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障害者自立支援法

2005 200509〜 2006 2007  2008 2009 2010 2011 2012

last update:20120103
製作:野崎泰伸堀田義太郎


 ○生存学創成拠点関係者による文章[PDF/テキストデータあり]
◇2010/03/31 佐藤 浩子 『Core Ethics』6:219-228
「重度障害者等包括支援に関する考察――個別と包括の制度間比較」, [PDF]


社会福祉基礎構造改革/支援費制度/… 〜2002
緊急抗議行動・2003.01
介助・介護 2003
支援費制度・介護保険/介助・介護 2004・1
支援費制度・介護保険/介助・介護 2004・2
「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」 2004
障害者自立支援法・2005
 ◆介助・介護 2005
 ◆「障害者自立支援法」2005.9〜
 ◆関連集会
 ◆意見書・要望書・等
 ◆社説・等
 ◆法案等
 ◆政党
 ◆障害者自立支援法、最初っからやり直すべし!
 ◆べし!・6月〜
 ◆『季刊福祉労働』2005年
障害者自立支援法・2006
 ◆『季刊福祉労働』2006年
障害者自立支援法・2007

介助・介護


■■ 制度

■「障害者自立支援法」が施行されるまでの経緯――「社会福祉基礎構造改革」(1997年〜)

【理念】* 社会福祉を「供給者本位から利用者本位」(岡部2006:37)にするための改革

「介護保険法」の改正(1997年)
「社会福祉事業法」⇒「社会福祉法」に改正(2000年)
「身体障害者、知的障害者の福祉サービス利用制度化」(山下2006:67)としての「支援費制度」施行(2003年)

【制度】(岡部2006:38-)* 1990年以降の供給措置権の「地方分権化」―― それまでの「国庫補助金」による政策誘導(供給コントロール)ではなく、利用者に受給を自己抑制させる制度へ

社会福祉政策の歴史

1945年〜1960年 在宅福祉は「地方自治体単独事業」として位置づけられていた
1960年〜1973年 国(中央)主導の「社会福祉の基盤整備と拡充発展」期
1973年〜1988年 財政改革:補助金交付率の低下⇒ 補助金による政策誘導(だが、制度は増加し続けていた)
1988年〜1997年以降 特に1990年「都道府県から市町村に措置決定権を委譲する」かたちでの福祉サービスの責任の移転。潜在的ニーズの顕在化 ⇒ 国の補助金の増加 ⇒ 「補助金による政策誘導」の限界 ⇒ 「介護保険制度」

※ 理念と財源に関するポイントは、社会福祉基礎構造改革における「利用者本位」は、介護保険制度を見れば、国の負担軽減を目的として利用者に利用を自己抑制させる制度とセットだった、という点。
高齢者を対象にした「介護保険」は、受給に関する利用者の「自己決定」の尊重という理念が「自己責任」を伴う制度に具現されたということを意味する。

■ 高齢者福祉:介護保険制度(1997年〜)の受給コントロール・メカニズム

* 利用額の一割を自己負担 ―― 「利用に応じた負担拡大のメカニズムを社会福祉の財源システムに」導入すること(岡部2006:42)。
* 税方式から社会保険方式へ ―― 公費負担の軽減:財政の半分が保険料で賄われる(ibid.:49)
* 給付基準 ―― 「要介護認定」としてカテゴリー化されたニーズ判定に基づく給付

問題:@ 利用分に応じた負担が利用者に利用を自己抑制させる、A 給付基準の妥当性、B 「居住する市町村が保険者」(ibid.:56)となるため、保険料の地域格差が現に生じている。

■ 障害者福祉@:措置制度から支援費制度へ、両者の相違点

○ 措置制度:2003年までの障害者に対するサービス

 対象者(障害当事者)が措置権者に相談する ⇒ 措置権者は対象者への措置とし、実質的には委託事業者に措置委託する(措置委託費を支払う) ⇒ 委託業者がサービスを対象者に提供する。
 + 事業費補助方式(利用者が事業者と契約を締結する(利用料金を支払う/サービス提供)市町村は事業者に事業費補助申請を受け、事業費補助を行う。)

○ 支援費制度(2003年〜)

 利用者は支援費の支給申請を市町村に行い、支給が決定した場合 ⇒ 指定事業者・施設と利用者は利用者負担の支払い/サービス提供の契約を締結する ⇒ 指定事業者は支援費支払い請求を行い、市町村は指定事業者に支援費を支払う。※ 指定業者の指定は、都道府県知事、中核市長が行う。
 + 事業費補助方式

○ 措置制度と支援費制度の違い

 @ サービス利用決定が、措置権者としての市町村の行政処分から、利用者個人の選択と決定に基づく事業者との契約によって開始されることになった。
 A サービスの直接給付からサービス購入費用を給付(補助)する制度へと変わった。
 B 各自治体によっていたホームヘルプサービスをはじめとする在宅(居宅)サービスを、国の制度として体系付け整理した。(岡部2006:15-16)

※ しかし、依然として「支給決定」は最終的には自治体の裁量に委ねられる仕組みとなっていた。
※ また、居宅生活支援費への国の補助(国庫補助金)は、施設訓練等支援費とは違い「裁量的経費」であり、予算を超える執行が権利として「保障」されているわけではなかった。

 ⇒ 障害者個人の決定と契約に応じてサービスを保障するという理念に基づいた制度である以上、国は「利用総量」を直接的にコントロールすることはできない。予算を抑えたい国=厚生労働省は、「間接的に自治体の給付抑制」(ibid.:18)を促すために、市町村への予算配分の「国庫補助基準」を作ろうとした(2003年1月の「上限問題」)。
利用量総量が決定する以前に、予算の段階で「国庫補助基準」を国が作ることは、「1/2」の部分をあらかじめ決定することであり、したがって利用総量に上限を設けることであり、利用者の決定に応じたサービスの保証という理念は貫徹されない、ということを意味する。

 ※ 義務的経費(総額に応じて、国が定率負担を負う義務がある)
   裁量的経費(自治体が予算不足でも国は追加負担の義務はない)

■ 障害者福祉A:支援費制度から自立支援法へ

 支援費制度の「開始後2年間のホームヘルプサービスの利用実績は、対前年比53%、110%と伸びていた」(岡部ibid.:13) ⇒ 「厚生労働省が、予算超過を防ぐために給付の抑制を図ろうとした」(ibid.)。いわゆる「上限問題」。※ しかし、最初から予算の算出法に問題があった。

…… 利用料の一割負担を求めることで受給に関する利用者の自己抑制メカニズムを組み込んだ高齢者福祉制度である「介護保険」との「統合問題」。

○ 2006年 …… 障害者自立支援法

・財源
 費用負担の割合:国1/2、都1/4、区1/4という形には変更なし。
 障害者自立支援法では…… 利用者がサービスの利用量に応じた費用を一部(一割)負担することになる。

・支給決定までのプロセス
 支援費制度では…… 利用者の自己申告に基づく支給
 自立支援法では…… ケースワーカーの訪問による認定調査 ⇒ コンピューター判定 ⇒ 判定結果と医師の意見書や特記事項を参考に「審査会」で審査する ⇒ 障害程度区分が決定 ⇒ 利用の意向 ⇒ 支給

※ 「支援費」は自立支援法施行により「自立支援給付」と名目が変わり、役所での対応も「支援費係」が「給付係」に変わる。

■ 障害者自立支援制度の諸問題

* 障害者自立支援制度は、利用者一割負担および給付基準の二点で「介護保険制度」を踏襲している。

* 利用者本位の理念が、利用者の自己責任(自己負担)とセットにされている。
利用者負担―― 「所得」に応じた一割以上の負担:だがその所得は家族の収入を入れた「世帯単位」で勘案される。自立の理念の根幹の一つである「家族からの自立」に反する。むしろ逆に、家族が介護を強いられる制度である。介護に支払う金の一部を家族が支払わされるということは、実質的に、その部分の介護を家族が負担させられていることになるから。

* 「地域生活支援事業」は裁量的経費(06年度の補助金予算は200億円)

 小規模作業所国庫補助金(110万円)は06年1月の「全国厚生労働関係部局長会議」において「廃止」が明言された(全家連HP:http://www.zenkaren.or.jp/document/624.html)
 ⇒ 「地域活動支援センター」に引継ぎ(だが定員が、基礎的事業では「定員10名以上」、T型は「一日あたりの実利用人員が概ね20名以上」とされており、補助金は市町村の裁量に委ねられる。また事業所への報酬は、月払いから日払いになる。通所人数×通所日数で事業所への報酬が計算される
 ⇒ 実際に通所しなくても通所可能な場所が存在すること自体が精神障害者にとって支えになる場合があるが、それは報酬に反映されない(きょうされんHP:http://www.kyosaren.or.jp/news/2006/0207_1.htm)

■ 少し別の論点


…… 障害者福祉と高齢者福祉は、両者のニーズが同じであるならば、(よい制度が実現されるならば)「統合」すればよいのではないか(星加2007:83)。

「個々の社会的場面における不利益に定位する限り、日常生活の困難、移動の困難といった支援を要する事柄について、障害者と高齢者を質的に区別する要素は見出し難いから、本来二つの制度は統合されてしかるべきであるように見える」。
とはいえ、もちろん「現行の介護保険」には問題がある。だが、「現行の介護保険制度を障害者運動の側から見て十分な水準にまで改善する要求を行い、それが実現された後に制度の統合を展望するという主張」であれば、成り立ちうる(ibid.:83)。従来の議論は、こうしたいわば最善の制度実現を前提にした「統合論」に対する回答を欠いている。

⇒ 星加の回答:「日常生活において介助・介護が必要である状態そのものは、両者の間に差異はないとしても、それが人生のどの程度の期間において経験されるのか、すなわち時間的な幅のなかで不利益がどの程度「集中」しているのかを考慮に入れるとき、両者に対する異なる処遇は必ずしも「不合理」なことではなくなるだろう」(ibid.:277)

□文献

岡部耕典、2006、『障害者自立支援法とケアの自律――パーソナルアシスタンスとダイレクトペイメント』明石書店
星加良司、2007、『障害とはなにか――ディスアビリティの社会理論に向けて』,生活書院
山下俊幸、2006、「障害者自立支援法をどう読むか」,『「障害者自立支援法」時代を生き抜くために』(メンタルヘルス・ライブラリー15)岡崎伸郎+岩男俊一郎編、批評社


 
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 ◆『季刊福祉労働』2005年
 ◆『季刊福祉労働』2006年

■■「障害者自立支援法」施行後に指摘されている具体的な問題点

――『季刊福祉労働』2005年秋〜2006年冬(108、109、111、112、113号)より

■ 障害者自立支援制度の概要――支援制度との対比
 (http://www.pref.kyoto.jp/handicap/sien/p02.htmlより)

前サービス
@ 居宅サービス ホームヘルプ(身・知・児・精)、デイサービス(身・知・児・精)、ショートステイ(身・知・児・精)、グループホーム(知・精)
A 施設サービス 重症心身障害児施設(児)、療護施設(身)、更生施設(身・知)、授産施設(身・知・精)、
福祉工場(身・知・精)、通勤寮(知)、福祉ホーム(身・知・精)、生活訓練施設(精)

障害者自立支援法
@ 居宅サービス 居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、行動援護、療養介護、生活介護、児童デイサービス、短期入所(ショートステイ)、重度障害者等包括支援、共同生活介護(ケアホーム)、障害者支援施設での夜間ケア等(施設入所)
A 施設サービス 自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援(雇用型・非雇用型)、
共同生活援助(グループホーム)

△ 自立支援給付
@ 介護給付
・居宅介護(ホームヘルプ):入浴、排せつ、食事の介護など居宅での生活全般にわたる介護
・重度訪問介護:重度の肢体不自由の方に対する居宅での入浴、排せつ、食事の介護のほか、外出の際の移動中の介護など総合的な介護
・行動援護:行動上著しい困難がある方に対して、行動する際に生じる危険を回避するために必要な援護や外出の際の移動支援
・療養介護:医療が必要な方に対して、病院などで日中に行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下での介護や日常生活上の援助
・生活介護:障害者支援施設などの施設で日中に行われる入浴、排せつ、食事の介護や創作的活動、生産活動の機会提供
・児童デイサービス:障害児に対する日常生活での基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練などの援助
・短期入所(ショートステイ):介護者の病気などによって短期間の入所が必要な方に対して、施設で行う入浴、排せつ、食事の介護
・重度障害者等包括支援:常に介護が必要な方に対する居宅介護その他の包括的な介護
・共同生活介護(ケアホーム):入浴、排せつ、食事の介護などグループホームで夜間に行われる介護
・施設入所支援:施設に入所している方に対して、夜間に行われる入浴、排せつ、食事の介護

A 訓練等給付
・自立訓練:自立した日常生活や社会生活を営むため身体機能や生活能力の向上のために必要な訓練の提供
・就労移行支援:就労を希望する方に対して、就労に必要な知識・能力の向上を図るための訓練の提供
・就労継続支援:通常の事業所で雇用されることが困難な方に対して、就労機会の提供、就労に必要な知識や能力の向上を図るための訓練の提供
・共同生活援助(グループホーム):グループホームで夜間に行われる相談や日常生活上の援助

△ 地域生活支援事業
・相談支援(関係者間の連絡調整、権利擁護)
・コミュニケーション支援(手話通訳等)
・日常生活用具の給付または貸与
・移動支援
・地域活動支援センター
・福祉ホーム
・居住支援
・その他の日常生活または社会生活支援

※ 財源
△「自立支援給付」は国の義務的経費化された。しかし▽「地域生活支援事業」は地方の裁量的経費

■■ 問題点


1 障害程度認定制度
2 一割の自己負担(家族の所得も対象になること)
3 程度区分によるサービス内容の細分化および財源の分化によるサービス質量の低下
4 ヘルパーの資格制の強化の方向性 ⇒ 介助に対する当事者の自律性が損なわれる可能性

■ 問題点1 障害程度認定制度

○ 認定基準
⇒ 介護保険制度における施設内生活高齢者のADLと介護量に基づく「要介護認定」がモデル

―― 一次判定基準79項目は、ADL(Activity of Daily Living:日常生活動作)に傾斜している。
―― 「食事」「排泄」「移動」「清潔保持」の大項目に、「間接生活介助」、「行動関連行為」、「機能関連行為」、「医療関連行為」の八つの樹形図(佐野、2006-07:32)
―― たとえば、「食事摂取をとって、一部介助、えん下できる、飲水全介助と樹形図を下ると、介護に抵抗「ない」が介護時間三三・二分、抵32>33抗「ある」が二三・八分で、抵抗「ない」ほうが多い、との資料が出ている。全く誰も説明できないソフト」(佐野、ibid.:32-33)
―― 判断はもっぱら医学的尺度に基づいているため、その人が「いつ障害を負ったか」等々に対する配慮はない(茨城、2005-06:22)。個々人の生活スタイルや社会活動の差異に応じて異なるニーズに対応できない。
―― 認定が著しく低かった人および精神・知的障害者に必要な介助・介護に関して、二次判定で加味されることになっているが、十分ではない。

○ 認定調査の内容

―― 「障害」という項目は、「「左上肢、右上肢、左下肢、右下肢、その他」のうち当てはまるものにチェック」する。たとえば、「「間接の拘縮」は他人が動かそうとしても動かないことをいい、動くが痛みのある人や、意思とは関係なく動いたり、動くけれど思うようには動かない場合も、問題なしという結果として出てしまう」(はら、2006-07:142)

・「寝返り」――「片側だけでもできると、「できる」になってしまう」
・「飲水」――全介助/一部介助の違いが不明。「介助者の手が副えられていても、コップを預けて口に入れているかどうかだけの違い」(ibid.)
・「移乗」――「本人の身体を支えていれば「一部介助」」だが、「本人の動きに合わせておしりの下に車椅子を持っていくのは「できる」とされ、介助がいらないことになってしまう」
・「歩行」や「立位」――「歩けるとか立っていることはできても、それだけで精一杯で何もできなければ、実生活においては車椅子や椅子を使って作業することになる」にもかかわらず、細かい部分は無視されてしまう。

○ 調査項目の問題

―― 調査項目の構成が差別的 「「嘘をつくことがある」とか、「暴言や暴力を振るうことがある」など、普通、相当の関係性がない限り本人にこんなことは聞けないと思える項目もたくさんあ」る(はら、ibid.)
――詳細な部分を反映できない
「座位にしても胸にも腰にも足首にもベルトがしてあるにもかかわらず、車椅子なら座れるとしか多くの人は答えません。「支えがあれば座れる」ということにはなりますが、背もたれがあれば座れるのと、ベルトが必要なのとでは大きな違いがあり、それは特記事項に書かなければ審査会で皆同じに扱われてしまいます。」(はら、ibid.:143)

○ 認定制度の運用面での問題点

―― 審査会の委員構成: 多くの市町村では「現在の介護保険審査会の委員が要件を満たせば、一部の委員の入れ替えなどによって同じ委員会で事実上実施されるということになるのではないかと言われている」(茨城、2005-06:26)⇒ だが、介護保険では、二次判定基準もマニュアル化されており、また、「一件あたりの協議時間は、数分から長くても三〇分程度であり、事実上マニュアルがなければ仕事が進んでいかない状況」(茨城、ibid.:27)である。
―― 委員会メンバーは申請当事者の生活実態を具体的に知らないことが前提 ⇒ 一次判定に疑義を申し立てる回路として不十分(ibid.)。
―― 認定者の滞在時間は数分(10分以内)。自己申告だが申告できない場合、家族の申告が使用される。

■ 問題点2 一割の自己負担

・個人の場合―― 障害基礎年金一級=約8万3000円(月額)
               二級=約6万7000円(同)
 だけであり、所得保障がないなかでの「応益負担」(太田、2005-06:39)
・負担額軽減措置―― 各自治体の裁量に委ねられている。所得調査を伴う(プライバシーの侵害)。また、調査対象の所得とは本人個人の所得ではなく「世帯ベース」であり、家族の所得が基準として用いられる。⇒ 最大月額42000円の負担になる。

※ 政府は最大月額の42000円の負担を求められる世帯は全体の約5%と言っているが、野党議員と東京の障害者団体の共同試算では、世帯全体の63%が42000円の負担を求められる「一般」に分類されるという結果が出ている(太田、ibid.:40)。

・施設で暮らしている場合―― 「ホテルコストの負担も求められ、月額手元に25000円しか残されない仕組みとなる」(太田、ibid.:39)
・自立支援医療―― 更正医療や育成医療、精神障害者の通院医療費 ⇒ 基本的に一割ないし三割の負担。人工透析などの恒常的医療の必要な障害者には、きわめて大きい負担が課されうる。

※ 障害者自立支援法における「応益負担」の目的は社会保障予算削減。在宅サービス支援費の財源不足に悩む厚生労働省は、財務省が「在宅サービスの義務的経費化」を了承するのと引き換えに「一割負担」の導入を合意した(石毛、2005-06:69)。

■ 問題点3 程度区分によるサービス内容の細分化および財源の分化によるニーズ呼応性が消失――サービス質量の低下

@ 「居宅介護」「生活介護」「重度訪問介護」「重度障害者等包括支援」の区分
A 「移動介護」「行動援護」「居宅介護」の分離、移動支援の財源は裁量的経費
B 「グループホーム」と「ケアホーム」の分離
C 「授産施設」や「小規模作業所」は、給付基準によって「介護給付」と「訓練等給付」に分離。
D 「訓練等給付対象施設」は、さらに「自律訓練」「就労移行支援」「就労継続支援」あるいは「地域活動支援センター」に細分化。

@ 「居宅介護」「生活介護」「重度訪問介護」「重度障害者等包括支援」の区分

―― 「支援費制度の日常生活支援が無くなり、重度訪問介護」に変わった(野口、2005-06:34)
―― 重度訪問介護を使えない利用者への給付基準は、「第一に、介護・家事型で決定される」ことになる。⇒ 「しかし、介護・家事型利用者はケアプラン作成時から家事をする時間、排泄・入浴をすること等の時間帯や回数まで決められ」る(野口、ibid.)。⇒「施設はなくなったが、在宅が施設になった」状態になりかねない。
―― 「重度訪問介護」の基準単価は低下。重度訪問介護の対象者は、「区分4以上で二肢以上の障害+歩行・移乗・排泄・排便で"できる以外"に該当する者」(尾上、2006:136)⇒ 「区分3と判定されてしまえば、重度訪問介護がそもそも使えない」(ibid.)
―― 「行動援護」は一日五時間まで、という時間制限が継続されている。知的障害者の地域生活の見通しは不透明なまま(ibid.)
―― 「生活介護」の利用者は障害程度区分3以上に限定された。

A 「移動介護」は「行動援護」「居宅介護」と分離され、「地域生活支援事業」の枠組みになった。

―― 「移動介護」は国の義務的経費を財源とする個別給付から外され、市町村の裁量的経費として扱われる「地域生活支援事業」となった(今岡、2005-06:51)。財源確保が困難な自治体の場合、その予算次第でサービス内容が変えられうる(野口、2005-06:34)。
―― 「移動介護」に対する国の予算は200億円(06年10月〜07年3月の概算要求額)。これは裁量的経費であり上限となる(今岡、ibid.:51)。生活のなかに移動があるにもかかわらず、制度的に別立てになっている。利用者のニーズにスムーズに応じる制度ではない。
―― 「行動援護」の支給対象者は、「知的障害により行動上著しい困難を要する者」(今岡、2005-06:49)。
 サービス内容:「外出時及び外出の前後に予防的対応・制御的対応・身体介護的対応を行う」
単価適用:「一日一回、日中に最大五時間の利用で、早朝・夜間・深夜割り増しの設定はない。また、居宅介護計画に沿ったものとし、突発的なニーズに対する支給は想定していないと国は説明」(今岡、ibid.)。「五・五時間以上の報酬単価の設定」がない(中島、2006-07:41)。
―― 「行動援護」の報酬単価は支援費制度と比べて二割近く低い(尾上、2006:136-7)
―― 「居宅介護」は06年10月以降、「「家事援助」が一・五時間まで、「身体介護」が三時間までと報酬基準時間が設定」された(中島、2006-07:40)。

B 「グループホーム」と「ケアホーム」の分離

―― 日割り計算:居住空間であるにもかかわらず毎日「出勤簿」のようなものに印鑑が必要になる。運営の観点からすれば、旅行や外泊は減収になるため、制限されかねない(白石、2006:90)。
―― 「入院や外泊など居住の場以外で宿泊する場合、その間の報酬は発生しない」(三石、2006:93)ため、再入院した場合、その間の退院(ホームへの帰宅)に向けた支援は経済的に保障されない。
―― 運営難「四月から精神科病院へ再入院している利用者もいる。入院している日数は、グループホームを利用しているなとして給付費が法人に支払われないことになった。入院中も職員がさまざまな支援を行っているが、その分は一切給付日に換算されな90>91いのである。支援を行っているのに認められない、むしろ減収になるという事態が既に発生している」(白石、2006:90-91)。⇒ 「運営する側からすると、三六五日グループホームに居てもらわないと減収になる仕組み」⇒ 「運営だけを考えれば、利用者の自由な外泊や旅行も制限するようになる恐れが出てくる」(白石、ibid.:91)
「安定した地域生活を送るうえでも、数週間から数ヵ月の精神科病院への入院は起こりうる。その場合も運営だけを考えれば、入院した時点で退所にし、新しい利用者を入居させたほうがよい」⇒ 「社会的入院を経てせっかく退院してグループホームに入居したのに、再入院すると変える場所がなくなってしまう」(白石、ibid.)
―― 食費自己負担(月7000円前後)のため、預貯金を使わなければ暮らしが成り立たなくなってきた(高山、2006-07:47)

C 「授産施設」や「小規模作業所」は、給付基準によって「介護給付」と「訓練等給付」に分離。
D 「訓練等給付対象施設」は、さらに「自律訓練」「就労移行支援」「就労継続支援」あるいは「地域活動支援センター」に細分化。

―― 「就労移行支援」では「事業者ごとの平均利用期間が標準利用期間〔24ヶ月〕を六ヵ月以上超える場合」には「超過減算」される。
―― 報酬減額制による退所:障害者を受け入れない企業の責任は問われず、個人に就労責任が押し付けられる →「障害に応じた支援をするという基本パターンそのものには何ら手を着けようとしていない。また障害者雇用促進法が障害者の企業への受け入れを促進する者ではあっても、障害のない人々も含めた共に働くことへの支援ではないことについても、何ら見直しはされていない」(山下、2006-07:56)
―― 数値目標が勝手に決められ、それに基づく減収措置。
―― 「福祉工場」と呼ばれていた場所が「雇用型、非雇用型に分けられ、就労継続支援の訓練等給付」にされる。「自律訓練(有期限)、就労以降(有期限)」として就労先に送り出す制度として位置づけられる(津田、2005-06:46)。
―― 「障害者自立支援法では通所施設からの一般就労者を増やすことが目玉となっているが、これまでそれができなかった理由を詳しく分析することもなく、従来どおりの職業リハビリテーションの訓練メニューを上塗りしても本質的解決にはつながらない」(木村、2006-07:69)。「障害の程度によって生活・活動の場が分けられていく」(木村、ibid.:71)
―― 「障害程度区分によって否応なしにケアホーム、グループホームとに分断される」(津田、ibid.:44)
―― 「日中活動を、その障害程度区分により、介護給付と訓練等給付に分ける」(津田、ibid.:46)

■ 問題点4 ヘルパーの資格制の強化の方向性 ⇒ 介助に対する当事者の自律性が損なわれる可能性

> ―― 「ヘルパー資格を介護福祉士レベルまで引き上げようとする動き」(野口、2005-06:35)
⇒ 130時間の受講から500時間へ。既に介護者が不足している現状では、「介助者確保は絶望的」になる(野口、ibid.:36)。また、専門職として身分保障されたヘルパーが介助に専念するようになり、「実質上の施設管理体制が在宅生活でも行われることに」なる恐れもある(ibid.)。

■ 文献

はらだいすけ、2006-07、「障害者自立支援法における障害程度区分等認定調査員として」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、141-143)
茨城尚子、2005-06、「支給決定の仕組みの問題点とこれからの介助保障」(『季刊福祉労働』109、05-06:Winter、22-28)
石毛^子、2005-06、「国会で審議つくせなかったこと、つくせなかった課題」(『季刊福祉労働』109、05-06:Winter、68-72)
今岡望、2005-06、「後退する障害者の社会参加」(『季刊福祉労働』109、05-06:Winter、48-52)
木村俊彦、2006-07、「地域生活支援事業の展望――地域活動支援センターを地域の相談支援拠点に」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、65-72)
三石麻友美、2006、「障害者自立支援法の影響」(『季刊福祉労働』111、2006:Summer、92-93)
中島哲朗、2006-07、「障害者自立支援法は、地域に何をもたらすか?――障害者自立支援法の完全施行に思う」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、34-46)
野口俊彦、2005-06、「障害者自立支援法――介護の質は確保できるのか」(『季刊福祉労働』109、05-06:Winter、29-37)
尾上浩二、2005、「障害者自立支援法廃案――障害者の地域生活確立に向けた闘いは続く」(『季刊福祉労働』108、05:Autamun、139-143)
――、2006、「「障害者自立支援法」成立から施行一ヶ月――広がる波紋」(『季刊福祉労働』111、2006:Summer、134-139)
尾上浩二・山本創、2006-07、「早急な出直し求められる「自立支援法」――「地域生活を直撃」が障害当事者アンケートで浮き彫りに」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、12-21)
岡部耕典、2006-07、「障害者自立支援法に立ち向かうために――当事者主権/〈必要〉本位の福祉のかたちを求めて」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、22-28)
太田修平、2005-06、「なぜ今「応益負担」なのか」(『季刊福祉労働』109、05-06:Winter、38-42)
佐野武和、2006-07、「なんで審査会委員やらなアカンの?」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、29-33)
白石直己、2006、「障害者自立支援法の影響――暮らしの現場から」(『季刊福祉労働』112、06:Autamun、90-91)
高山和彦、2006-07、「グループホーム・ケアホームのあり方」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、47-53)
津田茂樹、2005-06、「障害程度区分で分けるって……憲法違反でしょう」(『季刊福祉労働』109、05-06:Winter、43-47)
塚本正治、2006-07「精神障害者から見た自立支援法」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、73-84)
山本創、2005-06、「障害者自立支援法からみえてきたもの――これからの取り組み」(『季刊福祉労働』109、05-06:Winter、12-21)
山下浩志、2006-07、「共に学び、共に働くための支援が問われている」(『季刊福祉労働』113、06-07:Winter、54-64)


 

■文献(作成開始したばかり)

◆立岩 真也 2002/01/28 「二兎を追う――問題「介護保障について論ぜよ」に」,『われら自身の声』(DPI日本会議)
◆立岩 真也 2003/03/00「障害者運動・対・介護保険――2000〜2002」,平岡公一(研究代表者)『高齢者福祉における自治体行政と公私関係の変容に関する社会学的研究』,文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書(研究課題番号12410050):79-88
◆立岩 真也 2003/05/15 「介護保険的なもの・対・障害者の運動 1」,『月刊総合ケア』13-05:(医歯薬出版)
◆立岩 真也 2003/07/15 「介護保険的なもの・対・障害者の運動 2」,『月刊総合ケア』13-07:46-51(医歯薬出版)
◆立岩 真也 2004/11/00 「介護保険制度改革の方向」,『生活経済政策』2004-11[了:20041004]
◆岡崎 伸郎+岩尾 俊一郎 編 20060210 『「障害者自立支援法」時代を生き抜くために』,批評社,メンタルヘルス・ライブラリー15,176p. ISBN4-8265-0436-5 C3047 1900+ [boople][amazon] ※,
◆立岩 真也 20060210「障害者自立支援法、やり直すべし――にあたり、遠回りで即効性のないこと幾つか」(再録),岡崎・岩尾編[2006:43-54]
◆宗野 政美・檜山 うつぎ・香野 恵美子・増田 一世 20060527 『これでいいのか障害者自立支援法・2』,やどかり出版,134p. 1050 ISBN-10: 4946498885 ISBN-13: 978-4946498886 [amazon] ※ d d06
◆岡部 耕典 20060605 『障害者自立支援法とケアの自律――パーソナルアシスタンスとダイレクトペイメント』,明石書店,161p. ASIN: 4750323551 2100 [boople][amazon] ※,
◆佐藤 久夫(日本社会事業大学教授・日本障害者協議会理事) 20060918 「障害者自立支援法の現状と課題」,『福祉新聞』2006-09-18(論壇)
 http://www.eft.gr.jp/enough/shinsakai/060918.html
『現代思想』34-(2006年12月号) 20061201 特集:自立を強いられる社会,ISBN4-7917-1157-2 1300 [amazon][boople] ※, b d
◆立岩 真也 2007**** 「自立支援」,『応用倫理学事典』,丸善[了:20070104]
◆立岩 真也 2007**** 「障害者運動・対・介護保険――2000〜2003」(仮題)平岡 公一・山井 理恵 編『介護保険とサービス供給体制――政策科学的分析』(仮題),東信堂 [了:20040203]


*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)の成果/のための資料の一部でもあります。




UP:20070412 REV:0417, 20100122,0428,0509, 20120103
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