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著作権に関連する新聞記事(2005年〜)

情報・コミュニケーション/と障害者


■作成:植村 要

以下は、著作権についての新聞記事のうち、ユーザーによる著作物の複写に関連するものを中心に収集。
(以下、学術利用を目的として、記事本文を掲載する)

◆『読売新聞』2005.03.04. 「2ちゃんねる」管理者に賠償命令 「無断転載是正の義務」/東京高裁
 対談をインターネットの電子掲示板「2ちゃんねる」に無断転載され、著作権を侵害されたとして、漫画家の北川みゆきさんと小学館が、同掲示板の管理者に 転載の差し止めと300万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3日、東京高裁であった。塚原朋一裁判長は「管理者には、著作権侵害となる書き込みがあ れば、速やかに是正する義務がある」と述べ、転載の差し止めと計120万円の支払いを命じた。
 1審・東京地裁判決は「著作権を侵害したのは書き込みをした発言者で、掲示板の管理者ではない」として、請求を棄却していた。
 無断転載されたのは、2002年4月に小学館から出版された書籍に収められた対談。北川さんの漫画などについて、北川さんと編集者らが語り合っている。
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◆『読売新聞』2005.07.07. WinMX音楽交換 著作権侵害認め初の賠償 レコード会社と和解
 ◆平均48万円、5人支払い
 パソコンに取り込んだ音楽データをファイル交換ソフト「WinMX」を使ってインターネット上に公開し、ほかの音楽データと無料で交換していた男女5人 が、国内のレコード会社5社から「著作権法違反にあたる」と指摘され、会社に賠償金を支払うことで和解が成立したことがわかった。日本レコード協会が6日 発表した。ネット上での音楽の交換で、個人が賠償金を支払うのは日本国内では初めてという。
 同協会は、昨年8月から11月にかけて、同様のソフトで音楽データの交換をしている人を調査し、44人を把握。レコード会社がインターネットのプロバイ ダー会社に対して44人の氏名や住所などの情報開示を求め、これまでに9人を特定した。うち8人に対して損害賠償を求めたところ、5人が著作権の侵害を認 め、1人平均48万円で賠償金を支払うことと、今後は行わないとする誓約書を提出することで和解した。
 同協会は昨年3月から、同様のソフトを利用してインターネット上で音楽を公開しているとみられる人に対して注意を喚起しており、これまでに送付した警告 のメールは700万通を超えているという。
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◆『朝日新聞』2005.08.14. 森井教授のインターネット講座・第307回 身近になった著作権 /徳島県
 個人情報の流出が後を絶ちません。日本を含む世界中の数千万枚のカード情報から、商店や企業が有する数百件、数千件単位の顧客情報まで様々です。公に なっていない事例も少なくありません。銀行口座やカード番号はともかく、氏名、住所、電話番号といった個人情報は、既に漏れている可能性があると考えるほ うが自然なのです。
 個人情報流出が引き起こす最も深刻な問題は、その情報を詐欺などの犯罪に悪用されることです。安全・安心に生活する権利を大きく侵害することになりま す。
 それとは逆に最近、個人が悪意を持たずに、他人の権利を脅かす行為も改めて問題視されています。それは著作権に関する問題です。
 ホームページの作成が一般に広まり始めたころ、無断でタレントの写真やアニメキャラクターなどの画像が掲載され、大きな問題になりました。これは著作権 を侵害する犯罪行為であり、取り締まりや十分な広報の結果、最近では減りました。しかし、新たな著作権侵害にかかわるネット上の問題が起きています。
 ネットオークションやインターネットショップによる、不正コピー商品の販売です。以前から、市販ソフトや映画のDVDなどの違法コピー商品の販売が問題 となり、厳しい取り締まりがされました。
 ネットオークションが一般化し、誰でも簡単に商品購入できるだけでなく、誰もが商品を企画製作、販売できるようになりました。悪意が無くても、著作権法 に違反する物品が販売されているのです。
 例えば、許可無くテレビ番組を録画してDVDにダビングし、売る行為は犯罪です。さらに国内の映画や歌手のDVDで、海外で製作された商品を、国内で販 売すると違法になる場合があります。著作権法を理解する必要があります。このような物品がネットオークションで売られていても、購入しないことも重要で す。魅力ある物品でも、購入は犯罪の加担になるのです。
 (神戸大学工学部電気電子工学科教授 http://www.netwave.or.jp/〜m−morii 森井昌克)
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◆『読売新聞』2005.10.21. 米グーグル構想「ネット図書館」 歴史的試みか、著作権侵害か 出版大手も提訴
 【ニューヨーク=大塚隆一】インターネット検索最大手の米グーグルが進めているネット図書館構想について、米国の出版大手5社が19日、著作権侵害に当 たるとする訴訟をニューヨークの連邦地裁に起こした。
 先月には約8000人のメンバーを擁する米国の作家団体が同様の訴訟を起こしたばかり。ネットと著作権をめぐる新たな問題として波紋を広げそうだ。
 ネット図書館はハーバード、オックスフォードなど米英5大学の図書館の蔵書をスキャナーで読み取って電子化し、ネット上で検索や内容の一部閲覧ができる ようにする構想。グーグルは「読みたい書籍を簡単に見つけることが可能になる歴史的な試み」としている。一方、マグロウヒルなど5社は一民間企業にすぎな いグーグルが膨大な書籍の電子情報を手にすることを警戒。違法コピーされる恐れもあるとして、著作権者から事前に許可を得るべきだと主張してきた。
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◆『読売新聞』2005.11.13. 「ネット図書館」知の覇権争い 米3強、有力施設と連携強化 ◆蔵書を電子化、オンライン検索・閲覧
 人類の知的遺産の集積とも言うべき書籍をめぐり、米国のインターネット企業が激しい争いを始めた。火を付けたのは検索サービス最大手グーグルの「ネット 図書館」づくりだ。世界の図書館の貴重な蔵書がオンラインで手軽に読めるようになる画期的な試みだが、著作権の問題やネットの覇権争いもからみ、様々な波 紋を広げている。(ニューヨーク・大塚隆一、国際部・槙野健) 
 ◆グーグル先行
 今月3日、ネット図書館「グーグル・プリント・ライブラリー」が開館した。ハーバード大図書館をはじめ米英五つの図書館の蔵書などを、グーグルがスキャ ナーで読み取って電子化し、ネット上で検索・閲覧できるようにしたものだ。
 このサイト(print.google.com)で「japan」と打ち込んでみる。すると瞬時に日本関連の本のタイトルが画面に現れた。その数は 300冊近く。現段階では大半が市販書籍だが、図書館の蔵書も電子化が進めば増えていく。
 時代を絞り、例えば「1907年」の出版書籍を調べてみる。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「Kwaidan」(怪談)が出てきた。著作権の切れた こうした蔵書なら、全ページを読むこともできる。
 大学図書館の奥深くに眠る貴重な古書も今後、次々と公開される予定だ。
 ◆ビジネスチャンス
 グーグルは7年前、米スタンフォード大の大学院生だったラリー・ペイジ(当時24歳)、サーゲイ・ブリン(同23歳)の両氏が設立。強力な検索エンジン を武器に次々と新たな分野に進出した。ネット図書館もそんな試みの一つだ。
 その開館に対抗するように「ネットの巨人」たちはあわただしく動いた。まずヤフーが10月3日、独自のネット図書館構想を公表。マイクロソフトも同月 27日、同様の計画を発表し、さらに11月3日には大英図書館と連携することを明らかにした。ハーバード大のネット研究の専門家ジョン・パルフリー氏によ れば、「ネット上の覇権をだれが握るか」をめぐる「3強の争い」だという。
 先行するグーグルを必死に追うのはなぜか。
 ある推計だと、世界には1億7500万のタイトルの本がある。その情報を独占すれば、アクセス数の飛躍的増加が期待できる。そうなれば、今は予想もつか ないビジネスチャンスも生まれそうだ。同氏は、だからこそヤフーとマイクロソフトはグーグルによる「世界の書籍情報の独占」を阻みたいのだと指摘する。
 ◆著作権侵害の懸念も
 約8000人の会員を擁する米国の作家団体は9月、グーグルのネット図書館構想は著作権侵害にあたるとして提訴した。10月には米国の出版大手5社も同 様の訴訟を起こした。
 グーグル側は「著作権で保護されている本は限られたページしか公開しない」としている。しかし、原告側は一民間企業にすぎないグーグルが、著作権者の許 可なしに書籍の内容すべてを電子情報としてため込むこと自体を問題視する。
 パルフリー氏も「マイクロソフトがパソコンの基本ソフトを支配してきたように、グーグルがネット上の『知識』について同様の権力を握ってしまうかもしれ ない。その危惧(きぐ)は現実のものだ」と話す。
 一方で同氏は「訴訟の行方がどうなろうと、書籍情報の電子化の流れは止まらない」とも指摘する。
 ◆様子見の日本
 日本のグーグルやマイクロソフトによると、国内ではネット図書館の具体的な計画は今のところない。最大の理由は、著作権の問題と出版社側の協力体制。マ イクロソフトの日本法人は「クリアすべき法的問題が多い」と指摘する。
 国内の主要図書館も慎重だ。国立国会図書館は、著作権保護期間が終了した明治期の刊行物を電子化してウェブ上で公開しているが、民間との協力については 「国の機関が一部の企業と提携すると、サービスの公平さを欠く可能性がある」と懸念する。東京大学付属図書館もまずは事態の推移を見守る構えだ。
 ◆世界揺さぶる若者2人
 米国のインターネット関連企業は斬新なアイデアを次々と具体化している。
 中でも目立つのはグーグルだ。一番驚いたのは6月から始めた新しい地図サービス「グーグル・アース」だった。世界各地の衛星写真がネット上で手軽に見ら れるようになった。先月、インドの大統領が「テロリストに攻撃目標を提供してしまう」と懸念を表明するなど、こちらもネット図書館と同様に様々な波紋を広 げた。
 世界を揺さぶっているのは、まだ30歳前後の2人が率いる創設7年の企業だ。そこに米国の活力を感じる。(大塚)
 
 〈グーグル〉
 1998年設立。インターネットの新しい検索エンジンを開発し、急成長した。社名の由来は10の100乗を指すgoogol(ゴーゴル)という数学用 語。本社はカリフォルニア州マウンテンビュー。社員は世界で約3000人。
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◆『朝日新聞』2006.04.19. 「ウィニー」問題の背景は 悪用招く高い匿名性 違法コピーの媒介に
 違法コピーの音楽や映画を流通させる温床だと批判されてきたファイル交換ソフト「ウィニー」が、今度はウイルス感染による個人情報や機密データの大量流 出を巻き起こし、社会問題になっている。安倍官房長官が先月、「情報漏れを防ぐ最も確実な対策はウィニーを使わないこと」と名指しで呼びかける前代未聞の 事態にも発展した。利用者や開発者が著作権法違反などの容疑で逮捕されているが、ソフト自体は違法ではなく、技術の先進性を評価する意見もある。問題の本 質はどこにあるのだろうか。(安田朋起)
 テレビの録画や自分で演奏した音楽などのテープをダビングして、友人同士で交換する。こうした現実世界で行われてきた行為を、インターネットを使って不 特定多数の間で実現する道具が「ファイル交換ソフト」だ。
 多数のパソコンを経由してバケツリレーのように情報が伝わる「ピアツーピア」(P2P)と呼ばれる技術が基盤になっている。全体を管理する中央コン ピューター(サーバー)なしで、大量の情報を効率よく流通させられるので、インターネット電話やビデオ会議システムなどにも応用されている。
 海外製が多いなかで、ウィニーは元東大助手の金子勇被告=著作権法違反幇助(ほうじょ)の罪で起訴、公判中=が開発した国産ソフトだ。日本人の利用が大 部分で、ネット上で無料配布された。パソコンでウィニーを起動すると、利用者のパソコン同士で形づくる巨大な「ウィニーネットワーク」に接続する。
 情報セキュリティー会社ネットエージェントは、このウィニーネットワークを監視する。杉浦隆幸社長によると、常用する利用者は30万〜50万人、たまに 使う人をあわせると100万人を超す。コピーも含めると推定2千万個のファイルが存在しているという。
 ファイルは、あちこちの利用者のパソコン内に分散して格納され、その中身やどこに何があるかの情報も暗号化されている。このため、匿名性が高く、実態把 握を難しくしている点が、ウィニーの特徴だ。
 金子被告は著書で、匿名性の意味を「情報の第一発信者を隠すことでプライバシーを保護すること」と記した。ところがウィニーの実態は、ほとんどが違法コ ピーされた映画や音楽、わいせつ画像などのやりとりに使われている。
 ●異色ウイルスで流出
 ウィニーを介した情報流出は、「アンティニー」と呼ばれる暴露ウイルスが起こす。ウィニーでやりとりされるファイルに潜み、感染するとパソコン内部にあ る情報を勝手にウィニーネットワークに送信する。ウイルスとしては技術的に目新しいものではない。
 怪しいファイルは不用意に開かないのが感染防止の基本だが、ウィニーはもともと入手ファイルの出所をわからなくするという特徴を持つ。偽装も巧妙で、利 用者は安易に開いてしまう。アンティニーに感染したパソコンは、国内で約30万台(05年10月現在)と推定されている。
 ウイルス対策ソフトのトレンドマイクロによると、アンティニーは月に2、3種のペースで新種が出現し、これまでに70種以上が確認された。「国産ソフト を狙ったウイルスはおそらく初めて。世界では金銭詐取につながる個人情報をこっそり抜き取るウイルスが増えているが、それに対して情報を暴露して面白がる だけのウイルスは異色の存在だ」という。
 ウイルスに狙われたソフトはふつう、弱点がすぐに修正される。ところが、ウィニーはソフト開発自体が罪に問われており、改良がストップしたままだという 特殊事情がある。
 内閣官房情報セキュリティセンターの山口英補佐官は、「いまウィニーを使うのはかなり危険だ。危険な場所には近寄らないという当たり前の安全感覚を取り 戻してほしい。業務情報の流出は私有パソコンで起きている。本来は、情報の持ち出しを管理すべき企業や行政機関のマネジメントの問題だ」と指摘する。
 報道されている情報流出は氷山の一角にすぎず、中小企業の契約書や大学生の成績一覧なども漏れている。それでもウィニーの利用者は今も増えているとい う。
 ◆技術に期待、開発継続を 慶応大環境情報学部教授・村井純さん
 情報流出はウィニーでなくウイルスが起こしている。ウィニーさえ使わなければよい、という誤解が広がるのを心配している。
 ウィニーの基盤となったP2P方式は、ネットワークの一部が壊れても全体は止まらない、負荷が分散される、といった特徴を備えている。多数のコンピュー ターの余力をあわせ、大きな情報共有能力を引き出すという長所もある。世界中のコンピューターがみんなでひとつの仕事をすることは、インターネットを作っ てきた人たちの長年の夢だ。ウィニーの技術は、その夢の実現に向かっていた。
 ウィニー自体の設計や技術の質はとても高く、個人が開発したものとしては、技術的には十年に1度の優れたソフトだと思う。ただ、不完全な点はまだ少なく ない。
 どんなソフトも、欠点を減らして利点を伸ばすように開発を続けていくのが本来の姿だ。流出した情報がいつまでも残らないようにするなどの修正を加えるこ とはできるはずだ。現在、改良が進められない状態にあるのは残念だ。
 匿名性を問題にする指摘もある。だが、匿名性を確保する技術は、電子投票システムの開発やプライバシー保護に欠かせず、とても重要だ。ただ、著作権侵害 をばれにくくすることを目的とした匿名性は必要ない。
 著作権侵害やウイルス感染の放置は、そもそもやってはいけない行為だ。そうしたことをやめさせるために、道具そのものの使用を禁止するとか、改良しては いけないというのは、望ましい社会のあり方とは思えない。(談)
   *
 55年生まれ。日本のインターネット開発のリーダー的存在。06年2月に金子被告の公判で弁護側証人に立った。
 ◆ソフト自体が危険すぎる 産総研主任研究員・高木浩光さん
 ウィニーが登場した時から、情報セキュリティーの面で突出した危険性を持ったソフトだと分かっていた。その懸念が現実になった。ウィニーネットワークは 消滅すべきものである。
 情報流出を完全になくすことは難しい。だが、強姦(ごうかん)事件の捜査資料のような流出ファイルが拡散することは、人間を介する限り、どこかで良心に もとづく抑止力が働き、一定の範囲内にとどまるものだ。被害者の痛みがわかれば、それをさらにばらまこうとは普通なら思わないからだ。
 実際、4年ほど前に電子メールに寄生する暴露ウイルスが現れたが、流出した情報はメールの受信者だけが持ち、それ以上にはほとんど広がらなかった。
 ところが、ウィニーネットワークの場合、いったんファイルが流出すると、その時点から全世界のだれもが入手できる状態になり、何の抑止力もなく勝手に広 がっていく。完全に削除することは不可能で、取り返しがつかない。
 しかも、自分のパソコンが他の利用者の中継役になったり、格納場所を提供したりする。つまり、知らないうちに利用者全員が、情報拡散の片棒を担いでいる のだ。
 これは、自分の送受信内容をはっきり認識できる従来のファイル交換ソフトにはなかった性質だ。ウィニーは一線を越えている。ただ、ソフトを作る自由があ ることを考えると、法的規制は難しいだろう。まず利用者の倫理観に訴えたい。著作権侵害を意に介さない人でも、強姦被害者情報の二次流出に手を貸したくな いはずではないか。(談)
   *
 67年生まれ。05年新設の産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センターに所属。専門はコンピューターセキュリティー。
■ウィニーをめぐる主な出来事
02年 5月 ウィニー評価版が配布開始
   12月 ウィニー正式版が配布開始
03年 8月 アンティニーが出現
   11月 著作権法違反容疑でウィニー利用者2人を逮捕。ウィニーの改良が止まる
04年 3月 流出機能を持ったアンティニーが出現。京都府警などの捜査情報の流出発覚
    5月 著作権法違反幇助(ほうじょ)容疑でウィニー開発者を逮捕
05年 6月 原発関連資料の流出が発覚
   11月 空港制限区域に入るパスワードなどの流出相次ぐ
06年 2月 海上自衛隊の秘密文書の流出が発覚。捜査資料や個人情報の流出相次ぐ
    3月 安倍官房長官がウィニー使用自粛を呼びかけ。一部のネット接続業者がウィニーによる通信遮断を決定
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◆『朝日新聞』2006.05.12. 書籍検索、日本でも 米グーグル、キーワード→本・ページ一覧
 米ネット検索大手のグーグルは11日、日本で年内にもインターネット経由の書籍検索サービスを始めると発表した。出版社から書籍の提供を受け、消費者が 本の中身をキーワードで検索できる。将来は図書館と提携し、日本で出版されたあらゆる書籍のデータ化も検討する。
 同サービスは04年に米国で始め、その後欧州でも展開。日本でも現在、大手出版社との提携交渉を進めている。
 提携出版社に本を送ってもらい、グーグルが電子データ化して蓄積する。利用者が専用サイト「グーグルブック検索」に言葉を打ち込むと、その言葉を含む本 の一覧が表示される。無料会員になれば、それぞれの本で、その言葉が出てくる個所の前後数ページ分の画像も、パソコン画面上で実物同様に見られる。気に入 れば販売サイトに飛び、ネット経由で実際の本を買える。グーグルは本の販売につながった場合、手数料を受け取る。
 同社は米英の5図書館と提携し、蔵書をデータ化して検索できるようにする「ネット図書館計画」も進めている。米国では出版社などが著作権侵害として問題 視するなど、議論も起こしている。
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◆『朝日新聞』2006.06.16. (けいざい ひと・組織・思想)グーグル網、ネット席巻
 インターネットの世界で今、最も覇権に近いと言われるのが米グーグルです。高度な検索サービスと独自の広告戦略をフルに使い、創業8年足らずで時価総額 は13兆円を超えました。世界中から集まった優秀な技術者に快適な職場環境を与え、彼らが生み出す「便利」「ただ」の革新的サービスで利用者をどんどん引 き寄せています。一方、利用者の情報がものすごい勢いでグーグルのシステムに蓄積されているため、「情報覇権」を警戒する声もあります。(志村亮)
 ●垣根超え議論「技術者天国」
 中庭で上半身裸の若者たちが歓声をあげながらバレーボールに興じていた。ガラス張りのビルの周囲は、手入れの行き届いた芝生。受付では、愛犬をひざの上 に載せた女性が笑顔で迎える。米カリフォルニア州のマウンテンビューにあるグーグル本社は、開放感にあふれていた。
 グーグルの始まりは、米スタンフォード大大学院でコンピューター科学を専攻したサーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ両氏が95年に学内で始めた実験だっ た。社名は「10の100乗」を意味する「グーゴル」のもじりだ。
 検索サイトでは、利用者が求める情報ほど上位に表示されないと意味がない。この優先順位の基準として、グーグルは、それぞれのサイトが他のサイトで紹介 される「リンク」の数の多さに注目した。リンクの多寡を瞬時に把握する技術は、素早さと正確さで利用者の支持を得た。
 2人は今も技術者として黙々と研究を続ける。彼らを慕って世界中から集まった社員は約7千人。毎日寄せられる入社希望は1500通にもなる。
 ここの働き方も独特だ。仕事はプロジェクトごとに4〜5人のチームで進める。自由参加の技術発表会が週2、3回あり、成果だけでなく、直面する難題など も発表される。これがチームの垣根を超えた議論を生む。
 社員は四半期ごとの目標を定める。サイトの閲覧数など数値目標が含まれ、実績は社内ネットで互いに見られる。徳生健太郎プロダクトマネジャー(37)は いう。「発表会は学会のよう。技術者には最高の職場環境で、同僚とは転職する先がないね、とよく話す」
 ●クリック一発、世界中検索
 「あなたにぴったりの恋人を、世界中から瞬時に探します」
 4月1日、グーグルのウェブサイトに新サービス「グーグル・ロマンス」が加わった――。エープリルフールの冗談だったが、結婚紹介サイトの幹部たちは笑 えなかった。「グーグルに無料で参入されたら大変だ」
 書店や出版社は現に脅威にさらされている。「図書館プロジェクト」。米国の五つの大学図書館などの蔵書の内容を検索できるようにする計画で、04年10 月から始まった。すでに一部は使え、絶版になった本でもすぐに読める。だが、「本が売れなくなる」という出版業界は著作権侵害だと批判している。
 「何でも検索してやろう」というグーグルのサービスはニュース、動画、地図などに広がってきた。しかも、ほとんどは無料。05年の売上高は61億ドル (約6900億円)だが、99%を広告収入で賄っているからだ。
 2種類ある広告のうち、「アドワーズ」は利用者が検索で入力したキーワードに連動して出る文字広告。掲載順位を入札で決める。もうひとつが、サイトの テーマなどを自動分析して関連深い広告を張り付ける「アドセンス」だ。
 検索内容から利用者の関心分野を割り出し、興味をそそる広告を狙い撃ちで出す=図。高度な検索機能は、広告主が最も探したい「隠れたお客」を見つける武 器だ。
 システムの作りもユニークで、無料の基本ソフト「リナックス」を使う1台10万円ほどの普通のパソコンを数十万台つないでいる。安上がりなうえ、一部が 故障してもシステム全体が止まるのを防げる。
 ●蓄積情報、プライバシー侵害警戒も
 「世界中の情報を体系化し、すぐ使えるようにする」という目標に突き進むグーグルに、「世の中のデータはすべてグーグルのサーバーに蓄積される」「グー グルに依存しないと誰も仕事や生活ができなくなる」との懸念も出始めた。例えばメールサービスの「Gmail」。新聞約6年分に相当する2ギガバイトとい う大量のデータを無料でやりとりできるが、内容は自動解析され、利用者に広告が配信される。その過程に人間は全く介在しないが、「プライバシーの侵害」を 警戒する人もいる。
 グーグルは04年8月に株式上場した。買収される可能性もゼロではない。今の経営陣に高い倫理観があっても、蓄積が続く膨大な個人情報を将来、誰が支配 するのか不透明な面がある。
 ◆「信頼欠かせず」「安全性を重視」
 グーグルの個人情報「支配」への懸念について、2人の創業者はこう語った。
 ペイジ氏 ブランド力のあるネット企業ほど、個人情報の扱いには慎重だ。情報を悪用すれば、必ず経済的な打撃を被るからだ。僕らには利用者の信頼が欠か せない。心配なのは、ブランド力のない企業が多くの個人データを集めることだ。
 ブリン氏 「Gmail」は非常に個人的な情報を扱うので、セキュリティーを重視した。個人情報を扱うのが問題なら、ヤフーなどのメールサービスも同 じ。グーグル特有の問題ではない。
 ◆競争相手育成、脅威には有効
 グーグルが先導するネット社会の可能性を描いた「ウェブ進化論」の著者、梅田望夫(もちお)氏の話 いま、日本で起こっている「グーグル脅威論」の大半 は「出るクイは打つ」のたぐいの批判だ。いくら「暴走」を恐れても、彼らは止まらない。有効な策は、対抗できる競争相手を育てることだけだ。米国では公開 前にグーグルに投資して稼いだベンチャーキャピタルたちが「第2のグーグル」を育てようと巨額の投資を始めている。
 ◆若い才能、活用必要(視点)
 グーグルの社員たちはネット技術の進化が世界をよくすると真剣に信じている。ただ、天才科学者が作ったロボットが意思を持ち、世界を支配する、といった 古典SFめいた不安もある。グーグルを分析した「ウェブ進化論」の著者、梅田望夫さんは「彼らを止めたいなら、競争相手を育てるしかない」という。生み出 すものが便利である以上、やみくもな「脅威論」は無意味だ。若い才能が入社を熱望する企業が、日本にどれだけあるか。そのあたりから問題を考える必要があ る。
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◆『読売新聞』2006.06.21. [News Review]今週のZOOM UP「ウィニー」
 ◇Pop Style Vol.11
 ◆相次ぐ情報流出 対策「使わない」だけ?
 「インテル、入ってる」というキャッチコピーがありますが、パソコンに「ウィニー、入ってる」だけでもう大騒ぎです。警察の捜査資料、防衛庁の秘密文 書、原発の業務資料、企業の顧客情報……。よくこれだけ漏れるものだと変に感心したくなるくらい、ウィニー(Winny)による情報流出が連日、世間を騒 がせています。
 ウィニーは、インターネット上のパソコン同士で、情報やソフトを自由にやりとりできる「ファイル交換ソフト」です。利用者は国内で数十万人と言われ、 データが暗号化されて発信者が特定されにくいため、不正コピーされた映像や音楽、ゲームなどのデータが大量に出回っているのが実態です。
 こうした不正データにはしばしば悪質な「暴露ウイルス」が仕掛けられており、“お宝”ファイルをゲットしたと喜んでクリックしたら一発感染、知らないう ちに自分のパソコンデータがだだ漏れ、というケースが後を絶たないのです。
 米カリフォルニア州在住のエンジニア・鵜飼裕司さんが開発したウィニーの分析ソフトは、暗号を解読して特定のファイルを所有するパソコンを突き止めるこ とができるというものです。過去にウィニーで映画やゲームを不正送信し、著作権侵害で摘発された例もあることから、心中穏やかじゃない利用者もいることで しょう。
 しかし、「ウィニー怖い」「ウィニー危ない」の合唱には、ちょっと首をかしげたくなります。ファイル交換ソフトの仕組み自体は、インターネットの未来を 切り開く可能性を持つ重要な技術だからです。安倍官房長官は「(情報漏えいの対策は)ウィニーを使わないこと」と言いましたが、正論すぎて「交通事故を起 こさないためにはクルマに乗るな」と同じに聞こえます。それより、例えば自作の音楽や映像作品を公開するなど、こうしたソフトを正しく使いこなす「ネット 民度」を育てることが大事ではないでしょうか。(福田淳)
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◆『読売新聞』2006.09.26. ネット上に曲公開 接続業者に氏名の開示命令/東京地裁
 ファイル交換ソフト「WinMX」を使ってヒット曲の音楽データをインターネット上に公開され、著作権を侵害されたとして、大手レコード会社14社が、 ソフトバンク系の「BBテクノロジー」などプロバイダー(インターネット接続業者)3社に、曲を公開した19人の住所と氏名を開示するよう求めた訴訟の判 決が25日、東京地裁であった。荒井勉裁判長は「著作権侵害は明らかで、レコード会社が損害賠償などを請求するために開示は必要」と述べ、開示するよう命 じた。
 同様の判決はこれまでにも出ているが、大手レコード会社が連帯して訴訟を起こしたのは初めて。
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◆『朝日新聞』2006.11.27. (ウェブが変える ネットの向こう:中)動画投稿サイト 著作権問題残し膨張
 徳島県で内装店を営む小原敏秀さん(49)は、室内模型飛行機の愛好家。1円玉より軽い0・88グラムという超小型機を6月、完成させた。
 成功かどうかは飛ぶ雄姿さえ見せればすぐ分かる。
 知り合いから薦められたのが、動画投稿サイト。地元の体育館の中で阿波踊りの音楽に合わせて旋回する姿をビデオ撮影し、その映像をサイトに投稿した。
 直後から「日本一軽い」という評判がネットを駆けめぐった。小原さんは、超小型機の作り方を自分のホームページで公開するが、「動画は専用サイトがい い。長い時間の録画が扱え、動きも途切れずスムーズ」と話す。
 ●毎日6万5000件
 このサイトが米国の「YouTube(ユーチューブ)」だ。誰でも無料で閲覧でき、簡単な登録をすれば、投稿を始められる。昨年2月に設立。閲覧件数は 早くも毎日1億回、投稿も毎日6万5千件あるという。
 画面は英語で構成されているが、日本語を使った検索も使える。歌手やお笑い芸人の名で探すと、閲覧可能な動画が一覧となって並ぶ。日本から閲覧する総時 間は、米国に匹敵するという調査もある。
 ユーチューブは、膨大なデータを蓄積、送信するために、巨大なコンピューター群と、維持費だけで毎月100万ドル(約1億2千万円)を超える通信回線を 持つという。チャド・ハーリー最高経営責任者は7月、猛烈な勢いで利用者を集められた理由を「きちんと動く動画配信の仕組みを作ったこと」と語っている。
 映像ジャーナリストの神田敏晶さんは「テレビ局が発信し、視聴者は見るだけという一方通行とは違う。一人ひとりが情報の発信者と受信者を兼ねる点が新し い」と解説する。
 投稿映像は自分で撮影したものだけではない。テレビ番組やDVD映像を切り取った映像も多く、著作権侵害という問題を抱える。
 ユーチューブは10月、日本音楽著作権協会や国内テレビ局の要請を受け、約3万件もの映像を削除した。だが、勝手な投稿は繰り返され、いたちごっこが続 く。
 著作権問題を回避する仕組みを使うのがフジテレビラボが運営する動画投稿サイト「ワッチミー!TV」だ。映像は1万以上。時澤正社長は「発信者の直接配 信ではなく、運営側が著作権チェックをしてから公開する仕組みにした」。
 ●TV局も利用
 NTTやネット広告会社といった異業種も、新たな動画投稿サイトを次々と立ち上げている。
 積極的に利用するテレビ局もある。東京メトロポリタンテレビジョンは週1回、ネット情報を紹介する番組を放送直後からユーチューブに投稿。海外在住者を 含め約2万人が見る。「一ローカル局の名を全国に広く知ってもらえた。しかも宣伝費はほとんどかかっていない」と同社の木庭民夫編成部長は話す。米国でも NBCなどのテレビ局が同様の動きをしている。
 ユーチューブはまだ、収益を得る仕組みができていない。博報堂DYメディアパートナーズの中村博メディア環境研究所長は「ブームは、ビジネスになるかも しれないという思惑が先行しているだけでは」とみる。
 ネットの向こうに集まる映像はいっそう増え、ネットの海に浮遊する。
 「だいじょうブイ」
 20年ほど前、日本の茶の間に笑顔で語りかけた映画俳優、アーノルド・シュワルツェネッガーのCMをユーチューブで見ることができる。カップめんをす すったり、ドリンク剤で変身したりした米カリフォルニア州知事の姿にいま、米国人が驚いているという。
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◆『読売新聞』2006.12.12. ウィニー著作権法違反ほう助事件、あす判決 開発者の意図が争点=特集
 ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を開発、インターネットで公開し、ゲームソフトなどの違法コピーを手助けしたとして、著作権法違反(公衆 送信権の侵害)ほう助罪に問われた元東京大大学院助手金子勇被告(36)(求刑・懲役1年)の判決が13日、京都地裁で言い渡される。最大の争点は、「技 術的な実験として開発・公開しただけ」と、無罪を主張する金子被告に、著作権侵害を助長する意図があったかどうかだ。1日40万人以上の利用者がいるとさ れ、ネット社会に変革をもたらす一方、ウイルスの感染により、個人情報や政府、警察などの機密データの大量流出が深刻な社会問題になったウィニー。全国で 初めて、ソフトの開発・公開行為が刑事責任に問われたウィニー事件の司法判断が注目される。
 ◆違法利用どう認識 
 ■真っ向対立■
 「著作権などの従来の概念がすでに崩れ始めている。将来的には今とは別の概念が必要になる」
 金子被告は、ウィニーを開発する過程で、ネット掲示板にこう記したという。
 ネット上の著作権保護のあり方に疑問を抱いた天才プログラマーが、著作権法への挑戦のため、確信犯的に匿名性を高めたソフトの開発に乗り出し、ネット上 で不特定多数の利用者に配布した――。これが公判で検察側が描いた構図だ。
 これに対し、弁護側は、開発は「効率性の高いソフトを独自に求めただけ」とし、配布は「運用の可能性を探るため」と、開発研究の一環だったと主張した。
 ほう助の解釈についても議論が繰り広げられた。検察側は、著作物のファイルを摘発されずに入手できるソフトを待望する掲示板の書き込みに応える形で、金 子被告が〈開発宣言〉を行った経緯を強調。「ウィニーで送受信されているファイルのほとんどが著作物」「被告人は著作権侵害に利用されていることを十分に 認識していた」とした。
 一方、弁護側は「ウィニーを使って米映画やゲームソフトを不特定多数に送信できるようにした正犯とは面識はないし、連絡もない」と反論。「違法利用の可 能性をもってほう助が問われるなら、文書偽造に使われる可能性のあるコピー機や、人の殺傷の可能性のある包丁の製造・販売などにまで広がる。ほう助罪の適 用は乱暴」と真っ向から対立している。
 ファイル交換ソフトの開発者や提供者が、著作権侵害に絡んで刑事責任を問われた例は海外でも珍しく、台湾と韓国に3例あるだけ。いずれも音楽ファイルを 交換するソフトが問題となり、それぞれ〈1〉違法利用を認識していたか〈2〉違法利用の防止措置を施したか〈3〉著作権侵害をほう助する故意性がみられる か――を軸に検討された。うち台湾と韓国の各1件は「違法利用の認識だけでは著作権侵害のほう助にならない」と無罪、台湾の残る1件は「著作権侵害の予見 性があった」と有罪とし、判断が分かれている。
 ■被害■
 わずか6時間で約100億円――。コンピュータソフトウェア著作権協会と日本音楽著作権協会が推計した、ウィニーによるパソコンソフトや音楽ファイルな どの著作権侵害の被害総額だ。「著作物を無断で送信したり、送信できるようにしたりすることは違反行為」と呼びかけるが、実際は“焼け石に水”だ
 最近までウィニーを利用していたという京都市内の男性会社員(41)は「CDが無料でコピーできて、封切り直後の映画が鑑賞できる便利さからほぼ毎日、 使っていた。知人も利用していて、罪の意識は全くなかった」と振り返る。
 ネットワークセキュリティー会社「ネットエージェント」(東京)の調査によると、ウィニーの利用の9割以上が映画やゲームソフトの違法コピーのやりとり に使われている。同社の杉浦隆幸社長は「利用者の大半は、著作権侵害の認識さえないだろう。欲しいものがすぐ手に入る手軽さが、モラルハザードを生んでい る」と警鐘を鳴らす。
 ウィニーには、もう一つ問題がある。「暴露」機能を持つウイルスに感染することによる情報の流出だ。自衛隊や原発、警察などの内部資料が相次ぎネットに 流れ、社会問題化した。
 いったん漏れた情報は半永久的にネット上を漂い、回収不能になる。性犯罪被害者の個人情報やわいせつ画像などが不特定多数の目に触れ続けてしまうのだ。
 産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター(東京)の高木浩光主任研究員は「最大の問題は、誰もが知らない間に漏洩(ろうえい)の橋渡しをし、他 人を傷つけてしまう恐れがあること。これほど危険なソフトは世界に類がない」と訴える。
 政府は今年3月、国民にウィニーの利用自粛を要請。総務省は情報流出対策として07年度概算要求で16億円を新たに計上し、内閣官房情報セキュリティセ ンターは、大学などと協力して情報流出を防ぐソフトの開発に着手した。企業も法人向けにウィニーの自動削除ソフトを販売したり、情報流出の規模や経路を調 べるサービスをスタートしたりと、「ウィニービジネス」につなげている。
 ◆新たな規制、動き加速も 
 ■影響■
 判決がもたらす影響は大きい。
 「無罪ならば著作権法改正への動きが加速する。有罪なら、違法利用への警告になるが、同時に研究・開発分野が委縮することもありうる」。宮脇正晴・立命 館大法学部助教授(知的財産法)はこう分析する。「混乱を避けるためにも、裁判所は開発・提供行為のどこが違法で、どこが適法か、明確な物差しを示すべき だ」と注文をつける。
 実際、ソフト開発者からは、技術開発の停滞を懸念する声が上がっている。プログラマーや金子被告の支援者らでつくる「ソフトウェア技術者連盟」の新井俊 一理事長は「間違った使い方をした一部ユーザーの責任まで開発者が負うことになれば、怖くてソフトを作れない」と強調する。
 一方、著作権法も変革を迫られている。ネット上の違法コピー横行を受け、文部科学省は、現行法では条件付きで認められている私的利用目的のダウンロード の新たな制限や、侵害目的でツールを提供した者の法的責任追及など、規制導入が必要かどうかを検討し始めた。担当の著作権課は「慎重な議論が必要。判決を 見守りたい」とする。
 裁判の行方とは別に、ウィニーで使われた「P2P技術」は、新たな展開を見せている。個人パソコンが補完しあって効率的なネットワークを構築する点で、 災害時の緊急情報伝達システムなどへの応用が期待されているためだ。
 総務省は今年11月、学識経験者らと作業部会を設け、P2Pの可能性を探り始めた。同省データ通信課の大橋秀行課長は「ウィニーの技術は、いわば毒を持 つフグの料理。上手に“解毒”すれば有益になる。この技術を生かし、ネットワークビジネスの分野で日本がどう主導権を取るかを考える段階に入る」と〈ウィ ニー以後〉を見据える
 ◆ウィニーとは 
 個々のパソコンに保存された音声、画像などのファイルをインターネットを通じて検索、交換する「ファイル交換ソフト」の一つ。サーバーを介さず、ネット ワークに接続したパソコン同士で情報をやりとりする「P2P(ピア・ツー・ピア)」の技術を利用している。
 ウィニーを起動させ、ファイル名などをキーワードで検索すると、該当一覧が画面に表示される。好きなファイルを選んでクリックすると、自動的にパソコン にダウンロードされ、無償で手に入る。ファイルは第三者のパソコンを経由、バケツリレー方式で転送されるため、ファイルの持ち主は特定されない。
 さらに中継したパソコンにも、ファイルの複製が蓄積される。結果的にネットワーク上にファイルがばらまかれ、以降の検索の効率が高まる仕組み。
 匿名性の高さ、データ受信速度の速さがネット掲示板で評判になり、雑誌などで取り上げられた結果、利用者が爆発的に広がった。
 
 〈ウィニー事件〉
 2003年11月、米映画やゲームソフトをネット上に公開したウィニー利用者2人が著作権法違反(公衆送信権の侵害)容疑で京都府警に逮捕(その後、有 罪確定)された。金子被告は、同ほう助容疑で04年5月に逮捕、起訴された。
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◆『朝日新聞』2006.12.13. ウィニー裁判 判決理由<要旨>
 ファイル交換ソフト「ウィニー」の開発・公開をめぐる事件の判決理由の要旨は以下の通り。
 ●被告の行為と認識
 被告が開発、公開したウィニー2が、実行行為の手段を提供して、匿名性があることで精神的にも容易ならしめた客観的側面は明らかだ。
 ウィニー2はセンターサーバーを必要としない技術の一つとしてさまざまな分野に応用可能で有意義なものだ。技術自体は価値中立的であり、価値中立的技術 を提供することが犯罪となりかねないような、無限定な幇助(ほうじょ)犯の成立範囲の拡大も妥当でない。
 結局、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様に よる。
 捜査段階の供述やメール内容、匿名サイトでウィニーを公開していたことからすれば、被告は、ウィニーが一般の人に広がることを重視し、著作権を侵害する 態様で広く利用されている現状を十分認識していた。
 そうした利用が広がることで既存とは異なるビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーを開発、公開しており、公然と行えることでもないとの意識も あった。
 ただ、ウィニーによって著作権侵害がネット上に蔓延することを積極的に企図したとまでは認められない。
 ●幇助の成否
 ネット上でウィニーなどでやりとりされるファイルのうち、かなりの部分が著作権の対象となり、こうしたファイル共有ソフトが著作権を侵害する態様で広く 利用されている。
 ウィニーが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていたという現実の下、被告は、新しいビジネスモデルが生まれることも期待 し、ウィニーが利用されることを認容しながら、ウィニーの最新版をホームページに公開して不特定多数が入手できるようにした。
 これらを利用して正犯者が匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを一つの契機とし、公衆送信権侵害の実行行為に及んだことが認められる のであるから、被告がソフトを公開して不特定多数の者が入手できるよう提供した行為は幇助犯を構成する。
 ●量刑の理由
 被告は、ウィニーを利用する者の多くが著作権者の承諾を得ないで著作物ファイルのやりとりをし、著作権者の利益を侵害するであろうことを明確に認識して いたにもかかわらず、ウィニーの公開、提供を継続した。
 このような被告の行為は、社会に生じる弊害を十分知りつつも、あえて自己の欲するまま行為に及んだもので、独善的かつ無責任な態度といえ、非難は免れな い。
 また、正犯者らが著作権法違反の各実行行為に及ぶ際、ウィニーが、重要かつ不可欠な役割を果たした▽ウィニーネットワークにデータが流出すれば回収など も著しく困難▽ウィニー利用者が相当多数いること、などから、被告の行為が、各著作権者が有する公衆送信権に与えた影響の程度も相当大きく、正犯者らの行 為によって生じた結果に対する被告の寄与の程度も決して少なくない。
 もっとも被告は、ネット上における著作物のやりとりに関して、著作権侵害の状態をことさら生じさせることを企図していたわけではない。著作権制度が維持 されるためにはネット上における新たなビジネスモデルを構築する必要性、可能性があることを技術者の立場として視野に入れながら、自己のプログラマーとし ての新しい技術の開発という目的も持ちつつ、ウィニーの開発、公開を行っていたという側面もある。
 被告は、本件によって経済的利益を得ようとしていたものではなく、実際、直接経済的利益を得たとも認められない。
 以上、被告に有利、不利な事情を総合考慮して、罰金刑が相当。
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◆『読売新聞』2006.12.13. ウィニー裁判 「もろ刃」のソフト、技術者モラル問う(解説)
 無秩序な著作権侵害を引き起こしたファイル交換ソフトをつくったプログラマーを有罪とした京都地裁判決は、ソフト開発者のモラル欠如を厳しく指摘した。
 ウィニー自体は、様々な分野で応用可能な画期的なソフトと評価されている。使い方次第では合法にも違法にも利用できるもろ刃の剣だ。被告は、ソフトを開 発・公開しただけで、悪用した実行犯とは何の面識もなかった。しかし、判決は、被告がやり取りしたメールの内容や、ソフトを匿名サイトで公開したことなど から、違法状態が広がることを認識していたと認定した。
 開発者の責任を断罪しても、大量の違法コピーはウィニーのネットワークに氾濫(はんらん)したままで、著作権侵害の被害は6時間に100億円規模とも推 計される。
 宮脇正晴・立命館大助教授(知的財産法)は「判決は秩序を乱すような公開方法を戒めた。開発者は公開後の影響を十分に考慮する必要がある」と指摘する。
 ネット時代の急速な技術開発に伴い、個人がデジタルデータを簡単に大量複製できる時代となった。しかし、現行の著作権法では、私的利用を規制する有効な 手段はない。実情に即した法の見直しが急がれると同時に、技術者には高い倫理観が求められる。(京都総局 滝川昇)
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◆『読売新聞』2006.12.14. [社説]ウィニー判決 技術者のモラルが裁かれた
 技術者のモラルを重く見た判断と言えるだろう。
 ファイル交換ソフト「ウィニー」を開発した元東京大大学院助手に対し、京都地裁が罰金150万円(求刑・懲役1年)の有罪判決を言い渡した。
 ウィニーは、インターネットにつながったパソコン同士でデータを簡単にやり取りできるようにする。通常のデータ交換なら問題ないが、専ら違法コピーした 映画や音楽の交換に悪用されている。
 元助手は、ウィニーの開発で、こうした著作権の侵害を助長したとして、著作権法違反ほう助罪に問われていた。
 技術には必ず「明と暗」がある。包丁を例に取ると、料理の道具なら「明」だが、凶器に使われれば「暗」になる。
 判決はウィニーの「暗」の面を問い、使い方次第で社会に害をもたらすことを元助手は十分に理解していた、と認定した。にもかかわらず、開発と改良を続け ネット上で不特定多数に無償提供し、著作権侵害を引き起こしたと断じた。
 技術開発に当たって技術者は「暗」の側面を自覚する必要がある、というメッセージだろう。ウィニーに限らない。科学技術の研究開発に携わる者にとって共 通に求められるモラルだ。
 ウィニーは、交換するデータを、複数のパソコンがリレーしながら運ぶ。最初にデータを発信したパソコンは分からない。この匿名性が著作権侵害を後押しし たとされる。悪用される危険性を伴うソフトであることは否定できない。
 しかも、ウィニーを標的にしたウイルスソフトを何者かが開発した。感染すると、パソコン内のデータを勝手に流出させる。全国で流出事件が多発し、今も被 害が後を絶たない。依然として40万人以上とされるウィニーの利用者は、危険性を自覚すべきだ。
 元助手は、ウィニー開発について、摘発される以前から、ネット上で音楽や映像がやり取りされる時代のビジネスモデルを模索する意義を強調していた。
 一昨年の春、元助手が京都府警に逮捕されて以来の動きは急だ。ネットを使った音楽配信は日常的になり、映像配信も急速に広がっている。ウィニーと似たソ フトを使ったビジネスも出現した。
 判決も認めている通り、有用な技術だからだ。一部のコンピューターにデータを蓄積して提供する必要がなく、通信量の分散に役立つ。新ビジネスはファイル を違法コピーされない仕組みも加え、利便性と著作権保護を両立させている。
 今回の判決で技術者が委縮するという指摘もある。だが、同種ソフトの開発は止まっていない。心配は無用だろう。
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◆『読売新聞』2006.12.14. ウィニー判決 違法コピー、情報流出…被害止まらない 対応追いつけず
 ◆利用40万人超
 ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の開発者で、著作権法違反(公衆送信権の侵害)ほう助罪に問われた元東京大大学院助手金子勇被告(36) に対し、京都地裁は有罪を言い渡した。ソフトの開発・公開行為に対する初の断罪に、ソフト開発業界には波紋が広がった。一方、違法コピーの氾濫(はんら ん)やウイルス感染による情報の大量流出など、ウィニーを巡る問題は解決から程遠く、法整備の必要性を指摘する声もある。(東京社会部、京都総局)
 ■「監視続ける」
 「ウィニーを介して著作権者が損害を受けている実態は変わらない。利用者への監視は続けていかなければならない」。有罪判決後、日本音楽著作権協会(東 京都)はこうコメントした。「東映」の坂上順・常務取締役も、映画業界でもファイル交換ソフトによる被害が続いているとし、「『コピーフリー』(無料でだ れでもコピーできる)を受け入れることは、映画文化の衰弱を招く」と訴える。
 ウィニー事件で、米映画やゲームソフトのコピーをネットワークに公開し、誰でも入手できる状態にした実行犯の行為は、著作権法に定めた公衆送信権の侵害 にあたるとされた。
 文化庁によると、公衆送信権には、ネットに接続しているサーバーに著作物を記録、入力するなど自動的に送信可能な状態に置く権利も含んでいる。世界知的 所有権機関(WIPO)が96年に採択した国際条約に合わせて定められた。
 その一方、現行法は著作物の個人利用を条件付きで認めている。だが一般家庭のブロードバンド化が進み、個人が著作物のコピーをデジタルデータで短時間に 大量に送受信する事態には対応できておらず、見直しが必要とする声もある。
 金子被告の弁護団も判決後の会見で、著作権をめぐる状況について、「保護ばかりに目が行き、前向きな議論になっていない」と指摘。「ネット社会で流通す る著作物に対しても、適正な課金システムを作るなど、技術の進歩と著作権保護の調和を図るべきだ」と強調した。
 文化庁は「デジタルデータのコピーに対し、新たな規制を設けても、何の解決にもならない」と法改正には慎重な姿勢。だが宮脇正晴・立命館大法学部助教授 (知的財産法)は「現行法は、個人が音楽ファイルを1万曲ダウンロードできるような事態を想定しておらず、新たな規制も検討すべきだ。違法コピーを禁止す るだけでなく、著作権者に対価が支払われるシステム整備についても議論が必要だ」と指摘する。
 ■防衛庁 甘い管理
 防衛庁では今年2月、海上自衛隊の護衛艦「あさゆき」の乗員が、秘密文書を含む大量の資料をウィニー経由で流出させたことが発覚したのをはじめ、同庁公 表分だけで、陸海空自で6件の流出が判明。情報管理の甘さが露呈した。
 全隊員対象の調査の結果、業務で使ったことのある私有パソコン約80台にウィニーをインストールしていたことが判明。すべてを削除させたはずだった。
 しかし11月、空自と陸自で新たな流出が発生。このうち空自隊員は、今年3〜8月に派遣されていた中東・カタールで、私用パソコンを職場に無許可で持ち 込み、外付けハードディスクに業務用データを保存。これをウィニー入りのパソコンにつないだ結果、流出したとみられている。
 度重なる流出にも、防衛庁は「ウィニーを私的に使うことまで禁止はできない」という立場。その一方で報道がない限り、流出の事実も処分も公表しないとい う姿勢が、隊員のウィニー使用にストップをかけられない一因との批判もある。
 一方、政府は約6億円をかけて情報流出対策ソフトの開発に取り組んでいる。
 パソコンの情報のやり取りなどを常時監視し、異常があればパソコンの動きを一部制限する仕組みのソフトで、大学や企業の研究者らで構成する開発チームが 今年度中に試作品を完成させ、07年度にテストを始める。政府機関だけでなく、将来的には民間企業にもソフト利用を認める方針だ。
 しかしウィニーの利用者は依然として多い。ネットワークセキュリティー会社「ネットエージェント」の今月の調査では、平日で約40万人、休日で約45万 人がウィニーを利用している。
 
 ◆金子被告が控訴
 金子被告は13日、罰金150万円の京都地裁判決を不服として、大阪高裁に即日控訴した。
        ◇
 ◆プログラマー戦々恐々 誰かが悪用すれば罪に…
 ウィニーは、サーバーを介さず個人パソコン間で情報をやりとりする「P2P(ピア・ツー・ピア)」の技術を応用、使用者が特定されにくい匿名性と情報伝 達の効率性を兼ね備えたファイル交換ソフトだ。開発された当時、「世界最先端の技術」(ソフトウェア技術者連盟)と絶賛された。
 プログラマーとしての金子被告の評価は高い。民間企業から東大大学院助手にスカウトされ、「スーパープログラマー」を育てる人材育成課程の講義を担当し た。それだけに、有罪判決はソフト開発業界に重くのしかかる。
 プログラマーや金子被告の支援者らでつくる「ソフトウェア技術者連盟」の新井俊一理事長(28)は「米国のソフトウエア業界では、動画を共有するソフト が主流になってきているが、こうした技術発展が日本では不可能になってしまう」と危機感を募らせる。
 千葉県市川市のプログラマー、佐野義彰さん(31)も「ソフトは、開発段階で多くのユーザーに提供し、声を聞きながら手を加え、完全版をつくるプロセス が主流。誰かが悪用すれば、開発者の罪になってしまうのでは、自由に作れなくなる」と訴える。
 教育研究分野への影響も少なくない。情報社会に関する研究機関「国際大学グローバル コミュニケーション センター」(東京都)の客員研究員、山根信二 さん(37)は「匿名化技術を研究しているが、法に触れないかどうか、不安を訴える学生も多く『ソフトは海外で発表しなさい』と言っている」と言う。
 「素晴らしいソフトを作った技術者が日本では罪に問われる。教師も自信を持って学生らを応援できなくなる」と、山根さんは心配する。
        ◇
 ●ネット社会の未熟さ露呈
 「封切り前の映画が手に入った。しかもタダ。すごいソフトだよ、ウィニーは」――。この事件を取材中、友人から聞いた話だ。
 ウィニーが広まった理由はこの言葉に尽きる。大量のデジタルデータが手軽に入手できる画期的なシステムは、一方で、深刻な著作権侵害を生んだ。ウィニー が事件に発展したこと自体、我が国のネット社会の未熟さを露呈させたとも言える。ネットで享受できる文化的要素は大きい。法整備に向けた議論とともに、利 用者のモラル向上と著作権保護を充実させることも必要だ。(京都総局 滝川昇)

 〈公衆送信権〉
 著作権者だけが、著作物を不特定多数に向けて送信できる権利。インターネットの急速な普及に対応するため、1997年の法改正で盛り込まれた。違反者に は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金の刑事罰が定められている。
 
 ◇ウィニーによる情報流出の経緯
2002年 5月 ウィニー評価版の公開
     12月 ウィニー正式版の公開
  03年 8月 ウィニー経由で情報流出を起こすウイルスが出現
  04年 3月 京都府警や北海道警で捜査資料などの流出が発覚
      4月 陸上自衛隊の隊員名簿や訓練計画などの流出が発覚
      5月 京都府警が金子被告を逮捕
  05年 7月 経産省原子力安全・保安院の原発検査要領書などの流出が発覚
     12月 国内16空港の制限区域に入る暗証番号などの流出が発覚
  06年 2月 滋賀刑務所や福岡拘置所の受刑者個人情報、海上自衛隊の護衛艦関連の秘密文書流出が発覚
      3月 岡山県警や愛媛県警の捜査資料などの流出が発覚
         安倍官房長官(当時)が国民にウィニー利用自粛を要請
      5月 内閣官房情報セキュリティセンターが情報漏えい防止機能を持つソフト開発を決定
      8月 富山県高岡市の精神疾患患者の個人情報流出が発覚
     10月 高知医療センターの患者情報の流出が発覚
     11月 航空自衛隊の警備訓練データやイラク駐留多国籍軍関連情報の流出が発覚
     12月 金子被告に1審有罪判決
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◆『朝日新聞』2007.01.06. 著作権の許諾不要に ネット検索業者育成 米国並みに法改正へ
 米グーグルや米ヤフーのようなインターネット検索ビジネスを日本の事業者ができるように、日本でも著作権者の許諾なしに著作物のキーワードや索引の編 集・利用が認められる見通しになった。政府の知的財産戦略本部(本部長・安倍首相)と経済産業省が著作権法の年内改正をめざす方針を固めた。データを蓄積 する「心臓部分」の検索サーバーを日本国内に置けない現状を改め、政府が進める「次世代ネット検索」の技術を生かして将来、日本に有力な検索事業者を育て ようという狙いだ。(平野春木)
 ネット検索用のデータベースを作るには、文章や画像などの著作物のデータの一部を複製(コピー)し、検索しやすいキーワードや索引を設ける編集作業をす る必要があるが、日本では著作権者の許諾なしにそれが認められていなかった。改正では、著作権法で許諾を得ずに複製や編集が認められる例外項目に「検索の ための複製や編集」を盛り込む方針。例外項目として他に「個人や家庭内での私的使用」「図書館などの公衆利用」などが認められている。
 22日の知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会(会長・牛尾治朗ウシオ電機会長)部会で改正案骨子を決め、6月にまとめる「知的財産推進計画 2007」に盛り込む。文化審議会(文化庁長官の諮問機関)の了解を経て、早ければ07年秋の臨時国会に改正案を提出したいという。
 著作権者の許諾がない事業は日本では違法となるが、米国の著作権法は公正な利用なら著作権侵害にあたらないと認めている。このためグーグルやヤフーの日 本法人は検索サーバーを米国に設置し、日本の著作権法の適用を免れていた。
 著作権への影響について経産省は、検索結果のネット上での表示は著作物の無断利用などと異なり、著作権者の権利の切り下げにはならないとみている。「米 国発」の検索サービスを日本国内の利用者が日常的に使っており、日本の著作権法の規定がすでに形骸(けいがい)化しているという事情もある。
 いま世界の検索市場を分け合っているのはグーグル、ヤフー、マイクロソフトの米3社。いずれも検索システムを米国に置く。経産省は日本企業とともに文字 や動画、音声などネット上のあらゆる情報を検索できる次世代技術を開発中で、3〜5年後の実用化をめざしている。ただ、これが成功しても著作権法が今のま までは心臓部のシステムの米国依存が続いてしまう、という懸念が政府にはあった。
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◆『朝日新聞』2007.01.23. 音楽CDをネットで交換、実物は郵送で 京都のベンチャー開発 【大阪】
 音楽CDを、インターネット上で欲しいCDと交換できるシステムを京都市のベンチャー企業が開発した。音楽ソフトの交換という目的は情報流出や著作権侵 害などが問題になっている「ウィニー」と同じだが、利用者同士がCDを郵送で交換するという旧来の方法が「安心」のミソだ。(上栗崇)
 新システムは、永砂和輝社長(24)ら龍谷大OBの友人3人組が開発した「ディグログ」。3人は昨年10月、学内のベンチャー支援施設で「ムニンワーク ス」を起業した。
 利用者は、専用ホームページに欲しいCDと手持ちの不要なCDのタイトルを登録。コンピューターが自動的に「もらい手」を探し出し、相手の住所を知らせ てくれる。
 あとは専用の封筒にCDを入れて郵送するだけ(コピーCDは不可)。送料は送り手が負担。CDを1枚提供すると150ポイントもらえ、300ポイントた めると他人のCD1枚を入手できる。ポイントは1ポイント=1円で同社から購入もできる。14日以内に届かなかったり、不良品だったりした場合は別の相手 を紹介してもらえる。
 ウィニーなどのファイル交換ソフトを使うと情報流出の恐れがある。一方、ディグログは郵送の手間はかかるが、ネットで交換するデータはタイトルだけなの で、情報流出の不安はない。
 16日から利用者を100人に限定した試験運用を始めたが、応募者は300人に達したという。今後、システムを増強して利用可能枠を拡大し、春ごろには 本格的なサービスを開始する予定だ。
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◆『朝日新聞』2007.02.07. 著作権保護、接点遠く 動画の違法投稿問題でユーチューブ協議
 世界最大の動画投稿サイトを運営する米ユーチューブと、日本音楽著作権協会(JASRAC)やテレビ局など日本の著作権関連23団体が6日、投稿映像の 著作権侵害を巡って初めて協議した。日本側は違法状態の抜本的解消を要求したが、はかばかしい成果はなかった。米国では著作権侵害を指摘する企業がある一 方で、広告収入を目当てに映像使用を認めるなど現実的な対応も出ており、接点を探る努力が今後も続きそうだ。
 「話し合えたことは有意義だが、侵害防止の具体的な成果には満足していない」。6日夕、著作権侵害の解消に向けたユーチューブとの初協議を終え、日本側 代表が開いた記者会見で、菅原瑞夫JASRAC常任理事は語った。
 デジタル動画を投稿し、自由に検索・閲覧できるユーチューブ。利用者には便利だが、著作権者の許諾を得ていない過去のテレビ番組などが多数投稿されてい る。
 このままネットでの映像閲覧が拡大していけば、テレビ番組の視聴時間が減ることにもなりかねない。テレビ局にとっては、制作にあてる企業からの広告料が 減ることも大きな懸念材料だ。
 この日の協議には、NHKや日本民間放送連盟(民放連)、在京キー局なども顔をそろえ、違法状態の抜本的解消をユーチューブに要求。指摘を受けて違法映 像を削除するのではなく、「違法投稿を未然に防ぐ措置をとってほしい」と訴えた。
 だが、ユーチューブの共同創設者チャド・ハーレー、スティーブ・チェン両氏は「できるだけ早く違法投稿への警告を日本語で表示する」「著作権を保護する 技術的取り組みは続ける」と述べただけといい、日本側を失望させた。ユーチューブがその後発表したコメントも、「これまでも著作権を尊重してきた。今後も 建設的に意見交換していきたい」と形式的な内容にとどまった。
 日本側が未然防止策を求めるのは、違法投稿者とのいたちごっこを断ち切りたいからだ。昨年10月には、ユーチューブ側に違法映像を削除させ一定の成果も 上げたが、投稿は1日7万件とも言われ、違法投稿も後を絶たない。
 ネット上のデジタルコンテンツは、相次ぐ著作物の違法配信に著作権団体がその都度指摘する歴史でもある。日本レコード協会が、ファイル交換ソフトを使っ て違法な音楽配信を行った発信者から損害賠償の支払いを受けた例もある。
 ●「たたく」より現実的… 米、収益探る動きも
 ユーチューブは、動画の投稿をツールに利用者を増やして媒体としての価値を高め、広告収入を増やす仕組みだ。写真、地図などを含むあらゆるデータをネッ ト上にのせ、サイト利用者を増やす米ウェブ検索大手グーグルと似た手法で、昨年末にグーグルがユーチューブを買収したのも共通の素地があったからだ。
 米国ではユーチューブの著作権侵害を問題視する企業がある一方で、より現実的な対応をとる例も出ている。米テレビ大手NBCなどは、著作権を持つ映像の 配信を認める代わりに、サイト上に掲載される広告の収入を分け合うなどの新たな事業提携を進めている。
 米映画会社には、「流れは止められない」として流れた映像は追認し、著作権報酬を請求する例もある。通信業界に詳しいアナリストは「経済合理性を基準に した米国式の考え方」と解説する。
 著作権に対する考え方の違いも背景にはある。日米の著作権制度に詳しい弁護士は「米国でも権利者団体が権利侵害に厳しく対処してきた。膨大な費用をかけ て違法な流通をたたくより収益を得るほうが現実的だという考えを権利者側も持つようになった」と指摘する。著作物の流通がより重視されているというのだ。
 ユーチューブ首脳は来日目的を「ビジネスを含めた日本市場の勉強」としており、日米が歩み寄るのかが注目される。
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◆『朝日新聞』2007.04.16. 電子書籍、盗作騒ぎ 「女子高生作者」実は男子 官能小説20作余り削除
 「女子高生が作者」と銘打ってインターネット書籍の販売サイトで販売された官能小説二十数作が盗作とわかり、削除される騒ぎになっている。盗作をサイト に投稿したのは女子高生ではなく男子高校生だったことも判明。執筆者の身元や中身があまりチェックされないまま、「電子作品」がネット上で流通している実 態が浮かび上がった。(杉山麻里子)
 盗作が起きたサイトは「でじたる書房」。登録執筆者の作品を電子書籍として販売し、売り上げを執筆者とサイト側とで分けるというシステムをとっている。 登録者のほとんどが素人だ。
 問題の執筆者は「綾波美夏」という名前で昨年9月に執筆者に登録し、これまで官能小説二十数作を投稿、販売してきた。著者紹介欄に「女子高生3年が書い た小説です」と掲載。さらに個人サイトに女性の顔写真入りで過激な文言もあったことから、ネット上で話題を呼んでいた。
 今年1月、官能小説家の安達瑶さんの元に読者から情報が寄せられ、12年前に出版された安達さんの著書と、タイトルも中身もまったく同じものがあること が判明。連絡を受けたサイト運営会社が調べた結果、綾波氏が投稿した官能小説の大半が盗作で、被害を受けた作家も約10人に及んでいたという。同社は、す べての作品を削除した。
 でじたる書房は電子書籍を販売する前、登録執筆者とメールでのやりとりしかしていなかった。担当者が盗作発覚後に綾波氏あてにメールを送ったものの、連 絡はつかなくなり、安達さんがネット上の足跡などをたどって居場所を突き止めた。関係者によると、綾波と名乗る人物は実際には男子高校生で、「話題を作り たくて、軽い気持ちでやってしまった」と話したという。
 安達さんは「二度と著作権を侵害しない」と誓約書を書かせ、刑事告訴は見送った。数人の作家が被害にあった出版社のフランス書院は、作家らの意向を聞い ている。
 電子書籍はこの数年、売り上げが急増しているが、ネット上で簡単にコピーできるテキストデータで販売されているものも少なくない。男子高校生も、こうし た小説をファイル交換ソフトを使って入手していたという。
 ネット上の著作権問題に詳しい山下幸夫弁護士は「コピー・アンド・ペーストで簡単に盗作できるようになった今、販売する側が著者と契約書を交わすなどし て、問題がないか確認する必要がある。管理があまりにずさんだと、著作権侵害の不法行為の使用者責任に問われる可能性もある」と指摘している。
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◆『朝日新聞』2007.05.26. 音楽保管サービス、著作権者の許諾「必要」との判決 東京地裁
 自分で購入したCDなどの音楽データをコピーして外部のサーバーに送信して保管し、携帯電話で聴くことができるサービスが著作権侵害にあたるかが争点と なった訴訟の判決が25日、東京地裁であった。高部真規子裁判長は、保管サービスを実施するには著作権者の許諾が必要との判断を示し、不必要だとする原告 側の請求を棄却した。
 このサービスは「MYUTA」の名称でシステム開発会社「イメージシティ」(東京)がKDDI(au)のユーザー向けに提供を予定。高部裁判長は、多数 のユーザーが有料でデータのコピーや保管、送信をする以上、日本音楽著作権協会(JASRAC)の許諾が必要だとした。
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◆『読売新聞』2007.06.05. 「ドラえもん」無断最終話 同人誌販売の男性謝罪 「本物と誤解した人も」
 ◇文芸
 ◆ネットで評判1万3000部
 藤子・F・不二雄さんの人気漫画「ドラえもん」の「最終話」を無断で描き、同人誌として販売していた男性(37)が、出版元の小学館と藤子プロから「著 作権侵害」と指摘され、謝罪文を出した上、売上金の一部を支払った。漫画同人誌では、「二次創作」と呼ばれるパロディー作品が事実上の主流だが、「どこま で許容されるか」という問題に一石を投じる形となった。(福田淳)
 ■のび太、ロボット工学者に
 「ドラえもん最終話」の同人誌(20ページ)は、男性が2005年10月ごろから、「田嶋・T・安恵」のペンネームで、同人誌即売会や同人誌を扱う書店 などで500円前後で販売。電池切れで動かなくなったドラえもんを、ロボット工学者に成長したのび太がよみがえらせる内容で、藤子さんそっくりの絵柄や物 語展開がインターネット上で評判となり、これまでに約1万3000部を売り上げた。昨春、小学館と藤子プロが同人誌の存在に気付き、電子メールで警告。男 性は今年5月に「今後このようなことはしない」という誓約書を出し、売上金の一部を藤子プロに支払った。
 小学館の大亀(だいき)哲郎・知的財産管理課長は、「装丁もオリジナルと酷似し、本物と誤解した人もいる。『ドラえもん』はいわば国民的財産で、個人が 勝手に終わらせていいものではない。1万3000部という部数も見過ごせなかった」と語る。
 ■著作権のグレーゾーン
 一方、作者の男性を著作権侵害で告訴したりせず、話し合いによる「和解」で収めたことについては、「今回はやりすぎだが、節度あるルールが守られている 以上、(漫画文化のすそ野としての)同人誌そのものを全否定はしない」と、一定の理解も示す。
 人気漫画やアニメをパロディー化した同人誌については、以前から著作権的な“グレーゾーン”の問題が指摘されてきたが、1日だけの即売会で売られている 限り、さほど大きな問題にはならなかった。が、近年は同人誌の委託販売を受ける書店の増加や、ネット通販の普及などで、何千、何万部も売れる同人誌が珍し くなくなっている
 また、今回の「ドラえもん最終話」の場合、販売を取りやめた後も、ネットオークションで数万円の値がつくなど、「ネット社会が著作権侵害を助長してい る」(大亀課長)という新たな弊害も生まれている。
 同人誌に詳しいライターの三崎尚人さんは、「内容があまりに直球すぎた。一目でパロディーと分かるような発表の仕方をするべきだった」と見る。また、評 論家の藤本由香里さんは、「ファン同人誌の存在を基本的に認めてもらった上で、一定以上売れる同人誌については、著作者に確実に利益が還元されるような ルールを考えてもいいかもしれない」と提案する。漫画表現の可能性を広げるはずの同人誌は、「著作権」ときちんとむきあう時期に来ているのかも知れない。
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◆『読売新聞』2007.07.07. デジタル放送、コピー9回 来年にも制限緩和 総務省が要請へ
 デジタル放送のテレビ番組をDVDレコーダーに1回しか録画できないよう、特殊な信号を使って制限している「コピーワンス」について、総務省は6日、 DVDなどに9回までのダビングを認めるよう、放送局などに要請する方針を明らかにした。来年にも大幅に緩和され、家電メーカーは対応する機種を販売する 見通しだ。録画した番組を編集したり、同じ番組を複数のDVDなどにダビングできるようになり、視聴者の利便性が高まるとみられる。〈関連記事8面〉
 コピーワンスは、地上デジタル放送やBS(放送衛星)デジタル放送の電波に特殊な処理をして、番組録画を1回に制限する仕組みだ。デジタル放送はダビン グを繰り返しても画質が劣化しない特性があり、番組を複製した違法DVDを販売するなどの著作権侵害を防ぐため、放送業界と家電業界が2004年、自主 ルールとして始めた。
 総務省は情報通信審議会(総務相の諮問機関)の専門検討委員会が12日に示す予定のコピーワンス緩和を求める答申案を踏まえ、放送業界などに大幅な緩和 を要請する。難色を示していた放送局や著作権団体も歩み寄る見通しという。
 要請でダビングの回数を9回までとするのは、家族3人の平均的な世帯で各自がDVD、携帯電話、携帯型音楽プレーヤーなど3種類の機器にダビングできる ようになり、「個人で十分に楽しめる範囲」と判断したためだ。
 10回目にコピーした際、DVDレコーダーのハードディスク(HD)に録画した番組は自動的に消去される。ダビング先のDVDから他のDVDなどに再び ダビングする「孫コピー」やインターネットへの配信は、従来と同様に制限される。
 現在のコピーワンスの仕組みは、DVDレコーダーのHDに録画した番組を、1回に限って「移し替え」ができる。ただ、同時にHD内のデータは消され、移 し替えた先のDVDから他のDVDなどに再コピーもできない。すでに販売されているDVDレコーダーは、機能面でコピーワンスの制限緩和に対応していない ため、従来と同じく1回の移し替えしかできない。
 デジタル放送のダビング制限について、海外では、09年のアナログ放送終了を控えた米国でコピー制御が計画されたが、実施されていない。フランスや韓国 でもダビングの制限はなく、コピーワンスは日本独特の慣行とされていた。
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◆『読売新聞』2007.07.27. 携帯「着うた」配信 容疑の25歳看護師を著作権侵害で逮捕=香川
 携帯電話の「着うた」配信を巡り、レコード会社の著作権を侵害したとして、山口県警岩国署は26日、さぬき市鴨庄、看護師本田真裕美容疑者(25)を著 作権法違反(送信可能化権の侵害)の疑いで逮捕した。
 調べによると、本田容疑者は4月18日ごろ、レコード会社の許可を受けずに、男性ユニット「タッキー&翼」のヒット曲2曲のデータをコンピューターの サーバーに保存。その上で、山口県岩国市室の木町、土木作業員坂本好司被告(25)(著作権法違反罪で有罪判決)の掲示板からリンク出来るように、曲名と アドレスをはり付け、閲覧者が無料でダウンロードできる状態にした疑い。容疑を認めているという。
 こうしたマニアは、「貼(は)り師」と呼ばれているが、摘発は初めてという。
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◆『朝日新聞』2007.08.03. 違法動画識別のシステム導入 投稿サイトのユーチューブ、今秋にも
 動画投稿サイト運営の米ユーチューブを傘下に収める米グーグルは2日、ユーチューブへの投稿動画の著作権保護対策として、今秋にも自動的に違法な動画を 識別するシステムを導入すると発表した。著作権法を守る姿勢を示して日本事業をさらに拡大したい考えだが、日本の著作権関連団体は、まず現在の違法な状況 こそ改善すべきだとしている。
 来日中の米グーグルのデービッド・ユン副社長が同日の会見で明らかにした。グーグルによると、このシステムは「フィンガープリント(電子指紋)」と呼ば れる認証技術をもとにするもので、動画や音楽データを事前に登録。投稿された動画をそのデータと照合、違法なら著作権者側が削除を要請できるようにする。
 ユーチューブは、違法投稿が後を絶たないため、日本音楽著作権協会(JASRAC)などは「現状の著作権侵害への対応は不十分だ」とし、違法状態を早急 に解消するよう求めている。
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◆『読売新聞』2007.08.03. ユーチューブ日本版・提携企業 6月開始以降6社に 著作権対応に不満も
 世界最大の動画投稿サイト、米国の「YouTube(ユーチューブ)」を傘下に持つグーグルは2日、6月に日本版を開始して以降、サイト内に専用コー ナーをもうけるなどした提携企業が6社になったと発表した。一方、日本音楽著作権協会(JASRAC)など24団体・事業者は同日、「著作権侵害への対応 は極めて不十分」との文書を発表した。一般の投稿動画で著作権問題が未解決のままとなっていることに強い不満を示したものだ。
 ■宣伝効果 
 専用コーナーを設けた吉本興業は2日から、通信衛星(CS)放送向けお笑い番組やDVDなどの「予告編」を配信し始めた。CS放送のスカイパーフェク ト・コミュニケーションズも、自社コンテンツの予告編を配信している。
 カシオ計算機は、パソコンに接続するだけで手軽にユーチューブに投稿できる動画撮影機能付きデジタルカメラを発売する計画だ。パソコン周辺機器にも、ビ ジネスが広がりつつある。
 企業側は、「番組を宣伝する上でユーチューブの力を高く評価している」(スカイパーフェクト・コミュニケーションズ)など、広告媒体などにユーチューブ を活用する考えだ。
 企業側が注目するのは、ユーチューブの高い「視聴率」だ。民間調査会社のサイト総利用時間調査で、ユーチューブは、日本版を開設した6月にいきなり4位 に食い込んだ。「視聴率」を維持できれば、今後も提携企業が拡大する可能性が高い。
 ■違法動画 
 専用コーナーのコンテンツに関しては、提供企業が著作権問題をクリアした上で配信する。しかし、一般の視聴者が投稿する「一般チャンネル」には、著作権 を侵害した違法動画が依然としてあふれている。
 JASRACや民放各社など、著作権を持つ24の団体・事業者は2日、記者会見し、「権利侵害行為への対応を、グーグルの責任で速やかに行うべきだ」と 求めた。
 グーグルのデービッド・ユン副社長は同日、「今秋には著作権法違反の動画投稿を防ぐ新システムを立ち上げる」と表明した。テレビ番組や映画などの音声・ 動画をデータベース化しておき、同一と疑われるコンテンツが投稿された場合に自動的にチェックするという。
 ただ、違法かどうかを判断したり、削除を要請したりするのは、権利保有者の手間となる。同様の動画投稿サイトでは、ヤフーがサイトを24時間体制で監視 するスタッフを設け、自主的に削除を続けている。
 著作権団体側では、「サービスを運営する事業者の責任で対策を講じている動画投稿サイトが存在する。ユーチューブにも同様の責任がある」と主張する。 グーグルに対し、自主的に違法コンテンツを削除する仕組みを構築するよう求めていく方針だ。
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◆『読売新聞』2007.09.06. 「着うた」無断配信、4人目の逮捕者 著作権法違反容疑で/山口・岩国署
 携帯電話の「着うた」配信を巡る著作権侵害事件で、山口県警岩国署は5日、さいたま市南区南浦和1、新聞配達員伊藤貢容疑者(35)を著作権法違反(送 信可能化権の侵害)の疑いで逮捕した。一連の事件での逮捕者は4人目。
 調べによると、伊藤容疑者は4月19〜20日、レコード会社の許可を受けずに、自分の携帯電話を使い、歌手の大塚愛さんのヒット曲など2曲のデータを サーバーコンピューターに保存。岩国市の男(25)(著作権法違反の罪で有罪判決が確定)の掲示板からリンクできるように、曲名とアドレスをはりつけ、閲 覧者が無料でダウンロードできる状態にした疑い。容疑を認めているという。
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◆『読売新聞』2007.09.14. ネットで漫画無断掲載 永井豪さんら勝訴 2000万円の賠償命令/東京地裁
 ◆HP運営者らに 
 自作の漫画を無断でインターネットのホームページ(HP)に掲載され、著作権を侵害されたとして、永井豪さんや本宮ひろ志さんら漫画家11人が、HPの 運営者ら2人とネット関連会社2社に計2050万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であり、設楽隆一裁判長は、著作権侵害を認め、計約 2032万円の賠償を命じた。
 判決によると、運営者ら2人は、永井さんの「デビルマン」や本宮さんの「サラリーマン金太郎」などの単行本をスキャナーで読み取り、2005年9月 〜06年1月、ネット上に無断で掲載した。
 判決は、単行本が電子書籍化された場合の価格の35%に閲覧回数を乗じた額をもとに、11人の損害額の合計を約1億8800万円と算定。その上で、10 人については請求通り各200万円を、1人については約32万円を支払うよう運営者側に命じた。
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UP:20070929 REV:
情報/コミュニケーション  ◇テキストデータ入手可能な本  ◇全文掲載 
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