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複合性局所疼痛症候群:Complex Regional Pain Syndrome (CRPS)


last update:201000805

CRPSについて
 ○定義 ○類型 ○診断 ○臨床的特徴 ○RSD/CRPSの罹患期間 ○RSD/CRPSのステージ
 ○患者数 ○発症の原因 ○治療法
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■CRPSについて

 ◆定義

CRPSとは、骨折、組織傷害や神経損傷などを契機とし、感覚神経、運動神経、自律神経、免疫系等の病的変化によって発症する慢性疼痛症候群である(眞下,2009,p11)。
皮膚の変化、骨変化、腫脹、発汗異常、運動障害や委縮性変化などの症状を伴う場合もあるが、最も主要な症状は、「激しく」「持続する」「灼熱の」「深く疼く」「原因となった外傷からは予想される程度を超える」痛みである。
 ◆類型

@タイプT ・・・主要な神経損傷を伴わない。「RSD:Reflex Sympathetic Dystrophy(反射性交感神経ジストロフィー)」ともよばれる。
AタイプU ・・・主要な神経損傷を伴う。「カウザルギー」ともよばれる。

 ◆診断
RSD/CRPSを確定的に診断できる方法はまだ見つかっていない。レントゲン、試験的交感神経ブロック、サーモグラム、骨シンチ、筋電図、MRIなどの様々な検査所見、医学的所見、患者の症状などを総合的に評価して診断する。

 ◆臨床的特徴
@疼痛 ・・・RSD/CRPSの顕著な特徴は疼痛と運動障害であり、それらは原因となった外傷から予想される程度を超えるものである。一つまたは複数の四肢に発生した初めの主要な訴えは、激しく、持続する、灼熱の、そして、深く疼く痛みと表現される。全ての触感(例えば、着衣や微風)は、疼痛として認識されることがある(アロディニア)。反復触刺激(例えば、皮膚を軽く叩く)は、一回ごとに痛みを増加させ、反復刺激を止めても持続する痛みの感覚が残ることがある。筋トリガーポイントと呼ばれる小さな筋肉の痙攣により、患部の筋肉には広範な圧痛部位または痛点があらわれる場合がある(筋筋膜痛症候群)。また、どこからともなく生じる自発的な鋭く突く痛みが患部にあらわれる場合もある(発作性異常感覚および電撃痛)。
A皮膚の変化 ・・・皮膚は光沢(異栄養症‐萎縮)、乾燥または鱗状を示す。体毛は初期には固くなるが、やがて細くなる。患肢の爪は壊れやすく速く伸びるが、やがて伸びにくくなる。速く伸びる爪は、患者がRSD/CRPS である証拠といってよい。RSD/CRPSは、発疹、潰瘍、膿疱といった多様な皮膚疾患を併発する。極めて希だが、生命の危機に及ぶような再発性の皮膚感染により手足の切断が必要となる患者もいる。異常な交感神経(血管運動の変化)の活動によって、触れると暖かいまたは冷たい皮膚になる場合がある。患者は患肢に触れることなく温感や冷感を知覚することがある(血管運動神経活動の変化)。皮膚に発汗の増加(発汗運動神経活動の変化)や鳥肌を伴う冷感の増加(起毛運動の変化)が現れる場合もある。皮膚の色の変化には白い斑点から赤または青の状態まで幅がある。皮膚の色(および疼痛)の変化は、室内の温度、特に冷たい環境が引き金になり起こるようである。しかしながら、これらの変化の多くは明確な誘因がなくても起こる。患者は、この病変があたかも意思を持っているかのように表現する。
B腫脹 ・・・圧痕が残るような固い(盛り上がった状態の)腫脹は、通常、広範囲に至り、痛みがあり過敏となった部分に限局する。腫脹が皮膚の表面に線で明確に区分けされるような状態ならば、患者がRSD/CRPSであるという確かな証拠となる。しかしながら、ある患者では、心地良さのために患肢に巻いたバンドのせいで、はっきりと境界線のある腫脹を生ずることがある。従って、明確に区画された腫脹が患肢の周りに巻かれていた包帯によるものでないことを確認しなければならない。
C運動障害 ・・・RSD/CRPSの患者は動作時に疼痛があるため、運動障害が出る。また、RSD/CRPSには筋収縮に対して直接的な阻害作用もあるようだ。患者は、あたかも関節に硬直があるかのように動作の開始に困難を訴える。この硬直の現象は、交感神経ブロックを行った後に硬直が消失したときに、最も強くその存在が認識される。四肢運動の低下は筋肉の衰弱につながる(非活動性萎縮)。何人かの患者はRSD/CRPSによる疼痛は少ないが、その代わり相当な硬直や動作開始の困難を持つ。 四肢の震戦や不随性の強い痙攣が出る場合もある。これらの症状は心理的なストレスで悪化する場合がある。筋肉に起こる急激な痙攣(攣縮)は重篤で、完全に活動のできなくなる場合もある。手‐指または足‐趾を固定された状態で筋緊張が増大するために(ジストニア)、四肢の緩やかな「筋肉の引き攣れ」を訴える患者もある。その様な見た目に奇妙な動きをする患者は、心因性の動作障害として間違って診断されるかもしれない。加えて、RSD/CRPSの患者では、しばしば比較的ささいな外傷後に、非常に極端な行動の変化が伴うという事実があり、この所見が、患者がさらに心因的な障害を持っていると見られる原因になっているのかもしれない。
 特定の診断基準が、RSD/CRPSが関連する症例における心因的な運動障害の診断のために定められてきた。 残念ながら、医師はしばしば、これらの診断基準に当てはめることをせず、不注意にも「心因的」障害と報告する。 誤診は患者さんを打ちのめし、急を要する治療を遅らせることにもなる。
 患者が筋力低下の振りをしていることを示すためにしばしば使われる検査として、「ギブ・ウェイ・ウィークネス(筋力はあるのに急に力が入らなくなる現象)」がある。この検査は心因性の運動障害の信頼できる指標ではない。RSD/CRPSの患者では、力が四肢に加えられたときに、疼痛のためにギブ・ウェイ・ウィークネスが起こる。また、RSD/CRPSの患者は筋収縮を持続させることが難しいので、ギブ・ウェイ・ウィークネスを起こしやすい。
D症状の拡大 ・・・初期には、RSD/CRPSの症状は一般的に外傷部位に限局して見られる。時間の経過により、疼痛と症状はより広範にみられる傾向がある。典型的には病気は四肢に始まるが、疼痛が体幹または顔面の横に発生する場合がある。逆に、病気が四肢の遠位から始まり、体幹や顔面へ広がって行くこともある。この段階では、全身の1/4が罹患する場合もある。マレイキ(Maleki)らは、最近、RSD/CRPSにおける症状の拡大には3種類のパターンのあることを報告している。
a)「連続型」の拡大。症状は、例えば手から肩へと、初めに罹患した部位から上の方へ広がる。
b)「ミラーイメージ型」。反対側への拡大。
c)「独立型」症状は身体の離れた部分へ拡大。この拡大の型は二次的な外傷に関連している可能性がある。

E骨変化 ・・・ X線写真で骨萎縮(斑状の骨粗鬆症)が見られたり、骨シンチグラムであ る種の放射性物質(テクネシウム99m)の静脈内注射後に、骨における取り込み促進または低下の見られる場合がある。


◆RSD/CRPSの罹患期間
RSD/CRPSの罹患期間は多様で、軽症の場合は、数週間後に寛解するが、多くの場合、疼痛は何年にも渡り、ある症例では永遠に続いている。寛解と再発を経験する患者もある。寛解の期間は、数週間、数ヶ月、数年にわたる場合がある。

◆RSD/CRPSのステージ
RSD/CRPSの病期は3つのステージに分類される。
@病期T・・・外傷部位に限局された疼痛、接触または軽い圧力への皮膚過敏性の増大(触覚過敏)、局所腫脹、筋痙攣、硬直、可動域の制限、発汗の増加、チアノーゼなどの症状が発現する。
A病期U・・・体毛の変化、痛みがより強く広範囲になり、局所的な骨萎縮の重症化・拡大、筋萎縮が始まる。
B病期V・・・組織の顕著な萎縮が最終的に不可逆的になり、疼痛は耐えがたいものとなって患肢全体に広がる。患者の数パーセントは全身に広がったCRPSとなる。
RSD/CRPSの病期分類は既に廃れた概念である。疾患の進行は様々な患者にあって予期できないものであり、病期分類はRSD/CRPSの治療において役立たない。また、前述したRSD/CRPSの様々な病期の臨床的特徴の全てが現れるというわけではない。病気の進行も個々の患者によってかなり異なっている。病期I及びUの症状は一年以内に顕在化する。ある患者は病期Vには進まない。さらに、初期段階(病期I 及びU)の症状のうちあるものは、病期Vへの進行により消失する場合がある。

◆患者数
病気自体が新しい概念であることから、調査研究は少ないが、Sandroni.Pらの米国Olmsted地方の住民を対象にした研究では、CRPSTの発症率は1年間で10万人につき5.46人(0.00546%)、罹患率は10万人につき20.57人(0.02%)だといわれている(住谷、2009、p30)。我が国におけるCRPSに関する疫学調査はこれまで一度も実施されたことがなく、正確な人数は不明であるが、2008年に開催された「CRPSセミナー」において、住谷(2008)が10万人に約5人(0.005%)の発症率と報告していることから国内にはおよそ6500人の患者が存在していると推測される。男女とも罹患するが、発生率は女子のほうが高く、特に小児では女児のほうが多い。
韓国では、現在、CRPSと正式に診断を受け正会員として患者会に登録されている患者数は70人である。しかし、米国患者会(RSDSA)により術後CRPSを発症する者が年間10万人に達するとの報告がなされていることから、実際には国内にも1万5千人〜2万人の患者がいると推測している(2010年5月 韓国CRPS患者会会長のインタビューより)。韓国の調査では罹患率に性差はみられず、年齢層も幅広いと報告されている。


◆発症の原因
・骨折、やけど、捻挫など
・採血、手術などの医療的行為による神経損傷

◆治療法
・薬物療法
・理学療法、作業療法
・交感神経神経ブロック
・交感神経切除術
・脊髄刺激装置
・モルヒネポンプ   など

 参考・引用文献・URL
・国際RSD/CRPS研究財団 「標準的治療法ガイドライン第3版」2003 International Research Foundation for RSD/CRPS(真下節、柴田雅彦訳),
http://www.rsdfoundation.org/ja/ja_clinical_practice_guidelines.html(2010年7月27日 現在)
・韓国CRPS患者会,メドトロニック財団,2006(?),「患者と家族のための資料集」
・眞下節・柴田雅彦編,2009,『複合性局所疼痛症候群CRPS(complex regional pain syndrome)』,真興交貿(株)医書出版部
・住谷昌彦,2008年2月2日、「わが国の臨床データに基づいたCRPS判定基準の作成指標」、複合性局所疼痛症候群セミナー、
http://www.crps-seminar.com/contents/extract/index.htm(2010年7月27日現在)



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◆関連サイト


・痛みの研究会
http://www.aichi-med-u.ac.jp/itamiken/frame.html
・厚生労働省 慢性の痛みに関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/s1210-5.html
・難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/
・RSDSA: Reflex Sympathetic Dystrophy Syndrome Association
http://www.rsds.org/2/what_is_rsd_crps/index.html



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■新聞記事


朝日新聞 2009年4月18日
http://www.asahi.com/national/update/0418/OSK200904180092.html


*作成:大野真由子
UP: 20100728, 20100805
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