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電子書籍 1999

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■新聞記事



『読売新聞』1999.02.23
ゲームソフトも国会図書館へ 「電子出版物」の納本を義務化 調査会が答申
東京朝刊
 急増しているCD―ROMなどの電子出版物について、書籍同様に国立国会図書館への納入義務を課すべきかどうかを検討していた「納本制度調査会」(会長・衛藤瀋吉東大名誉教授)は二十二日、「新たな規定を作り、CDなども納本制度に組み入れるべきだ」とする答申をまとめた。これを受けて来年度にも国立国会図書館法が一部改正され、辞典や地図などCD化された「電子ブック」をはじめ、ゲームや映像、コンピュータープログラムなどのソフトも二〇〇〇年度以降、国会図書館への「納本」が義務づけられる見通し。文化記録の役目を担う図書館もデジタル時代に入ることになる。
 国立国会図書館法は、文化財の蓄積と利用のため、出版物を発行した時は一部を国会図書館に納入しなければならない、と定めている。しかし現行の同法では、「出版物」として紙を前提とした印刷物と映画、録音盤(レコード)などしか規定しておらず、デジタル信号で記録されたCDなどは、レコード扱いの音楽CDを除くと納本対象とはされていなかった。
 しかし、パソコンの普及に伴って、辞典や写真集、地図などがCDの形で出版されるようになり、ゲームソフトやコンピューターソフトなどを合わせると年間一万種以上のCD出版物が発売されている。国会図書館は現在でも、寄贈の形でCD出版物を入手してはいるが、義務づけられた制度ではないため、収集は年間約三千種にとどまっていた。
 こうした現状を踏まえ、納本制度調査会では、「有形の媒体に情報を固定したものは、紙の出版物と同様に扱えることが可能」として、発行者に実費を支払った上で納入義務を課するよう答申した。
 同調査会では、テレビゲームのソフトや「ウィンドウズ98」といったコンピュータープログラムが出版物にあたるかどうかも議論となったが、「内容によって図書館資料としての価値判断を行うべきではない」と、電子出版物のすべてを納本対象とするよう求めている。
 しかし、インターネット上の文字や画像情報については、納本制度に組み入れることは見送られた。

 

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『朝日新聞』1999年03月20日
朝刊
電子ブック版『知恵蔵99』発売中<社告>
 二万項目の現代用語を解説。用語関連新聞記事一千本、週間報告四年分、全国シティーデータ、二十世紀特集、「マイクの一年」(音声)などを収録。
 電子ブックプレーヤーや検索ソフトの新仕様に対応し、図版・写真を三百点収録してあります。ビュアーソフトViewIngを内蔵していますので、パソコンでもご利用できます。
 本体価格5700円(税別)。お求めはお近くの書店、ASA(朝日新聞販売所)、インターネットhttp://opendoors.asahi−np.co.jp/でどうぞ。

 

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『読売新聞』1999.03.26
[MONOもの語り]電子辞書 10代から中高年まで
東京夕刊
 分厚い紙の辞書に代わって、持ち運びに便利な電子辞書が、学生や社会人の間で人気を呼んでいる。辞書の情報をICやCD―ROMなどに記憶させ、キー操作で調べたい言葉を入力すると瞬時に検索できるのが特徴だ。
 87年に、セイコーインスツルメンツが発売したカード型の電子辞書が先駆けとなったが、見出し語は5000語程度にとどまっていた。90年には、ソニーが、辞書など書籍の情報を丸ごとCD―ROMに収録するとともに、検索専用機の「データディスクマン」を開発し、辞書としての機能が一気に本格化した。
 辞書の中身は、国語辞典と英語辞書が中心だ。セイコーインスツルメンツは97年に、“定番”の広辞苑(岩波書店)、新英和・新和英中辞典(研究社)など4冊を収録した「ICディクショナリーTR―9700」=写真=(標準価格4万3500円)を発売した。215グラムと軽く、スーツのポケットにも入る大きさで、「現在も売れ筋」(都内量販店)という。
 ソニーが3月15日に発売した「電子ブックプレーヤーDD―S30」は、最新の広辞苑(第5版)と新英和・新和英中辞典を収録し、うろ覚えの英語の片仮名発音からでも検索できることなどが特徴だ。また、カシオ計算機の英語辞書「エクスワードXD―1500」は、クリアなデジタル録音でアメリカ人の発音を聞くことができる。
 これら本格派辞書のほか、収録語数は限られるが数千円で買える廉価版もある。業界筋では、98年度200億円、99年度には250億円の売り上げを見込んでいる。英語を学ぶ10歳代から、小さな文字を読むのが苦手な中高年層まで、購買層が広がっており、「英単語を覚えるには辞書を破って飲み込め」と言われた時代は遠くなったようだ。(中村宏之)

 

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『朝日新聞』1999年04月22日
夕刊
日立、独シーメンスと提携 次世代カード共同開発
 日立製作所と独シーメンスグループは二十二日、今後の普及が見込まれる半導体を組み込んだ次世代のカード(ICカード)開発で提携することを明らかにした。同日午後発表する。ICカードに搭載する半導体と、カード自体を共同開発する。ICカードは欧州で電子マネーとして幅広く普及しているが、電子マネーにとどまらず、携帯電話やモバイル(携帯情報端末)などのデジタル機器への応用を見込んでいる。今後、大きな市場になることを見込み、両社が手を組んだ。
 両社は、次世代のICカードに、半導体のフラッシュメモリーとマイクロコントローラを一体化したシステムLSI(大規模集積回路)を共同開発して搭載することを考えている。カードは一・五グラム程度の小さなものを開発する計画だ。
 システムLSI分野を強化している日立と、ICカード開発に強いシーメンスグループが互いの長所を生かして提携する。携帯電話、電子書籍、デジタルカメラなどに使われる記憶媒体として開発する予定だ。

 

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『読売新聞』1999.05.19
書籍のインターネット通販拡大 取次業者も相次ぎ参入
東京朝刊
 書店や出版社だけではなく、出版取次業者や宅配会社まで参入してネットによる出版流通の変革が起こっている。ネット通販では、扱い点数が数十万―百数十万と、大規模書店をも上回る品ぞろえと、充実した検索能力などが売り物で、順調に売り上げを伸ばしている。また、出版のデジタル化の急速な進展で、電子出版への取り組みも本格化している。
 実際の店舗をもたず、インターネット上だけで本の通販を行っている「BOOKCLUB 本屋さん」では、百二十万点の書籍データが登録されており、絶版を除いた約七十万点が購入可能。会員登録をすれば、送料無料や、購入金額5%還元などのサービスが受けられる。開設十か月で会員は一万三千人に達した。
 既存の大手書店である紀伊国屋や丸善、大手出版社の講談社、小学館などもネット通販に積極的に取り組んでいる。
 ネット通販の特徴はデータベース機能の充実と配送の早さ。これまで本を取り寄せる場合、正確な書名と出版社名が不可欠だったが、ネットでは、部分的なキーワードさえ入れれば該当書名がいくつも出てくる。また、注文から三、四日で手元に届く。
 このようなネット通販攻勢による「流通の空洞化」に危機感を強めた取り次ぎ側も対抗してネット通販に乗り出した。取次販売会社の大阪屋は今年から、また業界大手の日本出版販売(日販)も九月からサービスを開始する。いずれも書店で受け取るかわりに、送料無料だ。
 書籍のネット通販から、さらに進んでデジタル化されたデータをネットを通じて配信する電子出版への取り組みも活発化している。
 週刊誌フライデーなど雑誌、書籍など数十点程度のダウンロードサービス実験を行っている凸版印刷は、「商用化のめどが立った」として扱い点数を数千にまで拡大したサービスをまもなく開始する。
 角川書店と東芝は、電子出版事業の合弁会社をこのほど設立し、またCS(通信衛星)で配信する雑誌も今年一月に創刊されている。
 出版社など百二十社で作る電子出版の推進団体「日本電子ブックコミュニティー」は三月、出版物のネット配信用の標準規格を発表しており、電子出版をめぐる動きはさらに活発化しそうだ。 (池松洋)

 

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『朝日新聞』1999年06月27日
朝刊
動き出す「電子書籍」 来月からプレ実験(動向傾向)
 通信衛星を利用した新時代の本のシステム「電子書籍」のプレ実験が、来月一日から始まる。ソフトの選定やデータの電子化も着々と進行中。十一月からは、実用化に向けて現在開発中の読書端末を使っての本実験に移る予定だ。
 本のデータを衛星を通して書店などに設置した販売端末に送り、読者はそこから携帯可能な自分の読書端末にお金を払ってそのデータを取り込んで読む、というのが電子書籍の仕組み。出版社、家電メーカーなど百四十四の会社・団体が加わる電子書籍コンソーシアム(代表・塚本慶一郎インプレス社長)が実験主体だ。
 十月まで続くプレ実験では、衛星回線を含むインターネットを使って本のデータを送る。これを読書端末の代わりにパソコンの画面でコンソーシアムのメンバーが読んで、読み心地などをチェックする。
 そして、十一月からは販売端末二十台、読書端末五百台を使った本実験に入る。来年以降のスケジュールはまだ固まっていないが、関係者は早い時期に事業展開のための事業主体を立ち上げたい考えだ。
 成功のかぎを握るのは読書端末だ。実験用端末の開発を担当しているシャープによると、高精細の液晶画面はモノクロで文庫本程度の大きさ。本のように見開きの画面にする構想が当初あったが、実験段階では一画面に落ち着いた。二十八日には東京・西神田のコンソーシアムで、希望する出版社にこの液晶画面の試作品=写真=を公開する。
 一方、気になるソフトの方は、小説では『帝都物語』『パラサイト・イヴ』『リング』『らせん』、漫画では『カムイ伝』『ゴルゴ13』などの人気作品が出てくる予定だ。著作権の手続きのめどが立った約八百点のデータの電子化を終え、最終的には五千点をめざしている。
 コンソーシアムの鈴木雄介・総務会長(小学館インター・メディア部次長)は「かつてウォークマンが音楽の聴き方を大きく変えたように、電子書籍で新しい読書のスタイルを示したい」。この意気込みが実を結ぶかどうか、実験は注目を集めそうだ。
 (宮崎健二)

 

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『読売新聞』1999.06.29
いま情報革命は 高まるデジタル化のうねり 「ネット書店」本格競争=特集
東京朝刊
 ◆コンビニ店舗網活用
 インターネットによる電子商取引(EC)によって、書籍販売を巡る業界の構図が大きな変革を遂げようとしている。今月初めにはネットビジネスで国内最大手の「ソフトバンク」がコンビニの「セブン―イレブン」、国内最大の書籍取次会社「トーハン」などと共同で、インターネット上での書籍販売事業を今年十一月にスタートさせると発表。「ネット書店」を無視できなくなった大型書店や取次店なども既にネット販売に手を染めている。出版社側もパソコン上で読める電子書籍の実証実験に本腰を入れ始めた。出版・書籍流通に起きている急激なデジタル化の現状を紹介する。(大和太郎、愛敬珠樹)
 ◆ソフトバンク参入
 「インターネットの専門家である我々がやれば、サイトのにぎわいでは格段の違いがでると確信している。ヤフーやジオシティーズで蓄積したユーザー情報やノウハウで、ユーザーへの十分な心配りができるようなコンテンツが創(つく)れる」
 今月三日、東京・日比谷で行われたインターネット上での書籍販売サイトをスタートさせる「イー・ショッピング・ブックス」社の設立発表。報道陣に囲まれたソフトバンク社の孫正義社長は、自信満々の表情で語った。
 十一月から営業を始める同社は、ソフトバンクと子会社で日本最大の検索サイトを運営するヤフー、セブン―イレブン、トーハンという各業界の最大手四社が共同出資した新会社。
 最大の売り物の一つは、利用者がサイト上で注文した書籍を自宅だけでなく、全国で約八千に上る最寄りのセブン―イレブンの店頭でいつでも受け取れる点だ。代金の支払いも、店頭だけでなく、ネット上でのクレジット決済など様々な選択ができる。
 孫社長は「セブン―イレブンは雑誌を日本一売っている一種の書店。今回の事業はその延長線上にある」とし、セブン―イレブンの鎌田誠晧副会長も「セブン―イレブンが総合的な書籍の発信基地になる」と意欲を示す。新会社が検索・注文に利用するのはトーハンが提供する百四十万点の書籍データベース。顧客から受けた注文をトーハンに発注し、トーハンは商品を顧客の最寄りのセブン―イレブンの店舗に配送するか、ヤマト運輸で直接宅配する。
 もう一つの売り物は、従来の日本の書店にない、きめ細かな顧客サービスだ。電子メールを利用した顧客へのアフターケアや、各顧客の購買履歴を基にした推薦書籍情報の提供をはじめ、顧客同士の交流の場としてチャット(会話)を設けるなど、読者サービスの充実を図るという。
 このネット場での書籍販売は、ソフトバンクにとっては、EC戦略のほんの一部。消費者に身近な書籍を手始めにして、ヤフーなどのサイト上で展開中の各種金融サービス、自動車販売事業などを促進し、EC市場での確固たる地位の確立を狙うものだ。
 ◆書籍・流通業界 データベースが充実
 ネット利用の書籍販売は、「イー・ショッピング」を待つまでもなく、大型書店や出版会社、取次会社や宅配会社まで参入して既に走り出しており、サイト数は大小八十前後にのぼる。
 その中で最大の売り上げを誇るのは、大型書店の紀伊国屋書店の「ブックウェブ」だ。和書百三十万点、洋書二百万点の計三百三十万点の膨大な書籍データと、分野別に細分化された推薦書籍のページなどが充実しており、注文した書籍は直接、利用者の手元に届けられる。売り上げは年間約十五億円に上る。
 国内のECの成功例としてたびたびマスコミに取り上げられているが、「データベースの充実ぶりが評価されているのでは」と同社。同じく大手書店のサイトとしては、専門書中心の構成となっている丸善のサイトも、大学や教育関係者の利用が多い。
 これに対し、流通改革の真っただ中にある取次会社のネット参入も活発化している。今年から関西圏を中心にネット販売を試験導入した大阪の大手、大阪屋は、「本の問屋さん」を九月からは全国展開する。日本出版販売(日販)も、九月から百四十万点の書籍データベースを駆使したネット書店をスタートさせる。このシステムでは、検索した本の在庫が書店、取次店、出版社のどこにあるかをサイト上で顧客が把握できる。
 取次会社のサイトの特徴は、サイトで受注した書籍も受取先を主に系列書店としている点。消費者にとっては送料がかからない利点もあるが、取次会社としては関係が深い既存書店に配慮せざるを得ない実情を反映している。
 これについては、セブン―イレブンとの提携が反発を買っているトーハンでも、系列書店を受取先としている既存の専門書販売サイト「本の探検隊」のデータベースを、「イー・ショッピング」と同等の百四十万点に拡充、書店での取り扱いを増やすことにしている。
 これに対して宅配網を利用、迅速な配送で人気を集めているのがヤマト運輸の関連会社「ブックサービス」。年間の受注冊数は約二十二万冊に及び、「何冊注文しても全国一律三百八十円の格安手数料が売り」という。
 ところで、サイトで「百万冊以上のデータベース」を標榜(ひょうぼう)しても、国内で実際に出版社などに在庫として残っているのは、約五十五万点程度。これについて全国の出版会社で構成する日本書籍出版協会(書協)は「Books(ブックス)」で、版元との情報交換によって、新刊、廃刊情報のいち早い更新を目指している。 
 ◆「電子書籍コンソーシアム」今秋始動 データ配信、画面で閲読
 本をデータの形で読者に届ける大型実験プロジェクトが今秋、いよいよ動き出す。推進するのは出版社、書店、メーカーなど約百四十社で結成する「電子書籍コンソーシアム」。十一月には、プロジェクトのホームページなどから専用ソフトを一般に無料配布し、並行して年末までに過去最大規模となる五千タイトルもの書籍をデータで提供する。
 東京・上野の同コンソーシアム「電子化センター」では、現在、本をデータ化する作業が急ピッチで進められている。ページをスキャナーで取り込み、そのまま画像化するもので、「誤読」を直す校正作業が要らず、文字情報として入力するよりコストがかからない。市場の四割を占めるマンガも扱えるのは大きな強みだ。
 実験の成否は、充実した作品ラインアップを用意できるかどうかにかかる。そこで課題となるのは著作権の処理だが、各出版社の交渉は順調で、半月ですでに約五百冊分を完了した。人気作家の売れ筋作品をまとめて提供した大手出版社もあり、実験に参加する各社の取り組みは次第に熱を帯びてきている。
 これらのデータはネットや通信衛星などで配信されるが、これを閲覧する専用ソフト「PCビューワ」は計画に参加するシャープが今月発表した。もう一つの懸案である、本と同様に手軽に持ち運べる高精細の携帯型読書端末も同社で開発中。
 事務局の小林龍生氏は「まずはパソコンで電子的な本を読む習慣をつけてもらい、将来は専用端末で読んでもらえれば」と話す。
 出版をめぐる状況は厳しさを増している。全国出版協会・出版科学研究所の調査では、九八年の推定販売額は二年連続で前年割れとなり、返品率も書籍で41%と依然高い水準にある。今回の実験に対しても、書店からは「本屋が不要になるのでは」との不安も聞かれるが、コンソーシアムでは、目的は紙の本の排除ではなく、もう一つの出版機会をつくって市場創出につなげることにあるとして理解を求めている。
 紀伊国屋「Book Web」  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/
 丸善「Internet Shopping」  http://www.maruzen.co.jp/
 クロネコヤマトの「ブックサービス」  http://www.bookservice.co.jp/
 トーハン「本の探検隊」  http://tohan.gsquare.or.jp/
 大阪屋「本の問屋さん」  http://www.osakaya.co.jp/
 書協「Books」  http://www.books.or.jp/
 電子書籍コンソーシアム http://www.ebj.gr.jp/

 

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『読売新聞』1999.07.06
ビジネスマン向け携帯端末「アイゲッティ」を発売へ/シャープ
東京朝刊
 シャープは、ビジネスマン向けの機能を充実させた携帯情報端末「ザウルス アイゲッティMI―P2」を9日発売する。同社のインターネットサービスを利用すれば、小説などの「電子書籍」を取り込むことができるほか、出発地と目的地の駅名を入力するだけで、経路や運賃、所要時間が表示される「乗り換え案内」などの機能を搭載した。5万円。
 (電)0120・303909

 

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『読売新聞』1999.07.09
[メディアお国事情]ドイツ 「活版の国」に電子書籍
東京夕刊
 活版印刷の発明者グーテンベルクを生み、活字への愛着が強いと言われるドイツで初めて、インターネットによる電子書籍の販売がスタート、話題を呼んでいる。
 市場規模二百億マルク(約一兆三千億円)の出版業界に殴り込みをかけたのは、ハンブルクのベンチャー企業「ブレイン・フュエル」社。「大事なのは中身だ」というモットーの下、昨年十二月、サービスを開始した。
 購入方法は、同社のホームページ(http://www.digibuch.de)を開いて好みの書籍名を選び、ダウンロードするだけ。わずか数分で、用語検索や自在なレイアウトが可能な「デジブッフ」(ドイツ語で電子書籍の略称)が入手できる。原材料代や流通経費がかからない分、「価格は通常の本の半分」(同社)で、クレジットカードや銀行引き落としで簡単に決済できる。
 「読者には、もはやデジタル媒体に対する抵抗感はない」とノルマン・ベーエ社長。悩みは他のデジタル媒体と同じくソフト確保がなかなか進まないことで、「版権を持つ出版社、特に大出版社は、デジタル化の進行で市場シェアが激変することや取引業者を裏切る形になるのを恐れている」という。
 それでも、当初百点だった書籍数は半年で約五百点に増えた。今のところ、著作権切れで無料提供しているゲーテなどの古典と、ゲーム攻略本が中心だが、近い将来、品ぞろえを辞典から観光ガイドまであらゆる参考書籍に広げる計画だ。
 ドイツの電子出版は、先輩格のCD―ROM版を含め、内容の逐次更新を売り物にした「新しさ」と、著作権のくびきを離れた古典という「古さ」に二極化して発展しつつある。紙媒体に匹敵する市民権を獲得するカギは、今後この二つの潮流がどこまで近づき合えるかにありそうだ。 (フランクフルト 貞広貴志)

 

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『朝日新聞』1999年07月20日
朝刊
電子ブックやゲームソフト、納本の対象に 国立国会図書館
 国立国会図書館は、ゲームソフトやパソコンのソフト、電子ブックなど、急速に普及している「電子出版物」を新たに納本の対象とし、利用してもらうためのルール案を、十九日までに固めた。(1)納本の際に図書館側が出版社などに払う代償金は、従来の図書と同様に小売価格の四−六割(2)館内の端末画面での閲覧利用に限り、当分は館外に貸し出さない(3)「複写」は紙へのプリントアウトだけで、ソフトのダウンロードはさせない――などの内容になる。来年度に国立国会図書館法や諸規則を改正することを目指している。
 国内の出版物は国会図書館に納めるように同法で義務づけられており、法制定時に想定しなかった電子出版物をどう扱うかが議論されてきた。インターネットのホームページなど「ネットワーク系」出版物は除いて、ゲームソフトやビデオなど「パッケージ系」を納本対象とすることが、すでに決まっている。
 十九日は、館長の諮問機関の納本制度審議会が、電子出版物の代償金の基準について答申した。国会図書館も、館内利用方法についてのガイドライン案作りを進めてきた。コンピューターソフトはコピーが容易で、著作権をどう保護するかが焦点になったが、図書館側は「スタンドアローン(他の機器と接続していない独立の端末)方式」を採用、出版・ソフト業界の懸念にこたえることになった。

 

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『読売新聞』1999.08.23
「電子本」新時代に突入 今秋、衛星配信の実験開始 ネット向け雑誌登場へ
東京朝刊
 インターネットの急速な普及に伴い、文字や画像など本の中身(コンテンツ)をネット上で販売する「インターネット本」がにわかに活気づいてきた。小説やマンガ、写真集だけでなく、ネット向けのオリジナル雑誌や、外国の読者向けに英語のマンガの配信も計画されている。衛星を使って「電子本」を配信する実験も今秋始まる。一方、インターネットで通常の書籍の注文を受けるネット販売も拡大している。本の売り上げが2年連続で減少し、出版業界が販売の効率化を迫られていることも、インターネット利用の拡大を加速する要因になっている。(蒲池明弘、下宮崇)
 東京の上野にあるオフィスビルの6階。「電子化センター」と記されているドアの向こうでは、20人近い技術者が、本をデジタル情報に変換する作業を進めていた。コピー機に似た機械を使って、1ページずつ画像情報をコンピューターに保存している。
 ここは講談社、小学館、シャープなどの出版社、電機メーカーなど約150社による「電子書籍コンソーシアム」の拠点施設だ。11月からインターネットや衛星で、「本」を配信する実証試験を開始する。5000種類の「本」を販売し、全国1500人のモニターに、自宅のパソコンや専用の携帯端末で読んでもらうという実験だ。
 小説、エッセーなど読み物が6割を占め、マンガや趣味実用書も多い。夏目漱石などの名作のほか、「パラサイト・イヴ」など比較的最近の小説も販売される。
 実験用の専用端末は普通の本とほぼ同じサイズで、シャープの液晶技術を生かしている。記憶媒体には2インチの小型ディスクが使われる。実験では、書店やコンビニに置かれる機械に、衛星から配信される「本」の情報を蓄えておき、顧客の小型ディスクに作品のデータをコピーする方式で販売する。
 実験は来年1月まで行われ、「結果を見て、携帯端末の販売を含めたビジネスとしての展開を検討する」(及川明雄・電子書籍コンソーシアム事務局長)ことになっている。
 「電子本」の販売は、80年代の後半に始まった。これまではCD?ROM(コンパクトディスクを使った読み出し専用メモリー)本が主流だった。辞書類などでヒットも生まれたが、大きな市場を作るには至っていない。ところがインターネットの拡大により、電子出版は新たな段階に突入した。
 コンソーシアムとは別に、いくつかの「電子書店」や出版社もインターネット本の販売を始めている。
 広告代理店の博報堂と豊田通商が7月に設立した「インディビジオ」は、マンガを中心に販売する電子書店だ。販売点数は旧作、オリジナル作品合わせて約200点で、約5000人が顧客登録をしている。
 ネット販売ならではの成果は「日本語の作品しかないのに、顧客のうち1割がアメリカ、北欧など外国の読者だった」ことだ。さっそく英語版を出す準備に取りかかっている。
 光文社や二見書房などの出版社も独自に、小説や写真集をネット上で販売している。光文社は絶版本を中心に毎月、20冊ずつ増やし、現在の販売点数は約400冊に上っている。シャープの携帯端末「ザウルス」向けの配信も行っている。
 講談社は今秋、有料のインターネット雑誌「WEB現代」の販売を始める。料金設定、課金システムはまもなく発表するという。
 ◆変わる本の概念 読書環境、自由自在に 古典など無料公開も
 インターネットの拡大は、本という概念や、本づくりの手法を様変わりさせる可能性をはらんでいる。アメリカと同じように日本でも、既存の出版社とは異なる発想を持つ「電子出版ベンチャー」の動きが目立ってきた。
 その代表格といわれるボイジャー社が昨年発売した「T?Time」というインターネット読書の専用ソフトは2万枚も売れるヒット商品になっている。このソフトを使えば、ホームページ上の文字情報をワンタッチで、日本語に適した縦書きに変えることができる。文字の大きさ、書体、行間なども、自分の好みに設定できる。映画畑出身の萩野正昭社長は「固定された印刷文字とは違って、パソコン画面は読者が自由に編集できる。パソコンの特性を生かした快適な読書環境を提供したい」と話している。
 同社は独自の出版活動のほか、インターネット本の制作指導、それに必要なソフト類の開発も手がけている。
 ネット上で、無料の「本」が急速に増えていることも、これまでにない状況だ。
 インターネット図書館の「青空文庫」には、著作権の切れた文学作品を中心に約600作品の「蔵書」がある。全国のボランティアが自分の好きな作品を提案し、問題がなければ、「青空文庫」のホームページに載せて無料で公開している。
 研究者や各種団体のホームページでは、万葉集などの古典や法律の条文なども続々と無料公開されている。
 若手出版人の論客として知られる学術出版社「ひつじ書房」社長の松本功氏は、「明治期からつい最近までの近代化の過程と、これからの時代とでは、本の社会的な位置や役割がかなり違ったものになる」との持論を掲げ、ホームページ、電子メールを使った意見の積み重ねが、「未来の本」のヒントになると提唱している。同社は日本語学に関する「インターネット学術誌」を実験的に立ち上げ、新作論文やそれに対する議論を含めて公開する計画だ。
 ◆電子本購読体験 100円の小説瞬時に受信
 先発組である富士通関連会社の電子書店「パピレス」にネットで接続して、その仕組みを体験してみた。
 「パピレス」のホームページを開くと、小説、マンガ、雑誌などの6つのメニューがある。作家別に作品名が並び、かなり詳しい内容紹介を読むことができる。販売点数は約2000冊だ。
 支払い方法は、クレジットカード、インターネット専用のプリペイドカードなど8種類が示されている。試しに100円の短編小説を注文すると、瞬時にパソコンに配信されてきた。
 月の売り上げは約8000冊という。最近は、音声付きの英会話教本も販売されている。ここでも、インターネットにふさわしい出版物が模索されているようだ。

 

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『朝日新聞』1999年09月03日
夕刊
活字からデジタル化へ歩みたどる 道立文学館特別企画展 /北海道
 文学の受け皿である本の行く末をさぐる――北海道立文学館(札幌市中央区)で今月下旬から、第九回特別企画展「<本>はどこへ向かうのか〜活字本からデジタルへ」が開かれる。文字の誕生から、デジタル化された本に至る現在、そして未来を展望するユニークな試み。資料やパネルを展示するだけではなく、体験コーナーも取り入れ、活字離れの著しい若者世代など、新しい来館者の開拓を期待している。
 
 展示は「文字の誕生から活版本」でスタート。手書きから活版印刷術の発明までを追う。活版印刷を実演し、その印刷物を配布するほか、懐かしい謄写版(ガリ版)印刷コーナーでは実際に印刷してみることができる。続いて、「本づくりとデジタル技術」では、ワープロの出現とデジタル技術による本作りを紹介。DTP(電子編集)システムの、画面での実演がある。
 「デジタル本の登場」では、今まさに普及しつつあるデジタル化された書籍に注目。十一月一日から全国で試験運用される「電子書籍」の専用読書端末を特別に公開、展示する予定。手に触れて、電子本読書体験ができる。最後の「デジタル時代の文字と本」では、インターネット上で文学作品を公開している「青空文庫」のパソコンの画面を見て、さらに知的所有権問題(グラフィックパネル)を通して、本や文学の未来について考える。
 本を過去と現在、未来と時系列的にコンパクトにまとめた内容は、全体に総論的。各テーマごとにひとつの特別展が開けそうにも思える。「今回は店の陳列ケースのような、あるいは博物館的な展示内容になっているかもしれないが、それが導火線になればいい。それと同時に主催側の意気込みを伝えたい」と同館主査の青柳文吉さんは話す。
 作家や作品を紹介する文学展とは異なり、パソコン画面など形にしにくいものを、どのように見せるか、頭を悩ませている。ふだんの来館者は文学好きの実年層で占められているが、今回は中学生以上が楽しめる展示内容を仕掛け、新たな来館者も見込んでいる。
 コンピューターやインターネットと切っても切り離せなくなりつつある本の、現状とその行く末はいかに。
 会期は二十五日から十二月五日まで(月曜休館)。特別展一般五百円。
 (フリーライター 村中季理)

 

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『読売新聞』1999.09.04
[とれんど99]デジタル社会に書店は
大阪朝刊
 インターネットを中心とするデジタル社会の進展が、私たちが親しんできた書店と書籍を大きく変えそうだ。
 ネット上で注文を受け、宅配便などで読者のもとに直接届けるという「ネット書店」は、大手書店から出版社、さらには宅配便業者のものまで国内で百近くになっている。これを利用し、パソコンで本を探して注文するという人も増えている。
 書籍データベースでは、テーマ、書名、著者名などで検索可能だし、バーチャルの書棚を疑似体験、書評コーナーで評判など確かめてから求めることも出来る。
 確かに便利だ。配達料が必要、届くまで多少の日数がかかる、受け取り、支払いがやや面倒、絶版、品切れのケースもある――など不満も聞かれるが、最近ではこれを解消する新サービスが現れてきた。
 自宅近くのコンビニで都合のよい時に受け取れるようにするネット書店がお目見えするし、日本書籍出版協会は「いま入手可能な本の最新の情報」として、加盟国内六千五百の出版社からの新刊・絶版情報をもとに更新するデータベースを目指している。
 「電子出版」も加速している。出版社、書店などが推進する「電子書籍コンソーシアム」では、ネットを通じて購入、専用端末に取り込んで読む。五千種類が提供される予定だ。電子メールで配信される「オンライン雑誌」も急増している。
 新作をネット公開する作家も現れ、著作権の消滅した文学作品も掲載されている。「少部数の学術論文集、目録や法令集などはこれからはデジタルが主流になる」との声もある。電子図書館構想もあって、「本屋に行かなくても本が買え、読める」時代がすぐそこに来ているのだ。
 若者の活字離れ傾向、「本が売れない」といわれ、書籍の流通・販売システムの問題点も指摘される中で、書店業界の衰退が激しいという。都心で大型書店の登場が話題になる一方で、商店街などの小規模書店は次々に消えているという。加えてデジタル化は、書店にとって、さらなる逆風となりそうなのだ。
 一方で「紙に活字」の本のよさは消えない、との声もある。「内容を深く理解できるのは、やはり本という形態」との見方は根強い。
 書店・出版の将来像をめぐって、さまざまな論議が続いている。「出版社と書店はいかにして消えていくか」といった刺激的なタイトルの本も書店に並んでいる。
 こうした中で鳥取県米子市の今井書店は、地域の生涯学習と出版人の研修の場として「本の学校」づくりを進め、ネット書店が広がり始めた四年前から毎夏に「本のシンポジウム」を開いている。
 全国から約四百人が大山のふもとで意見をかわす。五回目の今回(十―十二日)のテーマは「本で育(はぐく)むいのちの未来」。地方の書店が核となっての、現状打破の道を探る意欲的な取り組みは、全国の注目を集めるが、「揺らぐ出版文化」「本と読書の未来」など過去のテーマからも将来を模索するさまがうかがえる。
 デジタル社会の進展は止めることは出来ないだろう。電子本は確実に増える。それでもやはり本は書店で棚をながめつつ、手にとって選びたいと思う。装丁、帯、そして活字、それらが一体となって「読む気」を刺激してくれる。文芸書はとりわけだ。隣の棚に予期せぬ本を見つける喜びもある。
 かつて町の本屋の主人といえば、本についてよく知っていて、読書案内人の役割も担うなど、「地域の文化人」のイメージがあった。郷土出版など地域文化を支える意欲的な書店も各地にある。そうした文化活動が停滞するようなことになっては大きな損失となるだろう。来たるべきデジタル社会に書店、そして書籍が共存できる道を探りたい。 
                         論説委員 蔵楽 知昭 

 

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『朝日新聞』1999年09月26日
朝刊
「電子書籍」の読者募集 11月からの本実験で(動向傾向)
 通信衛星に飛ばした本のデータを読書リーダー(端末)に取り込んで読む新しい本のシステム「電子読書」の本実験が、十一月から始まる。一般の人に無料でリーダーを貸し出し、読み心地など感想を聞く。実験主体の「電子書籍コンソーシアム」(百五十一社、代表・塚本慶一郎インプレス社長)では「本が好きで、新しいメディアにも興味がある人」を募集している。(宮崎健二)

 実験で使う本のタイトルは、『坊っちゃん』などの古典を含む小説、『あしたのジョー』などのコミック、旅のガイド、参考書、辞典など約五千点。価格は各出版社がこれから決めるが、元の本と同じか、それ以下を目安に考えているという。
 これらのデータを衛星から受けて販売するメディアスタンド(販売端末)は、計十九カ所に設置する。北海道旭川市の旭川冨貴堂、福島市の岩瀬書店八木田店、東京・日本橋の丸善、大阪・曽根崎の旭屋書店本店、福井市の勝木書店本店、鳥取県米子市の今井書店など書店十四店と、東京都内のコンビニエンスストア三店、首都圏の大学生協二店だ。
 読者はこのメディアスタンドから読みたい本のデータを購入する。小型の記録媒体に取り込み、これを読書リーダーに入れて読む。
 実験用のリーダー=写真=は、縦二十一・五センチ、横十七センチ、厚さ二・五センチ。単三電池四本を使い、液晶画面はモノクロでタッチパネルになっている。重さは約七百二十グラム。ページめくりは画面横のボタンで。拡大したり、ページにマークを付ける機能もある。商品化された時の価格が注目されるが、開発したシャープは「読者の反応を見て仕様を固め、そのうえで決めたい」としている。
 このリーダーは十一月から来年二月まで五百人に貸し出される。(1)メディアスタンド設置店に立ち寄ることが可能(2)毎週一点程度自費でコンテンツを購入する(3)アンケートに答える、などが条件。また、これとは別に、電子書籍を専用のソフトを使ってパソコン画面で読んでもらう読者千人も募集中だ。応募締め切りはともに十月四日。なお、メディアスタンド設置店にもデモンストレーション用のリーダーを置く予定だ。
 「販売現場での反応を重視したい」とコンソーシアムの鈴木雄介総務会長。事業化の時期は未定だが、電子書籍がいよいよ読者の目に触れる。
 ◇
 募集要項は、電子書籍コンソーシアムのホームページ(http://www.ebj.gr.jp)で閲覧できる。応募用紙の入手方法など問い合わせは、電話〇三−五二八三−五六一五へ。

 

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『読売新聞』1999.10.29
[けいざい世相]読書にも電子化の波
東京夕刊
 4冊の本を携えて列車に乗り、その時の気分にあった本を選んでページをめくる。本の重さに悩まされることなく気ままな読書を楽しむ夢を、電子本がかなえてくれようとしている。
 出版社や電機メーカー、書店など153社でつくる電子書籍コンソーシアムは11月1日から2000年2月19日まで、500人のモニターによる電子本の実験を行う。
 モニターは東京、大阪などの20か所の書店、コンビニ、大学生協で、本のデータをメモリーカードにコピーする形で購入する。カードには4冊分のデータを保存できる。いわば仮想の本棚だ。カードをA5判ほどの大きさの携帯端末に差し込めば、ボタン操作で、好きな本を選びページをめくることができる。
 2000年1月までに5000冊を電子化する予定で、太宰治の「走れメロス」のような文字だけの小説や、白土三平の「カムイ伝」などの漫画、それに地図なども取りそろえる。価格は1冊あたり200円から2000円で、実際の本より2、3割安い。
 コンソーシアムの及川明雄事務局長は「電子本は活版印刷を発明したグーテンベルク以来の革命だ」と胸を張る。
 データは実際の本をスキャナーで1ページずつ読み取った画像で、衛星回線を通じて書店やコンビニに配信される。出版社や書店は売れ残りや返品を心配する必要がなくなり、紙資源の節約にもつながる。読者は店頭に置かれていない本でも、すぐ入手できるようになる。
 若年層を中心に活字離れは深刻化する一方だ。読売新聞が98年10月に発表した全国世論調査によると、1か月に1冊も本を読まなかった人が53%を占め、調査以来初めて5割を超えた。
 「携帯電話のように普及、定着してくれれば……」。27日に始まった読書週間の中、構造的ともいえる不況にあえぐ出版関係者は電子本に起死回生への期待をかけている。
 (文・山根章義 写真・加藤祐治)      

 

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『読売新聞』1999.11.05
電子書籍の大型実験スタート 本の革命、業界も期待 読み心地は問題なし
東京夕刊
 ◆手にずしり弱点も多く 端末の問題時間が解決
 本を通信衛星経由で配信、デジタルデータのまま専用端末で読む「電子書籍」の大規模な実験が一日から始まった。主要出版社やメーカーなど約百五十社が参加した「電子書籍コンソーシアム」の実証実験で、来年二月の実験終了までに過去最大規模の計五千冊分を電子化して販売する。活版印刷を発明したグーテンベルク以来の本の革命と言われるこの実験に、五百人のモニターの一人として参加した。(大和太郎)
 東京・青山の大型書店に実験初日の一日、電子本のデータを販売する特設コーナーが設けられた。リストからさいとうたかを氏の人気マンガ「ゴルゴ13」、鈴木光司氏のベストセラー小説「リング」を選んで、持参したディスクを店員に渡すと、十分程度でデータの書き込みが終了した。
 このデータを読むために使うのは、シャープが開発した専用端末の「電子書籍リーダー」。データ収録後のディスクを挿入、電源を入れると仮想の「本棚」が現れ、買った本の一覧が表示された。
 電子本の「実験小売価格」は紙の本と比べ、二―五割安。小説なら三、四冊がディスク一枚に収まる。
 さて実際の「読み心地」はどうか。まず、「ゴルゴ13」。セリフの字が少し小さいと感じたぐらいで一気に読破。ボタン一つで次々とページがめくれるのは快適だ。マンガとの相性はかなり良い。
 次に、「リング」。小説では活字の見やすさが決定的に重要だが、「漢字のルビが読めること」を条件に開発された液晶画面だけに、鮮明に表示された。ガラス状の表面に照明の光が映り込むのは気になったが、慣れれば電子書籍であることを忘れて物語に没入できる。一定速度で自動的にページをめくる機能、表示の拡大など、デジタル本ならではの便利さもある。
 もっとも、今回の専用端末は、重さが約八百グラムとノートパソコン並みで、実際に持ってみると手にずしりとくる。通勤電車で立って読むにはつらい。電池も二時間しかもたないなど、実験用モデルとはいえ弱点が目立つ仕様だ。
 しかし、コンソーシアムでも「今回の端末はあくまで実験用。事業化の際はモニターの意見を基に改良する」と強調している。
 紙の本の流通が行き詰まりを見せる中、資源節約など多くのメリットを持つ電子書籍の将来性には、業界でも大きな期待を寄せている。
 ◆中身だけネットで配信
 コンソーシアムではネット配信も行うが、こうしたインターネットを利用した「電子書籍」もどんどん身近になっている。
 パソコン通信全盛の九五年からデータとしての本を販売してきたのが、フジオンラインシステム(本社・東京)の「電子書店パピレス」。今では角川書店など五十社の協力で二千百五十タイトルをそろえ、月一万三千部相当のダウンロード実績を誇る。
 出版社でも独自に書籍データ販売に取り組むところが出ており、中堅出版社「光文社」では自社のウェブサイト「光文社電子書店」で書籍データを販売している。
 この「電子書店」や「パピレス」で最近人気を集めているのが、読書専用ソフト「TTVブックリーダ」を利用するシャープの小型携帯端末「ザウルス」向けのコンテンツだ。「TTVブックリーダ」は、川崎市のソフト会社社員・原田昌知さんが趣味で開発、今年二月に無料で公開したもので、シャープでも製品の一部に正式採用した。
 こうしたソフトを使えば、本のデータもパソコン画面に縛られずに好みの端末で読める。このため、ボランティアの草の根の努力で既存の本をデータ化して提供する動きも出始めた。
 ホームページ「青空文庫」もその一つで、同文庫のデータを携帯端末の中でも世界的に高いシェアを誇るIBMの「ワークパッド」(パームOS搭載機)向けに、変換して掲載しているのが「青空文庫パーム本の部屋」。主に著作権の切れた作品を収録し、今年八月の開設以来、作品数は約六百点に達している。
    ◇   ◇
 「電子書籍コンソーシアム」
http://www.ebj.gr.jp/
 「電子書店パピレス」
http://www.papy.co.jp/
 「光文社電子書店」
http://www.kobunsha.com/kappa/index.html
 「青空文庫」
http://www.aozora.gr.jp/
 「青空文庫パーム本の部屋」
http://members.xoom.com/palmacx/aozorapalm.html

 

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『読売新聞』1999.11.27
[サタデーわいど]地方の情報ワンクリック 電子本で発信 
西部夕刊
 ◆映像や方言交え生き生き 「オキナワなんでも事典」 距離のハンデ超えた
 電子メディアの活用が、地方出版社のあり方を変えようとしている。書籍のCD―ROM(コンパクトディスクを使った読み出し専用メモリー)化やインターネットを利用した配信で、従来の紙と活字からの脱却が可能になり、地方からの情報発信が、より容易になったためだ。ノウハウさえ身に着ければ、個人でも開業が出来ることから、今後、全国的に増えると予想されている。
 十月に発売されたCD―ROM本「オキナワなんでも事典」。アニメや年表、図をふんだんに盛り込み、「あがぁ」(痛い時の感嘆詞)から「普天間飛行場」「ンタマギルー」(運玉義留=沖縄芝居の義賊)まで四百三十九項目を収録する。
 企画・制作を担当したのは、那覇市長田の「インパラ」。昨年八月に設立された電子出版社で、東京から沖縄に移住した広瀬智子さんが設立し、この本が初めての仕事。
 各項目は、高橋治、椎名誠、宮脇俊三さんら本土の作家や、一線で活躍する地元の文化人ら計百七十人がエッセー風に書いた豪華な内容。さらに、沖縄の盆踊り「エイサー」を開くと、説明文とビデオ映像が現れ、指笛の音や民謡が流れる。久高島(くだかじま)で十二年に一度ある神事「イザイホー」では、祈願する神女の言葉も聞け、方言の説明文をクリックすると、スタジオで録音した八百五十語を聞くことができる。文章に加え、音声や画像まで収録できるCD―ROMの特性をフルに生かして制作された。
 「なんでも事典」のベースは、沖縄に住む作家の池澤夏樹さんらが、七年前に出版した「沖縄いろいろ事典」。この事典の改訂を検討中、島のその後の激変ぶりも取り込み、新しいデータを追加するにはCD―ROMが最適、と広瀬さんが提案した。東京の電子出版会社と提携した結果、通産省の沖縄のマルチメディアコンテンツ市場整備事業に採用され、支援金二千五百万円が下りた。
 「紙のメディアの仕事は東京と連携しないと仕事がやりにくい。距離のハンデを乗り越えるためには電子出版の道を選ばざるを得なかった」と広瀬さん。「地方の出版社は流通ルートに乗せるのが難しかったが、インターネットで注文を受けるので地方からも全国展開ができる」と電子メディアの利点をあげる。
 沖縄サミットを意識し、英語版「なんでも事典」も作る予定で、「納得できるものを年に一つ、出していきたい」と語る。
   ◎  ◎
 一方、新潟県岩室村和納十一区の猫乃電子出版。電子出版社のはしりの一つで、これまでにCD―ROM版の本七冊を出版した。同県内在住作家の小説や詩などで、代表の田辺浩昭さんは、電子メディアの活用により、「地方でもハンデを感じない」と言う。
 注文を受けてから制作するため、在庫もなく、経営的には苦しくても「経費がかからない分、売れなくてもきつくない」と言う。社名自体が「電子出版は猫でも出来る」ことなどにちなんで付けており、「全国的に増える」と断言する。オキナワなんでも事典(税別三千八百円)の問い合わせは「インパラ」(098・832・0555、ホームページのアドレスはhttp://www.impala.co.jp)

 ◆辞書も小説も パソコン普及で急成長
 ◆コンパクト、安さが人気
 グーテンベルク以来の本の革命と言われる「電子本」。CD―ROMなどの形があるパッケージ系と、インターネット経由などで本のデータを直接、パソコンに読み込むネットワーク系がある。
 これらの出版は一九八〇年代から始まったが、最近では通信衛星経由で配信された本のデータを専用端末で読む「電子書籍」も試行され、急激に変革が進んでいる。近い将来、本は書店で購入するのではなく、宇宙から降り注いでくるデータをキャッチして読む時代が来るのかもしれない。
    ◎   ◎
 通産省の外郭団体、マルチメディアコンテンツ振興協会(東京)は、事典など「リファレンス」分野のCD―ROMについて、九九年の売り上げを前年比32%増の三百五十五億円と予測している。
 九八年は二百六十九億円で前年より9%の減少だった。しかし、「息長く何年も売れ続ける分野なので、一度減ってもそのままではないはず。学校へのパソコン導入が進んでおり、学習教材としての需要も伸びる要素がある」というのが、増加を見込む理由。
 そのほか、「教育・教養娯楽」分野も、業界内に資格試験や英会話など、社会人向けの学習ソフトの成長への期待があることなどから、九九年の売り上げは前年に比べて4%多い二百二十四億円を予測している。
 出版物に関する調査機関、全国出版協会出版科学研究所(東京)によると、九八年に取次店を経由して全国の書店で販売されたCD―ROM単独の商品は二百八十七点。学習教材、スポーツの映像記録などが多いが、一部には小説なども含まれている。
    ◎   ◎
 北九州市小倉北区のブックセンタークエスト小倉店では、電子書籍として事典類のほか、美術関係、地図などを幅広く扱っており、二年ほど前に二階に専門のコーナーを設けた。
 コンパクトで安く入手できるのが人気の秘密のようで、百科事典の場合、書籍なら全二十数巻で二十万円以上したものが、一枚に収録して五万円台のものもある。辞書では「広辞苑」のCD―ROM版が昨年十一月の発売から二百本以上売れた、という。
 専門書のマネジャー、久持晴義さん(37)は「ここ二年ぐらいで急激に増えてきた。辞書なら本を開いた方が早いような気もするけれど、パソコンが普及し、使ってみようという人が増えているのでしょう」と話す。
 また福岡市中央区の紀伊国屋福岡天神店でも広辞苑などの事典、辞書類をはじめ、最近は株式関係などが売れており、購買層は若い人から年配まで幅広いという。

 ◆在庫心配なし 環境にも優しく
 電子書籍は、今月初めから主要出版社やメーカーなど約百五十社が参加して実験がスタート。来年二月までの期間中、約五千冊を電子化し、五百人のモニターに一冊当たり二百円から二千円で提供する。衛星回線を通じて書店やコンビニに配信された書籍のデータを、持参したディスクに写し込んでもらうシステム。
 実際の本より二―五割安いうえ、紙の本と比べ、返本や品切れが生じず、森林資源の保護にもつながると期待されている。「読書は紙に活字」派には物足りないだろうが、「地球にやさしく」も売り物になっている。

 

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『朝日新聞』1999年11月30日
朝刊
市内無線通信、自前の設備で 音楽・書籍をネット配信 東芝参入へ
 東芝は二十九日、インターネットを通じて音楽や書籍などのコンテンツ(情報の内容)を配信するため、来年中に通信事業に参入する方針を明らかにした。無線による市内通信網を構築し、企業・家庭のパソコンや携帯情報端末を結ぶ。東芝はコンテンツ配信のためレコード会社や出版社などと合弁会社をつくる計画で、ネット事業の強化には自前の通信インフラが不可欠と判断した。
 基地局などの設備を自ら持って通信サービスを提供する第一種電気通信事業者の許可を来年、郵政相に申請する。この許可はソニーが六月にメーカーとして初めて取得したが、総合電機メーカーで申請方針を表明したのは初めて。
 東芝が参入するのは、WLL(ワイヤレス・ローカル・ループ)と呼ばれる、無線を利用した市内通信網。市内通信は従来NTTが独占してきた分野だが、無線なら電線や電柱、地下設備が不要なため、低コストで短期間に通信網を築けるという利点がある。NTTなどが持つ長距離通信回線に無線基地局を接続することにより、家庭や個人との間で電波をやりとりする。東芝はレコード会社の東芝EMIをはじめ、角川書店と合弁で設立した電子書籍会社などコンテンツ制作会社をグループ内に抱える。これらの会社で制作したコンテンツをインターネットで配信する新会社をコンテンツごとに合弁で設立する計画だ。

 

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『読売新聞』1999.12.19
静止画表示、電力いらず ミノルタが新液晶ディスプレー開発 
大阪朝刊
 ミノルタは十八日、電力をほとんど使わず、画像が鮮明なカラープラスチック液晶のディスプレーを開発したことを明らかにした。同社は、紙のポスターや電光掲示板に代わる媒体として期待できるとしている。静止画を表示するカイラルネマティック(CN)という方式の液晶で、すでに東京都内のレストランや旅行会社が、「液晶メニュー」や「液晶パンフレット」として試験的に導入、二〇〇一年ごろの実用化を目指す。
 ディスプレーは、表示部分がA4判の大きさ。通常の液晶パネルのガラス基板に比べて軽量で薄いプラスチック基板を使い、回路部分も含めた厚さは二センチ程度にした。メモリーカードに、インターネットなどから画像を取り込むことも可能だ。画像を切り替える時しか電力が必要ないことから、駅や電車内などのポスター、店舗のディスプレーやカタログなどに適している。電子書籍や電子新聞への利用も検討されている。

 

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『読売新聞』1999.12.25
99年の出版販売額、3年連続前年割れの公算 返品率は改善 デジタル化進む
東京夕刊
 九七、九八年と二年連続でマイナス成長となった出版界。九九年も厳しい局面が続き、三年連続の前年割れとなる公算が大きくなっている。
 出版科学研究所のまとめによると、今年の販売金額は十月期までの累計で前年同期比3・0%減の二兆七百五十四億円となり、八か月連続で前年割れが続いている。書籍は八千五百三十七億円(前年同期比1・3%減)、雑誌は一兆二千二百十六億円(同4・2%減)。雑誌は定期雑誌だけでなく、コミックスが振るわず、すべての月で前年を下回った。
 ここ数年、書籍の新刊点数が大幅に増え、売り上げ減による返品増と本の短命化が問題とされてきたが、九九年は新刊の発行が抑制される傾向が強まった。その結果、書籍全体の返品率も前年同期比1・2ポイント減の39・5%に改善された。しかし、売り上げも1・3%減となり、出版社が今後も新刊点数を抑えられるかどうかは、微妙な情勢だ。
 デジタル技術を積極的に取り込む動きが目立った年でもあった。主要出版社やメーカーなど約百五十社が参加した「電子書籍コンソーシアム」の実証実験が十一月スタート。デジタルデータに変換した本を通信衛星を経由して配信、専用端末で読むシステムで、結果が注目される。
 書籍を電子データ化し、注文に応じて印刷するオンデマンド出版の試みも相次いだ。日販、小学館などによる「ブッキング」、凸版印刷とトーハンが提携した「デジタル・パブリッシング・サービス」、紀伊国屋書店の「電写本」などが参入。重版の予定のない本や資料など少部数出版を可能にする試みとして期待がかかっている。
 インターネットで本の注文ができる「オンライン書店」、在庫情報を網羅したデータベースの構築も目立った。「本と本屋の革命」が急速に進んでいる。

 

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『読売新聞』1999.12.26
自費出版をネットで手軽に シャープが2000年夏めどにコーナー設置 
大阪朝刊
 シャープは二十五日、インターネットを通じて電子書籍の配信などを手掛けている情報提供サービスの「スペースタウン」に、二〇〇〇年夏をめどに、自費出版コーナーを設けることを明らかにした。費用は個人で本を出版するよりも安く抑える方針で、利用者にとっても自分史などの作品を幅広い層に読んでもらう手段となりそうだ。
 スペースタウンの電子書籍は携帯情報端末の「ザウルス」やパソコンなどにデータを取り込んで読む仕組み。出版社の光文社など二社と提携して九九年七月から文庫本の有料配信サービスを始め、約半年間で一万冊以上を「販売」した。
 自費出版コーナーはインターネットのホームページ上で作品を公募し、専門のスタッフが選考したうえで、スペースタウンに有料で一定期間、掲載する。シャープでは、一般の書店では見つけにくい趣味や地域色の濃い作品などでの利用を見込んでいる。


*作成:植村 要
UP: 20100706  REV:
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