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ダイアン・プリティ(Diane Pretty)事件

Diane Pretty


◆クリスティアン・ビック 「安楽死と生命に対する権利:ダイアン・プリティ事件」
 『医療・生命と倫理・社会』 (オンライン版)Vol.4 No.1/2
 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/eth/OJ4/byk.pdf
◆児玉 聡 2002 「ダイアン・プリティ裁判――積極的安楽死を求めて欧州人権裁判所に訴え出た英国のMND患者」
 2002年日本生命倫理学会大会発表用PowerPointファイル
 http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/pretty.files/frame.htm
◆児玉 聡 2002 「ダイアン・プリティ裁判――積極的安楽死を求めて欧州人権裁判所に訴え出た英国のMND患者」
 2002年日本生命倫理学会大会予稿集原稿用
 http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/pretty2.html
◆児玉 聡 2002 「ダイアン・プリティ裁判――積極的安楽死を求める英国のMND患者」
 生命倫理学会ニューズレター掲載用
 http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/pretty.html

◆2002/03/22 患者の求める「死ぬ権利」認める判決 英高等裁判所
 朝日新聞ニュース速報
 http://www.asahi.com/
◆2002/04/30 英で全身マヒ女性、呼吸器外し死亡 尊厳死認める判決で
 朝日新聞ニュース速報
 http://www.asahi.com/
◆Singer, Peter 2002 "Ms B and Diane Pretty: a commentary," Journal of Medical Ethics 28: 234-235.
◆――――― 2003 "Voluntary Euthanasia: A Utilitarian Perspective," Bioethics 17: 526-41.
◆浅井 篤 20080229 「シンガーの自発的安楽死擁護論」,山内友三郎・浅井篤編『シンガーの実践倫理を読み解く――地球時代の歩き方』,昭和堂,23-48.


 

◆2002/03/22 患者の求める「死ぬ権利」認める判決 英高等裁判所
 朝日新聞ニュース速報
 http://www.asahi.com/

 「せきつい部の血管破裂で全身がまひし、回復の見込みがほとんどない43歳の独身女性が死ぬ権利を求めた訴訟で、英高等法院は22日、訴えを認めるとともに、倫理上の問題を理由に人工呼吸器を外すことを拒んだ病院側に対して、「人権侵害」の賠償金を支払うよう命じる判決を言い渡した。病院側も上訴を断念、判決は確定した。
 欧州では患者の死ぬ権利や安楽死を認める方向での制度改正を検討する動きが盛んで、オランダでは耐えがたい苦痛や治療の方法が残されていないことなどを条件に、安楽死を認める新法が4月に施行される予定。今回の判決も、障害の深刻さと本人の思いとを根拠に尊厳死の権利を認めたものだが、障害者の命の軽視につながりかねないとして、障害者団体や反安楽死団体には戸惑いも広がっている。
 ソーシャルワーカーだったこの女性は、1年前に首から下がまひして以来、意識や言葉に問題はないものの、病院の人工呼吸器で生命を維持するしかない。リハビリによる治癒の可能性は1%というのが医師の判断。「患者の権利」として人工呼吸器を外すよう病院側に求めたが拒否されたため、裁判に訴えた。
 判決は、彼女が自分の延命治療の諾否を判断できる能力を備えていると認定。「彼女のような深刻な障害をもつ人のなかには、生きることが死ぬことよりもつらいと感じる人がいることを、だれも否定できない」と述べ、その主張を認めた。病院側に命じた賠償金額は100ポンド(約1万8000円)だった。」
[2002-03-23-15:38]

◆2002/04/30 英で全身マヒ女性、呼吸器外し死亡 尊厳死認める判決で
 朝日新聞ニュース速報
 http://www.asahi.com/

 「首から下がまひし、回復を見込めない43歳の英国女性が本人の希望により人工呼吸器を外され、29日までに死亡した。先月、高等法院で尊厳死する権利を認められていた。
 保健省は同日、「女性は生命維持を目的とする呼吸器を外すよう求め、睡眠中、安らかになくなった」とする談話を発表した。高等法院の先月の判決では、女性が人工的な延命への同意、不同意を伝える能力がある、と認定。当初、倫理上の理由で呼吸器の取り外しを拒んだ病院側も、女性の意思を受け入れた。」
[2002-04-30-10:52]

◆Singer[2002]

 「彼女〔プリティ(Diane Pretty)英国43歳〕は病状が悪化するにしたがって前進の筋肉が萎縮し筋力が低下するという運動ニューロン病に罹患しており、最後には呼吸筋が侵され死に至るという運命にあった。首から下が完全に麻痺しており、発語はできず経管栄養で水分と栄養を得ていた。彼女は疾患それ自体による悲惨な死や経管栄養中断による緩徐な餓死ではなく人間的で尊厳ある<0029<死を願っていた。しかし彼女は意思決定能力はあるが文字どおりいっさいなにも自力ではできないので、その思いを実現するため夫に死なせて貰う必要があった。最初このカップルは夫が自分を死なせる行為をおこなっても違法にならないように英国裁判所に訴えていた。[…]
 シンガーは2002年のJournal of Medical Ethics の論考でダイアン・プリティーとBの事例を比較し、われわれにはそうすることで死ぬとしても医療行為を拒否する権利は持っているが、単なる治療中止が患者に死をもたらさない場合には誰かに死ぬのを助けてもらう権利はないというのが現状だと分析する。そして四肢麻痺状態患者が生命維持のための治療(Bの場合は人工呼吸)を受けている状況では望めばそれをやめて死ぬことができるのに、他方中止することで人間的に尊厳を持って死ぬことができるような医療行為を受けていない患者は、前者と同様の状態にあっても、望んでも死を選ぶことができない。これは不条理な状況ではないかと主張する。彼は問う。

 (他者を死なせるために:浅井追加)あるケースでは医師が人工呼吸器をオフにする必要があるという事実と、<0030<他のケースではプリティー氏が妻を死なせるために薬を与える必要があるという事実の間に道徳的に重要な差異はあるのだろうか。

 彼には自分にはその差異が何なのかわからないと述べる。倫理的にいえばBのケースとダイアン・プリティーのケースでは倫理的な差異よりも類似性の方が大きい。国家には四肢麻痺状態にある女性を彼女たちの意に反して生かし続けるどのような利益(利害関心)もない。そしてどちらのケースでも、彼女たちはいつ死にたいか、そしていつそうしてほしいかを自分で決定できるべきなのである(3)と主張する。」(浅井[2008:29-31])

Singer, Peter 20020229 "Ms B and Diane Pretty: a commentary," Journal of Medical Ethics 28: 234-235.
◇浅井 篤 20080229 「シンガーの自発的安楽死擁護論」,山内友三郎・浅井篤編『シンガーの実践倫理を読み解く――地球時代の歩き方』,昭和堂,23-48.


作成:安部 彰
REV:20060930 20080925
安楽死・尊厳死:イギリス  ◇安楽死・尊厳死
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