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生活保護 2000年12月のニュース

生活保護


■世田谷区への戻入金40万円を紛失 助役ら補てん /東京(朝日新聞 2000年12月1日)

 生活保護費を支給する世田谷区北沢保健福祉センターで昨年夏以降、区へ払い戻されるために保管されていた戻入金約四十万円が無くなっていたことが三十日、区議会本会議の一般質問で明らかになった。区は「助役やセンター所長らが金を出し合って全額を補てんした。原因を調査すると共に、再発防止に努めたい」としている。
 大庭正明議員(世田谷行革一一〇番)の質問で明らかになった。区によると、センターでは、生活保護受給資格の変更などで支払われずに区へ払い戻される金は、事務所の金庫に一時保管しているが、そこから昨年八月以降、三回にわたって計約四十万円が無くなったという。今年九月に職員が経理書類を点検していて、無くなっていることに気づいた。

■生活保護費、支給事務を迅速に 弁護士会が奈良市長に要望書/奈良(朝日新聞 2000年12月1日)

 奈良弁護士会(相良博美会長)は三十日、奈良市の生活保護費の支給事務が遅いとして、迅速化を求める要望書を大川靖則奈良市長に送ったと発表した。同会によると、奈良市では、保護開始決定から実際に支給されるまで最短で十一日、最長で二十日かかっており、生活保護法の「必要即応の原則」にそむいているとしている。
 同弁護士会は昨年、奈良市に住む無職の女性(六八)から「八月二十三日に奈良市に生活保護の申請をして、保護費が支給されたのは九月二十一日だった。時間がかかりすぎる」と、人権救済の申し立てを受けた。
 これは、事務処理の締め切りを月三回設け、締め切り日の十日後を支給日としていることが原因という。同弁護士会は、現行の締め切り日を撤廃し、保護開始決定が出たら随時保護費を支給するよう改善してほしいと求めている。
 これに対し、同市保護課では「申請があってから、銀行や生命保険などを調べ、自宅や病院を訪問するなどの調査、その後の事務処理に多くの時間がかる。当面のお金がない人にはお金の貸し付けもしている」と説明している。

■税の無駄、4事業で1310万円 事務ミスや虚偽申告 /福島 (朝日新聞 2000年12月2日)

 会計検査院が十一月三十日にまとめた昨年度の決算検査報告で公費の過大な支出と指摘した中に、県内の四事業の一部支出、合計千三百十万円が含まれていた。双葉郡浪江町立請戸小学校校舎増築、本宮方部学校給食センター増築、会津若松市の生活保護の交付、福島市の公営住宅建設で、二事業は当時は明文規定がなく、一事業は虚偽申告によるもの、一事業は事務的なミスが原因だった。いずれも国に補助金を返還する見通しだ。
 
 請戸小校舎増築は、文部省が給食施設と学校施設の共用部分と認定した配ぜん室を、会計検査院は共用部分ではなく給食施設と指摘した。学校施設への国庫補助金二百六十九万円が不当とされた。
 県教委によると、実態は配ぜん室兼廊下のような状態で、壁がないため給食施設としての面積を算定できなかったという。学校施設としても、給食施設としても補助金がもらえなくなった。
 本宮方部学校給食センター増築は、安達郡本宮町と大玉村が運営する。かつて増築した部分を台帳に記載しなかったため、新たに増築する際に、古い増築部分を補助率の高い新築と申請した。補助金四百七十万円が不当とされた。
 会津若松市の生活保護過大交付は五人家族のうち三人が働いているのに一人しか働いていないと虚偽の申告があった。一九九五−九九年度の国庫負担金二百六十四万円が不当とされた。市は虚偽申告した世帯に返還を求める方針だ。
 福島市の公営住宅建設は、九五年度から九七年度にかけて補助率の違う三種類の住宅を高層住宅団地にまとめて建築した際、それぞれの標準工事費の金額の比率で計算したが、面積に応じて計算すべきだとして補助金三百七万円を不当とされた。建築当時は計算方法の明文規定がなかった。建設省が指摘を受け入れたため、市も従う見通しだ。

■サラ金相談、夜間に開設 5日から京都弁護士会 /京都 (朝日新聞 2000年12月3日)

 京都弁護士会(三浦正毅会長)は五日から来年三月末までの毎週月、木曜日、JR京都駅前(烏丸口)のぱ・る・るプラザ京都で「夜間クレジット・サラ金相談」を開設する。昼間に法律相談を利用できないサラリーマンのために、相談時間を午後六時から同八時半とした。実際に債務整理などを引き受ける場合は弁護士費用の分割払いにも応じる。
 不況やリストラが深刻化する中、昨年の自己破産の申立件数は全国で十万件を超えた。その一方、弁護士による相談窓口が不足していることから、法的に債務整理の資格がない悪徳業者が横行、高額の手数料をだまし取られるなどの被害が相次いでいる。
 相談実費は三十分で五千二百五十円。生活保護を受けている人は受給証明書を持参すれば無料となる。同会によると、個人破産の申し立てに伴う平均的費用は三十万円程度。一定の収入に満たない人は法律扶助協会による費用立て替え制度も利用できる。問い合わせは、京都弁護士会(075・231・2378)へ。

■自費帰国2、3世への支援の継続性を求める 中国残留邦人支援 (朝日新聞 2000年12月4日)

 日本に永住帰国した中国残留日本人孤児やその家族らにどんな支援が必要か話し合ってきた厚生省の「中国帰国者支援に関する検討会」(座長=坂巻煕・淑徳大教授)は四日、国の支援対象を残留孤児ら本人に対し帰国後三年以内と限っていた従来の原則を見直し、自費帰国の二、三世も対象に加えて継続的に支援していくべきだとする報告書をまとめ、国に提言した。これまで厚生省が支援の対象外としていた国費帰国以外の二、三世への支援を要請した点が新しい。戦後五十五年が過ぎ、帰国者本人の高齢化が進むと同時に、家族を伴った帰国になっていることから、実態を踏まえた自立支援策の必要性を強調、国や地方自治体の責任ある実行を求めた。
 報告書は、経済的な自立を念頭に置いたこれまでの支援策を見直し、高齢になった帰国者が地域と交流をもちながら社会の一員として生活するための社会的・精神的な自立を支援するべきだとした。また、呼び寄せ家族である自費帰国の二、三世に対しても日本入国後の社会的適応や自立促進のための支援が必要と明言し、国や自治体に弾力的な対応を求めた。
 具体的には、(1)継続的な日本語学習の機会の提供とそのための体制強化(2)きめ細かな就労支援(3)だれもが中国語で相談ができる専門的知識をもった窓口の設置(4)地域との交流の場の提供(5)帰国者を支援するボランティアと行政の連携強化(6)残留邦人問題を風化させないための関係資料の保存や啓発活動――などの必要性を示し、そのための広域的、総合的な拠点を早急に整備すべきだとした。
 また、生活保護の適用については、帰国者のそれぞれの状況を十分に配慮した柔軟な対応をするよう提言した。ただ、老後の生活保障の問題は、今後とも実態を踏まえて検討していくべきだとの意見があったとの記述にとどまった。
 
 ◇老後の生活保障触れず《解説》
 今回の報告書は、一九八二年と八五年の中国残留日本人孤児問題懇談会の提言に沿った従来の援護施策の見直しを迫るものだ。社会的・精神的に自立を支援すべきだとした点や生活保護の弾力的な運用を求めた点、自費帰国の二、三世にも可能な限りの支援を提言したことは従来の枠を超えたといえる。
 報告書は、総合的な支援のための拠点が必要とし、具体的な内容も示した。今後は、厚生省が設置を計画する帰国者支援・交流センター(仮称)に「きちんとサポートして一緒に社会を支える一員になってもらう視点」(中国帰国者定着促進センターの小林悦夫・教務課長)で、どれだけ報告書の内容を取り込み、実現させるかが、二十一世紀の残留邦人問題のカギを握ることになる。
 だが、老後の生活保障については、報告書はほとんど触れておらず、事務局を務めた厚生省の現状を維持したい姿勢がかいまみえる。検討会は非公開で行われ、ある委員はこの問題に対する基本的なあり方などを総合的に検討するものではなかったと批判した。戦後半世紀以上もたった残留邦人問題としての認識を持ち、国として早急に総合的な施策に踏み出す必要がある。
 (大久保真紀)

■「生活保護を制限8割、不正防止へ厳しく適用 都と79市を読売新聞社が調査
 「働く能力ある」「家がない」を理由に」(読売新聞 2000年12月5日 原昌平
 長引く不況で厳しい雇用情勢が続く中、生活困窮者を救済する生活保護の適用を、法の趣旨に反して厳しく制限している自治体が主要都市の八割にのぼることが読売新聞社の調査でわかった。こうした運用が、ホームレス急増の要因になっているとの指摘もあり、早急な是正が求められそうだ。
 調査は、人口三十五万人以上をめどに、県庁所在地を含む全国の主要七十九市と東京都の担当者に実情を聞いた。その結果、「働く能力のある者は保護しない」「住居のない者は入院時以外保護しない」のどちらかに該当、国の法解釈に反する適用制限を行っている自治体が六十六にのぼった。
 生活保護は、資産や親族の援助、他の社会保障、働く能力を活用しても収入が基準に満たない人が対象。その適用基準について、厚生省は「働く能力があっても求職に努力して現実に仕事がなければ、対象になる。申請時の住居の有無は要件ではない」としている。
 調査で、「高齢か病気、障害で働けない人しか保護しない」と回答したのが新潟、岐阜、熊本など十二市で、ほぼこれに近い線引きが浦和、東京、名古屋など十六都市で行われていた。
 また、「住まいがない場合の保護は緊急入院のみ」としたのは宇都宮、福岡、北九州など三十市で、「(緊急に限らないが)入院時のみ」も十二市あった。
 こうした厳格な制限の背景には、一九八〇年代に本来は保護の必要のない不正受給が問題になり、締め付けが強化されたという事情があると見られる。
 路上やテントで生活するホームレスの人々は、現在、全国に三万人ほどいると推定されており、九八年当時(約二万人)から急増している。企業のリストラや倒産で職を失い、再就職できないままアパートから退去を迫られるなどが多いためと見られ、生活保護を断られて野外生活を強いられる人も少なくないという。
 厚生省保護課の話「画一的運用はいけないと今春から何度も会議で説明した。調査結果を参考にしたい」

■「増え続けるホームレス 「最後の安全網」に穴 雇用も福祉も救済切り捨て」(読売新聞 2000年12月5日)
 安心の設計面
路上や公園、河川敷などで野宿生活を送る、いわゆるホームレスの人々が増え続けている。その数は全国で3万人近くに達した。大部分は失業や倒産による生活困窮者だ。「生活に困ったら福祉があるはず」。多くの人がそう考える。しかし〈最後の安全ネット〉であるはずの生活保護制度は、どれだけ機能しているのだろうか。実情を探ると、本来の趣旨から外れた違法な運用が浮かび上がる。
原昌平

 ◆「あんたは働けるでしょ」 雇用も福祉も救済切り捨て――――――□
 どの公園にも野宿者の青いテント。深夜の駅やビル陰には段ボールの列。
大阪市内では、こうした異常事態が、もはや見慣れた風景になった。
2002年サッカーW杯の会場になる長居公園(東住吉区)にも、400を超すテントが並ぶ。
 細谷武(ほそやたけし)さん(56)は今年5月から8月まで、ここで野宿生活を送った。2年前の夏までは運送会社の社員。大手の下請け仕事が急に減り、退職を強いられた。職安に何回も通い、面接に足を運んだが、仕事は見つからない。雇用保険給付は切れ、蓄えも底をついた。
 「生活保護を受けたら」。知人に勧められ、福祉事務所へ出向いた。
 ところがケースワーカーは告げた。「あんたは働けるでしょう。65歳にならんと無理やねえ」
 民生委員を通じて頼んでも、就職活動費に3万円を貸してくれただけだった。
 「1日1食。1袋20円のもやしを入れたラーメンばかり」で半年余り。
10年住んだアパートは水道、電気、ガスが止められ、家賃の滞納も限界。やむなく長居公園のテントに移った。
 早朝、昼間、深夜の3回、アルミ缶を集めて回収業者に売ったが、1日数百円がやっと。65キロあった体重は45キロに落ちた。
 8月半ば、市民団体「釜ヶ崎医療連絡会議」が同公園で開いた相談会に行き、メンバーと再び福祉事務所へ。支援者が一緒だったことで、今度は対応が違った。
いったん入院したあと、敷金の支給を得てアパートに移り、生活保護を受けている。
 「『ダメ』と言われたら、そんなものかと思った。一人で相談に行って、同じ経験をした人は多いと思う」と細谷さんは振り返る。

 ◆失業…路上へ 中高年を直撃 ――――――□
 「好きで野宿はしていない」「仕事がほしい」「まさか自分がホームレスになるとは」。野宿生活者の多くは、共通してこんな言葉を口にする。
 元サラリーマンや単身女性、夫婦連れ、若者も珍しくない。この前まで社会の一員だった人々が路頭に迷い、飢えと寒さ、さげすみの視線に耐えている。
 ここ数年で急激に増えた直接の原因は、雇用情勢の悪化にある。単なる不況ではなく、企業のリストラ、パートやアルバイトの増加といった雇用の流動化が進み、日雇い労働市場も大幅に縮小した。
 直撃を受けたのが中高年。昨年の有効求人倍率は全国平均で0・48だが、55―64歳は0・09。条件を選ばなくても、採用されるのは10人に1人もいない。失業者を優先的に公的雇用する失業対策事業も、96年に廃止された。
 福祉の現場で目立つのは、「働く能力のある人には生活保護を適用しない」という運用だ。自治体によって差があるが、高齢者か、障害、病気のある人にほぼ限定している場合が多い。
 確かに、生活保護を受ける前に、資産活用、親族の援助、年金受給など他の手だてを探る必要がある。「稼働能力の活用」もその一つだが、現実に仕事がなく、能力を生かす機会がない場合は、どうするのか。
 失業して困り果てると、雇用からも福祉からも助けがない。「社会保障の大きな穴」があいている。

 ◆「住まいがないからダメ」
 ◆生活保護運用違法が慣例化 厳しい締め付け ――――――□
 「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」。憲法25条の規定は「生存権」と呼ばれる。それを具体化した生活保護法は、無差別平等の適用が原則だ。
 ところが、福祉事務所に出向くと「住まいがない」ことを理由に保護を受けにくくなるケースが目立つ。
 ただ地域差があり、東京都や横浜市、神戸市などが簡易宿泊所滞在者を認める一方で、大阪市は病院か施設にいったん入ることを条件にする。福岡市、北九州市のように「住所不定の人の保護は、緊急入院した時だけ」とする自治体も相当数にのぼる。
 病院を退院する際、住居がなければアパートの敷金支給もできるのだが、一方的に保護を打ち切り、すぐ働けない病みあがりの人を再び路上に追いやる事例もしばしば起きている。
 なぜなのだろうか。
 多くの研究者は、「生活保護の運用は80年代半ばから大きく変わった。不正受給防止をうたう国の『適正化政策』で締め付けが厳しくなり、本来、保護すべき人々まで追い返すようになった」と指摘する。
 ケースワーカー歴30年の大阪市の男性職員(52)は、こう語る。
「保護の数をできるだけ増やさないよう求められる。細かな監査もあるし、ケースが増えると担当者の負担も大きい。たまたま配属された行政職のワーカーが多く、慣例だけで運用するのも一因。それを国も自治体も本気で改善しようとしない」

◆現場に徹底せず ――――――□
 国がホームレス問題の対策に乗り出したのは昨年春。
主な自治体と協議して〈1〉働く意欲のある人は、一定期間の宿泊で就職を援助する「自立支援センター」〈2〉高齢や病気、障害の人は福祉援護〈3〉社会生活を拒む人は公共施設から退去指導――との方針を示した。
 自立支援センターは今年、横浜市、大阪市、東京都に計5か所できた。横浜市は入所1か月が原則で、5―10月の間に1101人が期限切れで出たが、行き先は路上512人、アパート保護など259人、入院196人、日雇い労働104人、他施設28人で、本来の目的の再就職はわずか2人。自治体からは、公的
就労事業を求める声が強い。
 生活保護については、厚生省保護課が今年3月、自治体の担当者会議で「住居の有無は要件ではない」「働く能力がある失業者でも、求職に努力していれば対象になる」と説明した。同課は「誤った運用があるなら、ただす必要がある」とするが、現場に徹底させる施策は行っていない。  

◆理由問わず生活保障を
◆木下秀雄・大阪市立大教授(社会保障法)
 「生活保護法が最後のセーフティーネットと呼ばれるのは、いろいろな社会保障制度から漏れた人でも、すべて受け止め、困窮の理由を問わずに人間らしい生活を保障する点にある。住む所まで失った人こそ真っ先に救済し、住まいを確保する必要がある。住居がないから、働く能力があるからという理由で適用しないのは法律違反。この点は、判例も厚生省も明確に認めている。今の生活保護制度にも就労援助制度がないなど不十分な点はある。しかしまずはホームレスになる前に保護する、なった人をアパートに戻すなど、きちんと活用すべきだ」

◆メモ〈ホームレス〉
 本来は施設や宿泊所、友人宅などを含め、広い意味で適切な住居のない人を指す。日本では主に屋外で暮らす人を指すことが多いが、その呼称は東京都が「路上生活者」、横浜市が「屋外生活者」、大阪市が「野宿生活者」など、自治体によってまちまち。支援団体は「野宿者」と呼ぶことが多い。
 ◆図=過去の最長職 野宿に至った理由 年齢
 全国主要都市のホームレス数

■あいりん介護、お互いさま 釜ケ崎の元住人がヘルパーに 【大阪】 (朝日新聞 2000年12月7日)

 病気やけがのため大阪市北区の更生施設「大淀寮」に入った日雇い労働者らが、かつて簡易宿泊所などで暮らした同市西成区の釜ケ崎(あいりん地区)で、ホームヘルパーとして高齢労働者の介護に取り組んでいる。元住人が釜ケ崎にいま住んでいる人の世話をすることから「釜釜介護」と呼ばれ、年内は「実習」や「ボランティア」という位置付けだが、身体介護全般ができる二級の資格を取得したうえで新年から「事業」として派遣される予定だ。日雇い労働者にとってヘルパーという職種の先駆けであると同時に、地区の高齢者対策としても注目されている。
 
 大淀寮は生活保護法に基づく更生施設で、社会福祉法人「みおつくし福祉会」が運営。約百四十人の男性が、運動訓練や内職指導を受けながら社会復帰を目指している。
 建築・土木の求人が低迷しているため、寮のスタッフが入寮者の勤め口を広げようと考え、その一環で非営利組織(NPO)と連携してヘルパーを養成。現在、あいりん地区で日雇い仕事の経験のある八人が二級資格を取得するため、延べ百三十時間に及ぶ講義や実技研修を終えた。四十八歳から六十二歳で、平均年齢は約五十五歳。あとは修了証書が届くのを待つばかりだ。
 「釜釜介護」は九月から始まった。高齢の労働者や野宿生活者に定住して生活保護を受けてもらおうと、簡易宿泊所を改造して開業した福祉マンション「シニアハウス陽だまり」(西成区萩之茶屋二丁目)が対象。家賃約四万円は生活保護の住宅扶助費の上限いっぱいで、負担にならないという。今年四月に始まった介護保険制度で、入浴や着替えなどに全面的な手助けが必要と認定された「要介護3」の男性ら体が不自由な四人が住んでいる。
 ヘルパーは交代で毎日欠かさず寮から通う。最年長の内山桂司さん(六二)は主に日、月、火曜を担当。午前九時半にはマンションに着き、引き継ぎを点検した後、部屋の掃除や朝食の買い出しなどを始める。
 一息つくと、足の不自由な入居者を車いすで散歩に連れ出す。この男性は耳が遠い。「今日はどこに行きますか?」。バインダーに挟んだメモ用紙で歩きながらの筆談。商店の前では車いすを止め、「いるものはありますか?」。こまめに希望を探る。
 内山さんが寮に入ったのは半年前。調理師の免許を持ち、長く飲食業に就いてきたが、その後はホテル従業員などを転々とした。一年前、勤めていたパチンコ店が倒産し、職を探していたが、足腰の痛みに耐えられなくなった。市立更生相談所を訪ねたところ、入寮が決まった。
 数年前、交通事故で右足に大けがをした内山さんは、周囲から温かい世話を受けたことが忘れられない。寮がヘルパー候補を募集すると聞き、「今度は私が困った人を助けることができれば」と手を挙げた。
 慣れない仕事だが、「介護する人たちとも仲良くわいわいと過ごせるようになってきた。体と相談しながら、続けていきたいね」。約一時間の散歩を終え、男性を二階の部屋に送り届けると、笑顔で話した。
 来年一月からは、八人のうちの一人か二人が「陽だまり」専従のヘルパーとして派遣される予定だ。他のメンバーも随時、介護の仕事を探す。寮としては、地元の北区でもヘルパー派遣を検討中という。
 「陽だまり」の宮地泰子代表は「ここの入居者は、施設ではなく街で暮らしたい人ばかり。ヘルパーに来てもらい、助かっている」と言う。大淀寮の山本憲一施設長も「労働者が互いに助け合って生活できる街づくりのため、出来る限りの支援をしたい」と語る。
 
 ○高齢化の街、先進の試みに
 介護保険制度について、厚生省は全国から無作為に選んだサービスの利用者千二百六十三人に対し、「制度前」の三月と「制度後」の七月で、受けている介護サービス量がどう変わったか、聞き取り調査をした。「増加」という答えは八百五十二人(六七・五%)、「ほぼ同じ」が百八十七人(一四・八%)、「減少」が二百二十四人(一七・七%)もいた。「減少」の理由は「今までのサービスが必ずしも必要ではなかった」(三十五人)が最多で、次いで「利用者負担の支払いが困難」(三十二人)だった。
 介護保険ではこのほかにも、要介護認定が公平か――などといった問題点が指摘されているが、あいりん地区では、制度の「枠外」に置かれた人たちが多いという。「高齢化が進むこの街では、介護保険に対する需要は大きいはず。『シニアハウス陽だまり』の試みが、将来への道筋になれば」と、「陽だまり」の宮地代表は言う。ただ、仕事に就けず、定住していないため生活保護も受けていない六十五歳以上の高齢労働者は当然、保険料を支払えない。大阪府介護保険課は「本来なら介護が必要なのに、受けられない人がいるとは思うが、要介護認定に手を挙げてもらわない以上、実態は分からない」としている。
 
 <ホームヘルパー> 介護保険で、訪問介護(ホームヘルプサービス)を担う。専門学校や民間企業などが開催する養成研修を終え、その運営主体の修了証書を受ければ介護の現場で働ける。
 国家資格ではないが、厚生省は省令で一−三級の課程ごとに研修内容の基準を設けている。三級は家事援助が中心。二級は訪問介護の中核として入浴や排せつなどの介護に当たる。一級はチーム介護で主任を務める存在で、二級修了者のみ研修を受けることができる。大阪府地域福祉課のまとめによると、府内で一九九一−九九年度に養成されたヘルパーは一級が千八百五十五人、二級二万四千七百十一人、三級一万六千九百六十四人。
 
 【写真説明】
 車いすの入居者を散歩に連れていく内山桂司さん。清涼飲料水の販売機の前で少し休憩=大阪市西成区萩之茶屋1丁目で

■1億5700万円多く払う 高松市、77年度から生活保護費/香川 (朝日新聞 2000年12月7日)

 高松市が一九七七年度から二〇〇〇年度にかけて生活保護費約一億五千七百万円を不当に多く支払っていたことが、会計検査院の調べで明らかになり、市は六日の市議会教育民生調査会で、「市民の信頼を損なうことになり、深刻に受け止めておわび申し上げます」と陳謝した。
 
 市によると、生活保護制度では、法で定められた最低生活費から、世帯全体の収入額を差し引いた金額を、生活保護費として支給する。支給額の四分の三を国が負担し、四分の一を市が負担している。
 今回、払い過ぎていたのは、就労収入や年金を受け取るようになったにもかかわらず申告しなかったり、実際の収入より少ない額を申告したりしたケース。総額約一億五千七百万円は、今回判明した全国の不当な生活保護費支給の総額約二億円の八割弱に上る。市は過去五年間の国の負担分を国庫に返還する方針で、受給者にも過去五年間の不当受給分の市への返還を求めていく、としている。
 市は今後、広瀬年久助役を委員長とする生活保護事務庁内検討委員会を設置し、保護課の管理職を三人から九人に増やして専任の弁護士を依頼。受給者の収入申告と課税申告との照合を徹底し、虚偽申告で返還に応じないなど悪質なケースは刑事告発も検討する−としている。教育民生委員の市議からは「チェック体制作りをきちんとすべき」「本当に生活に困っている人には優しい制度に」といった意見が出た。
 高松市内では、約三千世帯、約五千人が生活保護を受けている。支給総額は九九年度で約七十三億六千万円。

■補正予算案など22議案を提案 徳島市議会が開会 /徳島 (朝日新聞 2000年12月8日)

 徳島市の十二月定例議会が七日開会し、一億七千八百万円の一般会計補正予算案や中央省庁改編に伴って大臣名の変更が必要となる条例の改正案など計二十二議案が提案された。
 一般会計補正予算案の内訳は、私立保育所の入所人数の増加に伴う運営費負担金四千五百万円▽生活保護者の増加に伴う生活扶助費と住宅扶助費八千四百万円▽一宮町、多家良町の棚田保全費六百六十万円▽合併浄化槽の設置補助費二千五百万円など。
 また、ボーナス支給日を八日に控えているため、八月に出された人事院勧告に沿って市議の期末手当を〇・一五カ月分(一人当たり十万九千円)減らす議員報酬に関する条例の改正案を全会一致で可決した。

■生活保護制度の改善を求める 厚生省検討会 (朝日新聞 2000年12月9日)

 リストラされた中高年や外国人など、社会福祉が十分行き届いていない人たちへの福祉のあり方について議論してきた厚生省の検討会は八日、地域社会の「つながり」の再構築を強調し、「生活保護制度の検証」を盛り込んだ報告書を提出した。
 厚生省は、制限が大きいと指摘されているホームレスへの生活保護の適用方法の改善などを検討する。
 報告書は、生活保護については独り暮らしのお年寄りが増えたことなどを踏まえ、保護の要件や適用法、社会保険制度との関係の検証などを求めている。
 約三万人いるとみられるホームレスは、自治体によっては「決まった住所がない」「働ける」などを理由に、病気や障害のある場合以外は適用が制限されていることが多い。このため、厚生省は現在の運用が適当かどうか検討する方針だ。
 また、同省は「貧困」のあり方も時代とともに変化しているとし、生活保護から漏れていたり、保護を避けていたりする低所得者層の本格的実態調査を行う。食費を削って携帯電話に金をかける若者や、逆に独身で親元を離れないため低収入でも、相対的に豊かに暮らせる若者が増加していることなどが背景にある。
 所得の低い方から二割の世帯を対象に、東京都内約五百世帯について行ってきた調査を、全国に拡大、十倍の規模で実施する。

■再審請求を厚生省が棄却 サリン事件、被害者の生活保護打ち切り (朝日新聞 2000年12月9日)

 地下鉄サリン事件の後遺症に苦しむ三十代の元会社員の女性=東京都目黒区在住=が障害基礎年金の受領を理由に生活保護を打ち切られた問題で、厚生省は八日、この女性が都の決定を不服として申し立てた再審査請求を棄却する裁決をした。

■社会保障の「網」が利かない(あなたの隣で) (朝日新聞 2000年12月10日)

 あわただしい靴音とともに、勤め帰りの人波が目の前を行き交う。
 神奈川県藤沢市、JR藤沢駅の地下道。段ボールで寝支度を整えるヒロシさん(五九)=仮名=は、大切そうに年金手帳を取り出した。
 「今は、これが生きる望みなんだ」
 昨春、長年勤めたタクシー会社を辞めた。「自発的失業」のため、失業手当は三カ月たたないと支給されない。再就職先も見つからず、木賃アパートを出た。九カ月後には、「路上」を転々としていた。
 生活保護法には年齢による制限はない。しかし、実際には六十五歳未満は厳しく制約される。唯一の収入見通しが厚生年金だが、それも受給開始まであと一年ある。
 ここ数年、社会保険に加入していながら、失業などをきっかけに社会保障の網にかからず、転落する例が増えている。
 
 ○生活守れぬ「安全網」 失業…路上生活…年金もわずかな額に
 ヒロシさんが昨春退職したのは、交通事故がきっかけだった。空車で東京都内の目黒通りを流していた時、急に激しい目まいがし、パトカーに接触した。
 事故のことで上司になじられた。体調への不安も大きく、独身で貯蓄は少なかったが辞める決心をした。木賃アパートから友人のマンションに移り、都内の職業安定所に通ったが、目まいの症状があるため仕事は決まらない。
 昨年暮れ、いたたまれなくなって友人宅を出た。
 出身地に近い藤沢市に戻った約二カ月後には、所持金はなかった。都内の職安にも通えず、月約十六万円の失業手当は、十カ月分のうち三カ月分受け取れなかった。
 種部弘・藤沢市生活福祉課長は「生活保護の適用は難しいケース」と話す。病気や障害で働けない場合を除き、五十歳代は「稼働年齢」と見なし、職安に行くよう指導する運用になっているからという。「ただ、職安に行っても仕事がない例が多い。それでも、ほかに手の打ちようがない」
 頼みの綱が厚生年金だ。タクシー運転手として勤めた年数は、通算で十七年。藤沢市役所はこのほか、工場や飲食店で以前働いていた記録を探し出し、加入期間が計二十一年で資格はある、と確認してくれた。
 来春から厚生年金の一部の受給開始年齢が一年上がり、もらえる額はわずかになりそうだ。
 それでも、年金手帳は片時も手放さない。
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 「国のお世話にはならないと、生活保護を嫌う人もいるが、死ぬよりいいと思うんだけど」。北海道出身のイサオさん(五二)はつぶやいた。しかし、受けられなかった。
 食品問屋を自営していた。十年前、上京してそば屋に入ったが、腰を痛めて辞めた。自営が長く、失業手当をもらうことに気づかなかった。申請が遅れ、受けたのは四カ月分ほどだけ。年齢と腰の痛みで仕事は見つからず、段ボールでの生活を始めて、生活保護を考えた。
 今夏、福祉事務所で腰が痛くて働けないと訴えた。レントゲンを撮ったが、診断は「労働可」。福祉事務所からは「医師が判断したのだから、生活保護は無理だ」と言われたという。「レントゲンに写るぐらいなら、何年も苦しんでない。制度が現状についていっていない」
 東京・池袋駅近くで野宿している。年金制度は加入していない職場が長く、かけた年数を指折り数えたが、足りそうにない。
 (カタカナは仮名)
 (企画報道室・神野武美、くらし編集部・佐藤実千秋)
 
 ◇雇用変化保障制度に限界 急増ホームレスの対策急務
 厚生省が、最後のセーフティーネット(安全網)である生活保護など社会福祉制度からもれている人たちへの対応を検討している。その主なきっかけが、急増するホームレス問題だ。最近は日雇い市場で止まらず、失業・倒産などから短期間で路上生活に転落するケースが目立つ。今の社会保障制度でなぜ救えないのか。その原因として、「六十五歳未満の生活保護は困難」などと窓口でふるいにかける運用例のほか、働き方が変化する中で現実と合わなくなった雇用保険や年金の制度疲労が指摘されている。
 
 現在、三万人ともいわれるホームレスは、一般的な勤労者層にまで広がっている。大学教授らの「都市生活研究会」が今年三月、東京都内で実施した「路上生活者実態調査」によると、平均年齢は五十四歳。野宿の原因として、不況による失業が四割強で、自分から退職した例が三割だった。また、サービス業など安定的な職につき、厚生年金などの社会保険に加入していた人が約七割を占めていた。
 増える要因の一つは雇用の変化だ。リストラが広がり、派遣社員やフリーターが増えて終身雇用制が崩れた。これまでは失業者の「受け皿」だった建設業の日雇い仕事も減っている。
 一方で、暮らしを支える社会保障制度も、終身雇用の崩壊など時代の変化から遅れていると指摘される。都留民子・広島女子大助教授(社会保障)は「フランスの失業給付は最大五年間だが、日本は三百日と短い。中小企業では、厚生年金などに加入しない日雇い・アルバイトといった無保障労働も広がっている」と警告する。
 住宅政策も、福祉政策との連携が十分ではない。大本圭野・東京経済大教授(社会保障)は「欧州連合(EU)諸国では、高齢などで所得を失った時に、家賃補助などで住宅を保障する制度がある。日本では、受給条件の厳しい生活保護しかない」と話す。
 その生活保護も、自治体の福祉事務所では「住居がない人は適用しない」「六十五歳未満は働けるから保護しない」など、生活保護法上の根拠の不明確な運用が少なくない。
 失業者は現在、約三百万人を数える。その中には、「ホームレス予備軍」が潜んでいる。社会保障制度の網の目の大きさと運用実態を見直し、住宅と雇用の確保にも目を配る重層的な取り組みが求められる。
 
 【写真説明】
 通り過ぎるサラリーマンのすぐ横に、野宿をする人たちがいる=大阪市内の私鉄駅の地下通路で

■保険料徴収2カ月、お年寄りに悲鳴(90市町村介護保険) /福島(朝日新聞 2000年12月12日)

 据え置かれていた六十五歳以上の介護保険料の徴収が十月に始まってから二カ月が過ぎた。市町村によって、また所得に応じて金額が違うが、一年間は決められた額の半額だけ支払う。だが、年金暮らしの高齢者からは「半額でも大きな出費」「全額払うようになったらどうすればいいのか」という切実な声があがっている。
 
 県南のある町に住むAさん(八七)は、脳こうそくで何度も倒れ、要介護1の認定を受けた。要支援の妻と、脳こうそくで倒れ、同じく要介護1と認定された娘との三人暮らし。三人とも体を動かすのがつらく、家事はヘルパーに頼っている。
 Aさんは十月、保険料徴収の通知を見て、担当のケアマネジャーに電話した。「これから介護保険料を払うようになるから、サービスの利用を減らしたい」
 Aさん宅の収入は、夫婦の年金や恩給をあわせて月に十万円ほど。四月から支払っている介護保険サービス利用料の一割負担分は、三人あわせると月約一万五千円になる。それに食費や光熱費、電話代などでぎりぎりで暮らしている。以前、生活保護を申請したが、土地や家を持つため受けられなかった。
 十月から、三人分の介護保険料、約二千円分をねん出するため、Aさんの訪問看護を週三回から週二回に減らした。「緊急時はいつでも訪問看護を利用できる」という契約もやめた。
 訪問している看護婦は「いつ病気が悪くなるかわからないので、回数は減らさないほうがいいのですが」と心配する。Aさんは「保険料を全額払うようになったら、どうすればいいのか」と不安顔だ。
 福島市の場合、十月の徴収開始通知を送った後、一週間で、介護保険課に四百件近い相談が寄せられたという。
 中でも「生活が大変になる。払えない」といった切実な声も少なくなかったという。
 全国的には、独自に低所得者の介護保険料を免除したり、減らしたりしている市町村がある。
 県介護保険対策室によると、県内で、サービスの利用料を安くしている市町村は六つあるが、低所得者に対して保険料を減免する市町村はない。
 対策室は「市町村には、保険なのだから全員から保険料をもらうと説明してきた。金額も所得に応じて五段階になっている。低所得者の対策なら、保険料とは別のところでやるべきだ」と話している。

■差額ベッドなお不透明 「基準明確化」の厚生省通知出たけれど…(朝日新聞 2000年12月13日)

 病院での長期療養が必要な患者やその家族にとって、保険のきかない不透明な負担が重くのしかかってくるのは「入院実費」だけではありません。四人以下の病室で、特別な室料を取る「差額ベッド」も大きな問題です。厚生省は先月、差額ベッドの室料の徴収できないケースをはっきりさせ、全ベッド数の五割以上を差額ベッドにする場合の条件を厳しくする通知を出しました。でも、実際の室料には上限もなく、病院の都合だけで患者の負担が左右される状況は変わっていません。
 (南雲隆、吉田晋)
 
 東京近郊に住むA子さん(六七)は、夫が十一月に近くの民間老人病院に入院したとき、病院側の説明を聞いて「おやっ」と思った。それまでいた老人病院では求められなかった室料(差額ベッド料)が、一日千円必要、と言われたからだ。
 「料金のいらない部屋はないんですか」と聞くと、「八人部屋がありますが、ご主人は四人部屋でなければ治療できません」と言われた。差額ベッドは四人部屋以下だけに認められている。診療費の一部負担金や入院実費も含めると、月に十五万円以上払わなければならない。夫と月二十万円程度の年金生活を送るA子さんは不安になった。
 「入院する以上は病院の決まりを守ってほしい」と言われ、泣く泣く受け入れた。五日後には「(院内感染の代表ともいえる)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染している疑いがある。個室に移ってほしい」と言われた。室料は一日二万円。「そんなに払えません」と拒むと、「では一万円で」。最後は五千円まで下がった。が、夫は数日後に死亡した。
 実は、治療上の必要や病院の都合による場合は室料を徴収できない。A子さんも払う必要はなかったとみられる。夫を失った悲しみと、釈然としない思いと。A子さんは二重に打ちひしがれている。
 
 ○大部屋の入院、利用期間制限
 東京都内のある民間病院では、大部屋に入院した患者に、一定期間ごとに差額ベッドの部屋に移ってもらっている。料金は一日約二千円−一万円。「ずっと大部屋を利用したいと希望する方は多いのですが、経営上やむを得ない」と事務長は話す。この病院では、入院ベッドの六割が長期入院用。うち二割程度を介護保険の適用にしたが、要介護度の重い患者で埋まってしまい、新しく入院を希望する人は医療保険のベッドで受け入れるしかない。医療保険では、入院が六カ月を過ぎると病院の収入が減る。「順番に差額ベッドに入ってもらい、公平にご協力をお願いしています」
 差額が払えない人は、よそに転院せざるを得ない。今年も、生活保護を受けている患者など何人かが隣県の病院に移ったという。
 
 ○病院により大差
 保険のきく全病院を対象にした厚生省調査によると、一九九九年七月現在の差額ベッド数は約二十二万床。全ベッドの一三%程度で、割合はここ数年変わっていない。料金は平均一日五千円弱で推移している。
 しかし、実際の金額は病院によって大きく違う。病院情報を提供している民間団体・老人病院情報センター(東京)によると、最も高い東京近辺では、一般的な料金は個室で一日八千円−三万五千円程度。中には十万円もの豪華版もある。
 また、実際には六人部屋なのに徴収していたり、個室に移して退院を余儀なくさせるようなケースも聞いたことがあるという。同センターでは「まずは料金体系を明確にして、患者が納得して入院できるようにすることが大事」と話す。
    ◇
 差額ベッドや入院実費など保険外の患者負担に関する体験、ご意見を引き続きお待ちしています。
 
 ◆徴収できぬケース明示
 厚生省は八四年に差額ベッドを認めて以来、少しずつ条件を緩和してきた。当初は全ベッドの二割としていた上限を原則五割にし、個室か二人部屋に限っていたのを四人部屋まで認める、という具合だ。
 だが、「基準があいまい」といった批判などを受けて制度を見直し、十一月十日付で新たな通知を出した。
 見直しの要点は、室料を取ってはいけないケースをこれまでより具体的に示したことだ=表。たとえば、患者の同意書にも、室料の記載や患者側の署名がなければ徴収できない。手術後の患者らが治療上の必要で差額ベッドを使う場合なども徴収できない。
 医療費が効率化されても、その分が保険外負担にしわ寄せされては患者はたまらない。「治療上の必要」のあいまいさなどを追及してきた大阪市の市民グループ「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」の事務局長、山口育子さんは「手術後とはいつまでなのかとか、まだ問題は残る。そもそも療養環境のための料金を四人部屋まで認めているのは理解できない」と指摘している。
 
 <差額ベッド料を徴収できないケース>
 (1)同意書による同意の確認をしていない場合(同意書に室料の記載がない、患者側の署名がないなど内容が不十分の場合を含む)
 (2)「治療上の必要」で差額ベッドを使う場合
 (例)救急患者、術後患者などで病状が重いため安静が必要な者。または常時監視を要し、適時適切な看護・介助が必要な者▽免疫力が低下し、感染症にかかる恐れのある患者▽集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者
 (3)病棟管理の必要性などから差額ベッドに入院させた場合で、実質的に患者の選択によらない場合
 (例)MRSAなどに感染している患者で、他の患者への院内感染を防止するため差額ベッドを使う場合

■ホームレス自立へ支援施設 NPOが北九州に設置計画 【西部】 (朝日新聞 2000年12月15日)

 長引く不況で増え続ける北九州市のホームレスの自立を支援しようと、市内の非営利組織(NPO)が、ホームレスを一時保護して就労や生活保護受給の準備をする「シェルター」(避難所)の設置に乗り出す。民間のアパートを借り上げ、来年度の開設を目指す。同様の施設は、厚生省が今年度から大阪や東京で建設を進めているが、九州・山口では公共、民間ともまだない。市はホームレス対策で排除の姿勢を打ち出しているが、NPO側は「早期実現には、行政の理解が必要」として市側に支援を求めている。
 このNPOは「北九州ホームレス支援機構」(奥田知志代表)。一九八八年からホームレスへの炊き出しをしてきたボランティア「北九州越冬実行委員会」が十一月、NPO法人化したのを機に改称した。
 機構によると、市内のホームレスは十一月現在で約三百五十人といい、九年間で約四倍になった。中高年が多く、女性や障害者も増えているという。健康状態は悪く、昨年度には延べ五百八十二人が救急搬送され、市が肩代わりした医療費は六億円を超えた。
 生活困窮者の福祉には生活保護の制度があるが、支給は原則として居住地が必要。「住所不定」では就職も難しい。機構は九四年からホームレスのアパート入居を支援しており、六年間で五十六人が自立した。
 シェルターは、六年間の経験を基に、ホームレスの生活保護受給と就職を支援し、野宿生活からの自立を促すのが目的だ。高齢者や女性、障害者のホームレスを一時保護して福祉施設を紹介したり、低家賃の住宅への転居を準備したりするなどの機能も担う。
 十−十五人が入居できるアパートを機構が借り上げて、住居と食料を提供する。入居は三カ月を単位とし、年間四十−六十人の自立を目指す。シェルター内では、ヘルパー資格やコンピューター技術などの職業訓練を行う構想もある。スタッフが入居者の相談に乗ったり、元ホームレスの連絡組織をつくったりするなど、精神面の支援も長期的に行うことにしている。
 同様の施設は東京や大阪などにあるが、大半は行政機関がNPOと連携して運営している。北九州市は今年に入り、公園での炊き出しを排除したり、使用料を取ったりするなど、非協力的な姿勢が目立つ。
 運営費は年一千万円を見込んでおり、三百万円が集まった段階で開設を予定している。経費は全額、寄付に頼っており、機構では早期実現に向けてカンパを募っている。(…)

■「罪つぐなう機会得た」 法廷で伝道師(街で) /埼玉(朝日新聞 2000年12月15日)

 商店街にクリスマスソングが流れる。夜、輝く光で飾られる教会もある。一人のキリスト教伝道師が十四日、法廷で裁きを受けた。
 「主文、被告人を懲役一年に処す。ただし三年間執行を猶予する」
 詐欺罪に問われた川越市砂新田の小泉利夫被告(六五)に対する浦和地裁川越支部の判決(求刑同一年)。
 起訴状などによると、小泉被告は一九九七年十月ごろ、ホームレスだった男性(六二)と知り合い、和光市内のアパートを紹介した。アパートが老朽化し、大家から立ち退きを求められた男性は小泉被告に相談し、九九年八月に上福岡市のアパートに引っ越すための扶助を和光市に申請。二十一万八千五百円が支給された。
 しかし、川越市に上福岡のアパートより家賃が安く、駅に近くて状態が良い部屋を見つけた小泉被告は、不動産業者に上福岡のアパートと同じ家賃の賃貸契約書を作らせ、和光市に提出、不正受給させたとされる。
 小泉被告は三五年、広島県に生まれた。二十歳代から和光市を中心に布教活動などをしているキリスト教会の信者となり、七一年に伝道師になった。川越市内に伝道所を開いて独立したのは九四年ごろ、ホームレスに食べ物や衣服を渡すなど積極的に弱者救済にあたっていた。
 生活保護が受けられないホームレスにアパートを紹介、生活保護申請に付き添って役所を訪れ、時に窓口で「自分の家に引き取ったから生活保護を受けさせろ」と、声を荒らげたりすることもあったという。
 教会関係者は、「困っている人を助けたいという使命感が強い人で、熱心さのあまりに手段を選ばなかったのでは」と見る。
 不正で手に入れた差額は約十一万円。小泉被告が手にしたのは七万円。男性のアパートの火災保険料約三万円を支払い、約四万円を伝道に使った。
 公判で裁判官から「何か言うことは」と聞かれた小泉被告は、「罪を犯していることを忘れ、偽善者として伝道活動を続けるところだった。逮捕され、裁判を通して自分の罪が暴かれたことに感謝します」と話したという。
 小泉被告は「お金を積んで(拘置所から)出るのは潔くない」と、最後まで保釈を請求しなかった。

■愛知県が見舞金705円分 豪雨被災者の生活保護費減額【名古屋】 (朝日新聞 2000年12月16日)

 東海豪雨で被災した生活保護受給家庭に、愛知県などが支給した災害見舞金をめぐり、同県西枇杷島町の一世帯が受け取った六万円のうち、七百五円を同県が収入と認定し、生活保護費から差し引いて支給していたことが十六日、分かった。
 生活保護を受けている家庭は、生活保護費以外の収入があると、認定を受ける必要がある。その後に保護費から認定額が差し引かれる。災害時の見舞金や義援金は「自立更生のために充てられる額」を除外して収入認定する基準を厚生省が示している。全額が生活再建に使われれば減額されない。
 愛知県は災害の発生直後、この基準を適用して被災した生活保護世帯への見舞金などを収入認定すべきか調査した。その結果、同県は西枇杷島町で床上浸水となった一世帯について、県と町が支給した見舞金六万円のうち七百五円が自立更生目的で使われたか領収書などで確認できず、十一月分の生活保護費から差し引いたという。
 県医療福祉計画課の担当者は「冷たいと批判する声もあるかもしれないが、制度の趣旨に沿った運用をせざるを得ない。生活再建の費用として使われたら、その時点の支給で調整する」としている。
 九月の東海豪雨で、愛知県内では名古屋市と中核市二市を除くと、六十五の生活保護受給世帯が被災し、災害見舞金や義援金の支給を受けた。
 愛知県の措置に、西枇杷島町で炊き出しなどの活動を続けているボランティアは「義援金や見舞金は、むしろ弱い人たちにこそ厚く配分されるべきなのに、弱い人たちだけに監視の目を向けるような対応を取ったのは残念だ」と批判している。同町で、生活保護を受けている住民の一人は「水害で普段に増して生活が厳しい時期に、購入品目の書類や領収書の提出を求められて困った」と漏らしている。

■揺れる旧産炭地の模索 「石炭六法」失効まで1年 【西部】 (朝日新聞 2000年12月16日)

 産炭地域の地域経済と雇用を支えてきた石炭関係諸法(石炭六法)が、二〇〇一年度末に失効する。「疲弊が特に著しい」として指定されている福岡県筑豊地区などの「六条地域」の大半は、今後も五年間、激変緩和の措置を受ける見通しだが、産業が定着せず自立が遅れている地域では、石炭六法失効による失業対策事業などの先細りを懸念し、危機感を強めている。法失効を控えた旧産炭地の福岡県田川市と大牟田市、九州で唯一の炭鉱を持つ長崎県外海町の三地区で、それぞれの表情を追った。(石炭取材班)
 
 ■福岡・田川市
 十一月二十一日、福岡県田川市の滝井義高市長は東京・霞が関の労働省にいた。産炭地域開発就労事業(開就)が来年度で終わった後に、規模を縮小して続く暫定事業の予算の増額を求めるためだった。
 「予算枠はもっと弾力的であっていいはずだ」
 「それは難しいです」
 労働省幹部は首を縦に振らなかった。「子(自治体)が苦労しているのに、子の心、親(国)知らずだ」。滝井市長は無念さをかみしめ、同省を後にした。
 開就は、炭鉱閉山後に約十万人にのぼった筑豊の失業者を救った失対四事業の一つ。現在は福岡県だけが対象で、筑豊を中心に約千六百人。平均年齢は五七・四歳。田川市郡は四割近くを占める。その開就が六法失効時に転機を迎える。国や県などが出す百五十六億円の基金を財源に、最大五年間は暫定事業として残るが、基金が底をつけば打ち切られるからだ。
 福岡労働局によると、四事業の就労者は同市郡だけで約二千人。「定職化している」「賃金が高い」との批判があるが、市幹部は「失対事業がなくなると、生活保護率をさらに押し上げかねない」と懸念する。
 就労者と土建業者は十月、田川市で決起大会を開いた。実行委員長を務めた全国失業者労働組合の田中一夫委員長(五三)は「事業を縮小すれば、ますます衰退を招く」と強調。参加者からも事業規模の継続を求める発言が相次ぎ、「開就事業を存続させ、雇用確保と地域振興を実現しよう」との決議文が採択された。
 泉綾子さん(五五)は、離婚後の家計を開就の賃金で賄い、二人の子を育てた。「失業したら、この不況で仕事が見つかるはずがない」。土建業者の佐渡文夫さん(六六)も「売り上げの半分は失対事業。一般の公共事業だけでは会社が立ちゆかない」と不安を口にする。
 旧産炭地への国の振興策は、失対事業や土地陥没を元に戻す「鉱害復旧」の公共投資が主だった。多くの補助金が落ちた田川市郡には「自立」が遠のいた側面もある。九州共立大学の上野登・元教授(経済地理学)は「石炭六法に依存してきた田川市郡は、発展のための内発性を持たず、自発的に自立する機会を失った」と指摘する。
(…)

■原告の賠償請求を棄却 国保料訴訟で旭川地裁 【北海道】 (朝日新聞 2000年12月19日)

 住民税が非課税となるなど自分には支払い能力がないのに、国民健康保険料の支払いを強要され、憲法が定める生存権が侵害されたとして、旭川市の無職男性が国と道、旭川市を相手に、国家賠償法などに基づいて十万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が十九日、旭川地裁であった。斉木教朗裁判長は「自らの都合で生活保護を受けない者に、国保料の全額免除の制度を設けなくても、立法府の裁量を逸脱乱用したとは言えず、国保料の賦課徴収は憲法に違反しない」として、原告の請求を棄却した。原告は記者会見し、「判決は厚生省を代弁したものであり、怒りを覚える」として札幌高裁に控訴する考えを明らかにした。
 訴えていたのは同市大町の杉尾正明さん(六四)。杉尾さんは市から一九九七年度分の国保料二万六千九百三十円の納付を求められ、支払い能力がないとして減免措置を申請したが認められず、九八年二月までに分割払いで全額を支払った。
 裁判では、旭川市と指導的立場にある国、道が国保法の解釈適用を誤り、生存権を定めた憲法二五条と法の下の平等を定める一四条の趣旨に違反して、国保料の支払いを強要され、経済的、精神的苦痛を受けたと主張。国側は訴えの棄却を求めていた。
 これとは別に、杉尾さんは国保料を明記していない旭川市条例は違憲だと主張し、市に国保料賦課処分の取り消しなどを求めた行政訴訟の原告。この裁判では、九八年四月、一審の旭川地裁が「租税法律主義に反して違憲」と市に賦課処分の取り消しを命じ、杉尾さんが勝訴。しかし九九年十二月、二審の札幌高裁は、一審判決を取り消して原告の請求を棄却する逆転判決を言い渡し、現在、最高裁で係争中だ。

■国保料訴訟で賠償請求棄却 旭川地裁(朝日新聞 2000年12月19日)

 住民税が非課税となるなど、支払い能力がないのに国民健康保険料を徴収され、憲法が定める生存権が侵害されたとして、北海道旭川市の無職男性が国と道、旭川市を相手に、国家賠償法などに基づき十万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が十九日、旭川地裁であった。斉木教朗裁判長は「自らの都合で生活保護を受けないものに、国保料の全額免除の制度を設けなくても立法府の裁量を逸脱乱用したとはいえず、憲法に違反しない」とし、原告の請求を棄却した。原告は札幌高裁に控訴する考えを明らかにした。
 訴えていたのは同市大町の杉尾正明さん(六四)。

■「野宿者問題」考えよう 仮設反対の住民団体が市民討論会 /大阪(朝日新聞 2000年12月19日)

 大阪市が東住吉区の長居公園内に建設中の「仮設一時避難所」に反対してきた住民グループらが、問題解決の道筋を探る市民討論会「野宿者問題と公園」を二十二日午後六時から、市立阿倍野市民学習センター(あべのベルタ三階)で開く。
 二十五日に「避難所」がオープンするのを受け、討論会では、大型避難所の建設は野宿者の自立につながるのか、生活保護制度を積極的に適用する方が合理的ではないのか、ホームレスをつくらない住宅政策や市民への情報公開のあり方などを検証、意見を述べ合う。
 講師は「釜ケ崎のまち再生フォーラム」事務局長で漫画家のありむら潜さん、「住民投票立法フォーラム」事務局長の今井一さん、兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所研究員の阪東美智子さんら。反対署名運動をしてきた「よりよい長居公園を目指す会」や「長居公園を考える会」などの有志でつくった実行委員会(090・1585・1191)が主催する。
 「目指す会」の小松由美子さんは「大阪市の野宿者対策は、生活保護適用の『入り口』を狭くし、簡易宿泊所を活用しないなど、自立につながる真の解決策とはいえない。こうした社会的弱者の福祉問題に、市民はどう取り組むべきかを考えたい」と話している。

■2歳児凍死(現場はいま 2000とちぎ:8) /栃木(朝日新聞 2000年12月20日)

 今年二月、宇都宮市の無職女性(三〇)の長女(当時二つ)が自宅アパートで凍死した。胃の中は空っぽだったという。女性は長女と二人暮らしだった。収入はほとんどなく、一月末ごろからガスと水道を止められ、申請の不備から生活保護の受給も遅れていた。
 
 「対応が悪い」「仕事が怠慢だ」
 凍死が報道された今年二月、宇都宮市には批判や意見の電話や手紙が相次ぎ、総数は百五十件を超えた。職員の一人は「庁内全体が神経質になっていた。細かな情報でも関係する課に伝えておかなければとピリピリしていた」と振り返る。
 「再発防止のため執行体制の見直しに至急取り組んでいきたい」。三月議会での福田富一市長の発言を受けて幾つかの対策は取られた。「水道料金の滞納を生活困窮のシグナルと見ることも出来た」との反省から、保健福祉部、市民生活部、水道局を中心に「保健と福祉に関する連絡会議」を三月に立ち上げたほか、冊子「保健・福祉総合ガイド」を作成。一万部を刷り、四月から福祉関係各課の窓口に置いた。「助成などを受けたいときは」「心配ごとや相談があるときは」など七項目に分かれ、相談先が明記されている。市の広報誌にも同じ内容の記事を掲載した。
 しかし、井沢清久・生活福祉課長は「水道料金や国保税を滞納しているからといって『生活保護が必要ではないか』との姿勢で接するわけにはいかない。個人のプライバシーやプライドも尊重しなければならない」と生活保護相談の難しさを強調する。
 同市では、生活保護家庭、生活保護の相談件数とも年々増加している。保護家庭は今年四月現在で千九百十四世帯。五年前の約一・六倍にあたる。また、今年度の相談件数は、急増した昨年度の千四百三件をすでに超えた。
 衰弱が激しかったため入院していた女性は、六月に退院。同市内に新しいアパートを借りて生活を始めたという。一方で、同市には「女性に届けてほしい」と、カンパが今だに寄せられている。
 宇都宮南署は十月十九日、女性を保護責任者遺棄致死の疑いで宇都宮地検に書類送検、地検の処分はまだ出ていない。
 (土屋亮)
 
 【写真説明】
 宇都宮市生活福祉課の相談窓口。奥には個室もある

■ホームレス支援で静岡市に要望書 市民団体 /静岡(朝日新聞 2000年12月21日)

 静岡市のホームレスの人たちへの支援を続ける市民グループ「野宿者のための静岡パトロール」(事務局・笹沼弘志静岡大助教授)が二十日、静岡市に住居の保証や生活保護を認めるよう促す要望書を提出した。
 要望書は、同市が住居のない人の生活保護申請を却下していることについて、平等に生活保護を認めるよう要求。市による宿泊施設などの整備や市営住宅への優先的入居も求めている。
 市生活福祉課は「対応は検討中で、できる部分からやっていきたい。生活保護の適用は、厚生省の指針などと照らし合わせて考えたい」としている。

■補正予算案など30議案を議決し閉会 徳島市議会 /徳島(朝日新聞 2000年12月22日)

 徳島市の十二月定例議会は二十一日、公民館や児童館などの公共施設へのパソコン計約五百五十台の設置費を盛り込んだ一般会計補正予算案など三十議案を議決し、閉会した。
 一般会計補正予算の総額は二億八千万円。内訳は、国の情報技術(IT)基盤整備促進に伴うパソコン設置費約一億六百万円▽生活保護者への扶助費約八千四百万円▽私立保育所の運営費負担金四千五百万円など。

■野宿者問題で討論 阿倍野区で考える会 /大阪(朝日新聞 2000年12月23日)

 「野宿者問題と公園」について考える市民討論会が二十二日夜、阿倍野区の市立阿倍野市民学習センターで開かれ、約百人が出席した。大阪市が長居公園に建設中の野宿生活者向け仮設一時避難所に反対する住民グループのメンバーらが、市民への情報公開のあり方や野宿者問題の解決策を探ろうと企画した。
 講師として出席した「釜ケ崎のまち再生フォーラム」事務局長のありむら潜さんは「野宿者対策は、介護などの問題も含めたまちづくりの視点が必要」と発言。「住民投票立法フォーラム」事務局長の今井一さんは「地域のことは地域が決める時代。大阪市は最初から結論を決めて住民に説明しただけで、時代錯誤だ」と話した。
 参加者からは、「生活保護について市の担当者はどう考えているのか」「行政の施策を変えるには市民はどう行動するべきなのか」などの質問が出た。

■東京都予算、6%増額 「外形税」など税収増12% 来年度当初案(朝日新聞 2000年12月23日)

 東京都が二〇〇一年度の一般会計当初予算案を今年度より約六%増の六兆四千億円規模とする方向で編成を進めていることが二十二日、明らかになった。大手銀行を対象にした外形標準課税の導入や法人二税(法人都民税、法人事業税)の増収などを背景に三年ぶりの増額となる。しかし、環境対策や防災対策などの重点政策を除く投資的経費を抑えるとともに、借金返済に力を入れる「財政再建予算」とする方針だ。年明けに石原慎太郎知事が査定し、予算案を確定する。
 都は、歳入の大半を占める都税収入を今年度より約五千億円増の四兆四千億円程度と見込んでいる。国の一般会計の大蔵原案が税収の伸びを四・二%としているのに対し、都は一二%以上の大幅な伸びを想定している。
 一方、歳出については、人件費や生活保護などの扶助費を含む経常的経費が今年度より約二千億円増えて四兆円程度になる。退職手当や介護保険関係費の増大が主な要因。逆に公共事業などの投資的経費は今年度の七千二百六十億円より五百億円近く削減する方向だ。公債費は今年度の約四千六百億円を大幅に上回る六千億円以上とする。

■遺骨宅配便、故郷へ 独居の年配者など 不況で「引き取り行けぬ」 (朝日新聞 2000年12月25日)

 宅配便でふるさとへ帰る遺骨が、増えている。独り暮らしの高齢者やホームレスが亡くなる。故郷の遺族に連絡を取っても、葬儀どころか、遺骨の引き取りにも来てもらえない。そんな場合にやむなく遺骨を宅配便に乗せる。配達員が意識しなくてすむように、骨つぼを入れた段ボールには「瀬戸容器」と品名が書いてある。
 
 社会福祉法人「東京福祉会」(本部・東京都文京区)は身元不明者や身寄りのない人の遺体を引き取って火葬している。年間二千体以上にのぼり、八割近くは生前に生活保護を受けているという。路上で保護されたり、独り暮らしで体調を崩したりして入院し、病院で亡くなる人が多い。
 もともとは東京都内で暮らしていたはずなのに、死亡時の病院は群馬県や静岡県にまで広がっている。数カ月ごとに病院を転々とし、少しずつ都心から離れていくらしい。東京で生活保護を受けていた人については、同福祉会が遺体を引き取りに行く。
 生活保護を受けていた人が亡くなると、福祉事務所が事前に届け出られている戸籍から親類を探す。だが、ようやく連絡が取れても、葬儀代の支払いや遺骨の受け取りに来ることを拒まれる例がここ数年増えている。
 「事情があって故郷を飛び出してきたような人が多いですから」と東京福祉会職員の藤間亮一さん(六七)。「それでも昔は『ばかやろう』って遺体に向かって怒鳴りつけるためにでも、受け取りに来てくれたんですが……。不景気のせいですかねえ」
 初めて遺骨を送ったのは十五年ほど前。北海道出身の人の骨で、唯一の身内である母親が福祉施設にいて、受け取りに来られないという事情があった。それが最近では毎月二−六体の遺骨を全国に送らなければならない。統計はとっていないが、バブル経済が崩壊して以降、急に増えたように藤間さんには思える。
 白い骨つぼを桐(きり)の箱に納め、一辺三十センチ弱の段ボール箱に入れる。すき間には脱脂綿をつめる。カサカサと骨がふれあう音がしないように。
 宅配料は二千円前後。これだけは着払いで遺族に払ってもらう。
 それでも、引き取ってもらえる遺骨はましな方かもしれない。
 どうしても引き取ってもらえない遺骨や身元がわからない遺骨は東京福祉会で預かり、無縁仏となる。こうして共同墓地に葬られる遺骨は全体の三分の一に及ぶ。
 発送に行くため、小さな箱を両手で抱えながら、藤間さんは思う。
 「みんな、あったかく抱っこされて生まれてきたのにねえ……。それでも、ふるさとだから。『よかったなあ。やっと帰れるな』って送りだすんです」
 
 【写真説明】
 (上)遺骨は送る前にまず成仏を祈り、それから宅配便に乗せる=東京都文京区で
 (下)遺骨を宅配便で送った伝票の控え。伝票をはりつけたノートをめくると、全国各地の地名が出てくる

■「介護保険料高い」 男性の請求を審査会が棄却 /新潟(朝日新聞 2000年12月26日)

 県介護保険室は二十五日、「介護保険料が高すぎる」として下越地方の六十五歳以上の男性が求めていた審査請求を県介護保険審査会が棄却したと発表した。処分は二十二日付で通知された。
 同室によると、男性は十月以降、支払うべき保険料について五段階中第二段階(県標準額で月千三十四円)と認定されたのを不服として、十月三日に同審査会に審査を請求していた。
 同審査会は二十二日までに、男性は生活保護の受給者など第一段階(同月六百九十円)と認定されるのに必要な条件を満たしていないなどとして、請求を棄却する裁決を下した。

■診療報酬高い静脈栄養、不必要に繰り返す 埼玉・朝倉病院(朝日新聞 2000年12月26日)

 埼玉県庄和町の精神病院「朝倉病院」で、今年五月ごろまで、不必要な患者にまで高カロリー輸液の投与が繰り返されていたことが、複数の関係者の話でわかった。食事ができない患者のための中心静脈栄養(IVH)のことで、医師による個別の指示なしに、看護婦に患者を選ばせていた。診療報酬の不正請求の疑いだけでなく、ずさんな治療が患者の容体悪化や死亡につながったケースがないかも焦点になる。この病院では患者の体をベッドに七カ所で縛る拘束もしていた。この病院に勤務していた複数の看護婦らが苦しい胸の内を明らかにした。
 
 「私が、患者さんを選んだんです。ばくばく食べられる人も、押さえつけて。IVHをしたんです」
 朝倉病院にこの春まで勤めていた元看護婦のAさんは、自分のやってきたことを後悔し続けている。
 精神病床が二百三十床。舞台になったのは、三階建ての本館だ。
 「IVH」治療は、体が衰弱するなど食事がのどを通らない重症患者が対象だ。心臓に負担がかかる場合もあり、心電図検査などを実施する必要があるが、診療報酬の点数は高い。
 
 ○幹部が指示
 通常のIVH治療は、以前から実施されていた。事情が変わったのは昨年の初めごろからだ。当時の病院幹部から、「二〇一(号室)もIVHの部屋にしよう」「二〇二、二〇五の半分くらいまで入れたい」と指示された。約二十五人分だ。
 個別の患者への指示でなく、部屋ごとに指示が下される。彼女は患者数を確保することを自分たちの「責任」と受け取った。
 複数の関係者が明かす。ベッドが空くと、別の病棟から患者を移して、IVH治療の対象とする。つまりIVHを受ける患者を、看護婦が選ぶのだ。
 体調の悪そうな人が見つかると病室を移す。医師がその患者の鎖骨周辺からカテーテルを体の中心にある太い静脈に通す。
 六十歳以下で、家族がいる人は避ける。身よりのない生活保護のお年寄りで、痴ほう症の方が選びやすいというのが、暗黙の了解だという。普通に食べている人も選んだ。
 
 ○やめてよね
 「くじびきでやったら」
 ある看護婦は、「だれかいない?」と対象患者を探しに来た同僚に、こう言ったことがある。精いっぱいの抵抗だった。
 Aさんは、指示をした幹部に、「もうやめてください」と訴えたこともある。だが、幹部は「六月には、十二月には、三月には」と先に延ばした。病院経営のためだな、と受け止めた。結局、今年五月ごろまで続いた。
 ある痴ほう症の男性のことが頭に残る。今年二月、AさんがIVHの対象者に選んだ。少し貧血ぎみでC型肝炎だったのが目にとまったが、食事はできた。IVH治療が始まると、「やめてよね、やめてよね。ご飯、おくれよ」といやがった。その声が耳に残る。
 その後、感染症を起こし、腎機能が低下して、一カ月半後に亡くなった。
 IVHとの因果関係はわからない。だが今年一年間の死者は約七十人だった。
 
 ○7カ所縛る
 ある看護婦は、初めてこの病院にきたとき、「犬つなぎ」を見て絶句した。畳の女性の部屋に、お年寄りたちがひもで胴体を犬のようにくくられていた。
 男性部屋では、両手、両足、胴体、両肩の「七点抑制」で、ベッドに日常的にくくりつけられている。
 「こんな形で人生を終わる人がいるんだと初めて知りました」
 だが、次第に縛ることにもなれて、大きな男性を一人ではできないので看護婦とヘルパーと四人がかりで押さえたこともある。
 今年十一月、抑制を解かれた男性患者の手足にはあざが残っていた。すぐには動けないほど抑制に慣らされてしまっていたという。
     ◇
 朝倉病院側は、「今はまだ、コメントは差し控えたい」と話している。
 
 ◇民主党チーム、立ち入り調査
 埼玉県庄和町の朝倉病院(朝倉重延院長)がほかの患者もいる病室で外科手術をしたり、入院患者を違法に縛りつけたりしていた問題で、民主党は「朝倉病院問題調査チーム」(代表・水島広子代議士)を設置し二十五日、病院を立ち入り調査した。
 精神科医でもある水島代議士は調査後、埼玉県庁で記者会見し「医療行為が適切だったかどうかにも疑問があり、今後も調べていく」と話した。
 
 ◇精神科医療や痴ほう症ケア、人手不足を象徴
 《解説》朝倉病院によって浮かび上がった問題は、精神科医療や痴ほう症のケアのいまを象徴する。
 まず、がんじがらめの身体拘束。精神保健福祉法で、精神保健指定医の指示が必要だが、その指定医がいなかった。だが、指示があれば縛っていいのではない。今春からの介護保険では、対象施設で、縛る介護が原則禁止になっている。
 なぜ、こんなことが起きるのか。精神科は医師も看護婦も他の科よりも少なくていい特例がある。つまり、慢性的な人手不足がある。人が不足するから、ケアが行き届かない。だから、抑制して、ケアがしやすいようにしてしまう。精神病院に共通した問題だ。
 IVHのように医療の質が問われる問題でも同様だ。なかには、患者をろくに診察せずに、いつも決まった薬の処方せんを書いて問題になった精神科医もいる。医師の数が十分であれば、個別に診察し、患者にふさわしい指示を出すことが可能かもしれない。
 入院患者の八、九割は痴ほう症のお年寄りだったという。痴ほう症でも、ゆったりしたグループホームで暮らしている人と、精神病院で生活をしている人との落差が大きすぎる。
 現場で粉骨砕身、日々ケアをしている人たちが安心して、誇りをもって働ける場にするためにも、現場の実情をもっと問題提起していく必要がある。
 (くらし編集部医療問題取材班)

■主な3サービスに助成金 低所得者の介護保険利用料 /栃木(朝日新聞 2000年12月27日)

 小山市は来年四月から市単独で、所得の少ない人の介護保険の利用料(原則として一割負担)を軽くするため、希望の多い「通所介護」など三つのサービスを利用する場合に限って助成金を支出する方針を固め、来年度の一般会計当初予算案に千万円程度を盛り込むよう検討している。県介護保険課によると、県内では足利市が「訪問介護」についてのみ助成を実施しているが、一度に三つものサービスに助成するのは画期的だという。小山市は来年四月から、所得の少ない被保険者の保険料軽減も実施することに決めていて今回の助成策は第二弾となる。
 
 市介護保険課によると、今回の助成策は六十五歳以上の認定者のうち、保険料の算定基準が最も低い第一段階と第二段階が対象になる。第一段階は生活保護の受給者、老齢福祉年受給者で住民税非課税世帯。第二段階は住民税非課税世帯。
 助成の対象になるサービスは通所介護、短期入所、訪問介護。九月に実施した市の介護保険実態調査で、在宅の認定者に今後利用したいサービスを聞いたところ、この三つのサービスを希望する人が全体の四五・五%を占めたことから、三つのサービスを対象にしたという。
 同課が八月三十一日現在で助成策の対象者が利用を希望するサービスの件数を試算したところ、通所介護が第一段階で二十二件、第二段階で二百三件。短期入所は同じく四件、二十五件。訪問介護が二十四件、百八十六件の計四百六十四件となった。
 助成の割合については第一段階を高く、第二段階を低めに検討しているが、「予算規模では千万円に届くかどうかになるのではないか」(同課)という。
 助成の方法については、市とサービス事業者との間で「給付券方式」を取り決め、利用者が市発行の給付券を事業者に渡し、事業者が市から支払いを受けることにし、利用者は当初から一割負担分のうち市からの助成分を差し引いた金額を支払えば済むように検討している。

■「生活保護費の不正受給なし」 秋田行政監察事務所 /秋田(朝日新聞 2000年12月27日)

 秋田行政監察事務所(井上修二所長)は二十六日、生活保護に関する全国的な行政監察のうち、県内調査分の結果を発表した。それによると、調査した九十のケースのうち、事務手続きのミスなどから、支給額が多すぎたり少なすぎたりしたケースが七件あったという。不正受給はなかった。同事務所は、二十七日に県知事らに結果を通知するという。
 県内の昨年度の生活保護受給者は、八千九百三十六人(前年度比約四%増)で年々増加傾向にある。事務手続きは、県と各市が設置する福祉事務所が担当している。今回はそのうち三カ所を抽出して調査され、実際には子どもが一人しかいない保護対象世帯に、二年以上にわたって二人分の支給が続けられたケースなどが見つかったという。

■生活保護費の不正受給、なお増加 総務庁が調査結果を発表(朝日新聞 2000年12月27日)

 総務庁は二十六日、生活保護の改善状況に関する調査結果を発表した。同庁は一九九六年に厚生省に対して改善勧告をしているが、その後も生活保護費の不正受給は増加していると指摘し、いっそうの改善を求めている。
 調査は厚生省と十一道府県、二十四市の三十六福祉事務所を対象に行った。それによると、生活保護の受給者数は九六年の勧告後も増加傾向にあり、不正受給も、厚生省が把握しているだけで、九六年度が二千八百件(約二十三億円)、九八年度が四千件(約三十億円)と、年々増えていることが明らかになった。

■生活保護業務の改善50件指摘 熊本行政監察事務所 /熊本(朝日新聞 2000年12月27日)

 熊本行政監察事務所は、県内の福祉事務所三カ所を対象に実施した生活保護の業務実態についての調査結果を発表した。保護の認定作業などで五十件の実例を挙げて改善点を指摘しており、二十七日に福祉事務所を管轄する県や市に通知する。
 調査結果では、保護の認定の基礎となる扶養義務者の確認や照会を徹底していない例が二十六件あったほか、不正受給の返還費用を適正に徴収していない例も一件あった。また、自立を進める対策については、三事務所とも的確な措置を講じていない個別例を指摘。病状の調査を行わず、就労できるかどうかを把握していない例などが報告された。
 県などによると、昨年度の生活保護の受給者数は約一万四千人で、費用は約二百八十二億円。いずれも増加傾向にあるという。
 総務庁の実地調査は今年四−七月、厚生省や全国の福祉事務所で実施された。県内では二十一カ所ある福祉事務所のうち三カ所が対象となった。

■大阪・長居公園の野宿者(世紀の境目を歩く) 【大阪】 (朝日新聞 2000年12月27日)

 野宿生活者を受け入れるため、大阪市が長居公園(同市東住吉区)に建設中の「仮設一時避難所」がほぼ完成した。説明不足などから、周辺住民や当の野宿者からの反発を受けながらも、公園で暮らす約百四十人が二十九日から入所する。
 「避難所に入るよ。仕事はないし、古傷も痛む。もう年だからな…」
 避難所のすぐわきのテントで暮らす菅野信夫さん(七一)がつぶやいた=写真。
 この公園に暮らし始めて五年。関東地方で大工の親方をしていたが、仕事中の事故がもとで失業、家族とも別れた。野宿生活は足かけ十年になる。
 近くの商店街などで集めてきた賞味期限切れのおにぎりを携帯コンロで煮込みながら、入所後は生活保護を受け、テント暮らしはやめるつもりだと話した。
 大阪市内の野宿者は約六千四百人。その多くがテントの中で新世紀を迎える。「みんな自力でこの暮らしから抜け出したいんだ。でも、なぁ…」。菅野さんは、テントのすき間から夜空を見上げた。
 (写真と文・浜田哲二)

■生活保護の医療扶助、適正化求め厚生省が通知 不必要入院是正を (朝日新聞 2000年12月28日)

 生活保護費の約六割にあたる年間約一兆円の医療扶助について厚生省は、入院治療の必要がない精神病院や老人病院の長期入院患者に退院を求めるなど、適正化を指示する通知を都道府県知事らに出した。また、都道府県や主要市などの福祉事務所が医療機関から請求された診療報酬明細書(レセプト)の点検を徹底するように指示した。
 厚生省によると、生活保護の対象になっている約百万人の八割が医療扶助を受ける。うち入院患者は十三万四千人で、その約半数が精神病院に入っている。高齢の単身者が医療扶助で老人病院などに長期入院する例も少なくない。こうした長期入院患者には、入院治療の必要性が疑問視される例が少なくないと指摘されている。
 通知では、長期入院の精神病患者らは病状に応じて社会復帰施設や在宅サービスを利用し、高齢単身者らも状態によって介護施設や在宅に移ることを求めている。また、診療日数が過度に多い患者への指導と助言も指示した。
 医療扶助費は一九九〇年度の約七千四百億円から徐々に増え、昨年度は約一兆円で、入院費が約五五%を占めている。

■生活保護で24例、不適切な調査 3福祉事務所の行政監察/和歌山(朝日新聞 2000年12月28日)

 和歌山行政監察事務所は「生活保護に関する行政監察改善措置状況調査」の結果を二十七日、県に通知した。調査は、全国十一都道府県で実施され、県内では十五福祉事務所のうち三事務所が対象になった。
 生活保護の認定基礎である扶養能力調査などを的確にしていなかったのは三事務所で計十例、保護費が過大過少支給されていたのは一事務所四例、就労指導や自立支援が適切でなかったのは二事務所七例など全部で二十四例あったと指摘。「生活保護受給者は増加傾向にあり、事務はいっそう適正に行われる必要がある」としている。

■元課長補佐に猶予判決 高知市の公金詐欺事件 /高知(朝日新聞 2000年12月28日)

 生活保護受給者に支出する公金を不正に引き出し、着服したとして、虚偽有印公文書作成、同行使、詐欺などの罪に問われた高知市生活福祉課の元課長補佐、A被告(四八)=同市東久万=に対する判決公判が二十七日、高知地裁であった。佐の哲生^裁判長は「地位を悪用し、繰り返し公金をだまし取ったもので、悪質な犯行。市の生活保護行政に対する不信感も与えた」として懲役三年執行猶予五年(求刑懲役三年)を言い渡した。
 判決によると、A被告は一九九八年五月から今年八月下旬にかけ、高知市内の生活保護受給者が葬儀を営んだり住居を移転したりしたように偽装し、生活保護受給者に支給される葬祭一時扶助費などの給付金交付書計三十九通を入手、市役所内の金融機関で換金して計約八百十五万円をだまし取った。

■年金/保健医療/雇用保険… 社会保障費70兆円超す 98年度 (朝日新聞 2000年12月30日)

 一九九八年度に年金や保健医療、雇用保険などとして支給された社会保障給付費の合計が七十兆円を突破したことが、厚生省のまとめで分かった。対前年度の伸びは三・九%。医療費の伸びが抑えられたことによって過去二番目に低い伸びだったが、高齢者に関係する給付の伸びが全体の伸びを上回った。一方、財源は初めて減少し、本格的な高齢社会を前に財政の立て直しが急務になっている。
 九八年度の社会保障給付費は七十二兆千四百十一億円で、前年度より二兆七千二百二十三億円増えた。このうち、年金の給付額が約三十八兆四千億円(前年度比五・五%増)。医療費は約二十五兆四千億円。前年度比〇・四%の伸びで、九七年度に続いて伸びが抑えられた。薬剤費の抑制や患者負担増などが影響している。
 生活保護や児童手当、失業手当など「福祉そのほか」の給付は約八兆三千億円で、前年度比八・〇%増。失業手当など、雇用保険からの給付が伸びた。
 年金や老人保健給付費など六十歳以上の高齢者に対する給付を見ると、約四十七兆八千億円で前年度比五・九%の伸び。全体の六六・三%となった。
 一方、保険料などの社会保障財源は八十九兆二千百八十八億円で、前年度より〇・九%減った。年金保険料や医療保険料などの社会保険料の伸びが〇・三%と大きく落ち込んだことに加え、低金利の影響などで年金積立金などからの「資産収入」が一三・六%落ち込んだ。
 社会保障費用が国民所得に占める割合は、過去最高の一八・九%。スウェーデンの四六・二%(九六年)、ドイツの三七・七%(九六年)に比べるとなお低いが、九五年の米国(一八・四%)に並んだ。


UP:20140423 REV:
生存・生活  ◇生活保護
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