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安楽死・尊厳死 euthanasia / death with dignity 2011


last update:20120314

■目次

紹介
論文・催し物etc
ニュース

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■新規掲載

◆The Euthanasia Prevention Coalition(カナダ)
 http://www.euthanasiaprevention.on.ca/index.htm

◆2011/06 日本尊厳死協会が「リビングウィル」改訂
 [HTML(尊厳死協会のHP内)]

◆町医者だから言いたい!
<以下 最近のものをピックアップ>
先送りされる死
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/mwuUUUHeEp
胃瘻の何が問題か
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/rvZwerLzme
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/3dFU8OvWOj
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/CW8S7gyFBp
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/L00hgjAP73
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/NqfWSXMGuo
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/opVpuGDOnZ
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/opVpuGDOnZ
平穏死できない現実
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/7mbEBzFbQU
私は知ってしまった(平穏死の条件 その3)
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/GqfxIU6Jjc
年金目当ての延命希望がある
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/2yoYO7LDMS
平穏死させてくれる施設を選ぶ
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/g0BYCKUKN9
延命治療による延命とは
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/Yio7D6YQ4A
日本尊厳死協会に入会する理由
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/9SPwJRaM1l
認知症になる前に意思表示を
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/qH5O4YXcug
胃瘻を議論しよう!
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/3Ai99VUCim
待ったなしのリビングウイル法制化
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/dDIrfy1sq9
なぜ、待ったなしなのか ―― コメントに回答
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/RXuocgXffb
尊厳死法制化運動の歴史
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/UPJT8XBoKh
「一般庶民」にも考えて欲しい ―コメントに回答
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/hFfITW8ibK
訴えるのは「家族」です
https://aspara.asahi.com/blog/machiisya/entry/i21p97zydm

◆尊厳死法制化を考える議員連盟 2011年12月8日総会資料 WORD版 〔外部リンク〕画像PDF版 名簿EXCEL

8/10現在
自民 27 18 45
民主 25 13 38
公明 2 1 3
みんな 2 1 3
無所属 1 1 2
57 34 91

 会長   参 増子輝彦(民主)
 副会長  衆 大畠章宏(民主)
      〃 鴨下一郎(自民)
 幹事長  〃 山口俊一(自民)
 事務局長 〃 あべ俊子(自民)
 幹事   参 櫻井 充(民主)
      衆 松崎公昭(民主)
      〃 小宮山洋子(民主)
      〃 岡本充功(民主)
      〃 川越孝洋 (民主)
      〃 磯谷香代子(民主)
      〃 松本 純(自民)
      〃 町村信孝(自民)
      〃 徳田 毅(自民)
      〃 塩崎恭久(自民)
      〃 柴山昌彦(自民)
      〃 中谷 元(自民)
      〃 池坊保子(公明)
      参 大河原雅子(民主)
      〃 津田弥太郎(民主)
      〃 藤原正司(民主)
      〃 中村輝彦(自民)
      〃 上野通子(自民)
      〃 江口克彦(みんな)


●議連名簿
尊厳死法制化を考える議員連盟

○参議院新第一議員会館
※松本純 自民 302
 後藤田正純 自民 315
 相原史乃 民主 321
※松崎公昭 民主 323
※大畠章宏 民主 406
 笠浩史 民主 408
※町村信孝 自民 410
 松浪健太 自民 414
 太田和美 民主 416
 野田聖子 自民 504
※徳田毅 自民 513
※あべ俊子 自民 514
 森山裕 自民 515
 初鹿明博 民主 524
 小里泰弘 自民 811
 馳浩 自民 812
※小宮山洋子 民主 813
 小林正枝 民主 1013
※鴨下一郎 自民 1023
 平井たくや 自民 1024
※塩崎恭久 自民 1102
 福田康夫 自民 1103
 奥野総一郎 民主 1119
※岡本充功 民主 1206
 大野功統 自民 1211

○参議院新第2議員会館
 樽床伸二 民主 207
 山尾志桜里 民主 217
 森山浩行 民主 219
 石井登志郎 民主 220
 鳩山邦夫 無 221
 森喜朗 自民 301
 河村建夫 自民 302
 高山智司 民主 304
 大口善徳 公明 308
 石田勝之 民主 310
 福島伸亨 民主 316
 川口浩 民主 323
※山口俊一 自民 412
※池坊保子 公明 501
 筒井信隆 民主 506
 柿澤未途 みんな 611
 渡辺喜美 みんな 613
 加藤紘一 自民 701
 北村誠吾 自民 714
 田村譲治 民主 817
※柴山昌彦 自民 822
 山本幸三 自民 915
 室井秀子 民主 917
 松岡広隆 民主 919
※川越孝洋 民主 922
 江渡聡徳 自民 1021
 津川祥吾 民主 1202
※磯谷香代子 民主 1203
 岩屋毅 自民 1209
 今村雅弘 自民 1210
 竹本直一 自民 1221
※中谷元 自民 1222

○参議院新議員会館
※中村博彦 自民 304
 川口順子 自民 308
 佐藤ゆかり 自民 309
 山東昭子 自民 310
 岸宏一 自民 315
 梅村聡 民主 324
 谷川秀善 自民 412
※大河原雅子 民主 417
 熊谷大 自民 423
 広田一 民主 507
※櫻井充 民主 512
 尾辻秀久 無 515
 谷岡郁子 民主 524
※増子輝彦 民主 602
 水戸将史 民主 604
 山本一太 自民 609
 長谷川岳 自民 619
 古川俊治 自民 718
 森ゆう子 民主 805
 山田俊男 自民 809
 松下新平 自民 824
 中川雅治 自民 904
 西村まさみ 民主 909
※上野通子 自民 918
※江口克彦 みんな 1002
※津田弥太郎 民主 1006
※金子洋一 民主 1014
※藤原正司 民主 1016
 山本順三 自民 1019
 西田昌司 自民 1110
 外山斎 民主 1112
 荒木清寛 公明 1115
 野村哲郎 自民 1120
 加治屋義人 自民 1219

●尊厳死法制化を考える議員連盟総会(2011年12月8日)
 衆議院院第一議員会館多目的ホール 9:30〜
 次第
 1 開会
 1 会長挨拶
 1 議事
  「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」について
  ・衆議院法制局により説明聴取(5分)
  ・日本医師会より意見聴取(5分)
   陪席 厚生労働省
 ・意見交換(30分)
 その他、次回日程について
 閉会

●延命措置の差控えの流れ(イメージ図)
 〔省略:wordに図あり〕

●「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」
制度設計比較表

1 各案の内容

この法律の対象となる延命措置 本人の意思が不明な場合の取扱い
A案 新たな延命措置の不開始 この法律の対象としない
B案 新たな延命措置の不開始 家族の同意で代替
C案 新たな延命措置の不開始+現に行われている延命措置の中止 この法律の対象としない
D案 新たな延命措置の不開始+現に行われている延命措置の中止 ・新たな延命措置の不開始については、家族の同意で代替 ・現に行われている延命措置の中止については、本人の意思が不明な場合には、この法律の対象としない
E案 新たな延命措置の不開始+現に行われている延命措置の中止 家族の同意で代替

2 各案のあてはめ 

□…新たな延命措置を開始せず、又は現に行われている延命措置を中止することができる
  →この法律に基づき、民事上・刑事上・行政上・免責される
 
□…この法律の対象としない
  →民事上・刑事上・行政上の責任が発生するか否かは、個々具体的に判断される

新たな延命措置の不開始 現に行われている延命措置の中止
本人の希望+家族が拒まない/いない ・本人の意思が不明
・家族の同意
本人の希望+家族が拒まない/いない ・本人の意思が不明
・家族の同意
現状
A案
B案
C案
D案
E案

●第3案(最新版)'11.11.24


終末期の医療における患者の意思の尊重
に関する法律案(仮称)骨子(未定稿)


第一 基本的理念
 終末期の医療は、延命措置を行うか否かに関する患者の意思を十分に尊重し、医師その他の医療の担い手と患者との信頼関係に基づいて行われなければならないものとすること。

第二 趣旨
 この法律は、終末期の判定、延命措置の差控え及びこれに係る免責等に関し必要な事項を定めるものとすること。

第三 定義
 一 終末期

 この法律において「終末期」とは、患者が、傷病について行い得る全ての適切な治療を受けた場合であっても回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態にある期間をいうものとすること。
 二 延命措置
 この法律において「延命措置」とは、終末期にある患者の傷病の治癒ではなく、単にその生存期間の延長を目的とする医療上の措置(栄養補給又は水分補給の措置を含み、現に当該患者に対して行われている措置を除く。)をいうものとすること。

第四 延命措置の差控え等
 一 医師の説明責任

 医師は、延命措置を差し控えようとするときは、診療上必要な注意を払うとともに、終末期にある患者又はその家族(事実上家族と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)に対し、延命措置の差控えにより生じる事態等について必要な説明を行わなければならないものとすること。
 二 延命措置の差控え
 医師は、患者が延命措置の差控えを希望する意思を書面その他の厚生労働省令で定める方法により表示している場合(当該意思の表示が満15歳に達した日後においてなされた場合に限る。)であり、かつ、第三の一の判定(以下「終末期の判定」という。)が行われた場合であって、その旨の告知を受けた当該患者の家族が延命措置の差控えを拒まないとき又は当該患者に家族がいないときは、厚生労働大臣が指針で定めることにより、延命措置を差し控えることができるものとすること。
 三 終末期の判定
 終末期の判定は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師(当該終末期の判定が行われた場合に当該患者に対する延命措置を差し控えることとなる医師を除く。)の一般に認められている医学的知見に基づき行う判断の一致によって、行われるものとすること。
 四 免責
 二に基づく延命措置の差控えについては、民事上、刑事上及び行政上の責任を問われないものとすること。

第五 延命措置の差控えに伴い死亡した者に関する生命保険契約上の取扱い
 生命保険会社等を相手方とする生命保険契約その他これに類するものとして政令で定める契約における延命措置の差控えに伴い死亡した者の取扱いについては、その者を自殺者と解してはならないものとすること。ただし、当該者の傷病が自殺を図ったことにより生じた場合には、この限りでないものとすること。

第六 その他
 一 施行期日

 この法律は、○○から施行するものとすること。
 二 検討
 終末期の医療における患者の意思を尊重するための制度の在り方については、この法律の施行後3年を目途として、この法律の施行の状況、終末期にある患者を取り巻く社会的環境の変化等を勘案して検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとすること。

◆尊厳死法制化の動きについて――議員連盟が法律要綱案の骨子案を公表(2011年12月)
 〔外部リンク〕http://www.songenshi-kyokai.com/topics22.html

■論文・催し物etc

安部 彰,2011/03/** 「ケアにおける承認の問題――パターナリズムと「安楽死」をめぐって」,『現代社会学理論研究』5: 30-42. [pdf]


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■ニュース


※参考情報(終末期医療に直接は関連があるわけではないが、要注意)
◆環境省「エコチル調査」参加者募集開始
(2011年1月24日〜)
【コメント:環境省が1月から参加者募集を始めた16年間で予算900億円で実施大規模疫学調査に関するもの。調査が必要な根拠として、具体的な障害名・疾患名が上げた上で、それらが増加していることが説明されている。妊婦に障害や疾患に対する不安や否定的なイメージを植え付けるのではないかと懸念されるが、ホームページを見る限り、そうした懸念に関する配慮は、見られない。】

■エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)とは
[外部リンク]http://www.env.go.jp/chemi/ceh/
 なぜ必要なの?
 人々を取り巻く社会環境、生活環境は大きく変わってきており、それにともない、環境の汚染や変化が人の健康などに悪影響を及ぼす可能性(=環境リスク)が増大しているのではないかという懸念があります。なかでも、化学物質など環境中の有害物が子どもの成長・発達にもたらす影響について、国内外で大きな関心を集めています。
 →グラフ「わが国における先天異常発生頻度の推移」
 [外部リンク]http://www.env.go.jp/chemi/ceh/why/reference.html
【コメント:ダウン症、水頭症、二分脊椎症、尿道下裂の発生頻度が示されている。】

エコチル調査の中心仮説
 [外部リンク]http://www.env.go.jp/chemi/ceh/about/reference.html
 エコチル調査は、「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露が、子どもの健康に大きな影響を与えているのではないか」という中心仮説を検証するものです。
 この中心仮説に基づく種々の仮説を明らかにするためには、化学物質の曝露以外の要因についても併せて検討を行う必要があります。解明すべき要因としては遺伝要因、社会要因、生活習慣要因等が想定されます。
【コメント:以下抜粋】
【調査の対象とする環境要因】
化学物質の曝露
残留性有機汚染物質(ダイオキシン類、PCB、有機フッ素化合物、難燃剤等)、
重金属(水銀、鉛、ヒ素、カドミウム等)、内分泌攪乱物質(ビスフェノールA等)、
農薬、VOC(ベンゼン等)など

●その他の要因(交絡因子)
■遺伝要因
■社会・生活習慣要因

地域(住所)、住居(種類、築年数、空調等)、両親の学歴・職業歴・勤務状況・収入、両親の喫煙・飲酒、食事、家庭環境(兄弟の数、ペット等)、遊び場の環境、学校の環境等

【健康影響の指標】
●身体発育 : 出生時体重低下、出生後の身体発育状況等
●先天異常 : 尿道下裂※、停留精巣※、口唇・口蓋裂※、二分脊椎症※、消化管閉鎖症※、心室中隔欠損※、ダウン症※ 等
●性分化の異常 : 性比、性器形成障害、脳の性分化等
●精神神経発達障害 : 自閉症※、LD(学習障害)※、ADHD(注意欠陥・多動性障害)* 等
●免疫系の異常 : アレルギー、アトピー、喘息等
●代謝・内分泌系の異常 : 耐糖能異常※、肥満等

【コメント:※関連記事
 これだけの大規模調査にも関わらず、2011年3月の時点で調査に関する記事を検索してもヒットしたのは以下のみ。】
反射鏡:「エコチル調査」は最初が肝心=論説委員・青野由利
(毎日新聞 2011年2月6日 東京朝刊)
[外部リンク]http://blogs.yahoo.co.jp/s_family_home/32301409.html

 駆け落ちした人まで追いかける。「居場所はぜったい言わないから」と説得し、血圧などを測らせてもらう。そんな徹底した調査をしているところがあると聞いたことがある。
ひとつの地域に住む人全員を長年追いかけて行う生活習慣病の研究だ。定期的に健診し、発病した人にどんな危険因子があるかを調べる。心筋梗塞(こうそく)を起こした人に共通のライフスタイルがないか。遺伝子の型が脳梗塞と関わっていないか。
 こうした特定の集団を追跡して行う疫学調査は「コホート研究」と呼ばれる。コホートは古代ローマの歩兵隊のこと。転じて共通の条件を持つ集団を意味する。欧米が先行してきた研究手法だが、日本でも重要性が注目されるようになった。
 手間のかかる調査なので、駆け落ちの話は「それぐらいの覚悟で」という意味だったかもしれない。ただ、どんなコホートでも「いかに参加者を確保し、脱落者を少なくするか」が重要なことは間違いない。
 環境省が1月から参加者募集を始めた「エコチル調査」もコホート研究だ。何それ?という声が聞こえてきそうだが、エコはエコロジー、チルはチルドレン。「子どもの健康と環境に関する全国調査」という名の国家プロジェクトだ。
 環境省によれば、この20〜30年の間に先天異常や小児ぜんそく、発達障害などが増加した。背景に、ダイオキシン類や重金属、農薬など化学物質への暴露の増加、生活習慣の変化があるのではないか。そんな仮説に基づき、発病と環境、生活習慣や遺伝との相互作用を解明するのが目的だ。
 全国15地域の妊婦に協力を求め、同意が得られた場合、妊娠中から母親の血液、尿を採取する。生まれてからは、臍帯血(さいたいけつ)や父親の血液、母乳や毛髪も採取の対象とする。子どもが6カ月になったら、半年ごとに質問票による調査を行い、数年ごとに面接調査もする。
 質問票では食事や運動などに加え、布団を干す頻度や浴室のカビについても聞かれる。ハウスダストを採取することもあるというから念入りだ。
 目標は3年間で10万組の親子の参加。年間出生数の約3%に相当し、該当地域では出産の半数がカバーされる。子どもが13歳になるまで追いかけ、16年間で予算の総額は約900億円。事業仕分けでも生き残り、「奇跡」と言う人もいるほどだ。
 関係者の期待は高いが、では、始めるにあたって準備は万端なのか。気になる点がいくつかある。
 たとえば、血液中の何を測定するかの最終判断はこれから。分析結果の返し方にも課題がある。すぐに返すデータもあるが、健康との関係がはっきりしないデータを、いつ、どういう方法で返すかは詰まっていない。
 遺伝子解析を前提に血液保存の同意も求める。しかし、具体的な計画ができた時の同意の取り直し方には議論がある。調査が進めば、血液や遺伝子の生体試料バンク、分析結果のデータベースもできる。これをどのように国内外の研究者や企業と共有し、有効に使っていくか。
 子どもが大きくなって「もう参加したくない」と言い出したらどうするか。駆け落ちはともかく、参加者が連絡せずに引っ越した場合、どこまで追いかけるのか。参加者の確保につながる課題はいくつもありそうだ。
 こんな心配をするのも過去につまずいた例があるからだ。たとえば、科学技術振興機構などが子どもの心の発達に焦点をあて04年から始めたコホートは、途中で研究手法の再検討が求められ、大規模調査が頓挫した。各地域の調査票がバラバラといった準備不足があったようだ。同じ失敗はないとしても、他に落とし穴がないか、油断はできない。
 海外のコホート研究には、成人50万人を対象とする英国の「UKバイオバンク」のように、準備に何年もかけてスタートしたものもある。米国が行う子どもの大規模コホートも、長く準備が続けられている。
 「走りながら考える」としても、最初に押さえておかないと、後から取り返しがつかなかったり、収拾がつかなくなるものがあるはずだ。
 日本政府はエコチルだけでなく、10万人を対象としたゲノムコホートの準備研究も来年度から始める。せっかく、お金と労力をかけてやるのなら、参加者の善意を無駄にしないよう、意味のある結果を出してほしい。それには、なんといっても最初の準備が肝心だ。

【コメント:その後、毎日新聞が、2011年8月12日夕刊に「放射線影響 妊娠初期から追跡―環境省が福島調査」という記事を掲載。】

◆老衰末期 胃ろう必要ですか
(中国新聞 2011年2月3日) [外部リンク]PDF

 安芸高田出身の医師・石飛さん講演

 口から食べられなくなったらどうしますか―。そう問い掛けながら全国を行脚している医師がいる。「『平穏死』のすすめ」(写真・講談社)の著者で、安芸高田市出身の石飛幸三さん(75)。先月末に広島市中区であった講演会でも、胃に穴を開けて栄養を補給する「胃ろう」が、老衰末期に多く施される日本の現状に、こう訴えた。「われわれは道に迷っていませんか」(平井敦子)

 石飛さんは、5年前から世田谷区の特別養護老人ホーム「芦花ホーム」に勤務。そこで出会ったのが、平均年齢90歳、9割が認知症という入所者に施される胃ろうだった。
 ほとんど応答もできず、寝たきりの高齢者たち。口から食べられず、誤嚥しない方法として、胃の中に管を通して栄養剤を注入されていた。しかし、石飛さんは気付く。「(人間の体は)機械のように、燃料を入れておけばいいというものではない」
 人は赤ちゃんの時から、自分の口で食べている。天気によって、体調によって、食欲は変わる。それなのに、意志を伝えることができないまま、三度三度、決まった量の栄養剤が注入されていた。量が多すぎて逆流し、窒息する人がいることも分かった。
 勤め始めて間もなく、「胃に穴を開けさせてまで生き延びさせたくない」と家族が訴え、胃ろうを付けずに病院を退院したアルツハイマー病の女性をホームで受け入れた。2年ほど、ゼリーなどを口から食べてもらう介護を実践。最期は、食べる量が減り、眠る時間が多くなり、そして数日眠ったまま、静かに息を引き取った。
 血管外科の専門医で、若い時から救命の最前線で活躍してきた石飛さん。「何かあったらすぐ点滴をしていた私には、こんな静かな最期があるんだと、信じられなかった」と打ち明ける。
 このケースが、現在のみとり実践の幕を開けた。胃ろうの人の症状を見ながら、栄養剤の量を減らした。家族との話し合いを重ね、老衰末期には胃ろうをしないケースを増やした。すると、誤嚥性肺炎の発生が激減し、静かな最期を迎える人が増えた。その上、家族に感謝された。
 石飛さんは語る。「ホームに来たときは、(栄養剤の)点滴一本ぐらい、現代の死に水だろうと私も考えていた。家族の人が『最後までやってあげた』という思いになっていいじゃないか、と。でも今は最期を迎えようとしている本人のためにならないと思う」
 さらに、医療や福祉に携わる人たちが、胃ろうをしないことで、必要な治療を故意に行わなかったとみなされ、保護責任者遺棄致死罪に問われる恐れを抱いていることにも触れ、「責任回避はやめよう」と呼び掛ける。「病気は治せても、老衰は止められない。いかに気持ちよく、静かに、心を込めて最期を迎えてもらうか。当たり前のことを本音で家族と話し合えばいい」
 昨年2月に発刊した著書は介護、医療関係者を中心に反響を呼び、講演に50回近く呼ばれた。「延命至上主義でいいのかどうか。国民レベルで考える時が来ていると訴えていきたい」

「脳死は人の死」 医師4割「子どもは別」
(朝日新聞夕刊 2011年2月26日)
 15歳未満の子どもでは、「脳死が人の死」は当てはまらない、と考える医師が40%に上がることがわかった。また、小児の脳死判定は将来的にも不可能だとする医療施設も20%以上あった。全国の救急・小児科の専門医を研修する施設の医師に聞いた。
 調査は、国立生育医療研究センターの委託研究班が昨年、日本救急医学会と日本小児科学会の専門医研修施設約500施設を対象に行い、医師255人から回答を得た。
 年齢に関係なく「脳死を人の死」と認識する医師は56%いた。いっぽうで14%が「人の死ではない・人の死はあくまでも心臓死」と回答、「成人は脳死が人の死だが子どもは異なる」「臓器提供の場合に限る」と答えた医師もそれぞれ13%いた。合計4割の医師は、小児は「脳死は人の死」と認識していなかった。
 また、脳死判定後の治療について、6割が「差し控えや中止と言う選択肢があるべきだ」と考え、3割が「新たに開始すべきではないが実施中の治療は中止すべきではない」と回答した。「緩和医療やみとりの医療に移行すべきだ」も4割あった。自分の病院で子どもの脳死判定が可能と考える医師は3割、条件が整えば可能とした医師が4割。今も今後も不可能とする医師も2割いた。(大岩ゆり)

第8回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム
「重篤な疾患を持つ子どもの治療方針決定のあり方─話し合いのガイドラインの提案─」


 第8回目となるフォーラムは「重篤な疾患を持つ子どもの治療方針決定のあり方─話し合いのガイドラインの提案─」をテーマに開催いたしますので、ご案内させていただきます。
多くの方々のご参加をお待ちしております。  日本小児科学会倫理委員会

 日時:2011年2月26日(土曜日)13時30分〜17時(開場:13時)
 会場:早稲田大学総合学術情報センター 国際会議場 井深大記念ホール
 *日本小児科学会専門医・認定医研修単位5単位
 *入場無料、事前申し込み不要

 プログラム
 第I部 日本小児科学会終末期医療ガイドラインワーキンググループ
 司会:加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
    河原 直人(早稲田大学総合研究機構・研究院)
(1)「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」:提案までの経過
   加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
(2)「子どもの死と向き合う−救急の立場から」
   鍛冶 有登(大阪市立総合医療センター救命救急センター)
(3)「小児終末期医療と法」
   辰井 聡子(明治学院大学法学部)
(4)「子どものいのちを守り、家族を支えるために」
   野辺 明子(先天性四肢障害児父母の会)

 第II部 指定討論(成育医療研究委託費「小児における看取りの医療に関する研究」班)
 司会:伊藤 龍子(独立行政法人国立看護大学校)

 (1)「小児の看取りの医療に関する調査報告 一次・二次調査結果」
   西畠  信(総合病院鹿児島生協病院)
 (2)「小児の看取りの医療における看護」  
   清水 称喜(兵庫県立子ども病院) 
 (3)「小児の看取りの医療に関する提言に向けて」
   阪井 裕一(国立成育医療研究センター・主任研究者)

 第III部 総合討論
 司会:加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
    河原 直人(早稲田大学総合研究機構・研究院)

 チラシ
 [外部リンク]http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_110119.pdf

認知症患者への人工的栄養補給、医師4割「中止の経験」
(朝日新聞 2011年2月27日)
[外部リンク]http://www.asahi.com/national/update/0227/TKY201102270333.html?ref=recc

 口から食べるのが難しくなった認知症末期の高齢者に導入した人工的な栄養補給法について、4割の医師が中止を経験していることが、会田薫子東京大特任研究員(死生学)の調査で分かった。医学的な理由のほか、「家族の希望」「苦痛を長引かせる」との判断によるものだった。日本老年医学会など7学会は、人工栄養法の導入や中止の基準、手続きの指針作りの検討を始めた。

 調査は、同学会の医師会員に郵送でアンケートした。有効回答は1554人。回答者の7割が、自分の意思を明確に伝えられない認知症末期の患者が口から食べたり、飲んだりするのが難しくなった際に、管で水分や栄養を補給する人工栄養法を導入した経験があった。患者のおなかの表面から穴を開け管を通して胃に直接、栄養剤などを入れる「胃ろう」や、高カロリー輸液を点滴する「中心静脈栄養法」などだ。胃ろうでは、年単位で生き続けることもある。

 このうち、44%の医師が、いったん胃ろうなどの人工栄養法にした後、中止した経験があると回答した。中止の理由(複数回答)は下痢や肺炎など「医学的理由」が最多で68%。「患者家族の希望」43%、医師として「苦痛を長引かせると判断」23%、「尊厳を侵害する」14%だった。

 中止した後は、基本的には、可能な範囲で口から水分補給をしたり、口を湿らせたり、苦痛・苦しみを和らげながら「自然な経過」で看(み)取ることになる。

 一方、いったん導入した人工栄養法の中止には3割が「法的に問題」、2割が「倫理的に問題」と答えた。

 また、人工栄養法にする際にも、9割の医師が深く悩んだり、困ったりした経験があった。その理由(複数回答)で最も多かったのは「(認知症患者)本人の意思が不明」の73%だった。

 日本老年医学会など老年関連の7学会でつくる日本老年学会は現在、認知症末期の高齢者について、人工栄養法の導入にあたって患者・家族らに説明すべき内容や手続き、導入後に中断・中止を判断する手続きなどについて指針作りに向け検討を始めている。

 調査結果は、27日に東京で開かれた日本老年医学会のシンポジウムで発表した。(寺崎省子)

◆3月1日 尊厳死法制化を考える議員連盟
(あべ俊子と政策を考えるブログ 2011-03-01 13:38:43)
〔外部リンク〕http://abetoshiko.com/mt/mt4i/mt4i.cgi?mode=individual&eid=1205

 しばらく、議論が中断されていた「尊厳死法制化を考える議員連盟」が久々に開催されました。この日は、増子輝彦参議院議員を新会長に向かえた初会合となりました。何より、私が尊敬する、町村信孝衆議院議員が、議連に加入いただき、この初会合にも参加して下さったことは、大変感激いたしました。

 この議連は、超党派の議員で構成する議員連盟です。

 現在の法律では、医師が患者や家族の意思をくみ取って、延命治療を中止した場合は、罪に問われることとなります。これまでも様々な事件が報道されてまいりました。自分がどういう最期をむかえたいかは、自分自身が決めなければならない、そして医療従事者はそれを尊重し、無用な延命治療や不本意な治療が行われることがないようにしなければなりません。これは私がライフワークとしてずっと取り組んできた課題です。 立法の必要性があるのか、これまで厚労省等から出されたガイドラインレベルで対応できるのか、次回は現場のみなさんから現状のヒアリングを進める予定です。(次回予定:3月16日(水)13:00〜)難しい課題ではありますが、「患者のための医療」のあるべき姿、それを実現するための施策について、今後ともしっかり考えてまいります。

◆日本看護連盟―あべ俊子国政ニュースNo.48(2011年3月3日)(本文は、上のブログとほとんど同じだが、部分的に違う。)〔外部リンク〕http://www.kango-renmei.gr.jp/wp-content/uploads/2011/09/78443699bd8da78151933fe7b8e437ce.pdf

 終末期における本人意思の尊重を‥
 3月1日、しばらく、議論が中断されていた「尊厳死法制化を考える議員連盟」が久々に開催されました。この日は、増子輝彦参議院議員を新会長に向かえた初会合となりました。何より、私も尊敬する、町村信孝衆議院議員が、議連に加入いただき、この初会合にも参加して下さったことに、大変感激いたしました。
 この議連は、超党派の議員で構成する議員連盟です。
 現在の法律では、医師が患者や家族の意思を汲み取り、延命治療を中止した場合は、罪に問われる場合があります。これまでも、様々な事件が報道されてまいりました。
 自分がどういう最期を向かえたいかは、自分自身が決める、そして、医療従事者はそれを尊重し、無用な延命治療や、不本意な治療が行われることがないようにしなければなりません。
 これは、私がライフワークとしてずっと取り組んできた課題です。立法の必要性があるのか、これまで厚労省等から出されたガイドライン等のレベルで対応できるのか、次回は現場のみなさんから現状のヒアリングを行う予定です。
 個人の死生観に絡む「難しい課題ではありますが、「患者のための医療」のあるべき姿、それを実現するための施策について、看護職出身の議員として、今後ともしっかり議論してまいります。

◆尊厳死法制化を考える議員連盟(2011年3月1日 Y! みんなの政治 国会議員 増子輝彦 民主党 活動記録 〔外部リンク〕http://seiji.yahoo.co.jp/m/giin/000741/activity/2011030101.html

 尊厳死法制化議員連盟の会長に就任しました。
 初代会長は中山太郎元外務大臣です。わたしは三代目で現在会員は84名です。
 人の死にかかわる大きな重い問題ですので、これからよく協議して法制化を実現していきたいと思います。
 日本尊厳死協会HP
 〔外部リンク〕http://www.songenshi-kyokai.com/

命救う介護 法の壁直面―高齢者へ「胃ろう」処置 医療職以外できず―被災地「弾力的な運用を」
 (共同=中国新聞 2011年4月13日朝刊24面掲載)
[外部リンク]http://www.bakubaku.org/20110413chugoku-hisaichi-irou1.pdf
 東日本大震災は介護と医療の「壁」を浮き彫りにした。介護福祉士に認められていない医療行為について、政府は原則論を崩さず、国会にも規制緩和を急ぐ動きはない。「命をつなぐ処置なのに」。体調不良を訴える高齢者を前に、被災地では弾力的な運用を求める声が上がっている。
 「このままでは間接的な震災死を招きかねない」。宮城県女川町の特別養護老人ホーム「おながわ」の木村利彦・お客さま相談室長(63)は危機感を募らせている。被災後に直面したのは、口から食事を取れなくなった高齢者への「胃ろう」をめぐる問題だ。

…2人で入所者ケア…
 胃ろうとは、胃に穴を開けて管で栄養剤を直接送り込む処置。自力でたんや唾液を排出できない人の鼻や口に管を入れ外に吸い出す「たん吸引」とともに、医師や看護師ら医療職にしかできないと法律で定められている。厚生労働省は「家族や研修を受けた介護福祉士には例外的に認める」としている。
 震災発生時、ホームにいた高齢者は長期入所の38人と短期利用者の約30人。町内の要介護者や家族の避難も受け入れ、一時は約150人に増えた。
 看護師は4人いたが、被災により、うち2人だけで入所者のケアをすることに。「停電や断水の中で手が回りきらなかった」と木村室長。やむなく胃ろうの回数を1日3回から2回に減らした。
 だが、経口摂取できない入所者は、水分補給も胃ろうに頼ることになる。ケアマネジャーの杉元司郎さん(36)は「胃ろうを減らし、脱水症状や血圧上昇などを起こす人が出た」と話す。
 「高齢者にとっては命をつなぐ処置。被災地に医療と介護の壁はない」。東京都内の病院から女川町に派遣された医師は、法に縛られない柔軟な対応を求める。
 「こういう場合に医療職以外が手掛けてもよいのか、国や県に意見を聞ければ…」とホームの木村室長。だが、津波で大きな被害を受けた女川町では通信の断絶が続き「不安の中で介護を続けなければならなかった」。

…厚労省は「原則論」…
 厚労省内にも「体調不良を起こしている人を前に、法律がどうとかは言えない。緊急避難的に介護福祉士が手掛けてもいいのでは」との意見はある。だが、表向きは「胃ろうは命に関わる行為。災害対策ならなんでもOKとするのは危険性の方が高い」と原則を貫く姿勢。災害救助法の適用地域での特例は「検討していない」と消極的だ。
 女川町内のほかの特養施設は、津波被害で運営できない状態。杉元さんは「町の人はここを頼りにしている。前例のない非常事態で法律も未整備なのだから、弾力的にできないものでしょうか」と疑問を投げかけた。
 厚労省は昨秋、胃ろうやたん吸引を行う要件を緩和し、介護福祉士にも拡大する方針を決めた。
 関連法案はくしくも3月11日午前に閣議決定。直後に発生した震災で手続きが遅れたが、4月5日に国会提出された。
 厚労省幹部は「被災地でこんな事態が起きている以上、成立を急ぐ以外に手がない」と気をもむ。しかし、国会で法案審議を急ぐ声は、与野党ともに聞こえてこない。

 【コメント:※参考記事】
 ■特集 非番で救命活動の「救急救命士」を失職させた愚か者たち
 (週刊新潮 2011年6月16日号)
 [外部リンク]http://www.bakubaku.org/20110616shinchou-hiban-kyuumeisi.pdf

 〈人命より法律優先か〉〈助けたければ、医師の資格を取れ>――。ある公務員の処分をめぐり、ネット上で喧しい議論が巻き起こっていることをご存じだろうか。命を救う技術を持ちながら、愚かな法制度に手足を縛られた救急救命士たち。その一人が辿った不条理劇とは。

 「今回の騒動で 救急教命士は、オフの日は救急救命士ではないんだ、ということを知り 驚きました」
 と呆れ気味に話すのはある臨床医である。
 その事故が起きたのは4月14日、静岡県内の東名高速道路下り線、掛川IC付近でのことだった。休日で 長野県に向かい車を走らせていた久保大介氏(54)=仮名=の目の前で 大型トラックが清掃車に衝突。久保氏は車を急停車し、トラックにかけよった。事故車両の前部はぐしゃぐしゃの状態。彼は割れたフロントガラスからやっとの思いで車内に入り 頭と耳から出血している運転手の応急処置を行ったという。
 運転手にすれば不幸中の幸いだった。実は、久保氏、茨城県石岡市の消防署に勤める救急救命士だったのだ。しかも、この日、彼は救急医療用のキットを持参していた。東日本大震災を受け、外出先でも緊意事態に対処できるよう、署の備品を携行していたわけだ。当の久保氏が語る。
 「運転手は胸と腹の痛みを訴えていたので ハンドルに体を強打し、内臓出血している危険性があると考えました。そうすると血管が収縮し、搬送先の病院で点滴など薬剤の投与が困難になるケースが多い。それを防ぐため、“輸液セット”というキットを使い、注射針を刺して、点滴を行いました」
 静脈路確保というこの医療行為が奏功してか、運転手は軽傷で済んだという。しかしこの人命救助がその後、彼を失職に追い込むことになるのである。
 というのも救急救命士は法律で、医師の指示の下、心肺停止状態の患者にしか医療行為は施せないとされているからだ。
 久保氏自身も言う。
 「自分の行動が法に振触するかもしれないという思いが一瞬、頭をよぎりました。しかし 運転手の命にかかわると考え、人命第一と判断して処置したんです」
 果たして、これが搬送先の病院で問題とされる。結果、掛川の消防から石岡の消防に「違法行為があった」と違格が入る。挙句に静岡県から茨城県に事実確認の問い合わせがなされ、事は「県対県」という大きな問題に発展してしまったのだ。
 ちなみに彼の動務先は石岡市所管の石岡消防署。ここで消防司令という管理職の立場にあり、現場トップの当直責任者を務めていた。
 その久保氏、4月18日、石国市長に説明を求められ、市長室に赴いたという。
 「一つも良いことやってないぞ」
 市長からはこうたしなめられ 市の懲罰委員会で処分が諮られることになる。
 「4月23日には、石岡消防本部のトップである消防長や上司の署長らに呼び出された。皆、顔を強張らせ、“どうしようもね”“懲戒は免れねかも”という。彼らの話から、私が辞表を書けば、反省の態度を示していると受け止めてもらえ、情状酌量されるとのニュアンスを感じ取りました。だから、その場で辞表を書いたのです。もちろん、この段階で懲戒免職なんてあり得ないと思っていたし、辞表はあくまで消防長に預けただけのつもりでした」
 その後、彼は市の顧問弁護士から、点滴用の注射針を刺したことは傷害容疑の可能性があるので 医療行為を行った運転手と示談し、警察にも届け出るよう指示される。何だか訳の分からない展開だが、命じられるまま、4月29日には、はるばる滋賀県のトラック運転手の自宅を訪問。示談書ヘのサインを求めた。傷の癒えていた運転手はキョトンとした表情で、
 「もちろん、いいですよ。でも、なんで? かえってこちらがお礼を言わないといけないのに」
 と、不思議がったそうだ。「その後の5月21日のことでした.消防署の上司から“辞表を書き直してほしい”と言われたのです。この時点で上層部は私を守ってくれる気がないんだと悟りました。5月30日の懲罰委員会で停職6カ月の懲戒処分が出て、消防長からは“君の辞表、そのまま受理していいよね”と言われました。私も呆気にとられ、反抗する気にもなれず、ただ“はい”と答えたのです」

 手遅れになるまで待て!?

 この処分について 石岡市消防本部総務課は「彼は管理職の立場にある者です。それが禁止された備品の持ち出しを勝手に行い、医師の指示を受けずに救命行為を実施した。この2つの事実で、公務員の信用を失墜させたのは問題。処分は当然です」
 と いかにもお役所的な反応だ。
 「私はこの救急救命士の行為は間題と思いますが、それはひとます措くとして、確かに救急教命士をめぐる制度に不備があるのは事実」
 と語るのは 日本救急救命士協会の鈴木哲司会長。
 「現行法では 救急救命士は、勤務時間外には救命処置が行えない。しかも事実上、救急車の中でしか医療行為を施せません。全国に約4万2000人の救命士がいますが、このうち消防機関に属するのは約2万2000人。 つまり2万人は緊急時にその技術を活かせず、日本は宝の持ち腐れなのですよ」
 残りは看護師ゃ一般人で、救急救命士の資格は活かせない。こんなバカげたことがあるだろうか。法制度上の欠陥があるのは明白だ。
 ともあれ、久保氏の処分がメディアで報じられると、ネット上では賛否をめぐり議論が白熱した。
〈備品持ち出しは良くない〉
〈法律は破っちゃ、ダメ〉
 などの書き込みもあったが、概ね彼に同情的な意見が多かったようだ。曰く、
〈人を助けて失職ってやってられねえな〉
〈ルールに縛られるのが好きな国やなホンマ〉
 などなど。
 「確かに酷い話ですよ。医療行為といっても、電気ショックや気道確保のための挿管などは危険を伴いますが、点滴は何ら特段のリスクはない.それが停職6カ月で挙句に退職に追い込まれるとは幾らなんでも気の毒でしょう。規律違反というなら、厳重注意処分くらいでいいじゃないですか」
 と、前出の臨床医は慨嘆する。
 「救急救命士は心肺停止の人にしか手を出せないのなら、下手をすると手遅れになるまで待て、ということになる。常識的な許容範囲はあってしかるべきでしょう」
 全くもって おかしな話だ。この救命士を退職に追い込んだ者たちは愚かというしかない。法改正は急務で、このままでは、目の前に死にかけている人がいても、見て見ぬふりをした方が無難ということになるだろう。
 最後に久保氏はこう語った。
 「私は高校卒業後、すぐ消防署に就職し、35年2カ月の勤務期間のうちの約20年を救急で過ごしました。当然、仕事に対する誇りと愛情を持っています。うちの消防署には飲酒運転で逮捕されながら、停職で済み、復帰できた者もいる。それなのに、なぜ私は人を助けながら、仕事を失わなければいけなかったのか……残念でなりません」

◆尊厳死法制化議連でプレゼン(ヒアリングに呼ばれた医者のブログ) ←年末に一度ピックアップ済。
〔外部リンク〕http://www.nagaoclinic.or.jp/doctorblog/nagao/2011/07/de.html

 今日は、尊厳死法制化を考える議員連盟に呼んで頂き、朝からお話をした。
 在宅医療の現場から、リビングウイルを基本的人権としての必要性を説いた。
 沢山の質問を頂いた。道は遠いが、頑張りたい。

 超高齢化社会は待ったなし。
 多死社会がやってくる。

 リビングウイルとは、延命処置を拒否する権利。
 基本的人権だ。

 尊厳死運動とは、リビングウイルを国に認めてもらうこと。
 本人が拒否している延命処置を施される現実には耐えられない。

 医療界も、法曹界も、国民も誰も、この尊厳死問題に
 正面から向き合わずにここまで来てしまった。
 医療問題が、この問題抜きに語れるのか?

 その結果が、40万人の胃瘻。
 毎年20万人ずつ増えている。

 胃瘻専門の高専賃まで出来ている現実。
 この現実を、どうして誰も直視しないのか。

 フランスのレオネッテイ法は、いいモデルになる。
 2005年に制定され、緩和医療と両輪で進んでいる。

 自分にとって、長い闘いが、今日、始まった。
 歴史的な日。

◆2011/12/05 「終末期の人工栄養補給、中止可能に…学会指針案」
 読売新聞 2011年12月5日
 
 「高齢者の終末期における胃ろうなどの人工的水分・栄養補給は、延命が期待できても、本人の生き方や価値観に沿わない場合は控えたり、中止したりできるとする医療・介護従事者向けの指針案が4日、東京大学(東京・文京区)で開かれた日本老年医学会のシンポジウムで発表された。
 近年、口で食べられない高齢者に胃に管で栄養を送る胃ろうが普及し、認知症末期の寝たきり患者でも何年も生きられる例が増えた反面、そのような延命が必ずしも本人のためになっていないとの声が介護現場を中心に増えている。
 そこで、同学会内の作業部会(代表・甲斐一郎東大教授)が試案を作成した。広く意見を募って修正し、来年夏までには同学会の指針としてまとめるという。」

◆2011/12/06 「胃ろう:日本老年医学会が指針試案」
 『毎日新聞』2011年12月6日 東京朝刊
 http://mainichi.jp/select/science/news/20111206ddm012040077000c.html

 「高齢者が口から食べられない場合に実施する「胃ろう」などの人工的水分・栄養補給について、日本老年医学会の作業部会は、医療・介護従事者向けの指針試案を作成した。本人のためにならない時は実施しなかったり中止したりする選択肢があると患者自身や家族に示すことができるとしている。一般からの意見を募集し、来春にも指針としてまとめる。
 これまで指針はなく、同部会は患者や家族のために必要として検討に着手。試案では、患者の生き方や価値観を尊重したうえで、家族を交えて話し合いながら胃ろうなどを実施するか否かを決めるべきだとしている。
 試案はウェブサイト(http://www.l.u-tokyo.ac.jp/dls/cleth/guideline/index.html)で公開。

◆2011/12/08 「尊厳死、法制化の動き 延命回避の医師免責 議連が骨子」
 朝日新聞 2011年12月8日15時0分
 http://www.asahi.com/health/news/TKY201112080252.html

 「患者が安らかな最期を望む場合、人工呼吸器の装着や栄養補給などの延命措置を医師がしなくても責任を問われないとする法律づくりが動き始めた。超党派の国会議員でつくる尊厳死法制化を考える議員連盟(増子輝彦会長)が骨子をまとめ8日の総会で公表した。
 2005年に発足した議連が法案を示したのは初めて。議員立法として来年の通常国会に提出する方針。死期が迫ったら、延命措置を拒むという本人意思を尊重する「尊厳死」をはじめ、終末期医療に関する法律がない中、患者の思いをどう反映するかは現場の大きな課題になっている。
 「終末期医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」の骨子によると、適切な治療を受けても回復の可能性がなく死期が間近と判断される状態を「終末期」と定義。本人意思が書面などで明らかなことを前提に、担当医以外の2人以上の医師が終末期と判断し、家族が拒まないか、家族がいない場合、延命措置をしなくても医師は民事・刑事・行政いずれの責任も問われないとする。ただし、厚労相が定める指針に従うことが条件となる。」(つづきは、朝日デジタルでないと読めなくなっていた。)

◆2011/12/08 「「尊厳死」法制化の動き 議連が骨子 延命回避の医師免責」
 『朝日新聞』2011/12/08夕刊:2
 右のブログに引用:http://emuzu-2.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-496c.html

 「「患者が安らかな最期を望む場合、人工呼吸器の装着や栄養補給などの延命措置を医師がしなくても責任を問われないとする法律づくりが動き始めた。超党派の国会議員でつくる尊厳死法制化を考える議員連盟(増子輝彦会長)が骨子をまとめ、8日の総会で示した。
 2005年に発足した議連が法案をまとめたのは初めて。議員立法として来年の通常国会に提出する方針。死期が迫ったら、延命措置を拒むという本人意思を尊重する「尊厳死」をはじめ、終末期医療に関する法律がない中、患者の思いをどう反映するかは医療現場の大きな課題だった。
 「終末期医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」の骨子によると、適切な治療を受けても回復の可能性がなく死期が間近と判断される状態を「終末期」と定義。本人意思が書面などで明らかなことを前提に、担当医以外の2人以上の医師が終末期と判断し、家族が拒まないか、家族がいない場合、厚労相が定める指針に従い延命措置をしなくても医師は民事・刑事・行政いずれの責任も問われないとする。
 延命措置とは、治すためでなく、生きている時間を延ばすことを目的とする措置。骨子は、栄養や水分補給を含むとしている。
 終末期医療を巡っては、富山県射水市の市民病院で医師が患者の人工呼吸器を外して7人が亡くなったことが06年にわかり、指針づくりや法制化の必要性の議論が活発になっていた。
 議連は民主や自民、公明など衆・参院の国会議員約90人で構成する。
<延命治療をめぐる最近の主な事件>
 ぜんそくの重症発作で意識不明になった患者の気管内チューブを主治医が抜き、筋弛緩(しかん)剤を投与されて死亡した川崎協同病院事件(2009年、主治医の有罪確定)や、人工呼吸器を外された末期がん患者7人が死亡していた富山県射水市民病院(09年、医師2人を不起訴)などがある。
 07年10月、日本救急医学会が救急医療の現場での人工呼吸器の取り外しなどの延命中止手続きを定めるガイドラインを定めている。」

◆2011/12/08 「延命治療の是非 自分の場合、家族の場合両方で医師も悩む」
 『女性セブン』2011年12月8日号
http://www.news-postseven.com/archives/20111127_72334.html(2011.11.27 16:00)

 「2006年3月、富山・射水市民病院で末期がん患者など7人の呼吸器を外し延命治療を中止していたことが報道された。2008年7月、元外科部長ら2人が殺人容疑で書類送検されたが、2009年12月、富山地裁は一連の医療行為をみて呼吸器を外した行為が死期を早めたとはいえないと判断、不起訴処分(県議不十分)とした。
 この「延命治療」の是非について女医の宋美玄さんと医療ジャーナリストの熊田梨恵さんが語り合った。
* * *

熊田:年老いた宋先生は認知症になり、終末期を迎えています。
宋:は!?  いきなり何ですか、まだうら若き30代やのに〜。
熊田:例えばの話です! 読者の皆様も一緒にちょっと想像してみてください。寝たきりで自分で考えたり判断したりはできていません。のみ込む力もなくなりご飯を食べられなくなってきたので、このままだと栄養を摂れなくなり、死期が近づいてきます。でも、手術をしてお腹の上から胃に向かって穴を開け、そこから栄養剤を流し込む「胃ろう」を造れば栄養摂取できるので、生き続けることができます。先生なら、もしそうなったときに胃ろうをしたいですか? したくないですか?
宋:今回はしょっぱなから白熱、しかも私が答える番ですかいな。うーん…。最近周りでも胃ろうについて聞くことがありますわ。難しいけど、私やったら、意識のない状態で流動食を直接胃に流し込まれて、生かされているというのはちょっとどうかなあ。
熊田:では白熱第2問! 先ほどの状態で、先生の家族は、医師から胃ろうを造るかどうか迫られました。先生に長く生きてもらいたいと思った家族は、胃ろう造設を決定。先生はそのまま10年以上生きることになりましたが、栄養剤を注入できるのは家族か医師、看護師など医療職のみで、ヘルパーはできません。注入には約2時間かかり、朝昼晩と約6時間家族はつききりになるうえ、全身介護です。介護に疲れ果てた家族は、これが先生や自分たちにとっての幸せなのだろうかと悩みますが、もちろん、先生は何も答えてくれません。さて、本当に胃ろうは必要だったのでしょうか?
宋:うわー、また難しい質問を! 家族が望んだこととはいえ、それで介護が大変になってしまっていたら、つらいから私も嬉しいとは思えないような…。でも、家族は本人が生きていることが幸せで…、あーっ、わかりませんわ。難しい! しかし、なんでいきなりそんな話を?
熊田:胃ろうをテーマに取材してるんです。ある調べでは、胃ろうを入れている患者は国内に40万人といわれ、その数は年々増えているんですよ。
宋:結構な数ですね。でも、胃ろうの何が問題やと思ってはるんですか?
熊田:釈迦に説法ですけど、人間の延命には「呼吸」「透析」「栄養」の3種類があって、「呼吸」は人工呼吸、「透析」は人工透析、胃ろうは「栄養」に該当します。患者が食べられなくなってきたとき、医師は胃ろうなどで栄養を摂る方法を提案します。手段があるのに勧めなかったら訴えられる可能性がありますからね。家族は「死んでしまうかも」と思って、慌てて胃ろうを決めます。さっきの話みたいに、結果的に本人や家族にとって良い選択だったかどうかわからないまま実施されているケースが、多くみられるんです。
宋:なるほど〜。しかも日本の場合、途中でやめたいと思って栄養剤の注入を中止したら、医師が殺人罪に問われる可能性がありますからね。いままでも、家族の頼みを聞き入れて延命を中止した医師が罪に問われた「射水市民病院事件」なんかがありましたな。こうして萎縮医療に拍車がかかり、患者側に提供される情報も少なく、望まない医療が過剰に行われている可能性があると…。
熊田:内視鏡の技術が発達して、胃ろうを造るハードルも低くなってきました。もちろん、利点もたくさんあります。ただ、今後の高齢者人口増とともに胃ろう患者が増えれば、さらに医療費は必要になります。望んでいない医療に私たちの税金が使われるかもしれない、いや、いま現在すでにそうなっている部分はあると思います。医療側と患者側の情報や意識の差、制度の未整備からこういう事態が引き起こされているのが、問題だと思うんですよね。」

◆2011/12/09 生命保険はどうなる? 議連が尊厳死法制化へ
 税金と保険の情報サイト 2011年12月9日 21:00
 http://www.tax-hoken.com/news_To9jjapUu.html

医師の責任を問わない法律
 尊厳死法制化を考える議員連盟(増子輝彦会長)は8日、尊厳死を法制化するための骨子をとりまとめ、総会で発表した。

 安らかな死を望む終末期の患者に、医師などが延命措置をとらなくても責任を問われないようにすることが、本法制化の趣旨。

患者の意思を尊重するために
 同議連は2005年に発足した超党派の議員連盟。来年の通常国会に法案を提出する予定だという。

 法案では適切な治療を受けても回復の見込みがなく、死が間近な状態を「終末期」と定義した。

 日本には終末期医療に関する法律がないため、尊厳死を望む患者と医師の間で、しばしば問題が発生している。

 本法案では、担当医師以外に2人以上の医師が終末期と認めた患者について、書面などにより本人の意思が確認できることや、家族が同意していること、あるいは家族がいないことを条件に、尊厳死を認めるものとする。

 この場合、医師が人工呼吸器の装着や栄養補給などの延命措置をとらなくても、刑事・民事・行政などの責任を問われない。

生命保険はどうなる? 尊厳死は自殺?
 人の死について、今までとは異なる状況が発生する可能性があるため、生命保険をどう取り扱うか、議論を進める必要がある。

 州によっては尊厳死が認められている米国でも、医師による尊厳死の補助が、「殺人」もしくは「自殺幇助」とみなされることがある。

 自殺幇助と見なされた場合、患者は自殺したことになるため、保険契約における免責期間内であれば、生命保険金は支払われない。

◆尊厳死法制化議連(議連の勉強会に全部出席してきた医師のブログ)
 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201112/522853.html?ref=RL2

(久保田文=日経メディカル)
超党派の国会議員による尊厳死法制化を考える議員連盟(会長は参議院議員の増子輝彦氏)は12月8日の会議で「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」の骨子を提示した。

 骨子の主要なテーマは、終末期患者に対する延命措置の差し控え。法律の趣旨を「終末期の判定、延命措置の差し控えおよびこれにかかる免責などに関し必要な事項を定める」とし、延命措置の差し控えを希望する患者の意思表示があった場合、延命措置を差し控えることができ、またその差し控えについて医師は民事・刑事・行政上の責任を問われないとした。

 具体的には、担当医を除く2人以上の医師が終末期と判定し、患者や家族に対して差し控えにより生じる事態の説明をした上で、家族が差し控えを拒まない、もしくは家族がいない場合に、指針に従って延命措置を差し控えられるとした。

 骨子では、終末期を「患者が、傷病について行い得る全ての適切な治療を受けた場合であっても回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態にある期間」と位置付けた上で、延命措置を「終末期にある患者の傷病の治癒ではなく、単にその生存期間の延長を目的とする医療上の措置」とした。延命措置には、栄養補給や水分補給などを含み、既に当該患者に行われている措置は除くとした。

 骨子を作成した同議員連盟は2005年に発足し、法制化には至らなかったが07年に一度、法律案を公表している。当時は、富山県の射水市民病院における人工呼吸器外しが表面化したことなどを受け、厚生労働省が「終末期の決定プロセスに関するガイドライン」を発表。日本医師会や日本救急医療学会も同様のガイドラインを発表するなど、既に施行されている治療の中止が主に議論されていた。そのため法律案も、臨死状態に陥った患者を対象とした延命治療中止のあり方がテーマとなっていた。

◆2011/12/15 「「延命措置」 10年間延命されて101才になる母親もいる」
 『女性セブン』2011年12月15日号
 http://www.news-postseven.com/archives/20111206_73585.html(2011.12.06 07:00)

 「2006年3月、富山・射水市民病院で末期がん患者など7人の呼吸器を外し延命治療を中止していたことが報道された。2008年7月、元外科部長ら2人が殺人容疑で書類送検されたが、2009年12月、富山地裁は一連の医療行為をみて呼吸器を外した行為が死期を早めたとはいえないと判断、不起訴処分(嫌疑不十分)とした。この「延命治療」の是非について女医の宋美玄さんと医療ジャーナリストの熊田梨恵さんが語り合った。
* * *

宋:胃ろうの患者さんを取材されていて、どんなケースがあるんですか?
熊田:胃ろうを入れている101才の寝たきりの母親を、子供や孫たちが介護していました。彼女は10年ほど前に脳梗塞で入院。麻痺が残ってのみ込みにくく、意思疎通もできなくなってしまったので、医師から「このままだと口から食べられなくなる」と、胃ろうを勧められました。子供らはその場で胃ろう造設を決め、いまは在宅介護が続いています。母親とはコミュニケーションできないので、いまの状態をどう考えているかはわかりません。
宋:胃ろうによって、10年ほど生きておられるわけですな。
熊田:話を聞いているうちにわかってきたのは、子供らは母親の年金で生活していました。彼女が亡くなると、家族が路頭に迷ってしまう経済状態です。もちろんお金のためだけではないですけど、本人の意思というより、家族の生活のために生かされているような側面はありました。複雑で、いろいろ考えさせられました…。
宋:う〜ん。難しいですが、死んでいくことは自然な人間の姿です。健康で職があるなら、子供は働いて糧を得ていくのが自然やと思うんですけど…。それに、日本はそうした家族を丸ごと公費で養っていけるほどの財政的余裕はないですよね。それでも家族の意思のみで胃ろうにするというなら、医療費を公費負担するのはどうかな、と。
 意識のないまま10年以上、流動食で生かされる患者への医療費と年金…。そこに国民の税金が使われることにコンセンサスは得られないような気がしますわ。でもケースバイケースでもあるし、自分の親やったら、みんながみんな、そう割り切れんのかもしれませんしね。」

◆転換期迎える終末期医療―「多死時代」への対応が急務に(本誌連動◇死なせる医療 Vol.1)
(メディカル・オンライン 2011. 12. 20)
(久保田文=日経メディカル)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t164/201112/522913.html

 今後、年間死亡者数が急増する中、高齢患者の受け皿となってきた病床は数が制限され、介護施設も大幅に増えない。家族の介護力の低下に加え、独居高齢者も増加する。終末期医療をどう提供すべきかは、喫緊の課題となっている。
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2010年5月、中日新聞が岐阜県などに複数の"寝たきり専用賃貸住宅"が存在することを問題視する記事を掲載した。これらの住宅は有料老人ホームなどの届け出をせずに、経鼻栄養や胃瘻を造設した高齢者ばかりを入居させ、医療や介護サービスは外部の特定の診療所や介護事業者が提供していた。

 入居者の多くは、慢性期病院や介護施設に入れず、やむを得ずこの住宅に入居したと推測される。地元のある医師は、「外部から医療や介護サービスが提供されていたとはいえ、果たして充実した終末期医療やケアが実施されていたのだろうか」と疑問を呈す。実際、こうした住宅の指導に当たった岐阜県の担当者は「入居者は全員、栄養剤の投与だけを受けていた」と話しており、経口摂食のための十分な嚥下訓練などは行われていなかった可能性が高い。

行き場失う終末期の高齢者

 かつて、日本人の看取り場所といえば自宅が中心で、1960年にはその割合は約70%に上った。それが76年に病院など医療機関の割合と逆転。今では死亡者の80%以上が医療機関で死亡している。ところが最近、高齢者の増加による死亡者数の急増で状況が変わりつつある。

 国内の年間死亡者数は、60年には約70万人だったが、10年には約119万人に達した。一方で、病床数は90年ごろから徐々に減り、10年には約173万床になった。ただし、そのうち90万床は本来疾患の治療を担う一般病床。つまり、既に医療機関だけでは看取りを担えない事態が生じ始めているわけだ。

 しかし、不足する看取り場所を補う役割を期待される介護施設は数が少ない上、昔と違って家族の介護力が低下し、在宅で看取るのも難しくなっている。独居高齢者の増加も、これに追い打ちをかける。冒頭のような"終末期専用"とも言える住宅で最期を迎える高齢者が出始めたのも、看取り場所不足ゆえといえる。

 こうした状況は、さらに深刻化するとみられる。団塊世代の高齢化が進み、30年の死亡者数は、今より45万人以上多い約165万人と推計したデータもある。この場合、介護施設の増床や在宅医療の拡充などを図っても、約47万人が病院や介護施設、自宅以外の高齢者住宅などで最期を迎えることになる(図1)。

(図=省略 図1 死亡場所別、死亡者数の年次推移と将来推計 厚生労働省の資料を編集部で一部改変。2006年までの年間死亡者数は厚労省の人口動態統計より。07年以降の推計は国立社会保障・人口問題研究所の出生低位・死亡高位による推計。06年から病床数は増えず、介護施設は30年に06年時点の2倍、自宅での死亡は1.5倍に増えると仮定。結果、30年には約47万人が医療機関や介護施設、自宅以外の高齢者住宅などで死亡することになる。)

 梶原診療所(東京都北区)在宅サポートセンター長の平原佐斗司氏は、「多死時代を乗り切るには、これまで看取り場所の中心だった病院や在宅専門の診療所の医師に加え、かかりつけ医機能を持つ診療所開業医が、高齢者住宅などで看取りに関わることが不可欠だ」と指摘する。

治療控えや中止も選択肢

 一方で、終末期の患者をどう診るべきかという課題も残る。中でも考えなければならないのが、高齢患者にどこまで積極的な治療を行うかという点だ。場合によっては、治療の差し控えや中止を余儀なくされるケースも、今後増えてくるだろう。

 日本人の死亡年齢はこれまで一貫して上昇してきた。新生児を除く女性の年齢別死亡数のピークは1960年には75〜79歳だったが、2009年には85〜89歳となった。筑波大大学院人間総合科学研究科教授で日本老年医学会倫理委員会委員長の飯島節氏は、「人間の限界寿命からして、死亡年齢は上限に近付いている。高齢患者については、治療の差し控えや中止も選択肢として、より良い看取りを考えることが重要だ」と話す。

(写真=省略 筑波大の飯島節氏は「今後は介護施設なども含めて、緩和ケアを普及させることが大切だ」と話す。)

 こうした流れを踏まえ、日本老年医学会は12年初めにも、高齢者の終末期の医療およびケアに関する「立場表明」を11年ぶりに改訂する。治療の差し控えや中止を考慮することや、緩和医療やケアを普及させる必要性も明記する方針だ(表1)。

(図=省略 表1 日本老年医学会の「立場表明」の改訂案の一部

対照的な癌と非癌の看取り

 肺炎心疾患、脳血管疾患といった癌以外(非癌)の患者の終末期をどう診るのかも大きな問題だ。癌の終末期医療は、07年のがん対策基本法の施行などによって充実してきた。だが、全死亡者のうち癌による死亡は約30%で、特に高齢の死亡者では"非癌"による死亡が大部分を占める。

 癌と比べて非癌では、終末期を認識するのが難しい。その上、治療選択によって予後が左右されるほか、緩和ケアに使える薬剤も限られており、終末期医療はほぼ手付かずの状態だ。「これまでは主に癌の看取りが議論されてきたが、今後は非癌の方がより重要になってくる」と飯島氏は話す。Vol.2以降では、非癌と癌に分けて、国内の終末期医療の現状をまとめるとともに、治療の差し控えを合法化したフランスの実情を紹介する。

◆【非癌患者】予後予測できず、緩和にも問題多く
―手法も制度も未確立で、医師や患者・家族の悩み尽きず(本誌連動◇死なせる医療 Vol.2)
(メディカル・オンライン 2011. 12. 21)
(久保田文=日経メディカル)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t164/201112/522914.html?ref=RL2

 非癌終末期を認識しづらく、治療の差し控え・中止の判断が難しい。胃瘻人工透析を差し控える例は増えているが、「この判断でいいのだろうか」と、医師や患者・家族の悩みは尽きない。緩和ケアに使える薬剤が限られているのも課題だ。

 終末期の高齢患者が繰り返す誤嚥性肺炎は治療しても根治しにくいため、いつまでも積極的な治療を続けると患者の苦痛を長引かせることになりかねない。そこで、患者や家族の意向を確認した上で抗菌薬による治療よりも、呼吸困難の緩和などに努める─。「将来、こうした終末期医療が行われる日が来るのではないだろうか」と筑波大の飯島氏は話す。

徐々に機能低下する非癌
 2010年の国内の全死亡者数のうち、心疾患脳血管疾患肺炎などの非癌による死亡者は約40%(約49万人)を占めるが、高齢者に限ると、癌以外で死亡する割合はさらに高まる。90歳の死因別死亡確率を見ると、癌による死亡確率は10〜15%で、非癌による死亡確率は50%近くに達する(図2)。高齢者の死亡が増える今後は、非癌患者の終末期医療の充実が重要になる。

(図=省略 図2 90歳の死因別死亡確率
2010年の簡易生命表に基づき、死亡状況が変化しないと仮定したときに90歳の高齢者が1年以内にどのような死因で死亡するかを確率で表したもの。その他には腎不全など非癌での死亡が若干含まれている。小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100にならない場合もある。)

 とはいえ癌とは異なり非癌では、どこからが終末期なのか判断するのが難しい(表2)。「振り返って見れば『あのときが終末期だった』と分かるが、明確な基準がなく、治療の差し控えや中止をしようにも判断に迷う」と飯島氏は言う。安易に踏み切れば、本来必要な治療が行われない危険性もある。

(表=省略 表2 非癌患者と癌患者の違い(平原氏による)
癌患者は終末期に在宅に戻ってから1〜2カ月で死亡することが多い。一方非癌は徐々に機能低下を起こし、看取りまでの期間が長い。1)梶原診療所など在宅医療を手掛ける7カ所の医療機関が2000〜06年にかけて在宅で看取った242例についての研究から。2)梶原診療所の訪問診療のデータ。)

 非癌患者は、神経細胞の変性や臓器不全など様々な機能が徐々に衰退し、最終的に嚥下機能や呼吸機能が低下して死に至る。そうした経過は疾患ごとに違う上、治療や輸液で改善する可能性が常に否定できないため、癌のように月単位や週単位で予後を予測するのが難しい。梶原診療所の平原氏は「これまで各国で、全身状態や疾患別の経過などから非癌患者の予後を予測する多くの研究が行われてきたが、うまくいっていない」と語る。

 実際、同氏ら在宅医療を手掛ける7カ所の医療機関の医師たちが、2000年4月〜06年10月にかけて在宅で看取った非癌患者242例を解析したところ、医師が死が近いと予測し、家族に告知していたのは約半数の113例だけ。その上、ほとんどが死亡前数日から2、3週間と、差し迫った段階でしか予測できていなかった。「非癌では、どこまで治療を行うかなどを事前に決めておくのが難しい」と平原氏は指摘する。

 ただ、判断は難しいものの、家族の意向を尊重し、治療を差し控えたり、中止したりする動きも出始めている。高齢患者に対する胃瘻の造設がその一例だ。

(写真=省略 梶原診療所の平原佐斗司氏は「現状では頻回の訪問看護などができず、在宅の非癌患者の終末期に手厚いケアを行うのは難しい」と話す。)

安易な胃瘻造設に警鐘

 認知症患者に対する胃瘻造設は、経口摂食だけを続ける場合と比べて、延命効果や誤嚥性肺炎を減らす効果がないとした海外論文もあり、明確な有効性は確立されていない。また、離脱できずに最終的に認知機能が落ち、経口摂食の併用も不可能になって、終日臥床状態で胃瘻から栄養を得るだけで過ごす例も少なくない。

 とはいえ、これまで国内では、認知症や、誤嚥性肺炎を繰り返した高齢者の多くに胃瘻が造設されてきた。国内の胃瘻造設患者数は40万人ともいわれる。

 背景には、認知症の早期であれば、きめ細かいリハビリで経口摂食の併用期間の延長や、胃瘻からの離脱ができるといったことがある。最近では国内で、胃瘻を造設した認知症患者の生存期間が海外と比べて長いという調査結果も出た。

 介護施設や医療機関の事情で胃瘻が広がった面もある。介護施設には十分なスタッフが配置されておらず、経口摂食が難しい高齢患者の食事介助を行うのは大変だ。食べ物を詰まらせて誤嚥性肺炎や窒息を招く危険もある。また、急性期病院では誤嚥性肺炎などを起こした患者が治療後に退院する際、経口摂食で十分な栄養を摂取できなければ、経鼻栄養より不快感の少ない胃瘻を造設しがちだ。

 そんな中、日本老年医学会が主体となって進めている厚生労働省の委託事業で、高齢者への水分・栄養補給法の導入をめぐる意思決定プロセスの整備とガイドライン作成を目指すワーキンググループ(責任者:東大大学院医学系研究科教授の甲斐一郎氏)が、11年12月に試案を公表。医療者は、胃瘻や経鼻栄養など人工的な水分・栄養補給をしないことも選択肢の一つとして提示し、患者や家族とコミュニケーションを続けて最善の選択を行うべきと提唱した。試案作成に携わった東大死生学・応用倫理センター特任研究員の会田薫子氏は、「患者の栄養状態、医療機関や介護施設の都合で安易に造設するのではなく、患者の意向を推定するなどじっくり話し合って決めてほしい」と話す。

メリットもデメリットも説明

 胃瘻造設を手掛ける病院の中には、胃瘻のメリットやデメリットについて説明し、患者や家族の選択を促すところも出始めた。草津総合病院(滋賀県草津市)消化器内科副部長の伊藤明彦氏は以前から、胃瘻の適応について検討してきた。06年からは造設前に、嚥下機能の評価に加えて、解剖学的に問題がないかどうかを確認。併せてアルブミン値や総リンパ球数などから算出される指数を用いて、胃瘻造設後に栄養治療に反応するかどうかを推定し、有効だと考えられる例に造設を行ってきた。

(写真=省略 草津総合病院の伊藤明彦氏は「患者や家族には十分に説明を行い、1週間後に再度意思を確認した上で慎重に胃瘻を造設している」と話す。)

 ただ、解剖学的にも栄養学的にも適応であっても、末期の認知症や誤嚥性肺炎を何度も繰り返している高齢患者については、医師も患者の家族も造設すべきかどうか迷うことが多い。伊藤氏は昨年から、そうした家族に対して独自に作った「胃瘻のジレンマ」の図(図3)を見せ、胃瘻を付けた場合と付けない場合のメリットとデメリットを説明している。

 「胃瘻を造設すれば、生存期間が延びる可能性が高いが、最終的にQOLが低い状態で一定期間生存することになる」と伊藤氏は話す。同病院では、胃瘻造設後も嚥下訓練や口腔ケアを積極的に実施し、経口摂食の併用期間を延ばす取り組みをしている。それでも「適応の厳格化や胃瘻のジレンマの説明をするようになってから、造設患者は減少している」と伊藤氏は言う。

(図=省略 図3 胃瘻のジレンマ(伊藤氏による)
胃瘻を造設しなかった場合と造設した場合の予後のイメージ。患者や家族によってQOLの考え方は異なるが、経口摂食が併用できなくなったり、意思疎通ができなくなったりする境界を赤い点線で示し、それより上がQOLが高い時期、下が低い時期とした。)

 胃瘻については今後、造設後の使用中止についても議論が活発化しそうだ。現在は、栄養剤を注入しても逆流する例や、気道分泌が過多になる例、消化管の吸収能が落ちて下痢を呈する例などで注入量を減らすことは珍しくない。しかし、そうした臨床上の問題がなくても、認知機能が落ちて終日臥床状態にある場合に、家族との話し合いを経て栄養剤の注入量を徐々に減らすことなども考えられる。

 栄養療法についての情報を提供しているNPO法人のPEGドクターズネットワーク(理事長:国際医療福祉大病院外科教授の鈴木裕氏)は現在、中止や使用見直しも含めた認知症患者の胃瘻ガイドラインの作成に向けて準備を進めている。伊藤氏は「家族の意向を尊重して、一般の医師が訴訟の心配をせずに栄養剤を減らせるようにするためには、一定のガイドラインが必要だ」と話す。

悩ましい高齢患者の人工透析

 人工透析を手掛ける医師も似たような状況に直面している。札幌北クリニック(札幌市北区)院長の大平整爾氏は「近年、医学的に適応であっても人工透析を差し控える患者が増えている」と打ち明ける。

(写真=省略 札幌北クリニックの大平整爾氏は、「人工透析を中止して余命が限られた患者なども、癌患者と同様に緩和ケア病棟を使えるようにしてほしい」と話す。)

 日本透析医学会の調査によれば、10年末時点で国内で血液透析または腹膜透析を受けている患者は約30万人。患者の平均年齢は1983年には48.3歳だったが、2010年には66.2歳となった。

 大平氏が属する北海道高齢者透析研究会ワーキンググループが北海道透析療法学会の会員99施設から回答を得た調査では、06〜08年にかけて医学的には適応であっても透析の導入を差し控えた例が189例あることが判明。そのうち33%が重度の認知症によるものだった。大平氏は「高齢患者では透析後、血圧が下がったり倦怠感を訴える人が多い。70歳代、80歳代の末期の認知症患者に対して、人工透析を導入すべきかどうかは悩ましい問題だ」と話す。

 長年人工透析を続けてきた高齢患者の中には、治療を中止する例も少なくない。認知症や癌、心不全、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症など高齢患者には様々な合併症が出現する。心肺機能が低下して血流を確保できない、重度の認知症で透析中に安静が保てないとなれば、人工透析の継続を諦めるしかない。

 前述の調査では、3年間で233例が人工透析の継続を中止していた。約90%が病状悪化で透析の施行が難しくなったため断念した症例だったものの、施行が可能であるにもかかわらず患者自身の要請で中止した例や、患者が末期の認知症のため家族との話し合いで中止を決めた例もあった。

 大平氏自身、透析歴13年の71歳の女性患者の透析治療を中止した経験を持つ。患者は死亡する3年前に広範な多発性脳梗塞を起こし、その後、著明な脳萎縮や水頭症に加えて認知症を発症。家族から「このような状態でも透析を続けなければならないのか」と問われた。重度の認知症になったら透析を中止してほしいという患者の事前の意思もあり、家族との話し合いなどを経て透析を中止。患者は5日後に死亡した。

 こうした実情を反映し、大平氏は透析の非導入や中止の指針について私案を作成(表3)。日本透析医学会も差し控えや中止のあり方について検討を進めており、今後、一定の目安が示されることになりそうだ。

(表=省略 表3 透析の差し控えや中止を判断する際の指針(大平氏による)

非癌で使いにくいモルヒネ

 一方で、癌のように緩和ケアが普及していないことも大きな課題だ。前述した平原氏らの研究では、非癌患者242例のうち、死が近いと予測された159例が死亡前1週間に呈した症状について医師に聞き取り調査を行った結果、最も多く認められたのは呼吸困難で、約半数が中等度以上の症状を呈していた。特に慢性心不全や呼吸器疾患、神経難病の患者で強い呼吸困難が認められた。

 一般的に癌患者が呈する呼吸困難の緩和には、モルヒネが有効であることが知られている。非癌患者の呼吸困難に対するモルヒネの有効性については、十分なエビデンスはないものの、欧米ではモルヒネが使われることが多い。しかしそもそも国内で、呼吸困難の緩和が適応症として認められているモルヒネは存在しない。その上、激しい咳嗽発作の鎮咳といった適応で、非癌患者に対して投与できるのはモルヒネ塩酸塩ぐらいだ。

 平原氏は「モルヒネ塩酸塩の原末でモルヒネ水溶液を作り、2mLを6時間ごとに頓用し、それでも呼吸苦があれば増量したり、投与頻度を増やしたりしている」と話す。ただ、それでも緩和できない例もある。「できれば、24時間効果が持続する徐放剤を使いたいが、モルヒネ徐放剤は癌性疼痛の適応症しか認められておらず、非癌患者に使うのは難しいのが実情だ」と同氏は言う。

 また、モルヒネは患者の状態や使い方によって、呼吸抑制をもたらす可能性もある。国立長寿医療研究センター緩和ケア診療部の西川満則氏は、「癌の疼痛緩和のように、非癌の呼吸困難の緩和にも技術的な習熟が求められる」と話す。使える薬剤が限られるばかりか、技術面でも困難さが伴うなど、非癌の緩和ケアには課題が多い。

非癌に酷な診療報酬体系

 そもそも今の診療報酬体系では、非癌患者の終末期に緩和ケアなどを提供できない。入院患者のうち、緩和ケア病棟入院料を算定できるのは癌患者と後天性免疫不全症候群(AIDS)患者に限られている。がん診療連拠点病院の指定要件として課されたことで緩和ケアチームは増えているが、チームが症状緩和を行った際に算定できる緩和ケア診療加算も、算定対象は癌患者かAIDS患者だけだ。

 非癌患者には、終末期に手厚い在宅医療を提供するのも難しい。在宅療養支援診療所在宅療養支援病院が24時間対応できる体制を確保して、週4日以上訪問診療や訪問看護を行った際に算定できる在宅末期医療総合診療料の対象は末期の癌患者に限られている。

 訪問看護に至っては、非癌の要介護者や要支援者の場合、介護保険での給付が優先となる。非癌患者であっても、急性増悪時や終末期などで医師が特別訪問看護指示書を出せば、医療保険による頻回の訪問看護が可能になるものの、指示書が出せるのは月1回で、訪問できるのは14日間だけ。介護保険には要介護度ごとに区分支給限度基準額が設けられており、特別訪問看護指示書のある期間以外に手厚い訪問看護を受けて支給額の上限を超えると、その分は全額患者の自己負担となってしまう。

 平原氏は、「終末期に見られる症状の目安を疾患別に決めて、それを参考に医師が終末期を判断する仕組みを作り、非癌患者にも手厚いケアを提供できる診療報酬体系にしてほしい」と話す。

緩和ケアチームが非癌もカバー

 放置されてきた非癌の終末期医療だが、最近その重要性を認識し、チームを組んで緩和ケアに当たろうとする動きも出てきた。11年10月、国立長寿医療研究センターにエンド・オブ・ライフ(EOL)ケアチームが発足した。最大の特徴は癌だけでなく、非癌も対象に緩和ケアの提供や、患者や家族の意思決定の支援をすることだ。

(写真=省略 国立長寿医療研究センターのエンド・オブ・ライフ(EOL)ケアチーム。左から呼吸器科医の西川満則氏と中島一光氏、看護師の横江由理子氏、薬剤師の久保川直美氏。)

 同センターの西川氏は「非癌の場合、緩和ケアを始める基準を設けるのは難しいが、予後が限られる患者や症状の悪い患者をしっかり見極めて提供したい。また、終末期に胃瘻を付けるか、人工呼吸器を付けるかなどについて迷う患者や家族もいる。主治医だけでは手に負えなければ、EOLケアチームの専従看護師が話し合いに同席して、患者の意思決定を助けたい」と話す。

 EOLケアチームのコアメンバーは、呼吸器科医2人と精神科医1人、緩和ケア認定看護師1人、薬剤師1人。活動の対象となるのは、主治医から相談を受けた入院患者や外来患者だ。既に若年性認知症で誤嚥性肺炎を起こした患者の家族と、胃瘻造設について前もって話し合ったり、間質性肺炎で急性増悪した患者に人工呼吸器を付けるかどうか、患者や家族の相談に乗ったりしている。患者や家族の意思についてはその都度カルテに記載し、今後の治療方針の決定などに生かすという。

◆【癌患者】緩和ケアが普及、看取りのパスも登場―国の後押しなどを受け、より良い看取りを目指す(本誌連動◇死なせる医療 Vol.3)
(メディカル・オンライン 2011. 12. 22)
(久保田文=日経メディカル)
〔外部リンク〕http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t164/201112/522920.html

 ある程度予後を予測でき、終末期に在宅に戻ることも可能になってきた。国の後押しもあり、終末期に手厚い緩和ケアを提供する体制も整ってきた。看取りの質の向上を図るためのパスも開発され、導入を試みる医療機関も増えている。

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 治療手段がなくなれば、必ず死が訪れる癌─。2010年、国内では約35万人が癌により死亡した。死亡年齢は非癌に比べて低いものの、高齢者の死因の多くを占めている。

終末期には輸液も最低限に

 非癌とは異なり、癌の終末期の経過は基本的に不可逆的だ。進行すると身体機能が低下し、余命1〜2カ月程度になると悪液質に陥って、歩行や経口摂取も困難になる。こうした終末期の経過は、原発巣にかかわらず多くの癌患者に共通する。悪液質になると代謝が落ちるため、それに合わせて、栄養や水分を減らしていく必要が出てくる。

 06年には日本緩和医療学会が「終末期癌患者に対する輸液治療のガイドライン」を作成。終末期には症状に応じて輸液を行わなかったり、回復可能な状態では1日2000mL程度の輸液量を500mLに絞ったりすることを推奨した。聖隷三方原病院緩和支持治療科部長の森田達也氏は「十数年前は、終末期に必要以上の水分を投与して、浮腫胸水による呼吸困難を呈する患者が多く見受けられたが、最近はそうした例を見なくなった」と話す。

(写真=省略 聖隷三方原病院の森田達也氏は「外来でも全ての癌患者に症状を聞いて、必要に応じて緩和ケアを行っている」と話す。)

 非癌に比べて予後予測がある程度可能なのも癌の特徴だ。終末期の癌の予後を予測する指標はいくつかあるが、国内では日本で作られた指標であるPPI(palliative prognostic index)が知られている。PPIでは、浮腫や呼吸困難、せん妄の有無、患者の活動状態、経口摂取量の5項目を点数化して、3週間ないし6週間を目安に予後を予測する。

 東札幌病院緩和ケア科部長の中島信久氏は「癌では、患者の症状の変化やこうした指標などを基に、月単位や週単位の予後をある程度予測し、どこで看取りを希望するか、終末期の点滴を行うかなどについて事前に患者や家族と相談することができる」と言う。

(写真=省略 東札幌病院の中島信久氏は「再発後はなるべく早い時期に、治療をしない選択肢を含め、今後の過ごし方を患者や家族と話し合うことが重要だ」と話す。)

緩和ケアはより早期から

 一般的に緩和ケアでは、疼痛や嘔気、倦怠感などの身体的な苦痛に加え、精神的苦痛、社会的苦痛なども和らげることが求められる。身体症状の緩和については、2000年以降、日本緩和医療学会が様々なガイドラインを作成し、手法が確立されてきた(表4)。

 同時に、疼痛緩和に用いることのできる薬剤の種類も大幅に増えた。WHOの癌疼痛除痛ラダーでは、痛みの強さに応じて鎮痛薬を選択するのが基本。中等度から高度の痛みには、中枢神経や末梢神経のオピオイド受容体に結合して鎮痛作用を示すオピオイドの中でも、効果が強い強オピオイドを用いる。しかし、かつて国内で癌性疼痛の緩和に使える強オピオイドはモルヒネだけだった。その後、02年にフェンタニル経皮吸収剤、03年にオキシコドン徐放剤が発売され、強オピオイドの種類は充実してきた。

(表=省略 表4 癌の終末期医療をめぐる国内の主な動き)

 一度選択した強オピオイドが強い副作用で使えない場合は、他の強オピオイドに切り替える。「昔は嘔気の副作用が出やすいモルヒネしかなかったため、嘔気を抑えるのに様々な制吐薬を試す必要があった。最近ではようやく副作用の少ない別の強オピオイドに変更して対応できるようになった」と聖路加国際病院緩和ケア科医長の林章敏氏は言う。薬剤を内服できない終末期の患者に対しては、坐薬だけでなく経皮吸収剤も使えるようになるなど、剤形も多様化した。

(写真=省略 「各診療科のカンファレンスに参加し、治療時から緩和ケアを提供できるようにしている」と話す聖路加国際病院の林章敏氏。)

 07年、癌治療の均てん化を目指して「がん対策基本法」が施行されてからは、緩和ケアの普及がさらに進んだ。地域にかかわらず質の高い癌医療を提供するため、がん診療連携拠点病院が設けられ、緩和ケアチームの配置が義務付けられたほか、医師を対象にした緩和ケアの教育プロジェクトもスタート。拠点病院と診療所などとの病診連携も進んだ。

 「最近、他の病院から紹介されるのは神経障害性疼痛を有するなど、疼痛コントロールが難しい例が中心。他院の医師のオピオイドを使いこなすレベルは上がっていると感じる」と林氏は話す。1990年にはモルヒネ換算で約200kgだった医療用麻薬(モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、研究用も含む)の消費量も、08年には約4200kgに増加した。今後は国内未承認のオピオイドの早期開発などが望まれている。

 最近では、癌と診断した直後から疼痛緩和を含む緩和ケアを始めることで、癌患者のQOLや気分障害が改善し、生存期間も延長するといった海外の試験結果が示された。癌の緩和ケアは治療と並行してより早期から行う流れになりつつある。

リスト使いきめ細かい看取り

 緩和ケアの一環として、癌患者のより良い看取りを実現するためのツールも登場している。死が近づいた患者や家族に、医師や看護師などが行うべきケアをまとめたリバプール・ケア・パスウェイ(LCP)日本語版(表5)がそれだ。LCPは英国で開発、利用されているチェックリスト形式のクリニカルパス。日本語版は、東北大保健学専攻緩和ケア看護学分野教授の宮下光令氏らの研究チームが医療現場の実情に合うよう翻訳・改変して、10年に初版を公開した。

(表=省略 表5 リバプール・ケア・パスウェイ(LCP)の初期アセスメントの一部(編集部で一部改変)
LCP日本語版は、〔外部リンク〕http://www.lcp.umin.jpでダウンロードできる。)

 LCPの対象は、余命数日または1週間程度と判断される患者。終日臥床状態や半昏睡、意識低下、経口摂取や薬剤の内服が困難な患者に対し、必要なケアを行う一方で、不必要な処置を中止し、患者や家族が安らかに過ごせるようにする。

 具体的には、チェックリストに従って、降圧薬など不必要な薬剤の投与、ルーチンで行っている検査、体位交換などを中止したり、看取りが近づいた際の連絡先を家族に確認したりする。さらに、疼痛や過度の気道分泌、呼吸困難による苦痛がないかなどをこまめに評価し、その都度必要な緩和ケアを提供できるようにする。

 以前勤務していた病院において、一般病棟に入院していた15人の癌患者にLCPを試験的に運用した経験を持つ中島氏は、「患者の死が差し迫っていることを家族に十分に説明できていなかったり、この段階で必要のない検査や処置が継続されていることが明らかになった」と話す。患者の余命が週単位から日単位に変わり、患者のケアに当たる医療者が余命が短いと感じていても、その認識を共有できないまま、やるべきケアができていないケースもまれではない。中島氏は「患者が死亡した後、医療者が看取りの時期に適したケアを提供できたと実感できる」とLCPのメリットを語る。

 現在はカルテとは別に、LCPにも患者の症状などを記入しなければならず、運用には煩雑さも残る。ただ、看取りの前後に行うべきケアが実現でき、看取りの経験のない看護師などへの教育にも役立つことから、全国で複数の病院が導入を検討中だ。

在宅医療の整備などが課題

 より良い看取りのため、体制整備が進められてきた癌の終末期医療。とはいえ、課題も残る。ひたすら治療が続けられ、最期の過ごし方などについて、ぎりぎりまで医師が患者と話し合わないケースが多いことだ。「死が差し迫った時期に『最後は家で過ごしたい』という希望が出ても、訪問看護の手配など様々な準備に時間がかかり、結局在宅に戻せないこともある」と中島氏は指摘する。

 また、在宅医療を手掛けていても、24時間体制での症状緩和の徹底などが必要な癌患者の看取りに、消極的な診療所も少なくない。年間180人近くを在宅で看取るクリニック川越(東京都墨田区)院長の川越厚氏は、「今後は、緩和ケアを専門で行う診療所などを指定して、診診連携を強化することで、癌患者を在宅でしっかり看取れるようにする必要もあるだろう」と話している。

(写真=省略 「在宅での緩和ケアでは、患者や家族の不安を取り除いて、症状緩和を徹底することが重要だ」とクリニック川越の川越厚氏は話す。)

◆【対談】在宅医が語る終末期医療の今―平原佐斗司氏(梶原診療所)×小野沢滋氏(亀田総合病院)(本誌連動◇死なせる医療 Vol.4)
(メディカル・オンライン 2011. 12. 26)
(久保田文=日経メディカル)
〔外部リンク〕http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t164/201112/522921.html&pr=1

 約20年にわたり、在宅で多くの終末期の患者を看取ってきた梶原診療所の平原佐斗司氏と亀田総合病院小野沢滋氏に、終末期医療の現状について語ってもらった。非癌患者への対応や、絶対的に不足する看取り場所の確保などが課題として挙がった。

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(写真=省略 「非癌の終末期を手厚くケアできるシステム作りが不可欠」梶原診療所 在宅サポートセンター長 平原 佐斗司氏 ひらはら さとし氏●1987年島根医大卒。島根医大第2内科、帝京大第2内科などを経て、92年から梶原診療所で在宅医療を手掛ける。2004年から現職。日本在宅医学会幹事を務める。)
(写真=省略 「外来の癌患者を在宅へつなぐ仕組みも必要」亀田総合病院 地域医療支援部長 小野沢 滋氏 おのざわ しげる氏●1990年東京慈恵医大卒。亀田総合病院での研修を経て92年内科医員、96年在宅医療部医長に就任。2001年から現職。日本在宅医学会幹事を務める。)

─在宅での看取りとの関わりについて教えてください。

小野沢 亀田総合病院(千葉県鴨川市)に併設する亀田クリニック(同市、19床)で外来と訪問診療を行っています。同クリニックは、病院から退院する要介護4以上の重症患者を中心に、常時150人程度の在宅患者を抱えています。年間40〜50人を看取っていますが、その約80%が癌です。

平原 東京ふれあい医療生活協同組合の梶原診療所(東京都北区)と宮の前診療所(東京都荒川区)で外来と訪問診療を行っています。在宅患者は梶原診療所で約180人、宮の前診療所で約60人。病院から紹介される医療依存度の高い患者に加え、近隣の診療所から紹介されて来る患者なども診ています。

 年間70人ほどが死亡し、うち40〜50人を在宅で看取っています。癌患者の在宅看取り率は、最近6年間で約75%ですが、非癌患者は50%強にとどまっており、非癌の在宅での看取りには難しさがあると感じています。

研究も教育も制度も遅れ

─非癌の終末期医療が難しいと感じる理由は。

小野沢 非癌はどの医師も常に、「治せるかもしれない」と感じるので、どこからが終末期かの判断が難しい。駄目だと思っても、輸液だけで回復することがあるからです。腎不全末期で透析をしない症例や肝不全末期の症例など、予後が予測できるケースも一部ありますが、基本的に非癌は予後予測ができません。

平原 非癌では、疾患によってたどる経過が多様で、治療選択も予後を左右します。それだけに医療者は、患者や家族がどのような最期を迎えたいと考えているのかをしっかりと把握し、一緒に治療法の選択に関わっていくことが重要です。

 非癌の緩和ケアも簡単ではありません。癌と異なり、呼吸器疾患、神経難病、腎不全など終末期に出現する症状が違うため、様々な病気を理解していないと緩和ケアもできません。現実には、各領域を専門とする医師と密に連携して緩和ケアを提供することが求められます。というのも非癌では、人工透析が腎不全の終末期に呈する尿毒症の症状を和らげるように、各疾患の標準的な治療そのものが緩和ケアになるからです。

小野沢 学会のガイドラインや医学書には、治療について説明があっても、終末期の病態や緩和ケアについてはほぼ情報がないのが実情です。基本的に非癌の臨床では、標準治療を続け、治療に反応しなくなってくれば標準治療を強化したりします。

 ただ、例えば、利尿薬による治療を続けてきた心不全患者が、終末期に腎不全を呈した場合、腎不全を犠牲にして利尿薬を投与した方が楽なのか、人工透析に回した方が楽なのかといった問題に対しては、解答はありません。

平原 今後必要なのは、非癌の終末期に緩和ケアなどの手厚いケアをスタートする目安について、各専門領域の学会が連携してコンセンサスを形成していくことではないでしょうか。同時に、非癌の終末期医療に関する診療報酬を充実させるなど、制度上の対応も必要です。

 現在は、癌であれば緩和ケア病棟に入院したり、在宅末期医療総合診療料などを算定して手厚い医療や看護を提供できるのに、非癌ではそうしたことが不可能です。さらに、臨床面での対応も不可欠です。癌患者には、疼痛や呼吸困難の緩和にモルヒネの徐放剤などを処方できますが、非癌の緩和ケアに使える薬剤はごく一部に限られています。非癌については研究も教育も制度も、何もかもが遅れています。

─非癌と比べて癌では、疼痛緩和などに使う薬剤の種類が増え、国が緩和ケアの充実を後押しするなど、終末期医療の対応が進んでいます。

平原 がん診療連携拠点病院や緩和ケアチームが整備され、緩和ケアの教育プログラムであるPEACEプロジェクトが実施されるなど、以前に比べて医療者の緩和医療への理解が深まり、技術も向上したと思います。昔は、オピオイドの投与量が少ない、薬剤の選択を誤っているなど、在宅を引き受けた終末期の癌患者がそれまでいた病院で不可解な処方をされていることもありました。

小野沢 そうですね。1980年代までは、モルヒネしか強オピオイドがありませんでした。フェンタニルもオキシコドンも使えず、海外での学会に出席しても、ほとんどの薬剤が使えない状況でした。

高齢の癌患者をどう診るか

─癌の緩和ケアについて、臨床上の課題はありますか。

平原 高齢化する癌患者への対応が課題ではないでしょうか。癌による死亡者数は今後、現在の年間約32万人から約70万人まで増加します。2006年時点で、癌による死亡者の50.9%が75歳以上で、今後はこの割合がさらに増加します。

 その結果、老年症候群や慢性疾患を合併する患者が増え、介護の需要も高まって複雑な対応を求められるようになるはずです。心不全や腎不全で内科管理が必要になったり、認知症があって意思決定できなかったりするケースが当たり前になります。全身状態が悪い、臓器障害があるなどの理由で化学療法の適応を外れ、診断直後から緩和ケアしかできない癌患者も増えるでしょう。そうした患者に対しては、純粋な癌の緩和ケアだけでは対応しきれません。

─癌では病診連携が進み、在宅での看取りも増えています。

平原 地域連携室などが整備され、病院の退院調整が機能し始めたほか、在宅医療を手掛ける診療所や訪問看護ステーションなどの受け皿も整ってきて、非癌患者よりも終末期の癌患者は比較的自宅に帰れるようになったと思います。

 ただ、課題も残っています。一つは、患者が終末期と認識しないまま、在宅に移るケースが多いことです。治療の手立てがないことを病院で知らされず、永遠に治療が続く感覚で病院にとどまる患者も少なくありません。癌治療に関わる医師は、治療手段が尽きたことを伝え、今後の過ごし方を患者と話し合う義務があると思うのですが、それが病院では行われず、その後を引き継ぐ在宅医が担う例が多いのが実情です。

小野沢 先日、私の病院の呼吸器内科の医師から小細胞肺癌の患者を紹介されましたが、カルテにはもう打つ手がないと書いてあるにもかかわらず、患者には明確に説明されておらず、「体力が付いたら化学療法をしたい」と患者は言うのです。結局、この患者には、私から治療の手立てがもうないことを伝え、先日自宅で家族に囲まれて亡くなりました。確かにこういうことを告げるのは難しいですが、どこかの段階で誰かがしないと、患者が望んだ場所で終末期を過ごすことができません。

診療所開業医の役割が重要

平原 今は、治療手段がなくなってから放り出されるように自宅に戻る患者がほとんどです。本来は治療が徐々に効かなくなる中で、治療医と在宅医とのダブル主治医の時期を設け、家に帰るかどうかなど終末期に向けた様々な方針を示しながら、緩やかに在宅に移行するのが理想です。

 私自身、その必要性を痛感して、3年前に緩和ケア外来を作り、癌治療に関わる医師に癌患者を早くから地域の在宅医に引き継いでもらう取り組みを始めました。

小野沢 さらに言えば、長年患者を診てきた地域の診療所開業医が、最期を引き継ぐのがベストです。私たちのように在宅を専門にする医師も必要ですが、それほど多くなくてもいい。基本的には地域の診療所開業医が引き継いで、困ったときに在宅専門の医師が助けるような役割分担ができればいいですね。

 患者を送り出す病院側にも課題はあります。特に今、重要だと考えているのが、病院の外来で化学療法を受けている癌患者が終末期に歩行困難になったり、悪液質に陥ったりする前に、在宅につなぐことです。現在、病院の退院調整は入院患者だけが対象。しかし外来でも、緩和的な治療を始めた時点で、終末期について患者と話し合い、必要に応じて在宅医につなぐ必要があります。

 実は私の病院で、そうした患者が何人いるか調べようと思ったのですが、難航しています。というのも、緩和的な化学療法かどうか、カルテからはすぐに判断できないからです。

─他に、終末期医療の課題はありますか。

小野沢 一つは、昔のように家族が患者の介護をできなくなってしまったことです。私がそれを強く感じたのは、1990年代から2005年にかけて、鴨川市の高齢化率が25%から30%に上がったときでした。高齢者だけの世帯や独居世帯が増え、家族が患者を支える基盤がなくなりつつあると感じました。

平原 加えて1990年代までは、家族が患者の代弁者としても機能していました。患者の意思が分からなくても、家族の中で「ここまでで結構です」という合意形成ができ、在宅で看取りができました。しかし現在は、一般的な家族でも合意形成どころか、打つ手がなくなっても「なぜ治療しないのか」などと無理難題を言ってくるケースが多くなった印象を持っています。

都市部では看取り場所不足

小野沢 最も大きな課題は、都市部やその周辺地域において、看取り場所の不足が顕著になると予想されることです。私が在宅を始めた90年代から2005年には、ゴールドプラン(高齢者保健福祉計画)ができ、介護保険が導入されて、鴨川市でも介護施設が4施設から二十数施設に増えました。

 同時期に鴨川市の高齢化率は20%から32%に上昇しましたが、介護施設が増えて、看取りの受け皿もできたわけです。在宅患者については診療所開業医が訪問診療などを行って対応できました。しかし、これから本格的な高齢化を迎える都市部やその周辺地域では、需要を満たせるだけの十分な介護施設や在宅医療拠点が整備されていないのが現状です。

平原 東京都における在宅医療の需要は、地域の高齢化率によって様々です。一部地域では高齢化のピークが過ぎ、需要も減っているようですが、北区は急速に増えているところです。さらに今後、団塊世代が多い23区の周辺地域で、看取り場所が圧倒的に不足するでしょう。病院も介護施設も増えない中で、まずは在宅で看取る患者を可能な限り増やさなければいけないというのが国の考えでもあります。

 ただ、家族介護が不可能な世帯も多く、在宅医療のリソースも無限にあるわけではないため、在宅でも無理だという場合、看取り場所をどうするか。そうした点で住まいの問題は大きいですね。

小野沢 これから増やそうとしているサービス付き高齢者向け住宅は、一つの解決策ではありますが、家賃の点で誰もが入れる住宅ではありません。また、同住宅はアットホームな雰囲気など一軒家の良さがない点も問題だと感じています。

 先日、神奈川県相模原市の、高齢化が進んだある地域を見学したのですが、そこでは住宅地に空き家が目立つ一方で高齢者住宅は満室でした。ある住宅には、健常者用の棟と要介護者用の棟があって、元気な高齢者は、介護が必要になると後者に移らなければいけない。多くの高齢者を1カ所に集めて住まわせる点では特別養護老人ホームと大差なく、抵抗を感じました。

平原 先日、宮崎市のホームホスピス宮崎というNPO法人が運営する高齢者住宅「かあさんの家・檍(あおき)」などを視察しました。かあさんの家は、介護が必要な入居者に対して常駐のホームヘルパーやボランティアが24時間対応するほか、外部の診療所や訪問看護ステーション、介護事業所の医療・介護サービスを受けながら看取りまで行います。

 ホームホスピス宮崎は、定員5人の同様の住宅を3カ所運営していますが、どこも民家の一軒家を利用しています。定員も少なく、高齢者がこれまでと同様の生活をしながら行き届いたサービスを受けることができます。私自身も今後、地域住民などと共同で、こうした住宅を都市部に展開できないか検討しているところです。(2011年11月12日、都内で収録)

◆【海外ルポ】治療差し控え進むフランス―法制定を機に緩和ケアが充実(本誌連動◇死なせる医療 Vol.5)
(メディカル・オンライン 2011. 12. 27)
(久保田文=日経メディカル)
〔外部リンク〕http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t164/201112/522922.html

 フランスでは、2005年の法制定を機に、治療の差し控えや中止が終末期医療の現場に浸透しつつある。入院患者だけでなく在宅患者に対しても緩和ケアを提供する体制の整備も進む。ただ、非癌の緩和ケアは依然として手薄で課題も残る。

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 「病院などで、輸液や経管栄養、酸素療法などを中止してほしいと希望する患者や家族が増えていると感じる」─。パリ市内にある非営利ホスピス、ジャンヌ・ガルニエの医師のダニエル・デルヴィル氏は、05年に治療の差し控えや中止が合法化された後、終末期の患者や家族の考えが変化しつつある状況をこう話す。

(写真=省略 ジャンヌ・ガルニエのダニエル・デルヴィル氏は「治療の差し控えや中止には、患者と医師との質の高い話し合いが不可欠だ」と話す。)

なくなった刑事訴追のリスク

 フランスでは25年ほど前から、終末期医療に患者の意思を反映できるようにするための制度作りが進められてきた(表6)。1999年には、「6月9日法」で患者が緩和ケアを受ける権利を保障。2002年には「3月4日法」で患者が病期を理解する権利や治療を拒否する権利を認め、医療現場では実際に、治療の差し控えや中止が行われてきた。とはいえ医療者にとって、そうした行為を実行するにはリスクも残っていた。「患者の死亡後に遠い親戚が突然やってきて、治療中止までのプロセスを問われるなど、刑事訴追されるリスクもあった」とデルヴィル氏は話す。

(表=省略 表6 フランスの終末期医療に関連する主な施策)

 しかし、03年に起きたヴァンサン・アンベール事件を機に状況が変わった。交通事故で四肢麻痺になった21歳の男性の求めに応じて母親が安楽死を図り、男性が昏睡状態に陥った後、担当医も男性の延命治療を中止して塩化カリウムを投与した事件だ。担当医と母親は殺人罪に問われた。最終的に両者とも免訴されたものの、この事件を機にフランスでは終末期医療の議論が加速。05年、医師が治療の差し控えや中止を行うことを認める「4月22日法」が制定された(表7)。

(表=省略 表7 4月22日法(別名レオネッティ法)の一部抜粋)

 同法は、患者の意思に基づいて、延命以外の効果がない治療や、過剰な治療を医師が差し控えたり、中止したりできるとした。また、命を縮めるリスクを伴う方法(例えばモルヒネの大量投与)でしか苦痛を緩和できない場合でも、患者や家族が希望すれば、緩和ケアを行うことを認めた。実施に際しては、医師は治療中止や緩和ケアがもたらす結果について患者に説明した上で、患者の意思を尊重することが求められる。加えて、話し合いの内容はカルテに記載しなければならない。患者が意思決定できない場合は、複数の医師で検討を行った上で、代理人や家族の意見、患者の事前指示書などを踏まえて、治療の差し控えや中止などを決定する。ただし、オランダやベルギーなどで合法化されている積極的な安楽死は認めていない。

(写真=省略 ジャンヌ・ガルニエ(80床)には年間1200人が入院し、1000人が死亡退院する。200人は家族の介護負担を減らす目的で一時入院する患者だ。)

 4月22日法の制定により、治療の差し控えや中止、リスクを伴う緩和ケアを実施するためのプロセスが明確になった上、代理人や事前指示書についても法律に位置付けられた。同法の影響について、パリ郊外にあるポール・ブルス病院緩和ケア科医師のシルヴァン・プルシェ氏は「以前に比べて終末期医療について患者と相談しやすくなった」と話す。

(写真=省略 「苦痛なく水分や栄養を減らす方法など、治療中止の技術の質を高める必要もある」と話すポール・ブルス病院のシルヴァン・プルシェ氏。)

 一方、デルヴィル氏は、「これまでリスクを伴う緩和ケアを行う際は抵抗感を感じたが、リスクがあっても苦痛を取る重要性が示されたことで、今はそういうこともなくなった」と語る。たとえ患者や家族の意思だとしても、治療中止やリスクの高い緩和ケアに迷いを感じる医師は少なくない。同法は、医師の心理的な負担軽減にも寄与したわけだ。

非癌でも利用できる専門病床

 法制定を機に、手厚い緩和ケアの提供体制も整いつつある(表8)。フランスの人口は約6500万人。06年の死亡者数は約52万人で、そのうち医療機関で死亡した割合は58%に上る。

(表=省略 表8 フランスの緩和ケアの提供体制)

 緩和ケアユニット(USP)や緩和ケア認定病床(LISP)は、入院患者に専門的な緩和ケアを提供するための病床だ。USPは日本の緩和ケア病棟に相当し、独立型ホスピスや病院に併設された病棟など様々な形態がある。ただし、USPはフランス全土で約110病棟、約1200床に限られている。それを補完する形で、USPのない病院などに設けられているのがLISPだ。LISPは約4000床が整備されている。

 USPの一つであるジャンヌ・ガルニエは、入院を希望する患者について、余命が何日程度か、どのような身体・精神症状があるか、独居や家族の疲弊度合いなど生活環境にどのような問題を抱えているかといった情報を、紹介元の医師から提供してもらい、多くの問題を抱える症例を優先して入院させている。ジャンヌ・ガルニエの事務長のセドリック・ブトネ氏は「特に高齢で独居の患者が入院するケースが多い」と話す。

 約90%が癌患者だが、疾患は限定しておらず、筋萎縮性側索硬化症の終末期の患者や、急性腎不全で透析を拒否して予後が短い患者など、非癌の患者も約10%を占める。平均在院日数は19日。平均在院日数が短いのには、死期が迫った患者が多いことや、診療報酬が包括払いで一定の在院日数を超えると減額されることなどが影響している。

(写真=省略 ジャンヌ・ガルニエのセドリック・ブトネ氏。「4月22日法の制定を機に患者の意識が変化してきた」と言う。)

開業一般医も緩和ケア

 USPやLISP以外の入院患者への緩和ケアの充実も図られている。現状では、終末期を迎える患者全員をUSPやLISPだけでカバーすることは到底できない。そこで近年、院内にモバイルチームと呼ばれる専門組織を設ける動きが盛んになっている。モバイルチームは日本の緩和ケアチームと同様、医師や看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどから構成され、院内の入院患者に緩和ケアを行う。現在、フランス全土に約320チームが存在する。

 モバイルチームは、病院を退院した患者の自宅にも赴く。フランスには、急性期を脱したものの医療必要度の高い入院患者を自宅に戻し、自宅を病床と見なして病院の担当医師と地域の「開業一般医」(次ページの囲み記事を参照)が一緒に治療を行う「在宅入院システム」がある。モバイルチームはそれを緩和ケアの視点からサポート。退院患者の疼痛を緩和する薬剤の投与量設定などに当たる。これにより、患者を在宅に戻しやすくなるわけだ。

 さらに近年、在宅患者への緩和ケアの提供体制も強化されている。06年の統計では、死亡者のうち自宅で死亡する割合は27%に上り、在宅での看取りも少なくない。緩和ケアに慣れていない開業一般医が在宅患者に対して緩和ケアを提供できるよう、病院と一般医が連携する仕組みも作られている。

 疼痛コントロールに難渋する患者などについて開業一般医が専門知識を持つ病院の医師に相談し、助言を得る仕組みである「地域ネットワーク」がそれだ。地域ネットワークは、連携関係を築いた病院の医師や開業一般医が手挙げ制で行政に申請し、承認を得る公的ネットワーク。

 フランスでは病診連携を促す目的で、様々な疾患に関する地域ネットワークが作られているが、緩和ケアの地域ネットワークはその1つで、フランス全土に約120ある。パリ市内の開業一般医で、パリ大一般医科教授でもあるセルジュ・ジルベルグ氏は「地域ネットワークでは、疼痛や呼吸困難に対するモルヒネ増量の仕方、経管栄養を中止する目安などについて相談している」と言う。

(写真=省略 「終末期に急変した高齢患者に対応するためにも、ネットワークのさらなる充実が必要だ」と話すパリ大教授のセルジュ・ジルベルグ氏。)

 4月22日法の制定以来、モバイルチームや緩和ケアの地域ネットワークは増加。手薄だったUSPやLISP以外の入院患者や在宅患者への緩和ケアも充実してきた。プルシェ氏は「緩和ケアの提供体制は、十分整った」と評価する。

課題は非癌の緩和ケア

 ただし、課題もある。一つは、4月22日法が制定されて6年がたった今でも、法律が十分に浸透していないことだ。ジルベルグ氏は、「4月22日法で積極的な安楽死が認められたと勘違いしている患者もおり、理解が進んでいないと感じる」と指摘する。

治療の差し控えや中止が選択肢となることや、どのようなプロセスで差し控えや中止ができるか知らない医療者もいるという。緩和的な治療を行っていてもなお患者に治療中止などの選択肢を示さず、治療継続にこだわる医師もおり、「医療者の考え方を変える必要がある」とプルシェ氏は指摘する。

 また、「終末期医療について患者と話し合うタイミングが難しい」とジルベルグ氏は言う。高齢患者については事前に、どこまで治療するか、水分や栄養を投与するか、病院での治療を望むかなどを話し合うようにしているが、「患者自身が終末期を具体的にイメージできない場合、話し合おうとすると拒絶されることも多い」とジルベルグ氏は語る。

(写真=省略 ポール・ブルス病院の緩和ケア病棟(10床)には年間180人が入院し、90%が死亡退院する。在院日数は14日。99%が癌患者だ。」

非癌の緩和ケアも課題だ。フランスの全死亡者のうち癌による死亡は約30%。前述の通り、USPやLISPは癌でも非癌でも利用できるほか、緩和に使う薬剤も疾患に関係なく投与できる。しかし、実際、USPやLISPの入院患者のほとんどは癌患者が占める。緩和ケアの地域ネットワークも、癌を対象に活動しているところが大部分。日本と同様、癌患者に比べて非癌患者の緩和ケアが手薄になっているのが実情だ。「今後は、終末期の認知症患者など、多くの非癌患者がUSPを利用したり、手厚い緩和ケアを受けられるようにしたい」とデルヴィル氏は話している。

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フランスのかかりつけ医制と地域ネットワーク

 フランスでは2004年に医療保険に関する「8月13日法」が制定され、16歳以上の国民にかかりつけ医の登録が義務付けられた。救急科や産婦人科、小児科、眼科、精神科(26歳未満)には直接受診が可能だが、かかりつけ医の紹介なしにそれ以外の診療科を受診すると、自己負担が高くなる。日本医師会総合政策研究機構フランス駐在研究員の奥田七峰子氏は、「かかりつけ医にゲートキーパーの役割を持たせ、医療費削減につなげるのが狙いだ」と話す。

 フランスでは、幅広い疾患を診療する一般医科(medecin generaliste)が専門診療科の一つとして存在し、標榜科として認められている。国内に約21万人いる医師のうち約半数が一般医で、うち約70%が開業医だ。一般医以外の専門医は、開業医と勤務医がほぼ半々。国民は専門診療科にかかわらずかかりつけ医を選択でき、開業一般医を選ぶ人もいれば、病院に勤める特定の診療科の専門医を選ぶ人もいる。「ただ、予約を取りやすいため、80%以上が開業一般医を選んでいる」と奥田氏は説明する。

 セルジュ・ジルベルグ氏は、「地域や医師によっても異なるが、1000〜1500人程度の患者を抱える開業一般医が多い」と話す。開業一般医が在宅で看取るのは、一般的に年間数人程度だという。

 プライマリケアから終末期医療までを幅広く手掛けることが求められる開業一般医をサポートする存在が、様々な疾患について設けられている地域ネットワークだ。緩和ケアのほか、周産期、老年医学、癌、糖尿病、喘息などの地域ネットワークがあり、難治例への対応など一般医が困ったときに病院に相談することができる。

 臨床上の悩みに応えるだけでなく、実務的な相談も可能。老年医学のネットワークでは、「ベッドをレンタルしたい、ホームヘルパーを頼みたいといった在宅患者の個別ニーズの相談にも応じてくれる」とジルベルグ氏は話している。
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◆「認知症の人への胃ろう」を死亡させることを前提で途中でやめることが可能になるようです。
 http://blogs.dion.ne.jp/europeus/archives/10524677.html

◆2012/01/01 「「胃ろう」延命治療 始められてもやめられないアンバランス」
 『女性セブン』2012年1月1日号
 http://www.news-postseven.com/archives/20111218_76080.html(2011.12.18 16:00)

 「2006年3月、富山・射水市民病院で末期がん患者など7人の呼吸器を外し延命治療を中止していたことが報道された。2008年7月、元外科部長ら2人が殺人容疑で書類送検されたが、2009年12月、富山地裁は一連の医療行為をみて呼吸器を外した行為が死期を早めたとはいえないと判断、不起訴処分(嫌疑不十分)とした。この「延命治療」のひとつである「胃ろう」の是非について女医の宋美玄さんと医療ジャーナリストの熊田梨恵さんが語り合った。
* *

熊田:タブーになると、正面から議論できないから悩む人も出てくると思います。胃ろうなら、「本当によかったのかな」と思いながら誰にもいえなくて悶々としていたり、介護に疲れ果ててしまって介護殺人が起こったり…。生きることや死ぬことへの無関心が、こういう問題を引き起こしていると感じます。だから安易な胃ろうも増えているのではないかと。
宋:普段考えてないと、いざそういう事態になったときに慌てるというのはありますわ。でも、ほとんどのかたが大体そうやと思うんです。健康なときに病気になったときのこととか、死ぬときのことなんてあまり考えない。
 でも知識として知っておかないと、いざ追い込まれたときの対応に違いが出てくると思います。胃ろうも「いまの状態が本人にも家族にも幸せだとは思えないから注入をやめたい」と思っても、やめたら医師が罪に問われる可能性があるので、そうはいかない。追い込まれて初めて、そういう現実を知るかたが多いと思います。
熊田:治療は、始めることはできますけど、やめることができないんですよね。そこが日本は凄くアンバランスだと思います。胃ろうを始めることはスムーズにできても、やめようと思ったら殺人罪に問われるかもしれないなんて。
始めた治療をやめられない結果、人として尊厳のある状態とは残念ながらいえない形で生きているかたもおられます。認知症末期で本人は意識もなく寝たきりなのに、胃ろうで生かされていたりとか…。いまの日本は尊厳ある状態での「生」をまっとうできなくて、その結果尊厳死ができない状態がある気がします。


UP:20110224 REV:20110630, 1102, 1222, 24, 20120203, 0314
安楽死・尊厳死 euthanasia / death with dignity 
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