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安楽死・尊厳死:2007年4月〜6月

安楽死・尊厳死 -1970's 1980's 1990's 2000- 2004 2005 2006 2007


製作:新田千春(立命館大学大学院先端総合学術研究科・2006入学)

京都府長岡京市の開業医がALSの義母に告知をせず、死に至らしめた件

良い死!研究会会員募集中
日本尊厳死協会
安楽死・尊厳死法制化を阻止する会
『生存の争い――のために・1』刊行。


◆2007/04/03 「終末期医療に関するガイドラインにおける「積極的安楽死」の記述に対する要望書」
◆2007/04/03 「生きる 心のケア−最後の思いと向き合う」
 読売新聞 2007年4月3日
 
◆2007/04/04 「射水市長 定例会見」
 北日本放送 2007年4月4日14時50分
 http://www2.knb.ne.jp/news/20070404_10881.htm
◆終末期医療を見つめるリフォレスト・森 勇香→厚生労働省医政局総務課終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会 2007/04/06 「要望書」
◆2007/04/06 「延命拒否の意思を明確に 高岡の6ライオンズクラブがカード作成」
 北国新聞 2007年4月6日01時57分更新
 http://www.toyama.hokkoku.co.jp/_today/T20070406201.htm
◆2007/04/07 「終末期医療で大規模意識調査へ ガイドラインの影響も」
 サンケイ新聞15時03分
 http://www.sankei.co.jp/seikatsu/kenko/070407/knk070407000.htm
◆2007/04/09 「終末期医療、複数メンバーで判断・厚労省]
 日本経済新聞 2007年4月9日1時22分
 http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070409AT1G0903G09042007.html
◆2007/04/09 「延命中止」で罪に問われた医師告白」
 TBS 2007年4月9日15時57分 http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3535983.html
◆2007/04/09 「終末期医療のガイドラインまとまる」
 TBS 2007年4月9日17時10分 http://news.tbs.co.jp/headline/tbs_headline3536044.html
◆2007/04/09 「患者の意思決定「最重要」 終末期医療で国が初指針」
 共同通信 2007年04月09日18時27分
 http://www.kitanippon.co.jp/contents/kyodonews/20070409/93658.html
◆2007/04/09 「終末期医療:国が初の指針 延命治療の中止など盛り込む」
 毎日新聞 2007年4月9日22時23分
◆2007/04/09  「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」(たたき台)について(意見)」
 人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)会長大塚孝司→厚生労働省医政局総務課終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会
◆2007/04/09 第3回終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会
◆2007/04/09 第3回終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会についての報道
◆2007/04/10 「延命中止、チームで判断 国が初指針」
 朝日新聞 2007年04月10日00時56分
http://www.asahi.com/national/update/0409/TKY200704090296.html
◆2007/04/10 「厚労省が延命治療中止で指針…医師の独断避ける」
 読売新聞 2007年4月10日1時45分
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070409it13.htm
◆2007/04/10 「延命、患者意思第一に 初の指針」
 読売新聞 2007年4月10日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070410ik02.htm
◆2007/04/10 「手続き優先、定義先送り…終末医療初の指針−解釈分かれ混乱も」
 読売新聞 2007年4月10日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070410ik05.htm
◆2007/04/10 「患者の意思決定「最重要」 終末期医療で国が初指針」
 中国新聞 2007年4月10日
 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200704090391.html
◆2007/04/10 「患者の意思「最重要」 終末医療、国が初指針」
 中日新聞2007年4月10日 朝刊
 http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007041002007405.html
◆2007/04/10 「延命治療国が指針 免責基準先送り チーム組み独断排除 患者の意思を最優先」
 西日本新聞2007年4月10日掲載
 http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/4816/
◆2007/04/11 「終末医療指針*一歩前進とは言えるが」
 北海道新聞 2007年4月11日
 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/19874.html
◆2007/04/11 「終末期医療指針 合意形成が欠かせない」
 中国新聞 2007年4月11日
 http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200704170197.html

◆2007/04/11 「終末医療指針 患者も医師も救われぬ」
 東京新聞 2007年4月11日
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007041102007727.html
◆2007/04/11 「終末期医療指針 確かに一歩前進だが…」
 秋田魁新聞 2007年4月11日 09:37 更新
 http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20070411az
◆2007/04/11 「終末期医療指針 さらなる議論欠かせない」
 山陽新聞 2007年4月11日掲載
 http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2007/04/11/2007041108492076010.html
◆2007/04/11 「終末期医療指針 残された課題は多く重い」
 産経新聞 2007年4月11日05時10分
 http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070411/shc070411001.htm
◆2007/04/11 「終末期医療−「指針」機に活発な議論を」
 沖縄タイムス 2007年4月11日朝刊
 http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070411.html
◆2007/04/11 「終末期医療指針 まず患者を支える態勢整備を」
 宮崎日日新聞 2007年4月11日
 http://www.the-miyanichi.co.jp/column/index.php?typekbn=1&sel_group_id=7&top_press_no=200704112302
◆2007/04/11 「終末期医療の指針 最低限のルールはできたが」
 愛媛新聞 2007年4月11日
 http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017200704119332.html
◆2007/04/12 「終末期医療GLまとまる‐患者の自己決定が原則」
 薬事日報 2007年04月12日
 http://www.yakuji.co.jp/entry2795.html
◆2007/04/14 「「疾病ごと延命中止基準、終末期を定義…尊厳死協会報告」
 読売新聞2007年4月15日3時1分
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070415it01.htm?from=top
◆2007/04/14 「日本尊厳死協会:延命措置中止の判断基準などで試案」
 毎日新聞 2007年4月14日20時34分(最終更新時間 4月14日21時08分)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070415k0000m040062000c.html
◆2007/04/15 「終末期医療指針/ホスピス中心の体制が必要」
 世界日報2007年4月15日
 http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh070415.htm
◆2007/04/15 「新型老健施設は終末期も対応 厚労省、療養病床転換促す」
 朝日新聞2007年4月15日09時53分
 http://www.asahi.com/life/update/0414/TKY200704140399.htm
◆2007/04/20 「患者の一生を大事にすべし−終末期の患者に温かい心医療を」
 日本消費経済新聞
 http://www.nc-news.com/frame/20070423/gan070423.htm

◆20070422 フジテレビ・報道2001「代理母・延命治療中止――生と死 渦中の医師・当事者が語る」(07:30〜08:55)
 *川島 孝一郎立岩真也 他出演  『報道2001』「今週の調査」より
 http://www.fujitv.co.jp/b_hp/2001/chousa/2007/070422.html  (4月19日調査・4月22日放送/フジテレビ) 【問2】あなたは、「安楽死」や「尊厳死」を日本でも認めるべきだと思いますか。
  YES 75.2%
【問3】あなたが、もし治る見込みのない病気に侵され、死期が迫っていると告げられた場合、単なる延命治療は中止してほしいと望みますか。
 YES 69.6% NO 20.8% (その他・わからない) 9.6%
【問4】あなたは、「安楽死」や「尊厳死」を日本でも認めるべきだと思いますか。
 YES 75.2% NO 11.2% (その他・わからない) 13.6%

◆2007/05/17 「老健施設医療を強化…厚労省方針」
 読売新聞 2007年5月17日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kaigo_news/20070517ik05.htm
◆2007/05/18 「「患者参加」共に考えてこそ」
 読売新聞 2007年5月18日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/gantowatashi/20070518ik05.htm
◆2007/05/19 的場 和子藤原 信行堀田 義太郎 「英国における尊厳死法案をめぐる攻防1――2003−2006」
 日本保健医療社会学会第33回大会 於:新潟県医療福祉大学
◆2007/05/19 安部 彰大谷 通高的場 和子
 「英国における尊厳死法案をめぐる攻防2――議会外キャンペーンの様相」
 日本保健医療社会学会第33回大会 於:新潟県医療福祉大学
◆2007/05/19 堀田 義太郎的場 和子
 「英国における尊厳死法案をめぐる攻防3――英国Leslie Burke裁判Munby判決の再評価」
 日本保健医療社会学会第33回大会 於:新潟県医療福祉大学
◆2007/05/20 「「尊厳死」法制化へ議論 金沢で医療関係者らフォーラム=石川」
 読売新聞東京朝刊 2007年5月20日
 https://db.yomiuri.co.jp/bunshokan/
◆2007/05/20 「【社説】週のはじめに考える 高瀬舟の昔からの課題」
 東京新聞 2007年5月20日
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007052002017529.html
◆2007/05/22 「和歌山県立医大 呼吸器外し患者死亡」
 読売新聞 2007年5月22日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070522ik0e.htm
◆2007/05/22 「和歌山県立医大の医師、呼吸器外し80代女性死亡」
 読売新聞 2007年5月22日
 http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20070522p102.htm
◆2007/05/24 「終末期医療 あなたならどうするか」
 信濃毎日新聞 2007年5月24日
 http://www.shinmai.co.jp/news/20070524/KT070523ETI090004000022.htm
◆2007/05/24 「延命治療中止 現場の混乱招かぬ指針に」
 山陽新聞 2007年5月24日
 http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2007/05/24/2007052408311020001.html
◆2007/05/25 立岩真也 「死の決定について・5」(医療と社会ブックガイド・71)
 『看護教育』48-05(2007-05):-(医学書院)[了:20070402]
◆2007/05/30 「[解説]療養病床の老健施設転換」
 読売新聞 2007年5月30日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kaigo_news/20070530ik04.htm
◆2007/05/31 「臨死状態における延命措置の中止等に関する法律案要綱(案)」
 尊厳死法制化を考える議員連盟` 2007年5月31日
 http://www.geocities.jp/sonsigifu/07.6.21b.pdf
◆2007/06/03 「延命治療のあり方を論議 熊本で学術集会」
 熊本日日新聞 2007年6月3日
 http://kumanichi.com/news/local/index.cfm?id=20070602200014&cid=main
◆2007/06/06 「厚労省 患者意思で延命中止 がん終末期医療に指針案」
 埼玉新聞 2007年6月6日
 http://www.saitama-np.co.jp/news06/06/05p.html
◆2007/06/06 「患者の意思あれば延命中止 がん終末期医療に指針案」
 共同通信(USFL.COM - New York,NY,USA)2007年6月6日 13:16米国東部時間
 http://www.usfl.com/Daily/News/07/06/0606_006.asp?id=53838
◆2007/06/07 「「臨死判定」で尊厳死容認 延命中止法案の要綱案」
 中国新聞 2007年6月7日
 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200706070249.html
◆2007/06/08 「尊厳死を認めようと有志議員が法案要綱案を公表」
 読売新聞 2007年6月8日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070608ik07.htm
◆2007/06/10 「「臨死判定」で尊厳死容認・超党派議連法案要綱案」
 日本経済新聞 2007年6月10日
 http://rd.nikkei.co.jp/net/news/shakai/headline/u=http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070607STXKE020007062007.html
◆2007/06/13 「脳死は、終末期医療のあり方にも密接に関連する。」
 山陽新聞(臓器移植取材班) 2007年6月13日
 http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/2007/yureru/5_2.html
◆2007/06/16 「日本医師会が終末治療で指針案、訴追回避へ患者意思尊重」
 読売新聞東京朝刊 2007年6月16日
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070616i401.htm
◆2007/06/17 「医師不足43%実感 尊厳死法制化は賛成80%」
 中日新聞 2007年6月17日
 http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007061702024762.html
◆2007/06/20 「「臨死状態における延命措置の中止等に関する法律案要綱(案)」に対する意見 」
 日本医師会 2007年6月20日
 http://www.geocities.jp/sonsigifu/07.6.21a.pdf
◆2007/06/21 「老人保健施設の医療体制強化、厚労省委が追加措置案」
 日本経済新聞 2007年6月21日07:01
 http://rd.nikkei.co.jp/net/news/keizai/headline/u=http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070621AT3S2000W20062007.html
◆2007/06/26 「スピリチュアルケア学会発足へ 神戸で9月設立大会」
 神戸新聞 2007年6月26日
 http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000414651.shtml
◆2007/06/27 「尊厳死法制化に関係者の合意は?−−日医が土壇場で課題指摘」
 歯科医療未来へのアーカイブスX 2007年6月27日
 http://www.japan-medicine.com/shiten/shiten1.html


 
 
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                              平成19年4月3日
厚生労働省医政局総務課
終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会 殿

日本ALS協会会長 橋本 操
日本ALS協会近畿ブロック会長 和中勝三
DPI日本会議議長 三澤 了
DPI日本会議事務局長 尾上浩二
全国自立生活センター協議会代表 中西正司
全国青い芝の会会長 片岡 博
NPOせきずい基金理事長 大濱 眞
難病をもつ人の地域自立生活を確立する会代表 山本 創

終末期医療に関するガイドラインにおける「積極的安楽死」の記述に対する要望書

  日ごろより、医療行政におきまして大変お世話になっております。
  3月5日の検討会資料にて示されました「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」から、たたき台にはあった「1、終末期医療及びケアの在り方」の、B「どのような場合であっても「積極的安楽死」や自殺幇助の死を目的とした行為は医療として認められない」の一文が削除されていますが、これを再び記載することをご検討ください。
 意思決定のできない、あるいは意思疎通が困難な重度の身体知的障害者や高齢者、重症患者の生命を医師や家族の独善による積極的安楽死(治療中止)から守るためには、この一文は大変に重要です。私たちは、ガイドラインの文言に「積極的安楽死の禁止」が記載されることを強く要望いたします。


cf.日本ALS協会DPI日本会議青い芝の会難病をもつ人の地域自立生活を確立する会


 
 
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◆2007/04/03 「生きる 心のケア−最後の思いと向き合う」
 読売新聞 2007年4月3日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070404ik05.htm

  「あの言葉の意味は、これだったのか」。熊本大病院・血液内科病棟の看護師、安達美樹さん(36)は2004年の暮れ、担当だった患者の男性(当時43歳)の葬儀に足を運び、がく然とした。
  急性白血病で亡くなった男性は、優れた内科医だった。「患者の立場も経験した医師として、グレードアップしたい」。葬儀で読み上げられた参列者あての本人の手紙には、医師としての熱い思いと、それがかなわなかった無念さがつづられていた。その悔しさに、寄り添う言葉がかけられなかった。安達さんは、死のふちに立った患者と向き合うことの難しさを思い知らされた。
  ◇ 「心が痛いから、意識を消してほしい」
  男性がこう言ったのは、亡くなる3週間ほど前のことだ。夜勤だった安達さんはこの言葉を伝え聞き、病室に駆けつけた。男性が求めたのは「鎮静」という医療行為。苦痛から患者を解放するために、薬で意識を喪失させることだ。通常、対象となるのは体の痛みが激しい患者で、「心が痛い」という理由で行ったことは、この病棟ではかつてない。男性の場合、体の痛みはコントロールできている。残された時間はわずかなのに、鎮静を行えば、自分や家族と向き合う最後の時間を永久に失いかねない。男性は安達さんに部屋の電気を消すよう頼み、真っ暗な部屋で言った。「希望がないまま生きるのは、つらいんだ」
  ◇ 熊本市内の病院の医長だった男性は、責任感が強く、患者思いで、周囲から慕われていた。病気が判明してからは、自ら検査データを確認し、骨髄移植などの治療法を綿密に選んだ。一度は職場復帰を果たしたものの、10か月後に再発。自分の病状をよく分かっていた男性は、傍らで励まし続ける妻(45)に「君の気持ちは分かるが、あきらめてくれ」と言って、無理な延命を行わないよう希望した。そんな男性が、暗闇の中で泣いている。臨床工学技士から、看護師に職を転じて2年半。安達さんは、かけるべき言葉を見つけられず、ただ手を握り、1時間、一緒に泣いた。
  結局、夜だけ一時的に鎮静をかけることになった。男性は妻や3人の子供とじっくり語らい、息を引き取った。だが、「心が痛い」と言った男性の心の奥に、安達さんは迫れなかった。葬儀で知った男性の医師としての使命感と絶望。安達さんは「自分に看護師を続ける資格はないのではないか」と思った。
  ◇ 治癒が望めなくなった患者が「もう死にたい」「楽になりたい」と口にすることは、珍しくない。「大学病院の緩和ケアを考える会」代表世話人の高宮 有介・昭和大専任講師は「死への不安、家族への思い、生きる意味など、患者の心には深く、複雑な思いが渦巻いている。それらを完全に理解することはできないが、理解しようと一緒に悩むことで、心の痛みを和らげることはできると思う」と語る。
  悩む安達さんを、幸史子看護師長(48)は「この経験こそ、今後に生かしてほしい」と励ました。安達さんは今も、同じ病棟で働く。「以前は病状の厳しい患者から逃げる気持ちがあったけど、あれ以来、『厳しい患者さんこそ逃げちゃいけない』と思えるようになった」。将来はがんの専門看護師になりたいと、安達さんは思っている。
  ◇ 医学の進歩で、がんに伴う痛みを取り除く技術は向上している。だが、患者は体だけではなく、心の痛みにも苦しんでいる。今回は、終末期医療の現場での「心のケア」について考える。」


 
 


◆2007/04/04 「射水市長 定例会見」
 北日本放送 2007年4月4日14時50分
 http://www2.knb.ne.jp/news/20070404_10881.htm

  「射水市の分家市長は4日の定例会見で、延命措置の中止が発覚してから1年が経った射水市民病院について、「終末期医療に対する最低限の基本的な考え方や体制は整った」との見解を示しました。
  射水市民病院では問題の発覚後、これまでに8回の終末期医療委員会を開き、終末期のがん患者や、救急処置で人工呼吸器が付けられたものの意識の回復が見込めない患者に対する基本姿勢などについて検討を進めています。
  4日の定例会見で分家市長は、「1年が過ぎ、これまで基準が無かった終末期医療の問題について、国がガイドラインを作ろうとするきっかけとなったことは良かった」と振り返り、「市民病院としても検討委員会などを通して終末期医療に対する最低限の基本的な考え方や体制が整ったといえる」との見解を示しました。
  市民病院では、引き続き月に1回程度のペースで終末期医療委員会を開き、検討を進めることにしています。」(HP掲載全文)


 

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◆2007/04/06 「延命拒否の意思を明確に 高岡の6ライオンズクラブがカード作成」
 北国新聞 2007年4月6日01時57分更新
 http://www.toyama.hokkoku.co.jp/_today/T20070406201.htm
 高岡市内の6LCが作成した「延命措置の中止の意思カード」
 高岡市内の六ライオンズクラブ(LC)は、不治の状態で死期が迫った際に、延命措置を拒否する意思表示カードを作った。事前に家族などに考えを明らかにするとともに、射水市民病院の「安楽死」疑惑に端を発した終末期医療への関心を高めるために活用する。
 カードは高岡、高岡古城、高岡志貴野、高岡南、高岡中央、高岡フラワーの六LCで構成するLC国際協会334―D地区2リジョン1ゾーンが作成した。
 縦五・五センチ、横八・五センチのカードには、表面に「私は延命措置を望みません」、裏面に「意識の回復が見込めないと診断された際には生命維持装置を使わずに、自然の眠りにつけるようにしてください」との文言と本人の署名欄、日付を印刷した。
 カードは本人用、家族用の二枚一組で用いる。八千枚を印刷し、各LCの例会で会員などに配るほか、希望者にも一枚百円で頒布する。吉岡隆一郎チェアパーソンは「終末期医療に関心を高めるために活用していきたい」と話した。


 

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◆2007/04/07 「終末期医療で大規模意識調査へ ガイドラインの影響も」
 サンケイ新聞 2007年4月7日15時03分
 http://www.sankei.co.jp/seikatsu/kenko/070407/knk070407000.htm

  「厚生労働省は、終末期医療について、国民や医療従事者の意識変化を探る大規模調査を来年初めにも実施することを決めた。終末期医療をめぐっては、国として初のガイドライン(指針)が9日にも同省の検討会でまとまる見込み。同省は「指針づくりは対策の第一歩」としており、意識調査を踏まえて、国民の合意を得られる施策を進めたい考えだ。
 調査対象は一般の人のほか、医師や看護師、介護・福祉施設職員などを想定している。今年秋ごろをめどに有識者でつくる検討会を設置。検討会は具体的な調査方法や設問などを固め、結果を受け今後の終末期医療の在り方について提言する。
 終末期医療をめぐる意識調査はこれまで平成5、10年、15年にも実施。前回15年2〜3月に約1万4000人を対象にした調査では、延命治療を望むかどうかを事前に書面で意思表示する「リビングウイル」に賛成する人が、初めて一般国民の過半数を占めた。
 また延命治療の中止などを決める手順に悩んでいる医療従事者が多いことも判明。これを受け現在検討中の国の指針案には、延命中止を決める場合の手続きなどが盛り込まれた。
 今回の意識調査も同規模程度で実施。指針策定後になるため、厚労省は指針が医療現場に与える影響についても調べる意向だ。
 昨年3月、富山県の射水市民病院で人工呼吸器取り外しが発覚したことをきっかけに、終末期医療に対する関心が高まり、意識が変化している可能性もある。厚労省は「この問題には国民の合意が欠かせない。調査結果を新たな対策の基礎資料にしたい」としている。」


 

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◆2007/04/09 終末期医療、複数メンバーで判断・厚労省
 日本経済新聞 2007年4月9日1時22分
 http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070409AT1G0903G09042007.html
  厚生労働省は9日、死期が迫った患者に対する終末期医療の決定手順について、「患者本人の決定が基本」と定めた初めての指針を大筋で決定した。患者の意思 を文書に残すことを明記し、患者の意思が確認できない場合は「家族と医療従事者との十分な合意が必要」と指摘した。さらに、医師の独断によるトラブルを 避けるため、複数の医療従事者によるチームでの判断を求めた。
 指針は、厚労省の検討会(座長・樋口範雄東大教授)がまとめ、本編と解説で構成。細部を修正のうえ、近く厚労省が正式決定し、自治体などを通じて全国の病院に周知する。人工呼吸器の取り外しの基準や、刑事責任の免責などには踏み込んでいない。


 

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◆2007/04/09 「「延命中止」で罪に問われた医師告白」
 TBS 2007年4月9日15時57分 http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3535983.html

 「終末期医療の最大の焦点、「延命治療の中止」を国が初めて容認しました。殺人罪との境界が曖昧として賛否が渦巻くなか、この程、殺人の罪に問われた女性医師がJNNとの単独取材に応じ、「ガイドラインができても問題は解決しない」と語りました。
 厚生労働省の検討会が9日にまとめたガイドラインでは、終末期医療は患者本人の決定を基本として進められることを「最も重要な原則」としています。
 そのうえで、人工呼吸器の装着や、外すというような「医療行為の開始や中止など」は「チームで慎重に判断すべき」として、医師1人の独断で行うことを制限しています。
 患者に意識がない場合は家族が代わりに、家族がいない場合には医療チームが判断しますが、これにより、国は「延命治療の中止」を初めて容認した形です。しかし、具体的な条件は示されておらず、実効性を疑問視する声も上がっています。
 「もう少しクリアにしなければ、現場の医者が困ると思う」(日本尊厳死協会 高井正文 事務局長)
 一方で、今回のガイドラインで、十分な治療が行われなくなってしまうのでは、という懸念もあります。
 「『生命を尊重する』というのを入れないと、一番弱い立場の人を守れない」(日本ALS協会 川口有美子さん)
 こうした声があがる背景には、ガイドラインが示される前にも、意識のない患者の命が失われてきたという現実があります。
 去年3月、富山県射水市民病院で意識がない患者7人の人工呼吸器が取り外され、死亡していたことが発覚。
 5年前には、神奈川県・川崎市で男性患者の気管チューブを抜き、筋弛緩剤を投与して死亡させたとして、横浜市に住む須田セツ子医師(52)が殺人の罪に問われ、懲役5年が求刑されました。
 (Q.一連のことが、医療の現場に与えた影響をどう考える?)
 「本当に申し訳ないという。いろんな方に申し訳ないと思う。医療者だけじゃなくて、国民の皆さんにも」(須田セツ子 医師)
 須田医師は、事件後初めて、メディアの単独インタビューに応じました。
 「刑事事件となった被告としては、一旦起訴されたら、殺人者というレールに乗っかっていくわけですね。被告人が言うことは、もう信じてもらえないという怖さになってきます」(須田セツ子 医師)
 今年2月の控訴審判決で、東京高裁は「家族からの要請があった」という須田医師の主張を認めましたが、「治療行為の中止は適法とはいえない」と指摘。懲役 1年半・執行猶予3年と、一審判決よりも減刑されたものの、有罪判決に変わりはありませんでした。しかし、須田医師は「あくまでも医療行為の一環だった」 として上告しています。
 「人様に、後ろめたいことはもちろんないですし、少なからずついてきてくださっている患者さんがいて、そこでは逆に、皆さん殺人犯だとは思っていないんだなということは思えるので」(須田セツ子 医師)
 須田医師が罪に問われた「延命治療の中止」を容認する今回のガイドライン。
  「どこからが終末期医療で、延命治療中止していいっていうのが非常に難しくて、そのガイドラインを作れば作るほど、そこにがんじがらめにされてしまうので はないか。やはり生きている限り死は避けられなくて、それを無事にお迎えさせてあげられる、私たちは、ほんのちょっとした援助しかできないんですけども、 それのお手伝いをする時にやっていくのは、司法とか何とかじゃなくて、本音なんですね。ですから、本音の中でやろうとすると、どうもガイドラインや司法っ ていうのはそぐわない」(須田セツ子 医師)
 「(ガイドラインは)ドクターには、よかったのではないか。(患者側は)今回のことの本質を見ていない。自分たち(患者)の権利ではない」(ALS患者 橋本 操さん)
 多くの課題を残したまま、わずか3回で幕を閉じた国の検討会。厚生労働省は、出来るだけ早い時期にガイドラインを正式に公表したいとしています。」


 

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◆2007/04/09 「終末期医療のガイドラインまとまる」
 TBS 2007年4月9日17時10分 http://news.tbs.co.jp/headline/tbs_headline3536044.html
 「死期が迫った患者の延命治療のあり方を検討してきた厚生労働省の検討会は、患者の意志を最大限尊重したうえで、医療チームの判断で延命中止を可能とする初めてのガイドラインをまとめました。
 この問題は去年3月、富山県の射水市民病院で、医師が患者の呼吸器をはずし、7人が死亡していたことが発覚したことを受け、厚労省が検討会を作って審議していました。この日まとまったガイドラインでは、延命治療の中止については、患者の意志は文書で残し、最大限尊重したうえで、主治医の独断による延命治療の中止を避けるため、看護師やソーシャルワーカーなども加わった「医療・ケアチーム」が判断するとしました。
 患者の意志が確認出来ない場合、家族らから患者の意志を推定するとし、患者の意志の推定もできない場合は家族らと話し合うなどして、「患者にとって最善の治療方針をとることを基本とする」としました。
 また、今回のガイドラインは、ガン末期の痛みの緩和などの「緩和ケア」の重要性を前面に出し、生命の短縮を目的とする「積極的安楽死」は対象外としています。国が終末期医療のガイドラインを作るのは初めてで、議論を呼びそうです。」


 

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◆2007/04/09 「患者の意思決定「最重要」 終末期医療で国が初指針」
 共同通信 2007年04月09日18時27分
 http://www.kitanippon.co.jp/contents/kyodonews/20070409/93658.html
  「厚生労働省の検討会(座長・樋口範雄東大大学院教授)は9日、治る見込みがなく死が避けられない患者への延命治療の開始・中止などの手順を定めた、国として初の指針を大筋で決定した。患者本人の意思決定を基本に進めることを「最も重要な原則」と明記。医師の独断を避けるため、医師や看護師らの「医療・ケ アチーム」で対応し、患者との合意内容は文書化する−としている。
 患者の意思が分からない場合は「家族と話し合い、患者にとって最善の治療方針 をとる」ことも盛り込んだ。近く正式決定し、同省が自治体や医療機関に通知する。統一的基準がなかった終末期医療に初めてルールが導入される一方、どのよ うな場合に人工呼吸器の取り外しが許されるかといった個別の医療行為の是非や、延命を中止しても医師が「殺人罪」に問われない基準などは今後の課題として 残った。
 指針「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は、本編と解説編で構成。指針の趣旨を「終末期を迎えた患者、家族と医療従事者が、最善の医療とケアを作り上げるプロセスを示す」と位置付けた。」


 

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◆2007/04/09 「終末期医療:国が初の指針 延命治療の中止など盛り込む」
 毎日新聞 2007年4月9日22時23分
  厚生労働省の「終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会」が9日開かれ、回復の見込みのない末期状態の患者に対する延命治療の中止などについて、 患者本人の決定を基本にしたうえで複数の医療従事者が判断することなどを盛り込んだガイドライン(指針)に合意した。終末期医療に関する国の指針は初め て。同省は近く、ホームページなどを通じて指針を全国の医療機関に周知する。
 指針は終末期医療について、患者が医療従事者から適切な情報提供を 受けるなど、インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)の重要性を指摘。富山県射水市民病院での人工呼吸器外しなどで問題化した医師の独断を 防ぐため、治療の中止などは、医師や看護師など複数の職種の医療従事者による「医療・ケアチーム」が慎重に判断するとした。
 治療方針を決定する場合、患者と医療従事者が話し合い、合意内容を文書で残す。患者本人の意思が確認できない場合は、家族が推定した意思を尊重。家族も推定できなければ、医療・ケアチームと家族が話し合い、患者にとっての最善の治療方針を決める。
 一方、2月に日本救急医学会が公表した指針案に盛り込まれていた終末期や、中止の対象になる延命治療の定義は、検討会で議論されず、盛り込まれなかった。
  同省は今年度、終末期医療に関する検討会を新たに設置し、国民の意識調査などを行う方針。座長の樋口範雄・東京大教授は「指針は終末期医療の問題を検討し ていく第一歩に過ぎない。終末期の患者のためにこれからどうしていけばいいかを考えるきっかけになってほしい」と話した。【大場あい】」

 

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2007年4月9日

厚生労働省医政局総務課
終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会 御中

人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)
会長 大塚 孝司

事務局 〒562-0013 大阪府箕面市坊島4-5-20
箕面マーケットパーク ヴィソラWEST1 2F
  みのお市民活動センター内
TEL&FAX 072-724-2007
E−Mail bakuinfoあっとbakubaku.org

 平素より、医療行政におきまして、大変お世話になっております。
  当会は、現在、全国に約300家族の正会員がおり、そのうち自宅で生活している子どもたちは200名ほどおります。また、そのうち、180名ほどが幼稚 園・保育所、小・中・高等学校や大学、就労年齢者です。これまで、子どもたちの多くは、難病や事故により人工呼吸器を必要としていますが、人工呼吸器を パートナーに、それぞれの地域で様々な困難に直面しながらも、年齢に応じた当たり前の社会生活を送りたいと願い、道を切り拓いて来ました。
 現在、検討されている「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」の「たたき台」の内容をみますと、ガイドラインの制定により、今後世の中が重度障害や難病をもつ子どもたちの未来が否定されていく方向に進んでいくのではないかという大きな危惧を覚えます。そこで、ぜひ、私たちの意見をお伝えしたく、次に記すものです。
 意見募集の締め切りに間に合うように提出できませんでしたこと、また、意見募集の様式に添った書き方になっておりませんことをお詫びいたします。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。

「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」(たたき台)について
(意 見)

人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)
会長 大塚 孝司

  2006年3月、富山県射水市民病院での人工呼吸器外し事件以来、メディアは終末期医療に関する報道合戦を繰り広げ、国は尊厳死法制化や終末期医療のガイ ドライン作成の動きを活発化させてきた。この問題も初めの頃は高齢者の問題として取り上げられていたようだが、同年7月には新生児や小児を対象とした終末 期医療についてのガイドラインについても報道されるようになってきた。
 今回のガイドラインでは、「患者の意思決定を基本」とか「家族等の話から意思を推定し尊重」などと記されているが、これらが本当に患者にとって「最善の利益」となるのだろうか? さらに、何をもって「終末期」と判断されるのだろうか?

社会の都合?
  いま、国の政策により医療費抑制が命題に上げられている。その対策として障害者や難病患者等の医療費が標的となり、長期入院やリハビリが受けられない現状 である。今回の「終末期医療に関するガイドライン(たたき台)」の公表は、私たちからみれば、回復の見込みがないとされる患者を「終末期の状態」とし、治 療の打ち切りをしようとしているとしか感じられない。また、新生児の場合も同様な方向にあるのか、最小限の治療のみを行う「看取りの医療」が取りざたされ ている。なんだか「病気・障害がある赤ちゃんは、医療費削減のため速やかに逝ってもらう」と言われているような気がしてならない。
 マスコミは 「尊厳死」という言葉を「死に方を自己選択・自己決定する」などと、さも「美しい死に方」のように報道することも多く、社会全体が「生きる価値のある命」 と「生きる価値のない命」の選別に向かって行く恐れを強く感じる。病気や障害を理由に他者から「生きるに値しない命」と判断されるなど御免蒙る。

「終末期」の「延命」治療?
  「終末期」の過剰な延命治療として真っ先に取り上げられるのが、人工呼吸器の装着と経管栄養である。当会の子ども(バクバクっ子と呼ぶ)たちのほとんど は、病状や障害の回復の見込みは期待出来ず、日常的に人工呼吸器を必要とし、経管栄養をしている比率も高く、意思表示も明確でない状況も多々ある。
し かし、私達はそれらの状態を「終末期」とか「過剰な延命治療が施されている状態」とは捉えていない。眼鏡や車いすと同様に、人工呼吸器は自力での呼吸が困 難な人達の肺に空気を送るための「補装具」であり、経管栄養は、食事や水分補給のひとつの形である。これらの器械や方法の活用によって、地域社会で普通に 暮らすバクバクっ子は大勢おり、成人する若者も増加している。
 現在、厚生労働省では終末期医療に関する様々な研究班を立ち上げ、本人の意思確認 が出来ない場合の人工呼吸器の装着や外すことの是非、経管栄養等の中止の是非などが検討されている。このことはバクバクっ子など、人工呼吸器使用者が呼吸 器をつけて生きることや、重い意識障害があり自分の意思をうまく伝えられない人たちの、生きることを否定する方向に向わせることになるのではないか。
 また、終末期と判断された場合に、呼吸器を外すこと、栄養補給を止めることなどが検討されるようであるが、死が間近に迫っていると判断するならば、あえて呼吸器を外したり、栄養等を止めたりしてまで死期を早めずに、そのまま看取ればよいのではないか。

最期まで人間として生き抜くために
呼 吸器をつけた子どもたちとの生活を通して言えることは、この子たちは、どんな重い障害や病気があっても決して生きることを諦めていないということである。 生きて生きて生き抜くことで、わずかな未来にも希望を抱いて生きることの大切さや、いのちの重さ、大切さを社会に問いかけ、生きることの素晴らしさを教え てくれてきた。それは、生きることが粗末にされない社会であって欲しいと願う子どもたちの心からの叫びである。
最近の「延命治療」問題に関するア ンケートでは、自分には「不要」だが、家族には「希望」するという傾向がある。これは、本人の「家族には負担・迷惑をかけたくない(経済的にも人的に も)」との思いが大きく、「家族には1秒でも長く生きていてほしい」との思いがあるためと思われる。
 「終末期医療」に関しては、社会の都合で死期を早めるのではなく、人間を「人間」として尊重し、本人も家族も納得できる、「最期まで生きぬくための医療」を行なう政策が形成されることを望む。

 cf. 人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)


 

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「終末期医療に関するガイドライン(たたき台)」について

第3回終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会の開催について

平成19年4月2日

標記検討会を下記の通り開催いたします。
傍聴を希望される方は下記4の傍聴要領によりお申し込みください。

1. 日時  平成19年4月9日(月) 13:00〜

2. 場所  全国社会福祉協議会 灘尾ホール
 東京都千代田区霞が関3丁目3番2号 新霞が関ビル1F

3. 議題  ○ 「終末期医療に関するガイドライン(たたき台)」について

4. 傍聴要領
○ 会場設営の関係上、予め御連絡いただきますようお願いいたします。
○ 下記のとおり、FAXでお申し込みください。(電話でのお申し込みは御遠慮ください。) ・ 記載事項: 氏名、職業(所属先)、連絡先住所又は所在地、連絡先電話及びFAX番号
・ 標題として: 「第3回終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会傍聴希望」と記載
・ FAX送信先: 03−3501−2048

○ 申込み締切:平成19年4月5日(木)の17時とします。
○ 傍聴を申し込まれた方につきましても、席の数に限りがございますので、希望者多数の場合には傍聴をお断りさせていただく場合がございます。
 お断りさせていただく場合には、4月6日(金)中にFAXにてご連絡させていただきますので、傍聴申し込みの際に必ずFAX番号を記入していただきますようよろしくお願いいたします。
○ 当日は会議開始時刻の30分前より受付を開始いたします。
○ 別紙「傍聴される方への留意事項」を遵守してください。遵守されない場合には、ご退場いただく場合があります。

(照会先)
厚生労働省医政局総務課 担当  菊岡、野尻
(代) 03−5253−1111(内線2513、2521)


 

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◆2007/04/09 「第3回終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会の記録」 作成:森勇香


 

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◆2007/04/09 「第3回終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会についての報道」


 

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◆2007/04/10 「延命中止、チームで判断 国が初指針」
 朝日新聞 2007年04月10日00時56分
http://www.asahi.com/national/update/0409/TKY200704090296.html
  「終末期医療に関するガイドラインづくりを進めてきた厚生労働省の検討会(座長=樋口範雄・東大大学院教授)は9日、延命治療の開始や中止は患者本人の意 思を基本とし、主治医の独断ではなく医師らのチームで判断することを柱とする指針をまとめた。国が終末期医療の指針をつくったのは初めて。ただ、「終末 期」の定義や、延命治療の中止が容認されうる要件などについては「価値観が多様で難しい」として先送りされた。
 終末期医療をめぐり厚労省は87 年から4回の検討会で議論を重ねてきたが、指針策定には至らなかった。今回は昨年3月に発覚した富山県射水市民病院での延命治療中止が社会問題化したこと から、治療方針を決める手続きの整備を急いだ。同省は今後、国民の意識調査を行うほか、秋以降に新たな検討会を立ち上げ、終末期の定義や、人工呼吸器など 生命維持装置を外しても刑事責任を問われないケースなどについて議論を始める。
指針は、延命治療の開始や変更・中止などは「患者本人による決定を 基本とすることが最も重要な原則」で、医療従事者と患者が話し合って合意した内容を文書に残すと定めた。治療中止などは、担当医のほか看護師やソーシャル ワーカーなど「多専門職種」からなる医療チームが慎重に判断するとした。
 患者の意思が確認できない場合は、家族と医療チームが患者にとって最善な方法を話し合うと規定。患者と家族、医療チームが合意できない場合は、複数の専門職で組織された院内の委員会が助言し、合意形成に努めるよう求めた。
樋口座長は指針を「終末期医療を議論していく最初の一歩」とし、「何をすれば刑事責任を問われないのかなど、医師の法的責任のあり方などはあえて論じなかった」と話した。
  延命治療の中止をめぐっては、日本救急医学会が2月に独自のガイドライン案を公表。終末期を「脳死と診断された場合」「さらに行うべき治療法がなく、数日 以内に死亡が予測される場合」などと具体的に定義したうえで、人工呼吸器を外す手順などを示した。早ければ秋にも正式決定する予定だ。
 また、患 者の呼吸を助けるチューブを外し、筋弛緩(しかん)剤を投与したとして医師が殺人罪に問われた川崎協同病院事件の東京高裁判決は2月、延命治療の中止につ いて「尊厳死を許容する法律の制定かこれに代わるガイドラインの策定が必要。国を挙げて議論・検討すべきだ」と指摘していた。」


 

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◆2007/04/10 「厚労省が延命治療中止で指針…医師の独断避ける」
 読売新聞 2007年4月10日1時45分
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070409it13.htm
 「厚生労働省は9日、末期がんなど治る見込みのない終末期の患者に対し、医師が延命治療を中止するプロセス(過程)を明示した指針をまとめた。
 指針案を議論してきた有識者による検討会が同日、ほぼ原案通り了承したもので、終末期医療に関する国の指針は初めて。懸案の医師の免責基準は盛り込まれていない。同省は、若干の文言を修正した上で、この指針とその説明を加えた解説編を全国の医療機関に周知する。
 指針は、終末期医療の進め方として、医師の独断を避けるため、医師らによる十分な説明と患者の意思決定を基本とすることが最も重要な原則と位置づけた。その上で、治療開始や中止について患者の意思決定を踏まえて、医療チームで慎重に判断するよう求めた。
 治療方針の決定は、患者の〈1〉意思が確認できる場合〈2〉意思が確認できない場合――の2通りに分け、〈1〉では患者の意思を基に医療チームが決め、そ の合意内容を文書に残すこととした。合意した内容が、時間経過などで変化することもあるので、患者に再確認することが必要と明記した。
 〈2〉の 場合、医療チームが慎重に判断するが、家族が患者の意思を推定できる場合は、その推定意思を尊重し、できない場合は、何が最善の治療方針かを医療チームが 家族との話し合いで決めるとした。〈1〉、〈2〉のそれぞれで合意できない場合は、医療チームとは別に設置された、複数の専門家による委員会が、検討・助 言する。
 今回の指針は、延命治療中止の手続きを明示しただけで、延命中止の判断の根拠となる患者の状態「終末期」の定義や、具体的な治療中止項 目などは含まれていない。このため、指針に注釈をつけた「解説編」を添え、医療現場で混乱が予想される終末期の判断などを医療チームで行うことなどを強調 した。
 今回の指針では、医師が殺人罪で刑事訴追されない基準には触れず、解説編に「引き続き検討していく」との文言が盛り込まれた。厚労省は、今年度、新たに終末期医療に関する調査検討会を設置し、刑事訴追をめぐる問題も話し合う方針だ。
  指針は、昨年3月に発覚した富山県射水市の病院で入院患者7人が人工呼吸器を取り外され、死亡した問題をきっかけに作成された。昨年9月の指針案に盛り込 まれた、筋弛緩(しかん)剤の投与などで患者を死なせる「積極的安楽死」について、「医療としては認められない」とした文言は、削除された。」


 

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◆2007/04/10 「延命、患者意思第一に 初の指針」
 読売新聞 2007年4月10日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070410ik02.htm
チームで方針決定 免責基準今後検討
 厚生労働省は9日、末期がんなど治る見込みのない終末期の患者に対し、医師が延命治療を中止するプロセス(過程)を明示した指針をまとめた。(http://www.yomiuri.co.jp/iryou/photo/IK20070410091250177L0.jpg
 指針案を議論してきた有識者による検討会が同日、ほぼ原案通り了承したもので、終末期医療に関する国の指針は初めて。懸案の医師の免責基準は盛り込まれていない。同省は、若干の文言を修正した上で、この指針とその説明を加えた解説編を全国の医療機関に周知する。
 指針は、終末期医療の進め方として、医師の独断を避けるため、医師らによる十分な説明と患者の意思決定を基本とすることが最も重要な原則と位置づけた。その上で、治療開始や中止について患者の意思決定を踏まえて、医療チームで慎重に判断するよう求めた。
  治療方針の決定は、患者の〈1〉意思が確認できる場合〈2〉意思が確認できない場合――の2通りに分け、〈1〉では患者の意思を基に医療チームが決め、そ の合意内容を文書に残すこととした。合意した内容が、時間経過などで変化することもあるので、患者に再確認することが必要と明記した。
 〈2〉の 場合、医療チームが慎重に判断するが、家族が患者の意思を推定できる場合は、その推定意思を尊重し、できない場合は、何が最善の治療方針かを医療チームが 家族との話し合いで決めるとした。〈1〉、〈2〉のそれぞれで合意できない場合は、医療チームとは別に設置された、複数の専門家による委員会が、検討・助 言する。
 今回の指針は、延命治療中止の手続きを明示しただけで、延命中止の判断の根拠となる患者の状態「終末期」の定義や、具体的な治療中止項 目などは含まれていない。このため、指針に注釈をつけた「解説編」を添え、医療現場で混乱が予想される終末期の判断などを医療チームで行うことなどを強調 した。
 今回の指針では、医師が殺人罪で刑事訴追されない基準には触れず、解説編に「引き続き検討していく」との文言が盛り込まれた。厚労省は、今年度、新たに終末期医療に関する調査検討会を設置し、刑事訴追をめぐる問題も話し合う方針だ。
  指針は、昨年3月に発覚した富山県射水市の病院で入院患者7人が人工呼吸器を取り外され、死亡した問題をきっかけに作成された。昨年9月の指針案に盛り込 まれた、筋弛緩(しかん)剤の投与などで患者を死なせる「積極的安楽死」について、「医療としては認められない」とした文言は、削除された。


 

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◆2007/04/10 「手続き優先、定義先送り…終末医療初の指針−解釈分かれ混乱も」
 読売新聞 2007年4月10日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070410ik05.htm
 終末期医療に関する国の初めての指針(http://www.yomiuri.co.jp/iryou/photo/IK20070410110632740L0.jpg
)が9日まとまった。昨年の富山県・射水市民病院で発覚した人工呼吸器の取り外し問題を踏まえ、延命治療中止決 定の手続きを優先し、医療現場の混乱を可能な限り早く回避する狙いがあるが、医師の刑事訴追に対する免責といった問題を先送りにするなど、課題は山積して いる。(科学部 宮崎敦、冨浪俊一)
<初指針>
 「終末期について公的指針を作ったことは評価できる。(人工呼吸器を取り外せる)院内指針と照らし合わせ、修正する個所を検討したい」(秋田赤十字病院)
 「急性期の高齢者患者が多いが、院内関係者すべてが合意する指針を作るのは難しいのでは」(東京都老人医療センター)
 手続きが中心で、延命治療中止の対象疾患などが明示されない、今回の公的指針に対して、現場の病院の評価は割れた。
 延命治療に詳しい、前田正一・東京大学准教授(生命・医療倫理)は、医師の独断に歯止めをかける内容に一定の評価をしつつも、「終末期の定義が漏 れているので、医師は刑事責任を恐れて延命治療を継続したり、逆に秘密裏に治療を中止する事態も生じかねない」と、新たな現場の混乱を懸念する。
 指針に終末期の定義などを盛り込むことの必要性は、検討会などの議論に上った。しかし、厚労省が手続きの部分に限って、議論を先行させたのは、昨年3月の射水病院 問題発覚直後、国民の間に医療不信が広がるのを避けたかったからだ。
 終末期医療に関する議論の場は、過去に何度も開かれ、解決策を模索してきた。しかし、公的指針が示されなかった。それは、「終末期の問題は患者の生死にかかわるので慎重さが求められた」(樋口範雄・検討会座長)ことが背景にある。
 厚労省としては、従来のような議論だけに終わらせず、射水病院の問題で指摘された、医師の独断による決定を防ぐ方向性を示したかった。そのため、手続きを優先させ、終末期の定義などを先送りした。
 しかし、検討会の中で、「医師が殺人罪で刑事訴追されない基準を明記することについて議論をしないのか」といった声が相次いだが、樋口座長は、「終末期の患者をどう支えるか、周囲の人々で、まず、悩んでもらうことが重要」と指針の意義を訴えた。
<現場>
 全国の病院は、公的指針に沿った形で、それぞれ独自の院内指針の整備を進めることになるが、公的指針を有効に活用するには現場の体制整備も必要だ。
  しかし、末期がんなど、終末期の患者を抱える中小の病院で終末期医療の体制を整えている機関は多くない。全国2190病院が加盟する全日本病院協会が昨年 7〜8月に実施した調査によると、「終末期医療に組織的に取り組んでいる」とした病院は27・7%どまり。「『尊厳死の宣言書(リビングウィル)』を病院 として受け入れる体制にある」とした回答も14・9%と低かった。
 医療現場が、延命治療の中止を決定する際、患者の意思をどう尊重していくかも重要だ。
 松島英介・東京医科歯科大准教授(緩和医療学)が昨年11月〜12月、全国4911病院を対象に調査したところ、意思表示できる患者の治療方針を 決める時でさえ、「患者のみに確認」とした施設は有効回答の0・8%にとどまった。「患者とは別に必ず家族の意向も確認」と答えたのは48・7%にも上っ た。松島准教授は「日本の医療現場は患者の意思が二の次だ」とし、患者の意思を尊重するような医療スタッフの教育の重要性を説く。
 こうした現場を支援する試みも始まっている。熊本大学医学部の浅井篤教授(生命・医療倫理)らは昨年10月から医師や看護師、患者・家族を対象 に、終末期の治療方針の決定について問題がないかどうか相談を受け付ける「臨床倫理コンサルテーション事業」を始めた。浅井教授は「人材が不足している小 さな病院のために、専門家の支援は重要。こうした支援組織を全国に広げることも大切」と話す。
<海外では…医師訴追法で回避>
 終末期医療の手続きは、海外でも法律や指針でルール作りが進む。ただオランダのように患者の死期を早める安楽死を法律で認めた国から、尊厳死に限定した国まで、各国で対応に差がある。
 尊厳死にかかわる各国の法制度に詳しい早稲田大大学院法務研究科の甲斐克則教授によると、フランスが2005年に定めた尊厳死法は、日本の指針同様、安楽死は認めないが、患者の事前指示がある場合など一定の条件を満たせば、医師が延命治療を中止しても訴追されない。
 延命治療の拒否権を認める米国では、州法が尊厳死の手続きを規定する。リビングウィルの書式を定めた州も多く、本人が指定した家族や弁護士らが延命治療の開始や中止を判断する、代理人制度もある。
 今回の国の指針はこうした欧米の法律や指針に比べ、医師が刑事訴追されない基準を明示していない。日本救急医学会が今年2月まとめた、終末期医療の指針案も、リビングウィルの提示など治療中止の手順を具体化した指針をまとめたが、医師の免責は保証されていない。
 甲斐教授は「国の指針でも、家族が延命中止を決める手続きなどを細かく決める必要がある。法曹界も含めた幅広い議論が大切だ」と話している。
*人工呼吸器の取り外し問題
 射水市民病院外科部長(当時)は、末期がん患者などの治療中止を独断で決め、社会的批判が集まった。富山県警の依頼を受けた医師は、一部の患者について「呼吸器外しと死との間に因果関係がある」との鑑定結果をまとめた。

 

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◆2007/04/10 「患者の意思決定「最重要」 終末期医療で国が初指針」
 中国新聞 2007年4月10日
 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200704090391.html
 厚生労働省の検討会(座長・樋口範雄東大大学院教授)は九日、治る見込みがなく死が避けられない患者への延命治療の開始・中止などの手順を定めた、国とし て初の指針を大筋で決定した。患者本人の意思決定を基本に進めることを「最も重要な原則」と明記。医師の独断を避けるため、医師や看護師らの「医療・ケア チーム」で対応し、患者との合意内容は文書化する―としている。
 患者の意思が分からない場合は「家族と話し合い、患者にとって最善の治療方針を とる」ことも盛り込んだ。近く正式決定し、同省が自治体や医療機関に通知する。統一的基準がなかった終末期医療に初めてルールが導入される一方、どのよう な場合に人工呼吸器の取り外しが許されるかといった個別の医療行為の是非や、延命を中止しても医師が「殺人罪」に問われない基準などは今後の課題として 残った。
 指針「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は、本編と解説編で構成。指針の趣旨を「終末期を迎えた患者、家族と医療従事者が、最善の医療とケアを作り上げるプロセスを示す」と位置付けた。
 延命治療をどこまで望むか、といった医療の進め方について、患者の意思が確認できる場合は「適切な情報提供と説明に基づいて患者と医療従事者が話し合い、患者が意思決定する」と規定。医療機関側が合意内容を文書化し、時間の経過や病状、意思の変化などに応じ再確認する。
 患者の意思が確認できない場合は、家族を通じて推定。分からない場合は家族と話し合い、チームが慎重に判断する。
 チームでの判断が困難な場合や、患者側とチームが合意できない場合、家族間の意見がまとまらない場合などは、チームとは別に設置する複数の専門職でつくる委員会が検討、助言を行う。
 厚労省は昨年三月、富山県の射水市民病院の人工呼吸器取り外し問題をきっかけに指針策定に乗り出した。内容が手続き面に限られていることについて、厚労省は「現時点で多数の合意が得られる部分に限った。残る課題は引き続き検討していきたい」としている。


 

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◆2007/04/10 「患者の意思「最重要」 終末医療、国が初指針」
 中日新聞2007年4月10日 朝刊
 http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007041002007405.html
  「厚生労働省は九日、治る見込みがなく死が避けられない患者への延命治療の開始・中止などの手順を定めた国として初の指針を大筋で決めた。患者本人の意思 決定を基本に進めることを「最も重要な原則」と明記。医師の独断を避けるため、医師や看護師らの「医療・ケアチーム」で対応し、患者との合意内容は文書化 する。意思が分からない場合は「家族と話し合い、患者にとって最善の治療方針をとる」ことも盛り込んだ。
 九日開催された厚労省の検討会(座長・樋口範雄東大大学院教授)も基本的に了承。同省は近く正式決定し、自治体や医療機関に通知する。統一的基準がなかった終末期医療に初めてルールが導入され る一方、どのような場合に人工呼吸器の取り外しが許されるかといった個別の医療行為の是非や、延命を中止しても医師が「殺人罪」に問われない基準などは今 後の課題として残った。
 指針「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は、本編と解説編で構成。「終末期」の具体的定義は示さず「患者の状態を踏まえて、チームが適切に判断する」とした。
 延命治療をどこまで望むか、といった医療の進め方について、患者の意思が確認できる場合は「適切な情報提供と説明に基づいて患者と医療従事者が話し合い、患者が意思決定する」と規定。医療機関側が合意内容を文書化し、時間の経過や病状、意思の変化などに応じ再確認する。
 患者の意思が確認できない場合は、家族を通じて推定。推定できない場合は家族と話し合い、チームが慎重に判断する。
 チームでの判断が困難な場合や、患者側とチームが合意できない場合、家族間の意見がまとまらない場合などは、チームとは別に設置する複数の専門職でつくる委員会が検討、助言を行う。
 厚労省は昨年三月、富山県の射水市民病院の人工呼吸器取り外し問題をきっかけに指針策定に乗り出した。内容が手続き面に限られていることについて、厚労省は「現時点で多数の合意が得られる部分に限った。残る課題は引き続き検討していきたい」としている。」


 

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◆2007/04/10 「延命治療国が指針 免責基準先送り チーム組み独断排除 患者の意思を最優先」
 西日本新聞2007年4月10日掲載
 http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/4816/
 終末期医療−治る見込みがなく、死が避けられない患者への医療。苦痛の緩和や精神的安定、残された人生の質を高めることも重要な要素となる。人工呼吸器の 装着などで死期を延ばす延命治療実施や中止についての統一的なルールはこれまでなく、2006年3月に発覚した射水市民病院(富山県)の人工呼吸器取り外 し問題を契機に、国の指針や法制化をめぐる論議が高まった。 近年は、患者が生前に延命治療を望まないなどと書面で意思表示する「リビングウイル」にも関 心が高まっている。 厚生労働省は9日、治る見込みがなく死が避けられない患者への延命治療の開始・中止などの手順を定めた、国として初の指針を大筋で決 めた。患者本人の意思決定を基本に進めることを「最も重要な原則」と明記。医師の独断を避けるため、医師や看護師らの「医療・ケアチーム」で対応し、患者 との合意内容は文書化する。意思が分からない場合は「家族と話し合い、患者にとって最善の治療方針をとる」ことも盛り込んだ。 9日開催された厚労省の検 討会(座長・樋口範雄東大大学院教授)も基本的に了承。同省は近く正式決定し、自治体や医療機関に通知する。統一的基準がなかった終末期医療に初めてルー ルが導入される一方、どのような場合に人工呼吸器の取り外しが許されるかといった個別の医療行為の是非や、延命を中止しても医師が「殺人罪」に問われない 基準などは今後の課題として残った。
 指針「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は、本編と解説編で構成。「終末期」の具体的定義は示さず「患者の状態を踏まえて、チームが適切に判断する」とした。
 延命治療をどこまで望むか、といった医療の進め方について、患者の意思が確認できる場合は「適切な情報提供と説明に基づいて患者と医療従事者が話し合い、患者が意思決定する」と規定。医療機関側が合意内容を文書化し、時間の経過や病状、意思の変化などに応じ再確認する。
 患者の意思が確認できない場合は、家族を通じて推定。推定できない場合は家族と話し合い、チームが慎重に判断する。
 チームでの判断が困難な場合や、患者側とチームが合意できない場合、家族間の意見がまとまらない場合などは、チームとは別に設置する複数の専門職でつくる委員会が検討、助言を行う。
 厚労省は昨年3月、富山県の射水市民病院の人工呼吸器取り外し問題をきっかけに指針策定に乗り出した。内容が手続き面に限られていることについて、厚労省は「現時点で多数の合意が得られる部分に限った。残る課題は引き続き検討していきたい」としている。
    ×      ×
 ▼終末期医療の指針骨子
 ▽患者本人の決定を基本として終末期医療を進めることが最も重要な原則
 ▽医療の開始、不開始、変更、中止などは医療・ケアチームが慎重に判断する
 ▽治療方針の決定に際し、患者と医療従事者の合意内容を文書化する
 ▽患者の意思を推定できない場合は家族と話し合い、患者にとって最善の治療方針をとる


 

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◆2007/04/11 「終末医療指針*一歩前進とは言えるが」
 北海道新聞 2007年4月11日
 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/19874.html
 厚生労働省が、治る見込みのない終末期の患者に対する延命治療の開始、中止といった手順を指針(ガイドライン)にまとめた。 背景には、近年、末期患者の人工呼吸器の取り外しをめぐって医師が相次いで刑事責任を問われた問題がある。 終末期医療に関しては初の公的ルールだ。最小限の基本事項にとどまっているものの、一歩前進と言える。
 過去、延命治療を続けるかどうかは医師と患者・家族の間で個別に判断されてきた側面がある。そうした密室性と一部の医師の独断専行を排除する点でも意義がある。
 実際、指針は、医師や看護師、ソーシャルワーカーらでつくるチームで慎重に対応し、患者との合意内容は文書化して残す−と定めている。ただ、裏を返せば、指針は終末期医療の手続き論にほぼ終始している。同様の手続きを取り入れている医療機関は以前からある。
 医療現場が直面する現実に、手続き論だけでは対応できない。
 たとえば、延命治療を望まない患者がいて、死期が迫っていたとしよう。呼吸器を外してほしいと本人と家族が希望し、医療チームが実行に移した場合、医師らは刑事免責されるのか。
 医療現場が知りたいのは、どのような場合に治療中止が容認されるのかといった個別の医療行為の是非だ。そうした基準は今後の検討課題として先送りされた。 終末期医療とは何かの根源的な問いにも答えていない。指針についての検討会による審議期間が三カ月と短く、拙速との批判は免れない。同時に、明確に示しづ らい微妙な問題が多いのも事実だ。
 日本では「将来、何かあった時は延命治療は希望しません」とのリビングウイル(生前に意思表示した書面)を残 している人は少ない。患者が判断能力を失った場合、生命を維持するかどうかの最終判断を家族に託すことには賛否がある。治療継続に伴う経済的負担を苦に、 治療中止を申し出ることがあるかもしれない。
 一方では、延命治療中止の具体的な基準を設けた場合、医師として患者を救おうとする努力を放棄させることにならないか、との議論もある。
 必要のない延命治療を拒む尊厳死の普及を求める運動がある。海外では、フランス、アメリカが尊厳死を法制化している。
 国として今回の指針からさらに踏み込んだルールをつくるかどうかを判断するためには、十分な議論と国民的な合意が必要だ。
 苦痛を伴ってでも延命治療を続けるのか、自然に近い形に委ねるのか−。最期をどう迎えるかは一人一人の問題だ。終末期医療について日ごろ家族で話し合うような環境も要るだろう。


 

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◆2007/04/11 「終末期医療指針 合意形成が欠かせない」
 中国新聞 2007年4月11日
 http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200704170197.html

 終末期の患者に対し、延命治療はどんな手続きで中止などの判断をすればいいのか。国として初めての指針がまとまった。
 公的なルール作りへの第一歩だが、終末期の定義などは盛り込まれておらず、不十分な点も多い。患者の意思を本当に生かすには、国民的な合意形成へ議論を深めることが欠かせない。
 指針ではまず、延命治療を開始する場合も中止する場合も、患者本人による決定を基本とし、医療チームが慎重に判断すべき、としている。複数による判断は確かに重要なポイントだ。一方で大前提となるのが、患者、家族への適切な情報提供と十分な説明である。
 中でも、問題が出てきそうなのは、患者の意思が直接確認できないケースだ。指針では、家族と話し合い、患者にとって最善の治療方針を決定するとしている。
 だが、医師と患者・家族では、医学的な知識や情報量に格段の差がある。医師から「もう手の施しようがない」と言われると、家族の判断は狭められてしまうのではないか。激痛などで患者が苦しんでいればなおさらだ。
 厚生労働省が指針作りを急いだのは、昨年三月に富山県の射水市民病院で患者七人が人工呼吸器の取り外しで死亡していたのが発覚するなど、延命治療をめぐる問題が相次いで起きたからだ。
 たとえ家族からの要請で延命措置をやめた場合でも、後になって刑事責任を問われかねないという危機感が医療現場に出てきた。共同通信の調査でも、公的病院の85%が「ガイドラインや法制化が必要」と答えている。
 指針の検討会では、医師の独断に歯止めをかけ、患者や家族の不信を招かないための手続きを優先し、法的責任などの問題は先送りした。このため、二月に日本救急医学会が指針案で提起した「終末期」の定義などは積み残された。
 一方、日本尊厳死協会の研究班は先月、がんなど六つの病態に分けて「不治」や「末期」などの定義をし、延命措置を中止できる条件の具体的な試案をまとめている。ただ、難病患者からは、医療を抑制する方向に流れてしまわないかと、反発する声もある。
 一人一人がどんな終末期医療を望むか、考えておくことも大切だ。厚労省は来年初めにも大規模な意識調査を行うとしている。事前の意思表示が必要なのはどんなケースか、具体例を示して論議する工夫もいるのではあるまいか。


 

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◆2007/04/11 「終末医療指針 患者も医師も救われぬ」
 東京新聞 2007年4月11日
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007041102007727.html
 厚生労働省の検討会がまとめた終末期医療に関する指針は、当たり前すぎて新味がほとんどない。医療現場や患者・家族が求めている、具体的なケースを想定した踏み込んだ内容に改めるべきだ。
 指針は▽終末期医療について医師ら医療従事者が患者に情報提供と説明を行い、患者本人が決定する▽患者の意思決定の内容は文書化する▽終末期医療の開始・中止などは医療従事者らがチームで判断する−などを求めている。
 これらの指摘には異論はないが、インフォームドコンセント(事前の十分な説明と自発的な同意)とその文書化、患者の自己決定権の尊重、重要事項の 複数での決定などは、終末期医療に限らず、臓器移植など生命倫理の問題が関係する分野での議論を通じ合意されてきた大原則であり、指針がなくても守るべき 重要なことである。一般医療でも広範に普及している。今回の指針はそれを単になぞっているにすぎない。
 厚労省が指針作成に乗り出したきっかけは、昨年三月に明るみに出た富山県射水市民病院での終末期患者からの呼吸器外し問題だが、担当医師が批判された理由の一つは、経緯がどうあれ独断で決定したことであり、指針以前の問題といっていい。
 指針に求められているのは、こうした言わずもがなのことではない。
 延命医療の拒否を生前に文書で意思表示する患者が増え、医師らの理解も深まっているが、刑事訴追を恐れ、なかなか実行できない。
 どのような疾患について、どのような状態になれば「終末期」と見なし、人工呼吸器をはずすなど延命医療の中止に踏み切ってもいいのか、その場合、 医師らはどのような要件を満たせば刑事責任を免責されるのか。指針はこうした現場の声にこたえていない。指針という以上、従来の混乱をできるだけ回避でき る内容でなければならない。事例をできるだけ挙げ、共通するおおよその判断基準を示すべきだった。
 厚労省は今後、終末期医療に関する別の検討会を設けるが、十分な時間をかけ、医療現場が判断に迷わないような、明確な指針に改める必要がある。
 東京高裁は川崎協同病院の筋弛緩剤(きんしかんざい)事件判決の際、尊厳死・安楽死をめぐる混乱を踏まえ「司法が解決する問題ではない」と法の制定や指針の策定を求めた。厚労省にはこの指摘を重く受け止めてもらいたい。
 同時に、終末期医療の指針の策定が、最後まで生きようとする患者の意欲をそぎ、死に追いやる風潮を生まないように、歯止めをかけることも忘れてはならない。


 

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◆2007/04/11 「終末期医療指針 確かに一歩前進だが…」
 秋田魁新聞 2007年4月11日 09:37 更新
 http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20070411az
 病気や事故で治る見込みがなく、死が避けられない場合、どうしたらいいのか?。
 患者はもちろん、多くの家族や医療関係者が思い悩み、苦しんでいる。今は差し迫っていなくても、いずれは誰もが直面する重い問題でもある
。 終末期医療について厚生労働省が初の指針を大筋で決めた。やや遅い感じがしないでもない。延命治療の開始や中止をめぐる問題は昨日や今日、起こったわけではないからである。
 しかし、これまで統一的なルールはなかった。その意味で国が「一定の考え方」を示したことは一つの前進であり、評価してもいいだろう。
 指針は▽患者の意思尊重を最重要視▽医師の独断を避けるため医療・ケアチームで対応▽治療の合意内容を文書化▽患者の意思が不明な場合は医師側と家族側が話し合い、最善の方針をとる?の4つがポイント。
 厚労省は多様な意見がある中、最低限一致できる点に絞り、取りまとめたとしている。その分、医師側と患者側が取るべき「手続き」としては妥当なところに落ち着いたといえる。
 医療現場ではどうしても、患者側は医師側の意見にひきずられがちだ。それに歯止めをかけるとともに、患者側も納得の上で治療方針を決めるのに役立つと期待できるからである。
 その半面、医療現場が最も切実としている問題に踏み込んでいないのは、極めて残念と言わざるを得ない。延命治療中止と刑事責任の関係という核心部分は棚上げされたのである。
 つまり、「どんな場合に人工呼吸器を外せるのか」といった個々の医療行為については、何らの基準も方向性も提示しなかったのだ。医療現場から不満が出るのも無理はない。
 昨年3月に表面化した射水市民病院(富山県)の人工呼吸器取り外し問題を契機に、厚労省は指針作成を当初予定より1年前後早めた。時間的な制約は分からないでもない。
 それにしても核心部分に触れないようでは、やはり中途半端のそしりを免れないであろう。
 指針自体にも疑問点がある。例えば、医師側と家族側との話し合いで患者の意思を推定する場合、介護の負担や経済的な事情など、家族側の都合が優先される可能性はないのか。
 実際の運用に当たって医療現場は、もっと細部を詰める必要が出てくるに違いない。厚労省も今後、大規模な意識調査を実施するなどして、さらに検討を進める方針だ。
 確かに、人の死生観にかかわるところまで行政は踏み込めないし、踏み込んではならない。しかし、終末期医療の在り方が既に社会問題化している以上、患者側に幅広い自由選択が可能という前提付きであれば、もう少し突っ込んだ指針内容にしてもいいのではないか。
 終末期医療をどうするかを決めるのは、個人個人やその家族だ。人はその場に遭遇しないとなかなか本気で考えないものだし、元気なうちから検討するのもつらいことである。
 しかし、死はどんな人も避け得ない。今から向き合い、家族間で話し合っておく姿勢も欠かせないだろう。


 

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◆2007/04/11 「終末期医療指針 さらなる議論欠かせない」
 山陽新聞 2007年4月11日掲載
 http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2007/04/11/2007041108492076010.html
 末期がんなど治る見込みがなく、死が避けられない患者への延命治療の開始・中止はどうあるべきか。厚生労働省が指針をまとめた。国が初めて示す統一基準である。
 厚労省は近く自治体や医療機関に通知する。だが、人の命の尊厳にかかわるテーマだけに宗教、倫理観などによって考え方も多岐にわたる。さらに議論を重ねることで国民的合意を得、真の指針策定に結び付けてもらいたい。
 昨年三月、富山県の射水市民病院で患者七人が人工呼吸器を取り外されて死亡していた事実が発覚したのを契機に策定論議が高まった。
 指針は、患者本人の意思決定を基本として終末期医療を進めることが「最も重要な原則」と明記。医師の独断を排除するため医療の開始・不開始、変更、中止などでは医師や看護師らの「医療・ケアチーム」で対応、患者との合意内容は文書化するとした。
 患者の意思を第一に考え、チーム医療を打ち出したことは透明性確保の面から一定の評価ができよう。ただ、限られた時間内で一致点を見いだそうとしたため、内容が手続き面に偏ったきらいがある。
 このため、どのような場合に人工呼吸器などの取り外しが許されるのか、延命中止と刑事責任の関係など医療現場にとって切実な問題は棚上げされた。終末期とは、家族とはどの範囲を指すのか。継続検討すべき事項は多い。
 厚労省は国民や医療関係者を対象に意識調査を実施する予定だ。調査結果に法曹界、生命倫理学者らの意見も加え、もっと踏み込んだ統一基準を提示してもらいたい。終末期をどう迎えるかは、まさに一人ひとりの問題である。しっかり考え、家族と話し合っておくことも重要だ。


 

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◆2007/04/11 「終末期医療指針 残された課題は多く重い」
 産経新聞 2007年4月11日05時10分
 http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070411/shc070411001.htm
 日本には安楽死や尊厳死の法律もなければガイドライン(指針)もなかった。そこで国が初めてまとめたのが、 末期がんや脳死などで治る見込みがない患者に対する延命治療の手順を示した「終末期医療の指針」である。これまで延命治療の中止をめぐる事件が起きるたび に指針の必要性が論議されてきた。しかし、指針はいっこうにできなかった。それだけに今回の指針は、“最初の一歩”としての意味は大きい。
  指針は患者本人の意思決定を基本に延命治療を進めることを最重要の原則とした。その上で延命治療の開始・中止は医師や看護師らによるチームで慎重に判断す るよう求めている。担当医の独断を避けるのが目的だ。「患者中心の医療」と「チーム医療」は現代医療の基本である。患者が元気なうちに延命治療を書面で拒 否しておくリビングウイルの考えも、すでに一般的になっている。その意味ではこの点も評価できよう。
  さらに指針は、治療方針を決める手続きについて、(1)患者と医療機関の合意内容を文書にする(2)患者本人の意思が推定できない場合は家族と話し合い、 患者にとっての最善策をとる(3)方針が決まらないときは複数の専門職による委員会を別途設立して助言する−としている。これらも同様に納得できるものだ。
 しかし、残された課題は多く、かつ重い。例えば終末期の定義や対象となる病名が盛り込まれていない。人工呼吸器を外す時期も明記されていない。医師が刑事訴追されないための基準も示されていない。日本救急医学会の指針案に比べて後退している。
  終末期医療検討会は「終末期は患者によっていろいろなケースがあり、具体的な医療行為について画一的なルールを作るのは難しい」と説明するが、検討会では 「医師が法的責任を問われない指針が必要だ」との意見が相次いだ。今回の指針でも安楽死させた医者は、殺人罪や嘱託殺人に問われかねない。指針の間接的効果はあろうが、基本的にはこれまでと変わらない。
 ベルギーやオランダ、米国のオレゴン州では安楽死を合法化する法律まで施行されている。厚生労働省は「残る課題は引き続き検討していく」というが、早急に始めるべきである。


 

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◆2007/04/11 「終末期医療−「指針」機に活発な議論を」
 沖縄タイムス 2007年4月11日朝刊
 http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070411.html
 治る見込みがなく、死が避けられない患者への延命治療の在り方について、厚生労働省が初のガイドライン(指針)を大筋でまとめた。
 指針は、患者本人の意思決定を基本に終末期医療を進めることが「最も重要な原則」とし、医師の独断を避けるため、医師や看護師らの「医療・ケアチーム」で 対応する。患者との合意内容は文書化し、患者の意思が分からない場合は「家族と話し合い、患者にとって最善の治療方針をとる」ことが柱となっている。昨年 三月、富山県の射水市民病院で起きた人工呼吸器取り外し問題などを踏まえた措置で、統一的基準がなかった終末期医療に初めてルールが導入されることにな る。
 ただ、どのような場合に人工呼吸器の取り外しが許されるのかといった個別の医療行為の是非や、延命を中止しても医師が「殺人罪」に問われない基準などについては、今後の課題として先送りされた。
 関係者の間では「一歩前進」と評価する一方、「これだけでは足りない」と不満の声も交錯している。
 過剰な延命治療を拒み、尊厳死の普及を目指している日本尊厳死協会は「患者が延命中止を望んでも心臓が止まるまでやめられない現状を変えるには、法制化によって死の迎え方を患者自身が決める権利を法的に明確にすべきだ」と話す。
  これに対し、安楽死や尊厳死の法制化への反対論は根強い。 「尊厳死の法制化は患者に『死になさい』と圧力をかけることにならないか」 「患者の意思はい ざという時に変わる可能性がある。介護する家族に気兼ねして延命を望まない人もいる。尊厳死が法制化されれば、弱者がますます生きづらく生命の軽視につな がる」「死ぬ権利の議論より、生きたい患者が生きられる社会にしたい」―などだ。
 人工呼吸器取り外しのように患者の生命に直結する延命治療の中止行為は、現行法の下では殺人罪などに問われる。医療現場には「延命治療を中止して刑事告訴されないという保証はない」との懸念が消えない。
 賛否両論がある中、さらに具体的な指針ができるにはまだ時間がかかりそうだ。
 終末期医療は、国民一人一人が「自分にもかかわりがある」と考えなければならない問題と言っていい。人の死生観にかかわる部分にどこまで踏み込めるのか。この機に、さらに議論を深めたい。


 

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◆2007/04/11 「終末期医療指針 まず患者を支える態勢整備を」
 宮崎日日新聞 2007年4月11日
 http://www.the-miyanichi.co.jp/column/index.php?typekbn=1&sel_group_id=7&top_press_no=200704112302
 人が最期まで自分らしく生きる。人間としての尊厳を保ちながら安らかな死を迎えられるための医療、ケアは救急、がん、高齢者医療などの現場でますます重要になっている。
 昨年秋、宮崎市で開かれた「終末期医療の在り方を考えるワークショップ」でも、出席者から「専門家が連携して患者、家族の相談にこたえる窓口設置」「医療にかかわる人の感性を磨く教育」などが必要との意見が出た。
 治る見込みがなく死が避けられない患者への延命治療の開始・中止などの手順を定めた厚生労働省の指針が大筋で決まったが、個別の医療行為に対する医師の刑事責任問題など多くの部分が棚上げされた。
■社会的合意へ議論を■
 指針では患者本人の意思決定を基本に進めることを「最も重要な原則」と明記。医師の独断を避けるため、医師や看護師らの「医療・ケアチーム」で対応し、患 者との合意内容は文書化。意思が分からない場合は「家族と話し合い、患者にとって最善の治療方針をとる」ことも盛り込んだ。
 終末期医療の現場ではこれまで明確なルールがなく医師、患者・家族側の双方が医療の方法を選択するうえで悩むことが多かった。
 死の迎え方を患者自身が決める。意味のない延命治療を行わない尊厳死を望む人が増える一方、「患者の意思は変わる可能性があり、尊厳死を認めると弱者は生きづらくなり、命の軽視につながる」などの意見もあり、価値観が多様化しているのが実情だ。
 人工呼吸器外しのように患者の生命に直結する行為は、現行法では医師が殺人罪などに問われる可能性もあり、終末期医療に対する社会的コンセンサスのための議論が求められている。
 今回初めて終末期医療にルールが導入されるが、医療とケア全体の充実が何よりも重要だ。
■スタッフの充実課題■
 厚労省は指針を近く正式決定し、自治体や医療機関に通知する。実際に医療現場に定着させるためには、スタッフの問題など課題も多い。
  指針でも複数の専門領域の医師、看護師、ソーシャルワーカーなども加わるチームによる医療・ケアを求めている。しかし、本県での現状もそうであるようにそ うした態勢で対応できる医療機関は少ない。患者の肉体的な苦痛や家族を含めて心理的な不安を和らげる緩和ケアが行えるのも、がん診療拠点病院などに限られ ている。
 救急、がん、高齢者医療など様態が異なる終末期医療があり、それぞれに対応した学会による具体的なガイドラインをつくる必要も ある。日本救急医学会が2月、人工呼吸器の取り外しを選択肢として認める指針案をまとめるなど延命中止を模索する動きもあるが、「広く国民の意見を聞くべ きだ」として正式決定はなされていない。医療現場の受け止め方もさまざまで、議論の難しさを物語っている。
 延命治療を行うか、中止するかの判断や法的責任に対する基準づくりなど課題が残り、そこだけに関心が集まりがちだが、最も大切なことは現実にいる患者や家族を支える態勢をどう整備していくかだ。
 今回の指針は終末期医療を考える入り口にすぎない。今後行われる個別の現場での事例を多方面から検証していく作業を積み重ねる中で新たな方向性を探っていくべきではないか。


 

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◆2007/04/11 「終末期医療の指針 最低限のルールはできたが」
 愛媛新聞 2007年4月11日
 http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017200704119332.html
  末期がんなどで治る見込みがなく、死が避けられない患者に対する延命治療はどこまで尽くされるべきか。終末期医療の在り方についての統一的なルールがない なか、社会全体での模索が続けられているのが現状だろう。 厚生労働省がまとめた「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は、国として初めての指針となるものだ。延命治療の開始や中止などの手順を定めて いる。 まず、患者本人の意思決定を基本に医療を進めることが最も重要な原則と明記。複数の医師や看護師などによる医療・ケアチームが医療方針を慎重に判断すると している。これは医師の独断を防ぐうえで重要だ。 患者との合意内容は文書化するほか、意思を推定できない場合は家族と話し合い最善の治療方針をとるとしている。盛り込まれた内容は、いずれも終末期医療へ の入り口として最低限必要な原則だといえる。終末期医療に関する公的ルールがようやく導入される点では一定の評価ができる。
  今回、厚労省は延命治療中止などの手続きに絞る形で指針づくりを急いだ。富山県の射水市民病院での人工呼吸器取り外し問題が昨年三月発覚したことを受け、 最低限一致できるルールを早く示す必要があると判断したものだ。射水市民病院の問題では、人工呼吸器を外された末期患者七人が二〇〇〇―〇五年に死亡し た。当時の外科部長が六人への関与を認めている。尊厳死のため延命治療を打ち切ることの是非が論議を呼び、殺人容疑での捜査が行われている。
 この問題を受け、日本救急医学会も終末期医療の指針づくりを進めている。これまでにまとめられた原案は、患者本人の意思や家族による意思の推定 に基づいて医療チームとして判断することを基本に、人工呼吸器の取り外しも延命治療中止の選択肢の一つとして挙げているのが特徴だ。今後の論議に注目した い。
 救急医学会の指針案に比べても、厚労省の指針は踏み込みがかなり不足している。具体的な延命中止行為の是非などについて議論を先送りし、法的責任の問題は棚上げにされた。 「手続きを踏んだつもりでも、後から問題視されては現場はつらい」などと、一歩前進と評価する半面で不安の声が相次ぐのはもっともだろう。
 実際、全国の救命救急センターを対象にしたアンケートの結果では、「呼吸器外しを経験した」は14%もあり、「患者や家族から呼吸器や投薬などの延命中止を求められた」は79%に達した。終末期医療で独自の判断を迫られている実態の一端がうかがえる。
 終末期医療といっても一律に対応できない難しさをはらんでいる。指針が策定されるのは一歩前進とはいえ、検討は緒に着いたばかりだ。具体的な運用には課題も多い。さらに、透明性の高い環境づくりへ向けた国民的論議が必要だ。


 

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◆2007/04/12 「終末期医療GLまとまる‐患者の自己決定が原則」
 薬事日報 2007年04月12日
 http://www.yakuji.co.jp/entry2795.html
 厚生労働省の「終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会」は9日、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン(GL)」を概ね了承した。 医療者の説明責任と患者の納得・自己決定を原則に、チーム医療で患者に最善の医療を提供する考えを示した。またGLに関して、より具体的な解説を記した 「GL解説編」に関しても概ね了承された。
 GLには、「終末期医療及びケアのあり方」と「終末期医療及びケアの方針の決定手続き」が盛り込まれている。
 終末期医療のあり方については、最も重要な原則として、「医師等の医療従事者から適切な情報提供と説明が行われ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合い、患者本人による決定を基本とした上で、終末期医療を進める」との考えが強調された。
 さらに、終末期医療における医療行為の開始・不開始、医療内容の変更、医療行為の中止などは、医学的妥当性と適切性を基にして、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームによって慎重に判断する必要性を挙げた。
 また、生命を短縮させる意図を持つ「積極的安楽死」に関しては、同GLでは対象としない考えも示した。
 終末期医療の方針の決定手続きでは、患者の意思が確認できる場合と確認できない場合とに分けて、手続きの流れを盛り込んだ。
 意思が確認できる場合には、専門的な医学的検討を踏まえ、患者の意思決定を基本として、多専門職種の医療・ケアチームが方針決定を行うと の方向性を打ち出した。その際には、患者と医療従事者が十分な話し合いを行い、患者が意思決定し、合意内容を文書にまとめておくとし、時間の経過、病状の 変化、医学的評価の変更に応じて、さらには患者の意思が変化するものであることに留意し、その都度説明を行い患者の意思の再確認を行う必要性を強調。ま た、患者が拒まない限りは、決定内容を家族にも知らせることが望ましいとしている。
 一方、患者の意思が確認できない場合で、「家族が患者の意思を推定できる場合」には、その推定意思を尊重して患者にとっての最善の治療 方針をとることを基本としている。「家族が患者の意思を推定できない場合」には、家族の判断を参考に、患者にとって最善の治療方針をとることを基本に据え ている。
 また、「家族がいない場合や家族が判断を医療・ケアチームに委ねる場合」には、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本としている。それぞれの場合においてこれらの基本を踏まえて、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要があるとした。
 患者の意思が確認できる場合、確認できない場合のいずれにおいても、治療方針の決定に際して、[1]医療・ケアチームの中で病態等により 医療内容の決定が困難 [2]患者と医療従事者との話し合いの中で、妥当で適切な医療内容についての合意が得られない[3]家族の中で意見がまとまらない− −などの場合については、医療・ケアチームと同様の複数専門職からなる委員会を設置して、治療方針等についての検討・助言を行う必要性も指摘した。


 

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◆2007/04/14 「疾病ごと延命中止基準、終末期を定義…尊厳死協会報告」
 読売新聞2007年4月15日3時1分
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070415it01.htm?from=top
 「尊厳死」の法制化を目指す日本尊厳死協会の研究班は14日、がんなど疾病ごとに延命治療(措置)中止の判断基準となる「末期(まっき)(終末期)」の定義などを挙げた独自の報告書をまとめた。
 手続きを重視した厚生労働省の終末期医療の指針より踏み込んだ内容で、今後の法制化を巡る議論などのたたき台になるが、すでに患者団体から死を誘導しかねないと反論が出ている。
 報告書は、尊厳死を迎えるための医学的条件などを提示した。まず「総論」で、厚労省指針で触れていない「末期」や「不治」の定義、延命治療を中止 する条件を掲げた。その上で、各論として、「がん」「呼吸不全・心不全・腎不全」「持続的植物状態」、全身の筋肉が動かなくなる「筋委縮性側索硬化症 (ALS)」の延命治療が議論となる代表的な疾患に、「高齢者」「救急医療」を加えた計6パターンについて治療中止の条件などを記載。
 総論の定義では、末期を「不治(と判定された)時から死までの時期」とし、「不治」を「あらゆる治療行為に効果が期待できず、死への進行が止められなくなった状態」とした。
 さらに、治療の中止条件として、〈1〉患者に延命治療を中止する意思がある〈2〉複数の医師の意見が一致している〈3〉尊厳ある生の確保と苦痛の除去を目的とする――の3点を明記した。
 各論では、「がん」の末期を「治療の効果がなくなり、ケアが中心となった時期から死に至るまでの期間」と定義。その末期の治療で有害な反応が出た場合などに、中止や差し控えできる行為として「栄養・水分の補給」「人工呼吸器の装着」などを挙げた。
 ALS患者では、「患者本人が、明確な意思表示を繰り返した」「無呼吸テストで自発呼吸がない」ことなどを、人工呼吸器を取り外せる条件とした。 ALSの末期の定義は人工呼吸器でしか生存できない状態としたが、専門家の間でも議論が分かれており、最終的には「患者自身が判断すべき問題だ」とした。
 こうした内容に、川口有美子・日本ALS協会理事は、「一見、患者の自己決定を基本としているが、周囲が患者(の死)を誘導する可能性もあり、危険な内容だ」と批判する。
 日本尊厳死協会理事長で、研究班長の井形昭弘・名古屋学芸大学長は「尊厳死を巡る議論に一石を投じたかった。さらに議論を深めた上で法制化を求めていきたい」と語った。


 

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◆2007/04/14 「日本尊厳死協会:延命措置中止の判断基準などで試案」
 毎日新聞 2007年4月14日20時34分(最終更新時間 4月14日21時08分)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070415k0000m040062000c.html
尊 厳死の法制化を目指す日本尊厳死協会(理事長、井形昭弘・名古屋学芸大学長)は14日の理事会で、延命措置を始めなかったり、中止する場合の医学的判断基 準を盛り込んだ同協会研究班の試案を了承した。本人の意思表示があり、複数の医師の意見が一致することなどが条件。同協会は「国民が議論する際のたたき台 にしてほしい」と話している。
 試案では、一般的な延命措置の中止条件に加え、「がん」や進行性の難病「筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)」などの病態別に、具体的な「不治」「末期」の状態を定義し、個別に中止条件を定めた。
  試案では、尊厳死を「自らの傷病が不治かつ末期に至った時、健全な判断の下での自己決定により、いたずらに死期を引き延ばす延命措置を断り、自然の死を受 け入れる死に方」と定義。その上で、一般的な延命措置の不開始・中止の条件として(1)患者本人の意思表示がある(2)不治あるいは末期の判断と、どの延 命措置をいつ中止するか、複数の医師の意見が一致する(3)尊厳ある生の確保と苦痛の除去が目的−−の3点を挙げた。
 さらにがん、ALSに加え▽高齢者▽呼吸不全▽心不全▽腎不全▽持続的植物状態▽救急医療の八つの病態について、不治・末期の定義と中止条件を示した。
  研究班長も兼ねる井形理事長によると、ALSについて最も議論が分かれた末に「自発呼吸ができない状態は末期」との考え方を盛り込んだ。運動神経が侵さ れ、次第に筋肉が萎縮していくALSについては、本人が苦痛から延命中止を訴えても、それが本心かどうかを慎重に確認する必要があるとの意見が根強い。井 形理事長は「苦しい状態を耐えられないと訴えている中で、無理やり第三者の意思を押し付ける(延命を続ける)のは疑問がある」などとALSを取り上げた理 由を説明した。【江口一】


 

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◆2007/04/15 「終末期医療指針/ホスピス中心の体制が必要」
 世界日報2007年4月15日
 http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh070415.htm
  厚生労働省は終末期医療の初のガイドライン(指針)をまとめた。延命治療の中止は患者本人の意思決定を尊重し、医療・ケアチームが決定するなど、医療従事 者が果たすべき原則的な手順が示されており、基本的には評価できる内容だ。しかし、待ったなしの終末期医療やその問題点に言及しなかったことは大いに不 満である。
[独断的誤りの排除に力点] 指針は延命治療について「患者本人の決定を基本にした医療を進めるのが原則」とした。患者 の意思が推定できない場合は、家族らと話し合い、医学的妥当性 や適切性を基に治療方針を決定する。その際、医師の独断ではなく、複数の医療従事者らが構成するチームが判断すると定めるなど、「医療チーム」の役割を強 調したのが特徴だ。指針は昨年三月、富山県の射水市民病院患者七人が人工呼吸器を取り外された問題をきっかけに、厚労省が策定に乗り出しまとめられた。こ の種の事件では、 一九九八年、神奈川県川崎協同病院の元主治医が殺人罪で有罪になった例がある。当時の主治医は、入院中の男性患者の回復の見込みが極めて低く、家族の負担 になると一方的に判断し、気管内チューブを抜き、筋弛緩剤を投与し死亡させた。指針では、これらの延命治療における医師の独断的な誤りをいかに排除するか に力点が置かれた。だが、「終末期医療」と銘打った指針としては物足りない。第一、昨夏の指針案では、「どのような場合であっても、積極的安楽死や自殺幇 助を目的とした医 療行為は認められない」としており、今回の指針で、延命治療中止で刑事訴追されない基準などについての何らかの判断が期待された。しかし「積極的安楽死は 指針の対象外」とし、訴追基準については示されなかった。日本救急医学会などが、安楽死について一定の基準を示し議論を進めているだけに、国の取り組み方 を提示すべきだった。また終末期医療の定義についての言及もなく、将来の展望についても描かれていない。治癒の見込みがなく、耐え難い苦痛と闘っている人 たちを救い、それを 軽減するには医師側にもその心構えと努力がいる。そのためには、末期がん患者らの苦痛を取り除く「緩和医療」の研究をさらに進めるべきだ。日本でも、緩和 医療学会が生まれたが、欧米と比べるとかなり立ち遅れている。さらに、緩和医療は平生から、医師、患者、家族の三者で生命の行く末を見守るホスピス(終末 期ケア)の考え方を中心に進めていく必要がある。だが、都内の総合病院や医療機関の中でも、高齢化社会の医療を見据え、その体制や施設を整えている機関は あまりに少ない。指針で示した治療方針について 助言する「複数の専門職で構成する委員会」の設置すらままならない。これも終末期医療の在り方や方向性が不確かであるという現実と無関係ではない。ここ数 年、終末期の医療への一般の関心が高まり、病院も入院時などに延命治療について患者の意向を確かめるようになった。その際、患者の親族との話し合 いが重要で、医師側も神経をすり減らす。脳、心臓医療の専門家でも交渉事が得意とは限らないし、患者の親族の信頼を得るのは容易でない。
[指針を肉付けし役立てよ] また、患者との間に医療のトラブル、訴訟が増え、患者との煩わしい対応を避けたいという理由で外科医の成り手が減っているという現実もある。今回の指針を肉付けし、医療現場の運営に真に役立てたい。


 

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◆2007/04/15 「新型老健施設は終末期も対応 厚労省、療養病床転換促す」
 朝日新聞2007年4月15日09時53分
 http://www.asahi.com/life/update/0414/TKY200704140399.htm
 厚生労働省は14日、慢性疾患を抱えるお年寄り向けの療養病床を減らすため、療養病床から老人保健施設に転換した場合、終末期のお年寄りのみとりや夜間 看護などを充実させた新しいタイプの老健施設とすることを認める方針を固めた。削減で療養病床に入れなくなるお年寄りの受け皿とし、転換を促す狙いがあ る。09年の介護報酬改定で、療養病床から新型の老健施設に移行した施設への報酬を手厚くする。
 厚労相の諮問機関である「介護施設等の在り方に関する委員会」で検討し、6月をめどに具体的な対応をまとめる。
 療養病床には現在、医療保険を使って入院するベッド25万床と、介護保険を使う12万床がある。だが、療養病床の患者の半数は「医師の対 応がほとんど必要ない」とされる。こうした社会的入院を解消し、医療費を抑えるため、厚労省は療養病床を12年度末までに15万床超に減らす方針だ。
 療養病床に入れないお年寄りは、老健施設や有料老人ホーム、自宅療養に移ることを想定している。しかし現実には、病状が安定していて も、チューブによる栄養補給や、機械でのたんの吸引が必要な患者もいる。退院後に自宅へ戻るまでのリハビリなどを行ってきた現在の老健施設では受け入れが 難しい場合があり、どの施設も受け入れてくれない「介護難民」が発生する恐れがある。
 療養病床を抱える医療機関の多くも、必要な医療を提供できなくなるなどとして老健施設への転換に難色を示している。厚労省は、療養病床 で提供している比較的軽度な医療行為を、療養病床から転換した後の老健施設でも対応できるようにすることで、療養病床の削減を進めたい考えだ。
 また、現行の老健施設では「入所者100人につき看護師・准看護師9人」としている基準よりも看護師を多く配置。日常の看護や終末期のみとり、身体機能を維持するためのリハビリを充実させる。
 従来の老健施設に対する介護報酬とは別に、療養病床から新型の老健施設に転換したところに限り、介護報酬を上乗せする方針。みとりやリハビリの看護を提供した場合は、さらに加算することも検討する。
 これまでの老健施設は病院と自宅との「橋渡し」が中心で、施設で死を迎える人は入居者の2%にとどまる。自宅で亡くなるまで過ごすのが難しいお年寄りも多いため、新型老健施設では、長期的なケアや終末期医療にも対応できる「ついのすみか」の面ももたせる。
 厚労省は、療養病床の削減で医療保険給付は12年度時点で年4000億円減る一方、介護保険は1000億円増え、差し引き3000億円の給付抑制につながるとしている。新型老健施設で介護報酬を手厚くすれば、給付の抑制幅は小さくなる可能性がある。
      ◇  〈キーワード:老人保健施設〉 退院した高齢者などが入居し、自宅に戻れるようにリハビリする施設。全国に約3100カ所あり、約29万人が入居してい る。病院と家庭を橋渡しする「中間施設」と位置づけられているが、実際に自宅に戻るのは約4割。そのほかは病院や診療所に戻るなどしている。


 

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◆2007/04/20 「患者の一生を大事にすべし−終末期の患者に温かい心医療を」
 日本消費経済新聞 2007年4月20日
 http://www.nc-news.com/frame/20070423/gan070423.htm
厚生労働省は先日、 回復見込みのない末期状態の患者に対する 「終末期医療」 の指針を示した。
今日までは、患者の尊厳などで延命治療の中止など、 末期がんで余命6カ月 (終末期) と診断された患者に対する医療ルールがなかった。 だが、厚労省が示したのは、 積極的な延命治療を中心とするものではなく、 患者の人格や家族の意思を尊重し、肉体的な痛みや死に対する恐怖心を緩和するなど、 残された人生のQOL (生活の質) を高めることを目指したもので、 患者だけではなく、家族への支援も重視している。医療機関では近年、 延命治療が施された結果、 死に対する考えがあいまいになり、 「植物人間」 などの脳死・臓器移植が問題視されている。 中でも 「安楽死」 問題が、 社会の注目を集め、 担当医師が告訴される事件が多発している。今から16年前、 伊勢原市 (神奈川県) の東海大医学部付属病院で、 激痛に苦しむ末期ガン患者の男性 (当時58歳)に塩化カリウムの原液を静脈注射して死亡させ、 殺人罪として起訴された。 この事件は、 患者の家族の執拗 (しつよう) な懇請により、徳永医師が看護師の制止をかわし、 「安楽死」させたという事件である。 翌年、 日本医師会は 「末期医療に臨む医師のあり方」 について検討。その見解は、 回復の見込みがない患者の延命治療を本人の希望による 「尊厳死」 は認めるが、 薬物などで 「安楽死」 は原則的に認めないとした。「安楽死」 とは、 ギリシャ語で 「きれいで楽な死」 といった言葉で、 世界中の患者の願いといえる。日本では、 キリスト系の病院では患者中心の医療を施しているところもある。 日本全国に約9000余りの病院があるが、 末期がん患者の心のケアーを施している病院は極めて少ない。有名な聖路加国際病院 (東京都) の日野原名誉理事長は、 末期がん患者には 「人生に思い残すこと」 がないように心のケアーしていると話す。 子や孫に、あるいは社会に伝え残したいことが多いはず。 日野原名誉理事長は、 「絵を描きたい患者」 にはその環境整備を、 「音楽が好きな患者」 にはその環境を整備するという。 淀川キリスト教病院 (大阪市) は全人医療を採り入れている。 全人医療とは 「『体、心と魂が一体である人間 (全人)』 として、 キリストの愛をもって仕える医療」 だ。


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◆2007/05/17  「老健施設医療を強化…厚労省方針」
 読売新聞 2007年5月17日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kaigo_news/20070517ik05.htm




療養病床から転換 看護職増員「看取り」対応
高齢者が長期入院する療養病床の再編で、厚生労働省は16日、病床を転換して新設する老人保健施設(老健)について、終末期の看取(みと)りにも対応し、夜間帯に看護職員を配置するなど、医療サービスを手厚くする方針を決めた。
18日に開かれる同省の「介護施設等の在り方に関する委員会」に原案を提示、夏までにサービス内容などを決める。
療養病床は、医療型と介護型を合わせ35万床あるが、政府は、介護・医療コスト削減を目指して2011年度末までに介護型を廃止、医療型を約15万床に減らす方針を打ち出している。削減分は、転換老健のほか、有料老人ホームなどへの移行を促す。
老健は本来、リハビリを通じた在宅復帰支援が主な役割で、入所者の介護度も比較的軽く、施設で亡くなる人は2%にとどまる。一方、療養病床で亡く なる人は27%と多く、転換老健でも、60床当たり月に1・4人の看取りが必要になると推計されるため、昇圧剤投与などの緊急的な医療処置ができる体制を 整える。また、夜間など施設に常勤医がいない場合は、緊急呼び出しや他の医療機関の医師が往診して対応する。
さらに、現状では夜間帯に常に看護職員がいる老健が約7割にとどまっていることから、転換老健では夜間帯にも看護職員を配置するよう求める。


◆2007/05/18  「「患者参加」共に考えてこそ」
 読売新聞 2007年5月18日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/gantowatashi/20070518ik05.htm




「最近、『患者参加』という言葉だけが流行のように独り歩きしていて、本来の意味とは違う形で便利に使われているケースもあるのではないか」。NPO法人「アレルギー児を支える全国ネット・アラジーポット」専務理事の栗山真理子さんは、そんな心配をしている。  
例 えば、一部の医療関係者は、医療安全策として、「患者誤認を防ぐため名前をはっきり言う」「点滴薬剤を一緒に確認する」などを患者に求め、これを「医療へ の患者の主体的参加」だとしている。栗山さんは、「こうした取り組みに患者が協力することは大切だが、一方的に決められたものに従うことが患者参加だと言 われると、かえって医療者との溝が深まるのではないか」と指摘。「医療安全のため患者にできることは何か、患者と医療者が一緒に話し合い、そのうえで協力 して取り組むことが、本来の患者参加の姿ではないのだろうか」と話す。  
ある難病患者団体のメンバーである男性は、「医療政策を決める場でも、医療者と行政と患者がお互いの意見を言い合い、合意できること、できな いことを確認して、医療をどうするのかを考えることが必要だ」と強調する。以前、終末期医療のあり方を考える検討会に「参加させてほしい」と働きかけた が、返答は「会議の内容は後で報告するから心配しないで」。この男性は、「有識者だけで考え、患者は従えばいいという姿勢が、医療不信につながっているの に」と残念がる。  
最近は、「がん対策推進協議会」のように、患者委員が参加する検討会も増えている。だが、私自身も参加して感じるのは、医療者には「患者はす ぐ熱くなり、過大な要求ばかりする」という不満があり、行政側も「患者代表として誰を選び、どうサポートすればいいのか」と戸惑っているということだ。一 方で患者側は、「一生懸命発言しても頭ごなしに否定される。形式だけの患者参加なのか」と疑問に思っている。  
「患者参加」が進んでいる欧米では、公的な委員に患者代表を選ぶ際の基準を設け、選ばれた患者に対しては、専門用語や制度に関する事前説明、 効果的な発言方法についての助言など、手厚い支援を行っているケースも多い。日本でも、名目だけの「患者参加」にならないように、患者の声を生かして医療 をより良い方向にもって行くための、支援の仕組みづくりが必要だ。(本田 麻由美記者)?


◆2007/05/20  「「尊厳死」法制化へ議論 金沢で医療関係者らフォーラム=石川」
 読売新聞東京朝刊 2007年5月20日
https://db.yomiuri.co.jp/bunshokan/




尊厳死を巡る現状と課題を考える「『尊厳死法制化』北陸フォーラム 終末期医療の明日を考える」が19日、金沢市内で開かれ、医療関係者らが法制 化の是非や問題点について意見を交わした。延命拒否を書面で宣言する「リビング・ウイル」の登録事業を行う「日本尊厳死協会」が主催。
パネルディスカッションで同協会の井形昭弘理事長は、富山県射水市での延命措置中止問題を挙げ、「終末期医療について公的なルールがない中で、患者は自然な死が迎えられず、医師も患者の苦痛にいかに対処すべきか悩んでいる」と、法制化の実現を訴えた。
日本医師会の宝住与一副会長は、「生死については個人の問題で、法律で決めることではないという議論もある」とし、「延命治療の中止に関して医師 の免責が担保されれば法制化は必要ない。しかし、現状で担保は難しいため法制化が必要になってくる」との見方を示した。済生会金沢病院の喜多正樹医師は、 「患者が治療の効果を事前にすべて理解することは難しく、いつでもリビング・ウイルの内容を変更可能にしておくことが大切」と話した。
尊厳死を巡っては、超党派の国会議員で構成する「尊厳死法制化を考える議員連盟」が、早期の立法化を目指している。


◆2007/05/20  「【社説】週のはじめに考える 高瀬舟の昔からの課題」
 東京新聞 2007年5月20日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007052002017529.html




「苦から救ってやろうと思って命を絶った。それが罪であろうか」−森鴎外の短編「高瀬舟」のテーマは安楽死・尊厳死。ますます今日的問題となってきました。
「妻が体のことを心配してくれるのはいい。いつまでも働いてもらいたいのだろうが、自分の最期ぐらいは自分で決めたい」。団塊世代の友人たちか ら、そんな切ない願望が聞こえるようになってきました。自分の最期をどのように迎えるのか、そんな決断をしなければならない時代になってきたともいえま す。
臨終は病院になった  
死をめぐる最大の変化といえば、自宅から病院・診療所へと、臨終場所の変化でしょう。かつては近所の開業医に看取(みと)られながら自宅で死を迎える人が八割を超えましたが、一九七六年を境に逆転、現在では病院・診療所で臨終を迎える人が八割を超えるようになりました。  
厚生労働省の調査だと、今なお六割を超える人が自宅での死を願望していますが、希望を叶(かな)えることができるのはそのうちの一割、ほとんどの人が家族への気兼ねから病院での死を選ぶようになっています。  
亡くなる人が全国で百万人を突破したのは二〇〇三年、団塊世代の高齢化などによって毎年増え続け、三八年に百七十万人のピークに達すると見込まれています。  
臨終場所が治療施設が整った病院になったことで、いつ、どんな形で最期を迎えるべきか考えておくことは現代人にとって必須要件になったといえ、安楽死や尊厳死も身近な問題として浮上してきました。  
現 代の延命医療は、意識を失い植物状態になったとしても、呼吸器の装着や栄養補給によって、半永久的に体は生きつづけさせることができます。そこまでして生 かされたくないという自らの尊厳への思いや家族の心理的経済的負担を取り除くために、延命治療は望まないという人は少なくなく、生前に意思表示(リビング ウイル)しておく人も増えました。  
日本尊厳死協会の会員も毎年二千−三千人ずつ増え、現在は十二万人。(1)無意味な延命措置を拒否する(2)苦痛を最大限に和らげる治療を(3)植物状態に陥った場合、生命維持措置をとりやめる−の生前の遺言書を発行しているとのことです。  
安楽死も尊厳死も医学的に助かる見込みのない状況下で延命治療の中止などで人為的に死を迎えさせることは同じですが、安楽死は患者本人に意識があり、尊厳死は患者本人の意識が失われたケースです。
死は安らかとはいえない  
安楽死・尊厳死問題が深刻な事態になるのは、現実の死がしばしば家族の思いを裏切るからだそうです。家族の願いとは裏腹に、死は必ずしも安らかでなく、家族たちの覚悟も吹き飛ばしてしまうことがあるようです。  
妻で作家の津村節子さんが明らかにした昨年七月三十一日未明の作家吉村昭氏の死の内容は衝撃でした。  
膵 臓(すいぞう)がんで闘病中。点滴の管やカテーテルを自ら引き抜き延命治療を拒否した吉村氏の死は壮絶でしたが、津村さんは「自分の死を自分で決めること ができたのは、彼にとっては良かったかもしれない」。その一方で「あまりにも勝手な人」の言葉を残しました。死は容易に受け入れられるものでなく歳月をか けて納得させていくべきものなのかもしれません。  
「高瀬舟」の京都町奉行配下の同心・羽田庄兵衛が「それが罪だろうか」と疑問を起こしたように医師が刑事責任を問われるケースも出てきまし た。昨年三月、入院患者七人の死亡が発覚した富山県・射水市民病院の事件では、担当医師の治療中止行為が殺人罪に問えるか、捜査が続けられています。  
羽田庄兵衛が「自分より上のものに判断を任す外ない」「オオトリエテ(権威)に従う外ない」と判断基準を求めたように、事件を契機に、国や日本救急医学会などによって終末期医療に関するガイドラインづくりが試みられています。  
東京高裁は、ことし二月の川崎協同病院事件の判決で「尊厳死の問題を抜本的に解決するには法律の制定かこれに代わるガイドラインの策定が必要」と呼びかけました。  
刑事責任追及に委縮する医師や医療現場を叱咤(しった)する意味もあったようです。
究極は医師の勇気と判断  
森鴎外が高瀬舟を雑誌に発表してからほぼ九十年。安楽死・尊厳と終末期医療についての指針づくりは、時代と社会の要請になりました。医師は刑事責任を問われることなく、患者、家族は安心して医師に任せられるガイドラインづくりです。  
しかし、指針はあくまで参考でしかないはずです。人それぞれに生と死があり、どんな治療がベストか決めるのは究極のところは医師の勇気ある判断でしょう。  
それに委ねることができる人間的にも信頼できる医師であってもらいたい。「喜助」の頭からゴウ光がさしたように。
※森鴎外の鴎は旧字体

 
 

◆2007/05/22  「和歌山県立医大 呼吸器外し患者死亡」
 読売新聞 2007年5月22日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070522ik0e.htm

和歌山県立医科大付属病院紀北(きほく)分院(和歌山県かつらぎ町)で、延命措置を中止する目的で80歳代の女性患者の人工呼吸器を外して死亡させたとして、県警が、50歳代の男性医師を殺人容疑で和歌山地検に書類送検していたことが22日、わかった。
終末期医療を巡っては国や医学界の明確なルールがなく、患者7人が死亡した富山県・射水(いみず)市民病院のケースでは結論が出せないまま1年以上捜査が続いている。和歌山の事例は、判断が揺れる医療と捜査の現場に新たな一石を投じそうだ。
昨年 2月脳内出血、家族依頼  
調べによると、男性医師は脳神経外科が専門で、県立医大の助教授だった2006年2月27日、脳内出 血で同分院に運ばれてきた女性患者の緊急手術をした。しかし、患者は術後の経過が悪く、脳死状態になっていたため、家族が「かわいそうなので呼吸器を外し てほしい」と依頼。医師は2度にわたって断ったが、懇願されたため受け入れて人工呼吸器を外し、同28日に死亡したという。  
医師は3月1日に紀北分院に報告。分院では射水市民病院での問題が発覚した直後の同年3月末、和歌山県警妙寺署に届け出た。捜査段階の鑑定で は、呼吸器を外さなくても女性患者は2〜3時間で死亡したとみられるが、県警は外したことで死期を早めたと判断、今年1月に書類送検した。  
飯塚忠史・紀北分院副分院長は「呼吸器の取り外しについては医師個人の判断だった。医療現場の難しい問題なので、司法の判断を仰ぎたいと考えて県警へ届け出た」と話している。家族は被害届を出しておらず、「医師に感謝している」と話しているという。  
呼吸器取り外しを巡っては、北海道立羽幌(はぼろ)病院の女性医師が05年5月に殺人容疑で書類送検(不起訴)されており、今回の書類送検が2例目。羽幌病院の問題では、女医が呼吸器を外した行為と、患者の死との因果関係が立証できずに証拠不十分で不起訴となった。  
一方、射水市民病院の問題については、現在も、富山県警が殺人容疑で捜査している。県警の依頼を受けた専門医からは、死亡した7人のうち一部の患者について呼吸器を外した行為と死との因果関係があるとする鑑定結果が出ている。  
し かし、問題発覚後、呼吸器の取り外しは医療の現場では一般的に行われている可能性があることなどが判明。これを契機に、国や医学界が延命措置中止に関する ルールを明確にしようと指針作りに乗り出したこともあり、富山県警は、慎重に捜査を進めている。分院の医師が書類送検されたことで、富山県警の捜査関係者 からは「同様の事件で死亡者数はこちらの方が多いのに、書類送検しないという選択肢があるのかは微妙な問題だ」との声も出ている。
[解説]免責基準作りが急務  
和歌山県立医科大付属病院紀北分院の延命措置中止問題は、病院内で十分な議論がないまま医師により呼吸器が外されていた可能性が高い。  
羽幌病院や射水市民病院の問題でも、やはり病院内で十分な議論が行われていたとは言い難い。こうしたことが繰り返される背景には、延命措置中止に関するルール作りが遅れ、長年、現場の医師の判断に任されてきたという現実がある。  
厚 生労働省は4月に指針をまとめ、延命措置中止の過程を示した。この中で、治療中止について、患者の意思を尊重するのを基本とし、本人の意思が確認できない 場合は家族と話し合った上で、医療チームとして慎重に判断するとされた。ただ、医師が刑事訴追されない免責基準については、検討課題として残された。  
明確なルールがない中で捜査当局も頭を痛める。紀北分院の問題では、和歌山県警は呼吸器を外した行為と死との因果関係があるとして書類送検した。射水市民病院の問題では、一部の患者について因果関係があると鑑定が出たが、富山県警は立件に慎重だ。  
両県警の捜査方針の違いは、現場の混乱を反映したものと言え、免責基準を含めたより明確なルール作りが急がれる。(地方部 小泉公平、富山支局 増田剛士)
◇和歌山県立医科大付属病院紀北分院 和歌山県北部に位置する中規模の総合病院。脳神経外科のほかに内科、外科、小児科など10科の診療部門を抱えベッド数は194床。


◆2007/05/22  「和歌山県立医大の医師、呼吸器外し80代女性死亡」
 読売新聞 2007年5月22日
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20070522p102.htm




◇家族の要請、医師を殺人容疑で書類送検  
和歌山県立医科大付属病院紀北分院(和歌山県かつらぎ町妙寺)の50歳代の男性医師が、延 命措置を中止する目的で80歳代の女性患者の人工呼吸器を外し、死亡させたとして、和歌山県警が医師を殺人容疑で和歌山地検に書類送検していたことがわ かった。終末期医療を巡っては、厚生労働省が4月に指針を出したものの、延命治療を中止した医師の刑事責任の基準や、具体的な治療中止項目などについて国 や医学界の明確なルールはなく、患者7人が死亡した富山県・射水(いみず)市民病院のケースでは、医師の刑事責任について結論が出せないまま1年以上、捜 査が続いている。和歌山の事例は医療と捜査の現場に新たな一石を投じそうだ。  
調べによると、男性医師は脳神経外科が専門で、県立医大の助教授だった2006年2月27日、脳内出血で同分院に運ばれてきた女性患者を緊急手術。術後の経過が悪く、女性患者は脳死状態になっていた。  
男性医師は翌28日、女性患者に付けていた呼吸器を外し、死亡させた疑い。  
呼 吸器については、28日未明になって女性患者の家族から「きょうだいが来るまで延命させたいので、呼吸器を付けてほしい」との依頼で、医師が装着した。し かし、きょうだいが到着後の同日午後8時ごろ、家族から「最期のお別れができた。これ以上しのびないので呼吸器を外してほしい」と要望された。医師はいっ たん断ったが、懇願されたため、医師個人の判断で受け入れ、3月1日に分院長に報告したという。  
射水市民病院で患者7人の死亡が発覚した直後の同年3月末、分院が和歌山県警妙寺署に届け出た。捜査段階の鑑定では、呼吸器を外さなくても女 性患者は2〜3時間で死亡したとみられるが、県警は外したことで死期を早めたと判断、今年1月に書類送検した。家族は被害届を出しておらず、「医師に感謝 している」と話しているという。  
呼吸器取り外しを巡っては、北海道立羽幌(はぼろ)病院の女性医師が05年5月に殺人容疑で書類送検(不起訴)されており、今回が2例目。羽幌病院では、女医が呼吸器を外した行為と、患者の死との因果関係が立証できず、証拠不十分で不起訴となった。  
一方、射水市民病院の問題では、富山県警の依頼を受けた専門医が一部の患者について呼吸器を外した行為と死との因果関係があるとする鑑定結果をまとめ、同県警が殺人容疑で捜査している。  
この問題が発覚後、呼吸器の取り外しは、医療の現場では一般的に行われている可能性があることなどが判明。これを契機に、国や医学界が延命措置中止に関するルールを明確にしようと指針作りを進めている。  
飯塚忠史・和歌山県立医科大付属病院紀北分院副分院長の話「呼吸器の取り外しについては医師個人の判断だった。医療現場の難しい問題なので、司法の判断を仰ぎたいと考えた」


◆2007/05/24  「終末期医療 あなたならどうするか」
 信濃毎日新聞 2007年5月24日
  http://www.shinmai.co.jp/news/20070524/KT070523ETI090004000022.htm




人工呼吸器の取り外しをめぐり、あらたな事例が明らかになった。和歌山県の病院で家族の希望を受けて患者の呼吸器を外した医師が、殺人容疑で書類送検されていた。
延命中止はどこまで刑事責任を問われるか、医療現場を悩ませる問題だ。国が4月にまとめた終末期医療に関する指針は、肝心な点を避けたとの批判がある。
生死にかかわる問題で一律に線引きするのは難しい。一方で、医療上の問題を司法判断にゆだねるだけでは、いい結果を生まない。終末期医療をどうするか、幅広く論議して合意点を見いだす努力を急ぎたい。
今回のケースでは、人工呼吸器の取り外しを家族が望んでいた。患者は88歳の女性。脳死状態となったところ、親族が来るまで延命してほしいと求められ、呼吸器を装着。面会できた後に、外してほしいと医師に頼んでいた。
問題は、取り外しを医師1人で決めたことだ。家族の依頼をいったん断ったが、懇願された。脳死判定のために呼吸器を外した後、再び装着しなかった。女性は約30分後に亡くなっている。
厚生労働省の指針は、延命治療の中止などの判断は本人の意思決定を最重要とし、医学的な判断は複数のメンバーによるチームでするよう定めている。これまでの呼吸器外しも、大半が1人の判断で行われている。「独断」がはらむ危険性に医師はもっと敏感であるべきだ。
終末期医療のあり方については、国と日本救急医学会が検討を続けている。末期や不治の状態になるほど患者の意思確認は難しい。死生観も絡む複雑な問題である。
ただ、回復の可能性がないのにもかかわらず延命を続けている状況が、必ずしもいいとは思えない。どこまでが許されるのかのコンセンサスを深めるには、医師と患者の信頼関係を築く取り組みが欠かせない。医療不信の中では、死にかかわる問題は解決しない。
万が一の時にどうするか、意思決定の過程を透明にすることが第一だ。本人の意思の確認や医療チームと家族の話し合いなどについてルールを作りたい。
医療事故などで患者が死亡した場合、原因究明に当たる第三者機関の創設も急ぐべきだ。民事訴訟が増え続け、警察が頻繁に医療現場に介入するようで は、医師が委縮する心配がある。中立・専門的な判断ができれば、医療側、患者側、双方にプラスになる。終末期医療に対する懸念も薄らぐはずだ。
自分なら、家族ならどうするか。かねてから考えておきたい。


◆2007/05/24  「延命治療中止 現場の混乱招かぬ指針に」
 山陽新聞 2007年5月24日
http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2007/05/24/2007052408311020001.html




和歌山県立医大病院紀北分院で五十代の男性医師が、八十八歳の女性患者の延命措置を中止するため人工呼吸器を外し死亡させたとして今年一月、県警から殺人容疑で書類送検されていたことが分かった。
調べや分院の話によると、男性医師は昨年二月に脳内出血で運ばれた女性患者を緊急手術したが、脳死状態に陥った。家族から「近親者が来るまで延命 を」と頼まれ呼吸器を装着、親族の到着後に家族から「かわいそうだから」と外すよう要請された。一度は断ったが懇願され、手術の翌日、脳死を調べる自発呼 吸の有無を確認するためとして個人の判断で外したという。
分院から届けを受けた県警は、自発呼吸を調べた後に呼吸器を再装着せず患者を死なせた点を重視する一方で、女性の余命が短く、家族の要請もあったことなどから「悪質性は低い」として重い刑事処分を求めない意見書を付けて書類送検した。
回復の見込みがなく死が避けられない終末期患者に対する安楽死をめぐっては、薬剤を投与する積極的な行為では有罪判決が出されるケースがある。これに対し、呼吸器外しのような消極的な行為ではまだ起訴された例はない。
昨年三月に患者七人が人工呼吸器を外され死亡したことが発覚して大きな社会問題となった富山県・射水市民病院のケースも県警が慎重に捜査している。そうした中での今回の書類送検は医療現場の戸惑いをさらに広げそうだ。
問題は延命治療の中止と刑事責任の関係が明確になっていない点にある。四月には射水市民病院の問題をきっかけに厚生労働省が進めていた国の初の統 一基準となる延命治療の開始・中止などの手順を定めた終末期医療指針がまとまった。患者本人の意思決定を基本として終末期医療を進めることが最も重要な原 則とした。その上で医師の独断を排除するため延命治療を開始するか否かや変更、中止などはチームで対応するとしている。意思が分からない場合は、家族と話 し合い、患者にとって最善の治療方針をとることも盛り込んだ。
だが、終末期の定義や延命治療の中止はどんな要件が満たされれば刑事責任を問われないかなどについて棚上げされたまま。これでは例え患者の意思であっても刑事訴追を恐れて医師は治療を続けることにもなりそうだ。
厚労省は新たな検討会を設けるという。延命治療の在り方については個々の死生観がかかわるだけに難しい問題だが、医療現場が混乱をきたさないさらに踏み込んだ判断基準づくりが求められる。


◆2007/05/30  「[解説]療養病床の老健施設転換」
 読売新聞 2007年5月30日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kaigo_news/20070530ik04.htm




入所長引けば本末転倒 在宅復帰への支援充実を  
削減される療養病床を転換して、新たに作る老人保健施設(老健)について、厚生労働省は医療を充実させるなどの骨格を決めた。看板の掛け替えにとどまってはならない。(社会保障部 小山孝)  
高齢者が長期入院する療養病床は35万床あり、患者の平均年齢は82・6歳。手厚い医療は不要だが「家族で介護できない」といった理由で入院を続ける「社会的入院」が多く、患者の生活の質を下げるばかりではなく、医療費の無駄との指摘が根強かった。  
このため、厚労省は2011年度末までに、介護保険が適用される療養病床を全廃し、比較的症状の重い患者が入院している、医療保険適用型の療養病床のみを残す方針を打ち出した。  
廃止される療養病床は20万床に上る。その主な転換先とされるのが老健だ。計画では、医療の必要性が低い患者を、コストの安い老健や有料老人ホーム、自宅などに移す。  
しかし、療養病床を老健に転換するのは容易ではない。老健と療養病床では機能に違いがあるからだ。老健はリハビリで在宅復帰を支援するのが役割で、要介護度の平均は3・17と、療養病床(4・27)に比べて軽く、医師や看護師の配置も手薄だ。  
一 方、療養病床の患者は症状が安定していても、管を胃に入れて栄養液を送る経管栄養や、床ずれの処置など、医療関係者にしかできない行為が必要なケースが多 い。また、老健で亡くなる人は2・2%だが、療養病床の場合は27%に上る。このため、「老健では患者の受け入れが難しく、行き場のない介護難民が大量発 生する」などの批判が医療関係者から出ていた。  
この問題について、厚労省は今月中旬、「介護施設等の在り方に関する委員会」に、医療面を強化した「転換老健」の基本方針を提示、専門家による議論が始まった。  
新しい老健では、看護職員を24時間配置し、終末期の看(み)取りに必要な医療処置ができる体制を整える。常勤医師がいない夜間や休日は緊急呼び出しで対応し、他の医療機関の医師による往診も認める。  
国は療養病床再編で、医療・介護の給付費3000億円が減らせるとそろばんをはじいている。削減を確実に進めるには、医療関係者や患者が納得できる転換老健のサービス内容を示し、療養病床からの移行を促す必要がある。  
課 題の一つが、医療・看護の体制をどの程度強化するかだ。素案に対し、医療関係者からは、「医師がいない時間があることを家族は納得できるか」「療養病床か ら移る患者には、医療が必要な人が多く、体制が不十分」などの指摘が相次いだ。適切な医療が提供されなければ、高齢者の命にかかわる反面、手厚くしすぎれ ば介護報酬が高くなり、危機的な介護保険財政をさらに悪化させる。両者のバランスを慎重に検討すべきだ。  
老健本来の機能をどう発揮させるのかも課題だ。転換老健でもリハビリを重視し、在宅復帰を目指す方針だが、要介護度が重い高齢者が多いことから、従来より手厚い支援が必要になる。もし、入所が長引く事態になれば、第二の療養病床になりかねない。  
龍谷大学の池田省三教授は、「現在の入院患者のためには転換老健が必要だが、将来の社会的入院の受け皿にするべきではない。在宅復帰だけではなく、診療機能を生かして復帰後の在宅生活を支援するなど、施設内でサービスを自己完結させないことが必要」と指摘する。  
療養病床の削減を円滑に進めるためには、転換老健の整備以外の取り組みも求められる。療養病床や転換老健から、地域に戻る高齢者が大量に生まれるからだ。  
高 齢化の進展で老老世帯が増えるなど、家庭の介護力は低下しており、住み慣れた地域で暮らし続けるには、24時間対応の在宅医療や訪問看護、ニーズに応じた きめこまかい在宅介護など、これまで以上にサービスの充実が求められる。また、「自宅」以外で「在宅生活」を送ることができる、有料老人ホームや高齢者専 用賃貸住宅などの「ケア付き住宅」もさらに増やす必要がある。  
都道府県は今秋までに地域に必要な医療・介護サービスの将来像をまとめた「地域ケア体制整備構想」を策定する。「地域で暮らす」ための多様な選択肢を充実させる施策が欠かせない。


◆2007/06/03  「延命治療のあり方を論議 熊本で学術集会」
 熊本日日新聞 2007年6月3日
http://kumanichi.com/news/local/index.cfm?id=20070602200014&cid=main




「救急医療における終末期」をテーマにした日本脳死・脳蘇生(そせい)学会の学術集会が二日、熊本市手取本町のくまもと県民交流館パレアで開かれ、延命治療の中 止や、患者・家族の意思をどう尊重するかなど、終末期医療のあり方について議論した。


◆2007/06/06  「厚労省 患者意思で延命中止 がん終末期医療に指針案」
 埼玉新聞 2007年6月6日
http://www.saitama-np.co.jp/news06/06/05p.html




終末期を「余命三週間以内」と定義し、患者本人の意思を前提に中止できる医療行為の範囲を「人工呼吸器、輸 血、投薬」などと明記する一方、意思確認できない場合は除外するなど慎重な判断を求めている。


◆2007/06/06  「患者の意思あれば延命中止 がん終末期医療に指針案」
 共同通信(USFL.COM - New York,NY,USA) 2007年6月6日 13:16米国東部時間
http://www.usfl.com/Daily/News/07/06/0606_006.asp?id=53838




死期が迫ったがん患者の延命治療中止手続きについて、厚生労働省研究班(班長・林謙治国立保健医療科学院次長)がまとめた指針試案が5日、判明し た。対象となる終末期を「余命3週間以内」と定義し、患者本人の意思を前提に中止できる医療行為の範囲を「人工呼吸器、輸血、投薬」などと明記する一方、 意思確認できない場合は除外するなど慎重な判断を求めている。
終末期医療をめぐっては、厚労省が「患者の意思が最重要」とする国として初の指針を作成し、5月に都道府県などに通知したが、延命中止の具体的 な内容や終末期の定義には踏み込まなかった。がんなど病気の特性を踏まえた個別の指針は、厚労省が設置した研究班が担当。試案をまとめたのは初めてで、今 後、医療現場の声を反映させながら内容を詰める。
ただ、全国約1500の病院が回答した同研究班の調査では、がん患者への病名告知率は平均で65.7%、余命告知率は29.9%にとどまり、患者の意思確認が容易でない実情にどう向き合うかが課題となりそうだ。(共同)


◆2007/06/07  「「臨死判定」で尊厳死容認 延命中止法案の要綱案」
 中国新聞 2007年6月7日
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200706070249.html




超党派の国会議員でつくる「尊厳死法制化を考える議員連盟」(中山太郎会長)が、法制化に向けた議論のたたき台とする要綱案の概要が七日、判明し た。死期の迫った末期患者が、文書で延命治療を望まないと意思表示している場合、二人以上の医師が「臨死状態」の判定をすれば、栄養や水分の補給などを含 む延命措置を中止できる―とした内容。
要綱案は日本医師会など関連団体にも既に送付し意見を求めており、議連は七日午後に開く総会で公表し内容を議論する。今後修正を経て、合意できれば近く法案の国会提出を目指す。
関係者によると、要綱案は議連で合意していた骨子案をもとに、衆院法制局がまとめたもので、法案名は「臨死状態における延命措置の中止等に関する法律案」。
延命中止の対象となる「臨死状態」の患者とは「すべての適切な治療を行った場合でも回復の可能性がなく、死期が切迫していると判定された状態」と定義した。
臨死状態かどうかの判定は、担当医以外の経験豊富な二人以上の医師が実施。その判定記録を作成することなど、手続きを定めている。
家族がいる場合は、家族が延命中止を拒まないことも条件とし、患者が意思表示できる年齢は十五歳以上とした。


◆2007/06/08  「尊厳死を認めようと有志議員が法案要綱案を公表」
 読売新聞 2007年6月8日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070608ik07.htm




延命治療を希望しない終末期患者の治療を中止する「尊厳死」を認めようと、超党派の有志国会議員で構成する「尊厳死法制化を考える議員連盟」(会長=中山太郎元外相)は7日、 総会を開き、法案要綱案を公表した。
要綱案は、患者本人の自己決定権の尊重と、治療を中止する医師の免責を担保する法制化に向けた議論のたたき台となる。
要綱案によると、法律は、治療による回復の可能性がなく死期が切迫している「臨死状態」に陥った患者を対象とし、延命中止を求める患者の意思を十 分尊重すると明記した。15歳以上の患者が文書で治療の中止の意向を示した上で、担当医以外の2人以上の医師が容体を確認し、臨死状態と判断した時、医師 が治療を中止できるとした。
尊厳死 適切な治療をしても回復する見込みのない末期の患者が、生命を維持する無益な装置や処置を受けず、自然に寿命を迎えて死ぬこと。
致死薬などで死期を早める「積極的安楽死」とは区別される。


◆2007/06/10  「「臨死判定」で尊厳死容認・超党派議連法案要綱案」
 日本経済新聞 2007年6月10日
http://rd.nikkei.co.jp/net/news/shakai/headline/u=http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070607STXKE020007062007.html




超党派の国会議員でつくる「尊厳死法制化を考える議員連盟」(中山太郎会長)が法制化に向けた議論のたたき台とする要綱案の概要が7日、判明し た。死期が迫った患者が、文書で延命治療を望まないと意思表示している場合、2人以上の医師が「臨死状態」と判定すれば、栄養や水分の補給などを含む延命 措置を中止できる―などとした内容。
尊厳死法制化の要綱案づくりは初めて。要綱案は日本医師会など関連団体にも既に送付し意見を求めており、議連は7日午後開く総会で公表し内容を議論する。 今後修正を経て、合意できれば法案の国会提出を目指すが、今国会に提出できるかは日程上微妙な情勢だ。
関係者によると、要綱案は議連で合意していた骨子案をもとに衆院法制局がまとめたもので、法案名は「臨死状態における延命措置の中止等に関する法 律案」。延命措置の中止を容認する場合の厳格な手続きを定めることで、これを守って中止した医師は刑事責任を問われない形となる。(15:05)


◆2007/06/13  「脳死は、終末期医療のあり方にも密接に関連する。」
 山陽新聞(臓器移植取材班) 2007年6月13日
http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/2007/yureru/5_2.html




5部 足踏み 2 戸惑い 救命と脳死 どう対応  
「ピッ、ピッ」  
圧、血圧などの異常を告げる電子音。ICU(集中治療室)の十床あるベッドに、意識のない患者がチューブにつながれ横たわる。医師や看護師が二十四時間、ナースセンターのモニターで容体をチェックする。  
川崎医科大付属病院(倉敷市松島)の高度救命救急センター。年間約六百人が入院。交通事故による頭部外傷やクモ膜下出血など、大半が頭や全身に障害を負った重症患者だ。  
脳死は、毎月一人平均で発生する。医師は脳波の測定などで臨床的脳死と診断すると、もはや助からないことを家族に告げる。  
日本臓器移植ネットワークなどは、この時点で脳死からの臓器提供の選択肢(オプション)を提示するのがベストだという。  
だが、「救命に万全を尽くすと言っておいて、脳死になったとたんに臓器提供の話なんかとてもできない」と同センターの鈴木幸一郎部長。  
「患者家族はまだ『死の受容』ができていない。臓器が目的と誤解されれば、医師との信頼関係は損なわれる。それを一番恐れている」  
  □   ■  
一分一秒を争う救命救急現場の悩みは、救命を最優先してきた患者が、ある段階(脳死)から臓器提供の対象となることだ。気持ちの切り替えに戸惑いを感じる救急医、脳神経外科医は数多い。  
同センターは五年前から、入院時に「臓器提供意思表示カード」(ドナーカード)の有無を尋ねる問診票を作成した。カードを所有する患者家族にのみ、脳死になった際に声を掛ける。  
臓器移植法施行(一九九七年)以降、十三件あった臓器提供(うち脳死一)の申し出はすべて家族の自発的意思だった。  
  ■   □  
脳死は、終末期医療のあり方にも密接に関連する。  
岡山県臓器バンクのコーディネーター、安田和広さん(39)にはこんな体験がある。岡山市内の総合病院でのことだ。  
二〇〇一年、三男(24)が交通事故で脳死状態になった女性(60)が、脳死での臓器提供を懇願した。三男には人工呼吸器が装着されていた。ドナーカードは持っていなかったが、母親は「息子のこんな姿を見るのは耐えられない」と、延命中止を求めた。  
担当の脳神経外科医は承知せず、母親はいらだちを募らせた。安田さんを交えた話し合いで、医師は徐々に治療レベルを落とすことに同意。八日後、心臓死を迎えた後、腎臓と角膜を提供した。  
安田さんは「医師は最後まで人工呼吸器を外すことを拒んだ。移植に際しての終末期医療の難しさを痛感した」と話す。  
  □   ■  
日本救急医学会の終末期医療のあり方特別委員長を務める有賀徹・昭和大医学部教授は「臓器移植はあくまで、より良い終末期医療を実践したその先にあるべきもの」と指摘する。  
「あたかも、死体から臓器を摘出するだけのようなアプローチには強い違和感がある」  
ただ、臓器提供のオプション提示にはさまざまな意見がある。杏林大の島崎修次教授(救急医学)は「がんの告知と同じ。二十年前は家族以外にはほとんど告知しなかったが、今はほとんど患者にされている」と話す。  
「救急医の戸惑いがなくなるかどうかは、国民の理解にかかっているんです」  
バックナンバー
第5部 足踏み
1 闘い ドナー少数 法に一因(2007/6/12)/2 戸惑い 救命と脳死 どう対応(2007/6/13)/3 見えない死 「答え」出すのは家族(2007/6/14)/4 ダブルスタンダード 矛盾生み現場に混乱(2007/6/15) /5 約束 カードに刻む妻の思い(2007/6/16)/6 グリーフケア ドナー家族に癒やし(2007/6/18)/7 二つの改正案 節目の年 行方見えず(2007/6/19)/8 15歳の壁 難しい脳死判定課題(2007/6/20) /9 脳死論議再び 国を二分、見えぬ出口(2007/6/21)/10 枠組み 専門機関の新設必要(2007/6/22)/11 アジアの苦悩 進まぬ脳死への理解(2007/6/24)/12 夢 免疫寛容の謎解明へ(2007/6/25) /13 宝物 問われる命のリレー(2007/6/26)

第4部 生体の光と影
1 プレゼント 元気くれた母の肝臓(2007/5/25)/2 宿命 リスクと向き合う選択(2007/5/27)/3 2人の肺 葛藤から感謝へ変化(2007/5/28)/4 リスク ドナー死亡、再入院も(2007/5/30) /5 重圧 家族に暗黙の強制力(2007/6/1)/6 ドナーの保護 法による規制不可欠(2007/6/2)/7 ケアの要 患者、ドナーに安心を(2007/6/3)/8 現実 緊急避難 今や“主流”(2007/6/4)

第3部 アメリカからの報告
1 みらいちゃん 日本で打つ手なく渡航(2007/4/17)/2 ジグソーパズル 多臓器(2007/4/18)/3 ゴッド・ハンド 40年間 世界をリード(2007/4/21)/4 UNOSの今 臓器不足に対応苦慮(2007/4/22) /5 腎疾患戦略 糖尿病の発症減らせ(2007/4/24)/6 “B級臓器” エイズ陽性でも活用(2007/4/26)/7 ドナー交換 「生体」際限なく拡大(2007/4/27)/8 ギフト・オブ・ライフ 脳死患者の情報機関(2007/4/29) /9 報酬制度 臓器売買懸念の声も(2007/4/30)/10 誇り 生き続ける娘の遺志(2007/5/1)/11 5%ルール 臓器不足に外国人枠(2007/5/2)/12 ジレンマ 患者は増え続けるが…(2007/5/3)

緊急寄稿 病気腎をめぐって
1 日本移植学会理事 清水信義 提供者保護が不十分(2007/4/3)/2 泌尿器科医 万波廉介 患者に希望与え得る(2007/4/4)/3 岡山大大学院教授 粟屋剛 問われる「真の倫理」(2007/4/3) /4 岡山大名誉教授 折田薫三 自ら「第三の道」断つ(2007/4/6)

第2部 命をつなぐ
1 シャント 「いつだめになるか」(2007/3/10)/2 人工腎臓 70年代 苦難の幕開け(2007/3/11)/3 不安 心通わせるケア必要(2007/3/13)/4 高齢化 福祉との谷間であえぐ(2007/3/14) /5 腎疾患戦略 糖尿病の発症減らせ(2007/3/15)/6 贈り物 新たな“命”も授かる(2007/3/16)/7 ローカルネット ドナー求め病院巡り(2007/3/19)/8 実らぬ善意 脳死と混同、誤解も(2007/3/20) /9 ドナー発掘 献腎の実績に地域差(2007/3/22)/10 選択肢 臓器提供の道伝える(2007/3/25)/11 うそ 新たな命に思い複雑(2007/3/26)

第1部 病気腎の波紋
1 延長線 困っとる患者のために(2007/2/2)/2 原点 どうせ捨てる臓器なら(2007/2/3)/3 迷い 公表「がん」がネック(2007/2/4)/4 独自ルート 「宝くじ」の確率なら(2007/2/5) /5 ばらずし 海渡る感謝の気持ち(2007/2/6)/6 学会 歴史の中で原則築く(2007/2/8)/7 一人の世界 「怖いことやっている」(2007/2/9)/8 ドナーの意思 かぎ握る自発的同意(2007/2/11) /9 出合い頭 公平の原則どう保つ(2007/2/12)/10 臓器売買 「起こるべくして…」(2007/2/15)/11 うねり 患者の立場から関心を(2007/2/17)/12 パイオニア 情報公開徹底が第一歩(2007/2/18)


◆2007/06/16  「日本医師会が終末治療で指針案、訴追回避へ患者意思尊重」
 読売新聞東京朝刊 2007年6月16日
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070616i401.htm




日本医師会は15日、回復の見込みがない終末期の患者に対する治療のガイドライン(指針)案をまとめた。
4月に公表された厚生労働省指針を踏まえ、医師の刑事訴追を回避するため、医療チームが患者の意思を基に治療方針を決めることを強調したほか、在宅医療を担う医師を支える体制の必要性をうたった。
指針案を作成したのは日本医師会生命倫理懇談会の作業部会。医師が患者の人工呼吸器を外し、殺人容疑で書類送検されるケースが相次いだため、訴追 回避のルール作りを模索していた。末尾に「指針に沿って延命措置をとりやめた医師の行為が免責されることが強く望まれる」との見解を盛り込んでいる。


◆2007/06/17  「医師不足43%実感 尊厳死法制化は賛成80%」
 中日新聞 2007年6月17日
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007061702024762.html




自分の周囲で「医師が足りない」と感じている人が43%に上ることが、本社加盟の日本世論調査会が今月二、三両日に実施した「医療問題」に関する 全国面接世論調査で分かった。病院の診療縮小や閉鎖が相次ぎ、地域医療の危機とも言われる現状を裏付けた形。国や自治体の早急で実効性ある対策が求められ る。「尊厳死」の法制化には80%が賛成した。
調査結果によると、医師不足を「大いに感じる」が16%、「ある程度感じる」が27%。「大いに感じる」が有権者十万人未満の小都市で27%、郡部で19%と多くなるなど自治体の規模や地域で差があった。
「大いに感じる」と「ある程度感じる」の合計をブロック別にみると、東北が52%で最多。近畿50%、北陸47%、甲信越44%、関東43%、四国42%、東海と九州各39%、北海道38%、中国地方37%の順だった。
不足を感じる理由を二つまで尋ねたところ「待ち時間が長くなるなど不便になった」が47%で最多。「病院や診療所が閉鎖したり、一部の診療科がなくなった」(37%)、「救急対応が遅かったり、たらい回しにされた」(28%)が続いた。
こうした現状に「かかる病院を変えた」(35%)「通院を我慢したり市販薬で済ませた」(18%)などの対応を迫られているが、「特に何もしていない」と、打つ手がない人も42%。
国もさまざまな医師不足対策を打ち出しているものの“特効薬”はないのが現状だ。調査で「急いで取り組んでほしい施策」を二つまで尋ねたところ、 「地域医療に取り組みやすい環境整備」(46%)を求める回答が最多だったが、「国や自治体が医師配置を調整する」(35%)、「新人医師に一定期間へき 地勤務を義務付ける」(21%)など行政の“直接介入”を求める声も目立った。
一方、終末期医療については、回復の見込みがなく延命治療しか残されていない状態になったとき、「人工呼吸器などによる延命治療は望まない」との回答が89%。法律で「尊厳死」を認めるべきだと思う人が80%と、多数派を占めた。
延命治療を中止するには「患者の意思が文書などで確認され、家族も同意」という最も厳しい条件が必要と考える人が全体の50%で最多だった。
▽調査の方法 層化二段無作為抽出法により、1億人余の有権者の縮図となるように全国250地点から20歳以上の男女3000人を調査対象者に選び、調査員が直接面接して1858人から回答を得た。回収率は61・9%で、回答者の内訳は男性48・0%、女性52・0%。


◆2007/06/21  「老人保健施設の医療体制強化、厚労省委が追加措置案」
 日本経済新聞 2007年6月21日07:01
http://rd.nikkei.co.jp/net/news/keizai/headline/u=http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070621AT3S2000W20062007.html




厚生労働省の介護施設等のあり方に関する委員会は20日、長期入院する高齢者向けの療養病床の介護施設への転換を支援するための追加措置案をまと めた。療養病床から転換した老人保健施設(老健)を対象に、休日・夜間の看護体制や終末期の医療を充実させた施設を創設するほか、非営利の医療法人に特別 養護老人ホーム(特養)の運営を解禁するのが柱。2008年度の診療報酬改定などに反映させる。
老健は病院と家庭療養の中間的な存在で、リハビリなどで家庭への復帰を目指すための施設。老健での休日・夜間の医療・看護を強化するうえでは、 他の医療機関の医師の往診や看護職員の配置増加で対応する。終末期も医師や看護職員を手厚く配置できるようにする。そのための介護報酬などについては、今 年度中に具体策を詰める。


◆2007/06/26  「スピリチュアルケア学会発足へ 神戸で9月設立大会」
 神戸新聞 2007年6月26日
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000414651.shtml




全国の大学教員や宗教家、医療関係者ら多彩なメンバーが、死に直面した人の戸惑いや悲しみを和らげることについて話し合う「日本スピリチュアルケ ア学会」が、今年九月に神戸で設立大会を開く。異なる分野の会員が持つノウハウを蓄積し、実際に現場でケアする専門家を養成する。学会理事長には、聖路加 国際病院(東京都)の日野原重明名誉院長(95)が就任する見込み。(霍見真一郎)
関係者の話では、設立大会は九月十五日、神戸市中央区の兵庫県民会館で予定し、事務局は高野山大(和歌山県)に置く可能性が高いという。すでに 発起人は八十人を超えており、京都大、大阪大、関西学院大、甲南大などで心理学や倫理学、哲学を研究する教員や、医師や僧侶も加入を希望している。
ケア対象には、病気で死期を間近に控えた本人だけでなく、災害や事故などで親類や親しい友人を亡くした人も入る。学会は研究会や講演会を通じ「自分の存在は何だったのか」「なぜ生きる」-といった存在に関する根源的な問いに向き合っていく方針という。
発起人の一人、高木慶子・聖トマス大客員教授(70)によると、設立の意義は「異分野の人材交流」。学会では、これまで接点が少なかった仏教、神 道、キリスト教の宗教家の意見交換も実現を目指しているという。死に直面した人々を支えた経験談を蓄積した上で、実際に現場でケアに携わる「スピリチュア ルケア・ワーカー」の養成につなげたい、としている。
一九八八年から終末期医療を受けた百七人の死を見つめてきた高木教授は「生きる意味とは何なのか、死に直面した人々と“共に考える”人材を養成する場にしたい」と話している。


◆2007/06/27  「尊厳死法制化に関係者の合意は?−−日医が土壇場で課題指摘」
 歯科医療未来へのアーカイブスX(fd005.exblog.jp) 2007年6月27日
http://www.japan-medicine.com/shiten/shiten1.html




超党派の国会議員で構成する議員連盟が検討を進めてきた「臨死状態における延命措置の中止等に関する法律案」(尊厳死法案)の今国会への提出が微妙な情勢になってきた。
今月20日に行われた同法案要綱に対する日本医師会との意見交換で、日医は医師や医療関係者の免責を規定するという法制化を目指す方向性には賛同したが、国民のコンセンサスを得られていないなどと苦言を呈し、「全面的に賛意を表することはできない」と異論を唱えた。駆け足で法制化を目指してきた議連にとって、日医からの指摘は大きな誤算で、何とか法案要綱案の作成までこぎ着けたものの、会期末の土壇場にきて最後の調整を強いられる格好になった。
◎法案要綱案に3つの課題
日医が意見交換の場で示した問題点は、3つある。まず1つ目は、法制化によって延命措置を中止する手法や過程が明確になればなるほど、それ以外の方法や過程は免責要件から外れてしまうため、かえって延命措置の中止などの妨げになるのではないかという懸念だ。
これまでの終末期医療では、医師や医療関係者が患者の症状や自己決定権、家族の意思など複数の要素から総合的に判断することで最適な終末期医療が提供されてきた。
ただ、要綱案の中で、「延命措置の中止等」や「臨死状態」「延命措置」を定義し、延命措置を中止する手法や過程を明確化することで、それ以外の方法などが免責要件から除外されてしまい、反対に妨げになるのではないかという指摘だ。
2つ目は、患者本人の書面による意思に基づく場合についてのみの延命措置の中止などを法制化する点。臨床現場では、患者本人の署名による同意がないケースが大多数を占めているため、法制化されても法的リスクを引き受ける医師や医療関係者の状況は変わらず、延命措置の中止などへの委縮効果が残り、かえって患者本人の尊厳に反する状況になってしまうことも懸念している。
最後は、臨死状態の判定。要綱案には、臨死判定には2名以上の医師が必要とし、これらの医師には延命措置の中止等を行う医師を除くことが明記された。しかし、延命措置の中止等を行う医師は、現場の慣行からすれば主治医で、患者の経過や病状を最も把握している主治医以外の医師だけで、適切な臨死判定が行えるのかどうかを疑問視する。
◎「生の完遂」が未整備
日医が提出した意見書の最後には、「人の死というものに対する根底には、生に対する尊厳がある。患者がどのような状態であろうとも、節度ある適切な医療を受けて生を全うした後に迎える死こそ、尊厳死であろう」と記している。
医師は、ある一定の時期までは死に対する挑戦を続けるが、ある時点ではその努力を控えることになり、その後はどういう生を実現し終えるかという方向に向かうという。その「生の完遂」ともいうべき部分が、日本の医療では十分に整備されておらず、議論も不足していると主張するが、日医が主張する通り、こうした議論が十分尽くされているとはお世辞にも言える状況にはない。
法案要綱案には、延命措置の中止をはじめとするすべての国民、患者の生死に関する重要な内容が含まれている。終末期医療は、患者や家族に応じたケースバイケースの対応が求められるが、医師や医療関係者の臨機応変な対応によって、これまで終末期医療は支えられてきたことは疑いようもない事実だ。
こうした枠組みが法制化されれば、一番大きな影響を受けるのは医療提供側と患者側で、そうした体制を実現するには両者の理解がなければ、機能するものではない。しかし、現在の議論は永田町内の議論にとどまり、とても国民、医療関係者を巻き込んだ議論には見えない。国会会期末をにらんだ「結論在りき」の議論にならないよう、実際の医療現場を見据えた議論をしてほしいものだ。(加藤 健一)

*このファイルは生存学創成拠点の活動の一環として作成されています(→計画:T)。
*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)の成果/のための資料の一部でもあります。
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/p1/2004t.htm

UP:200704 REV:20070402,03,05,12,14,22,23.. 20080329
安楽死・尊厳死