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生活保護 2000年6月のニュース

生活保護


■国民年金保険料の個人情報を漏らす 山形・小国町が民間団体に(朝日新聞 2000年6月7日)

 山形県小国町(今功夫町長)が国民年金の保険料の徴収に際し、住民の個人情報が記された「一覧表」を、約二十五年間にわたって、町内の民間団体に知らせていたことが、七日分かった。社会保険庁は「プライバシー保護の面からも問題がある」と指摘し、同町は一覧表の郵送を中止する方針を決めた。
 町が情報を流していたのは、任意団体の「小国町国民年金推進協議会」。町内八十三の地区組合から成り、各地区の組合長が保険料の集金や催促などを請け負う。
 町によると、協議会が設立された一九七四年から、住民の個人情報が記された「納付状況一覧表」を毎月、各組合長に郵送していた。一覧表には、保険料の滞納状況のほかに住民の生年月日や電話番号、口座番号、生活保護受給の有無などを示す情報も含まれているという。
 町は「集金に必要な情報もあるが、口座番号など行きすぎた面もあった」と認めた。町は一覧表の郵送をやめるとともに、七月以降は徴収対象者の保険料納付書のみを送ることにしている。

■介護制度届かず 死後数カ月、鉾田町の72歳自宅で発見 /茨城(朝日新聞 2000年6月8日)

 鉾田町鉾田、無職宗形栄子さん(七二)方で六日午後八時ごろ、宗形さんがミイラ化した状態で死亡しているのを、町役場からの連絡で訪問した鉾田署員が発見した。宗形さんは一階八畳間のふとんの中で仰向けに死んでおり、死後二−三カ月たっていた。宗形さん方では無職の男性(五七)が同居しており、「二月中旬ごろに、朝起きたら死んでいた。葬式を出す金がなく、だれにも言えなかった」などと話したことから、同署はこの男性から詳しく事情を聴いている。同町によると、宗形さんは実弟が今年一月に介護保険の適用を申請していたが、申請は宙に浮いた格好になっていた。
 
 同署によると、六日午後四時半ごろ、同町の職員から「介護保険の訪問調査をした際、同居の男性に『宗形さんは大洋村の祖母の家に預けた』と言われたが、どうもおかしい」と同署に相談があった。男性に任意同行を求めて話を聞いたところ、「もう死んでいる」と話したため、同署員が宗形さん方に入り、宗形さんの遺体を発見した。
 この男性は、宗形さんとは「一月下旬ごろから一緒に暮らしていた」と話しているという。同署は七日に遺体を司法解剖し、死因は虚血性心疾患とみられる病死と分かった。
 近所の女性は「宗形さんはよく一人で買い物に出かけていたが、三カ月ぐらい前から姿を見なくなった。近所付き合いはあまりないようだった」と話した。
    ◇
 鉾田町では一カ月前にも、重度の身障者の女性(五六)が食事などの世話を受けられないまま衰弱死する事件があったばかり。どちらのケースも、介護保険制度に基づく要介護認定の手続きに家族らの協力が得られないまま、悲劇的な結末を迎えてしまった。
 宗形さんの場合、県内に住む弟たちが町の説得に応じて、一月二十日に要介護認定と生活保護の申請を行った。同二十五日には、町保険課の保健婦らが宗形さんの兄弟と一緒に自宅を訪ねたが、宗形さんは無職の男性と同居していた。
 この時、宗形さんは介護者の支えがあればなんとか歩けたが、言葉は不自由だった。このため、宗形さんの弟と同居中の男性が話し合ったが、男性が「(宗形さんには)生活保護は必要ない。自分が面倒をみる」と強く主張したという。
 町は、先月六日に身障者の女性が長男に放置されて衰弱死したのを重視。再発防止のため、介護保険制度のサービスの対象から漏れる人が出ないよう、民生委員などの協力を得て調査を進めてきた。
 宗形さんについても、弟に対して、医師の意見書を提出するなど、要介護認定の手続きを進めるよう何度も要請した。しかし、弟からは「姉の面倒は同居の男性に任せてある」ととりあってもらえず、同居の男性も応じなかった。町は今月六日、弟に対して、要介護認定の申請取り下げの書類を郵送したが、その同じ日に、宗形さんの遺体が発見された。

■ 生活保護受給巡り、県庁内で脅迫・暴行 容疑で男性逮捕 /鳥取(朝日新聞 2000年6月10日)

 九日午前十一時ごろ、鳥取市東町一丁目の鳥取県庁一階ロビーで、住所不定無職のA容疑者(七五)が鳥取市役所職員(四三)の顔を殴るなどしたため、その場に居合わせた県庁職員(四四)が暴力行為の容疑で現行犯逮捕し、鳥取署員に身柄を引き渡した。
 同署の調べでは、A容疑者は両職員から生活保護の受給手続きに関して説明を受けていたが、居住に関する説明に腹を立て、市役所職員にカッターナイフを突きつけ脅迫したり、顔を一回殴ったりした疑い。

■野宿者支援へNPO設立 名古屋の団体、来月申請 【名古屋】(朝日新聞 2000年6月16日)

 名古屋市内の野宿者に対して食事、仕事、住居など幅広く支援していこうと、炊き出しを続けてきたボランティア団体が十五日、特定非営利組織(NPO)の設立を決めた。七月上旬に申請するが、野宿者支援のためのNPO設立は東海地方では初めてという。今後は市など行政側との協力による活動を目指していく。
 NPOを設立するのは、日本キリスト教団やカトリック、ルーテル教会、日本聖公会などキリスト教系の六団体でつくる「名古屋炊き出し連絡協議会」。
 野宿者に対して市は、生活保護の支給や短期間の宿舎提供などはしてきたが、新たな仕事の創設や食事の提供などはほとんどしてこなかった。このため同協議会のメンバーらが、就職活動を手伝ったりしていた。しかし、名古屋市の調査によると同市内の野宿者は一九九八年度に七百五十八人だったのが、昨年度は千十九人に増加。「個人で対応できる限界を超えた」(同協議会)ことから、NPO設立に踏みきった。
 
 【写真説明】
 炊き出しは20年以上続けられている。この日は300食分のご飯とシチューを用意した=15日午後8時10分、名古屋市中区の公園で

■演奏禁止求める 著作権料払わずカラオケの店に著作権協会 /静岡(朝日新聞 2000年6月20日)

 著作権料を支払わないままスナックでカラオケ機器を使ったとして、社団法人・日本音楽著作権協会(東京都渋谷区、吉田茂理事長)は十九日、三島市内でスナックを経営する女性(六四)を相手取り、店内でのカラオケ演奏などを禁止する仮処分を静岡地裁沼津支部に申し立てた。
 申立書などによると、この店は一九九〇年六月から今年五月まで、同協会を通して著作権者の許可を得ないまま店内でカラオケ演奏を続け、著作権者と協会に対して計約二百二十四万円の損害を与えた。協会はこの間、書面や職員を通じて許諾契約を結ぶよう働きかけてきたが、店側は応じなかった、とされる。
 女性経営者は「店内ではほとんどカラオケ演奏をしておらず、店の面積を基準にお金を取られるのは納得いかない。生活保護を受けないで頑張っているのに、これでは商売をやめるしかない」と話している。

■野宿者に生活保護冷たく 大阪市など(検証) 【大阪】(朝日新聞 2000年6月20日)

 公園などで野宿をしている人が「アパートに移って、生活保護を受けたい」と福祉事務所に申請しても、認められない例が大阪市などで起きている。野宿生活者への生活保護適用を求めている支援団体などは「人権侵害だ」と反発している。(神野武美)
 
 ●「居住と認めない」
 大阪市西成区のあいりん地区(釜ケ崎一帯)の支援団体「ふるさとの家」に四月中旬、ここの世話で「敷金なし、家賃後払い」の賃貸契約を結んでアパートを借りたばかりの男性(六六)が駆け込んできた。市の福祉事務所に生活保護の申請に行ったが、職員に「家賃を前払いしていないから、賃貸契約は成立していない。生活保護は支給できない」と追い返されたという。
 スタッフが同行して「疑うなら部屋を見てほしい」と談判したが、「(申請者が)部屋に『居た』としても、『住んでいる』ことの証明にはならない」と申請を受理しなかった。
 しかし、一カ月近い交渉の末、「支援団体が保証人になった賃貸契約があれば、『居宅保護』する」ことになり市の姿勢が変わるきざしもみえる。
 
 ●裁量で「収容」に
 大阪市内の野宿生活者は一九九八年八月の市調査で八千六百人余り。釜ケ崎の二つの支援団体が一年間で約五百人を「野宿からアパート」に移している。
 生活保護法は、アパートなどの自宅で生活保護を受ける「居宅保護」を原則(三〇条)とし、障害や病気で自立した生活ができない場合などは救護・更生施設に入る「収容保護」を認めている。その場合でも、「被保護者の意に反した」収容はできないのが同法の建前だ。
 大阪市のこうした施設の定員は約二千六百人。野宿者の数に比べて大幅に不足しており、支援団体は「アパート入居を進めるのが救済の早道」と主張する。
 が、壁はある。まず「住民以外(住居のない人)」を福祉事務所が受け付けない点だ。野宿者は釜ケ崎にある市立更生相談所(市更相)が窓口になるが、ここに「居宅保護」を申請しても、通常は市更相の裁量で「収容保護が適当」と判断され、「居宅保護」は事実上認められないからだ。
 このため、支援団体はまずアパートを確保した後で福祉事務所に保護申請するが、ここで次の壁にぶつかる。厚生省の基準では「病院からアパートに移った人」などに支給される敷金などの費用が、「野宿からアパートへの入居」の場合には支給されない。支援団体が敷金を貸し付けても、「保護開始前の借金は支給の対象外」とされてしまう。結局、月約八万円の生活扶助費を切り詰めて借金を返済するか、家主に頼んで「敷金なし」にしてもらうしかない。
 
 ●「保護廃止」で野宿
 九九年末に約五百人の野宿者が確認された神戸市では、「病院からアパート」でも敷金などが支給されないという。社会活動団体の「神戸YWCA」(中央区)のボランティアは入院中の元野宿者を訪問し、本人や医師から退院予定日を聞いて退院時に入居するアパート探しを続けている。
 「市から『入院中だけ保護する』と通告された」という相談が多く、退院が「生活保護打ち切り、野宿に逆戻り」に直結しないようにするためだ。が、市の福祉事務所は「収容保護が適切だが、希望を入れてアパートに入るのを認めた」といった理由から支給しない例が多いという。
 東京都や横浜市、神戸市などは簡易宿泊所にいる人たちに生活保護受給を認めているが、大阪市や名古屋市は認めていない。
 
 ◇保護拒否取り消し求める訴訟審理中 大阪・名古屋市相手
 野宿者の生活保護をめぐる裁判としては、名古屋市の「林訴訟」や大阪市の「佐藤訴訟」などがある。
 林訴訟は、当時五十五歳の男性(昨年十月死亡)が九四年五月、「仕事がないのに、就労可能を理由に保護を拒否したのは違法だ」として名古屋市を相手取り、保護を拒否した行政処分の取り消しを求めた。一審は原告が勝訴したが、二審は逆に名古屋市が勝ち、最高裁で審理中だ。
 佐藤訴訟は、難聴の男性(六六)が九八年十二月に「障害のある身に施設での集団生活は苦痛」と居宅保護を申請したが、大阪市が拒否したため、「住居のない者は収容保護か野宿かの選択しかないのか」と訴え、収容保護の取り消しを求めるなどして大阪地裁で審理中だ。
 大阪市ではこのほか、生活保護の廃止で野宿を余儀なくされた人が、損害賠償を求める訴訟を起こしている。大阪弁護士会の小久保哲郎弁護士(三四)は「苦しい生活を強いられている人はふつう訴訟をする資力はなく、二重の意味の人権侵害だ」と話す。
 近畿弁護士会連合会は、今年十二月に開く人権擁護大会のテーマを「ホームレス問題」と決め、弁護士約三十人が野宿の実態やトラブルの事例を調べ、報告書にまとめる予定だ。
 
 ◆法無視の慣行広がる
 木下秀雄・大阪市立大教授(社会保障法)の話 生活保護法を無視するような行政慣行が、自治体に広まっているのは事実だ。近年、生活保護が必要な人が大量になり、現場で対応しきれなくなった面が強い。だが、それは「居住」を保障する住宅政策、雇用保険の充実など野宿を未然に防ぐ政策の不十分さが原因だ。まず、野宿している人を住居に帰し、ケアしていく態勢づくりをすべきだ。
 
 ◆それなりの対応した
 堀田久澄・大阪市民生局保護課長の話 野宿の人には「保護する場所の確保」を優先している。まず、施設や病院に入ってもらい、自立生活のできる人から年間約三百人をアパートに移している。施設の定員不足などからトラブルが発生し、職員が乱暴な言い方をしたケースもあるが、市内の被保護者は六万人余り、保護率は全国一高い。全体としては、それなりの対応をしてきたつもりだ。
 
 ◆運用改善図りたい
 原口真・厚生省保護課長補佐の話 生活保護の適正さを維持するため、対象者が「就労努力をしているのか」などを見極める必要があり、施設収容もそのために行われている。ただ、野宿者の生活実態にかみ合わない面もある。ホームレス対策として計画している「自立支援センター」では、個々の野宿者の処遇を早く決められる態勢をつくるとともに、生活保護制度の運用の改善も図りたい。
 
 【写真説明】
 臨時夜間緊急避難所に入る順番を待つ人々が長い列を作っている=大阪市西成区萩之茶屋1丁目で

■ 生活保護費詐欺事件で同居の男性被告、起訴事実認める 地裁/愛媛(朝日新聞 2000年6月24日)

 松山市内で女性のミイラ化した死体が見つかった事件で、女性が死亡したことを隠して女性分の生活保護費をだまし取ったとして、詐欺の罪に問われた、女性の同居人で同市宮西二丁目の無職A被告(六四)に対する初公判が二十三日、松山地裁(磯貝祐一裁判官)であった。A被告は起訴事実を認めた。
 起訴状などによると、A被告は、女性が死亡したことを同市生活福祉課に届け出ず、一九九八年四月から二〇〇〇年四月までに、女性分の生活保護費計九十五万円をだまし取ったとされる。
 検察側は「女性はかけがえのない人だった。その死を認めたくなかったし、他人にも知られたくなかった」という、A被告の供述調書などを証拠として提出した。

■災害援護金、返済条件緩和へ 阪神大震災の神戸市など 【大阪】(朝日新聞 2000年6月28日)

 阪神大震災で大けがをしたり、住宅が全半壊したりした被災者を対象に最高三百五十万円を貸し付けた「災害援護資金」について、神戸市は二十八日、返還の意思はあるものの返済が困難な人を対象に、支払い猶予や少額ずつの償還を認める方針を市議会に報告した。同援護資金制度は震災直後に貸し付けを始め、五年間の償還据え置き期間が設けられているが、早い人で今月から返済が始まっている。復興半ばで生活困窮が続く被災者の負担を減らすためにこの方針を打ち出した。
 兵庫県内の他の被災二十市町も同じ援護資金制度を持っており、神戸市と同様に返済の緩和措置をとる見込み。二十一市町で援護資金を借りた被災者は計約五万六千人、貸付額は総額千三百八億七千万円に上っている。
 災害援護資金は、「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき、震災で一カ月以上の大けがを負ったか、住宅が全半壊した世帯主らを対象にしている。償還期間は十年で、うち据え置き期間は五年。神戸市の場合、一九九五年五月末から貸し付けを始めた。財源は国が三分の二、市が三分の一を負担した。
 神戸市によると、償還を猶予されるのは、災害、盗難、疾病、負傷により一時的に収入がなくなった場合に加え、生活保護を受けて保護費以外の収入がないなどの経済的理由も含まれる。猶予期間は一年で、再延長もできる。返済意思がある場合は生活の実情に合わせた少額ずつの返済も認め、違約金も課さない方針だ。
 兵庫県によると、ほかの二十市町も、神戸市と同様の措置をとる方針という。

■簡宿、愛あるマンションに あいりん地区で120室 【大阪】(朝日新聞 2000年6月30日)

 労働者の街として知られる大阪市西成区のあいりん地区に、簡易宿泊所(簡宿)を転用したマンションが開業した。不況で野宿生活を余儀なくされている高齢労働者の住居を確保し、生活保護を受けられるようにするのがねらい。高齢者が暮らしやすいように一部を改装したほか、複数の職員が常駐して生活相談に応じるなどソフト面でも工夫する。経営者の山田和英さん(四二)は「同じようなマンションが増えて野宿生活者対策が進めばうれしい」と話す。
 
 福祉マンション「アプリシェイト」は鉄筋六階建てで百二十室。「愛する」という意味もある英単語から名付けられ、十四日にオープンした。三畳一間でふろ、トイレ、炊事場は共同だ。居住者が語らう場として、一階には約十畳の共同の居間も新設した。従業員とボランティア三、四人が常駐し管理、運営にあたる。
 生活保護法は自宅で生活保護を受ける「居宅保護」を原則としている。大阪市の場合、野宿生活者が居宅保護を申請するには、アパートなどへの入居が前提になるが、保証金や敷金、前家賃などの費用不足が壁になり、仕事がなく野宿を続ける高齢者が多い。
 これに対し「アプリシェイト」は敷金も前家賃もなくし、賃貸契約を結びやすくした。職員は煩雑な福祉事務所への申請手続きなども手伝う。家賃は月額三万六千円から四万千八百円と、生活保護で支給される住宅扶助額の上限以下に設定した。
 現在の入居者は四十一人。このうち、野宿をしていた高齢者や身体障害者は十四人で、全員が生活保護受給を申請し、二十九日までに二人に決定通知があったという。大阪市内の公園で二年間テント生活をしていた男性(七〇)は、「のたれ死にせなならんところやった。(入居できて)こんなにありがたいことはない」と話す。大阪市の調査では市内の野宿生活者は約八千六百人(一九九八年)に上る。
 簡宿は不況で利用率が五割前後と低迷するなか、ほかの簡宿も賃貸住宅への転業を計画している。だが、「アプリシェイト」も採算ラインの百五室が埋まるまでは赤字経営が続く見込み。山田さんは「労働者に長い間接してきた簡宿だからこそできる仕事。当面は採算を考えずに取り組む」としている。


UP:20140514 REV:
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