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著作権に関連する新聞記事(〜1999年)

情報・コミュニケーション/と障害者


■作成:植村 要

以下は、著作権についての新聞記事のうち、ユーザーによる著作物の複写に関連するものを中心に収集。
(以下、学術利用を目的として、記事本文を掲載する)

◆『朝日新聞』1987.12.01. 地名データベース、主務官庁まき込み対立
 自治省の認可法人・流用出版は困る
 運輸省の外郭団体・著作権侵害せず

 全国の地名を入力したデータベースは著作権法で保護されるかどうかをめぐって、データベースを製作した自治省の認可法人と、自動車登録業務にそのデータ を使用した運輸省の外郭団体が、対立を続けている。製作者側は「地名であっても編集加工しており、膨大な手間をかけている」として先週末、東京地裁に「流 用」データの出版差し止めを求める仮処分を申請しようとした。ところが、この申請が認められると自動車登録や課税徴収事務に支障をきたすため、主務官庁の 自治省と、運輸省が間に入り、「何とか円満解決を」と、仮処分申請に待ったをかけた。ただ、製作者側は、なお仮処分申請をする意向で話し合いに臨んでお り、トラブルは今後も尾をひきそうだ。
 データベースを製作したのは財団法人「国土地理協会」(東京・西新橋)。データを使用したのは財団法人「自動車検査登録協力会」(虎ノ門)。
 国土地理協会側の説明によると、協会は官報や公報などに公示された町名に加え、郵政省やNTTの資料、市町村への照会、現地調査などを整理して、全国の 最新の地名約42万件をコード別にコンピューターに入力。『全国町・字(あざ)ファイル』として、磁気テープ1本を250万円、印刷したコードブック9分 冊を6万8000円で販売している。
 自動車検査登録協力会は、このコードブック9分冊を自治省の別の認可法人「地方自治情報センター」を通じて購入、その主要部分「カナ地名、漢字地名」を そっくりコピーし、自動車登録業務に使う磁気テープとコードブックを製作、このほど発行した。
 これに対し国土地理協会は「地名であっても、さまざまな情報を総合して加工しており、データベースとして保護の対象になる。無断流用だ」と抗議を申し入 れた。しかし、自動車検査登録協力会側は「全国町・字ファイル」を参考にしたことは認めながらも、「著作権侵害にはあたらない」と反論。その理由として、 (1)『全国町・字ファイル』の地名を全部使ったのではなく、小字だけを利用している(2)国土地理協会のコードを使わず、独自のコードを使っている (3)全国の運輸局単位に分けたり、地名を陸運支局単位に並べたりするなど編集や整理の仕方が違っていること−−などをあげて対立した。
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◆『読売新聞』1989.01.17. 「版面権」確立になお時間も 利用者負担増と反対意見(解説)
 学術書を中心とした“違法コピー”に頭を悩ます出版界は、「日本複写権センター」の設立を機に、出版社の権利である「版面権」認知も求めようとしている が、実現にはなお時間が必要のようだ。(文化部 吉弘 幸介
 「版面権」は出版物の装丁やレイアウトなど出版社の意匠権ともいえるもので、著作者の持っている第一義的な著作権と違い、それを出版物にした際の組み版 形式に対する権利といっていい。レコードを例にとれば、作詞家、作曲家の権利である著作権に対するレコード会社、プレーヤーなどの持つ著作隣接権の一種と 考えられるものだ。
 音楽の場合は、この隣接権についても早くから保護意識があり、日本音楽著作権協会が徴収する利用料から一定比率で、レコード会社などに権利料が支払われ ている。
 しかし、出版界では、著作権そのものに対する保護意識は、江戸末期の「版権」的な考え方以来、なかったわけではないが、隣接権については、最近になるま でほとんど問題にされていなかった。
 それが、出版界で検討され始めたのは、やはり、コピーの普及と増加が背景にある。コピーは著作権そのものを侵害しているだけでなく、出版社の持つ固有の 権利も侵しているという意識が出てきたわけである。
 特に、最近では出版物のビジュアル化が進み、版面そのものに対する出版社の権利を主張してもいいという見方が強くなってきた。
 日本書籍出版協会など出版四団体がまとめた調査(六十三年三月)によると、全国の上場企業、大学、研究機関などで行われている出版物の複写は年間約十四 億枚にのぼり、それによる出版社の損害は三百四十九億円に達するという。著作権のみならず、出版社の権利も大きな侵害をうけているという主張が強くなって きたのもうなずける。
 こうした流れをうけて、版面権の法制化を検討している著作権審議会第八小委員会では、版面権を認めるべきだとする中間報告をまとめ、先ごろ公表した。こ れに対して、経団連から「版面権を認めれば、出版物のファクシミリ送信をはじめ新聞のスクラップ・コピーなどを利用する際にも対価を徴収されることにな る。企業負担を増大させるだけでなく、情報の流通を抑制するなど時代に逆行するもの」とした反対意見が出された。
 確かに、利用者の負担は増えるだろうし、EL(電子図書館)への影響なども考えられる。版面権の正式認知には、もう少し時間が必要な部分もあるだろう。 だが、勢いとしては、その方向に進みつつあるといえよう。
 版面権が認められた場合、その対価報酬徴収の受け皿と期待されているのが、旧冬、設立発起人総会を開いた「日本複写権センター」だ。今年五月創設を目標 に準備を進めているが、いくつかの問題を抱えている。その第一が、財政的な基盤となる入会金等の問題だ。一案では入会金百万円、会費五十万円となっている が、日本文芸家協会などを始め、「高額ではないか」と難色を示すところもある。日本工学会や学術書の専門出版社などと違い、コピーによる被害があまり実感 できない団体などは、メリットを期待できないといった思惑もあるようだ。
 同センター設立発起人会事務局では、「版面権の問題でセンター構想が進まないというのでは話が逆。もともと著作権侵害に対する措置なのだから」としてお り、版面権に対して、センターとしての一切のコメントは行っていない。
 いずれにしても、センター運営の核となる役員内定を終え、今月からは積極的に準備を進めていく構えで、版面権については模様ながめの段階といえよう。 「知的所有権」という考え方に、多数の人がなじむには、まだまだ時間がかかりそうだ。
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◆『朝日新聞』1991.11.26. 複写権 無断コピーに歯止め必要、センター発足(なんでもQ&A)
 最近、「日本複写権センター」が発足しました。著作者を保護するためコピー利用者から一括して料金を徴収し、野放しの「コピー天国」に一定の歯止めをか けようというものです。
 Q 複写権って聞き慣れない言葉ですが。
 A 著作権法のもとで、文化的な創作物の著作者は、その著作物の複製を許諾する権利を持っています。複製といってもいろいろありますが、センターではこ のうち複写機による出版物のコピー利用の権利を問題にしています。
 Q 出版物を無断でコピーすることはいけないことですね。
 A 個人的な利用や学校の授業など一定の限度内なら著作者の許諾は要りませんが、それ以外は違法です。著作権侵害は、著作権法119条で処罰の対象(3 年以下の懲役または100万円以下の罰金)になります。ただ実質的に利用者のチェックは不可能なので訴訟はほとんどないのが現状です。
 Q だから氾濫(はんらん)するんですね。
 A 出版者団体が87年に行った調査では、全複写枚数は年間159億枚で、出版物の複写枚数は年間13億6000万枚、複写された書籍、雑誌は約 3700万冊に上る、と推計されています。
 Q どんな影響がありますか?
 A 深刻なのは出版社です。ある証券会社は社債に関する本を300部も無断で抜粋、コピーしていました。見本教材を教師が無断でコピーして生徒に使わせ る例も後を絶ちません。1冊1万円の医学書が複製され、10分の1の値段で売られていた例もあります。
 Q 著作権への無知や善意の行為が結果的にアダになっているわけですね。
 A 文化庁の著作権審議会第8小委員会は昨年、装丁やレイアウトなどに関する権利を、著作権とは別の「著作隣接権(版面権)」として出版者に認めるべき だという最終報告をまとめました。しかし、負担増を警戒する経済界の反対もあり、実現してはいません。
 Q いままで野放しコピーを防ぐ試みはありましたか?
 A 企業内でのコピーをチェックし、出版物と業務用書類とを見分けるのは困難なうえ、行き過ぎた規制は学術文化の発展を妨げるとの批判もあります。書籍 をコピーする場合、利用者自身が著作権者の許可を取り、それを示す書類を提出しなければならないとしている企業もありますけど。
 Q いちいち著作者に許可をもらうのも面倒ですね。
 A センターの目的は権利者側が一体となって窓口を作り、集中処理することにあります。著作者から権利委託され、企業や大学などと契約を結びます。コ ピー利用者は使用料をセンターに支払い、それが著作者に分配されます。
 Q 料金の徴収方法は?
 A 「コピー1枚につき2円とする個別許諾方式」「コピー機1台につき2000円と従業員1人につき20円を年間契約料とする包括許諾簡易方式」など4 種類のうちから1つを利用者側が選びます。
 Q 外国ではどうなのですか?
 A 18カ国で集中処理機関が活動中です。最も早く設立されたドイツ(1958年)では大学や図書館を中心にコピー枚数に応じて料金を徴収しています。 フランスでは複写機に税金のような課徴金も掛けています。米国は78年に設立、主に大企業が対象です。
 Q うまくいくでしょうか。
 A いままで実質タダだったものが有料になるのですから、複写権をPRして契約を増やし、料金徴収対象者の底辺を広げる必要があります。徴収の負担が大 企業や大学ばかりになれば不満が出てくるでしょう。出版物コピーの利用形態の実態調査や徴収料金の分配方法の規約作りなども急務です。
 Q CD−ROMなどの電子出版物のコピーも問題では。
 A パソコンの急速な普及で市販のソフトを違法コピーするケースも多い。70年の著作権改正以降、録音・録画機器などの発達に伴い、「貸与権」を新設、 データベースを著作物に加えるなど、時代の変化に対応しています、が、技術の進歩が早過ぎて……。
 Q 特許や商標なども含めた知的所有権が、経済摩擦とからんで議論されていますが。
 A 国際的なルール作りが重要です。コピー機や用紙に金は払うが、その中身には支払わないという考えは通りません。創作物を保護し、その対価を支払うと いう社会的コンセンサスが必要ですね。
 (調査部 汲田和久、鈴木真由美)
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◆『朝日新聞』1992.03.24. サンプリングが芸術を解体する デジタル芸術
 デジタル技術が芸術の世界を変革している。
 他人の作品から素材をとって再構成する手法である。
 これはコピーか、それとも創造か。
 (編集部・烏賀陽弘道 写真・太田善博)
 キヤノン製のデジタル・カラーコピー。
 それが、相内啓司さん(42)の絵筆でありパレットである。
 2月に東京で開いた展覧会のテーマは「受胎告知」だった。
 救世主イエス・キリストを宿したことを聖母マリアに告げる大天使ガブリエル。宗教史上の大事件の瞬間を描いた、レオナルド・ダ・ビンチの傑作が素材であ る。
 相内さんは、これをサンプリングして新しい命を吹き込んだ。
 ○「オリジナル」が意味失う時代
 制作法はこうだ。
 まず2人の顔や指先の表情を、鉛筆のデッサンで写し取る。それをカラーコピー機に読み取ったうえ、電子ペンを使って色を指定した告知図を、何十通りもつ くる。コピー機に記憶させておき、最後に、そのデータを1枚の紙に重ね合わせてプリントアウトする。
 さらに、そうやってできた独自の色彩を放つマリアやガブリエルを、別に用意した背景と、コピー機上で合成して仕上げていく。
 数十の色の混ざり具合、「版下」の微妙なズレが、腕の見せどころだ。荒れた画面がほしくて、コンビニエンスストアでわざと粗いコピーをとったり、ファク スで送信した絵を使うこともある。
 「オリジナル・コピー・アート」。相内さんは、自分の作品をそんな風刺を込めた名で呼んでいる。
 「現代は『オリジナル』が意味を失う時代なのです」
 ダ・ビンチの「受胎告知」は広く知られた名画だ。でも、本物の絵(オリジナル)を見た人はほとんどいない。知っているように思っても、じつは本やテレビ の上の虚像(情報)を知っているにすぎないのだ。
 相内さんがコピーアートを始めたのは、まだここ4年ほどのことだ。それまではコピー機の性能が悪く、色などの仕上がりに満足できなかったからだ。
 1ミリ四方を256個の点に分解し、それぞれの色、濃淡などを数値に置き換えて読み込むのが、デジタル・カラーコピーの仕組みである。
 5年前には色の濃さが64段階だけだったが、今では256段階まで表現できる。
 色だけではない。サンマを膨らませてマンボウにしたり、いくつもの画像を合成したり、自在に手を加えられる。ビデオ、電子カメラ、パソコンをつないで画 像を入力するのもお手のもの。「画像プロセッサー」と呼んだ方がいいかもしれない。
 ○りえの肌を宮沢首相の顔に
 コンピューター・グラフィックス(CG)の世界になると、可能性はさらに広がる。
 CGでは、サンプリングの秘密兵器は「イメージ・スキャナー」である。
 見かけも仕組みも、デジタルコピー機と同じだ。値段はコピー機よりずっと安く、1台20万円以下で買える。コンピューターにつなぐと、写真や絵をデータ 化して入力できるのだ。
 使い方の一例をあげよう。
 宮沢りえの写真集から、肌をスキャナーでコンピューターに読み込み、フロッピーディスクに保存しておく。次に宮沢首相の顔を読み込む。コンピューターの 画面を見ながらマウスを操作すれば、宮沢首相の顔に宮沢りえの肌を張り付けることだって可能だ。
 安斎利洋さん(35)は、CG作家であると同時に、パソコン用の「絵かきソフト」を自分で組んで商品化した経歴の持ち主だ。
 このソフトを使うと、1600万色を着色することができる。油絵の筆致、ぼかし、エアブラシといった、習得に何年もかかるテクニックが、コンピューター の画面上ですぐ使える。もちろん、輪郭や形を変えるなんてのは朝飯前。サンプリングした画像に、思うままに加工ができるのだ。
 ただし「元ネタ」がすぐ分かるようなサンプリングをする作家は、あまり多くない。
 安斎さんは、和紙や布地の質感をよく絵に織り込む。女性の髪の写真をサンプリングして、雨の線に使う作家もいる。どことなくなまめかしい雨降りの描写に なる。
 ○作品そのものをポスターに
 安斎さんは、「オリジナル」という概念に挑戦する「いたずら」を仕掛けたことがある。
 CG作家仲間数人で「限定200部」の「オリジナル作品集」を作った。同時に、作品数点を選んで、宣伝用ポスターも作った。
 このポスター、作品集とまったく同じように、コンピューターから引き出して、同じプリンターで印刷されたものである。すると、オリジナル作品とポスター の違いはどこにあるのか。
 「オリジナルには、作者のサインが入っています」
 これまでの美術の世界では、版画や写真は別にして、作品はこの世に1点しか存在しなかった。だからこそ、オリジナル作品は貴重とされ、名作は何十億もの 値で取引されたのだ。
 しかし、CGではオリジナルそのものが大量生産されてしまう。
 安斎さんは、こうもいう。
 「CGは拡大すれば単なる点の集まりでしかない。もともとオリジナルなんてないんですよ」
 ○イヌの鳴き声で音階を作る
 コピー機やCGのサンプリングが美術を揺さぶっていたこの5年ほどの間に、音楽の世界でもサンプリングが異変を起こしていた。
 その名も「サンプラー」という楽器の登場である。
 サンプラーはシンセサイザーの一種だが、発想は根本的に違う。シンセサイザーは音を合成する電子楽器だが、サンプラーは現実に存在する音をサンプリング する「音のコピー機」なのだ。
 イヌの鳴き声。車のエンジン音。ガラスの割れる音。音であれば何でも、その音を使って鍵盤で音階に変えてしまう。出せない音がないので「究極の楽器」と も呼ばれる。
 原理はデジタルコピーとよく似ている。音の波形を、1秒間に4万4100の点に分け、解析して電気信号に置き換える。CDのように精密に音をコピーでき る。
 サンプラーが10年前に世界で初めて商品化されたときは、1台1000万円。プロにしか手が届かず、とても普及しそうになかった。
 それを身近にしたのは「アカイ」「ローランド」といった日本のオーディオや楽器のメーカーである。いま、だいたい1台40万円。2万円を切る製品まで出 ている。記憶容量の大きい高性能の半導体メモリーが安くなったのが、大きな要因だ。
 サンプラーの見かけや大きさは、楽器というよりはビデオデッキに似ている。
 自然音、レコード、音源はなんでもいい。一瞬の音をコピーするだけではない。最大6分前後までサンプリング時間を設定できるから、歌1曲くらい、丸ごと メモリーに入る。
 ○フロッピー1000枚が音楽の泉
 80年代、シカゴやニューヨークのディスコのDJたちが、既存の曲の1小節か2小節をサンプリングして延々と繰り返し演奏する、というダンス音楽を生み 出した。この音楽は、発祥の地であるディスコの名前を取って「ハウス」と呼ばれている。
 福富幸宏さん(28)が昨年12月に出したCD「ラブ・バイブス」は、その手法を発展させてできあがった作品だ。
 音源は自分のレコードコレクションである。ジャズや現代音楽、あらゆるジャンルの音色やリズムパターンをサンプリング。自作の音も加えた1000枚のフ ロッピーディスクが、福富さんのミュージシャンとしてのデータベースだ。
 「元歌」がすぐにわかってしまうような使い方は、ここでも芸がないとされる。
 サンプリングした音は、いくらでも加工ができる。ピアノの演奏をサンプリングし、リズムだけを残して音色はギターに変えた、という演奏もCDに入ってい る。
 元の曲からは想像もできない使い方をすることで、サンプルに新しい命を吹き込む。そこに「模倣」との境界線がある。
 ○技術は無用、感性だけが大切
 福富さんはこう表現する。
 「長年のポピュラー音楽の歴史の中で、レコードは膨大にある。無限に近い素材の中から、何を選んで、どんな新しい意味を持たせるか。そこにアーティスト の感性が表現される」
 福富さんのCDは、自宅マンションの6畳間で生まれた。サンプラーにパソコンをつなぎ、自動演奏で録音したのだ。
 福富さんは、もともとはベースギター奏者である。鍵盤楽器は片手で弾く程度だ。「演奏」はパソコンをマウスで操作するだけ。それで、一流の音色の複雑な フレーズが、次々に飛び出してくる。
 演奏技術の訓練の重要度は減る一方だ。すると、聴き手と演奏者、アマチュアとプロの境界線も、あやふやになってくる。
 「でも、歌心のない人が作った音楽は、やっぱりつまらない。演奏が簡単になった分、ミュージシャンの感性が忠実に出てしまう」
 技術ではなく「感性」だけがプロの要件になりつつある、と福富さんは考える。
 ○60年代ポップアートが源流
 サンプリング芸術の源流は、1960年代のアメリカ・ポップアートに見いだすことができる。
 有名なのはアンディ・ウォホールだ。誰でも知っているマリリン・モンローやエリザベス・テーラーの写真とか、コーラのビンを題材にして自分の作品に再構 成した。
 マスメディアに乗ったモンローやリズの「虚像」をもう一度虚像化すると、あたかもマイナス×(カケル)マイナスがプラスになるように「ウォホールの作 品」という「実像」が生まれる。
 美術評論家の木村重信さんは、サンプリング芸術は芸術の自然な流れだ、と強調する。
 「現代は写真や映像といった虚像が氾濫する時代だ。自然物だけが芸術家のモチーフになった時代とは違う。自然であろうが虚像であろうが、それをどう作り 変えるか、に作者の個性は表れる」
 ●自作の引用さえ見つけにくい 技術に追いつかない著作権法
 昨年暮れ、世界中のレコード店の店頭から、ビズ・マーキーというラップ歌手のアルバム20万枚が一斉に回収された。彼がギルバート・オサリバンの作品を 無許可でサンプリングしていたことに対し、ニューヨーク地裁が著作権法違反との判決を下したからだ。
 ラップやハウスはサンプリングを多用する。ラップ歌手MCハマーのアルバムでは、13曲中5曲がサンプリングで作った歌だ。ヒット曲「U・キャント・ タッチ・ジス」は、リック・ジェームスの「スーパー・フリーク」という曲から、ベースとドラムの音色とパターンをそのままサンプリングして、ハマーが歌を 重ねたものだ。
 欧米では、元歌を明示して、原作者に著作料を払うといった慣習ができあがっている。が、時にはマーキーの例のような「もぐり」が出てくる。
 例えば、他人が撮影したヌード写真を、無許可でスキャナーで読み込んだとする。ヌードの体の曲線だけを残して、まったく別の絵に作り変えてしまったら、 ヌード写真の原作者は、著作権を主張できるのか。
 文化庁著作権課によると、写真を読み込む行為は「複製権」の侵害にあたる。が、その先どこまでが著作権侵害なのか、線引きはまだ不明瞭。判例の積み重ね と、業界の慣例ができあがるのを待つしかない、という。
 日本の著作権法は、1970年の施行。コピーが普及する以前の法律であり、サンプリングという新技術にはまったく追いついていないのが現状だ。
 まして、CGやサンプラーのように、音や形を完全に変えてしまう高性能の機材の前では、原作者が自分の作品がサンプリングされていることを発見すること すら、困難だ。
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◆『朝日新聞』1993.06.27. 業者テスト複写 校内試験で鳥取の中学校 著作権を侵害
 文部省が業者テストに中学校が関与することを全面的に禁止したことで、鳥取県内の複数の中学校が、代わりに過去の業者テストをコピーして「自作問題」と して使っていたことが二十六日、わかった。著作権の侵害にあたるが、学校側は「急に禁止されて、教師には問題を作る余裕もない」と説明している。
 業者テストをコピーしていたのは、米子市立の福米、加茂の両中学校。福米中は五月十日の校内テストで、前年同時期に実施した福武書店(本社・岡山市)の テスト問題を五教科すべてコピーして実施、外部にもれないよう、試験終了後、問題用紙を回収していた。富士原寿和校長は「業者から事前に承諾をとらなかっ た。去年の生徒の学力と、客観的に比較できるデータが欲しかった」という。
 加茂中は五月六日の実力テストの理科の問題で大半を、一九九〇年度に実施した福武書店のテスト問題をコピーして使った。他教科も、別の業者テストや市販 問題集を「切り張り」して問題を作っていた。
 このほか米子市立湊山中は五月六日にあった校内テストの数学の問題で、昨年の福武書店の問題を、ほとんど数値を入れ替えただけで、ワープロで打ち直し、 出題していた。
 文部省職業教育課は「業者テストの複製は、明らかに著作権を侵害している。現場の声は理解できるが、従来が異常な状態だったのだから、改めなくてはなら ない。能力のある人を教員に採用しているはずで、努力をしてもらうしかない」と話している。
 問題をコピーされた福武書店社長室は「複製は明らかに著作権侵害。しかし事実を確認していない段階なので、なんとも言えない」としている。
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◆『朝日新聞』1993.12.14. 著作権侵害で県などを訴え 「刊行物に無断引用」 /神奈川
 地質学の研究団体として行った調査に基づくデータをもとに、平塚市博物館の学芸員が県や同市の刊行物などに論文を掲載したのは著作権侵害にあたるとし て、団体と会員らが、出版物の差し止め・回収や損害賠償を求める裁判を十三日、横浜地裁に起こした。
 訴えたのは、大学の研究者や小中高校の教師ら約百九十人でつくる民間の地質学研究団体「関東第四紀研究会」(羽鳥謙三代表)と会員十一人。訴えられてい るのは、神奈川県と平塚市、研究会の元会員で平塚市博物館の学芸員(四三)など。
 訴状によると、この学芸員は一九七六年から八三年まで、同研究会が団体・共同研究として行った平塚市近辺の地質構造などに関する調査に会員として参加し た。その後、平塚市や県などが発行した本や雑誌計四冊に、自分の名前で同研究会の機関紙を無断引用、未発表データを使ったりした。「会員が論文などを発表 する機会を奪われた」としている。
 研究会と平塚市、学芸員の間には八五年に、書籍の増刷や複写をさせないなどの内容で和解が成立したが、その後も別の引用を続けるなどしたため、提訴に踏 み切ったという。
 提訴について、この学芸員は「すでに和解しているものと理解している」と話している。
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◆『朝日新聞』1994.05.10. デジタルブック続々 “加工”できぬ難点
 フロッピーディスクで読む本「デジタルブック」が刊行されて半年。百点余のタイトルが出そろった。軽いノリの企画が目立つ中、売れ行きは地味でも、安部 公房、筒井康隆氏らの作品集など十三点をそろえた新潮社の文学路線が光る。ディスプレーで小説やエッセーを読む新しい読書スタイルの提示だが、使い勝手の 悪さがネックとなっている。
 デジタルブックは専用プレーヤーかパソコンで起動して読む。問題は文字データがいわば暗号化され、しかもコピーできないように「プロテクト」がかけられ ていること。このためテキストファイルとしてワープロ画面に読み込み、必要部分を切り抜いて印刷するなど、本来なら電子テキストの特性と言える自在な加工 処理ができない。著作権侵害防止のためとはいえ、電子ブックの可能性が狭められてしまう。
 例えば『方丈記』=写真=は「新潮日本古典集成」を底本に、本文と約六百の注釈が一枚のフロッピーに収められた。これが電子テキストとして制約なしに利 用できれば、専門家に限らず、一般の読書人にも多様な読み方が可能となるだろう。
 やはり文学路線を行く米国の電子ブック規格「エキスパンド・ブック」の場合、プロテクトはなく、簡単にコピーできる。それが近々パソコン通信で電話回線 を通じて購入できるようになる。購入者が違法コピーをばらまくと、それを別の人が起動するたびに、違法コピーした最初の人のパソコン通信用ID番号が表示 される。いわば道義的に自制を求めるわけだ。
 新潮社の西村洋三メディア室長は「悩ましい問題です。売り上げ部数が増えれば、コピーする気も起きないほど安くできて、プロテクトの必要はなくなるのだ が」と話す。これも新メディア誕生に伴う産みの苦しみなのかも知れない。
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◆『朝日新聞』1995.07.31. コンピューターネットにも「警察」を トラブル対策で学会などが提言
 コンピューター網に「ネット警察」を――電子情報通信学会が、こんな提言を盛り込んだ中間報告を今月、まとめた。パソコン通信や、世界的なコンピュー ターネットであるインターネット利用者の急増を背景に、コンピューター網の悪用対策や、既存の社会制度とどう折り合いをつけるかが重要な検討課題になって きた。パソコン通信の業界団体も、電子社会の新秩序構築に向けて動き始めている。

 電子情報通信学会の中間報告は、学会の「マルチメディア・インフラストラクチャ&サービスに関する時限研究会」(研究専門委員長=松下温・慶応大理工学 部教授)が作成した。
 コンピューター網を利用した犯罪や著作権侵害などのトラブルに対処するため、ネットワーク警察やネットワーク裁判所、電子公証人の設置を提言。利用者に 対するネットワーク上の倫理教育や不正利用を検出する技術の開発でも対応しきれないものについては、新しい種類の警察機構が必要だとしている。
 また、異なる行政機関同士のオンライン結合を禁止した現行法令の緩和を提案。自治体や省庁をネットワークで結ぶことで、一つの役所の窓口に行けばすべて の関連手続きができる「ワンストップマルチサービス」の実現を促した。このほか、扱いやすいコンピューター端末の開発で、新たな情報格差を生み出さないよ うにする必要がある、と指摘している。
 松下教授は「コンピューター網の自由度を保つことは大前提だが、利用者が快適に電子社会で暮らすための最低限のルールが必要で、そのためにネットワーク 警察を提唱した」と話す。
 一方、パソコン通信の運営者などでつくる「電子ネットワーク協議会」(会長=関本忠弘NEC会長)も、自主的な運用指針作りに乗り出している。通信販売 を装った詐欺や、ネット上でコンピューターウイルスを売るなど反社会的な行為、他の利用者のプライバシー暴露やひぼう中傷など、さまざまな問題が起き始め ているからだ。
 「各パソコンネットには会員規則があり、ネットを悪用する人を強制的に排除することもできるようになっている。だが、運用をどうしたらいいのかは模索中 の状態」と同協議会の国分明男専務理事はいう。
 利用者間で紛争を起こさないためのエチケットを提案するほか、会員間の紛争が起きた際のネット運営者側の対処方法や、他人の著作物の引用のルールをどう するかなどについて、今年度中に指針をまとめる方針だ。
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◆『朝日新聞』1996.03.30. 電子館:4 赤池学(匠の博物館 MONOSEUM)
 雑音がなく、何度録音を繰り返しても、そのままの音が再現でき、音質の劣化がほとんど起こらない。デジタル・オーディオ・テープ(DAT)は、こんな宣 伝文句で世に出された。七年前、知人の音楽プロデュサーに教えられ、FMで放送された江差追分からレゲエまで、様々な音を、このDATで録音、再生してみ た。従来のテープの音と比べると、その音質は格段に向上していた。CDと比べても、そん色はないどころか、ライブ演奏を録音した場合、CDをはるかに超え る音質と臨場感をDATはもたらしてくれる。
 ところが、DATはほとんど売れていない。理由は三つある。ひとつは、非常に優れた音のコピーができることから、CDからのダビングを恐れたレコード業 界から著作権侵害の可能性があるとクレームがついたから。第二は、小型化を進めた結果、手のひらサイズの「面白グッズ」に成り下がったから。もう一つは、 DAT用のミュージックテープがあまり発売されなかったからである。
 DATは、ビデオ(VTR)と同じように、ドラムに巻き付けられたテープのデジタル信号をへッドが書き込んだり、読み取ったりする仕組みになっている。 用いられるテープは、三・八一ミリ。ここに十六ビットのデジタル信号が記録されているのだが、実はテープの上下にも別の信号が書き込まれている。音楽の絶 対時間、あるいは始まりと終わりの位置決め信号、そしてコピー禁止信号がびっしり記録されているのである。複雑な書き込みがトラブルを生み、故障率を上げ てしまったのだ。
 DATはその開発当初、家庭用の8ミリビデオデッキで実験されたという。そのままなら、こんなに普及した8ミリビデオテープが使え、そうしたトラブルも 起きなかったはずである。より小さくという、ユーザーにおもねる姿勢が本来の機能を台無しにしてしまったかに見える。
 こうした反省を前提に、私が今注目しているのは、「ミニ・ディスク」である。光磁気ディスクによるこの小型録音再生機は、テープではなくディスクに録音 でき、しかも割り込みも可能だ。光と磁気の両方で録音できるため、屋外で少々砂ぼこりをかぶってもトラブルが少なく、信号を五分の一に圧縮しているため、 音飛びが起こりにくい。
 録音をチェックする時も、DATのようにテープを巻き戻すことなく、すぐに再生でき、次の録音のためにいつでもスタンバイの状態にしておける。さらに、 この技術を発展させ、普通のCDも使えるポータブル機を開発すれば、その用途は広がるはずである。
 過去四回、音の問題を取り上げてきたが、直言したいのは、音響機器を「おもちゃ」にしてはならないということだ。面白多機能主義の潮流を改め、そもそも 良い音とは何なのかという出発点に、メーカー、ユーザーの双方が立ち返って欲しい。
 (ジャーナリスト)
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◆『読売新聞』1996.06.03. マルチメディアの著作権を一元管理 文化庁が2000年メドに新法人
 ◆画像・音声など幅広く
 二十一世紀初めには一兆円市場突破が予測されるマルチメディアソフトの著作権保護などを目的に、文化庁は、新たな公益法人「著作権権利情報集中機構 (J―CIS)(仮称)」を、二〇〇〇年をめどに設立することを決めた。画像、音声、データなど幅広い分野にわたる著作権を一元管理するシステムは世界初 の試みで、マルチメディアソフト業界の健全育成に向けての環境整備が期待される。
 同庁がこのほどまとめたJ―CISの構想(概要)では、同機構がソフト利用者に提供する著作権情報は大別すると、次の二通り。
 まず、音楽など著作権の集中管理が進められている分野については、権利者団体のデータベースとオンラインで接続。さらに、写真など集中管理が未整備の分 野は、情報収集したうえで新たなデータベースをJ―CIS内に構築し、各分野の著作権情報を網羅する。
 利用者側はJ―CISを利用して、必要とする分野のデータベースに接続することで、著作権の帰属を簡単に知ることができ、権利処理のスピードアップも図 られる。権利者側も、著作権料の徴収漏れを防止できるメリットがある。
 マルチメディアソフトは膨大な種類と数のソフトを素材につくられるが、個々のソフトごとに著作権者を探し使用許可を得るのは困難なため、制作を断念した り、著作権料を払わないまま無許可で制作するケースが後を絶たない。
 また、制作にあたり、小説や写真集など情報ソフトの一部を使用したり、内容を改変して使うケースも少なくないため、こうした観点からの著作権侵害を指摘 する声も出ている。
 このため、著作権の権利者団体、ソフト制作者双方の要望を受け、著作権審議会マルチメディア小委員会が九三年十一月、新システムづくりを提言、同庁が検 討を進めていた。
 同庁では五月末、著作権を管理する三十団体などに同構想を初めて説明、その意見を聞いたうえで近く報告書をまとめ、設立へ向け具体的準備を急ぐ。
 〈マルチメディア〉 文字や映像、音声、図形など異なる形態の情報を融合し、コンピューターを利用して送受信するシステム。
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◆『朝日新聞』1996.07.05. 情報化と知的財産権保護 加藤幹之(論壇)
 世界では、四千万人以上の人々がコンピューターと通信が融合したインターネットを通じて国境を越えた通信を享受し、全く新しいビジネス形態やネットワー クの利用が可能となってきている。それと同時に、著作権を中心とした知的財産権をどう保護していくかが大きな関心事となっている。ネットワークを取り巻く 技術やその中を流通する情報の知的財産権を十分に守ることは必要だが、半面、保護の範囲を広げ過ぎてネットワークと情報の利用が妨げられてはならない。権 利者と利用者間の利害のバランスを取りながら「情報化社会」が発展し、だれもが利益を受けられることが重要である。
 国連専門機関の一つである世界知的所有権機関(WIPO)では現在、著作権に関するベルヌ条約の見直しを審議しており、十二月には新たな条約が結ばれる 予定である。今回の改正の柱の一つは、「コンピュータープログラムや創作性のあるデータベースの著作権をいかに保護するか」である。デジタルネットワーク の時代になるとアナログの場合と異なり、世界中どこからでも高品質のコピーが作れる。このため、違法コピーを防止するための統一的な基本ルールを各国が採 用し、取り締まることが特に重要になる。
 しかし、WIPOでの審議には、いくつかの懸念事項がある。コンピューターを作動させたり画像をスクリーン上に表示させたりするためには、プログラムや 信号を瞬間的にせよコンピューターに記憶させる必要がある。随時読み出し書き込みメモリー(RAM)にインプットするわけだが、五月の事務レベル会合で欧 州連合(EU)は、これが著作物の「複製」に当たると主張した。しかし、この行為が「複製」に当たるとすれば、保守会社がコンピューターの保守のために電 源を入れただけで、著作権の侵害になってしまう。プログラムを自動的にRAMに読み込むからである。また、情報を一般に公開するため告知板のように用いら れているワールド・ワイド・ウェブをのぞくだけで、著作権侵害になる恐れもある。
 コンピューターネットワークを通じた著作物の伝達に絡む著作権についても、国ごとに立法のアプローチが違う。日本は、放送の例に準じて送信行為を「有線 送信権」で規制している。一方米国は、ネットワーク上を物品が流通することととらえ、物品を公に配布する「頒布権」の対象だと主張している。またEUは、 ネットワークの場合は所有権の移転が伴わず、著作物を「貸与」するだけだとの見解を示している。
 例えば、書籍や音楽CDのように形ある物(有体物)で提供されている著作物では、その処分は自由であり、転売や非営利目的の転貸が認められている。同様 のことがネットワークを通じて行われる場合、国ごとに規制の方法が違うと、国際的な通信に混乱が生じる恐れがある。同じ著作物なのに、本のような有体物 と、デジタル信号という無体物とを別扱いすることにも疑問がある。
 さらにEUや米国は、個人の電話番号のような、事実だけを集めたデータベースを保護する特別立法を提案している。もし情報を収集しただけの行為に権利を 与えるようなことになると、先進国を中心とした巨大資本が情報を独占する可能性を生む。
 こうした条約改正の動きと並行して、米国の全米情報基盤確立のための著作権法改正案や各国の国内法改正の動向にも注目したい。米国では、ネットワーク上 で発生した著作権の侵害行為に対して、オンラインサービス会社の管理者責任を問う訴訟が、最近急増している。
 知的財産権の保護は必須(ひっす)だが、創作した著作物を提供する機会が増えれば、権利者にとってもより大きな価値を生むことになるのである。例えば、 スクリーン上で著作物の一部をのぞくことは自由にできるが、内容全体をプリンターで印刷する場合には料金を徴収するといったシステム作りが考えられる。
 先端技術に絡んだ複雑な法律問題だけに、我が国も、条約の審議や国内法の整備を通じて権利者と利用者間のバランスを図り、次世紀の環境整備に積極的に貢 献することが期待される。
 (かとう・まさのぶ 富士通ワシントン事務所長、米ニューヨーク州弁護士=投稿)
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◆『読売新聞』1996.07.31. [電子出版の世界]映像の複製、容易に 海賊版横行、侵害される著作権
 「ピカソの絵画を複製し、インターネットのホームページに掲載できるでしょうか」。電子社会”での法律上の問題を考えようと、一年前電子機器メーカーの 社員やマスコミ関係者らでスタートした「情報社会と法研究会」主宰の弁護士、木村哲也氏に寄せられた質問の一つだ。
 約三十人が参加する研究会の月に一度の勉強会でも、電子社会での著作権問題に関心が集まる。
 「マルチメディア時代には、大量の情報が流通し、その複製や加工が容易になるという利点がある。しかし、そこには著作権が簡単に侵害されるという危険性 もある。オリジナルと同じ精度でコピーできるため、すぐに海賊版がつくれ、原本を少し加工してまったく違ったソフトも作成できる。実際、電子出版で発表し たイラストが、外国の雑誌に盗用されたケースもあるようです」と、氏は“無法状態”を指摘する
 最初の質問に対する法律上の答えは「できない」。ホームページが不特定多数の人に開かれているため、勝手にピカソの作品を掲載することは著作権侵害だ。
 「著作権が保護されるのは、著作者の死後五十年間。ピカソは一九七三年の死亡ですから、二〇二三年までは作品を使用する際、著作権を相続した遺族の許可 が必要です。これは画集の出版と同じですが、そこにBGMを流そうとすれば、別の使用となって改めて交渉しなければならない。著作権料も作品だけの場合よ り多くなるでしょう」
 マルチメディアは映像、音声、文字など多彩な情報の複合体。現行の著作権法は複合使用を想定しておらず、現状では著作権の処理が複雑になる一方だ。
 「だから、法律の再編が不可欠ですが、その際、著作物の法的保護と、情報の流通という相反する要求のバランスをどのようにとるかが大きな課題です」
 マルチメディア時代に、法律の方も追いつくことができるだろうか。
                        (木村 未来記者)
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◆『朝日新聞』1996.08.28. 著作権侵害防ぐ電子透かし技術、2000年実用化へ 郵政省・NTT
 郵政省は一九九七年度からNTTと協力して、インターネット振興策に着手する。インターネット上の著作物の不正利用を防ぐ「電子透かし技術」の開発や 「電子印鑑技術」を使った電子マネーの実験など。インターネットでの買い物や銀行決済に不可欠な「他者から侵入されないための安全の確保」と、大容量の情 報通信をスムーズにさばくための利用環境を整えようとの狙いだ。

 郵政省によると、インターネットの利用者は推定で約五百万人と、この半年でほぼ倍増した。「プロバイダー」といわれる回線接続事業者も七月末で約千社を 数え、昨年同期の十七倍に増えた。ネット上で情報提供サービスをしている企業は、把握できないほど増えたという。こうした中で、個人情報の不正利用やデー タの改ざん、ネットワークのパンクなどへの対策が、最大の課題となっている。
 実験などの振興策は、九七年度から三年計画で西暦二〇〇〇年の実用化をめざす。同省の九七年度予算としては、インターネット関連で総額約十億円を要求し ている。NTTは技術面で全面協力するほか、出資も検討中という。実験は、銀行やメーカー、通信事業者ら約百社で構成するサイバービジネス協議会が行う。
 セキュリティーの確保で柱となるのは、インターネット上での著作権侵害を防ぐ「電子透かし技術」の研究開発と、「電子マネー」の実証実験だ。
 電子透かし技術の開発は、映像や音楽などホームページの制作物が無断で二次利用されるのを防ぐためだ。画像にあらかじめ制作者を示すマークや文字などを 刷り込んでおき、違法に画像が再利用された場合にはこうしたマークがあぶり出される仕組みだ。電子マネーはネットワークで流通させる電子的な通貨で、イン ターネット上の買い物や支払いに使われる。NTTがこのほど「電子印鑑」による本人確認や不正利用防止のシステムを技術開発したため、実際に使ってみるこ とで実用化につなげる。
 装置面では、電話の交換機に当たるインターネットの通信中継装置「ルータ」を改善し、毎秒ギガビット(メガの千倍)の超高速・大容量の情報でも瞬時に処 理できるようにする。現在はメガビット級の中継処理能力しかなく、動画などを多数の利用者に同時に瞬時に送るといった需要には応じられない。
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◆『読売新聞』1996.11.27. 著作権守る「電子すかし」 加工不能、検出も困難 見えない“防犯カメラ
 CD―ROMに納まった映像などのマルチメディア作品を、不正コピーによる著作権侵害から守るため、作者名など目印になるデータを、画像中にこっそり忍 び込ませておく「電子すかし」技術が、注目されている。画像データを圧縮したり、切り取ったり、加工しても、「すかし」は消えないし、検出も難しい。不正 な海賊版作りの“抑止力”になりそうだ
 日本IBM東京基礎研究所が開発したのは、データハイディング技術。例えば、銀閣寺の写真をパソコンに取り込んだ画像データに、銀閣寺周辺の地図、日本 IBMの文字模様、銀閣寺の説明文の三つのデータをデジタル化して、隠し込める。「すかし」があっても、なくても、見た目は全く変わらない。不正コピーし て画像を一部切ったり、縮小、拡大しても、信号は消えず、作者が著作権を主張する際の証拠に使える。開発を担当した森本典繁さんは「動画でも、静止画で も、隠された目印を消そうとして画像データを圧縮しても画像が荒くなり、商品的価値がなくなるほどにしないと、目印が消えない仕組みも開発してある」と説 明する。
 一方、NEC北米研究所が開発したウォーター・マーキング技術は、ノイズパターンのように微小な「すかし模様」を作品に隠し込む。「『すかし』を見る方 法は、製作者しかわからない。不正コピーする人間には、『すかし』が入っているかどうかすらわからない。いわば、見えない防犯カメラのようなもの」 (NEC情報メディア研究所)という。
 最近発売された米アドビシステムズ社の画像編集ソフトの最新版は、電子すかしを入れられる機能付きになった。日本語版は十二月発売の予定。本物と同じコ ピーが簡単に作れるマルチメディアの世界で、「電子すかし」技術は今後、著作権保護の「黒子(くろこ)」役を発揮しそうだ。(高野 義雄)
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◆『朝日新聞』1997.04.23. 著作権めぐり訴訟 世界の電子ニュースを広告付きで無断提供 米国
 インターネットのホームページにほかのメディアのニュースを黙って取り込み、自社の商標と広告を付けて流しているサービスをめぐり、米国で著作権侵害な どとする訴訟が起きている。いわば電子的に他社の記事を切り張りして流しているようなもの。取り込まれた中には日本のメディアも含まれる。日本の著作権法 が予想していない技術によるもので、わが国で問題になってもただちに違法とはいえず、専門家も当惑気味だ。(調査研究室・松浦康彦)

 訴えたのはワシントン・ポスト、タイム、CNN、タイムミラー、ダウジョーンズ、ロイターというインターネットでニュースを提供している米国の代表的な 新聞、雑誌、テレビ、通信社六社。訴えられたのは、アリゾナ州フェニックスに本社を置くトータルニュース社という従業員数人の情報サービス会社だ。
 トータルニュース社の画面は、左側にL字形の枠が設けられている。枠の縦にはCNNやUSAトゥデイなどのボタンが十個並び、下側には横長の広告、左下 隅にはトータルニュース社の商標が配されている。これらのボタンをクリックすると、目指す新聞や雑誌の画面が枠内に取り込まれる。
 一方、画面中央には羅針盤形のデザインで政治、スポーツ、天気、娯楽、ビジネス、国際、国内などに分けられた目次がある。ここからも千二百に及ぶ世界各 国の新聞、雑誌、放送会社が提供するニュースを呼び込める。
 日本のメディアでは朝日、読売、毎日、日経、産経、共同通信、ジャパンタイムズなど十三社の情報サービスが呼び込めるようになっている。
 インターネットの検索サイトは「ヤフー」など国内外に多数ある。これらのサイトでは画面は目指す情報サイトのものに次々と変わっていくが、トータル ニュース社の場合は、同社の商標や所在情報、同社が集めている広告が終始残る。
 ワシントン・ポストなど六社は、「著名な新聞、雑誌、テレビ、ラジオ会社が集めたニュースや番組素材を盗用し、それにただ乗りして広告収入を得るという 海賊行為にほかならない」として、著作権侵害、登録商標侵害、不実表示、虚偽広告違反などで二月二十日、ニューヨーク市マンハッタン地区にある連邦地裁に 提訴した。
 これに対してトータルニュース社側は、「メディア各社のインターネット情報にリンクするというサービスを提供しているに過ぎず、内容の改変、加筆などは 一切していない。各社はかえって読者が増えているはず。大手メディアは、競合関係にあるインターネットの発展を意図的にコントロールしようとしている」な どと反論している。
 またワシントン・ポストは紙面で、「トータルニュース社は種もまかないで収穫だけしているインターネットの寄生虫」と、糾弾した。これに対して著名な ジャーナリストが「世界各地の新聞へのリンク情報サイトとしては、最もよく整理されたものだ。こうした訴訟は、インターネット上での自由な情報流通をおび やかす」と受けて立つなど、法廷外でも論争が展開されている。

 ○著作権法で対応困難 「規制は慎重に」との声も 日本
 インターネットのリンク張りを巡って、日本ではユーザー同士で許諾を取り合う自主ルールができつつある。しかし、他人のホームページを簡単に取り込むこ とができるソフトも市販されており、将来、問題が起きる恐れもある。
 ただ今回の場合、情報を直接コピーするという複製行為ではないし、リンクボタンを押して送信をうながすのはユーザー側だ。知的財産権問題を手掛ける弁護 士らも、「著作権法の複製権侵害とか送信権の侵害だとするには無理がある」という。
 通常のリンク張りと違って、「他人の著作物によって広告料を得ている以上、不正競争防止法などで争えないことはないのでは」などという見方もあるが、ぴ たりと当てはまる条項や判例は見あたらない。朝日新聞のインターネット情報サービス「アサヒ・コム」を運営する電子電波メディア局は、「勝手に借り物をビ ジネスに使うのはやはり納得がいかない。米国での訴訟の行方を見守りたい」としている。
 著作権法学者らは、インターネット上での自由な情報の流通を保つ観点から、新たな規制には慎重だ。関西大学の名和小太郎教授は「たとえ法改正が可能とし ても反対です。学術情報は引用の連鎖でできている。インターネット環境でさらに発展していく可能性を阻みかねない」と話す。
 岡本薫・文化庁国際著作権室長は、「リンク行為は現行法では著作権侵害にはならないと考えられる。インターネット上で情報を公開する人は、基本的にその 情報を知ってほしいわけだから、営利目的による利用を防止したいのであれば、そうした行為を禁止する旨を常に表示しておくことをお勧めします」という。
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◆『読売新聞』1997.12.17. 読売など5社が米ニュース社に抗議 「ネット上の著作権侵害」  
 読売新聞社と朝日、毎日、日経、産経の五社は十五日(米国東部時間)、米国のトータルニュース社に対し、インターネット上での不正行為の中止を求める連 名の抗議文書を、ニューヨークの弁護士事務所を通じて送付した。ト社のホームページは、世界各国ニュースサイトへのリンクを売り物にし、広告を集めている が、一切承諾を得ずに行われている。このため五社は、著作権、商標権など新聞社の権利を侵害しているだけでなく、不当表示や不正競争にも当たるとしてお り、今月二十九日までの回答によっては、提訴も検討する。
 トータルニュース社は米国アリゾナ州に本拠を置くベンチャー企業で、昨年秋ごろから自社のコンテンツをほとんど持たないウェブサイト「トータルニュー ス・コム」を運営、主宰している。リンクを張っているのは、欧米、アジア、アフリカ、オセアニアなどの約百八十か国・地域のニュースサイト。わが国では、 抗議文書を送った五社を含む十一社の十二サイトに上る。
 特に問題にしているのは、ト社が、自社のロゴや広告などの入ったフレームの中に各社のニュース画面を取り込むという手法を採用している点。これによって 各社の意図とは違った表示の仕方でニュースなどが流されたり、発信元も不明確になっているとしている。
 また、ト社はニュース画面を利用して広告を集めているが、これが五社の信用を低下させているほか、コンテンツを作る努力をせずに広告を集めていること が、広告の不正取得にも当たると指摘した。
 一方、日本新聞協会は先月、「ネットワーク上の著作権」という見解をまとめ、その中で「電子メディア上で新聞・通信社が発信するほとんどの情報には、紙 の場合と同様に著作権がある」と表明したばかり。リンクについても表示の方法によっては問題が生じる可能性があるとして、「発信元に連絡するように」と、 ユーザーに呼びかけている。(奥野富士郎)
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◆『読売新聞』1998.02.03. [テクノ・センサー]ネット上の著作権侵害考えよう 5日に東京・品川でシンポ
 パソコン通信やインターネットの普及に伴って増えつつある著作権侵害の問題を利用者が自ら考えようと、社団法人「コンピュータソフトウェア著作権協会」 は5日、東京・品川の新高輪プリンスホテルで、「ネットワーカーのための著作権シンポジウム」(通産省など後援)を開催する。
 デジタルデータは、完全な複製を容易に作れるだけに、著作権の侵害が発生しやすい。また、最近はホームページで情報を発信する個人が増え、他人の著作物 の無断引用も多い。新聞記事もホームページに無断で引用されるケースが相次ぎ、日本新聞協会ではネットワーク上の著作権についての考え方をまとめ、ホーム ページ(http://www.pressnet.or.jp/)で公表するなど、著作権問題がクローズアップされてきた。
 同シンポでは、第1部は、インプレス社の塚本慶一郎社長が「ネットワーカーと著作権」と題して基調講演。第2部は「ネットワークにおける問題点と今後の 対応」をテーマに弁護士らを迎え、パネルディスカッションを開催する。
 時間は5日午後1時30から4時30分まで。参加無料で、定員は先着100人。
 申し込み、問い合わせは同協会((電)03・5976・5175)へ。
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◆『朝日新聞』1998.05.11. デジタル放送で海賊版 岐阜の容疑者逮捕 島根県警 【名古屋】
 島根県警生活保安課は十一日、通信衛星(CS)による有料デジタル放送の音楽をミニディスク(MD)やカセットテープに不正に複製、インターネットの電 子メールで募集した客に販売したとして、岐阜市日野東六丁目、会社員山田好洋容疑者(四六)を著作権法違反の疑いで逮捕した。デジタル放送をデジタル方式 のMDで録音すると音質の劣化がほとんどない特性を利用した手口で、摘発は全国で初めてという。
 調べによると、山田容疑者は昨年十二月から今年二月まで、CS放送「パーフェクTV」の音楽専門チャンネルからヒット曲を録音したMDやカセットテープ 十六本を、電子メールを使って募集し、東京や大阪、島根など八都府県に住む十一人に、一本二千二百円から二千八百円で販売して、音楽家らの著作権を侵害し た疑い。同県警によると山田容疑者が同様の手口で販売したMDなどは、十七都道府県の四十一人に対し、計五十四本に及び、約十二万円の利益を上げていたと 見られるという。
 作曲家らから著作権を預かる日本音楽著作権協会(JASRAC)が四月二十七日、同法違反容疑で山田容疑者を同県警に告訴していた。
 JASRACは「デジタル技術の進歩で、だれでも高音質の海賊版を作ることができるようになった。今後、このような著作権侵害が増える心配がある」と警 戒している。
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◆『朝日新聞』1998.05.16. インターネットで日本の漫画、世界を駆ける
 自動車やハイテク製品と並んで、日本のアニメや漫画は世界に知られるようになりました。でも、その割には海外で、日本の大手漫画出版社が版権ビジネスを 積極的に展開しているとはいえない状況のようです。そうしたなかで、発表の機会を世界に求める漫画家たちが、インターネットを使って、独自に作品を発表し 始めました。ネットは、日本の漫画が本格的な国際産業となるきっかけになるのでしうか。(加藤祐子)

 ○「ルパン」がパソコンで 出版以外の企業も参入
 人気漫画「ルパン三世」。単行本やビデオでは見られない3D(三次元)画像のルパンや、新作紹介などがパソコン画面に出てくる。
 作者モンキー・パンチさんは、インターネット上に自分のホームページをもち、そこでしか見られないイラストなどを載せている。日本語だけでなく英語版 ページにも切り替えられ、一日の平均アクセス数は約十万件。十年以上前から原稿の九割以上をパソコンで描いていたため、インターネットはごく自然な流れ だった。「だいご味は、出版社を通さずに自分のイラストを全世界に発表できること。海外のファンからの反応もすぐ返ってくる」
 インターネットが漫画の新しい表現の場になりつつある。世界中の人に自分の作品を知ってもらいたい作家にとって、インターネットほど便利な手段はないか らだ。それだけでない。出版業界以外の企業が、漫画ビジネスの世界に参入しようと動き始めている。
 バスケットボール漫画「スラムダンク」で知られる井上雄彦さんは、一九九八年二月まで約二年間、インターネット上で漫画「BUZZER BEATER」 を週一回更新で連載した。日本語と英語の両方。一週間ごとのアクセスは約九十万件にのぼった。
 井上さんは「雑誌と違って、電車や本屋で自分の漫画を立ち読みしている人を見られるわけでもないし、読者との緊張関係があまりない。雑誌と比較できるほ どにはインターネットは成熟していない」と指摘するが、「コートジボワールとか、思っても見なかった国からファンレターが届くのは、とてもうれしい。今後 も、ネットならではの見せ方を工夫した漫画を発表したい」と意欲をみせる。
 この井上さんの漫画が載ったのは、米国のスポーツ放送専門チャンネルの日本法人スポーツ・アイESPNが開いたホームページ。同社が日米含めて漫画にか かわるのは初めてだった。これにひかれて、スポーツ用品メーカーや信販、生命保険会社など九社が、代理店を経ないで直接広告を出した。同社は次の漫画企画 を検討しているという。
 パソコンソフト流通会社ソフトバンクが設けている「ウェブ・コミックス」ページにも、漫画家が作品を出している。その一人、SFアクション漫画「コブ ラ」の作家、寺沢武一さんは、九六年七月から翌年三月まで「BLACK KNIGHT BAT」を連載。雑誌に白黒で発表した作品を、コンピューター・グ ラフィックスでカラーに作りなおしたものだ。
 ほかに六人の漫画家が連載しており、一カ月に約五百万件のアクセスがある。ソフトバンクは「インターネット利用者のすそ野を広げるのに、漫画は有力」 (磯貝一・デジタルメディア出版局長)と、今後も連載を増やす予定。
 ネット上で連載した「BAT」の単行本出版も手がけ、三万部を売った。「大手漫画出版社と同じような作品数や発行部数をめざすわけではないが、インター ネットという媒体の上ならば、十分対抗していける」と自信をのぞかせる。

 ○著作権が頭痛のタネ
 企業のホームページでの連載は、広告収入などから漫画家に原稿料が支払われている。一方、自前のホームページは漫画家自身のPRや趣味でやっているケー スが多いが、これをビジネス化すれば、出版社やスポンサーは必ずしも必要でなくなる。
 寺沢さんは、最終的には独自の「インターネット映画館」のようなものを開きたいという。「電子ショッピングのようにクレジットカードを使ったり、接続に 課金するようにしたり、やり方はいろいろある。あとは、金を払ってでも見たいと思わせるような作品を、こちらが提供できるかどうか」
 しかし、インターネット上の作品発表には危険が伴う。著作権侵害だ。技術的には、だれでもパソコン画面上の画像を簡単にダウンロード(データを自分のパ ソコンに取り込むこと)ができ、自分のホームページにその画像を使うことができてしまう。
 もちろん出版物と同じように著作権法が適用されるが、国内外を問わず、ファンがつくるホームページには、漫画の画像に限らず、有名ロックバンドの写真、 音楽、映画のスチール写真などがそのまま無断使用されているケースが少なくない。
 インターネット上の著作権問題に詳しい弁護士の内田晴康さんは「著作権者が損害賠償を請求できるケースがほとんどですが、訴訟にもちこんだところで、認 定される賠償額が訴訟費用に見合わず、割に合わないとみなされる場合が多い。また作家本人が多数のホームページをチェックして回るのも無理でしょう。本来 は、出版社や著作権代理人などが、責任をもって対応すべきなのでは」と話す。
 漫画家、内田春菊さんのホームページには、本の表紙以外、作品の画像は一切載っていない。マネジャーの大久保忠淳さんは「内田の絵が見たい人は、本を 買ってください」と笑う。「著作権侵害を招くような状況を、自ら進んでつくることはない」ともいう。
 一方で、一般のファンにダウンロードされるのは覚悟の上だという漫画家もいる。が、それ以前に「漫画の著作権について、出版社はあいまいな認識しか持っ ていない。ホームページよりもまず、パロディーの商業出版が書店に並んでいるのを野放しにしているのは明らかに問題」(井上雄彦さん)と注文をつける声は 強い。

 ○海外出版、まだ途上 アニメは世界で人気
 日本のアニメが本格的に輸出されるようになったのは七〇年代。「魔法使いサリー」や「マジンガーZ」などが欧州でヒットした。八〇年代には少女漫画を原 作にした「キャンディ・キャンディ」がイタリアやフランスで、九〇年代には「ドラゴンボール」や「美少女戦士セーラームーン」が世界的に人気を呼んだ。宮 崎駿監督の「もののけ姫」も近く各国で上映される予定だ。
 出版物では「スラムダンク」が日本を除くアジア、イタリアなど八カ国で通算一千六百六十万部、大友克洋さん作の「アキラ」が海外で約三百万部を売るヒッ ト作となった。アニメ化されていない漫画でも、九〇年代に入ってからは正規ルートで翻訳出版されるようになっている。
 しかしまだ、海外での売り上げ全体はそう大きくない。漫画の海外出版の動向を調査している日本著作権輸出センターによると、昨年の国内の漫画本・雑誌の 売り上げ約六千億円に対して、海外は約二百四十億円(推計)。その約六割は台湾でのもので、欧米での認知度は低い。
 国内の漫画市場は、小学館、集英社、講談社が約八割のシェアを占めている。このうち講談社は、九二年八月から台湾や韓国、香港、タイの出版社と提携し、 「少年マガジン」などの自社雑誌の現地版を出版するなど、海外でのビジネスにも積極的だ。
 「米国や中南米など、市場開拓の余地はまだまだある」と、同社国際室の阿久津勝次長。しかし同時に「信頼できる出版社探しから始まって契約の手続きや、 翻訳・印刷の仕上がりのチェックなど、仕事の量があまりに多い」という悩みもある。大手でも「海外の出版社から依頼があったら対応するが、こちらから仕掛 けるつもりはない」という出版社もある。
 アニメや漫画などのソフトへの需要は「多チャンネル時代を迎えて国際的に高まる」(通産省新映像産業室)。その時代にインターネットは、出版社と作家と いう従来の枠組みを超えて、日本の漫画が世界を駆けめぐる芽の一つかもしれない。
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◆『読売新聞』1998.08.03. [マルチ読書インターネット]青の会議室 「市民力としての…」牧野二郎著
 ◆CD並み音質で人気
 インターネット上で、市販のCD(コンパクトディスク)などの音楽データを無断で配信する〈違法サイト〉が急増、日本音楽著作権協会(JASRAC、小 野清子理事長)などの音楽関係六団体は十日までに、「著作権の侵害」として、約四十のホームページ開設者に対し、配信中止を求める「警告メール」を送っ た。悪質な開設者については今後、損害賠償請求などの法的措置も辞さないとしている。インターネットを使った毒劇物販売やねずみ講などの事件が相次ぐ中、 電脳世界の問題点がまた一つ浮き彫りになった。
 音楽著作権を一括管理しているJASRACによると、一九九七年夏ごろからパソコンで音楽CDやヒット曲を無料で取り込めるようにした個人開設のホーム ページが増加。音楽データは、サイズが約十分の一に圧縮されており、ダウンロード(自分のパソコンに取り込む)の際に転送時間が大幅に短縮されるうえ、音 声品質が通常のCD並みに保たれていることから、利用者の人気を集めている。
 こうしたホームページが開設されたプロバイダー(接続業者)は、近畿二府四県の百十四業者を含め全国約七百業者にのぼるといわれる。ほとんどは営利目的 ではないとみられるが、JASRACや日本レコード協会などは昨年十月から、「著作権者らの許諾を得ていないインターネットでの音楽配信は違法」として、 プロバイダーに違法なホームページを開設させないよう要請。
 開設者には▽音楽データの配信中止▽ホームページへの謝罪文の掲載――を求める電子メールを送信。従わない場合には、著作権料などの損害賠償を求める民 事訴訟の提訴や著作権法違反容疑での刑事告発に踏み切ると通告した。
 これに対し開設者側は、いったん配信ページを削除するものの、一定期間後に再開したり、次々と別の違法ホームページを開設したりし、「いたちごっこ」が 続いている。
 また、JASRACなどが法的手続きを取るにしても、プロバイダーが通信の秘密やプライバシーの保護を理由に、開設者を特定する住所や氏名などの情報を 開示しないことも予想され、インターネットの匿名性が違法サイトの乱立に拍車をかける状態になっているという。
 大阪府内の大手プロバイダーは「ホームページの中身について確認する立場ではないが、法律違反や公序良俗に反する行為があることが明らかになって会員が 注意に応じない場合は、強制的にページを削除することもある。これまでに違法な音楽データを配信した数人が、自発的にページを削除した」といっている。
 JASRACの送信部ネットワーク課は「違法ホームページが後を絶たないのが現状。今後もプロバイダーの協力を得て著作権の侵害行為の一掃を進める」と している。
        ……………………………………
 ◆法整備追いつかず
 著作権問題に詳しい阿部浩二・岡山商大教授(無体財産法)の話「だれでもが自由に音楽データをパソコンに取り込むような事態になるとは、これまで予想で きなかった。インターネット上での著作権などの法整備がメディアの急速な進歩に追い付いていない現状を表している。音楽については利用者の側も著作権があ ることを忘れがちだが、結局は他人の知的財産を侵害しないという意識を様々な機会に育てていくしかない」
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◆『朝日新聞』1999.05.26. ネットで人気曲無断配信、警察庁が摘発方針 MP3でコピー
 インターネット上で宇多田ヒカルやB’zなど人気アーティストのヒット曲をCDに近い音質のまま、無断複製して流す違法なホームページが急増しているた め、警察庁は、著作権法違反の疑いがある悪質なケースについては権利者に告訴するよう働きかけるとともに、各都道府県警にも摘発強化の指示を出した。違法 行為が急増している背景には、CDなどのデジタル音声を約十分の一に圧縮できる「MP3」という技術の普及がある。この技術は公開されているため、だれも が「海賊版の生産者」になりうる。インターネット利用者は国内だけでも一千四百万人を超え、放置すれ著作権侵害の程度は計り知れず、日本音楽著作権協会 (JASRAC)などは、違法ホームページの開設者への警告を強めている。(30面に関係記事)

 同協会がネット上を検索したところ、国内では違法コピーとみられる約三千の邦楽のMP3ファイルが見つかった。同協会などは、悪質なケースは電子メール でホームページの開設者に警告し、プロバイダー(接続業者)には違法ページの削除を要請している。警告した数はこれまでに五十以上。しかし、ホームページ のアドレスを転々と変えるなど違法行為を続ける例も少なくない。
 一方、警察庁は違法行為の急増を重くみて、同協会などに悪質なケースについては告訴するよう働きかけを強めている。
 MP3を使うと、データ量が非常に小さくなるため、大容量のデータ通信に向かなかったインターネットでも比較的短時間での送受信ができるようになった。
 違法なホームページは、市販CDからコピーした人気歌手らの曲をずらりと並べるケースが多い。ほとんどが無料で、中にはCD発売直後から無断転載した り、電子メールでリクエストを受け付けたりするページもある。インターネットの利用者はこれらの曲をどこにいても自分のパソコンに取り込むことができる。
 MP3は再生ソフトも圧縮ソフトも無料で入手可能だ。圧縮ソフトを使えば、だれでもCDから音楽をコピーして全世界に発信できる。このため、世界中で違 法な複製が出回ることになった。いったんパソコンに取り込んだ音楽を携帯用の再生機に移して聴くこともできる。昨年十一月、米国では手のひらサイズの再生 機が発売され、MP3ブームに火がついた。
 世界知的所有権機関(WIPO)は一九九六年、著作権者と著作隣接権者(レコード製作者や実演家)にインターネットなどで著作物を送信できるようにする 権利として「送信可能化権」を与えることを採択。これを受けて国内でも昨年一月、改正著作権法が施行された。この改正によって、著作権者に無断で音楽を ホームページに載せる行為は、著作権などの侵害になることが明記された。違反すれば三年以下の懲役か三百万円以下の罰金が科せられる。
 また、ホームページに音楽を無断で転載する行為は、(1)複製権、録音権の侵害(2)公衆送信権の侵害にもあたるとされる。
 <MP3>
 音声デジタル信号の圧縮方式の一つ。人間の耳に聞こえない音をカットするなどして、データ量を十分の一から十二分の一に減らす。再生してもCDとの音質 の差はほとんど感じられないとされる。こうした圧縮技術の出現で、インターネットでの音楽配信が簡単になった。アーティストが直接、自分の曲をリスナーに 配信できる利点が生まれる一方で、無断複製がはびこる一因にもなった。ただ、著作権法上、自分の持っているCDをMP3方式で個人的に複製し、再生するだ けなら違法ではない。
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◆『朝日新聞』1999.05.26. MP3、音楽業界に危機感 ルール作り模索の動き
 インターネットにつなぐことができるパソコンさえあれば、好きなアーティストの新曲をただ同然で自分のパソコンに取り込むことができ、音楽CDに近い音 質で楽しむことができる――。「MP3」という新技術の普及に今、音楽業界は「音楽産業の発展が危ぶまれる事態だ」と強い危機感を抱いている。デジタル データを複製、加工してネット上でやりとりする技術は、「一年がかつての七年に匹敵する」ともいわれる日進月歩の世界だ。デジタル化社会に対応した法の整 備とともに、関係者は「違法なホームページからデータを取得すること自体が、著作権侵害を助長することになるということを、パソコンユーザーや音楽ファン 一人ひとりが認識して欲しい」と訴えている。(1面参照)
 日本音楽著作権協会(JASRAC)は日本レコード協会、日本芸能実演家団体協議会など五団体と合同で昨年十月、「ネットワーク音楽著作権普及・啓発プ ロジェクト」を組織し、違法ページをなくすためのキャンペーンを展開している。
 しかし、警告を受けた違法ページの開設者の中には別のサーバーに移動して再び違法ページを開いたり、MP3ファイルであることを隠す技術を使って発見を 逃れようとしたりする動きがある。
 インターネットでの音楽配信に関心を持つ企業団体が集まって一九九七年八月に設立した「ネットワーク音楽著作権連絡協議会」(NMRC)は、違法なペー ジを取り締まるだけでなく、合法的なMP3の利用を進めるためのルールづくりをJASRACに求めてきた。
 一方、今国会に著作権法改正案が提出された。音楽CDやビデオソフトの海賊版流通防止のため、ビデオソフトなどの技術的保護手段(コピープロテクト)を 解除する装置などの製造や販売を禁止し、違反者に一年以下の懲役または百万円以下の罰金を科すことなどを柱にしている。
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◆『読売新聞』1999.05.27. 人気歌手のCDを「MP3」使いネットに流す 著作権侵害容疑、18歳摘発
 人気歌手らのCDを「MP3」と呼ばれる音声デジタル信号の圧縮技術を使ってインターネットに流していたとして、愛知県警生活経済課などは二十七日まで に、札幌市に住む会社員の少年(18)の自宅を著作権法違反(公衆送信権の侵害)容疑で家宅捜索、パソコン二台や音楽CD十数枚などを押収した。同課では この少年を近く同容疑で書類送検する。「MP3」を使った著作権侵害事件の摘発は全国初という。
 調べによると、この少年は今年三月ごろ、社団法人日本音楽著作権協会などに無断で、宇多田ヒカルなど人気歌手やグループのヒット曲を、MP3を使って自 分のホームページに取り込んで公開、利用者がそれぞれのパソコンに取り込める状態にして、同協会の著作権を侵害した疑い。
 少年自身も、すでにインターネット上に出回っていた複製の曲を取り込んだらしい。調べに対し少年は、「違法性を承知でやった」と話しているという。
 少年はこうした海賊版のホームページを複数、開設しており、宇多田ヒカルやglobeら二十数人の人気曲もリストアップして公開していたという。
 MP3は、音声デジタル信号の圧縮技術の一つで、人間の聴覚では聞き取れない音などをカットすることなどでデータ容量を約十分の一に圧縮する。この技術 を使った人気歌手らの海賊版がインターネットで流行しているが、国際条約に基づき、昨年一月に施行された改正著作権法では、著作権者に無断で音楽などの著 作物をインターネット上に載せる行為は著作権の侵害にあたることなどを明記している。
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◆『読売新聞』1999.08.18. 年内に「音楽ネット」有料配信へ パソコン使って、自宅で曲を買う時代
 インターネットが音楽の新しい流通形態として注目を集めている。デジタル技術の発展で、家庭のパソコンを使って、聴きたい音楽をインターネットから取り 込み、録音することが可能になったためだ。ソニー・ミュージックエンタテインメントなど大手レコード会社は、年内に人気アーティストの曲の有料配信を始め る方針だ。コンピューター業界なども音楽配信ビジネスを新たな収益源にしようとしている。(経済部 小山守生)
 ◆音楽データを高音質で圧縮 
 インターネット音楽配信は、アメリカではすでに二、三年前から普及している。ベンチャー企業などが、本格デビュー前のグループの曲を発掘してインター ネットに乗せ、パソコンマニアの間で広まったが、最近は、日本でも利用者が増えている。
 普及の背景には、音楽データを高音質のままで約十分の一に圧縮する技術「MP3」が登場し、文字のように音楽を速く送れるようになったことがある。
 音楽配信用のホームページに接続し、好きな曲をパソコンにダウンロード(情報の取り込み)したうえで、専用オーディオ機器にデジタル形式で録音する仕組 みだ。料金は、クレジットカードなどで支払うことになる。
 ◆「CD売れぬ」最初は反対も 
 専用オーディオ機器はたばこの箱程度の大きさで、パソコン店で二万―三万数千円程度で売られている。「最近は、パソコン周辺機器であるスキャナー(画像 読み取り装置)よりも、たくさん売れる」(東京・秋葉原のパソコン専門店)という。
 レコード会社など音楽ソフト関係者の多くは、当初、「配信された音楽が不法に何枚も録音される恐れがある」「CD(コンパクトディスク)が売れなくな る」と音楽ネット配信に反対していた。
 このため、はじめのうちは、あまり著名でないアーティストの曲しか配信されていなかった。
 ◆不法な配信が促進の引き金 
 ところが、不法行為の横行が、逆に、正規の販売を促進する切っ掛けになった。昨年から、悪質なマニアらが、ヒット曲を著作権者に無許可でネットに流す不 法行為が目立ち始め、こうしたホームページが高い人気を集めたため、危機感を抱いたアメリカの音楽業界の呼び掛けで、今年二月、合法的な配信事業の枠組み を考える国際業界団体「SDMI」(主導的デジタル音楽保護活動、本部・ワシントン)が発足した。
 レコード会社や家電メーカーなど約百五十社が協議を重ねた結果、今年七月に不正コピー防止の技術仕様がまとまり、音楽データを暗号化するなどの仕掛けを 作って、著作権侵害を防ぐことになった。
 ◆1曲数百円でサービス開始 
 これを受けて、レコード会社最大手のソニー・ミュージックエンタテインメントは、所属アーティストの曲を一曲数百円で配信するサービスを年内に始めるこ とを決めた。当初は新曲を中心にして徐々に過去の曲を加えていく方針で、「本人が拒否しない限り、すべてのアーティストの曲を対象にする」という。
 ソニー・ミュージックの丸山茂雄社長は、「急に普及するとは思わないが、不法な配信が横行するよりは、レコード会社が責任を持って秩序のある仕組みを作 るべきだ」と話す。他のレコード会社も相次いで事業化すると見られる。
 ◇ビジネスチャンスと今後の課題
 ◆「電機・ハイテク」も“参戦”
 新しいビジネスチャンスを狙って、レコード業界以外の動きも活発化している。松下電器産業は米国で大手レコード会社と組んで今年秋に配信サービスの実験 をする。松下電器は「二〇〇五年には世界の音楽市場の10%程度がネット配信経由になる」と予測している。ソニーも、ヘッドホンステレオ「ウォークマン」 のネット配信対応版を年内に発売する。
 これまで音楽産業とかかわりが薄かったコンピューター関連企業も、配信に必要なコンピューターシステムやソフトウエアで稼ごうとしており、米マイクロソ フトは米ソニー・ミュージックエンタテインメントと共同で、アメリカで近く配信サービスを始める。ハイテク業界は「インターネットが持つ優れた検索機能に よって、聴きたい曲をすぐに引き出せるなど、音楽はインターネットによる電子商取引に適している」(日本IBM)と見ている。
 さくら総合研究所の島田浩志副主任研究員は、音楽ネット配信について「小売店の店頭に置ききれない旧作を売れるほか、小売店が近くにない地方の消費者 や、帰宅時間が遅いために小売店に足を運べない消費者の需要を掘り起こせる」と話す。そうした利点が生かされれば、十、二十歳代に人気の高い一部のアー ティストに売り上げが集中しがちな最近の音楽界の傾向が変化する可能性もありそうだ。
 ◆高い通信料金がネックに
 「聴きたい音楽や見たい映画を好きな時に家庭に呼び込み、楽しめる時代が来る」と言われて十年以上がたつが、音楽についてはインターネットによってそれ が実現することになる。しかし、問題は、音楽などの情報を家庭に運ぶ通信回線にある。「通信料金が高いうえ、通信回線の速度も遅い日本では、ネット配信は 普及しないのではないか」(電機大手)と指摘する関係者は多い。
 実際、一般家庭の電話回線を使って音楽をパソコンにダウンロードする作業は、演奏時間が数分の曲でも一曲あたり十分以上かかる。映画などの映像を配信す るための技術的環境が整えば、通信料の値下げや通信網の大容量化を求める声は一層強まりそうだ。
  
 図=インターネット音楽配信の仕組み
 
 写真=パソコン店で順調に売れている音楽ネット配信用の携帯型オーディオ(Tゾーン本店で)=本田典之撮影
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◆『読売新聞』1999.09.07. 桃学大経済学部開設のホームページ騒動 法大研究所作成のデータベース無断流用
 ◆学部長が引責辞任
 桃山学院大学(大阪府和泉市)の経済学部教授(52)が、学部長を務めていた間、インターネット上に開設した同学部ホームページ(HP)=写真=に、法 政大学大原社会問題研究所(東京都町田市)の文献データベースを無断流用していたことが七日、明らかになった。教授は今年七月、その責任をとって学部長を 辞任していた。インターネットでは、公開された情報を引き出して簡単にコピーできるが、情報の集積であるデータベースについては通常の著作権が適用される かどうか明確になっておらず、専門家は「法による何らかの規制が必要ではないか」と指摘している。
 関係者によると、この教授は一九九八年に学部長に就任したが、その前年の七月、同学部の公式ホームページ内に、自分を〈著作権者〉とする「経済学文献 データ検索」を設けた。文献の著者名やタイトル、日付などが検索できる内容で、開設時のデータは二万数千件だったが、今年初めまでに約五万件に達した。
 同研究所は、短期間に収録件数が増えたことに不審を抱き、調査。文献の多くは、同研究所がネット上に開設した「社会・労働関係文献データベース」(約二 十七万件)のものと一致していることが判明した。
 著者名の入力ミスや論文タイトルの英文表記の方法まで一致したケースもあったため、同研究所は六月、「明白な著作権侵害だ」としてネット上で教授に抗 議。七月一日に謝罪要求書を出した。また、教授との電子メールでのやりとりをネット上で公開した。
 こうした事態を受けて、桃山学院大は七月十六日に学部内に調査・検討委員会を設置。「著作者の許諾を得るなど適切な措置を欠いた行為で、許されるべきで はない」との結論をまとめた。教授は学部長職の辞意を大学側に伝え、同月二十三日に認められた。同学部の教授会は同研究所に陳謝し、データベースを閉鎖し た。
 流用した件数について、教授は「覚えていない」とし、「データベース全体は著作権保護の対象だが、名前やタイトルなど個々のデータに著作権はないと考え る。ただ、データを無断でコピーしたのは配慮が十分でなかった」と話している。
 桃山学院大の芝村篤樹・経済学部長代理は「研究者の便宜を図る目的であっても、データの無断流用は問題だ。今後の教訓にしたい」と話し、同研究所は 「ネット上の問題は、ネット上で対応しており、それ以上は説明できない」としている。
 社団法人・コンピュータソフトウェア著作権協会の話「データそのものの流用がただちに著作権侵害にあたるとは言えないが、データベース作成に労力を投じ た人が保護されなくてよいのかという議論もある。今回のケースは、今後の法制化を考える上で参考になる」
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◆『読売新聞』1999.11.12. 音楽のネット配信ビジネス 参入続々、競争激化へ 不正コピー防止策決定で
 インターネットによる音楽配信ビジネスが、日本で年末から来春にかけていよいよ本格化する。すでに一部ベンチャーが有料配信を始めているほか、年末には 音楽業界最大手のソニー・ミュージックエンタテインメント(東京・新宿)も参入。さらにソフトバンクも新会社を設立、来夏からサービスを始める。これらの 動きは不正コピー防止の技術仕様を盛り込んだ新たな標準規格が固まったことから加速必至。国内家電メーカーもこの規格に合わせ新製品の開発を急いでおり、 音楽市場はソフト、ハード両面でのシェア争いが展開されそうだ。(愛敬珠樹)
 「十月中のアクセス数は九月より倍増し、六百万件に達した。特にロック調の『君が代』で話題になった忌野清志郎やジョー山中などの人気はかなりのもの だ。ネット発のヒット曲を少しでも早く誕生させたい」
 中小やインディーズ(独立系)レーベルの曲を中心に九月から約千五百曲の有料配信を開始した「ミュージック・シーオー・ジェーピー」(同)。佐々木隆一 会長は、リスナーの反応についてこう語る。
 同社の音楽配信は、ブームのきっかけを作ったデータ圧縮技術、MP3を使っており、リスナーはホームページから音楽をパソコンにダウンロード(情報の取 り込み)し、携帯型プレーヤーなどで再生する。一曲二百円でクレジットやマネーカードで決済する。
 これだけのアクセスに対して実際に曲をダウンロードするのは月にまだ二千件程度。採算ベースにはほど遠いが、佐々木会長は「将来的にはMP3以外の方式 でも音楽配信を行い、デジタル音楽のポータル(入り口)としての役割を果たしていきたい」という。
 このような動きに対し大手レーベルとして名乗りを上げたのはソニー・ミュージックエンタテインメント。「音楽業界の流れを無視した異業種やベンチャーば かりが配信している現状である以上、当面はビジネスになるかどうかよりも、大手として配信ビジネスに先べんをつけることが大切」
 同社は先月、人気バンド「ラルク・アン・シエル」の新曲を使って試験配信を済ませており、年末をめどに同バンドや同社と契約する小室哲哉、鈴木あみと いった大物も含め、約二百アーティストの新譜を順次サイト上で発売する予定だ。
 一方、九月からアメリカの著名サイト「リキッド・ミュージック・ネットワーク」を通じて配信を開始したのは音楽製作会社「サウンドデザイン」(東京・渋 谷)。
 NHKシルクロードのテーマ曲で知られるシンセサイザー奏者の「喜多郎」など地味ながら良質の曲を提供している同社の南里高世社長は「我々の音楽は、中 高年や主婦などに人気があるインストゥルメンタル中心。ネット配信なら全世界のあらゆる層のユーザーに販売が可能」と期待する。
 ◎ 独自規格のプレーヤー発売も ◎
 このような音楽配信ブームの背景には、著作権侵害を防ぐ枠組みを決めたSDMI(主導的デジタル音楽保護活動、本部・ワシントン)の規格がある。先月ま でに固まった規格は、音楽データを暗号化することによって不正コピーなどを防ぐ大枠を決めたもの。これまで二の足を踏んでいた大手レコード会社などが一斉 に動きを見せ始めた。
 この規格に基づき各家電メーカーも、対応ソフトや携帯型プレーヤーの開発を急いでいるが、規格は複数の圧縮技術やコピーガード技術を認めているため、ど の技術を採用するかが焦点になる。
 ソニーは他社に先駆けて来月、独自の圧縮規格「アトラック3」を使用した携帯型プレーヤー、「メモリースティックウォークマン」を発売するが、これに よって標準規格をめぐる争いも激しさを増しそうだ。
 ◎ どの技術を採用するかが焦点 ◎
 「シードプランニング」の原健二主任研究員は「著作権問題が一応の決着をみたことで、来年は配信サイトは爆発的に増え、四、五年で千億規模になるだろ う。一方で複数の規格が採用され、ビデオでいうベータとVHSのようなことになる可能性がある」と言っている。
        ◇           ◇
 ミュージック・シーオー・ジェーピー
 http://mp3.music.co.jp/
サウンドデザインの米国配信サイト
 http://www.dream―musicnet.com/
ソニー・ミュージック・オンライン・ジャパン
 http://www.sme.co.jp/
      
 写真=ネット配信されている忌野清志郎のアルバム「冬の十字架」。話題になった「君が代」も収録されている
 写真=「喜多郎」などの音楽をアメリカから配信している「サウンドデザイン」のサイト
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◆『読売新聞』1999.12.03. 著作権審報告案の要旨
 著作権審議会がまとめた報告案の主な内容は次の通り。(本文記事3面)
 1権利の執行・罰則
 (1)文書提出命令の拡充
 著作権侵害事件で、侵害行為の立証のため必要であれば、営業秘密等が記載されている文書でも裁判所への提出を義務付ける。
 (2)計算鑑定人制度の導入(略)
 (3)具体的事情を考慮した使用料相当額の認定
 損害賠償額は、侵害者が著作権料と同額を賠償すればよい現状を改め、具体的事情を考慮した「相当」の使用料を認定する。
 (4)弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額の認定(略)
 (5)法人重課の導入
 法人等業務主に対する罰金の上限額を、行為者に対する罰金の上限額(三百万円)より高くする。
 2障害者の著作物利用にかかわる権利制限規定の見直しについて
 (1)視覚障害者関係
 点字データのコンピューターへの蓄積、ネットワークを通じた点字データの提供を自由に認める。
 (2)聴覚障害者関係
 放送の音声内容を字幕化する「リアルタイム字幕」は自由化が適当。
 3保護期間の延長等
 (1)保護期間の延長について
 プログラムやデータベースの著作物等は社会全体の技術発展の観点から長期間の保護になじまない。
 (2)写真の著作物の保護の復活について(略)
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◆『朝日新聞』1999.12.10. ソフト違法コピーの罰金、最高1億円も 文化庁が著作権法強化方針
 横行している海賊ビデオやパソコンソフトの違法コピーなどを防ぐため、文化庁の著作権審議会は九日、著作権侵害の罪に問われた法人に対する罰金を、現行 の最高三百万円から一億円程度にまで引き上げるべきだとする報告書をまとめた。企業内で、市販のパソコンソフトを大量に違法コピーし、業務で使っている実 態があるとされるが、今後は、こうした行為も億単位の罰金で責任が追及されることになる。

 同審議会はまた、障害者が活字や映像に触れる機会を広げられるよう、新聞・雑誌などを点字翻訳したり、テレビ番組のセリフを字幕化したりしたデータをイ ンターネットで配信することを無償で認めることも打ち出した。
 これを受けて文化庁は、二〇〇一年一月からの実施を目指し、次の通常国会に著作権法などの改正案を提出する。
 著作権侵害の罰金の大幅アップは、現在の額ではとうてい抑止力にならない、として盛り込まれた。「海賊ビジネス」は広がる一方で、違法にコピーしたビデ オやCDなどの現物販売に加え、インターネットを通じて動画や楽曲を違法に有料配信する商法も出現している。こうしたことを踏まえて、厳罰でのぞむ姿勢を 強調したという。
 著作権審議会の報告書は、障害者に配慮し、(1)活字メディアについて、文章をパソコンソフトで点字データに変換し、インターネットを通じて視覚障害者 に配信することを無償で認める(2)テレビ番組について、あらかじめ政令で指定した機関に限って、音声を文字にし、インターネットで聴覚障害をもつ人に配 信することを無償で認める――の二点を提言した。「障害をもつ人たちの暮らしを支援するためには、著作者の権利を部分的に制限することも認められる」とい う考えからだ。
 実現すれば、配信されたデータを点字プリンターで印字すれば、自宅にいながらにして色々な新聞や雑誌、書籍などを読めるようになる。
 音声を文字化したものの配信は地上波、衛星放送、ケーブルテレビのすべてについて認める方針で、受信者は、テレビ画面とパソコンの画面を並べて見れば、 番組の内容を理解しやすくなる。
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UP:20070929 REV:
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