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著作権に関連する新聞記事(2000〜2004年)

情報・コミュニケーション/と障害者


■作成:植村 要

以下は、著作権についての新聞記事のうち、ユーザーによる著作物の複写に関連するものを中心に収集。
(以下、学術利用を目的として、記事本文を掲載する)

◆『朝日新聞』2000.01.08. 著作権侵害「響いたノダ…」 「大成」自己破産申請へ 【西部】
 「天才サザエボン」「波平アトム」など人気漫画の主人公を組み合わせた奇抜なキャラクター付き商品を販売、著作権侵害として販売中止に追い込まれていた 大成(福岡県春日市、宮薗克志社長、資本金三千万円)が七日までに二回目の不渡りを出し、自己破産申請の準備をしていることが帝国データバンク福岡支店の 調べでわかった。負債額は約一億五千万円と見込まれている。

 同支店によると、一九九六年ごろから「サザエボン」などをあしらったTシャツやキーホルダーが女子高生らの間で評判になり、全国的なヒットに。ところが 九七年、原作者の赤塚不二夫さんらから著作権と著作者人格権の侵害に当たるとして訴えられ、東京地裁が販売などを差し止める仮処分決定をした。同社は九七 年度には前年度比二・五倍の約八億四千万円を売り上げたが、その後はヒット商品がなく、本業の衣料品卸・小売りも不振で資金繰りに行き詰まった。
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◆『朝日新聞』2000.02.26. iモード用にホームページ改変でNTT系会社に抗議 新聞7社
 日本新聞協会に加盟する朝日、毎日、読売、産経、日本経済、東京、河北新報の七社は二十五日、一般のホームページの情報を携帯電話のiモード用に作りか えて利用者に届けるサービスを始めようとしているNTTグループのインターネット接続会社「ドリームネット」(本社・東京)に対して「iモード向けに画像 部分や広告を外して、利用者に届けることは、著作権の侵害になる可能性がある」などと申し入れた。
 新聞各社は同社に対して(1)ホームページのデータを勝手に改変し第三者に流すことは著作権侵害の可能性がある(2)iモードに有料情報を提供している 企業にとっては、営業権侵害の恐れがある、などと主張した。
 申し入れを受けた同社は「検討しているが、事前に許諾を得た会員が作っているホームページに限り、iモードで見られる方向を考えている」としている。
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◆『朝日新聞』2000.03.18. NTT電話帳に著作権 東京地裁、情報業者に賠償命令
 情報サービス会社「ダイケイ」(大阪市西区)が提供している企業や店の電話番号などのデータベースは、日本電信電話(NTT)の職業別電話帳「タウン ページ」をもとにしたもので「著作権を侵害された」として、NTTが、ダイケイを相手に、データベースの製造・販売の中止や三億円の損害賠償などを求めた 訴訟の判決が十七日、東京地裁で言い渡された。森義之裁判長は、「NTTのデータベースを取り込んで加工し、著作権を侵害している」と認定、ダイケイに製 造・販売の中止とデータベースの廃棄、三千二百五十万円余の支払いを命じる判決を言い渡した。
 NTTによると、職業別電話帳やそれをもとにしたデータベースに著作権を認め、データベースの著作権侵害を指摘した判決は初めてだという。
 問題とされたのはダイケイが作成した「業種別データ」と称するデータベース。業種や地域を指定すると、企業や店の名称、電話番号、住所がフロッピーディ スクなどの形で提供される。
 判決で森裁判長は、NTTのタウンページと、それにもとづくタウンページデータベースは職業の分類方法などに「独自の工夫が施された創作性を有する編集 著作物」と認定。業種別データは「タウンページデータベースに依拠して作成したもので、NTTのデータベースの著作権を侵害している」と結論づけた。
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◆『読売新聞』2000.03.19. 著作権、消費者もご用心 CDなど普及で身近に 追い付かぬ制度整備
 新聞などで「著作権」という言葉を目にすることが多くなった。かつては音楽や著作物の盗用などを問題にした例が目に付いたが、デジタル技術を使った記録 方式の普及で、最近はミニディスク(MD)など身近な機器でも話題になるようになった。著作権は消費者の生活にどうからんでいるのだろう。(栗原 公徳)
 □補償金
 小説家や作曲家らの芸術家にしか関係がないと思っていた著作権が身近になったのは、テープレコーダーやビデオデッキなど、音楽作品や映画を簡単に複製で きる機器の登場がきっかけだ。
 作曲家や音楽制作会社などが加わる日本音楽著作権協会(JASRAC=事務局・東京都)の深沢一央・広報係長によると、最初に複製問題が注目されたの は、オープンリール式の録音機が普及し始めた1960年代で、著作権法に営業を目的としない個人的な利用に限って複製を認める条文が70年に設けられた。
 さらに、CDなどコンピューター技術を使った記録方式が開発され、状況は一転した。それまでのアナログ方式の記録では、音質や画質が原盤よりも劣り、規 制も比較的緩やかだった。しかし、CDなどに使うデジタル信号では原盤をそのまま大量に複製できるようになったためだ。
 そこで、音楽業界などの求めで、個人利用でも作曲家らに補償金を支払う義務が著作権法に加わった。MDなどに録音する際、消費者が著作権を意識せずに利 用できるのは、機器やMDなどのメーカーが、出荷時に作曲家らの団体にこの補償金をあらかじめ支払っているためだ。
 □機器開発にも影響
 こうした著作権の問題はメーカーの機器開発にも影響を与えている。松下電器産業は99年12月にDVD(デジタル多用途ディスク)を使う次世代音楽プ レーヤーの発売を延期した。録音内容を複製できないようにする暗号がコンピューターマニアに解読され、違法な複製を心配する音楽業界などに配慮したため だ。
 こうした新機器は、利用できるソフトがより多く発売されて初めて普及する。松下電器の長崎左近・DVD事業推進室長は「これまでメーカーは性能面を中心 に競争を繰り広げてきたが、音楽制作会社や映画会社に安心してソフトを提供してもらう努力がより重要になった」と話す。
 インターネットのホームページを通じた音楽配信など、今後の普及が予想される新事業でも著作権はカギを握る。三洋電機は4月に始める配信サービスに合わ せて発売する専用の携帯プレーヤーに、その他の機器に再録できないようにする装置を組み込む。サービスを担当する同社子会社、三洋テクノ・サウンドの横田 十久雄・商品企画部長は「音楽会社と共存を図らないと、メーカーも生き残れない」とまで言い切る。
 □最低限の知識を
 こうしてみると、家庭の機器を使う間にだれもが著作権にかかわっていることがわかる。そこで心配なのは、消費者が気づかずに、違反を犯していないかとい う点だ。
 例えば、コンピューターソフトは正規に購入したソフトでも、業務用の場合は複数のパソコンに一枚で導入すると、著作権法違反になる。ただ、個人的な利用 の場合は微妙だ。ソフト制作会社などで組織する日本コンピュータソフトウエア著作権協会(ACCS=事務局・東京都)は「違法な複製にあたる」と主張して いるが、一部の法学者には反対する意見もある。
 このため、ソフト制作会社は導入時の画面上で、利用者が複製しないことを約束しないとパソコンで使えないようにすることで対応している。同協会は「個人 の使用であっても制限なく複製を認めると、ソフト会社は巨額の損害をこうむる。国際法的にも違法だ」(久保田裕事務局長)として、政府などに明確な法制化 を働き掛けている。
 一方、音楽CDなどを同じように複製できる機器でも、パソコン周辺機器のCD―R(書き込み可能CD)は、著作権利用に伴う補償金支払いの対象となって いない。音楽や映像専用の機器ではないためで、機器の種類によって扱いにばらつきがある。
 機器の急速な普及に制度が追い付けないのが現状のように見えるが、新たな技術を生活に円滑に取り入れていくには、消費者自身も著作権についての最低限の モラルと知識が必要のようだ。
             ……………………………… 
 <著作権とは?>
 人が考え出した発明や著作物などを守る権利は知的財産権と呼ばれ、工業所有権と著作権の二つに分かれている。工業所有権は、新技術などを対象にした特許 や、実用新案、意匠(デザイン)などを指し、特許庁が届けを認めた後に権利となる。
 これに対し、著作権は、小説や研究論文、音楽などを広く保護する権利で、実在してさえいれば届け出の必要もない。1899年に施行された著作権法によっ て権利の内容や違反した場合の罰則が細かく決められている。
 ただ、この区別もコンピューターソフトについては、ややあいまいだ。コンピューターソフトはデータを文字列で表すため、一般的に小説などと同様に著作権 で保護される。しかし、実際の働きでは機器の主要な部分を担っており、CD(コンパクトディスク)などの媒体に記録されたソフトに限り特許として認められ るようになっている。
             ……………………………… 
 《主な著作権団体》
 団 体 名      参加個人・会社数      業務内容など
日本音楽著作権協会  作詞家、作曲家、音楽制作  作詞家らに代わって著作権
(JASRAC)   会社など約1万1000   料を徴収
日本芸能実演家団体  俳優、舞踊家、歌手らの   俳優らの出演番組などの著
協議会(芸団協)   59団体          作権料を徴収
日本コンピュータソ  ソフト制作会社など約21  著作権侵害の調査、告発と
フトウエア著作権協  0社            著作権のPR
会(ACCS)          
日本文芸著作権保護  作家ら約1400人     文芸作品を題材とした映
同盟(JAA)                  画、テレビ番組の著作権
                         料の徴収
日本レコード協会   音楽制作会社25社     音楽に関する著作権のPR
(RIAJ)            
ネットワーク音楽   音楽関係などの9団体    インターネットなどでの音
著作権連絡協議会                 楽利用のルール作り
(NMRC)        
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◆『読売新聞』2000.06.09. [どこへ行くIT革命](7)マイケル・ロバートソン氏(連載)
 ◆音飛びなし 次世代規格も続々提案
 カセット、CD、MDと進化してきた携帯型の音楽再生装置がまた進化しつつある。今度は、CDやインターネットから保存したデジタルの楽曲データを、記 憶素子(メモリー)に蓄積してそのまま再生するものだ。モーターが回転するような動く部分がなく、本体は小型で、音が途切れたりしない。著作権をめぐる米 国での裁判が決着したこともあり、日本の大手家電メーカーからの発売が相次いでいる。(西島徹)
 こうした再生装置は、「デジタル・オーディオ・プレーヤー」、「デジタル・メモリー・プレーヤー」などと呼ばれ、実勢価格では1万円台から3万円台で販 売されている。元は、音楽の違法コピーを促進させるとして話題になった「MP3」という形式の音声を、パソコンから移しかえて持ち歩ける再生装置として2 年ほど前に、米国で登場した。
 MP3は、音声のデジタル信号を圧縮して、電波やCDなどの媒体を効率よく使うのが狙いの規格。これに対して通常の音楽CDは、音声を圧縮せずに本来の 情報すべてを保存してある。MP3はCDに近い音質を保ちながら、適当にデータを間引いてサイズを十分の一ほどにできる。由来は、映像圧縮規格 「MPEG」の、音声形式の一つである「MPEG Audio Layer 3」で、これが正式名だ。
 プレーヤーを使うには、まず楽曲のデータをパソコンに取り込まなければならない。データはインターネットを通じて保存したり、音楽CDをCD―ROMド ライブに入れて専用ソフトウエアでMP3に変換したりする。このデータを、パソコンにコードで接続したプレーヤーに移しかえる。最近はMP3の次世代規格 である「AAC」など、より音質が優れた圧縮形式がいくつか提案され、製品に採用する動きもある。
 三洋電機は日本初のAAC対応プレーヤーを発売したが、商品の開発を担当した横田十久雄さんは「小さくて、音が良くて、モーターなどの運動部品がない機 器は、夢のオーディオ装置として製品の最終形だと思っていた。圧縮技術と集積回路の進歩で一気に実現した」と説明する。
 プレーヤーはほかにもアイワ、カシオ計算機、シャープ、ソニー、東芝、富士通パーソナルズ、松下電器産業などから発売された。パソコンからプレーヤーへ のデータ転送速度や、メモリー容量や種類で各社が競い合っている。また製品は、ひもで首から下げるのが主流で、1台70グラム前後と軽い。ヘッドホン型や 腕時計型も出てきている。
 今年になって発売が相次いだ背景には、米国製の装置を巡り、著作権侵害を助長するとして全米レコード協会が98年10月に行った提訴を、昨年8月に取り 下げたこともある。同協会は、製造元が著作権保護の規格確立に積極姿勢を示したことや、もともと製品に録音機能がなかったことを考慮に入れたとされる。
 しかし今も著作権者は、パソコンに取り込まれた音楽データが無制限にコピーされ、不特定多数の相手に出回るような事態に神経をとがらせる。昨年2月に は、世界中のレコード会社やハードメーカーが集まり、「SDMI」という組織が設立され、公正なデジタル音楽利用の技術仕様を検討し始めた。プレーヤー向 けには規格化第一弾が終了し、パソコンからデータを移せるプレーヤーは3台以内に制限することなどが盛り込まれ、ほとんどのメーカーが対応している。
 また日本では、CDや放送のデジタル録音は家庭内の私的なものでも著作権が及び、著作権使用料が録音機器やMDなどの記録媒体の価格に「補償金」として 上乗せされている。これらの装置や媒体は音楽専用であることが要件となっているため、今のところ汎用(はんよう)であるパソコンにCDのデータを取り込む 操作は当てはまらない。
 ところが、日本の大手メーカーから、従来のプレーヤーと形は同じながらパソコンを経由せず、MP3形式での録音が可能な装置が売り出された。私的録音補 償金管理協会では「現行のデジタル録音に対する著作権保護のルールからは逸脱している。このような録音機器を補償金制度の対象に含めるよう法律を整備する 必要がある」としている。
 SDMIでも録音可能な装置の規格化が行われている。当初は今年3月に、まとまるはずだったのが難航して延期されている。この規格はわが国にも影響を及 ぼすことになり、結論が注目されるところだ。
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◆『朝日新聞』2000.06.14. 米音楽業界ゆるがすナップスター(ニューヨーク発)
 CDから好みの曲をMDやテープに録音して彼氏彼女にプレゼント。これは若い人なら普通にやっているだろう。何人かの友人の間で好みのCDをダビング。 これも「違法」という実感はわかない。しかし、インターネットで数百万人が曲をタダであげたりもらったりしていたら……。レコード会社にとって悪夢のよう な話が、米国で進行中だ。(ニューヨーク=近藤康太郎)

 ヘビーメタルの人気バンド「メタリカ」のメンバーが、カリフォルニア州サンマテオの「ナップスター社」に乗り込んだのは、五月初め。手にしていたのは、 ナップスターに登録し、メタリカの曲を「タダで」インターネット上に流しているファンの名簿だった。メタリカは同社に、ただちに会員登録を削除するよう要 求した。メタリカを始め、レコード会社十数社はナップスター社を著作権侵害で提訴している。
 ナップスターとは、ボストンの大学生が発明したコンピューターソフト。仕組みは簡単だ。
 ソフトを入手してナップスターのホームページに接続し、たとえばアーティスト名「メタリカ」と入力する。するとその時点でナップスターに接続している会 員のライブラリーを瞬時に検索。メタリカの曲を持っている人が列挙される。ハードディスクからハードディスクへと、タダで曲が複製されるという仕組みだ= 図。
 MP3と呼ばれるデジタル音声の圧縮技術でCDのデータをコンピューターに取り込み、友人同士で曲を受け渡しするのは、数年前からはやっていた。ナップ スターが革命的だったのは、身の回りの友人知人の輪が、インターネット上に広がる不特定多数の音楽ファンの輪にまで一挙に拡大し、即座に検索までできるよ うになったことだ。
 CD売り上げ減を恐れるレコード会社は、「店からCDを万引きするのと同じ」と主張。「レコーディングに金と時間と汗を注ぎ込んでいるミュージシャンに とっては、きつい話だよ」(ベック)など、アーティストの多くもナップスターを敵視している。
 しかし同社は「曲のデータをナップスターが保存しているわけではない。ファン同士の情報の共有を助けているだけ」として、著作権侵害には当たらないとい う立場だ。現在までのところ、同社は広告収入や登録費などをとっていない。
 四月末、レコード業界を震撼(しんかん)させる「造反」が起きた。人気バンド「リンプ・ビズキット」がナップスターに自分たちの曲が流れるのを「了」と し、今夏のツアーをファンに無料で公開する方針を発表した。費用はナップスター社が持つ。
 ボーカルのフレッド・ダーストは「ナップスターはおれたちの音楽を宣伝するにはもってこい。恐れているのはレコード業界だけ」と話す。ラップグループ 「パブリック・エネミー」のチャック・Dも「ナップスターは新しいラジオ」と位置づける。メジャーレーベルに属さない非主流のアーティストが宣伝できる貴 重なメディアと評価した。
 誕生後一年に満たないナップスターが米国を大揺れさせているのは、「ことは音楽業界だけにとどまらない」からだ。CD以外にも、私たちは映画ビデオやテ レビ番組の録画テープを持っている。友人同士でダビングもするだろう。
 しかしインターネットがさらに高速化し、映画もテレビ番組もコンピューターで簡単に受け渡しできるようになったら……。エンターテインメント産業が躍起 になってナップスターつぶしにかかっている背景は、そこにある。
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◆『読売新聞』2000.07.19. [サイバー・トーク]ディック・ブラス氏 電子ブックで識字率も向上
 ◇マイクロソフト 技術開発副社長 
 手のひらサイズの携帯情報端末の発売が相次いでいるが、マイクロソフト社の米国版「ポケットPC」の売り物は電子ブック機能だ。これらの普及のため同社 が提唱している標準ファイル規格「オープンeブック」と、電子ブックを読みやすくするソフト「マイクロソフト・リーダー」の開発者に聞いた。
 ――「オープンeブック」とはどのようなものか。
 電子ブックにはこれまで統一した規格がなく、出版社や電子書店が違えば同じ機械で見ることは出来なかった。オープンeブックはこれを統一するための規格 で、昨年十月、米国の出版社、ソフト会社、パソコンメーカーなど約百社が採用に合意した。世界標準化を目指し、日本の出版社などとも話し合いを持ってお り、年末までには合意ができると思う。
 ――電子ブックのためのリーダーはどんなソフトか。
 液晶画面で文字の解像度を高めるフォント技術「クリアタイプ」を使い、十分なマージンや適切な文字間隔などで、紙の本のようなスタイルで文章を表示する ソフトだ。しおり、注釈、辞書など多様な機能を備え、手のひらサイズのパソコンなら五百冊、デスクトップなら五万冊の本が格納できる。
 ――クリアタイプの日本語への適応は。
 ローマ字に比べてわずかに落ちるが、見かけ上は英語と同じようにきれいになる。今月、東芝とクリアタイプを用いた電子ブック用液晶ディスプレーを共同開 発することが決まり、年内に製品化する予定だ。
 ――著作権侵害に対するリーダーの対策は。
 コピー防止機能を備えており、作者や出版社の希望により、たとえば一回しか読めない、数日間だけ読める、部分的にコピーできる、コピー自由など、柔軟な 設定ができる。
 音楽のナプスターに見られるように、若者はデジタルなものはコピー自由と考える傾向があるが、若者とのコミュニケーション、啓もう活動にも力を入れた い。
 ――電子ブックの普及による活字文化の将来像は。
 電子ブックは、紙の本のように簡単に絶版されることがないうえ、だれにでも読んでもらえる可能性を作る。私は昨年、十五年以内に、発行される本の半分以 上が電子的になると予測したが、電子化のスピードは予測不能なほど速まっている。
 安く楽に本を手に入れることが出来るため、世界の貧しい地域でも、大学並みの図書館と変わらない蔵書にアクセスでき、識字率も上がると期待している。 (インタビュー・早乙女泰子)
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◆『朝日新聞』2000.07.28. ネットで音楽交換のナップスターに停止命令 米地裁
 【ニューヨーク27日=山本晴美】インターネット上で、利用者同士が好きな音楽を交換できるサービスを提供し、全米で爆発的に人気を集めたベンチャー企 業が、著作権侵害を問われ、事業中止に追い込まれる可能性が出てきた。サンフランシスコ連邦地裁は二十六日、音楽の電子市場をつくったナップスター(本 社・カリフォルニア州)に対し、サービスの仮差し止め命令を下した。著作権違反で提訴した全米レコード協会(RIAA)の主張を認めた形だが、ナ社側は近 く控訴する構えだ。

 同地裁のパテル判事は、多くのサービス利用者がCD(コンパクトディスク)を買わずに、ネットから無料で音楽を入手しているケースが多いことを指摘。 「ナ社の事業は、違法コピーを助長する可能性がある」とし、二十八日午前零時(日本時間の午後四時)からサービス中止を求めた。
 ナ社は、利用者同士がそれぞれパソコンにデジタル化して取り込んだ音楽を、無料交換するためのソフトウエアを提供する会社で、昨年八月、十九歳の若者が 創業した。利用者はまず、ナ社のホームページに接続し、ソフトを取り込む。このソフトを起動すると、ナ社の検索用コンピューターにつながり、利用者がその 中から好みの音楽を選択すると、その音楽を保有している別の利用者のパソコンにつながって、ハードディスクからハードディスクへとデジタル化した音楽を複 製できる仕組み。
 利用者は、若者を中心に約二千万人に達したと推計され、一斉に学生たちが使ったため、複数の大学のコンピューターがマヒするほどの人気ぶり。だが同時 に、CDの売り上げ減を恐れるレコード会社や有名アーティストから敵視された。
 ナ社側は、「利用者同士が交換できる市場を提供しているだけ。違法コピーかどうか、それぞれの取引の内容にまで責任は負いきれず、著作権侵害にはあたら ない」と反論し、二十八日までに控訴する方針だ。
 音楽に限らず文書や映像のネット配信も含め、ナ社と同種の新興企業が出現しているうえ、「ネット上の取引を規制すべきではない」として、ナ社を支持する 事業家も多く、裁判の成り行きが一段と注目されそうだ。
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◆『読売新聞』2000.08.01. インターネット利用拡大 違法コピーも増殖中 HPを悪用、大規模化 
 ◆家庭のコピーも注意必要
 ソフトウエアの違法コピーは、なかなかなくならないが、インターネットの世界が広がるにつれ、低年齢化し、大がかりなものになっている。また、一般の人 が自覚なしに違法コピーをしている場合もあり、関連団体では、ソフト利用についての正しい知識とモラルの普及を呼びかけている。
    (吉田典之)
 【ケース1】
 徳島県警は先月3日、インターネットのオークションサイトを悪用してコンピューターソフトを違法コピーした海賊版を宣伝・販売していた英会話講師の男 を、著作権法違反の疑いで逮捕した。
 男は、ここに100点以上の海賊版を出品、商品説明欄にはメールアドレスを記し、問い合わせや代金の振り込み先指定はメールで対応していた。
 オークションサイトは、お目当ての商品を探しに多くの人たちが訪れ、なおかつ実名や住所を隠して出品出来るところもあるため、違法コピーソフトの新たな 温床にもなっている。
 中古や自作のパソコンの動作確認用と称してソフトを組み込んだものもあるが、「これも明らかに違法コピーです」と、コンピュータソフトウェア著作権協会 (ACCS)の木下祐二・調査部長は警告する。同協会では、昨年11月、このサイトに対しソフトの著作権侵害にあたる出品の削除依頼を開始したが、その数 はこれまでで400にも上るという。
 【ケース2】
 長野県警は先月4日、インターネットを通じて知り合った100人以上を組織し、ホームページ上で約150種のゲームソフトを登録、ダウンロードさせてい たとして、宮城、東京、大阪、秋田の会社員や無職少年など4人を逮捕した。
 主犯格の会社員は、約2年前から「ファミコン決死隊」と名付けたホームページを開き、メンバーにはソフトの提供数などに応じて「大将」などの階級を与え るなどして、違法コピーをあおっていた。
 インターネットでは、サーチエンジンと呼ばれる検索用ホームページをはじめ、同じジャンルの内容のページを分類したりリスト化したりといったことが一般 的に行われている。このケースも、その便利さを逆手に取ったもので、類が類を呼んで広まった。「4、5年前までは、専門業者が店舗を構えたり、コンピュー ターマニアの会社員や大学生が主体だったが、現在では高校生が小遣い稼ぎに簡単に違法コピーに手を出すようになった」と木下部長は最近の傾向に顔を曇ら す。
 同協会では、ソフトの違法コピーをしているホームページを見つけるとまず警告し、悪質なものは摘発を目指し警察と連携している。1985年の同協会発足 から今年3月までの違法コピーによる刑事事件は、193件に上るが、実際の違法コピーは「それこそ数えきれず、実態はわからない」(木下部長)のが実情 だ。
    ◎ ◎
 家庭でも、違法コピーをしてしまっている場合がある。例えば、知り合いにソフトを貸したり、グレードアップ版を買ったからと、古いものをあげたり売った りした場合だ。ソフトの購入は、「使用許諾を得る」という意味で、ソフトが入ったCDを自由にしていいこととは違うのだ。
 とはいえ、複数のパソコンに組み込み可能なケースもある。例えばジャストシステムでは、店頭などで購入した製品は、本人しか使わないという条件で、複数 のパソコンでの使用も認めている。
 ソフトには無料のものもあり、多く使っていると混乱しそうだが、「ソフトを使おうと思った時に、きちんと確認することが大切」と木下部長。
 ソフトウエアは、対応するパソコンであれば、どれでも組み込めてしまう。不正コピーを防止する手立てはあまりなく、利用者の良心に訴えるしかない。同協 会では、学校向けの冊子を作るなど、生徒や、教育者に対する保護意識の普及に取り組んでいる。
 ソフトウエアも、それを使って出来た作品も、同様に著作権によって守られている。「いいものをつくり続けるためには、お互いの権利を尊重しあう意識を高 めることが必要」と、関係者は呼びかけている。
 
      《インターネットを悪用した違法コピーの摘発例》
 年月日           内容
2000. 7. 4  会社員(27)や少年(17)がゲームソフトを登録
            ・ダウンロード出来るホームページを作り、100人
            以上を集めた
2000. 7. 3  オークションサイトに出品し、100点以上を販売
2000. 6.14  電子掲示板で希望者を探し約1000枚の海賊版CD
            ―ROMを販売
1999.11.25  大学生(21)が、ゲーム機 専用ソフトを米国のホ
            ームページに約180本アップロードしていた
1999. 5.30  高校生(16)が、米国の無料ホームページにソフト
            を登録し、自由にダウンロードさせていた
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◆『朝日新聞』2000.08.08. IT革命で失われるもの 黒崎政男(科学をよむ)
 昨今の「IT革命」の空騒ぎとも言うべき状況には、ほとんどうんざりさせられてしまう。ITとはインフォメーション・テクノロジーの略。つまり、日本語 に戻せば「情報技術」というまったく変哲もない言葉で、情報技術革命と言っていたらこんなブームになっただろうか。
 この動きを、好意的に表現すれば、デジタル情報技術が、ニューメディア・ブーム、パソコン・ブーム、マルチメディア・ブーム、インターネット・ブーム と、何度かの局地的で小規模な流行と衰退の満ち引きを繰り返しながらついに、政治・経済・ビジネスの前面に登場してきた事態、と言ってもいい。
 だが少し意地悪く表現すれば、不況経済対策の次のターゲットが求められ、それがたまたま<IT>だったという感も否めない。
 昨今のブームのテンポは、ますます加速化しており、昨年の「だんご3兄弟」ブームのように、あっという間に世間を巻き込んだと思うと、数カ月後にはまっ たく何事もなかったように終息してしまうから、<ブームとしてのIT>も早晩、沈静化することだろう。
 しかし、デジタル情報革命そのものは、ブームを超えて確実に進行している。十九世紀の産業革命がモノ作りの革命を起こしたとすれば、IT革命は、情報が 脱モノ化する革命ととらえてよい。つまり、今回、もっとも根本的で本質的なのは、情報がデジタル化され、非=物質化、脱=物質化するという点である。
 従来、例えば文字情報は石、パピルス、紙などに刻まれることによってはじめて成立した。ところが、デジタル技術は、この文字のみならず、音、写真、動画 などメディア的差異を乗り越えて、すべてを0と1とのデジタル情報に還元し得る。この技術は、文字を紙から、音をレコードから、写真を印画紙から、動画を ビデオテープから、つまり総じて、それぞれのメディアの物質性から解放したことを意味する。このことゆえに、歴史的にさまざまな労苦が払われた複製が、デ ジタルではいわば瞬時に可能となった。
 ところで情報の値段とは、これまで一体なんだったのだろうか。それは<情報そのもの>ではなく、その<容(い)れ物>の値段である、という主張がある。 例えば、米国の社会学者、マーク・ポスターは『情報様式論』(岩波書店)のなかで「消費者たちは書籍の製造に対して支払っていたのであって、公共図書館で ただで利用できるその中の情報には支払わない」と言う。レコード録音についても、お金が支払われる商品は、黒いディスクであって、そこに収録されている曲 なのではない。情報はそれが出荷される<パッケージ>と分離できないものであり、このパッケージに価格票がついていたのだと指摘している。
 確かに、書籍の値段は書かれた内容で決まるのではなく、部数や制作費から割り出されるのだし、ギターソロでもオペラでも、同じCDの値段である。このよ うに、情報の値段が、情報そのものではなく、その容れ物の値段だったとしたら、生成・伝達がきわめて安価になるデジタル技術によって、容れ物から逃れた情 報の値段はどのようになっていくのだろうか。
 例えば、音楽の世界では、音質をほとんど劣化させることなくファイルのサイズを劇的に縮小するMP3技術の登場によって、状況が激変している。今やレ コードやCDというモノを購入するのではなく、インターネットからMP3ファイルをダウンロードして音楽を聴く時代に突入しつつある。そして、このMP3 ファイルをめぐっては、著作権侵害を主張する全米レコード協会などが訴訟を数多く起こしている。さらに、「グヌーテラ」というとんでもないファイル交換ソ フトが今年三月に出現した。中央コンピューターにアクセスせずに、匿名でネット上のどんな相手とでもMP3ファイルなどを交換することができるもので、急 速にインターネット上に広がっている。
 多くの情報を、中央政府や中央サーバーを通さず、必要な個人個人がネットを通して、自由に交換できる世界。確かにこれは民主主義の最高形態かもしれない が、同時に電子の無政府状態と言ってもいい。この世界にどんなビジネスチャンスがあるというのだろうか。ITという革命によって、新しく<得るもの>はあ るかもしれないが、同時に、想像できないほどの<喪失>が我々を襲うことになるだろう。
 近代は終わったのか、情報とは何か、著作権とは、と蕩々(とうとう)たる議論をしているうちに、テクノロジーは、そんな議論をあざ笑うかのように、足下 の砂を瞬時に削り取っていく。
 いずれにしても、今回のIT革命ブームには、根源的な危機感があまりになさすぎる。革命というからには、我々が疑うことなく立脚してきた近代という地盤 そのものの変動、消滅を意味するはずである。この革命は、実は<従来のビジネス>の消滅ではなく、<ビジネスそのもの>の消滅を、あるいは、<従来の著作 権>の消滅ではなく、<著作権そのもの>の消滅を意味しているのかもしれないのである。
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◆『読売新聞』2000.09.19. [論陣・論客]ファイル検索ソフト 後藤滋樹氏VS岡村久道氏=見開き
 インターネットでつながる他人のパソコンを検索し、目当てのファイルを自分のパソコンに取り込む「ナプスター」などのファイル検索・交換ソフトが注目さ れている。著作権侵害の訴訟が起きる一方、技術の流れとする向きもある。こうした技術とどうつきあうべきか。(聞き手・解説部 知野恵子)
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 ◇ごとう・しげき 早大理工学部教授。NTTソフトウェア研究所部長などを経て、現職。専門は情報科学。51歳。
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 ◆「ネット」本来の姿
 ――「ナプスター」「グヌーテラ」などの、ファイル検索・交換ソフトが注目を集めている。
 後藤 どちらもインターネットでつながっているパソコンの中にある音楽ファイルを検索して、自分のパソコンに取り込むことを可能にするソフトだ。
 見知らぬ人のパソコンの中を検索することや、著作権者に無断で音楽をコピーしてしまうことにつながるため、とんでもない悪魔のような技術が登場したよう にも言われる。だが、ネットワークの発展の方向に沿ったごく普通の技術だ。
 ――どういう意味か。
 後藤 ネットワークの本来の姿は、情報を一か所で集中管理するのではなく、あちらこちらに分散して置いておき、欲しい人が欲しい時に欲しいものを入手で きるようにすることだ。
 今も様々なホームページがあり、見かけ上は情報が分散しているが、やはりサーバー(情報を蓄積し、サービスを提供する大型のコンピューター)に置いてあ ることが多いので、まだ集中型に近い。
 だから、個人のパソコンにある情報を探し出すというこのソフトは、ネットワークの今後の形態を示しているとも言える。
 またこのソフトで使われている技術を分解すればインターネットの初期段階からあるごく普通のものだ。例えば、離れたところにあるパソコン同士が通信し、 欲しいファイルのありかを探し出し、それを転送するなどの技術だ。だが、一つひとつは取り立てて驚くような技術でなくても、それらを組み合わせて使うこと で、著作権問題などの社会的な影響が出てきている。
 ――著作権を守る技術はないのか。
 後藤 コピー防止技術などがあるが、技術的解決法には、すぐにまたそれを破る技術が現れるという宿命がある。また、音楽ファイルを暗号化して厳重に管理 すると、対価を支払った正当な利用者も使いにくくなり、費用もかかるなどの問題も生じる。
 ――どういう解決策が考えられるか。
 後藤 既存の社会的な枠組みで新しいことをとらえようとするのには無理があるし、技術の流れは止められない。だが、技術的にできることと、やって良いこ ととは異なる。IT(情報技術)を社会全体でどのように使いこなすか、社会的な合意作りが必要だ。
 例えば音楽ファイルの例で言えば、著作権者を守るために、利用した情報に対して、お金を払える仕組みを形成できれば、既存の秩序に近い解決策になる。
 ――今は音楽ファイルが注目を集めているが、この技術が発展していくと、他人のパソコンのファイルを検索するなど、安全性の問題は起きないか。
 後藤 インターネットでつながっていて、探し出したいファイルの名前などがわかっていれば、表計算やワープロソフトで作ったものを探し出すことも可能 だ。当然、安全性の問題が出てくる。だが、インターネットでつながっている以上、避けられない問題だ。
 他者から見られたくないファイルは、インターネットにつながったパソコンから外しておくなど防止策を真剣に意識した方が良い。
 ――ITのもたらす問題にどう対応すべきか。
 後藤 法律で抑制すれば良いという意見もあるが、ありとあらゆる事態を事前に想定するのは、不可能だ。ことにITの世界は進歩の速度が速いので、その時 には良くても長続きしない。だから、技術、法律、制度を含めて柔軟に対策を講じていくことが必要だ。
 今までもインターネットの利用では問題が生じたし、これからも出てくるだろう。しかし、問題解決を模索することが次の技術の発展材料となる。今回の問題 もこうした積極的な受け止め方をするべきだ。
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 ◇おかむら・ひさみち 弁護士。関西大、近畿大講師も兼任。専門は知的財産権法など。42歳。
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 ◆解決法は裁判以外も
 ――音楽ファイルを検索・交換するソフトをめぐって、全米レコード協会が著作権侵害で提訴するなどの問題が起きている。
 岡村 音楽をコピーして親しい仲間うちで個人的に交換することは、公正使用(日本では私的使用)の一形態とされてきた。だが、ナプスターなどのソフトを 利用すれば、コピーした音楽を世界規模で見知らぬ相手と大量に交換できる。このため公正使用の枠を超えたものとして、著作権侵害の問題が起きている。
 ――この問題が提起しているものは。
 岡村 現行著作権法は一八八六年制定のベルヌ条約がベースだ。新しい事態が起きると、つぎはぎで整備してきた。だが、デジタルという究極の複製技術と、 インターネットという究極の流通技術ができたことを背景に、前例のない規模や速度で、様々な問題が生じている。この問題を著作権だけにわい小化せず、世界 規模での情報流通全体のあり方が変革期にあることを象徴的に示しているものと、とらえるべきだ。
 ――対応策は。
 岡村 まず法律の改正がある。一九八七年に刑法が改正され、電算機詐欺や電磁記録に関する一連の罰則規定ができた。これがIT(情報技術)が引き起こし た変化によってわが国で法律が変わった最初の例だ。
 引き金になったのは、八一年の三和銀行オンライン詐欺事件だ。オンライン端末機を操作して架空の入金データを入力し、現金をだまし取った。詐欺罪は人を だます罪だから、コンピューターをだましても、詐欺罪は成立しない。また電子データが文書偽造・変造に相当するかどうかなども問題になり、改正で法整備さ れた。その後もIT対応の法整備が相次いでいる。
 だが、最近の急速な発展ぶりを見ると、法律だけでは解決できない状態になっている。
 ――どういうことか。
 岡村 インターネットには国境がないので、裁判を起こすにしてもどこで起こすのか、どこの国の法律が適用されるのかという問題がある。著作権にしても、 音楽データへの課金の仕組みを作っても、利用料金は一件あたり数百円程度。侵害に対する裁判費用に見合うかどうかも疑問だ。これらを併せて考えると、裁判 での解決だけでなく国際的な「裁判外紛争解決手段」の併用が適していると思う。
 ――どんな方法か。
 岡村 世界のインターネット関係者などで構成される民間組織「ICANN」が昨年秋、インターネットの住居表示であるドメイン名の紛争解決ルールを策定 した。ドメイン名の登録は先着順で、先に押さえられてしまうと同じものは使えない。商標名と同じドメイン名を先に押さえて売りつけるという手口が横行し、 問題になっていた。そこでICANNが紛争処理機関を認定し、裁判よりも短時間に低コストで解決できる仕組みを作りだした。こうした方法が今後、もっと盛 んになっていくだろう。
 ――法律を含む様々な改革が迫られている。
 岡村 情報流通のあり方が変化すれば、影響は経済や政治全体に及んでくる。従来、情報の仲介役だった者の存在意義も問われる。
 また、著作権などに注目するあまり、個人のプライバシー侵害にならないような注意も必要だ。インターネット上で著作権侵害などを監視しようとすると自動 的な大規模データ収集ができる反面、個人情報がネット上で大量に無断収集されかねない。収集情報が無断流通して蓄積し分析されると、趣味、思想など、人格 にかかわる部分までも把握されてしまう危険もある。
 こうした変革に対する法的枠組みを考える際には縦割りではだめだ。新しい事態への対応は総合的かつ国際的視野で考えるべきだ。
 〈寸言〉
 インターネットを使えばだれもが情報を発信できると言われ、ホームページや電子メールがその例に挙げられてきた。
 だがホームページはポスターや掲示板に近く、電子メールも知らない人とのやり取りはしにくかった。後藤氏が指摘するようにまだ、情報が集中型に近いから だ。
 見ず知らずの人同士でも簡単に情報交換できるようにしたという点で、ファイル検索・交換ソフトの衝撃は大きい。岡村氏は情報流通のあり方が変わること で、経済や政治などへも影響が出てくると指摘する。ITの明るいイメージが先行しがちな日本だが、変革の影響をどう受け止めていくかも大きな課題だ。
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◆『読売新聞』2000.09.29. [大手町博士のゼミナール]ネット使って音楽配信 好きな曲だけダウンロード 
 ◆レコード会社「新曲も」 著作権保護、課題残す
 インターネットで楽曲を買える音楽配信が普及の兆しを見せています。レコード会社が相次いで配信用のホームページを作り、そこから取り込んだ(ダウン ロード)音楽データを聴く超小型プレーヤーも売り出されました。今回は身近になりつつある音楽配信について勉強しましょう。(富塚正弥)
 受講生の高校生A美さん「レコード店に行かなくてもパソコンで音楽を買えるって友達が言っていたけど本当ですか」
 大手町博士「音楽配信のことだな。普通のCDでも声や楽器の音はデジタル信号に変換されている。デジタル化された音楽のデータは、新しい技術の開発でイ ンターネットを通じて送り、パソコンで受けることが簡単になった。受信したデータは音楽として再生して楽しむことができるんだ」
 ■ 音楽配信業者のホームページにアクセスすれば好きな曲を選んでデータを送ってもらうことができる。受信したデータは、パソコンや配信対応プレーヤー の記録メディアに保存すれば、何度でも再生できる。ヘッドホンとセットになった、ペンダントのような超小型再生装置も登場している。ただ、データはCDの 10分の1程度に圧縮されているため、音質はCDよりわずかに劣り、普通のCDプレーヤーでは聴けない。日本では、ネット系ベンチャーに続いて、ソニー・ ミュージックエンタテインメント(SME)などのレコード会社も事業化し、現在は20社以上が手がけている。配信料金は1曲200―350円が中心で、ク レジットカードの番号を入力して支払うのが主流だ。
 SME・bitmusic推進部チーフプロデューサーの金丸潤さん「今年に入ってからの新曲はすべて、音楽配信でも販売しています。コンピューターを使 う人の多い30歳代向けに、70、80年代のポップスなどの曲数も増やし、30秒間の試聴もできます。会社によっては、レコード店で入手しにくいイン ディーズ(独立系)の曲や音楽配信限定の曲の配信なども行っています」
 受講生の公務員B夫さん「データを受信できれば、そのコピーも容易になりそうです。著作権侵害の問題が起きませんか」
 ■ アメリカでは、数年前から、CDの曲を勝手に無料で配信する音楽サイトや、個人同士で音楽データを共有するソフトがまん延し、著作権訴訟が相次いで いる。日本では不正コピーを防ぐ技術が開発されたのを受けて、レコード会社も配信事業に乗り出した。一方で、作曲家などの著作権を保護する日本音楽著作権 協会は8月に、配信事業者の団体と、音楽配信の著作権使用料を1曲の価格の7・7%とすることで合意した。ただ、レコード会社などでつくる日本レコード協 会は「著作権使用料はCDの場合と同じ6%が適当」として同意せず、完全な決着には至っていない。
 日本音楽著作権協会ネットワーク課長の野方英樹さん「音楽を配信するには、作詞家や作曲家などの許諾が必要です。日本では近く、違法サイトを自動的に探 し出し、警告するシステムを立ち上げます。個人同士でも特別なソフトを使った音楽データの融通といった行為に対する法律的な対応を検討しています。そうし た行為が広がれば、著作者の権利が損なわれ、長い目でみるといい作品が生まれにくくなって、音楽愛好家の利益も損なわれかねません」
 受講生の大学生C代さん「1曲買ってみたけど、5分の曲をダウンロードするのに20分以上かかったわ。電話代もかさむし、利用者にはこっちの方が問題 よ」
 金丸さん「日本では、電話回線で送れるデータの量が少ないため、現時点ではどうしても時間がかかってしまいます。そのせいか、bitmusicには月平 均で60万件ものアクセスがありますが、実際にダウンロードされるのは1万―1万3000件にすぎません。ただ、今後、大量のデータを送れる次世代携帯電 話などが普及すれば、素早くダウンロードできるようになりますし、パソコンが苦手な人でも音楽配信を楽しめるようになります」
 A美さん「そうなるとCDが売れなくなるんじゃないかしら」
 レコード販売大手の新星堂EC営業部長の片倉弘之さん「シングルは価格の安い音楽配信に置き換わるかもしれませんが、むしろ音楽配信で気に入った曲の 入っているアルバムを店頭で買うなど、CDの販売に役立つ面もあるでしょう。店頭にダウンロード端末を置くなど、レコード店でも多様なニーズに対応する準 備を進めています」
 ■ 日本のレコード市場は95年以降、年間6000億円前後で伸び悩み、99年の生産高は15年ぶりに前年を割った。今は音楽配信はまだ市場規模の1% にも満たないが、レコード店に足を運ばない中高年層の開拓などで、市場の活性化への貢献が期待されている。しかし、セキュリティーや課金システムに多額の 投資が必要で、現状で利益が出ている配信業者はほとんどない。現在は配信曲数が限られているうえ、乱立している記録メディアの様式やコピー防止機能の統合 などの課題も指摘されている。
 日本レコード協会事務局長の千葉卓男さん「将来は、廃盤や店頭に並べきれない曲をそろえるなど、音楽配信ならではの使い方も考えられます。ただ、ヒット 曲が出るまでには、新人への投資や販売促進に費用がかかります。無名の人が音楽配信だけでメジャーになるのは難しく、今後も主流はCDだと思います」
 博士「社会のネット化には明暗の両面がつきまとう。便利さの反面で著作権などの問題を抱える音楽配信はそのことを象徴する存在といえそうだ。家庭への光 ファイバー網の敷設などで通信基盤の整備が進めば、音楽よりもデータ量の多い映像のネット配信も容易になる。音楽配信が軌道に乗るかどうかは、今後のソフ ト流通の成否を占うモデルケースになるだろう」
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◆『読売新聞』2000.10.13. [21世紀をどう踏み出すか](8)ネット社会=2 ナプスター訴訟(連載)
 ◆音楽プロ89社 「サイバーポリス」と協力
 人気アイドルの首から下を別人のヌードにすげかえた合成画像「アイコラ」がインターネットにはんらんする事態に業を煮やした音楽プロダクションの連合体 「日本音楽事業者協会(音事協)」が、サイバーポリスの異名をとる警視庁ハイテク犯罪対策総合センターと協力し、悪質なウェブサイトを刑事告発する準備を 進めている。(芝田裕一)
 アイコラはアイドル・コラージュの略。画像ソフトの機能向上に伴い、簡単に合成が出来るようになり、四年ほど前から増加傾向にある。
 民間調査会社「ワイズワークスプロジェクト」(東京都台東区)の推計では、日本人のアイコラを公開しているサイトは、国内外に五千か所以上も存在すると いう。
 画像数点のものから、千点以上保持するサイトまで、規模はさまざま。若い売れっ子アイドルや清純派ほどアイコラの人気も高く、ヌードにとどまらない、ひ わいな画像も少なくない。デビューの早かったアイドルの場合、児童ポルノと見まがうアイコラもやりとりされている。
 無料で閲覧できるものもあるが、最近は、ダイヤルQ2で課金する有料サイトが目立つ。音事協は、加盟八十九社所属のタレントを素材にしたアイコラサイト を発見する度にメールで警告してきたが、一見バナー広告と思われる部分が入り口だったり、パソコン画面を範囲指定し、反転させると初めて入り口が出現する 隠れサイトなど、偽装の手口は巧妙化する一方だ。
 また、一時的に画像公開を中止しても、名前と開設場所を変えてすぐに再開する悪質サイトが後を絶たない。
 このため、サイバーポリスと対応を協議。アイコラは写真集のカットなどを無断使用しているケースが多く、たいていの場合、著作権侵害で告発可能という見 解を引き出し、一月末にあるアイコラ雑誌を初めて告発したのに続き、ネット上の摘発第一号となる悪質サイトの絞り込みに入ったという。
 アイコラに神経をとがらせ始めたプロダクションの動きは、メディア多様化時代を迎え、商品価値の高いタレント肖像権の管理強化に向かう芸能界の流れを反 映したものだ。二十―三十本のバナー広告が張り付くアイコラの人気サイトは、月数百万円の収入があると推定され、プロダクションから見れば、資本と労力を つぎ込んで育てたアイドルのイメージを勝手に利用した違法ビジネスにほかならない。
 しかし、サイト開設者の特定が難しく、証拠も残りにくいのがネット犯罪の特徴だ。危険を察知すれば、あっという間にデータを引き揚げてしまう。画像を米 国から南米の接続業者のサイトへ移した例もあるという。
 音事協の尾木徹常任理事は「いたちごっこになるおそれはあるが、財産権の侵害をこれ以上放置できない。徹底的に追及していきたい」と話している。
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◆『朝日新聞』2000.10.26. 図削除・出版物回収を 著作権侵害で県や平塚市などに地裁/神奈川
 地質学研究団体に所属していた平塚市博物館の学芸員が、団体の調査データを使って、県と平塚市の出版物に論文を掲載したのは著作権の侵害にあたるとし て、団体と会員らが出版物の差し止めなどを求めた訴訟の判決が二十五日、横浜地裁であった。岡光民雄裁判長は「地層の組成などをスケッチ風に描くのは創作 性を感じさせる要素があり、著作物性が認められる」などとして、論文の中にある地質図など三カ所の削除と出版物の回収などを県と平塚市と学芸員に命じた。
 訴えていたのは、大学の研究者や小中高校の教師らでつくる研究団体「関東第四紀研究会」の会員ら。学芸員が一九八〇年ごろから公表した五つの論文の中に 収めた地質図やスケッチなど二十九カ所について、「共同研究で得たデータなどを基に単独で執筆したのは、著作権の侵害」と主張して、九三年に提訴。
 県などは「自然科学的な調査データは思想を含んでいないので著作物ではなく、保護の対象にはならない」などと反論していた。
 判決は、スケッチなどについて著作物性を認める一方、そのほかのデータは「自然的事象を整理したもので、その内容自体は著作物性はない」として侵害を認 めなかった。
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◆『朝日新聞』2000.11.09. モバイル読書、米でじわり浸透 Eブックで省スペース、更新もOK
 【サンノゼ8日=西崎香】店で本を買わずにコンパクトディスク(CD)やネットを使って書籍の内容を電子的に手に入れ、パソコンや画面つきの小さな装置 を使って読む「電子本(Eブック)」が米国で普及しはじめている。「部屋を本に占領されない」という省スペース機能のほか、中身を更新すれば常に最新情報 を盛り込めるという柔軟性も受けた。人気作家のスティーブン・キング氏がネットでしか読めない新作を有料配信するのを始め、数冊の本から必要な部分だけを 注文し、自分専用の一冊の本に製本するサービスも近く始まる。こうした「モバイル読書」の浸透に対し、従来型の出版、小売業界は神経をとがらせている。

 ニューヨーク大歯学部は今学期から、Eブックを使った講義を始めた。約百二十冊の専門書を一枚のCDに収め、パソコンで読む。重要な記述にアンダーライ ンを引いたり、ページの余白にメモを書き込んだりでき、当然、印刷も可能だ。来年から新入生は全員がこの方式にする方針で、教授らが授業で使う資料や講義 メモをネットを使って配信する機能も検討している。購入した後も毎年の使用料を払えば、最新の医学情報を更新できるので、開業した後も利用できる。
 新入生のクリス・オングさん(二四)は、「カバンは軽くなり、図書館を個人所有している感じ。いつでも、どこでも、必要な情報を引き出せる。授業や試験 にも持ち込めるので、単なる記憶力よりも、医者としての本当の実力が問われる時代になりそうだ」と話す。
 Eブック業者が版元に一定額を支払うため、学生の購読料は、実際の本を買った場合の三分の一という。同歯学部のマイケル・アルファノ学部長は、「医学書 は絶版を避けるため値段が高くなりがちで、改訂版はコストがかかるので四−六年に一回というケースが珍しくない。しかも、学生が本を借りてコピーするた め、出版社の経営が悪化し、歯学分野の出版社は過去十数年で五分の一の四社に激減した。Eブックならこうした弊害が減る」と期待する。同様の試みは米国内 の十近い大学で本格化している。

 ○4年で6%?
 ネットを使って欲しい本の中身を手に入れ、パソコンや手のひらサイズの読書端末に記録させて読むタイプのEブックも今年から増えている。デジタル化され た出版物は現在、「全体の一%未満」といわれるが、このタイプの普及で、四年後には六%に成長するとの見通しもある。米国ではネットで手に入れる音楽や映 画の人気が急上昇中で、いずれ書籍でも同じ現象が起きる、という読みだ。

 ○焦る出版業界
 Eブックに脚光をあてたのが、人気作家キング氏による「ネット限定本」のヒットだ。キング氏が七月、新作ホラー小説「植物(ザ・プラント)」を自分の ホームページで「一章ごとに一ドル」という有料サービスを始めると、初日に予想を上回る四万人強が閲覧した。前回ネットで公開した作品の収入も十三万ドル にのぼり、出版社を使った場合の収入の九倍に達したといわれる。これまで出版業界は、Eブックがネットで無料交換され、著作権侵害につながる懸念から、デ ジタル化の取り組みに熱心ではなかったが、「キング現象」で「各社ともあわてて参入しはじめた」(出版エージェント)。

 ○標準争い激化
 Eブック市場は、読み取りのソフトなどの「業界標準」をめぐり、マイクロソフトとアドビ、ジェムスターの三陣営が出版・小売業界を巻き込んだシェア争い を今年から激化させている。
 刺激された全国展開の大手書店バーンズ・アンド・ノーブルは今後五年間で計百万冊を電子化し、書店での印刷サービスもてがける考えだ。アマゾン・ドッ ト・コムも本格参入を検討中だ。電子出版のiユニバースは、デジタル化した本の目録から、客が本を複数選び、それぞれ気に入った部分を抜粋して一冊に製本 するサービスを今年末から始める。「パリに旅行するので、グルメガイドと印象派後期の画集、好きなサルトルの作品を小冊子に」ということも可能になりそう だ。
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◆『読売新聞』2000.11.23. 米・ネット音楽配信社、無料交換に警告メール ナプスター利用者を把握 
 【シリコンバレー21日=京屋哲郎】ネット音楽配信会社の米Eミュージック・ドット・コムは二十一日、音楽無料交換サービス会社の米ナプスターの利用者 がEミュージック社の所有する曲をネット上で無料交換した場合、それを自動的に把握し、ナプスターの利用をやめるよう電子メールで警告する技術を開発した と発表した。
 Eミュージック社によると、警告を受けた利用者が二十四時間以内にナプスターの利用を中止しない時はナプスターに連絡し、ナプスターがサービスの提供を 中止することで両社は合意したとしている。
 電子メールでの警告について、Eミュージック社は、「配信する約十四万曲のうち、半分以上がナプスターを利用して無断で交換されており、著作権を守るた めの手段」と説明している。
 ナプスターは、大手レコード会社から「著作権侵害に手を貸している」として提訴され、現在、米連邦高等裁判所で控訴審中だ。
 また、ナプスターは先月、裁判の原告として参加している大手レコード会社BMGの親会社である独ベルテルスマンと提携し、BMGが所有する曲については 有料サービスに切り替えることを決めており、ナプスターの無料音楽配信サービスは大きな転機を迎えている。
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◆『朝日新聞』2001.05.28. ネット犯罪 森井教授のインターネット講座・第176回 /徳島
 徳島県警のハイテク犯罪対策室が中心となって佐賀市内の自宅のコンピューターや海外のサーバに市販のゲームソフトを不正に置き、自分のホームページから 一般のユーザーにダウンロードさせていた男性を著作権法違反の容疑で逮捕しました。そのゲームソフトの著作権を持つ会社は再三にわたって警告を出していま したが、無視していたため、法的な執行となりました。おそらく男性は大きな罪の意識がなく、犯行を積み重ねる結果となったのでしょう。
 著作権を無視するということは、その著作権を有する企業、あるいは作者の人権や存在そのものを侵す重大な罪であるということを認識しなければなりませ ん。インターネットやその周辺技術の出現以前は、広い範囲で著作権を侵すようなことは一般の人にとって非常に難しいことでした。しかし、現在では容易に行 うことができます。
 罪の意識がなくとも結果として著作権を大きく侵している場合もあるのです。IT革命と言われる現在、文字通り革命に伴った法的整備と、さらに新しい倫理 観を身につけることが必要となってきています。
 最近、出会い系サイトを仲介とした犯罪が多発しています。これは主に携帯電話の電子メール機能を利用して、見ず知らずの者が連絡を取り合うきっかけを演 出するものです。テレホンクラブなど、このようなシステム自体は古くからあり、インターネットや携帯電話を利用することによって、より身近になってきたの です。
 言わば、今まで一般の人がそのようなシステムになかなか接することができなかったわけですが、システムの方から駆け足で近づいてきたのです。危険なもの に近づかないという消極的な対策から、危険なものを回避するという積極的な対策をとるべき時代になったといえるのです。
 ネット犯罪自体が一般の人に駆け足で近づいて来ています。これからはだれもがネット犯罪から肩をたたかれることを肝に銘じるべきでしょう。メールでの言 葉巧みな「ねずみ講」の勧誘、インターネットを使った不法薬物販売、インターネットでの販売やオークションでの詐欺など、枚挙にいとまがありません。
 実社会において、自分の一つ一つの行動に、「これは違法、これは合法」と意識することなく法を順守していることと同様、インターネットの世界でも、意識 することなく法を順守し、秩序に沿った利用をするためにも、新しい倫理観、つまり情報通信倫理とも言える概念を身に着けることが求められています。
 最後に冒頭のホームページでのゲームソフトの不正な公開ですが、アクセス(ソフトのダウンロード)が数カ月間で145万件以上もあったそうです。ダウン ロードした側にも著作権侵害の罪を犯していることを自覚すべきなのです。
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◆『読売新聞』2001.07.15. [e−ライフIT+経済]音楽CDをパソコンで聴く 大量録音、持ち歩きも自在
 ノートパソコンに音楽CDを「録音」して持ち運び、音楽を聴く人がいる。ハードディスクに音楽データを圧縮して記録するので、何十枚ものCDを収納でき るうえ、携帯型のプレーヤー(メモリー・オーディオ・プレーヤー)にデータを移すこともできる。IT時代の音楽の楽しみ方に挑戦してみた。
                          (三宅 隆政)
 ◆親せき筋のCD
 音楽のCDとパソコンのCDは、別の物に見えるが、実は親せき同士だ。音楽をデジタル化したものが音楽CD、コンピューターのプログラムをデジタル化し たものがパソコンCDだ。デジタルでつながっている。親せき筋だから、音楽CDの音楽をパソコンに移すのは、難しいことではない。パソコンに入れた音楽 を、携帯型のプレーヤーに移すのも簡単だ。この携帯型プレーヤーを一般にメモリー・オーディオ・プレーヤーと呼ぶ。
 音楽CDの音楽をパソコンに“録音”するには、そのためのパソコン・ソフトが必要だ。このソフトは、パソコン店で多数販売しているが、メモリー・オー ディオ・プレーヤーを買うと、たいてい付録でついている
 大阪・日本橋の電器街に足を運ぶと、売り場には約30種類のプレーヤーが所狭しと並び、値段も1万円台から4万円台まで幅広い。店員さんの勧めで、初心 者向きという機種を買った。32メガのメモリーを内蔵する本体が1万4800円で、別売りの外付けメモリーが約2万円だ。
 このプレーヤーに付録で付いているソフト(CD―ROM)をパソコンに組み込むだけで、音楽CDの音楽をパソコンに組み込む準備は終了だ。
 ◆データを圧縮
 手元にあるビートルズの音楽CDをパソコンに入れると、ソフトが動き、音楽CDに収録されている曲数と、曲ごとの演奏時間を画面に表示した。
 さらに、「曲名のリストをインターネットから取得しますか」と尋ねてきた。指示に従うと、それまで「トラック1」「トラック2」と味気ない表示だったの が、「イエスタデイ」「イエロー・サブマリン」と、本物の曲名に変わった。
 音楽界が協力して作ったデータベースがあり、それぞれの音楽CDの情報をネット経由で読み取り、曲名を送り返してくるのだ。これは便利だ。
 たくさんの曲を収録できるのは、パソコンが音楽データを圧縮するからだ。圧縮技術でもっとも普及している方式はMP3といい、音楽CDとほぼ同じ音質で 十分の一のデータ量に圧縮する。仮に1曲の演奏時間を3分とすると、32メガの記録容量があれば10曲収録できる計算だ。1ギガ(1ギガは1000メガ) あれば、300曲以上になる。これは、音楽CDの30枚近い数だ。
 最近は、ハードディスクの記憶容量が20―30ギガあるノートパソコンも珍しくない。その気になれば、ビートルズの全アルバムに、ベートーベンの全交響 曲、マイルス・デイビスの全録音をパソコンに入れて持ち歩くことができる格好だ。そう考えるとワクワクして、CDをとっかえひっかえ、パソコンに収録し た。
 ◆携帯プレーヤー
 パソコンに収録した曲を聴くのは簡単だ。ヘッドホンをパソコンの出力端子に差し込み、ソフトを起動すると、パソコンの画面にCDプレーヤーのイラストが 出て、その「プレイ」を押すと演奏が始まる。
 「持ち運ぶのはちょっと」という場合は、パソコンに収録した音楽を、携帯用のメモリー・オーディオ・プレーヤーに転送して持ち歩けば軽くていい。記者が 日本橋で買ったのがこれだ。
 プレーヤーの本体は電池を入れても100グラム弱と軽い。CDプレーヤーと違い、駆動部分がないので、ジョギングやダンスをしても音飛びしない。
 転送の手順は、〈1〉プレーヤーをパソコンに接続する〈2〉プレーヤーに付属しているソフトを起動する〈3〉パソコンに収録した曲の一覧表を出し、転送 したい曲を選ぶ――となる。
 転送した後も、音楽のデータは、そのままパソコン本体に残るので、何度でも、転送し直すことができる。
 ◆どんしゃり型
 音質はどうかというと、音楽データの圧縮率によってかなり変わる。曲を数多く収録するには、ひとつの曲のデータを思い切り圧縮すればいいのだが、それだ と、音が割れてしまい、鑑賞に堪えられなかった。
 音楽CDと同程度の音質が得られるという圧縮率で収録すると、無難な音になった。それでも、本格的なオーディオに比べると機械的な音で、潤いに欠ける感 じだ。高音と低音が強調されたいわゆる「どんしゃり」型の音になる。ただ、オーディオ・マニアでなければ、まずは、文句の出ない水準だろう。
 ただし、パソコンに収録した音楽CDのデータを他人に送ると、不正コピーとして著作権侵害になる。あくまで、自分用のものとして楽しんで下さい。
 
写真=パソコンで音楽を聴く人が増え、家電量販店の店頭にも関連商品が並ぶ(大阪・日本橋の上新電機で)
           ……………………………………
 ◆圧縮技術の進歩で身近に
 パソコンで音楽を聴くことが可能になったのは比較的最近のことで、MP3などデータの圧縮技術が進歩したのが大きな要因だ。
 インターネットを使った音楽配信との連携が注目されたが、料金の高さや配信曲数の少なさがネックとなり、普及は予想ほどには進んでいないようだ。むし ろ、自分が集めた音楽CDを記録したり、レンタルCDを録音してカラオケの練習をしたりする使い方が、人気を集めているという。
 メモリー・プレーヤーは発売されたばかりだが、昨年は20万―30万台売れたともいわれる。利用者は、当初はパソコンに詳しい30―40歳代の男性が大 半だった。しかし、徐々に音楽好きの大学生ら20歳代にも広がってきており、女性も2割程度を占めているという。
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◆『読売新聞』2001.10.09. 音楽・動画像ダウンロード、ユーザー間でファイル交換 著作権侵害へ対応急務
 ◆ファイル交換ソフト続々登場 米業界は訴訟で対抗
 インターネットのユーザー同士が音楽データを無料で交換できるシステムとして爆発的な人気を呼んだナプスターは、著作権侵害だとする訴えに敗れて停止し たが、その後、動画像も扱えるなど、さらに高度化したソフトが次々と登場、米国では一時のナプスター人気を超える勢いだ。危機感を募らせた米レコード業 界、映画業界は先週、共同で再び著作権侵害の訴えを起こした。しかしナプスターとは基本的にシステムが異なり、訴訟のいかんにかかわらず動きを止めるのは 難しいと見られる。日本への影響も時間の問題だ。(上伊沢沖宏)
 訴えられたのは、ファイル交換ソフトの開発をしているオランダの「ファストトラック」と、そのソフトをホームページ上で配布している「ミュージックシ ティー」(米国)、「グロクスター」(西インド諸島)の三社。ミュージックシティーだけで、今年四月以降、二千三百万人がソフトをダウンロードし一日に二 百万―二百五十万人が利用しているといい、米調査会社によると、ファストトラックを使って九月だけで十五億のファイルが交換されたという膨張ぶり。
 ファストトラックのソフトは無料でダウンロードでき、ユーザーがお互いのファイルを交換するのはナプスターと同じだが、ナプスターのように、ファイル名 を網羅したサーバーがない。ネットに接続しているユーザー同士が直接、お互いのパソコンを検索するのが違う。このため、訴えられたサービスが停止しても、 ユーザー間でのファイル交換はいつまでも可能。
 新ソフトを使った日本の楽曲はごく少数しか見当たらないところから、今のところ日本人ユーザーは限定的と見られる。しかし、日本レコード協会などの調査 によると、ナプスターが休止するまでに日本人利用者は約百万人に達し、一人当たり五十曲をダウンロードしたという実績もあり、富塚勇・日本レコード協会長 は「これから広がっていく可能性は非常に高い」と、警戒感を強めている。
 日本の著作権法では、無断コピーしたファイルの入ったパソコンをネットワークに接続するだけで違反になる。また、今国会に提案される予定の「インター ネットによる情報の流通の適正化に関する法律案」(仮称)が成立すれば、「個人間のファイル交換であっても権利侵害の事実を突き止めるのは可能だ」(岡本 薫・文化庁著作権課長)との主張もある。
 しかし、多数の個人利用者のファイル交換をどう突き止めるのか。新しい音楽著作権管理会社の一つ「ジャパン・ライツ・クリアランス」の荒川祐二社長は 「一つ一つのファイルを検索して、権利関係を整理し探し出すのは非常に困難」と話すなど、業界側も戸惑いを隠せない。
 そうした中、「違法ファイル監視のため、公的な第三者機関を設置すべきだ」(三野明洋イーライセンス社長)、「権利侵害を見つけやすいように著作権管理 会社共通のデータベースを作る必要がある」(加藤衛・日本音楽著作権協会常任理事)との声も出始めている。ファイル交換ソフトによる権利侵害への対応は急 務で、対岸の火事では済まされない状況だ。
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◆『朝日新聞』2001.11.29. 交換ソフトで著作権を侵害 京都府警、容疑で2人逮捕 【大阪】
 インターネットを介して個人のパソコン同士でデータのやりとりができるようにする「ファイル共有交換ソフト」を使って、市販ソフトを無料提供できるよう にして著作権を侵害したとして、京都府警ハイテク犯罪対策室などは28日、さいたま市指扇領別所、専門学校生今西貴秋容疑者(20)と東京都杉並区の私立 大1年の男子学生(19)を著作権法違反(公衆送信権の侵害など)の疑いで逮捕した。府警によると、同交換ソフトによる著作権侵害行為の摘発は全国初とい う。
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◆『読売新聞』2001.12.04. 「風雲急」音楽・画像ファイル無料交換ソフトついに逮捕者
 ◆著作権侵せば個人でも摘発
 インターネットを利用し、音楽や画像、ソフトウエアなどのデータを個人のパソコン間で直接やりとりできる「ピア・ツー・ピア(PtoP=対等の関係)」 型のファイル交換ソフトを巡る国内の動きが目立ってきた。先月一日には国内の企業が新たにサービスを開始し、レコード業界などが反発を強めているほか、同 二十八日には別のソフトで市販ソフトなどを送信可能な状態にしていたとして、二人が全国で初めて逮捕された。ADSL(非対称デジタル加入者線)などの常 時接続が急速に普及する中、著作権侵害にかかわる問題が拡大しそうだ。(福田淳)
 ファイル交換ソフトは数十種類が出回っているが、大きく分けると、データファイル自体は利用者自身が持ち、だれが何を持っているかというリストをサー バーが管理する「ナプスター」型と、リストも利用者間でバケツリレー式に伝えるため、サーバーの必要がない「グヌーテラ」型がある。
 先月から、日本MMO(東京都八王子市)が国内で始めたサービス「ファイルローグ」は前者の型。カナダで同様のサービスを行うITPウェブソリューショ ンズ社と技術提携してソフトを日本語化した。既に登録者は四万人を超え、登録ファイル数も百万以上になったという。松田道人社長は「うちはファイル交換の 場を提供しているだけ。著作権者から申し立てがあれば、そのファイルをリストから削除する」と、運営に自信を見せる。
 これに対し、日本レコード協会の富塚勇会長は、「現在の状況では、交換されるファイルの大半が著作権を侵害していることは容易に想像でき、ほう助に当た る」として、近く法的措置を取る構えだ。
 日本の著作権法では、著作物を無断でネットワーク上でだれでも入手できる状態にすることは、著作権の一つである「公衆送信権」を侵害する違法行為と明示 している。しかし、こうしたファイルのリストを置くサーバーを提供する行為を直ちに違法とする明文規定はなく、裁判所の判断を待つ必要がある。このため、 文化庁の岡本薫著作権課長は、「サーバー運営者でなく、著作権を侵害している利用者を直接訴えるのが筋だ」と指摘している。
 先月末のケースは、まさにこの例に当たる。著作権法違反の疑いで逮捕された二人は、「WinMX」というグヌーテラ型の特徴を持つソフトを使い、「アド ビフォトショップ6・0日本語版」など多数の市販ビジネスソフトや音楽ファイルを送信可能状態にしていたとされる。WinMXは、交換ファイル名に日本語 が使えることから、この種のソフトでは国内で最も利用者が多いと見られている。
 これらのソフトでは、利用時に利用者同士がインターネットに接続している必要があるが、高速常時接続の利用者が二百万人を超える中で、交換されるファイ ルも数メガ・バイトの音楽ファイルだけでなく、数十から数百メガ・バイトに上る動画や市販ソフトも当たり前になりつつある。
 今回の捜査にも協力したコンピュータソフトウェア著作権協会の葛山博志事業調整課長は、「音楽業界が先行する話だと思っていたが、市販ソフトの権利侵害 も見過ごすことのできない段階になった。登録者名を頻繁に変えても個人を特定するのは難しくはなく、今後も厳しい措置を取ることはある」としている。
 一方、PtoP技術の可能性を考えるサイト「ジェヌーテラ」を運営する川崎裕一さんは、「PtoP技術は、本来のインターネットの思想である分散型ネッ トワークを実現できる可能性を秘めている。違法なファイル交換はもちろん容認できないが、音楽に関して言えば、守られるべきアーティストの権利とレコード 会社の権利とは別で、アーティストと利用者が直結する新しい流通に使える面もある」と話している。
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◆『読売新聞』2002.01.29. インターネットと「うわさ」を追う “チェーンメール”が感動伝え本に(解説
 昔から人はうわさ話が好きだ。口づて、チラシ、ファクスなど、様々な手段で、真偽を判定しにくい話が流されてきた。今は電子メールだ。インターネットを 流れるうわさや、出所不明のストーリーを「ネットロア(ネットの民話)」と呼ぶ人も現れた。有益な情報もあるが、ネット特有の問題も抱えている。(解説 部・知野恵子)
 《分析》
 ◆悪意あると被害は甚大 難しい著作権者の特定
 「世界がもし100人の村だったら」という本が昨年十二月の出版以来、六十一万部のベストセラーになっている。仕掛け人は翻訳家の池田香代子さんで、 きっかけになったのは一通の電子メールだった。
 昨年十月初旬に池田さんのもとに届いた電子メールは「とても感動したので皆さんにも流します。少し長いのですがごめんなさい」と呼びかけ、世界の人口を 百人の村に縮めたら、男女、人種、言語、宗教などがどのような割合になるかを数値で表現。貧富の差や境遇の違いがなぜ起きるのかを読み手に問いかける内容 になっていた。
 「ニューヨークの同時テロ直後で、何かを予言しているように感じました。それで私も二十人ぐらいに転送しました」。だが、後で気づいた。「チェーンメー ル」ではないかと。
 チェーンメールは、次から次へと転送されるように仕組まれた電子メールだ。代表的なのはネット版の不幸の手紙だ。悪意のあるうわさをばらまく目的で使わ れることもあるので、チェーンメールは転送しないのがネット社会のエチケットだ。
 池田さんに届いたものも、「昔の人が……」などのチェーンメールによく使われる言い回しがあった。転送を反省した池田さんだが、同じ内容のメールが立て 続けに届き、相当な速さで広まっていることを実感した。「話の内容がいいので、チェーンメールと呼ぶより、インターネットとフォークロア(民話)を合成し て縮めた『ネットロア』と呼ぶことにしました」
 知人で出版社・マガジンハウスに勤める大沢房之さんに転送、本にする話がまとまった。大沢さんは「自分も友人に転送したところ『感動して泣いた』などの 返事が来たので、いけると感じた。これまで出版物は著者や企画が先行し、出版社が読者に供給する形だった。だが、今回は出版前にメールがかなり広がり、潜 在的ニーズが予想できた」と語る。編集を担当した同社の刈谷政則さんは「ネットの普及で『いずれ本がなくなる』という危機感を抱いていたが、本とネットは 相反するものではないことを証明できた」と、新手法に胸を張る。
 だが、難しい問題も浮上した。著作権問題だ。同社も出版にあたって頭を悩ませた。調べたところ、原文は一九九〇年に新聞に掲載された女性環境学者のエッ セーではないかということになった。しかし、原文は「1000人」の村で、文章の量もメールの三分の一程度だったという。広がる過程で加筆・修正されたと 推測される。同社では「文章の調子、内容が四つに分けられるので、少なくとも四人が加筆したようだ」と分析する。
 このため原文だけでなく、加筆や修正した人にも著作権があるかどうかを専門家と検討。百人に縮めたアイデアや数値には著作権がないことや、民間伝承の出 版例などを参考に、学者のエッセーに著作権があると判断。翻訳権を取得し、出版に際しては文章表現をオリジナルなものに変更するなどの工夫をした。
 うわさやストーリーはネットにつきものだ。悪意に基づいた情報が流されると被害は甚大だが、情報技術の進歩は流布を加速する。今後「100人の村」に続 くものが出てくる“土壌”はある
 インターネットに詳しい弁護士の岡村久道さんは「原文の著作者の許諾を得ないで電子メールで流すのは、著作権の侵害になる。許諾を得て流した場合でも、 その後に変更を加えた人の二次的著作物となるので、出版にあたっては変更を加えた人の了解も原則として必要」と言う。
 しかし、不特定多数の発信者の中で、権利者を特定することや、自分が書いたという証明も難しい。
 また、「転送に加担すると著作権侵害になるケースもある。ネットの気軽さだけでなく、こうした点も利用者は意識するべきだ。ただ、著作権の目的は文化の 発展なので、今回のような新しい動きをどう判断するかは、今後の大きな課題だ」と岡村さんは話している。
 《インタビュー》 川上善郎・成城大学教授
 ◆文字情報の複製容易 公的機関などに確認必要     
 インターネットでは様々な情報が飛び交う。心温まるものがある一方、不安や恐怖を抱かせるものも存在する。ネットのうわさにどう対処すべきか。川上善 郎・成城大学教授(社会心理学)に聞いた。
 ――「100人の村」の現象をどう見るか。
 川上 うわさには「ゴシップ」「流言」「楽しみ」などの種類がある。今回のケースは「楽しみ」に近いものだろう。身近な人の話ではないが、「こんなこと を聞いた」と語り始められるタイプだ。
 人間味のある、真偽不明のうわさは、ネットだけでなく、これまでに何度も広がった。例えば、一九八〇年代には、白血病で死期を目前にした英国の少年が、 ギネスブックに名を残すために、絵はがきをたくさん集めようとしているという話が広がり、その後もこの話が独り歩きしている。ネット普及後も同じで、「血 液不足で手術ができないので献血に協力を」というメールが広がり、病院に問い合わせが殺到したこともある。
 うわさは広めようと思って広められるものではない。聞き手に興味を抱かせ、他者に伝えようという気持ちにさせないと、途中で止まってしまう。「100人 の村」は、世界情勢を背景に、現在の時代にぴったり合ったので、広まったのだろう。
 ――インターネットによって、うわさの質や内容に変化はあるか。
 川上 インターネットは、文字情報の複製を簡単に作り出すことができるので、これまで伝えきれなかった長い話や、数字の入った話が広がりやすくなってい る。今回もそうだし、チェーンメールで広がっている「時間」の話などがある。毎日八万六千四百秒の時間が与えられ、それを明日に持ち越すことができないの で、有効に活用しようというものだ。
 携帯電話の「ワン切り警告」も同様だ。「携帯が一回だけ鳴って切れる。着信履歴の番号にかけると、十万円程度の請求がくる」という内容で、電話番号一覧 リストがついている。
 数字が入るとより本当らしくなる“効果”もある。数字だけでなく、化学式をつけるなど、科学の色彩を持つうわさも出てくると予想される
 ――なぜ、うわさを流そうとするのか。
 川上 その話を信じ込んでしまった場合は親切心だろうが、話を発信する楽しみもあるだろう。今まではよほど能力のある人しか、他人の関心を呼ぶ独創的な 話は語れなかった。しかし、ネットの特性を生かせばこれまで広がった話をアレンジしたり、書き加えるなどで、“ヒット作”を作ることも手軽だ。このため、 同じような話の変形が何度も出てくる。例えば八〇年代に、ファクスの普及を背景に「当たり屋リスト」が広がった。車を意図的にぶつける当たり屋がやってく るという警告と、車のナンバーリストが掲載されたが、今も繰り返し出てくる
 ――うわさやチェーンメールに振り回されないための防御策は。
 川上 警告ものは、公的機関などに確認することが大事だ。当たり屋情報なら警察、ワン切りなら国民生活センター、コンピューターウイルス情報ならウイル ス対策ソフト会社という具合だ。偽情報について公的機関が否定情報を流せば、うわさは消える。ネットの掲示板に「こんな話があるのだが」と問い合わせるの も一つの方法だ。ただし、掲示板に全文を載せずに要点だけにするべきだ。そうでないと、チェーンメールの拡散に手を貸すことになり、ネットの混雑や、問い 合わせ電話殺到などの混乱も引き起こしかねない。「多くの人に伝えて」という表現には注意が必要だ。
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◆『読売新聞』2002.02.02. 音楽ファイルの交換サービス停止を求める訴え 改善で新事業模索の道も(解説)
 ◆根絶困難、改善で新ビジネス模索の道も
 大手レコード会社十九社と日本音楽著作権協会が、インターネットを利用した音楽ファイルの交換サービス停止を求めた。(マルチメディア取材班・福田淳)
 東京地裁に出された仮処分申請の対象になったのは、様々なデジタルデータの交換サービス「ファイルローグ」を運営する日本MMO。利用者は、無料の専用 ソフトをパソコンに入れ、持っている音楽や画像などのリストを同社のサーバー(コンピューター)に登録する。一方、欲しいファイルを見つけたら、クリック するだけでファイル所有者のパソコンにつながり、そのデータが自分のパソコンに流れてくる仕組みを提供する。
 このように、個々のパソコンが直接、データをやりとりする仕組みは「ピア・ツー・ピア(P2P=対等の関係)」と呼ばれる。情報を大量にため込んだサー バーに接続が集中しないため、ネットワークへの負担が軽減され、災害時にも強いなど、インターネットの発展に貢献する可能性を秘めた技術とされる。
 しかし、レコード会社側は、「交換されている音楽ファイルの大半が市販のCDから複製されたもので、著作権者だけが持つ複製権や送信可能化権を侵害して いる」と主張する。送信可能化権の侵害とは、著作物を無断でパソコンなどに取り込み、ネットワーク上でだれでも入手できる状態にすることだ。
 他人同士がネットで著作物を勝手にやり取りする行為が著作権法違反なのは明白だが、交換を仲介するサービス自体を規制する法律はない。単純に規制すれ ば、自作の音楽や映像作品などの発表の場を奪うことにもなる。
 このため、日本MMOの松田道人社長は「交換の場を提供しているだけで、どんなファイルを交換するかは利用者の責任」との立場を取る。著作権侵害を禁止 した利用規約への同意をとり、権利者から申し立てがあればファイルをリストから削除する手続きも採用しているとし、「止めるつもりはない」と強気だ。
 これに対し、レコード会社側の前田哲男弁護士は「違法なファイル交換が行われていることは確実で、著作権侵害行為に積極的に加担している。申し立てで削 除などという消極的な対応では無責任」と、真っ向から対立する。
 しかし、仮にレコード会社の言い分が認められたとしても、それ以上に利用者が多いとみられる「WinMX」など、P2P型のファイル交換ソフトが既に多 数出回っており、違法コピーの交換がなくなるわけではない。しかも、WinMXなどはリストを登録するサーバーも必要ない仕組みで、訴えるには個々の利用 者を特定しなければならないという手間を伴う。
 昨年十一月、WinMXで市販コンピューターソフトを交換していたとして二人の逮捕者が出たものの、その後も利用者はほとんど減っていないのが実情だ。
 訴えの背景には、P2P型サービスが、近年の音楽CDの売り上げ減少に拍車を掛けるという業界の危機感がある。著作権侵害の行為が許されないのは当然だ が、根絶やしが困難な以上、米国で始まった「ミュージックネット」のように、安くて充実したサービスを業界がビジネスとして模索する道もあるだろう。現実 問題として、ファイルローグは、まだ快適な使い心地とは言えない状態だからだ。
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◆『読売新聞』2002.02.05. 違法音楽サイト被害 昨年後半で73億円超
 デジタルコンテンツの管理サービスを提供しているベリマトリックス・ジャパン(本社・東京)は、国内の違法音楽サイトによる被害額が、昨年六月から十二 月の半年間で七十三億円以上に上るとする調査結果を発表した。
 同社は、ウェブサイト上に公開されている著作権侵害の音楽コンテンツを自動的に探査するシステムを開発。試験を兼ねてこの期間に数回スキャンを行ったと ころ、三十以上の違法サイトが見つかった。シングルCD一枚を千円とし、公開曲数やサイトへのアクセス数などから推定すると、被害額は少なくとも七十三億 円以上になるという。
 同社では、「実際の被害はこの三―五倍以上ではないか」としている。
 同社では今月から、仲介サーバーを使わずに個人間でデータをやりとりできる「グヌーテラ」型のファイル交換ソフトにも対応した新型の探査システムの運用 を開始。企業やプロバイダー(インターネット接続業者)など向けに、自社のネットワーク内で不正コピーの公開や交換が行われていないか調べるサービスを提 供していく。(福田淳)
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◆『読売新聞』2002.03.05. 音楽ファイル、ネットで交換 日本版訴訟で注目される初の司法判断
 ◆米の判例適用できず、事業者はサービス継続
 インターネットを使い、個人同士で音楽をやり取りするサービスに待ったをかける訴訟が注目されている。米国では同様のサービスを行っていた会社が敗訴、 サービスを停止しているのに、日本の事業者は強気の姿勢を崩していない。著作権法を巡る日米の事情の違いがあるためだ。
 問題のサービスは日本エム・エム・オー(MMO、東京都八王子市)が提供する「ファイルローグ」。レコード会社十九社と日本音楽著作権協会 (JASRAC)は、著作権侵害だとして、さる一月の音楽ファイルの交換停止を求める仮処分申請に続き、先月二十八日に計三億六千五百万円以上の損害賠償 も求める訴訟を東京地裁に起こした。
 米レコード会社が一九九九年十二月に、ナプスター社を著作権侵害で訴え、勝訴した前例にならうものに見える。ところが、MMOは一貫して「違法行為はし ていない。サービスは止めない」と主張し続けている。なぜか――。
 米国での訴訟では、レコード会社側は〈1〉ナプスターのソフトが入った個人のパソコンに音楽をコピーする行為は、著作権訴訟の対象外となる私的利用から 逸脱する〈2〉ナプスター社は利用者間の違法コピーを助長(寄与侵害)しており、利用者を監督する責任(代位責任)を果たしていない――と主張、これが認 められた。
 一方、日本の著作権法では、著作物をだれでも入手できる状態にする「送信可能化権」は著作権者だけにあるとしているので、個人がファイル交換ソフトの 入ったパソコンに無断で音楽をコピーした時点で違法となり、米国での〈1〉の点での争いは生じようがない。
 しかし、「寄与侵害」や「代位責任」という考え方は日本の著作権法にはなく、ナプスター社に対する判例がそのまま日本に適用されないのがポイントだ。
 そこでJASRACなどは、「著作権法の解釈や運用には世界的な調和が求められる」とし、「交換されている音楽ファイルの大半が著作物で、MMOは利用 者と『共同で』送信可能化権を侵害している」とする。
 一方でMMO側が、「どんなファイルを送信可能化状態にするかは利用者の判断で、MMOは関与していない」と反論出来る余地があるわけだ。
 さらに、ファイルローグはナプスターと違い、音楽だけでなく動画を含むあらゆるデータが交換できることから、同社の松田道人社長は「個人が自作の音楽や 文学、映像作品を配布するなどの使い方もあるのに、サービス自体を止めろというのは一方的だ」と反発している。
 東京地裁の国内初の判断が、今後のネット業界や音楽業界の対応に大きな影響を与えることは間違いない。(福田淳)
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◆『読売新聞』2002.04.17. ファイル交換 動画配信などに将来性、発展阻む安易な著作権侵害(解説)
 インターネットの「ファイル交換サービス」に対する国内初の司法判断が出され、著作権を侵害する音楽ファイルの交換が差し止められた。(文化部 福田 淳)
 我々がパソコンでホームページやメールを閲覧する時は、その情報が蓄えられている「サーバー」という大型コンピューターを経由している。
 これに対し、サーバーを介さずにパソコン間で直接データをやりとりする技術は「ピア・ツー・ピア(P2P)」と呼ばれる。ファイル交換サービスもその一 種で、利用者同士が、音楽、映像などの好きなデータを簡単に送受信できる。
 今回問題となった日本エム・エム・オー(日本MMO)のサービス「ファイルローグ」は、どの利用者が何のファイルを持っているかという情報を提供する サーバーを持っている。だが、ファイルそのものは利用者間で直接、送受信する仕組みだ。
 レコード会社十九社と日本音楽著作権協会は、ファイルローグで著作権侵害の音楽ファイルが交換されているとして、今年一月、交換停止の仮処分を東京地裁 に申請。今月九日にレコード会社の、十一日に同協会の申請を認める決定が出された。
 今回大きな争点になったのは、ファイルローグ利用者の著作権侵害に、ファイル送受信には直接関与していない日本MMOが責任を負うかどうかだ。
 同地裁の決定では「日本MMOが違法ファイルを送信可能状態にしている」とし、同社の著作権侵害を認めた。同社は争う構えだが、交換停止を命じられた ファイル情報だけを削除する技術はないとして、十六日にサービスをいったん停止した。
 確かに、ファイルローグ上の音楽ファイルの大半が著作権侵害と思われる実態からすると、今回の決定は妥当かもしれない。しかし、日本MMO代理人の小倉 秀夫弁護士が「ファイルローグには、自作の音楽や映像作品の発表など多様な使い方がある」と主張するように、第一に責められるべきは個々の利用者のモラル の欠如だ。
 国際的に見ても、音楽ファイル交換ソフト「ナプスター」は米国で敗訴したが、オランダでは「カザー」というソフトについて先月末、控訴審で「利用者の著 作権侵害は開発会社の責任ではない」とする逆転勝訴判決が出るなど、司法判断が完全に定まっているわけではない。
 一方、インターネットに高速接続できるブロードバンドが最近、急速に普及している。これに伴い、高画質動画などの大容量データ配信も増加すると見られる が、従来のサーバー型の提供方法では膨大なアクセスがサーバーに集中するため、限界があるとも言われている。このため、負荷が分散されるP2Pの将来性に 期待が高まっている。
 P2Pの可能性を考える技術者らのグループ「ジュヌーテラ」の川崎裕一代表は「P2Pにはファイル交換以外にも、動画などの配信や、多数のパソコンが共 同で大型コンピューター並みの処理を行う分散コンピューティングなど、様々な利用法がある」と話す。
 今回の決定を機に、P2Pそのものを違法な技術ととらえる風潮が広まれば、P2Pの将来の芽をつみ取るおそれも出てくる。無料で手軽に入手できるからと いって安易に著作権侵害をすることは、インターネットの発展を阻害しかねない。利用者は改めて心すべきだ。
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◆『読売新聞』2002.12.26. 大岡信さんら作品掲載の入試問題「ネット配信、著作権侵害」 停止を申し立て 
 ◆教材会社相手に
 「全国最大規模の入試問題データベース」と銘打ち、有名中学や高校の入学試験問題をインターネットで配信している大阪の会社に対し、詩人の川崎洋さんや 大岡信さんら五人が二十六日、「自分の作品を掲載した試験問題を勝手に流され、著作権を侵害された」として、自分の作品の配信停止を求める仮処分を大阪地 裁に申し立てた。この会社は、自社のホームページに千二百九十五校の過去三年分の入試問題を掲載し、約五千人の会員を集めていた。試験問題には多数の詩人 や作家の作品が引用されており、川崎さんらは、ネットを利用した新手の入試ビジネスに警鐘を鳴らしたいとしている。
 仮処分を申請したのは、二人のほか、大阪弁の響きを生かした詩集でも知られる島田陽子さん、建築家でもある渡辺武信さん、故・寺山修司さんの著作権を引 き継いだ寺山映子さん。
 配信の停止を求められたのは、大阪市天王寺区の株式会社「教育教材ネット研究所」(杉本弘昭社長)。
 申立書などによると、教育教材ネット研究所は、昨年十月から全国の中学、高校の入試問題を集め、解答と解説を付けて自社の会員制ホームページに掲載して いる。会員登録をしてID(認識コード)とパスワードを入手すれば、二〇〇〇年度以降の三年分の試験問題を閲覧し、印刷することもできる。ネット研究所で は「入試問題集を二冊購入する費用で全国の入試問題を自由に使える」と宣伝しており、来年四月から年会費六千円で本格的に運営することにしていた。
 この入試問題の中には、大阪薫英女学院高校の二〇〇〇年度入試で出題された川崎さんの「こもりうた」、二〇〇二年度に筑波大付属駒場高校で出題された大 岡さんの「人生の黄金時間」など七作品、日本女子大付属高校の二〇〇二年度入試に出題された渡辺さんの「住まい方の思想」を含む、五人の詩人の作品が引用 されている。
 川崎さんらは「ネット研究所は突然、『今年末までに意思表示がなければ配信に同意したとみなす』という趣旨の文書を送りつけるなどして強引に掲載してい る」と指摘している。
 これに対し、ネット研究所の間屋口亨編集長は「文書で使用許可をもらっているが、同意を得られない作品は急ぎ削除する」と説明している。
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◆『読売新聞』2003.01.30. 音楽ネット交換サービス、著作権侵害認める/地裁中間判決 
 インターネットで音楽データなどを無料でやり取りする「ファイル交換サービス」を巡り、日本音楽著作権協会(JASRAC)と日本レコード協会加盟のレ コード会社十九社が、国内向けに同サービス「ファイルローグ」を運営する日本エム・エム・オー(MMO、本社・東京都八王子市)と同社の松田道人社長を相 手取り計約三億六千五百万円の損害賠償を求めた訴訟の中間判決が二十九日、東京地裁であった。
 飯村敏明裁判長は「MMOのサービスは原告の送信可能化権、自動公衆送信権(著作権の一部)を侵害している」として、原告側の主張通り、MMO側の著作 権侵害と損害賠償責任を認めた。今後、賠償額について審理し、最終的な判決が下される。
 判決によると、MMOのサービスでは、交換される音楽ファイルは利用者のパソコンに内蔵されているとはいえ、MMOのサーバーに接続することで他の利用 者の求めに応じて自動的に送信できる状態となる。
 したがって、利用者のパソコンはMMOのサーバーと一体となって音楽ファイルを送信している、としている。
 判決に対し、JASRACの吉田茂理事長は「今後の著作権保護にとって、大変意義のあること」とし、日本レコード協会の富塚勇会長も「期待した通りの判 決」と述べた。一方、MMOの松田社長は「ファイルローグはファイル交換の交通整理をしているに過ぎない。基本的には利用者と権利者で解決すべき問題で、 MMOの権利侵害は認められない」とし、最終的な判決を待って控訴する構え。
   
 〈中間判決〉一般の民事訴訟で最終的に言い渡される判決が、正確には「終局判決」と言われるのに対し、終局判決に先だって、一部の主要な争点について裁 判所が示す判断。裁判所は中間判決に基づき、終局判決を出さなければならない。中間判決だけをとらえて上訴することはできない。
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◆『朝日新聞』2003.01.30. ネットの音楽交換サービス「著作権侵害」と判断 東京地裁中間判決
 不特定多数のインターネット利用者が、音楽CDなどの電子ファイルを高い音質のままネット上で容易に無料で交換できるようにするサービスが、著作権を侵 害するかどうかを争った訴訟で、東京地裁は29日、「権利者の許諾なしに電子ファイルを交換できるようにすることは、著作権侵害にあたる」という判断を示 した。(11面に関係記事)
 音楽や映画のファイル交換をめぐっては現在、利用者のパソコン間で直接交換できるソフトが無料で出回っている。このため、ファイル交換の運営会社を経由 しなくてもデータをやりとりできるようになった。違法状態はより広い範囲で野放しになっており、司法が現実に追いついていないのが実情だ。
 問題になったのは、「日本エム・エム・オー」(MMO、東京都八王子市)が01年11月に始めた「ファイルローグ」というサービス。利用者はMMOのコ ンピューター(サーバー)に接続して曲名などを選択すると、楽曲のファイルを持つ別の利用者につながり、ネット上で受信する。MMOのサーバーには楽曲の ファイルは蓄積されていない。米国で同様のサービスを提供したナップスター社も、訴訟で巨額の著作権使用料の支払いを余儀なくされている。
 訴えていたのは、日本音楽著作権協会(JASRAC)と国内のレコード会社19社で、MMOにファイル交換サービスの差し止めと計3億6533万円の損 害賠償を求めている。
 この日は、本判決の前に争点を整理するための中間判決で、飯村敏明裁判長は「利用者に著作権侵害行為をさせている主体はMMOで、計約3万7千曲がファ イル交換されていたことについて損害賠償義務を負う」と判断。今後、サービス差し止めの可否と損害額が審理される。
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◆『朝日新聞』2003.02.06. ネット上の著作権 交換仲介業者も侵害の主体、地裁判決に議論の余地も(解説)
 インターネット上で交換されたファイルが著作権違反なら、交換を仲立ちしたサービス業者も「著作権侵害の主体」とする判決が示された。(マルチメディア 取材班 上伊沢沖宏)
 米国でインターネットを使って音楽ファイルを交換する事業をしていたナプスターが著作権法違反と判断されたが、今回の裁判はその日本版として注目されて いた。
 ユーザーがピークで六千万人以上に達したナプスターのサービスを使うと、個人個人が自分のパソコン内にある音楽ファイルを多くの人と直接交換出来た。ナ プスター自身は音楽ファイルを持たず、誰がどんな曲を所有しているかをユーザーの届けによって情報を提供するだけだったが、米レコード業界に著作権侵害で 訴えられ、解散に追い込まれた。
 音楽に限らずあらゆるデジタルデータの交換を提供する点がナプスターと異なるものの、被告の日本エム・エム・オー(MMO)が提供していた「ファイル ローグ」はナプスターと基本的に同じ仕組みだ。だが、日米では著作権法が異なり、論点も異なっていた。
 米国では、ネットを使った複製ファイルの勝手な交換が著作権者の利益を損ない、それをナプスターが助長している点が違法とされた。しかし日本ではより厳 しく、違法なファイルを誰かがアクセス出来る状態に置くだけで違法(公衆送信権の侵害)となる。
 そこでMMOは、自らは交換の便宜を図っているだけに過ぎず、違法なファイルを複製し送信できるようにして著作権を侵害しているのは、それぞれのファイ ルを持っている利用者個人だ、と主張していた。
 しかし、東京地裁の中間判決は、原告側の主張通り、MMOのサーバーは、違法なファイルが保存されている会員のパソコンと一体となってインターネットに 違法ファイルを送信しており、権利侵害の主体だ、との判断を下した。
 実態的に違法ファイルが横行する中で、著作権保護を明確にした判決は、妥当なものと言えよう。だが、違法ファイルをコピーも蓄積もしていないMMOを 「侵害の主体」と判断したことには、今後、議論を呼ぶ可能性がある。
 著作権を侵害した場合、「三年以下の懲役、または三百万円以下の罰金」の刑事罰が科される。今回は損害賠償を求める民事裁判だが、刑事裁判となれば、今 回の判決のように、侵害の主体を広げて解釈するのは許されない。ネットを巡る法律問題に詳しい岡村久道弁護士は「同じ法律の下で、刑事と民事で食い違いが 生じてしまいかねないのは問題」と指摘する。
 また、昨年五月に施行された、「プロバイダー責任法」の適用にも影響しかねない。同法では、発信者が著作権を侵害した違法ファイルや、名誉を傷つける情 報などをネットで流しても、情報を流す手段を提供したプロバイダーが適切な措置を講じれば責任を問われないなどと定めている。ただ、同法では、プロバイ ダーが発信者を兼ねていた場合は免責されない。
 このためMMOの小倉秀夫弁護士は「判決に従えば、プロバイダーからホームページの領域を借りた利用者が、違法ファイルを配信した場合にも、MMO同 様、利用者と『一体となって権利を侵害した主体(送信者)』とされてしまいかねない」と主張する。
 違法情報を発信している主体かどうかは解釈次第で、プロバイダーなら、誰もが発信者と同一視され、責任は免れない可能性がある、という議論も成り立つ。
 同法におけるプロバイダーというのは、趣味で掲示板を管理している個人利用者も対象になるなど幅が広い。投稿欄を設けたホームページを持つ個人にとって も無縁ではない。
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◆『読売新聞』2003.02.14. 無断演奏にカラオケリース、著作権侵害と判断 大阪地裁 【大阪】
 社団法人「日本音楽著作権協会(JASRAC)」(東京)の許諾を得ずにカラオケの無断演奏をしている飲食店に、カラオケ装置をリースすることなどが著 作権の侵害にあたるかどうかが争われた訴訟の判決が13日、大阪地裁であった。小松一雄裁判長は「店が著作物使用の許諾を得ていないことを知りながら、 リース業者は装置や楽曲データの提供を続けて店の著作権侵害を手助けしている」と指摘。同協会の請求通り、各店舗が楽曲データを再生できないような措置を 講じるようリース業者に命じた。
 (30面に関係記事)
 同協会の代理人によると、無断演奏店に対する通信カラオケリース会社の事業を「著作権の侵害にあたる」と認めて演奏の差し止めを命じた司法判断は初め て。
 訴えられたのは、大阪市都島区の音響機器リース販売会社「ヒットワン」。判決によると、同社は98年以降、スナックなどの飲食店に業務用カラオケ装置を リースし、カラオケ用楽曲データを提供している。配信している店舗のうち大阪、兵庫両府県内の計93店は、同協会と音楽著作物の使用料を支払う契約を結ん でおらず、同社も確認をしなかった。
 判決は、同社が楽曲の演奏に欠かせないカラオケ装置を店に提供している▽通信回線を通じて一定の信号を装置に送れば無断演奏を停止できるのに放置してい る▽同社の得るリース料が各店舗での演奏と密接な結びつきがあることなどを指摘し、同社が著作権法の定める「著作権を侵害または侵害するおそれがある者」 にあたると結論づけた。

 ●日本音楽著作権協会の加藤正彦常任理事の話 すべてのカラオケリース業者が判決を厳粛に受け止め、著作権侵害を発生させないことを前提に業務をしてい ただくことを切に期待したい。

 ●「ヒットワン」の蔭久晋専務取締役の話 判決内容を把握しておらず、具体的なコメントは差し控えたい。
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◆『読売新聞』2003.02.25. プロバイダーが相次ぎ規制 ファイル交換ソフト 「ネットの混雑」理由に 
 ◆本音は著作権侵害対策?
 個人間で音楽や映像を直接やりとりできるインターネット技術「ピア・ツー・ピア(P2P)」などの利用を規制する接続プロバイダーが相次いでいる。ネッ トの混雑を招くというのが表向きの理由だが、違法な音楽ファイルの交換などを放置すれば、事業者として著作権問題の責任を問われかねないという思惑もある ようだ。(溝井守)
         ◎
 いち早く動いたのが、十八局のケーブルテレビ網で接続サービスを提供するジュピターテレコム。昨年夏以降、送受信データ量が飛躍的に増加した利用者の使 い方を分析した結果、ファイル交換ソフトによるデータが六割以上を占めていた。このため、昨年十一月、「ほかの利用者の通信環境を圧迫している」と、送受 信量の多い特定のユーザーの利用を試験的に制限することを宣言、複数のケーブルテレビ局管内で実施しているという。
 ぷららネットワークスは昨年十二月、「通信データ量が平均的利用を大幅に超え」「ネットワークに障害を起こした」ユーザーには、利用方法の改善を求めた 上で、従わなかった場合、契約を解除できる条文を会員規約に追加した。
 同社は「ホームページ閲覧など通常の使い方なら、99・99%の利用者には該当しない」としており、狙いはファイル交換ソフトなどを使うヘビーユーザー 層。また、朝日ネットも同月、規約にほぼ同じ内容の付則を設けた。
 こうした動きについて、ネット問題に詳しい紀藤正樹弁護士は「著作権侵害問題が注目される折、問題化した場合の捜査機関への対応や、プロバイダー自身が 法的責任を問われる将来的なリスクを避けたいという本音が、背景にあるのでは」と指摘する。
 また、P2P技術について「今後、ホームページの閲覧と車の両輪をなすぐらいの可能性を秘めている」とし、「それを制限する動きは、ネットの可能性を奪 い、国益すら損なう恐れがある」と警告している。
 一方、ニフティ、「BIGLOBE」を運営するNECなど大手は、「通信量の増大には設備増強などで対応するのがプロバイダーの責務」として、「ネット の混雑」を理由にした制限には踏み込んでいない。
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◆『朝日新聞』2003.04.24. ネット販売容疑で逮捕 交換ソフトで入手、コピー 京都 【大阪】
 パソコン間でデータを送受信できる「ファイル交換ソフト」を使い、ワープロソフトなどを不正に入手し、ネットオークションで販売したとして、京都府警は 23日、同府城陽市寺田東ノ口、無職小出一成容疑者(27)を著作権法違反の疑いで逮捕した。
 調べでは、小出容疑者は、交換ソフト「WinMX」を使い、無料で入手したワープロソフトなどの海賊版を作成。1月22、24日、福岡県の男性(50) ら2人に計約6千円で販売した疑い。府警は、同容疑者の自宅から映画や音楽などの海賊版ソフト約1200枚を押収。同容疑者が昨年12月からの2カ月間で 約20万円を稼いだとみている。
 関係者によると、交換ソフトを使って個人間で映画ソフトなどをやり取りする著作権侵害が最近、問題になっている。社団法人・コンピュータソフトウェア著 作権協会は「交換ソフトで入手し、コピーを販売した事件の摘発は初めて」と指摘している。
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◆『朝日新聞』2003.06.20. 「地図無断複製」 パイオニア子会社をゼンリン提訴へ 【西部】
 ゼンリンは19日、パイオニアの地図ソフト制作子会社がゼンリン製の住宅地図を無断複製しているのは著作権侵害にあたるとして、制作会社に対して数億円 の損害賠償を求める訴訟を検討していると発表した。
 この会社はパイオニアの100%出資子会社「インクリメント・ピー」(本社・東京都目黒区)。ゼンリンによると、インクリメント・ピーは地図ソフトの データベースづくりを担当する東北開発センター(盛岡市)でゼンリンの住宅地図を数百枚無断コピー。1台ごとに購入が必要なゼンリンのパソコン用地図ソフ トを、複数のパソコンで使える環境にしていた、という。
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◆『朝日新聞』2003.08.02. 県警、電子メールネット創設 企業など415カ所に配信 /群馬
 パソコンやインターネット関連の犯罪を捜査する県警ハイテク犯罪対策室は、「情報セキュリティ・ネットワーク」をつくった。県内の全自治体や179の学 校、72企業など415カ所に電子メールで情報を配信し、相談を受け付ける。ネット上の個人情報流出などが社会問題となるなか、同室は「生きた情報を共有 してトラブルを避けてほしい」と話す。
 先月23日に電子メール配信した「情報セキュリティだより」第1号では、特集「社会的信用失墜と民事訴訟」を組んだ。
 勤務中に第三者を中傷した私用メールを送ったことを企業秩序違反行為だと東京地裁が認定した例や、市役所の住民基本台帳データ20万件が名簿業者に売ら れたケースなどが紹介されている。
 同室は「ネット社会では職業倫理やセキュリティーに対する意識が問われる」と強調する。
 同室は00年4月発足。県警に寄せられるハイテク関連の相談件数は増加しており、今年上半期では246件で、01年全体の219件を上回った。
 相談は「ネットオークションで代金を振り込んだが品物が届かない」「児童ポルノのホームページを取り締まって」などの内容が多いという。
 「コンピューターウイルスや名誉棄損、著作権侵害など、ネット社会に伴うトラブルは多い。具体例を通じて学んでもらえたら」と担当者は話す。個人向けに 配信はしないが、企業など団体の希望は歓迎だという。
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◆『朝日新聞』2003.09.11. 技術との摩擦(文化は誰のもの 第2部英米の模索:上)
 人気コミックをもとにしたSFX大作として注目されていた米国映画「ハルク」。その海賊版がインターネットに出まわったのは、封切りの2週間前だった。
 流出したのは米国内の広告会社に送られた完成寸前の試写版で、広告会社の従業員から借りた男性が、映画好きが集まるサイトに載せた。
 「ハルク」に限らず、「マトリックス リローデッド」「スパイダーマン」……と、最近の話題作はことごとく公開前にネットに流れてしまうようになった。
 デジタル技術とインターネットによって、複製と配布は、日常の一部になった。映画だけでなく、レコード業界も悩みは深刻だ。昨年の米国での音楽CDの売 り上げは、対前年比で約11%以上も落ち込んだという。
 全米レコード協会は8日、ネット上で音楽ファイルの違法交換をしていた261人を訴えた。他のユーザーに音楽を提供していた人たちだ。1年近くネットを 監視、訴訟の準備を進めてきた。
 大学生など個人に対する高額な訴訟は行き過ぎだという批判もあるが、同協会のM・オッペンハイム副会長は「罰されなければ自分たちの行為が不法であると いう意識が高まらない。訴訟と並行して教育キャンペーンも本格化させる」という。
   ● ○
 これまでは、ファイル交換ソフトを提供するナップスターなどの業者に著作権侵害の責任があるとされてきた。しかし、今年4月には、ユーザーを結びつける 役割をしない分散型のファイル交換ソフトでは、グロックスターなどのソフト提供業者の責任を認めない判決が米連邦地裁で出され、映画・音楽業界はユーザー 個人に対する訴訟方針を強めている。
 この裁判で、訴えられたソフト会社側を支援したのは、ネット上でのプライバシーや言論の自由を守る活動をしている電子フロンティア財団(EFF)だっ た。
 EFF職員で弁護士であるウェンディ・セルツァーさんは「海賊行為に使われる可能性があるからといって、ソフトそのものをつぶそうとするのはテクノロ ジーの世界への攻撃にほかならない。幌(ほろ)馬車の時代に蹄鉄(ていてつ)を作っていた業者が、車を禁止すべきだと訴えているようなもの」と話す。
   ● ○
 権利を守ろうとする側と、新しいテクノロジーを生み出す者の対立では、家庭用ビデオデッキをめぐる裁判が有名だ。
 家庭用ビデオデッキが増えれば海賊版が増えるという危機感から、76年には米国の映画会社が家庭用ビデオデッキは著作権侵害にあたると訴えた。それから 四半世紀、家庭用ビデオデッキは普及し、今やビデオソフトの売り上げは映画会社の収益の柱になっている。84年には米最高裁で著作権侵害にあたらないとい う判決が出された。
 ネット上のファイル交換についても、自分の作った音楽や映像を提供するのは、合法。ビデオデッキ同様、ファイル交換ソフト自体に責任は問えないはずなの だ。
 IT業界の成長と技術革新が一段落し、新旧の産業対立という図式だけではとらえられない状況が生まれている。
 ロサンゼルスの映画協会(MPA)は、コンピューター関連業界との会合も定期的に開き、著作権侵害が起きないシステム作りに取り組んでいる。MPAのケ ネス・ジェイコブセン副会長は「我々は、互いに利害が対立しているわけではない」と話す。
 EFFのセルツァーさんは「文化は一人がゼロから生み出すことはない。古い業界の保護のためではなく、創造性を生み出すために著作権を考えるべきだ」と 説く。
 とはいえ、映画と音楽は、米国の基幹産業の一つ。強力なロビー活動で議会も取り込んでいる。
 「著作権延長は違憲か」を争った裁判で、中立の立場から専門家証言をした弁護士のマーク・ラドクリフさんは「98年に成立したデジタルミレニアム著作権 法(DMCA)は、映画・音楽産業側にかなり寄っている」と見る。
 ネットの急速な変化にあおられながら、「わずか数年で成立してしまった」DMCA。バランスを取り直すための議論も始まったばかりだ。
    ◇
 文化を守るための著作権はどうあるべきか。アメリカとイギリスの取り組みを紹介します。(加藤修)
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◆『朝日新聞』2003.09.13. プロバイダーに発信者の開示命令 エステ顧客データネット公開で
 エステティックサロン大手のTBCが管理する約3万8千人分の個人データが流出し、インターネット上に電話番号などのデータが無断でさらされ続けたとし て、被害者2人が、公開した人物を特定するため、プロバイダー「パワードコム」(東京都港区、旧東京通信ネットワーク)を相手に氏名や住所の開示を求めた 訴訟の判決が12日、東京地裁であった。菅野博之裁判長は「プライバシー権の侵害は明らかだ」と述べて開示を命じた。
 判決などによると、個人データをネット上で受信可能にした氏名不詳の発信者は「WinMX」というファイル交換ソフトを利用していた。このソフトを使え ば、だれでも大容量のデータを短時間で自分のパソコンに取り込むことができ、流出した個人情報がとめどなく広がる事態が起きた。
 裁判の最大の争点は、「WinMX」を使ったデータのやり取りが、プロバイダー法の開示対象になる「不特定の者への電気通信(特定電気通信)」にあたる かどうかだった。データを送受信する際、受け手と送り手が「1対1」の関係になり、不特定者への通信といえないのではないかとの問題があったためだ。判決 は「誰でもデータを取得できる状態に置いたのだから、一連の情報の流れから特定電気通信に該当する」と明確に結論づける初の判断を示した。
 流出したデータは、TBCを経営する「コミー」(東京都新宿区)のホームページにアクセスし、アンケートに答えた人の住所、氏名、電話番号、メールアド レスやスリーサイズなど。02年5月に発覚して以来、同社がデータ回収作業を続けている。

 ○続くいたずら電話、データ流出女性ら被害
 埼玉県の30代女性に無言電話や、ひわいな電話がかかり出したのは、TBCのデータ流出があった02年5月末からまもなくだった。ひどい時には午前4時 から夜中まで続いた。仕事の関係で番号を変えられず、そんな状態が1カ月近く続いた。
 今でも無言電話があるという女性は「でも無言電話なら留守番電話にして対処できる。本当に怖いのは、自分の個人情報がどこか知らないところで悪用されて いるのではないか、という不気味さだった」。しばらくは恐ろしくてインターネットが使えなくなったという。判決は同じことを繰り返そうとする者への警告に はなるが、漏れたデータの回収はほとんど不可能だ。
 TBCに損害賠償を求めている被害者の弁護団長の紀藤正樹氏は「以前なら紙やフロッピーディスクを押さえれば被害は止まったが、00年ごろにファイル交 換ソフトが出てからは、個人データがいつまでもサイバースペースで交換され続ける。今回の判決は一定の歯止めになるだろう」と話している。
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◆『朝日新聞』2003.09.19. ファイル交換ソフト増殖 映画・音楽、著作権侵害深刻化【名古屋】
 インターネットにつないだパソコン同士で、画像やソフトウエアなどを交換する「ファイル交換ソフト」の使用者が急増中だ。接続端末は100万台を超え た。匿名で交換できるため、著作権法に違反して複製された音楽や映画が数多く流通する問題が広がっている。一方で使用者の特定につながる検索システムも開 発され、「サイバー対決」の様相を見せ始めた。

 「ロード・オブ・ザ・リング2日本語字幕付き」「踊る大捜査線2」……。
 インターネット上で無料で公開されているファイル交換ソフト「Winny2」で検索すると、発売前の映画や、ほんの数時間前に放送された人気アニメ番組 などのファイル名が並んでいた。名前と中身が違う偽ファイルも多いが、「本物」も存在する。何者かが違法に複製してネット上に流したものだ。
 現在、国内で使われている主なファイル交換ソフトには「Winny」系と「WinMX」系がある。プログラマーが独自に開発したり、外国製のものを日本 用に作り替えたりしたとされる。
 仕組みは、こうだ。ファイル交換ソフトを導入した人は、まず自分のパソコンに入っているファイルの中から提供できるものをネット上に公開する。その上 で、不特定多数の人が公開しているファイルの中から、欲しい映像や音楽を検索。見つかれば、自分のパソコンに複製して取り込むのが一般的だ=図参照。
 民間の調査会社「ネットアーク」(東京都)が開発した、ファイル交換ソフト利用者の自動検索システムによると、9月1日現在、交換ソフトを使っているパ ソコンは118万台超。6月の時点では約6万台だったのが、爆発的に増えた。
 また、社団法人「コンピュータソフトウェア著作権協会」は、1月に行ったアンケート結果から、ファイル交換ソフトの使用者は約98万人で、ネット利用者 約2900万人の3・4%と推計している。
 利用者が急増した背景には、ADSL(非対称デジタル加入者線)などの普及で、大量のデータを高速にやり取りできるインターネット環境が整ったことや、 ファイル交換ソフトの使用方法を解説した雑誌や本が一般の書店に並ぶようになったことがある。
 同協会は、ファイル交換ソフトを使って著作権侵害が行われていると判断した場合は、ファイルを公開した人物に警告メールを送信。悪質な例は警察に情報提 供して告発も検討している。
 「Winny」などは、交換するファイルを暗号化したうえ、複数のパソコンを経由させるため、雑誌では「匿名性が高い」と紹介されている。しかし、ネッ トアークの松本直人社長は「技術的には、どんな種類のファイル交換ソフトでも、利用者を特定することは可能だ」と指摘する。
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◆『朝日新聞』2003.09.25. 「カーナビが著作権侵害」 地図のゼンリン、12億円賠償請求
 住宅地図大手のゼンリンは24日、パイオニアの子会社「インクリメント・ピー」(東京都目黒区)が住宅地図を無断で複製してカーナビゲーション用ソフト を制作し、著作権を侵害したとして、東京地裁に約12億6千万円の損害賠償と地図ソフトの元データの廃棄などを求める訴えを起こした。訴えによると、イン クリメント・ピーは99年9月以降、約182万ページ分のゼンリンの住宅地図を無断でコピーし、カーナビやパソコン用の地図ソフトのデータを作成した。
 インクリメント・ピーは「訴状が届いていないので詳細を把握できていないが、著作権を侵害した事実はない」としている。カーナビソフトの出荷台数に占め るシェアは、ゼンリンが8割弱、インクリメント・ピーが2割強。
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◆『朝日新聞』2003.11.19. ファミコン20年の回顧展で著作権者「捜索」(文化は誰のもの)
 任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)用ゲームの回顧展を開く東京都写真美術館(東京・恵比寿)が、ゲームの著作権者を捜している。来場者に過 去のゲームを体験してもらおうと、ファミコンのゲームを出した全メーカーに許諾を求めたところ、約100社のうち32社が音信不通になっていた。ファミコ ンの登場から20年、文化として定着したゲームは、皮肉にも再利用が難しくなりつつある。(西田健作)

 「レベルX」と名付けられた展覧会は、83年に発売が始まり、今年製造が中止されたファミコンを通して、テレビゲームを映像文化として振り返るのが目的 だ。約1200本の全ファミコンソフトを展示し、「ゲームは動かしてこそ」と135本については週替わりで実際に遊べるようにするという。
 ソフトは大部分を任天堂が保存していたため確保できたが、ゲームの許可を得る手続きで壁にぶつかった。ゲームを画面に映すのは著作権法での「上映」に当 たり、著作権者の許諾が必要だ。だが、栄枯盛衰の激しいゲーム業界では、肝心の権利者が誰なのか不明のケースが相次いだ。
 都写真美術館が6月、権利者の確認を始めると、約100社のうち23社について所在が分からなくなっていた。さらに9社に送った許諾書もあて先不明で 戻ってきた。ゲーム数では156タイトルにもなる。
 人気ロール・プレーイング・ゲームだった「ヘラクレスの栄光」シリーズやアドベンチャーゲーム「探偵・神宮寺三郎」シリーズを出したデータイースト(東 京)は、販売不振で6月に破産した。破産管財人の弁護士は「ゲームの権利は譲渡交渉中なので、許諾は難しい」と話す。
 白い学ラン(学生服)を着た「くにおくん」が闘う「熱血硬派くにおくん」シリーズで知られるテクノスジャパン、釣りシミュレーションの「ブラックバス」 シリーズを出したホット・ビィも倒産。「テトリス」のビーピーエスは、日本法人が既になく、海外法人のみだった。いずれも当時は中堅以上の人気メーカー だった。
 同美術館はコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)と協力し、8月末からインターネットなどで情報を求めている。だが、現在でも16社の56タ イトルについて、権利者が分からないままだ。
 ブームの時期には、教科書出版社やガス会社まで参入した。「高橋名人」の名で知られるハドソンの高橋利幸・営業課マネジャー(44)は「芸能界の『一発 屋さん』と同じで、一本売り、分け前を分けて解散した会社も多かった」と振り返る。
 倒産で権利の行方が分からなくなるケースも目立つ。倒産した中堅ゲームメーカーの元社長(50代)は「知られたソフトなら債権者が権利を押さえるだろう が、それほどのソフトでなければ、忘れられてしまう。経営者も、債権者に迷惑をかけたのに、数年後に権利は自分のものだとは言い出しにくい」。
 コンピューターのプログラムに著作権が認められたのは、ファミコン発売3年後の86年。ファミコン時代はゲームに著作権があるという意識自体が薄かった ことも災いした、とACCSの担当者はみる。
 素朴なドット絵を使ったファミコンのゲームは今、携帯電話のゲームなどに形を変えて復活している。
 ゲームアナリストの平林久和さんは「公共で展示する場合は、著作権侵害の例外にすべきだ」と指摘した上で「業界団体や企業が、自分たちが作ってきたゲー ムを文化として残す仕組みを作らないと、今後、著作権の散逸はますます進むだろう」と心配している。
    ◇
 展覧会「レベルX」は12月4日から来年2月8日まで(月曜休館、祝日の場合は翌日)。250円。電話03・3280・0099(美術館)。
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◆『朝日新聞』2003.11.28. ファイル交換で2人逮捕 著作権侵害容疑、「Winny」初摘発
 インターネットを通じパソコン同士でソフトウエアをやりとりするファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を悪用し、映画やゲームソフトを希望する ネット利用者に自動送信できるようにしていたとして、京都府警ハイテク犯罪対策室などは27日、群馬県高崎市飯塚町、自称自営業木本勝彦容疑者(41) と、松山市の無職少年(19)を著作権法違反(公衆送信)の疑いで逮捕。容疑を裏付けるため国内のWinny製作者の自宅などを捜索した。木本容疑者と少 年は容疑を認めているという。高速で通信できるブロードバンド化が進む中、ファイル交換ソフトでの著作権侵害が問題化しているが、府警によるとWinny をめぐる摘発は全国初。
 調べでは、木本容疑者は9月25日、Winnyを使って米映画「ビューティフル・マインド」などの映画作品2本を送信できるようにし、ユニバーサル社な どの著作権を侵害した疑い。少年は同月12日、ゲームソフト「スーパーマリオアドバンス」など2本を送信可能にし、任天堂などの著作権を侵害した疑い。2 人は自分で購入したり、海外サイトからダウンロードしたりして延べ数百本のソフトを送信可能な状態にしていたという。
 Winnyはネット上で無料配布され、数十万人が利用しているといわれる。京都府警が01年11月に摘発した別のファイル交換ソフト「WinMX」を巡 る著作権法違反事件をきっかけに製作されたとされ、特定サーバーを経由せず、データが暗号化されることから、摘発は困難視されていた。府警は独自の技術を 開発し、暗号解読して発信者を特定したという。
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◆『読売新聞』2003.11.28. Winny使いネット上で映画など無断公開 著作権侵害容疑で初摘発/京都府警
 ◆ファイル共有ソフト「Winny」 容疑の少年ら逮捕
 発信源などの特定が困難なファイル共有ソフト「Winny」を使い、インターネットで映画やゲームソフトを公開したとして、京都府警ハイテク犯罪対策室 は二十七日、群馬県高崎市飯塚町、自営業木本勝彦容疑者(41)と松山市内の無職少年(19)を著作権法違反容疑(公衆送信権の侵害)で逮捕した。不特定 多数が映画や音楽を無料ダウンロードでき、関連業界が問題視していたソフトで、摘発は全国初。二人は容疑を認めている。
 調べでは、木本容疑者は九月二十五日ごろ、Winny経由で、自宅パソコンから米映画「ビューティフル・マインド」を、少年も同十二日ごろ、任天堂の ゲームソフト「スーパーマリオ・アドバンス」を自動送信できる状態にし著作権を侵害した疑い。
 Winnyは、製作者らのホームページ(HP)上で無料配布されていたが、府警は二十七日、関連先として国内の製作者宅も家宅捜索。HPも閉鎖された。
 winnyは送信側と受信側が直結せず、暗号化したデータをインターネットで個人のパソコンを経由してやり取りするため、発信源などの特定が難しいが、 府警は暗号を解析するなどして、逮捕にこぎ着けた。
 日本国際映画著作権協会によると、木本容疑者は約百七十作品を公開していた時期もあり、被害総額を約二億三千万円としている。
 音楽データなどの無料交換は、世界的に人気を集めたシステム「ナプスター」が著作権訴訟で敗訴後、マニアがこれに代わるネットワークやソフトを開発。 Winnyや、京都府警が一昨年十一月に摘発した「WinMX」もその一つ。
 コンピュータソフトウェア著作権協会によると、Winnyの利用者は全国で約二十四万六千人という。
 石井昭・同協会調査部長の話「他人の著作物を無断で共有することが問題で、経済的な損害も大きい。情報モラルから今回の摘発は大きな警鐘。意義がある」
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◆『朝日新聞』2003.12.18. 著作権侵害を認定 ネットでの音楽ファイル交換訴訟
 インターネットを通じた電子ファイル交換サービスは著作権侵害だとして、日本音楽著作権協会(JASRAC)と19のレコード会社が、「日本エム・エ ム・オー」(MMO、東京都八王子市)を相手に音楽ファイルの交換差し止めと3億6533万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、東京地裁であった。 飯村敏明裁判長は、ほぼ請求通りの差し止めを認めるとともに、約7140万円の支払いを命じた。
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◆『読売新聞』2004.01.27. 大量データが回線“占領” 接続プロバイダーが「P2P」制限に本
 インターネットを介し、音楽や画像などのファイルを個人間で直接交換するP2P(peer to peer)。これを実行するソフトを使う少数の利用者 が回線容量の大部分を占領、一般ユーザーに影響を与えている問題が深刻化し、接続プロバイダーでは、P2Pのデータを制限する措置を相次いで導入してい る。(早乙女泰子)
 P2Pが全トラフィック(データの通行量)に、いかに大きな影響を与えているかは、昨年十一月、ゲームソフトや映像ソフトを、P2Pソフトの一つ 「Winny」で送信可能な状態にしていた二人が、著作権侵害の疑いで京都府警に逮捕された時にも明らかになった。プロバイダー同士を相互に接続するサー ビス会社二社のトラフィックが、逮捕直後から約一か月間、急に減少したのだ。
 その一つ、東京と大阪の拠点で計約六十社を接続するインターネットマルチフィード社では、逮捕直後に15%のトラフィック減となった。同社技術部の三宅 延久次長は、「大量のトラフィックがあるので、特定はできないが、逮捕でWinny利用者が不安になって利用を控えた影響では」と分析している。
 国内で使われている主なP2Pソフトは、Winnyのほか、「Winny2」「WinMX」など。各プロバイダーによると、これらのソフトを利用したト ラフィックは、全体の60―80%にのぼり、一般ユーザーがホームページを見るのに時間がかかるなどの影響が出ているという。
 プロバイダーでは、回線を増強して対応してきたが、P2P利用者の増大でいたちごっこの状態。このため、各社はファイル交換ソフトを検出して制限できる 帯域制御装置を導入し、次々と対策に乗りだした。
 昨年夏ころから現在までに、東京と神奈川のケーブルテレビ・プロバイダー「イッツコム」のほか、「@ニフティ」、「ぷらら」などが、P2Pの制御を公 表、大手ケーブルテレビによるプロバイダー「@ネットホーム」は、テスト導入中だ。「ビッグローブ」も、「今後もP2Pのトラフィックが増えれば、制御も 考えている」と言う。
 一方、帯域制御装置を扱っている国内三社によると、昨年来、売り上げが急増しており、帯域制御を公表している事業者以外にもP2Pファイルの制限に乗り 出しているプロバイダーが急速に増えている模様だ。「ネットエンフォーサー」を販売するシーティーシー・エスピーでは、今年度は評価中の社も含め、約三十 社に装置を納めた。同社では「中小プロバイダーの導入が目立つ」と言う。
 「エラコヤ」を扱う住商エレクトロニクスも今年度、三十社以上に販売した。「いま人気のIP電話で、電話がとぎれる障害がすでに発生しており、装置の需 要は高まっている」という。さらに三菱商事も「P―Cubeサービスコントロールエンジン」を約三十社に販売したとする。
 住商エレクトロニクスによると、「米国では、合法なファイルにはタグ(荷札)をつけて、違法なトラフィックだけ排除する実証実験が行われている」とさ れ、今後、きめ細かい帯域制御が可能になれば、導入するプロバイダーが増えそうだ。
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◆『朝日新聞』2004.05.10. Winny開発の東大助手逮捕 著作権法違反幇助の疑い 京都府警
 インターネットを通じ映画や音楽などのデータをやりとりするファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を開発し、利用者が違法コピーすることを可能 にしたとして、京都府警は10日、東大大学院助手、金子勇容疑者(33)=東京都文京区根津2丁目=を著作権法違反(公衆送信権の侵害)の幇助(ほう じょ)容疑で逮捕した。プログラムの開発者が著作権法違反の幇助容疑に問われるのは全国初。(19面に関係記事)

 府警ハイテク犯罪対策室などの調べでは、金子容疑者は開発したWinnyを02年5月上旬からホームページで無料配布。群馬県高崎市の風俗店従業員 (41)=同法違反罪で公判中=らが昨年9月にこのソフトを使って米映画「ビューティフル・マインド」などの映画やゲームソフトを送信できるようにし、著 作権を侵害するのを手助けした疑い。金子容疑者は昨年11月、高崎市の従業員らによる著作権法違反事件が摘発された際、自宅の捜索を受け、これまで任意の 調べを受けていた。
 金子容疑者は02年1月に採用され、大学院生のソフトウエア開発の指導にあたっていた。
 Winnyは、京都府警が01年11月に別のファイル交換ソフト「WinMX」を使った著作権法違反事件を摘発したのをきっかけに開発され、百数十万人 が利用しているとされる。
 金子容疑者は大学院情報理工学系研究科所属で、情報処理工学が専門。調べに対し、「結果的に自分の行為が法律にぶつかってしまうので逮捕されても仕方な い」と供述しているという。
 高速で通信するブロードバンド化が進むなか、ファイル交換ソフトによる著作権侵害は深刻化している。府警は、金子容疑者がWinnyを開発し、計236 回の改良を繰り返していたことから、著作権法侵害を蔓延(まんえん)させようとの意図があったとして、立件に踏み切った。国際的にも著作権侵害をめぐるプ ログラム開発者の責任についての司法判断は分かれており、今後、議論を呼びそうだ。

 <東京大学大学院情報理工学系研究科の武市正人研究科長のコメント> 容疑の詳しい内容は承知していませんが、教員が逮捕されるという事態が生じたこと は誠に遺憾に存じております。詳しい容疑が判明すれば職務との関連を調査します。
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◆『朝日新聞』2004.05.10. 著作者側「期待」 故意の有無、争点 ウィニー開発者逮捕【大阪】
 世界のパソコン利用者が結びつく中で10日、データ交換ソフトの開発者が、全国で初めて著作権法違反幇助(ほうじょ)容疑で逮捕された。音楽や映画の作 品をつくる側は著作権侵害が解消されると捜査に期待を寄せる。一方で、「表現の自由」を巡る問題を指摘する声も。京都府警の捜査は広がるネット社会に新た な論議を呼び起こした。

 コンピュータソフトウエア著作権協会と日本レコード協会の昨年1月の調査によると、ファイル交換ソフトを利用したことがある人は前年比40万人増の 186万人。
 日本音楽著作権協会(本部・東京)によると、Winnyの登場でレコード会社などはかなりの痛手を被っていたという。レコード会社の総生産額は毎年減り 続け、03年は98年の約3分の2の4千億円に落ち込んだ。
 音楽に限らず、映画やゲームソフトなどを違法コピーする著作権の侵害は、世界的な問題となっているという。
 しかし、個人のパソコン同士でのファイル交換を立証するのは難しく、有効な対策措置がとれないでいる。京都府警の捜査について同協会の梅津裕広報部長は 「ソフト開発者の法的責任までは問えないと思っていたので、かなり踏み込んだ捜査だと思う。著作者に正当な利益が還元されない状態を止めてもらえるのでは ないかと期待している」と話す。
 雑誌「インターネットマガジン」を発行するインプレス社のインターネット生活研究所の中島由弘副所長によると、Winnyは広く普及している。「一般の 人でも情報を広く流通させられるようになった。こうした技術を悪いと決めつけることはできない。技術の進展とそれをどう使うかは問題が別で、車が人を殺す 道具でないように、使う人の著作権に対する正しい理解や知識が重要となってくる」と話す。
 ネットと著作権法に詳しい近藤剛史弁護士は、「ソフトの開発者を著作権を侵害させた幇助とみなして逮捕した例は恐らく世界でも極めて珍しい。犯罪の根っ こを押さえるという意味で、影響はかなり大きい」と指摘する。Winnyは、サーバーを介さず情報交換できるツールで、使い方次第では有益な面もある。 「開発者がどこまで違法性を認識していたのかという『故意』の立証、『表現の自由』『学問の自由』といった憲法上の問題を含めて、今後、議論を呼ぶのは必 至だろう」とも語った。

 ○金子容疑者「使うだけで逮捕可能か」「権利の概念崩れている」
 逮捕された金子容疑者は02年4月、「47」との名前を使い、インターネット上の掲示板「2ちゃんねる」上で、Winnyの開発意図や、犯罪につながる 可能性について次のように説明していた。
 ――著作権含むけどそれと知らない人が単にデータを中継しただけでもつかまるってのなら逮捕可能かもしれないけど、それってルーター使ってたらタイーホ と同じなわけで、システム使ってるだけで無条件で逮捕可能にしないと、捕まえられんだろう。
 ――もちろん、必死に暗号アタックすれば、キャッシュや公のサーバーにおいてあるファイルの名前や中身がわかる可能性はいつまでも残るわけですが、この 状態でやばい物を持っていて、なおかつ持ち主が暗号解読不可能な状態なら、それを公開している人が著作権侵害に当たるのか?わいせつ物陳列になるのか?シ ステム側で完全に匿名にできたとしたら、そのシステムを作った人に責任を押し付ける可能性は?という問題が無くもないわけで。
 ――個人的な意見ですけど、著作権などの従来の概念が既に崩れはじめている時代に突入しているのだと思います。お上の圧力で規制するというのも一つの手 ですが、技術的に可能であれば誰かがこの壁に穴あけてしまって後ろに戻れなくなるはず。最終的には崩れるだけで、将来的には今とは別の著作権の概念が必要 になると思います。どうせ戻れないのなら押してしまってもいいかっなって所もありますね。

 ◇「根拠が弱い」「ネット否定」 2ちゃんねる反響
 「ってことは、Winnyを持ってるおれも逮捕ですか?」「犯罪のために作ったという証拠はないわけだし」。Winny製作者が逮捕されたという知らせ を受けて、インターネット上の掲示板では、同ソフトのユーザーたちが次々と反響を書き込んだ。
 匿名の大規模掲示板サイト「2ちゃんねる」では、10日午前6時過ぎから事件についての書き込みが始まり、「逮捕の根拠が弱すぎる気がする」「インター ネットそのものを否定する気か?」などと京都府警を批判する声が続出した。
 一方で、「負ける気がするよ。裁判官とかよくわかってないでしょこんなん」といった書き込みも目立つ。
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◆『朝日新聞』2004.05.10. 著作権者側は歓迎 「故意」の立証争点 「Winny」開発者逮捕
 ネット社会が世界的に広がる中で10日、パソコンのデータ交換ソフト開発者が、全国で初めて著作権法違反幇助(ほうじょ)容疑で逮捕された。著作権者側 は違法状態が解消されると捜査に期待を寄せる。故意の立証など捜査上の課題を指摘する声も出る中で、ユーザー側にも波紋が広がった。(1面参照)

 作詞家、作曲家らでつくる日本音楽著作権協会(本部・東京)によると、レコード会社の総生産額は毎年減り続け、98年に比べて03年は約3分の2の4千 億円に落ち込んでいる。同協会は、Winnyの登場も影響して、レコード会社などがかなりの痛手を被っているとみている。
 しかし、個人のパソコン同士でのファイル交換を立証するのは難しく、有効な対策措置がとれないでいる。今回の京都府警の捜査について同協会の梅津裕広報 部長は「ソフト開発者の法的責任までは問えないと思っていたので、かなり踏み込んだ捜査だと思う。著作者に正当な利益が還元されない状態を止めてもらえる のではないかと期待している」と話す。
 ネットと著作権法に詳しい近藤剛史弁護士は、「Winnyは、サーバーを介さず情報交換できるツールで、使い方次第では有益な面もある。開発者がどこま で違法性を認識していたのかという『故意』の立証、『表現の自由』『学問の自由』という憲法上の問題を含めて、今後、議論を呼ぶのは必至だろう」とも語っ た。
 ファイル交換ソフトをめぐっては01年2月、ネット上で利用者同士が音楽を無料交換できるサイトを運営していた米国の企業ナップスターを全米レコード協 会が訴えた裁判で、サンフランシスコ高裁が「同社は著作権侵害に加担している」と判断。その後も業界に有利な判決が続いたが、昨年4月、Winnyと同様 にサーバーを介さずにファイルを交換するソフトを提供した会社が訴えられた裁判で、米連邦地裁が「交換サービス会社は(著作権侵害に利用される)ビデオ デッキやコピー機の会社と違いはなく責任はない」とした。
 プログラム開発者が刑事責任を問われたケースでは、昨年12月にノルウェーで、映画DVDの無認可コピーを可能にするソフトをネット上で配った開発者に 無罪判決が出され、確定している。
 園田寿・甲南大大学院教授(刑法、情報法)は「今後、争点になるのは、開発者の故意の有無だろう」とみる。開発者がメールなどで利用者と連絡を取ってい た場合、幇助容疑も成立するが、単に開発しただけなら違法行為の「あおり」にしかならないと指摘。「共犯が成立するためには具体的に犯罪が発生するという 結果について予見していることが必要だ。でないと、パソコンメーカーやインターネット接続業者、Winnyのマニュアル本を出している出版社までも共犯に 問われることになってしまう」と話した。

 ○ユーザーら、不安と批判
 Winny製作者が逮捕されたという知らせを受け、同ソフトのユーザーたちは、インターネットの各種掲示板に反響を書き込んだり、互いに連絡を取り合っ たりした。
 Winnyを1年ほど前から利用している都内の男性会社員(24)のもとには、逮捕を知った友人から「これからどうなるんだろう」というメールが届い た。自分自身も、無料で公開されている映像作品だけでなく、「試聴」のつもりで音楽作品などを集めてくることがあるという。「デジタルデータになれば、オ ンラインで流れてしまう。利用者の良心に任されている問題で、規制は難しいのではないか」と話す。
 「ファイル交換をより簡便に、と考えただけなら問題はないのでは。音楽や映画を、より匿名性を高くして交換できるように、と初めから考えて制作したのな ら問題だろうが」。東大の男子学生(21)は、Winnyの開発者逮捕の報を聞いて、こう話した。
 1年ほど前、友人に薦められてダウンロードした。「一晩つないでおけば、聴きたい曲とか全部集められるよ」と聞いたからだ。
 著作権の問題は気にはなったが、CDを買う前の試し聴きに便利だと思った。「CDショップにある試聴機代わりのイメージだった」
 都内の別の男子大学生(20)は、昨年夏ごろからWinnyで動画ソフトを集め、目当てのものがそろったため年末になってやめたという。「手軽さが先に 立ち、正直、罪の意識は薄かった」と振り返る。
 ソフトを作った人物の逮捕には違和感がある。「作者は、違法ファイルの収集には使うなと注意を呼びかけていた」と話す。

 ●技術の開発と不正使用は別
 <村井純・慶応大教授(情報ネットワーク学)の話> ウィニーは中央集権的な管理ではなく、生物のように自立性をもったソフトで、今後ますます重要にな る技術だ。開発者の意図は分からないが、一般論としてソフト技術の開発とソフトの不正使用は別問題。むしろウィニーを利用して著作権を侵害する映画などを 配信する人の取り締まりを強化すべきだ。

 ●教育や法整備、歯止めが必要
 <ネット社会に詳しい森井昌克・徳島大教授(情報通信)の話> 大手のサーバーからの中央集権的な情報の流れではなく、個々の通信のやり取りをメーンに しようとするWinnyは、ネット社会の進展に伴って登場するべくして登場したソフトでそれ自体は責められない。Winnyの広がりを抑えたとしても同じ ような交換ソフトはまた作られる。ただし、使う人の考え方次第で悪用されるおそれがあり、教育や法整備など、何らかの歯止めが必要だろう。

 ◇「著作権法への挑発的な態度」 京都府警の逮捕理由
 「Winnyはすばらしい技術。開発したことだけで立件したわけではない」――。京都府警の阿波拓洋・生活安全企画課長は10日午前に開かれた記者会見 でこう強調した。府警が立件に踏み切った背景は、金子勇容疑者の著作権法に対する挑発的な態度だった。
 金子容疑者はこれまでの調べなどに「現行のデジタルコンテンツのビジネススタイルに疑問を感じていた。警察に著作権法違反を取り締まらせて現体制を維持 させているのはおかしい。体制を崩壊させるには、著作権侵害を蔓延(まんえん)させるしかない」と供述。インターネット上の掲示板「2ちゃんねる」上で、 開発意図について説明していた。

 ◆「Winny」が使われた事件
 03年11月27日 京都府警などが「Winny」でゲームソフトなどを自動送信できるようにしていた群馬県高崎市の男ら2人を著作権法違反の疑いで逮 捕
 04年 3月29日 京都府警巡査の私物パソコンから捜査資料が流出していたことが発覚
      同30日 北海道警巡査の私物パソコンから捜査関係資料の流出が判明
     4月30日 陸上自衛隊第1普通科連隊の2尉(当時)の私物パソコンから約30種類の内部資料が02年11月ごろに流出したことが明らかに
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◆『読売新聞』2004.05.10. ウィニー開発者逮捕 違法コピーの温床にメス 「開発自体は合法」議論も
 インターネットを通じて、互いのファイルを交換できる「Winny(ウィニー)」を巡り、京都府警は著作権法違反(公衆送信権の侵害)ほう助の疑いで開 発者の東京大助手、金子勇容疑者(33)の逮捕に踏み切った。ウィニーは国内だけで数十万人以上の利用者がいると言われ、「違法コピーの温床」と指摘され てきた“問題ソフト”だった。しかし、米国などではファイル交換ソフトの開発自体は違法性がない、との判決も出ている。今回の事件は、自由なネット社会の 裏に潜著作権侵害の危険性を浮き彫りにした。〈本文記事1面〉
 金子容疑者はネット上では「47氏」と呼ばれ、そのプログラミング技術が高く評価されていた。ネット掲示板群「2ちゃんねる」の交換ソフトを取り上げる コーナーで二〇〇二年四月、四十七番目に書き込み、開発を「宣言」したことから名付けられた。
 今年三月、ウィニー利用者だけに感染するウイルスが広まり、京都府警や北海道警の捜査報告書、高知市消防局の火災報告書、陸上自衛隊の隊員名簿などが相 次いで流出。容疑者の実名なども記載されていたため、警察官らのウィニー利用に批判も高まっていた。
 金子容疑者は、「企業は警察の摘発に頼り、著作権法違反を防ぐようなビジネスモデルを模索しない。現行の体制を崩壊させ、著作権法違反をまん延させるた め、ウィニーを作った」と供述しているという。
 ファイル交換については、音楽ファイルを扱う米国の「ナップスター」社のサービスが知られており、一時は世界中の六千万人以上が利用したと言われる。米 連邦高裁は二〇〇一年二月、「著作権者に悪影響を与える」と著作権侵害を認め、同社にサービスを停止するよう命じた。
 しかし、個人同士がネット上でファイルを交換できるソフトは、その後も米国を中心に各国の愛好家たちが次々に開発。日本国内では現在、十数種類のソフト があるといわれ、今回問題となった「ウィニー」と、「WinMX」が人気を二分している。
 コンピューターを巡る法律に詳しい岡村久道弁護士(近畿大講師)の話「ファイル交換ソフトは適法にも違法にも使える。米国では、ウィニーと同種のソフト については、開発者が違法コピー行為に直接介在しないため、著作権侵害には当たらないという司法判断が示されている。米国と同じ考えに立つと、ウィニー自 体は日本でも適法となる可能性が高い。一方で日本の裁判所はこうした最先端のIT技術を扱う態勢が整っておらず、事件は裁判所の力量を図る試金石にもなる だろう」
 ◆ブロードバンド普及で問題拡大
 データをコピーしあえるファイル交換ソフトは、二〇〇〇年三月に現れた「グヌーテラ」がその源流だ。
 その後、使い勝手に工夫を加えた“亜流”や“発展型”の交換ソフトが出現したが、Winnyもその一種。こうしたソフトは当初から音楽や高価な画像処理 ソフトなどのファイルを違法にコピーすることに多用され、違法性が指摘されてい
 利用者は自分が欲しいファイル名を指定。その情報が、同じ交換ソフトを導入した世界中の他のパソコンに順次伝わる。目的のファイルを保有しているパソコ ンが見つかると、相手方から自分のパソコンに自由にコピーできる仕組みだ。当初はインターネットの回線の能力が低く、大量のデータ送信は困難だったが、最 近の「ブロードバンド」の普及により、音声のみならず、映画、高価な画像処理ソフトなどがやり取りされるようになっていた。
 
 〈公衆送信権〉ネットなどを利用して、画像や音楽などの著作物を送信できる権利で、著作権者だけに認められる。違反した場合、三年以下の懲役または 300万円以下の罰金で、ほう助犯はそれぞれ二分の一に減軽される。
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◆『朝日新聞』2004.05.11. 法的責任、どこまで 「ウィニー」開発者逮捕(時時刻刻)
 インターネット上で音楽や映像などの情報を直接やりとりできる。そんなファイル交換ソフトを「開発」しただけで法的責任を問えるのか。京都府警が10 日、「Winny(ウィニー)」の開発者を著作権法違反の幇助(ほうじょ)容疑で逮捕したことが、波紋を広げている。便利なプログラムとして利用者が増 え、違法コピーの温床ともされてきた。だが、米国ではソフト開発者ではなく、利用者の責任を問うのが主流になりつつある。

 ○「萎縮の危険」指摘も
 「切れ味のいい包丁を作ったからといって、包丁が悪用された場合、包丁を作った人まで悪いというのはおかしい」。多数のネットワークシステムを開発して きた40代のプログラマーは、今回の逮捕をこう憤る。「電子ネットワークを経由して生じた問題は、末端の利用者同士の自己責任で解決すべきだ」
 竹内郁雄・電気通信大教授(計算機科学)は、「幇助という理由でソフト開発者が逮捕されると、ほかのプログラマーまで不安を感じ、萎縮(いしゅく)する のでは」と今後への影響を心配する。
 竹内教授は「天才プログラマー発掘」を目指した国の事業にかかわり、00年、01年度に金子勇容疑者(33)が参加したテーマを採択した。「プログラミ ングの腕前は一頭地を抜いていた」。だが、ウィニーの制作者とは知らなかったという。
 ウィニーを使っている人が、情報を自分のパソコンに保存すれば、他の利用者もこの情報を取り込めるようになる。著作権者に無断の場合は著作権侵害だ。問 題は、こうした情報交換が可能なプログラムをつくったことが、著作権法違反の「幇助」にあたるかどうかだ。
 京都府警は金子容疑者がウィニーによる著作権侵害が広がっていることを知りながら、236回のバージョンアップを繰り返したことなどを踏まえ、「違法に 利用されることを認識していた」と判断、逮捕の根拠とした。
 だが、デジタル著作権問題に詳しい弁護士は、「音楽CDやゲームソフトのメーカーがソフトをコピーされないような技術を導入し、対応すべき問題だろう」 と首をかしげる。一方、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は「ソフト開発者が、悪用されることを予見した上で開発・配布した場合は、一定の責任 が生じると考える」との趣旨の声明を出し、開発者側の責任を指摘した。

 ○便利さ一転、違法の温床
 ファイル交換ソフトは、米ナップスター社による音楽ファイルの交換サービスで大きな注目を集めた。
 同社のコンピューター(サーバー)は、利用者がそれぞれ持っている曲をリストにして管理。リスト中に欲しい曲を見つけた他の利用者が求めると、曲の所有 者のコンピューターから曲のデータ(ファイル)を受け取れる。
 一方ウィニーでは管理サーバーがなく、ファイル検索は利用者間で直接行うため、曲などの提供者や取得者の匿名性が高まり、違法コピーのソフトの交換やウ イルスの流布といった悪用も目立つようになった。
 ネット起業家として知られる伊藤穣一さんは「コンピューターを利用して曲や映像をつくるアマチュア制作者が増えている。作品をできるだけ多くの人に見せ たい側からすれば、こうした技術は有効。技術は良いことにも悪いことにも使える」と言う。
 摘発後の10日夜もインターネット上には、ウィニーを入手できるホームページが多数あった。
 起動した画面で、テレビドラマのタイトルなどを指定してやると、いろんな人が持っている該当のドラマのファイル名の一覧が表示され、選択すればコピーで きる。
 そのたび検索しなくても、キーワードを指定して自動的にコピーされるようにも設定できるので、留守中や夜間でも欲しいものが手に入る。見逃したドラマ、 新しい曲やゲーム、映画などの取得が多いという。

 ●米では「利用者責任」
 【サンノゼ=尾形聡彦】米国でも、人気曲などが無料でファイル交換されていることがCDの売り上げ減につながっているとの声は音楽業界にある。00年に 9億4200万枚だったアルバムの出荷は、03年には7億4500万枚。全米レコード協会(RIAA)は、「その影響で数千人が解雇されている」としてい る。対応策としてRIAAは、ファイルを交換している個人を、著作権違反で民事提訴することに重点を置いている。
 米国でも、以前はファイル交換ソフトを開発した会社を訴えることは多かった。代表的なのは、米ナップスターに対し、CD販売への打撃に危機感を募らせた 音楽業界が著作権法違反だとして提訴したことだ。
 裁判所が01年に、交換差し止めの判決を出し、ナップスターはサービス停止に追い込まれた。
 だが03年4月、米裁判所がファイル交換ソフト会社の責任を認めず、米レコード・映画業界の訴えを退け、潮目が変わった。背景には、ナップスターが同社 のサーバーの手助けによって利用者がファイルを交換できる仕組みだったのに対し、それ以降の「グヌーテラ」などの交換ソフトは、サーバーを仲介しないた め、会社の責任を問うのが難しくなったことがある。
 こうした流れの中でRIAAは、03年秋から、ファイルの提供を行っている個人に対する大量提訴を開始した。これまでに2400人以上の個人を提訴して いる。
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◆『朝日新聞』2004.05.12. ファイル交換、ネットを占有 ウィニー開発者逮捕、議論呼ぶ著作権
 パソコンのファイル交換ソフト「ウィニー」の開発者が10日に逮捕された背景には、この種のファイル交換がインターネット上を行き交う情報の半分近くを 占め、違法コピー増殖の温床になっている現実がある。現状の法規制による違法コピー抑止の限界を指摘する声もある中で、その犯罪を「可能にした」ソフト開 発者の法的責任が初めて問われる。

 「日本の約2900万人のインターネット利用者のうち、約186万人(6・4%)がファイル交換ソフトを使ったことがある、という計算になります」
 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の広報担当者はこう説明する。同協会による昨年のアンケート(回答者1万8831人)で浮かび上がった現実 だ。
 ファイル交換ソフトは通信効率を飛躍的に高めた。著作権法違反の幇助(ほうじょ)容疑で京都府警に逮捕された東京大大学院助手、金子勇容疑者(33)が 開発したウィニーと、WinMXがその代表格。
 この種のソフトを「現在利用している」人が入手したファイルは、音楽、写真、映像など一人平均162。「過去に利用」の人も含めると、1億1221万の 音楽ファイル、4266万の映像ファイルが交換された計算になる。膨大な数の中に、違法コピーが相当含まれると見られる。

 ○甘い情報管理
 交換されるファイルには、表計算やデータベースなど、ビジネス用のものも含まれている。
 インターネット関連の企画・調査会社、ネットアンドセキュリティ総研(本社・東京)の調査では、昨年後半の半年間に、国内の企業699社、46の行政機 関で、ファイル交換ソフトを入れたパソコンを通じたビジネスファイルのやり取りがあった。
 同社の原隆志社長は、「仕事では、ファイル交換ソフトで文書を送ったり受けたりはしない。このソフトでのやり取りは、悪意による情報流出か、気づかない うちに漏れてしまったか」と、企業や行政機関の情報管理の甘さを警告する。
 ファイル交換で膨大な情報がやり取りされると、インターネットの機能にも悪影響が出る。
 NTTサービスインテグレーション基盤研究所の昨年の調べでは、ネット上を流れる情報量のうち、WinMXを利用したやり取りが31%、ウィニーが 15%。両者だけで全情報量の半分近くを占有していた。
 しかも、全体のわずか0・1%の利用者が、全情報の4分の1をやり取りしていた。少数の利用者によって回線の容量が食われてしまい、ホームページの閲覧 などが滞る問題が、2年ほど前から深刻化してきた。
 同研究所の亀井聡研究員は「ファイル交換ソフトの利便性は高いが、それによりネット利用の不公平も拡大している」と指摘する。対抗上、特定のファイル交 換ソフトを使った送受信ができなくするプロバイダーも出始めているという。
 (黒沢大陸)

 ◇ソフト開発、意図を問う
 今回問題となっている著作権は、具体的には「送信可能化権」と呼ばれる。文化庁著作権課によると、映像や音楽など様々な情報をインターネット上に置く権 利だ。
 世界知的所有権機関が96年に採択した国際条約に盛り込まれ、これに基づき、日本も97年に著作権法を改正した。
 ウィニーの利用者が、ある情報を自分のパソコンに保存すれば、他の利用者は誰でもこの情報を取り込める。この情報は「送信可能」になったことになる。同 課の俵幸嗣課長補佐は「著作権者の了解を得ずに情報をネット上に置けば、送信可能化権の侵害」という。
 こうした情報交換を可能にするプログラムを開発したことが、「幇助」にあたるのかどうか。
 著作権法では、情報のコピー防止機能を不正にはずす行為も著作権侵害で、はずすための「専用装置」と「専用プログラム」の製造を禁じている。この部分以 外には、プログラムの開発だけで罪に問う条文はない。
 今回、京都府警は、著作権侵害を蔓延(まんえん)させる意図でウィニーを開発したことが犯罪にあたる、としている。
 技術が進化し続ける中、「違法コピー」の規制強化を求める声は強い。特に送信可能化権の保護については、「現行法の実効性に議論がある」(著作権課)と いう。こうした状況を踏まえ、著作権法の罰則強化を盛り込んだ改正案が現在、国会で審議中だ。

 ○匿名性、支持も
 しかし、著作権に詳しい小倉秀夫弁護士は「ファイルを不特定多数の人に、出どころを知られずに配信できる技術は、悪用の危険がある一方、政治家や大企業 の不正の暴露に活用できる側面もある」と、安易な摘発に疑問を投げかける。
 岡村久道弁護士も「個人の行動が逐一デジタル情報で記録されうるネット社会でこそ、プライバシー保護のため、匿名性を高める技術は重要」と指摘する。
 (上田俊英)
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◆『読売新聞』2004.05.12. [社説]ウィニー摘発 ネット社会に警鐘を鳴らした
 著作権侵害の違法コピーが横行するインターネットの世界に警鐘を鳴らす摘発である。
 京都府警に著作権法違反ほう助の疑いで逮捕された東京大大学院助手は、映画や音楽などのファイル交換ソフト「Winny」(ウィニー)の開発者だ。
 このソフトの利用者が、著作権者の許可なく、映画などをネット上で不正に公開した違法行為を手助けした、という容疑である。ソフトの開発者が逮捕される のは、世界的にも異例のことだ。
 ウィニーはネット上で無料公開され、利用者は国内で数十万人いる。どこから送受信されたのか、特定しづらく、匿名性が高いため、関連業界が「違法コピー の温床」と指摘していた。
 助手が、利用者の悪用をどこまで認識して、ソフトの開発や改良に当たったのか。今後の捜査の焦点である。
 助手は、作品の制作者の利益が十分に保障されていない著作権のあり方に疑問を感じていたという。調べに、「著作権違反を蔓延(まんえん)させるため、ソ フトを作った」と、あえて問題提起したという趣旨の供述をしている。ネットの掲示板で使用を呼びかける書き込みもしていた。
 助手の行為は、確信犯的で、極めて無責任である。
 ただ、映画や音楽、ゲームソフトなどの違法コピーが氾濫(はんらん)する現状は、助手一人を逮捕しても解決にはならない。
 ウィニーによる被害は抑えられても、同様のファイル交換ソフトは国内だけで十数種類ある。米国では、開発者の違法性を問えないという判決も出ている。
 映画や音楽CD、ゲームソフトなどの関連業界が、違法コピーを封じる保護の仕組みを築くことが先決だ。
 著作権という大事な財産を守るには、家にカギをかけるのと同様に、自ら対策を講じなければならない。だが、違法ソフトの開発といたちごっこで、防止措置 が破られる例も少なくない。セキュリティー技術の向上も急務だ。
 事件は、一般の利用者にも警告を発している。自分が制作した音楽や映像、写真などを交換する分には問題はないが、著作権で保護された作品のやりとりは法 に触れ、刑事罰の対象になることを改めて認識したい。
 警察官などがウィニーを私物のパソコンに取り込んだため、京都府警や北海道警の捜査報告書が、ネット上に流出してしまうという事態も起きている。
 個人のパソコン間でデータをやりとりできるソフトは、ビジネスにも活用されている重要な技術だ。不正を排し、健全に発展させる必要がある。
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◆『朝日新聞』2004.05.28. 「ファイル交換で著作権侵害」の請求はがきに注意を レコード協会
 パソコンのファイル交換ソフトを使って音楽などのデータをやりとりし、著作権を侵害したとして損害賠償の支払いを求めるはがきが、東日本の多数の個人に 一方的に送りつけられていることが27日、わかった。差出人側は、日本レコード協会(東京都中央区、会員41社)の委託を受けて賠償を請求するとしている が、同協会は「委託した覚えはない」として、注意を呼びかけている。
 協会によると、はがきの受取人に対して「(ファイル交換ソフトを使った)違法な音楽データのやりとりが確認されました」と指摘する文面で、「著作権及び 著作隣接権の侵害行為」に対する損害賠償として42万8千円を請求しているという。
 請求者として、東京都港区内の住所と会社名、携帯電話番号が記されているが、協会の会員会社ではなく、協会がその番号に電話をすると、相手方は「何の話 か知らない」と答えたという。
 協会にはこの日だけで北海道や岩手、山形、埼玉各県などから30件を超す照会があり、すでに請求額を振り込んでしまった人もいたという。
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◆『読売新聞』2004.06.03. 電子教材差し止め請求 学研が塾で使用 「著作権侵害」作家らが地裁に 
 大手出版社「学習研究社」が全国展開するフランチャイズ方式の学習塾が、小中学生向けの電子教材で文学作品を無断使用し、著作権を侵害したとして、著者 の作家らが三日、学研と教材の委託製作・販売業者を相手取り、教材の使用差し止めなどを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。著者側による無断使用の チェックが難しく、使用料の支払いルールも確立していない電子教材について、著作権侵害が問われるのは初めて。教材のペーパーレス化が進む中で、司法判断 が注目される。
 仮処分を申し立てたのは、児童文学者の宮川ひろさんら三人。
 申し立てによると、学研は、学習塾「学研CAIスクール」をフランチャイズ方式で全国約三百か所に開設。開発した専用サーバーの製作やスクールへの販 売・貸し出し業務を、業者に委託している。
 同スクールでは、机ごとに置いたパソコンを使って、サーバーに組み込まれた電子教材を生徒が自由に利用している。宮川さんらの作品は、この電子教材の中 で、画面に表示されたり、音声で朗読されたりして使用されている。印刷することでプリント教材にもなっているという。
 宮川さんらは、「学研側はスクールに、サーバーを数百万円で販売したり、月額約十万円で貸し出し、数万人の児童・生徒に自由に使用させ、著作権を侵害し ている」と主張している。
 書籍の形で販売された学校や塾の教材、インターネットで配信された入試問題を巡り、著者側が出版・送信停止や損害賠償を求めた例はあるが、電子教材に対 する訴えはなかった。
 学研広報室の話「申し立てた三人の著作が電子教材に使用されているか、現時点では確認できないので、コメントできない」
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◆『読売新聞』2004.06.03. 電子教材差し止め請求 コピー容易、ブームに警鐘(解説)
 電子教材を巡る初の著作権侵害の申し立ては、パソコンを利用した個別指導や「遠隔学習」のブームに、警鐘を鳴らすものだ。
 「五十万問のデータベースを活用して、その子の進度やレベルに合った問題を与えることができる」。使用差し止めなどを求められた学研は、ホームページで 電子教材の利点をそうPRしていた。
 しかし、著作権法で著者側の許諾なしに使用が認められるのは、教科書と、秘密保持の必要がある「試験または検定」だけだ。今回の申し立ては、学研の国語 教材に、教科書や入試問題から作品を“孫引き”した部分があるとも指摘している
 詩人の谷川俊太郎さんらが小学校副教材の出版社を相手取った訴訟で、東京地裁が昨年、1億1000万円の賠償を命じるなど、市販の教材などへの無断使用 は著作権侵害との司法判断が、地裁レベルでは定着しつつある。
 電子教材は、紙の書籍などに比べ、外部からのチェックが難しいうえ、印刷やコピーが容易なため、著作権侵害の恐れが大きい。
 近年、個別指導を売り物にする塾や予備校が急速に増え、個人の進度に応じて柔軟な学習プログラムを組める電子教材に注目が集まっている。インターネット などを通じ、塾や予備校から離れた自宅などで教材を利用できるeラーニング(電子学習)も、二〇〇六年には市場規模が現在の二倍近い1000億円を超える と見込まれる分野だ。
 それだけに、安易な教材作成が行われていないか、業界は申し立てを機に自ら検証するべきだ。(社会部 田中史生)
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◆『読売新聞』2004.07.07. ウィニー事件の教訓 匿名性、不正コピー助長 暗号技術の落とし穴
 ◆複数の防止策が有効
 音楽や映画のファイルを容易にコピーし合えるソフトを開発し、「著作権侵害を助長した」という理由で、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の 作者が起訴された。ウィニーはどんな特徴を持っていたのか。また違法コピーを防ぐ技術はないのだろうか。(西島徹)
 ウィニーを導入したパソコン同士は、仲間だけの特殊なネットワークで結ばれ、ファイルを自由にコピーし合えるようになる。データや提供者、受信者のアド レスは暗号化され、匿名のまま利用できるという特徴があった。
 データをコピーする際は提供者、受信者以外のパソコンをいったん経由させる。経由されたパソコンにはコピーが残され、次からは提供者の代理を務めさせ、 仕事を分散する機能があった。
 ソフトが分析された結果、暗号化されたデータを元に戻す「鍵」が、データに添付されていたことが判明。この鍵を使えばファイル交換の実態は筒抜けにな る。この点が捜査の突破口になったとされる。
 セキュリティー技術に詳しい東京電機大の佐々木良一教授は、匿名性を半ば実現し仕事を分散させるソフトとして「短期間でよく作ってある」とウィニーを評 価する。
 それでは完全に匿名性を実現すれば捜査もできなくなるのか。佐々木教授は「高度な暗号体系を使えば匿名性は高められるが、完全な匿名化は今後も実現不可 能だろう」と見ている。
 六月二十八日、ウィニー事件をテーマに情報処理学会と情報ネットワーク法学会が共同で公開討論会を開催した。出席した弁護士らは口々に「ソフトが違法な 目的に使われただけで、開発者まで罪に問うのは行き過ぎ」と疑問を呈した。ソフト研究者らは「犯罪か否かの線引きを明確にして欲しい」と不安の声を上げ た。
    ◎
 ネット社会で著作権侵害が多発する背景は二つある。パソコンのお陰でデジタル化されたファイルの完全なコピーが簡単に作れるようになった点と、インター ネットの普及でコピーの配布が容易になった点だ。
 この二つはネット社会の長所だ。しかし作者の許可なくコピーを公開すると著作権侵害の犯罪になる。ならば技術によって不正なコピーは防げないのか。
 「コピー防止技術はいろいろあるが、完全なものはない。しかし、より費用をかければ抑止効果を高めることはできる」と日本IBM東京基礎研究所の丸山宏 博士は説明する。
 例えば音楽や映像のデータを暗号化しておき、暗号の鍵が仕込まれた再生ソフト以外では観賞できなくする「カプセル化」という方法がある。ファイルをコ ピーしても、このファイルを買った人のパソコン以外では使えない。一般ユーザーには効果十分だ。
 しかし、コンピューターに詳しいハッカーが時間をかければ、再生ソフトを分析し、暗号が解かれた状態のデータを取り出す可能性は残るという。これをコ ピーして配れば、誰のパソコンでも再生できる。
 そこで、データを特殊な装置でしか再生できなくする方法がある。例えば、再生装置に、一度取り込むと容易に取り出せない携帯電話を使うような場合だ。
 またデータの内部に識別情報を組み込んでおく「電子透かし」もある。ネット上を自動で探し回る「パトロールシステム」と組み合わせて、違法なネット公開 を見つけ出せる。
 佐々木教授は「これらの技術はすでに成熟しており、研究そのものは衰退している。課題は、これらをどう組み合わせてビジネスにするか」と話す。
 ◆楽曲ソフトなど日本は割高感
 米国では昨年、音楽のダウンロードサービスが相次いで始まった。いずれも楽曲ファイルをカプセル化し、パソコンや特殊な装置で再生できるほか、CD―R に移せる。しかし他人のパソコンや再生装置では使えなくしてある。
 日本でも今春から同様のサービスが始まり、やはりカプセル化を使用。しかしCD―Rには移せないなど、欧米に比べ制約が多い。一曲あたりの価格が300 円前後で、1ドル未満の米国の約三倍となっている。
 こうした価格の高さ、制約の多さが、逆にコピー防止対策破りを誘発するのではないかとの指摘もある。
 
 〈ウィニー事件〉 ウィニー開発者の東京大助手が今年五月十日、京都府警に著作権法違反ほう助の疑いで逮捕された。昨年十一月にはウィニーでゲームソフ トなどを公開していた二人が、ゲーム会社などからの告訴を受けた同府警に逮捕されている。
 助手は、ソフト開発業界では「天才」とも評され、プログラミングに集中するため、食事も満足に取らず介護用ベッドで作業を続けたという逸話も持つ。九月 から開かれる裁判では、犯罪に使われた「道具」の開発者まで罪に問えるかに注目が集まっている。
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◆『朝日新聞』2004.09.01. 無罪勝ち取るまで 金子助手、全面対決へ ウィニー初公判【大阪】
 ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の開発は、ネット社会の理想へ近づく一歩なのか、著作権制度を破壊する元凶なのか――。1日、京都地裁で 始まったウィニー開発者の著作権法違反幇助(ほうじょ)事件の初公判は、検察側と弁護側が全面対決する構図となった。開発者が訴追されたいまも、広まった ウィニーによる著作権侵害は続く。外国ではファイル交換ソフトを容認する動きもあり、ネット社会の著作権保護の方向は定まっていない。

 金子勇助手は午前10時、紺色のスーツ姿で入廷した。起訴事実を全面的に否認した金子助手は「無罪を勝ち取るまで戦う」と、全面対決の姿勢を明らかにし た。「罪となる行為はない」とする弁護側も、公訴棄却を主張したうえで起訴状に対する詳細な釈明を求めた。検察側は「審理を待って判断すべきだ。釈明の要 はない」と突っぱね、公判の冒頭から双方の激しい応酬となった。
 「ブレイブ・ニュー・ワールド(すばらしい新世界)を切り開くために開発した。そのためには現行の著作権のあり方ではいけない」
 昨年11月、金子助手はウィニー利用者が著作権法違反容疑で京都府警に逮捕された事件で参考人として事情聴取を受けた際、捜査員に持論を展開したとい う。
 地検幹部は「被告に著作権侵害を蔓延(まんえん)させる意図があったのは明らか」と見る。
 一方、ウィニー利用者たちの動きも活発だ。今年5月の金子助手の逮捕直後、プログラマー有志らが「金子勇氏を支援する会」を結成。ホームページで支援を 募り、これまでに1600万円の募金が集まり、保釈金などに充てられた。弁護団と勉強会を開くなど、公判を側面から支えている。
 同会を結成したソフトウエア開発会社経営の新井俊一さん(26)は「どこまでが合法で、どこからが違法なのか線引きがあいまいなのがそもそもの問題。一 罰百戒のような見せしめより、ルールをつくるのが先だ」と訴えている。
 ファイル交換ソフトを「合法的」に使おうという動きも起きている。
 静岡県内の私立高校生(18)は「合法ファイルで清く正しいP2P」と題するホームページを立ち上げた。自由にコピーできる映像や音楽などのファイルを やり取りし合法的に楽しむのが目的だ。顔写真などを流して「ウィニーで彼女を作ろう」とも呼びかける。
 「ファイル交換ソフトは今後のネット社会で非常に重要な技術。悪くなったイメージを取り戻したい」
 長野県内の大学サークル「kstm.org」は、ウィニーとは別のファイル交換ソフトを開発し、8月からホームページで無償配布している。利用者が知ら ない間に違法コピーの流通に加担することがないようにする仕組みを備えた。だが、著作権侵害を完全に防ぐことは難しい。
 代表の男子学生は「自分も逮捕されないかという不安はなかったといえばうそになる」と不安を漏らす。

 ○違法コピー対策を模索
 今回の事件を機に、インターネット時代の著作権保護のあり方が改めて問われている。ファイル交換ソフトを悪用すれば、著作権のある音楽や映画、ゲームな どを、ネット上で容易に違法コピーできる。ソフト業界は違法利用者を割り出すシステムなどを作って対抗しているが、十分な効果は上がっていない。
 「ウィニーは音楽や映像などネット上で著作権を配信するビジネスを妨げている」。各種ソフト会社などで作るコンピュータソフトウェア著作権協会の見解 だ。
 同協会は昨年度、小学校や中学、高校、官公庁、企業などで著作権の大切さを伝える出張授業を約250回開いた。「今後、ますます著作権は重要になる。そ れには教育から変えていかなければならない」
 日本音楽著作権協会は00年10月、「J−MUSE」という著作権監視システムを作り、ファイル交換ソフトの利用者について割り出しを進めている。大学 のサーバーを通じた利用が確認できたケースもあり、03年以降に10余りの大学に対策を依頼した。
 同協会広報部は「モノの場合は、物流を追いかければ違法利用者にたどり着けたし、物流を止めれば被害を食い止められた。匿名性の高いインターネットには 難しい面もある」と話す。
 一方、ネットを活用した有料音楽配信サービスの成功例もある。アップルコンピュータ社が03年4月に米国で始めたサービスのレパートリーは総数100万 曲。客は自分が好きな音楽を1曲99セントでパソコンに取り込める。今年7月には、総配信曲数が1億を超えた。
 独自の規格を採用し、ネット上でのファイル交換を防ぐことで、違法コピー対策を実現した。今年6月からは英仏独にもサービスを拡大。同社広報部は「業界 としても発展できるビジネスモデルが出来た」と自信を見せる。
 UFJ総合研究所芸術・文化政策センターの太下義之主任研究員は「インターネットの出現で、CDなどのモノを売って対価を得るという関係が崩れている。 音楽や映像などの芸術文化とネット技術をどう共生させていくのか。新たな仕組みを考える時期に来ている」と指摘している。

 ○開発者の意図が焦点に<解説>
 「ウィニー事件」は、ソフトウエアの利用者が引き起こした違法行為について、開発者が刑事責任を問われた。公判では、開発者側に著作権侵害を助長する意 図があったかどうかが焦点になる。
 検察側は「開発イコール違法ではない」と繰り返し強調。だれがコピーをしたのかをわかりにくくする機能があることや、やり取りされている音楽などの約9 割が著作権侵害をしているとされる利用実態を指摘し、「ウィニーは著作権侵害のために作られたソフト」と主張する。
 これに対し弁護側は「開発はファイル交換技術を検証するためで、著作権侵害に使われることは望んでいなかった」と反論。ウィニーの有用性を訴える構え だ。
 金子助手は、現在の著作権法のあり方に批判的な考えをもっているとされるが、弁護側は当面、必要以外は黙秘させ、持論を主張させない方針だ。
 裁判所が開発者の意図をどう認定するかが、裁判の行方を左右することになろう。
 高速通信ができるブロードバンド時代を迎え、大容量の映像や音楽のデータをパソコンで簡単にやり取りできるようになった。CDやビデオの販売を前提にし た日本の著作権保護法制が、新しい時代に十分に対応できていないという声もある。
 米連邦高裁は8月、ウィニーと同様にファイルを交換できるソフトを提供した会社に「著作権侵害に責任はない」とする判断を示している。
 この事件の公判は、刑事責任の成否だけでなく、著作権保護とネット社会の発展を両立する仕組みづくりを考えるうえでも注目される。
 <意見書を読み上げる金子勇被告=1日午前、京都市中京区の京都地裁で(イラスト・岩崎絵里)>
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◆『読売新聞』2004.09.01. 「ウィニー」初公判 IT開発「罪なのか」 利害調整求める声/京都地裁
 ◆被告側、抗戦の構え 検察側「違法性認識あった」
 「無罪を勝ち取るまで戦う所存です」――。京都地裁で一日に始まったファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の開発者、金子勇被告(34)の初公 判。ネット愛好家の間で「神」とも称された金子被告は、「ソフト開発が犯罪のほう助に当たるという間違った前例ができれば、開発者にとって大きな足かせに なる」と、最先端のIT(情報技術)を開発した研究者のプライドをのぞかせながら、検察側との対決姿勢を鮮明にした。
      
 黒いスーツ姿の金子被告は午前九時四十五分、弁護団に囲まれ、地裁の正面玄関から中へ。氷室真裁判長が氏名を尋ねると、早口の小さな声で「金子勇で す」。しきりに両手を動かして落ち着かない様子だったが、職業を問われると、「東京大学大学院特任助手です」とはっきりと述べた。
 検察側が起訴状を朗読する直前、弁護人の一人が「求釈明をお願いしたい」と述べ、開発そのものが罪に問われるのかをただすと、検察官が「釈明の必要な し」と返答するなど、同様の応酬が五回ほど続き、波乱を予感させた。
 罪状認否で金子被告は「(逮捕された)二人とは面識はありません」と書面を読み上げたが、検察側は冒頭陳述で、金子被告が電子メールで「何やったらまず いかはよく把握している」などと知人に打ち明けていたことを挙げ、著作権侵害を助長する認識があったと厳しく指摘。金子被告はこの間、じっと検察官の言葉 に耳を傾けていた。
 地裁には傍聴券を求めて約二百五十人が集まった。
 京都大法科大学院一年の男子学生(22)(左京区)は「今、最もホットな著作権の審理があるので来た。米国では似たようなケースで無罪になっており、日 本の裁判所の判断を見守りたい」と話した。昨年夏、ウィニーを使い音楽ファイルをコピーしたという神戸市内の男性会社員(40)は「怖くなって、すぐに削 除した。安易な規制は日本のソフト開発力の低下を招くのでは」と言っていた。
 ◆交換ソフト 海外では不問
 音楽や映像などをやりとりするファイル交換ソフトと著作権侵害を巡っては、海外でも、開発者が責任を問われたケースはない。
 米国では二〇〇一年二月、サーバーを介し、音楽ファイルの交換サービスをしていたナップスター社に対し、米連邦高裁が、利用者の著作権侵害の責任を認め サービス停止を命じた。
 しかし、ウィニーのようにサーバーを介さず、利用者同士が直接ファイルをやりとりするソフトでは、逆の判断が出ている。
 〇三年四月には米連邦地裁がファイル交換ソフト「カザー」「ヌーテラ」を配布した会社に対し、「ビデオデッキやコピー機を製造販売する会社と変わらな い」などとして、利用者の著作権侵害に責任はないとする判決を出した。米連邦高裁もこの判断を支持、〇二年四月、オランダの裁判所も同様の判断で、これが 主流となっている。
 海外のインターネットや著作権事情に詳しい弁護士の土谷喜輝さんは「海外でファイル交換ソフトの開発者が訴えられたケースは聞いたことがない。米国では 著作権侵害をした利用者自身を訴えており、ファイル交換ソフトの開発者が刑事責任を問われるのは異常であり、今後のソフト開発技術の発展への影響が懸念さ れる」と話している。
 
 ◆弁護団に支援金1600万円
 金子被告は六月一日の保釈後、東大大学院研究室に戻ったが、講義はせず、立体(3D)画像の研究や大学院で使うテキスト作成などに取り組んでいる。愛用 していたパソコンが押収されたため、新しいパソコンを購入したという。
 弁護団に寄せられた支援金は約1600万円。このうち500万円が保釈金に充てられ、残りは金子被告に渡されたが、手つかずのまま。知人のソフト開発業 者や大学院生らは「支援する会」を結成。今後、非営利組織(NPO)法人化を目指し、金子被告に限らず、ソフト開発者の権利を守る活動を始める。
         ◇
 ◆利害調整求める声 著作権と利便性
 今回の摘発について、著作権侵害への警告とする意見の一方、捜査当局に慎重な姿勢を求める声も強い。
 ネット犯罪に詳しい園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法・情報法)は、大阪府警が一九九七年、暴走族が着る服に刺しゅうを施した業者を道交法違反(共同 危険行為)のほう助で書類送検(不起訴)した例を挙げ、「現在、ほう助は広く解釈されており、有罪となれば、対象が歯止めなく広がる恐れがある」と指摘。
 「技術に支えられたネット上の問題には同じ技術で対抗、解決する努力が必要だ。開発者の摘発はIT立国を目指す日本の国益も損ねかねない」と懸念する。
 著作権法に詳しい吉峰啓晴弁護士も「求められるのは、開発者・著作権者の権利とユーザーの利便性との利害を調整する法整備、さらには違法利用者への教育 と厳罰のルール」とする。
 一方、日本音楽著作権協会は「摘発は違法著作物データのまん延への警鐘で、知的財産を守る上で意義ある対応」と評価。
 コンピュータソフトウェア著作権協会は「無罪となれば侵害行為に拍車がかかり、著作権ビジネスが立ち行かなくなる恐れもある」と規制を期待する。
 ◆監視の動き強まる
 ネット上やコンピューター関連業界では、昨年十一月にウィニーの利用者二人が逮捕されて以降、様々な反応が表れている。
 国内の接続業者百七社の通信網を相互に接続している「JPIX(日本インターネットエクスチェンジ)」(東京都千代田区)では、昨年十一月と、金子被告 が逮捕された今年五月の二回、同社のネットワークを行き交うデータ量が10%以上も減少した。年末年始などにしか見られない現象だが、同社は「摘発を恐れ た違法利用者が操作を中止した」とみる。
 情報管理サービス業「ネットアーク」(同)は昨年十月、企業や大学向けに、組織内の端末でウィニーが使われていないかどうかを監視する業務を始め、間も なく数社が契約。ウィニー利用者二人の逮捕後は、さらに問い合わせが増えた。松本直人社長は「ウィニーで、重要な企業情報が流されたら大変という認識が強 まっている」と話す。
 一方、コンピュータソフトウェア著作権協会(東京都文京区)では今年一月から月一回、ホームページへのアクセスが短時間に集中する事態が相次いでいる。
 調査の結果、ウィニーを経由して感染するコンピューターウイルスの仕業と判明。今も集中攻撃は続いており、協会の広報担当者は「事件との関連は不明だが 著作権保護の立場への“敵意”を感じる」と憤る
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◆『朝日新聞』2004.09.02. ウィニー事件初公判
 映画や音楽のファイルを、インターネットを通じて交換できるソフト「ウィニー」をめぐり著作権法違反幇助(ほうじょ)罪に問われた、東大大学院助手金子 勇被告(34)に対する初公判が1日京都地裁であり、検察側が冒頭陳述、弁護側は無罪を主張した。要旨はそれぞれ次の通り。

 ◆検察側冒頭陳述(要旨)
 【犯行に至る経緯】
 金子被告はプログラマーとして活動していたが、インターネットが高度に普及した現状では、ネット上で著作物ファイルのコピーが流通するのは避けられない 流れで、著作権法は既存のビジネスモデルを前提としており、時代遅れであるなどと、現行の著作権概念に疑問を感じていた。
 01年11月28日、ファイル共有ソフト「WinMX」を使った者が著作権法違反によって逮捕された。被告は事件を知ってますます、著作権概念に対する 疑問を強く感じるようになり、問題はソフトの利用者側にあるのではなく、著作物を開発、管理する提供者側にあるなどと考えた。
 そのころ、被告はファイルの送信者がだれであるのか分からなくするという、匿名性に極めて優れているファイル共有ソフト「Freenet」の存在を知っ た。被告は、匿名性が高ければ警察がファイル送信者を摘発することもできず、著作物の提供者側が新しいビジネスモデルを開発せざるを得なくなるだろうなど と考えた。
 02年4月1日、電子掲示板「2ちゃんねる」に「WinMXの次はなんなんだ?」というスレッド(書き込みの項目)が立ち上げられた。被告は Freenetの匿名性を利用した上、自分の知識、技術を活用すれば新たなファイル共有ソフトを作れるのではないかと思い、同日、スレッド上で開発を宣 言。
 被告はソフトを「Winny(ウィニー)」と名付けた。制作過程で、スレッドに「著作権などの従来の概念が既に崩れ始めている。今とは別の著作権の概念 が必要になる」などと制作意図を公表し、自分が制作するソフトで著作物ファイルを違法に送受信しても、警察の摘発は困難である旨の書き込みをした。
 同年5月6日、スレッドでウィニーの完成を発表し、自分が開設していたホームページでウィニーを配布すると告知したうえ、無償で不特定多数に配布し始め た。以後、03年11月27日に警察による自宅の捜索を受けるまでの間、利用者の要望を受けるなどしながら改良を加え、合計238回のバージョンアップを して、ウィニーを公開、配布した。

 【著作権侵害の蔓延(まんえん)状況等】
 被告がウィニーを公開した後、利用方法を解説したり匿名性等を紹介したりする関連サイトが立ち上げられ、雑誌でも大きく取り上げられた。匿名性が高く、 著作物ファイルを送信しても警察に摘発されることはないものとしてインターネット上で定着し、利用者が拡大し、著作権侵害が蔓延する状態になった。
 ウィニーにより送受信されているファイルを警察が2回見分したところ、90%以上がテレビ番組、映画、音楽等の著作物ファイルだった。ウィニーは著作権 を侵害する形態での送受信にもっぱら利用されている実態にあり、著作権者は莫大(ばくだい)な経済的損失を受けていた。
 被告は02年6月ころから、ウィニーの特集記事が掲載されている雑誌を購読していた。雑誌等では、ウィニーで送受信されるファイルが著作物ファイルであ ることを前提に解説されており、著作権法違反の摘発事例等も掲載されていた。被告はウィニーの利用者が10万人単位で存在し、もっぱら著作物ファイルの違 法な送受信に用いられ、著作権侵害に利用されていることを十分認識していた。
 被告は警察に自宅を捜索される直前まで、自らもウィニーを利用して著作物をダウンロードしており、ウィニーのネットワーク内に大量の著作物が流れている ことを確認していた。被告は自らは著作権法に抵触しないよう配慮した上で、他人の著作物をより効率的にダウンロードしていた。
 自分のホームページには「違法なファイルをやり取りしないようお願いします」と記載していたが、著作権侵害に供されることを容認し、当然の前提としてい ながら記載に及んだもので、形式的なものに過ぎない。

 【被告の検挙】
 ウィニーは極めて匿名性の高いプログラムだった。しかし、利用者の中には、ウィニーに組み込まれたBBS(掲示板)機能を使ってスレッドを立ち上げ、保 有している著作物ファイルの名称などを公表する者がいた。
 捜査の結果、このスレッドは立ち上げた者のパソコン内に生成され、書き込む際には、そのパソコンに直接アクセスして通信することが判明。また、スレッド にアクセスすれば、生成したパソコンを特定できることも分かった。
 警察は、多数の著作物を公衆送信していることをスレッドで公表している著作権侵害者を選び出し、スレッドにアクセスし、パソコンに直接アクセス。公表通 りの著作物ファイルをダウンロードできることを確認して使用者を特定し、03年11月27日、2人を逮捕した。
 一方、ウィニーを配布していたホームページアドレスなどから、プログラムを制作・配布していた者が被告であると特定した。

 ◆弁護側冒頭陳述(要旨)
 【本件公訴提起の根本的な問題】
 本件公訴提起は、金子被告によって発明されたファイル共有技術そのものを違法として処罰しようとするものにほかならない。しかし、結論から言えば、ファ イル共有ソフトの開発行為を幇助犯などという無限定な構成要件によって、刑事罰を科して禁止すべきものでない。
 ウィニーにはファイル共有の効率化の実現のために、驚くべき工夫、技術が盛り込まれている。世界の数多くの技術者が開発にしのぎを削る中、被告は独創的 な工夫を重ねることによって、独自で高度の機能を組み込んだウィニーを、たった1人で、ごく短期間のうちに開発した。
 検察官は、わが国の誇るべき頭脳である被告が生んだ、国際的にみても、きわめて貴重なソフト技術の開発を、国会における国家的かつ政策的な議論を待たず して、犯罪行為と決めつけた上で、刑罰の名の下に闇に葬り去ろうとしている。
 そもそも、インターネット上のファイル共有ソフトの開発・公開行為を、違法であるなどとして、処罰する規定はどこにも存在しない。

 【ウィニーの開発・公開の経緯】
 被告はFreenetがセキュリティーに重きを置くあまりに、情報流通の効率性を損なっていることに問題意識を有するようになった。
 そこで新型ファイル共有ソフトの開発に着手したが、実際に運用可能であることを確認するためには、多数のモニターに利用してもらうことが必要と考え、 02年5月6日、自己の開設したホームページで、ウィニーを公開した。
 被告は公開に際し、ダウンロード用のホームページに「違法なファイルのやり取りをしないでください」と記載し、公開したファイルの中にも、同趣旨を記載 した文書ファイルを添付していた。また、利用法については公開当初を除いて、一切説明しなかった。

 【ファイル共有ソフトの開発・公開行為は犯罪ではない】
 もし、ファイル共有を目的とするソフトウエアが、著作物の複製に用いられる可能性があることをもって、その開発・公開行為が著作権侵害の幇助行為である と評価されるのであれば、他のインターネットにおいて利用されるソフトウエアなどの開発・公開も同様に幇助行為と評価されることになる。また、犯罪に用い られる可能性のある道具の開発が、抽象的な違法利用の可能性をもって、幇助として処罰されるのであれば、コピー機(文書等の偽造の可能性)やビデオデッキ の製造・販売(ビデオの違法な複製の可能性)などが、すべて幇助行為と評価されることとなるのであり、従犯の成立範囲が無限定に広がってしまう。
 また、ウィニーは一定のネットワークに関する知識を有する者のみを利用対象者としており、あえて利用方法を解説せず、利用に際しては違法なファイルのや りとりをしないようにと呼びかけていた。ところが、金子被告とは一切面識のない者が、利用法を解説したり、雑誌等で悪用法を発表していたのである。金子被 告は、このような著作権侵害を助長するような行為は、一切していないばかりかその抑制を呼びかけていたのである。この意味でも、被告の行為を幇助とするこ とはできない。

 【認識との関係】
 被告はウィニーを利用して著作物であるファイルを送信可能化するものが出現することを認識していたとしても、そのような利用をされうるという可能性の認 識に過ぎず、それは、ホームページにおいてわいせつな画像が公開されうるといった認識や、自動車が犯罪に利用されたり、事故の発生しうるといった認識、包 丁を使って人を殺す者がいるかもしれないといった認識と同一のものであり、このような認識をもって正犯の実行行為を容易にする認識すなわち幇助の故意あり と評価することはできない。

 【結語】
 ウィニーの開発・公開はファイル共有の効率を高めたが、送信可能化権侵害を促進したものではない。著作権侵害に悪用される可能性は、他のインターネット サーバーソフト、FTPクライアントソフト等、ファイルの送信機能を有するソフトには等しく存在しているのであり、このようなソフトウエアの開発を幇助と 評価するのであれば、日本の開発者は、デジタルデータの流通を目的とするソフトウエアの開発を行うことができなくなる。そのことによる萎縮(いしゅく)効 果は絶大なものがある。検察官は自らの公訴提起が、日本の技術開発を大きく遅らせ、かつ世界的に見ても歴史に悪名しか残さない、特異な行為であることを自 覚するべきである。
 以上述べてきた通り、被告によるウィニー開発・公開行為をもって、本件各正犯による実行行為(仮に事実として存在したとしても)の幇助ということはでき ない。
 また、被告には、著作権侵害について可能性の認識しかなく、かつ、正犯の行為を容易にしようとする意図は全くないのであって、幇助の故意ありと評価する ことはできない。
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◆『読売新聞』2004.09.02. ウィニー開発者初公判 検察、弁護側の冒頭陳述要旨
 ◆検察側の冒頭陳述要旨 
 ◇ウィニー制作に至る経緯
 被告は、プログラマーとして稼働していた。かねてからインターネットが高度に普及した現状では、著作権者が、著作物をネット上で有償販売するという既存 のビジネススタイルから脱皮し、新たな収益方法を模索しなければならないにもかかわらず、現行の著作権法は、既存のビジネスモデルを前提として著作権者を 保護しており時代遅れであるなどと、現行の著作権概念に疑問を感じていた。被告は、二〇〇一年十一月二十八日、著作物ファイルを公衆送信した者が著作権法 違反で警察に逮捕された事件を知り、ますます著作権概念に対する疑問を強く感じるようになった。
 二〇〇二年四月一日、大手電子掲示板「2ちゃんねる」上にスレッド(掲示板)が立ち上げられ、被告は、その意見交換に参加。そこで、匿名性という発想を 利用した上、自己のコンピューター等に関する知識や技術を活用すれば、新たなファイル共有ソフトを自ら作れるのではないかと思うに至った。その後、被告 は、同スレッドに書き込まれた、警察に摘発されないシステムにしてほしいなどとの意見や要望を取り入れるとともに、その期待に応えながら、同ソフトの制作 を続け、同ソフトを「ウィニー」と名付けた。
 また、被告は、制作過程において、同スレッド上で、「著作権などの従来の概念が既に崩れ始めている。お上の圧力で規制するのも一つの手だが技術的に可能 であれば誰かがこの壁に穴をあけてしまって後ろに戻れなくなるはず。将来的には今とは別の著作権の概念が必要になると思う。どうせ戻れないのなら押してし まってもいいかなってところもある」などとウィニーの制作意図を公表。
 ファイル共有ソフトの利用による著作権侵害についての違法性を認識しながら、違法な送信者を禁制品の運び屋にたとえて、「運び屋を捕まえることはできる けど、法的な責任はそれほど問えない可能性がある。運び屋と違い、警察が簡単に車を止めて中身を見られない」などと、警察が摘発することは困難である旨の 書き込みを行っていた。以後、被告は改良を加え、合計二百三十八回のバージョンアップを行った。
 ◇ウィニーによる著作権侵害のまん延状況
 被告がウィニーを公開した後、関連サイトやインターネット関連雑誌等で大きく取り上げられ、匿名性が高く、映画、音楽、ゲーム等の著作物ファイルを公衆 送信しても警察に摘発されることはないものとしてインターネット上で定着し、利用者が拡大し、著作権侵害がまん延する状態になっていた。
 また、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会のアンケート結果等からも、ウィニーにより大量の著作物ファイルが送受信されている現状が明らかとな り、著作権者はばく大な経済的損失を受けていた。
 被告のほう助意思・行為について
 被告は、専ら著作権法違反行為を増長させることを企図していたもので、いわば確信犯的に行っていた。被告は二〇〇二年六月ころから、ウィニーの特集記事 が掲載されているインターネット関連雑誌を購読。これらはウィニーで送受信されるファイルが著作物であることを前提に解説されていた。雑誌や関連サイトを 見て、ウィニーの利用者が十万人単位で存在し、著作権侵害に利用されていることを十分に認識していた。
 被告は二〇〇三年十一月二十七日に、警察に自宅を捜索されるまで、自らも著作物をダウンロードしており、ウィニーのネットワーク内に大量の著作物が流れ ていることを自ら確認していた。
 被告は、自己のホームページ等で「何か問題が生じても責任はとりません」、「違法なファイルをやり取りしないようお願いします」と記載していたが、利用 者によって著作権侵害に供されることを容認、当然の前提としながら、あえて記載に及んだもので、実効性も持たない形式的なものに過ぎない。
 被告は、自分が制作者であると公表していなかったものの、実姉、友人、同僚らには明らかにし、自分の考えを伝えていた。
 被告は二〇〇二年八月二十一日、実姉からメールで、「あとは、ぬかりなく気を付けてね。法律上とか、著作権とか…」などと指摘された。これに対し、著作 権侵害の違法性を認識しながら、「何やったらまずいかは良く把握しているんで(おかげで最近は著作権法とかには詳しくなったけど)気は付けてます」などと メールで返信していた。
 ◆弁護側の冒頭陳述要旨
 ◇本件の根本的な問題
 被告のソフト開発を犯罪とした検察官の判断には、インターネット社会におけるファイル共有について、根本的な無理解が存する。わが国の誇るべき頭脳であ る被告が生んだ、貴重なソフト技術の開発を、国民の代表機関である国会における国家的かつ政策的な議論を待たずして、刑罰の名の下に、闇に葬り去ろうとし ているのである。
 ファイル共有ソフトの開発・公開行為を、違法であるなどとして、処罰する規定はどこにも存在しない。起訴は、処罰の法的根拠を欠いている。国際的に見て も、新しい技術開発をした者を処罰しようとしている国は、日本だけであり、激烈な国際競争が行われている中で、異常とも言える。起訴は、日本の国際競争力 を著しく低下させる。
 ◇ウィニー開発・公開の経緯とほう助との関係
 被告は、開発に着手、運用可能であることを確認するためには、多数のモニターに利用してもらうことが必要と考え、二〇〇二年五月六日、自己の開設した ホームページで、ウィニーを公開。ダウンロード用のホームページに「違法なファイルのやり取りをしないでください」と記載するなどしていた。
 だが、被告とは一切面識のない者が、利用法を解説したり、雑誌等で悪用法を発表したりしたのである。被告は著作権侵害を助長するような行為は、一切して いない。この意味でもほう助とすることはできない。
 ◇認識との関係
 被告は、ウィニーを利用して著作物であるファイルを送信可能化するものが出現することを認識していたとしても、そのような利用をされるという可能性の認 識に過ぎない。
 ホームページにおいてわいせつな画像が公開されるといった認識や、自動車が犯罪に利用されたり、事故の発生しうるといった認識、包丁を使って人を殺す者 がいるかもしれないといった認識と同一のものであり、このような認識で、ほう助の故意ありとすることはできない。
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◆『読売新聞』2004.10.09. 「コピー制御CD」販売 検証無き見直し 振り回された消費者(解説)
 パソコンでの複製を制限する「コピー制御CD」の発売を見直す動きが、レコード業界に広がっている。(文化部 宮下博)
 コピー制御CDは、パソコンでの使用を制限する特殊な構造になっており、CD―R(書き込み可能CD)への複製やインターネットでの使用に制約がある。 国内では、二〇〇二年三月にエイベックスが先陣を切り、計十二社が売り上げの多い邦楽を中心に導入した。
 背景には、CDの売り上げ減があった。各社は、パソコンを使って音源を大量にCD―Rへ複製するなどの“違法コピー”が元凶だと考え、この新技術に飛び 付いた。「著作権を侵害している」というのがその言い分だった
 だが、このコピー制御CDは、CDの規格から外れた「CD類似商品」のため、再生する機器によっては、音が飛ぶほか、機器の故障の誘因になっていた。と ころが、各社は制御CDの仕組みを公開せず、音楽愛好家の間には不評と不信感が広がった。今年七月には電子情報通信学会で、制御CDのコピー防止機能や CDの売り上げ回復効果への疑問が議論された。
 そこへ、推進者だったエイベックスが、先月になって方向転換を発表した。アーティストの意向や販売戦略をもとに、コピー制御CDを一部廃止するという内 容で、柔軟路線に踏み出す。また、その直後にはソニーも発売中止を決定した。
 両社はその理由を、「法整備などで、著作権侵害に対するユーザーの認識が高まり、一定の成果が上がったため」と説明する。
 一方、パソコン経由で音源を取り込む新型携帯音楽プレーヤー(「iPod」など)が急速に普及し、これまでレコード業界が目の敵にしてきたパソコンが、 新たなビジネスの道具として利用出来るようになった。こうなると、パソコンでの使用が制限される制御CDは、新ビジネスの障害ともなりかねない。こうした 事情から、ビクターや東芝EMIも、「様々な環境変化への対応は検討していく」としている。
 しかし、レコード業界が当初主張した「CD売り上げ減の歯止め」に対して、コピー制御CDがどの程度効果があったかは、今回の見直しにあたっては全く検 証されていない。消費者はレコード会社側の一方的な経営判断に、ただ振り回された感が強い。
 既に米国ではインターネットを通じた音楽の配信ビジネスが軌道に乗り、パソコンへのダウンロードで楽曲を買う仕組みが、消費者の高い支持を得ている。こ れに対し、日本のレコード業界は、見通しを誤り、構造転換が遅れたと言われても仕方がない。
 今後はわが国でも、新世代の音楽ビジネスへの対応が急務となる。しかし、今回のコピー制御CD問題のように、レコード会社が専ら自社の都合を優先して、 消費者の利益をなおざりにするようでは、ユーザーの音楽離れが一段と加速しかねないことを銘記する必要がある。
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◆『朝日新聞』2004.11.06. 無料ファイル交換、米映画業界も個人提訴へ 最高15万ドル請求も
 【サンノゼ=尾形聡彦】ファイル交換の形でインターネットを通じて映画ソフトが無料で流通している問題を巡り、米映画協会(MPAA)は4日、ファイル 交換している個人に対して、著作権法に基づいて損害賠償訴訟を起こすと発表した。全米レコード協会(RIAA)の動きに続くものだ。
 MPAAは「違法な映画の取引行為が、映画製作を脅かしている」として、損害賠償とファイル交換停止を求めて、今月16日から個人への提訴を開始する。 賠償請求額は映画1本当たり最高3万ドル(約320万円)、意図的な著作権侵害の場合は最高15万ドル(約1600万円)にのぼるという。
 ファイル交換を巡っては、音楽・映画業界は従来はファイル交換ソフト会社を提訴していた。しかし、03年4月、米裁判所がファイル交換ソフト会社の責任 を認めず、音楽・映画業界の訴えを退けたことで、ソフト会社側の責任追及が難しくなった。こうしたなかで、音楽業界は03年秋からこれまでに数千人の個人 を提訴し、矛先を移している。
 ブロードバンド(高速大容量通信)が次第に普及するなかで、データ容量の大きい映画が交換されるケースも増えてきていることから、映画業界も個人を対象 にした提訴を決断したものとみられる。
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◆『読売新聞』2004.12.11. [IT生活護身術](5)知らぬ間に著作権侵害 手軽にコピーは要注意(連載)
 ◆「意欲そぐ恐れ」研究現場懸念 「コピーに警鐘」映画・音楽業界歓迎
 米連邦最高裁が27日、インターネット上での音楽や映像ファイルを無料交換する「ファイル交換ソフト」が著作権侵害行為を助長した場合は、開発会社にも 責任があるとの判断を示したことについて、日本のレコード業界は「著作権侵害を助長するものに対する警鐘になる」として歓迎している。ただ、ソフト開発な どの研究開発の現場では「研究意欲をそぎかねない」との声も聞かれ、影響が懸念されそうだ。
 日本レコード協会などが今年1月に行ったアンケート調査では、ファイル交換ソフトを通じてパソコンなどに取り込まれた音楽や映像などのファイルが過去1 年間に推計で約3億66万個に達し、2004年4月時点の推計1億7454万個から急増した。同協会では「日本の音楽ファイルの約90%が無断でコピーさ れている」とみなしており、ファイル交換ソフトは、レコード会社や映画会社の収益を大きく圧迫してきた。
 今回の判断を受けて、レコード会社などは違法コピーの問題点をさらに利用者に呼びかけていく考えだ。
 国内では2004年5月に、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の開発者が著作権法違反ほう助容疑で逮捕され(公判中)、「ファイル交換ソフ トの開発は違法との意識が米国よりも強い」(レコード会社)という。
 今月23日には、三菱電機の子会社社員のパソコンがウィニーの暴露ウイルスに感染し、原子力発電所の点検データなどがネット上に流出する事件も起きてお り、ネット社会の安全性や著作権保護のあり方は今も問われ続けている。
 一方、今回の判決が、ソフト開発企業に悪影響を与えることも懸念される。
 日本では「ファイル交換ソフトを開発しているメーカーはない」(日本音楽著作権協会)とされるが、こうした開発自体の違法性が問われることになれば「通 常の研究開発まで支障がでかねない」(大手メーカー)と危惧(きぐ)する声も聞かれる。
 企業の研究開発に自主規制をかければ、研究現場の委縮を招くなどする可能性もある。違法と合法の境界線をどう見極めるかなどについては、今回の判決では 示されておらず、今後、こうした点が課題となりそうだ。
 ◆歯止めに期待
 【ニューヨーク=北山文裕】インターネット上で音楽や映像ファイルを無料交換する「ファイル交換ソフト」を巡り、米連邦最高裁が27日下した判断は、著 作権侵害を助長する場合には、ソフト開発会社の法的責任を認めたうえで、違法コピーを防ぐ仕組みを講じる必要性を指摘した。1、2審敗訴からの差し戻し判 決に、違法コピーに悩まされてきた映画・音楽業界は今後、著作権侵害に歯止めがかかると期待している。
 裁判は、MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)など映画・音楽会社が、米ソフト会社グロクスターなどを提訴した。下級審では「ソフト開発会社は利 用者のソフトの使い方までコントロールできない」との開発会社側の主張を認め、原告側が敗訴していた。
 これに対し、連邦最高裁は〈1〉ソフト開発会社が違法コピーの防止に努めた形跡がない〈2〉ソフトの販売当初から違法コピーでの活用が意図されていた ――などとして、ソフトを開発・販売する企業の「意図」を問題視して、下級審の判断は誤りと指摘した。
 今回の判決は、ファイル交換ソフトそのものを違法としたものではないが、ソフト開発会社が自社の商品や技術がもたらす結果に責任を負うことを示した点で 注目される。
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◆『朝日新聞』2004.12.29. 発信者、たどって特定 直接ファイル交換「P2P」 NEC新技術
 インターネット上でサーバーを経由せずにパソコン同士で直接ファイルをやりとりするピア・ツー・ピア(P2P)を安全に活用する新技術を、NECが開発 した。違法コピーの流通に使われがちなP2Pだが、新技術では流通経路を追跡し、その発信者や受信者を特定できるようにした。P2Pはファイルのやりとり の手段として今後も有望視されており、合法的な仕組み作りを急ぐ考えだ。

 新技術では、利用者AからBにファイルが流れる場合、そのファイル全体を暗号化してP2Pで送信。同時に「ファイルが流れた」という情報が専用サーバー に届き、サーバーからBに暗号解読用のカギが送られる。
 サーバーに流通経路が残るため、発信者を特定でき、違法行為の抑止につながると期待する。従来のP2Pでは、ファイルがどこから発信され、どう流通した か分析することは困難だった。
 P2Pには、ネット業界では「有効利用するべきだ」との指摘が出ている。将来は、ホームページ上のデータやブログなどをP2Pでやりとりするのが一般化 する可能性もある。

 ◆キーワード
 <P2P> インターネット上で、サーバーを介さず情報を端末同士で交換する技術。専用ソフトをダウンロードした「参加者」が、自由にファイルを提供し たり取得したりできる。ソフト利用者同士が画面上で交渉して交換する手法のほか、誰かが公開したファイルを一方的に複製する場合もある。匿名性が高く、違 法コピーの流通で著作権侵害の「温床」とも指摘され、今年5月にはファイル交換ソフト「ウィニー」の開発者が逮捕された。
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