HOME > euthanasia > euthanasia 2006 >

射水市民病院での人工呼吸器取り外し・5月

射水市民病院での人工呼吸器取り外し


■新聞報道・他

◆「尊厳死宣言書登録:北海道で急増、5499人に」
『毎日新聞』 2006年5月1日 1時07分 (最終更新時間 5月1日 2時04分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060501k0000m040111000c.html
◆「終末期医療:患者の希望、病状で変化−−米国で調査」
『毎日新聞』 2006年5月1日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/archive/news/2006/05/20060501ddm013100148000c.html
◆「集中治療医学会:末期患者に治療手控え、「経験ある」9割も」
『毎日新聞』 2006年5月1日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/archive/news/2006/05/20060501ddm013100147000c.html
◆「病院の間で認識統一を 終末期医療で石井知事」
『北日本新聞』2006年5月3日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/03backno.html
◆「終末期の病名告知 患者本人46%、家族は96%」
『朝日新聞』2006年05月04日10時21分
http://www.asahi.com/health/news/TKY200605030191.html
◆「最後の選択・上―命の長さ(最後の選択―延命治療中止の波紋)」
『朝日新聞』2006年05月04日富山版
http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000220605090001
『朝日新聞』2006年05月07日富山版
http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000220605070001
◆児玉 聡・前田 正一・赤林 朗 20060513 「富山県射水市民病院事件について――日本の延命治療中止のあり方に関する一提案」
 『日本医事新報』4281:79-83
◆「ルール化」より個別性に目を 延命治療の中止」(科学批評室)
 清水哲郎(東北大教授・哲学)『朝日新聞』2006年5月16日
◆「がん終末期 申し合わせ作成へ」
『朝日新聞』2006年05月19日富山版
http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000000605190002
◆「延命指針に患者の視点を 「報道と読者」委員会」
「Yahoo!Japan News」(共同通信)2006年5月20日20時8分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060520-00000126-kyodo-soci
◆「シンポジウム:その尊厳死、正しい選択? 「生命」問う−−左京区 /京都」
『毎日新聞』 2006年5月21日朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/kyoto/archive/news/2006/05/21/20060521ddlk26040238000c.html
◆「終末期医療指針策定を 県19年度重要要望」
『北日本新聞』2006年5月23日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/23backno.html
◆「がんの終末期7項目確認 県公的病院長協議会」
『北日本新聞』2006年5月31日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/31backno.html
◆「全人的ケアが基本 県公的病院長協議会」
『北日本新聞』2006年5月31日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/31backno.html
◆「呼吸器原則装着せず 富山労災病院」
『北日本新聞』2006年5月31日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/31backno.html

>TOP

■記事引用等

◆「尊厳死宣言書登録:北海道で急増、5499人に」
『毎日新聞』 2006年5月1日 1時07分 (最終更新時間 5月1日 2時04分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060501k0000m040111000c.html

 「資料請求など問い合わせの電話対応をする担当者=札幌市北区の日本尊厳死協会北海道支部で 日本尊厳死協会が作成している「尊厳死の宣言書(リビング・ウイル)」に署名・登録する人が北海道内でこの1カ月間、急増している。富山県の射水市民病院で起きた人工呼吸器外し問題が新聞やテレビで報道された3月末以降、同協会北海道支部への資料請求が増加しており、秋山隆二支部長(80)は「一過性のものかもしれないが、リビング・ウイルの大切さが次第に認識されるようになってきたことはうれしい」と話している。
 同協会によると、全国の登録者は4月28日現在、11万2026人。このうち道内は3月末から148人増え、5499人となった。登録者は70歳代が中心で、毎年平均約100人ずつ増えていたが、この1カ月間で年間の登録者を既に1.5倍も上回るハイペースとなっている。資料請求などの電話も毎日10件程度だったのが3月下旬から倍増しており、多い日には50件以上の問い合わせがあるという。
 宣言書には、不治で死期が迫っている場合に延命措置を拒否し、最大限苦痛を和らげるための医療措置を求めることなどが書かれている。登録希望者は宣言書に署名し、手数料(3000円)を払えば、登録番号を付けて協会に保管され、コピーと会員証が登録者に送られる。
 1年前に登録した札幌市厚別区で薬局を経営する曽根崎良昭さん(72)も4月初めに、薬局の販促用ダイレクトメールで自らの宣言書を印刷して顧客320人に紹介。曽根崎さんは「登録のきっかけは、投薬など延命措置の経済的負担で妻や子供たちに迷惑をかけたくないとの思いからだった。(登録で)気持ちの整理がつき、不安感が軽減された。尊厳死について知らない人が多かったのでもっと知ってほしいと思った」と個人レベルで活動し、登録の増加に一役買っている。【内藤陽】


◆「終末期医療:患者の希望、病状で変化−−米国で調査」
『毎日新聞』 2006年5月1日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/archive/news/2006/05/20060501ddm013100148000c.html

 ◇終末期医療めぐり米で調査

 【ワシントン共同】高齢でがんなどの重い病気を抱えた患者がどんな治療法を望むかは、本人の病状の進行に伴って変化する場合があるとの調査結果を、米エール大などのチームが米医学誌内科学アーカイブスに発表した。米国では終末期の医療について、患者があらかじめ意思表示することが日本より一般的とされるが、チームは、患者の考えが変化し得ることを前提に、意思を継続して確認することが重要だと指摘している。
 調査対象は、がんや肺疾患、心不全など進行した慢性病の患者226人(平均73歳)。
 治療によって4種類の副作用が起きる可能性があると仮定、それでも治療を受け入れるかを、4カ月に1回以上、最長2年間にわたり尋ね、答えが変化するかどうかを調べた。
 副作用は(1)外出できない軽い身体障害(2)毎日の動作に介助が必要な重い身体障害(3)家族が見分けられないなどの認知障害(4)強い痛み−−とした。
 身体障害については、約20%が途中から「受け入れる」に変化。実際に身体機能の低下が進んだ人がそう答える確率が多かった。
 強い痛みについては17%が「受け入れられない」に変わった。


◆「集中治療医学会:末期患者に治療手控え、「経験ある」9割も」
『毎日新聞』 2006年5月1日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/archive/news/2006/05/20060501ddm013100147000c.html

 「医療機関の集中治療室(ICU)で責任者などを務める日本集中治療医学会の評議員の9割は、回復が見込めない終末期の患者に対し、意図的に治療を手控えた経験があることが同学会の調査で分かった。手控えた内容は、新たな治療をしない「現状維持」から「すべて中止」まで大きな差があった。富山県射水市民病院の人工呼吸器外し問題を受け、終末期医療のあり方が論議を呼んでいるが、同学会は「医師や家族が悩みを抱え込まないためにも、指針作りが急務だ」としている。
 今年2月、同学会が終末期医療の指針作りの基礎資料とするため、評議員75人を対象にアンケートし、60人が回答した。
 終末期の患者の治療を「意図して控えたことがある」との回答が90%(54人)を占めた。
 手控えの内容は、症状が変わっても新たな薬を投与しないなどの「現状維持」が39%で最も多かった。薬剤の投与量を減らす「減量治療」が28%、複数の治療法の一部をやめるなど「部分的中止」が27%で続き、治療を「すべて中止」したという回答も4%あった。
 16%は治療を控えたことやその内容を診療録に記録していなかった。
 治療を控えた理由は、「医師の治療上の判断」が55%で、「家族の希望」の45%を上回った。
 最終的に手控えを決めたのは、担当医グループ(45%)▽病棟医長・所属長(28%)▽医局検討会での会議(24%)−−など、ほとんどは複数の医師の協議か責任者の判断で決めていたが、担当医が単独で決めたとの回答も3%あった。
 同学会倫理委員の丸川征四郎・兵庫医科大教授は「治療を手控えることに関する共通認識はまだできていない。今後、人工呼吸器の取り扱いも含め、オープンな議論をしていきたい」と話している。【大場あい】


◆「病院の間で認識統一を 終末期医療で石井知事」
『北日本新聞』2006年5月3日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/03backno.html

 石井知事は二日、県庁で記者会見し、終末期医療に関するガイドラインについて「国が作るのが一番いいが、まずは県内の公的病院の間で、誰もが納得できる申し合わせのようなものができればいい。県は議論の場を提供したい」と述べ、公的病院が終末期医療について統一した認識を持つことに期待を示し、今月中旬にも公的病院長に県医師会長を交えた懇談会を開きたいとした。また、終末期医療に関する相談窓口を十日をめどに県庁内に開設することや、病院を対象にした研修会を六月初めに開くことを明らかにした。
 射水市民病院の延命中止問題を受け、県内の病院ではガイドラインを作る動きが広がっている。知事は「病院ごとにガイドラインができることになり、ニュアンスの違いも生じる」とし、「共通する悩みや対応があるはず。公的病院で最小限、一致できるものを検討し、それを民間病院も参考にしてもらえればいいのではないか」と述べ、申し合わせを民間にも波及させ、県全体として安心できる終末期医療の整備につなげたい考えを示した。
 知事は四月中旬、主な公的病院長八人と終末期医療について意見を交換している。今月の懇談会は、県医師会の代表も参加することを想定している。
 相談窓口と研修会は、県が四月に県内全百十五病院を対象にしたアンケートで要望が多かったことを受けた対応。相談窓口は医務課内に設ける。研修会は六月初めの開催をめどに講師を選定中で、各病院二人程度の参加を求める方針。知事は「秋ぐらいにも研修やシンポジウムを行う検討も始めている」と述べた。


◆「終末期の病名告知 患者本人46%、家族は96%」
『朝日新聞』2006年05月04日10時21分
http://www.asahi.com/health/news/TKY200605030191.html

 「全国の中小規模の一般病院で、余命が半年以下と思われる「終末期」の患者本人に病名を告知している割合は45.9%で、延命処置の希望確認はさらに低く15.2%だったことが、厚生労働省の研究班の調査で明らかになった。一方で、患者家族には病名告知で95.8%と高い割合で伝えており、終末期医療の現場で、患者本人の意向より家族の意見を重視する実態が浮かび上がった。
 調査は04年10〜11月、全国にある中小規模の一般病院(50〜300床)から1000病院を無作為抽出して質問票を郵送し、145病院から回答を得た(回答率14.5%)。終末期患者の多くが、ホスピスや緩和ケア病棟などではなく、中小規模の病院で死亡しているため、対象を絞った。
 全入院患者中、終末期患者の占める割合は9.1%。患者本人に病名を告知している割合は、単純平均すると45.9%だった。家族に対しての病名告知は全体の4分3強の病院が100%としており、平均95.8%。抗がん剤治療などで積極的な治療を目指すか、緩和ケアに徹するかなど治療方針の確認も、患者が47.2%に対し、家族が83.4%だった。
 余命告知は患者本人には平均26.6%だが、家族には90.8%。余命1カ月以内の「最終末期」に、心臓マッサージ、人工呼吸器の装着、昇圧剤投与などの延命処置に関する希望確認も、患者本人に15.2%で、家族が86.8%だった。
 主任研究者の松島英介・東京医科歯科大助教授は「患者本人が希望する場合は基本的には情報提供をするべきだが、チーム医療が充実している大病院と違い、中小は限られた人員で、本人に知らせても、その後のケアが十分にできないという面もあり、大きな課題だ」と話す。


◆「最後の選択・上―命の長さ(最後の選択―延命治療中止の波紋)」
『朝日新聞』2006年05月04日富山版
http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000220605090001

 「「『何もしない』ってカルテに書いといて」。県内のある民間病院勤務の内科医師(50)が担当する80代の男性通院患者は、4月末の診察で念を押して帰って行った。「口から物を食べられなくなったら点滴もせず、自然に任せてほしい」と約4年前から言い続けている。しかし、こうした患者は少数派だ。この医師は「人工呼吸器をつけるなどの治療をしないと命が保てない時、どうしてほしいか自分でも分からない患者のほうが多い」と話す。
 射水市民病院での延命治療中止問題を受け、県が県内110病院の回答をまとめたアンケートでは、重要な治療方針の決定や変更に入院患者や家族から書面で同意を得ている民間病院は約27%にとどまる=グラフ上。アンケートには「患者の意思に従って治療を中止してよいものか。患者の意思は常に変化する」との意見もあった。
 県民主医療機関連合会が00年、高齢の通院患者約千人に聞いたアンケートによれば「生死をさまような重い肺炎で意思表示が出来る時、治療をどこまで望むか」という質問に対し、約半数が「分からない」と答えた。
   ■   ■
 4月末、この内科医が診ていた90代の男性患者が亡くなった。脳卒中で寝たきり。2〜3年間で何度も肺炎になり入退院を繰り返した。治るたびに「次に肺炎になったら治療はどうしましょうか」と同居する長男夫婦に聞いた。本人の意思は確認出来なかったからだ。返事はいつも「これまで頑張ったからもう十分だ」。結局人工呼吸器はつけなかったという。
 点滴や輸血などをどうするか。高齢患者の場合、認知症などで本人の意思が分からないことも多い。この医師は家族と一緒に悩みながら、納得のいく方法を選んできたつもりだという。しかし、どれも患者の命の長さにかかわる選択。射水市民病院での問題が浮上してから、自分のこれまでの治療を振り返ることがある。「きわどいな」と思う。
 県のアンケートでは、治療方針の決定が難しい入院患者について、検討会を開いているのは公的病院で約54%、民間病院では約35%だ=グラフ下。
   ■   ■
 内科医院を開業して約10年の別の医師(53)は勤務医時代、急変した患者に人工呼吸器を取り付ける度に「なるべくつけたくない」と思った。
 医者になって1年目の頃、心筋梗塞(・・こう・そく)で運ばれてきた70代の男性に「持ち直すかもしれない」と人工呼吸器をつけたことがある。しかし、数日で男性は亡くなった。
 意識のない状態で救急車で運ばれて来た患者の場合、とっさの判断で人工呼吸器をつけざるを得ないことがある。家族が駆けつけるまで持ちこたえるように、と考える場合もあったという。
 が、この時の「助かる」という判断は結果的に間違った。「死にいく人に呼吸器をつけて良かったのだろうか」。答えは出せない。
 各病院の終末期治療の指針や方針に本人や家族の意思の書面での確認が盛り込まれるが、この医師は「証文をとるようだ」という。「大きな病院は『決まりだから』と言えるかもしれないが、患者から信頼されていないと思われるのではないか」
 県のアンケートにも「患者の意思を尊重すべき」との意見とともにこんな声が寄せられている。「医療は患者や家族との信頼関係の上に成り立っており、延命治療の差し控え・中止について書面を頂くのは相当な抵抗感・違和感がある」
(増田愛子)


◆「最後の選択・下 指針づくり(最後の選択―延命治療中止の波紋)」
『朝日新聞』2006年05月07日富山版
http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000220605070001

 「県東部にある約200床の病院は、射水市民病院での延命治療中止問題を受けて、終末期医療の診療ガイドライン(指針)作りを急いだ。心臓マッサージ、昇圧剤の投与、人工透析、輸血、経管栄養……。本人や家族に「確認すべき治療の内容」の欄には、患者の生命の維持にかかわる治療項目が幾つも並ぶ。
 入院患者の70%以上は70、80代の高齢者。本人の意思が確認できない場合、主治医、看護師や家族が話し合い、治療の方法を選んできた。指針は決定を記録に残すことを求めるなど、手順をより厳密にする予定だ。「命を保つために何をすべきか患者によって違い、最初から完全な指針にはなり得ない。使っていく中で検証し、補完していかないといけない」とこの病院の院長は話す。
 県が県内110病院の回答をまとめた終末期医療アンケートで「終末期医療の取り組み方針や具体的マニュアルはない」と答えたのは63・6%(70病院)。うち約8割に当たる54病院が整備予定か整備を検討中だ=グラフ上。
 方針がない病院のうち、81・4%(57病院)は「特に困ったことはない」とした。しかし、10%(7病院)は「治療方針の決定に苦慮した」、7・1%(5病院)は「治療の差し控えや中止を求められ困った」と答えた=グラフ下。
   ■   ■
 「終末期医療の基本方針」を97年、全国に先駆けて定めた富山医科薬科大(現富山大)の附属病院。末期がん患者が望み、家族が納得した場合に限り、過剰な延命治療をしないという内容だ。しかし、基本方針に基づいて延命治療を中止したことは一度もない。
 小林正院長は「『もういいです』と命について言うことは患者自身にとっても難しい」と考える。射水市民病院の問題が浮上して、改めて基本方針を読み返したという。方針は「助けることができない患者」に輸液やチューブによる栄養補給を続けるなど患者に「大きな負担と犠牲を強いる」医療を「過剰な延命治療」と位置づけ、QアンドAでは「過剰(無駄)な延命治療」という表現も用いた。
 小林院長は「無駄な医療としたことに『生命を軽く見ている』という批判もあった。一方で、心臓が動いているだけで『命』というのかという考え方もある」という。法制化の難しさは、そこにあると考える。
   ■   ■
 県立中央病院には県内で唯一の緩和ケア病棟があり、末期がん患者らの肉体的・精神的痛みを取ることを重視した治療をする。人工呼吸器は置いていない。病棟に入る時、死に臨んだ時に蘇生を行わないことへの同意を家族と患者の両方に、書面で確認する。
 一般病棟に延命治療を望まない「リビング・ウィル」を持つ患者が入院した場合はどうか。小西孝司院長は、仮にこうしたケースを院内の倫理委員会で検討しても「法的な問題もあるし、個人の宗教の問題などもからむ。人工呼吸器を外すという結論は出ない、出せないと思う」という。
 県のアンケートでは、6割を超える病院が延命治療の中止について国の指針整備を求めた。一方で法制化や指針整備を進めると「治る見込みのない人に、延命治療の中止が一気に広がることを懸念する」との声もあった。
 「脳死」と「心臓死」のダブルスタンダード(二重基準)の指摘や、死についての国民的議論や教育を求める意見も寄せられた。(増田愛子)


◆児玉 聡・前田 正一・赤林 朗 20060513 「富山県射水市民病院事件について――日本の延命治療中止のあり方に関する一提案」
 『日本医事新報』4281:79-83

 紹介作成:的場和子

はじめに

1.事件の概要

05年10月12日 内科看護師→副院長「外科部長が入院患者を安楽死させようとしている」
  院長→呼吸器取り外しの中止 院内調査委員会
 10月14日:外科部長臨床からはずす
 16日警察に関連資料提出
06年3月25日 院長記者会見「7人の患者が外科部長によって人工呼吸器を取りはずされて死亡」
「これらの人工呼吸器の取り外しについて、同院長は、『複数の医師か病院の倫理委員会に相談し,何より患者本人の同意が必要だった』と病院としての不備を認め、また「積極的安楽死には相当せず、延命治療の中止の措置という範疇に入る』との見解を示した。」(p79)

2.今回の事件の問題点:3点

・安楽死/尊厳死:言葉使用をめぐる混乱
今回のケース=消極的安楽死(「治療行為の中止、いわゆる尊厳死(p79)」)←東海大判決の区別
しかし、当初の報道は積極的安楽死の4用件を用いて報道:羽幌病院のケースと同じ誤り
「報道などでこのような混同が生じると、終末期医療に携わる医療従事者の間に不要な混乱を引き起こし、法的責任追及を恐れるあまり、充分な延命治療が行われなかったり、逆に患者の望まない延命治療が続けられたりしかねない(前田・児玉2004)」(p80)

・患者本人の同意が必要というミスリーディング
東海大判決「積極的安楽死の場合には家族による患者の意思の推定は認められないが、消極的安楽死(治療行為の中止)の場合には、『患者本人の意思の確認が困難な場合には、家族が患者の意思を推定することが許される』とされている。(p80)
「本人の意思表示を治療中止の要件にするのは現実的ではなく、またそれ以上の延命治療を望まない患者や家族の意思を無視することにもつながるだろう(p80)」
「少なくとも同判決に基づく限り、今回の件について「患者本人からの意思確認が必要だったという言い方をするのはミスリーディングだと考える(p80)」

・終末期医療の院内規則の不整備
「余計な医療不信を避けるためにも、今後はすべての病院で、終末期医療に関する院内規則を整備すると同時に、担当チーム以外の医療者や外部の識者などによって行われる『倫理コンサルテーション』を行う必要がある」(p.80)

3.倫理コンサルテーション

「医療において生じる倫理的な問題を、患者や家族、医療者などが解決するのを助けるために、個人またはグループなどによって提供されるサービス(米国生命倫理学辞典(第3版)」
→HEC(Hospital ethical comitee)によるサービス;70年代待つIRBと別に発展
米国の全病院の93%に設置;400床以上の病院、研修登録病院すべてで倫理コンサルタントが提供されている
やり方はいろいろ:射水病院は14人の委員による倫理委員会を発足・複数の病院のニーズに応じる地域倫理委員会の立ち上げも「治療に対する選択肢が増え、人々の価値観も多様化するにつれ、医療上の意思決定はますます複雑になっている。
治療方針が充分な論理的配慮をもってきめられたことを保証するために、今後はますます臨床委員会による倫理コンサルテーション制度が必要になるだろう(p81)

4.延命中止について、ガイドラインは必要か

「司法によって示された基準しかない。この基準だけでは医療現場が延命治療の中止についてどういう基準を作ればよいか充分に明らかではない。」(p.81)
「われわれは、こうした司法判断に頼るよりも、専門家や市民による充分な議論を行ったうえで、行政あるいは立法のレベル、または医師会や学会レベルでのガイドライン作成が望ましい」(p.81)
作成の際、議論すべき重要な3点

1)目的/理念の明確化
「具体的には、@医療者が法的責任追及という不安に悩まされずに終末期医療を行うことができ、A患者は本人や家族の意思が充分に尊重される終末期医療を受けられる――という2点を念頭に置くべき」

2)末期の意識の無い、事前の意思も不明な患者の場合、医師や家族の判断で、治療の中止を認めるかどうかという議論
アメリカ方式(患者の自己決定)/イギリス方式(医師が「患者の最善の利益」を判断
東海大は判例は前者 2004年の日本人の意識調査〜代理決定やむなしが過半数。
「日本が今後、治療行為の中止に関するガイドラインを作成するのであれば、自己決定の論理を貫くアメリカ方式を明示的に採用するのかあるいは患者の最善の利益を重視するイギリス方式を採用するのか、またはそれ以外のあり方を猛者kするのか、学会、医療者、市民も含め、広く議論していく必要があるだろう」(p.82)

3)医療機関の義務
1991年米国:患者の自己決定法
医療機関の義務@.入院に当たって治療中止に関する院内指針を知らせること 2.事前指示の作成も含め、治療中止に関する患者の権利について知らせること。
「リヴィングウィルや、家族の代理決定に批判的な人々が心配しているのは、患者が本当は望まないのに家族に遠慮してリヴィングウィルを書くことになったり、介護に疲れた家族が患者の意思に反して治療の注視を求めたりするということだろう。
…こういったことがおきないように、また今回の射水病院のような…倫理性が疑われる事件がおきないように、延命治療の中止には臨床倫理委員会などによる倫理コンサルテーションが必要であることをガイドラインに明記し、担当チームとは独立の倫理コンサルタントによる検討を経て治療方針の決定を行うことが望ましい」(p.82)

ガイドラインのレベル
「理想的には国レベル学会レベルで終末期医療に関するガイドラインを策定し、そこに消極的安楽死(治療行為の中止)と積極的安楽死の区別などを明確にした定義の一覧、患者の意思の確認方法、治療中止の際には倫理コンサルテーションが必要であることなどを明記しておく。また延命治療中止の用件について疾患別に決める必要がある場合には関係学会が協力して細かい指針を作成する。
そして各医療機関では、医療機関の性格に応じた院内倫理指針を作るとともに、倫理コンサルテーションができるシステム(たとえば外部の識者を含めた臨床倫理委員会の設置)を準備する。

終わりに
「治療中止の問題に関して医療者が市民との開かれた対話の機会を設けて、意見表明してゆくことも医療者の社会的責務といえるだろう」(p.83)

◆「ルール化」より個別性に目を 延命治療の中止」(科学批評室)
 清水哲郎(東北大教授・哲学)『朝日新聞』2006年5月16日

 「富山県射水市民病院の医師が患者の人工呼吸器を外した問題が報道され始めてから二ヵ月近くたつ。事態は「尊厳死」,「延命中止」といった用語で把握され,家族の同意を得たか,患者の意思確認はどうしたのか等が,行為の倫理的是非を判断する際の要として報じられた。
  ○強まる二者択一の思考
 この間,私は,「問題をかくかくのタイプのものとして把握し,こことここをチェックする」といった固定的で単層的な思考回路ができていて,事柄の個別性を捉える柔軟で複層的な見方が欠けていると思われる点がずっと気になっていた。
 例えば,「家族の同意を得たかどうか」と,二者択一の問いが立てられ,「同意書がある」とか,「口頭で同意を得た」とか答えられる。だが,決定のプロセスが適切であったかどうかは,こうした外面的結果を見ただけでは分からない。家族は,状況をどう理解し,どういう理由で結論を出したかを理解し,「家族のこのような選択に基づいて外して良いか」と,個別の事情を個別に考える必要がある。個別性に向かう思考からは,二者択一の問いや答え,結果だけを見る評価は出てこないはずだ。だが,こうした二者択一の思考が,医療現場でも,一般市民の間でも,強まっているように思われる。
 このような思考のあり方は,「延命治療」をめぐる市民の理解にも表れていて,時に医療現場に困惑をもたらしている。ここに,急性の発作で救急救命の対応をされた患者がいて,医療側は緊急手術が必要だと診断した。うまくいけば相当程度回復するが,その率は必ずしも高くない。うまくいかなければ,死に至るかもしれず,あるいは延命医療でしかなかったという結果となる可能性もある(選択がどのような結果になるかは,このように不確定なのである)。ここで医療側は治る可能性がある以上,積極的に手術することを勧めた。ところが,家族は,患者がかつて「延命治療はして欲しくない」と話していたことを理由に,積極的治療を拒んだ。おそらく本人は,「延命治療は嫌だ」と言った際に,こうした不確定さまでは考えていなかっただろう。だが,「延命治療」という用語が独り歩きして,不確定さを度外視した二者択一の判断をもたらしている。
 「本当はこの治療をしたほうが良いのだけれど,本人が(あるいは家族が)嫌だというのだから仕方ない」と,選択の責任を患者側に委ねて,あっさりと引き下がる医療者たちの言動を時に耳にするが,ここにも「あれかこれか」と単純に割り切る思考のあり方が見える。
 現在,日本では,「徒(いたずら)な延命治療をしない・中止する」という仕方で死に至ることが,「尊厳死」という名で語られており,法制化の動きもあると聞く。だが,この語は本来《尊厳をもって死に至る》ことを意味しており,人が生の最後に至るまで,自らを肯定する自尊を持って生き続けるあり方を指していた。
 その限りでは,ケアの提供者は《尊厳をもって死に至る》生をどう支援するかを,個別に患者・家族と話し合い,共同で決めるのであり,その支援全体,人の生全体の中で,生命維持装置をどうするかも位置づけられたはずである。ところが,いつのまにか「延命治療をしない」という具体的な選択が,単独で切り出されて,それこそが「尊厳死」であるかのような言論がなされている。皮相に定位して割り切る見方である。
 
  ○患者へ無言の圧力心配
 このような思考のあり方が支配する中で,生命維持を中止できる条件を,例えば法制化によって,社会的に公認することには,慎重でありたい。私は,延命治療を中止するという選択が倫理的に適切であるような状況があると認めるものであるが,だからといってそれをルールとして公認することに賛成するわけではない。
 例えば,懸念されることの一つに,生命維持装置を着けて,生き続けようとしている患者に対して「もうそろそろ中止を意思してはどうか」と無言の圧力がかかるという点がある。個々人を大事にするあり方をどのような社会的なルールとして表現するかをよく考える必要がある。「中止の条件」を満たすかどうかに定位して,二者択一の割り切った選択をできるようにするルールだけがルールなのではない。」


◆「がん終末期 申し合わせ作成へ」
『朝日新聞』2006年05月19日富山版
http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000000605190002

 「知事と県内の公的病院長8人らとの終末期医療に関する2回目の意見交換会が18日、県庁で開かれ、県公的病院長協議会の泉良平・新会長(富山市民病院長)は、がんの終末期医療に限定した県内公的病院共通の申し合わせを今月末をめどに作成、公表する考えを明らかにした。
 泉院長によれば、申し合わせの柱となるのは▽がん終末期の判断(複数の医師による)▽対等な立場の医師・看護師らによる患者や家族も含めたチーム医療の実践▽説明と同意▽治療方針についての書面による意思の確認▽治療の中止に対する取り扱いの5項目。
 前日に開かれた同協議会の定例会議で試案を示したところ、出席した公的病院長23人の多くが申し合わせの作成に賛成したという。泉院長は「病院をがんじがらめにするのでなく、(終末期医療に対する)院内の議論や県民の理解を深めるものにしたい。各病院の事情もある」と話した。
 今後、細部を詰め、協議会に参加する25公的病院の了解を得た上で決定、公表する予定。
 意見交換会には福田孜・県医師会長も出席。治療方針について患者の同意をとる時機の難しさを指摘する意見や在宅医療の支援態勢の充実を求める意見などが出た。
 また、県は医療関係者を対象にした終末期医療に関する研修会を6月4日に開くことを発表した。医療倫理、終末期医療と法律、緩和ケアについての専門家を県外から招く。


◆「延命指針に患者の視点を 「報道と読者」委員会」
「Yahoo!Japan News」(共同通信)2006年5月20日20時8分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060520-00000126-kyodo-soci

 「共同通信社は20日、外部識者による第三者機関「報道と読者」委員会の第24回会議を東京・東新橋の本社で開き、3人の委員が「人工呼吸器外し問題」と「在日米軍再編」をテーマに議論した。
 富山・射水市民病院の呼吸器取り外し問題では、厚生労働省が策定を検討している延命治療の在り方に関する国のガイドライン(指針)について弁護士の梓澤和幸氏が「患者や家族の意見を取り入れる指針づくりが行われるか、メディアが監視を強めてほしい」と述べ、患者や家族側の視点が必要と強調した。
 前広島市長の平岡敬氏は「指針をつくっても(基準)すれすれの問題が出てくる。最後は医師の判断であり、医師の全人教育が重要だ」と指針づくりに慎重な姿勢を示した。


◆「シンポジウム:その尊厳死、正しい選択? 「生命」問う−−左京区 /京都」
『毎日新聞』 2006年5月21日朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/kyoto/archive/news/2006/05/21/20060521ddlk26040238000c.html

 「◇立命館大大学院・立岩教授が講演「容認の前に議論を」
 生命の尊厳について考えるシンポジウム「良い死?」が20日、関西セミナーハウス(左京区)であった。同ハウス活動センターが主催し、約40人の市民らが参加。臓器移植や出生前診断などの倫理問題に対峙(たいじ)してきた講師の立岩真也・立命館大大学院教授(社会学)は、「尊厳死容認の法制定の前には、十分な議論が必要」などと訴えた。【山田奈緒】
 
 講演では「本人がいいと言ったから、耐え難い激痛があるから、死を選んで良いという考えはシンプルで乱暴」と主張。「自分で食うものは自分で稼ぐ事が存在価値とされる今の社会では、『周囲に迷惑をかける』との思いから、自分の存在価値が肯定できなくなる」と指摘し、「その状態での『もう(延命治療を)やめよう』を、本人の意思だと安易に受け入れられない」と話した。
 また、今年3月に発覚した射水市民病院(富山県)の人工呼吸器外し問題が、「ルールがなくて医療現場が混乱するなら、早急に作れ」との世論を一気に加速させたと分析。「このままだと、重度の認知症や障害者までも『不治で末期』として、尊厳死を認める法でターゲットにされる」と危惧した。
 参加した女性看護師(45)=右京区=は、「『無駄な延命治療はしないで』と子どもに言ったが、同じことを子どもに言われたら実行できないだろう。難しい問題だが家族と話し合おうと思う」と話していた。」


◆「終末期医療指針策定を 県19年度重要要望」
『北日本新聞』2006年5月23日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/23backno.html

 「国の19年度予算編成に向けた県の重要要望事項がまとまり、22日の県議会正副委員長会議で報告された。件数は前年度より6件多い46件。終末期医療に関する早期のガイドライン(指針)策定や医師・看護職員の確保対策など新規8件を盛り込んだ。従来の重要要望は、国の補助金や事業の個所付けの要望が多かったが、地方の実情に応じた制度の創設や拡充、規制緩和など提案型の要望を増やした。
 射水市民病院の延命治療中止問題を受け、終末期医療のあり方が社会的な関心になって いることから、終末期医療に関するガイドラインの早期策定、法制化などを求めた。地方 医療機関の医師不足が目立つ中、国による抜本的な取り組みが必要とし、特に小児科、産 科、麻酔科などの医師の養成・確保に向けた各種施策の拡充を盛り込んだ。
 このほかの新規要望では、老朽化している県営欅平ビジターセンターに代わる観光拠点 施設の整備、農業排水路の機能低下で溢水(いっすい)被害が出ている庄川左岸地区を対 象にした国営総合農地防災事業の実施設計採択などを求めた。
 提案型の要望には、富山型デイサービスの実施施設を対象に子どもの預かりを支援する 事業の創設、森林整備法人への支援措置の拡充、携帯電話の不感地帯解消へ鉄塔整備事業 の採択要件の緩和などを組み込んだ。
 国への重要要望活動は昨年度から概算要求前の6月の1回だけ行っており、6月1日に 県在住国会議員への説明を行い、2日から9日まで県議会の常任委員会単位で各省庁へ要 望する。」


◆「がんの終末期7項目確認 県公的病院長協議会」
『北日本新聞』2006年5月31日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/31backno.html

 「射水市民病院の延命中止問題を受け、県公的病院長協議会(会長・泉良平富山市民病院長)は三十日、国のガイドライン(指針)策定に先駆けて「がんの終末期医療に関する申し合わせ」を石井知事に報告した。申し合わせは、死を目前にした患者には人工呼吸器などによる延命より、生活の質の向上を優先することを基本方針とした七項目。今後、県内の医療機関での活用を期待している。
 がんの終末期を「おおむね六カ月以内に死期が訪れると予想される状態」と定義した上 で、申し合わせには▽チーム医療の徹底▽患者の意思を書面で確認▽患者や家族への十分 な説明と同意による決定−などを盛り込んだ。人工呼吸器を装着した場合は延命を中止せ ず、安楽死についても行わないことをあらためて明記した。
 泉会長は県庁で、知事に申し合わせ事項の一覧を手渡し「各病院の医師とその他の医療 スタッフが、申し合わせを基に議論し、病院ごとのマニュアルを作ることで、医療の質の 向上を期待している」と作成の意義を説明した。
 知事は「民間の病院や診療所にも参考にしてもらえるよう広めていきたい」と話した。
 同協議会は、県内の二十五公的病院で構成する。射水市民病院の問題発覚後、四月に知 事と主な公的病院長が終末期医療について意見交換。これをきっかけに、協議会としての 「申し合わせ事項」作成を進めてきた。」


◆「全人的ケアが基本 県公的病院長協議会」
『北日本新聞』2006年5月31日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/31backno.html

 「県公的病院長協議会が作成した「申し合わせ」は、がんの終末期患者を対象に、痛みの緩和、精神的な支援を含めた「全人的ケア」を基本方針としている。各病院がこれに基づいてガイドライン(指針)やマニュアルを作り、県内の終末期医療の質を高めていくことが求められる。
 同協議会は今回の申し合わせを「国のガイドラインが策定されるまでの暫定的なもの」 と位置付け、現行法で認められていない尊厳死や安楽死は容認しなかった。
 一方、書面による患者の意思確認、複数の医療スタッフによるチーム医療徹底などの ルールを網羅した。
 七項目はどれも目新しいことではなく、いわば終末期医療に求められる基本事項。そう した基本が、すべての現場で徹底していなかったことが、射水市民病院の延命中止問題で 明らかになったとも言える。
 県内の医療機関では緩和ケアなどのレベルに差があることも事実。患者が自宅で最期を 迎えるケースもあり、カバーすべき範囲は広い。医師会などにも協力を呼び掛け、県内全 域で終末期医療の底上げをしていくことが求められる。
 (宮田求政治部記者)


◆「呼吸器原則装着せず 富山労災病院」
『北日本新聞』2006年5月31日
http://www.kitanippon.co.jp/backno/200605/31backno.html

 「富山労災病院(魚津市六郎丸、三輪晃一院長)は三十日までに「末期がん患者の治療に関するガイドライン(指針)」を定めた。指針では原則として人工呼吸器は装着せず、装着した場合は取り外さない。もし装着後に患者や家族から延命治療中止の申し出があれ ば、フローチャートに従って最終的に院内の倫理委員会(委員長・三輪院長)が決定を下 す。
 射水市民病院の延命治療中止問題を機に、医師、看護師や外部の有識者ら十三人でつく る倫理委員会で独自にまとめた。
 原則として▽患者の尊厳を守り、その意思を尊重する▽人工呼吸器は装着しない▽いっ たん人工呼吸器を装着した場合は取り外さない−という三つの考え方を記した。
 例外的に人工呼吸器を装着した場合で、患者や家族から延命治療中止の申し出があった 時は「患者のリビングウィル(尊厳死の宣言)または家族(キーパーソン)からの治療中 止の申し出」「がん診療の経験ある複数医療スタッフによる判断」などから、最終的に 「倫理委員会での検討・決定」に至る六段階のフローチャートを作成した。
 三輪院長は「命を長引かせるのも短くするのもいけない。自然な形で一生を全うしても らうのが基本的な考え方だ」と話している。」



*作成:大谷いづみ/記事全文引用についての責任:立岩
*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)のための資料の一部でもあります。


UP:20060530, REV:20060601
安楽死・尊厳死  ◇安楽死・尊厳死 2006 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)