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薬害C型肝炎 2007

医療と社会
以下は、学術目的のために、新聞記事・ブログのエントリを引用・掲載しています。

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last update:20151212

■目次

生存学関係者の成果 ◇新聞記事・ブログの引用 ◇文献


■生存学関係者の成果

北村 健太郎 20140930  『日本の血友病者の歴史――他者歓待・社会参加・抗議運動』,生活書院,304p.  ISBN-10: 4865000305 ISBN-13: 978-4-86500-030-6 3000+税  [amazon][kinokuniya][Space96][Junkudo][Honyaclub][honto][Rakuten][Yahoo!] ※

◆北村 健太郎 20081101 「救済する法=引き裂く法?」
 『現代思想』36-14(2008-11):238

◆北村 健太郎 20081010 「C型肝炎特別措置法に引き裂かれる人たち」
 山本 崇記・北村 健太郎 編 『不和に就て――医療裁判×性同一性障害/身体×社会』:69-70. 生存学研究センター報告3,199p. ISSN 1882-6539 ※

◆北村 健太郎 20080201 「C型肝炎特別措置法の功罪」
 『現代思想』36-2(2008-2):143-147
http://www.livingroom.ne.jp/kk/gs0802.htm

◆C型肝炎特別措置法 アーカイヴ
http://www.livingroom.ne.jp/h/080111.htm


■新聞記事・ブログの引用

社説 肝炎法案合意 なお全面解決を目指せ(北海道新聞)
 薬害C型肝炎訴訟で、原告と被告の国・製薬会社が和解することになった。
 薬害に関する国の責任を救済法案に盛り込むことで原告が了承したのだ。
 大阪高裁が和解を勧告して二カ月近い。和解交渉はいったん決裂した。
 福田康夫首相がその後、「全員一律救済」を議員立法で図る考えを表明した。遅きに失したとはいえ、首相の決断が和解を促進したと言える。
 年内に道筋がついたことで、原告の喜びが伝わってくるようだ。
 しかし、これで「全面解決」と言えるだろうか。
 新たな立法によって救済されるのは千人前後にとどまる。肝炎ウイルス感染の原因である血液製剤の投与を証明できる患者と感染者たちだ。
 このうち、二百人ほどが集団訴訟の原告で、残りは未提訴の人たちだ。
 薬害肝炎の被害者は血液製剤の一つ「フィブリノゲン」の投与分に限っても最低一万人はいると推計される。
 カルテの破棄により、九割の人は救済の対象外となってしまう。
 原告が一貫して求めてきた「全員一律救済」とは、血液製剤の種類と投与時期は問わない、裁判を起こしているかどうかも問わないことが前提だ。
 そのうえで、慢性肝炎、肝臓がんといった症状に応じて一律の和解金を支払うとの内容である。
 「一律」の要求は実現するかもしれない。ただ、「全員」ではない。被害者の線引きは残ったままだ。
 原告がそれでも救済法案の骨子案をのんだのは、国の責任を認めさせることに重点を置いたからにほかならぬ。
 救済範囲で譲歩するよう国が追い詰めたと言えないか。釈然としない。
 責任についても、法案に明記されるまではいかない。
 法案の前文では、被害の拡大を防止し得なかったことへの責任を認め、被害者におわびするよう、立法府として政府に求めている。
 これだと、原告が主張してきた薬害の「発生責任」を国がきちんと認めることにはならないのではないか。中途半端さは否めない。
 薬害C型肝炎訴訟の和解により、国は新たなスタート台に立つ。
 予防接種時の注射針と筒の使い回しでB型肝炎に感染した被害者が国を相手取って、年明けにも集団訴訟を起こす準備を進めている。
 ウイルス性肝炎は医療行為が原因の「医原病」と言われる。輸血による感染者もいる。再発防止策を講じることはもちろん、患者が安心して治療を受けられる体制づくりは緊急の課題だ。
 「すべてのウイルス性肝炎被害者のために闘ってきた」との原告一人一人の声を国は忘れてはならない。
 次の一歩をどう踏み出すのか、被害者ならずとも注視している。

北海道新聞 12月31日
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/68574.html



社説:C型肝炎救済 薬害発生の検証が欠かせない(毎日新聞)
 自民、公明両党は薬害C型肝炎訴訟で、被害者を全員一律救済する議員立法の骨子をまとめた。
 焦点の責任と謝罪は前文に盛り込まれた。「政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、心からおわびすべきである」との表現だ。立法府が行政府に対して「おわび」を勧告する体裁をとっている。これを受け福田康夫首相は政府声明で謝罪することになるが、釈然としないものも残る。
 単に謝罪や補償で終わらせるだけでは得るものは少ない。薬害を繰り返さないためこれを機会に、関係機関が再発防止に何ができるかを考え、具体策を実行に移さなければ意味がない。そのためには、まず原因の究明が必要だ。
 全員一律救済の法案が政府提案とならなかったのは、政府が抵抗したからである。論拠とされているのが、被害者が大幅に増えかねないこと。厚生労働省は注射の回し打ちでウイルス感染したB型肝炎まで拡大すると収拾がつかなくなることを心配する。
 もう一つは、薬事行政にかかわることだ。薬には必ず副作用がある。副作用で被害が出るたびに責任を取らされていたら国の薬事行政が成り立たない、という論理立てで切り返す。
 しかし、この言い分にはすり替えがある。血液製剤による感染は副作用によるものではなく、もともとウイルスに汚染されたものを投与されたのだ。全然次元が違う話を同じ土俵で論じるのはおかしい。
 国が責任を明確に認め、謝罪するのは当然だ。ただ、口先だけで謝罪しても将来の薬害を防ぐことにつながらない。どこで過ちが起きたのか。国は第三者委員会で調べることにしているが、法律上の責任論とは別に、徹底した検証作業は薬害根絶に欠かせない。
 骨子では、投与の認定は裁判所が行い、被害者は定められた期限内に血液製剤の投与を受けた証拠となる資料を提出しなければならない。カルテがあるなら問題ないが、廃棄された場合はどうなるのか。病院に残された看護日記など関係書類も認める方針というものの、心もとない。
 立証を被害者まかせにするのではなく、行政も製薬会社も積極的に調査に協力すべきだ。年金騒動で国民に不評を買った「あなたまかせ」にあぐらをかくようなことが、薬害肝炎にもあってはならない。また救済の認定は条件を緩やかにして、投与の期間も幅広くすることにもっとこだわってもいいのではないか。
 どんな治療で、何が投薬されたか、患者自身がカルテを管理・閲覧できる仕組みの構築もいずれは避けて通れない課題だ。記録管理が一切医療機関まかせでは、薬害が発生すると被害者は途方にくれてしまう。

毎日新聞 2007年12月30日 0時41分
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20071230k0000m070107000c.html



薬害肝炎、与党PT−原告の枠組で全員救済に向かうのか(まつや清の日記)
 昨日の朝日新聞に「肝炎ウイルス グロブリンからも検出 70年代製2本から はしかなど治療」の見出しで、77年製造の「人免疫グロブリン」製剤2本からC型肝炎ウイルス、臨床試験用76年製の製剤「プラスミン」からB型肝炎ウイルスが検出された、との報道。
 実は、1980年代前半保育園ではしか蔓延時、長女にいきつけの小児科医でガンマグロブリンを投与してもらった経験があります。ちょっと心配になります。当時、私自身は、予防接種被害者の訴訟支援に関わっており、はしかの予防接種を拒否していました。
 小児科医で親しくしていた山田真さんや毛利子来さんらの消極的接種論に対抗する意見。心配で随分と専門書を読み漁り、次女のはしかの時には「これははしか」と自己判断し小児科に連れていった記憶があります。乳児にとってはしかは重篤な病気です。
 朝日新聞では、今の与党PTとC型肝炎原告・弁護団の和解の枠組で、害肝炎全員の救済はどうなるのか、問題の投げかけです。原告・弁護団と政府交渉であればこの枠組もあり得ますが、立法への丸投げ救済になったことで、全員救済の枠組みは国会審議の対象。
 もう一つ問題は、原告・弁護団が和解の枠組案では、血友病など先天性の方々の救済枠がはずされていた点です。7日に与党案が国会に示されるとのことですが、血友病など先天性の方々の薬害肝炎被害者の救済は、どのような法の枠組にするのか。
 そもそも血液製剤の被害の全容把握がどうのような状況にあるのか。議員立法の枠となっている救済法について、与野党での突っ込んだ審議が必要のように思います。

2007-12-29 17:20:11
http://blog.goo.ne.jp/matsuya-kiyoshi/e/20008f897463df16613276bb753d07ba



薬害C型肝炎問題はライダーにも(小林ゆきBIKE.blog)
 薬害C型肝炎問題については、ようやく救済法制定される模様だ。
 C型肝炎については、原告団の多くが妊娠出産にまつわる女性なため、女性独特の問題に思われるかもしれないが、実は男女関係なく起きている問題である。
 わたしの知人の中にもC型肝炎に罹患している人が数人いる。そのうちの数人は、交通事故やレース中の転倒事故で輸血を受けた人で、空前のバイクブーム前後に感染したと思われる。
 ここ数年は薬害C型肝炎問題が取り沙汰されてわりと持病名を言えるようになってきたみたいだけど、5年くらい前までは肝炎と言うと世間にはHIVと同じように感染に対する誤解があったりしたそうで、肝炎とは言えずに「肝臓悪いんだよ〜」などとごまかしていた人もいる。
 肝臓が悪いというと、たいてい「お酒の飲み過ぎ〜?」などと言われてしまうのだが、肝臓ガンにしても、原因の90%以上はC型・B型肝炎によるものだそうである。もちろん、アルコールが症状を悪化させることはあるのだけれども。
 肝炎にかかるとどうなるか。
 症状としては、全身倦怠感、食欲不振、疲労感、があるそうだ。どれも、あまり自覚的な劇症ではない。だけど、バイクブーム時代に事故や病気で手術、輸血を受けたかもしれない人は、念のためC型肝炎感染を疑ってかかってみるといいと思う。
 C型肝炎ウイルスに感染すると、

肝炎→肝硬変→肝臓がん

 へと、ゆっくり20年ほどかけて進行するという。だから20年ほど前、空前のバイクブーム時代にバイクで大怪我を負った人は、そろそろ他人事ではないかもしれない。
 C型肝炎の検査は、全国の保健所で無料で検査することができる。一般の医療機関でも3000円〜5000円程度で検査することができる。
 詳しくは、厚生労働省の「B型肝炎・C型肝炎検査受診の呼びかけ」というサイトを参照してほしい。
 また、同サイトで血液製剤を使った可能性のある医療機関リストも公表されている。
 わたし自身、このリストに載っている病院で手術を受けたことがあり、輸血した記憶もあることから心配になって数年前に問い合わせたことがある。幸い、当時の主治医がまだ在勤していてカルテもあり調べてもらったところ、自己輸血だったためまったく心配はいらないとのことだった。また、その後の検査でも陰性だったので一つ心配はなくなった。
 国の救済法が出来れば、現在治療中の人にも何らかの救済があるかもしれない。今後とも、厚生労働省の発表や薬害肝炎訴訟全国弁護団からの情報に留意してほしいと思う。

2007.12.29
http://yukky.txt-nifty.com/bikeblog/2007/12/c_a0cd.html



救済法案骨子の概要 薬害肝炎 (京都新聞・中国新聞)
 28日まとまった薬害肝炎の一律救済法案骨子の概要は次の通り。
 【支給対象者と認定方法】支給対象者は後天性疾患でフィブリノゲン製剤または血液凝固第9因子製剤を投与され、これによってC型肝炎ウイルスに感染した者(治癒した者を含む)およびその相続人とする。製剤投与の事実、因果関係の有無、症状は裁判所が認定する。
 【給付内容】症状に応じて一時金(給付金)を支給。肝硬変・肝がん・死亡(C型肝炎に起因)は4000万円、慢性肝炎は2000万円、無症候性キャリアーは1200万円。給付後10年以内に症状が進行した場合、差額を支給する。進行の判断は、医師の診断書で行う。
 【請求期間】請求は法施行後5年以内に行わなければならない(今後の和解成立状況により期間の再検討もあり得る)。
 【支給事務】給付金の支給事務は独立行政法人医薬品医療機器総合機構に行わせ、同法人にそのための基金を設置する。
 【費用負担】給付金の支給に要する費用はいったん全額を国が負担した上で、企業も応分の負担を行う。
 【その他】国は、感染被害者が安心して暮らせるよう、研究開発、治療体制の整備等、必要な措置を取るよう努める。(共同通信)

Kyoto Shimbun 2007年12月28日(金)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007122800143&genre=A1&area=Z10

中国新聞初版:12月28日20時18分
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2007122801000597_Detail.html



薬害C型肝炎訴訟:苦闘結実、一律救済 「家族のおかげ」 穏やかに年越し(毎日新聞)
 命を削った5年間の苦闘が、ようやく結実した。薬害C型肝炎訴訟は28日、被害者の全員一律救済に向けた議員立法の骨子がまとまり、全面解決に向かうことになった。前文には被害発生に関する国の責任と謝罪が盛り込まれ、原告たちは「私たちの意見が反映された」と喜んだ。年末ぎりぎりの決着だったが、原告は穏やかな気持ちで年を越す。
 大阪原告の桑田智子さん(47)は「ここまで来られたのは家族のおかげ。感謝している」と笑顔で語った。社会の理解を高めようと04年から発行した「薬害肝炎訴訟だより」は27号を重ねた。夫和美さん(46)が作成に協力してくれ、高校生の長男は体をいたわり続けてくれた。大阪原告の武田せい子さん(56)は「心から喜びたい」と声を弾ませ、父親(82)を介護してくれた夫(59)、長男夫婦とともに「喜びをかみしめたい」と話した。
 全国原告団代表の山口美智子さん(51)は九州原告の一人として「本当に高くて険しい山だった。今は最後の8合目。和解成立を目指し原告団一丸となって頑張りたい」とのコメントを出した。九州原告の福田衣里子さん(27)は「薬害被害者を放置してきた行政のずさんさは消えない。厚生労働省に掛け合い、医療費助成や恒久対策を働きかけていく」と決意を新たにした。
 与党プロジェクトチーム(PT)との最終協議後、会見した全国弁護団の鈴木利広代表は「法案や基本合意書案の骨子には、原告側の要求がすべて盛り込まれた。満足できる」と評価した。原告たちに内容を文書で伝えたといい、年明けに詳しく説明する予定だ。【北村和巳、川辺康広】

 ◇肝炎救済給付金法案前文(要旨)
 与党肝炎対策プロジェクトチームが、28日にまとめた「薬害C型肝炎感染被害者救済給付金支給法案」の前文の要旨は次の通り。
 フィブリノゲン製剤、第9因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入し多くの方々が感染する事件が起き、感染被害者・遺族は長期にわたり肉体的、精神的苦痛を強いられている。
 政府は、感染被害者に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者の方々に心からおわびすべきだ。事件の反省を踏まえ命の尊さを再認識し医薬品による健康被害の再発防止に最善、最大の努力をしなければならない。医薬品の供給企業には製品の安全性確保などに最善の努力を尽くす責任があり、本件はそのような企業責任が問われるものだ。
 一般に血液製剤は適切に使用されれば人命を救うため不可欠だが、フィブリノゲン製剤、第9因子製剤でC型肝炎ウイルスに感染した方々の困難な状況を思うと、人道的観点から、早急に感染被害者を投与時期を問わず一律に救済しなければならない。現行法制で一律救済の要請に応えるには司法上も行政上も限界があり、立法での解決を図ることとし法律を制定する。

毎日新聞 2007年12月29日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071229ddm041040143000c.html



薬害C型肝炎訴訟:全面決着へ 与党「発生責任」認める(毎日新聞)
 自民、公明両党は28日、国会内で幹事長や政調会長らが会談し、薬害C型肝炎訴訟で被害者の全員一律救済に向けた議員立法(薬害C型肝炎感染被害者救済給付金支給法案、仮称)の骨子を了承した。会談では法案の今国会中の成立方針も確認した。これに先立ち、与党肝炎対策プロジェクトチーム(PT)が原告弁護団と法案の内容で合意、野党も理解を示しており、法案は来年1月7日に提出後、今国会中に成立の見通し。全国10カ所の裁判所で係争中の薬害C型肝炎訴訟は全面解決に向かう。
 救済法が成立すれば、国、製薬会社と原告の間で基本合意を結び、各裁判所で和解の手続きを進める。
 現在の原告以外の被害者は、追加で提訴して和解する。血液製剤の投与事実や症状の認定は裁判所が行う。
 焦点となっていた国の「責任」と「謝罪」を盛り込んだ法案前文の表現について、全国弁護団の鈴木利広代表は28日、PTとの合意後、記者団に「発生責任を明確に認めた」と評価した。
 また、PT座長の川崎二郎元厚生労働相も記者会見で「甚大な被害を生じた」と前文の表現を引用する形で、原告側が求めていた国の「発生責任」を認めた。
 与党骨子の内容について、民主党の菅直人代表代行は28日、記者団に「おおむね評価できる」と語った。【竹島一登、西田進一郎】

毎日新聞 2007年12月29日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071229ddm041040143000c.html



「一律救済なら負担10兆円」? 政府惑わした厚労省の誇大説明(産経新聞)
 政府・与党は28日、薬害肝炎訴訟の原告を一律救済する議員立法の骨子案をまとめた。福田康夫首相が「鶴の一声」で救済を決断して、わずか6日間でスピード決着したが、もっと早く救済していれば内閣支持率はここまで下がらなかったとの恨み節も聞こえる。背景には「救済には10兆円必要だ」と誇大な説明を繰り返した厚生労働省と、それに振り回された族議員の姿が浮かび上がる。
 首相が議員立法での救済を表明した翌日の24日。都内のホテルで自民党の谷垣禎一政調会長と公明党の斉藤鉄夫政調会長、与謝野薫〔ママ〕前官房長官らが対応を協議した。
 斉藤らが協議を始めようとすると、谷垣氏は「園田(博之政調会長代理)さんが来るまでちょっと…」と難色。園田氏が到着すると、谷垣らは、これまで原告団と交渉してきた与党肝炎対策プロジェクトチーム(PT、川崎二郎座長)で法案策定作業を“丸投げ”しようとした。
 これに与謝野氏は猛反発した。「PTでは駄目だ。あなたがた2人が案を作り、一気に指示を出せ」と一喝した。厚労族が多いPTに預ければ、役人の「呪縛」から抜け出せないと考えたからだった。
 原告団は当初から、一律救済の対象者となるのは最大1000人程度で国の一時金負担額は最大で200億円に抑えられると主張してきた。「フィブリノゲン」などを投与された患者は推定約1万2000人いるとみられるが、カルテが現存し投与事実を証明できるのは全体の約8%に留まると算定したからだ。
 ところが厚労省幹部は複数の政府・与党関係者に「一律救済を認めれば国の負担は最大10兆円に膨らむ」「原告団には特定の思想がある」との情報を流し続け、与党側の譲歩を牽制。これを真に受けた厚労族や政府高官は「しょせんカネの話だ」と言い放った。
 首相の「呪縛」を解いたのは、与謝野氏らごくわずかな与党議員だった。真相を知った首相は25日夕、首相官邸で被害者らと面談後、ひそかに厚労省幹部を呼び、「話が違うじゃないか」と厳しく叱責した。
 ある自民党幹部は「官僚は組織防衛のためにあらゆるウソをつくことがよく分かった。今回の一件で政治家も目を覚ましたのではないか」と漏らした。

2007.12.29 00:11
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/071229/plc0712290011000-n1.htm



「前文」には何を盛り込むか(博覧こうき 信頼のK&S行政書士受験教室)
 「前文」。正しい読み方は「ぜんぶん」。でも、講義などの場で「ぜんぶん」というと「全文」なのか「前文」なのか聴いているほうは区別がつきません。
 …というわけで、講義などの場では「まえぶん」と言い慣わし。
 「前文」を定義づければ、法令の趣旨、目的又は基本的な立場を宣言するために、その法令の「題名」の次に置かれる文章ということになります。
 その前文。一般の法令には、通常前文は置かれませんが、特定の分野の基本事項を定めた法律などの場合には、その法律の制定の由来や基本原則などを特に強調して宣言する必要がある場合に置かれることがあるわけです。
 前文は、その法令の一部ですから、法的効力を有するわけですが、具体的な「法規」を定めたものではないので、裁判規範とはならないっていうのが一般の見解ですね。要するに、各本条の解釈の基礎・基準となるというわけです。
 話題の「薬害C型肝炎被害者の救済法案」。被害者団体は救済法に「国の責任とおわび」を明記せよと…主張していましたね。
 従来の「前文」の性質などから、どのように明記するのか…いささか関心をもっていたのですが。
 与党がまとめた骨子案。その法案の前文に「政府は被害を防止しえなかったことに対する責任を認め、感染被害者におわびをすべきである。」と明記。
 こういうことは「前文に」に明記すべきでしょうかね。謝罪すべきなのはわかりますが…。誠意のない謝罪なんてナンセンスでしょうに。法文に明記して…その法律が廃止されるまで政府はお詫びし続けるっていうんでしょうか。
 ここまでくると「無理が通れば道理が引っ込む」って印象は拭い切れません。法案が成立したときに、もういっぺん謝罪・お詫びすればそれでいいんだと思います。
 この点、「感染症の予防及び感染や商の患者に対する医療に関する法律」の「前文」のほうがスマートであるように思われます。
 以下、当該法律の「前文」の全文を掲げます。

「人類は、これまで、疾病、とりわけ感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時には文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは、正に人類の悲願と言えるものである。
 医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきたが、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は、新たな形で、今なお人類に脅威を与えている。
 一方、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
 このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。
 ここに、このような視点に立って、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する。」

2007-12-29 02:41:34
http://blog.goo.ne.jp/kohki-go-roppoh/e/9b630c8b5380ef01d9f4df4d6b7c508d



薬害肝炎:与党と原告側が法案合意 責任・謝罪を前文に(毎日新聞)
 薬害C型肝炎訴訟で、与党肝炎対策プロジェクトチーム(PT)は28日午前、被害者の「全員一律救済」に向けた議員立法(薬害C型肝炎感染被害者救済特別給付金支給法案、仮称)の内容について原告弁護団と合意した。同日午後のPT会合で骨子をとりまとめた。焦点の国の「責任」と「謝罪」を前文に盛り込み、救済対象者の認定を司法判断とするなど、原告側の主張にほぼ沿った内容で決着した。
 与党は骨子を基に年明けに民主党など野党と調整し、来年1月7日に法案を国会に提出する。全国弁護団の鈴木利広代表は28日午前、与党PTとの協議終了後、記者団に「国の責任も認めてもらった。満足いくものだ」と評価した。民主党の鳩山由紀夫幹事長は同日昼の記者会見で「原告団が納得するなら民主党としても当然、その方向で理解できる」と述べた。原告側、野党が同意したため、法案は来年1月11日にも成立する見通し。
 国の責任と謝罪は法案前文で「政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、心からおわびすべきだ」とした。これに関連し、町村信孝官房長官は28日午前の記者会見で、法案が成立した時点で「政府声明」などの形でのおわびを検討していることを明らかにした。
 カルテがなくても裁判所が客観的な資料で投与事実を認定すれば、症状に応じて給付金を支払う。金額は大阪高裁の和解骨子案に沿って(1)肝硬変や肝がんを発症した場合は4000万円(2)慢性肝炎は2000万円(3)未発症の感染者は1200万円−−とする。病状が進行した場合は追加して支払う。これらの原資として200億円規模の基金を創設する。
 投与の証明方法は法成立後に国、製薬会社と原告側で交わす基本合意に盛り込む。与党PTは(1)投与当時の医療記録かそれと同等の証明力を持つ証拠に基づき証明(2)当事者の意見が異なる場合は裁判所が判断(3)裁判所の所見を尊重−−との内容で合意案をまとめた。
 現在の原告以外の被害者が補償を求める期限は原則、法施行後5年以内。請求後に病状が悪化すれば、施行後10年間は追加的に補償を請求できる仕組みを検討している。【竹島一登、西田進一郎】

<薬害C型肝炎救済法案骨子のポイント>
・国の責任と謝罪を前文に明記
・救済対象となる血液製剤の投与事実は、裁判所が認定
・被害者への給付金と病状が進行した場合の追加補償に備え、200億円規模の基金を創設
・給付金は症状に応じて支払い、4000万円▽2000万円▽1200万円−−の3段階とする

 与党肝炎対策プロジェクトチームの会合の冒頭であいさつする川崎二郎座長(左)。右は谷垣禎一・自民党政調会長=東京・永田町で2007年12月28日午後1時、丸山博撮影

毎日新聞 2007年12月28日 11時26分 (最終更新時間 12月28日 14時05分)
http://mainichi.jp/select/today/news/20071228k0000e010041000c.html



薬害肝炎救済法案 「被害拡大に責任」 国、前文で明記へ 与党 原告側と大筋合意(西日本新聞)
 薬害肝炎訴訟で、与党肝炎対策プロジェクトチーム(PT、座長・川崎二郎元厚生労働相)の作業部会が検討している「被害者救済の特別給付金支給法案」(仮称)の前文案全文が27日、分かった。焦点となっていた国の責任と謝罪について「政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、心からおわびすべきだ」と明記している。
 作業部会は27日、原告側弁護団と協議し、この前文案を含む法案の骨子案を提示。与党関係者は「これで原告側は理解してくれるだろう」と述べ、大筋で合意したとの認識を示した。
 作業部会と弁護団は28日午前、再協議して最終調整する。与党PTは同日午後の会合で、法案骨子を正式に取りまとめる方針だ。
 前文案は、血液製剤フィブリノゲンと第九因子製剤によるC型肝炎の感染を「薬害事件」と言明。「被害者と遺族は、長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている」として、政府の責任と謝罪を盛り込んだ。
 さらに再発防止の誓いや、製薬企業の責任にも言及した上で「人道的観点から早急に感染被害者の方々を投与の時期を問わず一律に救済しなければならない」としている。
 法案には、補償金の支給を迅速に行うために基金を創設することも盛り込む。
 27日の協議は午前から午後にかけ二度にわたって行われた。原告側弁護団の鈴木利広代表は「われわれが伝えた意見を、どこまで採り入れてくれるか。最終的には与党の判断だ」と述べた。
 法案は、被害者の認定は製剤の投与事実などに基づき裁判所が行うことや、被害者には症状に応じて1200万‐4000万円の特別給付金を国と製薬会社が分担して支給することなどが柱。支給後に症状が悪化した場合には、差額分を追加する。基金は、こうした支給に対応するため創設する。

西日本新聞朝刊 2007年12月28日10時47分
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/20071228/20071228_010.shtml



「責任と謝罪」前文に明記=与党、原告弁護団に提示−救済法案骨子(時事ドットコム)
 与党の肝炎対策プロジェクトチーム(座長・川崎二郎元厚生労働相)は27日午前、都内で原告弁護団と面会し、薬害C型肝炎の被害者を一律救済する法案の骨子案を提示した。骨子案は国の「責任と謝罪」の内容を前文に明記した。原告弁護団は内容を精査するためいったん持ち帰った。同日午後に再協議する。
 この後、公明党の坂口力元厚労相は記者団に「そんなに難しいところがたくさんあるわけではない」と述べ、原告弁護団との大筋合意への期待感を示した。

2007/12/27-13:21
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200712/2007122700303



薬害C型肝炎訴訟 法案概要固まる(梶本洋子のつぶやき2)
 ついに、「薬害肝炎、救済対象は裁判所が認定」という法案概要が固まったようだ。(引用:読売新聞)
 そして
『補償対象となる被害者の認定作業は、裁判所が担う。』のだと。(引用:読売新聞)
 内容はこうも続けられている。
『法案では、補償の対象を、血液製剤「フィブリノゲン」や「第9因子製剤」の投与による感染に限定し、輸血による感染は対象外とした。政府に専門家らによる第三者機関を設置する案も浮上したが、原告・弁護団側の反対もあり、裁判所で認定することとした。』とも。(引用:読売新聞)

 どちらにしても、カルテのない私たちは結局、蚊帳の外という結論のようだ。
 裁判に持ち込もうにも、私達には確たる証拠がないのだから。

 私の気持ちの中で、最初から「訴訟という形で国や製薬会社から代償を」という考えはあまりなかった。
 しかし。
 しかしながら、今現在、インターフェロンの投与をしていない私が服用している「ウルソ」という漢方薬の発売元は、何を隠そう「フィブリノゲン」の発売元である『三菱ウェルファーマ』である。
 自分たちの作ったものでC型肝炎に罹患させておいて、症状を緩和させる漢方薬をまた、同じ人たちに購入させている。

 こういう状況に、自分自身、陥りたくは決してなかった。

 結局この何週間は自分にとって何だったのか。
 一喜一憂させられて、結果やはり私は蚊帳の外。
 裁判という大きな壁が私の前に立ちはだかった。
 薬害C型肝炎訴訟の原告にさえなれなかった私に、裁判で勝てるはずがないではないか。

 350万人のほとんどが原告になれない現実。
 『切り捨ては許しません』
 そう明言した「薬害肝炎全国訴訟弁護団」は、私たちのことをどう考え、どう回答するのだろうか。
 原告になり得た者だけが彼らの『切り捨てない』対象だったのだろうか。

2007年12月26日 (水)
http://kajimotoyoko.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_e543.html



社説 C型肝炎問題/膨大な患者の救済を急げ(河北新報)
 大阪高裁での和解協議が決裂寸前になっていた薬害C型肝炎訴訟が、一転して解決に向けて動き始めた。
 新たな議員立法を成立させ、原告患者側の主張を取り入れる方向で調整が進められている。内閣支持率の急降下に見舞われていた福田康夫首相がリーダーシップを発揮し、急進展することになった。
 長引いた薬害C型肝炎問題はようやく、政治決断によって決着する可能性が高まった。新法ではまず、行政と製薬会社の責任を明確にしなければならない。またも薬害を繰り返したことは紛れもない事実であり、謝罪も当然のことになる。
 さらに止血用の血液製剤フィブリノゲンなどの投与時期に関係なく救済することが欠かせないし、「薬害」以外の原因による患者にも十分役立つ内容でなければならない。
 高裁の和解案と国の修正案に原告が反発したのは、投与の時期によって差をつけたためだ。これまでの地裁判決では確かに、いつから国と製薬会社の責任を問うかで判断は分かれたが、患者側からすれば一方的に投与されて肝炎になった事情に変わりはない。
 血液製剤投与の時期によって救済内容に差が出ることは、原告にとって到底受け入れられないだろう。それは多くの国民の支持も得られるはずだ。
 25日に福田首相が原告の患者らと会って謝罪し、裁判が終結に向かうことになったのは歓迎すべきことだ。ただ献血時のデータなどから、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染者は国内で150万人を超えると推測されており、その人たちをどうするかという極めて重大な問題は残されている。
 裁判に訴えられるのは血液製剤の投与がカルテなどの医療記録で確認できる人であり、その数は未提訴の人も含め1000人程度。フィブリノゲンを投与された人は1980年以降に限っても28万人おり、うち1万人はHCVに感染したと推測されているのに、その10%程度にすぎない。
 全体の感染者が血液製剤の分をはるかに上回っているのは、ほかにも原因があるためだ。HCVは血液を媒介にして広がることから、日常生活での感染はほぼないと言われる。輸血や注射といった医療行為による感染拡大がかなり疑われている。
 患者は過去の医療行為の被害者とみなすべきであり、少なくとも治療面では十分に救済しなければならない。カルテによる確認を求めるのは間違いだ。
 相当の医療費負担を覚悟しなければならないが、肝硬変や肝がんへと悪化する前にインターフェロンなどで治せるなら、長期的な医療費の面でもメリットを見いだせるのではないか。
 カルテなどの法的な保存期間を延ばすことも肝炎問題の教訓だ。現在の5年ではあまりに短く、患者側が一方的に不利益を被る。C型肝炎の実態解明も無理だろう。記録が残っていないためにどれほど多くの人が苦しい思いをしているか、国はしっかり受け止めるべきだ。

2007年12月26日水曜日
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2007/12/20071226s01.htm



再び薬害C型肝炎問題を論ず。( bewaad institute@kasumigaseki )
  薬害肝炎、救済対象は裁判所が認定…法案概要固まる(読売)
 ここに至るまでの経緯についてはいろいろと思うところもあるのだけれども、軽々に発言するのは好ましくないと思料されるのでとりあえず差し控えるが、法律案の方向性について思ったことを、2点ほどメモ。
 1点目は、国の責任を明記することについて。目的規定の中で明らかにするか、あるいは(議員立法にありがちな)前文を置く形にしてそこで謳う、といったところだろうか。
 2点目は、補償対象となる被害者の認定作業を行う主体を裁判所とすることについて。当初検討したと記事にあるように、政府内に専門委員(会)を設置してその事務を行わせるというのが、発想としては素直。行政が行う給付等について、その基礎となる事実認定の部分を裁判所に行わせるというのは、これまでに類似の制度があっただろうか…。まあ、法律でそう書けばそういう制度ができるということかも知れないが、制度設計の在り方としては興味深く思われるところ。
続・航海日誌(12/26付)

 前者については、先日それを枕に議論を展開してみましたが、そのものを論ずるとすれば、branchさんがお示しのようなあたりが適当な着地点なのでしょう。真正面から無過失の相手にまで賠償責任を認めてしまえば、先日の議論のような地獄の釜の蓋を開けてしまうことにつながります。既往の法体系の枠内で解決を図るならば、司法判断や政府の和解案によることとなりますが、

 和解協議の中で、政府は20日に、未提訴者も含めた薬害被害者を血液製剤の投与時期で限定して和解金を支払い、残る被害者には30億円を基金活用する「全員救済」方式を提案。被害者全員の「一律救済」を求める原告らは「患者の線引きだ」と反発していた。

産経「議員立法で「一律救済」表明 薬害肝炎で首相」

 とのことで、それを蹴飛ばしたからこその現状です。
 だからといって無過失責任を前面に出すのも、既存の法体系からは明らかに受け入れ不可能といわざるを得ません(そんなことをすれば、どこまで賠償責任が広がるものやら・・・)。そうした中、前文や目的規定で責任を規定するというのは、実質的には損害賠償であるにもかかわらず法的には損害賠償ではない補償・救済を用いることにより、損害賠償の対象でない者をも法の枠内に取り込むためのいわば方便で、原告の主張とこうした法体系の枠組みがギリギリで共存可能な唯一の解ではないでしょうか。
 後者については、webmasterはあまり気にしていなかったのですが、考え始めると、branchさんのお言葉どおりなかなか興味深い論点が複数あります。さすがはbranchさん、いいところに目をつけていらっしゃいます。主体が裁判所であったとしても、裁判(訴訟)として取り扱うわけではないでしょうから、一般の訴訟法に基づく手続ではなく別の手続を考えなければならないのですが、これがなかなか悩ましくあります。
 現状、裁判でない裁判所の取り扱い事項の一般法としては、非訟事件手続法がありますが、過料など法的には軽めの事象を取り扱うもので、裁判所としてもこれに基づき判断しろといわれても困るでしょうから、おそらくは立法において白地で書いていかざるを得ないものと予想されます。では、どう書いていくか。
 訴訟の枠組みに照らして考えると、まず管轄権をどうするかが難しいところ。裁判所の対応能力を考えれば、知財高裁のように東京のみとしたいでしょうが、全国の患者に東京に出て来いというわけにもいかないでしょうし、かといって第三者委員会のように専担として地方まで出張っていくのも裁判官の負担を考えれば難しく、となれば全国各地で受け入れざる形が無難でしょう。かといって、すべての地方裁判所(まして簡易裁判所)で取り扱う体制を整備することなど不可能でしょうから、webmasterの予想としては各地の高裁管轄とするのでは、というものとなります‐原告からは不評かもしれませんが。 次の問題は、裁判官の当事者能力です。訴訟となれば原告vs被告や検察vs被告人の対審構造がおなじみですが、認定作業において患者に対置される当事者がいるとも思えず(たとえば政府が反対尋問します、なんてスキームになるはずもなく)、原告の主張を裁判官が聞いて職権認定、という形になるでしょう。裁判官は法律のプロでしかないのですが、そんな裁判官が世のあらゆる争いごとを裁くことができるのは、前記の対審構造を前提に、両当事者がそれぞれの立場でプロの見解を集めてきて、そのいずれがもっともらしいかを判断しさえすればよいとの建前があるからこそです。第三者委員会であれば、メンバーに医者や研究者も入るでしょうから自ら職権認定をするだけの能力もあるでしょうけれども、裁判官にはまず間違いなくそんな能力はありません。このところをどうするのか。
 更なる問題として、上述のとおり裁判官に当事者能力がないとすれば、訴訟においても鑑定人を求めるように、他に専門家を求めるより他に道はありません。しかし、訴訟における鑑定人は、上記の対審構造を前提に反対尋問等でチェックされることにより、一方に偏ったものではないものとして取り扱われます。対審構造がない中で、専門家の証言の中立性・客観性をどのように担保するのか、専門家を呼ぶことで上記問題を解決するとしても、一難去ってまた一難という制度設計となります。
 これらの問題は、仮に内閣提出法案であれば内閣法制局がとことん詰めるのでしょうけれども、何せ本件は議員立法です。議員立法の中には役所が実質的な当事者として携わるものがあるにせよ、本件は経緯を考えれば役所のそうした関与は許されないでしょうから、役所がこっそり内閣法制局に相談する、というわけにも行きません。担当される議員の方は、その方が法律論に詳しければ詳しいほど、これらの問題に悩まされることでしょう・・・。

12/26/2007 (11:59 pm)
http://bewaad.com/2007/12/26/374/



薬害訴訟について、難病認定患者を持つ家族からの雑感 (「うつ病」と試験とおいら「うつ病」の高校教師が本気で資格挑戦ヽ(`Д´)ノ 行政書士から・・・(*゚д゚)φ )

 おはようございます。先に断っときます。今日のブログ内容は、題名の通り「薬害訴訟」の一連の動きについて、難病認定を受けた家族を持つ者の一視点から書きますので、お気に召さない内容になるかも知れません。予めご了承下さい。

 最近、C型薬害肝炎訴訟の問題が大きく動き出している。ニュースで原告の人たちの顔を見ない日はないといったぐらいに。そして、自分たちの考えをメディアに訴えている姿を見ると、「この人たちは、確かに自分たちのせいではなくC型肝炎にかかってしまい、大変お気の毒だ。しかし、こうやってメディアに取り上げられ、司法の判断をそっちのけにして政治判断を迫り、政府がそのように動き、立法措置が何らかの形で取られるのは、幸せな方だ…。」と自分の妻の姿を見ると、そう思ってしまう(ひがみ意識もあるでしょう。否定しません。)自分の妻は、難病指定されている特定疾患の膠原病(SLE)を中学2年生の時から患っている。今は、その薬(ステロイド)の副作用で、骨粗鬆症から背骨を3か所圧迫骨折しており、痛むに堪え、いや、それよりも普通の母親ができる「娘を抱きかかえること」も出来ない辛さにも耐えている。同じような病気による辛さを抱えている人はたくさんいるだろう。そういう人たちは、あの人たちが立法措置で「一律救済」されそうなことを聴いて、どう思っているのだろう…。特定疾患者の医療費の救済は年々少なくなってきている。膠原病だけではなく、その他の難病認定者の医療費もそうだろう。「国の責任」で病気になったかならなかったのかの違いはあるが、「なりたくてなったわけではないこと」は同じである。それなのに、辛い思いは同じであるのにも関わらず、C型肝炎患者は「救済への道」が少しでも開けてきたのに、自分の妻のような「特定疾患」患者には明るい未来が見えないのはどういうことなのだろう…。国の予算は有限だ。救済できる・援助できる患者の数は限られている。もしかすると、「自分の考えは穿った見方」なのかもしれないが、C型肝炎患者の人たちに救済のお金が行けば、特定患者への援助は少なくなる・遅れるかも知れない…。妻や同じ思いをしている人たちはどう思っているのか…。メディアでは、今、旬の問題しか扱わない。辛い思いをしている患者はいっぱいいる。あえて言えば、あの原告の人たちは「C型肝炎の自分たちが救済されれば、それでよい」と考えているのか。メディアで号泣すれば、自分の妻たちのような人たちは国に助けてもらえるのか…。泣けば、司法の判断も無視して、首相が政治決断してくれるというのか…。特定疾患患者を家族に持つ自分としては、そういう見方しかできない。これは、そういう立場でない人には分からないのかも知れない。「何、考えているんだよ」と。でも、C型肝炎の原告の人たちには頭のどこかに入れておいて欲しい。「あなた方の救済はあなた方にとっては勝利だろう。でも、その結果、他の特定疾患を代表とする『自分のせいで病気になったわけではない』人たちの救済は遅れる、または不可能になるかもしれない」ことを。原告団はそのような「十字架」を背負っていることを忘れないで、活動して欲しい。

 反論はたくさんあるかもしれません(その前に、このブログを見る人がそんなに多いとは思いませんが)。けれど、助けてもらいたい患者はたくさんいます。限られた予算の中で、救済・補償費を獲得するある種の「ゲーム」(言葉は悪いですが)に、自分の妻のような特定疾患者は「負け続けている」のです…。大きいニュースに隠されている小さな事実にも目を向けてあげて下さい。


辛口ですが (LT)  2007-12-25 16:19:04
 医療関係者です。(肝臓や膠原病に詳しいわけではありませんが。)
 奥様や薬害肝炎の方には、今後よりよい治療とよい経過が得られることを願っています。

 その上で辛口のコメントになるかも知れませんが、こういう見方もあるということで書かせてください。
 1 和解案のように線引きは仕方がない。なぜならば、その時代に不明だったことまで現代の常識で責任追及をしてはいけない。(不遡及の原則)
 2 マスコミの問題。放送法第3条にあるように議論のある問題については両者の言い分を公平に出す必要がある。いつものように原告=被害者=善としており、片方の言い分を垂れ流している。
 3 財源の問題。これを皮切りにC型、B型肝炎など次々と出てくるかもしれません。その時に情に流されたこのような結果があると認めざる得なくなります。
 4 医療費削減を含めて医療崩壊が進行している中で、他の医療に対する財源的しわ寄せが顕著になる恐れがあります。膠原病も含めてそうではないでしょうか。
 5 薬の問題。今後さらに国が新薬を認めるのに躊躇するようになる恐れがあります。

 ちょっと考えただけでもこれだけの問題はあるように思います。日本の医療、そして将来の患者さんにとって不利益が生じる恐れのほうが強いように思えます。
 単に「お気の毒だから国が補償すべき」という考えで良いのでしょうか?
 そういったことをマスコミは国民に議論を呼びかける必要があると思うのですが、現実のマスコミの状況は嘆かわしいばかりです。
 長文失礼致しました。

Unknown (kazmaximum)  2007-12-25 17:18:15
 LTさん、ご心配ありがとうございます。ご意見は「辛口」ではないと思いますよ。結局、妻とも話をしているのですが、現状での国の補助を受けるにしても、病気と前向きに戦い、「自立」していかなければ人間としても成長していきませんので。妻は「娘の成長」を生きがいにしていますし、自分もそれとともに、病気に打ち勝つために「資格試験」に挑戦しています。
 まあ、メディアも「見てもらわなければ」という点がありますからね…。より深層を解明してくれるメディアに期待したいのですが…。

2007-12-24 08:19:38
http://blog.goo.ne.jp/kazmaximum/e/5c0e5540d30406ceabc87776abe10dd7



[法律]薬害C型肝炎訴訟の行方(企業法務戦士の雑感)
 大阪高裁の和解協議が事実上決裂、と報じられ、どうなるかと思っていたら、突如として「一律救済」のニュースが・・・。

「福田康夫首相は23日、薬害C型肝炎訴訟に関し、被害者全員を一律救済する方針を表明した。自民、公明両党が今国会に議員立法で救済法案を提出、野党にも協力を呼びかけて早期成立を目指す。原告・弁護団は同日、「大きな一歩であると評価し、解決につながることを期待する」との声明を発表した。」
「政府はこれまで血液製剤の投与時期などで救済対象を区切り、原告側が求める一律救済に消極的だったが、和解協議の事実上の決裂を受け、政治決断で早期収拾を図ることにした。」
(日本経済新聞2007年12月24日付朝刊・第1面)

 個人的には、先日出された政府側の和解骨子修正案は、国としての合理的な判断の範囲でなしえる最大限の譲歩だったのではないか、と思っていて(特に金銭的な面で)、そこであえて「責任の所在」に固執して案を蹴飛ばした原告側の姿勢は、正直言ってあまり感心できるものではない、と思っていたのだが、各メディアが「すべては官僚の抵抗のせい」(苦笑)という時流に乗って、徹底した対政府バッシングを繰り広げたことで、更なる大幅譲歩を引き出したのだから大したものだ。
 だが、冷静に考えれば、今回のような処理を手放しで評価することは本来できないはずである。
 薬害被害者の視点から見れば万々歳、な話であっても、このような事例で「国が責任を認め金銭を支払う」ということは、最終的には国民全体に責任と負担を課すことに帰する。
 ゆえに、政治決断をするにしても、今後の同種の問題に与える影響力を勘案しながら慎重に行う必要があるのはいうまでもないことなのだが、今回“世論に押し倒される”形で政治決断を迫られたことによって、今後別のところで国民生活に悪影響が出ないとは限らない。
 投薬、のみならず医療行為全般が必然的にリスクを伴うものである以上、(現実的な損害の填補の問題はともかく)、国が負うべき「責任」については、当の行為が行われた時点のリスク状況に応じて柔軟に判断していかないと、かえって硬直的な薬事・医療行政をもたらすことにもなりかねないように思うのだ*1。
 一方当事者の利益を重んじれば、もう一方の当事者が足枷をはめられることになる、という紛争の基本的な構図は、一般的な民事訴訟だろうが、国家賠償訴訟だろうが、異なるものではない。
 後者について、「公共の利益」などという大上段に構えた議論を展開するつもりは毛頭ないが、かといって、嵩にかかった後付けの議論で行政行為の裁量性を全否定するような流れに持っていくのも考えものである・・・。
 なお、人身に対する被害が回復不可能な、甚大なものであることを考えると、自分とて、現在罹患している人々への救済の必要性を否定するものではない。
 だが、それは「国家賠償」のスキームではなく、あくまで中立的な「国家補償」の枠内で行われるべきものと考える。
 故意に都合の悪い事実を隠蔽するような悪質な事案でない限り*2、責任の所在を問うことなく、公的補償によってダメージを受けた患者を救済する、そしてそのような制度を、製薬会社、医療機関、国そして医療行為を受ける全ての人の、公平な拠出に基づいたものとして設計していく・・・。
 労力のかかる訴訟に時間を費やすことよりも、目の前で苦しんでいる罹患患者や、それによって一家の大黒柱を失った家庭の生計を迅速に担保する方策を打ち立てることのほうに、より注力すべきではないかと思うのは筆者だけだろうか。

*1:当局の思惑はどうであれ、新薬の承認に際して過度に消極的になったり、未承認薬を利用した医療行為を回避させるような制度設計(混合医療をめぐる問題にそれが端的に現れている)に向かうことへの口実を与えることにもなりかねない。
*2:今回の事案がこのようなものに該当するかどうかの評価は、自分自身訴訟資料に触れたわけではないので、ここでは差し控えることにしたい。

2007-12-24 08:51
http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20071224/1198540296



薬害肝炎和解案を大阪高裁が提示、原告側は受け入れ拒否(院長のひとりごと 日々の診療について)
 薬害肝炎のことを書くと、患者さんからよくお叱りを受けます。お叱りは真摯に受け止めますが、医療者と一般の方のこの問題への温度差がとてもあるように感じます。
 薬害肝炎は、何が薬害なのか?よく勉強してみて下さい。結構複雑で、訴状を見てもよく分からないと思います。薬害肝炎訴状(福岡)http://www.lawyer-koga.jp/kanen-sojyofk.htm
 なぜ、こういう事が問題になっているのか良く読んで見てください。

 私が医者になったのは1986年です。その当時C型肝炎は証明されておらず、A型でもないB型でもない肝炎は、非A非B肝炎と呼ばれていました。C型肝炎が発見されるのは、1989年になってからです。そして、研究所レベルではなく、一般の診療所でC型肝炎の検査が出来るのは1991年になってからです。
 1986年当時、輸血をすると非A非B肝炎になることは知られており、輸血をした患者さんは定期的に肝機能の検査をしていました。1989年の検査方法(HBc抗体検査とHCV抗体検査の導入)の進歩で感染者は激減し、2000年の更なる検査方法(HBV,HCVの核酸増幅検査導入)の進歩により1万例に1例程度の頻度となりました。少なくとも輸血をすることにより、2000年まではC型肝炎になる患者さんがいました。この医療レベルを考えて薬害肝炎を考えなければなりません。
 血液製剤を使用すると、少なからず非A非B肝炎になる可能性があることは認知されていました。血液製剤はウイルスの不活化処理をされますが、A型肝炎・B型肝炎は既に認知されていましたので不活化されたかどうかは調べられましたが、C型肝炎はまだ、未知のウイルスでしたのでそのウイルスが不活化されているかどうか調べる事が出来なかったことも薬害の1つの原因です。(1985年以前に製造されていたフィブリノゲン製剤は、BPL処理が施されており、C型肝炎ウイルスは結果的に不活化されていたとの検証実験が報告されています。非加熱フィブリノゲン製剤「フィブリノゲン−ミドリ」(1964年-1987年)、およびウイルス不活化対策として乾燥加熱処理がなされた製剤「フィブリノゲンHT−ミドリ」(1987年-1994年)により、薬害肝炎が発生しました。これらのフィブリノゲン製剤は、輸入売血または輸入売血と国内売血の混合血から製造されていました。 現在販売されているフィブリノゲン製剤は、献血由来、乾燥加熱処理と界面活性剤処理が施されており、薬害肝炎の原因とはなっていません。ウィキペディアより引用)
 私は、輸血後肝炎は薬害に何故ならないのかが疑問です。確かに、フィブリノーゲンの原料となった血液はよりC型肝炎に汚染された血液であることに間違いない(そのことも薬害)のですが、C型肝炎が除去出来る状況にないわけですから状況的には同じだろうと思います。何が言いたいかといいますと、フィブリノーゲンを投与された患者さんは、恐らく輸血も同じようにされていた可能性が高いですので、実際どちらが原因となったか判らないのです。
 また、カルテの保存期間は医師法第24条に規定されており5年間とされています。薬害肝炎が問題となるのは、すでに20年以上の時の経過とともに、カルテは既に保存期間は過ぎておりその当時のカルテを保存している医療機関はほとんどない(約7%の医療機関が保存できていたらしい)ということです。従って、フィブリノーゲンを購入した医療機関を公開しても、医療機関で確認できる事は出来ないのです。
 最近生物製剤を使用した場合、カルテの保存は5年間ということは変わらないのですが、「記録の保存」が義務づけられ、使用した場合は、医薬品名、その製造番号、使用年月日、使用した患者の氏名、住所等を記録し、少なくとも20年間保存することということになりました。まだまだ、未知のウイルスに対して今後いろいろな弊害が出るかもしれないという現れです。そういう意味では少し進歩しています。
 カルテが保存されていない医療機関に、フィブリノーゲン使用の証明は残念ながら出来ないのです。企業と厚労省が、非A非B肝炎のことを公にせずここまでひた隠しに来たのは、カルテが廃棄されることをひたすら祈ったのではないかと勘ぐってしまいます。少なくとも、1987年の青森県三沢市の産婦人科医院におけるフィブリノゲン製剤による集団感染発生が起こったときに、公にしていればカルテは保存できた可能性はあるのです。
 厚労省は、医療機関を公開するのではなく、その当時輸血をした方、フィブリノーゲンを投与した可能性のある方、或いはお産時に出血が多かった方はC型肝炎の検査を是非すべきと告知すれば良かったのです。最初の取り組みに間違いがあったのです。国民の命は軽視され、自分の立場だけを考えた対処方法と考えられても仕方がありません。HIVでもクロイツフェルトヤコブ病でも同じ事が言えます。
 こういう背景がありますので、国は全員救済することができないのです。C型肝炎の検査を無料として、可能性のある患者さんは検査を早く受けるべきだと思います。その後、C型肝炎ウイルスを持っている患者さんには。訴訟とは関係なく、限りなく国が補助するようにするべきです。明らかにフィブリノーゲンが原因と考えられる患者さんに対しては、国が全力で対応すべきなのです。C型肝炎の患者さんは、薬害と関係なく国が全力を挙げて救済すべき疾患だと思います。
 この薬害の早期の解決を祈っています。しかし、明らかにC型肝炎と同定できない、非A非B肝炎の時代の出来事であったということも理解して戴きたいと思います。

薬害肝炎和解案を大阪高裁が提示、原告側は受け入れ拒否
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071213it12.htm
 血液製剤「フィブリノゲン」などを投与され、C型肝炎ウイルスに感染させられたとして、患者らが国と製造元の製薬会社「ミドリ十字」を引き継いだ「田辺三菱製薬」(大阪市)などに損害賠償を求めた薬害C型肝炎集団訴訟の大阪訴訟控訴審で、大阪高裁(横田勝年裁判長)は13日、原告、被告双方に和解骨子案を正式に提示した。
 骨子案は血液製剤の投与時期などによって救済範囲を限定しており、原告側は受け入れ拒否を表明。「解決のため政治決断を強く求める」としており、政治決断の有無が今後の最大の焦点になる。
 同高裁は「いまだ調整が必要」として和解骨子案を公表しなかったが、原告側弁護団によると、救済範囲はC型肝炎を巡る全国5地裁の判決のうち、国と製薬会社の法的責任が及ぶ範囲を最も短く認定した東京地裁判決を踏まえている。
 フィブリノゲンでは1985年8月〜88年6月、クリスマシンなど第9因子製剤では84年1月以降に投与を受けた患者だけが補償対象で未提訴者も含まれる。
 この期間から外れた患者の場合、提訴している人には「訴訟遂行費」が支払われるが、未提訴者は和解成立日までに提訴しなければ救済されない内容だ。
 この基準に従えば、フィブリノゲンでC型肝炎に感染した疑いがある418人の症例リストに該当する患者でも3分の1近くが補償対象外になる。
 また、骨子案には国や製薬会社の責任や謝罪が盛り込まれている、という。
 一方、同高裁は同日、和解協議に対する裁判所の考えやこれまでの経過を記した「所見・説明書」を公表した。同高裁は「全体的解決のために原告らの全員、一律、一括の和解金要求案が望ましい」との見解を表明する一方、「被告の格段の譲歩がない限り、和解骨子案として提示しない」とも述べ、政治決断などにより被告側が態度を変更した場合、骨子案に盛り込む用意があることも示唆した。
 同高裁は「年内に基本合意を成立させるため全力を尽くす」とし、双方に20日ごろまでに前向きな回答を寄せるよう求めた。
 和解骨子案提示後、記者会見した原告らは「明らかな線引きで、受け入れられない」と表明。原告側の松井俊輔弁護士は「高裁で調整できるのはここまで。あとは政治決断しかない」と述べた。
(2007年12月13日23時32分 読売新聞)

2007年12月20日
http://blog.livedoor.jp/adachiclinic/archives/51332439.html



【薬害肝炎・政治決断】もがく首相のジレンマ (1/2ページ)(産経新聞)
このニュースのトピックス:副作用
 薬害C型肝炎問題をどう決着させるか。大阪高裁が求める20日の回答期限を控え、福田康夫首相は「一律救済」と「国民の税金」のはざまで、もがき続けている。年金公約問題などの逆風で内閣支持率が急落する中、対応を誤れば世論がさらに政権に背を向けかねないとの危機感も募る。首相の「決断」を鈍らせている背景には、官僚サイドの情報に頼り過ぎているとの見方があり、政界に側近や親しい議員が少ない「孤独の首相」の政治スタイルが足かせとなっているといえる。
 首相は19日夜、和解協議への対応について「まさに専門家が検討している最中だ。結果をみて判断する」と述べた。その上で同日、舛添要一厚労相に対し「20日の回答期限に回答できできるようにしなければならない」と指示したことを明らかにした。首相官邸で記者団の質問に答えた。
 首相は就任直後から薬害肝炎問題を解決させる意欲をみせていた。官房長官時代の平成13年、政府はハンセン病をめぐる地裁訴訟で敗訴し控訴するとみられていたが、小泉純一郎首相(当時)に控訴断念を進言したとされている。
 11月1日には、舛添氏に「国民の目線で人命を大事にするという原点を踏まえ」対処を検討するよう指示した。ところが、厚労省から「一律救済」に踏み切れば「数兆円」かかるとの報告を受け落胆する。

2007.12.19 21:58
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/071219/plc0712192158017-n1.htm



【薬害肝炎・政治決断】もがく首相のジレンマ (2/2ページ)(産経新聞)
このニュースのトピックス:副作用
 大阪高裁の和解案が出た翌日の14日、一律救済について「(負担が)無限に広がる」「税金を預かっているから説明できないといけない」と慎重な発言を繰り返した。
 「数兆円」の呪縛は町村信孝官房長官ら官邸全体に蔓延した。法務省も高裁の和解案の尊重を求めるなど「官」から首相への圧力はさらに増していた。
 内閣支持率低下を食い止め、再び上昇させていくには、国民の目に「冷たい首相」と映ることは避けたい。さりとて、やみくもに財政出動させるわけにもいかない。首相は大きなジレンマに立たされている。
 静観していた自民、公明両党の幹事長らはようやく19日、肝炎問題で与党が首相に協力していく方針を確認した。それでも、同日昼の首相の表情は曇っていた。官邸に公明党の太田昭宏代表や若手議員らを招いて昼食会を催した首相は、「政治決断、政治決断といろいろいっぱい決断があってねえ」とぼやいた。太田氏からは、肝炎問題について、「一律(救済)の方向で何らか打開策はできないか」と求められたが、沈黙を通した。

2007.12.19 21:58
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/071219/plc0712192158017-n2.htm



なにか変だ―薬害C型肝炎訴訟原告団(大事小事―米島勉日記)
 出産時の大量の血液製剤フィブリノーゲン投与などが原因でC型肝炎を発症された方には大変お気の毒なこととは思いますが,このところの薬害C型肝炎訴訟には,首を傾げざるを得ないところがあり,あえて書きます。
 薬害C型肝炎訴訟原告団(以下,原告団)は,大阪高裁において和解勧告が示されたのに対して無条件の一律救済を主張して勧告を拒否していますが,政府は一定の線引きを主張して現在のところ妥結していません。政府の主張は,無制限の救済はできない,という常識的にはもっともなものと思われます。
 にもかかわらず,原告団が一律救済に固執して,福田首相の政治決断を迫るのはなぜでしょう。失礼ながら,原告団のバックになにか特定団体が存在するのではありませんか。本日夕刻までの情報では,大阪高裁が原告団に1人当たり2000万円の支払を勧告しているのに対し,原告団は1人当たり1500万円でもいいから一律救済せよ,と主張を一部トーンダウンしています。これも理解できません。
 原告団は,未提訴の人たちが800人ぐらいに止まる,としていますが,線引きはどうするつもりなのでしょうか。
 私は,薬剤の副作用に関連した薬害訴訟(風邪薬に配合されたPPAなど)について,アメリカの状況を数年間調査した経験がありますが,その訴訟のすさまじさには驚きました。インターネット上にはこの訴訟専用の弁護士のホームページが多数設けられ,所定のフォームに服用薬剤,服用時期,期間,副作用発症状況などを記入しさえすれば,あとは弁護士が立件する,という自動化まで行われていました。注目すべきは,訴訟の多くがヒスパニックなどに偏っていたことで,訴訟内容の不自然さも感じられ,明らかに金目当ての訴訟であることが推察されました。
 日本の薬害肝炎訴訟が金目当てだとは思いません。そんな邪推はしませんが,線引きできない無制限一律救済に固執するのはなぜでしょうか。

2007年12月19日 20時12分32秒
http://blog.goo.ne.jp/daijishoji/e/b4edf9babebb71a70d721b320d157e2c



一律救済 賠償1800億円 薬害肝炎訴訟 国試算、原告は反論(産経新聞)
 薬害肝炎訴訟の和解交渉で、国が、原告団が求める「一律救済」を受け入れた場合、約1万2000人が対象となり賠償額は約1800億円にのぼると試算していることが17日、分かった。
 国が和解交渉の中で、一律救済を拒み、血液製剤の投与時期を限定して責任を認めようとする背景には、試算ではじかれた莫大な額がある。原告団の主張とは大きく離れたものになっており、和解交渉が難航する一因となっている。
 関係者によると、1万2000人という数字は、汚染製剤の出荷量や感染率などから割り出した感染者の推定人数。全員が救済を求めて訴えを起こす可能性を想定して試算をしたとみられる。
 また、国側は、汚染血液製剤と並行して、輸血を行ったことで肝炎に感染した患者まで和解対象とした場合も試算。対象者は3万8000人、賠償額は5700億円と計算しているという。
 一方、肝炎訴訟の原告団は、「国側が想定しているような膨大な数の提訴者が出ることはありえないし、輸血が原因の肝炎患者が和解対象となることも考えていない」と反論している。
 原告団は17日、和解骨子案に対する「修正案」をまとめた。その中で、従来主張している一律救済を前提の上で、和解対象となる患者について、「原告被告双方の協議によって、カルテや母子手帳などを証拠に汚染製剤の投与を証明する」といった認定基準を盛り込んだ。
 原告団が、和解条件を文書にまとめるのは初めて。修正案を18日に大阪高裁に提出するとともに、福田康夫首相の政治決断を文書で官邸に要請する。

■肝炎和解交渉をめぐる主張の相違
【国:時期を限った救済を主張】
・フィブリノゲンは投与時期によって感染リスクの高低がある
・5地裁判決に全員一律救済を認めたものはない
・一律救済すると1800億円、輸血による感染者も想定すると5700億円になる可能性がある
【原告:一律の救済を主張】
・カルテなど、薬害被害者の認定基準をつくれば、和解対象が膨大な数になることはあり得ない。原告が金額を主張したことはない
・投与時期により救済に差をつけるのは命の重さに差をつけることになる

12月18日8時0分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071218-00000090-san-soci



[医学]線引きは許されないのか?薬害肝炎訴訟 15(NATROMの日記)
 フィブリノゲン製剤によってC型肝炎感染者が多数でた薬害事件について、「線引きは許されない。一律救済を」と原告側は主張している。

■肝がん、肝硬変は4000万円=薬害肝炎訴訟の和解骨子案(時事通信)
 汚染された血液製剤でC型肝炎に感染したとして、患者らが国と製薬会社を訴えた薬害肝炎訴訟の控訴審で、大阪高裁が和解骨子案の中で示した1人当たりの補償額は、肝がんや肝硬変で4000万円、慢性肝炎で2000万円など、症状に応じて設定されていることが14日、分かった。
 原告側は骨子案が提示された13日に、「一律救済でなければ受け入れられない」と受け入れを拒否、政府の政治決断を求めている。

■薬害肝炎患者 「未提訴・期間外」に5億円(読売新聞)
 血液製剤「フィブリノゲン」などを投与され、C型肝炎ウイルスに感染させられたとして、患者らが国と製薬会社に損害賠償を求めた薬害C型肝炎集団訴訟で、国側が、大阪高裁が示した和解骨子案では救済対象から外れている未提訴の患者についても、「活動支援金」の名目で計5億円を支払う修正案を原告側に打診したことが16日、分かった。
 原告側の求める「全員救済」を目指した形だが、原告側は同日、「被害者を線引きすることに変わりはなく、全員救済の意味をはき違えている」として受け入れ拒否を表明。和解交渉は引き続き難航しそうだ。

 C型肝炎の危険性は徐々に判明してきたものであるから、過去のどこかの時点で線引きをして、「線より以後は数千万円の補償、線より以前は0円」とするのは合理的でない。ただ、原告側の「線引きは許されない」との主張の理由はそのようなものではないようだ。患者側になんら落ち度はなかったのだから、C型肝炎ウイルスに感染したのは国および製薬会社に責任があり、よって感染させられた患者はすべて補償の対象になるべきだ、と原告側は言っているようである。
 気持ちは十分に理解できるが、少なくとも、危険性が不明確であった時点における感染に対して、巨額の賠償金を支払う必要はない。C型肝炎ウイルスの発見は1980年代後半である。むろんそれ以前より非A非B型肝炎として知られていたわけであるから、何らかの感染対策は不可能ではなかったという主張もあろう。しかし、情報が不十分な状況下では正しく判断できるとは限らない。怠慢だ、人命軽視だと、口汚く当時の官僚を罵る人たちもいるが、彼らに問おう。もしあなたが、当時の厚生省官僚であったのならば、フィブリノゲン製剤による薬害肝炎を防げたか?私だったら、防げなかったと思う。感染の拡大を少なくできたかどうかも自信がない。
 医療事故裁判と構図は似ている。すべての情報が出揃った現在から過去を振り返って、「この時点でCTを取ればよかった」「高次医療機関に転送すべきだった」と批判することは簡単である。しかし、医療は本来不確実なものだ。結果責任・後だしジャンケンで医師の責任を問うべきではない。同様に、結果責任・後だしジャンケンで国や製薬会社の責任を問うべきではない、と私は考える。新薬の承認と未知の副作用の危険性はトレードオフの関係にある。未知の副作用の責任まで取らせていたら、責任回避のためになかなか新薬が承認されなくなる。結果責任で医師を裁くと防衛医療・萎縮医療が起こるのと同様である。
 患者に救済が不要だと言っているのではない。一律救済を求めるのであれば、国や製薬会社の責任を厳しく問うのではなく、不可避な不幸な事故に対する救済として求めるほうがよい。巨額な補償金ではなく、治療費の補助程度にならざるを得ないだろう。その代わり、救済の対象は輸血による感染まで広げる。「感染時期で差別するのか」と一律救済を求める原告の方々は、感染経路で「差別」しないことをもきっと理解していただけるだろう。マスコミの報道についても、医療事故裁判と似ている構図がある。「被害者」の闘病生活やあきらめた夢の話に焦点があたり、医学的な情報に乏しい。また、「被害者」がいるからには、どこかに「悪い奴」「責任者」がいるに違いないという論調も見られる。「患者は死んだのだから、医師に過失があるに違いない」という考え方と似ているように私には思われる。犯人探しが不毛なこともあるのだ。

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bn2islander 2007/12/17 21:53
はじめまして。原告側の主張は、全てのC型肝炎を薬害と位置づけ、国の責任で起こった薬害である以上、国の責任で全てのC型肝炎患者を救済しろと言う主張だと思います。原告の主張を考えてみると、線引きをしない以上、輸血や針刺し事故による肝炎か、薬害による肝炎なのか区別は付かないので、一括救済しなければならないのではないでしょうか。

Inoue 2007/12/17 23:20
「病気で困っている以上は社会が救いの手を差し伸べるべきだ」という主張なら、一般論としては正しい。ですが、それを言い出したら、すべての患者に経済的補償も含めて金を出さねばならない。納税者は承知しますかね?
薬害なんていくらでもあり、過失がなくても発生しますので、やっぱり「線引き」できないです。

通りすがりのド素人 2007/12/18 01:56
それが薬害であることが明らかになり、しかも一部の患者については個人の特定までしていたのにも関わらず、つまり、やる気さえあれば患者を早い段階で救済できる可能性があったにも関わらず、国は積極的にそれをしなかった。
そうしているうちに時間だけが経過し、多くのカルテが廃棄され、国の不作為が認められる可能性がある時期に投薬を受けた患者であっても、多くの場合、もはやそれを立証することが出来なっている。
明確な線引きをし、投薬を立証できる運の良い人だけを救済するのは、その経緯を考えれば著しく不当であって、この際、全ての人を救済すべきである、というのが彼らの主張だと、新聞だけをソースにする素人の私は理解しています。
線引きそのものが無条件に不当であるという主張は見ない気がします。

Inoue 2007/12/18 05:32
薬害であるかどうかもわからないケースも多いんですが、それについては?
言うまでもないですが、C型肝炎の感染ルートは薬以外の方がずっと多い。
しかし、C型肝炎訴訟原告団は、薬害かどうでないかの線引きすらせず、全員救済しろと言っている。
「病気だから医療費をタダにしてくれ」程度だったら、そうしている国(英国など)もあるから、無茶な主張ではない。しかし、「線引き」をしないと、過失が明らかなケース、過失でないかもしれないケース、因果関係すら定かでないケースとの間に補償金額の差をつけることができなくなります。これはこれで、正義に反する。

暇人28号 2007/12/18 08:34
通りすがりのド素人様:
この問題を薬害と認定するのは、医学を知っている多くの人が疑問を思っているはずです。
感染ルートを特定できるのでしょうか。例えば、別ルートで感染していた人に当該薬剤を投与した場合、どちらが感染の主因かは分かりません。
もう一つ。C型肝炎の治療には莫大な費用がかかります。C型肝炎の皆さんに治療するとなれば数千億円、あるいは数兆円になりますがいいですか?
タミフルのときもそうですが、副作用のない薬などありえないのをマスゴミは認識しようとしません。いや、知っていても煽るためにあえてスルーしているのかも。効果と副作用を天秤にかけて自己責任で判断しなければね。もしも、薬による副作用を全て補償するとなればその費用を薬価に上乗せするか、税金による補填が必要になります。国民の皆さんがそれを納得するのでしょうかね。

inakaisha 2007/12/18 09:39
いくつかの誤解があるようなのであえて申し上げます。まず1980年代当時フィブリノーゲンおよびクリスマシンを、血友病や先天性フィブリノーゲン欠乏症以外の止血目的で投与することは国際的には意味のないことである、肝炎のリスクを冒してまで投与すべきではないとされていたはずです。クリスマシンについては、DICなどの重篤な副作用の報告が相次ぎ血友病Bに対しても凍結血漿で止血困難なときに限って投与するという指針が出ていたはずです。薬を使って肝炎になったから薬害と言っているわけではありません。本来薬として使うべきでないものを投与されて肝炎になったことを問題にしています。いまフィブリノーゲンやクリスマシンを止血目的で投与できないことが何か問題になっているのでしょうか。
<線引き>の問題も誤解に基づいているように思えます。「薬で肝炎になったことが明らかでない人もすべて薬害として救済しろ」などと言う主張は原告団はしてはいません。被告国側は自らの責任範囲をきわめて狭く限定して、それ以外の原告には「解決金」という形で「責任は認めないが金を払う」といっているのです。それでは問題の所在が明らかにならないから、一人一人の賠償金額は減ってでも原告全員の補償を求めているのが「線引きを許さない」ということの意味です。当然のことですがカルテもなければ投薬証明もない方まで補償の対象になるはずもありません。

bamboo 2007/12/18 09:43
現に困っている人に手をさしのべる社会保障と、過失による損害への賠償という意味での補償とがごっちゃになっているのでしょう。フィブリノーゲンによって出血が止まり、命拾いをした人もいるはずなのですが、一方的に薬が悪者にされていることにも違和感を感じます。

inakaisha 2007/12/18 09:56
いくつかの誤解があるようなのであえて申し上げます。まず1980年代当時フィブリノーゲンおよびクリスマシンを、血友病や先天性フィブリノーゲン欠乏症以外の止血目的で投与することは国際的には意味のないことである、肝炎のリスクを冒してまで投与すべきではないとされていたはずです。クリスマシンについては、DICなどの重篤な副作用の報告が相次ぎ血友病Bに対しても凍結血漿で止血困難なときに限って投与するという指針が出ていたはずです。薬を使って肝炎になったから薬害と言っているわけではありません。本来薬として使うべきでないものを投与されて肝炎になったことを問題にしています。いまフィブリノーゲンやクリスマシンを止血目的で投与できないことが何か問題になっているのでしょうか。
<線引き>の問題も誤解に基づいているように思えます。「薬で肝炎になったことが明らかでない人もすべて薬害として救済しろ」などと言う主張は原告団はしてはいません。被告国側は自らの責任範囲をきわめて狭く限定して、それ以外の原告には「解決金」という形で「責任は認めないが金を払う」といっているのです。それでは問題の所在が明らかにならないから、一人一人の賠償金額は減ってでも原告全員の補償を求めているのが「線引きを許さない」ということの意味です。当然のことですがカルテもなければ投薬証明もない方まで補償の対象になるはずもありません。

NATROM 2007/12/18 10:46
厚生労働省によるフィブリノゲン製剤によるC型肝炎ウイルス感染に関する調査報告書には、『我が国のみならず欧州各国を含む多数の国では、現在もフィブリノゲン製剤が販売されており、その効能・効果として、「先天性低フィブリノゲン血症」はもとより、「後天性低フィブリノゲン血症」が含まれている国もある』とあり、具体的にドイツやオーストリアで後天性低フィブリノゲン血症患者の出血性傾向に用いられているとの記述があります。
さらにC型肝炎の予後、つまり高率に慢性肝炎となり数十年後に肝硬変、肝癌に進展するという知見も、当時にはまだよくわかっていなかったと私は認識しています。探せば「先天性フィブリノーゲン欠乏症以外の止血目的で投与することは意味がない」「非A非B型肝炎の予後は悪い」とする当時の論文もあるのかもしれませんが、それがすなわち医学的な常識であったとまでは言えないと思います。「いま」フィブリノーゲンを止血目的で投与できないことは問題になっていません。だからと言って、「過去に」フィブリノーゲンを止血目的で投与されていたことを断罪してはならない、というのがこのエントリーの趣旨です。
早々にフィブリノゲン製剤を禁止したとして、後に代替製剤の問題点が明らかとなって、「たとえ肝炎のリスクがあったとしても使用経験の豊富な製剤を軽々しく禁止し、有効性の不明だった製剤に代替したのは、官僚の怠慢だ。代替製剤の製薬会社から賄賂でももらったのではないか」という話になっていた可能性もあったのではないですか。

JA50 2007/12/18 11:06
出産時の出血にフィブリノゲン製剤が止血目的に投与してよかったのかどうか、私も疑問に思っている者の一人ですが、それはおいておきます(私が医師になり立ての時、ミドリのMRが止血製剤としてこの薬を売り込みに来たことがあります。外科的な出血にですよ。こんなの効果があるはずないじゃないかと、私のようなクチバシの黄色い者でさえ分かった)。今、ここでNATROMさんが提起された議論は、それを問題とはしていないはずですから。

>「薬で肝炎になったことが明らかでない人もすべて薬害として救済しろ」などと言う主張は原告団はしてはいません。

これは、線引きしてもよい、ということになりませんか?
薬で肝炎になったことが明らかでない者は救済しなくてもよいと。

ド素人です 2007/12/18 13:36
NATROMさんとは根本的に相互理解出来ないであろうと判って書きますが...
薬害については被害者を救済するという観点から線引きはあってはならないのでは?と思います。
国民の利益・安全の保護は政府の義務ではないかと。予測不可能な災害に遭った人を救えるのは国であり、それ以外ではボランティアに頼るしかないということです。
どのような形(救済、損害賠償)であれ助けるべきではないでしょうか。
厚生労働省の態度は「国家は国民を守ってくれない」という不安を感じさせます。

NATROM 2007/12/18 14:35
うん、だから、「被害者を救済するという観点から」なら、線引きしないという判断はありですよ。でも、被害者を救済するために「慢性肝炎で2000万円」もの高額な補償金が必要ですか?国や製薬会社の責任を厳しく問うのではなく、「被害者を救済するという観点から」不可避な不幸な事故に対する救済として求めばいいのではないでしょうか。
「やる気さえあれば患者を早い段階で救済できる可能性があったにも関わらず」なんて言うから話がややこしくなるんですよ。そんなことを言うから、「じゃあ、救済できる可能性のなかった人に対しては補償金は払わないよ」ってことになるのです。金額はともかくとして、済対象から外れている未提訴の患者に「活動支援金」の名目で計5億円を支払う修正案を出した国の態度は評価できると思いますけどね。

inakaisha 2007/12/18 18:38
先ほどは重複投稿をしてしまいました。申し訳ありません。それにしても原告団の主張をきちんとチェック(ネット上で公開されています)しないままに誤解に基づく非難をされるのはいかがなものかと思います。まず間違った新聞報道を鵜呑みにされている点。
>国側が、大阪高裁が示した和解骨子案では救済対象から外れている未提訴の患者についても、「活動支援金」の名目で計5億円を支払う
これは誤報です。国が出した案は国の責任は否定し、大阪地裁で勝訴した原告に対してのみ補償金を支払い、その範囲から外れた原告に対して「活動支援金」名目でつかみ金を支払い、それで敗訴した原告にも実質的に金が行き渡るようにするというものです。
それからこれはNATROMさんとは分かり合えないかもしれませんが
>結果責任・後だしジャンケンで国や製薬会社の責任を問うべきではない
結果責任を問うているわけではなく、既知のリスクを問題にしているはずです。アメリカでは1977年にフィブリノーゲン製剤の承認が取り消されています。有効性が証明できず肝炎のリスクがあるからです。この時点で当然製薬会社は情報を手に入れていたはずです。また第?因子複合製剤にもDICなどの重篤な副作用があることがわかっていました。この製剤は血友病Bに対しても「凍結血漿が無効な出血に限って使用するように」ということが、「論文」ではなく1980年頃のハリソン(世界的にもっとも権威の高い教科書の一つ)に記載されています。またこの製剤の臨床治験を手がけたのは安部英氏率いる帝京大チームですが、肝硬変末期などに対して投与してDICなどが起きたことを論文として残しています。いかにこの製剤の使用が抑制的だったかを示す証拠としては、アメリカやフランスでは血友病BのHIV感染率は血友病Aの約半数ですが、日本では両者に全く差がありません。警告はされていたにもかかわらず、製薬会社と国がそれを無視し続けたから「薬害」だといっているわけです。先天性低フィブリノーゲン症患者や血友病患者が原告から外れているのは、こうした患者に対する投与には合理的な意味があるからです。これでも「後出しじゃんけん」でしょうか。

>これは、線引きしてもよい、ということになりませんか?
薬で肝炎になったことが明らかでない者は救済しなくてもよいと。
弁護団のページにははっきりと
>何らかの手段で、血液製剤が投与されたことが証明できなければ、原告になることはできません。
とあります。慢性C型肝炎患者全体に対する救済策は、インターフェロン治療の自己負担分の軽減で、これは来年度に予算化されます。これを訴訟の一番の目標に掲げたのが、原告団だったことは忘れないでいただきたいです。
なお>非A非B型肝炎の予後は悪い
という1980年代の教科書の記載もあります。ご参考までに。

JA50 2007/12/18 20:57
>何らかの手段で、血液製剤が投与されたことが証明できなければ、原告になることはできません。
と、弁護団も線引きしているわけですね。
となれば、後は、そのいろいろある線引きのうち、どれが合理的かという話になる。

NATROM 2007/12/18 21:35
厚生労働省のサイトによれば、1977年のアメリカの決定について、「リスク評価は主にB型肝炎の感染の危険性に基づいている」とあります。日本の製剤はウイルス不活化処理をなされていて肝炎のリスクは少なかったとも。アメリカ以外の欧州各国を含む多数の国ではフィブリノゲン製剤は使用されていたともあります。だとすると、フィブリノゲン製剤によるHCV感染について、1977年にアメリカで承認が取り消されていることをもって、日本政府の責任を問うことはできません。もちろん当事者の一方の主張ですので、反論などはあるのかもしれませんが、私が探した限りでは見つかりませんでした。
よしんば、アメリカでフィブリノーゲン製剤の承認が取り消された1977年にC型(非A非B型)肝炎のリスクが既知だったとしましょう。原告団のサイトによれば、「昭和39年(1964年)頃から平成6年(1994年)年頃までの間に、血液製剤(フィブリノゲン製剤あるいは第9因子製剤)を投与された方」が原告となっていますよね。1964年の段階で、肝炎のリスクは既知だったんですか?フィブリノーゲンを、血友病や先天性フィブリノーゲン欠乏症以外の止血目的で投与することが国際的には意味のないことであると考えられていたんですか?(だったらなんでアメリカで承認されたのだろう?)
inakaishaさんの主張が正しかったとして、第9因子製剤および1970年代後半以降のフィブリノゲン製剤による感染について、相応の(数千万円もの)補償金に相当するとは国の責任があるとは言えても、原告全部はそうだとは言えないはずです。1964年の感染についても、数千万円もの補償額が必要ですか?

>非A非B型肝炎の予後は悪いという1980年代の教科書の記載もあります

あるでしょうね。では、1977年の段階では?1964年の段階では?そういうことを私は言っているんです。

>国が出した案は国の責任は否定し、大阪地裁で勝訴した原告に対してのみ補償金を支払い、その範囲から外れた原告に対して「活動支援金」名目でつかみ金を支払い、それで敗訴した原告にも実質的に金が行き渡るようにするというものです

確かに報道は信用できないので、信頼できる情報源があったら教えてください。また、どちらにせよ、「敗訴した原告にも実質的に金が行き渡るようにする」点で、国の態度は評価できると思います。あとは金額の問題でしょう。1964年からの感染者が含めて一律救済を要求する以上、「1977年にアメリカでは」とか「1980年代の教科書の記載」とかの情報は関係ないのではないでしょうか。

inakaisha 2007/12/18 22:25
私は原告団の代弁者ではない(苦笑)ので、自分が以前文献で調査した知識の範囲内で1970年代後半からは製剤の危険性は既知であったといえます。現在国がいっているのはそうした議論ではなく、1983年から1年間に限って国に責任があるという、きわめて限定的なものです。ただ一ついいうるとすれば、私の調査ではフィブリノーゲン製剤の臨床的な有効性を示す文献を見つけられなかったということです。
今までの議論で、C型肝炎ウイルスの発見前には製剤の危険が未知であったというのは当を得ていないことはご理解いただけたのではないかと思いますが。私も宿題をいただいたので勉強しますが、是非オリジナル文献に当たってください。

skoba 2007/12/18 23:48
フィブリノゲン製剤に意味があるわけがないというのは,今の常識にすぎません。私もそう思います。凝固カスケードの最終段階のみをふやしたとしても止血に本当に効果があるかといえば疑問です。
止血や凝固に関する臨床試験は条件やエンドポイントの設定が難しく,現在でも臨床試験がなかなか組みにくい分野です。諸先輩方の臨床経験では極めて有効であったという話もあります。実際問題,大出血している状況でフィブリノーゲンのみを投与するかしないかを比較するというランダマイズコントロールスタディというのは倫理上難しいと思います。
1980年代当時にはEBMという考え方すら定着しておりません。薬理学的に効果があれば臨床的にも効果が期待できるという考え方のほうが一般的であったというように認識しております。
問題は肝炎を起こしたらすべて薬害なのか?それなら輸血も薬害であり,予防接種も薬害。誰が悪いのか?国が無作為なのか?製薬会社が悪いのか,現場の医師が悪いのか。
今でも未知のウイルスは存在します。生物学的製剤である以上,それらに感染する危険性を0にすることはできません。すべての薬剤においても,未知の副作用が存在し,それによってデメリットを被る方が今後出てこない可能性は否定し得ません。
これは今の常識ですが,未来の常識でそれを否定され,現在の医療行為に対して未来の尺度で断罪されるという構図が成り立つとするのならば,進歩を前提とした医療行為はすべて行えません。

NATROM 2007/12/19 08:18
inakaishaさんへ。原告団の主張が、たとえば「1983年から1年間という限定的なものではなく、1970年代後半からの投与にも国には責任がある」というものであれば、inakaishaさんの主張には意味があります。しかし、原告団が、自分から「線引きは許さない」と言っていますよね。1970年代後半からは製剤の危険性は既知であったとしましょう。で、1964年の感染についても、数千万円もの補償額が必要ですか?

「C型肝炎ウイルスの発見前には製剤の危険が未知であった」などとは私は言っておりません。「原告団の主張をきちんとチェックしろ」などと言うのであれば、ご自身こそきちんとこのエントリーを読むべきではないですか。

杉山真大 2007/12/21 18:52
そう言えば、某ディベート大学のセンセは↓の様なこと言ってるんですな。
http://www.japandebate.com/200712.htm
平成19年12月21日(金)
国を訴えるということは 国民を訴えることである。
補償金とは我々の税金だ

NATROM氏とinakaisha氏との議論とは別に、これはこれで何とも・・・・・(汗

神保町のネコ 2007/12/21 21:13
http://www.japandebate.com/200712.htm

あ痛ぁ…そこまで駄目な意見は久々に見るなあ

ST 2007/12/22 00:16
数千万円、数千万円って、そこに原告の真意があるのだろうか?
昨夜のニュース番組で原告の女性が『お金が欲しい訳じゃない』と話していた。むしろ国から金で横っツラをひっぱたかれたようで、不快で、そのために歩み寄りが進まない感じを受けたが。せっかくの『ごめんなさい』も、相手に通じるように言わないと意味ない。
あー。こんな事を投稿したら、ブログ主さんや、その考えに近い方々から叩かれるんだろうな…。怖いけど書いてしまおう。

NATROM 2007/12/23 01:20
裁判所が法的責任を認めた期間から外れる被害者に関して、今後提訴する患者を含めて、1人あたり1000万円の基金総額案も原告側は蹴っていますので、「お金が欲しい訳じゃない」というのは確かなんだろうと思います。じゃあ、原告側はどうして欲しいのか、という点がよくわからないのです。どうやったら、「ごめんなさい」が通じるのでしょうか。お金の問題じゃないのなら、「法的責任は認めないけれども、金額は直接救済の対象者と変わらないだけ払う」という案もダメなんでしょう?

西田三郎 2007/12/24 12:03
おいNATROM。
ありがたい返事を書いといたから心して読んどけ(嘲)
http://blogs.yahoo.co.jp/nishidasaburou/52955805.html

地下に眠るM 2007/12/24 14:05
お、祭りだ!
僕も参戦するにゃー(嬉々

logic star 2007/12/24 20:34
犯人探しが不毛なこともあるのだ、というご意見に共感をおぼえます。NATROM様のご意見にふれて、少し安心しています。政治決断というのは、責任をたなあげにして(責任はないけれども)救済する、という意味で使われてきたはずです。政府は政治決断の姿勢を示してきたと思います。それなのに、今回は、責任問題に焦点があたるよう、あおっているのはいったい誰で、なぜなのでしょうか。それが患者のために、日本の将来のためになるのでしょうか。冷静に考えたいです。
http://ameblo.jp/logic--star/entry-10061907793.html

梨 2007/12/27 01:02
薬害肝炎訴訟の弁護団の弁護士が書いたらしい文章です。
薬害肝炎訴訟リレーブログ なぜ薬害は起こったか(上)
http://kanenrelay.exblog.jp/6476566/#6476566_1
この問題については勉強中なので理解の足らない部分もあるでしょうがそれでも驚いたのがこの一文。
>また、1978年には、アメリカで、FDAがフィブリノゲン製剤の承認を取り消しました。このような極めて重要な情報は、当然日本にも入っていたのですから、これらを前提に考えれば、もし第1次再評価をすり抜けていなければ、1980年代以降、日本でもフィブリノゲン製剤の使用は大幅に制限され、被害の拡大を防止できたはずなのです。
・・・え〜とアメリカは「B型肝炎」のリスクを考慮して規制したわけで当時の日本ではウイルス不活化処理でB型肝炎のリスクに対して対応していたわけですよね?少なくとも厚生労働省の報告書を見る限りでは。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0829-3a.html#top
弁護団の弁護士がこんな認識で大丈夫なのかな。

蒸し返すようですが 2007/12/28 19:20
上の方で1980年代にフィブリノーゲンを血友病や先天性フィブリノーゲン欠乏症以外の止血目的で投与することは意味のないことであると認識されていたかどうかという議論がありましたが、一応当時の国内の状況として、昭和50年(1975年)に産科出血において「血液の性状につき凝固性が疑われるとき、又は多量の出血によって生ずる出血傾向を防止する必要があるときには、線溶阻止剤や線維素原(=フィブリノーゲン:引用者注)の投与をなし、輸血にしても新鮮血の大量輸血を施すのが当を得た注意義務ということができるとすべきである。」という理由で産科医が敗訴した判例があったことを忘れてはいけないと思います。下記に記しますので調べてみてください。
弛緩出血ショック止血措置輸血措置懈怠―医師側敗訴
東京地方裁判所昭和50年2月13日判決(判例時報774号91頁)

2007-12-17
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20071217



なぜ薬害だけなのか:C型肝炎(飯大蔵の言いたい事)
 薬害肝炎の和解について大きく報道されている。 薬害C型肝炎訴訟 勝訴は去年の6月の大阪地裁の判決だ。今回の高裁判決までに1年半かかっている。その間に病状はかなり悪化した事だろう。
 政府は薬害肝炎患者についても線引きをしようと躍起である。線引きをしないと際限がなくなるからだそうだ。肝炎の治療体制確立求めるプロジェクトチーム に引用したものを再引用しよう。こちらから。

■日本には150〜200万人の患者さんあるいはキャリアがいる
 わが国でのC型慢性肝炎の患者さんは、肝炎症状のない持続感染者(キャリア)を含めると150〜200万人いると推測されています。年齢は40歳代以上に多く、C型肝炎ウイルス対策が講じられる以前の輸血などの医療行為による感染が背景にあることを示しています。しかし医療機関で何らかの治療を受けている人は50万人にすぎず、あとの100〜150万人の中には自分がC型肝炎ウイルスに感染していることに気づいていない人もいる可能性があります。厚生労働省は2002年から市町村の住民健診に肝炎ウイルス検診を加えましたが、1年間で新たに3万人のC型肝炎ウイルス感染者が発見され、2006年度までにはさらに12万人の感染者が見つかると試算されています。

■肝がんの原因の80%はC型慢性肝炎
 わが国の肝がんによる死亡者数は1975年以降急増、2001年には約35,000人が死亡し、肺がん、胃がん、大腸がんに次いでがん死亡の第4位を占めるに至っています(男性では第3位)。そして肝がんの原因の約80%はC型慢性肝炎であることがわかっています。
 薬害患者すべてに拡大する事は、カルテも無い今ではかなり難しい事でもある。その線引きをきちんと出来ないから、その後ろに控える200万人までに広がる可能性さえある。
 政府がそれを警戒するのは予算が膨大だからだが、自民党、民主党はすでに対策を考えていた・・・はずだ。それが上記のエントリーにある「肝炎の治療体制確立求める 自民党プロジェクトチーム」と「B型・C型肝炎総合対策推進本部」だ。

 民主党のニュースでは「薬害肝炎被害者全員の一律救済を求めて町村官房長官に申し入れ 菅代表代行」がその対策推進本部の活動の一部のようだ。そして活動の成果として法案を出す事になっているようだが、まだだ。
 今、報道は薬害C型肝炎しか報道しない。しかし、同じようにC型肝炎で苦しんでいる人は、遥かに数が多い。「薬害肝炎の被害者には何の落ち度も無いから救済すべきだ」とよく聞く。では薬害以外の患者には落ち度があったのか。証明はされていないかもしれないが、医療行為による感染であることは明らかではないのだろうか。だとすれば彼らに落ち度はまったく無い。救済の対象者である。
 その数は200万人。国民60人に一人と言う数だ。あなたのそばにもいるだろう。当然私のごく近い人にもいて、かなり重症だ。
 マスコミはなぜその事をきちんと報道しないのだろう。不安を煽るなということなのか。自民党も民主党も救済するとポーズを見せただけだ。そんな政治家たちに任せておけるのか。
 国の責任は追及出来ないのか にも書いたが、いまのままでは国民はこれらの無責任な人たちに殺されるばかりだ。
 日本は法治国家のはずだ。注意深く運転していても一瞬の出来事で事故になり、業務上過失致死に問われることもある。役人や政治家は薬品会社のご機嫌を取り長年放置していてもなぜ問われないのか。
 刑法で罰せないとしても、年金(共済、議員年金)をもらい悠々と暮らしている事を許せるか。
 繰り返される薬害や治療の放置に対し、多くの被害者が願う再発防止は、これら為政者を適切に処遇と言うか罰する事によってのみ達成できるのではないか。

2007/12/14 23:34
http://iitaizou.at.webry.info/200712/article_17.html



マイクロフィルムで40年前の(肝臓のなかまたち(第二世代) B型肝炎患者が患者とその支援者らなかまたちとくりひろげるあれこれ)

 12日、NHK総合「クローズアップ現代」で、「薬害肝炎 どう救済するのか」が放送されました。
 そこで取り上げられた患者さんは3人。
 1987年青森でフィブリノゲンを投与され、418人隠蔽リストに掲載されていた女性。
 京都のC型肝炎患者21世紀の会の尾上さん。フィブリノゲン投与の事実が証明できなくて訴訟に参加できないでいます。
 もう一人は、日本肝臓病患者団体協議会の中島小波代表。出産直後(1965年10月7日)止血剤としてフィブリノゲン2本を投与された事実が「手術患者記録」(マイクロフィルム)で判明。
 中島代表の投与証明は、感染の広がりの深さと深刻さの証左だと思います。中島さんは、弁護士さんと相談の結果、近く提訴される予定です。

 フィブリノゲンは、1964年から製造販売が承認され、40万人以上に投与されたと言われています。
 きちんと投与記録を調査すれば、中島代表のように承認近くからの投与記録を確認できる可能性が出てきたわけです。

■ 国会では、10日、民主党「特定肝炎対策緊急措置法案」、与党「肝炎対策基本法案」を今国会で成立させるための与野党協議が開始されました。
 公明新聞で紹介されていました。
  「与野党で論点整理 肝炎対策 法案合意に向け協議」
 民主党からは、2名の議員が参加されているようです。
 <山井議員のメールマガジンから>

 肝炎対策法、国の責任を明確にし、インターフェロン治療費の負担を心配せずに受けられるように、肝がんや肝硬変患者の医療費助成の検討の余地を明確にした法律にしてほしいと思っています。

投稿日:2007-12-12 Wed
http://kanzo.blog74.fc2.com/blog-entry-334.html

cf. 俵萠子の患者会リレーインタビュー/東京肝臓友の会 会長 中島小波:がんサポート情報センター

薬害肝炎(C型肝炎)(JEIの退職日記)
 正直C型肝炎といわれても何かピンとこない。酒飲みは肝臓をいためるようだが,でも,どんな症状がでるのかわからない。C型肝炎は血液を介してウイルスで感染し,自覚症状がないまま(少々だるさはあるようだが),肝硬変、肝がんへ進行する場合がある。早期に因果関係が分かり治療を受ければ、進行を抑えることができるという。調べると完治する場合もあるようだ。ただ,昔知られなかった病気が,医療の進歩か,新しい病気(ウイルスも進化?しているのか)が発見されている。今は誰もが知っているHIVも,当初は多くの誤解が流布した。対応が悪いのか,日本では今も拡大のようである。
 さて,今回の問題は血液製剤フィブリノゲン(手術などで止血剤として)を投与されることによってC型肝炎になり,そのフィブリノゲンを投与されたことが,分かっていながら,本人に知らされなかったことである(国,製薬会社の隠蔽体質)。今全国各地で訴訟が巻き起こっている。
 製薬会社から厚生労働省に提出された,血液製剤を巡る418人分のC型肝炎感染者リスト(省内での引き継ぎミスで「ない」としていた),イニシャルや氏名など記載された物が見つかった。「問題の資料は、肝炎の原因となった血液製剤の製造元が2002年に厚労省に提出した。血液製剤投与により発症したとみられる症例のリストなどである。資料を付き合わせると418人のうち、118人は実名やイニシャルが分かった。発症日や治療経過が書かれた例もある。」(11/23信濃毎日)」
 なんと問題のフィブリノゲンの製造元は田辺三菱製薬(旧・三菱ウェルファーマ)で,もとをたどるとミドリ十字(HIVの時問題になった非加熱製剤を作っていた会社)へとたどり着くようだ。同社の血液製剤「フィブリノゲン」では1万人以上が感染したとされるが、患者数の把握はできていない。リストは肝炎問題が深刻化した02年7月,厚労省の報告命令を受け,同社が医療機関からの情報を基に作成。65〜93年(一部は時期不明)に感染した418人について,投与日やロット(製品単位)番号などが一覧になっており,氏名や病院名は書いていない。上の記事と少し違う?
 ところがこのフィブリノゲンは,1977年アメリカのFDAではウィルス性肝炎のリスクなどから製造、販売を禁止されているのだ。フィブリノゲンによる感染は旧厚生省と製薬会社が予見できたはずである。それが,1987年青森県三沢市の産婦人科医院で,非加熱フィブリノゲン製剤「フィブリノゲン−ミドリ」を投与された産婦8名がC型肝炎に感染した。やっと,旧厚生省は,非加熱フィブリノゲン製剤による肝炎感染の情報を入手,同年3月26日に調査を開始した。この肝炎集団感染事件については,1987年4月18日,新聞報道され,社会問題となった。このアメリカとのタイムラグは10年ある(日米で薬は全く同一ではないようだが)。この間の製薬会社と国の隠蔽が問題となる。当時フィブリノゲンは出産時の止血用に使用された。
 今から20年前は,まだ,インフォームドコンセントなんていってなかったろうし,手術中の薬って患者には分からないんじゃないのかな。でも,分かってからの訴訟でもいろいろ判断が分かれているみたいで,混沌としている。舛添さんはつい先日,新薬認可をもっと早くする(4年→1年?)と言っていたが,こういうことがあるから,国としても及び腰になるんじゃないだろうか。海外ではテストに人体実験もおこなわれているそうだが,テスト段階だということを了解した上でとか,認可への段階をつけていかないと,こういう時に隠蔽に走るのではないだろうか。
 なお,感染ルートは,ずさんな歯科治療,予防接種や麻薬の注射針の使いまわし,輸血,血液製剤などがあるようだ。(HIVと同じようだが?)
 こうした隠蔽は,人の命まで奪っている。まさに「薬は毒である」。

2007.10.23
http://pub.ne.jp/newjei/?entry_id=993406


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全国薬害被害者団体連絡協議会編 2001『薬害が消される!』さいろ社


*作成:北村 健太郎
UP:20080218 REV:20080301,20151212
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