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安楽死・尊厳死:アメリカ合衆国


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Karen Ann Quinlan Case|カレン・クインラン事件
◆ナンシー・クルーザン事件(1990年判決)(↓)
◆ブーヴィア事件(↓)
Terri Schiavo Case|テリ・シャイボ事件(2005年死去)
◆Kivorkian, Jack(↓)
◆文献(発行年順)(↓)
安楽死・尊厳死:合衆国・オレゴン州
Not Dead Yet
◆幇助による自殺の合法化に反対する障害者団体(↓)

■新着

児玉 真美 2017/02/24 「ワシントンDCの「尊厳死法」施行」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/65532905.html
児玉 真美 2016/05/27 「四肢麻痺男性の恋とPAS――映画“Me Before You”に批判」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/65183308.html

児玉 真美 2015/10/06 「CA州知事、PAS合法化法案に署名」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/64853034.html

児玉 真美 2015/09/17 「CA州のPAS合法化法案議会通過に関して、情報いくつか」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/64824253.html

児玉 真美 2015/09/12 「CA州のPAS合法化法案、下院に続き上院も通過」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/64816312.html

◆2015/09/12 「カリフォルニア州議会、“安楽死”合法化法案可決」
 TBSの動画ニュースサイト News i 最終更新:2015年9月12日(土) 18時57分
 http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2585467.html
 「アメリカ・カリフォルニア州の議会は11日までに、国内でも賛否が分かれている“医師による安楽死”を合法化する法案を可決しました。知事が署名すれば成立し、安楽死を合法化する5番目の州になります。
 カリフォルニア州議会は、現地11日までに、安楽死を希望する末期がんなどの患者に対し、医師が安楽死用の薬を処方することを認める法案を上下両院ともに賛成多数で可決しました。
 薬を入手することができるのは18歳以上で、2人の医師から余命半年以内と診断されていることや、自らの意志で安楽死を選択する能力があること、2人の立会人のもと、書面を作成し、医師に提出することなどが求められます。
 アメリカでは去年、カリフォルニア州から安楽死が認められているオレゴン州へ引っ越した当時29歳の末期がんの女性が、インターネット上に公開した宣言通り、医師から処方された薬で自ら命を絶つ事案が発生。「死ぬ権利」を巡り、全米で大きな議論が沸き起こりました。
 今回の法案についても、死亡した女性の家族らが全面的に支持する一方、宗教団体や障がい者団体などが強く反対していました。
 ブラウン知事が法案に署名して成立すれば、カリフォルニア州は安楽死を合法化する5番目の州になりますが、知事は、まだ態度を表明しておらず、その行方に注目が集まっています。(12日11:45)」

◆2015/09/11 「カリフォルニア州で安楽死合法化へ、全米で6番目」
 時事通信社2015/09/11
 http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_all&k=20150911033236a

 【ロサンゼルスAFP=時事】米カリフォルニア州の下院議会で9日、安楽死をめぐる法案が承認された。同州は近く、米国で安楽死が認められる6番目の州となる見込み。同国で賛否両論を呼んでいる安楽死問題をめぐっては、末期がんの女性が昨年、尊厳死を選択したことで大きな注目を集めていた。(写真は2014年に尊厳死を選択したブリタニー・メイナードさん)
 安楽死法案の支持者の1人、ビル・モニング州議会上院議員は、「末期の疾患を患いながら、自身の個人的信念に基づいて人生最後の日々の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ、QOL)を決定する選択肢について議会に期待を寄せてきたカリフォルニア州住民にとっては、歴史的な前進だ」と語った。
 賛成43、反対34の賛成多数で可決された同法案は今週、州上院で採択される見込みだ。
 米国では、安楽死(ほう助自殺)をめぐる問題が長年、物議を醸してきた。安楽死が合法化されている州は、これまでモンタナ州、ニューメキシコ州、オレゴン州、バーモント州、ワシントン州の5州だけだった。
 カリフォルニア州では、末期の脳腫瘍を患いインターネット上に尊厳死を予告する動画を公開した米国人女性、ブリタニー・メイナードさん(29)のケースがきっかけとなり、尊厳死の話題が大きな注目を集めた。メイナードさんは昨年11月、同州サンフランシスコからオレゴン州に転居し、自らの命を絶った。
 カリフォルニア州では現在、白血病を患う別の女性が同州を相手取り、末期患者が自らの命を終えるのを医師がほう助する権利を求めて訴訟を起こしている。【翻訳編集AFPBBNews】」〔AFP=時事〕(2015/09/11-12:22)

児玉 真美 2015/08/12 「NM州の上訴裁、地方裁判所のPAS合憲判断を覆す」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/64771311.html

児玉 真美 2015/05/30 「CA州の障害者権利擁護機関DRCから、PAS合法化法案提出議員への書簡」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/64661124.html

児玉 真美 2015/01/28 「認知症の人にも事前指示書でVSED自殺を(米)」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/64468462.html

cf.◇児玉 真美 2014/11/19 「C&Cで100人以上の餓死自殺(VSED)を手伝った70歳の看護師(NY)」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/64364573.html

◆2014/10/26 『Mr.サンデー』,フジテレビ,22:00-
 http://tv.yahoo.co.jp/program/95076512/
 立岩が取材を受けました。たくさん話しましたが、たぶんとてもわずかな部分が使われるのだろうと。

◆2014/10/25 https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/525902506262405120

 「立岩真也?@ShinyaTateiwa ブリタニー・メイナードBrittany Maynard氏の医師幇助自殺予告について言及することしたくない気ありつつ、テレビの依頼あったりで話すことに。基本的なことは再三書いてきた通り。+言われていることにおかしなことがあることについて→http://www.arsvi.com/d/et-usa.htm」

◆2014/10/25 大西睦子氏の2014/10/24の文章他について:「「医師による致死薬の注射などによって患者の生命を積極的に終息させる行為の支持者までいることを知り、非常に驚きました」という箇所に驚いた。(安楽死/尊厳死…という用語法自体は基本的にはどうでもよいので――ことばをきちんと定めて使えば――措く。)知らなければ話をすべきでない、ものを書くべきではないとは思わないが、しかしそれが論旨に響いては困る。世界の一部とはいえ、それは幾つもの国で合法化されてきたのであり、それが様々を事態を起こしているから、今回のことについて議論せざるをえないのだ。(ついでに言えば安楽死を広めたいという今回の御本人についても、そのことをどのぐらい御存知なのだろうと思う。)
 その女性についての問題は「苦痛」であるとされる。そうなのだとしよう。しかし、まず安楽死というにせよ尊厳死というにせよ、そこで必要条件とされているのは(もはや)苦痛ではないということ。にもかかわらず「苦痛」を巡って書かれ始めた文章は、尊厳死/安楽死全般に及んでいっているということ。そして日本における尊厳死の主張、そして尊厳死協会が推進し、筆者も肯定しているリビング・ウィルの主張においても「苦痛」は必要条件とはされていいないということ。知らなくて書いているとは思えないとすると、話がずれでいることに気づいてなくて書いているということなのだろか。こういうふうに「論がすべっていく」 ということがこの主題に関してはたびたび起こってしまう。
 すべると言えば日本安楽死協会は日本尊厳死協会となり、その日本尊厳死協会はさらにまた社名変更、ということになっているらしいことについては  https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/522586301388701696
 そしてこのたびの事件の御本人のこと。これは自殺ではないとおっしゃっているらしいのだけれども、ここでなされるとされる行いはPAS (physician assisted suicide)なのであって、「文字通り」自殺であるとしかいいようがないのだが、このことはどの程度みなわかっているのか…。
 」(立岩真也

◆2014/10/24 「米29歳女性をめぐる「安楽死」大論争:「尊厳をもって生きる」こと」
 http://www.huffingtonpost.jp/foresight/euthanasia_b_6039600.html?utm_hp_ref=japan-world
 2014年10月25日Huffpost Japan
 投稿日: 2014年10月24日 18時20分 JST 更新: 2014年10月24日 18時20分 JST

 「ブリタニー・メイナードさん、29歳。末期の脳腫瘍のため、医師に余命が6カ月以内と告知されました。彼女は自分の病気の予後や終末期医療などについて慎重に考慮して、自宅のあるカリフォルニア州サンフランシスコ湾岸地域から、オレゴン州に転居することを決断しました。なぜなら、オレゴン州は、米国で尊厳死が合法化されている5つの州(ワシントン、モンタナ、バーモントとニューメキシコ)の1つであるためです。

ブリタニーさんの独白は全米に衝撃を与えた(YouTubeより)
 現在、彼女は愛する夫と母親と共に、オレゴン州ポートランドに住んでいます。そして彼女が自ら自分自身についての"重大な決意"をウェブ上で公にしたため、メディアでも大きく取り上げられ、いまや全米で彼女自身の尊厳死の権利について大論争が沸き起こっています。
 ただし、ここでまず注意していただきたいのは、米国で議論になっている「尊厳死(death with dignity)」は、「医師による自殺幇助」を意味します。しかし、日本で言われている尊厳死(必要以上の延命行為なしで死を迎えること)は、米国では「自然死」を意味しています。この米国での「自然死」については、リビングウィル(生前の意思表示)に基づき、「患者の人権」として、現在ほとんどの州において法律で許容されています。目下、米国で合法化の是非が議論になっている「尊厳死」は、日本で言われている「安楽死」を意味します。このあたりの違いについては、フォーサイトでの拙稿「『合法化』へと向かう米欧『安楽死』の現場」(2014年9月1日)をご参照ください。

胸が張り裂けんばかりの決断
 10月14日、ブリタニーさん自身が書いたコラム「My right to death with dignity at 29」が『CNN.com』に掲載され、約6000件のコメントが寄せられました。以後、彼女のYouTubeは840万回以上も再生され、尊厳死の権利に関する全米での大論争のキッカケとなりました。
 そのコラムによると、彼女が重大な決断をするに至った経緯はこういうことでした。
 結婚して約1年が過ぎ、夫と家族を作ることを考えていたとき。彼女は数カ月間の頭痛による衰弱に苦しんだ後、今年の元旦に、脳に腫瘍があることを知らされました。そして、 腫瘍の増殖を抑えるために、部分的な開頭術による脳の側頭葉の部分切除を行いました。
 ところが4月、脳腫瘍の再発だけでなく、腫瘍がもっと急速に進行していることを知りました。そして医師から、もはやその進行は止められない状態であり、このままだと余命がわずか6カ月以内であるという残酷な事実を告げられました。多くの脳腫瘍治療には放射線照射が必要ですが、医師は、彼女の脳腫瘍が非常に大きいため、「全脳照射」という治療を推奨しましたが、彼女は、それによって脱毛、皮膚炎、さらに通常の日常生活が送れなくなるなどの深刻な副作用があることを知りました。
 その後彼女はいくつもの病院、医師の診察を受け、数カ月かけて自らの病状と治療方法について出来うる限りの情報を集めました。その結果、病気が治癒することはないこと、医師が推奨した治療は自分に残された時間を破壊することになると知ります。さらに、仮に自宅のあるサンフランシスコ湾岸地域のホスピスケアで緩和治療をしても、そのうちにモルヒネでもコントロールできない激痛、それに伴う人格の変化、そして身体を動かすこともままならないどころか会話もできず、愛する夫や家族、友人などを認識することすらできなくなる苦しみに陥ることも......。しかも、そんな見るに忍びない自分に何もしてやれず、ただじっと見守ることしかできない家族のことを考えました。
 そうした苦悶の日々を重ねた挙げ句、最終的にブリタニーさんと家族は、胸が張り裂けんばかりの思いで、究極の結論である「尊厳死」に至りました。ブリットニーさん自身が医師に要求し、致死量の薬剤の処方箋を受け取り、肉体的かつ精神的なあらゆる苦痛に耐えられなくなったときに自分で摂取して、「生きる」プロセスに終止符を打つ――。つまり、「医師による自殺幇助」です。
 ブリタニーさんは、最終的に「尊厳死」が自分と家族のための最良の選択肢であると判断しました。そのために、尊厳死が合法化されているオレゴン州に移住したのです。

「私は死にたくない」
 ブリタニーさんは、『CBSテレビ』のインタビューで次のように答えています。
「私は死にたくないのです。もし誰かが魔法の治療法で私の命を救ってくれるなら、私はそれを選びます。そうすれば、私は、夫と子供をもつことができるのです」
 ブリタニーさんの選択を「自殺」と批判する人もいますが、彼女は、自分は死にたくて自殺をする人と違う、自分は死にたくない、ガンに"殺される"のだということを強調しています。
 と同時に彼女は、頭蓋骨が割れるような頭痛や絶え間なく襲いかかるてんかん発作、そして会話もままならず、最愛の夫の顔を見ていながら彼の名前を考えられなくなる、といった堪えがたい現実を経験したことのない人が自分の決断を批判することは不当だと訴えるのです。
 ブリタニーさんの母親は、当初は、どんな状況になっても娘の世話をすることが誇りだと思っていました。が、今は、娘の選択を理解しています。ブリタニーさんは、
「子供を失いたい母親などいません。誰も自分の娘が死のうとしていることを聞きたくないのです」「私の母は、苦しんでいる私ともう1日でも一緒に過ごしたいと言うほど、利己的ではありません」と言います。そしてブリタニーさんの夫も、当初は彼女のそばにずっと一緒にいることを望んでいましたが、今は、人生の「長さ」ではなく、その「充実ぶり」の重要性を理解しています。
 ブリタニーさんはこう言います。
「私にとって、11月1日が"その日"だと思います。もしその日まで生きられていたらですが......。でも、その日までに私自身の考えが、決心が変われば、私は11月2日になっても生きていてもいいし、あるいはそれでも、すでにその日に私はいないかもしれまん......。そしていずれにしても、それは私の選択なのです。私のこの選択に反対している人は、私が"自分で死ぬ日を決めている"という大きな誤解をしています。そうではありません。私は"生きる日"を決めたいのです」
 ブリタニーさんはいま、医師から処方箋を受け取り、自身の死をコントロールできることで、平安な心持ちを感じています。
 そして彼女は、家族と一緒に10月26日の夫の誕生日を祝うことを計画しています。
その後、状態が劇的に改善しない限り、最愛の夫、母、義父と親友たちに「I love you」と伝え、平安のうちに、2階の自分の寝室で、処方された薬を服用する予定です。

欠かせない「終末期医療」の議論
 ちょうど9月17日から21日にかけて、米国イリノイ州シカゴで、「死の権利協会世界連合」の国際大会が開催されました。2年おきに開催されるこの大会には、世界26カ国から、尊厳死やリビングウィルの法制化問題に取り組んでいる49の団体が参加し、医療制度や文化、宗教など背景のまるで異なる人々が「死の権利」について議論し合います。
 欧米社会では、認知症と自己決定権の問題が深刻であり、今回もリビングウィルの重要性が議論されていました。
 また、欧米における「死の権利」の議論は「尊厳死」の合法化、すなわち医師による自殺幇助を法律で認めるか否かに向かっています。が、今回の大会に参加し、さらに「自発的積極的安楽死(voluntary active euthanasia)」と呼ばれる、医師による致死薬の注射などによって患者の生命を積極的に終息させる行為の支持者までいることを知り、非常に驚きました。
 ちなみに、日本からは日本尊厳死協会の岩尾總一郎理事長と長尾和宏副理事長が参加され、岩尾理事長は「高齢化社会日本における、リビングウィル法制化への取り組み」と題した講演をされました。リビングウィルの実現率が0.1%と極端に低い日本の現状や、世界で最も高齢化社会が進む日本においてリビングウィルの法制化を進めるための苦闘を説明されました。また、副会長の長尾先生は、国民皆保険制度や在宅医療制度、在宅緩和ケアなどの技術がある日本では、「自宅での平穏死」こそ、日本の文化に適した死であることを提唱されていました。ただし、日本尊厳死協会は、医師による自殺幇助は支持していません。
 私自身は、終末期を迎えている患者さんの権利を守るために、リビングウィルの法制化は必須だと考えています。まだまだリビングウィルが定着しない日本ですが、今後、尊厳をもった自分らしい人生を送るために、自己決定権による終末期医療の議論は欠かせないと思います。

大西睦子
内科医師、米国ボストン在住、医学博士。1970年、愛知県生まれ。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月からボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、2008年4月からハーバード大学にて食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。」

児玉 真美 2014/10/24 「医師の自殺幇助は「社会的行為」・・・Brittany Maynard事件」
 http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/64324863.html

◆2014/10/15 『情報ライブ ミヤネ屋』,読売テレビ・日本テレビ…
 立岩が出演してほんのわずかのことを話しました。何を話したか(話すことを準備していた)お知らせできればと。

◆2014/02/02 「脳死妊婦の生命維持に待った!尊厳死Vs中絶で米国世論二分」
 産経新聞2014年2月2日(日)21:16
 http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20140202539.html
 →安楽死・尊厳死:米国
 「脳死に陥った妊婦の生命維持装置を停止するのは、胎児の命を守る医師の職業上の義務に違反するのか−。尊厳死に世論を二分する中絶の是非が絡み合った議論が、全米で大きな注目を集めた。生前の妊婦の意向を尊重して生命維持装置の停止を求める家族側。州法を根拠に生命の維持を譲らない病院側。宗教観や法解釈が交錯した問題の判断は裁判所に委ねられ、今月24日、注目の判断が下された。
 米メディアによると、救急救命士のマリース・ムニョズさん(33)は昨年11月26日午前2時ごろ、自宅の台所で倒れているのを同じく救急救命士の夫、エリックさんに発見され、病院に搬送された。マリースさんは妊娠14週目だった。
 すでに意識はなし。肺動脈に血栓が詰まる肺塞栓(そくせん)症とみられ、神経の動きもない。感謝祭の当日に脳死と判定されたという。米メディアによると、州法で医学的に「死亡」と認定されるレベルだった。
 エリックさんやマリースさんの両親は、生命維持装置の使用をマリースさんが以前から望まず、意識が回復する見込みがなければ装置を外してほしいと普段から語っていたと主張し、人工呼吸器の停止を病院側に求めた。
 ところが、搬送されたテキサス州フォートワース近郊のジョン・ピーター・スミス公共病院は、妊婦のマリースさんの人工呼吸器を外すのは「妊娠中の患者に対する生命維持のための治療を停止、中断してはならない」とする州法に違反するとして拒否。マリースさんの家族は1月14日、病院側を提訴した。
 現場となったテキサス州は、共和党が強い保守的な土地柄で、宗教的な価値観から中絶反対派も多い。マリースさんの生命維持装置が止まれば、胎児の命も同時に奪われ、実質的な中絶になる。
 尊厳死に端を発した問題は、米国は二分する中絶への賛否とも絡み合い、家族の意志とは裏腹に全米の関心を集めた。
 政界も無反応ではいられない。地元紙テキサス・トリビューン(電子版)によると、2012年大統領選で共和党の指名を争ったテキサス州のリック・ペリー知事の報道官は「家族が直面する悲劇と心痛を理解する」とした上で、「幼い命が危険にあり、その命を守る州法が順守されねばならないことを覚えておく必要がある」と電子メールで取材に回答したという。
 米紙ニューヨーク・タイムズは、中絶反対派の幹部の話として、「子どもが無事に生まれる希望を持ちながら、脳死状態でも子どもを生存させるための治療を続けることに賛成する」とのコメントを伝えた。
 一方で、マリースさんの母、リン・マチャドさんは「これは反中絶でも中絶を選択する自由の問題でもない。私たちの娘の望みがテキサス州によってかなえられないことが問題なのだ」と述べ、家族の意向を無視して問題が政治色の強い中絶の賛否にシフトしたことへのいらだちを隠さなかった。
 こうした中、胎児に関する新たな事実が家族側の弁護士によって1月22日、明らかにされる。マリースさんは発見されるまで1時間以上も呼吸停止の状態だったため、ほぼ同じ時間だけ胎児も酸欠状態に置かれた。弁護士は胎児の容体に「明確な異常」が認められると指摘。生存しても水頭症や心肺の疾患、失明など重度の障害が残る可能性が極めて高いと訴えた。
 病院側の法解釈の誤りを指摘する声も出始めた。米公共ラジオ(NPR)が州法の提案者に取材したところ、法律は「昏睡(こんすい)状態」や「植物状態」の妊婦を想定したもので、すでに医学的、法的に死亡した妊婦には適用されないと述べ、病院の対応は「法律を読み違えている」と語ったという。
 全米が注目した州裁判所の判断は、24日に下された。裁判官は法案提案者の解釈通り、すでにマリースさんが医学的、法的に死亡しており、死者に州法は適用されないと判断。家族側の主張を認め、生命維持装置を止めるよう病院側に命令した。
 希望が通ったとはいえ、妻の死が確定した事実は夫のエリックさんを打ちのめしたのだろう。NPRによると、普段から「自分の妻の命が止まることを望むに至るのは、辛い道のりなのだ」と地元メディアに吐露していたエリックさんは、法廷で地裁の判断を聞くと顔を手で覆って泣き崩れたという。
 病院側は地裁の命令を受け入れ、26日午前11時半ごろ、マリースさんの家族が見守る中で生命維持装置が止められた。
 米メディアによると、死亡した胎児は女児だった可能性が高く、遺族は「ニコール」と命名し、その死を悼んだという。 」

◆2014/01/26 「胎児の命めぐり米で論争 脳死妊婦の尊厳死認める」
 2014/01/26 15:29 47NEWS 共同ニュース
 http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014012601001454.html
 →安楽死・尊厳死:米国
 【ニューヨーク共同】脳死状態となった米南部テキサス州の妊婦の尊厳死を希望する家族が「妊婦は生命維持装置につなぐことが州法で義務付けられている」とする病院を相手取って訴訟を起こし、同州の裁判所は25日までに、死亡を宣告して生命維持装置を外すよう病院側に命じた。
 妊婦は脳死状態になる前、強制的な延命措置は望まない考えを示しており、自己決定権を優先するか、胎児の命を重視するかをめぐって米社会で論争に発展していた。
 米メディアによると、妊婦はマリース・ムニョスさん(33)。昨年11月に自宅で倒れ、病院で脳死を宣告された。【共同通信】」

……

◆2004/11/10 「米司法省、オレゴン州の安楽死禁止求め最高裁に意見書」
 Nikkei net 2004/11/10(18:30)

 「【ワシントン支局】アシュクロフト米司法長官は9日、「安楽死」を全米で唯一認めているオレゴン州で医師が安楽死をほう助できないようにするため、連邦最高裁が同長官に禁止の権限を与えるよう求める意見書を提出した。オレゴン州には医師による末期患者の自殺ほう助を認める「尊厳死(安楽死)法」があり、1998年以降、同法に基づいて170人以上が安楽死を選んでいる。
 アシュクロフト長官は2001年に「自殺ほう助は正当な医療行為ではない」として、安楽死に使われる薬を医師に配布することを禁ずる命令を出した。サンフランシスコの連邦控訴裁は今年5月、この命令を違法だと判断。今回の意見書は、控訴裁の判決を覆し、長官の命令を有効とするよう求めている。ブッシュ大統領の支持基盤の1つであるキリスト教保守派は、妊娠中絶と並んで安楽死の禁止を主張している。」

◆2009/12/26 "Physician-Assisted Suicide: A Perspective From Advocates For People With Disability", Disability and Health Journal(安部彰 訳)
◆Singer, Peter 2009/07/15 "Why We Must Ration Health Care", New York Times Magazine, July 15, 2009

1906   オハイオ州議会 激しい苦痛を伴う不治の病にかかっている患者はすべ
     て、専門委員会の提案に基づき死亡させてもよいという積極的安楽死法
     案を可決したが、連邦政府はこれを認めず(Sarda[1975=1988:214])
19??    アイオワ州議会 上と同様の状況であれば、重度の心身障害者から生命
     を奪うことを認める 連邦政府はこれを認めず
     (Sarda[1975=1988:214])
1937   アメリカ安楽死協会設立 会長:ポッター Charl F. Potter 神父
     末期状態の患者だけでなく非常に重度の心身障害のある新生児、慢性的
     な精神病者にも認められるべきだと主張
1967   安楽死教育評議会設立
     (日本安楽死協会[197704])
1969   フロリダ州議会に尊厳死の権利についての法案提出される
     (阿南[1977:49])
1975   ハワイ、モンタナ、ウィスコンシン州で積極的安楽死を内容とする尊厳
     死法案が提案される(阿南[1977:94,98])
197504  カレン・クィンラン事件発生*
1976   他の13州でも法案が提出される(阿南[1977:94])
1976   サイケヴィッチ事件
1976   カリフォルニア州で法制化される(自然死法 Natural Death Act)
     2人の証人の立会いと署名(血族・親族・医療に関わる人は除く)
     (町野[1984:245-247])
19760331 ニュージャージー最高裁判所1976年3月31日判決(カレン・クィンラン事件)」
19770101 カリフォルニア州自然死法 Natural Death Act施行

1980   ヘムロック協会創設
1982   ベビー・ジョン・ドゥー(Baby John Doe)事件
 「米国インディアナ州ブルーミントンで一九八二年四月九日に生まれたダウン症(二一トリソミー=二一番の染色体が一本多い)の男の子、食道閉鎖と気管食道瘻を併発、両親は手術を受けさせない決定をした、病院が裁判所に判断を仰ぎ、審理中、四月一五日死亡」(立岩『私的所有論』p.206)
198410  児童虐待予防修正法(←ベビー・ジョン・ドゥー(Baby John Doe)事件
198504  児童虐待法施行規則(←198410児童虐待予防修正法)
「この「規則」では「@患者の意識が永久に消失している場合。A患者の死が不可避的であり、その子にとって治療が不毛な場合。B患者にとって治療が実質上不毛で、かつ人間的でない場合」に限り、生命を維持する医学的治療を差し控えたり、停止することが認められた。(高木[1991:345-346]、この規則についての新聞報道を受けた批判として山尾謙二[1985→1986]、新聞の誤報道の指摘も含めより詳しくは秋葉[1987]、また八五年の規則への批判としてMoscop ; Saldahna[1986]。)」(立岩『私的所有論』p.206)

198506  までに36州 メリーランド州の場合:「死ぬ権利」を主張した書類に健
     康なうちにサインし、家族以外の2人の承認のサインを得る 2人の医
     師が「末期で死が切迫している」と判断すれば、昏睡状態でも宣言は有
     効(『朝日』85.8.29)
19850611 カレン・クインラン、肺炎による呼吸困難で死去

19900604 ジャック・キヴォキアン(Jack Kivorkian)自殺幇助始める
19900625 連邦最高裁判所1990年6月25日判決(クルーザン事件)
199111  ワシントン州、世界初の「医師に安楽死を要求する権利法案」法制化見送り
199112  患者の自己決定法施行
199411  オレゴン州、安楽死法制化、後に反対派から連邦地裁へ提訴
199508  連邦地裁94年のオレゴン州安楽死法案の差し止め命令を出す。
199710  オレゴン州安楽死法案、違憲差し止め命令撤回


 
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■ナンシー・クルーザン事件(1990年判決)

◆以下は、立山龍彦『自己決定権と死ぬ権利』(1998、東海大学出版会)
 pp.45-47

「第3節 死ぬ権利
 1 ナンシー・クルーザン事件
 @ 事案
 交通事故による脳の障害で植物状態となったナンシークルーザン Nancy B. Cruzan(米国ミズーリ州、事故当時25歳の女性)は、昏睡状態のまま7年が経過した。31歳のナンシーは、自発呼吸はできるもののフィーディング・チューブ feeding tube で水分・栄養等を補給しており、生命維持治療さえ施せばこのままの状態で何等苦痛を感じることなく、30年以上は生き続けるであろうと医者団が認めていた。回復の見込みはないとの医師の判断の下に、ナンシーの両親は自分の娘がこのような状態で生き続けることを決して望まないであろうとして、彼女のフィーディング・チューブを取り外し、ナンシーを死なせる許可をミズーリ州高等裁判所に求めたのであった。同高裁は両親の訴えを認め、チューブの取り外しの許可を与えたが州側が上告したため、舞台は同州最高裁判所に移ることになった。(23)
 A ミズーリ州最高裁判所判決
 原告である両親は、「ナンシーの憲法上の自由の権利が、フィーディング・チューブを胃の中に差し込まれ無理やり栄養をとらされている事実から、彼女を守ることができなければその権利は何の意味も有しない。ナンシー自身は植物状態であるから、その生命維持医療措置を拒否できないが、両親は娘のために行動することができる。」と主張した。
 ミズーリ州最高裁の判決は、ナンシーの家族および友人達による「あいまいで当てにならない」彼女の意思に(p.45)ついての記憶は、ナンシーの栄養補給を止めさせる十分な理由にはならないとした上で、「州が重視しているのは生活の質の点ではない……もし、生活の質が問題になるのなら、あらゆる種類の身体障害者は、州が自分達の生命を断とうとしていると思うに違いない。州が重視していくのはむしろ生命そのものであり、絶対的なものである。」とした。そして、ナンシー自身は延命医療措置を拒否する権利を有するが、その両親は娘がそれを望んでいたということを法廷で証明し得なかったとして、両親の訴えを4対3で退けた。
 この判決を不服として、ナンシーの両親は連邦最高裁判所に提訴したため、同最高裁はアメリカ合衆国憲法の自由の保障と、そこに必然的に含まれるプライバシーの権利が、自費のために餓死させる権利を含むかについて判断しなければならなくなり、連邦最高裁で審理される最初のケースとなった。
 B 連邦最高裁判所判決
 1990年6月25日、連邦最高裁は9人の裁判官全員一致で、「不治の病の患者あるいは末期患者は合衆国憲法上の権利(修正第9条)として、栄養や水分の補給を含む生命維持装置の取り外しを求めることができる」すなわち、「死ぬ権利」があることを認める歴史的判決を下した。しかし同判決は、この権利は絶対的なものではないと述べ、生命維持医療措置の拒否の決定が当人の意思が明確な時になされ、かつ合法的である場合にのみ認められるとした。従って、家族もしくは医師は当人の医師が明確に認識できない場合は、そのような選択をなすべきではないと明示した。
 そして、ナンシー・クルーザンのケースに関して連邦最高裁は、ナンシーが自分の死をもたらすフィーディング・チューブの取り外しを意欲していたか否かは明確ではなく、その証明もないとして、両親の訴えを5対4で退けたのである。これはミズーリ州法が、生命維持装置取り外しの前提として、本人が死を望んでいる事実を示す(p.46)「明白かつ説得力のある証拠」、例えばリビング・ウィルのようなものを必要としていることを、連邦最高裁が認定したということである(24)。連邦最高裁はこの事件以前において、死の結果をもたらす医療措置の拒否が、合衆国憲法上で「死ぬ権利」として認められているということについては、何らの判断も示していなかった。すなわちそれらの問題は、州法によって規定されてきたのである。連邦最高裁は、合衆国憲法の法的手続条項において、少なくとも制限された「死ぬ権利」が定められており、この権利は今や国民的権利となりすべての州で尊重されるべきであることが保障されているとした。
 連邦最高裁によってフィーディング・チューブの取り外しを否定されたナンシーは、その後彼女の元同僚が、ナンシーが植物状態になったら生きていたくないと話をしていた事実を証言したため、1990年12月14日ミズーリ州ジャスパー郡の検認裁判所は、チューブの取り外しを認める決定をした。そしてナンシーは12日後の同月26日に死去したのである。このような背景の下に、患者の意思と自由を法的に保護する要求がアメリカ全体に広がりをみせて、連邦政府は1991年12月1日「患者の自己決定権法」The Patient Self-Determination Act を施行するに至った。」

◆クルーザン事件年表 香川[2006:315-319]

■文献・資料

◆19900625 「連邦最高裁判所1990年6月25日判決(クルーザン事件)」
 町野朔他編[1997:194-200]

大野 和基  19910613 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか」
 『週刊文春』33-22:191-196 ※COPY
◆―――――  19910620 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・2」
 『週刊文春』33-23:179-184 ※COPY
◆―――――  19910627 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・3」
 『週刊文春』33-24:186-195 ※COPY
◆―――――  19910704 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・4」
 『週刊文春』33-25:77-82 ※COPY
◆―――――  19910711 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・5」
 『週刊文春』33-26:47-52 ※COPY
◆―――――  19910718 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・最終回」
 『週刊文春』33-27:49-54 ※COPY
◆立山 龍彦 1998 『自己決定権と死ぬ権利』、東海大学出版会
◆香川 知晶 20061010 『死ぬ権利――カレン・クインラン事件と生命倫理の転回』,勁草書房,440p. ASIN: 432615389X 3465 [amazon][boople] ※, be.d01.et.(講更新)


 唄:プライバシー権と言わない。Liberty Interestと言う。
 (これもどういう意味があるのか。)
 本人の意思を必要とする。
 それを強調することによって、自己決定権を強く認めた判決とみるか
 外させないために、それを強調しているのか
 その評価が微妙なところ
 だが 連邦裁判所から 州にかえって 3人の証言が クリア・アンド・コンビンシングなものとして 取り外しを認めた。


 
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■ブーヴィア事件

◆香川[2006]第13章「治療停止の政治学:有能力者、ベビー・ドゥ規則、クルーザン事件」2「ベビー・ドゥ規則:新生児の治療停止と中絶の問題」
 「障害者団体の懸念 一九八三年にブーヴィアの訴えを退けた第一ブーヴィア判決について、ペンスは「発達障害者擁護会(Advocates for the Devlopmantally Disabled)の主張が影響を与えていたことを指摘している(PENCE, 64[1,94])。判決が訴えを退ける理由とした第三者の利益とは、主に身体障害者の利益を指していた。「発達障害者擁護会」のメンバーは、事件が報道されると、ブーヴィアの入院していた都総合病院の外に集まり、ブーヴィアが決心を変えるように求めて、夜を徹して集会を開いていた。そのグループの弁護士は、「こうした障害をもつ人は誰でも、自殺を考えることがあるものです。会のひとびとが恐れているのは、もしエリザベスが自殺すれば、多くの障害者が、《なんてこっか、わたしも戦うのをやめよう》、といい出しはしまいかということなのです」と語っていた。新聞には身体的な困難があるからといって、人生が生きるに値しないとする考え方には「大量虐殺の含み」があるとする障害者の声が寄せられ、「障害者擁護法律協会(Law Institute for the Disabled)」の弁護士は、ブーヴィア事件を社会貢献のできないとされた障害者の「社会問題」と呼び、ブーヴィアが必要としているのは、尊厳をもって生きることができるための手助けなのだ」と論評した(HUMPHRY, 151)。他方、ブーヴィアの弁護士は、そうした介入はプライバシーの権利と結社の自由に対する明らかな侵害だと批判した。[…]
 たしかに、ブーヴィアの請求が障害者団体の人たちにとって脅威であったことは、想像に難くない。判決が本人の意思を無視して強制栄養を要求し、病院を恐ろしい拷問室と化すものだと強く批判したアナスでさえ、ブーヴィアは決心を変えて、経口栄養を続けるべきだと述べている(ANNAS8,21)。しかし、三年後に、ブーヴィアの訴えは認められた。ペンスがいうように、ブーヴィアは「判断能力のある成人の患者が、死ぬために医療処置を拒否するという憲法上の権利をもつという最初の明確な言明……を引き出した」(PENCE, 69[1,101])。その背景には、カリフォルニア州自然死法の成立時と同じ事情が指摘できる。クインラン事件以降、世論は治療停止の権利を肯定する方向に大きく傾き、その流れはもはら抗しがたいまでになっていた。」(香川[2006:304])

◇香川 知晶 20061010 『死ぬ権利――カレン・クインラン事件と生命倫理の転回』,勁草書房,440p. ASIN: 432615389X 3465 [amazon][boople] ※, be.d01.et.(講更新)


 
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■H.ワシントン州「イニシアティブ119」法案否決 1991

 全米で初めての「医師による末期患者の自殺幇助を認める法案」が、住民投票でその法制化の可否を問われた。内容は@2名の医師が余命6ヶ月以内と診断、A知的精神的判断能力のある成人のB自主的な要求、C親類以外の2名の証人の前で死ぬ意思を表示する宣言書を書く、等の条件を満たせば医師は自殺幇助罪に問われないとするものである。結果は賛成46%で法制化は失敗に終わった。

◆成田薫編『年表が語る協会20年の歩み』.pp96‐97、日本尊厳死協会、1996.
◆ジャネット・あかね・シャボット、星野一正(監修)『自ら死を選ぶ権利――オランダ安楽死のすべて』pp227‐231、徳間書店、1995.

 
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■Kivorkian, Jack

 「ジャック・キヴォーキアン 1928年生まれ。ミシガン州の医師。医師による自殺介助を法制化する活動とともに、90年からは自ら開発した自殺装置による自殺介助を実行し、これまで120人以上の患者が彼のもとで自殺。数度にわたって逮捕、告訴、医師免許も剥奪されるが、いずれも無罪評決を受ける。98年11日、安楽死を望む末期患者に自ら薬物を注射し、その場面のビデオを米CBSテレビ「60ミニッツ」で全米に放映、議論を巻き起こす。通称Dr.Death」(『死を処方する』の「帯」より)

◆「ジャック・キヴォキアン(Jack Kivorkian)関連事件年表」
 町野朔他編[1997:111-118]


◆1986   オランダでの安楽死のことを知る。
 「私が初めて、この注目すべき「良識の勝利」のことを知ったのは、一九八六年のことである。私は、死刑囚に対して実験を行なうという私のコンセプトを、安楽死を選択した患者にまで拡張するという案を思いついた。」(Kivorkian[1991=1999:260])

◆1987   オランダ訪問
 「私は、まず自由安楽死協会のオフィスに向かった。それから一週間というもの、私はこの協会の理事といろいろな話し合いをして過ごした。そしてこの国に於いても、安楽死は依然として非合法であり、国会はこれを合法化するつもりもない、ということを聞いてやや落胆した。この公然たる偽善は、控えめに言っても、苦々しいものであった。
 失望はそれだけではなかった。私の長年の課題であった、全身麻酔下の実験という考えが、それとなく拒絶されてしまったのだ。理事は、私の考えはあまりに過激すぎる、と懸念を表明した。」(Kivorkian[1991=1999:260])

◆19900604 Janet Adkins(54歳、アルツハイマー病)の自殺を幇助。Adkinsはキヴォキアンの自動車の中でキヴォキアン考案の自殺装置により薬物を注射して死亡【1件目】
 〜
◆19961023 キヴォキアン、Barbara A. Collins(65歳、卵巣がん)の死体を病院に運び込む【45件目】
 〜
◆19970203 Elaine L. Day(79歳、筋萎縮性側索硬化症)の死体が検視官事務所に注射中のキヴォキアン所有の自動車の中で発見される。また、Lisa Lansing(42歳、クローン病)の死体が同人の友人によって病院に運び込まれる。両件に関するキヴォキアンに対する捜査は、いずれも証拠不十分で打ち切られた。
 (上記「年表」より)

◆Kivorkian, Jack 1991 Prescription Medicine: The Goodness of Planned Death, Prometeus Books, New York=19990305 松田和也訳,『死を処方する』,青土社、351+11p. ISBN-10: 4791756991 ISBN-13: 978-4791756995 2200 [amazon][kinokuniya] ※

1 処刑、七月一三日
2 その時、実際に起こっていたこと
3 ある理念の復活
4 宣告される死の種類
5 最善の処刑法
6 サクラメントからの凶報
7 死刑囚監房からの声
8 「まるでサーカスの曲芸だ!」――ある「生体実験」のエピソード
9 「ヒポクラテスの誓い」(ヒポクラティック・オウズ)ならぬ「偽善的な馬鹿ども」(ヒポクリティック・オウフス)
10 日の下に新しきものは無し――死刑囚と医学の関係小史
11 宇宙時代の医学、石器時代の倫理
12 道徳に対するリンチ
13 死の谷の慈悲殺――安楽死と自殺介助
14 真の慈悲とは何か
15 医殺(メディサイド)の誕生
 自殺機械「マーシトロン」を用いたJanet Adkinsに対する自殺幇助についての記述
 「今やいわゆる生命倫理学者たちから賞賛されるまでになった安楽死推進派の人々だが、彼らかの意図と行動が極めて臆病で、秘密主義で、場合によっては詐欺的なものであるのに対して、私の行動はオープンで、倫理的で、合法的で、そして完全かつ妥協を許さない誠実さを保っていた。」(p.310)
16 予後―医殺――進歩か、堕落か
 「死刑囚に、自分自身でマーシトロンを操作するかどうかを選ぶ権利を与えるのだ。その死刑囚にその価値があるかどうかは別にして、そのような形で(p.322)当人の自己決定権を尊重することによって、処刑という行為をより人道的なものにし、それを行わせている社会の道徳性を高めることができるだろう。
 多くの(おそらくは殆どの)死刑囚がその選択肢を歓迎するだろう、と私は確信している。少なくともそれによって、ほんの僅かではあるが、当面の状況と自分の死のプロセスを自分自身で統御することが出来るのだから。」(p.323)
17 医学のスペクトルの完成
補遺
翻訳者あとがき
参考文献
索引

■言及

◆Hendin, Herbert 1997 Seduced by Death: Doctors, Patients, and Assisted Suicide、Georges Borchardt, Inc.=20000330 大沼安史・小笠原信之訳、『操られる死――<安楽死>がもたらすもの』、時事通信社、323p. 2800
 pp.39-43
◆立岩 真也 2001 「死の決定について・1」
 『看護教育』42-4(2001-4)

 
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■文献(発行年順)

◆立山 龍彦 1998 『自己決定権と死ぬ権利』,東海大学出版会、153p.、2200
星野 一正 19971130 「オレゴン州尊厳死法の住民投票による容認」 『時の法令』1558:62
◆星野 一正 19970730 「自殺幇助を禁ずる州法は合憲と米国最高裁判所」,『時の法令』1550:60
◆星野 一正 19970530 「米国議会にて自殺幇助医療費制限法制定」,『時の法令』1546:55
◆星野 一正 19960630 「緩和ケアをめぐる問題――裁判における医師による自殺幇助容認の傾向」,『時の法令』1524:62
大野 和基  19910613 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか」,『週刊文春』33-22:191-196 ※COPY
◆―――――  19910620 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・2」,『週刊文春』33-23:179-184 ※COPY
◆―――――  19910627 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・3」,『週刊文春』33-24:186-195 ※COPY
◆―――――  19910704 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・4」,『週刊文春』33-25:77-82 ※COPY
◆―――――  19910711 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・5」,『週刊文春』33-26:47-52 ※COPY
◆―――――  19910718 「ナンシー・クルーザンの「死ぬ権利」――安楽死・尊厳死は許されないのか・最終回」,『週刊文春』33-27:49-54 ※COPY
◆宮野 彬 1986 「アメリカの二〇を超える尊厳死法とわが国における立法の問題」,『年報医事法学』1
◆Sarda, Francois 1975 Le droit de vivre et le droit de mourir, Seuil=19880229 森岡恭彦訳、『生きる権利と死ぬ権利』,みすず書房、345p. 2000
◆日本安楽死協会 編 1979 『アメリカ八州の安楽死法(原文全訳)』,人間の科学社 2000
◆日本安楽死協会 編 19770430 『安楽死とは何か――安楽死国際会議の記録』,三一書房、209 p. 950

◆Hendin, Herbert 1997 Seduced by Death: Doctors, Patients, and Assisted Suicide Georges Borchardt, Inc.=20000330 大沼安史・小笠原信之訳、『操られる死――<安楽死>がもたらすもの』 時事通信社、323p. 2800 ※

◆アメリカ(オレゴン地区)連邦地方裁判所 19950803 「アメリカ(オレゴン地区)連邦地方裁判所1995年8月3日判決(オレゴン州尊厳死差止訴訟)」
 町野朔他編[1997:098-102]
◆アメリカ(第九巡回区)連邦控訴裁判所 19960306 「アメリカ(第九巡回区)連邦控訴裁判所1996年3月6日判決(ワシントン州自殺幇助規定違憲訴訟)」
 町野朔他編[1997:102-109]
◆アメリカ(第二巡回区)連邦控訴裁判所 19960402 「アメリカ(第二巡回区)連邦控訴裁判所1996年4月2日判決(ニューヨーク州自殺幇助規定違憲訴訟)」
 町野朔他編[1997:109-111]
◆(Kivorkian, Jack)  「ジャック・キヴォキアン(Jack Kivorkian)関連事件年表」
 町野朔他編[1997 :111-118]

◆清水 一成 19970420 「アメリカの尊厳立法と尊厳死判例 1尊厳死立法 資料解説」
 町野朔他編[1997:153-154]
◆カリフォルニア州 1976 「1976年カリフォニルア自然死法」(抄)
 町野朔他編[1997:155-158]
◆アメリカ合衆国 1989 「1989年統一末期病者権利法」
 町野朔他編[1997:158-166]
◆カリフォルニア州 1994 「1994年カリフォニルア委任状法」(抄)
 町野朔他編[1997:166-170]
◆カリフォルニア州 1994 「1994年カリフォニルア自然死法」
 町野朔他編[1997:170-177]
◆清水 一成 19970420 「アメリカの尊厳立法と尊厳死判例 2尊厳死判例 資料解説」
 町野朔他編[1997:178-179]
◆ニュージャージー最高裁判所 19760331 「ニュージャージー最高裁判所1976年3月31日判決(カレン・クィンラン事件)」
 町野朔他編[1997:180-182]
◆マサチューセッツ最高裁判所 19771128 「マサチューセッツ最高裁判所1977年11日28日判決(サイケヴィッチ事件)」
 町野朔他編[1997:183-185]
◆カリフォルニア州控訴裁判所 19860416 「カリフォルニア州控訴裁判所1986年4月16日判決(ブービア事件)」
 町野朔他編[1997:185-189]
◆ニュージャージー最高裁判所 19850117 「ニュージャージー最高裁判所1985年1月17日判決(コンロイ事件)」
 町野朔他編[1997:189-194]
◆連邦最高裁判所 19900625 「連邦最高裁判所1990年6月25日判決(クルーザン事件)」
 町野朔他編[1997:194-200]

■National Disability Groups Opposed To Legalization of Assisted Suicide
 (幇助による自殺の合法化に反対する障害者団体)
 The List = http://www.notdeadyet.org/docs/ndyopposed.htmlより(200102)

◆American Disabled for Attendant Programs Today (ADAPT) - ADAPT advocates for the civil rights of people with disabilities, old and young, to receive long term care services in the community instead of being warehoused in nursing homes and institutions.

◆Association of Programs for Rural Independent Living (APRIL) - APRIL is the national association of centers for independent living, statewide independent living councils, and other organizations working with people with disabilities living in rural areas.

◆Disability Rights Education and Defense Fund (DREDF) - DREDF is the leading force in education and legal enforcement of the ADA and other laws that prohibit discrimination based on disability.

◆Justice For All - Justice For All and its extensive email network were formed to defend and advance disability rights and programs in the U.S. Congress.

◆National Council on Disability - The National Council on Disability (NCD) is an independent federal agency making recommendations to the President and Congress on issues affecting 54 million Americans with Disabilities.

◆National Council on Independent Living - NCIL is the national association of hundreds of consumer-controlled Centers for Independent Living, non-residential grassroots advocacy and service organizations operated by and for people with disabilities.
 (全米自立生活協議会)

◆National Spinal Cord Injury Association - The National Spinal Cord Injury Association is an international nonprofit organization for people living with spinal cord injury. Their mission is to enable people with spinal cord injuries to make choices and take actions so that they might achieve their highest level of independence and personal fulfillment.
(全米脊髄損傷協会)

Not Dead Yet - NDY is a grassroots disability rights group formed to oppose the movement to legalize assisted suicide and euthanasia.
Not Dead Yet(NDY・「まだ死んでない」)は、幇助された自殺と安楽死を合法化する運動に反対するために作られた、草の根の障害者の権利のためのグループです。

◆TASH - TASH is a civil rights organization for, and of, people with mental retardation, autism, cerebral palsy, physical disabilities and other conditions that make full integration a challenge.

◆World Association of Persons with Disabilities - WAPD advances the interests of persons with disabilities at national, state, local and home levels.

◆World Institute on Disability - WID is an international public policy center dedicated to carrying out cutting-edge research on disability issue and overcoming obstacles to independent living. It was founded by Ed Roberts, the "father" of the independent living movement.


REV:.....20040609 20050115 20071125 20080829,0925, 20100104, 1214, 20130204, 20141025
安楽死・尊厳死 euthanasia / death with dignity  ◇アメリカ合衆国  ◇病者障害者運動史研究 
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