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東日本大震災 障害者関連報道 2012年6月

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災害と障害者・病者:東日本大震災

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新聞記事見出し

新聞記事本文
◇大田原市:災害時要援護者の受け入れへ、18法人・会社と協定書 /栃木
(2012.06.30 毎日新聞地方版/栃木) 
 災害時に1次避難所での生活が困難な「災害時要援護者」を受け入れられるよう、大田原市は29日、福祉施設の運営法人・会社と協定書を交わした。施設は2次避難所「福祉避難所」と位置づける。
 市地域防災計画の要援護者対応マニュアルに基づく対策。協定は市内の介護老人福祉と保健、認知症、ショートステイサービスなど施設を運営する計18の法人・会社と結んだ。施設数は計39カ所。
 対象は1次避難所で特別な配慮を必要とする高齢者と障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者などを想定。要援護者は293人の登録があり、災害時には1施設に3〜5人を受け入れてもらう予定。費用は市が負担する。
 調印で津久井富雄市長は「災害時の体制が整い感謝します」とあいさつ。施設側代表の増渕則雄・晴風園施設長は「地域福祉に役立つよう協力していきたい」と述べた。【柴田光二】


◇大田原39施設 福祉避難所に=栃木
(2012.06.30 読売新聞東京朝刊 栃木5)
 大田原市は29日、災害時に高齢者や障害者らを民間福祉施設に受け入れてもらうための協定を、市内の老人福祉施設など18法人と結んだ。
 法人によっては複数の施設を運営しているため、施設数は39か所、受け入れ可能人数は1施設3?5人で計約150人に上る。施設は、2010年に策定した市災害時要援護者対応マニュアルに基づき、「福祉避難所(二次避難所)」として指定され、一般の避難所に避難した人が必要に応じて振り分けられる。
 市福祉課によると、市内には、介護保険の要介護認定者や独り暮らし高齢者、障害者など約300人の災害時要援護者がいるという。


◇(防災みえ 地域を守る)避難路オーダーメード 視覚障害者歩き訓練 志摩 /三重県
(2012年06月26日 朝日新聞朝刊 伊賀・1地方)
 南海トラフ巨大地震に備え、目の不自由な人たち一人ひとりの避難経路に応じた「オーダーメード避難訓練」が24日、志摩市であった。マニュアル通りの集団訓練では気付かない「危険」を調べ、避難時の想定外を減らす狙いだ。
 「ここは自動販売機が並んでます」「古い家がたくさんあります」
 志摩市阿児町鵜方で鍼灸(しんきゅう)マッサージ院を営むともに全盲の小川正次さん(63)、明美さん(62)夫妻が、ボランティアらのアドバイスを受けながら、「避難路」を確認する。志摩市の防災ハザードマップによると、小川さん宅の近くでは約50センチ程度の浸水が予想されている。
 当初、小川さんが避難所に想定していたのは、標高8・5メートルの鵜方公民館。自宅から徒歩約10分だが、道中には地震が起きたら障害物になりそうなものが散見された。道は知っていても、「道路脇に何があるかは知らなかった」と小川さんは話す。
 この日は公民館の少し手前にある近鉄鵜方駅も訪れた。橋上駅舎で、浸水の心配はなく、駅へ向かう歩道には点字ブロックが設置されている。駅なら援助も期待できることから、災害時は、公民館ではなく、まず鵜方駅に行くことにした。
 今回の訓練の発案者は、津市ボランティア協議会の萩野茂樹会長(58)。災害時は、視覚障害者が1人で避難しなければならないこともある。しかし、これまでの防災訓練は、健常者と集合した段階から避難を始めるケースが多かったという。訓練では、避難経路が液状化したり、点字ブロックが崩壊したりした場合にどう対応するかという課題も浮かび上がった。
 視覚障害者の中には、小川さんらと違い、1人で外出する機会が少ない人もいる。萩野さんは「緊急時に確実に助けてくれる人が来るかどうかは分からない。自力で行けるとこまで行くことで助かる確率は高くなる」と話す。今後も訓練を重ね、ノウハウを広げていくつもりだ。
   ◇   ◇   ◇
 社会福祉法人「日本盲人会連合」の報告書によると、東日本大震災では、避難場所と避難経路を日ごろから確認をしていた人は、1人でも避難できたという。一方、外出機会が少ない人は、民生委員らの助けが必要だった。
 大震災時の避難は、行政などの支援が届きにくい。そのため、地域での助け合いとともに、「自らの安全は、自らが守る」ための準備や対応が重要だ。しかし、小川さんが住む志摩市では、障害がある市民に防災訓練の参加を直接呼びかけてはいないという。
 最大20メートル以上の津波が数分で襲うとされる尾鷲市の担当者も「健常者でも避難が難しい。障害者対策は手つかず」と話す。鳥羽市と同市社会福祉協議会などは昨年8月、視覚障害者らが高台に避難する訓練を実施した。集合段階から健常者が手を引いたが、緊急時に反映できるかは未知数だ。(保坂知晃)


◇障害者の日常 ファイルに 「親なき後」思い持病、薬など=奈良
(2012.06.25 読売新聞大阪朝刊 セ奈良)
 ◎県手をつなぐ育成会作成 
 県手をつなぐ育成会(橿原市)は、知的、発達障害がある人の健康状態や日常生活などを記録するファイル「ならHeart&Heart」(A4判)を作成した。親が亡くなっても施設入所や災害時の避難など支援が必要な場面で困らないようにするのが目的。同会は「地域との懸け橋として活用してもらえれば」としている。
 「障害者と家族や地域、支援者の心をつなぐ」との思いを込めて名付けた。記入欄は30ページで、名前や生年月日、緊急連絡先、持病や薬、食事、本人が利用する福祉制度のほか、学校や施設、会社の経歴や1日の過ごし方、親の願いなど項目は多岐にわたる。ページの追加もできる。
 同会は障害がある人の親ら約1000人で構成。高齢の親も増え、将来の支援が課題になっていた。昨年の東日本大震災を踏まえ、昨年6月から「親なき後」検証委員会のメンバー13人が月1?4回集まって検討。先行事例を参考にし、パニックになる原因や対処方法をはじめ、親が困った場面も考慮に入れ、記入する項目をまとめた。
 中山幸子委員長らは「周りの支援が必要だが、千差万別で親にしか分からないこともある。母子手帳に続くものとして成長記録を書きとめることで、命をつなぐファイルにしたい」と言い、川本肇理事長は「色んな場面で『ならHeart&Heart』が頼りになるよう普及してほしい」と期待している。
 会員には無料で配布。希望者には実費で販売する。問い合わせは同会(0744・29・0150)。
 

◇県防災士:人気高まる 人材バンク構想も 県地震センター「知識身につけ広めて」 /静岡
(2012.06.22 毎日新聞地方版/静岡) 
 県民の防災意識の高まりを受け、県独自の「防災士」の称号や防災学講座の人気が高まっている。防災士の養成講座を主催する県地震防災センター(静岡市葵区駒形通)では、防災知識を広めるスタッフを派遣する「防災人材バンク」(仮称)の創設も検討している。【山本佳孝、樋口淳也】
 「こんなにハイペースで応募がくるのに驚いている」。県が20日、毎年恒例の「県ふじのくに防災士養成講座」の募集を開始したところ、2日目の21日現在で100人近い応募があった。昨年の受講者数が156人だったことを考えると、関心の高い伸びがうかがえる。
 昨年秋、障害者や高齢者など災害弱者を抱える施設の職員にアンケートしたところ、100人以上が受講を希望した。県は今年、定員を昨年の180人から300人に広げ、会場も例年の静岡、沼津、浜松の3会場に下田会場を加えた。
 同講座は東海地震への備えを強化するため、地域や事業所の防災リーダーを育てようと05年度から開始。10年度からは、講座の修了者に県知事が認証する「県ふじのくに防災士」の称号を与え、育成に力を入れている。既に県内で1013人が県ふじのくに防災士として認証されている。
 今年の講座は8月28日から10月4日まで計10日間行われ、阿部勝征・気象庁地震防災対策強化地域判定会会長ら専門家が、「地震発生のメカニズムと予知」や「避難生活における要介護者支援」「ボランティアの実際」などを講義する。特に救命講習は人気科目だ。
 申し込みが多いのは県地震防災センターの「防災学講座」も同様だ。定員180人を大きく上回る約230人の受講希望があったため、今月16日の開催に加え、30日にも追加開催を決めた。
 同センターの小林佐登志所長は「専門的な知識を身につけてもらい、職場や地域に広めてほしい」と災害への備えに情報が重要であることを強調。「『防災人材バンク』ができたら県ふじのくに防災士に登録してもらい、防災事業に活躍してほしい」と期待している。


◇スコープ2012:社会福祉施設耐震化率 全国平均大きく下回る /岡山
(2012.06.19 毎日新聞地方版/岡山) 
 ◇19政令市中、岡山18位 中核市で倉敷最下位
 ◇防災拠点、小中学校優先で
 県内の老人ホームや障害者施設、保育園など社会福祉施設の耐震化率が全国平均より低いことが厚生労働省の調査で分かった。公立社会福祉施設の耐震化率をみると、倉敷市は、中核市40市で最下位の23・7%と全国平均の68・1%を大きく下回った。岡山市は政令市19市で18番目の50・4%(全国平均82・1%)だった。災害時の拠点となる小中学校の耐震化が優先され、高齢者や障害者がいる社会福祉施設の安全性は後回しになっている。【坂根真理】
 社会福祉施設は、地震発生時に介護が必要な高齢者や障害者らを受け入れる「福祉避難所」として期待されることから、厚労省が初めて調査を実施した。
 10年4月時点で、全国の社会福祉施設約14万6000棟のうち、耐震化の割合の全国平均は81・3%▽公立74・5%▽私立83・9%だった。一方、県全体(倉敷市と岡山市を除く)の耐震化率は77・9%▽公立69・3%▽私立83%と、いずれも全国平均を下回った。
 倉敷市の場合、公立の耐震化率は全国平均を40ポイント以上も下回った。新耐震基準が定められた82年以前の建物が多いからという。私立は新基準以降の建物が多く、81・4%だった。市は「既設の建物の対応が遅れた。財政状況が厳しい中で、まずは防災拠点となる小中学校の耐震化を優先した」と説明する。
 市によると、公立の社会福祉施設59棟のうち、約6割の35棟が公立保育園という。6月議会で公立保育園と幼稚園の耐震化事業費5135万円を提案した。15年までに耐震化診断を終わらせて順次工事するという。
 岡山市も公立施設の耐震化は遅れがちだ。旧基準の建物が多く、対応が追いつかなかったとみられる。
 厚労省は1月、社会福祉施設の耐震化を進めるよう各都道府県に通知した。県の担当者は「岡山は地震が少なく、災害に対する意識が低いと考えられる。福祉施設の耐震化は急ぐ必要があり、各自治体に積極的に働きかけたい」としている。


◇県世論調査:震災を機に取り組みたいこと、「近所付き合い」6割 /千葉
(2012.06.14 毎日新聞地方版/千葉) 
 県が県政に関する世論調査を行ったところ、東日本大震災を機に取り組みたいことについて約6割が「近所付き合い」と回答した。県は「震災を機に県内でも身近なきずなを求める傾向が強まっている」とみており、今後の政策に反映させる考えだ。
 県による世論調査は1975年度から毎年実施しており今回で43回目。昨年11月25日〜12月16日に無作為抽出した県内在住の20歳以上の男女3000人に調査票を郵送して回答を求め、回収率は50・5%(1515人)だった。質問テーマは大きく分けて「防災」「消費生活」「障害者施策」「道路整備」など9項目を設定した。
 震災を機に取り組みたいことを複数回答を認めて質問すると、「普段からの近所付き合いを大切にする」が59・5%と最も多く、「自主防災組織などへの参加」(45・9%)や「市町村などの防災訓練への参加」(23%)を大きく上回った。東日本大震災を教訓に、災害時の地域の人たちとの助け合いが重要だとの認識が強まっているとみられる。
 年代別で見ると、高齢者ほど近所付き合いを求める人が増加。地域別では香取地域が2位の長生地域よりも17・0ポイント多い84・4%と突出し、自主防災組織などへの参加も62・5%と最も高かった。県は「原因は分からないが、香取はよりきずなを求める地域性があると言える」と指摘する。
 また、「災害に強い県づくり」や「交通事故が起きにくい環境の整備」など県内の暮らしの安全・安心に関する5項目について満足度を質問したところ、いずれも「不満」と「やや不満」が全体の45%以上を占めた。県は「不満を分析し、事業を見直すなど今後の県政に生かしていきたい」と話している。
 今回の世論調査結果は、県のホームページ(http://www.pref.chiba.lg.jp/kensei/kenminsanka/enquete/yoron/)で見ることができる。問い合わせは県報道広報課(電話043・223・2247)。【田中裕之】


◇県:災害被害、迅速に把握 福祉施設と携帯メールで−−きょうから運用 /香川
(2012.06.14 毎日新聞地方版/香川) 
 県は、災害時に社会福祉施設の代表者と携帯電話でメールをやり取りし、被害状況を確認するシステムを14日から運用する。県職員の安否を確認するため昨年度導入したシステムで、社会福祉施設を対象に運用するのは全国初の試みという。【馬渕晶子】
 東日本大震災で高齢者や障害者ら「震災弱者」の避難・救護が課題として浮上したことから、社会福祉施設の被害状況を迅速に把握し、福祉避難所の入所調整や要援護者の救助などの初動対応を素早く進めるのが狙い。
 対象は高齢者、障害者、児童福祉施設で県内約1500施設のうち、約210施設の代表者が携帯メールアドレスや施設種別、所在地などを事前登録している。
 県は震度4以上の地震や大雨洪水警報発令時で災害が想定される場合、代表者にメールを一括送信。代表者は、負傷者数や施設の被害状況、避難者の受け入れ可能人数、100文字以内の連絡事項をメールで返信する。情報は専用サーバーに集約され、県と各市町の福祉・防災担当者がパソコンやスマートフォンから状況を一覧で確認できる。返信内容は自動集計され、市町別や施設種別でも状況を見ることができる。
 現在は市や町が電話やファクスで施設側から情報収集し、県に報告しているが、回線の混雑で時間がかかったり、機器などの故障で通信が断絶されるなどの懸念がある。メールは通信の復旧も早いうえ、携帯電話は持ち歩けることから、情報の送受信や確認がどこでもできるなどのメリットがあるという。


◇東名のり面に避難 設備設置の要望書=静岡
(2012.06.14 読売新聞東京朝刊 静岡2)
 静岡市駿河区の川原自治会連合会(田中淑也会長)は13日、津波災害時の避難場所となっている東名高速道路の「のり面」に、階段などの避難用設備を設置するよう求める要望書を田辺信宏市長に提出した。
 要望書では、現在あるのり面への進入口では、子どもや高齢者、障害者が登るのが容易ではないことから、階段やスロープなどの避難用施設の設置を求めた。
 同会の田中会長は「(のり面は)かなりの傾斜があり、災害時にパニックになる恐れもある。切実な課題だ」と要請。田辺市長は「課題を整理して検討したい」と応じた。
 同会では今後、東名高速を管理する中日本高速にも要請するという。


◇福祉施設被災状況 携帯確認システム 県、迅速に情報収集=香川
(2012.06.12 読売新聞大阪朝刊 香川)
 県は11日、災害時の福祉施設の状況を携帯電話のインターネット接続機能を使い確認するシステムを導入すると発表した。固定電話やファクスと併用することで、より迅速に情報収集できるメリットがあるといい、14日から運用する。
 NTTドコモのデータ集計サービスを利用。あらかじめ登録した施設の代表者の携帯電話に、県が負傷者数や施設の被害状況などを尋ねるメールを送信し、施設側が各項目に回答して返信する。回答の内容は自動的に集約され、県や市町の担当者がスマートフォン(高機能携帯電話)やパソコンで閲覧、確認できる。
 県内に約1500ある高齢者や障害者福祉施設、保育所のうち、約200施設が登録を決めている。


◇民間介護福祉施設 甲斐市と災害協定=山梨
(2012.06.09 読売新聞東京朝刊 山梨)
 甲斐市は8日、市内の民間介護福祉施設を災害時に市指定の福祉避難所として活用する協定を17施設と結んだ。
 市福祉課によると、災害時に福祉避難所に入る必要があるのは、重度障害者や介護度の高い高齢者ら。現時点で市が把握しているだけでも市内に1041人いる。だが、これまでに市が指定していた福祉避難所は市内3か所の市保健福祉センターのみで、収容人数は3施設で最大100人程度と少なかった。
 これを受け、市は市内の全22か所の介護福祉施設に協定締結を呼びかけ、今回、17施設が合意した。市から福祉避難所の指定を受けると、県の補助金で非常用電源や備蓄品を購入でき、災害時の光熱費や人件費は市が負担することになる。締結式で保坂武市長は「連携強化を図り、行政が気づかないところをご指導いただければ」とあいさつした。


◇(週刊お年寄り)安心・見守り編 万一に備え、自分情報 /中国・共通
(2012年06月09日 朝日新聞朝刊 広島1・2地方)
 災害や急病で誰かの助けが必要になった時、知っておいてもらいたい情報を整理していますか。知人の家やかかりつけ医、持病の名前まで、様々な「自分情報」を地図や筒に保管しておく山口市などの試みを紹介します。

 ◎《災害》友人宅・立ち寄り先を地図に
 赤、黄、緑、青。色とりどりの丸いシールが住宅地図に貼られている。赤は自宅、緑は友人の家、青はよく行くお店の印。自分にまつわる情報が盛り込まれた「支え合いマップ」だ。
 山口市では2009年度から、避難するのが難しいお年寄りや障害者一人ひとりの情報をそれぞれ1枚の地図に落とした「マップ」を作り、市社会福祉協議会や市、民生委員ら関係者が保管している。災害が起きたとき、誰がどうやって助ければいいのか、一目で分かるようにするためだ。2月1日現在、市内4地区で計505世帯分を作った。
 まず、地域の民生委員がお年寄りらの自宅を訪ね、同意の上で聞き取り調査する。災害時に駆けつけてくれる人が近くに住んでいるか、普段どんな店に行くか。親しい人がいない場合、助けてくれそうな人を探し出すこともある。
 認知症だったり、足が悪くて普段の外出が困難だったりと、あらかじめ知っておいた方がよい情報もマップに盛り込んでいく。お年寄りと助ける人の家の間には矢印が引かれ、避難所に逃げる道順も書いておく。
 マップ作りを進めている市社協の野村隆志さん(53)は、(1)支援が必要な人の登録(2)マップ作り(3)マップを生かした避難訓練――を3点セットと呼ぶ。「いざという時に地域でどう支え合えばいいか、3点セットで見えてくる。お年寄りが支援者に遠慮する必要もなくなる」
 同市の沿岸部・秋穂二島地区では昨夏、マップを生かして避難訓練をした。
 「要援護者」のお年寄りと「支援者」の近所の人が手をとって歩いたり、車椅子を押したりして避難所をめざした。「互いの信頼が深まった。これを機にごみ出しや買い物など、普段の支援にもつなげたい」と、地区社協の藤村武司会長(70)は言う。

 ◎《急病》持病・薬を筒に
 急病に備え、持病や薬の情報を保管しておく方法もある。山口市は3月、「救急サポート安心キット」を1万6千個用意した。希望するお年寄りや障害者に配っている。
 ペットボトルくらいの大きさの筒状の容器。そこに名前、生年月日、血液型、持病や薬、かかりつけ医の連絡先などが書いてある紙を入れておく。保管するのは、基本的に冷蔵庫の飲み物ラック。どの家にもあって、頑丈だからだ。
 市内の年間の救急搬送件数の半数以上が高齢者搬送になったこともキットを導入するきっかけになった。
 緊急時、かかりつけの医療機関をはっきり伝えられない状態でも、キットの情報があればしかるべきところにすぐ搬送できる。「災害時でも避難所に持って行くと役立つ」(市高齢・障害福祉課)という。
 山口県防府市はキットを配布した人の住所と名前を消防と共有している。ただ、救急隊が家に着いた時、冷蔵庫に保管されていなかったり、必要な情報が書かれていなかったりすることもあるという。
 市消防本部警防課の担当者は「冷蔵庫だと分かりやすい。正しい使い方をしてもらえば救える命もある」と話している。

 ◇追伸・記者より
 個人情報を詰め込んだ「安心ボトル」。実家の備えが気になり、熊本市の母親に電話した。「何もしていないよ」と話す母親に、支え合いマップの取り組みを教えたが、「たいしたもんだねえ!」と言うだけ。災害が相次ぐ中、万が一に備えてくれれば、離れて暮らす私も安心するのだが。(奥正光)


◇福祉避難所:増やそう 充足率52.5%、県や施設が推進会議 /大分
(2012.06.08 毎日新聞地方版/大分) 
 県内に165カ所(3月末現在)しかない高齢者や障害者ら災害時要援護者の福祉避難所。特別養護老人ホームなどが指定されているが、厚生労働省のガイドラインでは小学校区単位に必要といい、本県では314カ所。充足率は52・5%に過ぎない。このため県や大分市のほか社会福祉協議会や福祉施設の代表者らが推進会議を設立。大分市内であった初会合で、市町村や福祉施設への設置呼び掛けを申し合わせた。
 要援護者は専門ケアや個別対応が必要で、一般避難所にはなじまない。このため東日本大震災を受け、県が3月に改訂した県地域防災計画に充実の必要性が盛り込まれた。
 県内の要援護者は約20万人。東日本並みの大震災が起きれば県内では約3万人の避難が想定される。知人や親戚宅に避難する人を除いて約3000人が福祉避難所に行くとみられる。特定エリアに集中するため、増強が不可避という。
 県の委託を受けた県社会福祉協議会が、旅館やホテルも福祉避難所にモデル指定したい意向で、避難訓練も主導する。【佐野優】


◇「30メートル津波」対策 先送り 道防災会議 予測最終報告の後に=北海道
(2012.06.08 読売新聞東京朝刊 札2社)
 北海道防災会議が7日、札幌市内で開催され、東日本大震災を受けて見直しを進めた道地域防災計画を決定した。市町村ごとで策定する地域防災計画の指針となるものだが、同会議の地震専門委員会作業部会が示した北海道太平洋沖で巨大地震が起きた時の新たな津波予測は、最終報告がされていないため反映されず、原子力防災は、原子力規制庁の発足遅れなど、国が改定する指針が示されていないため手つかずのままとなった。
 道は、津波予測の最終報告を受けて、同計画に盛り込み、7月中に変更点を各市町村に説明する。原子力防災については、国の方針が定まれば、改めて道防災会議を開催して決める。
 地震専門委員会作業部会は今年4月、想定地震の規模をマグニチュード(M)8・6から9・1に引き上げ、最大の津波の高さが5町で30メートル以上など、沿岸38自治体のうち17自治体で10メートル以上となる予測を示している。
 道防災会議が決定した計画は、津波対策強化や、被害を最小限にとどめる「減災」の考え方を導入。「地震防災計画編」の一部だった津波対策を「地震・津波防災計画編」に格上げし、地域住民が自ら身を守る自主防災組織の普及、高齢者や障害者の現状把握と福祉避難所の指定、災害時に必要な物資や燃料確保のため民間との連携強化、避難誘導の消防団員などの危険回避のための行動ルールを定めることなどを盛り込んだ。
 道防災会議の開催は14年ぶりだった。〈関連記事28面〉


◇視覚障害者らが千葉に集い大会=千葉
(2012.06.08 読売新聞東京朝刊 京葉)
 視覚障害者を取り巻く諸問題について論議し、より住みやすい街づくりを話し合う「第65回全国盲人福祉大会」(読売新聞千葉支局など後援)が7日、千葉市美浜区のアパホテル&リゾート東京ベイ幕張で開幕した。
 全国から約1300人の視覚障害者やボランティアが参加。全体会議で運動方針を確認するほか、三つの分科会で視覚障害者の災害支援や就労の拡大などについて話し合う。9日の最終日には、駅ホームに転落防止柵などを設置するよう国に求めることなどを盛り込んだ決議を行う予定。


◇[プリズム]救急情報キット 13市町導入 高齢者の持病、服薬内容記録=栃木
(2012.06.05 読売新聞東京朝刊 栃木1)
 ◎鹿沼も今月配布 
 救急搬送などの緊急時に備え、一人暮らしの高齢者や障害者世帯を対象に症状や服薬内容などを記した情報シートの保管キットを配布する動きが県内で広がってきた。鹿沼市が6月から情報シートを入れた「救急医療情報キット」の配布を始めるなど、県内では13市町が導入。他県も含め、中には一命を取り留めるケースもあるほどだが、周知不足から普及は頭打ちで、関係者はメリットを強調し利用を呼び掛けている。(太田晶久)
 □代理更新も可能
 鹿沼市の救急医療情報キットは長さ22センチのプラスチック状の筒で、所有者の緊急連絡先、服薬内容、かかりつけの医療機関、治療中の病気の4項目を記載した情報シートを入れる。救急隊が見つけやすいことから、冷蔵庫の中で保管するように指導している。
 対象は、65歳以上の一人暮らしの高齢者と障害者、高齢者、障害者のみの世帯など計約7000人で、1日から受け付けている。高齢者世帯は、毎年実施の「高齢者状況調査」の際に希望すれば、手渡しする。
 シートは、本人が手書きで記載するが、親族が代理で行うことも可能。情報更新は、原則本人や親族が行うが、難しい場合は、市内に約200人いる民生委員が訪問し、対応する。予算は約200万円で、市担当者は「希望者が多ければ数を増やしたい」と話す。
 □とりとめた命
 2008年4月、東京都港区は国内で初めて救急医療情報キットを導入した。「アメリカで救急搬送時に役立っている」と、明治学院大社会学部の岡本多喜子教授が提案した。同区では主なターゲットとする高齢者3万6826人に対し、今年1月時点で約5000個を配布している。救急隊員からは、「意識のない高齢者を搬送する際、適切に処置できた」という声が聞かれるなど評判は上々だ。
 09年から試行実施した北海道夕張市では、高齢者夫婦宅で、夫が意識を失って倒れ、妻が混乱して病状を正確に話せない事案があった際、キット内の情報シートで救急隊員が病歴を確認。迅速に処置され、一命をとりとめた事例が報告されている。
 □周知に工夫必要
 一方、「健康だから大丈夫」と過信して関心を持たない人も多く、港区担当者も「配布数は頭打ちの状態だ」と頭を抱える。
 10年に導入した日光市もPR不足を痛感する。高齢者世帯9235世帯に対し、12年6月時点の配布先は707世帯にとどまっているが、市が今年5月、災害時の緊急連絡先などの登録意向調査を実施する際「災害時も救急時も同じ」とPRし希望者を募ったところ、1000人を超えた。同市担当者は、「東日本大震災以降、高齢者の危機意識が高まっており、もっと早く工夫できれば良かった」と話す。
 岡本教授は、「自治体によるPRだけでなく、消防、医療機関、自治会、民生委員など、関係機関が連携した周知活動が大切」と指摘した。
 
 〈救急医療情報キット〉
 高齢者や障害者などの安心・安全を確保するため、かかりつけ医や持病といった医療情報や緊急連絡先などを記入したシートのほか、診察券や健康保険証の写しを入れる容器。東日本大震災の影響もあり、全国で注目されている。配備状況が分かるように玄関にステッカーを貼ることを推奨する自治体も多い。冷蔵庫内に保管するのが主流。
 

◇県、6団体と災害応援協定 連携し福祉施設機能維持=徳島
(2012.06.02 読売新聞大阪朝刊 徳島)
 東海・東南海・南海地震などの災害発生時に互いに連携し、福祉施設の機能を維持するため、県と県内の社会福祉施設などが所属する6団体が1日、県庁で災害時相互応援協定を結んだ。
 協定は県と、県老人福祉施設協議会(中村博彦会長)など高齢者福祉の3団体、県知的障害者福祉協会(加藤和輝会長)など障害者福祉の2団体に県児童養護施設協議会(山口憲志会長)を含めた計6団体で締結された。各団体に所属する計441施設が対象となる。
 協定は▽生活物資の提供と応援職員の派遣▽被災施設からの入所者の受け入れや、受け入れ施設への職員の派遣▽災害時に高齢者や障害者が避難する、福祉避難所の事前指定への協力や同避難所への職員派遣▽そのほか、災害時などに県や各団体が必要と認めた事項??の4項目。
 今年度、新たに任命した県職員22人の介護福祉コーディネーターを中心に、活動の指揮や連絡調整にあたる。県内には現在、68か所の福祉避難所があるが、各中学校区に1か所の同避難所設置を目標にしており、18か所不足しているとしている。


◇避難所:障害者施設が独自に 「震災がきっかけ、安全確保必要」−−涌谷の「共生の森」 /宮城
(2012.06.01 毎日新聞地方版/宮城) 
 ◇空き家農家整備し来月開設へ
 障害者の自立を支援する涌谷町涌谷の通所授産施設「社会福祉法人・共生の森」(牛渡重光理事長)は、災害時に利用者を集団避難させる避難所を、独自に開設する。約6キロ離れた同町太田の空き家農家を購入し31日、スタッフが本格的な整備作業を始めた。開設のめどは7月。障害者施設による独自の避難所設置は珍しいという。
 「共生の森」の狩野堯生(たかお)参事(75)によると、避難所設置のきっかけは東日本大震災。「共生の森」では施設に大きな被害はなかったが、ライフラインが途絶え1週間休所した。一方、沿岸部の同種施設では利用者らが津波から身一つで裏山に避難し、数日間、飲まず食わずで過ごしたことを聞いた。江合川に近い低地にある「共生の森」も、豪雨による水害などで孤立する恐れがあると認識。利用者全員の安全確保の必要があると判断し、避難所設置を理事会で決めた。
 空き家農家は、趣旨を理解した持ち主が格安で譲ってくれたという。11部屋もあり、山林を含め2ヘクタールの土地付き。「共生の森」の利用者は42人だが、希望する地域住民も受け入れる予定のため、最大100人が少なくとも数日間過ごせるよう寝具、日用品や食料の常備を充実させる。避難の際は「共生の森」専用ワゴン車をフル出動させ利用者を運ぶ。
 更に、地域住民との常設の懇談会を設け、普段は交流の場にも使用する方針。避難所の名称などは今後決める。同施設によると、同町も避難所設置を歓迎しているという。【小原博人】


◇協定:津波・洪水の緊急時、避難施設にホテル 薩摩川内市が6カ所と調印 /鹿児島
(2012.06.01 毎日新聞地方版/鹿児島) 
 薩摩川内市は31日、市内6カ所のホテルと市民らが津波などからの緊急一時避難施設として使用する協定を結んだ。
 同市は、津波や洪水の際、市民らが避難できる耐震性を備え4階建て以上の鉄筋コンクリート造りの建物として、市内ホテルを選定し協議してきた。6ホテルで、避難者約630人の収容能力があるという。
 調印式で、岩切秀雄市長は「皆さんと一緒になって市民の安心安全を守っていきたい」とあいさつし、避難ビルとする表示シールを手渡した。
 また、同日、災害時に一般の避難所で生活が難しい要援護者を受け入れる福祉避難所として、市内5カ所の障害者支援施設と協定を結んだ。【宝満志郎】


◇相互応援協定:大規模災害に備え 県と社会福祉6団体、締結へ /徳島
(2012.06.01 毎日新聞地方版/徳島) 
 県は大規模災害に備え、特別養護老人ホームなど県内の入所施設が加入する社会福祉6団体と相互応援協定を結ぶ。災害発生時には県が調整役となり、被災した施設の入所者を他の施設に移したり、応援職員を派遣できるようにする。県によると、団体間での応援協定はあるが、県との間で結ぶのは全国的にも珍しいという。1日に県庁で調印式がある。
 協定を結ぶ団体は、県老人福祉施設協議会▽県老人保健施設協議会▽日本認知症グループホーム協会県支部▽県知的障害者福祉協会▽県身体障害者療護施設協議会▽県児童養護施設協議会。これらの団体に加入する施設は441カ所に上り、県内全体の約半数に当たるという。
 災害時には、県が今年度から配置する介護福祉コーディネーター(県職員)が、被災施設からの要請を受けて応援者や必要な物資の手配などに当たる。
 東日本大震災では、被災した施設の職員や生活物資が足りず、入所者の生活に支障が出るケースが相次いだ。【阿部弘賢】


◇障害者の災害救助めぐり学習会 岩出 /和歌山県
(2012年06月01日 朝日新聞朝刊 和歌山3・1地方)
 「医療的ケアを必要とする子どもたちの教育と生活を考える会」が17日午後1時半、岩出市中迫の和歌山つくし医療・福祉センター2階で、防災をテーマに学習会を開く。
 同会は、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な子どもの親らでつくる市民団体。昨年3月の東日本大震災で、災害弱者となる障害者の避難が課題となったことから企画した。
 学習会では、岩出障害児者相談・支援センターの柴田竜夫所長が「災害時体制づくりとまちづくりのとりくみ」と題し、障害者を対象にした避難訓練の体験などについて話す。参加費は会員は300円、会員以外は500円。問い合わせは同会事務局の山崎浩廉さん(090・1961・8542)へ。


*作成:
UP:20120606 REV:20121127,
災害と障害者・病者:東日本大震災 
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