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電子書籍 2002

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■新聞記事



『読売新聞』2002.01.07
和算資料をCD化、好評 前橋工大助教授の奥村氏、5年かけ電子画像に=群馬
東京朝刊
 ◆江戸末期の研究家 中曽根宗よし氏の蔵書
 江戸時代から明治時代にかけてのわが国独自の数学「和算」の書籍や資料などをコンピューター用の画像データとして収録したCD―ROMが刊行され、専門家向けとしては異例の売れ行きを見せている。榛名町内の民家に伝わる資料を手軽に閲覧できるよう、前橋工科大情報工学科の奥村博・助教授が五年がかりで電子画像化を進め、監修した。
 このCD―ROMは「中曽根宗よし(むねよし)・和算書集成」(岩波書店)。宗よし(1824―1906)は、江戸末期から明治にかけて活躍した本県の著名な和算家で、上州ゆかりの関孝和の流れをくむ。和算を研究し、地元を始め全国から和算に関する書籍や資料を集めたほか、自らも「測量術大全」などを著した。元首相の中曽根康弘氏も縁者の一人だという。
 その蔵書は代々受け継がれ、現在は五代目に当たる榛名町下里見の中曽根慎麓さん(69)が所有。まとまった和算の資料として研究者の間ではよく知られた資料だという。
 奥村助教授は、以前から幾何学などで独自の発達をした和算に関心を持ち、これまでも和算の問題をヒントに、定理を発展させた論文も発表。一九九六年ごろから、慎麓さんから資料を数点ずつ借りては、パソコンのスキャナーで電子画像化を始めた。資料は書籍や巻物、短冊状のものと様々。幾何学の問題を中心に、天文、暦学、測量などの資料も含む三百点以上、電子化した画像は約一万五千にも上るという。
 自分の研究のために始めたものの、二年ほど前に岩波書店からCD―ROM化した電子書籍としての刊行の話があり、所有者の慎麓さんも「貴重な資料を今の時代に合った方法で公開すれば先祖も喜んでくれるだろう」と快諾。十一月十五日に発売された。
 CD―ROM六枚組に解説書付で九万五千円と高価なこともあり、当初は百部だけの発売だったが、注文が相次ぎ、十二月に入ってさらに百部を“増刷”した
 奥村助教授は「ほとんどは実用の役に立たない高等な算術の問題。理数離れが指摘される現在では授業や教科書はやさしい方に向かっているが、その対極にあるようなこうした和算の課題はかえって解こうとする好奇心をかき立てるのではないか」とも話している。

 

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『読売新聞』2002.03.12
「電子ペーパー」開発本格化 厚さ1ミリ以下、「読書端末」実用化に期待
東京朝刊
 ◆丸めてもOK 書き換え、持ち運び自由
 「紙のような電子ディスプレー」の開発が米国で始まって三十年。国内でも様々な取り組みが本格化してきた。その一つ、凸版印刷は、他社に先駆けて、厚さ〇・九ミリと薄く、曲げることも可能なモノクロモニターの量産計画を発表した。まずは、携帯電話やPDA(携帯情報端末)向けに製品を供給する計画だが、将来的には多くの競合企業と同様、手軽に持ち運べる電子出版用端末などをにらんでいる。(溝井守)
 電子ペーパーは、軽く、折り畳めるという紙の特徴に加え、書き換えが自由というディスプレーの特徴を併せ持つものを理想として、一九七〇年代から米国などで研究されてきた。狙いは電子出版分野。これまでも液晶モニターを使った読書端末が開発されてきたが、ガラス基板の重さやコントラストの低さなどから、あまり普及していない。
 凸版印刷が採用したのは、提携先の米国イー・インク社が開発した技術。白、黒の粒子が入った小さなカプセルに電圧をかけ、粒子操作することでモノクロ表示させる。ガラス基板が必要だった液晶パネルに対し、表面にプラスチックの板を使うことで、軽く、柔軟なパネルになった。
 コントラストが強く、電源を切った後もカプセル内の粒子はそのままの形でとどまるので、表示画面が残るのが最大の特徴だ。
 同社は、年内に生産に入るとともに、数年内に基板をさらに薄くしたり、カラー化を図りながら、本格的な電子出版向け端末の実現を目指すという。
 「電子ペーパー」「デジタルペーパー」などメーカーによって呼び方は様々だが、軽く、曲がるディスプレーはここ数年、国内各社が取り組んでいる。
 大日本印刷は、ガラス基板に代わって樹脂フィルムを使うことで、厚さ〇・二五ミリの有機ELディスプレーの試作に成功。フィルム内の素材が発光するため、コントラストが非常に高く、屋外でも見やすい。ただし、消費電力が大きく、電源を切れば見えなくなる。
 同様の方式を開発しているパイオニアは、洋服に取り付けたディスプレーに文字情報や動画などのコンテンツを表示させるほか、洋服の色や柄を表示させることも提案している。
 このほか、富士ゼロックスなど多くのメーカーが、トナーを静電気で操作し、画像や文字を表示する方式などに取り組んでいる。
 これらが本格的に商品化されるのは早くても数年先だが、パソコンなどに漫画などのコンテンツを配信しているイーブックイニシアティブジャパンの鈴木雄介社長は「曲がる素材だったら、画面が割れないので本や雑誌と同じ使い勝手の読書端末が出来そうだ」と期待を寄せている。
 また、文字情報をパソコンなどで読みやすく表示するソフトをつくるボイジャーの萩野正昭社長は、「携帯電話やパソコンに加え、今度は電子書籍を読むための端末を持つのはこっけい。生活スタイルから考え直さないと」と指摘している。

 

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『朝日新聞』2002年03月25日
週刊アエラ
紙を超えるか電子ペーパー 来春、日本で初のモバイル商品発売へ
 自由に書き換えられる「電子ペーパー」が実現する。
 本屋も本棚も消える時代が来るのだろうか。
 (編集部・久保田裕 写真・山田旬)
 一昔前、「OA化を進めれば紙の消費が減って、ペーパーレス・オフィスが出現する」と盛んにいわれたことがあった。だが実際は、インターネットのホームページなどのプリントアウトが増え、デジタル化するほどオフィスは紙であふれかえる結果となっている。だがこの状況も、来年には少し変わるかもしれない。何度でも書き換え可能な新しい紙「電子ペーパー」が登場するからだ。
 米国のベンチャー企業「イー・インク社」と共に、電子ペーパーの開発を進めている凸版印刷(東京)で試作品を見せてもらった。見た目は紙というよりややプラスチックっぽく、プリンターなどで使う厚めの光沢紙の感じに近い。黒い活字部分と白い地のコントラストは普通の新聞よりも高く、文字は読みやすい。これは厚さ0・9ミリで曲がらないが、0・3ミリと一般的な紙の厚さ0・1ミリに近い電子ペーパーや曲げられる試作品もすでにできているという。
 凸版印刷電子ペーパー事業化プロジェクトの壇上英利課長によれば、電子ペーパーの仕組みは単純だ。「前面板」と呼ばれるペーパーの表面には、約70ミクロンという髪の毛の太さほどの透明の球が一面に敷き詰められている。各球の内部はオイルで満たされ、そのなかにマイナスの電荷を帯びた微細なカーボンの黒球と、プラスの電荷を帯びた酸化チタンの白球が無数に浮いている。ペーパーの裏にある基板からマイナスの電圧をかけると黒球は反発して表面に浮かび上がり、上から見るとそこだけ黒く見える。逆に、プラスの電荷をかければ白くなる。この黒白模様を利用して、文字や図形を描く仕組みだ。
 ○反射光で読む省エネ
 文字は一度書くとしばらく消えない。「昨年7月に電源を外したまま」という電子ペーパーを見せてもらった。表面が多少黒ずんで見えるが文字は鮮明なまま。普通の紙と同様に反射光で読むのでバックライトがいらず、電力を消費するのは書き換えの一瞬だけだ。従来の液晶に比べて100分の1程度の消費電力ですむという。
 ペーパーにかける電圧を微妙に調節することで中間色も16階調表現できる。ペーパーの上にカラーフィルターを被せることでカラー化も可能だ。画面の書き換えは、1秒間に6回ほどできる。動画はさすがに無理だが、パラパラ漫画程度なら表現可能だ。価格はまだ確定していないが、「液晶ディスプレーの半額程度になるのでは」と期待されている。凸版印刷は電子ペーパーの前面板の生産ラインを今年後半に立ち上げ、2005年には月産150万枚体制とする計画だ。
 イー・インク社の創設者であるジョセフ・ジェイコブソン博士は、電子ペーパーの最終発展形として「ラストブック」という概念を提唱している。電子ペーパーを数百枚束ねて、本の格好に綴じたものだ。ラストブックの中身を読みたい本の内容に随時書き換え、たった一冊の本で世界中の本を読めるようにしようという、文字通りの「最後の本(ラストブック)」構想だ。
 ○「紙とは棲み分ける」
 凸版印刷の壇上課長は、
 「紙と電子ペーパーは棲み分けるので、紙や印刷業が消えることはない。凸版印刷が電子ペーパーに取り組むのは、NTTが携帯電話を始めたのと同じこと。自分の市場をやがて取られてしまうのならば、その前に自らの手で、ということです」
 と話す。だがこんなラストブックが普及したら、本の印刷や製本といった仕事は確実に減るだろう。売る本が1冊だけになってしまったら、全国に約2万5千店ある書店もそのままではすまないはずだ。出版不況にあえぐ出版業界からは反発も予想される。
 一方、消費者側からみると「ラストブック」の利点は多い。印刷や製本のほか取り次ぎや書店も必要なく、現在約4割といわれる返本のリスクも消えるので本の定価が劇的に安くなる可能性がある。
 「7割引きにもできるのでは」という出版関係者もいる。書籍がデジタルデータで配布されるようになれば絶版もなくなり、注文してから届くまでイライラして待つこともなくなる。住宅が狭い日本では、自宅から本棚を消せるというだけでもその意義は大きい。
 違法コピーによる著作権問題も起こりそうだが、メディア史研究家の永瀬唯氏は、
 「ダウンロード販売が始まっている音楽CD業界と同様、プロテクトをかけて売る形となるだろう」
 とみている。
 日本人は1人当たり年に250キロ近い紙を消費している。イー・インク・アジア太平洋地域代表のくわ田良輔^氏は、
 「紙の消費量が減らせれば、地球環境にも優しいはず」
 と環境面からみた電子ペーパーの利点も強調する。価格やペーパーの柔軟性などの問題から、いまの技術ではラストブックの実現は困難だが、凸版印刷の壇上課長は、
 「試作品ならば2010年くらいにはできるはず」
 という。
 ○国内大手家電が発売へ
 問題は電子ペーパーや「ラストブック」がどこまで普及するかだ。液晶端末で本を読む電子リーダーは、90年代後半に欧米や日本で数多く試みられたが、いずれも普及しなかった。本好きでも高価な電子リーダーをわざわざ買ってまで読みたいとは思わなかったためだ。
 『本の未来はどうなるか』(中公新書)を著した歌田明弘氏は、
 「ラストブックは書籍ではなく、定期購読者に専用端末を配布するといった形で、雑誌や新聞から普及が始まるのではないか」
 とみる。ラストブックならぬ「ラスト新聞」がもし生まれたら、朝夕の宅配はなくなり、新聞はダウンロードして読むという時代が来ることだろう。
 電子ペーパーを使う携帯端末は、来年、日本から生まれそうだ。来春から夏にかけて、国内の大手家電メーカー数社から、本のように見開きで使うブック形式の電子ペーパーやA4判サイズの大型電子ペーパーなどが、相次いで発売される予定となっている。ほぼ同時に、携帯と組み合わせてサブディスプレーとして使う電子ペーパーの試作品も公表される見込みだ。
 どこまで普及するかの見通しはまだつかないが、来年が一般消費者が手に取れる携帯電子ペーパーが現れる「電子ペーパー元年」となり、そしてラストブック出現への第一歩を踏み出す年となることは間違いなさそうだ。

 

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『朝日新聞』2002年05月05日
朝刊
ヘミングウェー全作品を電子ブックで発売へ(短信)
 「老人と海」などで知られる文豪ヘミングウェーの全作品が、8月からインターネットで「電子ブック」として発売される。米出版社サイモン・アンド・シャスターが発表した。同社によるとネットに載るのは長編、短編合わせて23冊。1冊をダウンロードする価格は9ドル99セント。(共同)

 

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『読売新聞』2002.05.07
電子書籍、進む端末 東京国際ブックフェア2002開く
東京夕刊
 五百四十一社が出展し東京・有明で、このほど開かれた本の見本市「東京国際ブックフェア2002」。四日間で過去最多の四万二千五百人余の来場者を集める中、ひときわ目を引いたのは「紙でなく電子の本が明日の出版」というコピーに象徴される電子書籍関連の展示だった。
 手軽に電子書籍を持ち歩けるモバイルの道具として活用できるPDA(携帯情報端末)は、カシオ、シャープなどの最新機種が並んだ。オンライン上の電子書店から、書籍の情報を読み込み、手のひら大の端末で閲覧する仕組みだ。
 一台で百冊もの電子本を収容でき、絶版、返品など紙の本が抱える流通上の問題点を解決できる点からも期待されており、メーカーなどと共同ブースを出した電子書店「PDABOOK.JP」の佐々木隆一さんは「携帯端末の性能の向上や普及が最近目ざましく、電子書籍は三年後に現在の十倍の二百億円規模の市場になりうる」と予測する。秋からはNTTドコモが参入するなど、音楽配信に続く有望分野として成長が見込まれる。
 だが、コンピューター画面での読書には抵抗のある読者が多いことも事実。その意味でも注目されたのが、凸版印刷のブースで紹介された次世代ディスプレー「電子ペーパー」。電源を切っても文字が消えないなどの長所を持ち、一見紙と変わらない鮮明で薄い表示画面(〇・九ミリ以下)に驚く見学者も多く、会場の話題をさらった。同社ではこの技術を持つ米社と提携し、来年春にも商用出荷を始めるという。
 携帯電話での小説連載を始めた新潮社が電子出版のコーナーに絞って出展するなど、既成の出版社の関心の高さも伝わった。話題性だけが先行しがちだった電子書籍だが、端末の進化で「紙でない本」の普及に弾みがつきそうだ。(佐)

 

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『朝日新聞』2002年05月15日
朝刊
岩波文庫、パソコンでどうぞ 岩見沢市図書館 /北海道
 岩見沢市の市立図書館で、岩波書店の岩波文庫をパソコン上で読めるサービスが6月上旬から始まる。夏目漱石、森鴎外の代表作など109タイトルが画像データとして提供される。事典などのCD−ROMを閲覧できる図書館はあるが、「まとまった冊数の電子書籍を無料で読める図書館は初めてではないか」(岩見沢市)という。
 電子書籍サービスの「イーブック イニシアティブ ジャパン」(東京都)が電子書籍化し、ゲームソフトの「ハドソン」(札幌市)と閲覧システムを共同開発した。同市は光ネットワークが整備されており、学校などの公共施設や一般家庭から読むことも技術的には可能だという。
 冊数、利用者数に応じて同市が岩波書店に年間利用料を払い、同社が閲読頻度に応じて著作権料を支払う。同社の大塚信一社長は「ビジネスとして引き合うかどうかは当面考えていない。IT(情報技術)化の特性を生かした地方発の企画に賛同した」と話す。いずれ500タイトルに広げる予定だ。
 平凡社の東洋文庫も、著作権者の許諾が得られ次第、同市でサービスを始める。

 

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『朝日新聞』2002年06月16日
朝刊
「年鑑&書籍総目録」重厚データを一体化(知りたい読みたい)
 1年間に発行された新刊書のデータを収録する『出版年鑑』(出版ニュース社)と、現在購入可能な本を網羅する『日本書籍総目録』(日本書籍出版協会)。書籍に関する2大データベースが02年版で初めて一体化して刊行された。
 『年鑑』は51年創刊。新刊書目録を中心に、出版社名簿、出版界の動向を収め、近年は四六判3巻で刊行していた。77年創刊の『総目録』も01年版はB5判で4巻という大冊。総ページ数は1万に迫る。ともに図書館や書店が主要な顧客であることから一体化販売に踏み切った。
 02年版では、『年鑑』はB5判2巻となり、電子書籍、オンデマンド出版の目録を追加。61万点の書籍データを収める『総目録』は冊子印刷を中止し、00年版から添付していたCD−ROM版のみを発行する。3万5千円。問い合わせは03・3262・2076(出版ニュース社)。

 

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『読売新聞』2002.06.16
[出版あらかると]「2002年版出版年鑑+日本書籍総目録CD―ROM」刊行
東京朝刊
 歴史ある二つの出版データベースを合体させ、3巻セットにした『2002年版出版年鑑+日本書籍総目録CD―ROM』(出版ニュース社発売、35000円)が刊行された。日本書籍出版協会・出版年鑑編集部編。
 流通中の書籍61万点を網羅した「日本書籍総目録」は、今年から書籍版を廃し、CD―ROM版に一本化。2500社の出版社サイトとリンクする。
 また、昨年の新刊書目録、統計、名簿などを収める計約3500ページの「出版年鑑」は、従来の四六判からB5判に判型が拡大し使いやすくなった。電子書籍、CD―ROM出版物、オンデマンド出版の各目録を新たに加え、データベースとしての価値を高めたのも特色。新聞、雑誌に掲載された書評リストも追加された。

 

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『読売新聞』2002.06.19
全国初、岩見沢市が図書館で電子書籍サービス=北海道
東京朝刊
 岩見沢市は十八日、市立図書館のパソコン上で本が読める電子書籍のサービスを始めた。同サービスを展開する自治体は、全国で初めてという。
 岩見沢市は五月、岩波書店(本社・東京)や電子書籍の製作・販売会社「イーブックイニシアティブジャパン」(同、イーブック社)などと提携し、岩波書店発行の書籍データを利用することにした。市民は図書館内のパソコンを使って無料で閲覧でき、市は作品の著作権料を含めた一年間の使用料をイーブック社に支払う。

 

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『読売新聞』2002.06.25
ネット漫画 往年の名作も、最新連載も 気軽に買えて、かさばらない 
東京夕刊
 ◆本より割安
 自宅にいながら、インターネットで好きな漫画を選んで読む「ネット漫画」が充実してきた。いまとなっては入手困難な往年の名作や最新の人気連載が読めたり、マンガ喫茶に立ち寄るような気軽さを売り物にするサイトも登場し、いろいろな楽しみ方が広がっている。(津久井美奈)
 イーブックイニシアティブジャパンが運営する「10daysbook」は、名作や絶版本を多数そろえている。いまだに人気の衰えない手塚治虫の全集三百八十二巻をはじめとする千六百冊の漫画や岩波文庫五百冊など、約二千冊がそろう。先月からは、JR成田エクスプレスの車内で、韓国漫画など五十冊を配信するサービスも始めた。
 まず会員登録して、クレジットカードなどで購読料を支払ってダウンロードすれば、サイトにある閲覧ソフトを使って読むことができる。漫画一冊が三百円前後で、内容を知りたい人のために、“立ち読み”ができる作品もある。ちなみに、一番人気は手塚作品でも屈指の名作「ブラック・ジャック」だそうだ
 「本の保管場所をとらず、長期保存が可能で、運搬コストもかからないのが電子書籍の長所。たくさんの種類の漫画を多くの人のために用意しても、コストがかさまない」と鈴木雄介社長。「ブロードバンドの普及と液晶モニターの品質向上で、吹き出しのルビまで読めるようになってきた。今後は、ネット漫画であることを感じさせない、『いつでもどこでも買える普通の漫画本』にしていきたい」といい、本型の専用端末の開発にも熱心だ。
 「まんがの国」は、講談社、小学館、白泉社、秋田書店、学習研究社の五社と、富士ゼロックスの子会社アクセスチケットシステムズが運営。五社の人気連載漫画の最新作とバックナンバーが、一話五十円前後で読める。
 ア社の青沼英一経営管理部長によると、「利用者数は月に約四万人。当初は、近くに書店やコンビニエンスストアが多くない地方や海外の人がアクセスしてくるだろうと予想していたが、男性漫画を買いづらいという主婦や、逆に少女漫画を買いにくい男性、うっかり雑誌を買い逃した人などの利用が意外に多い。単行本を買う前のチェックに使う利用者もいる」。
 講談社の月刊オンライン雑誌「e―manga」は、マンガのコマ割りを生かしてコマごとに見せる。音や色を入れたり、絵に動きまでつける見せ方は、インターネットならではだ。毎月十七作のオリジナル作品が読める。定期購読は月五百円、バックナンバーは週五百円だが、会員でなくても一話一日二百円で読め、無料の作品もある。アクセスは月約十万件。
 これらのサイトの多くは、ダウンロードしてから読む方式なので、その間じっと待っていなければならない。価格も、書籍より大幅に安いとはいえない。
 そこで、待たずに安く読みたい人をターゲットにしたのが、四月末に始まったライコスジャパンの「Lycosコミック」。マンガ喫茶感覚をうたっており、サイトにアクセスすれば、すぐにページをめくる感覚で読み始められる。価格も一冊百円。作品は「サイボーグ009」全二十九巻など石ノ森章太郎作品五十冊とまだ少ないが、来月には、さいとう・たかを作品などが加わる。
 ヘビーな愛好家だけでなく、本を買うほどではないささやかな漫画好きにも、こんなネット漫画が広まっていくのかもしれない。

 

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『読売新聞』2002.07.28
変わる図書館 道内をリポート=北海道
東京朝刊
 夏休みを迎えた。海へ山へと楽しい日々を過ごす子供たちにとって、宿題対策の強い味方になったり、読書へのアドバイスをしてくれたりするのが地域の図書館だ。二十一世紀を迎え、変わりつつある道内図書館の姿をリポートする。(山脇幸二)
 ◇岩見沢 電子書籍
 ◆作品限られ、周知不足も “定着”には時間必
 岩見沢市立図書館が電子書籍の閲覧サービスを始めて約一か月。同市内の無職畠中一成さん(63)に“体験読書”をお願いした
 畠中さんは、電子書籍の閲覧サービス開始を知ってはいたが、利用するのは初めて。畠中さんは森鴎外の「阿部一族」を選ぶと、パソコンの画面上に文庫本の表紙からあとがきまで、そのままの姿で映し出された。操作手順を確認しながら数ページ目を通した。
 十五インチの画面で見開き二ページを出してみると、一つの文字が三ミリ程度。目を細めながら画面を見ていた畠中さんは「字が小さすぎる」と一言。文字の大きさを調整して、文字を拡大した。すると、今度はページが画面に収まらず、ページを少しずつずらしながら読み進む。
 三十分ほど読んだ畠中さんは「字を大きくすると動かしながら読まないといけないので、ちょっと面倒。紀行文やガイドブックなど写真や絵の多い本が読めるようになったら、もっと利用したい」と話した。
 同図書館の視聴覚ブースには、パソコンが七台置かれている。市民は無料で閲覧できるが、今のところ読めるのは、芥川竜之介や二葉亭四迷ら日本文学の五十五作品に限られる。
 一か月間の利用件数は、六十六件(十八日現在)。初日の先月十八日は十九件だったが、その後は一日平均四―五件にとどまっている。一人平均で約三十分の利用だという。アクセスが最も多かったのは、二葉亭四迷「浮雲」の十三件。次いで、森鴎外「阿部一族」の十件、田山花袋「田舎教師」の九件だが、どれもジャンル別の一覧表の最初にある作品だ。
 電子書籍の導入に携わっている市企画財政部の日浦正博参事(48)は「ほとんどは試しに開いただけで、継続的に読んでいる人は少ない」と顔を曇らせる。電子書籍の閲覧サービスを知らない市民がまだ多いのと、閲覧できる書籍が限られていることが、その要因という。
 市では、今年度中に五百冊まで増やす予定。「今後は、学校のパソコンなど閲覧できる場所を増やし、市民に定着させていきたい」(日浦参事)と、サービスの充実を目指している。(本田佳子)
 ◇札幌 大手スーパーが設置
 ◆閉館の危機を署名で乗り切る  
 公立図書館とは別に、道内には市民が開設した「民間図書館」も数多い。
 大手スーパー「イトーヨーカ堂」(本社・東京)が札幌市北区の新川店に設置している「子ども図書館」は一九九〇年のオープン以来、地域の子供や母親らに親しまれ、登録者は一万四千人を超える。
 一階のクリーニングコーナー脇にある館内には、約八千四百冊の児童書や絵本、図鑑が並ぶ。常駐の司書が利用者の相談に応じ、「お話し会」や企画展などのイベントも定期的に開く。買い物のついでに立ち寄る母子連れが多いが、小中学校や幼稚園、母親サークルなどの団体利用も増えている。
 同図書館は昨年、閉館の危機に見舞われた。利用者の減少が続き、六月に本社が閉館方針を打ち出した。しかし、存続の要望が殺到し、署名運動に発展。本社はこれに応えて存続を決めた。今年に入って、利用者数は上向きに転じているという。
 長女の成美ちゃん(7)と絵本を読んでいた近くの主婦、前仏あけみさん(37)は「子供が本を読んでいる間にゆっくり買い物できるので助かる」と話す。
 奥泉雅子司書は「絵本は大人も楽しめる優れた図書。どんどん利用してほしい」と、アピールしていた。
 ◇ニセコ 館長を一般公募
 ソフト面で「図書館改革」に乗り出しているのが、後志支庁ニセコ町だ。今年度末にオープン予定の図書施設「町民学習交流センター」の館長を一般から募集している。
 同町では昨年四月にまちづくり基本条例が施行され、町民の町政参加が進む。館長公募もその一環で、町教委は「枠にとらわれない、情熱のある人材に来てもらえれば」と期待する。
 六月中旬に逢坂誠二町長のホームページに募集記事を掲載し、道立図書館や日本図書館協会のホームページでも紹介された。勤務条件や待遇などは未定で、いわば「事前募集の段階」(町教委)だが、札幌市、東京、神奈川から三件の応募があった。町教委では、今秋以降に正式に募集を始める予定だ。
 同センターへの住民参加は館長公募だけにとどまらない。運営方針などを話し合う検討委員会の構成も八人中三人が一般町民。公募で寄せられたアイデアの中から、センターの愛称を「あそぶっく」に決めた。住民が主導して作る公立図書館の先駆けとなるかもしれない。
 ◆ユニークな試み、ほかにも様々…
 ◇郵便局に図書館 網走市の浦士別郵便局内に、道内で唯一の公立図書館の分館として「うらしべつ分庫」が昨年八月に開設された。浦士別地区から同市中心部にある市立図書館は二十五キロ離れており、付近の市民に好評を得ている。
 ◇夜もオープン 深川市立図書館は毎日、午後九時まで開館。道内の公立図書館では、ほかにも曜日によって午後九時まで開いているところはあるが、連日となると深川市だけ。仕事帰りのサラリーマンらの利用が多いという。
 ◇サハリンが売り 来年六月の開館を目指して現在、移設工事中の稚内市立図書館は、同市とサハリンの交流が深まっていることに着目し、関連図書を充実させる。旧樺太時代の引き揚げ資料や九百冊の蔵書を集め、「郷土資料コーナー」として目玉にしたい考えだ。
 ◇日本一の栄誉 今年の日本図書館協会建築賞に石狩市民図書館が輝いた。同図書館は二〇〇〇年六月にオープン。道内初の自動貸出機を導入するなど積極的に電子化に取り組み、居心地のよい空間作りを心がけた点が評価された。
              ◇
 ◆利用率の向上、課題に 電子化も必要
 日本図書館協会が毎年発行している「図書館年鑑」(二〇〇一年版)を見ると、道内公立図書館の現状が浮かび上がる。
 本道の公立図書館数は百二十九館で、東京(三百六十二館)、千葉(百四十三館)、埼玉(百三十館)に次いで全国四位。専任職員数は五百四十八人で七位、蔵書数も千二百六十九万六千冊で七位、個人貸出数も千九百四十五万四千点で八位。ハード、ソフトの両面でまずまずの数字となっている。
 ところが、これらを「率」に直すと、一気に順位が下がる。専任職員に司書が占める割合を示す有資格者率は42・5%で三十七位。人口百人当たりの蔵書数は二百二十三冊で二十三位。同個人貸出数は三百四十二点で二十一位だ。
 館数や蔵書数が多い割に利用率が上がらないのは、本道の広さが災いしていると思われる。移動式の自動車図書館数が六十七台と、二位の埼玉(四十三台)に大差をつけてトップなのも、これを象徴している。
 利用率のアップを図るには、電子化を進めるのも有効だろう。北海道図書館振興協議会の調べ(二〇〇一年度)では、コンピューターを導入して蔵書管理や検索に活用しているのは九十六館。手持ちのパソコンから図書館のホームページにアクセスして蔵書や資料の検索ができれば、利便性は大幅に良くなるはずだ。

 

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『読売新聞』2002.08.19
電子出版普及目指し企画 「電気仕掛けのブンガク賞」10月31日締め切り
東京朝刊
 パソコンやPDA(携帯情報端末)で小説などを読む電子出版の普及を目指して、出版社やソフトウエア会社などが企画した「電気仕掛けのブンガク賞」の応募作品を募集している。
 電子書籍は、インターネットのリンクを利用して物語を行き来したり、音楽ファイルや動画などを盛り込めるのが特徴。作品は、ホームページの記述形式のHTML文書や、ワープロソフトのマイクロソフトワード形式のほか、専用の電子書籍作成ソフトの形式でも応募できる。作品賞は賞金三十万円、シナリオ賞、電子本の特性を生かしたギミック賞はそれぞれ五万円で、各賞には副賞として東芝製の最新型ポケットPCが贈られる。期間は十月三十一日まで。その後、公開審査を経て、来年一月、「ダ・ヴィンチ」誌上で結果を発表する予定。詳細は同賞サイト(http://www.yom.to/award/)へ。

 

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『朝日新聞』2002年08月24日
朝刊
読み手考えて軽い本造りを(声) 【大阪】
 中学生 青木里衣(大阪市 12歳)
 この秋、ハリー・ポッターシリーズ第4巻が翻訳されて出版されます。私は第1巻を読んだときから、すっかりこの本のファンになり、第4巻を楽しみにしていました。とくに第4巻は、前の3巻よりずっと面白いという評判で、英語版が出てからの2年間、本当に楽しみにしていました。
 ただ、私が心配していたのは、翻訳版がどれほどの厚さになるのかということでした。第1巻の3倍の長さだそうで、母が読んだ英語版は厚さ6センチもあります。もしかして、とても重くて、気軽には読めないかもしれないと思っていました。結果は、上下2冊になると分かりました。
 日本の本も英語本のペーパーバックのように、悪い紙でもいいから軽くならないのかと思います。英語版の第4巻は軽々と持ち運べます。電子ブックでもいいけれど、精密機械だし、学校に持っていってこわしたくないので、電子ブックになっても買うかどうかは分かりません。文庫本になるのを待つのもつらいです。
 出版社の皆さん、どうか軽い本を世の中に出してください。

 

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『読売新聞』2002.08.29
「ザウルス文庫」用ソフトを無料配布/シャープ
大阪朝刊
 シャープは九月十日から、八月に発売した携帯情報端末(PDA)「ザウルス SL―A300」向けに、電子書籍の有料配信サービス「ザウルス文庫」が読めるソフトを、インターネットを通じて利用者に無料で配布する。今後は他社のPDAでもザウルス文庫が利用できるソフトを開発していく予定だ。
 八月末から九月にかけて新たに三社の作品が配信される予定で、参画企業は三十一社、作品数は約三千七百になった。画像を連続的に表示して動きを加えるなど機能の充実を図っており、今年末には五千作品にまで増やしたい考えだ。

 

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『朝日新聞』2002年09月25日
朝刊
NTTドコモ、電子書籍の配信開始 10月から
 NTTドコモは24日、岩波書店、講談社など出版社43社と協力して10月1日から携帯情報端末(PDA)などを対象に電子書籍の配信を始めると発表した。出版社側の窓口のデジブックジャパンによると、1冊300〜500円程度。当初は約500タイトルで、年内に3千まで増やす予定。

 

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『朝日新聞』2002年10月30日
朝刊
本は読まれているのに 読書週間(社説)
 読書週間に考える。本当に「活字離れ」が進んでいるのだろうか、本は読まれなくなったのだろうか、と。
 電車に乗ってみる。文庫本や雑誌を読んでいる人が相変わらず多い。携帯情報端末の画面でインターネットから落とした小説に読みふける人もいる。縦書き表示の「電子本」でいつでも芥川竜之介や太宰治を読める。そんな時代になった。
 高校生が携帯電話で熱心にメールを打っている。音声メディアだとばかり思われていた携帯電話は今や、文字を読み書きする「ケータイ」に変わった。短い文章でも日々の積み重ねの中から「ケータイ文学」の旗手が出てきたっておかしくない。
 書店には、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』が山積みされている。上下巻で初版を230万セットも刷った。村上春樹の『海辺のカフカ』も上下巻で800ページを超える。それが売れに売れている。
 ハリー少年は4作目で14歳になった。カフカ少年は15歳だ。2人は恋や死を経験し成長していく。ゲームのような展開にひきずりこまれ、読み終えた後に何かが残る。そんな作品である点が似ている。
 家を出て図書館に住み込んだカフカ少年は夏目漱石全集を全部読もうと思い、鉱山で働き始めた青年の体験を描いた『坑夫』に取り組む。「完成された作品にない吸引力」に引きつけられる。『千夜一夜物語』を読むと「僕は僕ひとりになり、ページのあいだの世界に入りこんでいく」。
 この小説を読んだ少年少女は文学の魅力に触れ、別の作品も読もうという気になるだろう。そんな大著が読まれている。
 本は読まれなくなったのではない。むしろ、読まれない本があふれていることに問題があるのではないか。
 出版不況といいながら、『出版年鑑』によれば、昨年の新刊書籍は前年より6千点も増えて、初めて7万点を超えた。しかし返品率が4割にのぼる。実際には6割しか売れていない計算である。
 売り上げを増やすために、とにかく本をたくさん出す。返品が来る前に、また別の新刊を出し続ける。そんな「自転車操業」が出版業界の実態である。新刊偏重で、本の寿命も短くなっている。
 悪循環を断つ第一歩は、出版社が思い切って刊行点数を絞ることだ。じっくり企画をたて、丁寧に売っていく。読みやすいように体裁を工夫することも大事だ。
 ハリー・ポッターのファンの女子中学生が、本紙「声」欄(大阪本社版)に「本がとても重い」と投書を寄せていた。
 「電子ブックでもいいけれど、精密機械だし、学校に持っていってこわしたくないので、電子ブックになっても買うかどうかは分かりません。文庫本になるのを待つのもつらいです。出版社の皆さん、どうか軽い本を世の中に出してください」
 少女の声は届いただろうか。

 

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『朝日新聞』2002年12月06日
朝刊
「日向民話集」CD−ROMで復刻 宮崎銀行創立70年記念/宮崎
 宮崎銀行(佐藤勇夫頭取)は、創立70周年を記念して「日向民話集」のCD−ROMを制作した。20周年の際に刊行した「日向文庫」全13巻のうち1冊を、ナレーション入り電子書籍として復刻した。850セット作り、県内の各学校や図書館などに配る。
 5枚一組で、「夢買いの長者」(高千穂町)や「田野の百済王」(田野町)など、県内に伝わる計66話を収めている。パソコンで再生すると文字と朗読の音声が流れ、CDプレーヤーでも音声を聴ける。ナレーションは、声優の羽佐間道夫さんが担当した。
 原典は、同行の前身、日向興業銀行が54年、宮崎在住の作家、故中村地平氏に依頼して刊行した。創立50周年の際にも復刻したが、電子図書の時代に対応するためCD−ROM化したという。
 それぞれの民話は、宮崎銀行のホームページでも閲覧できる。同行総合企画部は「郷土の企業として、伝統文化の継承の一翼を担いたい」と話している。


*作成:植村 要
UP: 20100706  REV:
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