「基本的な公共サービスは住民に最も身近な基礎的地方政府が優先的に遂行し、それでは不十分なものについて広域的地方政府、中央政府と担当可能な政府の規模を順次拡大していく「補完性原理」(principle of subsidiarity)が、分権的政府システムの基本である。分権的政府システムの下では、サービスの充実に対する地方政府の責任及び大勢3を確立して、地方税を中心とする財政調整制度がそれを補完する。
これらの動きを総括したものを、本書では「分権的福祉政府」と呼ぶ。この場合、狭義の社会保障制度のみならず、人間形成に密接に関わる教育や生活基盤としての環境衛生等も含めた広義の対人社会サービスを「福祉政府」の役割としてとらえる。つまり、「文展的福祉政府」とは、中央政府の「縦割り行政」を超えて対人社会サービスを拡充するシステムである。」(池上[2004:8-9])