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年表:薬剤に関する事項(1940〜1970)

<特定の薬剤の流行、問題化、薬務行政の動向(世界動向もふくむ)、製薬企業の動向など>

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last update: 20190212

※随時、補足・更新していきます

■目次

◇年表
 1940〜 1950〜 1960〜 1970〜

文献


■年表

1940〜

194807 薬事法制定
1949 医薬品広告が新聞広告の上位1-2位を占める
服用習慣の新たな創出、消費の拡大をもたらした
194907 医薬品等適正広告基準の制定
目的は、虚偽・誇大広告および他社製品を誹謗する広告などの取り締まりであった

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1950〜

1950〜1960頃 大衆保健薬の流行
食生活の改善よりも、ビタミン剤などを服用することによって、戦後の栄養不足を解消しようとした
1953 医薬品広告の中心であったビタミン剤の懸賞広告の商品が高額化する
1955 強肝剤グロンサンの流行
195407 厚生省が大衆向け懸賞付き販売についての自粛を製薬企業に要請
これをうけて、日本製薬団体連合会は、翌8月に大衆向け懸賞販売について、自粛決議をおこなった背景には、広告競争の過熱化、違法広告件数の増加、市民からの批判があったとされる
1954 医薬品業界が再販価格維持制度の指定を申請
1955頃〜 スモンの発生(1969 患者数が最多になる)
195501 日本製薬団体連合会が広告の自粛申し合わせをおこなう
自粛申し合わせの目的は、医薬品の特殊性を重んじ、広告費の低廉を図ることであった
(1955-1957 計4回の自粛申し合わせがあった)
1956〜1957 大阪平野町の現金問屋で乱売が発生した
医薬品生産の主力であった市販薬のうちの、鎮痛解熱剤、総合ビタミン剤、強肝剤などの商品が、乱売をひきおこした
1957 アンプル剤ブームの兆しがあった
のちのドリンク剤ブームとあいまって、店頭で薬剤を即時服用するというスタイルを普及させた
1959〜1960 東京の池袋で医薬品の過度な安売りがなされ(池袋乱売事件)、これに端を発して、全国へ急速に小売市場における安売り競争が広がった

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1960〜

196002 日本製薬団体連合会が「医薬品広告に関する自粛要綱」を取り決めた
196008 新薬事法の公布
新薬事法制定の目的は、贋薬、不良医薬品の取り締まりであった
1961頃 サリドマイド製剤による事故が顕在化 胎児に催奇形性の影響がある場合もあることが、西ドイツの医学者W.Lenzより警告された
196102 新薬事法が施行 指定医薬品が拡大した
指定医薬品になった一つは睡眠剤であり、乱用されているとして、医師の処方せんまたは指示がないと購入できないよう購入が制限された
小売りは販売記録を保存するよう定められ、一般向けの広告が禁止された
ほかに、メプロバメート製剤(トランキライザーの一種)も、指定医薬品になった
慢性中毒などをまねくおそれがあるためで、医師の処方せんまたは指示がないと購入できないよう販売が制限された
この際の指定医薬品の拡大が、大衆薬(市販薬)規制のはじまりとされる(厚生省五十年史編集委員会 1988)
1961春頃 青少年を中心とする睡眠剤遊びが流行
196104 国民皆保険制度の実施
医薬品等適正広告基準の改変
電波媒体が普及した状況にふさわしい内容に改変された
196107 麻薬単一条約に日本が加入
1962 ドリンク剤ブーム
196205 厚生省はサリドマイドを主成分とする睡眠剤の製造販売の中止を勧告した
これをうけて製薬企業は製品の出荷停止を決めた
196209 薬事法第1次改正
厚生省からの指示もあって、製薬企業はサリドマイド製剤の販売停止、回収を決定した
1963 WHOより各国への医薬品副作用報告についての通知があった
1963〜 医薬品再販制度の登録指定をうける企業があいついだ
目的は乱売対策だった 1966年には大手メーカーのほとんどを含む35社がこの制度を利用した
いっぽう、1960年代後半には、医薬品が再販指定されることで不当に高くなっているとの再販制度への批判が消費者よりでてきた
1963頃 臨床試験資料に二重盲検比較試験法などによる客観性の高い試験資料が要求されるようになった
症例数も従来の2ヵ所以上60例以上の基準を上回る症例数が要求されるようになった
196303 中央薬事審議会に医薬品安全特別対策部会が設置された
196304 医薬品の胎児に及ぼす影響に関する動物試験法がさだめられた
製造承認申請にさいして、従来の資料にくわえて、これにもとづく動物実験データの提出が義務づけられた
196307 薬事法第2次改正
1964 WHOより各国の医薬品評価の基準を報告するよう通知された
196406 日本製薬団体連合会が従来の医薬品広告に関する自粛要綱の再検討をおこなった
具体的には、有名人が特定の医薬品を推せんまたは常用している旨を広告することによって、その医薬品の効能効果を誤認させるおそれのないよう、注意するという項目などが追加された
196408 医薬品等適正広告基準の全面改正
虚偽および誇大な表現をしている広告が多く、これらが乱用などを助長しており、医薬品の信用を損なうような不適正な広告表現の範囲をさだめることなどが改正の目的であった
1965 衛生試験所に毒性部が増設
196502〜196503 アンプル入りかぜ薬による死亡事故の発生
全国のアンプル入りかぜ薬の服用者のあいだで、死亡をふくむ19件の事故がおこった
死因は、個人の体質に由来するところも大きかったが、ピリン系薬剤による急性の中毒だった
19650219 医薬品安全対策特別部会風邪薬調査会が、アンプル剤型は認可しないとの談話を発表した
アンプル入りかぜ薬の製造中止が決定
19650220 厚生省が厚生大臣の談話を発表
ショック死事故に関連したと考えられる商品の販売中止を製薬企業各社に要請した
製薬企業各社がこれにこたえ、当該品目の販売を中止
19650222 「アンプル入り感冒薬懇談会」(厚生省が組織した12名の学識経験者からなる懇談会)の第1回会合において、明確な学問的結論がでるまでは製薬企業各社に販売中止をふくむ販売自粛を要望するという対策をうちだした
翌23日、各都道府県および日本製薬団体連合会にこの旨を通知
24日には大阪医薬品協会が、25日には東京医薬品工業協会が、それぞれ緊急理事会をひらき、ともにアンプル入りかぜ薬の製造販売の中止を決定
196504 中央薬事審議会常任部会が、アンプル入りかぜ薬の製造販売を禁止すべきであるとの答申をおこなった
厚生省は、アンプル入りかぜ薬の事故対策として「かぜ薬の配伍・効能基準」を設けた
この基準が設けられたことによって、市販薬において、はじめて製造承認段階(製品内容)での制限強化がなされた
1965年〜1970年までの市販薬業界は、アンプル入りかぜ薬の事故によって、不況色をつよめた
製造販売の中心を占めていたのはビタミン剤であった
1965頃 新医薬品の前臨床試験において、「吸収・分布・代謝および排泄に関する資料の添付」が要求されるようになった
196602 厚生省が製薬業界に医薬品広告に関する当面の自粛要望を通達
内容は、医薬品全体の広告量の減少と、要指示医薬品、催眠剤・鎮痛剤、ドリンク剤の一般向け広告の自粛などであった
背景には、過剰な医薬品広告が乱用を助長しているとの市民からの批判があった
196602 国際連合経済社会理事会内の麻薬委員会(日本をふくむ10カ国で構成)が、1965年頃からの睡眠剤、トランキライザー、覚醒剤などの世界的な乱用は、製薬企業の過剰な広告や販売等に規制措置をとらない政府の態度などによるところが大きいと警告を与える報告書を提出
8月、同委員会は、これらの流行的な乱用を抑制すべきであるとの各国政府あての勧告を採択
具体的には、アルコールおよび国際統制下にある麻薬類以外の習慣性をもつ鎮静、賦活剤にたいして、医師の処方せんなしで販売しないことなどの国家管理方策をとるよう指示した
12月、同委員会がこれらの向精神薬などを、医師の処方せんなしで販売しないよう、各国が厳重に規制するのをもとめる決議を採択した
196610 牛丸勧告
厚生省の医療保険基本問題対策委員会(牛丸義留委員長、通称、牛丸委員会)は、製薬企業各社にたいして、納入価格が乱れている医療機関向け医薬品の販売姿勢の是正を勧告
これをうけて製薬企業懇談会は、当時、実質的な値引きであると問題になっていた、過剰な医療機関向け医薬品の添付の自粛を決定
196704 医薬品副作用モニター制度の発足
196709 厚生省から「医薬品の製造承認等に関する基本方針について」の通達があった
1965年の「かぜ薬の配伍・効能基準」制定以降の行政指導や、慣行として採りいれられてきたものが明文化された
これを契機に、医薬品は新規医薬品の製造承認の段階において、医療機関で処方する医療用と、薬局薬店の店頭で販売できる一般用とに区別されるようになった
1968 薬務行政は、製薬および小売業界に、ドリンク剤は医薬品であり、この概念を逸脱しないよう、販売や宣伝において、非医薬品である清涼飲料水と明確な一線を画することを義務づけた(ドリンク剤の販売規制)
清涼飲料水業界から、清涼飲料水とドリンク剤との区別があいまいになっているため、ドリンク剤にも清涼飲料水と同等の課税をするべきだとの圧力があった
主婦連合会の薬局での覆面調査によって、事実上「要指示薬が野放し状態」という販売についての報告がなされた
196801 医療用配合剤基準の策定
196807 日本医師会が、厚生省へ医師の処方権の確立および要指示薬制度の撤廃を申し入れ
医師の処方権の主張とは、医薬品は医師が処方して患者に投与するのが原則であり、不特定多数への処方権を製薬会社に認めている市販薬制度は学術上の根拠がないというものである
この医師の処方権を適用すれば、医師の指示にもとづいて患者自らが薬局薬店の店頭で医薬品を購入するという、要指示薬制度も認められず、撤廃すべきであるとした
196811 厚生省は要指示薬販売の取り締まり強化の方針をうちだした
青少年の催眠剤遊びや抗生物質の副作用問題、要指示薬制度形骸化への市民の批判、日本医師会による医師の処方権の主張という圧力などを考慮したとされる
196903 中央薬事審議会常任部会の承認を得たうえで、医薬品製造承認審査事務の改善案を発表
問題が多い審査事務の改善のために、審査事務の適正化、迅速化をはかるという内容であった
196906 薬事法第3次改正

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1970〜

197003 医師高橋晄正らが厚生大臣宛に「保健薬を許可した際の基準を問う」公開質問状を送った
197005 衆議院決算委員会に高橋晄正らが参考人招集された
高橋晄正は1946〜1967年に認可された医薬品を科学的に再検討すべきだと主張した
197006 厚生省は、日本製薬団体連合会会長に、とりわけ「大衆保健薬」の医薬品広告にたいして、自粛を申し入れる薬務局長通達をおこなった
医薬品を服用しなければ健康が維持できないかのような不安をあたえ、不必要な人にまで服用をうながすような表現、および連用を推奨するような表現や、医薬品の過量消費、濫用助長をうながすような広告はつつしみ、広告宣伝が過度にわたらないよう自粛することが要望された
197008 一般用医薬品特別部会が中央薬事審議会に設置された
市販薬の審査基準を拡大する作業がすすめられた
197009 医学・薬学の学識経験者11名からなる厚生大臣の私的諮問機関として、薬効問題懇談会が設置された
そこで、医薬品の再検討をおこなう場合、対象とする医薬品の範囲および実施方法についての検討がはじめられた
197010 高橋晄正らが薬効の再評価を監視することを目的として「薬を監視する国民運動の会」を設立した
1971 新医薬品の副作用報告義務期間が3年間に延長された
197101 「薬を監視する国民運動の会」が機関誌『薬のひろば』を創刊
1989年5月までに全100号を刊行し、100号での『薬のひろば』の終刊とともに「薬を監視する国民運動の会」は解散した
197102 中央薬事審議会の医薬品安全対策特別部会が、トランキライザーをふくむ4種類の医薬品について、新たに記入しなければならない使用上の注意事項をきめ、厚生省に報告した
メプロバメート製剤などをふくむ精神安定剤21種類については、服用した際に注意力が散漫になる点を考慮し、「自動車の運転など危険を伴う機械操作につかせない」という項目を、薬の外箱や添付書類へ記入することを義務づけることが決定した
向精神剤に関する条約に日本も加入
向精神薬の乱用と不正取引を防止し、向精神薬が医療および学術上の目的にのみ使用されるよう国際協力をおこなうことを目的としていた
197104 高橋晄正『アリナミン――この危険な薬』刊行
アリナミンを「無効有害(効能がなく害がある)」と批判 この論点が社会問題化
当時の大衆保健薬の売り上げのなかで、アリナミンが占める割合が多かった
197107 中央薬事審議会に医薬品再評価特別部会を設置することが決定
197111 医薬品等適正広告基準の一部改正
改正内容は,医薬品の過量消費や乱用の助長をうながすおそれのある広告はおこなわないとするなどであった
とりわけ大衆保健薬などの「ご家族そろって毎日お飲み下さい」や、「今日の健康のために明日の健康維持のために」などの広告を制限するものであった
197112 厚生省は、ぜん息吸入剤、女性ホルモン剤、メプロバメート製剤をふくむ精神安定剤すべてを指定医薬品に指定し、要指示薬制度における指定医薬品が拡大された
これらの薬剤は、いずれも長期連用される場合が多く、さまざまな重大な副作用をひきおこすことが報告されたためであった
メプロバメート製剤にかんしては、医師の川合仁が慢性中毒や依存、長期連用などを理由に、販売中止と回収をもとめる要望書を厚生省へ提出したこと、このことが新聞などで報道されたことが規制を後押しした
197409 厚生省が「医薬品の製造及び安全に関する基準」(Good Manufacturing Practice、 GMP)を都道府県に通知した
197910 医薬品副作用被害救済基金法が公布 薬事法の改正

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■文献

◆厚生省五十年史編集委員会,1988,『厚生省五十年史(記述偏)』財団法人厚生問題研究所.


*作成:松枝 亜希子
UP: 20190212 REV:
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