823 精神科患者:病棟に退院支援施設、厚労省検討 「数字合わせ」批判も――毎日新聞

精神障害で入院している患者を病院から地域に社会復帰させる施策を推進している厚生労働省が、病院敷地内の病棟を「退院支援施設」として移行への受け皿にする計画を検討していることが分かった。施設に移れば数字の上では「退院」したことになるが場所はほとんど同じ。長期入院を強いられてきた患者などからは「看板を書き換えただけの数字合わせ。実質的な地域への移行を進めるべきだ」との批判の声が上がっている。【北川仁士】

 現在、国内の精神科入院患者は32万人。中でも病気が既に治り、退院できるのに偏見などで行き場がない「社会的入院」は6万9000人に上る。こうした状況から国は02年「新障害者プラン」(10年間)の中で社会的入院患者の退院・社会復帰を目指すことを掲げた。

 今回、「社会復帰への中間施設」として考案された退院支援施設は、入所期限が2〜3年。病院敷地外の施設では定員20〜30人で個室が条件となるが、敷地内の病棟を転用する場合は同20〜60人で4人部屋も認められる。また、病院では4人に1人の生活支援員が退院支援施設では6人に1人でよくなり、入所者への援助が手薄になると指摘する声がある。

 10月に完全実施される障害者自立支援法は、精神障害者の退院促進を大きな目標に掲げる。中間施設を経て、地域移行への最終的な受け皿となる都道府県や市町村には、自立支援のための障害福祉サービスに関して「障害福祉計画」の中で具体的に定めることが求められている。しかし、計画は今年度中に定めること以外は何も決まっておらず、「どのぐらいの市町村が態勢を整えられるかわからない」(同省)というのが実情だ。

 障害福祉課では「退院支援施設は、あくまで地域で生活していくことを目的とした中間施設。選択肢の一つと考えてほしい」と説明する。

 しかし、精神障害者らでつくる「こらーる・たいとう」(東京都)の加藤真規子代表は、日本の精神障害者が他国と比べ長期間、病院に収容されてきたことに触れた上で、「中間施設でなく地域の受け皿を国が整えるべきだ。市町村には受け入れ能力に格差があり、このままでは地域移行は進まない」と指摘する。

 加藤代表らは退院支援施設の撤回を求める署名を呼び掛け、22日現在、5000人分が同省に提出されている。また、障害者団体では23日に同省と交渉し、抗議行動も展開する。

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◆20060824 精神科患者・退院支援施設計画:撤回を 患者団体が交渉――毎日新聞

 精神障害で入院している患者の地域移行策として、厚生労働省が病院敷地内の病棟を「退院支援施設」として利用する計画を立てている問題で、患者団体らは23日、同省を訪れ、計画撤回を求めて交渉を行った。同省は24日の関係課長会議で事実上、計画推進を決める予定で、決まれば予定通り10月1日から施設利用が始まる。

 交渉には11団体が参加。精神障害者らでつくる「こらーるたいとう」の加藤真規子代表が「敷地内の施設は社会で誇りをもって生きる地域移行の考えに反する。地域での生活の場づくりに力を入れるべきだ」と撤回を求めたのに対し、宮本真司・障害施策推進官は「いきなりすべての市町村が地域に受け皿を作ることは難しい。施設の利用は希望者に限っている」として理解を求めた。

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◆20060902 (私の視点ウイークエンド)障害者自立支援法 福祉共生社会に逆行 山田雅人――朝日新聞

 4月から施行された障害者自立支援法は、「地域移行」(施設生活から地域生活へ)と「就労支援」(就労の促進)を大きな柱としている。「自立と共生の地域社会づくり」をスローガンに掲げているが、政省令で順次示される施行内容をみると、地域社会で安心して希望を持って暮らせる施策にはなっていない。
 第1に、福祉支援を利用した際の個人負担が「応能負担」から「応益負担」へ変更となり、過分な負担を強いるものとなった。例えば、私が所属する法人が運営する身体障害関係入所施設では、平均個人負担月額が、約2万1千円から約4万9千円へと2倍以上に増えた。知的障害通所施設利用者では13倍増である。
 福祉支援が必要にもかかわらず、あきらめる人が次々と出ている。全国社会就労センター協議会の調査では、施行直前の3月末までに、授産施設の1・33%の人が負担増を理由に退所。その6割弱が「自宅引きこもり状態」となっている。
 福祉支援を「利益」だとし、得をしたのだからその利益に応じて金を払え、という発想は浅はかだ。福祉支援は「利益」ではなく、「生きるのに必要な支え」である。物の売買や他の対人サービスと同様に、「市場原理・交換原理」の視点で考えるのは的外れだ。
 第2に、障害程度判定の調査内容が不的確である。106項目中79項目は介護保険のもので、障害の特性と支援の必要性が評価されず、実態よりも低い判定結果しか出てこない。そのため、必要かつ希望する福祉支援を受けられない。日本知的障害者福祉協会による4月の調査では、強度の行動障害のある方でさえも、6割弱が入所利用できない恐れが指摘されている。
 第3に、受け皿もないのに根拠のない目標数値を設定し、「地域移行」をアメとムチ的に進めようとしている。民間企業における障害をおった人の実雇用率は05年6月現在1・49%。法定雇用率の1・8%を達成している企業は42・1%でしかなく、地域で働きたくても働き場がない。また、障害をおった人が住める住宅も少ないし、家賃を払うお金もない。行き場を失う不安は切実だ。地域社会の福祉文化の成熟が不可欠にもかかわらず、そのための施策は見えてこない。
 だれのための支援法なのか。福祉共生社会の構築に逆行する愚行は、早急に見直すべきだ。
 (やまだまさひと 群馬県身体障害者施設運営協議会会長)

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◆20060916 (土曜特集)負担増やはり、不安募る 障害者自立支援法、利用者は… /新潟県――朝日新聞

 4月に障害者自立支援法が施行されて半年。福祉サービスの原則1割の自己負担や、事業所の補助金削減などが始まり、利用者の間に「自立支援をうたいながら、自立を阻んでいるのでは」という不安が広がっている。県の調べでは、経済的な負担増を理由に障害者福祉施設を退所した人は5月末までに20人。県は退所者に復所を促すため、経済的な支援を検討している。10月からの本施行を前に、自立支援法の現状と課題を探った。
 (川上裕央)

 ●悩んだ末、世帯分離
 新潟市の佐藤康子さん(58)は3月、知的障害者更生入所施設「太陽の村」(同市太夫浜)に入所する一人息子の修吉さん(33)と世帯分離を決めた。修吉さんは重度の自閉症で、20歳から施設に入所していた。
 障害者自立支援法により、福祉サービス料の原則1割が利用者の負担となった。負担額は各世帯の所得区分で決まる=表1・2。修吉さんが父親(60)の扶養家族のままでは、「一般(課税)」に分類され、負担が急増する。世帯分離で修吉さんが「低所得2(障害基礎年金1級受給)」に認定されるよう、そう決断した。
 「こんなに重度な子となぜ世帯を分けなければならないのか」と、身を切られる思いで、毎日泣いてばかりだった。悩んだ末、友人から「書類上は別々になっても、心はつながっているんだから」と背中を押され、決心した。
 それでも、自己負担は重くのしかかった。
 3月までは、1カ月の施設利用費は光熱費などを含めて4万円弱。ところが、同法施行後の06年7月は約5万8千円となり、自己負担額は約1万8千円増えた。
 8万3千円の障害基礎年金で支払える範囲だが、修吉さんの支出は施設費だけではない。衣類や日用品も年金から購入する。4月からは歯医者などの医療費も負担が必要になった。
 康子さんは「今は親がみてやれますが、親が亡くなった後、障害基礎年金だけで暮らしていかなければなりません。将来がとても不安です」と切に訴える。

■1、ホームヘルプ(月125時間)を利用する場合(事業費:22万円)
                支援費制度     障害者自立支援法
               (〜06年3月)  (国基準)(負担率)
市町村民税課税世帯        4600円  22000円(10%)
低所得2:障害基礎年金1級受給     0円  12300円(6%)
低所得1:障害基礎年金2級受給     0円   7500円(3%)
【出典:新潟市障害福祉課】

■2、知的障害者入所更生施設に入所する場合(20歳以上)(事業費:23万円)
          支援費制度 障害者自立支援法(国基準)食費実費負担額   合計
                 と定率負担額(負担率)
市町村民税課税世帯 42400円 23000円(10%)  58000円 81000円
低所得2      39800円  8500円(4%)   46500円 55000円
低所得1      31800円     0円(0%)   41000円 41000円

 ●報酬日割り計算で施設経営にも波紋
 自立支援法は、福祉サービスの担い手である施設やグループホームなど事業所の経営にも波紋を広げている。
 最大の変化は、報酬単価の日割り計算が導入されたことだ。補助金は定員数によって定められていたが、4月からは1日ごとに何人が利用していたかで額が決まる。
 新潟市のある知的障害者入所施設は、補助金を確保するため、利用者の週末の外泊数を制限した。利用者は、4月までは金曜の夕方に自宅に帰り、月曜の朝に施設に戻っていたが、現在は土曜の朝食後に帰宅し、日曜の夕食前に戻る。この変化を嫌い、休日も減ったため、パニックに陥った利用者も少なくない。
 新潟市七日町の入所施設「満日の里」の中野実園長は、日割り計算が導入されたことにより、「将来の建物修繕費や職員の人材育成に使っていたお金が先細りする」と不安を語る。
 同施設は00年開所。知的障害者50人が入所するが、法の施行により、補助金は約8%減額された。運営に支障が出るほどの影響は出ていないが、将来に向けた経費を確保するために、正規職員に欠員が出たらパート職員に切り替えて人件費を抑制したり、ホームヘルプやショートステイ(短期入所)など事業の多角化に取り組んだりすることを考えている。
 中野園長は「私たちも脱施設化は目指したい。しかし、地域に重度の障害者を受け入れる条件が整備されているとは言えない」と話す。
 県内の授産施設同士の情報交換のために設立された「県法人立授産施設連絡協議会」(新潟市)が6月に行った調査では、アンケートに答えた県内の41施設の補助金は、昨年比で平均15%減。休みがちな利用者が多い施設では、補助金が昨年と比べ約30%減になったところも出ている。
 自治体がつくる障害福祉計画について国は、「11年度末までに入所施設の入所者の1割以上を地域生活に移行させる」ことや、「11年度中に、福祉施設から一般就労に移行する者を現在の4倍以上とする」ことなどを数値目標として掲げ、法律でも就労移行支援に対する報酬単価を高く設定している。
 「障害者の自立を支援する会」の田中則巨事務局長は「障害者に競争原理を導入するのは間違っている。施設側が就職のできそうな人を取って、重度の障害者を排除することにつながりかねない」と心配している。

 ●新潟市は一律2割負担減
 利用者の負担増や事業所の補助金減額に対し、負担の軽減策を打ち出している自治体がある=表3。
 福祉サービスの負担軽減に最も積極的なのは新潟市だ。障害の程度や収入にかかわらず、一律2割軽減する。今年度予算では約3200万円を計上した。同市障害福祉課は「負担が急激に増えることで、福祉サービスの利用を控えることがないように」と説明する。
 自治体などからの「新潟市は財政規模が大きいからだ」という声に対して、担当者は反論する。「利用者の原則1割負担で、国・県・市町村が分担していた支出は減少した。新潟市が2割軽減する額は、支出が減少した額とほぼ同じ。問題は自治体がどこにお金を使うかだ」と話す。
 県の専門機関「障害者更生相談所」の調査では、利用者の負担増を理由に障害福祉施設(入所・通所)を退所した障害者が、5月末までに県内で20人いた。
 県は市町村や作業所と連携し、退所者に説明に出向いた。県障害福祉課は「制度を理解してもらうことで、将来への不安が解消する場合もあった」と言い、数人は施設に復帰したという。
 今月、県議会に提案する補正予算では、家庭が崩壊するなど、深刻な事情で復帰困難な障害者に経済的な支援を行うことを盛り込む予定だ。
 しかし、利用者の一部からは「経済的に無理をして通っている人が多い中、退所者にのみ経済的な支援をしても、問題の解決にはならない」と疑問の声も出ている。

■3、自治体独自の負担軽減策(06年4〜5月現在)出典:きょうされん
<新潟市>
 ●福祉サービス
 (1)施設・居宅サービス利用者の負担額を2割軽減 (2)障害程度区分除外者に、現行の支援・サービス料を確保 (3)社会福祉法人軽減措置を民間事業者に拡大
 ●自立支援医療
 知的障害者施設入所者へ医療費助成。療育手帳A・B保持者に対して1割負担分を外来1回530円、入院費1200円を自己負担とし、それ以上は市が負担

<長岡市>
 ●福祉サービス
 (1)社会福祉法人軽減措置を民間事業者に拡大 (2)生活サポート、障害程度区分非該当者に対して支援 (3)外出介護利用者負担金を免除

<三条市>
 ●福祉サービス
 児童デイサービス、利用者自己負担8分の1を利用1時間あたりの負担単価とする
 ●自立支援医療
 更生医療受給者自己負担額の2分の1を助成

<阿賀野市>
 ●福祉サービス
 児童デイサービス利用者全員自己負担免除(1年間のみ)

<十日町市>
 ●自立支援医療
 精神通院医療費3分の1助成継続(限度額月額1万円)

<上越市>
 ●福祉サービス
 (1)社会福祉法人減免制度、法人格をもたない事業者へ拡大。1カ月の利用者負担額を「低所得1」で2分の1、「低所得2」で4分の1を助成。実施事業所における年間の法人減免全額を公費助成 (2)児童デイサービス利用者全員に対し無料 

<湯沢町>
 ●自立支援医療
 精神通院医療費5%補助継続

 ◇独自のアイデアで事業展開に期待 発言続けてきた遁所直樹さんに聞く
 自立支援法の成立前から、同法の勉強会を開くなど、積極的に発言を続けてきた自立生活センター新潟(CIL)の副理事長、遁所(とんどころ)直樹さん=写真=に障害者福祉の現状について聞いた。
 ――施行から半年を経て、負担を訴える人も少なくありません。
 05年10月、郵政民営化関連法の成立直前に、同法反対の2千人規模の運動がマスコミで大きく取り上げられた。ところが、同じ日にあった自立支援法の反対運動は、約1万2千人が東京の代々木公園から国会まで歩いたのに、ほとんど取り上げられなかった。新潟市内でも、私たちは反対行動をしたが、参加者は少なかった。今になって「大変だ」と言われても、という思いはある。
 ――自立支援法による負担増で、最も影響を受けていることは何でしょうか。
 居宅介護(ホームヘルプなど)の利用が減少していること。20歳の知的障害者は、ガイドヘルパーを1カ月に60時間利用していたが、金銭面で余裕がなく、4月から利用を制限した。今は毎日、ボランティアを探し、世話をしてもらっているという。自立支援とうたいつつも、実際は逆行しているのではないか。
 ――自立支援法を生かすにはどうしていくべきでしょうか。
 自己負担がかかるのは遺憾だが、嘆いていても仕方ない。例えば、これまで福祉サービスを利用できなかった非該当者が、市町村の裁量で利用可能となる。無認可の作業所でも、条件を満たせば地域活動支援センターに位置づけられる可能性がある。
 各自治体にやる気があれば、補助金を上乗せしたり、設置数を増やしたりできる。10人規模で小回りが利き、独自のアイデアで事業が展開できる利用者主体の居場所が増えることを期待したい。

 ◆キーワード
 <障害者自立支援法> 身体、知的、精神の各障害種別で異なっていた福祉サービスを一元化し、これまでの国に代わって市町村がサービスの提供主体となる。公平で安定したサービスの供給や、地域での自立を促す就労支援の強化を目的に、従来の支援費制度が全面的に見直された。所得に応じて利用料を負担する「応能負担」から、定率で負担する「応益負担」に移行したことによる負担増で、障害者や事業所に波紋が広がっている。05年10月、自民、公明両党の賛成多数で成立した。

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◆20060927 精神科病院の退院支援施設転換 計画実施は来年4月に/厚労省――読売新聞

厚生労働省は26日、精神科病院の一部を「退院支援施設」に転換する計画について、実施時期を来年4月からとする方針を明らかにした。当初は10月に開始する予定だったが、障害者団体の反対を受け、半年間の延期を決定した。「今後、計画の周知徹底を図り、改善策も検討したい」としている。
 退院支援施設は、精神科の入院患者が地域へ段階的に移行するため、退院後2〜3年入所し、生活訓練を行う施設。入院ベッドを転換するなどして整備する。行き場がないために退院できない「社会的入院」の解消が目的だが、障害者団体からは「名目のみの退院となり、本来の地域移行が阻害される」として反対の声が上がっていた。
 このため、同省は計画延期を決めるとともに、入所者の地域での受け入れ支援を市町村に義務づけるなどの案を検討している。

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◆20061118 検証:村井県政の1年/中 知事のカラー /宮城――毎日新聞

◇「気配り」と「反浅野」

 知事室出入り口と廊下を挟んだ向かいにある非常口のドアが4月下旬、壁と同じベージュ色から木目調に一新された。ドアはエレベーターホールに出るのに便利な位置にあるため、来客のほとんどはここを通る。「非常口のようでは失礼だ」。村井嘉浩知事は職員にこう説明し、リフォームを指示したという。

 来客は上座、話を聞く時は同じ目線、見送りはエレベーターが閉まるまで……。「気配りそのもの」と言える村井知事の振る舞いは、浅野史郎前知事時代には聞こえなかったエピソードだ。

 ある町長は「前知事は、会話の間も時計やスケジュールばかり気にしていたが、村井知事はしっかり目を見て話してくれる。同じ10分でも内容が違う」。

 地方で開く県民との意見交換会。村井知事は、多くの人から少しずつ話を聞く前知事流から、少人数からじっくり話を聞く方式に変更した。「前知事の時は緊張して言いたいことが言えなかった。今回はリラックスできたので、本音を言えた」。栗原市で開催された意見交換会に参加した地元の千葉和恵さん(54)は、こう話した。

   ■   ■

 浅野前知事との違いを際立たせるかのような村井知事の振るまい。それは時に、前知事の残した政策や課題をきっかけに先鋭化させることがある。

 「今すぐに条例を作る気はない」。10月16日の定例会見。障害者差別禁止条例の制定について尋ねられた村井知事は、こう断言した。

 同条例をめぐっては、県は前知事時代の04年に、素案をまとめる段階まで至った経緯があった。担当課にとっては、議論もなく知事が突然表明した「方針撤回」は寝耳に水だった。約4時間後、発言を修正する知事のコメントが出される異常事態となった。

 知事選で浅野前知事の後継候補を破った村井知事。初登庁したその足で、前知事が踏み切った県警捜査報償費の凍結を解除した。県幹部OBは「前知事への反発心が、積み上げたものを無視してまで『反浅野』という立場に向かったのでは」と推測する。「本音では(前知事を)面白く思っていないようだ」との声も漏れ聞こえる。

   ■   ■

 知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)の地域移行計画。福祉に力を注いだ前知事のシンボルとも言える政策だが、村井知事は見直しに踏み切った。福祉関係者からは「浅野路線否定の象徴として、これから福祉が標的にされるのでは」と懸念の声もあがる。

 とは言え、福祉の分野では「反浅野」の色合いを示す割には、大きな枠組みは前知事時代の路線を踏襲するのにとどまり、具体的な視点を示すまでには至っていない。

 「パフォーマンス的に『反浅野』の姿勢を示していては、宮城の福祉はいずれだめになってしまう」。県幹部OBはこう指摘した。

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◆20061122 [検証・村井県政1年](上)リーダーシップ(連載)=宮城――読売新聞

「職員の言いなり」批判も 
 「県内総生産10兆円以上の数値目標を明記するよう書き直してくれ」
 8月下旬、村井知事は知事室で、県の新しい総合計画「みやぎの将来ビジョン」の策定を担当する政策課の職員に指示した。知事は、数値目標を盛り込まなかった骨子案が審議委員から「極めて普通。宮城らしさがない」と酷評されたことを強く意識していた。
 総合計画は今後10年間の県政の指針となる。選挙期間中から「富県」を訴えてきた“村井カラー”が打ち出されると期待されていた。
 11月の審議会。中間案に盛り込まれた数値目標を見た多くの委員は一転して好意的に受け止めた。政策課は「知事のリーダーシップがあってこそ中間案がまとまった」と強調した。
 しかし、課題は山積している。現在の県内総生産は約8・5兆円。県民が景気回復を実感しているとは言い難く、外部の政策顧問からは「無理して計画に明記すべきでない」と反対意見も出された。金額の根拠や達成に向けた具体策にも乏しく、「県ができることとの距離がありすぎる」(県幹部)と先行きを不安視する声も強い。
                ■
 知事は浅野史郎・前知事の後継者を破って当選すると、まず“浅野色”の払しょくに取り組んだ。
 昨年11月21日の初登庁日、5か月続いていた県警捜査報償費の執行停止を解除した。その後、前県政の福祉政策の象徴だった「知的障害者施設解体宣言」を見直し、施設の当面の存続も決めた。前知事の肝いりで検討されていた「障害のある人への差別をなくすための条例」(仮称)を「やる気持ちはない」と会見で明言し、担当課を慌てさせる場面もあった。
 県政運営の手法も大きく様変わりした。「トップダウン型」だった前知事に比べ、周囲の意見を重視する「ボトムアップ型」だ。ある県幹部は「官僚出身の浅野さんと違い、村井知事は行政の意思決定システムに精通していないので、職員の意見を重視せざるを得ないのでは」とみている。

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◆20061124 [検証・村井県政1年](下)知事インタビュー(連載)=宮城――読売新聞

ものづくり伸ばし、活力を
 就任から1年を迎えた村井知事に、これまでの感想と政治姿勢について聞いた。
 ――1年の感想を
 初日に県警捜査報償費の執行停止を解除したことが印象的。県警には出して良い情報、いけない情報があるのは分かっている。情報開示では報償費以外、浅野史郎前知事が示した基準を継承している。元に戻すこともできるが、私は戻さないよう指示している。
 ――浅野前知事が県社会福祉協議会会長として残っているが、やりにくさは
 特に意識していない。「知的障害者施設解体宣言」を見直したが、早急に地域移行を進めるのではなく、私は長い期間で地域に戻ってもらおうと考えている。福祉政策で浅野さんと大きな差異はない。
[……]




*作成:三野 宏治
UP:20100410 REV:
施設/脱施設
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