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電子書籍 -1990

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■新聞記事



『朝日新聞』1990年05月16日
朝刊
ソニーが手のひらサイズのブックプレーヤー発売
 ソニーは、広辞苑や英和辞典から単語を検索したり、ホテル、旅館などの情報を拾い読みすることができる手のひらサイズの超小型液晶画面装置「電子ブックプレーヤー」を7月1日から売りだす。コンパクトディスク(CD)に文字情報を記録したCD−ROM(読み出し専用メモリー=別売り)をこの装置に入れて使う。CD−ROMは「電子ブック」と名付け、岩波書店など14社が7月に発売する。縦約16センチ、横約11センチ、幅約4センチ。本体の重量は550グラムで、手のひらに載せて使うことができる。横15文字、縦10行を表示できる液晶画面がついており、直径8センチのCD−ROMに入力した電子ブックの内容を、画面に映し出す。このほか、「シングル」と呼ばれる8センチの音楽用CDを入れればCDプレーヤーとしても使える。価格は、本体のほか三省堂の現代国語辞典をはじめ国語、英和、和英などの辞典5冊分を入力した電子ブックが1枚ついて5万8000円(消費税別)。

 

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『読売新聞』1990.05.16
手のひらサイズのCD情報検索機 ソニーが開発、7月から発売
東京朝刊
 ソニーは十五日、CD―ROM(読み出し専用メモリー)を使った手のひらサイズの情報検索機「データディスクマン DD―1」を開発し、七月一日から発売すると発表した。本体の重さが五百五十グラムと持ち運びができ、専用のCD「電子ブック」を組み入れるだけで英単語や漢字、歌謡曲の歌詞などを簡単に画面に呼び出せる。本体の発売と同時に十六タイトルの専用CDも発売される。
 必要な情報は、キー操作で呼び出し、液晶画面に漢字かな交じり文で表示される。検索方法は、単語による入力や複数のキーワードで該当項目を探す方法など五通り。専用のCD(直径八センチ)には、最大一億文字分の情報が入力してある。
 例えば「歌謡曲」CDを使った場合、曲名を入力すると歌詞を表示する。順番に歌詞集を読んだり、「恋」「銀座」などのキーワードから、曲名と歌詞を探すことなどもできる。ヘッドホンをつければ、普通のCDプレーヤーとして音楽も楽しめる。
 価格は国語辞典、英和辞典など五種類の辞書機能を一枚におさめたCD付きで五万八千円。専用CDには、「ホーム・クリニック」(主婦の友社、税込み三千五百円)、「広辞苑」(岩波書店、同七千七百二十五円)などが予定されている。

 

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『朝日新聞』1990年07月05日
朝刊
電子ブック版「天声人語」「社説」、7月上旬発売<社告>
 朝日新聞朝刊のコラム「天声人語」と「社説」の5年分(1985年−1989年)全文をCD−ROMに収録した電子ブックが7月上旬発売されます。
 電子ブックは、オンライン・データベースと同じ様に、テーマや文中の言葉をキーワードに、探したい記事が検索出来る新しいメディアです。様々なテーマを取り上げた天声人語と社説から、社会の動きを的確にとらえたり、短い言葉や文章をスピーチに引用したい時など電子ブックの特性を生かした使い方が出来ます。
 発行・発売は、日外アソシエーツ、紀伊国屋書店。書店、電器店でお求め下さい(定価は2884円=税込み)。なお電子ブックをご利用になるには、ソニーの検索専用機「データ・ディスクマン」が必要です。

 

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『読売新聞』1990.07.09
[出版]CD―ROMに高まる関心 携帯装置、手ごろな値段に
東京朝刊
 書籍でいえば小B6判ぐらいの大きさの電子ブックプレーヤー「データディスクマン」がソニーから発売された。これは、八センチCD―ROMのドライブである。小さなCD―ROMだが記憶容量は大きく、辞書数冊分が一枚のCD―ROMに入っている。定価は五万八千円。付属電子ブックとして、三省堂の現代国語辞典、ニューセンチュリー英和辞典、新クラウン和英辞典、コンサイス外来語辞典、ワープロ漢字辞典が入った一枚のCD―ROMがついている。
 要するに、携帯用であるが、テレビに接続すれば大画面でみることもできる。小型ながら、単語検索、複合検索、条件検索、メニュー検索、参照検索と五種類の検索ができる。
 一枚のCD―ROMから膨大な情報量をとりだすことができるわけだが、広辞苑、海外ビジネスガイド、電子ブック版あのうたこのうた3333曲、ことわざ名言集、ホームクリニックなど十八種類のCD―ROMも同時に発売された。
 数年前から出版界でも、CD―ROMについての関心が高くなっており、日本電子出版協会が設立されて、ソフトの開発研究が積極的におこなわれている。しかし、CDプレーヤーの普及が少ないこともあって、いまひとつの観があった。
 そうしたなかでのハンディなプレーヤーの出現である。五万八千円という手ごろな値段だ。しかも、音楽CDも聞けるとあって、注目されている。ただ、発売されたソフトをみるかぎりでは何かものたりなさを感じることもたしかだ。
 「データディスクマン」ならではのソフトがでれば、爆発的な普及をするかもしれない。
 また、定価がもう少し安くなればとも思う。いずれにしても、電子出版の今後の可能性を提起してくれたことだけはたしかである。

 

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『朝日新聞』1990年07月21日
夕刊
電子出版時代、幕開け? 開発進むCD−ROM
 大容量と多様な検索機能で、出版界への新風を期待されながら、出足の鈍かった「CD−ROM」に、注目が集まり始めた。小型の読み取り専用機と低価格ソフトの登場が引き金だ。CD−ROM用ドライブ装置を標準装備したパソコンの普及も進んでおり、本格的な電子出版時代の到来がようやく実感できるところまで来たようだ。
 CD−ROMは、外観は音楽用のCDと同じ。文字、画像、音などのデータが記憶されている。これをドライブ装置で読み取り、文字や画像はパソコン、ワープロなどの画面上に表示される。
 記憶容量は通常の12センチサイズ1枚で、540メガバイト。これは文字情報だけなら、厚めの辞書10冊分以上に相当する。加えて、見出し語の後半部による検索(例えば○○会議を「会議」でひく)が可能だし、辞書の解説記述から共通語のあるものを選び出すことも出来る。条件を与えて、それに適した項目も選び出せる。
 そんな利点がありながら普及に手間取っていたのは、ソフト1枚が3万円前後と印刷物の辞書の数倍もするうえに、パソコン、ワープロに接続する読み取りのドライブ装置も高価で、一般のユーザーには手が出なかったためだ。
 《気軽さに徹する》
 今月発売のソフト「電子ブックシリーズ」は、低価格で壁の突破を狙う。版元は、岩波書店、紀伊国屋書店、ぴあ、日外アソシエーツなど。「広辞苑」をはじめとする辞書もの、有名人名簿、映画リスト、旅館案内など、データベースもののほか、歌詞カード集、薬の判別ガイドなど18タイトルがそろう。
 これまでの12センチCD−ROMよりひとまわり小さな8センチサイズで、記憶容量も半分以下の200メガバイトだが、「広辞苑」が7500円(税別)で従来のCD−ROM版の3分の1以下。「朝日新聞天声人語・社説」の2800円を筆頭に5000円以下のソフトが半数あって、低価格をアピールしている。
 それが功を奏して、「広辞苑」を例にとると、これまで通算でも7500枚しか売れていなかったのに、電子ブックは発売早々8000枚を売り上げる上々の出足という。
 この「電子ブック」は、ソニーの携帯読み取り装置「データディスクマン」(三省堂の辞書ソフトつきで5万8000円)の専用ソフト。
 「CD−ROMはオフィスのコンピューターに囲まれた環境で使われるイメージが強かった。そこから脱皮するため、CD−ROMを名乗るのは避けた。また、音や図版の機能は思い切って捨てて気軽さに徹した。小さな液晶ディスプレーを読み取り機につけたのもそのためだ。秋には2回目のソフト発売を予定しており、ソフトの充実に力を入れたい」とソニーの宇喜多義敬・電子出版プロジェクトマネージャーは話す。
 《音や動き生かす》
 紙を使った出版メディアを超える、音や動きを生かしたCD−ROMならではの図鑑ソフトも登場しはじめている。
 ビクター音楽産業が8月に発売を予定している「最新恐竜図解大辞典」(8700円)もそのひとつ。米国などで進む恐竜研究の成果を学術的に扱う一方、復元した恐竜をアニメで動かし、鳴かせもする。日本電気のゲーム機「PCエンジン」用のソフトで、鳴き声、肌の色は想像の産物という。こども向けゲーム・ソフトを連想させるが、恐竜180種が登場し、全部観賞するのに10時間以上かかる情報の多さは、CD−ROMならではだ。
 開発を担当した吉岡賢・同社ニューメディア開発部ディレクターは「実物がいる魚や動物の図鑑よりも、想像の世界の恐竜のほうがCD−ROMのイメージに合うと考えた。これであなたも“恐竜おたく族”になれる、というのがキャッチフレーズです」
 《ハード面も改良》
 パソコン、ワープロに対応させるハード面の改良も進んでいる。「広辞苑」のCD−ROM化に取り組み、開発に熱心な富士通は、昨年、CD−ROMドライブを標準装備したパソコン「FM・TOWNS」を発売、これまでに7万台を売った。
 また、同社のワープロ、オアシス・シリーズ用のドライブ装置もコストダウンして発売し(8万円)、普及を狙う。
 ワープロで文書作成中に呼び出した辞書説明を文中に取り込むことも可能で、辞書の新しい使い方の提案として、売り込みに力を入れている。
 ○「紙メディアの限界」にらむ 
 CD−ROMの普及は、電子出版時代の幕開けなのだろうか。
 現在の紙を使った出版物の行き詰まりを指摘する声は強い。紙の大量消費が森林資源の浪費を招き、出版物の増加が狭い日本の住宅などを圧迫する。加えて、人手不足による印刷・製本作業の滞りも深刻だ。
 富士通常務理事で、日本電子出版協会幹事の神田泰典氏は「現行の分厚い辞書の価格と製造上の手間の過半は、紙を使っているため」と手厳しい。「2000ページの辞書を印刷する手間に比べ、工場で瞬間にプレス出来るCD−ROMは大量生産に適している。紙のメディアの発展に限界があるのだから、すぐにとは言わないが、電子出版時代が来るのは間違いない」
 純文学を画面で読むことの当否はともかく、優れた検索機能を生かせる辞書や動きのあるゲーム感覚のソフトの登場が、出版物の既成概念にショックを与える日がそこまで来ているように思えてくる。
 しかし、大容量とはいうものの、CD−ROMの内容を調べてみると、意外な側面ものぞく。
 「広辞苑」を例にとると、12センチCD−ROMの記憶容量540メガバイトのうち、文字に使ったのは30メガバイトにしか過ぎない。これに対して、挿絵図版は200メガバイトに近い容量を占めている。「広辞苑」の図版は、単色だし点数も少ない。それなのに、文字の6倍以上の記憶容量を要しているのである。
 つまり、CD−ROMは、現状では、案外活字向きのメディアということになる。手軽さを狙った「電子ブック」が文字だけとなっているのも、こうしたCD−ROMの特性と無関係ではなさそうだ。現状の容量を踏まえて、多様な検索機能を売り物に文字メディアとしてアピールすべきだとの主張が根強いのも、そのためだ。
 広辞苑のCD−ROMソフトに「画家」「フランス」「印象派」という条件を与えて検索すると、ルノワールらだけでなく、渡仏経験と印象派風描法が説明記述にある黒田清輝も呼び出す。これは編さん者も期待しなかった使い方で、印刷時代の出版資産がCD−ROMの登場で新たな価値を持つことになる。
 あるいは、夏目漱石全集を1枚におさめられれば、検索によって、漱石の言葉遣いがいくつもの方向から検証可能となり、これまでの分析とは異なる研究成果も期待できる。
 一方で、そうした現在の紙による出版物の文化的蓄積を尊重したCD−ROMのありかたを認めつつも、活字文化に飽き足らない若い世代が、恐竜辞典などを手がけているのだ。
 CD−ROMならではの音や動きを生かしたソフトの場合、文字に頼る部分が少ないだけ、海外での出版という展開も期待される。恐竜辞典は、ゲーム機が米国で普及しているのに期待して、英語版の製作が進められている。言葉の壁に阻まれ、日本の出版物の海外への紹介は遅々として進まないのが実情だが、読み取り機との連携作戦を進めれば、CD−ROMはそこを超える可能性も秘めている。
 国内での流通では、書籍の再販制度を踏襲するか否かも大きな問題として残っている。今のところ、CD−ROMは再販商品ではなく、家電ショップで売られている場合がほとんど。人気がなくなったり、情報が古くなると、値引きもありうるわけだ。再販制度に慣れてきたわが国では、信頼性が生命の辞書ソフトがバーゲンにかかったりすれば、イメージダウンにつながりかねない。「電子ブック」は、そのあたりを配慮し、大手取次の東販を通して、書店に置くことに努めている。
 富士通の神田常務理事は「現在は、再販にするかどうか以前の普及状態。製本の手間がいらないなどの側面から考えると、いずれ紙の出版物よりローコストでCD−ROMが出せる時代が来るだろう。わたし個人としては、既成の出版文化と不要な摩擦を生じないようにして、電子出版化が進めばよいと思っています」と話している。
 ○CD化で新しい小説期待 古瀬幸広さん・情報デザイナー
 活字離れとよく言われるが、ぼくは「紙の小説」離れだと思っている。CD−ROMの特性を生かして、音や画像を取り込んだ同時進行の臨場感、スピード感がある新しい小説が生まれれば様がわりする。無論、大容量なのだから、読者の意思決定に従って、複数のストーリーが展開する“参加型”になるべきだ。そうしたハイパーメディア性を生かした小説なら、活字離れの世代も文学に戻ってくるだろう
 そこまで行かなくても、オーナーの顔写真と肉声の入ったペンションガイドなどはすぐに作れるだろうし、分厚いタウンガイドを1枚のCD−ROMにしてプレゼントすれば、しゃれたイメージの宣伝にもなる。今はまだ、検索の便利さや、翻訳の際にワープロ入力と辞書をひくのが同一作業で出来る効率の良さを、一部の人が知った段階だが、技術的には障害はクリアされており、電子出版時代は確実に近づいている。


*作成:植村 要
UP: 20100706  REV:
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