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遺伝子治療




 この資料は、だいぶ以前に作った資料も使って作成し、1998年2月21日の「遺伝子医療を考える市民の会議・専門家パネル2」(於:大阪科学技術センター)で配布した資料がもとになっています。
 ここのところ情報収集を怠っております。すみません。(立岩)


[目次]
 ●新?着
 ●立岩の書いたもの
 ●1980年代
 ●1990年代:ガイドライン等
 ●1990年代:文献・言説
 ●翻訳書
 ●翻訳あるいは紹介のある論文
 ●日本語の文献(発行年順)

 

●新?着

◆2002/04/15 <ベクター生産>東京慈恵医大が今秋にも開始 遺伝子治療に(↓)
 毎日新聞ニュース速報
◆2002/04/16 造血幹細胞の遺伝子治療 審査始まる(↓)
 NHKニュース速報
◆2002/11/13 <遺伝子治療>全国初、パーキンソン病で研究検討 自治医大
 毎日新聞ニュース速報

◆2001/01/17 米食品医薬品局(FDA)遺伝子治療の臨床試験、全公開(↓)
◆2001/06/07 <遺伝子治療>血友病に効果 米医師グループが医学誌に発表(↓)
◆2001/06/29 国内初の再発白血病遺伝子治療を承認=筑波大病院(↓)
◆2001/07/12 「韓国初の遺伝子治療薬が臨床許可=来年にも実用化へ−宝酒造」
 時事通信ニュース速報
◆2001/07/31 遺伝子治療審査を簡略化へ 国の指針で改定素案(↓)
◆2001/08/12 「遺伝子治療の臨床実験に成功=アルツハイマー病の治療法確立も−英紙」
 時事通信ニュース速報
◆2001/08/28 「国産「遺伝子運び屋」使い初の臨床試験へ 九州大」
 朝日新聞ニュース速報


◆20001010 【日本癌学会総会速報】
 遺伝子治療、脳腫瘍に一時的な効果
 http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/med/leaf?CID=onair/medwave/mdps/113787
◆『朝日新聞』20000926朝刊より
 名古屋大学で、遺伝子治療1人目の患者が死亡
 国内初の純国産技術による遺伝子治療を始めた名古屋大学医学部脳神経外科グループ(吉田純教授)が25日、1人目の患者として治療した30代の女性が24日午後に亡くなったと明らかにした。
 女性は関西在住。4月3日から5月1日にかけて、手術で取り除けなかった脳腫ように対し、計6回、遺伝子治療製剤を注入した。製剤は、抗がん作用のあるインターフェロンをつくる遺伝子を人工膜で包んだもの。
◆2000/04/06『毎日新聞』
<生老病死>失敗も多い遺伝子治療 浜松医科大教授 高田明
◆2000/04?
 東京新聞ニュース速報2000年1月25日午前9時56分提供
 愛知県コロニー発達障害研究所(春日井)が「脳銀行」を4月設立。先天的障害
 者の脳を冷凍保存。遺伝子で治療研究。
 *****
 愛知県コロニー発達研究所URL
 http://www.pref.aichi.jp/hsc/inst/
 (↑直接に関係する情報はないようでした。[立岩])
◆2000/04  松田一郎「ゲノム情報の医療への応用――遺伝子診断・遺伝子治療」
 『生物の科学 遺伝』2000年4月号,裳華房
 http://www02.so-net.ne.jp/~shokabo/iden/iden1.html
◆2000/04/03
 脳腫瘍患者に対する国内初の遺伝子治療手術 名古屋大医学部付属病院
 (『毎日新聞』,時事通信ニュース速報,共同通信ニュース速報 2000/04/03・他)
◆2000/03/30
 名古屋大医学部脳神経外科の吉田純教授のグループ、悪性の脳腫瘍(しゅよう)で入院している関西地方の30代の主婦に、初めて純国産の技術を使った遺伝子治療を4月3日に実施すると発表
 (共同通信ニュース速報,時事通信ニュース速報,NHKニュース速報)
◆2000/03/10
 「遺伝子治療者よ、まずなんじを癒せ」,『サイエンス』
 「……多くの遺伝子治療は失敗している。もし遺伝子治療者自身、またはその家族が同じ病気になったら、遺伝子治療を受けるだろうか」
◆2000/02/09
 遺伝情報による差別禁止、連邦政府対象に米大統領令
 大統領はあわせて、ボストンの病院などで遺伝子治療で死者が出たことに強い懸念を表明、厚生省に対し、遺伝子治療の指針などの見直しを急ぐよう指示
 (朝日新聞ニュース速報02-09。共同通信ニュース速報、NHKニュース速報では遺伝子治療については言及なし)
◆2000/01/22『ワシントンポスト』報道
 米ペンシルベニア大で遺伝子治療を受けた十八歳の男性患者が死亡した問題で、米食品医薬品局(FDA)は、法律に違反した人為ミスの疑いが強いとして、同大による遺伝子治療実験を全面禁止
 (読売新聞ニュース速報01-22)

 ……

◆1997/02/03
株式会社ミドリ十字の遺伝子治療用医薬品確認申請
◆1996/12/05
遺伝子治療臨床研究中央評価会議の開催について
◆1994/06/09号外 文部省告示第79号
 「大学等における遺伝治療臨床研究に関するガイドライン」
  加藤・高久編[1996:285-295]*
*加藤 一郎・高久 史麿 19960415
 『遺伝子をめぐる諸問題――倫理的・法的・社会的側面から』
 日本評論社,300p. 6000円+税
◆1994/02/08 厚生省告示第23号
 「遺伝子治療臨床研究に関する指針」
 加藤・高久編[1996:277-284]*

 

●ホームページ

◆厚生科学審議会先端医療技術評価部会:スライド参考資料
 (遺伝子治療の概念、歴史、現況、問題点等がスライドにまとめられています。)
 http://www.mhw.go.jp/shingi/s9811/s1116-2_6/index.html
◆臨床遺伝医学情報網(いでんネット)
 http://130.54.68.80/idennet/index.html
◆(神経難病と)遺伝子治療
 http://www.imasy.or.jp/~hsdl/mnd/gene/index.html
◆最新遺伝子治療講座(小沢敬也教授)
 http://biotech.biztech.co.jp/VUNIV/ozawa/ozawa1.html

 

●立岩の書いたもの

◆99/03/01「遺伝子の技術と社会――限界が示す問いと可能性が開く問い」
 『科学』1999-03(‘科学’800号記念特集号(いま,科学の何が問われているのか)
 ※『科学』のホームページ http://www.iwanami.co.jp/kagaku/
 ※この号の『科学』は品切だそうなので、全文を掲載することにしました(2000.06)。

◆98/02/21「遺伝子治療の現状を離れて少し考えてみる」
 遺伝子医療を考える市民の会議・専門家パネル2 於:大阪科学技術センター
 cf.
 ◆「遺伝子治療を考える市民の会議・報告」
  http://www.kanon.to/dficon3.html
  (報告書そのものではないです)
 ◆コンセンサス会議   http://www.kanon.to/dficon.html

 

●1980年代

実用化されていない(『朝日新聞』1985.8.26)

遺伝子を組み替える技術が確立されていないから 遺形形質と関係した3000〜4000
の疾病のうち1ダース以下 (フリードマン[1987:207-208])

「まず今日のところは染色体や遺伝子を選択的に除去するか,または不活性化する
ことはできない。したがって余分の染色体や遺伝子の存在によっておこる遺伝疾患,
および優生遺伝をする疾患にただちに遺伝子治療を今試みるのは無理である。すな
わち劣性遺伝子をとる疾患にかぎられている。しかも生体内で形質発現に特異な調
節が働いている遺伝子は,その発現を制御することができないので危険であり,ど
の細胞でもつねに発現している普遍的遺伝子(House keeping gene)の欠損による
疾患だけである。」(高木[1987:34])

体の一部の細胞をとり出し,それに健常な遺伝子を導入してふたたび体内にもどす
骨髄移植 骨髄を入れ換える 他人の骨髄を使う場合もある…この場合は遺伝子治
療とはいえない 提供者が得られない時,患者自身の骨髄をとってそれを試験管内
で操作してから戻す(三輪[1987]) 等々(高久編[1987]他)

1980 カリフォルニア大学のM・クライン博士らが地中海貧血の患者2人に対し 
赤血球をつくる骨髄細胞を抜き出し,そこに正常な働きをする遺伝子を取り込ませ
体内に戻す 治療を受けた細胞の方がそうでない細胞より体内で繁殖しやすいよう
に,ウイルスからとった別の遺伝子も同時に組み込まれた
(朝日新聞科学部[1982:95-])
クライン博士は一時停職・研究支給停止処分を受ける(斎藤[1985:85])

骨髄細胞を対象にした治療
(『朝日新聞』19840315),他の可能性について斎藤[1985:85-])

遺伝子治療は原理的には不可能ではない 体外に取り出せない場合はウイルスに正
常細胞をつないで感染させる方法…ウイルスにはある特定の臓器だけで増殖する性
質があるのでそれを利用
ウイルスが無害であること 入れた遺伝子が働くか 働き過ぎる場合 元からある
欠陥遺伝子と共存した場合どんな現象が起こるか 問題が山積
(朝日新聞科学部[1982:95-98])

198711 厚生省が,遺伝病の治療のための遺伝子治療のガイドライン作成に着手す
ると発表。厚生省科学会議に特別部会を設けて具体的な検討に入る
(『毎日』11111→グループ・女の人権と性[1989:24](年表))
遺伝子地図を作る試み(朝日新聞科学部[1982:91-94]朝日89・・・・)

米本 昌平 19880630 「遺伝子診断・遺伝子治療と倫理の問題」

 「85年秋にNIHはガイドラインの一部補足を行った。……これによって,遺伝
子治療のための基準はいちおう定まったのであるが,87年末現在なお実行されてい
ない。これは,当初理論的に考えられていたよりは,実際に治療効果をあげるまで
には多くの技術的障壁をのり越えなければならないためである。(p.291)
 ……ADA酵素欠損は世界中で 100人程度しか知られていない稀な病気である。
つまり,遺伝子治療は技術開発が困難である割には,対象は特殊な病気に限られる
傾向が強く,人間のDNA操作という思想的な衝撃力に比べ,医学的な影響は当面
は小さいといえよう。
 ただし一般的には,欧米的精神世界においては,胎児診断はもちろん,遺伝子治
療の研究も促進されるべきものと受けられている。これに対して日本では,このよ
うな政策や技術開発は危険な優生学に接近するものであり,障害者差別を助長する
とする反対意見がきわめて強い。」(米本昌平[1988:219-292]

 *このあと米本はこの差異について,「胎児は前世と後世との間に浮かんでいる
不安定な存在であり,その状態をのぞきこんで,それを根拠に生む生まないを決す
るのはしてはならないことと,とわれわれは感じているのではないか」といった
「文化的な因子」を指摘し文章を続け,終わるのだが,この指摘は(当たっている
としても)遺伝治療に直接関わるものではない。(立岩)

 

●1990年代:ガイドライン等

◆19900727 第24回国際医学組織円卓会議
  「犬山宣言」
 (DNA問題研究会編[1994:143-146]に掲載…A)
 (加藤・高久編[1996:274-276]に掲載:前文を除いた本文の仮訳…B)

 「3 遺伝知識の増大は,人間の本質の諸側面を解明する一方で,人間のDNA
のレベルで考えてしまうのではないかという一部の人々による不安があることも事
実であるが,これらの誤解は一般の人々への教育,特に公開の討議や会議により解
決される必要がある。」…A

 *この文章意味不明(立岩)&Bの訳と少し違う…訳の問題?

 「5 ……臨床治療の適用は,重大な遺伝障害の患者に限られるべきであり,単
なる身体の資質,行動の強化改善のために行われてはならない。
 6 治療を目的としてヒトの生殖細胞を補修する試みは体細胞の補修より極めて
困難であり,現段階では行われていない。しかし乍らある種の遺伝病の治療にとっ
てこの方法しかないことも予想されることから技術的,倫理的側面からこの方法に
よる臨床治療の可能性について慎重な検討が継続的になされねばならない。ヒトの
生殖細胞の治療にあたってはその影響が患者個人の範囲を超えて,次の世代に及ぶ
ことから,十分な安全性が確立されてからの適用のみがなされなければならない。
 7 ……国家や特定の機関,個人による優生計画や遺伝子科学技術の誤用があっ
てはならないという点において見解の一致をみた。」…A

◆19901115 DNA問題研究会
 「徳島大学医学部寄付講座についての公開質問状」
 (DNA問題研究会編[1994:147-150]に掲載)

 「……遺伝子治療は人間改造をもたらす技術であり,治療がそのまま人体実験の
性格をもっており,この技術の応用は優生思想に道を開くものです。そのため,よ
ほどの慎重な対応が求められていると思います。」

◆199304 厚生科学会議
 「遺伝子治療臨床研究に関するガイドライン」
 (DNA問題研究会編[1994:94-131]に掲載)

◆文部省学術研究国際局研究助成課
 「大学等における遺伝子治療臨床研究に関するガイドラインについて」
 (DNA問題研究会編[1994:132-133]に紹介)

◆19940110 学術審議会特定研究領域推進分科会バイオサイエンス部会
 「大学等における遺伝子治療臨床研究について(報告)」
 (DNA問題研究会編[1994:134-138]に掲載)

◆19940208 厚生省告示第23号
 「遺伝子治療臨床研究に関する指針」
 (加藤・高久編[1996:277-284]に掲載)

◆19940609号外 文部省告示第79号
 「大学等における遺伝治療臨床研究に関するガイドライン」
 (加藤・高久編[1996:285-295]に掲載)

 

●1990年代:文献・言説

森岡 正博 19900331 「遺伝子治療の倫理問題」
 加藤・飯田編[1990:063-067]

 「……遺伝子治療の方に顕著に見られる倫理問題としては,その技術が,生命の
根本原理であるDNAへの介入になる点がある。DNAは,生命の遺伝と発生と成
長を支配する原理であり,それへの介入は「神を演じる」ことになるという難しい
問題が残る。そのDNAが人間のものであれば,なおさらであろう。……
 ……肯定面から言えば,それらの治療によって患者が助かる可能性があり,科学
と人類へ貢献する。否定面では,まずクサビ論法がある。すなわち……体細胞の遺
伝子治療はやがて生殖系列細胞の遺伝子治療に結びつき,果てには売買の対象にな
ったり,優生学的に利用されたりする。このクサビ論法を無視できないのは,それ
が,人間の底にある「できることはみんな実際にやってしまう」という本性を見据
えているからである。また,生命に科学技術が介入する限度の問題,人間の欲望へ
の疑問,遺体への尊敬・生命への畏敬などの感覚の風化とそれに伴う社会の荒廃,
などの倫理問題も[臓器移植と]共有している。」
(森岡正博[1990:66],[]内は立岩)

◆DNA問題研究会 編 19940715 『遺伝子治療――何が行なわれ,何が問題か』
 社会評論社,157p. 1700

 1 人間の遺伝子操作の時代へ
 2 遺伝子診断の波紋
 3 遺伝子診断技術の発達
    レトロウイルスの利用で道が開けた
    レトロウイルスは安全性に疑問
    ヒト疾患モデル動物
 4 遺伝子治療技術
 5 遺伝子発見合戦
 6 広がる応用
 7 バイオ医薬品
 8 遺伝治療が始まる
    遺伝子治療のガイドラインつくられる
    拡大解釈をもたらす遺伝子標識
    人体実験を積極推進へ
    歯止めとならない指針
    文部省もガイドラインを発表
 資料編

◆曽野 綾子 199502 「近頃好きな言葉」
 『新潮45』→曽野[1996]

 「もし人間が,自分の体の不満や人と劣った点をすべてなおすことができ,飢え
や貧困に悩まされることがない,ということになったら,その時の不幸は,どのよ
うな学問や医師の力をもってしても治癒できないほど深いものになるでしょう。そ
の場合,人間は素早く,そのような自己改変を要求する『権利』が自分たちにはあ
る,と思うようになるでしょう。しかし現実には,それらをすべて叶えることは不
可能ということが眼に見えているからです。
 その時,社会は不満の塊となり,自殺や発狂する人がどれだけ増えるだろうかと
思われます。その不幸感はどこから来るかと言うと,その時人間は,それまで創造
主と呼ばれていた神のみの仕事の結果と思われていた『先天性』という概念を認め
なくなるからです。つまり,人間の肉体は限りなくデザイン変更の利く物質になり
ますから,もはやそれなりに完成したかけがえのない個人という発想は持ち得なく
なります。不備な肉体から,私たちはその存在の意義を認めるという崇高な作業を
行い,不備故に二つとない崇高な個人の存在を自然に承認できるのですが,それは
科学の敗北,医師たちの怠慢の結果だとしてただ攻撃の目標になるだけでになりま
しょう。今までは一人の存在をそのまま,まるごとトータリイに大切だとしたもの
を,これからは改変されたもののヴァリューで計るということになると,そこで人
間の分際そのものが変わってきます。不備は人間の権利という取り除き,あらゆる
人間を『完成品』にした時が,人間の勝利という発想になると,それはとりもなお
さず失敗するだろうと,と私は思うのです。(もっとも,自慢ではありませんが,
今までの立てた予測というものはほとんど当たっていません。……」
(曽野綾子[1995→1996:269])

 「私をも含めて,私の周囲の人たちは,遺伝子組替えに関して『悪い病気を直す
ことだけに限定して使えばいいじゃない』と簡単に考えます。私も毎年,障害者の
方たちと,イスラエルなどの土地へ旅行をしていますが,その中には,ついに覚え
られなかったような難しい名前の幼児の内分泌異常症状や,いつか失明することが
わかっていて真綿でじりじりと首を締められるほど辛いと言われる網膜色素変性症
などの患者さんが何人もおられました。ですから,もし遺伝子組替えによって治る
ものなら,そのような病気を救いたいと思う気持ちはごく自然に湧いて来るのです
が,それ以上に遺伝子をいじることは,人間性の大量破壊に至る道であろうと思わ
れます。
 悪い病気だけ直す,というわけにはいかないものです。安全な治療法を開(p.27
0) 発するまでには,その背後にある膨大な事実の分野に入り,その操作を可能に
しなければなりません。そのためには危険な実験の分野が必ず行われるようになり
ます。……
 遺伝子組換えを,『悪い病気を直すだけに使う』という考えは,これまたユート
ピアと同じように,どこにも有り得ない理想論であろうと思われます。
 と申しましても,私は怠惰故の一種の運命論者です。流行歌にもそういうのがあ
りましたが,走り出したら止まらないというのがこの世の成り行きというものでし
ょう。遺伝子組換えはもう走り出しているのでしょうから。ですから,そのような
経過を辿って,人類が思いもかけなかった形で破滅に至るのもまたよろしいかとい
う気もいたします。どうせその頃,私は生きていないのだから,という利己主義で
でも,こういう結論は引き出せるのです。」(曽野綾子[1995→1996:270-271])

◆遺伝子問題研究会 19950331
 「遺伝子問題についての報告」
 加藤・高久編[1996:1-29]

 I 本報告の趣旨
 II ヒト・ゲノム解析計画
 III 遺伝子検査
 IV 遺伝子治療
 V 遺伝子の解明と社会
 <付>新しい生命観の確立へ

 IV 遺伝子治療
  1 遺伝子治療の意味
  2 日本における遺伝子治療の審査体制とその問題点
  3 遺伝子治療に残された課題

 「指針(ガイドライン),評価機関ともにほとんど同内容のものが厚生省と文部
省の2本立てで設けられているが,これは,現在研究段階のものであるこ(p.24)
とからやむをえないとは思われるが,将来的には一本化することが望ましい。……
 まり,より根本的な問題としては,遺伝子治療に対する規制が,現状のように,
罰則のつかない,医学界の自主規制に行政指導を加えたものでよいかも検討する必
要がある。規制に強制力をもたせるには,罰則を含む法律を制定することが有効で
あり,海外の立法例としてドイツの胚保護法やフランスの人体尊重法が参考となる。
しかし,先端医療技術の利用は医師をはじめとする技術者の高度の倫理性・自律性
に委ねるべきであるとする思想も,科学・学問の自由を尊重する立場からの主張と
して説得力があり,安易に立法による厳格な規制をすることには慎重でなければな
らない。」(遺伝子問題研究会[1995→1996:24-25],IV−2:これでおわり)

 「遺伝子治療は,技術的にみて,まだ完成された治療法とはいい難く,実験的要
素が含まれることは否めない。しかし,その可能性は計りしれないものがあり,遺
伝子治療に期待を寄せる医学者,そして何よりも難治性疾患に冒された多数の患者
がいることを忘れてはならない。この新しい遺伝子治療技術を手にした我々は,今
後その可能性と危険性を,技術・倫理の両面において検討していかなければならな
い。
 …(p.25)…ベクターの安全性の確保……特許権による保護の是非……患者のプ
ライバシー……」(遺伝子問題研究会[1995→1996:25-26],IV−3:初めから)

村岡 潔 19960331
 「遺伝子医療における「DNA中心主義」の現実的諸問題
 ――我々の批判的スタイルはどうあるべきか」
 加藤尚武編[1996:69-78]

 I 遺伝子医療と「DNA中心主義」
 II 生物医学の世界観と遺伝子医療
 III 生物学のまなざしとDNA中心主義

◆森永 審一郎 19960331
 「パンドーラの箱――遺伝子操作をめぐるヨナスの見解」
 加藤尚武編[1996:79-88]

 I 学問の自由と科学技術――研究の自由というアリバイはない
 II 従来の技術<機械的技術>と生命技術<有機的技術>――事実的仕立て直し
 III 未来世代の危機・社会の危機――畏敬・責任・謙遜・用心・恐れおののき

 「体細胞に限るという限定をつけるならば,倫理的問題はないのであろうか? 
それは,未来世代に影響を及ばさないし,それは修繕であり,新たな創造ではない
のではないか?確かに,そういえるかもしれない。しかし,……遺伝子医療は,D
NAという生命をコントロールする特異な物質,その意味で能動的素材に対して干
渉することであり,生命の流れに作為を運び込むことである。しかもわれわれに知
られていることはわずかであり,われわれが為すことは推測と賭けである。それに
ついての成果は,その成果とともにしか得られないのである。遺伝子治療は実験で
あるということ,これが倫理的問題を提示するのである。さらに,ヨナスは,遺伝
子治療を開始すれば,そこから,DNA建築術への道が開かれることに対して道が
開かれることに対して,次のようにいう。「しかし医学は維持し修復するのであっ
て,変化し新しくするのではない。医学の目的は与えられた自然の規範である。一
体この自然から自己を解放し捏造する人間の基本における建築術の目的とはなんで
あり得るのか。確かに人間を創造することではない。人間はすでにそこに存在して
いる。おそらくよりよい人間を創造することか? しかしよりよいことに対する基
準は何であるのか。例えばよりよく適合することか? しかし何によりよく適合す
ることか? ……問いはすべてどんなモデルにしたがって?という問いに達する。」
(170)
 それでは,現に苦悩する者はどうすればよいのか? ヨナスは,人間の苦悩の下
で難しいけれども,慈善という誘惑に一度抵抗しなければならないという。それは
進歩の遅緩を帰結するかも知れない。しかし,「進歩は無条件に義務づけられた目
標ではなく,随意選択的な目標である。」(145)」(森永 審一郎[1996:86],
IIIより)

 ※紹介されているのは,主に
 Hans Jonas 1990 Technik, Medizin und Ethik, Insel

◆平田 俊博 19960331
 「論評 森岡正博「生殖系列細胞の遺伝子治療をめぐる倫理問題」」

 *森岡論文を現在入手していないため,紹介する(立岩)。

 「森岡論文の学術的価値は,第一義的にはCにあると言えよう。」
 (平田俊博[1996:183])

 A.森岡論文の目的・方法および結論

 「1)目的・方法:生殖系列細胞(精子・卵・初期受精卵)の遺伝子治療と,能力
増進的遺伝子治療の功罪を吟味するための基礎的資料として,いくつかの先行論文
を検討し,今後考えてゆくべき論点を描出する。
 2)結論
 [a.現状の評価]生殖系列細胞の遺伝子治療では業界内自粛が続いているが,将
来の保証はない。
 [b.将来の課題]能力増進的遺伝子治療の妥当性を探るためには,「正常とは何
か」「異常とは何か」という医療倫理学・科学論の古典的な難問に正面から再び立
ち向かわなければならない。

 B.森岡論文の前文:生殖系列細胞の遺伝子治療の前史および現状と問題点

 C.森岡論文の本文:ウォルターズ論文および米国CRG報告書の内容紹介。

「1)ウォルターズ論文:「人間の遺伝子治療の倫理問題」。
 [1.遺伝子治療を4つのタイプに分類]タイプ1には賛成。タイプには含みをも
たせながらも否定的。タイプ3,4については言及しない。
          体細胞   生殖系列細胞
  治療・予防   タイプ1   タイプ2
  能力増強    タイプ3   タイプ4

 [2.胎児医療の一環としての生殖系列細胞の遺伝子治療]米国プロライフ(中絶
反対運動)の[殺すよりは治療せよ]
 [3.タイプ2に積極的な観測]通常の治療・予防法となれば医学的に新時代。す
べての市民が受益の資格をもつヘルスケアーの重要部門。
  →黒崎剛論文 p.105. 国民的ヘルスケアにおける資源の公平な配分。弱者に優
  先権。
 2)CRG報告書:「米国「責任ある遺伝学のための会議」(1992秋)。この報告
書の結論「人間の生殖系列細胞の遺伝子治療に強く反対」が事実上,世界のガイド
ライン。
 [反対の理由1]個人と人類の将来に予見不可能な重大な危険性。a)アンダーソ
ンを継承。b)遺伝子と表現型の関係(3パターン)についてのアガール論文も予見
不可能性を強調。
 [反対の理由2]体細胞遺伝子治療を軌道に乗せるための戦略。「滑り坂理論」
が経験的に当てはまる。(p.184)
 →黒崎剛論文p.107 ホルタッグの滑り坂論に対する反論は水掛け論を誘う。
  「幸福と公正」は滑り坂論の歯止めとならない。
 →加藤尚武論文p.10。
 [反対の理由3]良い遺伝子と悪い遺伝子の区別不可能。基準は社会的バイアス
を反映。特権グループの影響。
 [反対の理由4]体細胞遺伝子治療より効率がよいが優生学の思想につながるし,
実際には優生学的なメリットはない。受精卵診断で代行可能。」
(平田俊博[1996:184-185)

◆加藤 一郎・高久 史麿 編 19960415
 『遺伝子をめぐる諸問題――倫理的・法的・社会的側面から』
 日本評論社,300p. 6180 ※

 「近年の,分子生物学の分野における発展には目ざましいものがあり,次々とヒ
トの遺伝子に関する新しい知見が得られている。このこと自体は大変すばらしいこ
とである。しかし,同時に,急速に進歩しているヒトの遺伝子をめぐる科学技術に
伴って起こる,倫理的・法的・社会的諸問題(Ethical, Legal and Social Issues
= ELSI)についても,研究しなければならない時期にきている。
 そこで,このような考えのもとに,ヒトの遺伝子技術に関するELSIについて
研究し,社会や関係方面に対して提言を行うことを目的として,1993(平成5)年
11月に遺伝子問題研究会を発足させ,16回に亘り研究会を重ね,1995年に報告書を
公表した。本研究会は私がそのような目的をもって発足させた,民間の研究会であ
る。
 ……
 本書は,1995年に公表された報告書と,それぞれの参加者の報告をまとめたもの
であり,いわば講演記録的な意味合いのものである。」
(加藤一郎,「まえがき」,加藤・高久編[1996:ii]

 *この本のコスト・パフォーマンスは大変低い。(立岩)

唄 孝一 19960415 「遺伝子治療の臨床研究等について思う」
 加藤・高久編[1996:125-135]

 第1節 「臨床研究」であること
 第2節 医療は医療だが
 第3節 プライバシーの問題
 第4節 体細胞への限定という安全装置
 第5節 個人性・家族性〔?〕・遺伝性
 第6節 遺伝子のソース
 第7節 遺伝子標識のこと
 第8節 結びに代えて

 「これまで述べた文脈から考えても,当今の対象を体細胞に限定していることは
一つの重要な条件づけである。厚生省の指針が「人の生殖細胞の遺伝的改変を目的
とした」ものや,「人の生殖細胞の遺伝的改変をもらたすおそれのあるもの」を
「行ってはならないものとする」(第六)のはもっともである。
 ただ私は,この禁止が貫徹されることを念ずるとともに,次のような恐れが皆無
か否かについて杞憂を述べたい。
 第一に,体細胞に限ったからといって,それが次世代に関係がないと断言できる
のだろうか(当然自明という答が圧倒的であろうが)。第二に,体細胞の改変の技
術的確立とその正当性を肯定することは,おのずから生殖細胞への門を開く恐れが
ないのか。テクノロジーにひそむ自己発展の傾向は,それが生殖細胞に移ることを
そんなに遠くなくそんなに難しくなく方向づけるのではないか。第三に,科学者の
興味や関心にもまして,患者やその家族の側が,生殖細胞を改変しても達成したい
として,生殖細胞を対象とする遺伝子治療を強く希求するという日がくるのではな
いか。
 それやこれを思うと,体細胞と生殖細胞を峻別し,その峻別を通して,一を白と
し他を黒とするという論理は,必要にして十分なのだろうか。
 以上の諸点を私はまったくの素人の杞憂と思いつつ,あまりにも強調される峻別
論の安全措置としての有効さに一言ダメを押しておきたいのである。ここで誰の病
気が誰にとってのどういう問題なのか,という問題が,どうしても再登場してく
る。」(唄[1996:130],第4節の全文)

◆中村 雄二郎 19960415 「遺伝子研究・遺伝子治療の問題点
 ――フランスの例を参考として」
 加藤・高久編[1996:137-152] ※

 第1節 いくつかの素朴な疑問
 第2節 フランス型の生命倫理への取り組み
 第3節 フランス型の生命倫理学
 第4節 フランスでの遺伝子研究
 第5節 フランスから見た世界の遺伝子研究・遺伝子治療
 第6節 日本の場合の問題点

 「まず第一には……「これまでの日本の生命倫理学の議(p.138) 論によって,
今後いっそう複雑な問題が出てくることが予想される遺伝子研究・遺伝子治療の問
題に,十分に対応することができるだろうか。」……脳死や臓器移植というのは,
たしかに大きな問題だが,遺伝子研究・遺伝子治療となると,もっと根本的な問題
を含んでいる。従来の人間観そのものまでまったく変わるかもしれないほどの問題
なので,今までの生命倫理学の枠組みで端手いいのだろうかというのが,基本的な
問題としてある。これは,質問というよりも私自身がどうしたらいいか,困ってい
るので,基本的な問題として提出しておく。
 第二には,「とくに遺伝子研究・遺伝子治療の在り方で,日本がアメリカばかり
をモデルにしていいのだろうか」ということがある。……
 第三に……「遺伝子研究・遺伝子治療の在り方につ(p.138) いて,国民的な意
思決定が求められるときに,日本にとってどこの国のやり方がもっとも参考になる
のだろうか」……
 第四には,「遺伝子研究・遺伝子治療との関連で,<人間>の肉体あるいはDN
Aが,他の生物と比べてどのような特別な意味をもちうるか」……
 最後に第五には,……「いくつかの省や政府機関が別々に取り組んでいた日本の
やり方は,世界的に見てどのような問題があるのか」……」
(中村雄二郎[1996:137-138],第1節)

 「ヒト・ゲノムはゲノムのなかで特別なものなのだろうか,という問題がある。
フランスでは人間主義の立場がつよく強調されているが,それに対して今の日本の
一般的な考え方では,<人間主義>は人間のエゴイズムであり,イデオロギーだと
いう意見が強い。しかし,これについてはもう一度考えてみなければならないので
はないか。これに関連して,「日本式の研究体制はどれだけ有効性を持ち得るか」
ということがある。……
 次に「社会的に論じられるとき,脳死問題のときのような紛糾に陥らずに済むだ
ろうか」という問題があって,これはたいへん頭が痛い。…(p.149)…
 第三には,遺伝子研究・遺伝子治療をめぐって,「日本人の価値観が問われずに
すむか」という問題がある。……
 それから第四に「無原則的な技術主義でこの問題が乗りきれるか」という問題が
ある。……
 最後に第五に,「<知らない権利>は成り立ちうるか」ということがある。…(p.
150)…
 ……きょう一番私が言いたかったのは,次のことである。すなわち,基本的人権
から社会権に来て,さらに身体権に至るという,フランス流の明快な論理は,比較
的フランスのことをよく知っている私でも驚かされるほどだ。しかし考えてみると,
日本の場合にはすぐ人間だけが世界にいるのではなくて山川草木も動物もみな権利
がある,などと言われることが多い。ではそう言って自己の言動に責任が持てるか
というと,きわめて怪しい。……」
(中村雄二郎[1996:149-151],第6節)

坂本 百大 19960415 「遺伝医学と環境倫理――アジア的生命倫理の可能性」
 加藤・高久編[1996:153-172] ※

 第1節 倫理とは何か
 第2節 生命倫理とは何か
 第3節 人口問題と遺伝問題の重要性
 第4節 遺伝的形質の不可侵性
 第5節 遺伝子診断,遺伝子治療――救済と制限
 第6節 ヒト・ゲノム計画,新優生学,遺伝子産業
 第7節 医学とオーノミー原理
 第8節 もう一つの倫理観――東洋的倫理

 「……極論になるかもしれないが,ある病気はむしろ治さないほうがいいかもし
れない,ある人はむしろ死なせてあげたほうがいいのかもしれない。また,人口問
題をこれほどに大きな問題にしてしまったのは,医学にも一つの大きな要因がある
かもしれない。医学の進歩が人口の増大を助長しているという一面がある。」
(坂本百大[1996:160],第3節)

 「……なんといっても大きいのは,先ほど述べた「遺伝的形質の不可侵性は基本
的人権である」という問題である。「病気の場合は遺伝子を治療していい」という
意味のことが付加されているとしても,根本的な思想は「遺伝的形質に手をつける
な」ということである。遺伝子治療は明らかにそれに反する行為で,この考え方に
よると遺伝子治療それ自体が,基本的人権の侵害になるわけである。遺伝病を治す
ことができるようになったのは,最大の福音と考えられるが,実はその最大の福音
と考えられていることが,ある観点からすれば最大の人権侵害であるというのは,
いままでなかった観点だろうと思う。
 これは実は,あらゆる宗教,習俗がひそかに保持している保守思想であるともい
える。例えばキリスト教が好んで用いる言葉に「神の如くに振る舞う傲慢」という
のがある。しかし,この考え方はとくに東洋思想において強いともいえる。後でも
一度触れてみたいと思うが,自然に反する人間の作為を嫌う無為自然というのだろ
うか,そういうふうにして人間が遺伝的形質を受(p.164) けてしまったならば,
それを大事にして死ぬべき人は死んだらいいじゃないかという思想である。これは
先ほどの人口問題にも絡むが,こういう形で遺伝医学が進歩すると,かなりその恩
恵による人口増加も見込まれる。……」(坂本百大[1996:164-165],第5節)

 ※この人の「アジア的生命倫理」に対する批判として立岩[1997:]他

高久 史麿 19960415 「遺伝子治療について」
 加藤・高久編[1996:191-204] ※

 第1節 遺伝子工学の臨床的応用
 第2節 遺伝子診断の倫理的問題点
 第3節 遺伝子治療の歴史的展開
 第4節 遺伝子治療の基礎的検討
 第5節 遺伝子治療の対象疾患
 第6節 先天性疾患に対する遺伝子治療
 第7節 がんに対する遺伝子治療
 第8節 エイズの遺伝子治療
 第9節 アメリカにおける遺伝子治療検査の情況
 第10節 わが国の遺伝子治療の現況

◆町野 朔  19960415 「遺伝子治療の規制について」
 加藤・高久編[1996:205-217] ※

 第1節 生命倫理,医療プロフェッション,刑法の役割
 第2節 日本における遺伝子治療の規制
 第3節 ドイツにおける遺伝子治療の規制
 第4節 遺伝子治療の規制について

◆柳澤 桂子 19961127 『遺伝子医療への警鐘』
 岩波書店

 1生命の基本的な単位   001
 2DNAの塩基配列を読む 045
 3ヒトのゲノムを読む   099
 4病因遺伝子の探索    129
 5遺伝子診断と遺伝子治療 163
 6農作物と家畜の改良   195
 7遺伝子工学の嵐のなかで 219

 5においては主に効果があがっていないことが指摘される。

 「病因遺伝子の探索の成果のはなばなしさとくらべてみると,いかにこの分野の
研究がおくれているかがわかる。遺伝子治療の現状がこのようであるので,ある研
究者は,「今のところ,遺伝子治療は,患者に危害は加えていないというだけで,
何のメリットもない」とさえいっている。
 ところが,一般の人々の遺伝子治療に対する眼差しは熱く,マスコミでも大々的
に取りあげられ,まるで魔法の治療のように報道される。企業も他におくれてはな
らじと投資する。企業のねらっているのは,当たるか,当たらないかの賭のような
ものであるから,基礎研究がどうであろうと,患者に何かをするということが大切
なのである。」(柳澤桂子[1996:192])
 「……先走った遺伝子治療の臨床応用については,研究者の中に批判的な声がた
くさんある。いま必要なことは,よいベクターの開発のための基礎研究と免疫学の
基礎研究であるという。基礎をしっかりと築かずに,大きな賭をしても結局時間と
費用のむだになってしまうのではなかろうか。」(柳澤桂子[1996:192],5の終
結部)

 以下は7からの引用

 「古典遺伝学者たちが血友病などの頻度から計算したところによると,病因遺伝
子への突然変異はかなり高頻度に起こっていると推定される。その率は,一〇万の
生殖細胞あたり一個くらいであるという。血友病などのように,特定の病気への突
然変異は,五万人に一人の割で起こる。私たちは誰でも一〇個前後の病因遺伝子を
もつが,たまたま突然変異が劣性があるために病気にならないだけのことであろう
と考えられる。
 病因遺伝子の発現は,それをもった人にとってはたいへん困った問題であるが,
人類という視点にたつと,一定の頻度で突然変異が起こり,遺伝子の多様性を保持
していくことが生存のために必須なのである。ヒトの遺伝子プールを豊かな多様性
で満たしておくことが,ヒトとい(p.256) う種を健全にたもつために重要である。
実際にも遺伝子プールは,つねに突然変異を蓄積している。多様性をたもつ代償と
して,病因遺伝子も生じる。これがヒトの遺伝子プールの構造である。
 将来,遺伝子治療が発達して,ヒトの遺伝子プールのなかの病因遺伝子を全部治
療できるときがくるまで,病因遺伝子はなくならない。病因遺伝子を沈黙させてお
くもっとも有効な方法は,遺伝子プールのサイズを大きくして,そのなかで自由に
婚姻がくりかえされるようにすることである。地球上の全人類が,わけへだてなく
たがいに交流することによって,病因遺伝子の発現率を低下させることができるの
である。
 遺伝子治療が確立されなくても,遺伝子の診断結果を受容しやすくするたいせつ
な要因として福祉の充実がある。どのような状態になっても,社会のなかで温かく
看取られるということがわかっていれば,病気を背負った運命もかなり受け入れや
すくなるであろう。
 人類遺伝子プールの中から病因遺伝子がなくならないのであれば,とにかく福祉
を充実して,私たちの代わりに病気を背負ってくれた人々に少しでもやすらかに生
きてもらうようにすることは,病因遺伝子を割り当てられなかった人たちの当然の
務めであろう。
 欧米の書物もふくめて,人類遺伝子やヒト・ゲノムに関するものを読んでいると
「社会にとって悪い遺伝子」という表現をよく目にする。しかし,個人にとって悪
い遺伝子はあるかもしれないが,社会にとって悪い遺伝子という考えはあってはな
らないのではないだろうか。遺伝子(p.257) プールの構造を考えれば,それはつ
ねに存在するものなのである。もし,社会にとって悪い遺伝子という考え方がある
とすれば,悪いのは社会であって,遺伝子ではないと私には思えるのである。
 社会から差別感情をなくして,障害をもつ人にあたたかい手をさしのべることも,
個人と社会の成熟のあかしであろう。……
 精神病の遺伝子や知能を支配する遺伝子の研究もおこなわれている。これらの形
質は,一つの遺伝子ではなく,複数の遺伝子によって支配されている可能性が高い。
神経科学の進歩とあいまって,性格の遺伝子支配についてもわかってくるかもしれ
ない。
 このようなことがわかればわかるほど,私たちはそれぞれの人のもつちがいに優
劣をつけるのではなく,ちがいそのものをあるがままに受け入れることの重要性を
学ぶであろう。
 すべての人は,人間の遺伝子プールから二セットのゲノムをあたえられて生まれ
てくるのであるが,それを自分で選ぶことはできない。それぞれの人にあたえられ
たものをおたがいに尊重し,足りない部分は補う以外にしあわせに生きる方法はな
いように思われる。」(柳澤桂子[1996:256-258])

◆大朏 博善 19960925 『いま,遺伝子革命』,新潮社,250p. 1500

  日本初の遺伝子治療――プロローグ
 I部 遺伝子工学が起こす医療革命
  1 遺伝子治療第一号の衝撃
  2 ガンとエイズの遺伝子治療
  3 ガンは遺伝子でわかる
  4 出産の遺伝子診断
  5 生殖医療を変える遺伝子技術
  6 遺伝子医療はどこまで行くか
 II部 遺伝子技術の広がり
 III部 遺伝子産業の行方

 I部−1「遺伝子治療第一号の衝撃」より

 「研究者の中には,「アンダーソンは半ば売名行為で遺伝子治療を行ったのだ。
その証拠に,いまでは研究の現場には立たないで,ベンチャー・ビジネスのコンサ
ルタントとして忙しい」という声もある。が,そんな現状も彼は承知のうえで,こ
うもいう。
「遺伝子治療は素晴らしい可能性をもっているのは間違いないが,まだまだ未知の
部分が多い医療です。これを進めるには,誰か牽引車となる者が必要なのです。臨
床応用第一号をめざしたときから,私がその役目を負うつもりだったんですよ」
 いま世界中で,六百以上のテーマで遺伝子治療の研究や臨床応用が進められてい
るという。そのどれもが,ADA欠損症のような成果を夢見ているのだが,同時に,
研究費の調達も,研究時間の積み重ねも,社会の理解の獲得も,まだまだ足りない。
そんなことから,純粋な研究の積み重ねとともに,博士のような機関車的な存在も
必要なのだろうと思ったものであった。」
(大朏博善[1996:38],I部−1の末尾の部分)

 I部−6「遺伝子医療はどこまで行くか」より

 「このように,いまは主に病気の治療に使われている遺伝子医療だが,体質的疾
患も治るとなれば,次には「気質や外見,性格なども変えられるか」と問いたくな
るのは私だけではないだろう。子供が外見的にも親に似るのは間違いない事実だか
ら,DNAのどこかに”親からもらった遺伝的資質”がひそんでいなければおかし
い。遺伝子治療などによって,これをどこまで変えられるようになるか,大いに興
味があるではないか。
 遺伝の専門家や研究者に以上のような質問をした場合,返ってくる答えはほとん
ど決まっている。
 「いまの遺伝子操作の技術では,たった一つの遺伝子さえ”交換する”ことはで
きません。研究や臨床応用が進められている遺伝子治療は,ふつうに機能する遺伝
子を細胞内やDNAの一部に割り込ませているだけで,場所まで狙って入れること
はまったくできません。つまり,いまのところ足りない機能を外来遺伝子で補う技
術であって,”遺伝子を入れ替える”または”遺伝子を治す”技術ではないので
す。」
 まして,個人の体質とか性質は一つや二つの遺伝子で決まる簡単な資質ではない
し,環境によって変わるものでもあるから,遺伝子レベルだけの問題として決定す
ることはできないというのである。
 …(p.116)…
 遺伝子が明らかになれば,遺伝子診断ができるようになり,必要な遺伝子治療で
治せる――この発想をどこまで良しとするか。いまはまだ未熟な医療だから大した
ことはないですむが,遺伝子技術が進むにしたがって,厳しい判断が必要になるの
は間違いないのである。」(大朏博善[1996:116-117],I部−6の末尾の部分)

◆横山 裕道 19970420 『遺伝子のしくみと不思議』
 日本文芸社,270p. 1200 ※

■文献
 I 身近な遺伝のはなし
 II これだけは知っておこう遺伝子の基礎知識
 III 現代の魔法・遺伝子工学
 IV 遺伝子診断で何がわかる?
 V 遺伝子治療は救世主になり得るか
    次第に広がる対象疾患
    フライングだった世界初の遺伝子治療
    第一号患者は今
    日本の一番乗りは?
    半数以上を占めるがんへの応用
    エイズの治療にも
    金持ちのための治療になる!?
    認められていない生殖細胞の操作
    上がらぬ治療効果
    治療のカギ握る運び屋
    遺伝子治療は「急がば回れ」で
 VI 壮大なヒト・ゲノム解析計画
 VII 遺伝子でルーツがわかる
 VIII遺伝子研究の未来
 IX 遺伝子ア・ラ・カルト

村岡 潔 19980130 「遺伝子治療」(コラム)
 佐藤・黒田編[1998:188-190] ※

 「遺伝子治療の研究は,現在,次の条件下で慎重に推進されている。その条件は
a生命に危険が迫っている患者(致死性の遺伝子疾患)に限る(がん患者でも従来
の治療法で無効だった場合に,最後の手段として実験治療として試みられている),
b患者本人の体細胞に限る(挿入した遺伝子が将来の世代に受け継がれる精子,卵
子,受精卵は除く),c病気でない人の機能強化(たとえば,身長を高くする目的
で成長ホルモン遺伝子を入れる)や,知能・人格・器官形成などの人間特性の変更
を意図する優生学的遺伝子操作は認めない,d患者や被験者のインフォームド・コ
ンセントを重視・確保し人権を保障する,などである。
 一般に,遺伝子研究に対し,安全性や未知の問題点からは時期尚早とする慎重論
や,差別や悪用の危険から遺伝子工学の運用は厳格な社会的ルールのもとに十分に
管理すべしとする議論がある。また,「神の役割」を演ずるとか,自然の摂理に反
するなどという批判もある。遺伝子操作の技術は,人間性に対する科学の冒涜であ
るとして,技術そのものに恐怖感や危機感を抱く人びとも少なくない。
 ただしこの種の批判は,それ自身が,批判対象である遺伝子工学が含む遺伝子決
定論の観点に絡め捕られる危険性がある。たとえば,クローン技術によってA・ヒ
トラーが何人も作れるといった理由から遺伝子工学に反対するという意見は,それ
自体が,人間の遺伝子組成(ヒトゲノム)が同じだけで自動的に同一人格の人間が
できるという前提に依拠することになる。むろん,この考えは,人間形成における
文化や社会の影響力を無視したもので,逆に,遺伝子がすべてを決めるという決定
論を補強するものにほかならない。
 …(p.189)…
 結局,遺伝子治療の評価も批判も,近代医学総体のもつ医療思想の検討なしには
語られない。遺伝子治療の主要な問題は,近代医学総体のもつ生物学中心の考え方
に由来するからである。だが,遺伝子工学の反自然性や危険性(精度や安全性等の
技術的問題)の論争にばかり目をうばわれるとき,この中心点は容易に見失われて
しまうのである。」(村岡潔[1998:189-190])

 

●翻訳書

◆Thompson, Larry 1993* Correcting the Code :
 Inventing the Genetic Cure for the Human Body
 =19951016 清水信義監訳,
 『遺伝子治療革命――DNAと闘った科学者たちの軌跡』
 日本テレビ,550+7p. 2800 ※
 * 訳書には原著の発行年が記されていない
◆Mckie, Robin 1988 The Genetic Gigsaw
 Oxford University Press
 =19920417 長野敬訳,『遺伝子治療最前線』,日経サイエンス社,225p. 1600
◆Rosenberg, Steven A. ; Barry, John M. 1992
 The Transformed Cell : Unlocking the Mysteries of Cancer 
 =19930725 村松潔訳,
 『ガンの神秘の扉をひらく――遺伝子治療の最前線から』
 文藝春秋,475p. 2800 ※

 

●翻訳あるいは紹介のある論文

◆Holtug, Nils 1993 "Human Gene Therapy : Down the Slippy Slope ?",
 Bioethics 7-5:402-419
 「科学技術の発達と現代社会II」運営委員会編[1995:184-189]に
 黒崎剛の要約「ヒト遺伝子治療――滑り坂を下るか?」 <268,428> ※
◆Wessels, Ulla 1994 "Genetic Engineering and Ethics in Germany"
 A. Dyson and J. Harris eds. Ethics and Biotechnology, Routledge,
 pp.230-258
 加藤尚武編[1996:209-214]に山崎純の紹介
 「U.ウェスルス「ドイツにおける遺伝子工学と倫理」
◆Anderson, W. French 1994 "Human Gene Therapy : Scientific and Ethical
Consideration", The Journal of Medicine and Philosophy 10
→E. Erwin et al. eds. 1994 Ethical Issues in Scientific Research,
 Garland, pp.337-349
 加藤尚武編[1996:215-219]に坂本知宏の紹介
 「W.フレンチ・アンダーソン「ヒト遺伝子治療:科学的・倫理的考察」」

 

●日本語の文献(発行年順)

◆朝日新聞科学部 19820630 『生命――探究と産業化の最前線』
 朝日新聞社,234p. 880 三鷹461
中村 桂子 1985 「ゴーサインの出た遺伝子治療
 ――米国NIHのガイドラインをめぐって」,
 『現代化学』1985-10
◆高木 康敬 19870615 「遺伝子診断と治療の現状と将来:基礎の立場から」
 高久編[1987:25-39]
◆三輪 史朗 19870615 「遺伝子診断と治療の現状と将来:臨床の立場から」
 高久編[1987:41-56]
◆Freedman, Theodor 19870615 「遺伝子治療――現状と展望」
 高久編[1987:205-219]
高久 史麿 編 19870615 『バイオテクノロジーと医療』
 東京大学出版会, Y+219p. 2400 三鷹467
福本 英子 19880310 「遺伝子治療と優生政策」
 『技術と人間』17-03:10-13
米本 昌平 19880630 「遺伝子診断・遺伝子治療と倫理の問題」
 岡本・馬場・古庄編[1988:284-309]
◇岡本 直正・馬場 一雄・古庄 敏行 編 19880630
 『医療・医学研究における倫理の諸問題』,東京医学社,376p. 6077
◆倉辻 忠俊・中込 弥男 1989 「遺伝子疾患と遺伝子治療」
 『医学のあゆみ』150:5
森岡 正博 19900331 「遺伝子治療の倫理問題」
 加藤・飯田編[1990:063-067]
◇加藤 尚武・飯田 亘之 編 19900331 『生命と環境の倫理研究資料集』
 千葉大学教養部倫理学教室,228p.
◆高久 史麿 1993 「遺伝子治療」
 『日本医師会雑誌』109:229-
◆高久 史麿 1993 「遺伝子治療と生命倫理」
 『Molecular Medecine』30:1566-
◆小澤 敬也 1994 『がんや難病を治す遺伝子治療』
 法研
◆DNA問題研究会 編 19940715 『遺伝子治療――何が行なわれ,何が問題か』
 社会評論社,157p. 1700 ※/松本467
森岡 正博 19950331 「生殖系列細胞の遺伝子治療をめぐる倫理問題」
 「科学技術の発達と現代社会II」企画運営委員会編[1995:190-197] ※
◆藤村 ■  19950331 「遺伝子操作――環境変化から遺伝子治療まで」
 「科学技術の発達と現代社会II」企画運営委員会編[1995:] ※
◆高橋 久一郎 19950331 「遺伝子「治療」が問題なのではない
 ――遺伝子「診断」と受精卵・胚「実験」,そして情報管理」
 「科学技術の発達と現代社会II」企画運営委員会編[1995:198-207] ※
◇「科学技術の発達と現代社会II」企画運営委員会編 1995
 『生命・環境・科学技術倫理研究資料集』,千葉大学
 (発行事務局:文学部哲学講座),380p.I:pp.1-150,II:pp.151-380 <21,165> ※
森岡 正博 1995 「遺伝子治療」
 加藤尚武編[1995]
◇加藤 尚武 編 1995 『ヒトゲノム解析研究と社会との接点・研究報告集』
 京都大学文学部倫理学研究室
加藤 尚武 1996 『技術と人間の倫理』
 (pp.「遺伝子治療の「倫理問題」」)
 NHK出版
村岡 潔 19960331
 「遺伝子医療における「DNA中心主義」の現実的諸問題
 ――我々の批判的スタイルはどうあるべきか」
 加藤尚武編[1996:69-78]
◆森永 審一郎 19960331
 「パンドーラの箱――遺伝子操作をめぐるヨナスの見解」
 加藤尚武編[1996:79-88]
◆平田 俊博 19960331
 「論評 森岡正博「生殖系列細胞の遺伝子治療をめぐる倫理問題」」
 加藤尚武編[1996:79-88]
◇加藤 尚武※ 編 19960331
 『「ヒトゲノム解析と社会との接点」研究報告集 第2集』
 京都大学文学部倫理学研究室,309p.
 (※責任編集者,編集委員:蔵田伸雄・坂井孝一郎・鈴木真)
◆高橋 久一郎 19960331 「医学における「先端技術」と「治療」の間
 ――遺伝子「治療」と生殖「技術」」
 「科学技術の発達と現代社会II」運営委員会編[1996:82-98] ※
◇「科学技術の発達と現代社会II」運営委員会 編 19960331
 『生命・環境・科学技術倫理研究資料集 続篇』,
唄 孝一 19960415 「遺伝子治療の臨床研究等について思う」
 加藤・高久編[1996:125-135]
◆中村 雄二郎 19960415 「遺伝子研究・遺伝子治療の問題点
 ――フランスの例を参考として」
 加藤・高久編[1996:137-152] ※
坂本 百大 19960415 「遺伝医学と環境倫理――アジア的生命倫理の可能性」
 加藤・高久編[1996:153-172] ※
高久 史麿 19960415 「遺伝子治療について」
 加藤・高久編[1996:191-204] ※
◆町野 朔  19960415 「遺伝子治療の規制について」
 加藤・高久編[1996:205-217] ※
中谷 瑾子 19960415 「生殖医療の問題点,遺伝子治療との関連において
 ――英国のReproductionにおけるEgg Donationと中絶胎児・女性死体の卵巣組
 織の利用をめぐって」
 加藤・高久編[1996:219-233] ※
◆曽野 綾子 19960415 「近頃好きな言葉」
 加藤・高久編[1996:261-171](曽野[1995]を転載) ※
◇加藤 一郎・高久 史麿 編 19960415
 『遺伝子をめぐる諸問題――倫理的・法的・社会的側面から』 6180
◆大朏 博善 19960925 『いま,遺伝子革命』
 新潮社,250p. 1500
◆柳澤 桂子 19961127 『遺伝子医療への警鐘』,
 岩波書店 ※
□島 次郎 199709 「遺伝子治療はどのように進められるべきか」
 『からだの科学』臨時増刊「医療改革」:137-140 ※
◆横山 裕道 19970420 『遺伝子のしくみと不思議』
 日本文芸社,270p. 1200 ※
村岡 潔 19980130 「遺伝子治療」(コラム)
 佐藤・黒田編[1998:188-190] ※
佐藤 純一黒田 浩一郎 編 19980130 『医療神話の社会学』
 世界思想社,247+5p. 2200 ※

 ※は立岩研究室所蔵

  cf.
  ◆ADA欠損症
  ◆生命倫理

  「能力増強」に関して立岩[1997]第9章6節「積極的優生について」
  (なおそこでの論議は「能力増強」のための「体細胞」の「遺伝治療」を否定
  する論にはなっていない。)


◆20010117

2001/01/18 23:34 遺伝子治療の臨床試験、全公開へ…米
読売新聞ニュース速報
 【ワシントン17日=館林牧子】米食品医薬品局(FDA)は十七日、遺伝子治療と、異種移植など動物の組織、臓器を使った人の治療について、すべての臨床試験のデータを一般公開する規則案をまとめた。副作用発生の場合には即座に明らかにするほか、動物実験の結果なども公開することとしている。
 しかし、特許にかかわる一部のデータは公開の対象外になる。
 遺伝子治療については、二年前、米ペンシルベニア大で遺伝子治療の臨床試験に参加した十八歳の男性が、大学の人為的なミスによる医療事故で、治療後急死する事故があり、これをきっかけに規則を見直していた。動物の組織や臓器を使った治療については、動物の未知のウイルスが感染、周囲の人にも広がる可能性があると指摘。今回の規則案を発表した理由についてFDAは「大きな可能性が期待できる治療法だが、通常にはない危険性が潜んでいるかもしれないため」としている。
[2001-01-18-23:34]

http://www.fda.gov/bbs/topics/NEWS/2001/NEW00748.html
FOR IMMEDIATE RELEASE
P01-02
January 17, 2001
FOOD AND DRUG ADMINISTRATION
Press Office: 301-827-6242
Broadcast Media: 301-827-3434
Consumer Inquiries: 888-INFO-FDA

--------------------------------------------------------------------------------

FDA PROPOSES A NEW PUBLIC DISCLOSURE RULE FOR GENE THERAPY AND XENOTRANSPLANTATION CLINICAL TRIALS
The Food and Drug Administration (FDA) today issued a proposed rule that would make publicly available
information on all new or ongoing clinical trials involving either gene therapy or xenotransplantation.
Under this proposed rule, published today in the Federal Register, FDA would provide public access to most
of the study design and safety information about these types of studies. FDA would not release
confidential business information or personal information related to study participants.

典oday痴 action is an important step in ensuring greater public confidence in these revolutionary
therapeutic technologies,・said FDA Commissioner, Jane E. Henney, M.D. ・Both of these technologies hold
great promise, but they may also pose a remote, but unique risk to the individuals who have volunteered to
participate in these types of studies. Our proposal will ensure that the public is fully informed as we
investigate these new public health opportunities and challenges.・

Human gene therapy is defined as the administration of genetic material to modify or manipulate the
expression of a gene product or to alter the biological properties of living cells for therapeutic use.
Cells may be modified outside the body (ex vivo) for subsequent administration to the subject or altered
in the body (in vivo) by gene therapy products given directly to the subject.

Xenotransplantation refers to any procedure that involves the transplantation, implantation, or infusion
into a human recipient of either (1) live cells, tissues, or organs from a nonhuman animal source; or (2)
human body fluids, cells, tissues, or organs that have had ex vivo contact with live nonhuman animal
cells, tissues, or organs.

The proposal will also ensure that FDA痴 policies for public access to this information are compatible
with those of other government agencies that oversee these types of research. Much of the information that
would be disclosed about gene therapy trials under this proposal is already publicly discussed in open
meetings of the Recombinant DNA Advisory Committee of the National Institutes of Health. Similarly,
information about xenotransplantation trials will also be publicly available through the Secretary
Advisory Committee on Xenotransplantation, which is being assembled by the Department of Health and Human
Services.

Under the rulemaking process there will a 90 day public comment period on this proposal. Written comments
may be submitted to:

Dockets Management Branch
Food and Drug Administration
5630 Fishers Lane
Room 10-61
HFA-305
Rockville, Maryland 20852

Comments can also be e-mailed to FDADOCKETS@OC.FDA.GOV. These comments will be considered in the
development of any final rule.

Web page uploaded by tg 2001-JAN-17.

 

◆20010607 <遺伝子治療>血友病に効果 米医師グループが医学誌に発表
毎日新聞ニュース速報

 血液を固める物質の遺伝子を組み込んだ皮膚の細胞を、血友病の患者に移植、出血などを抑える遺伝子治療で効果を確認したと、米国の医師グループが7日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した。高価な血液製剤などを使わない血友病の治療に道を開く成果という。
 米マサチューセッツ州のベス・イスラエル・デアコネス医療センターのデービッド・ロス博士のグループは、血友病患者の皮膚から「線維芽細胞」と呼ばれる細胞を採取。これに血液凝固物質を作る遺伝子を組み込み、クローン技術を使って培養。重い血友病の患者6人の腹部に移植して1年間経過を観察した。
 すると6人中4人の患者で、血液中の凝固物質の濃度が移植前に比べ上昇していた。上昇の程度はわずかだったが、中には血友病患者にみられる出血の回数が目立って少なくなるなどの効果がみられた人もいた。
 これらの効果は移植の約1カ月後から表れ始め、最も長い患者では1年間継続。移植した細胞に対する拒絶反応や目立った副作用はなかったという。
 研究グループは「技術的に難しい点はなく、患者自身の細胞を使うので免疫反応も起こさないなどの利点がある」と指摘、さらに臨床試験を続ける。(ワシントン共同)
[2001-06-07-19:30]

 

◆<遺伝子治療>白血病再発患者に対する計画を承認 筑波大病院
 毎日新聞ニュース速報

 筑波大付属病院(茨城県つくば市)の遺伝子治療臨床研究審査委員会は29日、同病院の研究グループが昨年2月に申請した白血病の再発患者に対する日本初の遺伝子治療計画を承認したと発表した。今後、厚生労働省や文部科学省に臨床研究実施の審査を申請する。
 白血病の治療には骨髄移植が広く行われているが、移植後に再発した白血病への効果的な治療法は見つかっていない。骨髄提供者のリンパ球を再発患者の体内に戻すと、患者の白血病細胞を攻撃して死滅させる一方、リンパ球が正常細胞を攻撃することもあるからで、この副作用をどう抑えるかが大きな課題となっている。
 承認された臨床研究実施計画は、この治療を安全で効果的に行うのが狙い。まず、特定の薬を毒性の強い物質に変える特殊な酵素を「(細胞の)自殺遺伝子」として、遺伝子の運び屋を使ってリンパ球に組み込んだうえ、患者の体内に入れておく。リンパ球が正常細胞まで攻撃してしまった場合には、この薬を投与して自殺遺伝子のスイッチを入れ、リンパ球細胞を自殺させて副作用の沈静化を図るという仕組みだ。
 同様の遺伝子治療は欧米などで実施されているが、国内では初という。【中山信】
[2001-06-29-12:00]

◆06/29 18:37 NH: 白血病の遺伝子治療申請へ 国内初 筑波大

NHKニュース速報

 筑波大学附属病院は、白血病が再発した患者に対して遺伝子治療を行う方針を決め、近く国に申請することになりました。
 これが認められれば、国内では初めて白血病患者に遺伝子治療が行われることになります。
 これは筑波大学附属病院がきょう記者会見して明らかにしたものです。
 血液のがん、白血病の治療には骨髄などの移植が行われることがありますが、こうした治療では十パーセントから二十パーセントの人が再発するとされていて、再発した患者には骨髄などを提供してくれた人のリンパ球を新たに投与する治療が行われています。
 この場合、リンパ球が必要以上に増えて、健康な細胞まで破壊してしまうことがあり、このリンパ球の働きをどう調整するかが課題となっています。
 筑波大学附属病院では、リンパ球を新たに投与する際に、あらかじめ特殊な薬を吸収しやすくする遺伝子を組み込んでおく方法を開発し、健康な細胞まで破壊するようになった時には、薬を投与してこのリンパ球を消滅させるという遺伝子治療を行う方針を決めました。
 筑波大学では来月中には国に申請することにしていて、これが認められれば、国内では初めて白血病患者への遺伝子治療が行われることになります。
 この遺伝子治療の研究を続けてきた筑波大学臨床医学系血液内科の小野寺雅史(オノデラマサフミ)講師は「この治療方法は投与するリンパ球に安全弁を付けるようなもので、これによって今よりももっと多くのリンパ球を投与することができ、高い効果が期待できる」と話しています。
[2001-06-29-18:37]

◆06/29 13:40 ◎国内初の再発白血病遺伝子治療を承認=筑波大病院
時事通信ニュース速報

◎国内初の再発白血病遺伝子治療を承認=筑波大病院
 筑波大付属病院(茨城県つくば市、能勢忠男院長)の遺伝子治療臨床研究審査委員会は29日、長沢俊郎臨床医学系教授らのグループによる白血病再発患者に対する遺伝子治療の臨床研究について、安全性と有効性が確認されたため承認したと発表した。
 同研究は、白血病の再発患者に骨髄提供者から白血球の一種であるリンパ球を投与する治療法。同様の遺伝子治療はイタリアやフランスなどで行われているが、日本国内では初めてとなる。筑波大病院は7月中に厚生労働省と文部科学省の審議会に申請し、半年から1年の審査期間を経て承認され次第、同治療を実施する方針。 
[時事通信社]
[2001-06-29-13:40]

◆06/29 11:34 共: 再発白血病に遺伝子治療 筑波大病院が承認
 共同通信ニュース速報

 筑波大病院(茨城県つくば市)は二十九日、白血病の治療で骨髄移植を受けた後に再発した患者に対する遺伝子治療を、院内審査委が承認したと発表した。国に審査を申請し、認められれば臨床試験を実施する。
 審査委によると、治療は骨髄提供者からリンパ球を採取し、特定の薬に反応して細胞を自殺させる遺伝子を組み込んで、白血病が再発した患者に投与する。
 これまで、骨髄提供者のリンパ球投与で再発した白血病の症状が改善することは分かっていたが、リンパ球が多すぎると、患者の臓器などを攻撃する副作用があることが問題だった。
 この遺伝子治療では、副作用の兆候が出たら薬を投与してリンパ球を減らし、副作用を防げるのが特徴。
 同様の治療は欧米で数年前から実施されており、リンパ球への遺伝子組み込みに使うレトロウイルスはイタリアから提供を受ける。
(了)
[2001-06-29-11:34]

 

◆2001/07/12 「韓国初の遺伝子治療薬が臨床許可=来年にも実用化へ−宝酒造」
 時事通信ニュース速報

 宝酒造は12日、韓国で臨床試験許可を申請していた脚部疾患向け遺伝子治療薬がこのほど、韓国食品医薬品安全庁(KFDA)により認可されたことを明らかにした。韓国で遺伝子治療のための薬剤が臨床認可を受けたのは初めてという。今後、患者を選定した上で臨床試験を開始し、2002年には商業化を目指したい考え。同社は「韓国でも遺伝子治療実用化が近づいた」としている。
 認可を受けたのは、慢性糖尿病などによって引き起こされる「虚血性脚部疾患」向けの薬剤で、血管を新生する働きを持った遺伝子が含まれている。同疾患は足の血管が機能しなくなるため、従来は外科手術による治療が行われてきた。しかし、この薬剤を筋肉に直接注射することで、血管の再生が促され、足の切断などをしない治療が可能になるという。
[時事通信社]
[2001-07-12-21:09]

 

◆2001/07/31 遺伝子治療審査を簡略化へ 国の指針で改定素案
共同通信ニュース速報

 遺伝子治療臨床研究の事前審査を見直すため、厚生労働省と文部科学省が合同で設置した委員会(委員長、高久史麿・自治医大学長)は三十一日、手法がある程度普及した治療については、審査を簡略化できるようにする国の指針の改定素案をまとめた。
 九月をめどに最終案をまとめ、国民の意見を募集した後、実施に移す方針。
 素案によると、臨床研究を計画する大学病院などが実施計画書を提出すると、国は@新しいベクター(遺伝子の運び屋)などを使うかA新しい病気が対象かB新しい治療方法かCその他個別審査が必要な理由があるか―の四点について複数の有識者に意見を求める。
 いずれにも該当せず「新規性なし」と判断されれば、審議会の審査は不要となる。この判断は原則として三十日以内に行われる。
 このほか、臨床研究を行う施設が内部に設置する審査委員会に複数の外部委員を加え、男女両性で構成することや、審査の過程を原則として公開することなどを規定した。
 国内の臨床研究は、施設の内部審査の後、両省が個別に安全面や倫理面の審査をしており、今は最低でも数カ月はかかっている。
[2001-07-31-19:37]

 

◆2001/08/12 「遺伝子治療の臨床実験に成功=アルツハイマー病の治療法確立も−英紙」
 時事通信ニュース速報

 「【ロンドン12日時事】12日付の英日曜紙サンデー・テレグラフは、英米の研究グループがアルツハイマー病の新たな遺伝子治療の臨床実験に成功したと報じた。英キングズ・カレッジ医学部のジョン・クーパー氏らのグループが13日に成果を発表する。
 アルツハイマー病の治療では、神経成長因子(NGF)と呼ばれるたんぱく質が脳神経の機能回復に有効なことが知られているが、NGFを脳の中に取り込む方法が課題となっていた。
 同紙によれば、米カリフォルニア州の神経外科医が今年4月、発病の初期段階にある60歳の女性の脳の前頭葉部分に、NGFを分泌するよう遺伝子を組み換えた皮膚の細
胞を注入したところ、病状が好転したという。研究グループは今回の実験成功について、10−15年以内にアルツハイマー病の治療法を確立する道を開くものだとして、今後の成果に期待している。」
[時事通信社]
[2001-08-12-22:15]

 

◆2001/08/28 「国産「遺伝子運び屋」使い初の臨床試験へ 九州大」
 朝日新聞ニュース速報

 国産のウイルスベクター(遺伝子の運び屋)を用いる初めての遺伝子治療が、九州大医学部で計画されている。同部の研究グループが、国内のベンチャーが独自開発した新型のウイルスベクターを使用して、動脈硬化などが原因で起きる重い血行障害の治療を目指す。8月末に開かれる学内倫理委員会で臨床試験実施に向けた審査が始まる。
 倫理委に申請しているのは医学部第2外科の杉町圭蔵教授と第1病理の居石克夫教授らのグループ。足の血管が詰まり、重症になると壊死(えし)を引き起こす虚血性脚部疾患の患者を対象としている。
 遺伝子治療に用いられるベクターのほとんどは海外で開発されたものだが、今回の新型ベクターは、53年に東北大の研究者が発見して細胞工学に使われていたネズミのウイルス「センダイ(仙台)ウイルス」をもとに、官民共同出資のベンチャー「ディナベック研究所」(茨城県つくば市)が開発した「純国産品」だ。これに血管を作り出す作用がある「FGF」(線維芽細胞成長因子)の遺伝子を組み込んで患者の足に注射する。
 脚の血流を完全に止めたマウスを使った動物実験では、ベクターを注射すると盛んに血管の新生が始まり8割以上の確率で壊死が避けられた。
 遺伝子治療で用いられるベクターの約7割を占めるウイルスベクターは、もとのウイルスの毒性を取り除いているが、突然変異の心配がある。ウイルス以外では、リポソームと呼ばれる人工膜を用いるものなどがあり、国内では名古屋大が独自開発したリポソームを使って臨床研究が行われている。リポソームなどのベクターには突然変異はないが、遺伝子を細胞内に運ぶ能力が劣る。
 研究グループの米満吉和助手(病理病態学)によると、新型ベクターはもともと人体に毒性がないウイルスであることや、ほかのウイルスベクターと違い患者の染色体に取り込まれることがないため安全面で優れているという。
 さらに、FGFには肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)など血管新生作用を持つほかの因子の働きを強める作用もあり、これまでの同様の遺伝子研究よりも効果が期待できるという。」[2001-08-27-03:13]

 

◆2002/03/05 遺伝子治療の審査をスピードアップ 国が新指針
 朝日新聞ニュース速報

 遺伝子治療の臨床研究の迅速化をめざす新指針が5日、文部科学省の専門委員会で了承された。4月1日に施行される見通し。
 文科省と厚生労働省に分かれていた研究計画の審査手続きを厚労省に一本化し、患者ができるだけはやく治療を受けられるようにする。また、すでに実施されている臨床研究と同様と専門家が判断した計画については、国の審議会を経ずに結論を出せるようにする。
 厚労省・厚生科学審議会の部会も先月、同指針の内容を了承。文科省ライフサイエンス課は「半年から1年ほどかかっている審査手続きが大幅に短縮できる」とみている。
 新指針は、インフォームド・コンセント(説明と同意)の際、患者から「文書で同意を得る」ことも定めている。
[2002-03-05-19:59]

 

◆2002/04/15 <ベクター生産>東京慈恵医大が今秋にも開始 遺伝子治療に
 毎日新聞ニュース速報

 遺伝子治療に必要なベクター(遺伝子の運び屋)などを開発する東京慈恵医大(東京都港区)の施設が15日完工、今秋にも第1号のベクター生産を始める。日本の大学が遺伝子治療のビジネスに乗り出す初のケースだ。
 遺伝子治療はがんや遺伝性疾患などの病気を対象に、世界で数千例が実施されている。日本では国が14件承認し、11件行われたが、国産ベクターを開発したのは名古屋大だけだ。
 新施設は、細菌汚染の恐れがないかなどについて厚生労働省のチェックを受けた後、今秋にも製造を始める。複数の研究機関から開発要請があり、がん細胞を殺すワクチンの開発も進めるという。
 施設責任者となる大野典也教授(微生物学)は「海外にベクター開発を要請すると正規には数千万円から1億円かかると言われるが、新施設ではその半分以下に抑えたい」と話している。 【田中泰義】
[2002-04-15-22:15]

 

◆2002/04/16 造血幹細胞の遺伝子治療 審査始まる
 NHKニュース速報

 血液の元になる細胞に遺伝子を組み込んで、生まれつき体の抵抗力が弱い子どもの病気を治す新たな遺伝子治療の計画について、国の委員会が審査を始めました。
 この遺伝子治療は、生まれつき遺伝子の一部に異常があり体の抵抗力が弱い病気の子どもを対象に、北海道大学と東北大学がそれぞれ計画しています。
 このうち北海道大学は「ADA欠損症」という病気を、また東北大学は「X連鎖重症複合免疫不全症」という病気が対象です。
 治療は、いずれも効果が持続するように血液の細胞をつくり出す「造血幹細胞(ゾウケツカンサイボウ)」という細胞に正常な遺伝子を組み込んで、体内に戻すという新しい方法で国の厚生科学審議会はきょう、作業委員会を開いて安全性や有効性について審査を始めました。
 北海道大学は平成七年から二年間にわたって、ADA欠損症の男の子のリンパ球に正常な遺伝子を組み込む遺伝子治療を行ないましたが、リンパ球に寿命があって効果が薄れるとして、この男の子にも新たな治療を行なう予定です。
[2002-04-16-18:58]

 

◆2002/11/13 <遺伝子治療>全国初、パーキンソン病で研究検討 自治医大
 毎日新聞ニュース速報

 自治医大付属病院(栃木県南河内町)は13日までに、難病のパーキンソン病の遺伝子治療に向けた臨床研究を行うかどうかを判断する審査会を学内につくった。同大神経内科の中野今治教授らの研究グループがサルを使った遺伝子治療実験に成功しており、人にも応用できると判断した。厚生労働省によると、パーキンソン病で遺伝子治療の検討を始めたのは全国で初めて。
 パーキンソン病は脳内でドーパミン(神経伝達物質の一種)を作る細胞が欠落し、運動障害を起こす病気。中野教授によると、病原性のないウイルスにドーパミンを作る酵素の遺伝子を組み込み、パーキンソン病の症状が出たカニクイザルの脳に注射したところ、脳内でドーパミンが増加し、ほぼ回復した。
 同病院は学内の遺伝子治療臨床研究審査会で承認された場合、来年度中にも国に臨床研究の承諾を求める方針。中野教授は「将来的にはアルツハイマー病などの神経疾患にも応用できる可能性がある」と話している。
 厚労省によると、昨年度末現在で6万29人のパーキンソン病患者が難病認定を受けている。 【川端智子】
[2002-11-13-19:16]


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遺伝子…
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