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脱施設 2005

施設/脱施設


■文献等
■ニュース など

◆20050109 「施設解体」後、どう支援 課題など討論 障害者の地域生活/宮城――朝日新聞

◆20050109 知的障害者の脱施設、シンポで知事ら積極意見−−仙台で福祉セミナー /宮城――毎日新聞

◆20050120 精神保健福祉士の仕事 星野仁彦(ストレスクリニック) /福島――朝日新聞

◆20050131 特集:変わる障害者福祉 意思の尊重が必要(その2止)――毎日新聞

◆20050131 支局長万言う記:自己決定の幸せ /新潟――毎日新聞

◆20050210 05年度県予算案:地方財政危機下の編成/三位一体対策「奥の手」 /宮城
――毎日新聞

◆20050215 府、障害者のグループホーム新設支援へ助成 新年度予算 /大阪――朝日新聞

◆20050219 各部局長、重点策語る 府05年度当初予算案 /大阪<健康福祉部・納谷敦夫部長>――朝日新聞

◆20050225 奈良からNPO:情報ぱっく 奈良で地域ケア研究会設立−−来月6日 /奈良――毎日新聞

◆20050228 船形学園40年の歴史に幕 知的障害者施設解体宣言第1号 /宮城――朝日新聞

◆20050228 知的障害者施設:地域で暮らす、はじめの一歩−−船形学園閉園式 /宮城――毎日新聞

◆20050302 施設解体宣言から福祉改革へ 田島良昭著 ぶどう社(ほん)/宮城――朝日新聞

◆20050307 地域ケア研究会、奈良で設立総会 /奈良――朝日新聞

◆20050307 なら地域ケア研究会:「脱施設」支える社会を−−設立総会 /奈良――毎日新聞

◆20050312 障害者の自立これで可能か(声)――朝日新聞

◆20050313 統合を目前に40周年迎える 県福祉事業団が式典 /宮城――朝日新聞

◆20050315 県福祉事業団が設立40周年式典 「宮城いきいき財団」と統合へ=宮城――読売新聞

◆20050403 「西駒郷」設計、業者が決まる 県の知的障害者施設 /長野――朝日新聞

◆20050407 「差別ない社会作る」 衆院2区補選立候補予定者、障害者らと意見交換 /宮城――朝日新聞

◆20050407 衆院宮城2区補選 立候補予定者5人が福祉めぐり意見交換=宮城――読売新聞

◆20050418 福祉サービス利用、1割の自己負担へ 「つらい、すぐ赤字…」――読売新聞

◆20050509 知的障害者、公営住宅入居可能に DV被害者も 単身枠緩和、国交省方針――朝日新聞

◆20050516 私が死んだって…障害の子の自立へNPO 夫の死乗り越え印刷工房 【大阪】――朝日新聞

◆20050521 障害者自活へNPO 「私の死後息子たちは…」母頑張る 土浦・山家さん /茨城――朝日新聞

◆20050526 [検証・浅野知事](上)福祉 理念に評価、手法に不満(連載)=宮城――読売新聞

◆20050628 情報クリップ NARA /奈良県――朝日新聞
 
◆20050822 浅野知事4選不出馬 「まさか」衝撃走る 報償費など課題残す=宮城――読売新聞

◆20050910 はがき通信――朝日新聞

◆20050911 障害者自立支援考える 首長ら意見交換 長崎で福祉セミナー=長崎――読売新聞

◆20050915 (私の視点)自閉症 入所施設活用した支援を 石井哲夫――朝日新聞

◆20051002 (キーワードから 検証・浅野県政:3)脱施設 理念先行に戸惑いも /宮城県――朝日新聞

◆20051004 男性4人で第一歩 身体障害者グループホーム開所 上富田町に県内初 /和歌山県

◆20051008 障害者自立支援、負担増を不安視 法案巡り大阪で公聴会 【大阪】――朝日新聞

◆20051008 障害者ロックバンド、福祉先進国から来県 あす、演奏交流やセミナー /佐賀県――朝日新聞

◆20051018 地域自立シンポ:「福祉は地域力で」 “改革派”4知事が議論−−長浜 /滋賀――毎日新聞

◆20051018 選択:’05知事選 浅野知事の宿題/3 施設解体 /宮城――毎日新聞

◆20051020 知事選、3候補の政策 アンケートから:中 /宮城県――朝日新聞

◆20051021 [2005知事選・選択を前に](5)障害者福祉(連載)=宮城――読売新聞

◆20051025 (知事選後 05選挙イヤー:上)浅野色一変、県に衝撃 身構える人事・政策/宮城県――朝日新聞

◆20051025 知事当選の村井氏、「晴れ晴れした気持ち」 当選から一夜明け心境=宮城――読売新聞

◆20051029 厚労省:「グループホーム」入所施設に設置検討 障害者団体、強く反発
――毎日新聞

◆20051106 知的障害者支援全国大会始まる 新潟 /新潟県――朝日新聞

◆20051112 知的障害者の暮らし、もっと地域へ 県、協力員養成へ研修 西濃地域 /岐阜県――朝日新聞

◆20051118 「報償費、理不尽だった」 浅野県政3期12年、インタビュー /宮城県――朝日新聞

◆20051122 県西濃福祉事務所:「地域移行普及協力員」を来月から養成研修 参加者を募集 /岐阜――毎日新聞

◆20051209 「10年解体は状況をみて」 船形コロニーで前知事 /宮城県――朝日新聞

◆20051209 船形コロニー:県社協に解体見直しを要請−−保護者ら /宮城――毎日新聞

◆200512091 [浅野流・村井流]知的障害者施設解体 目標年度こだわらず=宮城――読売新聞

◆20051214 船形コロニー、施設解体見直す動き 社協・家族に差 県議会委、聞き取り /宮城県――朝日新聞

◆20051215 船形コロニー解体:県議会保健福祉委、見直し求める報告 /宮城――毎日新聞

◆20051215 前知事提唱の知的障害者施設解体宣言 名称見直し検討=宮城――読売新聞

◆20051216 船形コロニー解体:保護者ら、見直し求め要請 /宮城――毎日新聞

◆20051220 村井知事:あす就任1カ月 随所に「村井カラー」 新体制に向け布石 /宮城――毎日新聞

◆20051220 知的障害者施設解体宣言 村井知事「文言を修正」=宮城――読売新聞

◆20051222 [浅野流・村井流]新知事就任1か月 独自路線、矢継ぎ早=宮城――読売新聞

◆20051222 「福祉・夢プラン」 県が素案公表 「日本一の福祉先進県」文言削除=宮城――読売新聞

◆20051227 障害者福祉、下位に 産業経済重視を強調 来年度政策、村井知事が方針 /宮城県――朝日新聞


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◆20050109 「施設解体」後、どう支援 課題など討論 障害者の地域生活/宮城――朝日新聞

 施設に入所している知的障害者が地域で暮らせるようにという「知的障害者施設解体宣言」を受け、地域生活を始めた障害者の支援態勢や課題などを話し合う「福祉セミナーinみやぎ」(県福祉事業団主催)が8日、仙台市の仙台国際センターであった。施設の入居者を地域に移行する活動を進めてきた担当者の報告や地域のグループホームで生活する障害者のシンポジウムなどがあった。
 02年に解体宣言を出して入所者の地域生活への移行を進めている、県の知的障害者施設船形コロニーでは、入居者の4分の1が60歳以上と高齢化しており、介護や医療のノウハウが必要だとの報告がされた。
 同コロニーの高橋和子課長は、特別養護老人ホームの支援を受けて開設したグループホームの事例を紹介。弁護士らの加わったNPO法人による年金などの財産を管理する制度も取り上げた。高橋課長は、事業をほかの施設に広げ、全県的な連携をはかることを今後の課題にあげた。
 県事業団によると、2010年までに全員を対象に地域移行するという「船形コロニー解体宣言」を出した02年から、定員500人のうち、04年末までで141人が退所し、年度末までにグループホームなどに移る人は計170人になる見込みという。
 セミナーは9日もあり、障害者の自立支援訓練事業やメンタル面のケアを行う専門職員配置の強化、介護予防のメニュー化促進など五つの項目のアピールをまとめる。

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◆20050109 知的障害者の脱施設、シンポで知事ら積極意見−−仙台で福祉セミナー /宮城――毎日新聞

 重度知的障害者の生活の場を、施設から地域に移す取り組みについて考える「福祉セミナーinみやぎ」(県福祉事業団主催)が9日まで、仙台市青葉区の仙台国際センターで開かれている。8日は浅野知事がコーディネーターを務めるシンポジウムが行われた。

 シンポジウムは、潮谷義子熊本県知事、高橋はるみ北海道知事ら5人が登壇。浅野知事が昨年2月に出した「知的障害者施設解体宣言」について、潮谷知事は「親亡き後に世話をどうするかがひっかかっていたが、在宅を希望する障害者の姿を直視していくことが大切だと考えるようになった」と述べた。高橋知事も宣言について、「共感している」と話すなど、脱施設の動きに積極的な意見が相次いだ。

9日は、介護保険制度の被保険者・受給者対象年齢の引き下げなど5項目を提言するアピールを決議して閉会する。【山寺香】

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◆20050120 精神保健福祉士の仕事 星野仁彦(ストレスクリニック) /福島――朝日新聞

日本は欧米先進諸国と比べて、福祉行政では後進国です。特に精神保健福祉に関して最も立ち遅れており、欧米ではノーマライゼーションの基本理念に基づいて脱施設化と地域ケアが進んでいるのに、日本ではまだ入院治療が中心です。
 日本では約36万の精神科病床が存在していますが、これは全科の約20%にあたり、世界一です。また平均入院期間も420日以上で世界でトップです。しかし遅ればせながら日本でも97年12月にようやく精神保健福祉士法が成立しました。それに伴って99年1月に初めての精神保健福祉士(PSW)の国家試験がなされ、これまで1万人以上の合格者が出ています。
 PSWの仕事は「専門的知識と技術をもって精神病院や精神障害者の社会復帰施設において、社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、訓練その他の援助を行う」ことです。その勤務場所は精神科の医療機関、精神保健福祉センターなどの保健機関、小規模作業所、グループホームなどの社会復帰施設、老人保健施設などさまざまです。
 厚生労働省がPSWの資格をつくった目的は精神障害者の社会復帰の他、近年激増しているアルコール依存・薬物依存などの各種依存症、不登校・ひきもこりなどの児童思春期の問題、老年認知症(痴呆<ちほう>症)などの高齢者の問題などが激増しており、彼らへの対応が焦眉(しょうび)の急となったためです。
 しかし厚労省の度重なる指導にもかかわらず、日本では精神障害者の社会復帰は遅々として進みません。その理由は日本の精神病院の8〜9割が民間病院であるため、行政指導による思い切った改革ができないこと、社会全体の精神障害者への偏見が根強いこと、社会復帰指導は病院が中心で、地域ケアシステムが不十分であることなどです。
 PSWの実態を紹介した「精神保健福祉士の仕事」(住友雄資編、朱鷺<とき>書房)から、あるPSWの体験を紹介します。このPSWは精神病院に10年間入院している50歳代の男性患者と一緒に、退院後に入居するアパートを探しました。
 「『ワーカーさん、もういいよ。僕は一生病院にいるよ』と、彼は半ばやけ気味にさけんだ。無理もない。アパート捜しのために訪れた不動産屋はこれで4軒目だった」
 男性の病状は安定していて、退院については主治医や家族の了解を得ていましたが、定職についていない中年の男性に部屋を貸してくれる大家が見つからなかったようです。
 「不動産屋に言われるのは決まって、『どこかにお勤めですか』『定期的な収入は』『保証人は』。そのいずれもはっきりしない彼が口ごもっていると、同伴した私に対して、『失礼ですが、精神障害者ではないでしょうね。よく新聞などでみると事件を起こしているので貸せません』と断られてしまった」
 またこの地域に、精神障害者のための社会復帰施設をつくろうとする運動が起こったそうですが、「自分たちの近所に危険な人たちが集まる場所を作ってほしくない」という周辺住民の反対で、たち消えてしまったそうです。
 このように日本の精神障害者とPSWは、病気と闘う上に社会全体の偏見とも闘っているのです。なお福島学院大では県内初めての福祉学部としてPSWを養成しています。
 (福島学院大学福祉学部福祉心理学科 教授・医学博士 星野仁彦)

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◆20050131 特集:変わる障害者福祉 意思の尊重が必要(その2止)――毎日新聞

◇「在宅」に戻る動きも

 ◇「家族の愛情に勝るものはない」−−外出増え、表情豊かに

 ◇グループホームの地元設立目指す

 「こんなに黒い重症児は見たことがありませんよ」。87年の夏、皮がむけるほどに日焼けした顔を見て、医師が驚いた。滋賀県湖北町の川瀬とし江さん(60)=写真、右から2人目=が重症心身障害児の長男、故・信明さん(当時17歳)を定期検診に連れて行った時のこと。この前年の5月、信明さんは7年間暮らした第1びわこ学園を出て在宅の介護に切り替えた。

 毎日の散歩、夏のプール、東京ディズニーランドへの家族旅行。首がすわらず寝たきりで、体には何本ものチューブがつながっていたが、施設でなかなかできない外出も存分にできた。表情はずっと豊かになった。地域では「ノブちゃん」と親しまれ、亡くなった翌年の97年に出版した文集には、親族や友人ら80人以上が追悼文を寄せた。

 在宅を決断したのは「信明がいないまま、家族の日常が固定しそうになるのがいや」だったから。「職員の努力には感謝しているが、やはり家族の愛情に勝るものはない」と話す川瀬さんは、同じく重症者の長女愛子さん(33)=同右から3人目=の介護も在宅で続ける。

 ただ、将来には不安を持っている。ベッドからの移動や入浴など力仕事の介護をいつまで続けられるのか。川瀬さんは同じ悩みを持つ地域の親でNPOを作り、小規模グループホームの設立を目指している。既存の施設だと家から車で1時間。「空いた時間でも立ち寄れる地元にホームがあれば、家族のきずなも十分保てる」。川瀬さんはそう考えている。

 第2びわこ学園副園長で重症児の親でもある小川勝彦医師(50)は「入所者の中には、高度な設備を整えた施設でなくても暮らせる障害者もいる。しかし地域の受け皿や、それに対する行政の支援策がほとんどないのが現状」と指摘する。

 一方、びわこ学園への入所待機者は、現在約30人。大半が家庭の事情や親の高齢化で早急な対処が求められるケースという。しかし空きができて入所できるのは死亡などで退所する年間2、3人分だけ。申し込みから入所まで10年かかる計算だ。家族の選択肢は極めて限られている。

 ◇受け入れ態勢、壁に−−ケアマネ制度不備

 ◇地域生活支援、道半ば

 宮城県の浅野史郎知事が昨年2月、県内すべての知的障害者入所施設を将来的に「解体する」と宣言し、物議を醸した。「施設解体が可能になるための地域生活支援の施策充実を目指す」のが狙い。背景には、地域社会で障害者の自立を支援する態勢が整わないまま、入所が止めどなく長期化している現状への反省があった。

 行政側がサービスを決定する「措置制度」だった障害者への支援策は、03年度に改められ、「障害者支援費制度」が導入された。障害者は自らサービスを選択し、支援費支給を申請できるようになった。しかし現実にはサービス提供態勢が整わず、多くの地域で需要に応えられていない。障害の度合いやニーズを判定するケアマネジメント制度の不備など、多くの問題点が指摘されている。

 一方、既存の施設でも「在宅への還元」に取り組む動きがある。第2びわこ学園では昨年9月、県内の訪問看護師を対象に重症児看護の研修会を初めて開いた。人工呼吸器や栄養チューブの扱い方、独特の症状を、講義や実習を通じて指導。「今まで誰に相談していいか分からなかった」「本を読んでも実際に体験できる場がなかった」という参加者から好評で、継続的な開催や情報交換を求める意見が相次いだ。

 施設には、長年培ってきた医療・介護のノウハウを生かし、在宅を支援する拠点としての役割も求められている。

 ◇「生の証し」残したい−−映画「わたしの季節」今春以降、各地で上映

 びわこ学園に生きる人々に迫ったドキュメンタリー映画「わたしの季節」(小林茂監督)が完成し、今春以降、各地での上映が準備されている。

 「大地から芽吹くように人は生まれ、春夏秋冬と季節がめぐるように生きてゆく。生きてゆく喜びと、生きてゆく苦しみの間にそれぞれの人生がある」

 この言葉とともに幕を開ける映画の撮影が始まったのは02年10月。西日本で最初の重症心身障害児施設として開設から約40年を迎え、入所者の高齢化も進むなか「生きてきた証しを映像として残したい」という関係者の強い思いがあった。製作は足掛け4年に及ぶ。

 人工呼吸器を付けた寝たきりの少年とその母親、粘土を使った造形に才能を発揮する男性、「施設の職員には本音が言えない」とこぼす女性……。ナレーションをすべて排し、カメラは重い障害を持った人たちの姿と言葉を真正面から捕らえる。

 ありのままの障害者の姿を通じ、人間が生きることの意味を、見る者に深く問いかける内容になっている。撮影も担当した小林監督は「障害を持つ人が社会の中でどう処遇されるべきかを問うた作品ではない。ただひたすらに、映画に登場する人々とじかに対面してくれることを願っています」と語る。

 作品は今月、第59回毎日映画コンクールの記録文化映画賞(長編)も受賞した。今後の上映などの問い合わせは、第2びわこ学園(077・587・1144)まで。

 ◇“声”伝えていく

 一連の取材に先立つ介護実習は、第2びわこ学園で2日間にわたって受け、食事や身の回りの世話を体験できた。

 正直に告白すれば、うつろに見える目や曲がった肢体に、最初は戸惑った。しかし、介護を続け、それぞれの個性を持った人となりに接するうちに、人間が生きることの意味を、問いかけられているという実感を持つようになった。

 ベテランの職員ですら「介護が自己満足になっているのではという不安が常にある」と話す。障害者福祉が大きく変わろうとする中、意思を十分に伝えられない障害者の“声”が置き去りにならないか。そんな危機感を強くした。

 これまで出会った人をはじめ障害者の権利がどこまでも守られるよう、今後も見守り、取材を続けていきたい

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◆20050131 支局長万言う記:自己決定の幸せ /新潟――毎日新聞

先週、仕事を終えた小泉渉さん(31)と酒を飲んだ。

 小泉さんはつい先日まで、知的障害者とその家族でつくる「全日本手をつなぐ育成会」の本人活動代表委員長だった。つまり知的障害をもつ本人が、自分たちのことは自分たちで決める活動(本人活動)の全国の代表だった。今も新潟市で「本人主張の会あすなろ」の代表を務める。

 12月2日の社会面で報じた「佐渡の知的障害者施設で虐待」という記事で、職員の「暴力」を受けていた入所者の父親から手紙をもらった。「話を理解できない人には、体で覚えさせるしかありません」「体を張って力で指導する職員には感謝しています」などと、暴力を認めた職員を擁護する文面だった。暴力はもちろん、障害者の意思に反する行為は許されないと返事を書いた。しかし納得はしてもらえない。

 小泉さんたちの活動は、自分たちで遊びなどの活動内容を決める。押しつけられた活動はイヤだ、と仲間に加わる人もいる。仲間の中に言葉が出ない人もいるが、好きなことを続けるうちに、明るく積極的に変わったという。

 どんな重度の障害者でも、意思はあると思う。テレビを見たい、食事をしたくないなどの意思に反し、親や施設の都合で何かを強制されたら、幸せとはいえないだろう。

 「脱施設」の流れの中、障害者が施設外で暮らすには、まだまだ制度や人々の考え方を変えなければならない。そのための報道が新聞の役割の一つだと思う。手紙をくれたお父さん、そうではないでしょうか。【長倉正知】=毎週月曜に掲載

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◆20050215 府、障害者のグループホーム新設支援へ助成 新年度予算 /大阪――朝日新聞

 府は、障害者が部屋などを借りて自立のための共同生活をする「グループホーム」を増やすため、社会福祉法人にグループホームを設置・運営する専門組織をつくらせ、その経費を助成することを決めた。05年度予算に1億3800万円を計上する。03年度から進めている「第3次府障害者計画」では、07年度までの5カ年でグループホームの定員を2370人にすることを目指しているが、昨年10月時点でまだ約45%しか達成できていない。
 
 府が知的障害者2千人を対象に、02年に実施したアンケート(741人が回答)では、早急に望むものとして、「経済援助」「障害者への理解」の次に「グループホームの整備」があげられていた。しかし府内では、家賃が高いなどの理由で部屋がなかなか見つからず、グループホームの整備が進んでいないという。
 このため、府は、社会福祉法人にグループホームを設置・運営したり、入所者への就業先をあっせんをしたりする「地域移行支援センター」を設置してもらい、年間920万円を上限に、センターの事務所家賃や人件費を助成する。ただし、同センターが2年間で少なくとも5カ所のグループホームを立ち上げることや、定員の少なくとも4分の1を、それまで大規模施設に入っていた障害者に割り当てることなどが条件だ。
 府は2年間で、約20カ所のセンター立ち上げを目指す。中核市や政令指定都市では、それぞれ府と市の共同事業として、経費の半額を助成する。

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◆20050219 各部局長、重点策語る 府05年度当初予算案 /大阪<健康福祉部・納谷敦夫部長>――朝日新聞

誰もが生涯を通じて安心して暮らせるよう、自立支援型の施策に重点的に取り組む。障害者が普通に暮らせるように力を入れたい。「障害者の地域移行促進の拠点づくり」(1億3800万円)では、グループホームの設置を促進、障害者が地域で暮らしやすいようにする。障害者のIT(情報技術)利用日本一を目指し、「障害者IT活用支援研究事業」(500万円)を進める

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◆20050210 05年度県予算案:地方財政危機下の編成/三位一体対策「奥の手」 /宮城
――毎日新聞

◇「雇用創出」を重視、「障害者自立」「産廃対策」も

 県は9日、総額8186億3676万円に上る05年度一般会計当初予算案を発表した。苦しい財政状況の中、県はどのような姿勢で予算編成に臨み、それは私たちの暮らしに何をもたらすのか。主要分野について点検した。【石川貴教、小平百恵】

 ■福祉・教育

 県の福祉政策のベースには、浅野知事が昨年2月に宣言した「障害者入居施設の解体」がある。05年度予算案も、障害者が地域で生活できる社会づくりを目指し、総事業費で今年度より1892万円多い1億9584万円を計上した。

 例えば、賃貸住宅への入居を希望する障害者に家探しなどをサポートする制度。111万円を新たに計上した。在宅の障害児が専門家の保護を必要とする事態には、支援センターで対応する。

 宣言の理念は、教育分野にも波及している。盲・ろう・養護学校など特殊学校の児童生徒が普通学校に通えるシステム作りに1億7175万円を計上した。05年度は小中学校の約20校をモデル校に指定する方針だ。
◇05年度の主な事業(04年度→05年度)

 ●福祉・教育●

・グループホーム整備など知的障害者の地域移行支援(1億7692万円→1億9584万円)

・障害者の賃貸住宅への入居支援システムの構築(0円→111万円)

・特殊学校の児童生徒の普通学校への移行推進(0円→1億7175万円)

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◆20050225 奈良からNPO:情報ぱっく 奈良で地域ケア研究会設立−−来月6日 /奈良――毎日新聞

◇高齢者、障害者の「脱施設」推進を

 奈良市東寺林町、ならまちセンターで来月6日、なら地域ケア研究会が設立総会を開く。

 全国的に広がる高齢者や障害者の「脱施設」を奈良でも推し進めていくのが目的。総会は午後1時〜3時半で、県内自治体の福祉担当者や、NPO団体、福祉作業所の職員らが参加。障害者や高齢者が、住み慣れた地域で暮らしていくシステム作りについて議論する。また、京都府で心身障害者介護施設などを運営する社会福祉法人相楽福祉会常務理事の廣瀬明彦さんが記念講演する。

 参加費は資料代500円。問い合わせはNPO法人八木福祉会(0742・64・1431)。

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◆20050228 船形学園40年の歴史に幕 知的障害者施設解体宣言第1号 /宮城――朝日新聞

知的障害者の就労や生活支援をする更生施設船形学園(大和町)の閉園式が27日、仙台市内のホテルであり、卒業生や在園生、保護者ら300人が学園との別れを惜しんだ。
 閉園式で浅野史郎知事は閉園宣言をし、「学園は閉園するが、地域で新しい生活をしていくという門出である」と述べ、閉園後も県として適切な支援体制を整えていく考えを示した。
 85年に卒園した会津研二さんは、職場の様子やグループホームでの仲間の様子を紹介しながら、「帰る家を失うようで寂しい」と話した。
 船形学園は主に18歳以上の知的障害者の就労支援施設として県が64年に開設。10年ほど前の最盛期には定員100人に達していたが、養護学校の高等部が設けられたり、作業所など障害者の日中活動の場が増え、グループホームも県内で140カ所に達したといったことを背景に入居者が減少。
 05年度の入居見込みが30人を割り込む状況といい、老朽化もあって閉園が決まった。浅野知事が昨年2月に行った「みやぎ知的障害者施設解体宣言」の第1号でもある。
 在園生らの多くは、同じ知的障害者の入所施設の船形コロニー(同町)に移るほか、地域生活に移行するという。

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◆20050228 知的障害者施設:地域で暮らす、はじめの一歩−−船形学園閉園式 /宮城――毎日新聞

県福祉事業団が運営する大和町の知的障害者更生施設「船形学園」が3月末に閉鎖されることになり、27日、仙台市泉区のホテルで閉園式が行われた。入園者の減少が直接の理由だが、浅野史郎知事が知的障害者を施設から地域社会に移す「みやぎ知的障害者施設解体宣言」(04年2月)を出してから、初めての施設閉鎖となる。

 船形学園は1964年、県内初の知的障害者更生施設として開園。18歳以上の障害者が原則3年間入所し、社会生活への適応を目指して訓練してきた。しかし、90年代に入り、通所授産施設など入所せずに同様の訓練が受けられる施設が増えたため、この10年間で入所者は約6割減少。この春、施設の認可基準である30人を割り込む見通しとなったことから閉園が決まった。退園できない約25人は当面、同町の船形コロニーに移る。

 式では、浅野知事が「閉園は新しい旅立ちの第一歩です」と閉園を宣言。元入園生を代表して、富谷町在住の自動車用品店員、会津研二さん(36)が「学園がなくなるのはさみしいですが、今は地域で暮らすのがいいことだと思っています。これからも『知的障害者は何も分からない。何を言ってもいい』と思わず、私たちの考えを聞いて下さい」と述べた。【鈴木英生】

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◆20050302 施設解体宣言から福祉改革へ 田島良昭著 ぶどう社(ほん)/宮城――朝日新聞

 介護保険法改正案が今国会に提出された。しかし、焦点だった(1)被保険者年齢を現行40歳から若い層まで引き下げる(2)高齢者福祉と障害者福祉を一元化して知的・身体・精神の3障害者などもサービスを利用できるようにする、という改革は見送られた。
 本書はそうした改革推進を求める現場からの提案である。県福祉事業団理事長の著者は25年以上にわたって、長崎県で知的障害者の授産施設などを運営してきた福祉のスペシャリストだ。
 03年、障害者福祉にも高齢者の介護保険にならい支援費制度が導入された。従来の措置費と違って利用者がサービス提供者と対等に契約を結びサービス内容を選べる。しかし、支援費は税方式(補助金)とされたため、税財源不足が問題になっている。
 「使えるお金は限られているのに、自由に使ってくださいと言っている。最初から成り立つはずがない」と指摘。3障害の介護保険への統合を訴える。
 浅野史郎知事は本書の序文で著者のことを「盟友」「障害福祉の師」と記している。2人は二人三脚で、施設に入所している知的障害者を地域での生活に移行させる「施設解体宣言」を実行に移しつつある。本書はそうした取り組みについても詳しい。(1600円)

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◆20050307 地域ケア研究会、奈良で設立総会 /奈良――朝日新聞

 障害者や高齢者が安心して暮らせる地域づくりを進めようと、NPOやボランティアの関係者らが情報交換や連携を図る「なら地域ケア研究会」の設立総会が6日、奈良市東寺林町のならまちセンターであり、約70人が参加した。
 同研究会は、障害者支援団体の関係者や大学教授ら7人の世話人が中心となり、昨年秋に香芝市で障害者や高齢者の「脱施設」をテーマにした集会が開かれたのをきっかけに結成した。この日は相楽福祉会(京都府)常務理事の広瀬明彦さんが記念講演し、「障害者に変化を求めるのではなく、社会や環境が変わることで、社会参画がぐっと進む」などと話した。
 研究会は4月14日に「介護保険制度の改革について」、5月12日に「障害者福祉の制度について」と題して、いずれも午後6時半から奈良市東向南町の県女性センターで例会を開く。県の担当者も参加する。入会申し込みや問い合わせはNPO法人八木福祉会(0742・64・1431)へ。

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◆20050307 なら地域ケア研究会:「脱施設」支える社会を−−設立総会 /奈良――毎日新聞

 高齢者や障害者が、住み慣れた地域で暮らすことを進めようと、奈良市東寺林町のならまちセンターで6日、「なら地域ケア研究会」の設立総会・記念講演会が開かれた=写真。

 福祉問題に携わる県内のNPO関係者らが参加。総会では、会設立を呼びかけた沢井勝・奈良女子大教授、「たんぽぽの家」の村上良雄常務理事を代表に選んだあと、社会福祉法人・相楽福祉会(京都府精華町)の広瀬明彦常務理事が「『脱施設』を支える社会システム」と題して講演。広瀬さんは、グループホームでの体験などを交えつつ「障害者らが当たり前に暮らしていける地域づくりが必要」と訴えた。

 同研究会は、4月から毎月1回定例会を開催。第1回「介護保険制度の改革について」は、同月14日午後6時半から、同市東向南町の県女性センターで開く。事前に申し込みが必要。問い合わせは事務局の八木福祉会(0742・64・1431)へ。【曽根田和久】

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◆20050312 障害者の自立これで可能か(声)――朝日新聞

グループホーム世話人 茂木好子(東京都板橋区 58歳)
 2月10日に国会に上程された「障害者自立支援法案」。これから委員会などで様々に議論されるだろうが、法案の中身を知るほどに私は心配になってくる。
 まず、障害者本人の「応益負担」という考えが出てきた。これまでは「応能負担」といって、収入状況によって負担する額が計算されていた。障害者は「障害基礎年金」とわずかな通所作業所などからの収入という人が多いから、負担なしという人が多かった。
 ところが法案によれば、障害者が介護や施設利用などのサービスを利用した場合は1割負担を求め、また、通所、入所施設の食費、光熱費などは自己負担となるのだ。
 さらに厚生労働省の試算を、私が関与する知的障害者グループホーム利用者にあてはめると、食費や部屋代の実費と利用料を支払った後の生活費(衣服や保健医療、通信、教育など)はきわめて少額となる。これでは「脱施設」「地域で暮らす」ことが可能とはとても思えない。
 ささやかながら「地域の中での暮らしの豊かさ」を追求してきた支援者の一人として、今とても重い気分になっている。

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◆20050313 統合を目前に40周年迎える 県福祉事業団が式典 /宮城――朝日新聞

県の社会福祉施設を管理運営する県福祉事業団の設立40周年記念式典が12日、仙台市内のホテルで開かれた。事業団は来月1日に県社会福祉協議会と宮城いきいき財団と統合し、新組織に生まれ変わることが決まっており、出席者からは「統合後」に向けた発言が相次いだ。
 同事業団の田島良昭理事長は「施設保護から地域での障害者支援へと、福祉改革ののろしが宮城から全国に広がった。40年前に作られた衣を脱ぎ捨て、新たな土俵で再スタートするべきだ」とあいさつした。
 浅野史郎知事は講演の中で、県が計画している知的障害者施設の廃止に触れ、「事業団や障害者の家族に、驚きやとまどい、怒りがあって当たり前だ。だが施設解体は障害者本人の幸せに加え、社会が障害者を知る貴重な機会にもなるはずだ」と理解を求めた。
 式の中では同事業団の団旗を、統合する相手である県社協に手渡すセレモニーもあった。

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◆20050315 県福祉事業団が設立40周年式典 「宮城いきいき財団」と統合へ=宮城――読売新聞

県福祉事業団の設立40周年記念式典が12日、仙台市内のホテルで開かれた。
 同事業団は4月1日に、県社会福祉協議会、宮城いきいき財団と統合し、新しい「県社会福祉協議会」となる。式典には約230人が出席し、同事業団の田島良昭理事長が「4月からは新たな団体として再スタートを切りたい」とあいさつ。浅野知事が、「みやぎ知的障害者施設解体宣言」に基づく知的障害者の自立のための施策について講演し、「グループホームを充実させるほか、障害者の女性の人権を守るシステムも必要」などと述べた。

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◆20050403 「西駒郷」設計、業者が決まる 県の知的障害者施設 /長野――朝日新聞

老朽化のため改築を計画している県の知的障害者施設「西駒郷」(駒ケ根市)の居住棟設計業者を選ぶ審査委員会がこのほど開かれ、設計業者にアーキディアック(松本市、児野登代表)が決まった。
 事業費は約6億7千万円で、05年度中に設計を終える予定。
 業者側が企画を提案する「公募型プロポーザル方式」で実施。県内の8業者が設計図などを使って特徴や工法を説明した。
 アーキディアックの提案は、これまでの4人部屋を原則1人部屋とするほか、いくつかの部屋で一つのまとまりを作り、共同生活を送れるようにする。利用者の地域移行を見据えて、施設にいながら生活訓練できるよう設計されている点が評価された。

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◆20050407 「差別ない社会作る」 衆院2区補選立候補予定者、障害者らと意見交換 /宮城――朝日新聞

 12日告示される衆院宮城2区補選の立候補予定者を招き、県内の障害者団体が6日、仙台市青葉区の市福祉プラザで意見交換会を開いた。いかに障害者への差別のない社会を作るか。立候補を表明している5人が熱っぽく持論を展開した。

 国会では、障害福祉サービスの一元化などを柱とする障害者自立支援法案が5月にも審議入りする見通し。
 県は、差別の禁止規定を盛り込んだ障害者差別救済条例を今年中に制定する方針だ。
 秋葉賢也氏(42)=自民=は浅野史郎知事が表明した障害者施設解体宣言について、「施設解体はだれも否定できない理想の世界だが、施設に頼らざるを得ない人もいる。選択肢を確保することが重要だ」と話した。
 門間由記子氏(30)=民主=は県が進めている統合教育について、「障害を持った友人との付き合いから、地域と障害者が触れ合う機会がこれまで少なかったと実感している。統合教育はその受け皿になり、重要」。
 五島平氏(54)=共産=は、自立支援法案が原則一律で一割負担としていることについて「問題だ。能力に応じて負担する現状の制度を維持すべきだ」と述べた。
 田山英次氏(44)=社民=は県の差別救済条例について「差別があるのが現状だ。一刻も早く制定し差別をなくす力にしてほしい」と賛同した。
 菊地文博氏(44)=無所属=は「支援のための財源をどう工面するかに尽きるのではないか。新紙幣を発行するなどドラスティックな変革が必要だ」と訴えた。

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◆20050407 衆院宮城2区補選 立候補予定者5人が福祉めぐり意見交換=宮城――読売新聞

衆院宮城2区補選の立候補予定者が6日、仙台市青葉区の仙台市福祉プラザで行われた「意見交換会」に出席し、障害者福祉政策などをめぐり議論を繰り広げた。
 企画・主催は「障害者差別条例を考えるみやぎ連絡協議会」。秋葉賢也(42)(自民)、門間由記子(30)(民主)、五島平(54)(共産)、田山英次(44)(社民)、菊地文博(44)(無所属)の5氏が出席し、浅野知事が打ち出した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」への評価や、障害者の自立を目指す政策の進め方などをめぐって活発に意見を交わした。

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◆20050418 福祉サービス利用、1割の自己負担へ 「つらい、すぐ赤字…」――読売新聞

障害者福祉の新制度を定めた「障害者自立支援法案」が、今国会に提出されている。財源の拡充や就労支援の強化などと併せ、福祉サービスを利用する際、原則1割の自己負担も導入される。審議が本格化するのを前に課題を探った。(安田武晴)
 ◎今でもギリギリ
 「少しでも負担増はつらい」
 東京都葛飾区の社会福祉法人「原町成年寮」の笹生依志夫(さそうよしお)・地域生活援助センター所長は語る。
 例えば、「成年寮」の知的障害者グループホームで暮らす土屋修さん(31)の場合=表参照=。1か月の収入は、障害基礎年金と、都や区からの補助、授産施設でパンを焼いて得た工賃を合わせ計12万5700円だ。一方、支出はホームの家賃、食費以外に、日用品購入や医療費、自閉症の療育相談費など計2万円を含む4万2700円が「その他生活費」となる。
 国の調査によると、食費や光熱費以外の「その他生活費」として必要なのは、施設入所者で月2万5000〜3万円とされ、新制度では、この金額が手元に残るよう配慮される。小遣いを入れると4万円を上回る土屋さんの場合、負担増はやむを得ないのではとの問いに対して、笹生さんは「ぜいたくや無駄遣いはしていないのに収支はギリギリ。何かあれば赤字になってしまう」と話す。
 ◎減免措置どうなる
 厚生労働省は、払えない人に無理に払わせることはしない方針で、同省幹部は「低所得者が多いので、財務省とも相談して可能な限りの減免措置を講じる」としている。生活保護受給者になったり、在宅生活が送れなくなったりしたら本末転倒だからで、すでに、所得に応じ負担額ゼロから4万200円の上限を設けることが決まっている。
 土屋さんの場合、減免なしだとホームと通所施設の1割負担分として計1万8000円、通所施設の食費約1万4000円が新たな負担に。単純計算だと計3万2000円で完全に赤字だ。いくら残るのかは現時点では分からず、趣味のサイクリングやバスケットボールが続けられるかは、9月ごろまでに決まる減免措置の内容次第となる。
 福岡県久留米市の作業所「フロンティア」の古川克介所長は「日常生活で最低限の支援に自己負担が生じるのは、かなりしんどい」と話す。また、愛知県の社会福祉法人「AJU自立の家」の山田昭義・常務理事は「貯金できなくなれば、施設から地域へ出て暮らすこともできなくなり、地域移行の流れに逆行する」と訴える。
 ◎大勢は「やむなし」
 未解決な問題はほかにもある。例えば、負担額を決める際、地方自治体からの補助や工賃も収入と見なすのかどうか、同居の親の収入はどうするのか。厚労省は、世帯全体の収入で判定したい意向だが、藤井克徳・日本障害者協議会常務理事は「自立の観点から、本人のみか、本人と配偶者の収入で決めるべきだ」と主張する。
 藤井常務理事は、作業所や授産施設、福祉工場など就労支援型の福祉サービスにも1割負担が発生する見通しであることについて、「働いて給料を得る行為に利用料が生じるのはおかしい」と、変更を強く求める。
 ただ、議論全体を見渡すと、負担増はやむなしとする意見が大勢のようだ。知的障害者の保護者の会「全日本手をつなぐ育成会」の松友了・常務理事は「利用者に負担を求める一方で、国と都道府県に財源確保を義務づけた。社会保障財政全体が危機的状況の中、個々の財布の中身だけで論じるわけにはいかない」としている。
 
 〈障害者自立支援法案〉 障害者の自立と地域社会との共生を目的とした福祉・医療サービスの総合法案。身体、知的、精神の各障害福祉制度を一元化し、サービスを相互に使えるよう効率化した。国と都道府県の財政負担を義務化する一方、原則1割の自己負担を求める。ケアマネジメント(専門職による給付管理)の導入、就労支援の強化なども盛り込まれた。一部を除き来年1月施行。

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◆20050509 知的障害者、公営住宅入居可能に DV被害者も 単身枠緩和、国交省方針――朝日新聞

 都道府県や市区町村が運営する公営住宅の入居条件が社会的弱者に対して大幅に緩和されることになった。知的・精神障害者や、配偶者の暴力に悩むドメスティックバイオレンス(DV)被害者らの単身入居を認める。国土交通省が今夏にも政令を改める。安い家賃の公営住宅に受け入れることで自立支援に役立てる狙いだ。また、小学校就学前の子供を持つ4人家族については収入基準を「年収約610万円以下」まで緩和する。今年度中に各自治体で新制度での入居選考が始まる見通しだ。(橋田正城)

 公営住宅は全国に約219万戸ある。現行制度で単身で入居できるのは、身体障害者手帳の1〜4級を有する重・中度の身障者と50歳以上の人など。この単身入居基準を緩和して、(1)社会福祉法人などから継続的に支援を受けることができる知的・精神障害者(2)DV被害者(3)犯罪被害者(4)ホームレスだった人、を認める。
 知的・精神障害者は全国に約250万人いる。政府は障害があっても普通の生活を送れるように社会全体で支える「ノーマライゼーション」の促進を掲げており、公営住宅を「脱施設の受け皿」として活用する必要があると判断した。
 DV被害者を加えたのは、暴力をふるう配偶者からの保護に役立つとの観点からだ。裁判所から保護命令が出されたり、婦人相談所で一時保護されたりしているケースを対象とする方向で検討している。DVは最近急増しており、昨年1年間に警察が受理した夫や妻からの暴力相談件数は約1万4千件に上る。
 ホームレスについては、過去に自立支援施設に入所した経験のある人を対象とする見通しだ。
 国交省が基準を見直すのを受けて、各自治体は新基準にもとづいて新たな入居者の選考をする。公営住宅は民間賃貸住宅に比べ家賃がかなり安く、低所得者の入居希望が多い。国交省は自治体がそれぞれのケース別に入居枠を設定したり、今回追加された対象者については応募時の抽選回数を一般利用者より増やしたりすることを期待している。
 現在でも各自治体の判断でDV被害者などの単身入居を認めている事例は一部にあるが、こうしたケースを国は「目的外使用」と位置づけてきた。こうした事例に対しては自治体への補助金は支給されていなかった。
 一方、未就学児のいる世帯の入居要件は現在は4人世帯で年収約510万円以下(税引き前)。これを約610万円まで引き上げ、子育て世帯の入居対象者を増やす。公営住宅の入居者は現在、50歳以上が6割を占めて構成が偏っているため、子育て中の若い世代を多く受け入れてバランスのとれた地域共同体をつくる狙いもある。

 ――キーワード
 <公営住宅> 地方自治体が低所得者向けに低額で貸し出す公的賃貸住宅。住宅政策のセーフティーネット(安全網)として1951年から制度が始まった。全国約219万戸の公営住宅の6割を市区町村、4割を都道府県が管理している。03年度末の全国の空き家率は0・5%。築30年以上の建物が4割以上を占め、建て替えやバリアフリー化が課題となっている。

 ■公営住宅制度の要点
     【現在】         【改正後(追加する項目)】
 <単身入居枠>
 ・身体障害者(重度・中度のみ)  ・知的、精神障害者
 ・50歳以上の人など       ・DV被害者
                  ・犯罪被害者
                  ・ホームレスだった人
 <子育て世帯>
 年収510万円以下         年収610万円以下
       (4人世帯の場合、年収は税引き前)

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◆20050516 私が死んだって…障害の子の自立へNPO 夫の死乗り越え印刷工房 【大阪】――朝日新聞

障害のある子を持つ親にとって最も気がかりなのが、自分たちの死後の子の行く末だ。茨城県土浦市の山家(やまが)静枝さん(74)には、脳性小児まひの子2人がいる。夫の利夫さんの急死を乗り越え、昨年、夫婦の念願だったNPO法人を設立。印刷所を併設したグループホームによる、障害者の自活の道を目指している。
 (板倉吉延)

 「子どもたちも手伝え、家族が一緒にいられる仕事はないだろうか」
 利夫さんと静枝さん夫婦は試行錯誤の末、89年に印刷・製本会社「ひまわり社」を興した。当初は、「障害者には無理だ」と言われていたが、長男の昭さん(50)にはタイプを学ばせ、障害の重い弟の清さん(47)には紙の運搬や製本を手伝わせた。地域の障害者を受け入れ、印刷やワープロの職業指導もした。会社化以前の福祉作業所時代も含めると、約30年の間に、30人以上の障害者がここで働いた。丁寧な仕事ぶりが評判を呼び、会社は順調で、兄弟は町の人に受け入れられていた。

 ○経験生かす
 一方で、静枝さんらはどうしようもない不安も抱えていた。自分たちの死後の息子たちのことだ。なんとか、いまのように、働いて自立した生活を送らせてあげたい。その解決策として考えたのが、自分たちの経験が生かせる印刷と製本の職業訓練施設を併設したグループホーム作りだった。
 障害者支援費制度の導入など、国の福祉政策が脱施設化に転換したことも追い風となった。地域の賛同者も見つかり、02年秋から、運営主体となるNPO法人を立ち上げようと活動を始めたが、計画は突然、休止を余儀なくされる。03年春、利夫さんが74歳で亡くなった。印刷会社もたたむことになった。

 ○賛同者協力
 静枝さんは一時は、計画を断念することも考えたが、夏には活動を再開。「夫に倒れられ、自分の死後に残されることになる子どもたちへの思いが、より切実になった」という。外部との交渉はすべて利夫さんまかせにしてきたが、役所への申請文書を自ら作り、何度も役所と折衝した。賛同者の協力もあり、04年3月、NPO法人「心身障害者職業自立事業所ひまわり工房」が認可された。
 この1年間はノートや便箋(びんせん)を作って販売し、NPOのPRに努めてきた。まずは印刷技術を教える福祉作業所を軌道に乗せ、デイサービスを始めたいと考えている。今は障害者2人が印刷の技術を学びに通っている。実績を積んで助成金が受けられるようになれば、目標だったグループホームづくりも視野に入れたい。
 NPOは静枝さんが理事長を務め、理事は13人。障害のある子を持つ親が助け合って、地域で生きていく仕組みをつくるためにも、もっと仲間を集めたいと思っている。
 「なんとか息子たちに生きる道筋を残してやりたい」
 町中の自宅はNPOの活動には手狭になってきたため、郊外に広い家を見つけた。6月、さらなる飛躍を目指して、家族は住み慣れた町を離れる。
 問い合わせはひまわり工房(029・821・6309)へ。

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◆20050521 障害者自活へNPO 「私の死後息子たちは…」母頑張る 土浦・山家さん /茨城――朝日新聞

 障害のある子を持つ親にとって最も気がかりなのが、自分たちの死後の子の行く末だ。土浦市の山家(やまが)静枝さん(74)には、脳性小児まひの子2人がいる。夫の利夫さんの急死を乗り越え、昨年、夫婦の念願だったNPO法人を設立。印刷所を併設したグループホームによる、障害者の自活の道を目指している。(板倉吉延)

 「子どもたちも手伝え、家族が一緒にいられる仕事はないだろうか」
 利夫さんと静枝さん夫婦は試行錯誤の末、89年に印刷・製本会社「ひまわり社」を興した。当初は、「障害者には無理だ」と言われていたが、長男の昭さん(50)にはタイプを学ばせ、障害の重い弟の清さん(47)には紙の運搬や製本を手伝わせた。地域の障害者を受け入れ、印刷やワープロの職業指導もした。会社化以前の福祉作業所時代も含めると、約30年の間に、30人以上の障害者がここで働いた。丁寧な仕事ぶりが評判を呼び、会社は順調で、兄弟は町の人に受け入れられていた。
 一方で、静枝さんらはどうしようもない不安も抱えていた。自分たちの死後の息子たちのことだ。なんとか、いまのように、働いて自立した生活を送らせてあげたい。その解決策として考えたのが、自分たちの経験が生かせる印刷と製本の職業訓練施設を併設したグループホーム作りだった。
 障害者支援費制度の導入など、国の福祉政策が脱施設化に転換したことも追い風となった。地域の賛同者も見つかり、02年秋から、運営主体となるNPO法人を立ち上げようと活動を始めたが、計画は突然、休止を余儀なくされる。03年春、利夫さんが74歳で亡くなった。印刷会社もたたむことになった。
 静枝さんは一時は、計画を断念することも考えたが、夏には活動を再開した。「夫に倒れられ、自分の死後に残されることになる子どもたちへの思いが、より切実になった」という。外部との交渉はすべて利夫さんまかせにしてきたが、役所への申請文書を自ら作り、何度も役所と折衝した。賛同者の協力もあり、04年3月、NPO法人「心身障害者職業自立事業所ひまわり工房」が認可された。
 この1年間はノートや便箋(びんせん)を作って販売し、NPOのPRに努めてきた。まずは印刷技術を教える福祉作業所を軌道に乗せ、デイサービスを始めたいと考えている。今は障害者2人が印刷の技術を学びに通っている。実績を積んで助成金が受けられるようになれば、目標だったグループホームづくりも視野に入れたい。
 NPOは静枝さんが理事長を務め、理事は13人。障害のある子を持つ親が助け合って、地域で生きていく仕組みをつくるためにも、もっと仲間を集めたいと思っている。
 「私にあと何年が残されているかはわからない。なんとか息子たちに生きる道筋を残してやりたい」
 町中の自宅はNPOの活動には手狭になってきたため、郊外に広い家を見つけた。6月、さらなる飛躍を目指して、家族は住み慣れた町を離れる。
 問い合わせはひまわり工房(029・821・6309)へ。

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◆20050526 [検証・浅野知事](上)福祉 理念に評価、手法に不満(連載)=宮城――読売新聞

◇試される自治
 浅野史郎知事(57)は3期目の任期満了(11月20日)まで半年を切った。「改革派知事」のトップランナーとして知られ、読売新聞社が2004年7月に県内で行った世論調査でも63%の高支持率を誇る。一方、その政治手法などをめぐり関係者との確執を招く場面も少なくない。4選立候補の有無が注目される浅野知事の「考え方」と「行動」を3回にわたり検証する。(本文中敬称略)
         ◇
 「3団体の統合は全国初。失敗は絶対に許されない。職員一丸となって地域福祉の向上に取り組んでほしい」
 今年4月1日。県社会福祉協議会、県福祉事業団、宮城いきいき財団の県内福祉関係3団体が統合され、新たに県社会福祉協議会(県社協)が発足した。その辞令交付式で、副会長で前県福祉事業団理事長の田島良昭(60)から新県社協会長の辞令を受け取った浅野は、力を込めてこう語った。
 新県社協は、知的障害者の脱施設・地域生活移行を掲げ、2004年2月に発表した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」の実行を最大の事業目標とする。新県社協の支援を受けた市町村社会福祉協議会がグループホームやデイサービスなど地域福祉の事業主体となり、民間の参入が難しい過疎地でも、障害者が地域での生活に移行できるシステムを構築することを目指す。
 「新県社協の発足は単なる行政改革以上の意味がある。解体宣言の動力部だ」。浅野は口癖のように語る。「宣言」と新県社協発足は、「日本一の福祉先進県」を公約に当選した浅野県政12年の一つの到達点と言える。
         ◎
 旧厚生省で障害者福祉政策に取り組んだ元キャリア官僚の浅野にとって、「福祉」は「情報公開」と並ぶ施策の2本柱だ。「宣言」を始め、「全国初」を意識した福祉施策は、全国の福祉関係者から常に関心を集め続ける。
 だが障害者団体や市町村への説明を後回しにし、県外で「宣言」を発表するなど、「打ち上げ花火のような」(自民党県議)浅野の手法に対し、「施策の理念は正しいが、進め方は独裁的」(県幹部)との不満が県庁内にもくすぶる。
 不満が形となった例もある。地域に移った障害者の人権を守り、豊かな生活を保障するためとして、浅野は「障害のある人への差別をなくす条例」(仮称)を04年度中に成立させようとした。だが、障害者団体や有識者との協議を2回しか開かない条例案の検討作業に、肝心の障害者団体が反発。県は同年12月、「制定は05年度以降」と表明せざるを得ない事態に追い込まれた。
 障害者団体「CILたすけっと」(仙台市太白区)の副代表・杉山裕信(39)は、同様の条例案を策定中の千葉県が、研究会を7回開いて議論を深めていることを引き合いに出しながら、「浅野知事のやり方は『裸の王様』に近い。障害者の地域での生活を左右する大事な条例を、知事選向けのパフォーマンスに使わないでほしい」と手厳しく批判する。
         ◎
 12年前の浅野の就任時、県内(仙台市を除く)で3か所しかなかった知的障害者のグループホームは、04年度末までに125か所に増えた。同じ期間に5か所から53か所に増した仙台市と比べても、4倍の増加率だ。
 だが、今月16日に発表された「県民満足度調査」では、障害者・高齢者施策は「重要度と満足度のかい離の大きい施策」の上位になってしまった。浅野の意気込みとは裏腹に、県民の間では、地域福祉の質、量の向上や、サービスを支える人材育成が進んでいるという実感は乏しい。

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◆20050628 情報クリップ NARA /奈良県――朝日新聞

<会と催し>
 ■なら地域ケア研究会第4回例会 7月14日午後6時半〜8時半、奈良市東向南町の県女性センター3階。「脱施設についてのワークショップ」と題して介護ボランティアグループ「サークル90」主宰の尾崎功さんらを招き、障害者とともに暮らしていくための地域ケアシステムのあり方などについて意見交換する。参加費200円。八木一男福祉会(0742・64・1431)。

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◆20050822 浅野知事4選不出馬 「まさか」衝撃走る 報償費など課題残す=宮城――読売新聞

[……]

・「情報公開」「福祉」に評価
 浅野県政を象徴する政策は「情報公開」と「福祉先進県づくり」だ。
 官製談合や官官接待の追放、情報公開に積極的に取り組み、成果を上げた。「全国市民オンブズマン連絡会議」による公開度ランキングで1位に7回輝き、「改革派知事」と呼ばれた。県警の報償費を巡っては、予算執行の透明性確保のため関連文書の公開を求め、捜査上の秘密保持を理由に拒否する県警と対立。捜査報償費を削減し、予算執行凍結に踏み切った。
 また、障害者福祉行政に情熱を注ぎ、2004年2月に知的障害者が地域で普通に暮らす条件整備や支援を進める「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発表。多くの知事から賛同を得た。
 一方、財源不足は深刻で、県の借金は約1兆4000億円に膨れ上がった。大幅な税収増の見通しも立たず、財政再建団体への転落も懸念されている。
 
 〈浅野県政の歩み〉 
1993.11 ゼネコン汚職で前知事辞職に伴う出直し知事選で初当選
  95. 9 官官接待の原則廃止を表明
  96.11 県政オンブズマン制度がスタート
  97.10 知事再選
  98. 8 97年度決算で県債残高1兆円を突破
2001.11 知事3選
  04. 2 知的障害者の脱施設・地域生活移行を掲げた宣言を発表
    .11 楽天のプロ野球参入で、県営宮城球場の使用権移譲を定
        めた協定締結
  05. 2 県警の捜査報償費を大幅減額。その後、予算執行も凍結
    . 8 竹の内産廃最終処分場問題で、産廃の全量撤去を行わず、
        現状のまま防止策を講じる恒久対策案を発表

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◆20050910 はがき通信――朝日新聞

○地域で生き生き 「ETV特集“まち”に帰った障害者・宮城」(3日、教育)を見た。施設入所者を地域社会へ、という宮城県の「施設解体宣言」。福祉科の元教員として、すごいことだが実施は困難だろうなと思っていた。だが、周囲の条件が必ずしも整ったとはいえない中、グループホームに移り住み、地域にとけ込んでいく姿を目にして驚いた。施設では怖がっていた人にも言葉が出て、笑顔がこぼれる。障害のある人もない人も、1年の触れ合いの中でここまで変われるのだ。できるところから始めることの大切さも教えられた。(新潟県・小野塚美代子・主婦・62歳)

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◆20050911 障害者自立支援考える 首長ら意見交換 長崎で福祉セミナー=長崎――読売新聞

「福祉のトップセミナーin雲仙2005」(社会福祉法人南高愛隣会=瑞穂町=主催、読売新聞社共催)が10日から、長崎市茂里町の長崎ブリックホールで始まり、全国から福祉施設の従事者ら約500人が参加した。11日まで。
 福祉行政に意欲的に取り組んでいる首長の考えを聞くために毎年開かれており、4回目。
 グループホームで生活しながら就業している人が自らの体験を報告した後、浅野史郎宮城県知事をコーディネーターにした「首長夢トーク」。3人の首長が、地域における障害者の自立した生活を支援するにはどうしたらいいかなどについて、意見を交換した。
 浅野知事は、知的障害者を入所施設から、地域生活へ移行させることを目的にした「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を04年に発表しており、「福祉は救貧ではなく、障害者の自己実現のお手伝いをすること」と語った。また、神奈川県平塚市の大蔵律子市長は「グループホームで障害者を支援するボランティアの養成が急務」と問題点を指摘した。このほか、潮谷義子熊本県知事らも参加した。11日にはシンポジウムが行われる。

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◆20050915 (私の視点)自閉症 入所施設活用した支援を 石井哲夫――朝日新聞

 障害福祉の世界で「脱施設化」が取り上げられている。それに伴って最近、入所施設を問題視したり無用の長物と見たりする風潮が広がっている。しかし、これは自閉症児・者への支援に悪影響を及ぼすものであり、懸念を覚える。
 ノーマライゼーションの推進には、私たち日本自閉症協会も取り組んできた。障害のある人も地域で普通に暮らせるようにするという目標に、もちろん賛成だ。ただし少なくとも当面は、自閉症者支援には入所施設が欠かせない。
 私たち、つまり自閉症専門施設で働く援助者を自認する者は、地域社会ですさんだ生活を強いられてきた自閉症の人が入所施設の中で落ち着きを取り戻していく例を多く知っている。
 こうした人々は、刺激が多く、かつ、自閉症への誤解や無理解に基づく差別・偏見も多い世の中で、傷つきながら暮らしてきた人たちなのである。
 自閉症と診断された人の中にも、他者との意思疎通ができるようになり、自ら交流できる人がいる。こういう人は、適切な支援があれば、1人でも地域で暮らしていける。
 半面、自己と家庭の力だけでは地域生活を支えきれない人や、家庭の支援を期待できない人もいる。
 自閉症の人には、その特性を理解したうえでの支援が要る。そして本人の状況によっては、生活全般を総合的に理解して援助する場の存在が必要なのである。ここに、入所施設の果たすべき役割がある。
 だが従来、医療・福祉・教育などの支援の質は貧弱だった。このため、我が子の生活が安定しないまま親が高齢化する例も多い。
 加えて自閉症の人は、知的障害者施設などの施設への入所を断られることも多かった。そのため、親たちが資金を出して各地に自閉症者のための入居施設を作ってきた経緯がある。
 こうした施設は通常、相談や入所の機能だけでなく、生活指導、ショートステイ、強い行動障害がある場合の治療・指導、療育支援技術の研究・開発、支援スタッフの育成、関係機関との連携など、幅広い機能を担ってきた。
 この入所施設の役割を踏まえ、今後は、入所での教育訓練機能やグループホームなどの併設による地域生活補完機能、作業・就労の支援機能、外来・療育・相談機能、余暇や文化活動の支援機能などを、さらに強化していくべきだと思う。
 入所施設を放置するのではなく、今ある入所施設を援助し拡充することによって、地域支援の中核拠点に育ててほしい。地域と入所施設との間を柔軟に結びつける政策こそ求められているのではないか。
 たとえば、自閉症に特化した高度な専門性を持つ援助者の存在は、民間自閉症施設の財産だ。援助実践の研究や研修を広げるうえで、この入所施設を「生かす」視点が有効だろう。新しい社会体制に合わせることと同時に、既存の財産を活用することも大事だ。
 現在の、入所施設への援助を減らす政策は、頑張って働いている施設の専門支援員たちの気力をそいでいるため、自閉症の人や家族の生活も実際に不安定にしている。
 「地域で生活を」の流れには賛成だが、今は、家庭だけでは保てない自閉症者の生活と再教育の場を求める声が強まっているのだ。
 「入所施設を家庭の補強機能とする」ような政策をこそ実行してほしい。
 (いしいてつお 社団法人日本自閉症協会会長)

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◆20051002 (キーワードから 検証・浅野県政:3)脱施設 理念先行に戸惑いも /宮城県――朝日新聞

浅野史郎知事は日ごろから、自らの本籍地を「障害福祉」と公言している。
 原点は、旧厚生省の官僚だった85年、北海道への出向だ。福祉課長として障害者福祉の仕事を初めて経験する。87年に厚生省へ戻ると、障害福祉課長に就く。現場を歩き、人々と出会う中でライフワークと思い定めるようになった。
 知事になって約10年後の04年2月、浅野氏は知的障害者入所施設の「施設解体宣言」を発表した。障害者と健常者の垣根をなくし、同じように社会で生活できるようにする「ノーマライゼーション」の実践だ。
 伏線があった。浅野氏は、まず右腕を呼び寄せた。長崎県で社会福祉法人を運営する田島良昭氏を96年、県福祉事業団の副理事長に迎えた。
 右腕を得た浅野氏は、前知事時代に三本木町で計画された「保健医療福祉中核施設」の建設事業を白紙撤回する。
 02年には、知的障害者の福祉施設「船形コロニー」(大和町)の解体を決定。宣言前には436人いた入所者のうち、100人以上が施設を離れた。今年2月には就労支援施設「船形学園」が閉園した。施設解体の第1号だ。
 福祉現場には、理念先行で矢継ぎ早に打ち出される施策に、戸惑いもある。船形コロニーの入所者の約3分の2は仙台市出身。ところが、受け皿となるグループホームは現在、市内に56カ所しかなく、市には「全員の受け入れは無理。負担の押しつけだ」と不満がくすぶる。
 「いま全部を解体するわけではない。実現は百年後。しかし、いま宣言しないと300年かかる」。浅野知事は福祉関係者を集め、「宣言」の真意をこう説明した。
 宣言の具現化には、サポートなどのため時間もカネもかかる。福祉関係者は「財政が厳しい中で、新知事が浅野氏の福祉政策を踏襲するだろうか」と不安視する。
 宮城には、福祉の「王国」があるようにみえる。浅野氏は右腕の田島氏を副知事に任命しようとしたが、議会の反対で失敗した。だが、田島氏は今、県の福祉関係3団体が統合した新生「県社会福祉協議会」の副会長として、福祉界ににらみをきかす。
 浅野氏は前言を撤回し、後継者を事実上指名した。そこに浅野氏らしい「潔さ」は感じられない。変節の背景には、福祉王国の崩壊に対する恐れが、透けて見えなくもない。
 (小泉浩樹)

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◆20051004 男性4人で第一歩 身体障害者グループホーム開所 上富田町に県内初 /和歌山県

身体に障害があり、車いすで生活する人たちが、アパートを借りて暮らす身体障害者グループホーム「クローバー」が、今月から上富田町岡地区に開所、3日、開所式があった。2DKの2戸を男性4人が借りて共同生活するが、県内では初の身体障害者グループホームという。
 「クローバー」で生活を始めたのは、39〜43歳の4人。いずれも上富田町にある身体障害者療護施設南紀福祉センター「牟婁あゆみ園」に入園していた。
 80人が入所する同園で、04年度に実施したアンケートでは、施設を出て地域で暮らす「地域移行」の希望者が67%あったが、今回入居希望を募ったところ6人の申し込みがあった。
 借りた2戸は、いずれも1階で、入居者4人が費用を負担し、アパートの横から居室の裏にかけての車いす用スロープや通路を整備。床をバリアフリーに改修した。資金は、地域の催しなどで4人がバザーで調達。
 グループホームの設立は県が提案、運営を社会福祉法人県福祉事業団が担当、「牟婁あゆみ園」などがバックアップする。世話人1人とその手助けが2人、さらに必要に応じてホームヘルパーの助けも借りる。世話人の人件費など運営費は、県と上富田町が補助。ホームヘルパーの費用は、入園者の出身の自治体が負担する方式という。
 県障害福祉課の担当者によると、グループホームの設立は、障害のある人たちの地域移行希望に沿うことと、県内に4カ所ある身体障害者の療護施設の満員化緩和のためで、今回をモデルケースに、今後さらに広がる可能性につながるという。
 開所式には、約40人が参加。4人が「これからが大切だと思っている。不安もあるが、グループホームに参加してよかったと思えるようにしたい」などと話した。

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◆20051008 障害者自立支援、負担増を不安視 法案巡り大阪で公聴会 【大阪】――朝日新聞

 障害者自立支援法案を審議する参院厚生労働委員会は7日、大阪市で地方公聴会を開いた。各党推薦の公述人からは、1割の自己負担導入を不安視する意見が多く出た。
 中尾正俊・大阪府医師会理事(自民)は「低所得者への配慮が必要だ」と注文をつけた。
 一方、塚本正治・大阪精神障害者連絡会事務局長(社民)は「突然の医療費増になれば医療を中断する人も出かねない」と反対した。
 また、古田朋也・障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議事務局長(民主)は、厚労省が掲げる在宅系サービスの地域格差解消について「大阪は全国一の利用数だが、脱施設化を進めてきた結果。利用抑制策でサービス水準を落としてはならない」と訴えた。

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◆20051008 障害者ロックバンド、福祉先進国から来県 あす、演奏交流やセミナー /佐賀県――朝日新聞

 福祉先進国のデンマークから、知的障害者でつくるロックバンドや障害者支援・教育の専門家が来県し、県内の障害者と交流する演奏会や福祉教育セミナーが9日、鳥栖市元町の市社会福祉会館で開かれる。実現に尽力した佐賀大医学部の斉場三十四教授は「県内の関係者に参加してもらい、じっくり交流してほしい」と話している。

 出演するのは、知的障害者7人と指導者で構成するロックバンド「BALI PROSPECT MUSIC」。プロ級の腕前という。
 鳥栖市にある知的障害者の小規模作業所「コスモス夢工房」は、ダウン症の12人が所内で練習している和太鼓やリズム体操を披露する。受け入れ準備に奔走した福岡県久留米市の市民バンド「ドリームボーイ」も出演する。
 セミナーの講師は、バンクミケルセン記念財団のヨウンハンセン理事。同財団は、障害者隔離施設解体などにより「ノーマライゼーションの父」と呼ばれるバンクミケルセン氏の遺志を継いで設立された。
 もう1人は、福祉と医療が専門の国民学校のガレッテヤコブセン教頭。それぞれの立場から、先進国の障害者教育の現状と課題について語る。同国在住で財団役員の千葉忠夫氏が通訳を務め、質疑応答もある。
 斉場教授はここ10年、年に1、2回ほど、医学部学生らを連れて同国の福祉施設などを視察してきた。今春、千葉氏から、ロックバンドが訪日して開く予定だった交流演奏会が中止されたことを知った。
 斉場教授は「何とか来日を実現させ、日本の障害者と交流してほしい」と、知人のいるフランスベッドに相談し、同社の協力を得た。
 コスモス夢工房の山内照代所長は「先進国が地域との交流にどう取り組んでいるのか、どうすれば障害者が伸び伸びと生活できるのか、障害者がどんな演奏をするのか、などをしっかり見極めたい」と話している。
 午前10時半開場で、入場無料。

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◆20051018 地域自立シンポ:「福祉は地域力で」 “改革派”4知事が議論−−長浜 /滋賀――毎日新聞

 全国の「改革派」を掲げる知事が参加する「地域自立シンポジウム」が17日、長浜市大島町の長浜ロイヤルホテルで開かれた。03年に発足し、現在は7知事と前知事2人が参加している「地域自立戦略会議」と県が主催。シンポジウムとしては3回目で、「地域の自立と福祉」がテーマの今回は国松善次知事の他、宮城県の浅野史郎、和歌山県の木村良樹、高知県の橋本大二郎の各知事がパネリストで参加した。

 冒頭の基調講演で国松知事が「日本が人類史上初の超高齢社会を迎えた今、運動を積極的に取り入れた日本型健康ライフのスタイルを確立することなどが課題ではないか」と問題提起。パネルディスカッションでは、橋本知事が県内の地域福祉の実例を紹介し、「地域の活動をまとめ、良い事例をベンチマークとしながらネットワーク作りを進めるのが行政の役割」などと述べ、木村知事は「切り捨てられた部分に光を当てるのが行政の重要性だ」などと話した。

 また昨年2月、全国の障害者や福祉関係者が大津市に集まった「アメニティーフォーラム」の会場で「知的障害者施設解体宣言」をした浅野知事は、知的障害者が暮らせる地域作りを進めている県内の状況を紹介し、「地域の底力」を高めていくことの重要性を訴えた。【小松雄介】

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◆20051018 選択:’05知事選 浅野知事の宿題/3 施設解体 /宮城――毎日新聞

◇「地域で暮らす」理想実現に課題

 「今日、張り絵をしたよ」。仙台市太白区の住宅街にある「太白ホーム」の夕刻。2階建て4LDKの借家に住む知的障害を持つ30〜60代の男女4人が、世話人として雇われている近所の主婦、春成恵子さん(56)と食卓を囲んでいた。日中の出来事を教え合う。

 女性2人は8月末まで、重度知的障害者を主に受け入れている施設「船形コロニー」(大和町)に住んでいた。コロニーは人里離れた丘に建つ。広大な敷地は東京ドーム10個分。入所者は日中も敷地内の作業所などで過ごす。一時は入所者は500人に上った。入所後に地域に戻る人はほとんどいなかったが、02年のコロニー解体宣言後、162人が地域に移った。

 新たな生活の場になるのが太白ホームのようなグループホーム。同ホームの女性(36)は、コロニーでは一日中廊下で大声を出していたが、ここに来てからは叫ぶことがなくなり、ニコニコとよく笑うようになったという。別の女性(61)に今の生活を尋ねると、「楽しい。施設に帰るのは嫌」と答えた。

 グループホームは社会福祉法人などが整備し、05年度末には194カ所になる見込み。解体宣言前の2倍近く、順調に整備が進んだ。

 しかし、運営上の費用負担の問題は大きい。身体にも障害がある場合、複数の世話人が交代で24時間体制で世話をする必要がある。グループホームで暮らす重度知的障害者には、福祉サービスを受けるため、市町村から1人当たり1カ月13万1470円の「支援費」が支給されるが、世話人の人件費を賄うのが精いっぱい。夜間の急病や入居者同士のトラブルなど緊急時には、運営法人の負担で職員を派遣し乗り切っているのが現状だ。

 県は04年度から、2人以上の重度障害者が住むグループホームに対し年間216万円を補助している。しかし、支援者は「緊急対応が必要なのは、重度障害者が1人の場合も同じ」と不十分さを指摘する。

 また、コロニー入所者の親が作る「育成会」の高見恒憲会長は「障害者も地域で幸せに暮らそうという流れには賛成だが、受け入れ態勢が整っていない中での解体は拙速」と懸念する。一方、コロニー地域移行推進部の野内信夫部長は「地域移行が順調に進むかは、保護者や地域の理解が重要になる」と話す。

 障害の有無にかかわり無く地域で暮らす。理想の実現のためには、新たな制度や仕組みの整備、県民の意識の改革など残された課題は多い。

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 ◇知的障害者施設解体宣言

 県内の知的障害者は1万1895人(05年3月末)。そのうち施設入所者が2割弱、残りは在宅で生活している。県福祉事業団(現県社会福祉協議会)は02年11月、障害の有無によらず、共に地域で暮らす「ノーマライゼーション」の理念実現のため、運営する「船形コロニー」の入所者全員を10年までに地域に戻すと宣言。04年2月、知事は全国に先駆けて県内全域に広げる施設解体宣言を発表した。

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 Q・施設解体宣言への賛否、理由と今後の進め方は(届け出順)

 ◇厳しい財政も勘案−−村井嘉浩候補(45)無新=[自]

 基本的に継続する

 ノーマライゼーションの考え方は賛成である。ただし、厳しい財政状況、反対する家族の意向も十分勘案すべきである。

 ◇県が全国に誇る宣言−−前葉泰幸候補(43)無新

 基本的に継続する

 誰でも普通の場所で普通の暮らしができる、という当然の権利を実現しようとする宣言で、宮城が全国に誇るものと高く評価しています。知事就任後もできる限りの支援をしたい、と思っています。

 ◇施設・地域ともに強化−−出浦秀隆候補(62)無新=[共]

 変更する

 ノーマライゼーションは機械的な施設解体論とは違う。各国の障害福祉の到達点から出発することが大事で、家族介護に大きく依存し全体的に遅れている現状を見れば、施設福祉も地域福祉も強めていかなければならない。

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◆20051020 知事選、3候補の政策 アンケートから:中 /宮城県――朝日新聞

(届け出順)

 (1)村井嘉浩氏(45)無新=自民推薦
 (2)前葉泰幸氏(43)無新
 (3)出浦秀隆氏(62)無新=共産推薦

・解体宣言
 浅野知事が「知的障害者施設解体宣言」をしました。この方針を継続しますか、見直しますか。
 (1)解体宣言の趣旨には賛成だが、現状と県民感情から乖離(かいり)している面があるので、現場の声を大切にしながら進めるべきだ。
 (2)誰でも普通の場所で普通の暮らしができるという当然の権利を実現しようとする宣言で、宮城が全国に誇るものと高く評価している。基本的に継続したい。
 (3)宣言を見直す。家族介護に依存している現状から出発して、施設福祉も地域福祉も強める。ノーマライゼーションに近づいていく条件の整備が大事だ。

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◆20051021 [2005知事選・選択を前に](5)障害者福祉(連載)=宮城――読売新聞

「地域化」へ具体策不可欠 
 「弟が毎日、明るく過ごすようになり、家族の負担も大きく減った」。地域で共同生活を送るグループホーム「北中山ホーム」(仙台市泉区)に入居した重度知的障害者(22)の姉(30)は、ほっとした様子で話す。
 この障害者は、自宅生活を経て、県社会福祉協議会が運営する知的障害者入所更生施設「第二啓佑学園」(同)で施設生活を送った後、同ホームに移った。
 学園での生活は、40人の利用者を24人のスタッフが支えるが、ほとんど施設の中で過ごす。自宅生活では通所授産施設に通ったものの、家族の負担が大きかった。その一方で、グループホームは4人の仲間で暮らしながら、スタッフに通所授産施設への送り迎えもしてもらえ、生活にめりはりが出たという。
 県内の知的障害者数は1万1895人(昨年度末現在)にのぼる。昨年2月、「日本一の福祉先進県」を目指す浅野知事が、障害者が地域で自立して暮らす「ノーマライゼーション」の理念を具体化する「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を打ち出した。実際に地域移行を進めている知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)の取り組みを県内全域に広げる狙いがある。
 グループホームは浅野知事就任時の1993年度末の7か所から、昨年度末には154か所に増加。利用者も29人から639人と約22倍に増えた。
 その一方で、グループホームは利用者の費用負担が大きい面もある。県社協などによると、施設で最大で5万円弱だった費用が、グループホームでは家賃や光熱費など月平均6万5000円程度。家賃には地域間格差もある。
 障害者が受け取る障害基礎年金額は、1級で月約8万円、2級で月約6万5000円。「親の支援や蓄えがない人は暮らしていくのがやっとの状況」(福祉関係者)だ。このため、「施設という選択肢があってもいいのでは」という声も聞かれる。
 知的障害者が日中、過ごせる場が限られていることも課題となっている。県内の更生・授産の通所施設は122か所で約2600人しか利用できない。一般企業への雇用率も全国平均を下回っており、働く環境も整っていないのが現状だ。県は障害者のスポーツ大会など社会参加を促す活動をしている団体に助成金を出しているが、そうした「受け皿」づくりはまだ緒に就いたばかりだ。
 県内16の共同作業所でつくる「きょうされん宮城支部」の佐藤郁子副支部長は「浅野知事は、福祉問題を表面に浮かび上がらせてくれた」と一定の評価をする一方で、「花火を打ち上げただけで、もっと具体的な支援が必要だ」と注文をつける。
 実現が望まれる「福祉の地域化」。その道のりは決して平坦(へいたん)ではない。 (おわり)(この連載は箱守裕樹、青柳庸介、川床弥生が担当しました)

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◆20051025 (知事選後 05選挙イヤー:上)浅野色一変、県に衝撃 身構える人事・政策/宮城県――朝日新聞

 「職員は遠慮なく意見を言ってほしい。宮城のためになると思えば、私と意見が違っても毅然(きぜん)とした態度でいればいい」
 新知事に決まった村井嘉浩氏は24日朝、報道陣に囲まれる中、新しい主(あるじ)を迎える県職員に、こう気遣ってみせた。だが、笑顔で話す口からは、職員らを戦々恐々とさせる言葉が、次々と飛び出している。

 ●「粛清」の声
 選挙公約では、副知事など主要ポストに、民間人や女性を積極登用することを掲げた。村井氏は「副知事人事は、今の方が任期を務め終わって着手する。幹部は2、3月。教育委員会の人事も改選期に考えたい」と、人事に意欲をみせる。
 三役の一人は「県政の懸案事項を新知事に引き継ぎ、スムーズに移行させることが私の役目」と平静を装う。
 浅野史郎知事は、村井氏の対立候補を後継者として全面支援してきた。村井氏を応援した自民党の支持団体からは「副知事は浅野氏と一緒に辞めるのが常識。教育長も例外ではない」と、浅野県政を支えてきた県幹部の「粛清人事」を求める声があがる。
 浅野氏が県警と対立してきた捜査用報償費問題。村井氏は当選直後、報償費の執行停止を「知事に就任した日に解除する」と表明した。
 総務部の課長は「確かに執行停止を解除すると公約に掲げていたが、すぐ解除というのは驚きだ。普通なら、いろいろ意見を聞いて判断するものなのに」と戸惑う。
 浅野氏は、予算の執行権者として、自らが報償費の執行状況を確認する責任があると、県警に会計文書の提示などを迫ってきた。だが、村井氏は「監査委員の役目。守秘義務のない知事がみる必要はない」と言い切る。
 浅野氏は、村井氏の言葉に首をかしげる。「なぜ知事がだめなのか。先生(知事)が宿題を出しているのに、学級委員長(監査委員)に答えればいいでは、しっくりこない」

 ●喜ぶ反対派
 県立高校の男女共学化を巡る発言は、教育の現場に激震を与えている。
 村井氏は力説する。「選挙で多くの県民とふれあった。共学化見直しの声はたくさん聞いたが、推進の声は一人も聞かなかった」
 県議会の文教警察委員会に所属していた村井氏は、共学化の問題をよく知る立場にあった。だが、県教育庁職員は「県の立場をよくご存じないのかもしれない。共学化の流れは全国的なものであり、そこから教えていかなくては」と、新知事「攻略」に備える。
 共学化反対派は村井知事誕生を喜ぶ。県立高校の共学と別学の共存を求める保護者連合会は「今後の運動に大いに弾みをつけることになる」としている。

 ●現場に不安
 浅野氏が力を注いできた障害者福祉の現場には、不安が広がる。
 「浅野知事は心底、ノーマライゼーションの必要性を感じていた。急な方向転換がなければいいのだが」。仙台市内で知的障害者の作業所を運営する中村晴美理事長は、顔を曇らせる。
 障害のある人もない人も、地域で共に暮らせる社会を目指すノーマライゼーション。その実践を目指し、浅野氏は04年、「知的障害者施設解体宣言」を表明した。
 村井氏も宣言の趣旨には賛同している。しかし、具体策になると「あまりに拙速。仙台市には受け入れ態勢に問題があるとの声も聞いている」と見直しを示唆する。
 入札制度改革と公共事業の削減を受け、悲鳴をあげる建設業界は、村井県政に期待を寄せる。仙台市内の建設業者は「公共事業を国から持ってきてほしい」と託す。
 知事選後、県政はどう転換するのか。村井新知事の一言一言に、県民は耳を傾けている。

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◆20051025 知事当選の村井氏、「晴れ晴れした気持ち」 当選から一夜明け心境=宮城――読売新聞

知事選の初当選から一夜明けた24日、村井嘉浩氏は、仙台市青葉区本町の事務所で、知事選の結果を伝える新聞紙面を広げながら当選の喜びをかみしめた。
 「すがすがしい天気と一緒で、晴れ晴れとした気持ち」。カメラの放列に囲まれた村井氏はこう切り出し、「県議の延長のような気がして(新知事の)実感はありません」と照れ笑いを見せた。
 17日間の選挙戦で体重が落ちたといい、「最初の1週間は精神的にもきつかった。ただ、最後は手応えを感じられた」と振り返った。そのうえで「今後は全責任を負う。厳しい財政状況だが、自分のカラーを出したい」と表情を引き締めた。
 県政課題を巡っては、浅野知事が知的障害者が地域で暮らすことを目指して昨年2月に打ち出した「施設解体宣言」に関して「選挙期間中に『拙速だ』との声も聞いた。入所者らの意見を聞く場を設けたい」と述べた。県立高共学化問題については「全県1学区制を優先すべきと戦ってきた私の考えを県民は支持しているのではないか」と言及。県内市町村との連携については「(首長らに)指導を受ける姿勢を堅持したい」と語った。
 村井氏は、この日は支援を受けた関係団体へのあいさつ回りなどに追われ、夕方からはテレビ番組に出演。25日は都内の自民党本部を訪ね、武部幹事長らに当選を報告する予定。

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◆20051029 厚労省:「グループホーム」入所施設に設置検討 障害者団体、強く反発
――毎日新聞

厚生労働省が進める障害者福祉制度改革で、障害者が地域で暮らすための「グループホーム」を入所施設や精神病院の敷地内にも設置することが認められる可能性が出てきた。欧米で制度化されたグループホームは障害者が施設や病院を出て、街の中で暮らす有力な手段。関係団体は強く反発しており、来週にも施設内設置を認めないよう同省に要望する。
 障害者のグループホームは4〜5人ほどの利用者がそれぞれ個室を持ち、必要な支援を受けながら自分のペースで生活する。日本でも89年に制度化され、利用者から「もう施設に戻りたくない」との声が相次いでいる。
 ただ、現状は▽ホームの数が不足している▽国が推進する障害者の地域移行により、今後は入所施設や精神病院に大きな空きが出る−−といった課題があり、施設の運営者側から厚労省に「一定の要件を満たせば空き施設などをグループホームに転用できる制度にしてほしい」という要望が寄せられている。同省障害保健福祉部は「専門家の意見を踏まえて検討したい」との姿勢だ。
 これに対し「障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会」(約1400会員)の室津滋樹代表は「入所施設の否定から生まれたのに、施設の中に作るなんておかしい。こうした考えが容認されればホームの質が非常に悪化する」と心配する。
 精神障害者のグループホームの場合、既に精神病院の敷地内に設置されている例がある。しかし、厚労省社会保障審議会障害者部会の委員で、自らも精神障害者の広田和子さんは「これだけ多くの人が心の病にかかる時代なのに、今後も精神病院の中に障害者の居住の場を作ろうとする発想はあまりに安直だ」と批判している。
 知的障害者の親など約28万人で作る「全日本手をつなぐ育成会」の松友了常務理事も「施設内グループホームなど絶対認められない」と反発しており、グループホーム学会などと連名で同省に緊急要望書を出す方針だ。【須山勉】

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◆20051106 知的障害者支援全国大会始まる 新潟 /新潟県――朝日新聞

 知的障害者たちの支援団体「ピープルファースト」の全国大会が5日、新潟市の朱鷺(とき)メッセで始まった。知的障害者や支援者ら約680人が集まり、初日は厚生労働省専門官や欧州の障害者が加わり、脱施設を進めて自己実現を図る道筋を話し合った。最終日の6日は、地域生活支援などを話し合う。
 5日の大会では、知的障害のあるマリン・アスティエレーさんが、スウェーデンの当事者組織「グルンデン協会」の活動を英語で説明。地域の人たちとの旅行計画があり、投票に行くための情報収集もあることを紹介した。
 また、オランダの当事者の全国組織「オンダリングシュタルク連盟」からウィリアム・ベストベールさん、ビレム・クワッケルさんが参加。「人々にはプライバシーが必要。あなたの家のドアのカギを、あなた自身が持つために戦ってください」と呼びかけた。

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◆20051112 知的障害者の暮らし、もっと地域へ 県、協力員養成へ研修 西濃地域 /岐阜県――朝日新聞

知的障害者の生活を、施設中心から地域全体に広げていくには、住民の意識改革が必要――。こんな視点から、県西濃地域福祉事務所が「地域移行普及協力員」の養成に乗り出す。知的障害者が地域で生活するのを理解し、協力してくれる人を増やす取り組みで、県内では初の試みという。
 地域での福祉活動に関心がある人に参加を呼びかけて研修を実施。受けた人を「協力員」に認定する。
 知的障害者が地域で暮らしたり、仕事に就いたりすることを支援してもらう。実際の研修は垂井町栗原の知的障害者施設「あゆみの家」に委託して行う。
 同事務所は、地域での福祉活動に関心がある住民の参加を募っている。
 研修日は12月14日、19日、1月14日のいずれかで計6時間。知的障害者への理解と支援についての講義のほか、グループホームなどでの生活体験がカリキュラムに組み込まれている。定員は各日10人。参加費無料。
 問い合わせは、県西濃総合庁舎(大垣市江崎町)内の福祉事務所(0584・73・1111、内線232)へ。

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◆20051118 「報償費、理不尽だった」 浅野県政3期12年、インタビュー /宮城県――朝日新聞

 93年から3期12年にわたって知事を務めた浅野史郎氏(57)が任期切れを20日に控え、18日、県庁を去る。退任を前に17日、朝日新聞のインタビューに応じ、浅野県政の歩みを振り返った。(聞き手・田中美保、小泉浩樹)

・福祉、将来に方向性
 ――「福祉日本一」が公約でした。宮城の福祉はどこまで進んだと思いますか。
 「福祉施策のほとんどは市町村業務です。県が直接かかわる部分は少ないので、福祉の目指すべき方向性を示すのが県の役割だと思います。大事なのは、『みやぎの福祉・夢プラン』(保健、医療、福祉分野での県の総合計画)や、施設解体宣言のように将来の方向性を示し、モデル的にやって見せるということ。発信力はあったと思う」
 ――福祉関係者の中には「もっと道筋をつけてから辞めてほしかった」という声もあります。
 「何年やれというのですか。私が満足感を持っているのは県庁内でも人材は育ったし考え方も変わったことです。私の頭の中だけでなく、計画を『夢プラン』として言語化した。今後もその流れで進むことは間違いない」
 ――県社会福祉協議会の会長に留任し、どんなことをしたいのですか。
 「これからの福祉は地域福祉。その大きな担い手が市町村社協ですが、人材、専門性、ノウハウが足りない。県社協が指導する必要があります。県社協は今年4月に3団体が合併をして厚みのある組織になってきているので、市町村社協の指導が可能になりました。大事な時期に、組織の顔として役に立てるのではないでしょうか」
 ――自民県議などからは「県政に影響力を残そうとしている」という批判があります。
 「私の実績や能力を使って県のために尽くしたいと思っています。『知事を辞めたからさよなら』という考えとは対局にあり、むしろ、褒められると思っていました。何もやらないという方がおとがめを受けるのではないかと思っている。淡々と一生懸命にやります」

 ■浅野県政の歩み
 93.11 ゼネコン汚職を受けた出直し知事選に浅野氏が厚生省(当時)課長を辞職して立候補。前副知事らを破って初当選
 95.2  仙台市民オンブズマンの求めによる公文書開示で食糧費の不正支出が発覚。8月に県は調査結果を発表。知事は不正操作を陳謝し、幹部16人を処分
 96.3  仙台空港新国際線ターミナル開業
 96.6  94、95年に少なくとも5億円のカラ出張があったと発表、全額返還を表明
 97.2  全国市民オンブズマン連絡会議の第1回情報公開度ランキングで宮城県が1位に
 97.4  県立の宮城大学が開学
 97.10 知事選に政党推薦を断る「脱政党」型で臨み、市川一朗氏(現自民党参院議員)らを破って再選
 99.10 財政危機宣言
 00.12 旅費や食糧費など知事に執行権がある予算文書の公開で、県警の裁量権を一部制限する情報公開条例改正案が可決。県警との対立は、捜査用報償費をめぐって続き、今年6月には報償費予算の執行停止に踏み切った
 01.3  県発注の公共工事で、1億円以上に限られていた一般競争入札の範囲を1千万円以上に広げるなど入札制度を改める
 01.10 みやぎ国体開催
 01.11 知事選で共産推薦の候補らを破り3選
 02.6  グランディ21の宮城スタジアムでサッカーW杯の日本―トルコ戦
 02.12 JR東北線と仙台空港を結ぶアクセス鉄道着工。06年度中の開業を目指す
 03.3  県福祉事業団(当時)理事長の田島良昭氏を副知事に起用する案を県議会に提案するが否決。7月の再提案も否決されて起用を断念
 03.5  県職員約3万人の給料を削減し、約303億円をかける「県緊急経済産業再生戦略」を発表
 04.2  知的障害者の入居施設の「解体」を宣言。入所者が地域で生活できるように支援する内容
 04.11 宮城を本拠に、東北楽天ゴールデンイーグルスがプロ野球に参入することが決まる
 05.8  村田町竹の内地区の産業廃棄物処分場の不法投棄問題で恒久対策案を提示。全量撤去は見送る
  〃  知事選への4選不出馬を表明
 05.10 知事選で前県総務部長の前葉泰幸氏を全面支援。自民推薦の村井嘉浩氏に敗れる

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◆20051122 県西濃福祉事務所:「地域移行普及協力員」を来月から養成研修 参加者を募集 /岐阜――毎日新聞

県西濃地域福祉事務所は、知的障害者の地域での生活と就労を推進する「地域移行普及協力員」の養成研修を来月から始める。県内初の取り組みで、福祉に関心のある参加者を募集している。

 協力員は、これまでの「障害者福祉は施設で」の固定観念を見直し、知的障害者も地域の一員として暮らし、地域で仕事ができるように協力・支援していく。

 研修は垂井町栗原の知的障害者施設、あゆみの家に委託。研修日は12月14日(平日の午後3〜9時)、19日(同午前10時〜午後4時)、来年1月14日(土曜日の同)のいずれか1日。知的障害者への理解と支援などの講義のほか、グループホームなどでの生活体験がカリキュラムに組み込まれている。研修日程を終了した人には終了証書を交付する。定員は各10人。

 参加希望者は所定の用紙に必要事項を記入し12月5日までに県西濃総合庁舎内の福祉事務所(電話0584・73・1111、内線232)へ。問い合わせも同事務所。【子林光和】

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◆20051209 「10年解体は状況をみて」 船形コロニーで前知事 /宮城県――朝日新聞

浅野史郎前知事が10年までの解体を宣言した知的障害者の大型入所施設「船形コロニー」について、入所者の親などでつくる「育成会」のメンバーが8日、県社会福祉協議会の会長を務めている浅野前知事らに宣言の見直しを要請した。浅野氏は「本人の意思に反して、無理に施設から出すことはしない」と明言した。
 要請書では、「まず外に出すことありきで、その後に生活条件をつくるという逆の順序になっている」などとし、「知的障害者が、施設利用であっても、地域生活であってもより良い生活ができることを目指してほしい」と要請している。
 浅野氏は、「普通の生活を送りたいという(入所者の)要望をかなえるためにやっている。『10年に解体』という数字が先にあるのではなく、状況をみて対応する」と説明。一方で、「宣言を撤回したわけではない。10年解体を目標に地域移行を進めていく」とも話した。

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◆20051209 船形コロニー:県社協に解体見直しを要請−−保護者ら /宮城――毎日新聞

知的障害者施設「船形コロニー」(大和町)の入所者の保護者でつくる県船形コロニー育成会(高見恒憲会長)は8日、施設を運営する県社会福祉協議会に対し、施設解体方針の見直しを求める要請文を提出した。浅野史郎会長は「何が何でも(目標の)10年までに解体するということではない」と回答した。

 同施設については、県福祉事業団(現・県社協)が02年、障害者が地域で暮らせる社会の実現のため、10年までの施設解体を宣言。一時500人いた入所者は徐々に地域のグループホームなどへ移り、11月1日現在で295人が入所している。

 高見会長は「重い障害を持つ入所者の受け皿は出来ていない。拙速な施設解体を考え直してほしい」と求めた。

 一方、村井嘉浩知事は8日の県議会11月定例会で、入所者の地域移行について「数値目標にこだわらず、本人や家族、受け入れ先の市町村などの意見を聞いて解体を進めたい」と述べた。【青木純、石川貴教】

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◆20051209 [浅野流・村井流]知的障害者施設解体 目標年度こだわらず=宮城――読売新聞

 「そんなことあるの。なんの反論もない。異議なし」。県社会福祉協議会会長の浅野史郎前知事は8日、驚いた様子で答えた。
 浅野前知事が打ち出した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」の見直しを求める要請書を受けた場面での発言だった。宣言は県の心身障害者総合援護施設「船形コロニー」を2010年までに解体し、地域生活への移行を目指すものだ。
 要請書は知的障害を持つ入所者の保護者らが提出し、その一人が矛盾を指摘した。「地域の受け皿となるグループホームが(段差などのない)バリアフリーになっておらず、入所者がコロニーに戻らざるを得なかった」。
 浅野前知事は「拙速な地域移行を見直してほしい」という要請に対し、「2010年は目標であって、障害者本人の意思に反して出すようなことは絶対にしない」と理解を求めた。「現場のことをもっとよく把握する必要があるのではないか」。保護者の不満は消えなかった。
 保護者らは近く村井知事にも同様の要請を行う。村井知事は開会中の県議会で「施設を解体するという理念は堅持しなければならないが、目標年度を定めて、障害者を全て地元移行するような無理なやり方はいけない」とし、関係者の意見を聞く必要があることを強調した。
 ある保護者は「行政のトップは現実を見つめて政策を進めるべきだ。村井知事にも現場に足を運んでほしい」と期待を込める。

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◆20051214 船形コロニー、施設解体見直す動き 社協・家族に差 県議会委、聞き取り /宮城県――朝日新聞

県福祉事業団(現在の県社会福祉協議会)が2010年に解体すると宣言した知的障害者の入所施設「船形コロニー」(大和町)について、入所者の家族が解体の見直しを求めていることを受け、県議会の保健福祉委員会は13日、船形コロニーで聞き取り調査をした。施設を運営する県社協と入所者の家族の意見が食い違う場面が相次ぎ、委員会内では10年をめざす解体方針を見直す動きが出てきた。(小泉浩樹)

 調査は、入所者の家族で構成する「船形コロニー育成会」メンバーや社協職員などに意見を聞く形で行われた。育成会からは「『施設は悪』という発想で不可解」「コロニーからグループホームに移って、ちゃんと面倒をみてもらえるか不安」などと解体に反対する意見が相次いだ。一方、社協関係者は「10年はあくまで目標であり、無理に施設から出すということはない」と説明した。
 県議が「押しつけになっていないか」と質問したのに対し、社協関係者が「家族の同意も得ている」と答えると、育成会側から「追い出しているんだ」と声が上がる場面も。「事前に家族への説明が欠けていたのではないか」と県議がただすと拍手が起きた。
 池田憲彦委員長は「社協と育成会の意見のギャップが大きすぎる。地域の受け入れ態勢も整っておらず、拙速な移行は控えるべきだ」と述べた。ただ、見直しの具体策については「村井嘉浩知事とも相談して決めたい」と話すにとどまった。
 船形コロニーは02年11月に解体を決定。その後、浅野史郎・前知事が04年2月、県内全域の施設解体を宣言した。かつて400人以上いた入所者は症状が軽い人を中心に地域への移行が進められ、12月1日現在で入所者は292人となっている。

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◆20051215 船形コロニー解体:県議会保健福祉委、見直し求める報告 /宮城――毎日新聞

県議会保健福祉委員会は14日、知的障害者施設「船形コロニー」(大和町)の解体方針について論議した。委員からは受け入れ態勢や解体時期への疑問が相次ぎ、池田憲彦委員長が村井嘉浩知事に見直しを求める報告をすることになった。

 入所者の保護者でつくる「県船形コロニー育成会」(高見恒憲会長)が解体方針の見直しを陳情。委員会では「受け入れ先の態勢が整っていないのではないか」などの意見が続出した。加藤秀郎・県保健福祉部長は「知事と相談しながら検討したい」と見直しを含めて検討する構えを示した。

 同施設については、運営する県社協が、10年までの施設解体を計画。一時500人いた入所者は徐々に地域のグループホームなどへ移り、11月1日現在で295人が入所している。村井知事は解体時期にはこだわらない意向を示している。【石川貴教】

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◆20051216 船形コロニー解体:保護者ら、見直し求め要請 /宮城――毎日新聞

知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)入所者の保護者でつくる「県船形コロニー育成会」(高見恒憲会長)は15日、施設解体方針の見直しを求める要請文を、村井嘉浩知事に提出した。知事は「理念はすばらしいが、入所者や家族の問題は総合的に考えないといけない」として、再検討する意向を改めて示した。
 高見会長は「施設解体は一方的な仕打ち。知事の力でこの方針を撤回してほしい」と要望。村井知事は県議会2月定例会の前にも、施設を訪問し関係者から話を聞く考えを明らかにした。
 施設を巡っては、運営する県社会福祉協議会が、10年までの入所者の地域への移行を計画。同会は8日、県社協の浅野史郎会長に同様の要請をしたが、浅野会長は解体方針の堅持を表明している。【石川貴教】

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◆20051215 前知事提唱の知的障害者施設解体宣言 名称見直し検討=宮城――読売新聞

浅野史郎前知事が打ち出した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」について、県は14日、「施設解体」の名称が誤解を招くなどの批判を受け、見直しを検討する考えを明らかにした。施設を退所した障害者の受け入れ態勢が整っていないなどの地域事情があり、県議会保健福祉委員会で名称変更を求める声が上がっていた。
 この日の委員会では、前日の心身障害者施設「船形コロニー」(大和町)の視察を踏まえ、委員らが「地域の受け皿が整っていない」「当事者と行政の間で(認識に)ずれがある。説明不足を感じた」などと指摘。名称についても「『脱・施設』などとすべきだ」と注文をつけた。
 これに対し、加藤秀郎・県保健福祉部長は「説明が十分だったのか、反省すべき点は反省し、当事者らの思いを大事にして施設から地域への移行を進める」と答弁。宣言の名称変更については「村井知事と十分相談したい」と述べた。
 解体宣言を巡っては、表明直後の昨年2月定例県議会でも「拙速だ」などと批判の声が上がっていた。入所者の保護者らは今月8日、県社会福祉協議会に見直しを求める要請書を提出。村井知事は、11月定例県議会で「(宣言の)理念は堅持しなければならないが、目標年度を定め、全て移行するような無理なやり方はいけない」と述べていた。

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◆20051220 村井知事:あす就任1カ月 随所に「村井カラー」 新体制に向け布石 /宮城――毎日新聞

◇県議会との距離にも変化

 村井嘉浩知事は21日、就任1カ月を迎える。県警の犯罪捜査報償費の執行凍結解除を始め、さまざまな場面を通じて、浅野史郎前知事とは異なる「村井カラー」を鮮明にしつつある村井知事。副知事交代や県議会との距離に変化が生まれるなど、新しい動きも出てきた。12年ぶりの新体制で臨む県政の現状を探った。【石川貴教】

 ■問われる予算編成

 村井知事は11月21日、初登庁したその日に報償費の凍結を解除し、独自色を際立たせた。さらに、公共事業の入札制度改革や、県教委が進める県立高校の一律共学化に異議を唱えた。前知事肝いりの「知的障害者施設解体宣言」には「地域への移行は段階的に進めるべきだ」と移行時期を修正する意向を示した。

 ただ、入札での総合評価方式の導入は、庁内では以前から検討されてきた内容だ。また、「入所者を無理に外に出すのは問題だ」として見直す解体宣言についても、県幹部は「前知事はそうは言っていない。知事が交代したため、これまで表に出ていなかったことが出てきた。浅野路線からの完全な転換ではない」と強調する。

 06年度の予算編成について村井知事は19日の定例会見で「財政状況が厳しく自己裁量は極めて限られているが、『富』を創出するような政策を進めていきたい」と述べ、経済政策を最優先する意向をにじませた。県政運営に「村井カラー」が本格的に反映されるのはこれからだ。

 ■注目は副知事人事

 トップダウン型とボトムアップ型−−。

 別の県幹部は新旧知事について「いきなり政策を投げかけてきた浅野前知事に比べて、村井知事はまず、職員の話を聞くことを重視しているようだ」と比較する。

 一方、村井知事は前知事時代に任命された副知事2人を今月末で退任させ、後任の1人として総務部長を昇格させるなど、新体制の構築に向けた布石を打ち始めた。また、民間からの観光担当職員の募集も始めた。

 目下の課題は、知事選の公約とした民間からの副知事採用だ。この点について村井知事は「全くの白紙」と言う。中堅職員は「民間で県にゆかりのある候補者は、過去に浅野県政とかかわった人が多い。人選は難航するのでは」と指摘する。

 ■与野党逆転

 「新旧知事交代で一番大きく変化したのは、県議会ではないか」。あるベテラン県議は指摘する。

 11月定例会が開会した28日、村井知事が県議時代に所属した最大会派「自民・県民会議」の県議は、議場に登場した村井知事を拍手で出迎えた。これまでは、第2会派「フロンティアみやぎ」や「民主フォーラム」などが、浅野与党として動く場面が多く、自民・県民会議はおおむね野党として、前知事と対立する場面が目立った。しかし、知事交代で、各会派の立場は完全に逆転した。こうした中、自民・県民会議は「誤解を招かないように」として、知事に直接働きかけないことなどを申し合わせ、是々非々の立場を強調する。
 とは言え、定例会は“ご祝儀”の側面もあったせいか、共学化問題以外は対立とは無縁で、和やかに進んだ印象がある。県議の間からは「前知事のように、村井知事が県議会との交渉に悩む場面は少ないのでは」との声も上がっている。

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◆20051220 知的障害者施設解体宣言 村井知事「文言を修正」=宮城――読売新聞

村井知事は19日の会見で、浅野史郎前知事が打ち出した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」について、「文言の修正を加える」と述べた。県はすでに「解体宣言」の名称変更を検討する考えを示している。
 同宣言は、心身障害者総合援護施設「船形コロニー」(大和町)を「2010年までに解体し、入所者全員を地域生活に移行させる」としており、入所者の保護者などから「受け入れ態勢が整っておらず、期限を決めて解体するというのはおかしい」と反発が強い。

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◆20051222 [浅野流・村井流]新知事就任1か月 独自路線、矢継ぎ早=宮城――読売新聞

財政正念場迫る 重点公約に「黄信号」も 
 村井知事は21日、就任1か月を迎えた。公約に掲げた県立高校一律共学化の見直しが事実上、不可能な情勢となったものの、県警捜査報償費の執行停止解除や知的障害者施設解体宣言の見直し表明など、浅野史郎前知事とは一線を画す「村井流」を矢継ぎ早に打ち出した。最重要課題の経済活性化と財政再建に本腰を入れる来年が正念場となる。(箱守裕樹)
 「知事会議は目立ちに行く場ではない。全体的な流れを掌握するところから始めたい」。19日の全国知事会への初出席を前に、村井知事は意気込みをこう語った。就任前には浅野前知事から「知事会では目立った方がいい」と助言を受けていた。これをあえて否定するような発言は「浅野流」への対抗意識がうかがえる。
 知事は就任直後に報償費予算の執行停止解除を実行した。浅野県政からは180度の方針転換だが、「県民の安全安心を優先させた」とした。過去の疑惑については、引き続き解明を目指す考えだ。ベテラン県議は「極度の財政難に陥っている県政が報償費問題で、いつまでも混乱しているのは愚の骨頂」と解除を評価する。
 浅野前知事が打ち出した知的障害者施設解体宣言についても、知事は文言見直しを表明した。期限を定めた「解体ありき」の宣言に対し、村井知事就任を機に、施設入所者の保護者からの見直し要請に応えた形だ。保護者の1人は「『現場を訪れる』と約束した知事の姿勢に期待したい」と話す。
[……]

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◆20051222 「福祉・夢プラン」 県が素案公表 「日本一の福祉先進県」文言削除=宮城――読売新聞

県は21日、少子高齢化対策や地域福祉などの方針を示す「『新』みやぎの福祉・夢プラン(仮称)」の素案を公表した。来年1月末をめどに最終案をまとめる方針。
 素案によると、県が2010年度までに重点的に取り組む施策として、子育て、高齢者介護、障害者の地域移行、医療の確保など、九つの柱を掲げている。重点施策にそって「介護予防システム事業」などの新規事業計画を盛り込み、具体的な数値目標を明確にした。
 素案では、浅野史郎前知事が打ち出した「日本一の福祉先進県」のキャッチコピーを削除するとともに、プランの名称を「いきいきみやぎ 安心プラン」に見直すとの案が示された。これに対し、検討部会では「従来通りの方がわかりやすい」との意見が相次いだ。

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◆20051227 障害者福祉、下位に 産業経済重視を強調 来年度政策、村井知事が方針 /宮城県――朝日新聞

 村井嘉浩知事は26日、来年度の政策方針を発表した。選挙公約でも訴えていた産業経済政策の重視を強調する一方で、浅野史郎前知事時代の特色だった障害者福祉政策は影を潜めた。この方針は来年度の予算編成に反映される。村井知事は「私の思いが強く打ち出されている。富の創出を目指す政策を展開していきたい」と話した。
 方針は、「富県戦略」「グローバル戦略の推進」「学力向上、個性・創造性重視の教育推進」など八つの柱を提示。富県戦略には最も多くのページを割き、既存産業の構造改革、新産業創出や観光、農業ビジネスの推進など、多方面から地域経済の活性化に取り組むとしている。
 一方で、今年度の政策方針では2番目に掲げられていた福祉政策は6番目となり、優先順位が下がった形。浅野前知事が障害者福祉を重視したのに対し、高齢者の就労機会の確保などによるシニアパワーの活用をうたうなど、高齢者福祉に力点を置いた内容にもなっている。村井知事は「障害者の地域移行のためにグループホームの充実・強化する方針は変わっていない。予算が許す限り進めたい」としている。
 このほか、主な方針では、官民挙げての「治安日本一」、「国際局」や「みやぎ経営戦略会議」(仮称)の設置、市町村とのパートナーシップの構築などを挙げた。



*作成:三野 宏治
UP:20100410 REV:
施設/脱施設
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