生活保護介護加算(特別介護料)
生活保護を受給している人で介助(介護)を必要とする人に対して特別介護料(介護加算と呼ばれる)がある。家族介護加算と他人介護加算がある。
具体的な申請の方法等については障害者自立生活・介護制度相談センターへ
◆立岩 真也 19990915 「他人介護加算」,『福祉社会事典』,弘文堂 http://koubundou.co.jp/
「生活保護の生活扶助の加算の一つに介護加算があるが,その中に家族介護加算と別に他人介護加算がある。家族外の介助により生活する場合,介助者に支払われる費用として支給される。自立生活を始めた人達の要求運動によって,厚生大臣が承認した場合,1975年度から例外的に特別基準での支給が行なわれるようになり,これが介助を得て暮らしていく上での有力な手段となった。さらに1991年度から,原爆者特別措置法の介護手当を引き上げたのに合わせ,支給額が改善されるともに知事の承認による特別基準が新設された。1998年度の月額は7万1400円,特別基準では知事承認10万7100円,厚生大臣承認の上限(地域により異なる)が月額18万4100円である。」
◆立岩 真也 20031110 「他人介護加算」,秋元 美世・藤村 正之・大島 巌・森本 佳樹・芝野 松次郎・山縣 文治 編『現代社会福祉辞典』,有斐閣,549p. 3900
「生活保護の生活扶助の加算の一つ特別介護料に家族介護加算と介護人による介護に対する加算があり、後者を指す。自立生活を始めた人達の要求運動により、1975年度から厚生大臣が承認した場合に特別基準での支給が始まり、介助を得て地域で暮らす上での有力な手段となった。その後基準所長承認による特別基準が設定された。2001年度、一般基準で月72000円、特別基準の基準所長承認では108300円、大臣承認では地域により12〜18万円台。参照項目:生活保護」 解説本文:(200字)
◆立岩 真也 19930925 「生活保護他人介護加算――自立生活運動の現在・6」,『季刊福祉労働』60号,pp.
◆立岩 真也 199802 「若いうちに生活保護を使おう」,『こちら”ちくま”』6
◆立岩 真也 19990915 「他人介護加算」,『福祉社会事典』,弘文堂
◆原田 啓一郎 19990916 「障害者の最低生活保障と介護保障――高生活保護訴訟(金沢地裁)」,『九大法学』78:363-408 *
◆生活保護大臣承認介護料10年度基準額が4月30日発表(厚生省保護課)
http://www.top.or.jp/~pp/p/daijinsyouninn10.html
◆生活保護の365日(毎日)使える介護制度が全国にあります
http://www.top.or.jp/~pp/gozonji.htm
◆生活保護介護制度と住宅改造・福祉機器の制度
http://www.top.or.jp/~jj/s4/s4-all.htm
「パンフレット『生活保護・他人介護加算特別基準受給の手引書』の改訂版(九二
年九月,千円)には、他人介護加算特別基準をどのように申請すればよいのか、そ
の手順や申請書の実例等も含めて詳しく解説されている。申請書の見本を自分用に
一部変更して使うといったことができる。新しく申請しようとする人にとっては必
須のパンフレットである。他に、東京都・大阪市・埼玉県・札幌市の介護人派遣事
業の要綱や金額の推移等も掲載されている。まずこれを請求して送ってもらい、わ
からないところがあったら、電話等で問い合せれば相談に乗ってくれる(これは組
合の活動の一つだ)。各自治体・各福祉事務所の対応は異なるだろうが、国の制度
に不当な格差が生ずることに正当性があるはずはない。他の地域でどうなっている
かの情報が重要だ。この点についても要求者組合が対応してくれるだろう。」
「ご存知ですか? 365日(毎日)使える介護制度が全国にあります。
★1日3〜5時間分になり、介護の必要度により3段階あります。
★要件は、1(介護の必要な)一人暮らしの障害者か、障害者のみの世帯、障害
者と子供や高齢者(等、働けない人)の世帯等、であること。2収入が一人の場合、
月18万円以下であること。(この額は北海道の最も田舎の額で、都市部ではもっ
と額が上がります。例えば東京では23万円。)(また、2人以上になれば額が上
がります。一人当たりいくら上がるかは、組合にお問い合せください)3資産がな
いこと。(家屋を所有していても、かなり狭い家なら、資産とは見なされず可能で
す。ただし上記18万円が16万円ほどになります)4親や兄弟からの援助も(経
済的理由(例えば学校に行っている子供がある・家や農機具のローンがあるなど)
で)不可能なこと。(ただし、この場合、少しの援助があっても、自己の収入と合
わせ、上記の収入基準を越えていなければ、受給はできます)。
★具体的にはお金で介護料が毎月振り込まれます。月6万9450円から月7万
9200円まで3段階があります。(地域によって、最高段階が16〜12万円台
のところもあります)。これは介護者を雇って払う費用があって、自分の生活費に
は使えません。→次ページから説明があります。」
95年度の生活保護の他人介護料の額
●大臣承認特別基準(全国で4ランクある)
東京・神奈川・千葉・埼玉……月17万9200円
大阪府……月16万5000円
兵庫県・京都府・奈良県……月15万2300円
その他の県……月12万9400円
●知事承認特別基準(全国一律額)
月10万4180円
●一般基準(全国一律)
月69450円
生活保護の介護料特別基準(大臣承認)を申請して取れなかった人はいません。
★今現在、毎日長時間介護者を入れて生活している人で、介護加算の特別基準(大
臣承認)をまだ申請していない方は、今すぐ『申請書セット』を要求者組合に申し
込んで、役所に申請を出してください。
★障害者自立生活・介護制度相談センターに電話をかけてアドバイスを聞きながら
申請すれば100%この制度は取れます。今すぐ、組合員でこの制度を申請して取
れなかった人はいません。
★なお、申請手順は、「申請書の1枚目」さえ先に出しておけば、あとから、最初
に申請を出した日の分までさかのぼって、介護料が受けられます。(例えば、5月
10日に最初の申請用紙を役所に持っていって、残りの書類や診断書を出すのが6
月になったとしても、8月10日に決定通知が来た場合、その時点でやく7万円
(6・7・8月分と5月分の日割り分)が介護料として振り込まれます=月12万
9400円の地域の割合)
→立岩「生活保護他人介護加算――自立生活運動の現在・6」
〇参考:『生の技法』からの引用
「……行政機関が介助費用を利用者に支給しそれを利用者が介助者に支払う、あ
るいは利用者が選んだ介助者に介助料を支給することによって介助を確保するとい
う方法がある。
現在、国の制度として直接利用者に支払われる介助料という性格をもつのは、生
活保護の「他人介護加算」だけである。障害基礎年金制度の導入と同時に設定され
た「特別障害者手当」は、先に述べたようにその性格があいまいで、介護料と解釈
すべきだとの説もある★19が、少なくとも現実にはその機能を果たしてない。他人
介護加算は福祉事務所が資格を認めた場合とれる。次に述べる特別基準との対比で
「一般基準」ともこの制度を利用する人達の間で呼ばれる。支給額の上限は月三万
九四○○円(八九年度)。週二日、一日四時間として算定された額だという。八六
年度の受給者数は六六一人★20。申請にあたっては介助の必要性が認められなくて
はならないが、特に申請者の側で有償の介助関係を証明する必要はない。だがその
使途に関しては監督を受けることになる。
七五年度から「他人介護加算特別基準」が支給されるようになった経緯について
は前章(↓注44)で述べた。施設を出て生活を始め、公的介助保障を要求した人達
が、次に紹介する東京都の制度とともに、獲得した、行政の側から見れば例外的な
措置ということになる。この基準による支給は、全国で三○人程にしかなされてい
ない。介護契約書等の書類を厚生省に提出して申請し、審査を受ける。八九年度最
高月十万五四○○円が支給されている★21。
[p253]生活保護の枠内の制度は、当然その受給者に限られるという限界があり、
また受給資格要件が厳しく手続きも難しい。実際に利用している人はきわめてわず
かの人に限られる。そしてやはり多くの場合、生活をそれで成り立たせていくには
十分でない。しかし全国的な制度としてあるのはともかくこれだけである。そして
年金が生活するに足りず生活保護を受ける大多数の人々にとって、これがまず最も
現実的な手だてとしてある。将来的にどういう制度があるべきかということはまた
別の課題として、あるいはそこにつなげるためも、この制度の支給者の枠の拡大、
充実が、古い人ではもう十五年、この運動に携わってきた人達によって続けられて
いる。
……
*19 堀勝洋[84]。
*20 各年度の支給額については『社会福祉の動向』。支給者数は八九年三月に厚生
省社会局保護課に問い合わせた際の回答による。
*21 この制度が、あくまで例外的なものとして、公的な文書・資料に全く現れてい
ないことについては先にも述べた。問い合わせに対しても、厚生省社会局保護課は、
支給者数等、答えられないということだった。いくつかの機関紙などを総合して月
額の推移をまとめると以下のようである。七五年度四万八千円。以後五年間六千円
ずつ増額され、八○年度に七万八千円。以後四年間四千円ずつの増額で八四年度九
万四千円。八五・八六・八七・八八年は九万七千円・一○万円・一○万二千円、十
万三二○○円。これが始まった時は支給者は二人で、以後僅かずつ増え、八一年に
七人、八○年代中期に二○人台に乗っている。以下、この節の内容に関して、聞き
取りの他、運動側のメディアとして『在障会だより』、『創る会ニュース』、『在
障会通信』、『要求者組合通信』『CILSニュース』、『楽苦我行』(↓本書末
尾文献表)を参照。これらには制度の推移・現状の紹介、交渉経過、支給を獲得す
るまでの体験記、介助者からの発言等、が随時掲載されている(例えば『楽苦我行』
18号からの連載「介護料運動」)。他に『全障連』、『全障連大会報告集』、新田
[82]、加辺[87]、等。」(立岩[1990B(「接続の技法・・介助する人をどこに
置くか」、安積他『生の技法』第8章):252-253])
〇金額の推移
重度障害者家族介護加算・重度障害者他人介護加算
特別基準を除き金額は『社会福祉の動向』に掲載されている……○
特別基準については一般的な書物・文書の中には全く記載されていない。
・一般基準:以下に示すのは上限
(注:一般基準という制度上の名称があるわけではない)
・特別基準:以下に示すのは上限(1級地)
毎月支給 窓口は各福祉事務所
毎年、生活状態、介護の状態をくわしく書いた申請書を厚生省に提出
重度障害者他人介護加算 重度障害者家族介護加算
特別基準 人数 一般基準 人数 月額 人数
75 48000 2 18000
76 54000 2
77 60000 2 28000
78 66000
79 72000 30000 6340 ○
80 78000 30900 6340 ○
81 82000 7 32100 6340 ○
82 86000 33600 6660 ○
83 90000 33600 670 6660 4646 ○
84 94000 20 35800 6660 ○
85 97000 22 36500 6630 ○
86 100000 37400 661 6660 ○
87 102000 38200 9250 ○
88 103200 * 38600 9250 ○
89 105400 39400
90 108400 40500 10380 『要求者組合通信』16:6
91**162600 63000 10380
(94500)
92
93
94
95
96
97
98
99
00
* 30〜50? かたつむりの会7〜8人(高橋修氏談 1989.2.24)
** 91年度から制度が変わった。以下に収録した八代英太事務所の資料を参照のこと。
但し特別基準の額は要求者組合、『福祉労働』52から
162600円は厚生大臣承認 94500円は知事承認(新設)
人数については厚生省社会局保護課(矢田氏)に電話で問い合わせた(1989.3)
661人は他人介護加算全体
特別基準については教えられないという答えだった。
〇申請方法等についての資料案内
具体的な申請の方法等については障害者自立生活・介護制度相談センター発行の
パンフレットで詳しく解説されているのでこれを参考にして頂きたい。
(但しこれが『手引書』である以上当然のことだが、支給額の推移等については
ごく簡単に触れられているにとどまる。)
『生活保護・他人介護加算特別基準受給の手引書』
(定価300円・送料175円、1990年→改訂版が出ているはずです。)
〇参考:「平成3年度予算案から・・・進展めざましい各制度の「介護手当」<政
府予算 案関連情報>」
(八代英太事務所が関係団体に1991年3月に送付したFAXによる情報)
平成3年度予算案は、関係各団体の皆様方の熱心な運動を背景に、関係省庁もよ
く頑張り、相当の成果を収めることができたと言えるでしょう。
ところで、比較的地味な形で進行したものですが、諸々の制度の中に位置づけら
れている「他人介護」に関する費用を中心にその支給額、基準額等が3年度予算で
は大きく増額されることになりました。
例えば、生活保護費における介護加算のうち「他人介護」と呼ばれる加算額は、
平成2年度の月額40,500円から、平成3年度では月額63,000円に引き上げられる他、
重度障害のためにさらに介護費用が必要な場合、知事の承認による特別基準を新設
し、最高で月額94,500円まで加算できるようにする予定です。
また、労災保険制度による介護料も、従来、対象者に一律月額40,500円を支給し
ていたのを改善し、家庭介護のみの場合を最低額として月額51,400円とし、他人に
介護を依頼した場合には必要額を加算、その月額の上限を94,500円とする予定でい
ます。
これらは、原爆者特別措置法の介護手当を引き上げるのに合わせて改善するもの
で、従来から「横並び」で介護費用の支給額等の改善が行われてきました。今回の
場合は特に、原爆被害者の介護の実態を踏まえ、いわば原爆者被害者対策「主導」
で大幅な改善に結びつきました。
被害者の方々への介護手当は、従来、月のうち20日間他人介護を受け、その1日
の介護従事時間が4時間程度、との前提で介護手当の積算が行われていました。と
ころが介護の実態を調査してみると、毎月25日から30日介護を頼む人が殆どであり、
また、重度の人の場合1日4時間では済まず、6〜8時間を要していることがわか
りました。
このため、他人に費用を支払って介護してもらう「他人介護手当」を、重度の人
の場合月額94、500円以内、中度の人で月額63、000円以内とすることに
なりました。「以内」というのはこの範囲で実際に係った分まで支給するという意
味です。
こうした実態は重い障害を持つ人々の生活にある程度共通するものと考えられ、
このため「横並び」の改善が図られるわけですが、他の各制度とも月額の最高額を
94,500円としつつも、無条件ではないのは、原爆の場合「以内に」相当する考え方
を取り入れていると言えるでしょう。
「他人介護」等の額の増額予定の一覧を別紙に揚げます。
この表に揚げたものの他にも「介護」に着目した加算や給付を行っている制度が
ありますが、「他人介護」を要件としていないものについては「横並び」の改善に
はなっていません。
平成3年3月/参議院議員・八代英太事務所
cf.
◇『社会学事典』(1968,有斐閣)なし
◇『社会福祉事典』(1974,誠信書房)なし 「介護・介助」はあり
◇『現代社会福祉事典 改訂新版』(1989,全国社会福祉協議会)なし
「介護・介助」はあり 「生活保護の加算」はあり
◇『知恵蔵1991』なし
◇三ツ木任一編『障害者福祉論』(1997,日本放送出版協会)なし
◇『現代用語の基礎知識1998』なし
◆『現代社会福祉事典 改訂新版』(1989,全国社会福祉協議会)p.307
「生活保護の加算」
「生活保護の加算 生活保護の一般生活費(経常最低生活費)のなかには基準生活
費以外に加算の制度がある。1957(昭和32)年当時には……5)介護加算……」
(白沢久一)
*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)の成果/のための資料の一部でもあります。