■生活保護者のカード悪用 名古屋市元主事、容疑で追送検【名古屋】(朝日新聞 2000年2月3日)
愛知県警捜査二課は二日、事業所税をめぐる汚職事件に絡み、収賄罪で起訴された名古屋市民生局元主事のA被告(五二)を盗みの疑いで名古屋地検に追送致した。
調べによると、A元主事は、勤務していた救護・更生施設「植田寮」(同市天白区)で担当していた生活保護対象の男性入所者(故人)の銀行のキャッシュカードを使用。一九九七年五月から六月にかけて、三回に分けて、この銀行から計約百六十五万円を不正に引き出したとされる。
A元主事は九六年四月、業者に現金を要求した問題で、減給の懲戒処分を受けた。その後、九七年四月から植田寮に配置換えされ、けがや病気で働けなくなった入所者の生活指導や相談などを受け持っていた。
■鳥取市は2900円程度 保険料月額(みんなの介護保険) /鳥取 (朝日新聞 2000年2月4日)
介護保険制度に関して、鳥取市は三日開かれた市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画作成委員会の席上、六十五歳以上(第1号被保険者)が支払う保険料基準月額を二千九百円程度と試算していることを明らかにした。近く正式な額を決め、十四日の市社会福祉審議会に諮問する。
市によると、介護給付サービス費の総見込み量や被保険者数、各種係数などを基に計算した。ただ、厚生省が最終的な細かい計算方法を示していないため、今のところ正式な額が出せないという。
同省が昨年六月時点で出した全国平均の試算は二千八百八十五円で、ほぼそれに近い額になりそうだ。保険料は三年ごとに見直す。
同市の場合、所得などに応じて保険料を五段階に設定する方針で、第三段階(市民税本人非課税者)を基準額の二千九百円程度とする。最も安い第一段階(市民税世帯非課税で老齢年金受給者か生活保護受給者)は基準額の〇・五倍、最も高い第五段階(市民税課税者のうち合計所得二百五十万円以上の者)は基準額の一・五倍などと定める。
■介護保険料ゼロも 低所得者向けに川崎市が制度(朝日新聞 2000年2月5日)
介護保険の保険料について、川崎市は四日、収入が著しく少なく、支払いが難しいお年寄りに対し、保険料の半分または全額を、市が負担する方針を明らかにした。厚生省の介護保険制度施行準備室は「支払額がまるでゼロになる例というのは、聞いたことがない。公平負担という介護保険制度の趣旨から言うと、疑問も感じる」としている。
対象は、生活保護の対象になるほど苦しい生活を送りながら、保護を受けていないお年寄り。百人前後と見込んでいる。
■介護保険料、福井市は月額3300円 定例市議会に提案へ /福井(朝日新聞 2000年2月13日)
介護保険制度が四月から始まるのに伴い福井市は、六十五歳以上の人の月額保険料を三千三百円とする考えを、市議会の福祉・環境対策特別委員会でこのほど示した。昨夏、県がまとめた各市町村の平均額三千百三十三円を上回る。保険料を盛り込んだ市介護保険条例案は、二十八日開会予定の定例市議会に提案される。
麋山昭然・介護保険課長は、保険料について「在宅サービス中心だと保険料を安く設定できるが、市の場合は特別養護老人ホームの整備率が高く、入所希望者が多いから」と説明した。さらに、要介護の認定漏れ対策や低所得者への対応について「毎月の保険料を払うことで、生活保護の対象になる『境界該当者』もいる」と答え、認定漏れとなった人への自立支援策とともに、低所得者への救援策を当初予算に盛り込む方針を明らかにした。
現在、何らかの在宅サービスを受けている低所得者に対して、通常一割の自己負担を三%にする方針も示した。
■日雇い労働者に定住の場を 「寄せ場」再生へ試み(検証)【大阪】(朝日新聞 2000年2月15日)
釜ケ崎(大阪市西成区あいりん地区)と山谷(東京都台東、荒川区)で、「定住」に向けたまちの再生運動が起きている。日雇い労働者が就労の機会を得る世界有数の「寄せ場」。簡易宿泊所は立ち並ぶものの、もともと「定住」とは縁の薄い地域だ。いったいどうつくり直そうというのか。
(政井孝道、神野武美)
●あいりん
釜ケ崎の中心部にある萩之茶屋集会所で一月末、「簡宿活用のアイデア提案と討論の集い」が開かれた。「釜ケ崎のまち再生フォーラム」の主催。地域住民や福祉活動などをしているボランティア、研究者、市民ら四十数人が参加した。
一九六一年の暴動以来、大阪市と府は、日雇い労働者の医療や福祉、就労問題に対処してきた。多くのボランティアも炊き出しやテント小屋の設置、運営などで支えてきた。
しかしここ数年、労働者の高齢化と建設労働の急減で宿泊費用もままならない野宿生活者が急増。路上死などが深刻になっている。
西成労働福祉センター職員で漫画家のありむら潜さん(四八)らは九七年九月、「釜ケ崎居住COM」をつくった。「ねぐらあっての生活。それには釜ケ崎のまち全体の再生という広い視点を持たなければ、答えは出ないのではないか」という疑問が出発点だった。
主として釜ケ崎の「将来像」を語り合ってきたが、昨年十月、「漂流者のまち」を「終(つい)の棲家(すみか)のあるまち」に変えようと「再生フォーラム」を結成した。地域最大の資源である簡易宿泊所の活用に、難問承知で取り組む。
この一、二年、宿泊率が五割ほどに低迷している簡宿の経営者らもフォーラムに関心を示している。大阪府簡宿組合は昨年六月、野宿者対策として簡宿約二千室の借り上げを大阪市に提案したが拒否されている。集いには簡宿組合の役員らの姿もあった。
「集い」で提案されたのは「簡宿のアパート改造による生活保護の適用」。東京都や横浜市は、高齢・病弱の労働者のため、簡宿生活者にも生活保護の適用を認めているが、大阪市は「簡宿は住居でない」と拒絶している。そこで、三畳の簡宿を住居への「通過点」と割り切り、アパートにして適用を受けようという意見だ。この流れが大きくなれば「単身労働者の街」という釜ケ崎は大きく変わる。
また「簡宿の一部を改造し、介護が必要な高齢者のためのデイケア施設にすれば地域外の老人にも喜ばれる」「労働者にヘルパーの資格を持たせれば雇用創出にも有効だ」という意見も出た。
いちばん賛成者を集めたのは、簡宿を、働けなくなった高齢者のグループホームとして活用する案だった。東京・山谷の非営利組織(NPO)「自立支援センターふるさとの会」代表の水田恵さん(五二)の提案だ。
行政も「まちづくりを含めた総合的な対策」の必要性に気づいてはいる。大阪市と府は「あいりん総合対策検討委員会」をつくり、二年前「中長期的なあり方」をまとめた。「福祉サービスが事後的、保護的なものに偏り成果には重大な疑問がある」とこれまでの取り組みを批判し「先行事例の創造」を提言しているものの、具体的な取り組みはほとんど見られない。
●山谷
「高齢者のグループホーム」を提案した水田恵さんが代表を務める「ふるさとの会」は、九〇年に山谷地区で路上生活者への炊き出しを始め、昨年六月にグループホームに近い宿泊施設「ふるさと千束館」を開設した。
十万円の「市民債券」を発行し、千五百万円で民家を改造した。高齢や病弱で生活保護を受給している約二十人が二、三カ月宿泊し、酒やかけ事に誘惑されずに自立した生活ができるよう訓練をしてアパートに移している。
台東区で九八年度に支出された生活保護費約百三十億円のうち、半分以上の約七十七億円が医療費に消えた。病気になった労働者は病院に送られ、戻る家がないため入院を続ける。「その三分の一を山谷に戻そう」という思いがある。
五カ月前にはNPO法人の資格をとり、ボランティアから事業者への転身もはかっている。
当面は、若い労働者が生活保護に頼らずにすむ職業訓練ができる生活寮づくりに取り組む。彼らを、バリアフリーへの住宅改造の技術を持つ「便利屋」や、ホームヘルパーなどに育て、介護保険事業にも参入したい。「福祉が充実すれば、地域が活性化する」というわけだ。
山谷では去年六月から東京都や台東、荒川両区と研究者が「山谷対策検討委員会」で「労働者のまちから福祉のまちへの転換」を目指して議論を始めた。三月には、生活訓練や職業訓練をするNPOへの補助、敬老館など福祉公共施設の管理委託などを提言する報告書が出る予定だ。
都の山谷対策の地元拠点である城北福祉センターの有留武司所長は「行政が前面に出るより、NPOの方が柔軟できめ細かい仕事ができる。行政はバックアップにまわる」と話している。
○釜ケ崎と山谷
非営利組織(NPO)やボランティア、研究者の間で、1年ほど前から両地区の交流が続いている。
簡易宿泊所は釜ケ崎地区に約190軒(約1万8000人分)、山谷地区に約190軒(約8000人分)ある。日雇い労働者の平均年齢はいずれも55歳前後。野宿生活者は、釜ケ崎地区周辺で約3400人(1998年5月)、山谷は約1900人(99年9月、いずれも民間団体調査)と集中している。
2つの地区は似ている面を持つが、大きく異なる状況もある。例えば、釜ケ崎地区の生活保護受給者約3500人は、簡宿での適用はなく、ほとんどが更生・救護施設か入院患者。山谷は約4000人のうち、2500人が簡宿生活者だ。
一方、地域社会の動きも、寄せ場や簡宿の比重が高い釜ケ崎では、簡宿経営者など住民の動きが見られるが、一般の商店や住宅が混在する山谷は、NPOと自治体の連携が先行し、住民参加が大きな課題になっている。
【写真説明】
釜ケ崎の簡宿の利用方法についてワークショップで知恵を出し合う参加者ら=大阪市西成区の萩之茶屋集会所で
■さい銭20円盗んだ男を送検 鹿児島県警国分署(青鉛筆)【西部】(朝日新聞 2000年2月16日)
▽神社のさい銭二十円を盗んだとして、鹿児島県警国分署は十六日、同県隼人町の無職の男(五七)を窃盗の疑いで送検する。「少額だけど、ほかを狙いかねないから逮捕した」と同署。
▽調べでは、十四日午後一時半ごろ、同町内の神社でさい銭箱のかぎをこじ開け、中から十円玉二個を取った疑い。近くの農家の人たちに目撃され、取り押さえられた。
▽男は生活保護費から家賃などを優先して支払っていたといい、「それで生活費がなくなって」と供述。署員は「借金がないのは感心。だが、だからといって盗みは許されない」。
■千葉・流山市、給付相当額貸し付け(迫る介護保険) /千葉(朝日新聞 2000年2月19日)
千葉、流山両市は、利用サービスが多く、一割負担額が大きい場合、負担軽減のため、利用後、現金を給付する対象者に、給付相当額を一時的に無利子で貸し付ける施策を決めた。一割負担の段階で貸し付け、給付を受けた段階で相殺する。実際には庁内でサービス利用料を調整するため、料金のやりとりはなくて済む仕組みだ。
介護保険制度では通常、介護サービスを利用する場合に一割が利用者負担となる。支払額が所得に応じた額を超えた場合に、高額介護サービス費、高額居宅支援サービス費として介護保険から現金給付される。
しかし、給付までに、申請から通常二−三カ月かかるため、中には年金などの収入を得られるまで時間がかかり、一時的に困る人もいると考えられる。
流山市の場合、貸し付け対象は市民税の非課税世帯や生活保護、老齢福祉年金受給者。市は四十五人の利用を見込み、二十四日開会の市議会に二百万円の予算案を提案する。
千葉市は貸し付けする対象を、流山市のように低所得者と限定せず「要介護認定を受けた人で、貸し付けを必要としている人」として、対象を広げた。約三百人の利用を見込んでいるが、福祉用具の購入費や住宅改修の約四百件分も貸し付け対象に含めた。二十一日開会の市議会に計六千七百万円の予算案を提案する。
■保護介助料「市、認めて」 福島の女性が県に審査請求 /福島(朝日新聞 2000年2月22日)
福島市に住む一人暮らしの精神障害者が、生活保護法に基づく保護介助料支給を求めたのに、市が認めなかったのは不服だとして、二十一日、県に行政不服審査法に基づく審査請求書を提出した。県地域福祉課は、本人と市の双方から意見を聞いて審査し、五十日以内に裁決するという。
審査請求したのは福島市に住む無職女性(二九)。一般にいうてんかん性ヒステリー症で、発作を起こすとマヒの症状が出て三カ月ほど体調が悪くなり、年一、二回の入退院を繰り返してきたという。昨年七月に発作が起きたため、同月、介護料が受けられるよう生活保護の保護変更申請をした。
市は民生委員から話を聞き、訪問調査はせずに却下した。十一月にケースワーカーが電話で「認められない。入院すべきだ」と伝えたという。この女性は入院は望んでいない上、生活保護法が定めた居宅介助に反する、と主張している。
「障害名を明かすのは勇気がいるが、隠すのではなく分かってもらえる運動をしたい」と話している。
市社会福祉課は「主治医や市福祉事務所の嘱託医が必要ないと判断したのと、障害者手当を支給する場合は常時介護を要する方としており、該当しないと判断した」と説明している。
■東京都が請求棄却 サリン被害女性の生活保護打ち切り不服申し立て(朝日新聞 2000年2月22日)
地下鉄サリン事件で被害に遭い、失職して生活保護を受けていた東京都内の元会社員の女性が、「オウム真理教を相手取った民事訴訟で損害賠償金を受け取る権利を得たことなどを理由に保護を打ち切られた」として、都に不服を申し立てる審査請求をしていた問題で、都が請求を棄却する裁決を出していたことがわかった。女性側は二十一日、都の裁決を取り消すよう厚生省に対して再審査を請求した。
関係者によると、女性は事件の後遺症で心的外傷後ストレス障害(PTSD)にかかり、障害者年金一級の認定を受けた。生活保護は一昨年六月から月額十数万円支給されたが、区の福祉事務所は「賠償金を受け取ると、すでに受け取った保護費を返還しないとならない」と女性に通知していた。福祉事務所は結局、区職員のミスで支給が遅れていた障害基礎年金について一括して受け取ったことを主な理由として、昨年三月に生活保護を打ち切った。
■悠々自適ばかりじゃない 年金削減、貧困層直撃(くらしのあした)(朝日新聞 2000年2月22日)
「高齢者は平均でみると、現役世代よりややゆとりがあります」(矢野朝水・厚生省年金局長)――年金改革関連法案を審議している国会で、そんな言葉が交わされている。厚生省の年金モデルや「貯蓄は平均二千三百万円」(総務庁)といった統計からは、豊かな生活ぶりが想像される。しかし、実態は貧富の差が大きく、基礎的な生活に必要とされる年収二百五十四万円を下回る層が六十五歳以上の一三%を占めるともいわれる。一律に年金給付を抑える削減案では、少なからぬ貧困層が打撃を受ける。
(板垣哲也、佐藤実千秋)
●低水準 加入期間・給与額が影響
「収入はこれだけですよ」。神奈川県相模原市に住むIさん(七〇)が開いた預金通帳をみると、毎月四万円余りの生活保護と、二カ月で約二十三万円の年金が振り込まれていた。年金は月額だと十一万五千円だ。
戦後、横浜の造船会社で溶接工をした後、二十代から従業員十数人の下請け会社を転々としてきた。厚生年金などの社会保険に加入していない職場も多かった。
家賃二万円の県営住宅に妻と二人暮らし。妻は九年前の脳内出血で車いすの生活なので、昼間はホームヘルパーを頼んで働いてきたが、昨年三月、「引退を」といわれ、職を失った。
年金だけでは暮らせず、生活保護を申請した。仕事で使ってきた車も手放した。「今まで給料をもらい税金も払ってきたのに……」と語る。
厚生省が示す厚生年金の標準モデルは「夫婦二人の世帯で月額二十三万八千円」。これほど差がつくのは厚生年金の額が、加入期間と給料の水準で異なるためだ。Iさんの場合、年金の計算のもとになる給料の水準が二十二万円余りとそれほど高くないうえ、小規模の会社を転々として加入期間が短くなった。
Iさんは特殊なケースともいえない。社会保険庁の統計では、一九九七年度に厚生年金を受け始めた人の平均月額は約十七万円。男性では、モデル年金並みの二十万円を超える人が五四%いるものの、十五万円未満の人も一七%いる。女性は十五万円未満の人が八五%にのぼる。
●減額 繰り上げ受給選び後悔
東京都渋谷区でそば店を営んでいたYさん(七九)の年金は月に約三万六千円。六十五歳を待たずに繰り上げ受給を選んだため、年金額を減らされた。「年金をもらう前に亡くなる人を見ていたら、もらえるうちに、という気持ちになって。こんなに長く生きるとは思わなかった」と戸惑う。
妻は六十五歳で支給を受けたので約六万五千円、ほかにYさんの軍人恩給が約四万円。あとは店を売ったときの蓄えを取り崩す。
印刷仲介業だった夫を十四年前に亡くした埼玉県朝霞市のHさん(八一)は、夫の遺族年金と自分の国民年金を合わせて月に約七万円でやりくりしている。六年前まで自宅で編み物教室を開き、約五万円の月収があったが、それもなくなり、隣県に住む息子たちから仕送りを受けている。
収入はほとんど食費にあて、肌着以外の着る物は自分で作る。郵便局の貯金が数百万円あるが、「病気になった時を考えると、この蓄えでは心配」という。
自営業者らの国民年金でも、モデル年金額の六万七千円に届かない人たちは少数派ではない。受給者の平均は四万九千円(九八年度末)。年金額を減らされる繰り上げ受給者は五八%もいる。また、保険料の未納、免除、未加入が約三分の一に達し、将来、年金がもらえなかったり年金額が少なくなったりする人がさらに増える心配がある。
●提案 「再分配が働く方式を」
年金法案を審議する参院の国民福祉委員会では、民主、共産、社民の野党各党が給付削減に反発し、衆院の解散・総選挙が予想されることもあって対決色を強めている。このため、審議日程はいまだにはっきり決まらない状況だ。
ただ、年金財政はこのままだと、さらに悪化し、働く世代の保険料の負担が一段と重くなる。解決の糸口はないのか。
富士総合研究所の渥美由喜氏は「お年寄りの世帯は収入や蓄えの格差が大きい。高齢者の中で所得の再分配機能が働くような給付抑制方法を考えてもいい」と指摘する。
総務庁の全国消費実態調査などをもとにした同氏の試算では、夫婦二人で「基礎的な生活に必要な収入」を月二十一万円、「ゆとりある生活に必要な収入」を四十五万円とし、万一の備えに必要な貯蓄額を一人当たり一千万円とした場合、いずれも満たさない低所得の世帯は一三%、すべてを満たすゆとりのある世帯は一九%という。
その観点で具体的な提案もある。
年金審議会(厚相の諮問機関)委員の高山憲之・一橋大教授は、標準的な年金額の受給に必要な保険料の納付期間を、現行の原則四十年から四十五年に延ばしては、と提案している。
大学や大学院を出た人は働き始めるのが二十二歳から三十歳前にかけてなので、四十五年間の保険料を納めることが事実上できず、減額される。半面、中学や高校卒業だと、十五歳から二十歳前なので影響を受けにくい、との考え方だ。
高山氏は「一般に高学歴の人は年収が高く、老後も働ける場が得やすい。一律に受給開始年齢を引き上げる前に、検討すべきことがある」と話している。
また、保険料納付期間の短いIさんのようなケースを念頭に、基礎年金の水準の引き上げや税方式などによる最低所得保障の仕組みづくりを求める声もある。
<年金法案の給付抑制策>
厚生年金の給付抑制が法改正の柱の一つ。(1)定額部分を除く報酬比例部分の水準を五%削減(2)現役世代の賃金上昇率を年金額に反映させる賃金スライド制の凍結(以上は二〇〇〇年度から)(3)受給開始年齢を六十歳から六十五歳に徐々に引き上げ(二〇一三−二五年度、女性は五年遅れ)など。
■「月額保険料」3200円など35議案可決 坂井郡広域連合/福井(朝日新聞 2000年2月22日)
介護保険料やサービス水準を郡内で統一しようと設立された坂井郡六町の坂井郡介護保険広域連合(連合長、奈須田和彦・芦原町長)は二十一日、芦原町役場で初の広域連合議会を開いた。六町の町会議員から選ばれた広域連合議員十八人が出席。六十五歳以上の月額保険料を三千二百円とする「介護保険条例案」など、提案された三十五議案を原案通り可決した。
最初に、奈須田町長が「県内初の取り組み。モデル的な広域連合として、郡民の期待を背負っている」とあいさつ。議員の投票で、議長には浜中邦男氏=三国町議=、副議長には西畠千春氏=春江町議=を選出した。
広域連合では二〇〇〇年度、一般会計と特別会計を合わせ、五十一億九千六百三十五万九千円で運営されることになった。
生活保護を受けながらヘルパーを派遣してもらっている人らへの低所得者対策として、通常一割の負担額を三%に軽減する。事務局によると、百八十人余りが対象になるという。また、奈須田町長は「サービス内容をチェックする第三者機関の設置も検討していく」との方針を明らかにした。
郡内で介護保険のサービスを受けるのは、「在宅」が千六百五十人、「施設」が千四十人と見込まれている。
■包丁で切りつけた男に実刑判決 大阪府庁内で職員けが 【大阪】(朝日新聞 2000年2月23日)
昨年八月、大阪府庁内で府職員に切りつけたとして、傷害と銃刀法違反の罪に問われた大阪市西成区太子一丁目、無職A被告(六九)に対し、大阪地裁は二十二日、懲役二年(求刑懲役三年六月)の実刑判決を言い渡した。畠山新裁判官は「危険かつ悪質な犯行で、酌量の余地はない」と述べた。
判決によると、A被告は生活保護費を受けるようになったのと引き換えに日雇い労働者に対する福利厚生措置費の支給がうち切られたことなどを逆恨みし、大阪市の福祉事務所職員に復しゅうすることを計画。府庁の職員を相手に傷害事件を起こし、その取り調べの中で福祉事務所への不満を主張しようと、昨年八月十六日午前十時ごろ、大阪府庁四階の自動販売機でたばこを買っていた府職員に持参した包丁で切りつけ、三週間のけがをさせた。
■被害者の生活保護費、不正受給の疑いも 通所生預金横領事件/山形(朝日新聞 2000年2月25日)
小規模作業所「やすらぎの里」(鶴岡市西新斎町)の通所生の預金通帳から無断で金を引き出されていた業務上横領事件で、被害者の精神障害者の男性(当時五四)=九七年に死亡=が多額の預金があったのに、鶴岡市福祉課に生活保護費の支給が申請され、生活扶助費として約六十万円が支給されていたことが、鶴岡署や市福祉課の調べで二十四日までにわかった。
この事件では同市荒井京田、県立鶴岡病院家族会「緑峰会」会長で元市議の佐藤年繁(六七)と、同市大部町、「やすらぎの里」施設長A(六三)の両容疑者が業務上横領容疑で逮捕されている。
調べによると、男性は九四年六月に生活保護費の支給を申請し、九七年三月まで、生活扶助費や医療費を含む生活保護費を受給していた。市福祉課によると、申請時の預金審査で、男性の預金口座の残高がわずかだったことなどから生活保護費の支給を始めたという。申請前の本人との面接には、A容疑者が付き添っていたという。
ところが九八年十二月、同課で男性の口座を再調査したところ、以前に調べた口座とは別に、本人名義の預金口座があることが分かった。この口座には九四年六月の時点で、約四百八十七万円の残高があったという。
この口座は、申請された住所とは違っていたが、申請後も出し入れした形跡があった。このため、同課は昨年はじめ、生活扶助費分約六十万円の被害を鶴岡署に届け出た。同課は「男性一人での申請は困難で、第三者がかかわったと判断した」と話している。
同署では、申請時の本人面接にA容疑者が付き添っていたことや、両容疑者がこの男性の預金通帳を管理していながら、預金内容を市側に正確に報告していなかったことなどから、詐欺容疑での立件も視野に入れて、両容疑者から詳しく事情を聴いている。
■「相談してくれれば」 困窮、市に伝わらず 宇都宮女児凍死/栃木(朝日新聞 2000年2月26日)
なぜここまで、追い込まれていたのか――。母親(二九)が生活に困り、食事や暖房がままならずに二歳の長女が凍死した事件。女性には児童扶養手当や生活保護といった支援を受ける資格があったが、近所づきあいの少ない女性の困窮ぶりが市側に伝わることはなかった。援助の手を差し伸べられることもなく、長女は極度の飢えのなかで凍死した。市や地元関係者は「少しでも相談してくれていれば」と残念がる。
宇都宮南署の調べでは、女性から一一九番通報があったのは、八日午後十一時四十分ごろ。長女は病院でまもなく死亡。死因は凍死で、胃には何も残っていなかったという。
市生活福祉課などによると、女性にはほとんど収入がなく、身寄りが少なかった。市内に住む親類が、食料や家賃を世話していたこともあったが、最近は連絡が途絶えていたらしい。
同じ年ごろの子どもを持つ近所の人によると、「子どもをベビーカーに乗せ、買い物に行くのを何度か見かけた。おとなしい感じの人だったが、先月中ごろから見かけなくなった」と驚いた様子で話した。
市児童福祉課によると、女性は昨年十月に児童手当を申請したが、この時には変わった様子には気づかず、生活状況など立ち入った調査はしなかったという。
市は、児童手当の申請時に児童扶養手当の申請をすすめたが、女性から申請はなかった。同課は、「扶養手当の支給条件を調べる中で、女性が生活に困っていたことが分かる可能性があった。支給も認められただろう」と話している。
一方、市生活福祉課は、九日付で女性に生活保護を実施。同課も「長女が死亡する前でも女性の生活の様子が分かれば、生活保護が認められた可能性は高い」と話す。
市の援助が必要な家庭の情報は、地元の民生委員などを通じて、市側に届く。だが、女性は自治会に加入しておらず、近所づきあいも少なかった。女性は自分で窮状を訴えることもなく、女性の状況が市に伝わることはなかった。
市保健福祉部は「結果としてこうなってしまったのは残念だ。情報の網に引っ掛からなかったということで、もっと細かな対応を考えるしかない」と話している。
また、女性の地区を担当していた民生委員は「自治会に入っていないと、ほとんど分からないのが実情。もっと自分から相談してくれたら」と残念そうに話していた。
■生活保護「資格ないと思った」 凍死した女児の母語る 宇都宮(朝日新聞 2000年2月27日)
財布には小銭が五百円ほどしかなかった――。生活に困窮した宇都宮市の無職の女性(二九)の長女(二つ)が自宅で衰弱し、今月九日に凍死した問題で、この女性は二十六日、朝日新聞の取材に対し「生活保護の制度は知っていたが、自分が受けられるとは思わなかった」などと話した。
女性は長女の出産のため、三年前にデパート店員を辞めて以来、無職だった。内縁の夫は出産前に失そう。長女と二人、八畳一間のアパートでの生活は、預金を取り崩したり、保険を解約したりしてやりくりしていた。
月数万円の郵便のあて名書きの内職をしながら、仕事を探したが見つからず、市内の親類が数カ月に一度送ってくれる米や野菜などでしのいでいたという。
年明けからは、この内職がまったくなくなり、年金生活者の親類の援助も頼れなくなっていた。先月下旬には、食事も一日茶わん一杯のご飯だけになった。
このころ、料金支払いが滞っていたガスと水道の供給が止められた。電気は通じていたが、水道がないため炊飯ができず、ガス暖房も使えなくなった。
長女にはアパートの共同水道からくんでくる水を飲ませるだけ。「大家さんの水道だったので、気がねして、たくさんはくめなかった」という。
最後の数週間は「何も考えることができず、小さくなっていく子どものおなかを見ていた」と振り返り、体を震わせた。
昨年十月に申請した児童手当は、書類の不備で支給が三月にずれ込んでいた。生活保護については「制度は知っていたが、自分が受けられるとは思わなかった。市の広報誌も取っておらず、地区の民生委員に相談することもできなかった」と話した。
長女が凍死した時、女性が持っていた現金は、わずか五百円ほどだった。
市保健福祉部は「児童手当の請求段階で、もっと女性の様子に敏感になれなかったのか、残念だ。その辺をくみ取る努力が必要になってくるだろう」と言っている。
■オンブズ栃木、行政対応に要望提出へ 幼女凍死事件で /栃木(朝日新聞 2000年2月28日)
オンブズ栃木(岩本義夫代表)は二十七日、宇都宮市で総会を開き、新年度の活動計画などを決めた。
新たな活動として、二月定例会で可決された県議会の情報公開条例を活用し、議員の海外視察や政務調査費に関する資料や、委員会記録などを開示請求し、実態を調査することを決めた。県の条例についても、公安委員会(警察)を実施機関に含めることを要望するほか、各自治体の地方行革の実施状況などもチェックしていくという。
また、この日の総会では、宇都宮市の無職の女性(二九)が生活に困り、長女(二つ)が今月九日に凍死した問題が取り上げられた。
「水道料金を払えないのは生活に困っているからで、供給を止める前に福祉関係部局や民生委員に連絡すべきだった」「児童手当申請の時点で、なぜ生活保護受給資格があることを本人に告げたり、関係課に連絡したりしなかったのか」などと、市の対応を批判する意見が出され、今後このような対応を改めるよう、今週中に市に要望書を出すことを決めた。
■「まるで毎日耐寒訓練」 テント暮らしの札幌ホームレス /北海道(朝日新聞 2000年2月28日)
JR札幌駅の西側にある札幌市北区の「エルムの里公園」には、色とりどりのキャンプ用のテントが十数張り林立している。ここで暮らす十数人のホームレスの「住居」である。リストラ、放浪中、サラ金逃れ、とテント生活の動機は十人十色だが、厳しい冬の中、偏った食生活で血圧が二〇〇をこえる人もおり、健康状態が危ぐされる。札幌市内には合わせて約五十人のホームレスがいるとされるが、札幌市は「ホームレス問題は社会問題化していない。彼らは市内に住民票がない」などとし、抜本的な対策には乗り出していない。(報道部 神元敦司)
札幌市北区土木部によると、エルムの里公園はJR線路の高架化に伴い、線路跡地を利用して、一九九一年に開園した。その直後から、ホームレスが段ボールを使って、生活し始めた。立ち退きを進めるため、土木部は園内の水道を廃止し、昨年秋にはねぐらに利用されていた木製遊具も別の公園に移した。ところが、ホームレスの側はテント暮らしに切り替えた。
テントは一人一張り。水色テントに暮らす五十一歳の男性は東京都葛飾区の印刷会社で約二十年勤務した。「個人的な問題で二年前に退社した。消費者金融などに二百万円を超す借金がある」と話す。ずっと独身で両親もすでにいない。
二年前の七月、札幌に来た。建設会社に入ったが、鉄骨を運ぶなどの現場作業がうまく出来ず、一年で解雇された。ほかに仕事も見つからず、昨年七月から、この公園の住人になった。
男性は朝五時半に起き、自転車で約五キロほど離れたゴミ捨て場に行く。捨てられた本を拾うためだ。帰りがけにコンビニでトイレを済ませ、弁当を買って戻る。午後は集めた本を古本屋に売りに行く。二月中旬のある日は六十二冊を集め、計二千七百八十円になった。
先月下旬、連続して最低気温が零下一〇度を下回った。男性は、カイロをあてた背中だけが熱く、底冷えがひどくて寝付けなかったと振り返る。
ホームレスの生活を調査する北大教育学部の杉村宏教授によると、エルムの里公園のホームレスの場合、一日に食事を三回取っている人は三分の一しかいない。医療費がかからなければ病院に行って診てもらいたいと大半の人が答えた、という。「冬のホームレスは毎日が耐寒訓練です」と杉村教授は、データには表れない実態を危ぐする。
賞味期限が過ぎて捨てられるコンビニ弁当を拾うホームレスの場合は、テント村から五キロほど離れた新琴似地区や十キロほど離れた手稲区まで歩いて出かける。公園に近い中央区のコンビニが、保健所の指導で廃棄物の管理を厳しくしているためだ。
杉村教授によると、ホームレスが一万人近くいる大阪市では、約十三万回ある救急車の年間出動回数のうち、ホームレスに関する出動は約一万五千回と全体の一割をこえ、日常の救急体制に影響が出ている。「札幌市はまだ五十人足らず。全道でもまだまだ少数。今のうちに行政がホームレス対策に乗り出すべきだ」と述べた上で、「札幌市は住宅事情が良く、安くアパートに入れる。公園清掃などの雇用を創出すればホームレスの数は減らせる」と指摘する。
厚生省は自立支援の在り方を探るため、全国の主要都市にホームレスの実態調査を依頼、札幌市も昨年十二月に、同公園など市内七カ所で調査した。市は「ホームレスが生活保護を受けるに急迫した状況」(生活保護法)にあるかの観点から聴取した。しかし、「ほっといてくれ」と大半のホームレスが生活保護を拒否した。生活保護は申請保護が原則のため、市では「ホームレスに問題なし」との立場だ。
札幌市保護指導課の浜崎雅明課長は「我々は札幌市に三万六千人ほどいる生活保護受給者の雇用を考えるのが業務。五十人ほどのホームレスを特別扱いすることは出来ない。彼らは市税を払っているわけでもない」と言い切る。
ホームレス自身も「自由気ままがいい」(四十七歳・男性)「放浪の旅の途中で、春になったら四国八十八カ所霊場めぐりに出かける」(六十七歳・男性)「借金取りに追われて名前は公に出せないからこのままがいい」(中年男性)との声が多い。
【写真説明】
大小のテントが公園内に立ち並ぶ。中には4、5人用の大きな物も
「拾った本が貴重な収入源」と雪降る中、自転車に乗って古本屋へ出かけるホームレスの一人=写真はいずれも札幌市北区北6西8の「エルムの里公園」で
■血の通った行政だった? 宇都宮の女性が生活困窮、幼児凍死/栃木(朝日新聞 2000年2月29日)
宇都宮市の無職の女性(二九)が生活に困り、長女(二つ)が衰弱して今月九日に凍死した問題で、同市の水道局と保健福祉部の幹部が二十八日緊急に会合を開き、今後、互いの連絡を密にする方法を検討していくことを確認した。この問題で水道局営業課は、給水停止時に福祉関係部局に知らせるべきだったという声があることについて、「女性宅はいつも不在で本人に会えず、窮状ぶりは分からなかった」と説明している。
水道局営業課によると、女性には十月に納付書を発送してから十一月までに三回、郵便で納付を促したという。
支払いがないため、一月になってから三回、職員が女性宅を訪れた。しかし、いつも不在だったという。このため、三回目の一月二十四日、結局女性に会えないまま給水を止めた。
女性が困窮していたことには「ちょっとでもサインを出してもらえれば、対応ができた。いつも不在なのは、働いているからなのかと思っていた」と話している。
同課によると、給水停止は年間に三千−四千件(供給が共同の河内町分を含む)。生活困窮のため払えないケースは、数年に一回ほどの割合であるという。
今回のケースで、市内部での連絡が不十分だったのでは、と「縦割り行政」を
批判する声も出ているが、過去には窮状を訴えた人がいた場合、水道局から保健福祉部に連絡したり、民生委員を紹介したりしていて、生活保護が実施された例もあるという。
この問題で市は二十八日、保健福祉部次長や、児童福祉課、生活福祉課などの同部課長クラス、それに水道局営業課長らが緊急に会合を開き、市内部の横の連絡を密にできないか、各部署で検討していくことを決めた。
具体案として、水道料金の滞納者情報を、福祉関係部局と共有することなどが話題に上った。水道局営業課は「滞納が生活困窮のひとつのシグナルともいえる。生活福祉課との連携を考えていきたい」と話している。
市は女性に対し、書類の不備で支給が遅れていた児童手当を三月に四カ月分(二万円)支給することにしている。また、生活保護は、緊急性があるとして長女が死亡した九日付で実施している。
○「対応が悪い」、「仕事が怠慢」 批判・意見、150件以上
宇都宮市の無職の女性が生活に困り、二歳の長女が衰弱して凍死した問題で、県内外から市の関係各部署に批判や意見などが相次ぎ、二十八日までに、百五十件以上にのぼった。
児童福祉課に百件近く、生活福祉課に約三十件、水道局営業課に十数件、広報課には電子メールで二十一件あった。県外からが多いという。
ほとんどが「こんな事件があっていいのか」「もう少し母親にきちんと対応できなかったのか」「仕事が怠慢」など、市の対応への批判で占められた。
一部には、「行政だけの責任ではない」といった意見や、「女性に支援をしたい」という問い合わせもあったという。