■文献等
■ニュース など
◆20040120 公立障害者施設に改革の波 融通利かぬ人員配置 民間移譲で質向上へ――読売新聞
◆20040126 鵜川国雄会長 「里親」「里子」(旬に聞く インタビュー)/福島――朝日新聞
◆20040211 宮城・船形コロニー、解体宣言から1年余 50年ぶりの「自宅」へ――朝日新聞
◆20040220 脱施設「宮城全県で」 知的障害者、地域で生活 浅野知事宣言――朝日新聞
◆20040220 宮城県:全入所施設解体、表明へ 知的障害者、「地域で支援」推進−−浅野県知事――毎日新聞
◆20040220 知的障害者入所施設の「解体」を表明−−浅野史郎・宮城県知事――毎日新聞
◆20040221 豊中市で第2回「インクルーシブ教育考えるシンポ」 障害児も一緒に育ち生きる/大阪――毎日新聞
◆20040221 浅野知事「脱施設、自然の流れ」 入所者家族に戸惑い−−きょう発表 */宮城――毎日新聞
◆20040221 12年ぶり9000億円割る 県、「緊縮型」当初予算案 /長野――朝日新聞
◆20040221 浅野知事「脱施設、自然の流れ」 入所者家族に戸惑い−−きょう発表 */宮城――毎日新聞
◆20040221 県が知的障害者の入所施設「解体」へ 実現に向け課題山積(解説)=宮城――読売新聞
◆20040221 知的障害者の福祉サービス 1日単位、自由選択制に 県、特区制度を活用=滋賀――読売新聞
◆20040221 県が入所施設「解体」へ 知的障害者、地域で生活 グループホームなどで=宮城――読売新聞
◆20040222 障害者福祉テーマにシンポ、8県知事と6市・町長参加 大津/滋賀――朝日新聞
◆20040222 県内すべての知的障害者入所施設の「解体」 浅野史郎・宮城県知事が宣言文――毎日新聞
◆20040222 知的障害者入所施設、浅野知事が「解体宣言」 改革派知事から賛同=宮城――読売新聞
◆20040224 知的障害者施設解体宣言 「将来は身障者施設も」−−浅野知事が表明 */宮城――毎日新聞
◆20040224 第十堰改築計画 議会中に意見書素案 知事方針 「可動化含むか」未定=徳島――読売新聞
◆20040226 知的障害者施設「解体宣言」は「責任持ち具体化」 批判に対し浅野知事=宮城――読売新聞
◆20040206 精神障害者との共生を考える「メンタルヘルスの集い」 3月6日、東京都内で――読売新聞
◆20040208 [支援費制度の波紋](下)補助金カット(連載)=山梨――読売新聞
◆20040227 障害者施設解体宣言「十分な説明を」 仙台市健康福祉局長/宮城――朝日新聞
◆20040227 宮城県「知的障害者施設解体」宣言 他県知事ら13首長が支持――読売新聞
◆20040229 介護保険と一体化探る 障害者福祉に何が必要か――朝日新聞
◆20040304 「障害者の地域生活」促進へ 施設の新設、補助せず 厚労省方針――朝日新聞
◆20040307 脱施設いいが、地域を助けて(声) 【大阪】――朝日新聞
◆20040309 浅野知事、「施設解体」来月説明−−知的障害者福祉協総会で /宮城――毎日新聞
◆20040311 知的障害者が安心して買い物できるように 「サポーターの店」作り−−大阪の啓発団体――毎日新聞
◆20040313 テレ朝:ニュースステーションの知的障害者「地域移行」報道に、入所者の父母ら抗議――毎日新聞
◆20040313 ニュースステーションの障害者施設報道で抗議相次ぐ 各団体「地域移行に否定的」と――毎日新聞
◆20040314 障害者家族らテレビ朝日に抗議 のぞみの園「地域移行」巡る報道で――朝日新聞
◆20040314 知的障害者施設報道 父母ら、テレビ朝日系「Nステ」に抗議――読売新聞
◆20040316 [深層リポート]障害者の地域移行 “施設優遇”にメスを――読売新聞
◆20040318 田島良昭氏、理事長に復帰 「脱施設化」を推進−−県福祉事業団 */宮城――毎日新聞
◆20040320 [ニュース展望]障害者福祉 国は「不平等」解消に努めよ=社会部・須山勉
――毎日新聞
◆20040321 脱施設、動きじわり 知的障害者、地域で生活へ /千葉 ――朝日新聞
◆20040323 田島良昭理事長を選出−−県福祉事業団 /宮城――毎日新聞
◆20040324 知事リレー講座 日程とテーマ(社告)――読売新聞
◆20040402 [論点]知的障害者 普通の幸せ「脱施設」化で 山田優(寄稿)――読売新聞
◆20040423 知的障害者施設解体、「宣言」知事が説明−−入所者家族から不安も /宮城――毎日新聞
◆20040423 浅野知事が入所施設「解体宣言」説明 知的障害者らの保護者に=宮城――読売新聞
◆20040428 全国知事リレー講座 浅野知事、教壇で熱弁 知的障害者の問題言及=宮城――読売新聞
◆20040502 [しんそう−深層・真相・心想]「西駒郷」の地域生活移行 */長野
――毎日新聞
◆20040504 [支える・きもち]障害者の地域移行に取り組む 根来正博さん43――読売新聞
◆20040517 小田秀則さん 地域で暮らす障害者の手本になる(新潟人) /新潟――朝日新聞
◆20040520 [さぬき記者日誌]5月20日=香川――読売新聞
◆20040526 ガイド /新潟 ■講演会――朝日新聞
◆20040610 介護保険・障害者支援費:障害者ら約700人、統合反対を訴え――毎日新聞
◆20040622 障害者支援費170億円不足 厚労省が試算、2年続き赤字――朝日新聞
◆20040706 精神保健フォーラム「脱施設化とノーマライゼーションの実現」 東京・銀座で――読売新聞
◆20040707 [届け県民の声]04参院選/4 障害者福祉 進まない「自立」への施策 /山梨――毎日新聞
◆20040708 [解説]千葉の障害者差別禁止条例 「地域づくり」へ受け皿――毎日新聞
◆20040708 障害者の地域生活整備 差別禁止、県の計画 /千葉――朝日新聞
◆20040915 障害者3施設、国の補助ゼロ 横浜市、1億7千万円支出へ/神奈川――朝日新聞
◆20040716 浅野・宮城県知事、障害者政策で講演−−来月6日、富山 /北陸――毎日新聞
◆20040916 障害者「脱施設」促す 就労や生活を支援 厚労相、政策見直し方針――朝日新聞
◆20040927 地域で生きる 知的障害者が権利擁護の全国組織を結成 “脱施設”掲げアピール――読売新聞
◆20040929 サポート マリオン◆障害と人権――朝日新聞
◆20040930 英国の精神医療システム 星野仁彦(ストレスクリニック) /福島――朝日新聞
◆20041006 福祉のトップセミナーin雲仙 福祉と介護、一体探る=見開き特集――読売新聞
◆20041009 進む障害者福祉 宮城(知事が変わると:3) /富山――朝日新聞
◆20041020 県立社会福祉施設のあり方 廃止や民間移譲も 県の素案が明らかに=宮城――読売新聞
◆20041023 岡田智子さん 障害者と地域(被災地に生きる人々:205)/兵庫――朝日新聞
◆20041028 障害者福祉考えるシンポ 支援費制度など今後のあり方を議論−−近江八幡 /滋賀――毎日新聞
◆20041028 [検証・田中県政の4年間](6)地域福祉(連載)=長野――読売新聞
◆20041030 県社協など3団体統合 全国初 地域福祉の機能向上図る=宮城――読売新聞
◆20041101 障害者と市民ら交流 高崎「のぞみの園」 /群馬――朝日新聞
◆20041106 タウン TOWN たうん /大阪――朝日新聞
◆20041109 障害者への差別を排除 県が条例の素案まとめる=宮城――読売新聞
◆20041111 [検証・田中県政の4年間]識者に聞く(5)小山邦武氏(連載)=長野――読売新聞
◆20041117 知的・精神障害者の住宅単身入居 県が国に特区提案=宮城――読売新聞
◆20041123 県が2006年度の政策方針を公表 財政健全化と経済対策重点に=宮城――読売新聞
◆20041203 [「自立」を支える]福祉先進国・北欧で/中 説明責任 /北海道――毎日新聞
◆20041208 補助金改革 地方の発想生かす運用を 槙本利光(私の視点)――朝日新聞
◆20041209 グループホーム:厚労省改革案 月数万円、障害者に負担増…関係者、改善申し入れへ――毎日新聞
◆20041211 [発信箱]西駒郷=野沢和弘――毎日新聞
◆20041212 横浜市・入所施設新設問題 障害者200人、地域生活望む−−アンケ調査 /神奈川――毎日新聞
◆20041216 すべての障害児を普通学級に 県教委が小中学校で 将来構想の中間案策定=宮城――読売新聞
◆20041222 県内7地域に生活支援センター整備 県が障害者プラン中間案=宮城――読売新聞
◆20040120 公立障害者施設に改革の波 融通利かぬ人員配置 民間移譲で質向上へ――読売新聞
公立の障害者施設を改革しようという動きが、東京都で進んでいる。公立施設は一九六〇年代以降、民間では介助が難しい重度障害者らを受け入れ、先駆的な役割を果たしてきた。だが、民間のサービス水準が高まったこともあり、近年では存在意義が問われている。都内で起きた知的障害者の死亡事故の周辺から、公立施設の問題点と改革の方向を探った。(安田武晴)
■無念の思い
「安心して預けてきたのに……」
東京都足立区に住む佐藤瀧三郎さん(73)と妻の陽子さん(61)は、二男の進さん(当時三十四歳)の遺影の前で無念さをにじませた。進さんは、都立の知的障害者施設「七生(ななお)福祉園」(東京都日野市)で暮らしていたが、昨年一月に入浴中に浴槽内でおぼれ、亡くなった。
佐藤さん夫妻は同年九月、同園を運営する都の監理団体「都社会福祉事業団」などを相手取り、損害賠償請求訴訟を起こした。「職員が見回りさえしてくれれば、助かったかもしれない」との思いからだった。
事故当時は夜勤時間帯で、普段は男女計三人の職員配置だが、この日はたまたま、男性職員が代休を取り、女性三人体制。このため、男性の浴室の見回りができない状況だった。
原告側は、進さんが時々、向精神薬の副作用で動作が緩慢になることがあった点に注目。「浴槽内で同じ副作用が起きた。予測できることで、見回りは当然の注意義務」と主張。一方、園側は「予測不能の強度のてんかん発作」とし、見回りについても「いつも一人で入浴できていたので必要なかった」と過失を否定している。
■非常勤がカギ
東京都は二〇〇二年七月、障害者、児童、高齢者の都立施設計三十六か所について、民間移譲を中心とする改革を打ち出した。実績のある社会福祉法人などに任せることで、より質の高いサービスを実現するとともに、運営の効率化で生み出される財源を、在宅福祉サービスの充実に使うためだ。福祉の世界で主流となりつつある「施設から地域へ」という流れにも沿う内容だ。
今回の事故について、都福祉局は「民間施設でも起こりうる。改革とは無関係」との姿勢だ。だが、事故の背景に、都立施設が抱える問題を指摘する声は、都庁内にもある。
一つは、職員の配置体制の問題だ。民間の施設では、常勤職員を減らし、非常勤職員を多く雇用するよう工夫しているところが多い。食事や入浴など、忙しい時間帯に重点的に人を配置できるからだ。
一方、都立施設は一部を除き、「福祉職」と呼ばれる都の専門職員が介助を行っている。常勤職員の方が質の高いサービスを提供できるという意識が強いこともあり、非常勤職員の増員は難しい。
ある都立施設職員は、「夜勤を、非常勤を含め四人にすれば、見回りができて、事故を防げた可能性は否定できない」と、柔軟性に欠ける職員配置の問題を指摘する。
■意識の問題
仕事に対する使命感や責任感の希薄さを指摘する人もいる。民間の障害者デイセンター山びこ(東京都武蔵野市)の安藤真洋施設長は、「入浴と外出で事故やトラブルが起きやすいことは、福祉の現場では常識。民間なら、人手が足りなければ事務職員でも手伝う」と強調する。また、女性だけの夜勤体制になることが分かっていながら、代休を取らせる職場の意識を問題視する声もある。
都の福祉職の場合、給与水準は都庁事務職と同程度で、勤務も原則一日八時間のローテーション制。職員数も国の基準より一・五―三倍も多いので、残業も少なく、代休や有給休暇も取りやすいという。民間では、「毎日朝八時から夜十一時まで働き、休みは月に一日という人もいる」(二十三区内の施設長)との証言もあり、その差は大きい。
「都立施設の職員は、黙っていても好待遇なので、民間のように制度やサービスのあり方などを勉強する姿勢に欠ける。意識の高い人もいるが、大半は、先進的な民間施設では通用しないと思う」と打ち明ける職員もいる。
山口県立大学社会福祉学部の田中耕太郎教授(社会保障論)は、「公務員の組織は、柔軟性や効率性に欠けるので、サービスの直接提供には向かない。都立施設が抱える問題は、公立施設全般に言えることだ」と都の改革を評価する。
◆削減された職員は? 精神障害の高齢者ケアなどに転身、経験生かす道を
公立施設については、民間移譲以外にも各地で改革の動きがある。入所者をグループホームなどでの在宅生活に移す“地域移行”の取り組みも、その一つ。宮城県立の知的障害者施設「船形コロニー」を運営する県福祉事業団は二〇〇二年、「施設解体」の方針を打ち出した。国立の知的障害者施設「のぞみの園」(群馬県高崎市)のほか、長野や千葉などでも地域移行の試みが進められている。
ただ、改革を進めるうえでの問題は、入所者が減れば職員も減らさなければならないことだ。施設側は、定年退職などの自然減を見込んだり、他の公立施設への異動を行ったりしている。だが、大半の職員は「職場がなくなるのではないか」との不安を抱えており、職員組合が改革に反対するケースも少なくない。この点について、船形コロニーの改革に取り組んだ社会福祉法人「南高愛隣会」(長崎県瑞穂町)の田島良昭理事長は、「次世代の福祉分野に、積極的に転身するべきだ」と提言する。
田島理事長はここ数年、精神障害者や高齢者も含めた総合的な介助のあり方を研究する中で、日本では高齢者の自殺が多いことに気づいた。自殺には至らなくても、うつ病や引きこもり状態になる老人が増えている。だが、このような高齢者の介助で指導的役割を果たせる人は少なく、「高齢者の精神障害の分野こそ、公立施設の職員の転身先にふさわしい」と言う。
公立施設には知的障害者施設が多く、精神障害の分野とも共通点が多い。身体障害と知的障害を併せ持つ人を介助する場合もある。
田島理事長は、「これまでに身につけた経験や知識を生かせば、この分野でリーダー的存在になれる」と指摘する。
このほか、地域で暮らす障害者を支援する仕事も増えることが予想される。職員をこうした新しい分野に配置していくことも、改革には必要だろう。
《要語事典》
◇都立福祉施設改革
“福祉先進都市”を目指す東京都の福祉改革の一環として、2002年7月に始まった。施設に偏った福祉を改め、だれもが自宅など地域社会で暮らせるよう支援することが目的だ。
対象は障害者施設(19か所)、高齢者施設(7か所)、児童養護施設(10か所)。障害者施設は一部を除いて民間に移譲する。都立のまま運営だけを民間に任せるのでなく、設置主体も民間に移す。“民立民営”化することで、都は基本的に、施設サービスの主体から手を引く。
改革によって捻出(ねんしゅつ)される年間数十億円の財源は、障害者や高齢者のグループホームの整備、里親制度の拡充などにあて、地域生活支援型の福祉サービスを大幅に増やす方針だ。
◆20040126 鵜川国雄会長 「里親」「里子」(旬に聞く インタビュー)/福島――朝日新聞
「里親」「里子」どう使えばよいですか
「里親」「里子」という言葉を簡単に使うことで傷つく人がいるのをご存じですか? 通常は役所が担っている道路や川の管理を、行政が地域の町内会などに委託する事業を紹介した13日付の記事「道路・川『里子』に 広がる里親制度 県、住民に管理託す」に対し、読者の方からそんな反響をいただきました。何げなく私たちが使っている言葉ですが、使い方によっては当事者は気分がいいものではないようです。最近の里親制度事情も合わせ、県里親会の鵜川国雄会長(58)にうかがいました。
○モノと同列、心外
――「里親・里子」という言葉はマスコミを筆頭にあちこちで使われています。
「里親、里子そのものを指すのに使われるのはいいんです。ただ最近は、人間以外のモノを指し示す際に例えとして使われることが目立ちます。ハクチョウの里親、けがをした野生動物の里親、捨て猫の里親……。例を挙げればきりがありません」
――そのような使われ方をするとどんな影響がありますか。
「里子になるのは、家庭崩壊や虐待、養育放棄などの事情があり実の親による保護を受けられない子どもたちです。いじめや告知によって精神的負荷がかかっているケースもある。そんな里子たちが、軽々しく道路や動物と一緒くたにされたらどう思うか。里親にしてみれば、自分がやっていることが偽善であるかのように感じてしまう。これは心外です。里親会としても、マスコミなどに言葉の表現に慎重を期していただけるよう要望活動をしていきたいと考えています」
○利用されぬ制度
――いま県里親会にはどのくらい会員がいるのですか。
「約150人が登録しています。しかし、実際に里子の委託を受けているのは約半数に過ぎません。待てど暮らせど子どもがやってこないので、あきらめて登録を辞めてしまう人もいます。その一方で、同じ境遇の子どもたちに集団生活をさせる養護施設は満員に近い状況です。全国的に見ても東北地方は、特に里親が余っています」
――なぜ里親制度が利用されないのでしょうか。
「里親に子どもを預けるためには、親権を持つ実の親の同意が必要です。だが親たちの間に、『自分の子ども』という意識が非常に強い。『社会の中の子ども』という考え方が他国に比べて薄いのかもしれません。子どもの処遇を判断する児童相談所の意向もあると思います」
○「脱施設」が必要
――欧米では里親制度がもっと身近な制度のようです。
「日本が特異なんです。親と同居できない子どものほとんどが施設で育つ。もちろん、専門的な知識をもった職員によるケアが必要な子どももいます。しかし、時間ごとに職員が交代する施設よりは、一般の家庭で育つほうが子どもにとっては自然なことだろうと私は思います。全国里親会としても引き続き、厚生労働省に対し『脱施設』を図ってくれるよう要望活動をしていくつもりです」
(聞き手・田玉恵美)
*
うかわ・くにお 45年、会津本郷町生まれ。高校卒業後、漆器店に勤務。20代半ばでキリスト教の洗礼を受け、米国へ。農村伝道を学ぶ。帰国後は農業を営むかたわら、今年18歳になる4男の里親になった。進駐軍兵士と日本人女性の間に生まれた孤児たちの母と呼ばれた故沢田美喜さん創設の孤児院「エリザベス・サンダース・ホーム」を知り、里親制度に関心をもつ。
◆20040211 宮城・船形コロニー、解体宣言から1年余 50年ぶりの「自宅」へ――朝日新聞
宮城県福祉事業団が、知的障害者の大型入所施設「船形コロニー」(定員485人)を解体して、入所者全員を地域へ戻すと宣言して1年あまり。入所施設を増やし続けてきた日本の中で、初の「解体宣言」は、国や関係者に衝撃を与えました。今年度は目標の50人を上回る68人が退所します。地域で暮らし始めた人たちを訪ねました。(編集委員・生井久美子)
○63歳女性、障害重くても
小雪が舞うなかで、玄関のパンジーがへこたれずに咲いている。
宮城県富谷町の住宅街。うさぎの形をした小さな板に「とまとホーム」と書いてある。コロニーを昨年10月退所した女性4人が、世話人と暮らすグループホームだ。
日曜日の昼下がり。8畳の茶の間で4人が、世話人とテレビをみておしゃべりしていた。
体をゆすり首を動かし続けているのが、桃代さん(63)だ。
「コーヒーにしようか」。声がかかると、桃代さんが「コーヒーッ」とつぶやいて、棚からカップを四つ取り出した。障害が重く、言葉もほとんど話せないが、好物にはすぐ反応する。
「何食べたい?」。世話人が夕食のおかずを聞いて一緒に買い物に出かける。コロニーではなかなかできなかったことだ。週に2回デイサービスに通う。世話人が日中は2人詰め、夜も桃代さんたちのために1人泊まり込む体制だ。
桃代さんは49年3月3日、捨て子として保護された。病院と児童施設をへて、コロニー在籍28年。50年以上を病院と施設で過ごしてきた。
桃代さんと二十数年ぶりに会った仙台北地域福祉サービスセンターの加藤祐一センター長(49)は「街で暮らせるようになるなんて。いまが一番幸せかもしれない」。
最初に会った頃は、話しかけても目を合わせず自分の体をひっかき荒れていた。「障害が重くても、高齢でも、入所期間が長くても、支える体制さえ整えば地域で暮らせる。20年前にこの仕組みがあれば」と申し訳ない思いがした。
同じ町内にあるグループホーム「ラビットホーム」では、ダウン症のくら子さん(47)がずいぶん元気になった。
昨年12月、コロニーを出たくら子さんは、24歳、36歳、62歳の女性と共同生活を始めた。
ここへ来た当初はほとんど話さず、トイレも介助が必要だった。だが2週間ほどで少し話すようになり、トイレも一人でできるようになった。
「くらちゃん、ってみんなの声かけが刺激になった」と職員はいう。
地域福祉サービスセンターは、17あるグループホームに暮らす72人を、世話人37人とセンターの職員17人で支える。解体宣言後に来た10人は、重度で高齢の人が多い。72人のうち33人は重度で、50歳以上が37人だ。
○バス清掃に汗「もっと仕事を」
民間施設の協力も欠かせない。
共栄さん(61)は、一昨年秋、地域で暮らし始めたが、働いていた廃棄物処理会社がつぶれ体調も崩して入院したため、コロニーにもどった。だが「ぜひ街へ」と訴え、コロニーが協力施設を探し、仙台市内の幸泉学園の運営するグループホームに移った。
男同士4人で暮らす。毎朝、幸泉学園に通い、施設のリネン交換、午後はバス会社でバスのそうじを一台200円で引きうけている。月に約2万円の収入。「コロニーは6時に起きて9時に寝る。自由がなかった。今の夢は仕事をもっとすること」だという。
「施設から街へ」。実現には県をあげた支援体制の整備が欠かせない。
県は10日、04年度知的障害者の地域生活支援関連の予算を前年度の52%増やし約2億円計上すると発表した。特にコロニーなどから重度の人が出るのを進めるため、グループホームやデイサービスの世話人などの増員や、看護師の巡回事業、グループホームの立ち上げ時の経費補助制度などを新設。現在127カ所のホームは31カ所増やす予定だ。
○宣言きっかけ、「脱施設」加速
02年11月の船形コロニーの解体宣言で、「脱施設」の流れは加速している。政府は、03年度から始まった新障害者基本計画や新障害者プランに、入所施設の設置目標値は書き込まず、入所施設は「真に必要なものに限る」として脱施設の方針を明らかにした。世界的な脱施設の流れに逆行して増やし続けていた政府の政策転換だった。
入所施設は戦後、地域支援のほとんどない時代、家族の願いでつくられた。船形コロニーのような大型施設は全国で21。国立コロニーのぞみの園や長野県立西駒郷などの縮小論議を促進し、地域移行への関心は高まった。
4月に障害者自身がサービスを選ぶ障害者支援費制度がスタートして、在宅サービスの需要は一気にのびた。しかし、十分な財源措置がないため、介護保険との統合論が浮上している。
◇キーワード
<船形コロニー> 73年宮城県が大和町に設立し、事業団に運営を委託。入所期間20年以上が半数を占め、60歳以上が24%、重度者が86%。02年11月、「10年までに全員を地域へ」と解体宣言した。冒頭で入所者に長期入所を謝罪。障害の状態、家族、経済などを考え220人を候補者にあげ、05年までに150人を地域へ戻す計画だ。条件に(1)コロニーより安心で豊かな生活を保障(2)親元に戻すのではない(3)民間施設や市町村などと協力して支援に取り組む――とし、家族に理解を求めている。03年度の退所者68人のうち43人がグループホームへ、22人は地域へ移る前提で古里の入所施設に転出する。
◆20040220 脱施設「宮城全県で」 知的障害者、地域で生活 浅野知事宣言――朝日新聞
宮城県は、県内にあるすべての知的障害者の入所施設の「解体」を宣言する。04年度から入所者が地域で生活できるように支援する予算を充実させることなどで、民間の施設を含めて地域移行を促す。20日から大津市で開かれるシンポジウムで浅野史郎知事が公表する。障害がある人もない人もともに地域で暮らす「ノーマライゼーション」の理念を都道府県単位で実践する全国初の試み。
宣言は「入所施設を解体して、知的障害者が地域の中で生活できる条件を整備する」としている。目標とする時期などは示していない。県内には社会福祉法人が運営するものも含めて28カ所の入所施設があり、現在約1800人が生活している。宣言には施設数で8割以上を占める民間施設への強制力はない。
県は脱施設に誘導していくため、地域移行を進める予算を04年度は前年度より1・5倍にして約2億円にするが、知的障害者関連予算(約40億円)の中ではまだ一部だ。障害が重い人を支援するため、グループホームの世話人やデイサービスの職員を増員した場合に経費を補助する制度を新設する。このほか、現在127あるグループホームは1年間で31増やす計画だ。その他の支援策や解体の具体的な手順については、障害者施策推進協議会などで検討していく。
同県の福祉事業団が02年11月に、重い知的障害者が入所する「船形コロニー」の解体を表明。10年までに500人近い入所者全員を地域のグループホームなどに移行させる方針を示した。入所者や家族に「親元には戻さない」「施設より安心で豊かな生活を保障する」などの条件を示して理解を求め、03年度には目標を上回る68人が退所する。解体宣言はこの取り組みを県全体に広げるものだ。
浅野知事は「障害者の幸福を実現するという原点に戻って考えたい。地域の中にこそ普通の生活がある。適切な支援さえあれば、重度の人も地域で生活できる」と話す。
厚生労働省の高原弘海障害福祉課長は「脱施設の方向は国と同じだが、入所施設がまったくなくていいかどうかは議論が必要だろう。宣言は問題提起で、幅広い議論のきっかけになる」と話す。
浅野知事は20日から3日間の日程で開かれる「アメニティーフォーラムinしが」のシンポジウムで表明する。
◇キーワード
<知的障害者> 全国で約46万人。このうち3割の約13万人が入所施設で暮らす。10年以上の長期入所が半数を占める。地域に出て生活する人は、年間で入所者の1%に過ぎない。施設の知的障害者を対象にした大阪府の調査では回答できた人のうち、75%が施設を出たいと答えた。自分の意思で入所したと回答したのは9%だった。
○地域の理解や予算、課題<解説>
入所施設から在宅へという政策は先進国ではすでに主流になっている。スウェーデンは86年に法律に全入所施設の閉鎖を明記。期限を99年と定めて解体計画を進め、脱施設をほぼ実現した。宮城県の解体宣言はこうした流れに沿ったものだ。
入所施設中心の政策を反省して目指す方向を明確にすることで、脱施設を掲げながら施設偏重の予算構造を変えずに入所施設を増やし続けている政府に対応を迫る意味もある。
知的障害者の親たちでつくる全日本手をつなぐ育成会の藤原治理事長は「解体宣言には賛成だ。親が入所施設を求めてきたといわれるが、子どもの幸せを願ってのこと。当時はその手段として施設しかなかった。いまは通所施設やグループホームも利用でき、親の意識も変わってきている。ただ、長期に入所している人や家族の不安は大きい。地域の受け皿作りが前提条件になる」と話す。
在宅サービスが乏しい中で入所施設がなくなることに不安を抱く家族もいる。地域住民の理解をどう得ていくのか、障害者の働く場をどう確保するのかなども課題だ。自傷行為がある場合や常時医療的なケアが必要なケースには特別な配慮が必要だ。
船形コロニーの解体表明でも当初、不安の声が上がった。入所者や家族にグループホームを体験してもらったり、地域移行がうまく行かない場合は施設に戻すことを約束したりして、脱施設は進み始めた。
県の知的障害者関連予算の9割近くは入所施設関連だ。地域移行で浮いた経費を在宅支援に回すなどして予算の構造を変えていくとしているが、時間がかかる。04年度で増えるグループホームの定員は約120人分。すべての入所者を地域に戻すのは予算面でも容易ではない。
そのため、浅野知事は障害者が介護保険を利用できるよう、介護保険と障害者福祉の統合を提案している。解体実現には宮城県だけでは完結しない様々な要素が絡み合っている。(編集委員・生井久美子、清川卓史)
◆20040220 宮城県:全入所施設解体、表明へ 知的障害者、「地域で支援」推進−−浅野県知事――毎日新聞
宮城県の浅野史郎知事は20日、大津市で開かれるシンポジウムで、県内すべての知的障害者入所施設の「解体」を表明する。実現すれば、全国で初めてとなる。公営の施設のみならず民間の施設も含め、「入所型」から、障害者も健常者も共に地域で暮らす「ノーマライゼーション」の理念を推進する。欧米では入所施設の解体が進んでいるが、日本では、相変わらず入所施設の建設が各地で進んでいる。宮城県の取り組みが全国に波及する可能性もある。
この方針は入所施設を解体し、地域の中で知的障害者が生活できる条件の整備を目指すもの。解体の目標とする時期などは明らかにしていない。強制力はないが、民間施設への協力も求める。県内にある入所施設は、社会福祉法人が運営するものも含めて計28カ所。
同県の福祉事業団は02年11月、知的障害者入所施設「船形コロニー」(同県大和町)の解体を表明。10年度までにグループホーム約100カ所を整備して、約500人の入所者の移転を進めるなど、ノーマライゼーションを進めている。同県は04年度一般会計予算案に約2億円を計上して、▽知的障害者が入所するグループホームに世話人を増員▽知的障害者が利用するデイサービス事業を提供する事業所に指導員を増員−−などの事業に補助を実施。円滑な地域生活移行の推進を図る。
長野県などでも、大規模入所施設から地域への知的障害者の移行が進められており、浅野知事の方針は各地の「脱施設化」を進めるきっかけとなりそうだ。
◆20040220 知的障害者入所施設の「解体」を表明−−浅野史郎・宮城県知事――毎日新聞
宮城県の浅野史郎知事は20日、県内すべての知的障害者入所施設の「解体」を表明した。「解体」は「入所型」から、障害者が地域の中で生活する「ノーマライゼーション」を目指す脱施設方針への推進を意味し、民間の施設にも呼びかける。実現すれば全国で初めて。21日に大津市で開かれるシンポジウムで解体宣言文を配るか、知事が趣旨を説明する。
浅野知事本人が書いた解体宣言文案によると、宮城県は「県内にある知的障害者の入所施設を解体して、知的障害者が地域の中で生活できるための条件を整備する」と宣言。「適切な支援措置さえあれば、重度の障害を持った人たちであっても地域での生活を送ることができること、そしてそれが知的障害者の生活を豊かなものにすることは、これまでの多くの実践のなかで実証されている」と述べている。 【野原大輔、石川貴教】
◆20040221 豊中市で第2回「インクルーシブ教育考えるシンポ」 障害児も一緒に育ち生きる/大阪――毎日新聞
障害児教育が大きな転換期を迎える中、豊中市で14日あった第2回「インクルーシブ教育を考えるシンポジウム」(主催・豊中市教組、毎日新聞社、後援・同市、市教委、市PTA連合協議会、市人権教育推進委員協議会、市社会福祉協議会、府教組)には、障害のある人や教師、保護者ら約200人が参加し、子どもが共に学び育つ「共育」などについて話し合った。世界の障害児教育に詳しい落合俊郎・広島大大学院教授の講演「特別支援教育をインクルーシブ教育へ」に続いて、北出昭・毎日新聞学芸部副部長をコーディネーターに、障害児の母親や教師らが討論した。 【遠藤哲也、大道寺峰子】
文部科学省が打ち出した特別支援教育は、形態はインクルーシブ教育に近づきつつあるが、本質はどうかを考えたい。
私たちも高齢障害者になる。日本は世界で最も高齢者の多い「老大国」になり、障害者問題は人ごとではない。誰もが支援の必要な人になるということだ。この自覚を持って、教育や経済などの制度を変えていかないといけない。
2020年代に働き盛りになる人は今、小学生だ。彼らが、支援が必要な人をどう見るか。学校で障害児を別にして学ばせていたら、社会に出ても障害者や高齢者とかかわろうとしない。見捨ててもいい、助けなくてもいいと子どもが考えたら、そのつけがブーメランのように20年後、私たちに返ってくる。高齢者が人口の2、3割を占めるそのころは、今のようなケアは出来ない。共に生き、支え合う社会(ソーシャル・インクルージョン)を作らないと、国として生き残れないのではないか。
また障害児と健常児を分けて教育する「分離型教育」が定着し、知的障害者を施設に入れる率を高くした。「手厚い教育を別の場所」で行うという習慣のため、地域に障害者をサポートする社会資源を作ってこなかったからだ。諸外国では障害者も地域で生きる「脱施設化」が進む中、日本だけが入所施設に追いやった。40カ国以上にある障害者差別禁止法が日本にはないのも恐ろしい。
障害児教育の対象は少ないかもしれないが、そこには高齢社会など日本の未来が抱える諸問題を解決するカギがある。特別支援教育の枠組みは出来たが、精神や魂がまだ入っていない。共に生きる社会を作らないと、私たちの未来はない。
踏み込んで良い方向に
北出 私の兄は障害者で、障害者が身近にいるのが普通だった。しかし、世間では障害者と付き合う機会がないのが普通と知って驚いた経験がある。それぞれの立場から今後の障害児教育についてお話し下さい。
八木 長男(13)は1歳半の健診で言葉の遅れを指摘され、その後、障害が分かりました。初めは落ち込みましたが、ある医師に「のんびりと子育てしよう」と言ってもらい、肩の荷が下りました。姉と同じ環境で育てたいと思い、幼稚園を探しました。近所の幼稚園園長が「一緒にやっていきましょう」と受け止めて下さった。私たちの「共育」の第一歩でした。豊中市立泉丘小の入学もスムーズにバトンタッチされた。そこで童話「ぼくもぼくのことすき」の仲間に出会い、多くのことを学びました。人とつながり合い、共に育ち合うことの大切さを感じています。
姜 小・中は養護学校で学び、高校から普通校に通ったが、健常者との付き合いがまともに出来ませんでした。ずっと養護学校に通い、一度も友だちと外に出ることもなく、病気で死んだ同級生がいます。この体験を原点に、養護学校はなくなってほしいと僕は思います。障害者福祉の世界は今、計画づくめ。人に計画を作ってもらわないと、僕たちは何もしてはいけないのかとさえ感じます。特別支援教育でも個別の教育支援計画が考えられているが、僕らが望む教育なのか疑問です。自立生活センターで今後、教育相談の充実▽教職員への働きかけ▽障害者本人の自立への意識を高める取り組みが必要だと感じています。
浅野 教師生活20年のうち、半分を障害のある子どもとかかわってきました。最初に気づかされたのは、良かれと思ってやったことが、実は違うこともあるということでした。今、「普通」ということにこだわっています。「普通」というと誤解されそうだが、「みんな一緒に中学校においで」「一緒にクラスで勉強しよう」「(高校への)進路が保障されているよ」の3点。「みんな一緒に中学においで」は豊中では普通になっているが、あとの2点は課題も多い。特別支援教育が課題を解決し、「普通」を後押ししてくれるでしょうか。「良かれと思ったことが違っていた」ということの繰り返しにならないか心配です。一歩踏み込んで考え、より良い方向に進めていきたいと思います。
北出 会場から発言を。
大学院まで普通校に通い、高校の教員免許を持つ脳性まひの北口昌弘さん(29)=高槻市 これまでいろいろ苦労してきたが、高校の修学旅行で仲間外れにされ、「養護学校に行け」と言われたのが一番悔しかった。そんなふうに言う人をなくすためにも、養護学校はないほうがいい。
北出 障害のない子どもにとっての「共育」とは。
浅野 子どもを障害の有無で見るのではなく、どのようなクラスを作っていくかが大事だと思います。その中には、障害という個性を持っている子もいれば、別の個性を持っている子もいます。どの子にとっても温かいクラスにしたいと考えます。 =パネリストは敬称略
◇基調提案◇ 特別支援教育の課題見つめ進む
中山順次・豊中市教組副委員長 豊中の「共に育つ」教育は、障害児や親の強い願いに学校現場が突き動かされて、三十数年前に始まった。国は障害の種別・程度で学ぶ場を決める「特殊教育」から、普通学級に在籍し、ニーズに応じた教育支援をする「特別支援教育」へ転換しようとしている。だが、これは新たな分離教育を進めるのでは、との懸念もある。背景や狙い、課題を考えることで、「共に生き学ぶ教育」を前進させたい。
◇主催者あいさつ◇
青柳隆・豊中市教組委員長 特別支援教育の評価は分かれるが、子どもの思いをきちんと受け止めようという姿勢は変わらないはず。その原点に立ち返り、共に生きる教育の今後について議論を深めてほしい。
藤原健・毎日新聞編集局次長 「憎しみの連鎖」が世界的に広がっているが、それは自分と違う者を排除しようという論理に基づいている。障害者問題も同じで、今この場から次世代に対し、人としてどうあるべきかのメッセージを発信していきたい。
◇遠藤記者、反響を報告 障害児教育の原点、連載童話で
毎日新聞が昨年10月に連載した「ぼくもぼくのことすき」は、豊中市立泉丘小学校で学んだ自閉症やダウン症の子どもたちや先生をモデルにしたノンフィクション童話です。彼らが体験した出来事を、童話作家が聞き取りをして物語に仕上げました。連載中から「教育の原点を考えさせられた」「たくさんの子どもに読んでもらいたい」など多くの反響が読者から寄せられました。
障害児教育は専門用語が多く、一般の人には分かりにくいかもしれません。しかし「どんな教育を目指しているのか?」と尋ねられた時、一つの答えがこの童話ではないかと思います。
◇落合俊郎さん
専門は障害児教育。国立特殊教育総合研究所を経て現職。共著に「いのちキラキラ重症児教育」など。
◇八木みどりさん
長男は自閉症で、童話「ぼくもぼくのことすき」のコウちゃんのモデル。1963年生まれ。
◇姜博久(カンパック)さん
脳性まひで車椅子を利用。大正区の障害者自立生活センター「スクラム」代表。1960年生まれ。
◇浅野真吾さん
豊中市立第五中学教諭。十中、五中で障害児学級を担任。1954年生まれ。
――ことば―― インクルーシブは、英語で「包み込み」の意味。すべての子どもが普通学級で学び、その子の必要に応じた教育支援をすること。94年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「サラマンカ宣言」で提唱された。文部科学省の調査研究協力者会議は昨年3月、「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」を発表。障害のある子も普通学級に在籍し、教育的支援を受ける。従来の障害児だけでなく、学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、高機能自閉症も支援の対象にした。盲・ろう・養護学校は「特別支援学校」に一本化する。
◆20040221 浅野知事「脱施設、自然の流れ」 入所者家族に戸惑い−−きょう発表 */宮城――毎日新聞
◇宣言実現へ長い道のり
浅野史郎知事が20日、県内すべての知的障害者入所施設の「解体」を表明した。「脱施設化は自然の流れ」。知事はそう強調し、全国に先駆けた取り組みに自信を見せた。ただ、突然の「宣言」に入所者の家族からは戸惑いも出ている。知事の号令を、宣言で言う「知的障害を持った人たちの幸福」に結実させるには長い道のりが必要だ。【野原大輔、鈴木英生、棚部秀行、高橋昌紀】
■知事の思い
浅野知事は、脱施設について「(勤務していた)厚生省時代からの思い」と語った。21日に発表する宣言文も自ら執筆するなど、こだわりの強さがうかがわれる。
県福祉事業団は02年11月、知的障害者入所施設「船形コロニー」の解体を宣言し、大きな反響を呼んだ。新たな宣言もその延長線にあり、知事自身、「コロニーの解体宣言の普遍化」を強調している。
自他共に認める福祉のエキスパートとして、「脱施設」を全国的なうねりにしたいとの狙いも垣間見える。それは、宣言を発表する場として、多くの知事や市長、福祉関係者が集まるシンポジウム「アメニティーフォーラム」(大津市で開催)を選んだことにも表れている。今も知的障害者の施設を造り続ける自治体がある中、「多くの首長の前で表明し、インパクトを持たせたかったのではないか」。県幹部はそう解説した。
■徐々に理解進む
脱施設に早くから取り組んだのはスウェーデンだ。80年代半ばには国の方針として打ち出し、「施設から地域」への移行を本格化させた。
社会福祉を専攻する立教大の河東田博教授が厚生労働省に提出した同国の取り組みを紹介した資料は興味深い。スウェーデンの場合、地域への移行が始まった当初は、保護者や施設職員の大多数が否定的だった。ところが、時間とともに反対意見は減少。「脱施設」が完了した段階では、保護者の大部分が「自分の子供が以前より満足できる生活が送れている」と考えるようになったという。
県内でも、02年の船形コロニー解体宣言により、脱施設への第一歩が始まった。県障害者施策推進協議会の専門部会が昨年8月、「地域生活への移行を促進すべきだ」と提言し、県は04年度予算案に初めて知的障害者の地域生活移行を支援する費用として約2億円を計上した。127カ所あるグループホームを04年度内に158カ所に増やす計画だ。
これに伴い、船形コロニーの解体も進んでいる。2月17日現在、34人が施設からグループホームなどに移り、4月中にさらに29人がコロニーを退所する予定だ。
■家族に困惑も
解体宣言に対し、家族には困惑もある。特に船形コロニー入所者の家族の受け止め方は深刻だ。
知事は解体宣言で「適切な支援措置さえあれば、重度の障害を持った人であっても地域での生活を送ることができ、それが知的障害者の生活を豊かなものにすることは多くの実践の中で実証されている」と強調する。しかし、重度の知的障害を持つある女性の姉は「知事は実態を分かっていない」と疑問を呈した。女性には放浪癖があり、いついなくなるか分からない。一時も目を離すことができず、数日の里帰りでも家族は精神的に参ってしまうという。
さらに、コロニーの解体宣言後、施設にあった「軽度の人が重度の人の世話をする」仕組みが崩れ、状況が悪化したと指摘。「グループホームに入れと言われても共同生活ができる状態ではなく、家族も受け止められない。どうすればいいのか」と不安を訴えた。「知事の政治パフォーマンスに、われわれの身内を利用してほしくない」と反発する家族もいる。
宣言は「入所施設を即刻解体すべしと言おうとしているのではない」とし、施設関係者の意識改革の大切さや、脱施設の前提となる支援態勢づくりに全力を挙げることをうたっている。広い裾野ができて、初めて施設解体の条件が整うことになりそうだ。
◇脱「施設信仰」評価−−横井寿之・北海道医療大看護福祉学部教授(臨床福祉論)の話
船形コロニーの解体宣言以来、宮城県の動向は全国の福祉関係者の注目を集めていた。「施設信仰」が根強い日本で、ノーマライゼーションがようやく第一歩を踏み出したといえ、多いに評価できる。
国の障害者予算は現在、7割近くを施設関係が占める。グループホームにシフトすれば脱施設は可能で、障害者の親の心配も軽減できるはずだ。今後、地域の要となる各市町村長の協力が必要となる。いかに理解を得るか。知事の手腕が試されるだろう。
◇みやぎ知的障害者施設解体宣言案(全文)−−知事きょう発表
浅野史郎知事が21日発表する「みやぎ知的障害者施設解体宣言」案は次の通り。
宮城県内にある知的障害者の入所施設を解体して、知的障害者が地域の中で生活できるための条件を整備することを宮城県の障害者施策の方向とすることを、ここに宣言する。
宮城県福祉事業団は、02年11月23日、船形コロニーを10年までに解体し、入所者全員を地域生活に移行させるという、「施設解体みやぎ宣言」を発した。宣言を発するに至った背景としては、知的障害者本人の希望とかかわりなく、施設入所を当然のこととしてきたのではないかという疑問があった。施設運営にかかわる職員としては、自分たちの仕事の意義に対する真剣な反省である。
この疑問、反省は、船形コロニーだけにあてはまるものではない。船形コロニーは知的障害者の中でも、特に重度の障害を持つ人たちを処遇する場として特別に設置されたものであるから、地域生活への移行を言うならば、県内の入所施設の中では、順番としては一番最後になってもおかしくない位置づけである。にもかかわらず、施設解体宣言を発したということの重みを、十分に考える必要がある。
知的障害を持った人たちの幸福を実現することこそが、障害福祉の仕事の目的であるという原点に戻って考えたい。地域の中にこそ普通の生活がある。適切な支援措置さえあれば、重度の障害を持った人たちであっても地域での生活を送ることができること、そして、それが知的障害者の生活を豊かなものにすることは、これまでの多くの実践の中で実証されている。
船形コロニーの解体宣言から1年余たった今こそ、宮城県全体として、船形コロニー解体宣言の普遍化をなすべき時である。つまり、知的障害者の入所施設を解体し、入所者の地域生活への移行を図ることを、宮城県全体の障害福祉の方向として、明確に示す必要がある。それが今、このような宣言を発する理由である。
宣言の背景には、これまでの障害福祉施策への真剣な反省がある。知的障害者への各種の施策が量的にも、質的にも貧しかったころ、知的障害者施策の中心は、施設入所であった。「親亡き後」の知的障害者の生活をどうやって保障し、年老いていく親に安心感を与えるかが大きな関心事であったとも言える。施設入所は、こういった環境の下で、頼りになる施策に思えたのは、ある意味で当然である。
入所施設での処遇に比べれば、地域生活支援施策は、歴史的にも浅いものであり、目に見えるインパクトとしても施設のように目立たない。一握りの先進的な取り組みとして存在し、特に、親たちから見えないし、見えたとしても頼りにならないものと認識されていた時代が長く続いている。一方において、入所施設は、多くの職員と関係者を抱える確固たる存在として、永久に存続するものとして受け止められている。「解体」という発想は、普通は出てくるものではない。
そういった状況の中で、知的障害者本人の幸せとは何かが真剣に問われることがないままに、障害福祉の仕事は成り立っていた。「あなたは、どこに住みたいのか」「あなたは、誰と暮らしたいのか」「そもそも、あなたは何をしたいのか」という問い自体が発せられないまま、入所施設に入っているのが一番幸せと、外部から決めつけられる存在としての知的障害者という図式である。障害福祉の仕事は、知的障害者の幸せを最大にすることを目的とするという見地からは、障害者に対して、まずこの問いが発せられなければならない。そして、その答を模索することが求められる。
知的に障害を持っていることによって、特別なニーズが生じる。特別なニーズがあったとしても、知的障害者が普通の生活を送ることを断念する理由にはならない。障害福祉の仕事は、その特別なニーズにどう応えていくかということである。普通の生活は施設の中にはない。地域にしかない。であるとすれば、地域の中で、知的障害ゆえに発生する特別なニーズに応えていくことこそが、障害福祉の仕事である。グループホームがある。日常生活の援助がある。金銭管理、人権擁護、就労の確保などなど、やるべきことはたくさんある。
宮城県での知的障害者への福祉が目指すべきは、この方向である。「施設解体」を宣言しても、解体することに目的があるのではない。あくまでも、知的障害を持った人たちが、普通の生活を送れるような条件整備をすることに主眼がある。そのような条件整備がなされれば、入所施設は不要になる、つまり解体できるということになる。宮城県の障害福祉のありようとして、こういった方向に進んでいくことを少しでも早めるように各種施策を準備するという宣言でもある。
宮城県内の知的障害者の入所施設を、即刻解体すべしと言おうとしているのではない。時間はかかっても、目指すべきは施設解体、まずはそれが可能になるための、地域生活支援の施策の充実である。県内のそれぞれの入所施設において、そのことを念頭に置いて仕事をするのと、全く考えずに日々を過ごすのとでは、大きな違いが出てくる。それぞれの施設において、解体が可能になるまでにやるべきことは何か、何が障害になるのか、障害をなくすための方策、こういったことを現場の職員を交えて真剣に討議し、行動することが求められる。
繰り返して言う。障害福祉の目的は、障害者が普通の生活を送れるようにすることである。そのために、今それぞれの立場で何をなすべきか。たどり着くべき島影をしっかりと視野に入れて、船の進むべき方向は違わないように荒波を乗り越えつつ進んでいかなければならない。たとえ時間はかかっても、必ず目指す島に到達することはできると信じている。同じ船に一緒に乗り込んでほしい。
◆20040221 12年ぶり9000億円割る 県、「緊縮型」当初予算案 /長野――朝日新聞
県は20日、一般会計総額8758億円の新年度当初予算案を発表した。今年度当初比で6・4%減で、3年連続のマイナスとなり、12年ぶりに9千億円を割り込む「緊縮型」。地方交付税の大幅削減で生じた財源不足に対応するため、主要3基金を280億円取り崩し、残高は31億円に落ち込んだ。県職員の寒冷地手当削減をめぐり組合との交渉が未決着なうえ、県議会には田中康夫知事の独自色の強い予算の削減を求める声もあり、予算審議の先行きは予断を許さない。27日開会の2月議会に提案される。
●処理場建設費見送る 阿智で計画 「脱施設」条例案前に
県の新年度当初予算案で、県廃棄物処理事業団が下伊那郡阿智村で進めてきた廃棄物処理施設の建設費の計上が見送られた。事業は現在、新たな収支計画で県負担増などが判明して「休止」状態。田中知事は会見で、「課題があり、予算計上を見送った」と話した。
生活環境部の要求額5億円余のうち、約1億4600万円が着工時の建設費だった。結局、残りの同事業団運営費なども圧縮され、2億6368万円が計上された。
田中知事は、県内の産業廃棄物の処理状況を把握し、6月議会への提出をめざす「新しい(産業廃棄物)条例の方向性」も考慮しながら、事業の行方を決めるとした。新規の実態調査予算1289万8千円が計上された。
同条例案は「脱大量廃棄」「脱処理施設」を掲げる見通しで、しかも市町村が担当する一般廃棄物も対象とする方向。阿智村の計画が条例の理念に従って取りやめとなれば、県内各地の廃棄物処理計画への影響も予想される。
◆20040221 浅野知事「脱施設、自然の流れ」 入所者家族に戸惑い−−きょう発表 */宮城――毎日新聞
◇宣言実現へ長い道のり
浅野史郎知事が20日、県内すべての知的障害者入所施設の「解体」を表明した。「脱施設化は自然の流れ」。知事はそう強調し、全国に先駆けた取り組みに自信を見せた。ただ、突然の「宣言」に入所者の家族からは戸惑いも出ている。知事の号令を、宣言で言う「知的障害を持った人たちの幸福」に結実させるには長い道のりが必要だ。【野原大輔、鈴木英生、棚部秀行、高橋昌紀】
■知事の思い
浅野知事は、脱施設について「(勤務していた)厚生省時代からの思い」と語った。21日に発表する宣言文も自ら執筆するなど、こだわりの強さがうかがわれる。
県福祉事業団は02年11月、知的障害者入所施設「船形コロニー」の解体を宣言し、大きな反響を呼んだ。新たな宣言もその延長線にあり、知事自身、「コロニーの解体宣言の普遍化」を強調している。
自他共に認める福祉のエキスパートとして、「脱施設」を全国的なうねりにしたいとの狙いも垣間見える。それは、宣言を発表する場として、多くの知事や市長、福祉関係者が集まるシンポジウム「アメニティーフォーラム」(大津市で開催)を選んだことにも表れている。今も知的障害者の施設を造り続ける自治体がある中、「多くの首長の前で表明し、インパクトを持たせたかったのではないか」。県幹部はそう解説した。
■徐々に理解進む
脱施設に早くから取り組んだのはスウェーデンだ。80年代半ばには国の方針として打ち出し、「施設から地域」への移行を本格化させた。
社会福祉を専攻する立教大の河東田博教授が厚生労働省に提出した同国の取り組みを紹介した資料は興味深い。スウェーデンの場合、地域への移行が始まった当初は、保護者や施設職員の大多数が否定的だった。ところが、時間とともに反対意見は減少。「脱施設」が完了した段階では、保護者の大部分が「自分の子供が以前より満足できる生活が送れている」と考えるようになったという。
県内でも、02年の船形コロニー解体宣言により、脱施設への第一歩が始まった。県障害者施策推進協議会の専門部会が昨年8月、「地域生活への移行を促進すべきだ」と提言し、県は04年度予算案に初めて知的障害者の地域生活移行を支援する費用として約2億円を計上した。127カ所あるグループホームを04年度内に158カ所に増やす計画だ。
これに伴い、船形コロニーの解体も進んでいる。2月17日現在、34人が施設からグループホームなどに移り、4月中にさらに29人がコロニーを退所する予定だ。
■家族に困惑も
解体宣言に対し、家族には困惑もある。特に船形コロニー入所者の家族の受け止め方は深刻だ。
知事は解体宣言で「適切な支援措置さえあれば、重度の障害を持った人であっても地域での生活を送ることができ、それが知的障害者の生活を豊かなものにすることは多くの実践の中で実証されている」と強調する。しかし、重度の知的障害を持つある女性の姉は「知事は実態を分かっていない」と疑問を呈した。女性には放浪癖があり、いついなくなるか分からない。一時も目を離すことができず、数日の里帰りでも家族は精神的に参ってしまうという。
さらに、コロニーの解体宣言後、施設にあった「軽度の人が重度の人の世話をする」仕組みが崩れ、状況が悪化したと指摘。「グループホームに入れと言われても共同生活ができる状態ではなく、家族も受け止められない。どうすればいいのか」と不安を訴えた。「知事の政治パフォーマンスに、われわれの身内を利用してほしくない」と反発する家族もいる。
宣言は「入所施設を即刻解体すべしと言おうとしているのではない」とし、施設関係者の意識改革の大切さや、脱施設の前提となる支援態勢づくりに全力を挙げることをうたっている。広い裾野ができて、初めて施設解体の条件が整うことになりそうだ。
◇脱「施設信仰」評価−−横井寿之・北海道医療大看護福祉学部教授(臨床福祉論)の話
船形コロニーの解体宣言以来、宮城県の動向は全国の福祉関係者の注目を集めていた。「施設信仰」が根強い日本で、ノーマライゼーションがようやく第一歩を踏み出したといえ、多いに評価できる。
国の障害者予算は現在、7割近くを施設関係が占める。グループホームにシフトすれば脱施設は可能で、障害者の親の心配も軽減できるはずだ。今後、地域の要となる各市町村長の協力が必要となる。いかに理解を得るか。知事の手腕が試されるだろう。
◆20040221 県が知的障害者の入所施設「解体」へ 実現に向け課題山積(解説)=宮城――読売新聞
県の解体方針は、浅野知事が知的障害者の“脱施設”という持論を「行政の方向性として明確化した」ものだ。知事は「入所施設の解体ではなく、知的障害者たちが地域で生活する条件を整備することが目的」と強調した。
ただ、現場には複雑な事情もある。県障害福祉課によると、現在、入所施設で生活する知的障害者は千八百人を超える。それに対し、“脱施設”の受け皿に想定されるグループホームは、県内に百二十五か所あるが、五百十七人が暮らしているに過ぎない。
加えて、民間の入所施設に対しては、行政の権限が及ばない問題もあり、宣言に具体的な目標年次などは盛り込まれなかった。
知事は「相手のある話なので時間的な目標は示し得ないが、行政が方向性を出すことで、関係者の意識は間違いなく変わる」と期待する。
しかし、県内の民間施設関係者の間には「船形コロニー入所者の地域への移行が進み、知的障害者が地域で生活できるインフラが整備されていけば、民間施設も同じ方向に進まなければならない」と支持する意見がある一方で、「一律に地域に移行させるのは難しい」「年齢を問わず、誰もが地域での生活を望んでいるとは思えない」との声も根強く、実現に向けての課題は多い。(池亀創)
◆20040221 知的障害者の福祉サービス 1日単位、自由選択制に 県、特区制度を活用=滋賀――読売新聞
週末は施設から自宅 曜日ごとに通所替え 全国初、4月にも申請
県は二十日、現行制度では月単位でしか認められていない知的障害者への福祉サービスを、様々なメニューの中から一日単位で自由に決めることができる「カフェテリア方式」に変更する構想を明らかにした。国の特区制度を活用し、全国で初めて実現する。障害者の「脱施設」を促すもので、四月にも正式申請する予定。
二十日から大津市で始まった「第七回アメニティー・フォーラムINしが」(実行委員会主催)のシンポジウムで公表した。
現行制度では、福祉サービスを提供する事業者との契約が月単位でしかできない決まりになっていたため、結果的に障害者を施設に縛り付ける結果となっていた。
特区構想では、障害者が日替わりでサービスを選べるようにする。これにより、施設に入所した障害者が週末だけは自宅に帰ってホームヘルプサービスを受けることができるようになる。また、曜日によって、異なる授産施設などにも通えるようになる。
障害者の自主性を尊重するため、障害者への福祉サービスは昨年四月、市町村がその内容を決める制度から、障害者自身が決めることができる制度へと変わった。しかし、月単位での契約となったことから、十分に機能していない面があった。
施設側からは、入所者が不在時の収入がなくなり、経営が不安定化するなどと反対する声もあるが、知的障害者の家族で作る「県手をつなぐ育成会」の今井一夫会長は「一つの施設に縛られる現状はおかしい。施設の風通しがよくなり、障害者が地域で安心して暮らせる方向につながる」と歓迎。厚労省も「障害者の選択の幅が広がる構想であり、支援したい」と評価している。
◆20040221 県が入所施設「解体」へ 知的障害者、地域で生活 グループホームなどで=宮城――読売新聞
県は二十日、県内の知的障害者入所施設を「解体」し、施設内で生活するすべての知的障害者を順次、グループホームなど地域での生活に移していく方針を明らかにした。障害のある人と障害のない人がともに地域で暮らす「ノーマライゼーション」の考え方に基づくもので、都道府県として初めての試みとなる。
県内には現在、知的障害者の入所施設が計二十八か所あり、千八百人以上が日常生活訓練や作業訓練などを受けている。
県は二〇〇二年十一月、県福祉事業団の運営する知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)が二〇一〇年までに約五百人の入所者全員を地域での生活に移行させることを表明。他施設でも、入所者が地域での生活に移行するのを支援している。
今回の解体方針は、船形コロニーの試みを全県に拡大したもの。解体方針を受け、県は、二〇〇四年度から二年間で、痴ほう性の高齢者と知的障害者が共同で生活する「共生型グループホーム」を四か所整備するなど、障害者が生活する施設や介護にあたる人材の養成を進め、入所者の受け皿となる環境や条件の整備を進める。
浅野知事は二十日、「みやぎ知的障害者施設解体宣言(案)」の形で解体方針を明らかにした。浅野知事は「知的障害者が住所を移して生活している入所施設を二十二世紀まで残すかと言われれば、宮城県の施策は『ノー』だ。今までも行ってきたことを、明確に方向性として示したということだ」と話した。
梅永雄二・宇都宮大教育学部教授(発達障害の臨床心理)は「方針には賛成だが、知的障害者の中には医療的な支援が必要なケースもある。生活や余暇、労働など、地域で支援を行う人の専門性を高めていくことが必要」と指摘。さらに、「行政による受け入れ地域住民への啓発も不可欠。まず試行し、問題の有無を検証してから進めていく必要がある」としている。
◆20040222 障害者福祉テーマにシンポ、8県知事と6市・町長参加 大津/滋賀――朝日新聞
障害者福祉の課題などを話し合うため、20日から大津市内で開かれている「アメニティーフォーラム IN しが」(同実行委員会など主催、朝日新聞厚生文化事業団など後援)は21日、浅野史郎・宮城県知事ら8県知事と6市・町長が参加し、シンポジウムを開いた。浅野知事が宮城県内にあるすべての知的障害者の入所施設を「解体」する「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を公表したのをはじめ、ほかの知事や市・町長からも「障害者福祉の充実のためにも、財源と権限をもっと地方へ移譲すべきだ」などの意見が出た。出席した首長に、欠席した高橋はるみ・北海道知事を加えた15人が全員一致で「障害者福祉に関する共同アピール」を採択した。
シンポジウムは、「地域生活を理念だけに終わらせないために」をメーンテーマに2部構成で行われ、県内からは第1部に山田亘宏・守山市長が、第2部に国松善次知事が参加した。
「地域福祉を構築するための首長のリーダーシップを考える」と題した第1部では、コーディネーターの浅野知事が冒頭、「解体宣言」を公表。「知的障害者が地域の中で生活できるための条件を整備することを宮城県の障害者施策の方向とする」とし、「(入所施設を)解体することに目的があるのではない」と繰り返し強調した。
この宣言を受ける形で始まった討論では、木村良樹・和歌山県知事が「地域の中で生きていくのは簡単なことではなく、行政としても障害者自らに経済的自立を促す努力が不可欠だ」。西川一誠・福井県知事も「県内では障害者自身がNPO(非営利組織)を作って、障害者を支援する動きが出てきている。そうした動きを支援し、彼らの自立に向けた夢を膨らませる努力が必要だ」と指摘した。
また、片山善博・鳥取県知事は「現在は、障害者福祉の施策を供給する行政側の論理ばかりが横行しているきらいがある。『脱ダム宣言』同様、解体宣言は多くの人が障害者福祉を考えるきっかけを与える」と発言。障害のある当事者の思いに沿って、施策を転換する必要性を説いた。
一方、市長からも発言が相次いだ。岩手県宮古市の熊坂義裕市長は「介護保険が追い風になって高齢者福祉の充実は進んでいるが、これからは障害者福祉も市町村でしっかりやっていかねばならない時代。そのためにも、確実な財源と権限を移譲してもらいたい」と注文した。
また、千葉県我孫子市の福島浩彦市長は「本当に必要なところに財源が振り向けられる仕組みに政治全体が改まらなければならない」と指摘。守山市の山田市長は「障害者はもちろん、子育てを抱えた市民らの生活支援を視野に入れて、市町村が制度づくりを進めていくべきときだ。財源と権限が移譲されれば、十分に可能だ」と訴えた。
「当事者インパワーメントと自治体の役割」をテーマに話し合われた第2部では、北海道ニセコ町の逢坂誠二町長が冒頭、「財政難の中で効率面だけを重視し、農村や都市部を一緒にして制度や施設の整理をすればいいという考えに答えを出さなければ。福祉に関心のある人だけでなく、関心のない人にも問題点を知ってもらうことが大切だ」と訴えた。
増田寛也・岩手県知事は「財源不足だからこそ、福祉分野でも互いがアイデアを出し合い、地域のもつ豊かな潜在能力を発揮できる余地がある」。群馬県太田市の清水聖義市長が「行政は市民から寄せられる個々の要求の中から、真のニーズをくみとり、サービスを提供しなければならない」と強調した。
愛知県高浜市の森貞述市長は「介護保険制度の導入で、地域の支え合いが見直され始めた。地域にあるインフラなどの有効的に活用でききるよう施策をするべきだ」。堂本暁子・千葉県知事は「福祉だけでなく、教育、町づくりなど含めた『超福祉』の考えで、みんなが共に暮らしていける施策が必要」と述べた。古川康・佐賀県知事は「郵便局やコンビニなど地域の拠点を生かし、きめ細かく障害者の生活支援をしていくのも一手」と話した。
国松知事は「当事者自身も主体的に行政へ参画し、地域で生きがいを持って生きていくことができるようにしていくことが重要だ」と述べた。
<共同アピールの要点>
「障害者福祉に関する共同アピール」の要点は次の通り。
(1)将来的には、現在の介護保険制度などを抜本的に改革し、高齢者と障害者の自立と社会参画を支える社会システムを構築すべきだ。
(2)05年に予定されている介護保険制度の見直しで、抜本的改革への第一歩として、身体、知的、精神障害のある人の福祉サービスを介護保険制度の対象に組み入れることについて、国民的議論を行う必要がある。
(3)障害の程度に応じた、きめ細かな制度にする必要がある。特に長時間介護を必要とする人々(全身性障害、強度行動障害など)については、特別なニーズに対応するため、制度上きめ細やかな配慮をすべきだ。
(4)当事者らの幅広い参加を得て、国は国民各層の意見を踏まえた改革に直ちに着手すべきだ。
◆20040222 県内すべての知的障害者入所施設の「解体」 浅野史郎・宮城県知事が宣言文――毎日新聞
宮城県の浅野史郎知事は21日、大津市で開催中の「第7回アメニティーフォーラムINしが」(実行委主催)で、県内すべての知的障害者入所施設の「解体」を目指す宣言文を発表した。「障害者が(地域で)普通の生活を送れるようにすることが障害福祉の目的。(その実現を)少しでも早めるよう各種施策を準備する」とうたっている。コーディネーターを務めたシンポジウムの参加者約1500人に配った。
「みやぎ知的障害者施設解体宣言」と題し、浅野知事は冒頭で「時間はかかっても、施設解体が可能になるための地域生活支援の施策充実を目指すべきだ。解体はその後になる。決して目新しくはないが、行政がやると言ったことに意義がある」などと話した。宮城県内には、民間も含め28の入所施設(定員1845人)がある。
パネリストの片山善博・鳥取県知事は「『脱ダム宣言』を思い出した。世間を震撼(しんかん)させる意味で効果がある」と述べた。
シンポジウムは「地域生活を理念だけで終わらせないために」と題し、全国の知事や地元市長ら13人が出席。障害者施設の民間への移行や情報アクセスなど、各自治体が抱える課題を話し合った。フォーラムは20〜22日。 【阿部雄介】
◆20040222 知的障害者入所施設、浅野知事が「解体宣言」 改革派知事から賛同=宮城――読売新聞
「普通の生活は地域で」
浅野知事は二十一日、滋賀県大津市で開かれたシンポジウムで、宮城県内の知的障害者入所施設を順次解体し、知的障害者の“脱施設”を進める「宣言」を正式に行い、片山善博・鳥取県知事や木村良樹・和歌山県知事ら「改革派知事」から賛同を受けた。
入所施設の解体宣言は「知的障害者の普通の生活は、地域の中にしかない」という浅野知事の持論を体現したもの。入所者約四百八十人を抱える県内最大の施設も二〇一〇年までに解体させる方針で、軽度の障害者から順にグループホームなどで生活を始めている。
シンポジウムの中で、知事や市長ら十四人が参加した討論会の司会進行役を務めた浅野知事は冒頭、「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発表。知的障害者が地域の中で普通に暮らすための条件整備や支援を進める趣旨を説明した。
これに対し、片山知事は「障害者が何を望んでいるかを考え、必要な選択肢を用意することは行政本来の役割。基本的に賛同する」と表明。木村知事も「施設を出たがっている知的障害者は多い。宣言は知的障害者福祉の流れを変える良い契機になる」と評価した。
一方、「実現させたいとは思うが、一緒にやっていくかはこれから考えたい」(堂本暁子・千葉県知事)、「中身のある重い提案だが、言葉だけでは誤解や心配を招くかもしれない」(古川康・佐賀県知事)などと慎重な意見もあった。
◆20040224 知的障害者施設解体宣言 「将来は身障者施設も」−−浅野知事が表明 */宮城――毎日新聞
◇浅野知事が会見で表明
浅野史郎知事は23日の定例記者会見で、「知的障害者施設解体宣言」を、将来は身体障害者施設などにも広げていきたいとの意向を表明した。また、今後改定する「みやぎの福祉・夢プラン」(06年度まで)と「みやぎ障害者プラン」(05年度まで)に、解体宣言の内容を盛り込む考えも示した。
知事は「知的障害者は船形コロニーでの実践が先行している」と、知的障害者の施設解体を優先させる理由を述べる一方、「問題意識は(知的障害者と)共通のものがある。いずれ明確化したい」と、今後、身体障害者などの施設についても同様の宣言をする可能性を示唆した。
身体障害者は、県内13施設に計684人が入所している。現状では、グループホームなどへの移行は進んでいない。さらに、精神障害者も、帰るあてがないために精神病院に長期入院している「社会的入院者」が県内に850人(推計)おり、国と歩調を合わせる形で県は今年度から自立生活支援事業を始めている。
ただ、知事は会見で知的障害者施設の解体について「無理強いも無理もしない」と強調した。身体障害者や精神障害者の施設に関する解体宣言を出すには、さらなる条件整備が必要と判断しているようだ。
知事は、解体宣言を県内ではなく大津市のシンポジウムで行ったことについては「1500人の参加者ほとんどが、地域生活支援をどうするかという問題意識を持っていた。8人の知事と6人の市町長もいた」と語った。県内では、4月に予定されている県知的障害者福祉協会の総会で説明するという。【鈴木英生】
◆20040224 第十堰改築計画 議会中に意見書素案 知事方針 「可動化含むか」未定=徳島――読売新聞
飯泉知事は二十三日の定例記者会見で、吉野川第十堰(ぜき)の改築計画に関する国への意見書提出についてふれ、二月定例県議会の代表、一般質問(三月三―五日)か、県土整備委員会(同十一、十二日)の場で素案を表明するとの考えを示した。
飯泉知事は「中身は最終の形は決めきっておらず、(二十六日の)所信表明には間に合わない。その後の(代表、一般)質問に答える形を取るのがいいのか、(県土整備)委員会審議で考えを出して検討してもらうのがいいのか。最終まで考えていきたい」と説明した。
可動堰を含めるか含まないかに関しては、「賛否両論あり、それぞれの意見が求めていることをどうくみ取るのかがポイント。難しいところ」として、検討中であることを強調した。
国土交通省への提出時期については「二〇〇四年度には河川整備計画に着手してもらいたい。国の予算の関係もあり、三月中に国土交通省に持っていくのがベスト」と説明しながらも、「議会で『おかしい』という意見が大勢を占めれば、時期を考えなければいけない」として、四月にずれ込む可能性があることも示唆した。また、小池正勝・徳島市長が、「可動堰反対」を参院選の公約から事実上撤回したことに関しては、「徳島市長としての意見に変更がなければいい。現時点では反対の立場のままと考えている」と静観する構えを見せた。
一方、宮城県の浅野史郎知事が、知的障害者の〈脱施設〉を訴えたことについては、「考えは賛同できるし、大きな問題提起」としながらも、「県内では、障害者が社会に出た時のフォローなど体制整備が整っていない。県民意識の育成に力を注ぎ、行けるというめどがたったうえで、〈脱施設〉を宣言すべきだ」と時期尚早との考えを示した。
◆20040226 知的障害者施設「解体宣言」は「責任持ち具体化」 批判に対し浅野知事=宮城――読売新聞
県内の知的障害者入所施設を「解体」し、障害者が地域での生活に移行するのを支援するなどとする浅野知事の「みやぎ知的障害者施設解体宣言」について、二十五日の県議会代表質問で議員から批判が出された。浅野知事は「障害者が、地域で自分らしい生活を安心して送れる社会の実現を目指すものだ」と述べ、理解を求めた。
代表質問で菊地浩氏(自民党・県民会議)が、「不安を訴える関係者の声を無視したパフォーマンスと映る」と述べ、宣言の内容や知事の姿勢を批判した。
これに対し、知事は「関係者の意見を十分聞きながら、知事として責任を持ってその具体化に努めていきたい」と述べた。
◆20040206 精神障害者との共生を考える「メンタルヘルスの集い」 3月6日、東京都内で――読売新聞
精神保健福祉の関係者や一般市民が問題点を話し合う「メンタルヘルスの集い」が三月六日、都内で開かれる。財団法人日本精神衛生会の主催で、精神障害者と共に暮らす地域作りをテーマにした講演や討論が行われる。
精神保健福祉を巡っては現在、国が約七万二千人の社会的入院患者の地域移行に取り組んでいる。集いの背景について、同会常務理事の村田信男・和光クリニック所長は「今こそ、支援する側、される側という発想を超え、みんなが共同作業で、受け皿となる地域を作るべきだ」と説明する。
午前中に行われる討論では、新宿区で精神障害者の総合的な地域支援活動に取り組む「かがやき会」理事長の外口玉子氏、国立精神・神経センター精神保健研究所の竹島正部長、厚生労働省の矢島鉄也・精神保健福祉課長らが発言。現状と課題について意見交換し、望ましい共生の在り方を模索する。
午後の部では、神戸芸術工科大助教授で精神科医の香山リカ氏が「『心を理解する』とはどういうことか?」の演題で講演。この後、日本精神衛生会の秋元波留夫会長が所感を述べる。
入場無料。問い合わせは日本精神衛生会((電)03・3269・6932=ファクス兼用、http://www.jamh.gr.jp)。
◆20040208 [支援費制度の波紋](下)補助金カット(連載)=山梨――読売新聞
◇自治新時代
--県独自の支援体制を--
県内のある知的障害者通所授産施設は昨年十二月、施設長と職員の給与・賞与カットに踏み切った。「制度が変わって半年余りで一千万円収入が減った。前向きにやってきたところほど割に合わない」。施設長は不満をあらわにする。
支援費制度への移行により、施設の収入は、行政から直接入る補助金から、個々の利用者を基本とした支援費に変わった。
従来の措置制度では、民間施設が職員の平均勤続年数に応じて受けられる「民間施設給与等改善費」、基準以上に看護師を配置したときに受けられる「看護師加算」、高齢者を非常勤職員として雇用した場合の「入所者処遇特別加算」など、積極的な取り組みをする施設への様々な加算制度があった。
しかし、支援費制度では、これらの“特典”はなくなった。施設長は「平均以上のサービスに努めていたが、それを支える収入源がなくなった」と語る。支援費制度では、障害者の障害程度区分に応じた単価に従って、サービスへの対価が支払われる。
国も県も「従来の加算分は、単価に盛り込まれている」と説明するが、この施設は「十年間の運営で初の赤字」(施設長)となりそうだ。「加算がうち切られたのは明らかで、この状態が続けば、いずれは利用者にもしわ寄せが出かねない」と施設長は不安を口にする。
その一方で、事務量も増大した。これまで市や県の出先機関にまとめて提出していた請求書は、利用者が在住する各市町村に対して事業別に毎月請求しなければならない。請求書のあて先が二十か所を超える施設もある。県内の施設でつくる県発達障害者支援協会は近く、支払い業務の一本化を県に要望する予定だ。
栃木県ではすでに一本化を実現させた。昨年、独自の電算システムを作り、国民健康保険団体連合会に業務を委託。各事業所は同連合会に一括請求する仕組みになった。
◇
本県では、新年度から五年間の、新障害者プランの策定作業が大詰めだ。しかし、福祉の現場からは失望の声も上がっている。「五年後の施設入所者の地域移行目標は七十五人」など具体的な数値目標を盛り込んだものの、ある策定委員は「予算が付きそうな項目に数値設定しただけ」と厳しい評価。「現場から切実な求めがある、グループホーム運営への県単独の補助制度や障害者の就労支援制度は不十分」と批判する。「福祉先進県」への道は険しい。
(この連載は、宮地美陽子が担当しました)
〈メモ〉支援費制度指定事業者
県の指定を受け障害者に様々なサービスを提供する施設、デイサービスセンターなど。入所・通所施設は県内に四十七か所あり、二千二十七人が利用している。グループホーム(定員四―七人)は三十二か所あるが、運営にあたる社会福祉法人は不足ぎみだ。ホームヘルプサービス(家事などの支援)は介護保険事業所の参入で、提供事業者は増加している。
◆20040227 障害者施設解体宣言「十分な説明を」 仙台市健康福祉局長/宮城――朝日新聞
浅野史郎知事が打ち出した、知的障害者が地域で暮らすための施設「解体」の考えについて、仙台市の山浦正井健康福祉局長は26日、「理念や方向性は理解するが、一律に施設がなくなるのではないかと本人や家族から不安の声があがっている」と現状を報告した。市議会本会議で質問に答えた。
その上で、県に対して「障害者が安心して地域生活に移行できるよう、関係者への趣旨の説明に十分努めてもらいたい」とし、市町村や、施設を運営する社会福祉法人などとも協議するよう県に求めていく考えを明らかにした。
◆20040227 宮城県「知的障害者施設解体」宣言 他県知事ら13首長が支持――読売新聞
障害者の地域生活をテーマにした「アメニティーフォーラムinしが」が、このほど大津市で三日間の日程で開かれた。各地の福祉関係者らで構成される実行委員会の主催で、七回目となる今回は、福祉関係者や障害者ら約千六百人が参加。「就労」「サービス選択」「福祉特区」など様々なテーマで十四のシンポジウムや講演が行われた。
中でも注目を集めたのが首長討論。知事八人を含む首長十四人が参加したこの討論では、冒頭、宮城県の浅野史郎知事が「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発表。民間を含む県内二十八施設で、入所者の地域移行が進むよう県が支援するという内容で、浅野知事は「障害者が施設を出て、普通の生活を送れるよう、県として条件整備をすることに主眼がある」と語った。
これに対して、討論に参加した他の十三人の知事・市町長も、宣言の方向性を支持。片山善博・鳥取県知事は、同県で進められているグループホームへの移行の取り組みを引き合いに出し、「ホームに移ると服装が多彩になる。自分を大切にしていることの表れで、そこからいろいろな面で変わってくる。頑張ってみようという良い連鎖が生まれるようだ」と話した。
討論の最後には、障害者福祉に関する首長「共同アピール」を採択し、介護保険との統合が必要との見解を示した。ただ、「障害者福祉は税財源で賄うのが理想」との意見もあった。
一方、支援費制度をテーマにしたシンポジウムでは、千葉、香川両県の担当課長が、支援費の在宅サービス給付が大幅に伸びていることを紹介。厚生労働省の担当課長も予算獲得の苦労を強調した。
◆20040229 介護保険と一体化探る 障害者福祉に何が必要か――朝日新聞
障害のある人も、ない人と同じように街の中で生きる「ノーマライゼーション」実現のために何が必要か――。障害者福祉の課題を話し合う「アメニティーフォーラムINしが」(同実行委員会など主催、朝日新聞厚生文化事業団など後援)が20日から3日間、大津市で開かれた。8県知事と6市・町長による首長シンポジウムのほか、与野党の国会議員の討論もあり、活発な意見が交わされた。主な議論を紹介する。
●国会議員の討論
◇統合推進を軸に 自民・衛藤氏、民主・山井氏
国会議員や首長のシンポでは、障害者支援費制度の財源不足の問題や、障害者福祉と介護保険の統合問題を軸に意見が交わされた。
衛藤晟一衆院厚生労働委員長(自民) 支援費については厚労省に文句を言いたい。障害者がサービスを選ぶ選択権ができたのは画期的だ。しかし、何もしなければ、財源が破綻(はたん)するのはわかっていたはずだ。老人福祉も入れて見直すべき時が来たのではないか。介護保険の保険料を負担する年齢をいまの40歳から、30歳か25歳ぐらいに下げて障害者もサービスの対象にする必要がある。名前も「共生と自立を支援する保険」としてはどうか。
また、入所施設から地域に帰す場合も、ただグループホームに移ればいいというのではない。介護保険では「介護の社会化」という言葉が安易に使われるが、中身を考える必要がある。お年寄りを含め、いまはあまりに入所施設中心。国は、高齢者を地域や家族から引き離すのでなく、地域福祉や在宅福祉を重視すると言ってきたが、実態は違う。
山井和則衆院議員(民主) 党の方向は決まっていないが、個人としては統合推進の立場。支援費の理念は素晴らしいが、財源の裏付けがない。線路の上を列車が走り始めたが、先に行くと線路がない。市町村でサービスを増やしても財源が明確でない。
税と保険では、税の方が予算の制約を受けやすい。老人病院に多くの寝たきりや痴呆(ちほう)のお年寄りが入院したのは、(医療)保険に金が流れやすい仕組みだったから。統合で予算とサービス量が増え、社会的にも障害者が偏見なく、介助を受けやすくなる。そもそも65歳以上を保険、それ以下は税と、年齢で分ける国はほかにない。
支援費制度はサービスが増える市町村がある一方で、ほとんどない地域もある。統合はサービス増の起爆剤になる。障害のある人が地域で暮らすのをこんなに排除している先進国は日本しかない。統合論は旗色が悪く、財界や当事者の中にも反対がある。だが、ノーマライゼーションを進めるために統合は必要だ。
◇安易な統合は問題 公明・桝屋氏
桝屋敬悟衆院議員(公明) 支援費制度で、(在宅福祉の)ニーズが顕在化し、供給量が増えた。問題は財源だ。介護保険と一緒にして(保険料を負担する)支え手を20歳からに下げ、若年の障害者も対象にするという意見があるが、支援費制度との安易な統合には抵抗がある。
障害者福祉をどうするのかという発想ではなく、支援費制度を税で賄えないから統合だという、(厚労省の)動機は不純だ。国が税で責任をもつという考えを捨ててほしくない。
恐れるのは吸収合併になること。支援費は始まったばかり。若い障害者と高齢者の介護は同じだというが本当か。サービスの中身を検討すべきだ。党として議論していないが、当面は抵抗勢力として問題提起したい。
●14首長のシンポ
◇「税だけ」不安 千葉・我孫子 福嶋市長
熊坂義裕・岩手県宮古市長 福祉のレベルを上げたいと(97年に)市長になったが、なかなか上げられなかった。金がなかったからだ。00年に介護保険が始まった。まさに、福祉の特定財源。サービスが先にあって後から財政がついてくる。福祉充実の追い風になった。
障害者福祉も市町村の責任で底上げしなければならない。何としても財源の保証がほしい。支援費制度の理念は素晴らしいが、補助金が打ち切られる可能性がある。介護保険と一体化しなければ難しい。
福嶋浩彦・千葉県我孫子市長 支援費制度でサービスが大幅に増えた。市の知的障害者の移動介護は02年度で年間1740時間。今年度は4700時間に増える見込みだ。これから税金だけでやれるのか、不安が残る。介護保険と共通にできるところは一緒にし、国民が連帯して支えるシステムが必要。ただ、障害者の自立のためのサービスは介護保険だけではできない。
山田亘宏・滋賀県守山市長 統合していくべきだ。介護だけではなく、生活支援にも重点をおいた中身が必要。子育て保険のようなものも同時に用意できれば、多様なサービスが受けられる。
片山善博・鳥取県知事 介護保険で財源が確保できたのはいいが、本来は税でやるべきだ。支援費制度も社会保険で賄うものではない。財源は消費税率を上げるなど政治が決めないといけないのに国民がアレルギーを起こすから、介護保険(との統合)に話をもっていく。介護保険料を上げるのも住民税に上乗せするのも負担は同じ。福祉に金が回らないのは、政治が病んでいるから。ただ、現実論として介護保険と一緒にすることはあるかもしれない。
◇新システムが必要 愛知・高浜森市長
木村良樹・和歌山県知事 弱肉強食の社会になっていくなかで、支援費制度をどんな形で守ればいいか悩んでいる。介護保険に組み込むと、どんな混乱が起こるのか。元も子もなくしてしまわないよう、冷静に制度組み替えを考えないといけない。
森貞述・愛知県高浜市長 支援費の財源は課題。システムは継続して力を発揮するものだ。一時的では信頼されない。介護保険と一緒にして新システムを考えなければ、財政的に厳しい時代にやっていけない。市は、高齢者のデイサービスセンターを知的障害者と障害児が活用するための構造改革特区を認めてもらった。いまある資源を利用できる手立ても必要だ。
古川康・佐賀県知事 介護保険に障害者福祉を取り込むほうがいい。50歳でアルツハイマーになったら介護保険が利用でき、ダイビングの事故で介護が必要になったら使えない。福祉が細かく分かれすぎている。
郵便局を活用して、そこにコンビニエンスストアや宅老所などを造れないか夢見ている。配送も買い物もできたり、お年寄りも障害者も子どもも24時間ちょっとお世話してもらえたりできないか。片山知事の意見は正論だが、消費税アップ分を福祉に充てても年金や医療に消えてしまうのではないか。
浅野史郎・宮城県知事 消費税といっても、消費税率と障害者の在宅福祉の伸びがどう関連するのか。負担と給付の緊張関係もない。
増田寛也・岩手県知事 支援費の中には精神障害が含まれていない。それを含めたケアを考えることが大事だ。
堂本暁子・千葉県知事 障害者も一緒でいいと思う。ただ、いまの介護保険ではだめ。高齢者のサービスに障害者があわせるのは難しい。むしろ、障害者が利用しているサービスを高齢者が受けられるようにすることが大事だ。
国松善次・滋賀県知事 サービスを充実すれば、費用が増えることは間違いない。介護のお金を(保険料として)みなさんから集める仕組みを、障害者福祉に活用するのでいいのではないか。ただ、高齢者と障害者のサービスは別な部分が多い。
●施設解体を巡り
◇行政宣言に意味 宮城・浅野知事
シンポでは、浅野知事が宮城県内の知的障害者入所施設をすべて「解体」していくことを宣言。これをきっかけに地域生活をどう支援するかについて議論が交わされた。
浅野 地元で心配する声があるが、無理強いはしない。期限もない。住所を施設に移し、そこで死ぬ人生を歩まなくてもいい、と行政が宣言することに意味がある。
西川一誠・福井県知事 施設解体というが、自発的でないと。障害者をサポートするのは人。施設の素晴らしいマンパワーをいかに地域で発揮してもらうかが課題だ。
片山 行政は障害者本人のためにあるはずだが、(サービスの)供給側の論理になっていた。県議が施設を経営していることが多く、施設を造る議論が中心になる。その要請に応じることが行政だと錯覚してしまうこともある。解体宣言には基本的に賛成だが、鳥取県では誤解や不安を与えるので、そこまでは言わない。当事者の意思に沿う形で、在宅やグループホーム中心にしたい。
◇当事者参加がカギ 千葉・堂本知事
福嶋 宣言を知ってうれしかった。だが、地域で暮らすことがいいと思っても、現実には安心できる施設がほしいという声がすごく強い。理念だけを語ってもだめで、障害者が暮らせる地域をつくって初めて理解してもらえる。
逢坂誠二・北海道ニセコ町長 もっと社会全体で福祉の問題を考え、行政が福祉分野に力を注げるようにすることが必要。解体宣言にはそれを促す意味がある。表現は誤解を与えるかもしれないが、地域で当たり前に暮らすという意識を呼び覚ますことが大事だ。
清水聖義・群馬県太田市長 入所施設はショートステイにすれば、地域の福祉と施設が上手に連携できるようになる。
堂本 千葉県の地域福祉支援計画作りでは、最初から当事者に参加してもらった。タウンミーティングを開き、盲導犬を連れた人や車イスの人、精神障害者も大勢来て発言され、議論の波が起きた。そこで出たのが、福祉だけでなく、教育や街づくりが整わない限り、本当のノーマライゼーションは実現しないという「超福祉」の考え方。どこまでも本人の意見を聴く。そのうねりが国の制度を突き動かす。
■みやぎ知的障害者施設解体宣言(要旨)
宮城県内にある知的障害者の入所施設を解体して、知的障害者が地域の中で生活できるための条件を整備することを県の障害者施策の方向とすることを、ここに宣言する。
知的障害を持った人たちの幸福を実現することこそが、障害福祉の仕事の目的だという原点に戻って考えたい。地域の中にこそ普通の生活がある。適切な支援さえあれば、重度の人たちでも地域で生活でき、それが知的障害者の生活を豊かにすることは多くの実践で実証されている。
(県福祉事業団が運営する)船形コロニーの解体宣言から1年余たった今こそ、県全体としてコロニーの宣言の普遍化をなすべき時である。
宣言の背景には、これまでの障害者福祉施策への真剣な反省がある。知的障害者への施策が量的にも質的にも貧しかったころ施策の中心は施設入所だった。「親亡き後」をどう保証し、年老いていく親に安心感を与えるかが大きな関心事であったとも言える。入所が頼りになる施策に思えたのはある意味で当然である。
そういった状況の中で、本人の幸せとは何かが真剣に問われることがないままに障害者福祉の仕事は成り立っていた。
解体することに目的があるのではない。あくまでも普通の生活を送れるような条件整備に主眼がある。それがなされれば解体できるということになる。即刻解体すべしと言おうとしているのではない。時間はかかっても目指すべきは施設解体、まずは地域生活支援施策の充実だ。県内の入所施設でこれを念頭に置いて仕事をするのと全く考えずに過ごすのでは大きな違いが出る。それぞれの施設で解体が可能になるまでにやるべきことは何か、現場の職員を交えて真剣に討議し、行動することが求められる。
--キーワード
<障害者支援費制度> 行政が決めていた福祉サービスを障害者自身が選び、契約できる仕組み。03年4月に始まった。保険料徴収はなく、費用はすべて国と自治体の予算で賄われている。初年度から在宅サービスの利用が大幅に伸び、国の補助金が足りなくなるなど、財源不足が問題になっている。
<介護保険制度の見直し> スタートから5年目にあたる05年度が見直しの時期。04年から議論が本格化した。サービス給付は毎年約10%ずつ増え、財政安定が大きな課題。高齢者の保険料が上がり続けて負担の限界を超えるという危機感から、40歳以上から集めている保険料を、20歳以上や30歳以上に引き下げることが焦点になっている。若い人が障害を負った時にサービスを利用できるようにする一方、障害者支援費の財源不足を解消できるとして、介護保険との統合を急ぐ議論も出ている。
◆20040304 「障害者の地域生活」促進へ 施設の新設、補助せず 厚労省方針――朝日新聞
厚生労働省は身体・知的障害者が地域で暮らす脱施設を進めるため、04年度から入所施設の新設や定員増を伴う増改築に対して原則として国の補助を出さない方針を決めた。近く都道府県に通知する。国は02年12月に「入所施設は真に必要なものに限定する」との方針を打ち出したが、その後も申請が多いことから、より厳しい姿勢で臨む必要があると判断した。
入所施設の建設費は国が2分の1を、都道府県が4分の1を補助している。建設する社会福祉法人や市町村の支出は全体の4分の1ですむため、これまでほとんどの入所施設は補助を受けてきた。国が支援しなくなれば、都道府県が補助を上乗せするのは財政的にも厳しく、新増設は難しくなるとみられる。
厚労省は、地域交流やサービスの拠点になる、施設でないと対応できない重い行動障害がある重度心身障害児がいるなど必要がある場合に限り、例外的に補助を認める。
戦後、障害者福祉は入所施設を中心に進められ、それに伴って施設も増え続けてきた。国は障害がある人も、ない人と同じように地域で暮らすノーマライゼーションを掲げ、02年12月発表の新障害者基本計画(03〜12年度)では入所施設の新増設を抑制する方針を打ち出した。
しかし、自治体や社会福祉法人からの要望は多く、03年度は新設だけで81カ所に85億円を補助した。04年度の申請は例年の半分程度に減ったものの、新設が52件(補助額は1件1億〜3億円)、定員増を伴う増改築が11件出ている。
厚労省は、障害者が地域で生活するための支援態勢を充実させるため、新増設の補助をデイサービスや通所授産施設の整備などに充てるほか、知的障害者や精神障害者が単身でも公営住宅に入居できるようにしたり、グループホームとして利用できたりするよう国土交通省と協議するなど、受け皿作りに力を入れていくとしている。
○支援態勢の充実が必須
《解説》施設に入所している身体・知的障害者は現在32万人。知的障害者では、全体の3割近くが入所者だ。脱施設が障害者福祉の流れとなるなかで、施設入所を望む親はなお多い。
大きな要因は障害者が地域で暮らすための支援態勢作りの遅れだ。国は新障害者基本計画でグループホーム・福祉ホームを03年度から5年間で約1万5千人分増やすなどの目標を掲げたが、「現状を変えるにはほど遠い水準だ」との批判は強い。
障害者が地域で暮らせるようにするためのかぎは、住宅確保や就労まで含めた幅広い支援策の充実だ。障害者支援費では、利用者数で37%を占める在宅サービス予算が17%で、入所施設関係費は65%だ。こうした予算構造を思い切って在宅サービス中心に変え、充実させることが不可欠だ。
◆20040309 浅野知事、「施設解体」来月説明−−知的障害者福祉協総会で /宮城――毎日新聞
知的障害児(者)の支援サービスの現状と課題を語り合う「知的障がい児(者)療育支援セミナー・イン・もがみ」が4日、新庄市の最上広域交流センター「ゆめりあ」で約80人が出席して開かれた。
県最上総合支庁と知的障害児施設「最上学園」の主催。県や市町村の福祉担当者、民間小規模作業所、福祉施設、保護者らが知的障害者支援を取り巻く課題を発表し、意見交換するため行われ、最上地方では初めての開催となった。
セミナーは保護者、民間、施設、教育、行政のそれぞれの立場から発表が行われた。新庄市の障害児の親の会「FMC」代表の武田弥生さんは「障害を持つ親として一番の問題は、安心して子供の将来が約束できる何かを見つけること。この問題の解決がなくては先立つことはできない」と将来への不安を訴えた。
県立新庄養護学校(新庄市金沢)教頭の高久道夫さんは「卒業後の進路、つまり働く機会がなかなかないのが問題」と作業所の充実と維持が課題と指摘した。
また、会場からは子供の歯の治療のために大石田町から上山市に通っている現状を訴え、「身近で治療できる歯科はないか」「宮城県の施設解体計画のようなものが出てきて、子供の将来の生活がイメージできず不安」などの意見が出された。【松沢康】
◆20040311 知的障害者が安心して買い物できるように 「サポーターの店」作り−−大阪の啓発団体――毎日新聞
知的障害のある人が地域で安心して暮らせるように、買い物の手助けなどをする「サポーターの店」を増やす取り組みを、弁護士や障害児の親らで作る研究会「プロテクション・アンド・アドボカシー・大阪」(事務局・大阪市阿倍野区)が始めた。コンビニエンスストアの店員用に、障害のある人への応対の仕方などをイラスト入りで解説した冊子を昨年末作ったところ、全国から1万6000冊を超える注文が殺到し、今も要請が続いている。同会代表で弁護士の辻川圭乃(たまの)さん(大阪弁護士会、写真)に狙いなどを聞いた。
−−「たのんます! 知的障害のある人のサポーターのお店」とタイトルを付けた冊子(A4判、見開き4ページ)が好評です。
--会は2年前から、警察官に知的障害について正しく理解してもらう啓発活動を続けています。詐欺や性犯罪など知的障害者が被害に遭う事件が多いにもかかわらず、障害への無理解から逆に加害者ではないかと疑われたりするケースもあるためです。ただ交番は夜間無人になることもあり、地域の安全ネットワークを広げる意味で、コンビニに着目しました。
知的障害者もコンビニをよく利用しますが、コミュニケーションが苦手であることなどが理解してもらえず、店側とトラブルになることがあります。冊子で事前に応対の仕方を知ってもらい、コンビニで働く人も障害者の身近なサポーターになってもらうことが目的です。
−−冊子のポイントは。
--障害児の親や福祉関係者らに聞き取りをして、コンビニで知的障害のある子らが誤解されやすい四つのケースを例示しました。
「商品を並び替えたりする」「店内を飛び回る」「レジの前でもじもじする」「商品の袋を開けて食べたりする」です。商品の並び方などに強いこだわりを持つのも知的障害の特性で、悪気があって商品を触っているわけではありません。またお金の支払い方が分からない人もいます。いずれの場合も、店員さんは強圧的な態度ではなく、優しい言葉で、ゆっくりと話しかけて下さい。
それでも通じない時は、お金(硬貨と札)の額や、「何が欲しいの?」など質問項目をイラストで示したコミュニケーションボードを使って、応対してください。
−−どんな所から注文が寄せられていますか。
--全国の障害者作業所などから注文が来ます。それぞれの地域でコンビニに渡して活用をお願いされています。また、大阪府内に店舗のある「ファミリーマート」「デイリーヤマザキ」など9社には会から配布し、近鉄百貨店でも利用してもらっています。
−−知的障害者も地域で暮らす流れがやっと日本でも始まりました。
--入所施設をなくそうとする国際的な流れに反して、日本は知的障害者を入所施設に閉じ込める施策を長く続けてきました。施設によっては虐待や金銭搾取など人権侵害が起きていますが、施設の閉鎖性が持つ構造的な問題が考えられます。しかし、宮城県が県内の施設解体を宣言したように、ようやく日本も変わりつつあります。健常な人と同じように住み慣れた場所で生活できるのは当然の権利です。障害者の街での生活を支えるために、今回の「サポーターの店」作りが役立てばと思います。
◇ ◇
冊子は無料だが、送料(1部は120円、50部まで500円)必要。申し込み・問い合わせは大阪知的障害者育成会(06・6771・4390、ファクス6771・4392)。
◆20040307 脱施設いいが、地域を助けて(声) 【大阪】――朝日新聞
福祉施設職員 中野陽介(大阪府富田林市 54歳)
宮城県による知的障害者入所施設「解体」宣言の記事、うれしく読みました。他の県の大規模施設でも、施設「解体」と「地域での生活」への移行の実践が相次いでおり、ノーマライゼーションの実現の度合いが深まっていくと思われます。
今回の宣言では、施設入所者を地域のグループホームへ移行させることに焦点が当たっています。しかし、グループホームは単なる移行先ではありません。障害のある子が20歳、30歳になっても、親ががんばって、入所施設に頼らず、家でみている多くの家族にこそ必要なのです。
ところが、地域で知的障害者のグループホームを計画しても、運営費の助成制度はあるものの、建物の購入や借り入れの際に要る費用に対しては何の援助もない自治体が多いのが実情です。私たちの知的障害者通所授産施設を経営する社会福祉法人は、この1年間に3軒のグループホームを設立しました。建物は賃貸ですが、うち2軒は個室を造る改造費が合わせて800万円ほどかかりました。敷金や保証金とともに、もちろん私どもの負担です。
両親が年老いても、地域で生きていこうとする人たちのために、入所施設の「解体」と同じ比重で制度が充実するよう切に望みます。
◆20040313 テレ朝:ニュースステーションの知的障害者「地域移行」報道に、入所者の父母ら抗議――毎日新聞
◇重度知的障害者施設「のぞみの園」で厚労省方針→地域移行「受け皿不足」と報道
◇父母ら「偏見助長の恐れ」
群馬県高崎市の重度知的障害者施設「のぞみの園(その)」の入所者を段階的に地域へ移す厚生労働省の方針に対し、テレビ朝日系列の報道番組「ニュースステーション」が反対の立場に偏った報道をしたとして、地域で生活する障害者や親などから抗議や再検証を求める声が相次いでいる。【須山勉】
番組は先月24日、「揺れる“終(つい)の棲家(すみか)”……重度知的障害者の『地域移行』」とのタイトルで約13分間放送された。厚労省の検討委員会は昨年8月、08年3月までに入所者約500人の3〜4割を段階的に古里のグループホームなどに移行させる方針を打ち出したが、番組はグループホームなど地域で暮らすための「受け皿」の不足を指摘し、反対する保護者の声を紹介した。入所者がパンフレットを逆さに見るなど、障害の重さを印象づけるような場面も放映した。
検討委は02年8月から1年間議論を重ね、▽のぞみの園の入所者より支援が難しい障害者が地域へ移行している▽のぞみの園には毎年約30億円の上乗せ補助金がつけられ、職員の給与は民間施設に比べ高額だが、入所者サービスの水準は低い▽地域移行を進める際は不安を抱く本人や家族の心情に配慮し、グループホームなど地域生活の基盤整備に取り組む−−などを指摘した。
番組は検討委のこれらの内容には触れず、座長の岡田喜篤・川崎医療福祉大学長が「思い切って冒険してみませんか」と発言した様子を再現。最後に、久米宏キャスターが「のぞみの園に対する税金の支出は無駄遣いと思えない」「今やるのはむちゃだと思います」とコメントした。
これに対し、知的障害者の親ら約30万人で作る社会福祉法人「全日本手をつなぐ育成会」は今月10日、「番組は地域移行が強引に実行される印象を与え、地域での当たり前の生活が否定的に描かれており、知的障害者への偏見を助長しかねない」とテレビ朝日に抗議し、再検証を要請した。
「障害のある人と援助者で作る日本グループホーム学会」など3団体も「もう一度問題を正しく伝えてほしい」と求める要望書などを提出。全国の48障害者団体で作る「DPI日本会議」も協議の場を設けるよう求めている。
同学会の室津滋樹代表は「国が責任を持って受け皿を作らなければならないことは確かだが、受け皿がなければ障害者を入所施設に放っておいていいということにはならない」と話している。
◇意図的な構成−−岡田学長の話
テレビ朝日から取材も連絡も受けていなかった。番組を見て、むなしい思いがした。入所者がのぞみの園から一方的に出されるという趣旨の解説がされていたし、私の発言を部分的に切り取り、意図的な構成になっているように感じた。「重度知的障害を持つ人は一般社会から切り離し、別の社会で生活してもらう」という政策は今日の世界的な認識から見ても明らかな誤りだ。グループホームなど地域生活ができる資源の少なさは誰もが認めている。検討委は入所者を親元に戻そうとしたわけではなく、地域生活ができる条件を整備した上で移行させる方針だったことは、取材をすれば分かったはずだ。
◇真摯に受け止める−−テレビ朝日広報部の話
障害者が地域で自立し、「当たり前の生活」をするノーマライゼーションの理念が世界の潮流であることは理解している。番組は地域移行を否定するものではなく、厚労省の計画が地域の受け入れ態勢が十分整っていない上での、期限を区切った拙速で機械的な措置だと批判したものだ。しかし放送後、知的障害者の福祉にかかわる各団体から「障害者を一生施設に入所させておくことが本人たちの幸福につながるという誤った視点で描かれている」などの指摘を受けた。そうした意図はないが、指摘された点は真摯(しんし)に受け止め、今後の取材に当たっては十分留意し、参考にしたい。
■ことば
◇のぞみの園(旧・国立コロニーのぞみの園)
全国の重度知的障害者が終生生活を送る施設として71年、群馬県高崎市に開設。国が管理する唯一の知的障害者入所施設だが、行政改革の一環として昨年10月に独立行政法人化された。
◆20040313 ニュースステーションの障害者施設報道で抗議相次ぐ 各団体「地域移行に否定的」と――毎日新聞
群馬県高崎市の重度知的障害者施設「のぞみの園(その)」の入所者を段階的に地域へ移す厚生労働省の方針に対し、テレビ朝日系列の報道番組「ニュースステーション」が反対の立場に偏った報道をしたとして、地域で生活する障害者や親などから抗議や再検証を求める声が相次いでいる。
番組は先月24日、「揺れる“終(つい)の棲家(すみか)”……重度知的障害者の『地域移行』」とのタイトルで約13分間放送された。厚労省の検討委員会は昨年8月、08年3月までに入所者約500人の3〜4割を段階的に古里のグループホームなどに移行させる方針を打ち出したが、番組はグループホームなど地域で暮らすための「受け皿」の不足を指摘し、反対する保護者の声を紹介した。
検討委は02年8月から1年間議論を重ね、▽のぞみの園の入所者より支援が難しい障害者が地域へ移行している▽のぞみの園には毎年約30億円の上乗せ補助金がつけられ、職員の給与は民間施設に比べ高額だが、入所者サービスの水準は低い▽地域移行を進める際は不安を抱く本人や家族の心情に配慮し、グループホームなど地域生活の基盤整備に取り組む−−などを指摘した。
番組は検討委のこれらの内容には触れず、座長の岡田喜篤・川崎医療福祉大学長が「思い切って冒険してみませんか」と発言した様子を再現。最後に、久米宏キャスターが「のぞみの園に対する税金の支出は無駄遣いと思えない」「今やるのはむちゃだと思います」とコメントした。
これに対し、知的障害者の親ら約30万人で作る社会福祉法人「全日本手をつなぐ育成会」は今月10日、「番組は地域移行が強引に実行される印象を与え、地域での当たり前の生活が否定的に描かれており、知的障害者への偏見を助長しかねない」とテレビ朝日に抗議し、再検証を要請した。
「障害のある人と援助者で作る日本グループホーム学会」など3団体も「もう一度問題を正しく伝えてほしい」と求める要望書などを提出。全国の48障害者団体で作る「DPI日本会議」も協議の場を設けるよう求めている。同学会の室津滋樹代表は「国が責任を持って受け皿を作らなければならないことは確かだが、受け皿がなければ障害者を入所施設に放っておいていいということにはならない」と話している。 【須山勉】
◇意図的な構成
◇岡田学長の話
テレビ朝日からいっさい取材も連絡も受けていなかった。番組を見て、とてもむなしい思いがした。入所者がのぞみの園から一方的に出されるという趣旨の解説がされていたし、私の発言を部分的に切り取り、意図的な構成になっているように感じた。「重度知的障害を持つ人は一般社会から切り離し、別の社会で生活してもらう」という政策は今日の世界的な認識から見ても明らかな誤りだ。グループホームなど地域生活ができる資源の少なさは誰もが認めている。検討委は入所者を親元に戻そうとしたわけではなく、地域生活ができる条件を整備した上で移行させる方針だったことは、取材をすれば当然分かったはずだ。
◇指摘を真摯に
◇テレビ朝日広報部の話
障害者が地域で自立し、「当たり前の生活」をするノーマライゼーションの理念が世界の潮流であることは理解している。番組は地域移行を否定するものではなく、厚労省の計画が地域の受け入れ態勢が十分整っていない上での、期限を区切った拙速で機械的な措置だと批判したものだ。しかし放送後、知的障害者の福祉にかかわる各団体から「障害者を一生施設に入所させておくことが本人たちの幸福につながるという誤った視点で描かれている」などの指摘を受けた。そうした意図はないが、指摘された点は真摯(しんし)に受け止め、今後の取材に当たっては十分留意し、参考にしたい。
◆040314 障害者家族らテレビ朝日に抗議 のぞみの園「地域移行」巡る報道で――朝日新聞
重度知的障害者施設「のぞみの園」(群馬県高崎市)の入所者が段階的に地域での生活に移るよう促した厚生労働省の提言について、テレビ朝日系「ニュースステーション」が偏見を助長しかねない報道をしたとして、知的障害者の家族らでつくる社会福祉法人「全日本手をつなぐ育成会」(会員約30万人)が同局に抗議をしていることが13日、分かった。
番組は2月24日に放送された。厚労省の検討委員会が昨年、「のぞみの園」の入所者約500人の3〜4割が07年度までに地域のグループホームなどで暮らせるよう提言したことについて、受け入れ先が十分に確保されていない現状を指摘。入所者の家族の不安や提言に反対する声を紹介した。
これに対し同団体は、「障害者が地域で当たり前に生活すること自体が、否定的に描かれている」などと抗議、偏見を助長しかねないとして再検証を求めた。
<テレビ朝日広報部の話> 報道の趣旨は、地域の支援体制が不十分な中で、政府の方針が拙速だと問題提起することだった。しかし、抗議を受けた点は真摯(しんし)に受け止め、今後の参考として注意したい。
<厚労省検討委座長の岡田喜篤・川崎医療福祉大学長の話> 重度知的障害者を集めて一般社会とは別の社会をつくり、生涯を送らせるのが当たり前という国の施策は、現在では人権を無視した明らかな誤りになっている。提言は「誤り」を転換しようというものだ。「本人と親の意向を無視しない」と親の方々とも約束している。
◆20040314 知的障害者施設報道 父母ら、テレビ朝日系「Nステ」に抗議――読売新聞
テレビ朝日系の報道番組「ニュースステーション」で、群馬県高崎市の重度知的障害者施設「のぞみの園」の入所者を地域へ移す厚生労働省の方針に批判的な立場で報道したことに対し、知的障害者の親らで作る社会福祉法人「全日本手をつなぐ育成会」が十三日までに、「地域での生活を否定的にとらえ、知的障害者への偏見を助長しかねない」と抗議した。
この報道は先月二十四日に放送。厚労省が二〇〇八年三月までに、同園の入所者約五百人の三―四割を段階的に地域のグループホームなどに移行する方針を打ち出したことに対し、受け皿不足を指摘、反対する保護者の声を紹介して、「今やるのは拙速」と論評した。
これに対し、同育成会は、「番組は地域移行が強引に進められている印象を与え、地域での当たり前の生活を否定的に描いていた。知的障害者への偏見を助長しかねない」と抗議。同局に再検討を要請した。
テレビ朝日広報部は「番組は地域移行には、基盤整備が必要だということを訴えたもので、地域移行を否定する意図はなかった。ただ、指摘された点は真摯(しんし)に受け止め、今後の取材に当たっては、留意したい」としている。
◆20040316 [深層リポート]障害者の地域移行 “施設優遇”にメスを――読売新聞
「入所施設なら一か月約六十万円で済むが、地域に出たら、もっとお金がかかる。その手当てができるのか」。先月、大津市で開かれた「アメニティーフォーラム」で、身体障害を持つ男性が、こう発言した。
近年、障害者の地域移行が叫ばれている。フォーラムでも、宮城県の浅野史郎知事が、県内の知的障害者施設入所者をグループホームなどに移す「施設解体」の方針を打ち出した。だが、こうした取り組みは一部の先進的な自治体にとどまる一方で、冒頭のような不安の声が目立つ。
この男性のように、身体障害者の中にも、地域で暮らしたいと望む人は多い。在宅で暮らす方が金がかかるのかどうかは、必要な支援が人によって異なるので、一概には言えない。だが、重い脳性マヒなど全身に障害がある人の場合、年間千二百万円以上になるケースもある。
障害者の自立を支えるため、今年度始まったばかりの「支援費制度」では、すでに在宅サービス費の不足が明らかになった。施設サービスの費用は、必要なら国が補正予算を組んででも確保しなければならないのに、在宅サービス費用は予算の範囲内で支出すればよい。財源不足への不安や、偏った予算の仕組みへの批判が相次ぐのも、もっともだ。
福祉工場などを運営する社会福祉法人「C・ネットふくい」の松永正昭専務理事は、施設利用者の食費や住居費の問題を指摘した。在宅で暮らす人は全額自己負担だが、施設利用者は支援費から支給される。食費の総計は、全国で年間約四百億円に上るという。
障害基礎年金の問題も、松永専務理事は指摘した。施設利用者は、生活に必要な費用が支援費から出ているのに、年金も受給している。その多くは貯金に回り、全国で推計約六千億円。“施設優遇”との批判は免れまい。
厚生労働省は今後、入所施設の新設・増設への補助金を、原則認めない方針を決めた。新設は、「真に必要なものに限る」と明記した新障害者プランの理念を実行に移すためだ。
解体宣言について、浅野知事は「百年かかるかもしれないが、県としての方向性を示す意味がある」と語った。もちろん、百年もかかるようなことがあってはならない。国は、もう一歩踏み込んで、既存施設への優遇の仕組みにメスを入れてほしい。
(安田武晴)
◆20040318 田島良昭氏、理事長に復帰 「脱施設化」を推進−−県福祉事業団 */宮城――毎日新聞
知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)などを運営する県福祉事業団の理事長に、田島良昭氏が復帰することになった。22日の理事会で互選される見通しで、昨年3月の退任以来、県の福祉事業の表舞台に再び登場することになる。
丹野諒二・現理事長が今月18日、事業団の評議員会で辞意を表明、後任理事に田島氏を選出した後、理事会で就任を決めるという手順になる。
田島氏は99年3月から4年間、事業団理事長を務め、02年11月には船形コロニーの「解体」方針を示すなど、大胆な脱施設化路線を敷いた。浅野史郎知事との親交が深いことでも知られ、知事は昨年、2回にわたり県議会が田島氏を副知事に据える人事案を否決した後も、同氏を何らかのポストで起用する考えを示していた。
田島氏の理事長就任について、事業団評議員の一人は「実績もあり手腕は信頼できるが、政治的な意図を持って受け取られかねず、不安でもある」と話している。丹野氏は元副知事で、事業団と県社会福祉協議会の統合に道筋をつけたことを区切りに退任することになった。【鈴木英生】
◆20040320 [ニュース展望]障害者福祉 国は「不平等」解消に努めよ=社会部・須山勉
――毎日新聞
「ぼくは国民の一人として、のぞみの園に対する税金の支出は無駄遣いと思えないんですけれども」
テレビ朝日の「ニュースステーション」の久米宏キャスターが先月24日、国が管理する唯一の重度知的障害者入所施設「のぞみの園」(旧国立コロニー、群馬県高崎市)についてコメントしたことに、障害者団体から「障害者の地域移行の否定につながりかねない」と抗議が相次いだ。背景には、日本の障害者福祉の「不平等」がある。
国は旧国立コロニーに対し、民間の同種施設と同じ措置費(約16億円)に加え、毎年約30億円の補助金を出してきた。運営主体となっていた特殊法人の理事長は旧厚生省OBが歴代天下りし、年収は1500万円を超えていた。職員1人当たりの人件費も年平均1000万円を超え、民間施設の倍に達していた。しかし、入所者の入浴は原則週3回の日中に限るなど、サービス水準は低かった。
これと対極にあるのが、全国6000カ所以上に設置されている小規模作業所だ。養護学校を卒業後も就労できず、日中通う場のない障害者のため、親や支援者が民間の住宅などを借り、手弁当で運営してきた。国の補助金は1カ所当たり年間わずか110万円。来年度はさらに1割削減される見通しだ。職員の月給は、30代で手取り10万円台前半というところが珍しくない。
また、地域のグループホームで生活する障害者の中には、月数万円の家賃負担に苦労している人も多いが、入所施設の障害者は無収入なのに年金が数百万円たまっている例もある。「入所施設に手厚く、地域で生きる障害者に薄情な予算配分」−−これこそ「不平等」の最たるものだ。
障害者の地域生活を支えるための支援費の配分にも議論が起きている。居宅支援で年間2000万円以上の支給を受けている身体障害者がいる一方、支援費をまったく利用していない(できない)障害者も多数存在する。大津市で障害者の就労問題に取り組む白杉滋朗さんは「通所施設への支援費も、利用者を就労させた実績などで傾斜配分すべきだ」と訴える。
地域や障害種別による「不平等」も存在する。厚生労働省が昨年4月の支援費ホームヘルプサービスの提供状況を都道府県別に調べたところ、1人当たりの月平均利用時間は最低が石川県の8・6時間、最高が東京都の40・8時間。精神障害者は支援費制度の対象にさえなっておらず、精神病院に入院する必要がない約7万人が「社会的入院」を余儀なくされている。
03年4月に始まった支援費制度は、スタート1年目でホームヘルプサービスなどの利用が予想以上に伸び、同省は100億円以上の予算不足に陥った。需要の掘り起こしにつながったことは評価されているが、政府の三位一体改革の方針の下では、障害者福祉を支援費制度(税財源)でまかなうのは限界、との見方が強まっている。
このため、障害者福祉を介護保険に統合する構想が浮上し、同省は「6月には方向性を決めたい」と表明。まだ制度の青写真すら示されていないが、関係者の間に賛否両論が噴出している。
三重県上野市で通所授産施設を運営し、障害者を支援する奥西利江さんは「都心部の人がワイワイ言っているだけで、地方は蚊帳の外だ。時代をリードする人たちのパフォーマンスをうのみにせず、あるべき姿をきちんと考えたい」と話す。安定した財源が得られても、現在の「不平等」を解消しない限り、全国の障害者が地域の中で人間らしく暮らせる社会は実現しないだろう。
◆20040321 脱施設、動きじわり 知的障害者、地域で生活へ /千葉 ――朝日新聞
知的障害者が入所施設を中心に暮らすのではなく、地域社会で周囲の助けを得ながら暮らす「ノーマライゼーション」実現への動きが進んでいる。宮城県は、施設入所者の生活の場を施設からグループホームなど地域社会へと移行を促す入所施設の「解体宣言」をし、県も障害者の生活の場を広げる計画作りを進めている。保護者らは、こうした動きへの期待と、十分な行政支援が受けられるかという不安を持って、改革の行方を見守っている。(吉田啓)
□通過型入所
畑地と住宅に囲まれた松戸市六実。この一角で、知的障害者入所施設「まつぼっくり」(早坂裕実子施設長)が4月から運営を始める。オレンジ色や緑色で彩られた施設は、50人の入所者と6人のショートステイ利用者を受け入れる。
最大の特徴は、数十年にも及ぶ長期入所ではなく、何年か後にはグループホームなどに移住することを視野に入れた「通過型入所」をうたっている点だ。
グループホームなどでの少人数の生活に近づけようと、居室のほとんどは個室にし、10人ごとの小グループごとに風呂や台所、食堂の共有空間を設けた。
同施設に入所を予定している重度の知的障害がある長女(38)を、自宅介助している母親(65)は、「この施設だから、任せられる」と話す。
言葉を理解するのも難しかった長女が、カラオケにあわせて高い声で発声するなど、成長を見守る日々は喜びだという。一方で、食事や入浴、着替えなど生活全般での補助も必要。
母親自身も腎臓やひざを患い、「頑張れるところまで頑張りたいが、あと何年、一緒に暮らすことが出来るのか」とも考える。
□選択肢多様
できれば地域の中で暮らして欲しい。だが、いきなりグループホームなどで生活できるのかも不安――。母親の思いと、「施設入所で十分な介助をしながら、障害者本人の意思と適性を見て地域での暮らしに移っていく。施設を出た後も支援を続け、必要なときは施設を再利用してもらう」という同施設の理念が一致したという。
早坂施設長は「数十年も入所施設で暮らしてきた人や、ずっと自宅介助を受けてきた人が、いきなり地域社会で暮らすといっても、まだ社会に十分な受け皿が整っていない」と指摘する。この施設を通じ「知的障害者が暮らし方に多様な選択肢を持てるようにしたい」と話す。
県も「誰もが、その人らしく、地域で暮らせる地域福祉の実現」を目指して、受け皿づくりを進めている。
策定中の障害者計画では、グループホームのための借家利用や、中古住宅の購入への援助、ホームヘルパーの養成推進などが考えられている。
□財源どこに
こうした動きを歓迎しながら、不安を訴える声もある。03年4月に国が始めた障害者自身がホームヘルプなど受けるサービスを選択する支援費制度では、約100億円の財源不足が生じた。
知的障害の子どもがいる母親の一人は「今後も財政難が続き、収入の乏しい障害者にも自己負担が求められるのではないか」と懸念する。「入所施設では衣食住は保障されるが、グループホームでは、障害年金しか収入がないと生活が苦しくなるのでは」と訴える保護者もいる。
県障害福祉課の竹林悟史課長は「(財源確保は)クリアしていかなければいけない問題」としたうえで、「現場の人たちと意思疎通をはかりながら、障害者自身が望めば地域で生活できる制度をつくっていきたい」と話した。
◆20040323 田島良昭理事長を選出−−県福祉事業団 /宮城――毎日新聞
知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)などを運営する県福祉事業団は22日、理事の打ち合わせ会を開き、全員一致で新理事長に田島良昭氏を選出した。任期は来年4月11日まで。
田島氏は99年3月から03年3月まで理事長を務め、02年11月には船形コロニーを「10年までに解体する」との方針を打ち出している。同氏は新理事長に選出された後、記者団に「施設解体の動きは宮城から全国に広がった」と事業団運営に自信を示し、「介護保険と障害者支援費制度の統合も現場から国に働きかけたい」などと抱負を語った。【鈴木英生】
◆20040324 知事リレー講座 日程とテーマ(社告)――読売新聞
◇(敬称略)
▽四月六日=梶原拓(岐阜)「21世紀市民政治革命」▽同月十三日=国松善次(滋賀)「宇宙船びわこ号の挑戦―自然と人間が共に輝くモデルづくり―」▽同月二十日=平山征夫(新潟)「『新潟方式』の地域づくり」▽同月二十七日=浅野史郎(宮城)「みやぎ知的障害者施設解体宣言」▽五月十一日=石井正弘(岡山)「一極集中からの脱却〜三海州立国論〜」▽同月十八日=調整中▽同月二十五日=高橋和雄(山形)「人づくり、ものづくり、山形の未来づくり」▽六月一日=調整中▽同月八日=古川康(佐賀)「反東京的道州制論」▽同月十五日=稲嶺恵一(沖縄)「沖縄が世界の架け橋となるために」▽同月二十二日=調整中▽同月二十九日=特別参加、野中広務・元自治相(未定)▽七月六日=片山善博(鳥取)「地方が抱えている問題と課題。その解決策」▽同月十三日=井戸敏三(兵庫)「家庭と地域の再構築をめざす兵庫の取り組み」▽同月二十日=太田房江(大阪)「大阪再生パワーアップ」
◆20040402 [論点]知的障害者 普通の幸せ「脱施設」化で 山田優(寄稿)――読売新聞
二月、宮城県の浅野史郎知事が、県内の知的障害者施設をすべて解体した上、障害者の地域生活への移行、すなわちグループホームへの居住を進める方針を明らかにした。一昨年、知的障害者五百人が暮らす「船形コロニー」の解体宣言に続く英断だ。
知的障害者の施設とはどんなものか。八畳間に大人が四人も暮らし、食事の時間や量が一律に決められる集団生活が延々と続く。人生を楽しむなどという状況ではない。
長野県も「共生社会(コモンズ)」の考え方を掲げ、昨年、障害福祉課に自律支援室を設けた。私が勤務する知的障害者コロニー「西駒郷」では、改築検討を機に、入所施設から地域生活支援施設への再生を進めている。
西駒郷には四百数十人が暮らすが、自ら希望して入所した人は少ない。家族や行政が、本人の抱える課題や周囲の無理解、不十分な福祉環境がもたらす問題を解決しようと入所させたのである。
西駒郷再生の「基本構想」案は、二〇〇七年度までに二百五十人が地域生活に移行し、これにより入所者が半減することを目指す。脱施設方針を決めた根拠は入所者、家族への聞き取り調査である。入所者の57%がグループホームや自宅での生活を希望した。
残る四割も施設を最良と考えているわけではない。長く「指導」され続けた負い目と呪縛(じゅばく)から、「出たい」と声を出すことすらためらいがちなのである。それは職員の責任でもある。これまで待たせたことをわび、過ぎ去った時間を少しでも埋め合わせるため全力を尽くすこと、それが、今後の我々の仕事である。
西駒郷の移行事業は現在、ようやく五か所のグループホームに十三名が入居したに過ぎない。四月までに、さらに四か所十三名の移行が決まる見通しだが、課題は多い。
グループホームのすべてが住民に歓迎されるわけではない。そこで、住民向け「説明会」を開き、理解を求めることになる。
だが、考えてみれば奇怪な話である。グループホームは「施設」ではない。利用者が家賃も光熱費も負担し、気の合った仲間や援助者とともに、市民として暮らす住居である。日本では誰がどこに住もうと自由なはずだ。ところが地域によっては、「ヨソ者」を拒もうとする「ムラ社会」が待ち構えている。矛盾を感じながらも、できるだけ快適に住んでほしいという思いから、円滑な受け入れを「お願い」して回ることになる。
地域での暮らしには、誇りを持って働ける場や、豊かでなくても自分らしい週末、そのための具体的なサービスも必要である。移行事業が遅々として見えるのは、こうした環境を整えるのが、複雑で困難な仕事だからである。
西駒郷の動きに呼応するように、長野県内の民間施設も定員を減らし、在宅福祉に取り組む姿勢を見せ始めた。群馬県の唯一の国立コロニー「のぞみの園」も、入所者の三―四割を地域移行する方針だ。ところが、「のぞみの園」の地域移行の動きを批判する報道が二月、テレビ朝日系「ニュースステーション」であった。親の一面的な都合を取り上げ、キャスターのコメントも、知的障害者は「入所し続ける」ことが当然との印象を与えた。
施設で暮らす全国の知的障害者は十二万人。その「普通の市民」としての幸せは、「脱施設」の成否にかかる。それは「共に生きる社会」を求める姿勢で決まるのである。
◇
◇やまだ・まさる 長野県西駒郷自律支援部長 愛知県民間福祉施設職員などを経て現職。56歳
◆20040423 知的障害者施設解体、「宣言」知事が説明−−入所者家族から不安も /宮城――毎日新聞
浅野史郎知事は22日、仙台市内で開かれた知的障害者の施設で作る「県知的障害者福祉協会」(菊池昌三会長)の総会に出席し、知事自ら打ち出した「知的障害者施設解体宣言」について説明した。宣言への理解と協力を求める知事に対し、入所者の家族からは不安の声も出された。
宣言は、県内すべての知的障害者入所施設を解体し、入所者にはグループホームなどに移ってもらうとしている。地域の中で生活する「ノーマライゼーション」を目指すもので、実現すれば全国初の試みとなる。
総会には各施設の施設長ら約100人が参加。知事は「宣言は唐突かもしれないが、施設がどこまで維持できるのか、入所者の人生をどうするのかを真しに考えなければならない」と説明。「一緒の船に乗ってほしい」と協力を求めた。
会場からは「障害者の地域生活を目指す大きなメッセージだ」と評価すの声が上がる一方、「意思疎通の出来ない入所者の意思をどう確認するのか」など疑問も出された。説明後、長女(31)が施設に入所する同市泉区の主婦(57)は「現状のグループホームでは安心して娘を入れさせられない。『一緒の船に乗って』と言うが具体像がないと船に乗れない」と話した。
4月1日現在、県内の入所施設は大和町の「船形コロニー」など、民間を含め28カ所(定員1760人)。県は04年度中にグループホームを31カ所増やし、156カ所用意する予定。【石川貴教】
◆20040502 [しんそう−深層・真相・心想]「西駒郷」の地域生活移行 */長野
――毎日新聞
◇入所者は前向きだが…
◇家族には不安も−−支援体制充実が課題
駒ケ根市の知的障害者の県援護施設「西駒郷」の将来像を示す基本構想がまとまった。入所者が施設から出て出身地などで生活する「地域生活移行」を進め、入所者数を現在の437人(03年7月現在)から10年後には60〜100人程度に縮小する。全国的な大規模施設の運営方針見直しの流れに沿った形だが、一方で「地域生活に溶け込めれば理想だが、地域の側で入所者を受け入れる態勢が整っていない」など、関係者から不安を訴える声も聞かれる。【藤井裕介】
「ノーマライゼーション社会の実現」を目指して策定された西駒郷の将来構想。68年に開設され、老朽化が進んでいる施設の改修は小規模にとどめ、入所者の地域生活支援を図るという。開設時の2倍以上の、約430人いる入所者を、希望に応じて段階的に各地のグループホームなどに移す方針だ。
今年度から5年間で250人の移行を想定し、10年後の入所者は60〜100人とする予定。現在いる入所者の地域生活移行を推進するため、就労確保などは県が支援。グループホームを新たに整備する社会福祉法人などには、施設整備費の3分の2を県が補助することになる。県障害者自律支援室の大池ひろ子室長は「知的障害者の施設整備に、国の補助はない。長野県の補助率は全国でも最も手厚い」と話す。
◇ ◇ ◇
「グループホームに行きたい」「家族は反対しているけど、自分はグループホームに行きたい。一緒に説得してほしい」
4月27日、西駒郷の訓練棟で、入所者約130人を集めて地域生活移行についての説明会が開かれ、入所者からは前向きな意見が多く出された。県が昨年7月に行った調査でも、入所者の半数以上の242人が地域生活移行を希望。また家族160人もグループホームへの移行に賛意を示した。
一方、県知的障害者育成会の竹内一夫会長は「重度の障害者の場合はホームヘルパーを付けるなど家族の負担が増えることも考えられる」と懸念する。基本構想の素案が示された昨年末の意見聴取でも、保護者からは「構想は理想的だが、障害が重い者がグループホームで暮らせるか」との意見が多数寄せられた。基本構想では、現在県内に2カ所しかない重度障害者のグループホームも、県の支援などで07年には17カ所に増えると見込んでいるが、竹内会長は「基本構想の描く支援体制が確実にならないと家族の不安は消えない」と危惧(きぐ)する。
民間でのグループホーム運営活動が長く、その経験から昨年4月、西駒郷のスタッフに参加した山田優・自律支援部長は「重度障害を持つ入所者の家族が反対するのは仕方ない」と説明する。ただ、それだけではない。「(入所者は)施設の中より外に出たときのほうが良い顔になるんです」とも。
「1泊2日でも地域生活を経験させ、家族にもその顔を見てもらい、少しずつ地域生活移行への理解を深めていきたい」と山田部長。実践によって家族の不安を解消し、安心して地域生活に移行できる道を探っている。
◆20040423 浅野知事が入所施設「解体宣言」説明 知的障害者らの保護者に=宮城――読売新聞
県内の知的障害者入所施設を「解体」する方針を示している浅野知事は二十二日、「県知的障害者福祉協会」(菊池昌三会長)の総会で講演し、施設関係者や知的障害者の保護者らに「みやぎ知的障害者施設解体宣言」の内容を説明した。
二月の「解体宣言」以来、知事にとってこの日は、施設関係者らに直接語りかける初めての機会。宣言文を一行ずつなぞりながら、意図を解説した。
知事は「すぐではなく、百年かけてやる」「障害者本人、親、施設にも決して無理強いはしない」と繰り返し、「知的障害者が地域生活を送るための条件整備を、県の福祉政策の方向性として明確にした」と強調。「知的障害者の幸せを願う気持ちでは皆さんに負けない」と理解を求めた。
講演後には、「解体宣言」に関する質疑応答も行われ、会場から質問や要望が相次いだ。
娘が入所施設で生活しているという女性は「こういう地域でなら娘を暮らさせてやりたいと思えるような基盤造りをして欲しい」と要望した。
また、二人の知的障害者を抱えるという別の女性は「意思疎通のできない重度障害の子供たちの意思は、どう確認すればよいのか」と疑問を投げかけた。
これに対して知事は、「そうした“声なき声”をくみ取るための選択肢を作ることが宣言の目的。これから一緒に考えていきましょう」と呼びかけた。
◆20040428 全国知事リレー講座 浅野知事、教壇で熱弁 知的障害者の問題言及=宮城――読売新聞
全国の知事が地方行政の課題などを語る「第二期全国知事リレー講座」(立命館大、読売新聞社主催、総務省、文部科学省、全国知事会後援、大学コンソーシアム京都、ぎょうせい協賛)の第四回講座が二十七日、京都市の立命館大で開かれ、浅野知事が教壇に立った。約七百人の学生を前に「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を紹介した。
浅野知事は、人間の社会生活を海水浴にたとえ、「知的障害者はひとりで泳ぐとおぼれてしまうから、海の家(入所施設)を建てて閉じこめてきたのが、これまでのやり方」と説明。入所施設が知的障害者と社会とを隔絶させてきたと問題点を指摘した。
その上で「知的障害者の人生を周りの人間が決めてしまう時代は終わりにしなければならない」と訴えた。
福祉分野に興味を持つ産業社会学部三年の松本美喜さん(20)は他学部ながら講座に飛び入り参加した。松本さんは「ずばずばと率直にものを言う姿勢に共感した。施設を出た障害者の地域生活をどう支援していくかなど突っ込んだ質問もしてみたかった」と話していた。
最前列で講演を聞いた仙台市宮城野区出身の法学部二年生、相沢浩和さん(19)は「『解体宣言』にかける浅野知事の熱意が伝わると同時に、他人に何を言われても、自分の信じた方向へ向かうことの重要性を教えられた」と興奮気味だった。
--講演の要旨--
「親なき後の安心できる場」としての入所施設は、知的障害者の訓練施設というよりは、住まいとしての機能を持ってきた。長い人では三十年以上も施設で生活している。プライバシーのない大部屋で共同生活を強いられるだけでなく、地域生活との隔絶や自立意欲の阻害といった悪影響もある。
知的障害者を抱える親たちにとって、三十年前には入所施設しかなかったのも事実だ。しかし、今はグループホームなどの様々な選択肢がある。「あなたは何を望むのか」という問いかけを、障害者本人にすることのできる状況が生まれつつある。
「解体宣言」というと冷たい印象がつきまとうが、何もすべての施設をぶっ壊そうというのではない。障害者本人や家族に無理強いもしない。知的障害者たちに、ノーマライゼーションという言葉の根底にある「普通の生活」を保証し、そのための条件整備を進めていこうというものだ。県の方針として継続性を持たせるために、多少、インパクトは強くても「解体宣言」として明確に言語化する必要があった。
知的障害者が地域生活に移行するためには、一方で、地域住民にも意識改革が求められる。知的障害者にいらぬ恐怖や不信感を抱く人たちが大勢いるのが今の現実とも言える。ただ、それらはすべて、知的障害者とかかわった経験の乏しさからくる無知に基づくものだ。
知的障害者を排斥せず、受け入れることができるかどうかで、思いやりやいたわり合いといった「地域の底力」が試される。逆に言えば、知的障害者を受け入れることで、「地域の底力」も育てることができると信じている。
◆20040504 [支える・きもち]障害者の地域移行に取り組む 根来正博さん43――読売新聞
◇国立重度知的障害者総合施設「のぞみの園」地域移行課長
「単純に“地域社会”か“施設”かではない。施設を全否定するのでなく、地域社会の中にとけ込ませていく。それが私の仕事です」
--「普通の暮らし」実現を援助
一九七一年の設立以来、国立では唯一の重度知的障害者総合施設として、指導的役割を果たしてきた「のぞみの園」(群馬県高崎市)が、昨年十月の独立行政法人化を機に大改革を始めた。入所者が可能な限り地域で暮らせるようにする。その実行部隊のリーダーとして民間から起用された。
「ここは大きな繭玉のようなところ。入所者は、すべてが用意され、終生、安定的に保護される生活に慣れてしまっている。入所者の親たちも、『また自分たちが面倒を見なければならないのか』と疑心暗鬼になっている。絶対にそれはしないと言っても、いまだに不安は強いのが現状です」
目標は、入所者の三―四割を二〇〇七年度末までにグループホームなどに移すこと。根底にあるのは、障害があっても普通に暮らせる「ノーマライゼーション」という考え方だ。だが、受け入れに寛容な地域ばかりではなく、職員の意識改革もこれから。入所者の相談に乗り、移行先の自治体に足を運んで理解を求める毎日だ。
「繭玉の糸を繰る“巻き上げ装置”を作ることが私の仕事。のぞみの園という大きな繭玉の糸を巻き上げて、その糸を織って、地域に必要な受け皿を用意していく。それがグループホームやホームヘルプなどのサービス基盤であり、住民の理解や協力なのです」
障害を持つ人と初めて接したのは、高校二年の夏。障害の有無にかかわらず児童、生徒が交流するキャンプに参加し、同学年の脳性マヒの男性と出会った。
「彼は、『養護学校に行きたくないのに行かされた。社会から閉ざされた中で暮らし、いつも閉そく感がある』と強調していた。それを聞いて、人生が“割り引かれている”という理不尽さを感じました」
大学時代、都内の障害児通園施設でアルバイトをしていた時、先輩から「障害児の一時預かり事業所を作るから」と協力を求められた。親が入院したり、PTAの会合に行ったりする時に子供を預かるもので、先駆的な取り組みだった。
「あのころ、『開いてて良かった』というセブンイレブンのコマーシャルがよく流れていて……。僕らも負けないようにと、二十四時間、三百六十五日、サービスを提供しました」
一九九七年からは、神奈川県藤沢市で、相談や一時預かり、外出支援などをする民間事業所の所長として、障害者の地域生活を支えてきた。
利用者本位という民間での経験から、地域移行に不可欠なのは施設のあり方の転換だと感じている。
「五十代の入所者の中に、家から一歩も出られずにいたという成育歴のある人がいる。のぞみの園ができた時、ここには自由があった。保護された中での自由ですが、入る意味があったのです」
だが、いつの間にか、「障害者は施設へ」という発想に変わっていった。各地で、障害者が望んでもいないのに、本人や家族への社会的な支えの弱さから、施設へ追いやられていった。
「そろそろ今の時代にあった本当の自由とは何か、日本全体で考え、実現する時期に来ているのではないでしょうか」 (安田武晴)
〈障害者の地域移行〉 障害者が、施設での管理された集団生活から、自宅やグループホームでの生活に移ること。欧米では30年以上前から進められているが、日本ではいまだに知的障害者46万人のうち13万人が入所施設で暮らしている。「脱施設」と言ったり、地域移行の完全実現を目指す「施設解体」と表現することもある
◆20040517 小田秀則さん 地域で暮らす障害者の手本になる(新潟人) /新潟――朝日新聞
新潟から上越に帰る重度身障者(48歳)
施設を出て地域で暮らしたい――。そう願っている障害者たちの「手本になる」と、近く住み慣れた新潟市から故郷の上越市へ戻り、地域生活を実践してみせる。
両腕と両足は自由にならないが、補助具でパソコンを操作してホームページ、名刺制作の仕事をこなす。障害者の自立にも役立つと、カウンセリング技術も学んだ。身の回りはヘルパーに頼らなければならないが、借家で一人暮らしを続けてきた自負をひっさげての帰郷だ。
世界的に障害者福祉は「施設から地域へ」が時流だ。国も「脱施設」「障害者が選ぶ福祉」を掲げ、昨年4月から新しい支援制度を始めた。しかし、帰郷を前に交渉してきた上越市からは、希望するサポートが難しいことを告げられ、たらい回しにされ、そのあげく、「土曜と日曜はショートステイを利用して」と提案された。
これでは、障害者は休日でも散歩すら楽しむことができない。「また施設に行けと言うのか」と腹立たしかった。
施設暮らしには嫌な思い出が多かったという。施設に視察があり、「わぁ動いている」「こんな難しい本を読んでいるのね」「あなたたち幸せよね」と言われたことがある。「おれたちは見せ物か」「幸せは他人が決めるものじゃない」と施設長に詰め寄った。
飲酒は不謹慎と言われた。外出も食事が残るからと3日前の届け出制だった。「施設は障害者を管理するところだった」
「私はクーデターが好きです」。障害者の人権を正当に認めさせる「クーデター」を起こすことが役目と考える。6月には県庁に出かけて、「野球場を造るぐらいなら、こっちに金を」と訴える予定だ。
*
56年、旧高田市(現上越市)生まれ。先天性の脳性マヒで重度の身体障害がある。障害が進んだため22歳から18年間、地元の療護施設に入所。97年から新潟市に家を借り、身体介助を受けながら「自立生活」。NPO法人「自立生活センター新潟」の一員。
◆20040520 [さぬき記者日誌]5月20日=香川――読売新聞
先日、のどかな田園地帯にある知的障害者の施設を訪れた。職員や入所者の表情は穏やかで、明るい雰囲気だ。ふと、「ここで、どうやって外の人と交流を持つのだろう」と感じた。
宮城県は「施設解体」を宣言し、障害者が施設だけでなく、地域でも当たり前に暮らせることを目指す。この話を福祉の担当者にすると、「形だけのインフラ整備より、変な気負いをせず、皆で支え合う意識が大切。理想だけれど、一番難しい」と返ってきた。段差解消などに加え、心のバリア(障壁)を取り除き、障害者や高齢者が行き交う優しい街をと思う。(裕)
◆20040526 ガイド/新潟 ■講演会――朝日新聞
《「施設解体」を考える講演&闘論会》 29日午後1時から、新潟市東万代町の市民会館で。障害者福祉のあり方、入所施設の是非を講演「ヨーロッパにおける施設解体と日本の現状」を聞き、パネルディスカッションで議論する。自立生活センター新潟の主催。
◆20040610 介護保険・障害者支援費:障害者ら約700人、統合反対を訴え――毎日新聞
介護保険と障害者支援費制度の統合問題で、障害者ら約700人が9日、東京都千代田区で集会を開き、「支援費で施設から地域に出られた障害者が、統合によるサービス低下で施設に戻らなければならなくなる」と統合反対を訴えた。厚生労働省周辺でデモ行進し、申し入れ書を厚労省に出した。申し入れ書は、障害者基本計画の「脱施設・地域生活移行」の実現に向けて責任を果たすよう求めている。
◆20040622 障害者支援費170億円不足 厚労省が試算、2年続き赤字――朝日新聞
身体・知的障害者を対象にした障害者支援費制度で、04年度の国の在宅サービスの補助金が当初予算で約170億円不足する見通しであることが22日、厚生労働省の試算でわかった。財源のめどはたっておらず、障害者の生活や市町村財政への影響は避けられそうにない。03年度に始まってから2年連続100億円を超える大幅な不足で、制度は早くも存続自体が危ぶまれる状況だ。
不足が見込まれるのはホームヘルパーを派遣したり、グループホームの運営を支援したりする市町村のサービスで、費用は全額税金で賄う。2分の1を国が補助し、都道府県と市町村が4分の1ずつ負担する。
支援費制度で障害者がサービス内容を選べるようになって需要が掘り起こされ、利用が進んでいなかった知的障害者・障害児のサービスなどが急増。厚労省が昨年11月から今年2月までの利用実績をもとに、04年度に必要な補助額を試算したところ、当初予算の約602億円より約170億円多い約770億円となった。
不足見込み額が最も多いのはホームヘルプサービス。当初予算で約342億円計上したが約480億円必要になる見通しで、不足額約140億円は全体の8割を占める。
同省は4月にホームヘルプサービスの報酬単価が引き下げられたことなどで不足額は25億円前後減ると見込んでいるが、残りの約145億円をどう補うか、めどはたっていない。
03年度も当初予算で516億円を計上したが、128億円が不足。省内のほかの予算を流用して約114億円分穴埋めした。障害福祉課は「(2年連続の)流用は極めて困難で、制度上補正予算も難しい」としている。財源が確保されなければ不足分は自治体財政で賄うことになるため、サービス支給を抑える市町村も出かねず、障害者の生活にも影響が出そうだ。
04年度予算で在宅サービスは増額されたが、サービス需要に追いつかない状態。それでも在宅の身体・知的障害者約380万人のうち、制度を利用しているのは1割に満たない。05年度以降も需要はさらに伸びる可能性は高く、制度の
抜本的な見直しが迫られる。
--不十分な需要把握<解説>
障害者支援費の補助金が2年連続で大幅に不足する見通しとなったことについて、厚労省は「予想を超える利用増が原因」と説明する。
しかし、同省は制度導入の際、介護保険のときと異なり、細かいサービスの必要量やニーズに関する実態調査をしていない。潜在的な需要を把握せず、財源確保の見通しをつけないままの見切り発車を懸念する声は導入当初からあったが、具体的な対応策は打たれてこなかった。
国は03年度からの新障害者プランで「障害がある人も、ない人と同じように地域で生きる」という理念を掲げた。支援費制度も、入所施設中心の政策を変えて「脱施設」を進める一環として始まった。
地域での受け皿作りを進めるためにも在宅サービスの充実は重要で、入所施設向けの予算を在宅にシフトすることがかぎだ。だが、約3500億円の支援費予算のうち6割超が入所施設関連に使われ、在宅は20%に満たないという予算配分は04年度でも変わっていない。
現在、精神障害者を含む障害者福祉と介護保険制度の統合が省内で議論されている。一緒になれば財源が確保され、需要増も賄えるというのが大きな理由だ。
しかし、障害者福祉には就労支援など介護保険では対応できない部分もある。統合すれば、すべて解決するわけではない。国が本気で脱施設に取り組む気があるのか。支援費の不足問題は、国にその答えを突きつけている。
(寺崎省子)
◇キーワード
<障害者支援費制度> 障害者が自ら必要なサービスの支給を申請して事業者を選び、契約する仕組み。市町村がサービスの内容や事業者を決めていた措置制度を改め、障害者の希望や選択を重視する目的で03年度に導入された。精神障害などは対象外。
◆20040706 精神保健フォーラム「脱施設化とノーマライゼーションの実現」 東京・銀座で――読売新聞
24、25日、東京・銀座のヤマハホール。精神医療従事者団体懇談会主催。知的障害者入所施設の全廃を打ち出した浅野史郎・宮城県知事の講演と、「医療観察法の施行と精神障害者の人権」「脱施設化」「当事者本位のシステム」などのシンポ。6000円。事務局((電)03・3667・8661、日本精神科看護技術協会内)。
◆2004707 [届け県民の声]04参院選/4 障害者福祉 進まない「自立」への施策 /山梨――毎日新聞
甲府市羽黒町の身体障害者施設「あずま太陽の家」=井出たけ子所長(75)。現在、約30人が軽作業をしたり入浴などのデイサービスを受けるため通所で利用している。
参院選の公示日翌日の6月25日。1階の作業場で、利用者たちがシカの皮を使った印鑑ケース「甲州印伝」の加工作業に励んでいた。「障害者の親は、自分たちが亡くなった後も我が子が生きていけるか、いつも不安です」。井出さんが、作業風景を眺めながらつぶやいた。視線の先に車いすの長男文昭さん(52)の姿があった。
文昭さんは生後3カ月で肺炎による高熱に侵され、脳性まひとなった。井出さんと夫章三さん(80)は、回復を願っていくつもの病院を訪ねたが、文昭さんの右手、右足にはまひが残った。
「文昭に普通の子と同じ教育を受けさせたい」。井出さんは、県内の障害者の家族の先頭に立って活動を始めた。肢体不自由児施設「あけぼの学園」(現あけぼの養護学校)への小中学校教諭の配置、県立療護施設「きぼうの家」の設置……。国への陳情では50回以上も上京し、87年には夫婦で「あずま太陽の家」を開設した。現在、文昭さんも施設利用者の一人として軽作業をしている。
■ ■
障害者が暮らしやすい社会にしたいと約50年、井出さんは取り組んできたが、環境整備は不十分だと強く感じている。あずま太陽の家の利用者の平均工賃は、週5日働いて月1万円程度。障害者雇用促進法は一般民間企業(労働者56人以上)に全労働者の1・8%以上の障害者の雇用を義務付けているが、県内342社中、過半数の180社が規定に達していない。
施設入所型から「脱施設」への流れの中で03年4月、障害者支援費制度がスタート。行政がサービスを決めていた措置制度から、本人がサービス内容を選んで契約する制度に変わった。だが、在宅サービスの利用者が予想を大幅に上回り、初年度から100億円以上が不足、早くも制度にほころびが出ている。
「在宅支援を24時間受けないと生活できない重度障害者も大勢いるが、自治体などが負担する支援費は、障害の程度によって月額30万〜80万円。限られた財源では賄いきれない」。増加する支援費を抑えるためにも、井出さんは障害者を地域で支える態勢づくりが不可欠と指摘する。
一般市民の意識変革につながればと、井出さんは今、障害者差別を禁止する法律や条例制定に向け取り組んでいる。参院選では同法の制定をマニフェストに盛り込んだ党もあるが、年金改革などの陰に隠れて論戦の表には出ていない。
「施設暮らしで友だちができず、成人式にも出られないのが今の障害者。そんな姿を変えなければ、死んでも死に切れない」。井出さんの思いを、政治はどう受け止めるのか。【佐々木洋】=つづく
◆20040708 障害者の地域生活整備 差別禁止、県の計画 /千葉――朝日新聞
堂本暁子知事は、障害者差別の禁止や、障害者の権利侵害の救済を柱にした「第3次県障害者計画」を8日、公表する。今年度から5年間の計画で、障害者が地域で暮らせる社会を作るのが大きな狙いだ。計画を策定したトップの決意として、堂本知事が同日投げかける「障害者地域生活づくり宣言」は、今後の全国的な障害者福祉のあり方に影響を与えそうだ。
同計画は障害者の新しい地域福祉の実現を目指して、健康福祉分野だけではなく、雇用や教育などの幅広い分野での施策を盛り込む。「千葉方式」として、03年8月以降、障害者と障害者の家族各5人が入った作業部会を軸に検討を重ねてきた。
堂本知事の「障害者地域生活づくり宣言」は、計画の柱は五つある。
(1)重度・重複障害者や医療ケアが必要な障害者が利用可能なグループホームの創設(2)現在の障害者就業支援キャリアセンターの充実(3)福祉サービス利用や権利侵害の相談を受ける中核地域生活支援センターを10月から、県内14カ所に設置(4)障害者差別を禁ずる条例を全国で初めて制定し、禁止法制定を国に働きかける(5)県内最大の知的障害者の入所施設、県立袖ケ浦福祉センターを改革し、250人の知的障害者のうち100人を今後2年をかけて地域で暮らせるようにする。
堂本知事は朝日新聞の取材に「宮城県のような施設解体ではなく、障害者が暮らせる地域をまずつくりたい。条例はその一部。障害者など当事者をまじえた合意形成プロセスも重要視している。総合的な福祉として目指す『超福祉』を全国に広げたい。絵に描いた餅にしないために、早急にプラン作りをしていく」と答えた。
◆20040915 障害者3施設、国の補助ゼロ 横浜市、1億7千万円支出へ/神奈川――朝日新聞
横浜市が同市栄区と港南区に整備する予定だった障害者入所施設3カ所について、あてにしていた国の補助金1億1300万円が全額カットされたことが明らかになった。市は減額分を急きょ市の一般財源で補うため、14日に開会した市議会9月定例会に補正予算案を提出した。
国の補助金減額は、1〜3月の国庫補助協議基準の見直しで決まった。補助金がゼロとなったのは栄区の身体障害者療護施設と知的障害者入所更生施設、港南区の知的障害者通所・入所更生施設の三つ。総事業費約2億2600万円で、半額を国の補助金で負担し、残る半額を市と設置者が負担する予定だった。
国の補助金がなくなったことから、市の負担は約5600万円から約1億7千万円に増える。
市障害施設課によると、入所施設整備の補助金がゼロになったのは「前代未聞」。
同課は「国の財政悪化が原因。補助金がなければ、施設を造らないか、市費投入かの選択になる。全国の自治体も困っているはずだ」としている。
市によると、国は障害者の地域移行を促進するため「脱施設」が基本方針といい、今後も入所施設への補助を見送る構えをみせているという。
市は脱施設方針に理解を示しつつ、「(障害者が)地域に入っていくための段階的施設として、入所施設は依然必要」とし、今後も施設を整備していくとともに、国に必要性を訴えていく方針だ。
◆20040708 [解説]千葉の障害者差別禁止条例 「地域づくり」へ受け皿――毎日新聞
千葉県が制定する障害者差別禁止条例と「宣言」は、「施設解体」を前面に出し障害者の家族に不安を感じさせるよりも、「地域づくり」で受け皿の整備を進めたい、との堂本暁子知事の強い意向が反映されている。
「ほかのお客様に嫌な思いをさせたくないので」。そう言われてレストランの入店やスイミングクラブの入会を断られた知的障害者は大勢いる。障害者の作業所やグループホームを作ろうとすると、近隣住民から反対運動が起きることも珍しくない。障害者の特性に配慮していないために、交通機関が利用しにくいなどの例もたくさんある。
こうした「差別」は、障害者の地域生活を阻害する大きな原因だ。知的障害者は全国約46万人のうち3割(約12万)が入所施設での生活を余儀なくされ、精神障害者も33万人以上が精神病院の中で暮らす。日本弁護士連合会は01年、「障害者差別禁止法案」を発表しているが、政府の動きは鈍い。欧米の先進諸国ではノーマライゼーションの理念に基づき、入所施設を解体し、障害者の地域での暮らしを保障する流れが定着している。
日本では宮城県の浅野史郎知事が県内すべての知的障害者入所施設の「解体」を表明し、長野県でも大規模施設から地域への障害者の移行が進む。千葉県も最大の知的障害者入所施設「県立袖ケ浦福祉センター」(袖ケ浦市)で、約250人の入所者全員に地域に戻るための「支援プログラム」を作成。今年だけで約20人が施設を出て、生活しているという。
千葉県の条例は、こうした流れを一層進める根拠として期待される。【草野和彦】
◆20040716 浅野・宮城県知事、障害者政策で講演−−来月6日、富山 /北陸――毎日新聞
知的障害者入所施設の「解体」宣言で知られる浅野史郎・宮城県知事の講演会「脱施設の政策と実践」が8月6日午後6時から、富山市新富町のCiC5階いきいきKAN多目的ホールで行われる。資料代500円。
自立生活支援センター富山主催。浅野知事は「施設から地域へ」を打ち出し、障害者が地域での生活に移行するための政策を積極的に打ち出している。手話通訳が必要な場合は今月20日までに同センター富山(076・444・3753)へ。
◆20040916 障害者「脱施設」促す 就労や生活を支援 厚労相、政策見直し方針――朝日新聞
坂口厚生労働相は15日、障害者が地域で生活できるようにするため政策を抜本的に見直し、身体、知的、精神障害者向けの関連法を一体的に改正する方針を明らかにした。生活全般の支援計画を立てるケアマネジメント制度を導入するなど、障害者が入所施設などを出て地域で暮らせるよう支援体制を強化する。05年の通常国会に改正案を提出、09年までの段階的な実施を目指す。
政府は、障害があっても普通の生活を送れるように社会で支えるノーマライゼーションの促進を掲げているが、知的障害者の3割が施設に入所しているなど「脱施設」は進んでいない。
厚労省によると、見直しでは障害者が希望に応じて地域での生活の場を選び、暮らすことを基本とするよう精神保健福祉法や身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などを改正、施設での保護中心の政策を改める。
具体的には、ケアマネジメント制度を設け、専門家が就労からホームヘルパーの派遣など生活全般について障害者一人ひとりの計画を立てる。機能訓練などを行うデイサービスを増やすため、公民館や小学校の空き教室を利用できるようにする。施設にいる場合も、社会とのつながりが持てるよう日中はデイサービスなどに通うようにする。
精神障害者については、市町村が実施主体となってホームヘルプやデイサービス事業などを行えるよう法改正する。
また、就労を支援するため、社会福祉法人に限られている身体・知的障害者向けの通所施設の運営を、精神障害者と同じようにNPO法人などにも認める。
◆20040927 地域で生きる 知的障害者が権利擁護の全国組織を結成 “脱施設”掲げアピール――読売新聞
「自立のためのサービスを」
「わたしたちは障害者である前に人間である」――。障害のある人たちが当たり前に暮らせる社会の構築が進む中、これまで自己決定が難しいと思われていた知的障害のある人たちも積極的に発言し始めた。当事者運動の全国組織「ピープルファースト ジャパン」も結成、このほど大阪で開かれた結成大会では、各地から参加した知的障害者たちが「施設はいらない。地域で生きる」というメッセージを発信した。
「ピープルファースト(まず人間として)」は一九七三年、アメリカ・オレゴン州で開かれた集会で、一人の知的障害者が「障害者ではなくまず人間として扱われたい」と発言したのをきっかけに始まった障害者本人による権利擁護運動。「自分たちのことは自分たちで決めたい」という原則の下で、差別や偏見と闘う運動を続けている。
日本でも、九〇年代になってから大阪をはじめ各地にピープルファーストが作られ、九四年から当事者が主体となって全国大会を開いている。今年は十一月に徳島県で開かれる予定。
全国組織「ピープルファースト ジャパン」は、ピープルファーストの考え方をより広め、障害という困難を抱えていても、施設ではなく地域で当たり前に暮らせる社会を作るための活動をしようと、三年前から結成準備が進められていた。
東大阪市内で開かれた結成大会には、全国から約三百二十人が参加。会の目的として「入所施設をなくす」「自立生活のための地域サービスを増やす」「差別、虐待をなくす」「ピープルファーストを広める」の四点を掲げ、権利を主張する、仲間の相談にのり、人権侵害に抗議するなどの具体的な活動内容を決めた。会場からは「自立できるようにしてほしい」「いじめや、虐待をなくしたい」など発言が相次いだ。
来賓で招かれた厚生労働省の大塚晃・障害福祉専門官も「今、施設にいる人も一刻も早く地域へと思っている」と述べ、運動への理解を示した。
会長に選ばれたピープルファースト東久留米の小田島栄一さん(60)は「みんな地域で暮らすのが当たり前。グループホームでの生活や一人暮らしができるように頑張りたい。当事者の会を親の会に負けない組織にしたい」と決意を述べた。
就労支援が必要
知的障害者の自立支援に詳しい関西学院大学教授の大谷勉さんの話「昨年始まった支援費制度でガイドヘルパーの利用が増え親離れ子離れが進んだ。地域で暮らす人が増えた今、最大の課題は就労の問題。障害のある人と企業をつなぎ、関係を調整する支援の仕組みが必要だ」
◆20040929 サポート マリオン◆障害と人権――朝日新聞
10月2日土曜、午後1時半〜5時半、東京都文京区本郷4丁目の区民センター(春日駅)。宮城県福祉事業団の小野隆一・地域福祉部長が、障害者が地域で暮らすための「施設解体」の取り組みを紹介。旅行のバリアフリー化を進めるJTMバリアフリー研究所の草薙威一郎所長が「観光のユニバーサルデザイン」の題で話す。1000円。懇親会(3000円)も。定員400人。電話かファクス、Eメールで氏名、参加人数を記して申し込む。電話銀座通り法律事務所(03・5568・7601、FAX5568・7607、bengoshinet@mbf.nifty.com)。
◆20040930 英国の精神医療システム 星野仁彦(ストレスクリニック) /福島――朝日新聞
前に日米の精神医療の比較を行い、いずれも問題点が少なくないと述べましたが、今回は先進国といわれる英国の精神医療について紹介します。
英国において精神病院の建設が本格的に始まったのは、18世紀の後半です。それまでは精神障害者に対する世間の偏見は根強く、わが国と同様に患者は自宅で監禁されていました。
1751年、彼らに適切な治療を与えるためにアサイラムと呼ばれる施設がロンドン市内に初めて誕生し、その数は次第に増えていきました。しかし患者は一生涯そこの醸造所や農園などで働いて暮らすことを求められ、社会復帰はできませんでした。
1915年、アサイラムに失望していた精神科医のヘンリー・モーズレーは私財を投じて、患者の自発的な入退院を認め、外来施設を有する施設として精神病院を初めて建設しました。
1959年には英国で精神保健法が制定され、精神医療はこれまでの施設収容から地域社会でのケアへ移行すべし、との開放化政策が打ち出されました。
その結果、英国では56〜95年の間に、15万4000床から4万2000床まで、実に74%の精神病床を削減しました。一方わが国では、脱施設化の動きとは反対に、60〜93年の間に、9万5067床から36万2963床、すなわち380%のベッド数を増加させました。
今や日本の病院数、病床数は世界最大となっています。欧米諸国の精神病院(英国では90%が国営)と異なり、わが国では90%以上が民間の精神病院であるため、諸外国で行われた大胆な施策をとることが難しいのです。
英国の精神医療システムの優れている点はCPAと呼ばれる治療計画に従って精神科医師、地域精神科看護師(CPN)、臨床心理士(CP)、精神科ソーシャルワーカー(PSW)がチームを組んでアプローチを行うことです。
まず患者は急性期の病棟で集中治療(PICU)を数週間受けますが、個室に入って手厚い医療と看護を受けます(日本では患者3対看護師1であるのに対して、英国では1対1)。
退院後、患者は「ホステル」と呼ばれる地域内の住居施設に移り、24時間常駐している担当の看護師やヘルスワーカーから生活指導を受けます。ここで6カ月から1年間の生活訓練を受け、その後アパートなどでの単身生活に移ります。また、退院する時には担当のPSWとCPNが1人ずつ割り当てられ、退院後彼らの訪問指導を受けます。
わが国の地域ケアは、生活訓練施設などの社会復帰施設が貧弱であることに加えて、PSWやCPNのような地域ケアの担い手がいないため、退院後の患者の面倒をすべて家族が抱え込まなければなりません。英国ではCPAに成功して入院患者を74%削減し、平均入院期間も86・4日に短縮させるのに成功しました。ちなみにわが国の平均入院期間は333・3日です。
英国と比べて40年遅れているといわれる日本の問題点は、医療(病院)が福祉、心理、社会復帰などのあらゆる役割を抱え込みすぎていて、分業化とチームアプローチがなされていないことでしょう。
(福島学院大学福祉学部福祉心理学科教授・医学博士 星野仁彦)
◆20041006 福祉のトップセミナーin雲仙 福祉と介護、一体探る=見開き特集――読売新聞
障害者も地域の中に
年齢や障害の有無にかかわらず、だれもが安心して暮らせる共生社会の実現をテーマにした「福祉のトップセミナーin雲仙」(社会福祉法人・南高愛隣会主催、読売新聞社共催)が、九月四、五日、長崎県島原市で開かれた。七人の首長による討論や講演などを通じ、介護保険と障害福祉の関係や、地方分権の意義について意見を交換。今後の福祉政策への提言として「長崎アピール2004」を採択した。
【首長 夢トーク 出席者】
◇岩手県宮古市長 熊坂義裕氏
◇新潟県長岡市長 森民夫氏
◇千葉県我孫子市長 福島浩彦氏
◇山口県柳井市長 河内山哲朗氏
◇滋賀県知事 国松善次氏
◇佐賀県知事 古川康氏
コーディネーター
◇宮城県知事 浅野史郎氏
【福祉と介護】
熊坂 支援費制度と介護保険制度は、一緒にできる部分は一緒にすべきだと思う。障害福祉を税金でまかなうのは、なかなか難しい。市町村が障害福祉に責任を持ち、ボトムアップをしていくには、財源を確保する制度が必要だ。
浅野 介護保険の導入で、国民は、高齢者の問題を「明日は我が身」と感じられるようになった。障害者の問題も、今のままでは人ごとだが、介護保険を適用すれば、自分のこととして考えるようになると思う。
・支援費制度に問題点 福島・我孫子市長
福島 我孫子市では、支援費制度が始まる前から、知的障害者や全身性障害者を支える仕組みを整えてきた。しかし、支援費制度が始まると、一生懸命に準備した自治体は飛躍的にサービスが伸び、財政が破たんしそうになっている。これは制度の欠陥だ。努力した所が報われるためにも、介護保険と支援費制度の財政の共通化が必要だ。
古川 六十五歳未満で、アルツハイマーになった人と、交通事故などで障害を負った人がいるとして、サービスが必要な点は同じだが、原因によって介護保険の対象になったり、ならなかったりするのはおかしい。また、北欧の国の人口規模なら、払った税金が、どのようなサービスに結びつくか見えやすいが、人口が一億二千万人もいる日本では、見えにくい。その点、保険料は理解が得やすい。
・税による財源に限界 国松・滋賀県知事
国松 支援費制度でサービスが顕在化し、金が足りなくなった。まず、財源がきちんと確保されるようにすること。税では限界があり、三位一体改革で地方交付税が減らされるのは、はっきりしている。真剣に仕組みを考えるべきだ。
・共通化へ十分議論を 河内山・柳井市長
河内山 全国市長会で、介護保険と障害福祉の問題について、ホットな議論をしている。半分以上の市長が、一緒にすることに慎重だ。国と地方の信頼関係が失われている部分があり、本当にうまくいくのか、不信感を抱いている市長も多い。しっかり議論して、本当に良い制度にしなければならない。
【共生の実現へ】
浅野 知的障害者は早くから施設に隔離され、学校も養護学校に行く。ほとんどの人が、子や孫に知的障害者が生まれることなど考えない。知的障害者のことは、“人ごと”の最たるものではないかと感じる。
河内山 共生とは、少しずつ我慢し、競争し合って、逃げずに共に生きること。みんな共生が大事だと言いながら、この問題から逃げているのではないか。
国松 滋賀県庁の秘書課では、研修生として知的障害者に働いてもらっている。知事室に入る人はだれでも、その姿を目にする。県庁の玄関にも、知的障害者が運営するコーヒーサロンがある。また、県社会福祉事業団が、近江八幡市の古い商家を借り、障害の有無を区別せず、芸術作品を展示するギャラリーを作った。
・障害者との交流大切 熊坂・宮古市長
熊坂 宮古市の中心市街地のデパートに、障害者の相談窓口を作った。同じフロアに子育て支援センターも入れて交流できるようにした。障害者が隣に当たり前にいるようにすることが大切ではないか。
森 長岡市でも、空いたデパートを丸々借りて、子育て支援センター、国際交流センター、市民サービスセンターなど、あらゆる機能を入れた。そこに障害者プラザも入れて、デイサービスなどを行っている。
・信頼勝ち取る努力を 古川・佐賀県知事
古川 今年、佐賀県庁の職員録作成は、障害者を雇用しているNPOが受注したが、「初めての仕事で慣れていないので、納期を延ばしてほしい」と言われた。私は、「ちゃんと納期までに作ってほしい」と断った。結局、寝ずに仕事をして納期に間に合わせてくれた。社会から必要とされるよう、信頼を勝ち取ることも大切ではないか。
【分権と地域福祉】
古川 特別養護老人ホームをつくる場合、木造の二階建て以上は許されない。国が一律に規制しているためで、自治体や事業者が責任を負うと言っても任せてもらえない。こういう現状を変えなければならない。地方分権の時代は、自己責任の時代。自分でものを考え、いいと思うことはやり、思わないことはやらない、という自由を与えてほしい。
福島 我孫子市では、障害を持つ子は、「保育に欠ける」という要件がなくても、保育園に通える。地域の中で色々な子と一緒に育っていけるようにするためだが、この場合、国から負担金は来ない。こういう自由のきかない負担金は廃止されてよかった。また、市単独の補助金が既得権にならないよう、支出先を三年に一度見直している。補助金は、自分たちの力ではやれないところに出し、自立できるようになればうち切る。こうした発想で、市民と一緒に自立の精神を育てている。
河内山 ある地域で、道路をつくってほしいと言われたので、「重機を貸すから自前でやらないか」と言ったら、1000万円かかるところが100万円で済んだ。自分たちの課題だと思ったら、1000円、1万円を大事に使う。
・水害で地域の力確認 森・長岡市長
森 七月の水害では、地域の底力を感じた。寝たきりの老人がどこにいるか、あそこは独り暮らしだとか、地元の人がよく知っていて、救出の際役立った。避難所では、町内会の人たちが、寝たきりの人の世話をしていた。施設も、小規模なら、利用者同士の人間関係が生かされ、「地域力」が効率よく発揮される。小規模施設を分散配置することが大事ではないか。
福島 我孫子市でも、障害者の地域サービスを支えているのは、大きな法人でなく、二十くらいの小規模で地域密着型の市民事業者で、まさに地域の底力を発揮している。こういう事業者と連携してやっていけるのは、国でも県でもなく、市町村だけだと思う。
・住民が税の監視役に 浅野・宮城県知事
浅野 地域のありようは、納税者が決めるべきだ。三位一体改革は地方財政自立改革。補助金の使い勝手をよくするための改革ではなく、「国から補助金が来ない」という言い訳をできなくすることが本質だ。いったん首長に任された税金が、福祉や教育など様々な行政にどう使われるのか、国ではなく、住民が監視役を果たすべきだ。
■基調講演 塩田幸雄 厚生労働省障害保健福祉部長
・見直し進め「安心」実現
日本には、障害を持つ人が人口の約5%、計約六百五十九万人いる。だれもが障害を持つ可能性があるという観点から、今後の障害保健福祉のあり方を考えなければならない。
まず、障害者が街で普通に暮らすことを支援する「地域生活支援」を推進していく。その主体を、住民に身近な市町村が担うことは、地方分権の流れにも沿うものだ。
体制を整備するにあたり、国の財政支援も明確にしつつ、地域福祉を進めることが必要だが、この場合、介護保険の仕組みの活用についても、国民的議論が必要だと思う。三位一体改革の中で、障害を含む福祉分野の補助負担金の移譲が、地方六団体から提案されていることも考えなければならない。
介護保険との関係については、厚生労働省として、様々な関係者の合意を得て、年末までに方向性を出すことが求められている。この機会に、障害種別や年齢、疾病などにかかわりなく、だれもが安心して暮らせる普遍的な地域福祉を実現したい。
高齢者と共通の介護サービス部分について、介護保険を活用できれば、支援費制度は、障害者固有の厚みのあるサービス部分を担えるようになり、障害福祉の充実・強化につながるだろう。
もちろん、介護保険の議論の結果にかかわらず、厚労省は障害者施策を強力に推進する。六月に閣議決定された「骨太の方針2004」の中に、初めて、障害者の就労支援や地域生活について、法的整備を含め充実強化を図ることが盛り込まれた。その内容をどう実現するかが、今後の課題である。
いずれにせよ、国民の共感を得るよう、障害者の自立支援の観点から、支援費制度をはじめとする障害保健福祉制度を、抜本的に見直す必要がある。
たとえば、ケアマネジメントの制度化、客観的なサービス支給決定基準の作成、低所得者に配慮しながらの利用者負担見直しなどが必要だ。地域に開かれ、支援に役立つよう、施設体系も大幅に改める。通所施設は、社会福祉法人以外の多様な主体が運営できるよう規制を緩和する。
一方、働く意欲と能力を持っている人が、適性に応じて働けるよう就労支援を充実させる。精神保健福祉の分野も、入院医療中心から地域生活中心へ改革を進める。
また、高機能自閉症や注意欠陥・多動性障害など「発達障害者」の支援も求められている。知的障害を必ずしも伴わないので、これまで制度の谷間に置かれていたが、早ければ秋の臨時国会にも、超党派の議員立法が提案されると聞いている。乳幼児期から成人期まで、ライフステージに応じて一貫した支援を行うことを定めた画期的な法律だと思う。
社会保障審議会障害者部会を中心に、各制度改正について議論し、十月中旬にも、「今後の障害保健福祉のグランドデザイン」を公表、来春、通常国会に関連法の改正案を提出したい。
障害福祉に熱心な街は、あらゆる面で輝いている街ではないか。各地で障害福祉への取り組みが広がり、互いに学び、競い合うことで、地域の再生、ひいては日本の再生につながることを期待したい。
◇
■実践報告 田島良昭 南高愛隣会理事長
・介護保険の活用を
南高愛隣会では、このたび、運営する知的障害者入所授産施設「雲仙愛隣牧場」を解体することにした。知的障害者の入所施設は、我が国の福祉の中で大きな役割を果たしてきた。だが、管理された集団生活でなく、地域で普通に暮らすという大きな流れの中、その役割は終わりつつあり、むしろ、終わらせる必要があると考えたからだ。
施設解体の動きは、宮城県で始まった。私が理事長を務める宮城県福祉事業団は二〇〇二年十一月、県立船形コロニーの解体を宣言。今年二月には、浅野史郎・宮城県知事が、県内の施設の解体を宣言した。その後、「施設から地域へ」という議論が、各地で盛んになってきている。
だが、それを実現する仕組みが「支援費制度」では、あまりにも不安定だ。介護保険は施行後、サービス利用が一気に伸びたが、保険という仕組みのおかげで、財源を充当できた。
だが支援費制度は、税で賄われており、財源に限界がある。にもかかわらず、「サービスを選んで使ってください」と言う。利用が爆発した際、財源の手当はどうするのか。この問いに、支援費制度施行前の厚生労働省の担当者は、だれも答えられなかった。
そして、予想した通り、財源不足は初年度百二十八億円、今年度も二百億を超えるといわれている。昨年度は、厚労省の担当者が苦労して手当したが、今年度はどうするのか、現段階で見通しは立っていない。
財政的に破たんするような制度のもとで、地域移行を進めるのは難しい。地域で生活するには、多様な支援サービスが必要となる。質の高い職員を育てるには、身分の安定も不可欠だ。
施設から地域へ多くの人が移り、しかも、より豊かに、より幸せに暮らせるようにしなければならない。そのためにも、介護保険の活用を真剣に考える必要があるのではないか。
来年、介護保険法が改正されるが、このタイミングを逃すと、さらに五年ほど先延ばしになる。支援費制度のままでは、障害福祉は壊滅的な状態に陥ってしまうだろう。
《長崎アピール2004》
◇支援費制度の問題点を、速やかに改善する。
◇介護保険の見直しでは、六十四歳以下の障害者を対象に組み込む。また、障害福祉でも、ケアマネジメントを制度化する。その際、長時間介護を必要とする人については、特別なニーズに対応するため、要介護区分や支給限度額の見直しなど、きめ細かな配慮が必要。
◇「施設解体」については、障害者や家族など当事者の意見や地域特性をふまえ、速やかに進める。地域生活に移るための住まいや活動の場、地域生活に向けたトレーニングの仕組みを整備・拡充する。
◇障害者の就労支援を進めるため、授産施設などの機能を見直す。
◇自宅で家族とともに暮らしている障害者には、家族への支援を強化し、将来、住み慣れた地域で自立生活を送れるよう、トレーニングの仕組みを整備・拡充する。
◇制度の縦割りをやめ、高齢者や障害者などが相乗りできる地域福祉を進める。そのためには、仕組みや基準を標準化、均一化し、利用しやすくする。
〈支援費制度〉昨年度から始まった身体、知的障害者の福祉制度。従来の「措置制度」では、自治体主導で支援サービスの内容を決めていたが、支援費制度では、障害者が自主的に選ぶことができる。サービス支給に伴う財源は、国と自治体の税で賄われている。
〈ケアマネジメント〉利用者に必要なサービスを見きわめ、効果的に提供できるよう調整すること。介護保険では実施が法律に定められているが、障害福祉では、法による位置づけがない。
◆20041009 進む障害者福祉 宮城(知事が変わると:3) /富山――朝日新聞
「知的障害者入所施設を解体して、知的障害者が地域の中で生活できるための条件を整備する」
2月、大津市での障害者福祉シンポジウム。宮城県の浅野史郎知事は1500人の参加者を前に「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発表した。宣言では、施設に住む障害者が地域での生活へ移行できるようにすることが、県の障害福祉の方向であると明確にした。
宣言は県内の施設関係者らに波紋を呼んだが、宣言後、相原芳市・県障害福祉課長は、浅野知事が「知事になってやれたことの中で(宣言が)一番うれしかった」と話すのを聞いた。
「宣言の中身は努力目標なのですが、役人には言えない。知事にしかいえません」。相原課長はそう言い切る。
■□
旧厚生省時代、障害のある人もない人と同様に地域で暮らす「ノーマライゼーション」の施策を進めた浅野知事。その熱意は初当選翌年の94年にすぐ表れた。
9月県議会で、県中央部での保健・医療・福祉中核施設群の建設見直しを表明。83ヘクタールの敷地に大型居住型施設に養護学校など数々の施設を建設する計画で、知事は「ノーマライゼーションの理念と相いれない」と訴えた。計画は縮小を経て、結局、財政難などから03年に中止が決まった。
自ら座長となって94年に発足させた「みやぎの福祉を考える100人委員会」では、障害のある人や福祉の専門家らを県外からも集め、今後の福祉政策を話し合った。
「正規の運賃を払ってもいいから、バリアフリーで使いやすい公共交通がほしい」。「お金持ちの高齢者にも祝い金を出すのは変ではないか」。当時も保健福祉部にいた相原課長は、従来の福祉の常識を破るような委員の発言を覚えている。
「委員会の議論は、職員が持っていた福祉の既成概念を破った。その仕掛け人が知事だった」
仙台市で身障者福祉ホームなどを運営する社会福祉法人ありのまま舎の山田富也常務理事は委員の一人だった。「パフォーマンスの要素は否めないが、現場の声を具体的に聞く姿勢は従来の知事とは違った」と委員会の試みを今も評価する。
■□
県は97年、「みやぎの福祉・夢プラン」を発表。知的障害者を施設から地域での生活に移行できるよう、少人数での共同生活の場となるグループホームの拡充をうたった。
県はグループホームを増やすため、障害者支援費制度が始まる前の95〜02年度の間、独自にホーム運営費の補助金を出していた。浅野知事が就任した93年度、県内には7カ所しかホームがなかったが、95年度から増加傾向が続き、03年度には125カ所(利用者総数518人)に。今年度は156カ所(同657人)に増える見込みだ。
しかし、県内28カ所の知的障害者入所施設の入居者は約1700人。「解体宣言」の実現に向けて、まだ地域の受け皿として現状でも厳しい。「宣言はすばらしい基本理念だが、見切り発車でもあった。5年、10年たたないと宣言の評価は見えない」と山田さん。
福祉先進県日本一を目指す宮城の模索は続く。
――富山の場合 県単事業で拡充へ
富山県でも今年9月に出した「新とやま自立共生プラン」で、障害のある人が住み慣れた地域で暮らすための支援策を盛り込み、住居としてのグループホームの拡充もうたっている。
しかし、県によると1日現在、県内の知的障害者向けグループホームは15カ所(定員65人)しかない。県は設置を促進するため、今年度から県の単独事業で、中古・賃貸住宅を利用したグループホーム設置にも補助金を出す制度を始めた。
同プランでは、グループホームの定員数を08年度末までに120人に増やす数値目標も掲げている。上野和博課長は「事業者にも市町村にもグループホームを増やそうという意識が強くなってきており、地域住民の理解が進めば、増加のスピードはもっと高まる」と話している。(北沢卓也)
◆20041020 県立社会福祉施設のあり方 廃止や民間移譲も 県の素案が明らかに=宮城――読売新聞
県立社会福祉施設の将来的なあり方について、県がまとめた報告書(素案)の概要が十九日、明らかになった。浅野知事が今年二月に発表した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」なども受けた内容で、具体的な施設名を挙げ、廃止や民間移譲などの方向性を示している。県がこうした素案をまとめるのは初めて。県立社会福祉施設は二十六施設あり、関係者に様々な影響を与えそうだ。
素案によると、今後も県立のまま維持すべき施設を〈1〉法的設置義務がある〈2〉民間では採算が合わない〈3〉先駆的で、民間ではノウハウが確立されていない〈4〉民間では困難な広域的支援機能――の四つに分類。これらは原則「県立県営」とし、そのうち民間ノウハウを活用可能な場合は「県立民営」を目指すとしている。
一方、県立のまま維持する必要のない施設については、社会的に存続が望まれる場合は「民間移譲」し、施設自体の必要性が薄れていれば「廃止」を検討するとしている。
さらに、素案では、老人ホーム、障害者施設、児童施設などそれぞれの施設名を挙げ、見直しの必要性の有無や、方向性を明示。知的障害者入所施設「船形コロニー」(大和町)の将来的な廃止など、「解体宣言」の趣旨も反映し、「可能なものから早期に実現を図っていく必要がある」と結論付けている。
県は現在、この素案をもとに、保健福祉部内に設置した「県立社会福祉施設のあり方検討委員会」で検討を続けており、年内にも正式な報告書がまとまる見通し。
〈見直しの方向性が示された主な県立社会福祉施設〉
施設名 種類 将来的なあり方
太白荘(仙台市太白区) 救護施設 民間移譲
敬風園(鹿島台町) 老人福祉施設 民間移譲
拓杏園(仙台市若林区) 身体障害者施設 他施設との統合か、廃止など
不忘園(白石市) 身体障害者施設 民間移譲
船形学園(大和町) 知的障害者施設 廃止
船形コロニー(大和町) 知的障害者施設 入所者の地域移行後、廃止
乳児院(仙台市宮城野区) 児童福祉施設 民立民営施設の開所後、廃止
◆20041023 岡田智子さん 障害者と地域(被災地に生きる人々:205)/兵庫――朝日新聞
精神障害者共同作業所「どりー夢」所長(51歳)
「人にやさしいコミュニティーをつくりたい」。伊丹市昆陽8丁目にある精神障害者の共同作業所「どりー夢」の所長、岡田智子さん(51)は、阪神大震災後、被災者の心のケアに取り組んできた。精神障害者の家族会から請われて3年前に所長になってからは、障害者が地域にとけ込めるような接点づくりに知恵を絞る毎日だ。
震災が起きたのは、主婦業の傍ら、大学院や大学で臨床心理を学んでいた時だった。指導教授らと西宮市内の避難所を回り、その後も神戸市東灘区や灘区、宝塚市の「こころのケアセンター」で、ボランティアや職員として最前線に立った。
避難所や仮設住宅、復興住宅を訪ね歩いた。心的外傷後ストレス障害(PTSD)やアルコール依存症などに悩む人の話を聞いて回った。当時感じたのは悲しいほどの無力感だった。力になりたいと考えながら、無力さ、未熟さを思い知らされ、逆に助けられてばかりだったと振り返る。
00年3月に各地の「こころのケアセンター」が閉鎖された後、「どりー夢」に移った。01年5月、所長になった。つまずきそうになるたびに思い起こしてきたのは震災直後のことだ。「だれかの役に立ちたいと多くの人が動き、人にやさしく接した。震災はつらく悲しい体験だったが、手を取り合って乗り越えてきた。あの時の経験を地域づくりにも役立てることができるはずだ」と言う。
仕事は今も手探りだ。一般向けに年1回、連続講演会やコンサート、カウンセリングのボランティア講座を企画して、精神障害者の病気や置かれている状況への理解を呼びかけてきた。この春から、市の委託を受けて電話相談や就労支援の自立訓練を始めた。今月からは作業所の運営母体を「いたみコミュニティケアセンター」としてNPO法人化した。作業所の運営を安定させ、将来の「脱施設」に備える取り組みだ。
「どりー夢」には毎日、約20人が顔を見せる。袋作りや車の内装関係の軽作業、印刷の仕事、パソコンの練習をしていく。「障害者の自己実現を地道に手伝い、地域にとけ込めるように道筋をつけたい」と語る。精神障害者の相談や就労支援、交流の場となる地域生活支援センターをつくることが、今の夢という。
(永島学)
<震災と精神障害者の作業所> 障害者の家族らでつくる県精神障害者家族会連合会や、県精神保健福祉センターによると、被災した精神障害者の中には、震災直後の避難所で病状が再発、悪化したり、食事の配給といった作業を手伝えずに居づらい思いをしたりしたケースがあった。
精神障害者らが集う小規模作業所も被害を受け、ガスや水道が止まる中、受け皿の問題は震災を機に一層切実さを増した。作業所は神戸市内の12カ所のうち5カ所が全壊し、被害がなかった施設でも再開までに1週間かかったという報告もある。
小規模作業所は、精神保健福祉法に基づく施設でないため、整備や修繕に国からの財政的な支援はなかった。阪神・淡路大震災復興基金で、神戸市や阪神間などに小規模作業所9施設、共同生活を送るグループホーム13施設が新設された。伊丹市の「どりー夢」の前身、「あじさいの家」も同基金が活用された。
◆20041028 障害者福祉考えるシンポ 支援費制度など今後のあり方を議論−−近江八幡 /滋賀――毎日新聞
◇270人参加
支援費制度の導入や“施設解体”論議など、障害者を取り巻く福祉環境の変化や今後のあり方を議論するシンポジウムが24日、近江八幡市鷹飼町の県立男女共同参画センターであった。重症心身障害児(者)の入所施設を運営する「びわこ学園」(野洲市)などが主催し、障害者とその家族、福祉関係者など約270人が参加した。 【平野光芳、田中龍士】
冒頭、厚生労働省障害保健福祉部企画課の大塚晃・障害福祉専門官が、同省が今月12日にまとめた、身体、知的、精神の障害別サービスを一本化する試案などを説明。「支援費制度は在宅サービスを中心に予想以上の利用があり、予算が足りなくなっている」として、障害者の介護保険活用を検討していることを明らかにした。
5人が登壇したパネルディスカッションでは、今後の障害者施設のあり方を議論。第二びわこ学園副園長の小川勝彦医師は「親にはできれば入所施設には入れたくないという思いがあるが、障害者を地域で支える態勢は不十分」と指摘。立命館大学産業社会学部の峰島厚教授は「国は障害者の地域への移行を検討課題に留める一方で、入所施設の打ち切りを先行させようとしている」と話した。また入所者の親からは「施設を“家”にして、外出時にもきちんとサービスが受けられるようにしてもらいたい」といった声も上がった。
シンポジウムに先立って午前中には、関係者ら約120人が野洲市北桜の重症心身障害児施設「第二びわこ学園」地域交流棟会議室に集まり、近畿各府県の養護学校の医療的ケアの現状や課題などを報告し合った。
大阪府立交野養護学校(同府交野市)の荒木敦校医は「看護師が派遣されるようになって、現場職員は何かあれば看護師に頼めばいいというように緊張感がなくなっており、危険な感じがする」と指摘。京都府立向ヶ丘養護学校(同府長岡京市)の松山雅子教諭は、「看護師は普段はドクターから直接指示を受けるので、『依頼された指示書では、十分なケアが出来ない』との指摘があった。きちっとした指示系統と指示内容の確立が必要」と報告した。
また、「ただ派遣されればいいという問題ではなく、看護師自身の技術アップも必要」との意見なども出た。杉本健郎・第二びわこ学園長は「利用者本人のサポートをきちっと図るという本質をはずさない議論をしていきたい」と話した。
◆20041028 [検証・田中県政の4年間](6)地域福祉(連載)=長野――読売新聞
選択肢増やす情報開示を
「新たな日本の福祉を、本県は先駆的に行おうとしている」
県内唯一の大規模な知的障害者施設「西駒郷」(駒ヶ根市)で取り組む地域移行。田中知事は今年三月の県議会で、入所者の生活の場を地域に移す意義を強調してみせた。
宮城県の浅野史郎知事は二月、知的障害者施設の地域移行を意味する「解体」を宣言して注目されたが、実践では本県が先を行くとされる。
県の基本構想は、二〇〇七年度までに数人規模のグループホームを九十六か所設置し、入所者の半数以上の二百五十人を移すもの。今年九月までに十九か所、七十三人の移行を完了し、「先進事例」として全国から視察が相次ぐ。
だが、就労の場や支援態勢、経済的負担など、現実には多くの課題がある。介護する家族が亡くなった後の障害者の支援は、基本構想も「社会全体で支えることが必要」とするだけで、具体策には触れていない。
西駒郷の保護者会の大槻春正会長は「理念は分かるが、将来にわたって大丈夫なのか」と不安を隠せない。
■ □ □
住み慣れた地域の福祉拠点として整備が進む、通所型中心の宅幼老所。規模は十人程度で、家庭的な介護サービスが、利用者から好評を得ている。
県は開設支援として〇二年度から、NPO法人などに家屋の改修費を補助する。中古住宅の場合、上限は500万円。実際は改修に1000万円前後が必要だが、特別養護老人ホームの新築費用と単純比較すれば、設置コストは同規模で十分の一程度だ。対象は〇三年度末で七十三か所に上る。
県コモンズ福祉課は「NPO法人の運営も増え、介護に意欲的な人たちの受け皿にもなっている」と手応えを口にする。今年九月には、共同生活が可能な独居老人や要介護高齢者らも対象に加え、メニューの充実を図る。
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高齢者や身障者の介護慰労金など三つの個人給付事業が、〇三年度までに廃止された。「社会全体で支え合うネットワークを構築する」と強調する知事は、障害者の社会参加を促す方向に施策の転換を図る。
廃止された一つは障害児手当。年額2万円で、昨年度は千八十人が対象だった。重度障害児の社会参加を促す目的で支給され、負担がかさむ家族旅行や生活費の補てんなどに使われていたとみられる。
ある肢体不自由児の保護者は「障害は一人ひとり違う。全員が参加できるメニューは難しい」として、手当廃止を“切り捨て”と受け止める。彼らが心底望んでいる社会参加が、ためらわれるような現実も見落としてはならない。
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福祉サービスの質を高めるため、県による第三者評価システムの構築が進んでいる。利用者への対応など数十項目について、第三者機関が施設などを評価し、県が公表するもので、十二月から高齢者福祉など五分野で試行される。
県は来年四月から本格導入し、対象も拡大する考えだが、関係者は「評価を受ける所がどれくらいあるかは未知数」と漏らす。任意参加のうえ、20―30万円の費用負担を強いるからだ。現状ではクリアすべき課題は少なくない。
だが、システム導入でサービスの中身に関心が高まれば、競争原理が働いてコスト削減につながるだろう。情報開示で選択肢を増やすことが、福祉施策の持続的な展開に大きな役割を果たすに違いない。
〈田中県政の主な福祉施策〉
【障害者総合支援センター】身体、知的、精神の各障害の相談窓口を今年10月から一本化。県内10圏域に設けたセンターで、生活支援ワーカーらが、生活や就業などの相談を受ける
【母子家庭の自立支援】母親の経済的自立を支援するため、資格取得や職業紹介などを実施。03年度は登録者495人のうち209人が就業
【児童虐待防止】虐待の予防、早期発見・対応のため、市町村や関係機関と連携を強化。児童の一時保護や児童相談所による保護者のカウンセリングも実施
【中国帰国者の生活支援】中国残留孤児270人の生活水準向上と福祉増進のため、04年度から月額3万円の支援金を給付
〈メモ〉西駒郷
一九六八年開設。県と県社会福祉事業団が運営する。駒ヶ根市、宮田村にまたがる敷地約十六万平方メートルで知的障害者の更生、授産などを行う。入所者は今年四月現在、四百六人。平均年齢は四十.九歳、平均入所期間は十六.五年。施設老朽化に伴う改築論議を契機に田中知事が見直しを進め、地域での共生を目指すノーマライゼーションの理念に基づく地域移行が進む。〇四年度は関連事業に8億4651万円を計上した。
◆20041030 県社協など3団体統合 全国初 地域福祉の機能向上図る=宮城――読売新聞
二〇〇五年四月一日の統合を目指す県社会福祉協議会と県福祉事業団、宮城いきいき財団は二十九日、浅野知事の立ち会いの下、統合の調印式を行った。統合は県の出資する公社や第三セクターを見直す「公社等外郭団体改革計画」の一環で、統合により四百人を超える職員規模を活用し、地域福祉の機能向上を図るのが狙い。福祉三団体の統合は全国初。
三団体は県社協を統合後の存続団体とする方向で組織・機構を統合する。地域密着の福祉に取り組む県社協と障害者施設の運営ノウハウに富む事業団、福祉事業での高齢者活用を図るいきいき財団の統合で、「施設解体宣言」などに代表される障害者の自立支援、地域生活への移行の取り組みの拡充、効率化を図るという。
◆20041101 障害者と市民ら交流 高崎「のぞみの園」 /群馬――朝日新聞
国立重度知的障害者総合施設「のぞみの園」(高崎市寺尾町)で31日、のぞみふれあいフェスティバルが開かれた。施設見学などの催しで地域の人とふれあい、施設を理解してもらう目的。昨年10月、独立行政法人化されたのを機に始まり、2回目の開催。
訪れた市民らは、のぞみの園の利用者がもてなす「カフェテラスそよかぜ」でお茶を飲んだり、もちつきをしたりして交流した=写真。
入所者は現在、491人。出身地は全国各地にまたがる。現在5人が同園近くの民間アパートを借りて地域生活を体験している。寮のひとつでは、家庭用ふろの設置やこたつ、個室化などで家庭の雰囲気にし、地域で暮らす予行演習をしている。
厚生労働省の検討委員会は昨年、07年度までに同園の入所者の3〜4割を出身地のグループホームなど、地域で暮らせるようにとの最終報告をまとめた。同園の根来正博・地域移行課長は「4年はかなり厳しい見通しだが、『地域で暮らす』に理解が進めば、一気に広がる要素もある」と話す。
◆20041106 タウン TOWN たうん /大阪――朝日新聞
<聴く>
近畿作業所職員研修会の公開講演会 13日14〜17時、西成区花園南2丁目、たちばな会館。「これでよいのか? 地域移行」がテーマ。講師は府立金剛コロニー企画調整室長の白土隆司さん。厚労省は「入所施設の新設は基本的には認めない。大規模施設でも脱施設、施設解体」をスローガンに地域移行を進めようとしている。聴講料1000円。問い合わせは堺市百舌鳥西ノ町1丁、あすなろ授産所(072・259・8438=FAX兼用)へ。
◆20041109 障害者への差別を排除 県が条例の素案まとめる=宮城――読売新聞
県は八日、「障害のある人への差別を排除する条例」(仮称)の素案をまとめた。二〇〇四年二月の「みやぎ知的障害者施設解体宣言」の実現に向け、地域生活や労働、教育などで障害者への差別排除を県民に求め、差別を受けた場合の救済機関の新設も掲げている。
条例では、身体と知的、精神の障害者に対し、県民が健常者と同様の扱いを拒否したり、不利益な扱いをしないよう配慮する義務があることを明記した。
また、条例の目的を達成するため、差別があった場合、障害者や代理人から申し立てを受け、調査や是正勧告を行う「差別救済委員会」(仮称)を新設する。
県は障害者団体や有識者の意見を聞いた上で条例案をまとめ、〇五年二月定例県議会に提出する。
◆20041111 [検証・田中県政の4年間]識者に聞く(5)小山邦武氏(連載)=長野――読売新聞
◇前飯山市長
「壊す」越え「再構築」の時
――過去の県政との違いをどう見るか
田中知事は、旧来の県政を批判することが多いが、社会資本整備の面では、評価されるべき点はたくさんある。県民も今、その恩恵を享受している。市長として何回か会って感じたのは、旧県政はダメだという思いが強すぎること。この四年間で、いろんなものを壊したが、再構築していないので、かえって混乱を招いている。成果はなかなか上がっていない。
――評価できる点は
福祉では「本当にこんなことができるの」ということをしている。例えば、全国的にも珍しい重度心身障害者の二十四時間態勢の介護付きグループホーム。酸素吸入装置を付けている人もいて、施設の建設は、かなり勇気がいることだったが、知事の決断で県が力を入れてくれた。
駒ヶ根市の大規模知的障害者施設「西駒郷」も、社会復帰できる人がいっぱいいたのに、施設の中に入っていた。解体、地域移行の必要性は分かっていたが、なかなか手を付けられなかった。それを今、苦労しながらやっている。
[……]
◆20041117 知的・精神障害者の住宅単身入居 県が国に特区提案=宮城――読売新聞
県は十六日、知的・精神障害者が単身で公営住宅に入居できるようにする構造改革特区「公営住宅への知的・精神障害者単身入居容認事業」を、国に提案した。特区のメニューの一つとして認められれば、県は来年五月ごろにも改めて県内全域について特区申請する方針。また、県営住宅条例の改正も必要となり、県は来年十一月議会での可決、改正を目指したい考えだ。
県によると、県内の公営住宅(三月末現在)は三万千五百二十五戸(県営九千五十五戸、市町村営二万二千四百七十戸)。公営住宅法は身体障害者らの単身入居を認めているが、知的・精神障害者については「日常生活における支援態勢が十分に整っているとは判断できない」(国土交通省)との理由で、単身入居できないと定められている。
しかし、県は現在、今年二月に発表した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」に沿って知的・精神障害者の地域移行を目指しており、これを推進するため、公営住宅法の規制を緩和し、知的・精神障害者についても公営住宅への単身入居を可能とするよう提案した。その代わりに、県として生活訓練や、入居後の支援態勢の充実を図るという。
県障害福祉課は「今回の提案が認められれば、解体宣言推進に向けた大きな一歩となる」と説明。所管する国土交通省住宅局総務課も「前向きに検討したい」としている。
◆20041123 県が2006年度の政策方針を公表 財政健全化と経済対策重点に=宮城――読売新聞
県は二十二日、二〇〇六年度の政策方針を公表し、「経済産業再生戦略」に基づく経済対策と、県財政の健全化を同時並行で進める考えを示した。県はこの政策方針を基本に〇五年度予算の編成を進める。
県の政策方針では、雇用創出や企業誘致の数値目標の達成に向け、〇五年度が最終年度の再生戦略を促進する一方、市町村合併など地方分権と連動し、県民生活の向上や県経済の活性化を提示。赤字再建団体への転落危機にある県財政を考慮し、予算を伴わない施策の展開や構造改革特区制度の活用、県内市町村やNPOとの連携も掲げている。
重点的な政策・施策では、〇四年二月の「みやぎ知的障害者施設解体宣言」に基づく、知的障害者の地域移行の条件整備や宮城県沖地震に備えた対策の推進、県内自治体病院の医師確保対策などに取り組む方針を示した。浅野知事は二十二日の記者会見で、「危機的な状況の財政問題と再生戦略に重点を置き、市町村合併でも、ぜひ成果を出さなければならない」と語った。
◆20041203 [「自立」を支える]福祉先進国・北欧で/中 説明責任 /北海道――毎日新聞
◇情報開示で権利守る
「お帰り」。入居者の男性(19)が車椅子で帰宅すると、介護職員がにこやかに出迎えた。重度心身障害者の男性は小さくうなずいて応えた。
ストックホルム市の南約15キロにあるフッデンゲ市。木立の合間から一軒家がのぞく住宅街に、市営「ストロークベーゲン・グループホーム」がある。ここでは重度の知的障害を持つ18〜33歳の男女17人が暮らす。
きれいな白壁に観葉植物の緑が映える建物内は個室に分かれ、台所や浴室、広々とした居間、寝室があり、アパートのようだ。介護職員は常時おり、介護サービス料は無料。入居者は障害者年金(11万8000円)から家賃(約8万7000円)を払って、“我が家”でくつろぐ。
スウェーデンは97年、「入所施設解体法」を制定。一つの施設で数百〜数千人が一緒に暮らしていた障害者が、今では介護士や看護師、作業療法士らの手を借りながら健常者と同じように地域で暮らしている。
職員のマリー・ホットクレームさん(34)は、A4判の記録紙を視察団に見せた。本人や家族の意向を聞いて作った生活計画やリハビリ予定を記入するほか、起床時間や食事のメニュー、日中の活動、他の入居者との会話の様子など日々の生活ぶりも記入する。「生活計画などで出来ないことがあったら、その理由をきちんと書き入れます」と話す。記録は保存され、毎月報告書も作成し、家族はいつでも閲覧できる。さらに、行政が半年に1度、職員の説明を受けながら審査する。
行政を監視・告発する「オンブズマン」はスウェーデン語だ。1809年に世界で初めてオンブズマン制度を憲法に規定し、説明責任を求める姿勢が国民に浸透した。
道内では、グループホームで暮らす知的障害者は2000人弱で、全体の5%前後。食事や掃除など身の回りは、地域の「世話人」が手助けする。「個人記録を詳細に書くより、自由に生活してもらうことを中心に考えている」(道障害者保健福祉課)としている。
視察に参加した林恭裕・道浅井学園大助教授(社会福祉学)は「スウェーデンでは情報開示が徹底しており、当事者の権利を尊重するうえで重要なことだ。日本でもサービスの透明性や介護記録の開示を求める動きが活発になりつつあり、職員の育成が必要だ」と提言する。【横田愛】
◆20041208 補助金改革 地方の発想生かす運用を 槙本利光(私の視点)――朝日新聞
障害者を特別扱いしないという「ノーマライゼーション」の基本的な考えのもと、厚労省の社会保障審議会では、高齢者や障害者について「脱施設や地域生活中心」となるような道筋が議論されている。
人口約9300人の由宇町では、審議会の動きに先駆けて、高齢者や障害のある人が地域社会に溶け込み、安心して生きがいをもって暮らせるような施設が整った地域づくりを進めている。
これは単なる施設の整備事業ではない。高齢者や障害者、子育ての施策を有機的に連携し、地域の連帯感を強めて相互扶助機能を引き出すことで、介護や援助を必要とする人々を地域社会全体で支える、住民参加型の地域福祉社会の構築を目指している。
このため、高齢者が安心して住めるように、日常的に高齢者を見守る生活援助員駐在の高齢者向け住宅25戸を設けた。また、子供が健やかに生まれ育つように、一般向け住宅18戸や障害者の自立と社会参加を促進する知的障害者向けグループホーム7戸、身体障害者向け授産施設も設けた。
幅広い世帯が居住できる環境を確保するとともに、これらの建物と一体的に集会所や幼児の遊び場を併設することで、地域住民との交流にも配慮した計画である。すでに一部を除いて施設が完成し、生活が始まっている。
由宇町全体の年間予算は約45億円であり、投資的経費は十数億円にすぎない。昨年度は、投資的経費約13億円のうち、4割に当たる約5億円をこの事業にあてた。小さな町にとって、かなりの負担となったが、思い切って実施することとした。
そもそも、町では91年度以降、当事業以外は公営住宅整備事業を実施しておらず、公営住宅建設費が恒常的に予算化される状況にはない。
そうした中で、この団地の総事業費約10億円に対し、国庫補助金5億円弱の存在が事業成立の大きな鍵となった。補助金があることで、はじめて実現した事業であると言っても過言ではない。
一方で、低所得者向けの公営住宅を、地域の福祉生活拠点として活用する新たな試みであるため、制度活用をめぐって国との協議に多くの時間がかかったことも事実である。
現在、補助金改革が俎上(そじょう)にあがっている。今後、毎年実施するわけではない、このような事業を大胆に進められるか不安な面もある。市町村が特定の目的で重点的に取り組むときには、国から、めりはりをつけて財源が交付されることが望ましい。
補助金については、存在そのものが問題なのではない。国の物差しで一律に地方を縛り、地域からの自由な発想が生かされないという硬直的な運用に問題があるのではないだろうか。
今回、わが町の事業は、幸いにもうまくいった。補助金改革では、地方の自由な発想が生かされるとともに、恒常的に実施していない事業でもきちんと手当てされる必要がある。
11月末の三位一体改革の全体像では、公共事業関係の補助金について、地方の自由度などを前提とした交付金化の方向が示された。積み残しの課題も多いが、現実的対応としては評価してもいいのではないか。
形式的な議論に終始することなく、地方の住民のためになるように柔軟な改革を進めてもらいたい。
(まきもと・としみつ 山口県由宇町長)
◆20041209 グループホーム:厚労省改革案 月数万円、障害者に負担増…関係者、改善申し入れへ――毎日新聞
◇月数万円、昼食代も…「生活破たんも」
厚生労働省が新たにまとめた障害福祉サービスの抜本改革案で、グループホームで生活する障害者に重い利用者負担を課すことに対し、関係者から批判が噴出している。同省は新たな入所施設を建設しない方針を打ち出しており、グループホームは障害者の地域生活を支える「受け皿」。ところが、改革案では障害年金が唯一の収入の人にも負担を求めており、生活が破たんする人が続出するのは必至だ。全国のグループホーム関係者約1000人で作る「日本グループホーム学会」(室津滋樹代表)は10日、同省に改善を申し入れる。【須山勉】
03年度に始まった障害者支援費制度が財政難に陥ったため、厚労省は10月、サービスを多く使う利用者ほど負担が重くなる「応益負担」を柱とする改革案をまとめた。仕事に就けないなど負担能力が乏しい障害者には、負担額の上限を設けると説明していた。
しかし、同省が先月26日に示した案では、負担上限は▽収入がほとんどない障害年金2級(支給月額約6万6000円)の人で月1万5000円▽同1級(同約8万2000円)の人で月2万4600円(いずれも生活保護世帯に属する場合を除く)に設定された。
グループホームで生活する多くの知的、精神障害者は、日中は通所施設で軽作業を行うなど複数のサービスを利用しているため、上限に近い負担がかかる。さらに同案では、通所施設の昼食代(月1万円程度)も利用者負担となる。
多くのグループホーム生活者は、現在も家賃や食費などで月5万〜6万円程度の自己負担をしている。新たに数万円の利用者負担が加われば、年金以外にほとんど収入のない障害者は、現在の生活を維持できない。
一方、同案は、入所施設の障害者には負担額を払っても手元に1万5000円残るように補足給付することにしている。「同省は『脱施設』の方針を示しながら、なぜ施設から出られないような改革案になるのか」と関係者は批判する。
◇「決定ではない」
厚労省障害保健福祉部企画課は「サービスの利用量が急増し、負担を求めざるをえない状況だ。案は決定ではなく、負担が非常に重くなる障害者には何ができるか考えていきたい」と話している。
◆20041211 [発信箱]西駒郷=野沢和弘――毎日新聞
うっすらと雪化粧した中央アルプスのふもと、長野県西駒郷を訪ねた。70年代に建設された障害者の大規模施設が解体されようとしている。02年度に441人いた障害者は、この2年で街のグループホームに46人が移った。今年度末までに114人が施設を出て街で暮らす予定だ。
政府は入所施設を新たに作らない方針を打ち出したが、今も各地で建設計画が動いている。街で普通に暮らす「ノーマライゼーション」は先進諸国では当たり前になったが、日本では失職を恐れる施設職員と保護者の反対で苦戦している。
なぜ長野では成功しているのか? 田中康夫知事がグループホームの建設・改築費の3分の2を県が出す方針を立て、社会福祉法人やNPO(非営利組織)が「脱施設」の受け皿を作っている。県外の地域福祉の実践者が続々と長野に駆けつけ、県や県社会福祉事業団の要職に就いて辣腕(らつわん)を振るってもいる。
老いた父母は当初は大反対だったが、わが子が街で生き生きした顔を取り戻すのを見て、変わった。「脱施設」賛成派は15%だったのが、今は70%になり、父母たちがNPOを設立してグループホーム建設を推進するまでになった。
一方、公共事業費を大幅に削られた土建業者は他県に仕事を求めたり、家族がパート勤めを強いられているともいう。田中知事の芳しい評判をとんと聞かなくなったのはそのせいだろうか。
しかし、西駒郷には命のぬくもりがある。希望がある。既得権益にがんじがらめになり、大事な問題を先送りばかりしている中央の政治がつまらなく見える。(社会部)
◆20041212 横浜市・入所施設新設問題 障害者200人、地域生活望む−−アンケ調査 /神奈川――毎日新聞
◇支援団体アンケ
「約300人の知的障害者や家族が入所施設での生活を希望している」として、入所施設の新設計画を進めている横浜市で、少なくとも市内の入所施設にいる200人の障害者がグループホームなどでの地域生活を希望していることが11日、障害者支援団体が行ったアンケート調査で明らかになった。関係者からは「限られた予算を施設の新設に投じるべきか、もっと検討すべきだ」との声があり、計画の是非が今後も議論になりそうだ。【須山勉】
◇「ニーズ、もっと調査を」
市グループホーム連絡会など3団体が、市内19カ所の入所施設に障害者の地域移行に関するアンケート用紙を送付。10施設から回答を得て、11日に開いた「入所施設のあり方を考えるつどい」で報告した。
調査は10施設に「地域移行を希望している」と考える入所者の割合を問い、538人のうち200人程度が地域生活を望んだ。アンケートに答えなかった施設の分も合わせると、同じ希望を持つ入所者はさらに増えるとみられる。
報告した同会の室津滋樹さんは「どれだけの入所者が地域生活を望んでいるのか、市や施設が調査し、公表してほしい。それをしないまま施設が足りないと言われても納得できない」と指摘。自ら入所施設を運営する社会福祉法人・同愛会の高山和彦理事長は「入所施設にいる80%ぐらいの障害者は、すぐにでもグループホームに移れると思う」と発言した。
市障害施設課の村上友利課長は「市も的確な情報を把握・分析し、あるべき姿を考えたい」と答えた。
◆20041216 すべての障害児を普通学級に 県教委が小中学校で 将来構想の中間案策定=宮城――読売新聞
県教委は、すべての障害児・生徒を小中学校の普通学級で受け入れることを目指す県障害児教育将来構想(中間案)をまとめた。来年度から複数校でモデル事業を行い、二〇一四年度までの十年間を試行期間とし、その後、制度の拡充を図る。都道府県レベルでこうした「統合教育」を目指すのは全国初という。
中間案によると、障害を持つすべての児童・生徒は地域の小中学校に学籍を置くことを基本とし、共に学級編成を行う。必要に応じて教員や介助員を増員配置するなど、支援態勢も整える。県立盲、ろう、養護学校は存続し、本人や家族の希望に応じてそれらの学校での教育も継続する。
県は今年二月に障害者の地域社会への移行を目指す「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発表しており、今回の構想も、障害の有無にかかわらず同等に暮らす「ノーマライゼーション」を推進する施策の一つ。
◆20041222 県内7地域に生活支援センター整備 県が障害者プラン中間案=宮城――読売新聞
県は二十一日、障害福祉政策の展望を示す「みやぎ障害者プラン」の中間案をまとめた。
それによると、既存の福祉施設の機能強化によって県内七地域に「地域生活支援センター」を整備、地域社会への啓発を行うほか、就労支援員を配置するなどして障害者を支援する。
また、家族の負担軽減や日常生活の充実を視野に、グループホームやデイサービスセンター、通所授産施設、小規模作業所などの整備を推進。現在制定作業を進めている、障害者への差別を排除する県条例も生かし、障害者を取り巻く環境の改善・向上を図る。
同プランは、今年二月に発表した「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を踏まえ、障害者の地域生活移行を進めるのが最大の狙い。県は年度内に同プランを確定し、二〇〇五―二〇一〇年度の六年計画で取り組んでいく方針。
*作成:三野 宏治