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Biesecker, Barbara B. et al. 1993 [抜粋]


last update: 20131224

■Biesecker, Barbara B. et al. 1993

 全体の紹介は玉井他編『バイオエシックス資料集 第1集』をご覧ください。

 幼児期・青年期に発症するリフラウメニ症候群でさえ、突然変異型p53の検査を 行うためのプロトコルができていない状態である。ハンチントン氏病の発症前診断 のプロトコルには、未成年者は検査を受けるべきではないと記されている。また検 査をするに当たって、守秘の問題や将来起こりうるリスクについて、保険に入れな いことなどを含めて、家族一人一人と詳細にわたって話し合った。さらに、本研究 の内容や、検査結果が臨床上なぜ必要なのかについて詳細に記された小冊子が手渡 された。フォローのためのカウンセリングの手紙が一人一人に送付され、各患者に 対して個別にファイルもつくられ、他人には誰のファイルかわからないようにする という配慮もなされた。病院のカルテにも最低限の来院記録のみを記し、検査結果 を明記しないという方法で本人の秘密を守った。しかし残念ながら、家族のうち一 人でもこの情報を遺伝子クリニック以外の医療関係者にあかしてしまうと、プライ バシーがもはや基本的に守られる保証はなかった。検査結果が漏れないように監視 するのは、法律上では家族の責任になっている。また、一旦BRCA1突然変異型遺伝 子の検査が臨床の場でできるようになると、検査結果もカルテに記入されるように なるだろう。すると、カルテを調査する立場にある保険会社は、リスクを回避する ために特にその検査結果に興味を持つであろう。ハイリスク家族の中でもBRCA1突 然変異型を譲り受けなかった人の場合は、検査結果を空欄にしておくとかえって怪 しまれてしまうので、結果を伝えた方が得であろう。逆に、BRCA1突然変異型の保 有者の場合、保険会社に検査結果を知られてしまうことはもちろん損であり、知ら れた上で乳がん・卵巣がんを発症してしまったときこそ大きな負担をうことになる だろう。他方でまた、予防に力を入れている保険会社であれば、検査結果を知った としても、加入者の乳がん発症率を下げて、医療コストの減少になるような医療行 為には、保険金の支払いをするであろう。

      [資料集p.65]

「乳がん・子宮がんの易罹患性をもつ家族への遺伝カウンセリング」
Barbara B. Biesecker, Michael Boehnke, Kathy Calzone, Dorene S. Markel, Judy E. Garber, Francis S. Collins, Barbara L. Weber 1993 Genetic Counseling for Families with Inherited Susceptibility to Breast and Ovarian Cancer, JAMA 269:1970-1974

訳者による要約。ただし、Abstractは全訳



REV: 20091017, 20131224
『遺伝医療と倫理』(バイオエシックス資料集 第1集) 
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