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HOUSE OF LOADS Assited Dying for the Terminally Ill Bill vol.1 Report

2005, April 4
Abstract 安部彰的場和子堀田義太郎

last update: 20131108

  精神的に決定能力があり、耐えられない苦痛を被っている終末期疾患患者に対する幇助死法案は、自殺への医療的幇助の合法化、また、その人が身体的に自らの生を終わらせる行動をとることのできない場合には、自発的安楽死の合法化を求めている。われわれは、この法案の基礎にある諸原理とそれが法として承認された場合に、その法が実践的に有する含意を検証してきた。われわれはまた、こうした本質をもつ法を合法化した他国の経験を観察し、さらにこの問題に関する英国の世論に分析を加えてきた。

  この法案は、個人の自律の原則に基づいている。その支持者たちは、終末期疾患の人々は、終末期であるか否かにかかわらず既に生命維持治療を拒否する権利を有している患者と同様に、既定の保護を受けることを条件とした上で医学的に援助されて死ぬ権利を有するべきだということを信じている。反対者たちは、この二つの状況は比較不可能であるという見解を採る。すなわち、いかなる保護も濫用されないという保証はありえないだろうし、また、法は、そこにいかなる事情があれども、意図的な殺人を許容する方向に変えられるべきではないだろう、とする。

  実践的な水準では、われわれは、この法案が持ちうる効果をめぐって対立する見解を耳にしてきた。すなわち、ある人々に利益を与えるという効果か、別の人びとに危害を与える危険性を持つという効果である。われわれには、たとえば、意図的な殺人にかんして法を破ることは「滑り坂」を導くだろうと感じられた。それは、施行されたどんな法の項目も、その予見範囲が追加的に拡張されることを通して、あるいはその解釈の伸縮を通して適用範囲を広げていくだろうという点からであり、1967年の中絶法の経験やオランダにおける自発的安楽死の経験が、その証拠を提供しているからである。他方で、この法案には、「滑り坂」の発生を阻むようにデザインされた一連の安全策が含まれていると論じられてもいる。すなわち、どんな規制緩和もさらなる規制を要求するだろうから、その点でこの法案を中絶法と比較することはできないし、オランダから得られる証拠も実はその点に関する再保証を与えるものである、と。

  また、この法案は医師-患者関係に(反対派が論ずるように)ダメージを与えるというよりはむしろ、それを改善するだろう、という話も聞かれた。それは、生命の終わりに関わる諸問題をより開放的で気軽に論議することを可能にするからであり、調査が示すのは、オランダ人はオランダの医師たちが他のヨーロッパ諸国の人々にたいしてより多くのことを行っていると信じている、ということだからである。他方で、生命の終わりをめぐる諸問題に関して議論することを含めて、医師-患者関係の開放性は、近年どんどん進んでいるのであり、また、オランダ人のほとんどが同じ医師に長年の間診てもらい続けており、医師を非常によく知っている――医師に自らのことをよく知ってもらっている――という点でオランダの状況は典型的ではない、という話も聞いてきた。また、医療専門職の観点からは、一部の医師たちはこの法案が提唱する内容に安心しているが、Royal Colleges of PhysiciansやGeneral Practitionersたちはこの法案の基礎にある諸原理に中立的な立場をとっており、そして、GMCは「医師幇助自殺を認めるという法の改変は、医師の役割と責任にとっても医師が患者に対して有する関係性にとっても、深遠な含意をもつだろう」と書いている。

  そしてまた、一方では、適切な「良心条項」を付せば、こうした性質の法が施行された他の諸外国に比べて、この法の施行が医療従事者に大きな困難をもたらすことはない、と言われているが、他方では、この国(イギリス)における医療と看護専門職の構成は、多くの医師や看護師が非ヨーロッパ文化に属していることから、この法の施行には深刻な問題がある、という示唆もあった。さらにわれわれは、この法が、障害者や老人といった傷つきやすい人間集団を危険に晒すだろう、と示唆する議論を聞いたが、この意見調査はまた、そうした集団に属す人々の多くが、この法案に添った形で法が制定されることを支持している、ということも示唆していた。

  われわれは、この分野に関して異なる法を施行している三つの国を訪れた。アメリカ合州国のオレゴン州では、医師幇助自殺(だが、患者の生命を直接的に終わらせる行為ではない)が、1997年から合法化されている。この新法を利用する人々の数は増してきているが、2003年までにこの方法で自らの生命を絶った人は毎年42人だけだった(これはおおまかに言ってオレゴン州で亡くなる人々の700人に一人である)。2002年に法的に許容された医師幇助自殺あるいは自発的安楽死を施行し、それに先だつ30年にわたり、個別事例に関して効果的に体系化された法を作り上げてきたオランダでは、40人の死者のうちほぼ一人(そのほとんどは自発的安楽死)が、それに基づく死であり、毎年1000人程度は、本人の明示的な要求のないまま、医師の行為の結果として死んでいるという証拠がある。スイスでは、1942年以来、幇助自殺を法が認めており、そうした幇助を得る人は、self-serving endsによって動機付けられていない。しかし、自殺幇助はスイスでは、医師に制限されているものと考えられていない。いかなる致死薬の処方箋にも医師の署名が必要ではあるが、医師は市民としてそうした幇助を与えることができるとされ、多くの幇助自殺はスイス「自殺協会suicide organizations」によって提供されている。

  最近の世論調査が示しているのは、終末期疾患の人々の生命の終わりを早めることを認める法改定は、公的に高いレベルで支持されているということである。こうした世論調査の結果は、通常、単純な「はい/いいえ」の設問形式をとっており、問題を取り巻く文脈――たとえば、緩和ケアの利用可能性や効果――に関する探査を欠いている。近年の調査はまた、医療専門職の態度が、世論よりも全体として両義的であり、全般的にみれば法改定に敵対的であるということを示唆している。14000通を超える手紙やメールの入っているわれわれの郵便ボックスは、この法案への支持がギリギリの過半数だということを示唆している。

  明確に言えるのは、Joffe卿の法案が今回の議会で進展を見せるのは、時間切れで無理だろうということである。われわれの報告は従って、この特定の法が受容可能か否かに関して裁定を下すのではなく、得られた証拠を説明しつつ(第二章から第六章)今後この問題がどのように扱われるべきかという点に関する提言を行うこと(第七章)を選択した。

  まとめると、われわれの提言は以下である。

  ―― われわれのレポートについて議論するために、次回の議会で早急に機会を設けるべきである。

  ―― その議論の発端で新法案が下院の議員によって提案されるとすれば、公式の第二読会に従い、その法案は、われわれのレポートを勘案した下院全体の委員会の詳細な検討に委ねられるべきである。

  ―― 結果的に、そうした法案が提出されるべきだとすれば、それを行う責任者は、われわれの探究の経過で明らかになった複数の中心課題について、またこの問題をめぐる議論の核心にあるとわれわれが信ずる問題に関して、深慮を払うべきである。

  注意を払うように期待される原理的な問題とは以下である。

  ―― われわれが受け取った証拠から明らかになったことは、幇助自殺あるいは自発的安楽死に対する要求が、終末期疾患の兆候からではなく、終末期疾患であるという事実に由来する苦悩をもつ人々の間で、とくに強いということであり、またそれは、より良いあるいは適切な緩和ケアによっても、その生命を終わらせることへの希望を逸らすことができそうにない人々だという点である。幇助自殺や自発的安楽死を合法化することを目指して提出されるいかなる新法も、こうした人々に主に焦点を当てるべきである。

  ―― 他の立法の経験からも明らかなことは、この分野での立法化の射程とこの法が射程とする終末期疾患患者との間に、強い結びつきがあるということである。とくに、立法化が幇助自殺に限定されているところでは、自発的安楽死も合法化されているところよりも、劇的にその適用率が低い。したがって、新法が提出されるならば、それは、幇助自殺と自発的安楽死を明確に区別すべきであり、それにより、この二つの行為の経過を区別して扱う機会を議会に与えるべきである。

  ―― 現在の法案が明示的に関わっているのは、幇助自殺や自発的安楽死を求める患者が従うべき手続きであり、彼らの死後も従うべき手続きである。しかし、医師が、患者の要求に与える効果に関して従うべき手続きについては、かねてよりそれは必要とされるさまざまテストを通過してきたのであるが比較的言及が少ない。今後提出されるいかなる法案も、医師がそれをなすことが公認される諸々の活動をはっきりさせるべきである。

  ―― われわれは今後提出されるいかなる法案も、強固な保護策を持っているべきだという原則を支持しているが、その詳細な形態は、われわれが受け取った証拠を考慮に入れるべきである。とくに、終末期疾患のいかなる定義も、予後に関わる臨床実践の現実を反映していなければならない。説明は、明確な心理学的ないし精神医学的障害を、精紳的な決定能力についての評価を構成する部分とみなす必要がある。さらに、苦悩や抑うつに関する「耐えられなさ」よりもむしろ「軽減不可能性」のテストを入れて、考察されるべきである。

  ―― 今後提出されるいかなる法案も、緩和ケアが、幇助自殺や自発的安楽死に代替するものというよりもむしろ、それらに補完的なものとして位置づけられることを明確に主張するのであれば、法の適用対象者が単に、緩和ケア医療が存在するという情報を与えられるだけではなく、よい緩和ケアの効果を得られるような手段を見つけることができるように考慮される必要があるだろう。


REV:20070423, 20131108
安楽死・尊厳死:イギリス  ◇安楽死・尊厳死
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