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生活保護 2000年1月のニュース

生活保護


■老婦人の賀状、心もほのぼの(声) 【大阪】(朝日新聞 2000年1月8日)

 地方公務員 山形信行(京都市 50歳)
 私のように生活保護ケースワーカーをしていて、仕事で人に感謝され、励まされるということは、そうはない。良かれと思ってしたことが相手に気に入られず反発されて落胆したり、求められてしたことが、かえって本人に不幸な結果を招いたりということのほうがはるかに多い。
 病弱で、施設入所か入院を勧めたいような高齢者はこちらが不安になり、「何で、そんなに居宅生活にこだわるのか」と、いらだたしくなることすらある。それでも、自宅の畳の上で死にたい!と言う人の思いには勝てず、孤独死などに至ることが絶えない。
 そんな中のお一人、明治四十一年生まれで九十一歳になる独り暮らしの女性から、こんな賀状をいただいた。「…私も皆様の温かいご厚意に甘えて二〇〇〇年まで生きちゃいました。お礼申し上げます。これからも何かとご迷惑をお掛けすると思いますが、よろしくお願い申し上げます…」。何と、おちゃめで、かわいい文面か。これが明治の独創というものかと思った。
 そんなこんなで、日々くじけそうになりながらも福祉の現場はミレニアムを迎えた。願わくば、私も生あれば、三十年後、四十年後、こんな愛きょうある賀状を書きたいものだ。

■保険指定医巡る処分、原告の訴え棄却 高松地裁 /香川(朝日新聞 2000年1月12日)

 高松市円座町の原外科医院を舞台にした簡易保険の入院保険金をめぐる詐欺事件で、保険医療機関の指定を取り消された原修一被告(六五)=一審で有罪判決、控訴中=が、保険医療機関の指定取り消し処分の取り消しなどを知事に求めた訴訟の判決が十一日、高松地裁であった。馬渕勉裁判長は、保険医療機関の指定取り消し処分の取り消しについては請求を却下し、生活保護法に基づく指定医療機関の指定を外した処分の取り消しについては棄却した。
 原被告は、架空入院患者らと共謀して簡易生命保険の入院保険金をだまし取ったとして一九九五年七月九日に逮捕され、同二十四日に保険医療機関の指定を取り消された。
 原告側は「診療行為は適正で、指定を取り消した理由がない」などと主張したが、馬渕裁判長は「原告の訴えによって回復する法律上の利益がなく、訴えは不的確」などと判断した。
 原告側は「十分に審議されていない。控訴も含めて検討したい」としている。

■被災者免除じゃない?償還求められ困惑 震災法律援助費【大阪】(朝日新聞 2000年1月12日)

 阪神大震災で生じた法律問題を解決するため、訴訟・調停費用を立て替えてきた阪神・淡路大震災被災者法律援助事業で、立て替え費用の支払い(償還)を巡って利用者に混乱が起きている。震災直後は「被災者は償還を免除」と説明されたが、実際は免除基準が保留のまま事業が進められ、四年近くたって決まったためだ。最近になって、償還を求められた利用者から「払わないといけないのか」という問い合わせが法律扶助協会兵庫県支部に寄せられている。
 
 事業は、敷金返還や境界線問題、火災保険金請求など激増した被災地でのニーズに対応するために一九九五年七月から始まり、法務省、近畿弁護士会連合会、法律扶助協会の三者の共催で、被災者を対象に訴訟費用などを立て替えてきた。同年度に三億三千五百万円の補正予算もついた。
 通常の法律扶助制度は、経済的に苦しい人の裁判費用を立て替え、裁判終結時に支払ってもらう。償還は三年間猶予され、生活保護受給者などは免除される。
 震災扶助が受けられる要件の「勝訴の見込み」や資力基準は緩やかに決められたが、償還については「被災者は免除」と求めた協会や近弁連と、「通常の法律扶助の交付要領に準じて行う」とする法務省の意見が食い違った。九五年十一月の法務省と協会の協議でも折り合いがつかず、「償還・免除基準については時間をかけて検討したい」(法務省)と、保留したままで走り出した形になった。
 償還猶予期間が三年で終わるため、九八年から再討議。昨年三月、免除基準は「前年の収入が六百万円以下(六十歳以上は八百五十万円以下、四十五歳以上六十歳未満は七百五十万円以下)」と決められた。
 しかし、震災直後の説明会に出席した弁護士(三一)は「説明会で『震災扶助は通常の法律扶助より緩やかで、返済は免除になる方針』という意味のことを何度か聞いたので、法律相談でもそう説明してきた。決定は問題だと思った」と話す。
 協会の大石哲夫事務次長は「法務省側が、震災直後の現地での懇談会で『特別の配慮をする』『金のことは心配しなくていい』などと発言した。免除になると思うのも無理なかった」と指摘。法務省人権啓発課は「当時、かなりの混乱の中で『できるだけのことはやらせてもらいます』と言った可能性はあるが、あくまで担当者が個人的見解として言ったものだ」としている。
 免除基準が四年近くたってやっと決まったため、利用者に混乱が起きている。
 震災当時、大学生だった会社員(二七)は、神戸市灘区の文化住宅で被災し、大家に転居を迫られた。
 「契約上、転居費用は出るはず。震災扶助を使えば裁判費用は免除になる」と弁護士から勧められ、裁判で転居費用を得た。ところが、昨年十二月、協会から「立替金償還免除申請書」などが届き、立て替え金三十九万円の償還を求められた。「費用は免除になると聞いて利用したのに……」と困惑している。
 
 ○あくまで要領、枠組みでやる
 法務省人権啓発課の話 免除について決められなかったのは、被災者への義援金の分配などがどうなるかわからなかったためだ。本来、法律扶助は資力に乏しい人を援助する制度で、月収基準で運用している。震災扶助ではその点を変えており、特別な措置であることは間違いないが、法務省としてはあくまで法律扶助の交付要領の枠組みでやるという姿勢だ。
 
 <阪神・淡路大震災被災者法律援助事業の利用状況> 95年度に訴訟1149件、示談交渉など224件が利用されたのを最高に、98年6月までの3年間で兵庫と大阪で計2749件を扱った。昨年5月からは立て替え金の償還が順次始まり、法律扶助協会によると昨年11月上旬までに、367件(約1億3395万円)の免除申請が出されている。

■佐賀市の生活保護認定・相談、過去10年で最高に /佐賀(朝日新聞 2000年1月13日)

 不況の影響で佐賀市の生活保護世帯が、今年度は過去十年間で最高になりそうだ。昨年十月までに八百六十五世帯が認定され、三月末までには九百世帯に迫るとみられている。生活保護について寄せられた相談件数も過去最高。九七年度の約一・六倍にあたる四百二十件程度になる見込みという。市福祉事務所は「不況で日雇いやパートで働いていた高齢者が、職を失ったことが大きい」と分析している。
 生活保護は収入、資産、健康状態、家族関係などを考慮して一定の生活水準に満たないと、市が判断した場合に支給される。支給額は一般的に、六十歳から六十九歳は約十万円、七十歳以上は約十一万円から、収入や預貯金などを差し引いた額になる。
 市内の生活保護世帯は、一九九〇年度が八百二十七世帯、九三年度は七百四十世帯と減少傾向だった。九四年度から増加に転じ、今年度は、すでに過去十年で最高だった九〇年度を上回っている。
 とくに、高齢者が生活保護を受けるケースが増えているという。昨年九月までに女性六十歳、男性六十五歳以上では四百三十四世帯が認定された。認定世帯、相談とも、国民年金の積み立てをしていなかった受給資格のない高齢者が多いという。
 福祉事務所によると、相談内容は「関東の息子の会社が不況で、仕送りができなくなった」(独り暮らしの六十五歳男性)、「土木作業をしていたが、不況ということで仕事をやめさせられた」(五十八歳男性)など、不況のあおりを受けたものが目立つという。
 福祉事務所は、来年度も生活保護認定は増えるとみて、来年度予算は今年度より二億円増の二十二億円を要求したい、としている。

■生活保護世帯に確約書 仙台市のワーカー /宮城(朝日新聞 2000年1月14日)

 仙台市の二つの福祉事務所のケースワーカーが、生活保護の一部の受給者に対して、法的根拠のない「確約書」に受給継続の条件を書かせていたことが、市民団体の指摘でこのほど明らかになった。同市は「自立のための助言など指導する際、確約書の形で約束を取り付けていたようだ。指導自体は必要だが、行き過ぎの面があった」として、今後は確約書を廃止することを決めた。
 この問題を指摘したのは市民団体「仙台生活と健康を守る会」(阿部初郎会長)。昨年秋、生活保護を受けていた太白区の四十代の女性から相談を受けた。女性は住んでいる賃貸住宅の家賃が高いとして、引き払う期日を約束する確約書を、太白福祉事務所のケースワーカーに求められたという。文書には「約束を守らなかった場合には、生活保護を停・廃止されても異存ありません」と記されていた。同会は今月七日、市の担当者に実態調査と廃止を申し入れた。
 生活保護の受給者に対しては、ケースワーカーが訪問して自立のための助言や指導をしている。生活保護法では、再三の指導でも従わない世帯には、具体的な継続条件と期日を記した「指示書」を出し、弁明の機会を与えたのち、支給を廃止できる。しかし、確約書には法的根拠がなく、現場のケースワーカーの独自判断で受給者に書かせていた。
 市社会課によると、確約書は同福祉事務所で十年以上使われており、若林福祉事務所でも、自動車保有や生命保険の処分を迫る確約書を取っていたことが分かった。ただ確約書だけで、生活保護を打ち切ったことはないという。

■高齢被災者8割が病院通い 老後に余震 復興住宅調査 【大阪】(朝日新聞 2000年1月16日)

 阪神大震災の被災者向け仮設住宅から多くの人が転居した災害復興公営住宅で、高齢の入居者の八割以上が医療機関に通い、このうち四割近くが震災後に通院を始めたことが、神戸市西区の民間病院「みどり病院」(額田勲院長)の調査でわかった。収入は年金に頼る人が多く、生活を切り詰めているお年寄りの姿が浮かぶ。額田院長は「高齢者にとって、震災は寝たきりや痴ほうが進む老後の不安を増幅させた。行政はすべての被災世帯の実態調査をして、若く健康な被災者とは違う特別の支援を講じるべきだ」と指摘している。
 
 兵庫県内には四万千百十四戸の災害復興公営住宅が完成。三万九千七百五十世帯が入居。調査が行われたのは、神戸市西区の郊外にある市営西神南住宅(四百五十六戸)と隣接する市営西神井吹台住宅(六百九十戸)。独居や夫婦で住む六十五歳以上の百五十人を対象に面談方式で実施された。
 
 ●医療費月5000円
 調査では、八四%(百二十六人)が医療機関に通院していると答え、そのうち震災後に通院を始めた人は三七%(四十七人)にのぼった。収入を年金だけに頼るのは四人に三人。困った時に相談する相手は家族や親類が八四%と高い一方、隣近所は五%と復興住宅での希薄な近隣関係がうかがえる。ヘルパーによる家事支援など、外部の支援を受けている人は四人に一人にとどまった。社会問題になった「孤独死」については今後、「増える」「変わらない」と答えた人は四二%で、「減る」「なくなる」の一一%を上回った。
 調査が行われた住宅に独りで暮らす八十六歳の女性は週に三日、近くの診療所に通う。胃の薬をもらい、冬に痛むひざのリハビリが欠かせない。かつて手術を受けた目が震災後に悪化し、あいさつをする知人の顔が見えない。月額約三万円の年金のうち、五千円を超える医療費がかかる。「助けを求めたくてもどこにいけばいいのかわからない。夜、布団の中で、このまま目が覚めなかったら死ねると思うこともあります」
 昨年三月、近くの棟に住む六十九歳の女性が乳がんで亡くなった。死の三日前、初めて女性を診察した医師は二十センチ大のしゅように絶句した。二年間に二度、医療機関で受診しているが、しゅようを診てもらった形跡はなかった。同居していた娘は「知らなかった。本人が言わなかった」と話した、という。
 
 ●孤独死の寸前
 神戸市内で最大規模の千八百八十六世帯が暮らす復興住宅「HAT神戸灘の浜」。高齢化率が最も高い九番館(百七十八世帯)には、救急車が数日に一度やってくる。安否確認の感知器や定期的に巡回する生活援助員が六十八人の独居高齢者を守る一方で、「孤独死」寸前で亡くなったお年寄りもいる。
 昨年一月、独り暮らしの八十歳の女性が部屋で倒れているのが見つかった。新聞受けがあふれていたのに気づいた生活援助員が不審に思ったが、ベルも感知器も鳴らず、扉はカギが掛かっていた。家族が駆けつけた時、女性は居間でいびきをかいて倒れていた。病院に運ばれたが、三日後に亡くなった。兵庫県は「応急対策の時期は過ぎた」として、一九九八年十月を最後に被災世帯の健康調査をうち切っている。
 
 【写真説明】
 限界の足音 神戸市灘区の災害復興公営住宅で、独り暮らしの高齢者を訪れる民生委員の濱田保夫さん(左)。入居者の草花に水をやり、生活保護の相談を受ける。75歳。「お年寄りの面倒をみるのが高齢者では、いずれ限界が来る」=神戸市灘区のHAT神戸灘の浜で

■支援センター開設 高齢者・障害者の相談へ 京都弁護士会 /京都(朝日新聞 2000年1月19日)

 京都弁護士会(村山晃会長)は、お年寄りの財産の管理や障害者の人権保護を目的とした「高齢者・障害者支援センター」を中京区の同弁護士会館内に開設し、二十五日から相談を始める。相談者からの依頼を受けて弁護士をあっせんし、手続き交渉やトラブルの解消にあたる。寝たきりや入院のために外出できないお年寄りのために出張相談も受け付ける。
 センターは(1)法律相談(2)高齢者や精神障害者と契約して資産保護にあたる財産管理支援(3)介護保険の要介護認定に対する不服申し立て、生活保護や年金受給をめぐる交渉をする介護福祉支援(4)精神病院の処遇の改善交渉を行う精神保健支援――の四つの業務を受け持つ。センターに登録する弁護士は約百十人。
 お年寄りや障害者の財産管理や生活環境をめぐっては深刻な事例もある。同弁護士会の法律相談会には、お年寄りや介護職員らから一九九七年度で四十三件、九八年度で五十九件の相談が寄せられている。
 《事例1》八十歳の女性は痴ほうのため、現金や預金通帳などをたびたび紛失する。財産を管理する親せきを拒絶している。本人の財産管理をどうすればいいのか。
 《事例2》八十三歳の女性は親せきと養子縁組させられ、持ち家で同居。悪口を言われ、いやがらせや肉体的な虐待を受けた。縁組の解消と立ち退きを求めたい。
 ◇
 法律相談は一回四十五分、五千円。出張相談は一万円から。生活保護世帯は免除される。各種支援は別料金。相談時間は毎月第二、四火曜日の午後一時−四時。受け付けは平日の午前九時半から午後五時、同弁護士会(075・231・2335)に申し込む。またセンター開設を記念し、二十七日午前十時−午後四時に無料の電話相談窓口「高齢者・障害者の権利一一〇番」(075・231・2511)を開く。

■大津市の当初予算要求額、一般会計は4.1%増加 /滋賀(朝日新聞 2000年1月21日)

 大津市は二十日、各部局の二〇〇〇年度当初予算要求額を発表した。一般会計の総額は約九百十八億七千三百五十万円で、一九九九年度の要求額に比べ四・一%の増。市財政課は「不況を反映した生活保護費や新規建築物の運営費などが増えたため」としている。特別会計の要求額は約千六十九億七千九百六十万円、企業会計は約三百三十九億八千二百七十万円。
 一般会計のうち、要求段階で九九年度当初予算を上回ったのは総務費、衛生費、農林水産業費、土木費、教育費、公債費。
 新たな事業は、大津市真野四丁目に移転新築する北部共同調理場約十六億六千万円、戸籍事務電算化約五千三百万円、幼稚園子育て支援約四千万円など。また、特別会計で介護保険事業費約七十三億千百六十万円を要求している。当初予算案は、助役、市長査定をへて二月上旬にまとまる予定。財政課は「一般財源が厳しく、九九年度当初予算八百三億八千万円よりも微増になる程度」と話している。

■福祉施設で着服疑惑 収賄容疑の名古屋市職員 【名古屋】(朝日新聞 2000年1月21日)

 事業所税をめぐる汚職事件に絡み、加重収賄容疑などで逮捕された名古屋市民生局主事のA容疑者(五二)が、在職先の市救護・更生施設「植田寮」(同市天白区)で、生活保護対象の入所者から総額百六十余万円の現金を着服した疑いがあるとして、名古屋市側が事件前に愛知県警に通報していたことが十九日、関係者の話で分かった。こうした事実を把握している県警捜査二課も、刑事事件として立件できるか慎重に検討している。収賄事件と同じような不祥事で処分を受けた後、職場換えされた福祉施設でも、A主事に金銭絡みの疑惑が持ち上がっていたことになる。
 市民生局によると、一九九八年五月、A主事が担当していた高齢の男性入所者が、施設を退所する際、金融機関の口座に入れていた預貯金を確認したところ、ほぼ全額にあたる計百六十四万五千円が知らない間に引き出されていた。
 申し出を受けた施設側は調査を始め、通帳を預かっていたこともあるA主事らにも問いただしたが、最終的にはだれが引き出したのか、確信を持てるまでに至らなかった。そのため、市は二カ月後の七月、事件の疑いがあるとして県警に届け出ていた。
 関係者の話では、この着服疑惑が、A主事の不正行為が発覚する端緒になった。ただ、この男性入所者が退所後の昨年十一月、病死していることなどから、後になって発覚した収賄容疑でA主事は逮捕された。捜査二課は横領か窃盗の罪にあたる可能性があるとみて、当時の経緯について裏付けを進めている。
 これまでの調べでは、A主事には当時、株の売買や遊興費などでかさんだ一千万円を超える借金があったという。
 
 ○山田光昭・名古屋市民生局長の話 警察の捜査にゆだねているので、詳しいことは言えない。警察に届け出た当時すでに、福祉施設で同じような問題が起きないよう、必要な措置はとっている。

■延長・一時保育充実など 福岡市の新保健福祉総合計画 /福岡(朝日新聞 2000年1月29日)

 子育て支援などの少子化対策や、介護保険開始により再構築が必要となる高齢者福祉サービスを盛り込んだ福岡市の新保健福祉総合計画(仮称)案の諮問を受けた三審議会、二協議会の答申や意見が二十八日までに出そろった。計画は二〇〇〇−二〇一〇年度までの市の保健、医療、福祉施策の基本指針となり、乳幼児・老人医療費の助成や敬老乗車券など個人給付施策の見直しも含まれている。市は答申を受け、二月中に総合計画を策定する方針だ。
 少子・高齢化やニーズの多様化にこたえるのが目的とされ、(1)時代に即応した施策の再構築(2)利用者本位の効率的なサービスの確立(3)地域住民と行政、民間団体の適切な役割分担と連携、を軸に検討してきた。
 懸案の少子対策では、「多様な保育サービスの充実」を挙げ、延長保育や一時保育の拡充を図るほか、夜間・深夜保育や障害児保育なども今後、検討する。
 四月から始まる介護保険で適用外となる高齢者に対し、市の一般財源を使った独自のサービスを提供することも盛り込まれた。炊事、買い物などのホームヘルパーを派遣する「家事援助サービス」や、保健所などの「生活リハビリ教室」で支援する。介護保険の適用者にも、保険とは別におむつの給付やふとんなど寝具の洗濯乾燥サービスなどを始める。
 また、市は三十近くある個人給付施策を洗い直し、必要性の低いものは廃止か縮小、逆に高いものは拡充する方針だ。
 四十年以上前に導入された、生活保護世帯への福祉見舞金は「自立を促す効果が薄れた」ことを理由に廃止。新たに中高校の卒業や高校の入学時に「自立支援金」の名目で三−五万円を給付する。
 医療費助成の対象となる高齢者の所得制限の基準額を引き下げ、対象者を絞り込む。七十歳以上への交通運賃助成は、西鉄バスと市営地下鉄の敬老乗車券を統合し、所得制限も強化する。乳幼児の入院・通院費の補助は、現行の三歳未満から四歳未満に広げる。
 このほか、計画案には、▽バリアフリーの推進▽各区ごとのボランティアセンターの設置▽離島医療の充実▽子育てと仕事の両立支援▽介護保険の円滑な実施▽障害者の社会参加支援――などがある。

■寝たきり介護手当廃止へ 紙おむつ支給は拡充 和歌山市 /和歌山(朝日新聞 2000年1月29日)

 和歌山市は二十八日開かれた「市高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画策定委員会」(小池洋一会長)で、在宅で寝たきりの人を介護している介護者に支給している「介護手当」を今年度で廃止する方針を明らかにした。その一方で、生活保護世帯や所得税非課税世帯に限定している紙おむつの支給を拡充し、要介護認定を受けた人に必要に応じて支給する方針を示した。
 介護手当は、六カ月間在宅で寝たきりの人を介護した人を慰労し、経済的な負担を軽減するため、年二万円を支給している。今年度は三百十七人が申請し、支給を受けた。廃止する理由について市高齢者福祉課は「現金給付は家族に介護を強いることにつながる。介護保険制度の開始を機に廃止することにした。今後は紙おむつの支給を充実させることで対応したい」と説明している。
 紙おむつの支給は生活保護世帯、所得税非課税世帯を対象に、一件につき年間二万四千円分の紙おむつが支給されている。市は四月以降、これまでの対象世帯への支給を継続するとともに、要介護認定を受け、「要介護1」から「要介護5」に認定された人にも、申請があれば支給する方針だ。

■宇都宮市職員、横領の疑いも 児童買春で起訴 /栃木(朝日新聞 2000年1月29日)

 県警捜査二課と黒磯署は二十八日までに、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(買春)などの罪で起訴された宇都宮市生活福祉課の前係長A容疑者(五一)=同市御田長島町、十二月に懲戒免職処分=が、市に返還しようとした他人の生活保護費約五百七十万円をだまし取ったとして、同容疑者を業務上横領の疑いで再逮捕する方針を固めた。
 調べでは、A容疑者は同課の査察指導員だった一九九八年二月、担当していた市内の精神病院に入院中の女性(五〇)が、国の障害基礎年金の支給を五年前にさかのぼって受けることになったため、女性に、年金と重複する生活保護費約五百七十万円を返還するよう求め、そのまま着服した疑い。

■孤独な心支えるために 武山ゆかり(患者のための医療つきあい学)(朝日新聞 2000年1月31日)

 一月二十三日午前九時二十分。Nさんは、入院中の病院で五十七歳の生涯を閉じた。食道がんが肺に転移した男性患者だ。緩和ケア病棟で五カ月。慣れ親しんだスタッフに囲まれて、穏やかな日々を送って迎えた最期だった。でも、私には悔いが残る別れとなった。
 Nさんは三十歳代で離婚し、父母は他界、弟は音信不通で、会社勤めをしながら長く独り暮らしをしてきた。三年前にがんの手術で声を失ってから、急に気弱になった。仕事を辞め友人とのつきあいも絶ち、テレビとスポーツ新聞をながめながら、たまの競馬だけが楽しみの毎日。生活費の心配もあったはずだ。傷病手当金と雇用保険のほかは、貯金を取り崩して生活するしかなかったのだから。
 肺への転移が見つかったとき、主治医に筆談で語った。<これ以上生きている意味はありません。治療は結構です>。相談室で交わすやりとりからも、人生に否定的な心境が伝わってきた。<世話をかけたくない。苦しむんじゃないか。お金がなくなったら……>
 ソーシャルワーカーとして、できることは全部しようと思った。末期は緩和ケア病棟に入院することを提案して、手続きを進めた。それまでの間のアパート住まいを支えるために、家事援助ヘルパーと二十四時間対応の訪問看護婦を手配。生活保護の申請や納骨の手はずも整えた。Nさんに安心して生きてもらいたかったからだ。
 そのかいあってか、Nさんは看護婦と冗談を交わしたり、ボランティアさんと筆談や散歩を楽しんだり、穏やかな日常に戻ったようだった。いよいよ病状が悪化した時にも、周りのスタッフとのコミュニケーションは良好だった。目標は達成できたかに思えた。
 その思いが揺らいだのは、亡くなったNさんの荷物の整理にアパートを訪れた時だった。机の中に、弟の戸籍謄本が大切にしまわれていた。たった一人の肉親。大阪にいると風の便りに聞いて、捜して歩いたが見つからなかったと話していた。会社の同僚と肩を組んでいる写真も出てきた。よく話題にしていた友人だった。思い残すことはないと言ってくれたNさんも、本当は弟や友人に会いたかったのではないか。孤独に苦しんでいたのではないか。もう少し話を聞く時間をとりたい、あと一歩心の中に入っていって、と思いながら、忙しくて果たせなかった。本音を聞き出せていたら……。
 独り暮らしの患者さんの中には、病気をきっかけに周りとのかかわりを狭めてしまう人が少なくない。心の支えが必要なのだが、十分でないのが悲しい現実だ。
 (医療ソーシャルワーカー)

■市役所を家宅捜索 宇都宮市前係長を再逮捕 業務上横領容疑/栃木(朝日新聞 2000年1月31日)

 県警捜査二課と黒磯署は三十日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(買春)などの罪で起訴された宇都宮市生活福祉課の前係長A容疑者(五一)=同市御田長島町、十二月に懲戒免職処分=が、自分の担当受給者が市に返還しようとした生活保護費約五百七十万円をだまし取ったとして、業務上横領の疑いで再逮捕するとともに、市役所生活福祉課を家宅捜索した。
 これまでの調べでは、A容疑者は一九九八年二月、自分が担当していた生活保護費受給者の女性(五〇)が、国の障害基礎年金の支給を五年前にさかのぼって受けることになり、女性に対して、市に年金と重複する約五百七十万円を返還するよう求め、市には報告せずに着服した疑い。
 A容疑者は昨年十一月、JR宇都宮駅近くで二人の女子高校生に別々に声をかけ、一回につき現金二万−五万円を渡して買春した疑いで逮捕、起訴されている。「着服した金で、数十人の少女を買った」などと供述しているという。
 県警は三十日の家宅捜索で、A容疑者が担当していた生活保護費の支給明細書など段ボール約二十箱分の資料を押収した。
 A容疑者が報告をしないまま、独断で返還を求めることができたことについて、市は「職員が一つの生活保護のケースを丸抱えしている現状があり、チェックの方法がなかった」(保健福祉部)と説明。今後、職員相互でケースを交換し合う態勢を整えるという。
 
 【写真説明】
 A容疑者の業務上横領容疑で生活福祉課内を家宅捜索する捜査員=30日午後1時20分ごろ、宇都宮市役所で


UP:20140430 REV:
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