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射水市民病院での人工呼吸器取り外し




2006年4月  ◆5月  ◆6月〜

◆立岩 真也 2009/12/22 射水市民病院事件不起訴についてのコメント
 『読売新聞』2009-12-22富山県版,

◆2006/03/25「TBS News i」17:51 「安楽死・尊厳死反対集会では驚きの声」
http://news.tbs.co.jp/ *
◆2006/03/27 0800− 日本テレビ朝のワイドショー「情報ツウ」
 小松美彦氏・日本尊厳死協会副理事長の荒川迪生氏が出演
◆2006/03/27 安楽死・尊厳死法制化を阻止する会他、記者会見
 厚生労働省記者クラブ(午後5時から6時)
 清水昭美(安楽死・尊厳死法制化を阻止する会)/中西正司(全国自立生活センター協議会)/古賀典夫(怒っているぞ!障害者切り捨て―全国ネットワーク)/川口有美子(さくら会)
◆2006/03/27 17:37 「TBS News i」
「「明らかに殺人」安楽死に反対する団体」
http://news.tbs.co.jp/ *
◆2006/03/27 17:50- 日本テレビ「ニュースプラ1」
 東海大学安楽死事件裁判長 松浦繁氏のコメント
◆2006/03/27 18:17- 日本テレビ「スクラブル」?
 日本尊厳死協会理事の上田健志氏のコメント
◆立岩真也 2006/03/27掲載 「良い死・9」
 『Webちくま』2006.04掲載予定
◆2006/03/28 09:37-09:52 川崎厚生労働大臣閣議後記者会見 参議院議員食堂)
http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2006/03/k0328.html
◆2006/03/28 1400- 日本テレビ「ザ・ワイド」。
 清水昭美氏(安楽死・尊厳死法制化を阻止する会)と日本尊厳死協会理事長の井形昭弘氏のコメントを放映。
 他に東海大学安楽死事件裁判長 松浦繁氏,東京・三楽病院の瀬戸山隆平医師,東京衛生病院の本郷和彦医師のコメント。
 ゲストに元最高裁裁判長土本武司氏が出演。
◆2006/03/29 PM4時55分〜7時 フジテレビ 「スーパーニュース」
 *清水昭美(安楽死・尊厳死法制化を阻止する会)取材を受ける
◆2006/03/29 PM9時54分〜11時10分 テレビ朝日 「報道ステーション」
 *清水昭美氏(安楽死・尊厳死法制化を阻止する会)取材を受ける。
 清水氏の他に日本尊厳死協会副理事長の太田満夫氏のコメント
◆2006/03/30 PM4時54分〜6時55分 TBSテレビ 「イブニング5」
 *清水昭美(安楽死・尊厳死法制化を阻止する会)取材を受ける
◆2006/03/31 日本尊厳死協会,尊厳死法制化推進の要望書を厚生労働省に提出
『TBS News i』2006年3月31日21:09
http://news.tbs.co.jp/ *
◆2006/03/31 衆議院法務委員会で村井宗昭(民主)「射水市民病院「安楽死問題」質問,杉浦法務大臣答弁
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.cfm?deli_id=29952&media_type=wb


■新聞報道

◆「医師「呼吸器外したい」と院長に相談…7人安楽死疑惑」
 『読売新聞』2006年3月25日15時9分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060325i206.htm
◆「高齢患者7人「安楽死」か 富山の病院、県警が捜査」
 『北海道新聞』2006/03/25 17:06
 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060325&j=0022&k=200603254331
◆「医師、延命治療中止に信念か 富山・呼吸器外し7人死亡」
 『朝日新聞』2006年03月25日22時52分
http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY200603250302.html
◆「家族同意、尊厳死と説明 患者7人は地元の50―90代」
 『北海道新聞』 2006/03/25 23:08
 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060325&j=0022&k=200603254466
◆「「医師の独断」問題視、家族同意「文書ない」 病院会見」
 『朝日新聞』2006年03月26日01時08分
 http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY200603250306.html
◆「富山の病院延命中止、院長「倫理上問題」」
 『読売新聞』2006年3月26日1時50分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060325it15.htm
◆「富山・射水の呼吸器外し:家族の同意書なし、外科部長の独断−−「尊厳死」と説明」 『毎日新聞』2006年3月26日 東京朝刊
 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060326ddm001040048000c.html
◆「富山・射水の呼吸器外し:7人死亡 外科部長に権限 他の医師、反論できず」
 『毎日新聞』2006年3月26日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060326ddm041040092000c.html
◆「尊厳死疑惑:患者の意思確認など必要な手続きせず」
 『毎日新聞』2006年3月26日 7時44分
 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060326k0000m040115000c.html
◆「尊厳死疑惑:「同意」「死期」が焦点に」
 『毎日新聞』2006年3月26日 7時49分
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060326k0000m040105000c.html
◆「尊厳死疑惑:外科部長を知る医師ら、一様に複雑な反応」
 『毎日新聞』2006年3月26日 20時48分 (最終更新時間 3月26日 21時35分)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060327k0000m040092000c.html
◆「患者家族「同意ない」病院「カルテに記載」…延命中止」
 『読売新聞』2006年3月26日22時4分 読売新聞
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060326it14.htm
◆コラム:天地人
『北日本新聞』 2006年 3月26日
 http://www.kitanippon.co.jp/news/column/tenchi/tenchi.htm *
◆「「外科部長研修の事実なし」金沢大が発表を否定」
『読売新聞 2006年3月26日23時58分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060326i116.htm
◆コラム(悠閑春秋)
『北日本新聞』 2006年3月27日
 http://www.kitanippon.co.jp/news/column/yuukan/yuukan.html *
◆「尊厳死疑惑:射水市民病院、玄関に謝罪文を掲示」
『毎日新聞』 2006年3月27日10時52分 (最終更新時間 3月27日 12時18分)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/archive/news/2006/03/27/20060327k0000e040032000c.html
◆3月27日付・よみうり寸評
『読売新聞』 2006年3月27日13時52分
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060327ig05.htm
◆「富山の呼吸器外し 患者の家族「頼んでいない」」
『朝日新聞』 2006年03月27日03時11分
 http://www.asahi.com/health/news/TKY200603260240.html
◆「呼吸器外しの外科部長を聴取 富山県警、立件の可否検討」
『朝日新聞』 2006年03月27日06時06分
 http://www.asahi.com/health/news/TKY200603260245.html
◆「呼吸器に拒否反応 「外して」頼んだ事例も 富山の病院」
『朝日新聞』 2006年03月27日06時06分
 http://www.asahi.com/health/news/TKY200603260249.html
◆「明らかに殺人」安楽死に反対する団体 『TBS News i』 2006年3月27日17:37
http://news.tbs.co.jp/ *
◆「尊厳死」(憂楽帳)【今沢真】
『毎日新聞』 2006年3月27日 東京夕刊
 http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/yuuraku/news/20060327dde041070028000c.html
◆3月28日付・編集手帳
『読売新聞』 2006年3月28日1時39分
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060325ig15.htm
◆[延命治療中止]「指針となる法的整備が必要だ」(3月28日付・社説2)
『読売新聞』 2006年3月28日1時40分
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060327ig91.htm
◆「呼吸器外し 治療中止の基準作りを」【社説】
『朝日新聞』 2006年03月28日付
http://www.asahi.com/paper/editorial20060328.html
◆【天声人語】
『朝日新聞』 2006年03月28日付
http://www.asahi.com/paper/column20060328.html
◆「『本音口にできない』 富山の『安楽死』疑惑」(特報) (坂本充孝、大村歩)
『東京新聞』 2006年3月28日付け
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060328/mng_____tokuho__000.shtml
◆「呼吸器外し 『同意』で食い違っては」(社説)
『東京新聞』2006年3月28日付け
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060328/col_____sha_____002.shtml
『中日新聞』2006年3月28日付け
http://www.chunichi.co.jp/00/sha/20060328/col_____sha_____001.shtml
◆「智恩院の桜が入相(いりあい)の鐘に散る春の夕(ゆうべ)」…(中日春秋)
『中日新聞』2006年3月28日付け
http://www.chunichi.co.jp/00/chn/20060328/col_____chn_____000.shtml
◆「私は力の限り患者のためになる…」余録
『毎日新聞』 2006年3月28日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/yoroku/archive/news/2006/03/20060328ddm001070030000c.html
◆「病院長が市議会に説明 人工呼吸器外しで 富山県」
『北海道新聞』 2006年3月28日 7時30分
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060328&j=0022&k=200603285029
◆「川崎厚生労働大臣閣議後記者会見」
(H18.03.28(火)09:37〜09:52 参議院議員食堂)
http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2006/03/k0328.html
◆「終末医療の停止条件「早めに結論を」 川崎厚労相」
『朝日新聞』 2006年03月28日13時59分
http://www.asahi.com/national/update/0328/TKY200603280262.html?ref=prev
◆「「呼吸器外しに同意」患者家族が自宅玄関に張り紙」
『朝日新聞』 2006年03月28日22時04分
http://www.asahi.com/health/news/TKY200603280412.html
◆「外科部長、「間違っていた」 院長に謝罪」
『朝日新聞』 2006年03月28日22時27分
http://www.asahi.com/health/news/TKY200603280477.html
◆「富山・射水の呼吸器外し:「尊厳死の指針策定急ぐ」−−川崎厚労相」
『毎日新聞』 2006年3月29日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/archive/news/2006/03/29/20060329ddm005040011000c.html
◆「「倫理」めぐり緊迫 射水市民病院延命中止」
『北日本新聞』 2006年3月29日
http://www.kitanippon.co.jp/ *
◆「終末期医療ガイドライン設置は4病院 県内」 『北日本新聞』 2006年3月29日
http://www.kitanippon.co.jp/ *
◆「7件すべて家族同意 射水・延命中止」
『北日本新聞』 2006年3月29日
http://www.kitanippon.co.jp/ *
◆「尊厳死疑惑:外科部長が初めて説明「自然な死」選択」
『毎日新聞』 2006年3月29日 15時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060329dde001040017000c.html
◆「富山・射水の呼吸器外し:外科部長、初めて説明」
『毎日新聞』 2006年3月29日 東京夕刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060329dde001040017000c.html
◆「尊厳死疑惑:外科部長の発言内容」
『毎日新聞』 2006年3月29日 15時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060329k0000e040090000c.html
◆「尊厳死の問題「法制化加速を」 超党派議連の幹事長」
『朝日新聞』 2006年03月29日21時16分
http://www.asahi.com/life/update/0329/005.html
◆「超党派の議員連盟、「尊厳死」の早期法制化を強調」
『読売新聞』 2006年3月29日22時51分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060329ic23.htm
◆「呼吸器外し 外科部長「別れの時間作ろうと」」
『朝日新聞』2006年03月29日23時36分
http://www.asahi.com/national/update/0329/TKY200603290480.html
◆「延命中止、外科部長「5件は別の医師と話し合って…」」
『読売新聞』 2006年3月30日1時21分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060329i318.htm
◆「「ほかの医師と決めた」射水市民病院外科部長」
『北日本新聞』 2006年3月30日
http://www.kitanippon.co.jp/cgi-bin/news.cgi?id=A100 
◆「大半が外科部長らに理解 呼吸器外しで電話相次ぐ」
『北海道新聞』 2006年3月30日 10:59
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060330&j=0022&k=200603305695
◆「延命中止、富山県警が家族から任意聴取」
『読売新聞』2006年3月30日15時40分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060330i207.htm
◆「尊厳死疑惑:患者は生前、延命治療の中止希望 家族証言」
『毎日新聞』 2006年3月31日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060331k0000m040145000c.html
◆病院側は他の3医師にも聞き取り調査
『TBS News i』2006年3月30日 18:01
http://news.tbs.co.jp/ *
◆終末期ケア検討委、来月初めにも発足…射水市民病院
『読売新聞』2006年3月31日0時24分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060330ic23.htm
◆尊厳死:法制化求め団体が要望書、川崎厚労相に提出
毎日新聞 2006年3月31日 19時37分
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060401k0000m040047000c.html
◆「「尊厳死」と主張せず…延命措置中止の外科部長が反論」
『読売新聞』2006年3月31日21時7分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060331i213.htm
◆外科部長、退職願を撤回 病院を批判 呼吸器外し問題
『朝日新聞』2006年03月31日21時16分
http://www.asahi.com/health/news/TKY200603310504.html



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■記事引用・他

◆「安楽死・尊厳死反対集会では驚きの声」
『TBS News i』 2006年3月25日17:51
http://news.tbs.co.jp/ *

 「東京では、障害者や患者の家族らおよそ100人が参加して、安楽死や尊厳死に反対する集会が開かれました。
 富山県の外科医が患者の呼吸器を外していたことについては、参加者から驚きの声が聞かれました。
 「7人もということは、病院の中で1例目でどうして気がつかなかったのか」
 「『尊厳死』という言葉の美しそうな響きの中で、(今回のような)流れが加速しているのではないか」(参加者)
 さらに、今回の問題を受け、国会で尊厳死の法制化に向けた動きが加速するのではないかと懸念する声も多く聞かれました。


◆「医師「呼吸器外したい」と院長に相談…7人安楽死疑惑」
 『読売新聞』2006年3月25日15時9分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060325i206.htm

 「終末期医療の患者7人が人工呼吸器を外され、死亡していたことが判明した富山県射水(いみず)市の射水市民病院。25日午前に会見した分家静男市長は、「警察に任せており、詳しい話はわからない」と苦渋に満ちた表情で語った。
 分家市長は25日午前10時45分、病院の設置者として市役所で会見を開いた。
 会見によると、男性外科医師(50)は昨年10月12日、受け持っていた70歳代の男性患者について、「人工呼吸器を外したい」と麻野井英次院長に相談したが、院長は拒否。同病院は、人工呼吸器を外そうとした外科医師の判断に問題があったとして、内部調査を開始した。
 同病院によると、この調査の過程で、それ以前に外科医師が担当した患者計7人が、人工呼吸器を取り外され、死亡したことが判明した。外科医師は自宅待機となり、現在は金沢大で研修している。
 分家市長は、7人が死亡したことは報告を受けていないとした上で、「警察に一任しており、情報を受けていないので詳しい話は分からない」と説明。人工呼吸器を外した外科医師の行為については、「疑義があると院長が判断し、調査している段階だ」と述べるにとどまった。
 公立病院でこうした問題が起きた点については、「100歳で亡くなっても、遺族の方は『もう少し長生きしてほしかった』と思うのが人間の本当の姿。患者さんが元気になることに最善を尽くす。これからもそういう病院でありたい」と目に涙を浮かべながら語った。
 射水市民病院はこの日は休診日で、外来患者の姿はなかったが、病院2階の事務室では、病院関係者が関係先や報道各社からの問い合わせに慌ただしく応対していた。」


◆「高齢患者7人「安楽死」か 富山の病院、県警が捜査」 2006/03/25 17:06
 『北海道新聞』
 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060325&j=0022&k=200603254331
 「富山県射水市の射水市民病院(麻野井英次院長)で、男性外科医(50)に人工呼吸器を取り外された男女7人の高齢患者が死亡していたことが25日、分かった。
 同病院は経緯に不審な点があるとして調査を開始。届けを受けた富山県警は同日までに、複数の患者が「安楽死」させられた疑いがあるとみて、殺人などの容疑で捜査に乗り出した。病院や患者の親族らから事情を聴き、経緯を詳しく調べている。
 同日午前、記者会見した分家静男市長によると、男性外科医は昨年10月12日、死亡した7人とは別の入院患者(78)について「人工呼吸器を外したい」と看護師長に主張。院長は不審に思い取り外しを認めず、調査委員会を設置した。
 この患者は呼吸器は取り外されなかった。病院側は7人の死亡時期などについては明らかにしていない。」
 <写真:複数の高齢患者が安楽死させられた疑いがもたれている射水市民病院=25日午後1時30分、富山県射水市で共同通信社ヘリから>


◆「医師、延命治療中止に信念か 富山・呼吸器外し7人死亡」
 『朝日新聞』2006年03月25日22時52分
http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY200603250302.html
 「富山県の射水市民病院でがんなどの末期患者7人の人工呼吸器が取り外され、死亡した問題で、人工呼吸器を取り外した外科部長(50)は95年4月から同病院に勤務していた。病院によると、昨秋、診療現場をはずれ、自宅待機や金沢大で研修を続けてきた。
 外科ではチーム医療をしているが、麻野井英次院長によると、外科部長は責任感が強く、自分で全責任を負うタイプ。一連の延命治療の中止についても信念をもってやったようだといい、「ほかの外科医はなかなか反論できなかったと理解している」と麻野井院長は述べた。
 昨秋まで同病院に勤務していた市職員は、「退院する患者さんが『いい先生だった』と言っていたのを何度も聞いたことがある。病院内でのトラブルもなかったのではないか」という。
 外科部長の執刀で夫(59)が大腸がんの手術を受けたという射水市内の女性は「02年10月から先生にお世話になってきた。2カ月入院したが、病気の説明がわかりやすくて人柄もよく、主治医として信頼していた。昨年10月にいなくなられ困っていた。今日話を聞いてショックを受けている」と話した。
 かつて外科部長と一緒に働いたことがある病院関係者も、「患者の覚えがよく、気さくに声をかける人だった。手術などについても、患者や家族が分かるまで、ゆっくり説明する人だった」と話した。」」


◆「家族同意、尊厳死と説明 患者7人は地元の50―90代」
 『北海道新聞』 2006/03/25 23:08
 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060325&j=0022&k=200603254466

 「男性外科医(50)による患者7人に対する「安楽死疑惑」が浮上した射水市民病院(富山県射水市)の麻野井英次院長が25日午後会見し、外科医は人工呼吸器を外したことについて「患者本人の直接の同意はないが家族の同意があった。患者のためにやった。尊厳死だ」と説明していることを明らかにした。
 この外科医は同病院の外科部長。呼吸器を取り外された7人は富山県在住の50―90代で、男性4人、女性が3人。いずれも末期状態で、うち5人はがん患者だった。2000年から昨年までの間に死亡した。
 会見で麻野井院長は「個人的には安楽死や尊厳死ではなく延命の中止だと思っている。犯罪かどうか分からないが、道義的に問題があると思う」と話した。家族の同意について同院長は「カルテには記載されているが、同意書という形ではない。(7人のうち)1人については家族が本人の意思を確認した」と説明。事態発覚後、病院は7人の患者の家族と接触していないという。」
 <写真:記者会見で頭を下げる射水市民病院の麻野井英次院長(中央)ら=25日午後、富山県射水市>


◆「「医師の独断」問題視、家族同意「文書ない」 病院会見」
 『朝日新聞』 2006年03月26日01時08分
 http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY200603250306.html
 [写真]延命治療の中止措置について記者会見する射水市民病院の麻野井英次院長(右)=25日午後3時すぎ、富山県射水市で
 「富山県の射水市民病院でがんなどの末期患者7人の人工呼吸器が取り外され、死亡した問題で、残されたカルテには「家族の希望」などと記されていた。だが、同意取り付けの経緯は不明確で、病院内での合意も十分とはいえなかった。延命治療の停止は、やむを得ない選択だったのか。
 25日午後、麻野井英次院長ら幹部4人がそろって記者会見し、院内調査の結果を説明した。
 「数が多かったこともあり、非常に、社会的にも問題があると思った。犯罪性についての調査は我々だけではできないので警察の調査にゆだねた」。麻野井院長は苦渋の表情を浮かべた。
 きっかけは内科系看護師長の報告だった。
 「外科部長から人工呼吸器を外すよう指示がありました」
 昨年10月12日、知らせは副院長経由で麻野井院長に入った。対象患者は外科系。たまたま内科系病棟に入院していた。
 院長はすぐに外科部長に「人工呼吸器を外してはならない」と命じた。「部長の言動から人工呼吸器の取り外しに関する認識の違いを知り、ほかにも同様の事例があるのではないかと心配になった」のだという。
 同日、緊急に院内調査委員会が発足した。カルテの記録や医師、看護師らの記憶を元に過去10年間に外科で死亡した患者について調査し、七つの事例がわかった。
 院長は会見で、「問題にしたのは、患者の意思が明確だったか、呼吸器を外すにあたって他の医師による確認などの手続きを踏んでいるかということだ」と説明した。
 外科部長は患者の状態と、治療中止について家族らにどこまで説明していたのか。「同意書という形にはなっていなかった」と院長。4人いたという外科系医師らの間でどんな判断があったのかも、会見では明確にはならなかった。 」


◆「富山の病院延命中止、院長「倫理上問題」」
 『読売新聞』2006年3月26日1時50分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060325it15.htm
[写真]外科部長が人工呼吸器を取り外した問題で記者会見する麻野井英次・射水市民病院長
 「富山県射水(いみず)市の射水市民病院で、入院患者7人の延命措置が中止され、死亡していた問題で、麻野井英次院長は25日、記者会見し、外科部長(50)の判断で回復の見込みがないとして人工呼吸器が外されていたことを明らかにした。
 院長は〈1〉患者の意思が不明確なうえ、家族の同意も口頭で得ただけ〈2〉病院や他の医師らにも相談していない――などから、「倫理上問題がある」としている。
 院長によると、7人は富山県の50〜90歳代の男性4人と女性3人で、2000年〜05年に意識不明に陥り、死亡した。このうち05年に死亡した7人目について、外科部長は自分の手で呼吸器を外したことを認めた。
 麻野井院長は「『積極的な安楽死』ではなく、広い意味での『消極的安楽死』で、医師の立場からすれば、『延命治療の中止措置』の範疇(はんちゅう)に入ると思う」と話している。同病院には延命措置の中止に関するルールがなく、他の外科医は外科部長の判断を黙認していたという。
 富山県警は25日、「関係者から事情聴取を行い、慎重に捜査を進めている」とのコメントを出した。
 問題は、昨年10月に発覚。病院はカルテなどを調べるとともに、新湊署に届けた。
 「消極的安楽死」を巡っては、北海道羽幌町の道立羽幌病院で2004年2月、当時勤務していた女性医師が男性患者(当時90歳)の人工呼吸器を外して死亡させたとして、道警が05年5月、殺人容疑で旭川地検に書類送検している。」


◆「富山・射水の呼吸器外し:7人死亡 外科部長に権限 他の医師、反論できず」
 『毎日新聞』 2006年3月26日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060326ddm041040092000c.html

 「◇院長「倫理上、問題ある」
 人工呼吸器を外され、7人が死亡−−。富山県射水(いみず)市民病院の外科部長(50)の「延命治療中止」行為は25日、関係者に衝撃となって伝わった。会見した同病院の麻野井英次院長は謝罪し「倫理上、問題があり、刑事事件になる可能性もある」と沈痛な表情で話した。
 麻野井院長の記者会見の一問一答は次の通り。
 −−外科部長は7例の延命中止について同意を得ているか。
 家族の同意を得た。少なくとも1例は、家族の話の中で本人の意思が確認できている。病院が調べた範囲では、カルテに家族に説明したというような記載があった。同意書はないと思う。
 −−病院に延命中止に関するマニュアルは。
 ない。しかし、医師の倫理上問題がある。刑事事件になる可能性があり、射水市と県、県警に報告した。
 −−どういう条件ならば、呼吸器取り外しは問題ないと考えているか。
 常識として、末期で回復の見込みがなく、それが複数の医師で繰り返し確認されていることと、患者本人の意思がその時点で存在すること。人工呼吸器を取り外すことは、単独で決めてはいけない。他の医師の意見を求めたり、倫理委員会に諮るという手続きを踏んでいるかが問題だ。
 −−なぜ外科部長はこういうことをしたのか。
 外科部長は尊厳死という考えを持っていた。
 −−病院は安楽死と考えるか。
 安楽死ではない。延命治療の中止か、広い意味で消極的な安楽死だ。
 −−外科部長の独断か。
 チーム医療なので主治医というのはいないが、外科部長は決める権限を持ち、命令する立場。(チームの)他の外科医3人は反論できなかった状況だが、かかわりを警察が詳しく調べている。
 −−外科全体で黙認していたのでは。
 チームでやっている。他の医師も知っていたのは事実だと思う。
 −−外科部長の言葉はないか。
 外科部長は自分なりの信念がある。患者のためという認識でやっていると私は聞いた。
 −−違法性についてどう認識しているか。
 問題としたのは、道義的なもの。違法性は警察が判断するが、法的には難しい問題を含んでいる。弁護士と相談し、例が多かったので、社会的に影響があるだろうと判断した。
 −−今後、延命治療の中止はどうするのか。
 患者本人の意思を得ることが大事。複数の医師が繰り返し、ターミナル(終末期)と確認しないといけない。これを教訓にきちっとした手続きをとる。倫理委員会にターミナル委員会を設け、考えないといけない。
 −−発表しなかった理由は。
 個人情報にかかわることなので公表を差し控えていた。問題となったのは、患者の家族の了解がとれていないことだ。

 ◇「信頼でき、妻の命の恩人」
 数年前に胃かいようになった妻(74)の手術を執刀したのが外科部長だったという農業の男性(77)は、外科部長について「明るくて愛想のいいという印象。家族への症状の説明もしっかりしていて、信頼のおける人だった。妻の命の恩人だと思っている」と話した。また、今回の呼吸器取り外しに対しては「末期患者のためを思ってしたことであれば、共感できる部分もある」と語った。
 義母が外科部長に通院治療を受け続けていた主婦(58)は「説明もきちんとしてくれたし、いい先生だった。それが昨年秋、突然『主治医が代わる』と説明を受け、どうしたんだろうと心配していたところだった」と困惑。夫も外科部長から胆石の手術を受けており、「腕のいい先生と聞いていたから安心して任せていたのだが」と複雑な表情も見せた。
 家族が外科部長の手術を受けた経験のある富山県内の女性は「腕もよく、親身になってくれるいい先生。手術してもらった患者は、その次も、わざわざ先生のところに行くほどだった。(今回の問題は)信じられない」と話した。

 ◇問われる組織の責任−−医療裁判を多く手がける石川寛俊弁護士(大阪弁護士会)の話
 生命維持装置である人工呼吸器を外せば患者が死亡するのは確実なのだから、患者本人や家族の同意が明確に確認できない以上、警察は殺人容疑を問うだろう。
 「尊厳死」が許されるのは患者本人の同意があることが大前提だが、意識のない末期患者に意思確認することはできないので、家族に同意を求めることになる。医師と家族の人間関係ができていれば、カルテに「同意あり」の記載で済ますこともあるだろうが、通常はきちんとした同意書を取るはずだ。
 ただ、高齢の末期患者には家族との関係が途切れたような人もおり、医師の判断で治療中止を決めていなかったのか気になるところだ。いずれにしても、今回のケースを「尊厳死」とすることはできない。こうした行為が、なぜ病院で5年以上許されてきたのか。病院はチーム医療をやっているのだから、組織としての責任も問われなければならない。」」


◆「富山・射水の呼吸器外し:家族の同意書なし、外科部長の独断−−「尊厳死」と説明」 『毎日新聞』 2006年3月26日 東京朝刊
 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060326ddm001040048000c.html


 「富山県射水(いみず)市の射水市民病院(麻野井英次院長、200床)で延命治療が中止された問題で、死亡した7人は外科部長(50)が00〜05年に病院側に告げずに独断で人工呼吸器を外していたことが25日、分かった。がんなどで終末医療の状態だった。外科部長は病院内で問題が発覚した後、「患者のための尊厳死だった」と説明したという。しかし、いずれも家族が同意した文書はなく、少なくとも6人については本人の生前の同意も確認していなかった。専門家は「尊厳死にも安楽死にも当たらない」としており、県警は殺人容疑などでの立件も視野に関係者から事情聴取し、慎重に捜査を進めている。
 麻野井院長によると、昨年10月12日に外科部長が人工呼吸器を外そうとしたことが発覚。外科部長はその後、麻野井院長との面談の中で、人工呼吸器を外したことについて「倫理的に問題があると思う」と反省する内容の話をしたという。外科部長は25日午後、自宅前で「今はコメントを差し控えたい」などと語った。
 病院は内部の調査委員会を設置して、過去10年間で同様の事例がないか調査。50〜90代の患者7人(男性4人、女性3人)が人工呼吸器を外されていたことが分かった。いずれも富山県在住で、5人はがん患者だった。
 家族の同意について病院側はカルテに記載があったというが、外科部長は同意書を求めるなど文書での確認はしていなかった。7人のうち1人については家族が生前、延命治療の中止に同意していたと外科部長が話したというが、調査委は7人の家族に再度、確認作業をしていない。
 外科では外科部長を含む医師4人と看護師が複数で患者の治療に当たっていた。病院側は、他の医師や看護師が以前から外科部長の行為を知っていたとみており、麻野井院長は「部長の指示だったので逆らえなかったのではないか」としている。昨年10月のケースでは男性患者が入院時に外科病棟のベッドが満床で、内科病棟に搬送した。そのため内科の看護師長が、人工呼吸器を外そうとしていることを知って院長に報告した。この患者の人工呼吸器は外さなかったが、約10日後に死亡した。
 麻野井院長は会見で、尊厳死には複数の医師が繰り返し患者が末期状態にあることを確認し、患者本人の意思を確認する作業が必要と説明。外科部長の行為について、「こうした手続きをしておらず問題」と話した。
 病院は昨年10月16日、射水市と県、県警に事案を報告。外科部長は同14日から1カ月の自宅待機処分とし、11月25日から金沢大医学部に研修に出した。同医学部では治療行為には従事していないという。
 外科部長は岐阜大医学部卒。95年、射水市民病院(当時は新湊市民病院)の医長に就任。97年に同病院の外科部長に就任した。外科部長は3月6日に市民病院に辞表を提出しており、3月末で退職予定。

 ◇県警「慎重捜査」
 富山県警の安村隆司本部長は「関係者から事情聴取等を行い、慎重に捜査を進めている。現時点において、詳細なコメントは差し控えさせていただきたい」との談話を出した。

 ◇本人の同意必要−−医事評論家の水野肇さんの話
 医師は「尊厳死だった」と説明しているようだが、尊厳死の規定はあいまいとはいえ、本人が健康な時に延命治療を拒否する意思を示していることが大前提だ。家族の了承を取ったというが、患者本人から同意を取ることなく、医師が治療中止を決めるのはおかしい。殺人容疑を視野に入れた捜査が行われても仕方がない。また、最近はがんの薬物療法が発達しており、手の施しようのない患者は少なくなっている。本当に治療を打ち切らなければならなかったのだろうか。

 □ことば

 ◇安楽死と尊厳死
 安楽死は薬剤などを投与し、積極的に生命を縮める行為。横浜地裁が95年に東海大病院事件の判決で合法となりうる4要件として、(1)肉体的に耐え難い苦痛(2)死期が迫っている(3)苦痛を和らげる方法がない(4)患者の明らかな意思表示−−を示した。
 一方、尊厳死は人工呼吸器を外す行為などを含む延命治療の中止を指す。同地裁判決の中で、合法となる治療中止(尊厳死)の3要件として、(1)死が不可避な末期状態(2)患者の意思表示(家族による推定も含む)(3)自然の死を迎えさせる目的に沿って中止を決める−−ことを挙げた。」


◆「尊厳死疑惑:患者の意思確認など必要な手続きせず」
 『毎日新聞』 2006年3月26日 7時44分
 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060326k0000m040115000c.html

 「富山県射水市民病院の外科部長(50)が5年間に7人の末期患者の呼吸器を取り外して死亡させたことが25日発覚し、国内で過去最大の「延命中止」問題になる可能性が強まった。富山県警が捜査を進める中、記者会見した院長は「お騒がせし、不安を与えたことをおわびします」と謝罪した。
 射水市民病院は25日午後3時から、麻野井英次院長ら3人が会見し、麻野井院長は「個人情報にかかわることなので、公表を差し控えていた。お騒がせし、不安を与えたことをおわびします」と頭を下げた。 
 会見によると、外科部長は「患者さんのための尊厳死である」と説明したという。麻野井院長は、(1)末期で回復の見込みがない(2)複数の医師が繰り返して末期と確認している(3)患者本人の意思がその時点で存在している−−が尊厳死の成立に必要と考えており、外科部長の手続きには、これらがなかったという。麻野井院長は、呼吸器取り外しの件を射水市と県、県警に報告したが、「医師の倫理上、問題があり、刑事事件になる可能性もあると考えた」と説明した。
 呼吸器取り外しが発覚したのは昨年10月。78歳男性がこん睡状態で病院に運ばれたが、外科のベッドがいっぱいだったため、内科病棟に入った。その後、同月12日、人工呼吸器を外すという予定を知らされた内科の看護師長が副院長に報告し、麻野井院長に連絡が入ったため、取り外しを中止させた。
 麻野井院長は、00〜05年に末期患者7人に対する取り外しの症例があったと明らかにしたが、いずれも外科。外科部長は他の外科医3人とチーム医療をしているが、他の3人は、責任者となる外科部長の指示には反論できなかったという。麻野井院長は、外科部長について「責任感が強く、全責任を自分が持つという人物」と話したうえで、「部長には自分なりの信念があり、問題についてより慎重でないといけないという認識は持っている。きっちりしている方なので、患者のためという認識でやっていると聞いている」と述べた。
 同病院には延命中止に関するマニュアルはなく、麻野井院長は「これは1人の医師で決められる問題でない。本人の意思を得ることが大事」と話し、今後、病院の倫理委員会にターミナル委員会を設置し、ターミナル委員会を通じて問題に取り組む方針を示した。

 ◇麻野井院長「安楽死ではない」
 麻野井院長の記者会見の一問一答は次の通り。
 −−外科部長は7例の延命中止について同意を得ているか。
 家族の同意を得た。少なくとも1例は、家族の話の中で本人の意思が確認できている。病院が調べた範囲では、カルテに家族に説明したというような記載があった。同意書はないと思う。
 −−病院に延命中止に関するマニュアルは。
 ない。しかし、医師の倫理上問題がある。刑事事件になる可能性があり、射水市と県、県警に報告した。
 −−どういう条件ならば、呼吸器取り外しは問題ないと考えているか。
 常識として、末期で回復の見込みがなく、それが複数の医師で繰り返し確認されていることと、患者本人の意思がその時点で存在すること。人工呼吸器を取り外すことは、単独で決めてはいけない。他の医師の意見を求めたり、倫理委員会に諮るという手続きを踏んでいるかどうかが問題だ。
 −−なぜ外科部長はこういうことをしたのか。
 外科部長は尊厳死という考えを持っていた。
 −−病院は安楽死と考えるか。
 安楽死ではない。延命治療の中止か、広い意味で消極的な安楽死だ。
 −−外科部長の独断か。
 チーム医療なので主治医というのはいないが、外科部長は決める権限を持ち、命令する立場。(チームの)他の外科医3人は反論できなかった状況だが、かかわりを警察が詳しく調べている。
 −−外科全体で黙認していたのでは。
 チームでやっている。他の医師も知っていたのは事実だと思う。
 −−外科部長の言葉はないか。
 外科部長は自分なりの信念がある。患者のためという認識でやっていると私は聞いた。
 −−違法性についてどう認識しているか。
 問題としたのは、道義的なもの。違法性は警察が判断するが、法的には難しい問題を含んでいる。弁護士と相談し、例が多かったので、社会的に影響があるだろうと判断し、警察の調査に委ねることにした。
 −−今後、延命治療の中止はどうするのか。
 患者本人の意思を得ることが大事。複数の医師が繰り返し、ターミナル(終末期)と確認しないといけない。これを教訓にきちっとした手続きをとる。倫理委員会にターミナル委員会を設け、この委員会を通じて考えないといけない。
 −−発表しなかった理由は。
 個人情報にかかわることなので公表を差し控えていた。問題となったのは、患者の家族の了解がとれていないことだ。
 麻野井院長の記者会見の一問一答は次の通り。
 −−外科部長は7例の延命中止について同意を得ているか。
 家族の同意を得た。少なくとも1例は、家族の話の中で本人の意思が確認できている。病院が調べた範囲では、カルテに家族に説明したというような記載があった。同意書はないと思う。
 −−病院に延命中止に関するマニュアルは。
 ない。しかし、医師の倫理上問題がある。刑事事件になる可能性があり、射水市と県、県警に報告した。
 −−どういう条件ならば、呼吸器取り外しは問題ないと考えているか。
 常識として、末期で回復の見込みがなく、それが複数の医師で繰り返し確認されていることと、患者本人の意思がその時点で存在すること。人工呼吸器を取り外すことは、単独で決めてはいけない。他の医師の意見を求めたり、倫理委員会に諮るという手続きを踏んでいるかどうかが問題だ。
 −−なぜ外科部長はこういうことをしたのか。
 外科部長は尊厳死という考えを持っていた。
 −−病院は安楽死と考えるか。
 安楽死ではない。延命治療の中止か、広い意味で消極的な安楽死だ。
 −−外科部長の独断か。
 チーム医療なので主治医というのはいないが、外科部長は決める権限を持ち、命令する立場。(チームの)他の外科医3人は反論できなかった状況だが、かかわりを警察が詳しく調べている。
 −−外科全体で黙認していたのでは。
 チームでやっている。他の医師も知っていたのは事実だと思う。
 −−外科部長の言葉はないか。
 外科部長は自分なりの信念がある。患者のためという認識でやっていると私は聞いた。
 −−違法性についてどう認識しているか。
 問題としたのは、道義的なもの。違法性は警察が判断するが、法的には難しい問題を含んでいる。弁護士と相談し、例が多かったので、社会的に影響があるだろうと判断し、警察の調査に委ねることにした。
 −−今後、延命治療の中止はどうするのか。
 患者本人の意思を得ることが大事。複数の医師が繰り返し、ターミナル(終末期)と確認しないといけない。これを教訓にきちっとした手続きをとる。倫理委員会にターミナル委員会を設け、この委員会を通じて考えないといけない。
 −−発表しなかった理由は。
 個人情報にかかわることなので公表を差し控えていた。問題となったのは、患者の家族の了解がとれていないことだ。」


◆「尊厳死疑惑:「同意」「死期」が焦点に」
 『毎日新聞』2006年3月26日 7時49分
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060326k0000m040105000c.html

 「富山県の市民病院の外科部長(50)が人工呼吸器をはずす「延命中止行為」で00年から5年間にがんの末期患者ら7人が死亡した。医師の行為は殺人なのか、それとも安楽死や尊厳死にあたるのか。警察は関係者から事情を聴くなど慎重に捜査を進めているが、「事件」は改めて終末医療の難しさを浮き彫りにしている。
 「患者さんのための尊厳死だ」「家族の同意を得ている」。25日の会見で射水市民病院の麻野井英次院長は、外科部長が呼吸器をはずす行為について、そう病院側に説明していることを明らかにした。 
 富山県警は殺人容疑などを念頭に捜査を進めているが、今回のケースとほぼ同様の事件が最近あった。04年2月に北海道羽幌町の道立病院の女性医師(34)が無呼吸状態の男性患者(当時90歳)の呼吸器をはずし死亡させた事件だ。
 道警は約1年後に医師を殺人容疑で書類送検した。事件は、治療行為の中止で医師の刑事責任を問う異例のものだったが、道警幹部は「安楽死の判断とは別」との見解を示しており、安楽死の判断と刑事処分については、検察側に判断を預けた形だ。
 これまで安楽死の判断を示したものとしては、95年3月の横浜地裁判決がある。神奈川県の東海大付属病院での「安楽死」事件での判断で、安楽死を認める4要件のほかに、治療行為中止(尊厳死)が認められるケースを提示している。
 行為が自然に死を迎えさせることにつながるもので、条件として不治の病での末期状態にあることや患者の意思を確認・推定できることを挙げた。道警が送検した医師についても検察側は「地裁判決の要件をベースに、総合的に判断する」としている。刑事処分で安楽死や尊厳死を認めた例はなく、判断が注目される。
 今回の捜査でも、まず患者が末期症状だったとした医師の判断が正しかったかどうかの検証が必要となる。医師が遺族、もしくは患者に治療行為中止の意思を確認していたかも重要なポイントだ。病院側の説明では、カルテには家族の「同意を得ている」との記述があるが、同意書はない。医師による説明の経緯などについて詳細な捜査が必要になる。
 ある警察幹部は「横浜地裁の示した要件や過去の事例を参考に、慎重に捜査を進める」と話す。法務・検察関係者は「他の医師の意見も聞くなどして死期が迫っているかどうかを慎重に判断しているか、医師が十分な説明をしたうえで患者側が自発的に意思表示をしているかが捜査の焦点になるのではないか」と指摘している。

 ◇「治療中止」に基準なく
 今回のように、医師が患者の死期を早めるような事件が後を絶たない。その背景について、兵庫医大救命救急センターの丸川征四郎教授は「患者にも家族にも、延命治療を望まない人がいる。ベテラン医師になると、経験からそうしたものと思い込み、本人や家族との意思疎通が不十分でも、希望に添ったつもりの善意で治療中止をする場合がある」と説明する。
 末期医療の現場では、医師が患者本人や家族から「早く楽にしてほしい」と頼まれ、医師自身も「どうせ助かる見込みがないのなら」という同情に似た気持ちが現れることもある。日本ホスピス緩和ケア協会会長の山崎章郎医師は「それでも多くの医師はそれを乗り越え、患者の心身の痛みを和らげて命を見守る努力をする。命を尊重しつつ、患者の苦痛を和らげるのが基本で、苦しがっているから命を止めるというのは医療ではない」と話す。
 しかし、現場の医師が実際に治療を中止する場合、具体的にどんな手続きを取ったら合法となるのか、法律上の明文規定はない。横浜地裁が示した要件も定着してはいない。厚生労働省の「終末期医療に関する調査等検討会」は「判断基準は明らかでなく医療関係者は悩む」と報告書に盛り込んだうえで、「医学会などがガイドラインを作るべきだ」と提言した。
 提言を受け、「日本集中治療医学会」は昨年、治療中止の基準作りを始めている。基準の素案は、中止の前提として(1)複数の医師による最高水準の治療(2)救命不可能なことを複数の医師が繰り返し確認する(3)家族に十分に説明し、治療中止以外にも選択肢を提示する−−などを求めている。

 ◇法制化には賛否両論
 国会では、超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」(中山太郎会長)が05年2月に発足、活動を続けている。11月には、患者の意思に基づく延命治療の中止を認める法案づくりを進めることを決め、医師や弁護士、行政など関係団体の意見を聞いている。
 また、日本尊厳死協会(井形昭弘理事長)は05年6月、国民が尊厳死を選ぶ権利や延命治療を中止した医師の刑事責任を問わないことなどを法制化するよう求める請願書を14万人分の署名とともに議員連盟に提出した。。一方、法制化に反対する学者や難病患者は「安易に死を選ぶ風潮をつくりかねない」と批判している。
 井形理事長は「今回のケースは薬物を注入するなど積極的な行為をする『安楽死』とは異なり、尊厳死に当たるかどうかが問題だろう。しかし、家族からの伝聞だけでは、本人の意思を確認したとはいえず、尊厳死にも当たらない。医療現場が混乱しないように一刻も早く法制化によって明確な基準を作ってほしい」と話す。【山本建】

 ◇国民の74%「単なる延命治療はやめてほしい」
 厚生労働省の「終末期医療に関する調査等検討会」は03年、末期医療について世論調査をした。延命治療中止を望む国民は7割を超え、医療関係者では8割に達した。一方で「積極的に生命を短縮する」行為への賛成はわずかで、医療関係者ほど慎重な現状も浮かんだ。
 調査では一般国民の80%、医師の92%、看護師の95%が、末期医療に「関心がある」と回答した。自分が「痛みを伴う末期状態(余命約6カ月未満)」になった場合に「単なる延命治療はやめてほしい」などの回答は、一般で74%、医師で82%、看護師で87%に達した。
 しかし、「医師が積極的に生命を短縮させる」ことを認めたのは、一般で14%、医師で3%、看護師で2%に過ぎない。「苦痛を和らげることに重点を置く」が一般で59%を占め、医師や看護師では8割を超えた。」


◆コラム:天地人
『北日本新聞』 2006年 3月26日
 http://www.kitanippon.co.jp/news/column/tenchi/tenchi.htm *

「末期がんを宣告された患者や家族の心は、日々揺れる。ある日は「疼痛(とうつう)に苦しむくらいなら楽にして」と訴え、翌日に「一日でも長く生きさせてほしい」と求める。思いは極端にぶれる。
 射水市民病院で担当外科医が、末期がん患者らの人工呼吸器をはずしていた。安楽死させた疑いが浮上している。患者の意識はなかったが、カルテには家族の同意があったと、記入されているという。
 オランダでは薬物投与による積極的安楽死も、一定の条件を満たせば刑事訴追されない。フランスでは、末期患者に延命治療を拒否する「死ぬ権利」を認める。日本では耐え難い苦痛がある、死期が迫る、本人の同意などを条件に、例外的に容認する判例がある。
 このケースで安楽死が妥当だったかの見極めは難しい。医療チーム全体の合意はないようだ。主治医は患者の生命を左右できる。「尊厳死」と説明した言葉の裏に、おごりはなかったか。
 人は「生老病死」の世界を生きている。徒然草で兼好法師は「四季はなほ、定まれる序(ついで)あり。死期は序を待たず」と書いた。しかし、現代では老いて病いを得ても、人工呼吸器など医療技術の発達で、死を迎えるには「長い序」を待つことになった。長寿は切なる願いだったが、安らかな死への道のりはかえって遠のいた。」


◆「患者家族「同意ない」病院「カルテに記載」…延命中止」
 『読売新聞』2006年3月26日22時4分
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060326it14.htm?from=top

 「射水市民病院の延命措置中止の問題が発覚するきっかけとなった男性(当時78歳)の家族が26日、病院側から人工呼吸器を外すと聞かされたことはなく、家族から頼んだこともないと、読売新聞の取材に話した。
 この患者について病院のカルテには「家族の希望」と書いてあるといい、捜査の焦点となっている家族の同意の有無を巡り、食い違いが明らかになった。
 家族によると、男性は昨年10月9日、自宅で倒れて同病院に運ばれ、外科部長(50)が担当医となった。脳梗塞(こうそく)と診断され、心肺停止状態で意識もなかったため人工呼吸器が装着された。意識が戻らないまま、21日に病院から「血圧が下がり、きょうが山場」と連絡があり、親類が集まってみとった。
 病院によると、この男性については、外科部長が同月12日、呼吸器を取り外すよう指示しているのを内科の看護師長が気づき、麻野井英次院長がやめさせた。病院側が県警に提出したカルテには「家族の希望」と書いてあるという。
 これに対し、家族は入院当時、病院から「年だし、長くないかもしれない」と説明を受けたというが、「家族3人とも呼吸器を外すということは、一切聞いていない」としている。
 男性が以前けがをした時も外科部長の治療を受けており、家族に「熱心でいい先生にかかった」と話していたという。家族は「入院から10日以上も命を維持してもらい、治療も丁寧にしてもらい、恨むようなことはまったくない」と話している。」


◆「「外科部長研修の事実なし」金沢大が発表を否定」
『読売新聞 2006年3月26日23時58分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060326i116.htm
 「射水市民病院が、外科部長について、金沢大で研修中と発表したことに対し、同大は26日、「そのような事実はない」とする広報室長名のコメントを発表した。
 これを受けて、同病院の麻野井英次院長は同日開いた会見で、「研修医として勤務したのではなく、外科の先生に倫理面で諭してほしいとお願いしたもので、本人も何回かは行ったようだ」と釈明した。
 麻野井院長は25日の会見で、外科部長について「問題発覚後、約1か月間自宅謹慎にし、その後、金沢大に研修に行かせた」と説明。事務局長も同大の具体的な部署名を挙げ「本人に命令を出し、向こうの先生にもお願いしており、オフィシャルなもの」と話していた。


◆コラム(悠閑春秋)
『北日本新聞』 2006年3月27日
 http://www.kitanippon.co.jp/news/column/yuukan/yuukan.html *

 「「開業医の集まりのようだった」。人工呼吸器を取り外された患者七人が死亡した射水市民病院の麻野井英次院長は、昨年四月の着任時の様子をこう語った。
 総合病院でありながら、診療科間の連携が全くない。改革の一環として、ベッドの有効活用を図った。皮肉なことに、外科の患者が内科病棟に入院したため、それまで外科病棟で行われていた人工呼吸器の取り外しが分かったという。
 まさに縦割り医療の典型と言っていい。内科の看護師長が「内科ではあり得ない外科部長の言動」を不審に思い、副院長に報告した。一つ屋根の下にいながら、各部屋で何が起こっているのかさっぱり分からなかった。外科、内科などと垣根をつくっていては、患者とその病状を全人格的に診ることなどできない。
 渦中の外科部長は技術も優れ、患者の信頼も厚かったという。しかし、他の外科医師たちが「おかしい」と思っても言えない雰囲気が覆っていた。部長を頂点にした反論を許さぬ白い巨塔≠ェ形づくられ、どこかで「おごり」が生じていたのではないだろうか。  同病院には終末期医療に関するルールがない。院長は「今はうみが出て傷が開いた状 態」と言う。なすべきことは山ほどある。再生へ課せられた責任は重い。」


◆「尊厳死疑惑:射水市民病院、玄関に謝罪文を掲示」
『毎日新聞』 2006年3月27日10時52分 (最終更新時間 3月27日 12時18分)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/archive/news/2006/03/27/20060327k0000e040032000c.html

 「射水市民病院では一般診療の開始に伴い、おわびが貼りだされた=富山県射水市で2006年3月27日午前8時25分、小関勉写す 患者7人が人工呼吸器を外され死亡した富山県射水(いみず)市民病院は27日、正面玄関に麻野井英次院長名の謝罪文を掲示した。麻野井院長がすべての患者を回診して経緯を説明し謝罪するが、問題発覚後、初の一般診療となったこの日は普段より来院者は少なく不安の声も聞かれた。
 掲示は「末期患者に対する人工呼吸器の取り外しによる延命治療の中止が行われた」と事実を説明し、外科部長の行為について陳謝の意を表明。そのうえで医師や看護師らに法律や医業倫理の順守、職務専念を指導すると今後の方針を示した。
 妻(76)をリハビリに送り届けた男性(84)は「あってはならないこと」と批判したが、「患者は先生を信用するしかない。どうしたらいいのか」と戸惑いを見せた。健康診断に来た女子大生(22)は「なぜもっと早く(外科部長の行為に)気づかなかったのか」と病院の管理体制の不備を指摘、「病院への信頼がなくなった」と語った。
 また、夫を9年前にがんで亡くした女性(68)は「苦しむ姿は本当にかわいそうだった。私が末期患者だったら人工呼吸器を外すよう頼むと思う」と振り返ったが、今回の問題に対しては「先生が本人に聞かずに(呼吸器を)取ることはいけない」と語った。初診で内科に来た同県高岡市の男性会社員(37)は「発覚してよかった。これを機会にしっかりした体制を」と注文した。」

 射水市民病院では一般診療の開始に伴い、おわびが貼りだされた=富山県射水市で2006年3月27日午前8時25分、小関勉写す(写真略)


◆3月27日付・よみうり寸評
『読売新聞』 2006年3月27日13時52分
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060327ig05.htm

 「〈安楽死〉の英語〈euthanasia〉は13世紀の英国の哲学者で自然科学者でもあるロジャー・ベーコンがギリシャ語の〈良く〉(eu)と〈死〉(thanatos)を合わせてつくったという◆初めは、単に極楽往生、眠るがごとく安らかで楽な死を意味する文字通り〈良き死〉だった。今では、人為的に引き起こされる死として使われる◆富山県・射水市民病院の入院患者7人が延命措置を中止され死亡していた。人工呼吸器を外す判断をした外科部長は〈尊厳死〉と考え、信念を持ってやったとみられる◆が、そう考えたことは疑わないにしても問題は大きい。院長ら他の医師に相談はなく、患者、家族の同意も不明確だ。信念は独断と偏見にもつながる。独断は極めて危うい◆4年前、安楽死を法制化したオランダやベルギーでも患者の意思表示が不可欠の上、第三者機関の監視体制がある。日本にも法制化の動きはあるが未整備だ。法は未整備でも、根源的な命への畏敬(いけい)・畏怖は医療に欠かせない◆全知全能ならぬ医師の独断がおごりにならないように。」


◆「富山の呼吸器外し 患者の家族「頼んでいない」」
『朝日新聞』 2006年03月27日03時11分
 http://www.asahi.com/health/news/TKY200603260240.html

「富山県射水(いみず)市の射水市民病院で患者7人が人工呼吸器を外され死亡した問題で、昨年10月に院長が取り外しを中止させ、内部調査のきっかけになった男性患者(当時78)の長男が26日、朝日新聞の取材に応じ、外科部長(50)ら病院側から「呼吸器取り外しについての説明はなく、外すようお願いしたこともない」と語った。病院側は、外科部長は「家族の要望」をもとに外そうとした、と説明しており、長男と食い違っている。外科部長がどんな形で家族らの同意を得ていたかは一連の延命治療中止問題の焦点で、県警は当時のいきさつを慎重に捜査、外科部長らの任意聴取も始めている。
 同病院の昨年の調査で、00年から昨年にかけて人工呼吸器をはずされた50〜90代の末期の入院患者7人が死亡していたことが判明した。取り外しが中止された男性のケースは昨年10月に発覚。7件とは別で、一連の調査のきっかけになった。
 同病院の説明によると、男性が搬送されたのは昨年10月上旬。外科部長は蘇生措置をして人工呼吸器を装着、内科病棟に入院させたが、男性は同月21日に死亡した。
 外科部長は同12日、人工呼吸器の取り外しを看護師に指示。病院側は、指示に疑問を感じた麻野井(あさのい)英次院長が取り外しを禁じ、内部調査を命じたことで7件の取り外しがわかったとしている。
 25日の記者会見で、麻野井院長は「10月12日午前、看護師長は『家族の要望により人工呼吸器を取り外す予定だ』と外科部長から指示を受けた」と説明。外科部長が取り外しに踏み切ろうとしたのは「家族の要望」があったためだったとの認識を示していた。
 一方、この男性の長男によると、外科部長は入院の数日後、家族に「長くても2、3カ月」と説明した。しかし、人工呼吸器の取り外しについての打診などはなく、家族から求めたことも一切なかったという。
 長男は、父親の入院当時は母親と自分の妻が交代で泊まり込み、ずっとそばにいたとした上で、「2人も取り外しについて医師から説明を受けたという記憶はない」とも話している。
 病院側は26日も麻野井院長が記者会見したが、双方の主張の隔たりについては「捜査上の重要な問題なので答えられない」と述べた。「家族同意」が、カルテに残っているのかどうかなどについても「今すぐは答えられない。記憶をたどってみないといけない」などと話すにとどまった。」


◆「呼吸器外しの外科部長を聴取 富山県警、立件の可否検討
『朝日新聞』 2006年03月27日06時06分
 http://www.asahi.com/health/news/TKY200603260245.html

 「富山県の射水市民病院で延命措置が中止され、入院患者7人が死亡した問題で、患者を担当していた男性外科部長(50)が、県警の任意の事情聴取に応じていたことが26日、わかった。県警は病院から提出された関係資料の分析を進めるとともに、医師や看護師ら病院関係者から任意で事情を聴き、殺人や嘱託殺人容疑での立件の可否について慎重に調べを進める。
 外科部長は同病院側の調査に対して、7人の人工呼吸器を外すことについて、「いずれも家族の同意を得ていた」と説明。院長への説明の際も「尊厳死」という言葉を使い、「信念を持ってやった」などと説明したとされる。
 外科部長は25日夜、朝日新聞などの取材に対して「コメントは差し控えさせていただきたい」としながらも、「一存で呼吸器を取り外したのか」との質問に対して、「わたしが責任者なので」などと説明、人工呼吸器の取り外しについては否定していない。
 県警が同病院側から報告を受けたのは、昨年10月16日。4日前の12日に外科部長が、昏睡(こんすい)状態で運ばれた男性患者(78)の人工呼吸器をはずすよう指示をしたことが、看護師の指摘で発覚。院長は院内調査委員会を設置するとともに、病院の顧問弁護士とも相談して「犯罪性については警察に判断してもらう必要がある」などとして警察に届け出ていた。
 県警は今後、人工呼吸器の取り外しについて外科部長が、7人の家族らにどのように説明し、どんな形で同意を得ていたのか否か、などについての確認を進める。
    ◇
 〈キーワード:「尊厳死」〉 日本尊厳死協会は、「患者が『不治かつ末期』になったとき、自分の意思で延命治療をやめてもらい安らかに、人間らしい死をとげること」と定義している。「尊厳死の宣言書」(リビング・ウイル)を医師に提示し、自然な死をとげる権利を確立するため、医師が違法性を問われないための法制化を求めている。記載内容は、「無意味な延命措置の拒否」「苦痛を和らげる治療の要求」「植物状態の場合、生命維持措置の中止」。」

記者会見で厳しい表情を見せる麻野井英次院長=26日午後、富山県射水市朴木で(写真略)」


◆「呼吸器に拒否反応 「外して」頼んだ事例も 富山の病院」
『朝日新聞』 2006年03月27日06時06分
 http://www.asahi.com/health/news/TKY200603260249.html

「「人工呼吸器をつけたら(高齢の)父が拒否反応を示したので、頼んで外してもらいました」
 数年前、射水市民病院に父親が入院、今回、延命治療を中止した行為が問題視された外科部長らの診療を受けたという男性は、当時を振り返り、そう言った。
 人工呼吸器を装着したところ、父親はすぐに拒否反応を示した。負担を軽くしたいと、酸素マスクに付け替えてもらったという。
 少しでも長く生きていてほしい。でも、それで本人が苦しい思いをするのでは……。「年も年だったので、家族で話し、全員で合意して管はやめて欲しいと頼んだ」
 数カ月後、父親は亡くなった。
 終末期を巡る医療現場で、患者、家族、医師、看護師らは、常に厳しい判断を迫られ、複雑な思いを抱く。
 容体が悪化し、呼吸管理のために気管に管を入れて酸素を送り込む人工呼吸器。回復の見込み、余命、そして苦痛。患者や家族が延命治療の中止を判断する理由は様々だ。医師はどこまで、どんな気持ちでその思いに応えたらいいのか。
 約200床の同病院は、県内では地域医療を担う中小病院だ。過疎地にあり、急性期医療に特化する都市部の大病院と違って、お年寄りの入院が多く、常にがんや老衰などで看取(みと)られる患者を抱えている。
 麻野井英次院長は25日の会見で、延命治療に対する今後の対応を問われ、「(終末期医療のあり方を検討する)ターミナル委員会を設けて対応を検討しなければならない」と答えた。だが、直後に「私は内科医。心臓が止まるまでは診ていく、という立場です」とも語った。新たな委員会が治療中止を決めたとしても、疑問は残る。そんな揺れが、言葉の端々ににじんだ。」


◆「「明らかに殺人」安楽死に反対する団体」
『TBS News i』 2006年3月27日17:37
http://news.tbs.co.jp/ *

 「今回の人工呼吸器取り外し問題を受けて、尊厳死や安楽死に反対する患者団体などが急きょ記者会見を開き、「家族の同意による治療停止」について、国民的議論の必要性を訴えました。
 「本人が意思表明をはっきりとしていない中では明らかに殺人。家族や医師の都合で外されたのではないか」
 また、尊厳死を法制化する動きについて、「命の切り捨ての基準をつくることになり危険だ」と訴えました。


◆「尊厳死」(憂楽帳)【今沢真】
『毎日新聞』 2006年3月27日 東京夕刊
 http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/yuuraku/news/20060327dde041070028000c.html


◆3月28日付・編集手帳
『読売新聞』 2006年3月28日1時39分
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060325ig15.htm

 「江戸期の儒学者、新井白石の父親は尊厳死を望んでいたようで、常々語っていたという。「いのちの限りある事をもしらで、薬のためにいきぐるしきさまして終りぬるはわろし」と。白石の自叙伝「折たく柴の記」にある◆その父親が75歳で熱病を患い、ほとんど絶望かと見えた。当人のかねての意思を尊重し、投薬に反対する人もいたが、薬を含ませてみたところ快方に向かったという。82歳で天寿をまっとうしている◆治療を施すか否かで、家族を交えて議論のあったことが記述から察せられる。生死を分ける判断には当然だろう。富山県の市民病院で発覚した「延命措置中止」の場合は、ことの経緯がまだ明らかでない◆外科部長が人工呼吸器をはずし、5年間にがんの末期患者など7人が死亡している。病院の説明によれば、患者の家族がこの措置に同意したことを示す文書はないという◆どんな条件を満たし、手続きを踏めば延命治療を中止できるのか、合法と違法を分ける基準が日本にはない。日夜、末期患者の苦しみに接する医療現場の煩悶(はんもん)は察するに余りあるが、我流の基準による独断をみずからに許すとすれば、それは医師の傲(おご)りであろう◆儒学者の父親が述べた言葉を引かずとも、命には限りがある。「限り」の線を引く定規はいかなる名医も持ち合わせていない。」


◆「[延命治療中止]「指針となる法的整備が必要だ」」(3月28日付・社説2)
『読売新聞』 2006年3月28日1時40分
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060327ig91.htm

 「延命治療はどこまで行うべきなのか。その判断を個々の医師に負わせてよいのか。重い問いを突きつける出来事だ。
 富山県の射水市民病院の外科医が、終末期を迎えた患者の人工呼吸器をはずし、延命治療を中止することによって死に至らしめた。延命を中止された患者は、昨年までの5年間で7人になるという。
 カルテには「家族の同意を得た」との記載があるものの、それを否定する遺族もいるようだ。富山県警が事情聴取に乗り出している。医師は殺人罪などに問われる可能性がある。
 刑事事件となるかどうかは、司直の判断を待つしかない。問題は、死を待つだけの状態に至った人への延命措置をどこまで行うか、日本には明確で具体的なルールがない、ということだ。
 苦しむ末期患者に対して医師が死を早める行為は、「安楽死」と「尊厳死」に区別される。前者は薬物などで患者を死亡させる。後者は自然な死を迎えるよう過剰な延命措置をとらない。
 こうした行為が許されるかどうかは、東海大病院で起きた安楽死事件をめぐり、1995年の横浜地裁判決で一定の条件が示された。判決は、「積極的安楽死」と「消極的安楽死」に分けている。尊厳死は後者に含まれるものだろう。 積極的安楽死は、〈1〉患者に耐え難い肉体的苦痛がある〈2〉死が避けられず死期が迫っている〈3〉苦痛を除去、緩和する方法がない〈4〉生命の短縮を承諾する患者の明らかな意思表示がある――の4要件を満たさなければならない。
 消極的安楽死も、〈1〉患者に回復の見込みがなく死が避けられない〈2〉治療中止を求める患者や家族の意思表示がある――などが条件とされた。 だが、こうした条件を満たすため、実際の医療現場がどのような手続きを踏めばよいのか、指針が確立していない。 薬物などで患者を死亡させる行為については、実行する医師がいれば今後も、司法の判断にゆだねるべきケースもあるだろう。
 これに対して、延命治療の中止については、ただちに刑法の殺人罪を問うだけで解決するのかどうか。厚生労働省の調査に、4人に1人の医師が延命治療の中止に「難しさを感じている」と答えている。射水市民病院に近いケースは、他の病院でもあるかもしれない。 医療の進歩が、かつては考えられなかった延命治療を可能にした。それをどこまで続行するかのルールがないために、医療に対する不信を招くようでは不幸なことだ。
 延命治療の在り方の具体的な基準を策定し、法的な整備を急ぐ必要がある。」


◆「呼吸器外し 治療中止の基準作りを」【社説】
『朝日新聞』 2006年03月28日付
http://www.asahi.com/paper/editorial20060328.html

 「がんの末期などで治る見込みがないとき、どこまで延命のための治療をするのか。医療技術が進歩した今、私たちにとって避けて通れない問題である。
 富山県射水市の病院で、7人の患者が人工呼吸器を外されて亡くなった。このニュースをひとごとではない思いで聞いた人は少なくないだろう。
 患者はいずれも、重い病で末期の状態だった。呼吸器を外した外科医は、家族の了解をとったうえで、患者の「尊厳死」のために延命治療を中止したと説明しているという。
 延命治療の打ち切りは、薬などで死期を早める「安楽死」とは違う。しかし、治療をやめれば患者は死に至る。医師は殺人罪に問われかねない。
 例外的に治療を中止しても許される条件については、横浜地裁が95年に言い渡した東海大の安楽死事件の判決で示している。末期で死が避けられないこと、患者や家族の同意があること、などが欠かせないとされた。
 また、同種の事件の裁判を通じて、「疑わしきは生命の利益に」「病状などは複数の医師が確認する」といった原則も繰り返し強調されてきた。
 こうした条件や原則に照らしたとき、医師の判断や処置に問題があったのではないか。捜査で解明されることを期待したい。
 司法や警察の判断とは別に、終末期医療の中で延命治療のあり方をきちんと位置づける必要があるだろう。
 厚労省の終末期医療の検討会が03年に実施した世論調査によれば、痛みを伴う末期状態では、単なる延命治療はやめた方がよい、あるいはやめるべきだと答えた人が、一般の市民で74%、医師では82%にのぼった。とくに痛みのある場合、多くの人が無理に生かされることを望んでいないと見ていいだろう。
 治療の打ち切りについて、横浜地裁が大筋の考え方を示したとはいえ、医療の現場で対応するには、具体的な指針が必要だ。患者の意思をどうやって確認するか。家族の範囲はどこまでか。病状の判断はどうするか。患者や家族が望んでも、医師が殺人罪に問われかねないのでは混乱するばかりだ。
 検討会は04年、本人や家族などの意思確認の方法などを慎重に定めたうえで、延命治療を中止する基準を確立する必要があるとする報告書をまとめている。
 延命治療の中止が安易に広がる懸念がある。状況によっては、そもそも延命治療を始めるか、という問題もある。乱用を防ぐ歯止めをしっかりとしたうえで、納得のいく終末期医療を実現する環境を整えたい。
 検討会の報告を踏まえて医師や法律家らによる研究班が発足し、07年度には報告をまとめる予定だ。国民の声にも耳を傾け、妥当な基準を示してほしい。
 いざというときにどうしてほしいか。私たちも日頃から話し合っておく必要があるだろう。」


◆【天声人語】
『朝日新聞』 2006年03月28日付
http://www.asahi.com/paper/column20060328.html

 「明治期から昭和にかけて、文明批評に健筆を振るった長谷川如是閑に、こんな言葉がある。「生命は刹那(せつな)の事実なり、死は永劫(えいごう)の事実なり」(「如是閑語」)。死の永遠性に比べれば、生きている時はあっという間だと、生あるものの切なさを述べる。
 刹那の側から永劫の方へと移る境目を、どんな状態で迎えるのか。自分の意思はどう扱われるのか、果たして意識はあるだろうか。死というものを考える時、そんな思いもよぎる。
 富山県の射水市民病院で、7人の患者が人工呼吸器を外されて死亡していたことが分かった。病院によれば、患者は意識が無く回復の望みがない状態で、治療の責任者だった外科部長はいずれも家族の同意を得て外したという。7人とは別に、呼吸器を外されかけた患者があり、その家族は「取り外しについての説明はなく、外すようお願いしたこともない」と語る。生と死の境目の場面での証言が食い違っている。
 病院側は、外科部長の行為が「延命治療の中止措置」だったとして「倫理的、道義的に問題があった」と謝罪した。延命中止についての国の指針は、まだできていない。
 厚生労働省の02年度の調査では、自分が末期がんなどで痛みを伴い、余命に限りがある場合、単なる延命治療は中止して欲しいとする市民が7割強を占めた。前もって延命治療を拒否する考えを文書で残す「リビング・ウィル」に賛成する人は初めて半数を超え、6割となった。
 死は直視し難い。しかし、いつかは訪れる。あらかじめ対応を考えておくのもいいのかも知れない。」


◆「『本音口にできない』 富山の『安楽死』疑惑」(特報)
『東京新聞』 2006年3月28日付け
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060328/mng_____tokuho__000.shtml

 「末期状態の患者七人が、外科部長(50)により人工呼吸器を取り外され「安楽死」した疑惑が発覚した富山県の射水(いみず)市民病院。病院側や患者関係者の説明は食い違い、真相は依然闇のままだ。一九九〇年以降、末期患者への薬剤投与による安楽死事件が後を絶たない中、病院周辺のお年寄りや、医療関係者の思いは。 (坂本充孝、大村歩)
◇発覚直後でも待合室は満員
  [略]
◇延命治療中止 肯定派が74%
  [略]
◇高齢者医療費増大が背景?
  [略]


◆「呼吸器外し 『同意』で食い違っては」(社説)
『東京新聞』2006年3月28日付け
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060328/col_____sha_____002.shtml
『中日新聞』2006年3月28日付け
http://www.chunichi.co.jp/00/sha/20060328/col_____sha_____001.shtml


 「富山県の射水市民病院で起きた末期入院患者の人工呼吸器の取り外し問題で、最も知りたいのは、患者・家族からの同意の取り方に問題がなかったかだ。この点を徹底的に明らかにしてもらいたい。
 これまでの病院などの調査では、二〇〇〇年から昨年までに同病院に入院していた富山県内の男性四人、女性三人のがんなどの末期患者の人工呼吸器を外科部長が取り外して延命治療を中止し、死亡させた。
 外科部長は「尊厳死だ」と主張しているという。
 だが、果たしてそうか。疑問が生じるのは第一に、患者・家族からの同意の取り方があいまいなことだ。
 病院側の調査に対して外科部長は「家族の同意を得ている」と説明しているが、カルテに記載はあっても同意書の形式では取っていない。
 この問題発覚のきっかけになった別の患者のケースでは、外科部長が「家族から要望があった」として呼吸器を外そうとしたと病院側は説明しているが、家族は「頼んでいない」と否定している。
 このような食い違いが生じること自体、同意の取り方が不十分だといいうことを示していよう。
 第二に、たとえ口頭で同意を取ったとしても、外科部長一人の判断で延命を中止するのではなく、別の医師も立ち会うべきだが、そうした手順を踏んだ形跡がうかがえない。
 病院長は「(外科は)四人でチーム医療しているが、外科部長が決定権限を持ち、他の医師は反論できる雰囲気でなかった」と述べている。これが外科部長の独断につながったかどうかも知りたい。
 安楽死、尊厳死絡みの医療でその妥当性が問われるとき、「同意」の取り方が問題になるケースが少なくない。一九九一年の東海大病院、九八年の川崎協同病院事件では、いずれも医師が患者本人の意思を確認せずに薬物を投与して死なせた。
 二月末に第九次日本医師会生命倫理懇談会がまとめた「ふたたび終末期医療について」の報告書が、安楽死、尊厳死を問わず「本人意思」の重視を強調しているのはこのためといっていい。
 今回のように、最も重要な「本人意思」の明確な確認がない以上、延命治療の差し控え・中止とはいえても、尊厳死とはいえない。医師は医療現場で厳しい治療の判断を迫られることが少なくないが、独断に走り「裁量権」を超えてはならない。
 超党派の国会議員で構成する「尊厳死法制化を考える議員連盟」は今秋にも法案の提出を検討しているが、「本人意思」の確認の義務付けには十分に配慮する必要がある。」


◆「智恩院の桜が入相(いりあい)の鐘に散る春の夕(ゆうべ)」…(中日春秋)
『中日新聞』2006年3月28日付け
http://www.chunichi.co.jp/00/chn/20060328/col_____chn_____000.shtml

 「智恩院の桜が入相(いりあい)の鐘に散る春の夕(ゆうべ)」とあるから、今ごろの季節か。おう外の『高瀬舟』で、罪人の喜助(きすけ)を載せた舟が京を下っていく▼作品のテーマの一つは喜助の「罪」である。病苦の弟にせがまれ、見かねて死なせてやったことが、弟殺しに問われた。その話に護送役の庄兵衛(しょうべえ)は「これが果(はた)して…人殺しと云(い)ふものだらうか」と疑問を覚えてしまう▼おう外は『高瀬舟縁起』で、「ユウタナジイ」の言葉と安楽死という意味を紹介している。「高瀬舟の罪人は、丁度(ちょうど)それと同じ場合にゐたやうに思はれる」と記し、医師としても考えをめぐらせただろう。古来、人を考え込ませてきた安楽死の問題。医療が発達した今は一層重い▼富山県射水(いみず)市の市民病院で、人工呼吸器を外された患者七人の死亡が発覚した。関与したとみられる外科部長は「患者の同意はないが家族の同意があり、尊厳死だった」と病院に説明した。一方、七人とは別に、外科部長が呼吸器を外そうとした患者の家族に対しては外す説明がなかったとの疑いが出ている▼『高瀬舟』の喜助の場合、現在の法哲学だと無罪という専門家の見解がある。弟本人の懇願も理由の一つだろう。今回は、この「同意」の点で疑いがある。あいまいな会話から医師が先走った恐れはないか。医師にも苦しい選択だったと想像するが、「独走」や「誘導」があっては、ゆゆしい▼「容易に杓子(しゃくし)定規で決してしまはれる問題ではない」。おう外が書くように、容易ではない安楽死の問題だが、「同意」のあり方には厳しい定規がいるはずだ。


◆「私は力の限り患者のためになる…」余録
『毎日新聞』 2006年3月28日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/yoroku/archive/news/2006/03/20060328ddm001070030000c.html

 「「私は力の限り患者のためになる養生法をとり、有害と知る方法を決して用いません。頼まれても誰にも死に導くような薬を与えません。そのような相談にものりません」。医の倫理を示して今に伝わる古代ギリシャのヒポクラテスの誓いの一部である▲安楽死を禁止したとみられる記述があるのは、それだけ当時の医術が安楽死にかかわっていたからなのか。神ならぬ人間が患者の生死を左右する医療を行うには、自らを内面からしっかりと律する倫理が必要だ。この誓いが画期的なのは、それを示したことだ▲末期患者への延命技術が発達した現代、多くの人々はさまざまな生命維持装置につながれて人生最後の時を迎える。「畳の上の死」はもう珍しい。機器を通して生命を監視され、管理される患者にとっては、医師はほとんど神のような存在である▲富山県の射水市民病院で入院患者7人が、医師によって人工呼吸器を外されて死亡していたことが分かった。当の医師は延命治療の中止について患者の家族の同意を得たとカルテに記している。だが、問題発覚のきっかけとなった男性患者の遺族はそんな同意はしていないという▲末期患者の延命治療については、延命を望まない患者の事前の意思を尊重する「尊厳死」の制度化をめぐり賛否の論議が交わされているさなかである。医師は知人に「あれは尊厳死」と語っていたというが、本人の意思も聞かずに独断で延命治療を中止したのなら、尊厳死ともいえない▲神のような立場に置かれた医師は、自らの意思で人の生死を分けるという神の役割まで演じたのであろうか。真相解明を待つしかないが、もしも今日の末期医療の現場にそんな倫理の空白が生まれているのならば早く埋めたほうがいい。」


◆「病院長が市議会に説明 人工呼吸器外しで 富山県」
『北海道新聞』 2006年3月28日 7時30分
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060328&j=0022&k=200603285029

 「富山県の射水市民病院で、がん患者ら7人の人工呼吸器が外されて死亡した問題で、射水市議会は28日午前、全員協議会を開き、同病院の麻野井英次院長からこれまでの経過などの説明を受ける。
 この問題をめぐって病院側が市議会に説明するのは初めて。
 麻野井院長が(1)外科部長(50)の呼吸器外しが発覚した経緯(2)病院内に設置した調査委員会による過去の呼吸器取り外し事例の調査結果(3)県警への届け出内容―などを説明し、病院の運営改革の方向についても議論。」 」


◆「川崎厚生労働大臣閣議後記者会見概要」
(H18.03.28(火)09:37〜09:52 参議院議員食堂)  【広報室】
http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2006/03/k0328.html

「(記者)
 富山県の射水で、息が出来ない患者の人工呼吸器を外したということが問題になっているのですが、終末期医療の在り方について、厚生労働省でガイドラインづくりのようなものを始めてはいるのですが、なかなか進展していないのですけれども、そういう作成について急ぐというようなお考えはございますでしょうか。

(大臣)
 事件自体は、警察が入っていますので、なかなか情報がつかめません。これは、捜査機関が入りますと、なかなか他の役所には情報が流れてきませんからやむを得ません。実態は、報道以上のものは知りません。しかし一方で、尊厳死の問題を含め、今までの判例も含めて、私自身3つくらいに分かれるのかなと思っています。1つは、あまりに痛みが激しいという中で、医療の行為によって死期を早めるという選択がある。それから2番目として、緩和ケア等を進めますよということになって、若干同じような問題が出てきます。それから3番目としまして、やはりもう患者さん自身の意識もなくなってきているし、今後の回復もなかなか見込めない、そして親族の同意、場合によっては本人自身の同意、それから医療現場における個人判断ではなく、例えば倫理委員会みたいなものでやるというようなこともあります。3番目のケースについては、少し議論を早める必要があるんだろうと思っています。今申し上げた1番目の医療行為によって死を早めるという問題については、相当な議論をしていかないとならないでしょう。法医学の問題、まさに個人としての倫理の問題、また宗教の問題もあるかも知れない。これは相当時間がかかるんだろうと思います。しかし、3番目の問題として、医療現場の個人判断ではなくて、例えば医療機関における倫理委員会みたいなもの、それから、本人もしくは家族というものがある場合に、どう考えていったらいいかということについては、あまり時間をかけない方がいいなという気がいたしております。後で委員会でもご質疑いただきますが、私は実は今日の朝「少し早めろ」と、これについて来年度いっぱい議論していって、それから結論を出すというのでは、少し時間的にかけすぎだという表現を使いました。そういった意味では、少しこの3番目のケースについては、もう少しスピードアップを図るように指示をいたしたところでございます。

(記者)
 今の件ですが、具体的には尊厳死法案というものの扱いでしょうか、尊厳死という話になるかと思われるんですが。

(大臣)
 尊厳死というのは、先ほど言いました1の問題、2の問題が絡んでいます。3の問題というのは、法案の問題であろうという問題も含めてあります。現実に医療の現場で本人なり、いろんな対応策を考えた上で、最終的には誰かが判断していくことは事実です。ですから、法律なのかなという問題も含めて、少し早めた方がいいんだろうと思います。
(記者)
 法律で定めるのではなくて、ガイドラインみたいものということでしょうか。

(大臣)
 だから、そういうこともあるし、こちらの人の言うように法律というものもあるから、どちらでやるということの問題も含めての議論でしょう。既にここだけで2つ議論が出てしまっていますね。

(記者)
 具体的には、例えば年内とかどういうお考えでしょうか。
(大臣)
 今日言ったばかりですから、現場もびっくりしていると思います。」


◆「終末医療の停止条件「早めに結論を」 川崎厚労相」
『朝日新聞』 2006年03月28日13時59分
http://www.asahi.com/national/update/0328/TKY200603280262.html?ref=prev

 「富山県の射水(いみず)市民病院で末期の患者7人が人工呼吸器を外され死亡した事件に関連し、川崎厚生労働相は28日の閣議後の記者会見で、同省の研究班が延命治療停止の条件などを議論していることに触れ、「来年いっぱい議論するというのは時間的にかけすぎだ」と述べ、終末期医療のあり方について検討を急ぐよう指示したことを明らかにした。
 また、同日午前の参院厚生労働委員会で「医師1人の判断であってはならない。患者の意思というものをどういう形できちっとさせるかだ」と指摘。「法律か、ガイドラインでいいのかも含め、早めに結論を出してもらいたい」と述べた。」 」


◆「「呼吸器外しに同意」患者家族が自宅玄関に張り紙」
『朝日新聞』 2006年03月28日22時04分
http://www.asahi.com/health/news/TKY200603280412.html

 「富山県射水市の射水市民病院で、外科部長(50)の指示で、計7人の患者が人工呼吸器を外され死亡した問題で、問題発覚のきっかけになった男性患者(当時78)の遺族が28日、「取り外しの説明を受け、同意した」とする文書を自宅玄関に張り出した。遺族は26日、「取り外しについて病院側から説明されたことはなく、お願いしたこともない」と指摘。「外科部長は家族の要望で人工呼吸器を取り外す予定だった」とした病院側の説明と食い違っていた。
 男性患者は昨年10月9日に搬送され、蘇生措置後に人工呼吸器を装着された。同12日、外科部長は人工呼吸器を外すよう看護師に指示したが、疑問を感じた麻野井英次院長が取り外しを禁じ、その後の調査で取り外し7事案がわかった。男性は同月21日に死亡している。
 遺族の説明によると外科部長は搬送の2、3日後、遺族側に「意識が戻ることはなくこれ以上回復の見込みはない」と伝えた。同意書などはなかったが、家族で協議し、口頭で取り外しに同意したという。
 遺族は張り出し文書で「記憶が曖昧(あいまい)だった」と26日の指摘を否定、「深くおわび申し上げます」と謝罪した。文書では「先生(外科部長)には父が生前お世話になり、家族一同大変感謝しております」とも記した。」


◆「外科部長、「間違っていた」 院長に謝罪」
『朝日新聞』 2006年03月28日22時27分
http://www.asahi.com/health/news/TKY200603280477.html

 「射水市民病院の麻野井英次院長が28日、記者会見し、発覚当初に「尊厳死」を主張した外科部長が、病院側の2度の聞き取り調査の後、自ら院長のもとを訪れ、自分は間違っていたとの趣旨で謝罪した、と説明した。院長は「尊敬する医師に諭されたようだ」との見方も示した。
 麻野井院長によると、問題発覚後に発足した調査委員会の調査で、院長自らが外科部長に2度、事情を聴いた。一度目の昨年10月12日には「延命措置の中止であり、手続きに不備がある」などと医療倫理上問題があるとする院長に対し、外科部長は「尊厳死であり、信念を持ってやった」と主張したという。
 4日後の16日にあった2度目の聞き取りでも外科部長の主張は変わらなかったが、同日中に外科部長自らが院長のもとを訪れ、謝罪したという。麻野井院長は「先輩から諭されたのだと思う」と説明。「安易に考えてはいけない問題だと認識されたのではないか」とも話した。
 院長は、この日に警察に届け出ることを外科部長に告げた、とも説明したが、その際の状況は「詳しくは話せない」とし、外科部長の対応については語らなかった。」


◆「富山・射水の呼吸器外し:「尊厳死の指針策定急ぐ」−−川崎厚労相
『毎日新聞』 2006年3月29日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/archive/news/2006/03/29/20060329ddm005040011000c.html

 「川崎二郎厚生労働相は28日の記者会見で、富山県射水(いみず)市の市民病院で患者7人が人工呼吸器を外されて死亡した問題を受け、07年度中の取りまとめを予定している尊厳死のルールに関する指針の策定作業を早める考えを示した。終末期医療のあり方に関しては、同省研究班が04年から指針づくりを進めている。川崎氏は「来年いっぱい議論するというのでは時間のかけすぎだ」と述べ、厚労省幹部に同日朝、作業を早めるよう指示したことを明らかにした。」


◆「「倫理」めぐり緊迫 射水市民病院延命中止」
『北日本新聞』 2006年3月29日
http://www.kitanippon.co.jp/ *

「射水市民病院で患者七人が人工呼吸器を取り外された後に死亡した問題で二十八日、発覚のきっかけとなった患者について昨年十月、人工呼吸器を取り外そうとした担当の外科部長(50)と麻野井英次院長との話し合いの詳細が明らかになった。「許されることではない」とする院長に「尊厳死だ。何が問題なのか」と言い張る外科部長。「医の倫理」をめぐり二人のやり取りは緊迫した。
 二十八日開かれた射水市議会全員協議会と、その後の記者会見で麻野井院長が説明した。
 全員協議会に出席した議員によると昨年十月十二日、外科部長から取り外しの指示を受けた看護師長から、副院長を通じて報告を受けた院長は、外科部長に電話し「やってはならない」と求めた。「尊厳死」と主張する外科部長は納得しなかったが、とにかくやめさせたという。  同日から急きょ発足させた院内調査委で、平成十二年からの五年間で七人の取り外しがあったことが判明。十四日午後二時ごろから黒田邦彦副院長、永森宏之事務局長を交えた四人で二時間以上話し合った。外科部長は「家族の同意は得ている」と主張したが、文書はなく、本人の意思確認も明確でないという状況で「尊厳死にはならない」とする院長と、議論は平行線のまま終わった。
 院長は、外科部長を知る人に説得を依頼。その日の夕、外科部長が院長に「自分が間 違っていた」と非を認めたという。
 全員協議会で院長は「その時は涙が出るほどうれしかった」と述べた。しかし、その後 は再び二人の意見が食い違うようになった。
 議員から「正しい医の倫理は本来一つのはず。なぜ違いが起きるのか」と問われ、院長は「優秀な医師なので理解してもらいたかったが、かなわなかった」と述べた。その上で「患者本人の意思を確認し、倫理委員会を開いても、それでも延命治療を中止していいのかの判断は難しい。まだ分からないことだ」と、命をめぐる問題への対応の難しさを語った。」


◆「終末期医療ガイドライン設置は4病院 県内」 『北日本新聞』 2006年3月29日
http://www.kitanippon.co.jp/ *

 射水市民病院で末期状態の入院患者七人が人工呼吸器を外され死亡した問題で、北日本 新聞社は二十八日、県内公的病院の終末期医療について調査した。十七病院から回答があり、うち院内で延命措置などの対応についてガイドラインを持っているのは四病院にとどまることが分かった。射水市民病院の問題を重くみて、九病院が、早急に基準づくりを検討したいと答えた。
 終末期医療は、回復の見込みのない病気に侵され、死が避けられない状態にある際の治療とされる。人工呼吸器の装着などに関する院内のガイドラインを持つのは四病院だった。
 済生会高岡は、人工呼吸器を付けた後は心臓が止まる自然死に到るまで外さない。
 十三の病院は明確なガイドラインはないとしている。うち済生会富山は、患者に延命治療への意思を聞くマニュアルがあり、安楽死を認めず、人工呼吸器を取り付けた場合は中止の申し入れがあっても認めないとの方針を掲げている。富山市民や砺波総合、南砺市民、南砺市立福野、黒部市民は申し入れがあった場合、院内の倫理委員会で諮ることを決めている。また県立中央、高岡市民、氷見市民は、院外メンバーを加えた倫理委員会を設置していた。
 今後のガイドライン設置については、未設十三病院のうち九病院が前向きに検討する方針。あさひ総合は「今回の問題を受け、予定を前倒ししたい」とした。
 一方、「法整備がないのでできない」「行政の指導方針か、医療関係法令で明記されれば検討」との回答もあった。佐々木正厚生連滑川病院長は「今回の問題で現場が混乱している。国や学会で統一されたガイドラインが必要ではないか」と指摘した。


◆「7件すべて家族同意 射水・延命中止」
『北日本新聞』 2006年3月29日
http://www.kitanippon.co.jp/ *

 「射水市民病院で患者七人が人工呼吸器を取り外され死亡した問題で、呼吸器を外した外科部長(50)が二十九日、同市内の自宅で報道機関に対し「七件のすべてで家族が同意し、呼吸器を外す際に立ち会った。うち六件はほかの医師も居合わせた」などと語った。問題が発覚して以降、外科部長が取材に対し、具体的に話したのは初めて。
 外科部長は「私はルールを外したと自覚している。だから、こういう境遇を受け入れている」とする一方で、呼吸器を取り外したことの違法性については「今までやったことが法に触れるか(司法などに)判断してほしい」と話した。
 さらに、外科部長は「家族との信頼関係のまま呼吸器を外すことが多い。同意書にサインしろとは申し訳なくて言えなかった」と同意書が存在しないことについて釈明した。
 外科部長は昨年十月の病院の調査に対して「患者にこれ以上の苦痛を与えていいのか、解放してやるべきか、悩んだ末やってしまった」と語っていた。」


◆「尊厳死疑惑:外科部長が初めて説明「自然な死」選択」
『毎日新聞』 2006年3月29日 15時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060329dde001040017000c.html


 「富山県射水(いみず)市の射水市民病院(麻野井英次院長)で患者7人が人工呼吸器を外されて死亡した問題で、呼吸器外しを指示した外科部長(50)=3月31日で退職=が29日、自宅で取材に応じ、「医師と患者の信頼関係の中で、自然に死を迎えた方がいいということになって、外した」などと述べた。家族の同意はあったとしたが、「同意書にサインして下さいとは申し訳なくて言えなかった」と説明し、「ルールを外したことは自覚している」と話した。問題発覚後、外科部長が呼吸器外しについて動機などを詳細に語ったのは初めて。
 この日朝、自宅前にいた報道陣を玄関に招き入れて、取材に応じた。
 呼吸器を外した時の状況について、「私と主治医と2人以上の看護師、家族も2人以上が立ち会ったうえで外した」と説明した。スタッフは心停止まで家族と病室にいたという。1件については、主治医が院内にいなかったので立ち会っていないが、「主治医とは相談しており、独断でやったとは思っていない」とした。
 また、「主治医からの反対は一度もなかった」とした。
 「同意書にサインして下さいというより、信頼関係のまま外すことが多い」と話し、「不幸にして救命できない状況になった時には、無意味な処置と思われる(家族の)方もたくさんいて、そういう方が(呼吸器を)外してあげたいという切なる思いを抱いた時には、治療行為の一つとして外した」と述べた。
 報道陣から「自分の行為が間違っていたと思うか」と問われと、「不用意だった」と述べた。
 外科部長は昨年10月に問題が病院内で発覚した後、麻野井院長に「尊厳死だ」と強硬に主張。院長との面談は3回で、最後に「間違っていた」と反省の態度を示して謝罪した、とされる。こうした経緯について、「当初は消極的な安楽死か尊厳死にあたると主張した」と説明。報道陣から「呼吸器外しは信念だったのか」と質問されると、「何とも言えない」と答えた。
 また、「回復の見込みがなく、助けられないという葛藤(かっとう)があった」と話し、「今では、心停止が人の死だという考えと、延命治療の中止は正しかったという両方の思いが揺れ動いている」と複雑な心境を吐露した。
 外科部長は29日午後、報道陣に対して、7例のうち自分がかかわったのは6件で、残る1例については「私の記憶にない患者。他の医師がやったのではないか」と話した。」 ◆「富山・射水の呼吸器外し:外科部長、初めて説明」
『毎日新聞』 2006年3月29日 東京夕刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060329dde001040017000c.html

 「◇「同意書なし、ルール外した」/「信頼の中、自然な死選んだ」
 富山県射水(いみず)市の射水市民病院(麻野井英次院長)で患者7人が人工呼吸器を外されて死亡した問題で、呼吸器外しを指示した外科部長(50)=3月31日で退職=が29日、自宅で取材に応じ、「医師と患者の信頼関係の中で、自然に死を迎えた方がいいということになって、外した」などと述べた。家族の同意はあったとしたが、「同意書にサインして下さいとは申し訳なくて言えなかった」と説明し、「ルールを外したことは自覚している」と話した。問題発覚後、外科部長が動機などを詳細に語ったのは初めて。(3面に発言内容)

 この日朝、自宅前にいた報道陣を玄関に招き入れて、取材に応じた。
 呼吸器を外した時の状況について、「私と主治医と2人以上の看護師、家族も2人以上が立ち会った」と説明。スタッフは心停止まで家族と病室にいたという。7件のうち1件については、主治医が院内にいなかったので立ち会っていないが、「主治医とは相談しており、独断でやったとは思っていない」とした。
 「同意書にサインして下さいというより、信頼関係のまま外すことが多い」と話し、「救命できない状況になった時には、無意味な処置と思われる(家族の)方もたくさんいて、そういう方が(呼吸器を)外してあげたいという思いを抱いた時には、治療行為の一つとして外した」と述べた。
 報道陣から「自分の行為が間違っていたと思うか」と問われると、「不用意だった」と述べた。
 外科部長は昨年10月に問題が病院内で発覚した後、麻野井院長に「尊厳死だ」と強硬に主張。院長との面談は3回で、最後に「間違っていた」と謝罪した、とされる。こうした経緯について、「当初は消極的な安楽死か尊厳死にあたると主張した」と説明。「呼吸器外しは信念だったのか」と質問されると、「何とも言えない」と答えた。」


◆「尊厳死疑惑:外科部長の発言内容」
『毎日新聞』 2006年3月29日 15時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060329k0000e040090000c.html

 「富山県射水(いみず)市民病院で末期患者7人が人工呼吸器を外され死亡した問題で、呼吸器外しを指示したとされる外科部長が29日午前、報道陣に発言した主な内容は次の通り。

 死亡した患者7人の家族から同意書は取っていないが、私と主治医、看護師2人以上、家族も2人以上立ち会ったうえで、人工呼吸器を外している。うち1件は主治医が院内にいなかったので、私1人で外した。外すことは主治医と相談しており、単独でやったと思っていない。主治医から反対の意見は一度もなかった。同意書を取ることは機械的になるので嫌だった。医師と家族の信頼関係の中で徐々にそういう方向(呼吸器外し)になったと認識している。

 −−組織的にやったということか。
 そういう認識ではない。私が10年間この病院に勤めて500人ぐらい死んだが、亡くなり方はケースバイケース。そのうち7人が人工呼吸器を外すという亡くなり方をしたにすぎない。

 −−(呼吸器外しは)間違っていたと思うか。
 どちらでもなく不用意だった。今では、心停止が人の死だということと、延命治療を中止するということが正しかったという両方の思いが揺れ動いている。(7人の患者は)いずれにしても回復の見込みはなかった。

 医師と患者の信頼関係の中で自然に死を迎えた方がいいということになって、機械を外す判断になったと思う。患者を機械でつなぎとめておくのが本当にいいのか。そういうところに医者のエゴがあるのかもしれない。

 (呼吸器取り外しが院内で判明した)昨年10月の時点では、安楽死とか尊厳死ということで正当性を主張すべきだと思っていたが、(病院の発表などで)明らかになってから数日間、報道などで大きく反響があり、図らずも一石を投じた。客観的に見れば、(今回の問題を)公表することは必要だったと思う。至るところで論議が起きていることは非常にいいことだと思う。問題にされていくのであれば、私自身が罪に問われることも必要なのかもしれないし、自分自身の存在に意義があったかもしれない。

 −−これからも医師を続けるのか。
 続けていいのであれば続けたいと思っている。自分が結論を出せるわけではないが。患者に愛を持って接することは決して間違っていない。そういう世の中にならないといけない。物事の本質が何かを見極めないといけない。本質に近づくように世論も改善しないといけない。

 −−家族が反発していると思わないか。
 そうではないと思っているし、そうではないと願っている。

 −−呼吸器を外して亡くなった時、家族はどういう様子だったか。
 外してすぐに心停止するわけではない。ある家族は、心停止までの間に水を飲ませてあげていた。心停止まで3時間ぐらいかかる患者もいる。家族はずっと見守っているし、私たちスタッフも全員立ち会っていた。

 −−家族やスタッフの立ち会いは外科部長の指示か。
 そういうことは全くない。最後のお別れをする神妙な瞬間だ。

 −−問題発覚の端緒となった患者の家族が「同意していない」という発言を撤回したが。
 ありがたいと思っている。メディアがプライバシーに突っ込みすぎている面もあるのでは。

 −−(呼吸器外しは)かっとうや悩みでなく、信念を持ってやったのか。
 かっとうがないというとちょっと違う。回復の見込みがない、助けられないというかっとうはあった。

 −−信念なのか。
 何とも言えない。

 −−院内で発覚した後の相談相手は。
 尊敬する人はたくさんいる。いろんな人に聞いた。共通していることは、人の死は心停止であるのがルールだということだった。それを聞いて、やはりそれもそうだなと思うようになった。尊厳死も認めたいという気持ちもあって、その二つの心が行ったり来たり揺れ動いている。

 −−(呼吸器外しは)00年以前はないのか。
 そういう記憶はない。恐らくないと思う。

 −−きっかけは何だったのか。
 患者との信頼関係の中で、自然にそうなっていったのだと思う。」


◆「尊厳死の問題「法制化加速を」 超党派議連の幹事長」
『朝日新聞』 2006年03月29日21時16分
http://www.asahi.com/life/update/0329/005.html

 「超党派の国会議員でつくる「尊厳死法制化を考える議員連盟」(会長・中山太郎衆院議員)の会合が29日、参院議員会館で開かれた。富山県の射水(いみず)市民病院で患者7人が人工呼吸器を外されて死亡した問題について、同議連幹事長の渡辺秀央参院議員は会合後、記者団に「(尊厳死の)法律を社会が必要としているという問題提起では。社会不安にもつながり、難しいからと先送りはできない」と述べ、法制化に向けた議論を加速させる考えを示した。」


◆「超党派の議員連盟、「尊厳死」の早期法制化を強調」
『読売新聞』 2006年3月29日22時51分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060329ic23.htm

 「射水市民病院で入院患者7人が延命措置を中止され、死亡した問題について、超党派の国会議員で構成する「尊厳死法制化を考える議員連盟」の渡辺秀央幹事長は29日の総会後、記者団に対し「法が整備されていなかったから起きた問題」と話し、議員立法による早期法制化の必要性を強調した。」
だが、今国会中に法案を提出するかどうかは明言しなかった。」


◆「呼吸器外し 外科部長「別れの時間作ろうと」」
『朝日新聞』2006年03月29日23時36分
http://www.asahi.com/national/update/0329/TKY200603290480.html

 「富山県射水(いみず)市の射水市民病院で患者7人が人工呼吸器を外され、死亡した問題で、29日午前、取り外しについて「家族の同意を得た」「別の医師と相談して決めた」との見解を明らかにした外科部長(50)は、午後までに複数回取材に応じ、自身の行為を「外してもすぐに患者は死に至るわけではない。別れるまでの時間が誕生する。そういう貴重な時間を作る思いだった」と説明した。
 外科部長が取り外し7事案全部にかかわったとした病院側の説明については「1件は別の医師が外し、私はかかわっていない」と反論した。
 患者側の同意書については「書面で担保になるものを取らせていただくのはその場にはふさわしくないというか、体面が悪いというか」と改めて説明。「慎重さが欠けてはいけないと努力したつもりだが、消極的安楽死が公に認められる条件をクリアするのが難しかった」と振り返った。
 人工呼吸器を外し、延命治療を中止する判断については「救命できないと分かった段階で患者のほとんどは脳死状態になっているのが現実だ。患者の気持ちを考え、次にできることを考えた。何ら恥ずべき行為ではない」とし、「外してから心停止までの数分間、患者の口に水を注ぐ家族がいた。徐々に過ぎていく時間は家族にとっても大事だと思う」と語った。
 「医学とは」との質問には、「笑われるかもしれないが、愛だ。大事なのは心電図ではない」と答えた。
 一方、同日夕に記者会見した麻野井英次院長は、外科部長が「他の医師と協議した」とした点について「外部の意見を含めて対策を取ったのか。複数の医師といっても、対等に意見を言えるもの同士だったのか。私が調べた範囲では不十分ではないかと考えた」と反論。かかわったのは「6事案」との説明については「外科のトップとして全部の方針決定にかかわっていたと判断した。具体的には把握していない」と話した。」


◆「延命中止、外科部長「5件は別の医師と話し合って…」」
『読売新聞』 2006年3月30日1時21分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060329i318.htm

 「富山県射水(いみず)市の射水市民病院で、患者7人が延命措置の中止で死亡した問題で、29日、読売新聞の取材に応じた外科部長(50)は、当時の患者の状態について「脳死状態だった」とし、人工呼吸器を取り外すことについて「5人の患者はチームを組んでいた別の医師と話し合って決めた。1人は独断で行った」と話した。残る1人は主治医でなかったという。
 外科部長の説明によると、人工呼吸器を外す際、いずれも2人以上の看護師と家族が立ち会った。外科部長は人工呼吸器の取り外しについて「患者の家族とのあうんの呼吸で自ら行った」と話し、麻野井英次院長が「外科部長の独断」との考えを示したことに対し「違う」と反論した。
 一方、麻野井院長は29日、「他科の医師や識者の意見を聞いたかどうかが問題。部下の医師は対等に意見が言えたのか」と述べ、「脳死状態」かどうかについても「分からない。脳死判定にはそれなりの手続きがある」と語った。


◆「「ほかの医師と決めた」射水市民病院外科部長」
『北日本新聞』 2006年3月30日
http://www.kitanippon.co.jp/cgi-bin/news.cgi?id=A100 

 「射水市民病院(射水市朴木・新湊)で患者七人が人工呼吸器を取り外され、死亡した問題で、呼吸器の取り外しを判断した外科部長(50)が二十九日、同市内の自宅前で報道機関に対し、「独断で取り外した」とする麻野井英次院長(56)に反論、「必ず医師二人で決めてきた」と、チームでの判断を強調した。一件については「立ち会った記憶がない」と、関与が六件であることを明らかにした。前院長(66)は「全く知らなかった」と述べた。
 問題が発覚して以降、外科部長が具体的に話したのは初めて。
 「外科部長の判断で七人が呼吸器を外された」としてきた病院側は同日午後、麻野井院長が会見。「カルテなどから同様の事例を探して七件と発表した。外科部長は外科チームのトップで(七件すべてで)治療方針の決定にかかわっていると考えた」と述べた。
 外科部長は「自分がかかわった(六件)人工呼吸器の取り外しは、すべて家族の同意を得た」とし、「取り外す際には医師や家族、看護師が立ち会った」などと話した。うち一件は別の医師が出張中で、自分が単独で取り外したという。一件について関与を否定した。
  同意書の存在はなく、「患者との信頼関係でやってきたので、同意書を取る大切さを感じない」と述べた。
 動機については「愛しかない。苦しみを推察できる気持ちを持っていなければいけない」などと、患者への思いや自分なりの信念に基づいて延命治療の中止に踏み切ったことを明らかにした。
 「私はルールを外したと自覚している」とし、「今までやったことが法に触れるか(司法などに)判断してほしい」と語った。
 一連の問題は昨年十月に外科部長が同病院で、死亡した七人とは別の患者=当時(78)=の呼吸器を外そうとしていたことから発覚。
 平成十二年から昨年までに、七人が呼吸器を外され亡くなっていたことが分かり、病院が新湊署に届けた。
 県警は、北海道の女性医師=殺人容疑で書類送検=が患者の人工呼吸器を外して死亡させた十六年の「羽幌病院事件」も参考にし、国が策定を急ぐ延命治療のガイドラインや法整備などをにらみながら慎重に捜査を進めている。
 射水市民病院の人工呼吸器取り外し問題で、平成十七年三月末で退いた前院長(66)が二十九日、北日本新聞社の取材に対し「(問題が起きていたことは)全く知らなかった」と話した。
 取り外しは十二年から十七年にかけて七件あった。前院長の任期は十三年四月から四年間で、取り外しが行われていた時期と重なる。
 前院長は「うわさや内部告発のような形でも聞いたことはなかった」とした。患者への人工呼吸器の装着や取り外しについて連絡はなかったという。取り外しを行った外科部長への印象や、院内で外科病棟との連絡が十分だったかとの質問には「コメントできない」と話した。
 問題が起きたことについては「終末期医療に関するマニュアルがあればよかった」と述べた。


◆「大半が外科部長らに理解 呼吸器外しで電話相次ぐ」
『北海道新聞』 2006年3月30日 10:59
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060330&j=0022&k=200603305695

 「人工呼吸器を外され患者7人が死亡した射水市民病院(富山県)に、問題発覚後、1日数十件の電話や手紙が寄せられ、そのほとんどが呼吸器を外した外科部長(50)や同意した家族の決断に肯定的な意見であることが30日、分かった。
 同病院総務課によると、発信元は全国に広がっている。延命治療に疑問を投げかける声が多く、「同じ境遇にいた。家族の気持ちは理解できる」「外科部長はこれからも頑張ってほしい。応援している」といったメッセージも。「事実を隠さず公表しろ」「謝罪せよ」などとする苦言は一部にとどまっているという。
 死亡した7人はがんなどの末期患者であることが明らかになっており、病院は、家族の長期介護などを経験した人の声が多いとみている。」


◆「延命中止、富山県警が家族から任意聴取」
『読売新聞』2006年3月30日15時40分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060330i207.htm

 「富山県射水(いみず)市の射水市民病院で、患者7人が延命措置の中止で死亡した問題で、富山県警が、患者の家族からも任意で事情聴取を進めていることがわかった。
 治療責任者だった外科部長(50)は「人工呼吸器の取り外しは、家族からの要望。すべてに家族の同意があった」と話しているが、家族が実際に合意していたかどうかなどを解明する。
 関係者によると、死亡したのは、50、60、70歳代の各1人、80歳代の3人、90歳代の1人で、男性が4人、女性が3人だった。
 外科部長はこのうち6人の人工呼吸器の取り外しを行った。それぞれ2人以上の家族が立ち会い、6人いた場合もあったとしている。
 県警は、家族からの事情聴取で、家族が患者の考え方をどのように認識していたのか、合意があったならば、どのように形成されたのか、などを調べている。」


◆「尊厳死疑惑:患者は生前、延命治療の中止希望 家族証言」
『毎日新聞』 2006年3月31日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060331k0000m040145000c.html

 「富山県射水(いみず)市の射水市民病院(麻野井英次院長)であった人工呼吸器外し問題で、同病院で人工呼吸器を外されて死亡した男性患者の家族が30日、毎日新聞の取材に応じた。生前、延命治療の中止を希望していたことから、家族で話し合って医師に呼吸器を外すよう依頼し、主治医は「それだけ言われるなら」と了承したという。外す際は気が動転していたため、「6人の呼吸器外しに立ち会った」と認めた外科部長(50)=3月31日で退職=がいたかは覚えていないが、県警は近く、この家族から任意で聴取する方針。
 この患者は県西部に居住し、がんなどを患って、03年に60代で死亡した。意識がなく、人工呼吸器を装着。別の担当の医師が回復が難しいと話すのを聞いたことから、親族で呼吸器取り外しを話し合った。
 患者は生前、植物状態の人を扱ったテレビ番組をみている時、「こうなったら長いこと置いてくれるな」と話していたといい、最終的に延命治療の中止を決め、取り外しを担当医師に依頼した。取り外した時は、家族や親族のほか、医師1人と看護師が立ち会った。
 家族の一人は、呼吸器を装着され点滴を続ける様子が「気の毒で、見ていられなかった。いつまで続くのかと思うとつらかった」と語り、「(呼吸器外しが表面化した)他の家族も同じように頼んだのではないか」と話している。」


◆病院側は他の3医師にも聞き取り調査
『TBS News i』2006年3月30日 18:01
http://news.tbs.co.jp/ *

 「富山県の射水市民病院で人工呼吸器が外されて患者7人が死亡した問題です。病院側は30日の記者会見で、問題があった当時、外科に在籍していた外科部長以外の3人の医師についても、聞き取り調査を進めていることを明らかにしました。
 「(去年4月の)着任後におられた医師については聞いています。(当時の外科医すべてとなる)3人に聞いています」(射水市民病院・麻野井英次院長)
 麻野井院長は、聞き取り調査の結果については明らかにしませんでした。この問題では当初、患者7人すべての取り外しに関わったとされた外科部長が、29日マスコミの取材に対して、うち1人についての関与を否定。病院側の発言と食い違いを見せていました。
 また、外科部長だけが自宅待機をしているのはなぜか、との指摘に対しては、警察の捜査を待って他の医師についても関与がはっきりすれば、処分などの対応を考えるとしています。


◆終末期ケア検討委、来月初めにも発足…射水市民病院
『読売新聞』2006年3月31日0時24分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060330ic23.htm

 富山県射水(いみず)市の射水市民病院で患者7人が延命措置の中止で死亡した問題で、麻野井英次院長は30日会見し、終末期医療の問題点を話し合う「ターミナルケア検討委員会」を4月初めにも発足させることを明らかにした。
 メンバーは4月4日に決める。外部の有識者も加え、延命治療のあり方のほか、問題となるケースがないか調査する。麻野井院長は一連の問題について「重要な決定が、(外科部長という)1人の非常に決定権の強い医師に任されていたことが問題だ」と話した。


◆尊厳死:法制化求め団体が要望書、川崎厚労相に提出
毎日新聞 2006年3月31日 19時37分

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060401k0000m040047000c.html
 日本尊厳死協会(井形昭弘理事長)は31日、尊厳死の法制化を求める要望書を、川崎二郎厚生労働相あてに提出した。富山県射水(いみず)市の病院で、末期患者が医師によって人工呼吸器を外され死亡した問題を受けた。「延命の責務と患者の苦しみの間で第一線の医師は悩む」として、延命治療のあり方について具体的な基準を法制化するよう求めている。


◆「日本尊厳死協会、尊厳死法制化求める」
『TBS News i』2006年3月31日21:09
http://news.tbs.co.jp/ *

「富山県の射水市民病院で、人工呼吸器が外され患者が死亡した問題に絡み、日本尊厳死協会は尊厳死の法制化に向けた作業を推進する要望書を厚生労働省に提出しました。」
 要望書で協会は、「射水市民病院で患者が死亡した問題は、延命の責務と患者の苦しみの間に挟まれた第一線の医師の悩みが背景にある」と指摘し、不治、末期ないし回復不能の植物様態の場合、本人の意思に基づいて延命措置をしないことを法制化する必要があり、速やかに検討作業に入るよう求めました。
 井形理事長は会見で、「延命をしなくてはいけないという医師の使命感もあり、主治医は悩んでしまうが、ルールがあれば今回も問題は起きなかった。速やかな法制化が必要だ」と述べています。」


◆「「尊厳死」と主張せず…延命措置中止の外科部長が反論」
『読売新聞』2006年3月31日21時7分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060331i213.htm

 富山県射水(いみず)市の射水市民病院で患者7人が延命措置の中止で死亡した問題は、31日で発覚から1週間となった。
 外科部長(50)は同日、自宅前に文書を掲示するなどし、「人工呼吸器の取り外しにかかわったのは6例だけで、自分から院長に『尊厳死』と主張したことはない」と、これまでに麻野井英次院長が会見で明らかにした内容に反論した。
 同日付の依願退職願も撤回。市は受け入れて退職を取りやめ、外科部長の身分のままとした。
 外科部長は文書を張り出した上で取材に応じ、「説明する機会がないまま、患者7人の呼吸器取り外しに関与したという事実に反する発表が行われた」と主張。患者1人の経緯をリポートで提出しただけで、ほかは院長に説明を求められなかったとした。
 本人が関与を認めた6人の患者についても「尊厳死」という認識はないことを強調。呼吸器装着はあくまでも患者の回復を目指す「救命治療」の一環であって、回復の見込みのないまま命をながらえさせる「延命措置」とは異なるものであるとの考えを示した。その上で、「救命が不可能で、家族の希望があった」と呼吸器を外した理由を説明した。
 院長による「自宅待機」の命令には「内容と手続きの妥当性に疑問がある」と反発し、退職願撤回の理由に関しては「コメントを差し控えたい」と述べた。


◆「外科部長、退職願を撤回 病院を批判 呼吸器外し問題」
『朝日新聞』2006年03月31日21時16分
http://www.asahi.com/health/news/TKY200603310504.html

 「富山県射水(いみず)市の射水市民病院で患者7人が人工呼吸器を外され、死亡した問題で、うち6人について関与を認めた同病院の外科部長(50)が31日、射水市に提出していた退職願を撤回した。分家(ぶんけ)静男市長はこれを了承し、外科部長に4月1日から1カ月間の自宅待機を改めて命じた。外科部長は31日、病院側の対応を批判するなどした手書きの文書を自宅に張り出した。
 退職願の撤回受け入れについて市は「受け入れない理由をみつけることができなかった」としている。
 人工呼吸器の取り外しを同病院の麻野井英次院長が知ったのは昨年10月。院長は外科部長に自宅待機を命じるなどし、外科部長は今年3月6日付で辞表を提出。31日付で退職する予定だった。  文書で外科部長は「自宅待機命令の内容や手続きは妥当性に疑問がある」と批判。患者6人のうち1人については麻野井院長にリポートを出したが、残る5人については説明する機会がないまま、計7人全員に部長が関与したという事実とは異なる発表がなされたなどとしている。また「(人工呼吸器は)救命治療のため装着したものであり、家族のご希望があったことから取り外した。延命治療のため人工呼吸器を装着した患者はおられません」と主張している。
 麻野井院長は「警察にすべてをまかせているのでコメントすることができない」とし、分家市長は記者会見して「コメントすることはない」と話した。」




*作成:大谷いづみ/記事全文引用についての責任:立岩
*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)のための資料の一部でもあります。

UP:20060326 REV:0327,28,29,30,31,0402, 20100101
安楽死・尊厳死 2006  ◇安楽死・尊厳死