HOME >

男女雇用機会均等法

Equal Employment Opportunity Law

last update:20101125
◎厚生労働省委託事業 ポジティブ・アクション情報ポータルサイト 《Positive Action》  →http://www.positiveaction.jp/

■正式名称:「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」→(1999/04/01〜)「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」

●女性労働者の増加や仕事上での性差別撤廃運動の高まりから、勤労婦人福祉法を大幅に改正し1985年に制定、86年4月に施行された。定年、解雇、教育訓練などで女性の差別的取り扱いを禁じたが、募集、配置、昇進では事業主の努力義務にとどまった。97年の改正でセクハラ(性的嫌がらせ)防止のため事業主の配慮義務などの規定が設けられた。(……『東奥日報』2005年12月27日)
●採用・昇進等での男女の機会均等は事業主の努力義務とされていたが,97年(平成9)の改正で差別的取り扱いの禁止が定められる。97年改正法は,一部を除き,99年4月施行。97年の改正により現名称となる。2006年6月の改正(08年4月施行)では,性別による差別禁止の範囲を拡大し,男性に対するセクシャル-ハラスメントも対象になっている。(……『大辞林』第二版)

●2007/04/01 改正男女雇用機会均等法施行

▼知恵蔵2010の解説
正式名は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(1985年制定、86年4月施行)。均等法と略されることもある。募集・採用時における男女の均等取り扱い、配置・昇進・教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇などについて、女性労働者であることを理由に男性労働者と差別的に取り扱うことを禁止してきた。2007年4月1日施行予定の改正法には、(1)男女双方への性差別の禁止(均等法から差別禁止法へと転換)、(2)権限の付与や業務の配分、降格、雇用形態・職種の変更、退職勧奨、雇い止めなどについての性差別の禁止、(3)間接差別禁止、(4)妊娠・出産・産前産後休業の取得を理由とした不利益取り扱いの禁止、(5)ポジティブ・アクション(男女間の格差解消のための積極的取り組み)を企業が開示するにあたり国が支援、(6)セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)の対象に男性も加え、予防、解決のため具体的措置をとるよう事業主に義務づける、(7)調停の対象にセクハラも加わる、などの条項を含む。( 桑原靖夫獨協大学名誉教授 )

◎男女雇用機会均等法のあらまし(東京労働局)
http://www.roudoukyoku.go.jp/seido/kintou/index.html

◎男女雇用機会均等法のあらまし――雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保(厚生労働省)
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/josei/hourei/20000401-05.htm

◎改正男女雇用機会均等法(2007年7月17日『読売新聞』>大手町博士のゼミナール)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/trend/dr/20070717md01.htm



◆雇用均等法25年
 (2010年10月30日『神奈川新聞』社説)
http://news.kanaloco.jp/editorial/article/1010300001/
「◇女性登用の意識さらに
 雇用差別をなくす男女雇用機会均等法が成立して今年で25年になる。
 「女性の雇用」をテーマに共同通信社が行った主要企業110社を対象にしたアンケートによると、ほとんどの企業が「女性の積極活用は重要だ」と回答した。しかしその一方で、管理職への登用者数については、最も多い課長級でもまだ全体の5%にすぎない。
 企業の認識に変化が見られたことは確かだが、現実問題として女性がどれだけ第一線で活躍の場を与えられてきたかというと、その歩みは遅々としていると言わざるを得ない。
 女性が職場で能力を発揮するには、男女を問わず子育てしやすい社会環境を早急に整える必要がある。加えて企業にも女性の能力を引き出し、管理職として育てていく意識と具体策が欠かせない。
 生産労働人口の減少が避けられない中で、企業の成長は女性の起用いかんにかかっているとも言えよう。
 女性の積極的な活用の重要性に対する企業の認識が大きく変わってきた背景には、少子高齢化の進展に伴う生産労働人口の低下がある。優秀な人材を今後いかにして確保したらいいか。企業のそうした危機感の裏返しでもあろう。
 アンケートにもそれははっきりとうかがえる。職場での女性の活用が大切な理由として企業が最も多く挙げた回答(複数回答可)が、「労働人口減の中、不可欠」で、67社を数えた。
 その一方で、「男女平等の観点から」(50社)、「顧客の多様なニーズに対応できる」(48社)も上位を占め、企業の意識変化の兆しもうかがえる。
 しかし、現実に管理職に占める女性の割合となると、課長級で平均5・4%。部長級は2・5%、役員級ではわずか1・7%と、「男性社会」の実態が浮き彫りになる。
 回答を寄せたのはほとんど東証1部上場企業で、世界市場を相手に活動している企業も多い。進出先には職場での男女平等に熱心に取り組む国も数あろう。そこで蓄積した女性を生かすマネジメント力を国内経営にもっと上手に生かせるはずだ。
 例えば、効率を無視した残業・長時間労働が、女性の正当な評価を阻んでいる面はないか。企業は広範な視点で女性の能力活用に努めてほしい。」

◆<はたらく>積極登用で女性を生かす
 (2010年11月19日『中日新聞』【暮らし】)
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2010111902000072.html
(写真:会議を進行させる日本IBMの麻生かおり部長(手前)=千葉市美浜区の同社で)
 企業などで女性を積極的に登用する「ポジティブ・アクション(PA)」の取り組みが進んでいる。男女の雇用機会均等が進んでも、特に営業分野や管理職では女性の能力を生かしきれていないのが実情だ。PAの現場を取材した。 (服部利崇)
 「分かりました。私から(関係部署に)話しておきます」。千葉市美浜区の日本IBMのオフィス。メールマガジンの内容を話し合う会議で麻生かおりさん(46)が議論をまとめた。
 メールや電話による非対面営業部門の部長で、部下は十人。男性職場と見られがちな営業部門では数少ない女性管理職だ。
 一九八六年に入社。システムエンジニアなどを経て九四年から営業職を担う。結婚して二人の子を出産。部長昇進の打診は、二人目の育休が終わった四十一歳のときだった。「子どもも二人目。何とかなる」と応じた。
 同社は、子育て世代の管理職が多いため、家庭と両立できるよう電話会議システムや短時間・在宅勤務などの制度を整えた。「会議が午後六時以降でも、自宅から電話で指示できる」と麻生さん。
 積極登用と両立支援で、二〇〇三年に4・9%だった女性課長は今年11・4%に。女性部長も3・7%から9・4%に増えた。人事部の梅田恵さんは「市場の変化に対応するには、女性を含めた多様な視点が必要」と会社の狙いを話す。
     ◇
 「素直にうれしいし、やりがいがある」。りそなホールディングス(本社・東京都江東区)の岩崎智子さん(35)は、財務部で国際会計基準の導入プロジェクトに携わり、充実の日々を送る。財務部ではここ数年、女性が責任ある立場で働く。岩崎さんは「輝いて働く先輩女性に触発された。仕事にスイッチが入った」と語る。
 金融機関は女性が多いが「女性は事務」というイメージも根強い。同行では、イメージ一掃と女性の戦力化を進めるためPAに取り組む。男女問わず、やりたい仕事を選べる制度が特徴。高評価の社員限定で、異動したい部署を選べる社内FA(フリーエージェント)制度、細かい職種ごとに社内求人を出してやりたい人が手を挙げる社内公募制度も。岩崎さんはFAを活用した。
 人材サービス部の西井多栄子さんは「自分がどんな仕事をして成長していくか、将来像を描けるようになり、頑張る女性が増えた」と話す。
     ◇
 国連開発計画の〇九年報告書では、女性が政治・経済分野の意思決定に参加できるかどうかを表す「ジェンダーエンパワメント指数」は、日本は百九カ国中五十七位にとどまる。国は二〇年までに、指導的(意思決定をする)地位の女性の割合を三割にする目標を掲げる。だが衆院議員数(一〇年)10・9%、国家公務員管理職2・2%(〇九年)、三十人以上の民間企業管理職5%(同)の現状では、達成は厳しい。
 厚生労働省の〇九年調査では、PAに「取り組んでいる」企業は30・2%。三年前から約10ポイント増えたが、規模が小さくなるにつれ数値は下がる傾向にある。
 従業員二十人の近藤印刷(名古屋市)は、PA導入の検討を始めた。が、近藤起久子専務は、女性の働きやすい環境づくりが先と感じる。「最近まで女性専用トイレもなかった。『電話番は女性』などの役割意識も残り、男性側の意識改革も求めたい」
 法政大キャリアデザイン学部の武石恵美子教授(人的資源管理論)は「女性の積極登用には、長時間労働などの見直しが欠かせない。一方、責任を負うことを敬遠しがちな女性の意識改革も進めるべきだ。多様な人材を育てる手段としてPAを活用していけば、グローバル化した経済社会に対応できる」と話している。
 <ポジティブ・アクション> 管理職や特定職域での低い女性割合など男女間の待遇差を解消する企業の自主的取り組み。和訳は「積極的改善措置」。男女雇用機会均等法では性別を理由とした差別的取り扱いは違法だが、PAは除外される。働き方の見直しとPAをセットに、多様な人が生き生きと働ける環境を整備、組織を活性化させて業績に結び付ける人事管理法「ダイバーシティ(多様性)」を掲げる企業も多い。」

◆育児休業:09年度 女性の取得率が初めて減少
 (2010年7月16日19時49分/更新:7月16日21時52分『毎日新聞』)
http://mainichi.jp/select/today/news/20100717k0000m040080000c.html
「 厚生労働省は16日、女性の育児休業取得率が初めて減少したなどとする09年度雇用均等基本調査結果を公表した。背景には景気の低迷が中小企業などを中心に育児休業取得に影を落としたものと見られる。先月末には改正育児・介護休業法が施行され、短時間勤務制度の義務化などが盛り込まれたが、子育てを巡る環境の厳しさが改めて浮かんだ。
 調査は、従業員10人以上の企業4217社(回答率71.1%)と4509事業所(同77.8%)から回答を得た。それによると、育児休業の取得率は女性は前年度調査から5ポイント低下した85.6%、男性は0.49ポイント増の1.72%となった。女性は1996年の調査から一貫して取得率がアップしてきたが、初めて減少、男性は過去最大の取得率となった。事業所規模では、5〜29人の所で女性は前年の93.4%から72.8%と大きく落ち込んでいる。厚労省雇用均等政策課では「小規模な企業ほど景気の影響を受けやすい」と分析している。男性の取得率は過去最大だったが、政府の掲げる17年に10%という目標には遠く及ばないレベルだった。
 また、係長相当職以上の管理職に就いている女性の割合は8.0%(06年度比1.1ポイント増)、女性の能力発揮促進の取り組みを実施している企業割合は30.2%(同9.5ポイント増)となるなど、女性の能力活用は進んでいることも分かった。【東海林智】」

◆【レポート】キャリアか家庭か…女性の選択肢の狭さは20年前と変わらない - 厚労省調査
 (2009年4月7日『マイコミジャーナル』−神野恵美)
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/04/07/wlb/
「女性の妊娠/出産に伴う産前産後休業と育児休業は、「男女雇用機会均等法」および「育児介護法」で規定され、雇用主は出産/育児を理由に不当な解雇等をしてはいけないことになっている。だが、厚生労働省が最近発表した調査で、ショッキングな実態が明らかになった。
同省のまとめによると、妊娠/出産等を理由に解雇等の不利益な取り扱いを受けたとして、2008年度に全国の労働局に相談が寄せられた件数は2月末までの時点で1,806件で、前年度の1,711件をすでに上回った。また、育児休業に関する不当な取り扱いへの相談は、前年の882件から1,107件に急増している。こうした状況を受け、同省は各都道府県の労働局長に対して適切な対応と取り組みを徹底する要望を通達したが、女性に関しては景気悪化の影響が"派遣切り"どころか、法律で守られているはずの正規雇用者までを脅かし、"育休切り"の実態を生み出していることが浮き彫りになった。
こうした状況からも、出産/育児というライフステージが就業を続ける女性にとって重大な犠牲を引き起こしていることが明らかだが、厚生労働省が発表した別の調査結果からは、「働きたくても働けない育児中女性」と「子どもを産みたくても産めないキャリア女性」の蔓延したジレンマの実態が浮き上がった。
同省が3月26日に発表した「平成20年版 働く女性の実情」によると、2008年の女性の労働力人口は前年より1万人減の2,762万人となり5年ぶりの減少。また、労働力率は5年ぶりに低下し、前年比0.1ポイント減の48.4%となった。こうした環境悪化の変化は、1985年に「男女雇用機会均等法」が施行して以降、社会への女性の進出が進みながらも景気の影響に左右されて引き起こされたものと考えられる。それを証拠に、完全失業率を見た場合、女性は前年より0.1%ポイント上昇の3.8%であったのに対し、男性の場合も同様に前年3.9%から4.1%に上昇している。
しかし、今回の調査で興味深いのは、「男女雇用機会均等法」制定時以降の15〜64歳の有業率の推移だ。男性はこの20年余りの間ほぼ横ばいのまま推移しているのに対し、女性は、1987年の54.2%から2007年の61.7%と上昇。特に大卒以上の女性に関しては、20年間で62.6%から 2007年の72.6%へと10ポイントも上昇している。雇用者数に関しても、男性が4年ぶりの減少となる14万人減の3,212万人となる一方、女性は 15万人増の2,312万人で、6年連続増加の過去最多を記録しており、女性の場合は景気の影響を受けながらもそれを上回る勢いで社会進出が進んでいることが見てとれる。
ところがその一方で、こうした女性の社会進出は、必ずしも仕事と私生活の調和を意味する"ワークライフバランス"の実現とは結びついていないのも現状のようだ。一般に子育て世代と呼ばれる25 - 44歳の女性で現在就労していない女性に離職理由を訊ねた質問では「結婚・育児のため」と答えた割合は、大学・大学院卒業者で35.2%、高校・旧制中卒業者で28.7%と平均3割程度にも及んだ。また、女性の有業率と現在は無職だが就業を希望している割合を表す潜在的有業率の差は、30 - 44歳の間でもっとも大きな開きがあり、たとえば大卒・大学院卒の35 - 39歳では潜在的有業率が84.8%であるのに対して、有業率は65.2%に留まっている。加えて、就業を希望しながら求職活動をしていない人にその理由を尋ねた結果では、「育児や通学などのために仕事が続けられそうにない」と答えた割合が大学・大学院卒業者で44.2%。同世代で就労を希望しない女性のうちの66.4%はその理由に育児を挙げ、いずれの場合も多くの女性が出産・育児を理由に就労を断念せざるを得ない状況にあることが推測される結果となった。
一方、夫婦に尋ねた理想的な子どもの数の平均は、妻が大卒以上の場合で2.42人。これに対し、予定している子どもの数の平均は1.97人で、予定が理想を下回る結果となった。その理由については、経済的理由や高齢出産を懸念する声が高かったが、22.5%が「自分の仕事に差し支える」と答えており、2割を超える女性がキャリアを理由に出産・子育てを躊躇する傾向にあることもわかった。
こうした調査結果が示すように、女性の就業環境は雇用機会は平等になっても、結婚・子育てという女性特有のライフステージを克服するための環境そのものは20年前からあまり変わっていないようだ。しかしながら、今後超少子高齢化時代に突入するにあたり、女性の労働力は必要不可欠であり、キャリアの実現か家族形成かという二者択一で女性のライフスタイルが論じられる時代からの脱却が早期に求められる。そのために社会に求められる早急な課題は、二者の両立を実現する社会基盤の整備ということになるだろう。」

◆[均等法20年]平等の質が問われている
 (2006年7月28日『沖縄タイムス』朝刊社説)
「◆生まれ続ける「城間さん」
 一九八六年四月、「男女雇用機会均等法」が施行された。男女が平等に働くことができる職場を目指す法は、今年二十歳となった。
 当時、本紙の社説は、新しい時代の幕開けを「めでたさもちゅうくらい」と表現している。
 雇用の全ステージにおける平等をうたいながら、手に入れた法が、採用や昇進などの差別解消を「努力義務」にとどめるなど不満の残る内容だったからだ。
 しかし社説は「均等法は出発点。差別を一つ一つなくしていく契機として活用し、女性の地位向上の手段とすることが肝要」と続く。
 女性が働き続ける初めの一歩としての意義は決して小さくなかったのだ。
 その二年後、県内では職場における男女差別をクローズアップする出来事があった。
 三十五歳で退職を告げられた城間佐智子さんが起こした「バスガイド三十五歳定年訴訟」だ。均等法の実効性に疑問を投げ掛ける問題ではあったが、城間さんが盾にしたのもまた均等法だった。
 「なぜ三十五歳なの」という城間さんの訴えは反響を呼んだ。働く女性はもとより、結婚や出産で退職を余儀なくされた女性たちが闘いを支えた。城間さんは、六十歳定年を勝ち取り、職場に復帰する。
 不十分だったとはいえ均等法が企業や社会、女性たちに与えた影響は大きかった。少なくとも職業選択において、性別を意識することが格段と減ったことが、この二十年の変化ではないか。
 厚生労働省の二〇〇五年の調査によると、全雇用者に占める女性の割合は約四割。今や女性が働くことは当たり前で、女性抜きで日本経済は成り立たない。
 にもかかわらず、私たちは、その後も男女差別に悩む多くの「城間さん」に出会うことになる。
 確かに募集や採用での露骨な排除はなくなった。が、昇進などでの不利な立場は続く。男女の賃金格差はなかなか埋まらず、パートなど安価な労働力を女性に求める企業は多い。
 法や制度は整備されても、働く環境は追いついてこなかった。
◆「男並み」では解決しない
 内閣府が〇四年に実施した「男女共同参画社会の将来像に関する有識者アンケート」の結果が興味深い。
 対象は国の審議会委員らと一九八五年から九〇年に企業に総合職で採用された均等法第一世代の男女だ。
 調査で、仕事を続ける上で大変だったことの上位にランクされたのは、「ロールモデルの不在」と「子どもの保育」だった。仕事を継続できた理由のトップ3は「独身であった」「夫の理解・協力」「子どもがいなかった」。
 均等法は女性の職域を広げ、地位を高め、生き方を変えた。が、それは「男並み」に働くことで手に入れたものでもあった。
 厚労省の調査では、働く女性の三人に二人が出産退職している。二十―三十代の女性を対象にした別の調査では、結婚前と同じ仕事を続けている人は半数以下だった。さらに女性雇用者の半分は不安定なパート・アルバイト労働だ。
 女性に偏っている家事責任や、「育児休業が許されない雰囲気」など子育てに非寛容な企業風土が大きく変わったわけではない。
 家庭を犠牲にしてでもキャリアを積むか、家庭を守るためには低い給料や厳しい処遇を受け入れるか、二極化が進む。
◆家庭を犠牲にしない職場
 男女差別の禁止規定を強化した改正均等法が、先月成立した。九七年以来、二度目の改正となる。
 今回重点が置かれたのは、一見、男女平等に見えて、実は片方の性に不利になる「間接差別」の禁止だ。仕事に関係ないのに身長や体重を採用の条件としたり、転勤がないにもかかわらず全国転勤を総合職の要件とすることなどがこれにあたる。
 巧妙化し、見えにくかった基準だけに一歩前進と受け止めたい。ただ、差別が形を変えて引き継がれてきた歴史を考えると、法の実効性を注意深く見守る必要がある。
 間接差別の問題は、男性をモデルにした労務管理の見直しを求めるものでもある。家庭を犠牲にせず、活躍できる環境をつくることこそ時代の要請だ。
 男も女も、仕事と家庭を大事にしながら、自分らしく生きる。その流れを止めることはできない。」



大橋 男女雇用機会均等法が成立して、今まで終身雇用の年齢給だった正社員にも能力給が導入されていったわけですが、金田さんはパート組合を始めたころから、やがて男性パートが増えていくだろうと思ったんですね。
金田 つまり、今までは男だというだけで、一定の賃金をもらえていた男性たちがいて、ところが女性の中の優秀な人たちが仕事の場に入ってくれば、その人たちが上にいくぶん、限られたパイの中で、男の人たちの中でも、はみ出してくる人がいっぱいいるわけですよね。そのときに受け皿はどこにあるのかと考えると、正社員ではない形態で働くようになるだろうなと思いました。そして、そうなって初めて、パート女性の低賃金労働の問題に多くの男性が気づくんだろうな、と予想してました。
大橋 その通りになりましたね。
(金田[2007:30]*)

金田 一九八五年に男女雇用機会均等法ができたとき、あんな中途半端なものができてしまうというのは、やっぱり女に力がないからだな、ということを痛感しました。いつかNHKの「プロジェクトX」で均等法成立について、赤松良子さんたち労働省(当時)職員と総評婦人部長の山野和子さんの攻防という形で扱っていました。私はあのときに、均等法に反対して労働省前で雪の中ハンストしたからよーく覚えているんだけど、赤松さんはもちろん、山野さんも、気持ちとしては向こう側というか、いわば「敵」でしたよ。ところが、その彼女たちも、経営者団体や役人たちのなかでは、まるで力のない人たちだったんだなぁとテレビを見て改めて思った。 >32>
大橋 当時の女性運動は、女性保護をなくして男並みに働かせる労基法改悪=均等法反対という点に力を入れる人たちと、実効性のある男女雇用平等法要求に重きをおく人たちの両方がいたというのが私の印象です。でも政府が出してきた均等法案はお粗末すぎて話にならないという点では一致していた。ところが均等法は成立し、労働基準法から深夜労働や生理休暇などの女子保護規定がなくなった。その後、「女性だから採用しない」と露骨にはいえなくなったものの、総合職・一般職というコース別人事制度が導入されて、女性の中でも「能力」のある一部の人は総合職として採用する、だけど圧倒的に女性=一般職という構造になっていきました。
(金田[2007:31-32]*)
*金田麗子(聞き手・大橋由香子) 20070710 「正社員ではない働き方――パート労働からスペースの専従へ」,『インパクション』158(2007-07):24-43 (特集:〈非正規化〉する対抗の場――労働ではない「お仕事」?)



◆中島通子編(私たちの男女雇用平等法をつくる会) 198408 『働く女が未来を拓く――私たちの男女雇用平等法』,亜紀書房
◆労働省婦人局婦人少年協会 198507 『男女雇用機会均等法改正労働基準法早わかり』,労働省婦人局婦人少年協会
◆津村明子 198511 「「均等法」は女に何をもたらすか――新たなたたかいの課題」,『新地平』131:**-**
◆ぶっつぶせ均等法・三多摩の会 198511 「均等法体制と私たち――総括とこれから」,『新地平』131:**-**
◆働くことと性差別を考える三多摩の会 198702 『均等法1年め!女たちのワークソング』,働くことと性差別を考える三多摩の会
◆大脇 雅子 19870515 『均等法時代を生きる――働く女性たちへの応援歌』,有斐閣,有斐閣選書135 [kinokuniya]
◆坂本 福子・労働者教育協会 198707 『解説雇用機会均等法』,改訂版,学習の友社
◆大羽 綾子 19880910 『男女雇用機会均等法前史――戦後婦人労働史ノート』,未来社 [kinokuniya]
◆中島 通子・中下 裕子・林 浩二 19880725 『女子労働法の実務――均等法・労基法・派遣法・パート法の解釈と運用』,中央経済社 [kinokuniya]
◆高橋 久子 編 19890410 『新時代の女子労働――男女雇用機会均等法の軌跡』,学陽書房 [kinokuniya]
◆赤松 良子 19900930 『詳説 男女雇用機会均等法及び労働基準法(女子関係)』,改訂版,女性職業財団
◆大脇 雅子 19920915 『「平等」のセカンド・ステージへ――働く女たちがめざすもの』,学陽書房 [kinokuniya]
◆中島通子 19930831 『「女が働くこと」をもういちど考える』,労働教育センター
 (1985 「均等法と人権」)
◆基礎経済科学研究所編 19950930 『日本型企業社会と女性』,青木書店
◆日本弁護士連合会・両性の平等に関する委員会編 19971225 『国際化時代の女性の人権――両性の平等と自立』,明石書店,AKASHI人権ブックス4
◆大脇 雅子・中島 通子・中野 麻美 編 19980510 『21世紀の男女平等法』,新版,有斐閣,有斐閣選書 [kinokuniya]
◆行動する会記録集編集委員会編 19990110 『行動する女たちが拓いた道――メキシコからニューヨークへ』,未来社
◆浅倉 むつ子 19990620 『均等法の新世界――二重基準から共通基準へ』,有斐閣,有斐閣選書 [kinokuniya]
◆塩田 咲子 20000515 『日本の社会政策とジェンダー――男女平等の経済基盤』,日本評論社
◆熊沢 誠 20001020 『女性労働と企業社会』,岩波新書
◆浅倉むつ子 20001130 『労働とジェンダーの法律学』,有斐閣
 (1996 「戦後労働法学と男女雇用平等論」)
◆赤松 良子 20031015 『均等法をつくる』,勁草書房 [kinokuniya]
◆200510 『女も男も』105(2005秋) (特集:男女雇用機会均等法20年の足跡とこれから)
 http://www.rks.co.jp/pub/onna/contents/co105.html
◆200601 『女性労働研究』49 (特集:均等法改正で平等は可能か)
 http://ssww.sakura.ne.jp/kaishi.html
◆藤原 千沙 200903 「貧困元年としての1985年――制度が生んだ女性の貧困」,『女たちの21世紀』57:**-**


*作成:村上 潔
UP: 20080404 REV: 20090415, 20100407, 0624, 0716, 1124, 1125
女性の労働・家事労働・性別分業
TOP HOME (http://www.arsvi.com)