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生活保護 2000

生活保護


◆「生活保護を制限8割、不正防止へ厳しく適用 都と79市を読売新聞社が調査
 「働く能力ある」「家がない」を理由に」
2000/12/05:『読売新聞』1面 原昌平
 長引く不況で厳しい雇用情勢が続く中、生活困窮者を救済する生活保護の適用
を、法の趣旨に反して厳しく制限している自治体が主要都市の八割にのぼること
が読売新聞社の調査でわかった。こうした運用が、ホームレス急増の要因になっ
ているとの指摘もあり、早急な是正が求められそうだ。
 調査は、人口三十五万人以上をめどに、県庁所在地を含む全国の主要七十九市
と東京都の担当者に実情を聞いた。その結果、「働く能力のある者は保護しない」
「住居のない者は入院時以外保護しない」のどちらかに該当、国の法解釈に反す
る適用制限を行っている自治体が六十六にのぼった。
 生活保護は、資産や親族の援助、他の社会保障、働く能力を活用しても収入が
基準に満たない人が対象。その適用基準について、厚生省は「働く能力があって
も求職に努力して現実に仕事がなければ、対象になる。申請時の住居の有無は要
件ではない」としている。
 調査で、「高齢か病気、障害で働けない人しか保護しない」と回答したのが新
潟、岐阜、熊本など十二市で、ほぼこれに近い線引きが浦和、東京、名古屋など
十六都市で行われていた。
 また、「住まいがない場合の保護は緊急入院のみ」としたのは宇都宮、福岡、
北九州など三十市で、「(緊急に限らないが)入院時のみ」も十二市あった。
 こうした厳格な制限の背景には、一九八〇年代に本来は保護の必要のない不正
受給が問題になり、締め付けが強化されたという事情があると見られる。
 路上やテントで生活するホームレスの人々は、現在、全国に三万人ほどいると
推定されており、九八年当時(約二万人)から急増している。企業のリストラや
倒産で職を失い、再就職できないままアパートから退去を迫られるなどが多いた
めと見られ、生活保護を断られて野外生活を強いられる人も少なくないという。
 厚生省保護課の話「画一的運用はいけないと今春から何度も会議で説明した。
調査結果を参考にしたい」
〈関連記事34・35面)


■「増え続けるホームレス 「最後の安全網」に穴 雇用も福祉も救済切り捨て」
 2000/12/05: 『読売新聞』安心の設計面
路上や公園、河川敷などで野宿生活を送る、いわゆるホームレスの人々が増え
続けている。その数は全国で3万人近くに達した。大部分は失業や倒産による生
活困窮者だ。「生活に困ったら福祉があるはず」。多くの人がそう考える。しか
し〈最後の安全ネット〉であるはずの生活保護制度は、どれだけ機能しているの
だろうか。実情を探ると、本来の趣旨から外れた違法な運用が浮かび上がる。
(原 昌平)

 ◆「あんたは働けるでしょ」 雇用も福祉も救済切り捨て――――――□
 どの公園にも野宿者の青いテント。深夜の駅やビル陰には段ボールの列。
大阪市内では、こうした異常事態が、もはや見慣れた風景になった。
2002年サッカーW杯の会場になる長居公園(東住吉区)にも、400を超
すテントが並ぶ。
 細谷武(ほそやたけし)さん(56)は今年5月から8月まで、ここで野宿生
活を送った。2年前の夏までは運送会社の社員。大手の下請け仕事が急に減り、
退職を強いられた。職安に何回も通い、面接に足を運んだが、仕事は見つからな
い。雇用保険給付は切れ、蓄えも底をついた。
 「生活保護を受けたら」。知人に勧められ、福祉事務所へ出向いた。
 ところがケースワーカーは告げた。「あんたは働けるでしょう。65歳になら
んと無理やねえ」
 民生委員を通じて頼んでも、就職活動費に3万円を貸してくれただけだった。
 「1日1食。1袋20円のもやしを入れたラーメンばかり」で半年余り。
10年住んだアパートは水道、電気、ガスが止められ、家賃の滞納も限界。や
むなく長居公園のテントに移った。
 早朝、昼間、深夜の3回、アルミ缶を集めて回収業者に売ったが、1日数百円
がやっと。65キロあった体重は45キロに落ちた。
 8月半ば、市民団体「釜ヶ崎医療連絡会議」が同公園で開いた相談会に行き、
メンバーと再び福祉事務所へ。支援者が一緒だったことで、今度は対応が違った。
いったん入院したあと、敷金の支給を得てアパートに移り、生活保護を受けてい
る。
 「『ダメ』と言われたら、そんなものかと思った。一人で相談に行って、同じ
経験をした人は多いと思う」と細谷さんは振り返る。   

 ◆失業…路上へ 中高年を直撃 ――――――□
 「好きで野宿はしていない」「仕事がほしい」「まさか自分がホームレスにな
るとは」。野宿生活者の多くは、共通してこんな言葉を口にする。
 元サラリーマンや単身女性、夫婦連れ、若者も珍しくない。この前まで社会の
一員だった人々が路頭に迷い、飢えと寒さ、さげすみの視線に耐えている。
 ここ数年で急激に増えた直接の原因は、雇用情勢の悪化にある。単なる不況で
はなく、企業のリストラ、パートやアルバイトの増加といった雇用の流動化が進
み、日雇い労働市場も大幅に縮小した。
 直撃を受けたのが中高年。昨年の有効求人倍率は全国平均で0・48だが、5
5―64歳は0・09。条件を選ばなくても、採用されるのは10人に1人もい
ない。失業者を優先的に公的雇用する失業対策事業も、96年に廃止された。
 福祉の現場で目立つのは、「働く能力のある人には生活保護を適用しない」と
いう運用だ。自治体によって差があるが、高齢者か、障害、病気のある人にほぼ
限定している場合が多い。
 確かに、生活保護を受ける前に、資産活用、親族の援助、年金受給など他の手
だてを探る必要がある。「稼働能力の活用」もその一つだが、現実に仕事がなく、
能力を生かす機会がない場合は、どうするのか。
 失業して困り果てると、雇用からも福祉からも助けがない。「社会保障の大き
な穴」があいている。
 ◆「住まいがないからダメ」
 ◆生活保護運用違法が慣例化 厳しい締め付け ――――――□
 「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」。憲法25条の規定は「生存権」
と呼ばれる。それを具体化した生活保護法は、無差別平等の適用が原則だ。
 ところが、福祉事務所に出向くと「住まいがない」ことを理由に保護を受けに
くくなるケースが目立つ。
 ただ地域差があり、東京都や横浜市、神戸市などが簡易宿泊所滞在者を認める
一方で、大阪市は病院か施設にいったん入ることを条件にする。
福岡市、北九州市のように「住所不定の人の保護は、緊急入院した時だけ」と
する自治体も相当数にのぼる。
 病院を退院する際、住居がなければアパートの敷金支給もできるのだが、一方
的に保護を打ち切り、すぐ働けない病みあがりの人を再び路上に追いやる事例も
しばしば起きている。
 なぜなのだろうか。
 多くの研究者は、「生活保護の運用は80年代半ばから大きく変わった。不正
受給防止をうたう国の『適正化政策』で締め付けが厳しくなり、本来、保護すべ
き人々まで追い返すようになった」と指摘する。
 ケースワーカー歴30年の大阪市の男性職員(52)は、こう語る。
「保護の数をできるだけ増やさないよう求められる。細かな監査もあるし、ケー
スが増えると担当者の負担も大きい。たまたま配属された行政職のワーカーが多
く、慣例だけで運用するのも一因。それを国も自治体も本気で改善しようとしな
い」

◆現場に徹底せず ――――――□
 国がホームレス問題の対策に乗り出したのは昨年春。
主な自治体と協議して〈1〉働く意欲のある人は、一定期間の宿泊で就職を援
助する「自立支援センター」〈2〉高齢や病気、障害の人は福祉援護〈3〉社会
生活を拒む人は公共施設から退去指導――との方針を示した。
 自立支援センターは今年、横浜市、大阪市、東京都に計5か所できた。横浜市
は入所1か月が原則で、5―10月の間に1101人が期限切れで出たが、行き
先は路上512人、アパート保護など259人、入院196人、日雇い労働10
4人、他施設28人で、本来の目的の再就職はわずか2人。自治体からは、公的
就労事業を求める声が強い。
 生活保護については、厚生省保護課が今年3月、自治体の担当者会議で「住居
の有無は要件ではない」「働く能力がある失業者でも、求職に努力していれば対
象になる」と説明した。同課は「誤った運用があるなら、ただす必要がある」と
するが、現場に徹底させる施策は行っていない。  

◆理由問わず生活保障を
◆木下秀雄・大阪市立大教授(社会保障法)
 「生活保護法が最後のセーフティーネットと呼ばれるのは、いろいろな社会保
障制度から漏れた人でも、すべて受け止め、困窮の理由を問わずに人間らしい生
活を保障する点にある。住む所まで失った人こそ真っ先に救済し、住まいを確保
する必要がある。住居がないから、働く能力があるからという理由で適用しない
のは法律違反。この点は、判例も厚生省も明確に認めている。今の生活保護制度
にも就労援助制度がないなど不十分な点はある。しかしまずはホームレスになる
前に保護する、なった人をアパートに戻すなど、きちんと活用すべきだ」  

◆メモ〈ホームレス〉
 本来は施設や宿泊所、友人宅などを含め、広い意味で適切な住居のない人を指
す。日本では主に屋外で暮らす人を指すことが多いが、その呼称は東京都が「路
上生活者」、横浜市が「屋外生活者」、大阪市が「野宿生活者」など、自治体に
よってまちまち。支援団体は「野宿者」と呼ぶことが多い。
 ◆図=過去の最長職 野宿に至った理由 年齢
 全国主要都市のホームレス数


◆「生活保護の変更申請放置で大阪市長らに勧告/大阪弁護士会」
2000/12/28:大阪読売
大阪弁護士会(児玉憲夫会長)は二十七日、大阪市立更生相談所が、保護施設
で生活保護を受けている男性(61)から出されていた生活保護変更申請を一年
近く放置したとして、「生活保護法に反する行為で人権侵害」と判断、磯村隆文
市長と竹内徹郎所長に人権救済の勧告をした。


UP: REV:20071108
生存・生活  ◇生活保護 

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