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電子書籍 1991

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■新聞記事



『朝日新聞』1991年05月19日
朝刊
新刊洪水の中、本の情報は今 網羅的な紹介は限界?
 読者向けに月2回、近刊情報を提供している『これから出る本』(日本書籍出版協会)が今月、創刊15周年を迎えた。春には、岩波書店から情報誌『よむ』が創刊され、NHK衛星放送でも「週刊ブックレビュー」が始まるなど、書籍情報を巡り新しい動きが目立つ。平均して1日110冊の新刊が出ては消える出版界。読者向けの情報はますます重要となっているが、価値観やライフスタイルの多様化で、読者のニーズにも変化が出ているようだ。
 『これから出る本』は76年に出版、書店、取次が協力して創刊した。半月から1カ月先の近刊について、出版社から掲載料を取り、書店が100部500円で買い、読者に無料で配布する。現在全国で約80万部。「本を注文しても届くのに時間がかかるという利用者の声に対し、出版前に予告をすれば、早めに注文できて、入手も早くなるという狙いだった」と、重久昌明・日本書籍出版協会事務局長。
 1冊ごとに簡単な内容紹介があり、読者にとっては重宝で、宣伝力の弱い中小出版社にとっては“強い味方”。だが、年間新刊発行点数が76年の2万3500点から90年には4万500点と急激に伸び、新刊の寿命が短くなるなど、本を巡る状況は大きく変化した。「いまは実用的な本が増え、本は文化を担うものというよりも、それ自体が情報という面が強い。本情報も早く多くを伝えることが求められるが、それさえも限界に来ている」と重久さん
 そんな中、個人に網羅的情報を提供する狙いで書誌情報検索用のCD−ROMソフト『本の探偵』(メディアパル・8,000円)が、このほど発売された。電子ブックという別売りの本体を使う方式。1枚の小型ディスクに、過去5年間に出た新刊書約18万点の書名、著者名、出版社のデータを収め、テーマやジャンルで検索できる。データを5年間に限ったのは、「ディスクの容量が限られ、古くなると品切れになるものも多いので」と発行元。が、基本的な文献やロングセラーが出てこないのは、物足りない。
 逆に、図書館司書が選んでいる『図書館でそろえたいこどもの本』(日本図書館協会)は、「文化の蓄積の中から、よい本を子供に与えたい」と、ロングセラーを重視している。毎月1回、ベテラン司書8人が集まって本を読み直し、議論する。「えほん」編は3年間かけて730点余りを選び、昨秋刊行。しかし、うち120点ほどが品切れ、絶版という。昨春から選書に取りかかっている「フィクション」編は、あと2、3年かかるという。千葉県立中央図書館司書の荒井督子編集委員長は「子どもの本は子どもに読み継がれていくものです。リストには新刊重視の出版状況への警鐘の意味もある」という。
 3、4年かかっても基本図書を選ぶ作業が、なお意味を持つのは児童書ならではとも言える。一般書では、客観的に本を選び出すこと自体が困難で、その意味もなくなりつつある。
 例えば、『よむ』は文化色の強い岩波書店が出す本の情報誌として注目された。「戦争」「歴史」などの特集を組み、文化人が個性を前面に出して本を選んで紹介するコーナーが目玉。創刊号はレイアウトや印刷などが不評だったほか、「本格的な書評誌が出ると思っていたのに期待はずれ」の感想もあったそうだ。30歳の相良剛編集長は「本情報はあふれ、もう網羅的な情報はいらないし、ベスト・チョイスを提供するのは無理。また、一部の読書人向けでもない。ある人が自分を出しながら紹介し、読者からの反響も載せ、本や情報に主体的にかかわる場になれば」と語る。
 日曜の朝、NHK衛星第2で45分間放送する「週刊ブックレビュー」でも、16人の書評委員が最近出た本の中から心に残ったものを紹介するコーナーが中心。担当の岡野正次チーフディレクターは「スタンダードな読書案内ではなく、出演者の私的な視点で本を紹介してもらい、本の面白さを出したい」と、番組の狙いを語る。
 パソコン通信ネットワーク「ニフティサーブ」(会員数22万人)でも「いい本見つけた」という書籍情報データベースが、ニュース速報に匹敵する利用数という。毎日1冊新しい本の紹介が1600字で入る。余り話題にならないようなこだわりの強い本が目立つ。「パソコン通信は私的なメディアだから、スタンダードな情報よりも、選ぶ人間の個性が出るものが求められる」と情報作成を請け負う編集プロダクション。
 本紙書評委員で、NHK衛星放送の書評委員でもある作家の常盤新平さんは、「今はもう本を選ぶ客観的な基準が失われている。本を選ぶ場合も個人的な好みが先行することになるが、書店で平積みになり、黙っていても話題になり、売れる本よりも、できるだけ中小出版社や新人の本など埋もれる本の中から、訴えてくるものを選びたいと思う」と話していた。

 

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『朝日新聞』1991年12月24日
夕刊
聖書をパソコンで読む時代(取材ファイル)
 聖書が相次いで電子出版された。季刊『哲学』秋号で「電子聖書」を特集した哲学書房が、日本聖書協会「新共同訳」をフロッピーディスクに入れた『ハイパーバイブル』を発売し、日本聖書刊行会は「新改訳」を『電子ブック版』で出した。こちらは近くパソコンと接続できる機種が出る。電子出版は辞書など検索用中心だが、15世紀にグーテンベルクが最初に活字印刷したのが聖書だったことを考えると、パソコンで「読む」時代の先駆けか、とも思う。
 しかし、事は単純ではない。『哲学』巻末の『ハイパーバイブル』申込書に付いた「契約書」には、「コピーしたり、コピーを譲渡もしくは販売したりしない」「聖書本文に変更を加えたテキストを作成したり、これを譲渡もしくは販売したりしない」とあった。コピーや加工販売を禁じるのは著作権者の当然の主張だが、使い方まで制約するのはどうか。本を買うのに汚したり、書き込んだりしないと契約するようで妙だ。利用者が情報を加工できるのが電子情報の利点の1つでもある。
 日本聖書協会の佐藤邦宏総主事は、「聖書を新しい時代に適応させるのが狙いだが、聖書は一点一画変えてはならないもので、勝手な改変は困る」と説明するが、「個人使用の範囲で変えるのは阻止しようがない」とも。日本聖書刊行会は誓約書をとらないが、「勝手に加工された聖書が通信で流れるおそれもある。しかし、使う人の善意を信じるしかない」という。
 電子聖書では、あるキーワードを含む文章を検索し対照したり、関連する章句を参照したり、という読み方が容易にできる。聖書の数千年にわたる「読み」の蓄積をキー操作でたどるわけだ。それにとどまらない。読者は読むことを通して新しい意味をくみあげ、新しいテキストを織り始める。もし聖書がなお魅力的な読み物であれば、それを止めることは出来ないだろう。
 活字印刷術が宗教改革につながったと言われる。「我々は新たにグーテンベルクの冒険をしなくてはならないだろう。それは分かっている」。佐藤総主事のこの言葉は暗示的だ。(泰)


*作成:植村 要
UP: 20100706  REV:
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