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電子書籍 2008

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■新聞記事



『朝日新聞』2008年03月04日
朝刊
小説「徒然王子」を配信 携帯サイト「朝日オトナの本棚」
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 朝日新聞朝刊で好評連載中の島田雅彦さんの小説「徒然王子」が4日午後から、携帯電子書籍サイト「朝日オトナの本棚」(http://m.asahi.com/go/otona−a、QRコード=図=、月額315〜1050円)で配信される。第1回の配信は第1話から30話まで。今後は毎月1回配信する。
 「徒然王子」は、携帯サイト「朝日・日刊スポーツ」(http://m.asahi.com/go/an、月額105円)で同時連載中。無料会員サービス「アスパラクラブ」(http://aspara.asahi.com/)では新聞購読者会員向けに2カ月分のバックナンバーを掲載している。

 

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『朝日新聞』2008年03月15日
夕刊
瀬名秀明さん新作小説、多メディア展開で実験 TOKYO・FM
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 瀬名秀明さんの書き下ろし小説「Every Breath」をTOKYO FMが14日に出版した。同局は、この小説を基にラジオドラマも制作し、デジタルラジオやインターネットラジオ、FMラジオで放送もする。電子書籍化や、小説に登場する音楽のダウンロードサービスも実施。こうした多メディア展開で、未来のラジオの可能性を知ってもらうことを試みる。(青山祥子)
 TOKYO FMは、デジタルラジオ放送の実用化試験放送に取り組んでおり、今は関東・関西の一部地域で、au携帯電話の対応機種などで聴ける。
 デジタルラジオは音声と一緒にデータを流せるので、今回のドラマは画像付きで放送。小説の第1章を電子書籍で無料配信する。インターネットラジオでも同時配信し、20日夜8時からFMで特別番組も放送する。
 「ラジオがデジタル化し、放送と通信がつながると、どんなかたちでリスナーに届くか。最新モデルを作りたかった」と同局の小川聡・デジタルラジオ事業本部副本部長。「ラジオの良さを残し、デジタル時代に向けて媒体の価値を向上させたい」
 放送日時などの詳細は特設サイト(http://www.magic702.jp/702/everybreath)。
 ◆仮想空間での恋愛がテーマ
 「Every Breath」は未来の仮想空間が舞台の恋愛小説。瀬名さんは、今回のような多メディア展開を踏まえた創作について、「作品にラジオを聴くシーンを盛り込んだり、流れる音楽を選んだり。原稿に制約はあったけれど、本は本として面白くしたかった」と話す。
 作品中では、証券会社に勤めるヒロインと、仮想社会に存在する彼女のアバター(分身として登場するキャラクター)の物語が交差する。「人生は一度きりだけど、あり得たかもしれない人生は数多い。仮想空間の分身も自分の一部とすれば、どちらかが『仮』ということにはならない。未来は、いろいろなレイヤー(層)がゆるーく広がっていく社会なのかもしれない」

 

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『朝日新聞』2008年03月22日
夕刊
携帯でまとめて読める「徒然王子」 朝日オトナの本棚
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 朝日新聞と、携帯サイト「朝日・日刊スポーツ」で連載中の小説「徒然王子」が、1カ月ごとにまとめて携帯電話サイト「朝日オトナの本棚」=QRコード=で配信される。連載の一部を読み忘れたファンも、ここでまとめて読むことが可能になる。新聞小説が、本になるより早く電子書籍として配信されるのは初の試みだ。
 ケータイ小説といえば、画面サイズが限られ、個人のメールのような単純な文章であることなど、表現の乏しさが指摘されることもある。また、書き手と読み手が同世代か、極めて近い感覚も持っていないと理解できないといった批判もある。
 しかし、ここ数年、携帯電子書籍市場は爆発的に成長しており、出版業界では、新しいコンテンツサービスとして最も注目されている。実際にYoshiの「Deep Love」や、美嘉の「恋空」は、書籍化されてベストセラーになったり、映画化されたりしている。
 「徒然王子」の作者、島田雅彦氏=写真=は、大学教授であり、文学賞の審査員も務める著名な作家だが、「ケータイ」という新しいメディアに着目し、あえて「新聞と携帯、同時進行で連載したい」と、新たな挑戦を名乗り出た。
 文学界からケータイ小説への「殴りこみ」ともいえる試みが、どのようになるのか、今後が注目される。

 

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『朝日新聞』2008年04月17日
朝刊
こんなに進化、電子ペーパー 携帯端末・名刺…用途広がり注目 ディスプレイ展
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 紙のように薄く、画像を表示できる電子ペーパーの需要が急増し、開発競争が進んでいる。16日に東京で始まった「国際フラットパネルディスプレイ展」には各社の最新技術が並んだ。
 電子ペーパーを使えば紙の使用量を減らせ、従来のパネルより消費電力もわずかだ。広告や携帯端末、名刺、腕時計など用途は広がっており、10年度の国内市場規模は、今の5倍近くの570億円に増えるとの予測もある。
 富士通フロンテックが自社開発した電子書籍を読める端末は、12型のパネルを搭載し、電源がなくても画面上の静止画像を半永久的に表示できる。ブリヂストンは8型で厚さが従来の5分の1となる0・29ミリのフルカラー電子ペーパーを開発。曲げても表示画面は乱れない。
 米イー・インク社は、ポイントカードのポイント数や電子マネーなどの残高表示ができるカード台を開発した。ボタンを押せば小窓に数字が出る仕組み。腕時計や名刺、携帯電話などにも電子ペーパーの用途を広げている。

 

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『読売新聞』2008.05.12
電子ペーパー、液晶より見やすくエコ 本や新聞、電源切っても表示
東京夕刊
 電源を切っても消えない薄くて軽いディスプレー「電子ペーパー」が注目されている。表示の見やすさや素早さ、カラー化、曲げやすさなどの面で、各メーカーが開発を競い、性能の向上が著しい。(杉森純)
 東京で4月に開催された「ディスプレー2008」。3次元ディスプレーや超大型テレビなどと並んで注目されたのが、電子ペーパーだった。壁新聞は、紙の新聞と区別できない見栄えで、表示の切り替え時に、「紙じゃないの」と声が上がるほどだった。
 火付け役は、米アマゾン・ドット・コム社が昨年11月に発売した電子ブック「キンドル」。無線通信機能を持ち、ネットから直接、本の内容を読み込める便利さに加え、紙に近い見やすさが評判を呼んだ。
 表示には、日本の凸版印刷も出資する米Eインク社の技術が使われている。
 正と負に荷電した白と黒の粒子が、オイルを詰めた透明なマイクロカプセルの中に入っていて、電圧をかけると粒子が移動し、白黒で文字などを表示する。
 液晶のように、電源を切っても表示が消えることがなく、偏光板やバックライトが不要で構造が簡単。消費電力も少ない。文字が印刷された紙と同じように、光の反射を利用するため、目に負担が少ない。
 東海大の面谷信教授らは電子ペーパーを読んだ時の目の疲れやすさを、紙、バックライト付き液晶と比べた。結果は紙と同程度か、紙と液晶との中間だった。
     ◎
 実用化が早かったEインクの技術は、2005年の愛知万博では、幅2・6メートル、高さ2・2メートルの超大型壁新聞にも使われた。表示部や外装に電子ペーパーを使った携帯電話や腕時計も発売され、フランスでは電子ペーパー端末に経済紙の配信が行われている。
 プラスチックの基板を使えば、曲げても壊れにくくなる。イタリアでは近く、大きな表示画面を本体に巻き付けた携帯電話が発売される。
 ブリヂストンは、白黒粒子の表面にゴルフボールのような凹凸を作った。接触面積が減り、粒子同士がくっつきにくくなる。オイルの入ったカプセルが要らず、空気中を移動でき、応答が速い。白黒の反転に構造が簡単な駆動方式を使えるため、価格を抑えられる。スーパーの値札などに実用化されている。
 こうした粒子を移動させる方式に対し、富士通は、コレステリック液晶方式を使う。電圧によって液晶分子の軸の方向が変化して特定の光を反射したり、透過させたりする。カラーに向いており、青、緑、赤の色を反射する三つの液晶層を重ねて、カラー表示できる。
 「人目を引くにはカラーが欠かせない」(富士通フロンテックの蔭山芳明部長)と、広告などに的を絞る。JR恵比寿駅の改札機で、富士通方式とブリヂストン方式の電子ペーパーを使い広告実験も行われた。
 Eインクなども、カラーフィルターを使ってカラー化を進める。
 ただ、カラーにすると、どちらの方式も、バックライトを使う通常の液晶に比べて明るさが足りず、まだまだ課題が多い。
 物質・材料研究機構は、電圧で色が変化する金属と有機分子の化合物(ポリマー)の研究を行っている。一つの物質で紫や黄緑、オレンジなど複数の色を表現できるのが特徴。樋口昌芳・若手独立研究員は「ガラスの透明電極にポリマーを塗布するだけなので、構造が簡単でコストが安い。窓ガラスの調光などにも利用できる」と強調する。
     ◎
 電子ペーパーは、動画、カラーが苦手と、向き不向きがあり、液晶などに取って代わるわけではなさそうだ。面谷教授は「電子ブックなど特徴を生かした使い方を追求していくことが大切」と話している。

 

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◆2008/6/6 「読みやすさが普及の課題」シニア世代における電子書籍
http://www.fukushi.com/news/2008/06/080606-a.html
「読みやすさが普及の課題」シニア世代における電子書籍
−ネットエイジア、「シニア世代の電子書籍に関する実態調査」−
2008/06/06(Fri.)
 「リサーチTV」を展開するネットエイジア株式会社は、「シニア世代における電子書籍(パソコン)に関する実態調査」を全編Flash型ネットリサーチ「リサーチTV」により実施した。
 電子書籍は、インターネットの通信環境が進むとともに普及が期待され、シニア層での利用にも関心が持たれている。このような点に着目し、男女50歳〜79歳のシニア層に対して調査を実施し、500名(男性:250名、女性:250名)の回答を得た。
 電子書籍の利用経験と認知について尋ねたところ、「有料の電子書籍を利用したことがある」が3.0%、「無料の電子書籍を利用したことがある」19.6%、「有料・無料のどちらも利用したことがある」2.0%となっており、合わせて24.6%の回答者が電子書籍を利用した経験のあることがわかった。男女別に見ると男性での利用が多く、「有料の電子書籍を利用したことがある」4.8%、「無料の電子書籍を利用したことがある」22.8%、「有料・無料のどちらも利用したことがある」3.2%で、30.8%の利用経験となっている。
 電子書籍の利用経験者に対し、電子書籍の利用満足度について聞いたところ、「非常に満足」は0.8%、「まあ満足」が24.4%で、「満足派」は25.2%だった。いっぽう、「非常に不満」は3.3%、「やや不満」は21.1%で「不満足派」は24.4%となり、「どちらともいえない」との回答が50.4%となっている。「不満足派」に不満理由を複数回答で聞いたところ、最も多かったのが「読みにくい・見づらい」で53.3%、次いで「利用料金が高い」が40.0%と多くなっている。この他、「書籍の検索が面倒」26.7%、「自分の好きなジャンルが少ない」23.3%という回答が多かった。
 電子書籍の利用経験者に読んでいる(読んだことのある)ジャンルを複数回答で聞くと、全体では「小説」が最も多く54.5%、次いで「コミック」が39.0%、「写真集」10.6%となっている。男女別に見るとやや傾向が異なり、男性は、「小説」58.4%、「コミック」27.3%の順だが、女性は逆に「コミック」が最も多く58.7%、「小説」が47.8%となっている。
 今後の電子書籍の利用について尋ねたところ、「とても利用したい」との回答は全体で2.2%、「まあ利用したい」が16.8%で利用に積極的な回答は合わせて19.0%だった。男性では16.0%、女性で22.0%と女性での利用意向が高くなっている。
 利用消極派に対し、利用したくない理由を複数回答で聞いたところ、「本で読むほうがすきだから」との回答が48.7%、次いで「読みにくい」が42.3%となっている。書籍が見やすいソフトも出ているが、シニア世代にとって電子書籍はまだ読みにくいイメージが強いようだ。この他、「画面が見にくい」22.8%、「読んだ気がしない」22.2%、「探すのが面倒」19.0%、「閲覧ソフトのダウンロードなどが面倒」18.0%といった回答が多かった。
 電子書籍についての要望を自由回答形式で聞いたところ、「さしあたって、歴史資料や古地図、諸図鑑など、個人で所有しにくいものを中心に、図書公開などで開示して欲しい。そのほか小説、評論などは書籍で所有したいと思う」「PCの文字を長時間見ていると目がちかちかして疲れるので、そのような点に配慮した電子書籍なら購入してみようかと思う」「ある程度の慣れが必要ではないかと思っている。ニュースに関しては、新聞で読むよりもパソコンの画面上で読むことの人が多くなり、誌面でなくても抵抗がなくなってきた。書籍に関しても同様のことがいえるのではないだろうか」といった意見が挙がっている。

 

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『読売新聞』2008.07.01
[あんぐる]用途広がる電子ペーパー
東京夕刊
 紙のように薄い表示装置で、内容をどんどん書き換えることができる「電子ペーパー」。病院のカルテやオフィスの書類など、紙に代わって様々な用途で活躍すると期待されている。国内の市場規模は、2015年に500億円に達するとの予想もあり、国内外の複数のメーカーが、より扱いやすく、消費電力の少ない製品を目指して開発にしのぎを削っている。
 富士通フロンテック(東京)が開発した電子ペーパーは、素材に薄いフィルム基板を使い、自在に曲げることができる。内部は赤、青、緑の3色の液晶を重ねた構造で、電源を切っても表示が消えず、内容の書き換えも短時間でできるのが特徴だ。
 これを組み込んだ携帯型端末を販売し始めたほか、表面に残高の表示が可能なカードや、駅構内に掲示する広告、「電子書籍」などへの利用も想定されている。
 すでに一部のメーカーは「電子書籍」を開発している。電子ペーパーで当たり前に本を読む時代はそう遠くないかもしれない。(武田泰介)

 

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『読売新聞』2008.07.03
ソニーと松下、電子書籍「端末向け」事業から撤退 「携帯向け」に押され  
東京朝刊
 ソニーと松下電器産業は2日、専用端末を使った電子書籍事業から撤退する方針を明らかにした。性能が大幅に向上した携帯電話向けの電子書籍配信サービスに押され、専用端末の売り上げが伸び悩んだことが要因だ。松下は今年9月、ソニーは2009年2月にサービスを終了する。
 電子書籍は紙媒体で出版された小説や漫画などを電子データ化して、インターネットを通じて配信先のパソコンや携帯電話で読めるサービス。ソニー、松下とも文庫本大の専用端末向けのサービスを2004年に開始した。
 しかし、専用端末の販売が振るわず、ソニーは07年に専用端末「リブリエ」の国内販売を終了した。携帯電話向けサービスは今後も継続する。
 松下が06年12月に発売した「ワーズギア」は5・6インチカラー液晶画面で本を読む感覚に近づけたが、4万円前後の価格がネックとなり、今年3月には生産を打ち切っていた。
 調査会社・インプレスR&Dによると、06年度の電子書籍の市場規模はコミックを中心に拡大し、前年度比94%増の182億円。このうち、携帯電話向けが112億円で6割を占め、専用端末など向けを初めて上回った。

 

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『朝日新聞』2008年07月19日
朝刊
携帯サービス、1兆円市場 「着うた」など貢献、5年で4倍に成長
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 「着うた」やゲーム、通信販売など携帯電話を利用したサービスの市場規模が、07年に初めて1兆円を突破したことが分かった。総務省が18日、発表した。通販やチケット予約、証券取引など販売系のサービスが拡大しているほか、着うたや電子書籍の市場も大きく伸びた。
 調査によると、07年の携帯サービス市場は前年比23%増の1兆1464億円。調査を始めた02年は2986億円で、5年で4倍近く成長した。
 コンテンツ系では、着信メロディーが06年に比べ34%少ない559億円となった一方で、歌を取り込む着うたサービスは42%増の1074億円に拡大。ゲームは13%増の848億円。
 電話をかけてきた相手に聞こえる呼び出し音が歌になるサービスは06年比300%増の87億円。マンガや小説をダウンロードできる電子書籍が同220%増の221億円と大きく伸びた。

 

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『読売新聞』2008.07.19
携帯ビジネス、1兆円市場に 5年で4倍に拡大/総務省調査
東京朝刊
 携帯電話を使った電子商取引や音楽・ゲーム配信サービスなど「モバイル・ビジネス」の2007年の市場規模が前年比23%増の1兆1464億円と初めて1兆円を超えたことが18日、総務省の調査でわかった。
 市場規模は調査開始の02年の4倍弱に膨らんだ。特にネットショッピングやチケット予約などを含む電子商取引が順調に増加し、全体の6割強を占める。
 配信サービスでは、ケータイ小説やコミックなどの電子書籍が前年比3・2倍と大きく伸びた。CDなどの音源をそのまま配信する「着うた」は同42%増で、3年連続減少となった「着メロ」を初めて上回った。

 

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『朝日新聞』2008年07月21日
朝刊
(私の視点)出版不況 あなたの街の書店を守れ 永江朗
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 いよいよ23日は「ハリー・ポッター」最終巻の発売日。どのように陳列するか、どうやって売るか、いま全国の書店が知恵を絞っている。
 しかしその一方で、書店の数が減り続けている。2001年には、日本国内にはおよそ2万店の新刊書店があったが、いまは1万6千数百店だ。ここ数年、転廃業する書店数は年間1千店前後におよぶ。もっとも、総売り場面積は増えている。小さな書店が閉店し、新規に出店するのは大型店ばかりだからだ。
 今後も書店の淘汰(とうた)が進むと、10年後にはチェーン店とネット書店ばかりになっているかもしれない。かろうじて大都市には少数の独立系書店(いわゆる「街の本屋」)や専門書店が残るだろうが。
 「ハリー・ポッター」以外にも、「品格」本やケータイ小説など、最近の出版界にはいくつものブーム、メガヒットがあった。それにもかかわらず、書店の経営環境は厳しい。ベストセラー以外の売れ行きは低迷し、返品率は約4割と高止まりしたままだ。
 書籍・雑誌の総売上額が減っている。96年に2兆6千億円あまりだったのが、昨年は2兆円強。11年で6千億円が減って、89年のレベルになった。一方、新刊発行点数は増え続け、89年の倍、7万7千点あまり。18年前に比べ、新刊1点あたりの売り上げが半分になってしまった。
 そもそも本は利幅が薄い。小さな書店の経営を支えていた雑誌の販売は落ち込む一方だ。大型店やチェーン店も規模でなんとかしのいでいるだけで、大もうけしているわけではない。
    *
 とはいえ、だからといって「活字離れ」「読書離れ」が起きている、と結論づけるのは早計だろう。私たちが本を読まなくなったから本が売れなくなり、書店の経営が苦しくなった、と考えれば簡単だが、事実は必ずしもそうではない。
 たとえば毎日新聞社が1947年から毎年実施している読書世論調査を見ると、50年代、60年代より現在の方が書籍を読む人の割合が高いことが分かる。70年代、80年代に比べてもひどく落ち込んでいるわけではない。また、「若者の読書離れが問題だ」といわれるが、学生の読書率を見ると、昔より今の方が読書率が高い。
 本を読む人は減っていない。だが本は売れていない。なぜか。
 この四半世紀、私たちの読書環境は激変した。コンビニで雑誌が売られ、ネット書店が登場した。公共図書館はバブル崩壊後も増え続けている。ブックオフに代表されるリサイクル店型古書店も増えた。つまり、起きているのは読書離れではなく、新刊書離れ、書店離れなのである。
 7月11日、米アップル社の携帯電話機「iPhone(アイフォーン)」の販売が始まった。同機は電子書籍普及のきっかけとなるかもしれないが、その結果、新刊書店離れはますます加速する。
    *
 書店の淘汰は進むだろう。だが、チェーン店とネット書店しかない未来は味気なくはないか。いろんな書店がいろんなかたちで営業する街のほうが住んでいて楽しい。
 では、小さな書店が生き残るためにはどうすればいいか。ひとつは、出版産業全体で利益配分を見直すことだ。真っ当に商売している小売店が存続できないとしたら、それは利益の分配のしかたが間違っているからだ。書籍や雑誌は、独占禁止法の例外として、定価販売が認められている。出版社が小売価格を決めている。書店が食べていけるように価格や利益配分を設定するのは、出版社の責任だ。
 もうひとつは、書店が地域のコミュニケーションの場となることだ。たんに書籍や雑誌を買うだけではない空間として、地域の人びとに認められなければならない。
 そのとき読者は傍観者だろうか。いや、違う。街の書店は、その街に住む人びとのものだ。
 (ながえあきら フリーライター、早稲田大客員教授)

 

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『読売新聞』2008.07.29
サイトで追加出来る辞書、発売へ/シャープ
大阪朝刊
 シャープは28日、内蔵した辞書に加え、インターネット上で新たな辞書などを購入し、追加できる電子辞書「ブレーン」=写真=を8月20日に発売すると発表した。
 シャープが内蔵済みの辞書・辞典とは別の約60種類をそろえた専用サイトを開設。利用者は1種類あたり数百円から数千円で買える。小説や漫画など約1万9000冊の有料電子書籍も用意。年内にも購入できる辞書などを約100種類に増やす。
 想定価格は、辞書など100種類内蔵タイプの「PW―AC880」が4万5000円前後、40種類内蔵の「PW―AC830」が4万円前後。

 

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『朝日新聞』2008年08月30日
朝刊
(情報フラッシュ)「タダ本」で名著が無料に ソフトバンクモバイル
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 ソフトバンクモバイルは、携帯電話のインターネット接続サービス「Yahoo!ケータイ」で、国内外の名著を無料で読むことができる「タダ本」サービスを、9月1日から始める。無料となる電子書籍は、夏目漱石の「坊っちゃん」やトルストイの「イワンの馬鹿」など約2千作品。最近の話題本などもサンプル版を無料で試し読みができる。

 

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『朝日新聞』2008年09月07日
朝刊
(Media Times Wide)漫画人気でも雑誌苦戦 娯楽多様化、休刊相次ぐ
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 メディアタイムズ ワイド 
 数々のヒットを生んだ週刊ヤングサンデーが7月、休刊した。ほかにも多くの有名誌が姿を消し、漫画誌全体の部数も減り続けている。漫画はドラマや映画の原作としても引っ張りだこで、「世界に誇る日本文化」の一つと称賛されることもあるのに、足元の漫画誌はどこも苦境を迎えている。(小川雪、見市紀世子、松村北斗)
 「あしたのジョー」のちばてつや、「うる星やつら」の高橋留美子、「タッチ」のあだち充。3月、週刊少年サンデー(小学館)と週刊少年マガジン(講談社)が開いた、来春の創刊50周年に向けた共同企画の会見。ライバル誌でヒットを飛ばした人気漫画家諸氏がひな壇に並んだ。
 出版社は公式に認めないものの、「異例の共闘の背景に両誌の苦境がある」という見方が業界で一般的だ。98年に450万部の部数を誇ったマガジンは現在、187万部。サンデーも82〜83年の220万部から半数以下に。企画の目玉として両誌は春から月2回、互いの人気作品を合わせた増刊誌「名探偵コナン&金田一少年の事件簿」を発行する。
 出版科学研究所(東京)によると、07年の漫画雑誌全体の推定販売部数は7億1700万部。ピークだった95年の13億4300万部から12年連続で減少。7月には「Dr.コトー診療所」「クロサギ」などヒット作を生んだ週刊ヤングサンデー(YS、小学館)が休刊した。コミックボンボン(講談社)、月刊少年ジャンプ(集英社)など著名誌も休刊が相次ぐ。
 ここ10年ほどで、大手でも漫画誌単体での黒字は数誌になったと言われる一方、単行本の売り上げは堅調だ。同研究所によると、05年に初めて単行本の販売金額が雑誌を上回り、差は拡大しつつある。
 漫画誌が苦境に陥った理由を、出版社側は「不況や少子化、娯楽の多様化に伴い、漫画にかける時間とお金が減った」。小学館の片寄聰執行役員は「かつては雑誌で人気が出て単行本が売れ、テレビ・映画化された。だが今は映像化で人気が出て単行本は売れるものの、その波は雑誌まで到達しない」と悩む。
 昨年11月に集英社が創刊したジャンプスクエアは、創刊号と第2号が50万部を完売し、業界に久々に明るい話題をもたらしたが、現在は38万部。茨木政彦編集長は「読者の保守化を感じる」という。読者が好きな絵柄や設定のものしか読まなくなっている、というのだ。講談社コミック販売部の菅間徹次長も「映像化などで話題になるとメガヒットを生むが、ほかの作品には手が伸びない」と語る。
 評論家の呉智英さんは「80年前後に若い男性向けの創刊が続き、漫画誌の細分化が進んだ。その結果、作品のラインアップから“雑”の魅力が失われ、読者は予想外の作品との出合いが減り、雑誌の活力が奪われたのでは」とみる
 ○急成長、携帯コミック
 期待を集めるのが、パソコンや携帯電話で読める電子書籍。調査会社インプレスR&Dによると、電子書籍の市場規模は05年度の94億円から07年度に355億円に拡大。とくに携帯電話で読める携帯コミックが23億円から229億円と急成長した。
 昨年12月、発刊1年足らずで休刊した無料誌コミック・ガンボでデビューした足立淳さんは休刊を知らされた日、ブログに「失業です。仕事ください!」と書いた。
 漫画家を目指して上京し、10年ほどイラストの仕事をして食いつないできた。「人間噂(うわさ)八百」をガンボ創刊から連載し、ファンがついてきた矢先だった。幸い、ブログを読んだ携帯コミック会社から声がかかり、同じキャラクターで連載を続けられた。連載は別の出版社で単行本にもなった。雑誌から携帯への変化を体現した形だ。
 YSの人気漫画だった「Dr.コトー」の作者、山田貴敏さんの過去の作品も、先月から携帯配信が始まった。「技術の進歩はすごい。ふきだしを後から出したり、揺れたり。アニメでもコミックでもない新しい展開がある」と期待する。
 他業種からの参入組が多かったが、大手出版社もここ数年、配信を本格化。講談社は900近く、集英社や小学館は約400作品を配信する。講談社の菅間次長は語る。「出版社はコンテンツメーカー。媒体が紙であろうとデジタルであろうと、対応できる態勢を作っておかなければ」
 ●部数減、編集者と作者の関係悪化
 「中途半端な形で終わることは、みなさんへの裏切りに他なりません」
 山田貴敏さんは、「YSが休刊を検討」と報じられた直後の5月19日、公式サイトで連載継続を表明した。
 山田さんは取材に応じ、「当時、連載終了も含めて考えたが、読者のためにも続けようと決めた」と説明。作品は、同じ小学館発行のビッグコミックオリジナルに移ることになった。「ただ休刊はもっと早く作家に伝えるべきだ。作家は命をかけて連載している。早く伝えるのは出版社として最低限の礼儀。物語の進行を考えると半年の猶予は必要だ。読者にも失礼だ」
 同じくYSの連載「鉄腕バーディー」は、ビッグコミックスピリッツに移る。作者のゆうきまさみさんも7月、「正直言って腹は立ててますよ俺(おれ)」と公式サイトにつづり、「いちど離れた読者に戻ってきてもらうためには、ネジ巻き直して、これまでの倍ぐらい頑張らねばならんわけだよなぁ」と続けた。
 日本の漫画は、編集者が漫画家と構想段階から打ち合わせを重ね、多彩な絵や面白い筋書きを生み出すのが特徴といわれる。だが、雑誌の部数減は、創作の現場、とりわけ編集者と漫画家の関係にも影を落としているようだ。
 今年6月、象徴的な出来事があった。週刊少年サンデーに連載され、テレビアニメ化された「金色(こんじき)のガッシュ!!」の作者雷句誠さんが、作品の原画5枚をなくした小学館に330万円の賠償を求める訴訟を起こした。
 「あまりにも編集者、出版社が漫画家を馬鹿にし始めた。これが訴訟へと動いた動機」と雷句さんは陳述書に書き、歴代の担当編集者の言動に問題があったと主張。提訴を機に、「漫画家は奴隷ではない」と、自分の体験をもとに不満をブログにつづる漫画家も現れた。
 漫画家いしかわじゅんさんは編集者主導の手法で漫画家が育ってきた意義は認めつつ、こう指摘する。「各誌とも部数が減るにつれて、確実にヒットが見込める作品しか掲載されなくなっている。編集者の権限が強まり、漫画家の創作意欲だけではどうにもならない。こうした状況も背景にあり、編集者への不満が噴出したのだろう」
 ■少年漫画の歴史
   59年「週刊少年サンデー」  
      「週刊少年マガジン」同時創刊
   68 「少年ジャンプ」創刊(69年に週刊化)
79〜80 「ヤングジャンプ」「ヤングマガジン」「ビッグコミックスピリッツ」など青年向け雑誌創刊相次ぐ
    95「週刊少年ジャンプ」新年号が653万部発行
    98「週刊少年マガジン」新年号が「ジャンプ」部数を超す
    08「週刊ヤングサンデー」休刊

 

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『朝日新聞』2008年09月20日
夕刊
30〜40代向けケータイ「本棚」 電子書籍サイト「朝日オトナの本棚」
[topic/com_t_thumbnail.php。]
 携帯電話のコンテンツサービス市場で、ここ数年成長を続けているのが電子書籍だ。
 当初は10〜20代の女性向けの恋愛ものなどの書籍、コミックが主要コンテンツだったが、最近では映画化されるようなベストセラー小説はもちろん、ビジネス書やハウツー本から少年誌のコミック、夏目漱石や芥川龍之介らの名作小説まで、多様なコンテンツがラインアップされている。
 新たなコンテンツの活発な登場によって、男性も含めた幅広い世代が電子書籍を楽しむようになってきている。こうした市場の盛り上がりを受けて、出版社側もさらに多様なコンテンツを投入するという好循環が生まれている。
 朝日新聞社が昨年夏から運営している携帯電話の電子書籍サイト「朝日オトナの本棚」=画面例=は、話題の小説やハウツー本から懐かしのコミックまで、豊富で多彩な「本棚」を設けている。
 また、目玉コンテンツとして「週刊朝日」や「AERA」の最新号の注目記事も提供。人気記事だけをピックアップして読むことも可能だ。
 30〜40代向けを意識した「朝日オトナの本棚」のような独自の切り口を持った電子書籍サイトはまだまだ増加傾向にある。携帯電話用の「本棚サイト」の成長ぶりから、しばらく目が離せない。

 

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『読売新聞』2008.10.27
[社説]活字文化の日 本との出会いを大切にしたい
東京朝刊
 きょうは文字・活字文化の日。読書週間もスタートする。
 この間、全国各地で、古本市や記念講演会、読書活動団体の表彰式など多彩な行事が行われる。
 本との出会いや、活字文化のあり方などについて、改めて考えてみる良い機会でもあろう。
 毎朝、学校の始業前の10分間、児童生徒が一斉に好きな本を読む「朝の読書」運動は、今年で20周年を迎えた。
 千葉県内の私立高校で始まったささやかな試みが、全国に広がった。現在では小中学校の約70%で「朝の読書」が実施されている。活字文化の将来にとっても明るい材料だ。
 しかし一方で、出版界は大きな転機を迎えている。
 インターネットの普及などを背景に、雑誌の売り上げが最近10年で大幅に落ち込み、出版社の経営基盤を大きく揺るがしている。
 今年に入って、講談社の「月刊現代」など、歴史のある月刊誌の休刊が相次いで発表された。
 電子書籍や電子雑誌の配信といったネットとの融合を模索する動きも強まっている。
 良書の地道な出版を続ける出版社もある。インドネシア現代文学の最高傑作と言われる小説「人間の大地」4部作の邦訳は、アジアを専門とする小さな出版社が刊行して、今年の読売文学賞の研究・翻訳賞を受賞した。
 情報過多の時代であればこそ、質の高い読み物が求められているとも言える。
 厳しい経営環境の中で、出版界の模索が続いている。
 昨年から注目を集めているのは無名の素人が専用サイトに発表しているケータイ小説だ。
 最近になって、86歳の作家、瀬戸内寂聴さんが、秘(ひそ)かにケータイ小説を書いてペンネームで発表していたことが明らかになった。
 「ケータイ小説が若者に読まれるのは魅力があるからで、それを無視してはならない」と瀬戸内さんは語る。
 日ごろは本を読まない若者たちも、ケータイ小説をきっかけに、本格的な文学作品に関心を向けるようになるかもしれない。
 「おもわぬ出会いがありました」??。公募の結果選ばれた今年の読書週間の標語である。
 古書店で見つけた小さな出版社の本でもいいし、インターネット上で出会った本でもいい。関心が向いた様々な作品に触れてみることで新たな発見がある。そんな読書の秋を楽しんでみたい。

 

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『読売新聞』2008.10.30
ドラマ「愛讐のロメラ」を携帯コミック化 サイト配信へ/ニッポン放送と扶桑社
東京夕刊
 ◆あすから電子書籍サイト配信
 ニッポン放送と扶桑社は、フジテレビ系で放送中の昼帯ドラマ「愛讐(あいしゅう)のロメラ」(月?金曜後1・30)を携帯電話向けに漫画化し、31日から「携帯コミック」として、電子書籍サイトを通じて配信する。ニッポン放送によると、放送中のドラマを携帯コミック化するのは初めてという。
 ドラマは、病院を舞台に、複雑な人間関係の中で起きる愛憎劇で、東海テレビ(名古屋)が制作している。
 携帯コミックは、26?30ファイルで完結し、1か月に4ファイルずつ配信する予定。1ファイルは漫画雑誌約24ページ分に相当し、1ファイル42円。携帯電話向けサイト「昼ドラ倶楽部」(http://hirudora.jp)などからダウンロードできる。過去の名作の携帯コミック化も考えているという。

 

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『読売新聞』2008.11.11
[せいかつナビ]電子書籍、サービス拡大 小説・漫画を簡単ダウンロード
東京夕刊
 ◆携帯向けオリジナル作品も 
 インターネットを通じてパソコンや携帯電話で本や雑誌を読めるサービスが充実してきた。料金を支払って作品や記事をダウンロードする電子書店や、有志のボランティアらが運営する無料のサービスなど様々なタイプを利用できる。(金田浩幸)
 ■355億円市場
 「インターネットメディア総合研究所」を運営するインプレスR&Dによると、2007年度の電子書籍市場の規模は355億円で、182億円だった前年度に比べて約2倍に拡大した。出版社が作品の電子化に力を入れ出したことなどが背景にあるという。
 電子書店としては国内最大級の品ぞろえがある「電子書店パピレス」の場合、ダウンロードできる書籍や雑誌は約9万点にも上る。小説やノンフィクションから漫画、洋書など様々なジャンルを網羅する。
 このほか、漫画の品ぞろえが充実していたり、携帯電話向け配信サービスを専門にするなど様々な電子書店が競い合っている。
 ただ、活字の文学作品などの場合、書店に並んだばかりの新刊本が電子書籍化される例はまだまだ少ない。
 電子書店のダウンロードサービスの料金は、実際の書籍の定価に比べて半額程度に設定されていることが多い。
 ■携帯向け8割
 インプレスR&Dによると、携帯電話向けは、05年度にはパソコン向けとほぼ同じ市場規模だったが、2年で約6倍に拡大し、07年度は、電子書籍市場全体の8割を占めるまでになった。
 市場が拡大するなか、既に出版された小説や漫画を電子書籍化するのではなく、携帯電話向けのオリジナル作品も多数生まれている。
 そうした作品のうちヒットしたものは「紙の本」となって出版されている。
 ■無料サービス
 有料の電子書店に対して、著作権が切れるなどした作品をインターネット上で無料で閲覧できるのが「青空文庫」などのサービスだ。作品名、作者名別に五十音で探す青空文庫に対して、「グーグルブック検索」では、検索語と一致する内容のある作品を探し出すことができる。
 また、ヤフーやMSNなどインターネットのポータル(玄関)サイトが、出版社と提携して雑誌の記事を読めるサービスを拡充している。掲載済みやオリジナルの記事をネット用に加工して提供したり、バックナンバーを全ページ読むことができるようにしたりするサービスも出てきた。

 

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『読売新聞』2008.11.17
IT駆使の公立図書館が便利に 手のひら認証、ネット貸し出し…
東京夕刊
 ◆カード不要、手のひら認証/24時間、ネットで貸し出し
 秋は読書のシーズン。もっと気軽に利用してもらおうと、情報技術(IT)を駆使し、使いやすさの向上を目指す公立図書館が増えている。(吉田昌史)
 「手のひらをお願いします」。職員がそう言うと、利用者は貸し出しカウンターに置かれた装置の上に、手のひらをかざして本を借りていく。茨城県の那珂市立図書館では、2006年10月の開館以来、ほぼ毎日こんなシーンが見られる。
 図書館は、貸し出し時に利用者カードを使って本人確認を行うのが一般的だ。しかし、那珂市立図書館は、全国の図書館で初めて、手のひらを本人確認に利用する、カード不要の貸し出しシステムを実現した。
 その狙いについて、小泉周司主幹は「手元に利用者カードがなくても、読みたくなったら、いつでも気軽に立ち寄れる図書館にしたいと考えました」と話す。
 指紋のように一人ひとり異なる手のひらの静脈パターンによる本人確認は、銀行の現金自動預け払い機(ATM)に導入済みの技術だ。静脈を流れる赤血球は特定の波長の赤外線をよく吸収するため、手のひらに赤外線を当てると、静脈の部分だけ反射が少なくなる。
 この性質を利用して静脈パターンを読み取り、データベースに登録されている約1万3000人の静脈パターンと照合、一致するデータがあれば本を借りられる仕組みだ。
 カード不要どころか、利用者が来館しなくても、24時間いつでも借りられる図書館が出現した。東京・千代田区立千代田図書館が07年11月に開設した「千代田Web図書館」で、同区在住、在勤、在学者を対象に、ビジネス書や語学教材など約3400タイトルの電子書籍を貸し出している。
 利用方法は簡単だ。自宅や職場のパソコンからインターネット上にあるWeb図書館のサイトに接続、読みたい電子書籍を選び「貸出」「読む」を続けてクリックすると、パソコンに電子書籍のデータが送られてくる。
 閲覧はモニターで行うが、著作権保護のため、データはパソコンに保存できず、印刷もできない。貸出期間の2週間が過ぎると、自動的に閲覧できなくなるので、返却を忘れることもない。
 千代田図書館の坂巻睦・広報チーフは「文字の大きさを自由に変えられるので、視力の弱い人も読みやすい。音声や動画の再生もでき、語学学習に便利です」と、ネット上の図書館の積極利用を呼びかけている。
 ◆ICタグで蔵書を管理
 膨大な蔵書の管理のため、無線で情報を読み取るICタグ(電子荷札)を導入する図書館も増えている。今年6月に移転・開館した東京・北区立中央図書館は、ICタグを蔵書全30万冊に張り付けた。狙いは、蔵書点検に伴う休館の廃止だ。
 利用者が求める本を確実に提供するには、蔵書が本来の書棚に納まっているかをチェックする蔵書点検が必要。同図書館は移転前、年1回4日間休館し、職員約20人が蔵書17万冊を手作業で点検していた。しかし、移転で蔵書を増やすのに伴い、機械を使って1時間当たり2万冊の本を点検できる「ミューチップ」と呼ばれるICタグを導入。蔵書点検は日常業務の中で行う方式に切り替えた。
 東京・府中市立中央図書館も、07年12月の移転・開館に合わせてICタグを導入した。無断持ち出し防止に威力を発揮しているほか、タグを活用した予約本の受け渡しシステムも始めた。
 専用の書棚に置かれた予約本の位置をコンピューターがICタグの電波で把握。書棚近くの機械に利用者カードを差し込むと、予約本の位置を示す案内票が発行されるとともに予約本のある棚のランプが点灯、職員を介さずに予約本を借りることができる。
 借りる本のタイトルを職員に見られたくない時もある。矢部隆之館長補佐は「利用者のプライバシー保護の向上につながります」と話している。

 

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『読売新聞』2008.11.19
シンポジウム「情報の海」 第2回 沈まぬ「図書館」丸=特集
東京朝刊
 ◆未来も「知」の案内人  
 IT(情報技術)が急速に進展する中、インターネット上の情報や書籍、新聞などマスメディアの針路を探る連続シンポジウム「情報の海」(東京大学情報学環、読売新聞社共催)の第2回が11月1日、東京・本郷の東京大学で開かれた。今回のテーマは「沈まぬ『図書館』丸」。国立国会図書館長の長尾真氏が、同館での資料デジタル化の取り組みを紹介し、出版界を巻き込んだ「電子図書館」の将来像を提言した。これを受けてパネリストが図書館を巡る問題点や、今後の課題について活発に意見を交わした。(敬称略)

 ■参加者
 ・国立国会図書館長               長尾真 
 ・凸版印刷文化事業推進本部部長         加茂竜一
 ・千代田区立千代田図書館長           田中榮博
 ・東京大学大学院教育学研究科教授        根本彰
 ・読売新聞編集委員(東京大学教養学部客員教授) 伊熊幹雄
 ■コーディネーター 
 ・東京大学大学院情報学環学環長         吉見俊哉

 《基調講演》 
 ◇長尾真氏 
 ◆共存可能な電子化を 
 日本中の人が国立国会図書館を利用できるようにするためには資料のデジタル化が必要だ。デジタル化し、オンラインで提供すれば全国どこからでも来館者と同様に利用できる。
 約3400万点の所蔵資料のうち、明治、大正期の書籍、国会の議事録などのデジタル化を行った。図書館は転換期にある。「紙の時代」から「電子化の時代」に移りつつある。
 膨大な情報が発信され、あらゆる情報、知識がネット上に存在している。図書館の紙の本が「実」の世界なら電子情報は「虚」の世界だ。「実」の世界の知識の集積を積極的に「虚」の世界に移すということが電子図書館の目指すところだ。
 インターネット上の情報をいかに集めるかも国立国会図書館の課題だ。著作権法上、許諾を得ないとウェブサイトの情報は集められない。国や地方公共団体、国立大学などのサイトだけでも情報収集の際の許諾は不要になるよう、来年の通常国会での法改正を目指している。
 ネット上の膨大な情報を集めてさまざまなことをやろうとしているのがグーグルだ。グーグルは紙の世界にも入ってきて、本をデジタル化して、利用させるということまでやっている。これは図書館に対する重大な挑戦であるとも言える。図書館も真剣に考えなければ、存在価値がなくなる危険性が出てくる。
 今日の出版物には必ずコンピューターに元の情報が存在する。図書館の立場からすると、それを「電子納本」で提供してもらうのが望ましい。図書館で出版物をデジタル化する「無駄」も省けるし、デジタル情報があれば、情報処理技術を駆使して書誌情報の付与など図書館の作業を自動化できる。関連情報へのリンク付けの自動化も可能になる。
 図書館員の仕事は将来どうなるか。従来の単純な作業から解放されて、もっと知的な内容に関するコンサルティングサービスに入っていくだろう。
 ただ、理想の電子図書館を目指すには多くの問題もある。誰でもパソコンで図書館の書籍を読めるようになれば書店で本を買わなくなり、出版業が成立しなくなる危険性がある。図書館がデジタル化された書籍を自由に読ませることに出版社は強い危機感を持っている。
 来館せずに利用できるというのが電子図書館の理想だ。そのためには著者や出版社が不利益をこうむらない仕組み作りが課題だ。例えば利用者が電子図書館にアクセスし、電子納本された情報を読んだら、図書館までの交通費程度の料金を払い、出版社や著者の収入になるといったビジネスモデルが検討されるべきだ。
          ◇       
 長尾真(ながお・まこと)1961年京都大学大学院修士課程修了。京大総長を経て京大名誉教授。2007年4月から国立国会図書館長。97年紫綬褒章受章。08年知的情報処理分野の研究などで文化功労者。72歳。

 ◆電子書籍の提供開始/田中氏 文化財もデジタル化/加茂氏 付加価値与える工夫/根本氏 ネットとの融合推進/伊熊氏 
 加茂 凸版印刷ではこの20年間で印刷のデジタル化が一気に進んだ。文字から画像へと広がり、最近は文化遺産など立体物のデジタル化も増えてきている。
 バチカンの教皇庁図書館のプロジェクトでは、特殊なスキャナーを使って、何度も上書きされた羊皮紙の文字の解析を進めている。また、古墳の中の立体形状を再現したり、北京の故宮博物院と共同して故宮の建物と文物を3次元計測と画像処理を施してハイビジョンシアターとして公開している。アーカイブ化した情報は印刷だけでなく、ネットにも公開するようになった。
 田中 千代田図書館は公共図書館として初めて今年7月から電子書籍などデジタルコンテンツも扱うウェブ図書館のサービスを始めた。千代田図書館の最大の使命は、官庁街や神保町などの古書店街、大学、美術館、博物館を抱える千代田区の特異性を生かして各機関と連携することにある。地場産業ともいえる出版業界と事業展開し、沈滞気味の活字文化の活性化に貢献できればと考えている。
 購入する電子書籍は、図書館と出版社の間にある取次店が著作権処理した電子データだ。懸念される著作権や不正コピーの問題は起きない。こうした仕組みがほかの公共図書館や大学の図書館に広がっていくことを願っている。
 根本 図書館司書の資格取得者は年間1万人を超すが、常勤で司書に就職できるのは数十人しかいない。日本の社会で、情報というものがこれだけ注目されている時代に図書館がきちんと評価されていないことを憂慮する。
 知の世界ではインターネットの情報は、バラバラに蓄積したものであって、学術的評価のプロセスを経ていない。学術に限らず、評価の高い情報はネットの中にはなく、お金を払って買うものかもしれない。図書館は単に情報を蓄積しているだけでなく、そこに付加価値を与えている。資料を整理し、データベースを作るなど、さまざまな工夫を凝らしている。
 伊熊 旧来型メディアである図書館と新聞は、インターネットの挑戦を受けている。フランス国立図書館はグーグルの挑戦を正面から受け止め、フランスの書籍を次々にデジタル化している。欧米の図書館、大学でもネット図書館への動きが加速している。
 デジタルメディアを推進しているのは、実は既存の図書館であることを忘れてはならない。知の案内人としての図書館や旧来のメディアに対する信頼性は、まだまだ損なわれてはいない。既存のメディアがネットとの融合の推進役として機能していけばいいのではないか。
 長尾 世の中に発信された情報、知識は、パブリックなもの、人類共有のものである。一方、知識を創造している著者や出版社などは所有権を持ち、ビジネスにつながっている。この二つのバランスを、どう調整していくのか。
 また、新しい世代が過去の知識をいかに活用し、新しい創造につなげていくのか。図書館、ネット社会の果たす役割について議論を深めたい。
 根本 グーグルは世界中の蔵書をデータベース化し始めている。アメリカでは公共性があれば著作権のあるなしにかかわらずデータベースに入れていい、との考えがある。問題もあるが、どんどん蓄積して、どこからでも検索可能になることの意味は大きい。
 伊熊 パブリックの概念がだんだん変わってきて、情報の利用者と発信者の垣根もなくなりつつある。利用者参加型の発信が広まる中で、そこにどんな利用基準を保っていくのか、最終的には核となる推進役が必要になると思う。
 田中 千代田図書館のウェブ図書館では電子書籍を読んでいる利用者が途中で、その本を購入したいと思えば、出版社にアクセスできるルートを作っている。図書館の利用者か出版社のいずれか一方にだけサービスすることを、われわれは目指していない。
 加茂 博物館や図書館、美術館などが個別に蓄積してきたデータが統合されて、近い将来、膨大な「デジタルミュージアム」が登場するかもしれない。そうなると、現在の司書や学芸員が受けている教育では対応できなくなるかもしれない。

 ◆公文書は紙で保存 情報評価の仕組み必要 
 会場から ウェブ上には政府の情報もどんどん出てきている。出版物でない公文書も保存していくべきなのか。
 長尾 公文書は電子的に作られても、最後は紙で残すことになる。電子的なものは内容を変えられるからだ。出版物でなくても、集められるものは徹底的に集めるのが、図書館の使命だと思う。
 会場から ネット情報の評価については誰がどういう役割を担うのか。
 長尾 大きな問題だ。書物には出版社が著者の考え方にコメントを出し、著者をうまく導いていく過程がある。これが、ある種の評価になっている。しかし、ネットでは著者が好きなように書いている。信頼性に差が出る。出版社の存在価値は永久に残っていくと思う。
 根本 情報の評価プロセスの仕組みを作る必要がある。図書館だと、司書が書評を書く訓練などを通して評価プロセスを作り、外部に示すことで、反応を得る仕組みが考えられる。

 ◆第3回は「新聞という船」
 第3回「『新聞』という船」は12月13日、東京大学で開催され、ジャーナリストの立花隆氏(東大情報学環特任教授)と滝鼻卓雄読売新聞東京本社会長が基調講演を行う。参加申し込みは、http://www.yomiuri.co.jp/info/umi/へ。締め切りは11月29日。

 

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『読売新聞』2008.11.23
[電脳明晰]名作小説、無料で読む
東京朝刊2部
 読書の秋。図書館や書店に出かけなくても、パソコンの「青空文庫」なら、手軽に電子書籍が楽しめる。約7900点もの小説がすべて無料。専用ソフトを入れるだけで、いつでも、どこでも名作が楽しめる。縦書きで表示もできて読みやすい。(笠原大輔)
 《STEP・01》
 ◆「青空文庫」へアクセス 
 「青空文庫」のサイト「http://www.aozora.gr.jp/」にアクセス。著作権切れの作品など約7900点の小説があり、自分のパソコンにダウンロードして読める。作家別と作品タイトル別に検索できる。
 読みたい小説が見つかったら、作品紹介の「図書カード」に移動する。「ファイルのダウンロード」欄には、最大で4種のファイルがある。単純なテキスト、ブラウザーで見られる「XHTMLファイル」、無料専用ソフトをダウンロードして読む「エキスパンドブックファイル」と「TTZファイル」のいずれかがある。主にボランティアが作業してファイルを作成している。
 《STEP・02》
 ◆縦書きで読みやすく 
 せっかくだから、無料の専用閲覧ソフトを使って、縦書き表示で楽しみたい。「T?Time」は、読みやすい書体で表示してくれ、目次やしおり機能もある。ダウンロードサイトhttp://www.voyager.co.jp/software/index.html」で「T?Time」の文字をクリック。次のページで「Windows」をクリックし、名前とメールアドレスを入力してダウンロードする
 作品に、T?Time向けのTTZファイルがある場合は、それを縦書きで読むと、普通の読書に近い感覚が得られる。そのファイルがない場合は、普通のテキスト形式を縦書きで読むこともできる
 《STEP・03》
 ◆携帯電話や「iPod」でも 
 ページを進めるには、キーボードにある左右を向いた矢印のキーを押すだけ。マウスでページ画面の左右の端をクリックしてもいい。画面の文字が小さければ、大きくしたり、文字や背景の色を変えたりと好みの設定もできる。字間や行間、段組みなど細かな表示設定も可能だ。
 読書を途中でやめる時は、「付箋(ふせん)を貼(は)る」機能で、ページを記録しておけば、次からスムーズに同じページを開ける。
 専用の閲覧ソフトを入れれば、携帯電話やiPodでも小説が楽しめる。作品は徐々に増えているので、通勤のお供にするのも楽しい。
 《POINT》
 ◆著作権切れなど7900点 
 1 著作権切れや掲載許可を得た小説など約7900点の名作が、すべて無料で見られる。
 2 無料の専用閲覧ソフトをインストールすれば、わかりやすい縦書きの表示で読める。
 ◆どこでも美しい書体で 
 ◎iPhone 8GB
 3.5インチの画面が大きくて、見やすいアップルコンピュータの携帯電話。英語版の無料閲覧ソフト「Stanza」をインストールすれば、青空文庫内の小説が読める。横書き表示だが、見やすい書体で気軽に読める。音楽や動画を持ち運んで楽しむこともできる。
 アップルコンピュータ 実勢価格7万円前後
 ◎電子書店パピレス
 400社以上の出版社から集めた小説やマンガ、雑誌などのコンテンツが9万種以上もそろう有料の電子書籍サイト。無料サンプルもある。URLは、http://www.papy.co.jp/
(YOMIURI PC編集部)


*作成:植村 要
UP: 20100706  REV:
情報・コミュニケーション/と障害者  ◇視覚障害者と読書  ◇電子書籍  ◇テキストデータ入手可能な本 
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