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第11回世界ろう者会議 決議




  第11回世界ろう者会議は1991年7月5日から11日まで東京(日本)で開催され、52ヵ国から7,000人以上の参加者が集まった。次の世界会議決議は、9科学委員会と3部会による発表、報告、討議をまとめたものである。

  どの国でも、コミュニケーションに手話を使うろう者がいる。手話は、ろう者が自分の可能性を伸ばし、自分の才能を最大限に発揮する基本的な手段である。手話を使うことで人権、自立、機会均等を現実のものにできる。したがって、WFDは各国のろう者団体、他の組織、機関、個人に対して、世界中の国連組織、政府その他の意志決定機関と協力して自国固有の手話を認識させるように呼びかける。手話の使用は、ろう者の教育できわめて重要である。同様に重要なのは、この目的を達成するために、ろう者の成人が活動に加わることである。WFDは、国連に対して、国連障害者10年の最後を飾る文書と、それ以降の世界障害者活動プログラムに、手話を認める趣旨の文言を含めることを要求する。  世界ろう者会議のテーマ「平等と自立」に沿って、次の措置を講ずることを主張する。

1.子供の言語の発達にとって、生後3年間は最も大切な時期である。したがって、就学前の子供には手話を使う環境で成長する機会を与え、健聴の親には手話の使用についてカウンセリング・サービスと指導を提供しなければならない。あらゆる国々で、子供の人権に関する国連児童憲章がろう児にも適用されることを認識すべきである。

2.ろう児には、手話とろう者の文化が大きな役割を果たすろう学校が必要である。また、役割モデルとして、有資格のろうの教師やスタッフも必要である。こうすればろう教育の質を普通学校と同じレベルにまで高めることが可能になる。各教科で自分の学習能力を充分にのばす機会を与えれば、ろう児が大学レベルで学ぶこともできるし、職業選択の機会も広がることになる。ろう児が二言語、または多言語を使えるようにするために、カリキュラムに手話を含めるべきである。また、他の教科でも手話を使うべきである。もう1つの目標は、自国の音声言語と外国語を使いこなすことである。

3.精神衛生面で問題をもつろう者、年配のろう者、盲ろう者、重複障害をもつろう者には、手話による特別サービスを提供して、ろう社会に参加するよう働きかけるべきである。

4.教師、医師、心理学者、ソーシャル・ワーカー、エンジニア、技術者、コミュニケーション(メディア)の専門家、精神ケアやろうの芸術文化の専門家、大学レベルの研究者など、ろう者の専門家の存在は、ろう者が一般社会からのサービスを利用するために必要となろう。そのためには、ろう者がすべての公共サービスを利用し、他の市民と同様に政治、経済、社会生活に参加できるように、手話通訳者養成プログラムを設けなければならない。

5.ろう者には、すべての市民に与えられるあらゆる情報を得る権利があり、健聴者社会に情報を提供する義務がある。現代の技術は、手話、字幕、その他の視覚的手段に基づく広範囲の対話に活用されている。また、それによって、ろう者のための通信システムや緊急警報システムを標準化できる。世界人権宣言では、これらの技術を応用するように呼びかけている。すなわち、各国は情報を提供する義務を負い、何人も社会から疎外されてはならない。

6.この世界では、福祉が平等に行われていない。世界のろう者のうち約80%は、いまだに教育を受けてない。職をもたないろう者もきわめて多数にのぼり、その人権は侵害され、尊厳も認められていない。特に開発途上国には、人的・経済的資源を割り当てなければならない。手話を開発し、ろう教育の量とレベルを高め、各国のろう者団体を支援し、この活動にろうの専門家を従事させるために、重点的に援助を提供する必要がある。

7.手話が公式に認められている国々のろう者は、手話が拒否されている国々のろう者のために、その文化的アイデンティティ、すなわち、人材発掘を手助けして、ろう者と他の人々に対する責任を担えるように、指導者養成プログラムを作らなければならない。世界中のろう者に、自分の言語と文化を研究、振興し、世界の文化遺産の保護に参加する機会を与えるべきである。周囲と協調しつつ独自の生活規範をもてるように、あらゆる機会と選択の自由を与えることで、ろう者の平等と自立が確保されることになる。



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