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電子書籍 1997

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■新聞記事



『朝日新聞』1997年01月01日
朝刊
デジタル生活、ぐーんと接近 デジタル社会(新年特集・第4部)
 デジタルという言葉がとびかっている。
 人間が文字を発明してから、「情報」は紙などに記録され、本や新聞、手紙などのモノとして人々の間を行き来してきた。
 電子媒体には、色も形も重さもない。デジタル(数値)化された電気信号が、光の速度でネットワークの中を走っているだけだ。
 文字だけではない。絵や動画、音声、最近では三次元空間や「さわりごこち」までがデジタル化される。コンピューター上に表現されたそうした多種類の情報を融合させ、できあがったものが、仮想現実(バーチャルリアリティー)だ。
 まるで生き物のようなパソコンに「親しむ」。地球の裏側にある図書館にアクセスして「学ぶ」。遠くの友人と「話し」ながら、仮想現実を「感じる」。これらの機能が、ネットワークを通してパソコン上で融合する。
 加速する技術革新は、そんなデジタル社会の実現をめざす。
(略)
 ●学ぶ・記録する データーベース
 <電子ブック> 重さ60キロもある百科事典26巻がCD−ROM1枚に収まってしまう。電子ブックプレーヤーだけでなくパソコンでも読める。
 <デジタルカメラ> パソコンやカメラ同士の画像転送が可能なデジタルカメラ。一度に192枚まで撮影できる。昨年の市場規模は年間100万台という。
 <DVDとプレーヤー> パソコン用はCD約七枚分の情報量が記録可能。「二〇〇〇年にはDVD対応機器が一億二千万台売れる」(東芝)との見方も。
 ○小さな書斎も図書館に
 調べものをするために、図書館に足を運ぶ。だが、夜は早く閉まってしまう。もし、ネットワークの中に図書館があれば、いつでも、どこからでも必要な資料が手に入る。
 日本でも、通産省の後押しで「電子図書館」の実験が進んでいる。情報処理振興事業協会の情報基盤センター(神奈川県藤沢市)のコンピューターシステムに、小さな図書館なみの情報がためこまれている。国宝級の書画から手塚治虫の漫画まで約一千万ページ分だ。これがハードディスクやCD−ROM=写真=の中に記録され、十五畳ほどのスペースに収納されている。
 利用者は、インターネットを通じて情報を自分のパソコンに引き出す仕組みだ。図書館が、自宅にいながら深夜でも使える自分のデータベースになる。
 だが、動画や音声の情報量はとても大きい。まるごと電話回線を通じて呼び込む(ダウンロード)のは時間がかかりすぎる。それにCD−ROMは内容の更新ができない弱点がある。
 そこで、書き換えのできるMO(光磁気ディスク)などに基本的な情報を記録しておき、追加の最新情報は、ネットワークを通して取り込み、内容を更新する。そんな「出版」も研究されている。
 いま注目されているDVD(デジタル・ビデオ・ディスク)は、音声や映像をふんだんに使うマルチメディアのコンテンツ(情報の中身)を収録する大容量記憶媒体だ。
 DVDに録画した衛星デジタル放送番組をパソコンに取り込んで、好きなように加工することも可能になる。
(略)

 

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『朝日新聞』1997年01月21日
朝刊
「東京国際ブックフェア97」開催 23日から東京国際展示場/東京
 三十カ国から三百の出版社が参加する「東京国際ブックフェア97」が、二十三日から二十六日まで江東区有明三丁目の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開かれる。二十五日と二十六日は一般にも公開される。今回は特に、主婦や子供向けに、料理やゲームのCD−ROMソフトを五百本以上展示する「電子出版・マルチメディアフェア」も一緒に開かれる。
 フェアは、日本書籍出版協会など出版関係の七団体が主催して、毎年開いている。今年で四回目。これまでは各国の書籍、雑誌の出版社が版権の売買などを行ってきたが、今年はこうした業界関係者のためだけでなく、会場の四分の一以上を一般向けにCD―ROMソフトやプレーヤー、電子ブックなどを展示するコーナーとし、実際にパソコンでソフトが動かせるようにする。
 児童書も、出展する出版社が昨年のほぼ倍の二十八社になる。また、主催団体の一つの洋書輸入協会の有志による洋書バーゲンも行われ、美術や料理、絵本、音楽など、五万冊以上の洋書を店頭価格の三割から八割引きで販売するという。
 開催時間は午前十時から午後五時まで。一般は入場料千二百円、小学生以下無料。

 

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『朝日新聞』1997年01月23日
朝刊
マルチメディア百科、日米が熱い事典対決(ニュース・スナップ)
 「本格的なマルチメディア百科事典」という触れ込みのCD−ROM百科事典が、二月から相次いで登場する。マイクロソフトの「エンカルタ97」と、日立デジタル平凡社の「マイペディア97(仮称)」だ。米国産対国産。この熱い対決は、電子出版の新しいページを開きそうだ。
 (宮崎健二)
 「米国での売れ行きは累計で八百万本」「安い製品ではないが、最高の価値を提供」。二十日、東京都内で開かれた「エンカルタ97エンサイクロペディア」の発表会。あいさつに立つマイクロソフトの幹部は、自信に満ちた言葉を続けた。
 「エンカルタ」は、一九九三年に米国で売り出された。日本版は専門家約五百人に翻訳と執筆を依頼し、全項目の三分の一を新たに書き起こしたという。
 高速検索のほか、項目間にのべ十万五千の関連づけをするなど、検索機能を高めた。惑星の軌道を動画で見せるなど、活字の百科事典ではできない機能や遊びの要素も盛り込んでいる。
 二月十四日発売。オープン価格で、店では一万円台半ばくらいになりそうだ。
 この「エンカルタ」の「上陸」を迎え撃つのが、「マイペディア97」。一九一四年の創業以来、百科事典とともに歩んできた平凡社と、日立製作所が昨年十月に設立した日立デジタル平凡社(HDH)が、急ピッチで制作中だ。
 「『エンカルタ』は注目を集めるだろうが、こちらはこちらで日本製の百科事典を提供する。あとは読者に判断してもらう」と、平凡社で長く百科事典を手がけた龍沢武取締役。しにせの意地がのぞく。
 平凡社の一巻本百科事典「マイペディア」を全面改訂し、項目も六千ほど増やす予定。こちらも事典の基本となる検索機能の充実に懸命だ。発売は四月か五月になりそうだが、藤井泰文・電子メディア編集部長は「中身では上回る」と自信を見せる。価格も「できれば『エンカルタ』より安くしたい」と龍沢取締役。
 対抗意識が強いのは、舞台裏が関係している。
 実は、「エンカルタ」日本版の編集にあたり、当初マイクロソフトは平凡社に協力を打診していた。「だが、条件が合わなかった」と龍沢取締役は明かす。
 そして、「エンカルタ」の編集顧問に迎えられたのが小林祥一郎氏。七〇年代半ばに平凡社が「世界大百科事典」を企画した時の編集キャップで、当時龍沢氏は最年少のスタッフだった。その後、ともに同社の編集局長を経験。今回は、いわば「師弟対決」だ。
 さらに、マイクロソフトが米国版を基本に各国版を出す世界戦略をとっているのに対して、HDHは、百科事典はその国の文化を前提に編まれるべきだ、との立場から他国の出版社との「連合」を模索するなど、基本姿勢も対照的だ。
 電子出版の分野では事典、辞書類はもともと有力なソフト。改訂も活字版より容易だ。二つの事典の登場を皮切りに、市場が広がるとの期待感が関係者の間にある。また、従来、出版社は活字版の売れ行きへの影響を恐れて価格を高く設定する傾向があったが、今後は安くなりそうだ。
 もっとも今回の対決は、マルチメディア百科事典の競争の第一ラウンドにすぎない。次に控えるのは大百科事典。HDHは「世界大百科事典」(全三十五巻)のマルチメディア版を年内に発売。小学館も、昨年電子ブック版で出してヒットさせた「日本大百科全書」(全二十六巻)のCD−ROM版を早ければ年内に出す予定だ。
 辞典類のマルチメディア化も進む。小学館は二月に「大辞泉」を発売。また、「国語大辞典」など同社の六種類の辞典を収めた「ブックシェルフ」をマイクロソフトと共同開発、三月に出す。インター・メディア部の鈴木雄介次長は、「これまでは手探りだったが、今年は各社とも電子出版に腰が入っている」。
 さらに、その先にはオンライン版の百科事典を立ち上げ、CD−ROM版とつなぐ計画も。特に「世界大百科事典」の場合、「ネットワーク上の立ち上げの方が先になる予定」(HDHの藤井部長)という。
 こうした動きに、合庭惇・静岡大教授(情報社会論)は「今はインターネット全体が百科事典やデータベースといっていい。まだ有益な情報とそうでないものが混在している状態だが、新しい事典は欲しい情報を探す入り口として使われるだろう」と話す。
 ○百科事典、新たな離陸の年
 出版とマルチメディアに詳しい評論家の紀田順一郎さんの話
 開発段階の二つの事典を見せてもらったが、画像や音声が豊富。従来の電子事典は活字版を移し替えるだけだったので、この点は大きく違う。使いやすさの面では、検索は一応評価できるし、ハードコピーが容易にとれるのもいい。今年は百科事典の新たな離陸の年だ、と実感した。
 大ヒットになるかどうかは、価格次第。将来は1万円を切ることがポイントだろう。「エンカルタ97」は1項目あたりの説明の多い中項目百科なのに対し、「マイペディア97」は項目数の多い小項目百科に徹している印象だ。性格が違うので、ユーザーはよく比較してから選んだ方がいいかもしれない。
 ◇2つの百科事典の比較
          エンカルタ97  マイペディア97
  項目数      17,500    62,000
  写真と絵      6,143     8,000
  ビデオとアニメ     112       150
  <注>「マイペディア97」は現段階での予定

 

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『朝日新聞』1997年03月05日
夕刊
辞書引き 遠藤諭(パソ先案内人)
 パソコンで紙よりも便利に使えるものに辞書や事典がある。目的の情報にたどりつくまでの時間が、圧倒的に短くなる。
 パソコンを買うと英和・和英・国語などのCD−ROM辞書がついてくることもある。しかし、パソコンショップには、もっといろいろな電子辞書類が並んでいるし、書店の本の棚で売られているCD−ROM辞書もある。
 パソコンで辞書を引きたいなら、電子ブックも見てみる価値がある。もともと、専用プレーヤーで読むためにカートリッジに入っているが、中身はシングルサイズのCD−ROM。ドライブに入れてやれば、ウィンドウズやマッキントッシュから読めるのだ。パソコンで電子ブックを読むためのソフトは、一万円くらいで発売されている。
 ある翻訳家がエッセーの中で「私ではなく自分の使っている優れた辞書が訳しているのだ」と述べていた。その人の読み書きの質や考え方にもかかわってくる辞書や事典。パソコンでも、じっくり慎重に選びたいものです。
 (月刊アスキー編集長)

 

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『朝日新聞』1997年04月12日
朝刊
電子ブック『知恵蔵97』発売中<社告>
 朝日現代用語事典・知恵蔵を八センチCD−ROMに加工。付録の『ネーチャーガイド・日本』、および項目関連の朝日新聞記事二千本、文化放送の「マイクの一年」(音声)も収録。
 電子ブックプレーヤーのほか、パソコン(ウィンドウズ、マッキントッシュ)でも検索ソフトがあれば使用できます。
 本体価格五千百円(税別)。お求めはお近くの書店、電器店、ASA(朝日新聞販売所)、インターネットhttp://opendoors.asahi−np.co.jp/でどうぞ。

 

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『読売新聞』1997.05.21
[サイバー・トーク]長谷川秀記氏 新しい情報手段が開く可能性
東京朝刊
 ◇「自由国民社」会長
 三つの特色のあるマルチメディア作品の制作者と会う機会に恵まれた。
 ひとつ目は聖パウロ女子修道会のホームページ(http://www.tosho.co.jp/pauline/)。静かでそして内容の濃いページだ。そのページへのアクセスが順調に伸びていると聞く。
 ふたつ目は『浄土真宗聖典』(本願寺出版社)という仏教経典の電子ブック。経典を多種多様な検索でひもとける力作だ。電子ブックの隠れたベストセラーだという。
 宗教とマルチメディアの組み合わせは一瞬ちぐはぐな気持ちがするが、制作担当者は当然のことと感じていた。
 聖パウロ女子修道会はその時代のもっとも効果的で迅速なコミュニケーション手段を使って伝道することが活動の基本理念だという。同修道会が成立した時代、その手段は印刷だった。そして今はインターネットによる伝道を静かに実践している。
 一方、浄土真宗の中興の祖、蓮如は手紙で布教を行ったことで知られている。逆境の中でも手紙という新しいメディアを使用すれば全国に布教をすることが可能になる。その手紙のことを「御文章」とか「お文(ふみ)」と呼び、全国に広がる真宗の拠点はこの新メディアで成立したのだそうだ。
 初期の宗教は時の権力に弾圧されたり、また仮に弾圧がなかったとしても大きな組織や資金には恵まれなかっただろう。その状況の中で布教のために先端の情報流通手段を選択した。
 三つめは宗教ではない。最近、聴覚障害の女性の方とパソコン通信を使って仕事の打ち合わせをする機会があった。
 あたりまえの話であるが、パソコン通信上では彼女との間にコミュニケーションの壁をまったく感じない。実際にお会いするまでハンディキャップを持った方という実感はわかなかった。彼女は手話学習のマルチメディアタイトル『手にことばを・入門編』=富士通=(http://www.fujitsu.co.jp/hypertext/fmworld/special/kotoba/に案内があります)を開発した女性である。彼女もまた新しい情報流通手段を選択した。
 話を伺ったのは別々の機会だったが、三人が期せずして同じ言葉で話を締めくくったのが印象的だった。
 「だから我々はマルチメディアに取り組んでいるのです」


*作成:植村 要
UP: 20100706  REV:
情報・コミュニケーション/と障害者  ◇視覚障害者と読書  ◇電子書籍  ◇テキストデータ入手可能な本 
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