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ケア/国境 関連新聞記事2008(読売新聞より)




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2008年2月6日(東京朝刊横浜)「介護人材、受け入れへ フィリピンなどから30人 市が人件費補助=神奈川」


◆特養ホームで従事
 横浜市は、フィリピンとインドネシアから高齢者介護などに携わる人材の受け入れ支援を決めた。高齢化で介護福祉人材の不足が懸念されており、両国から介護福祉人材を受け入れる民間の施設に新年度から、助成を始める。
 経済連携協定(EPA)に基づくもので、市内の特別養護老人ホーム10か所が、約30人を受け入れる。
 国内で介護などの仕事を永続してするのに介護福祉士の国家資格が必要になっている。資格の取得を目指す外国人に講座を提供するなどして、将来的に不足が懸念される介護人材の確保を目指す。
 厚生労働省によると、高齢化が進む10年後には、全国で40万〜60万人の介護職員が不足すると見込まれている。
 フィリピンとインドネシアから来日する人たちはすでにそれぞれの国の資格は持っている。日本で継続的に働くため、半年間の日本語の研修を受けた後、特別養護老人ホームで働きながら研修を積み、4年以内の国家試験合格を目指すことになる。  市の支援は、受け入れる特養に、フィリピン人らの人件費として月15万円を上限に助成する。また、研修にかかる経費を月10万円を上限に負担する。国家試験対策講座を開いたり、日常生活の相談に応じたりする。
 EPAに基づくフィリピン人らの受け入れでは、東京都が新年度から、看護師と介護福祉士として10人を都立病院などに受け入れる計画を進めている。
 市高齢施設課は「市が手厚く支援することで受け入れを促し、今後深刻になる人手不足に備えたい。将来さらに外国人受け入れが開放されることを見据え、ノウハウを蓄積したい」としている。
 今年度中にEPAが発効した場合、早ければ2009年1月に、市内の特養にフィリピン人らが配置される。




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2008年3月11日(東京朝刊2面)「外国人看護師に関心 病院の8割/九州大調査」


 経済連携協定(EPA)により、今夏にもフィリピン、インドネシアから看護師・介護士が来日する見通しが強まる中、中規模以上の病院の8割以上 が外国人看護師の導入に関心があり、4割近くは具体的に受け入れを検討していることが、九州大アジア総合政策センター研究班の調査で明らかになった。共同 研究者の川口貞親・産業医科大教授は「想定よりも外国人受け入れへの関心が高かった。単なる人手不足の穴埋めでなく、病院活性化への期待も高いが、情報不 足でちゅうちょする病院も多い」と分析している。〈関連記事35面〉
調査は2月、300床以上の全国1604病院を対象に行い、522病院(32・5%)から回答を得た。

 外国人看護師の導入について「とても関心がある」は28・7%、「少し関心がある」は54・2%で、8割超が関心を示した。EPAで来日する外 国人看護師については、「ぜひ受け入れたい」が7・3%、「出来れば受け入れたい」が30・3%で、全体の37・6%(196病院)が前向きに検討する姿 勢を見せた。
この196病院のうち、受け入れ希望人数は「2〜3人」が129病院で最も多く、「4〜6人」が27病院、「11人以上」も3病院。希望する理由(複数回答)は、〈1〉看護労働力の不足(53・8%)〈2〉国際交流(53・1%)が目立った。
 受け入れたくないと答えたのは61・9%の323病院に上ったが、理由(複数回答)は〈1〉患者とのコミュニケーション能力が不安(61・3%)〈2〉指導の人手や時間を取られる(55・7%)〈3〉看護技術のレベルが分からない(46・4%)などだった。




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2008年3月11日(東京朝刊35面)「[開国・介護現場](1)資格、ニホン語の壁 働きながら合格は至難(連載)」


◆フィリピンから先遣15人
 フィリピンとインドネシアから、今夏にも看護師と介護士がやってくる。経済連携協定(EPA)に基づく労働市場の「開国」で、その数は2年間で 計2000人。人手不足にあえぐ病院や施設で歓迎の声が上がる一方、日本語能力への不安や日本人の労働条件悪化を懸念する声もある。「安価な労働力」とし て使い捨てにせず、対等なパートナーとして受け入れることが出来るのか。現場から報告する。〈関連記事2面〉
 車いすの林イクさん(93)が、フィリピン人介護士のエスカーラ・イルミナダさん(31)の手を取って言った。「あんたの手は冷たいね。真心がある証拠だよ」
 東京都八王子市の永生病院。意味が分からず、首をかしげたイルミナダさんは、林さんから「ま・ご・こ・ろ。心が優しいってこと」と説明され、やっと笑顔を見せた。

 イルミナダさんら15人のフィリピン人介護士が、同病院など7施設で働き始めたのは2006年4月。EPAでの受け入れ開始前に日本で経験を積 み、受け入れ後には新しく来る人の指導役になってもらおうと、NPO法人「日本国際ケアエイド協会」が招請した。就学生ビザで来日、日本語学校に通いなが らの1日4時間のアルバイトだが、全員がフィリピン政府認定の介護士資格を持っている。
 渡航費や日本語学校の授業料、生活費など1人あたり約200万円の経費は受け入れ施設の負担。EPA開始後の混乱を回避したい施設側の「先行投資」だ。
 日本語はまだ片言だが、明るく、もてなしの心が旺盛で、介護に向いていると評価が高い。イルミナダさんと仲良しの女性(80)は言う。「この子は頑張って働いているのに大変そうな顔を見せない。日本人と違っておおらかで、安らぐよ」      

 医療・介護の現場は労働条件の改善が進まず、人手不足が深刻だ。EPAで来日する外国人の雇用を希望する施設は多いが、国のスタンスは「人手不 足解消のための制度ではなく、あくまで国際的な人材交流が目的」(厚生労働省)。このため来日後、看護師は3年、介護福祉士は4年以内に日本語で国家試験 を受け、不合格なら帰国するというハードルが設けられた。
 東京都町田市の特別養護老人ホーム「清風園」の安田修一施設長は「言葉の壁や文化の違いを乗り越えるには、時間とコストがかかる。働きながら 数年で国家試験に受かるのは至難の業で、受け入れ施設の支援が不可欠だ」と言う。同園は05年以降、在日フィリピン人女性5人を雇用したが、在日年数が長 く、日本でヘルパー2級の資格を取った彼女たちでさえ、最初はマンツーマン指導が必要で、入所者の名前にルビをふるなどの手間がかかった。
 それでも、「雇用して大正解。日本側が学ぶ点は多い」と安田さん。喜怒哀楽がはっきりしていて、時に日本人職員とのトラブルはあるが、敬老精神があり入所者に笑顔を絶やさない。彼女らの発案で取り入れたネイルケアも好評だ。
 永生病院の宮沢美代子相談役はこう指摘した。「近い将来、外国人に介護を頼る時代が必ず来る。彼らの長所を生かして働いてもらえるか、安価な労働力として使い捨てるのか。EPAはその試金石になる」  

〈経済連携協定=EPA〉
農産物や工業品などの貿易自由化のほか、労働力の受け入れなど幅広く経済関係を強化する取り決め。日本はフィリピンやインドネシア8か国と署名を交わし、うち5か国で発効済み。医療・介護分野では両国のほか、タイが介護士、ベトナムが看護師の受け入れを求めている。




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2008年3月12日(東京朝刊2社)「[開国・介護現場](2)資格取得、施設任せ(連載)」


 「お年寄りに触る時は、関節に気をつけて」
 フィリピン・マニラ首都圏タギグ市にある「技術教育技能開発庁女性センター」。介護士養成コースに通う生徒約20人が11日午後、真剣な表情で指導員の手ほどきを受けていた。ベッド上での体位変換の手法を学ぶ実習だ。
 生徒の多くは海外での就労を希望し、経済連携協定(EPA)批准をにらんで日本行きを目指す生徒もいる。半年間のコース内容は、身の回りの世話 が中心だが、病院に1か月勤務する体験実習もある。センター長のマリアクララ・イグナシオさん(48)は「言葉の壁はあるが、介護士として必要とされる基 本的な能力は同じはず。日本の施設介護にも適応させたい」と意欲を見せる。
 生徒のデイシベル・マギニットさん(30)は以前、エンターテイナーとして1年間、名古屋市などで働いた経験がある。EPAで求められる「4 年制大卒業」という介護士の入国要件を満たしていないため、介護士の資格取得後は大学に通うつもりだ。「人のお世話をするのが好きだし、日本人が好き。ど うしても日本に行きたい」

 高齢化率の低いフィリピンで、「ケアギバー」と呼ばれる介護士の認定資格が出来たのは最近のことだ。
 海外での就労を念頭に置いており、2001年に500人弱だった海外送り出しは、06年には約1万4500人に増えた。高齢化が進む台湾、カナダなどで、住み込みで在宅介護に携わる ケースが多い。
 日本では、在宅介護は指導の目が届かないとして、EPAの介護士は施設でしか働けない決まりだ。しかし、昨年10月にマニラを訪れ、研修内容 を視察した「高齢社会をよくする女性の会」の樋口恵子理事長は「ベッドメーキングから料理、子どもの世話まである。介護職というより家政婦に近い」と感じ たという。
 資格取得に必要な研修は約860時間。日本の介護職員基礎研修(500時間)より長いが、フィリピン国内で1000を超える養成校のうち、日本語を教えているのは20校余りだ。
 厚生労働省は「相手国の資格の研修内容に口をはさむのは失礼」とするが、カナダは両国の協議で独自の研修内容を定めている。樋口さんは「チーム でお世話をする施設介護は在宅介護とは異なる面がある。日本語教育の充実も含め、日本でスムーズに働き出せる事前研修のあり方を真剣に考えるべきだ」と提 案する。

 来日後の支援態勢にも課題は多い。
 EPAでは、来日後、看護師は3年、介護士は4年で国家資格を取れなければ帰国を余儀なくされる。最初の半年間の日本語教育で、ひらがな、カタ カナと漢字700文字程度を覚え、日常会話が出来るようになってから各施設に配置されるが、その後、国家試験に向けた研修は施設に任されている。
 わずか3、4年で日本語の試験に合格させることが可能なのか。そんな不安が施設側に広まる中、東京都は国家試験のテキスト英訳や専門教師派遣など独自プログラムの検討を始めた。
 都が支援に乗り出す背景には、「施設任せでは合格者が出ない」という危機感がある。都福祉保健局の平山哲也副参事は「どんな勉強をすれば合格出来るのか、本来は国が道筋を示して支援すべきではないか」と考えている。




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2008年3月13日(東京朝刊2社)「[開国・介護現場](3)待遇悪化、募る不安(連載)」


 「外国人で穴埋めするより、介護職の待遇を良くして離職を防ぐことを考えるべきだ」。昨年12月、東京都内で開かれた介護の人材確保のためのシンポジウム。壇上の女性が発言すると、介護関係者が集まった会場から拍手が起きた。
 介護現場は、深刻な人手不足に直面している。重労働なのに低収入。1年以内の離職率は約20%と高く、「生活が成り立たない」と若者が離れていく。
 急速に進む高齢化。介護者を2014年までに20万〜30万人増やす必要があるが、ある介護福祉専門学校の理事長は「待遇の悪さが知れ渡り、入学希望者は減る一方。親から『外国人が来るような職場で娘を働かせたくない』と言われることもある」とこぼす。
 経済連携協定(EPA)で今夏にも来日するフィリピン、インドネシア両国の介護士。その数は2年間で計1200人に上る。将来さらに増える可能 性があり、人手不足を補う切り札とも言えるが、介護者の労働組合「日本介護クラフトユニオン」の陶山浩三事務局長は、「外国人に安価で任せられるなら、介 護労働の価値が下がる。日本人の労働条件は守れず、優秀な人材が入ってこなくなる」と危機感をあらわにする。         

 外国人介護者の労働条件を心配する声もある。
 「日本人と同等以上の報酬」。外国人を不当に安い賃金で働かせないため、EPAではそう規定する。しかし、厚生労働省は「研修中で、言葉のハン デもあればできる仕事は限られる。看護師や介護職員の平均給与が(外国人にも)保証される訳ではない」と説明する。陶山事務局長は「多くの施設で、最低賃 金ぎりぎりしか支払われないのではないか」と推測する。
 外国人介護士は来日から4年で国家試験に合格しないと、帰国しなければならない。「元気で文句を言わず、4年間辞めずに働いてくれればそれで 十分」。都内のある施設経営者はそう言う。「介護技術や言葉なんてどうにでもなる。とにかく人手が足りない夜勤や休日を埋めてほしい」。外国人介護士の受 け入れを検討する施設長の間では、そんな本音も語られる。         

 「あの二の舞いは避けたい」。関係者が異口同音に指摘する制度がある。農漁業や製造業などで、途上国の人材育成を名目に受け入れてい る外国人研修・技能実習制度のことだ。日本人が敬遠する職場の人手不足を実質的に補ってきたが、長時間労働に中間搾取といった不正が横行し、不法残留も続 出している。
 EPAでは、厚労省の外郭団体「国際厚生事業団」が国内で唯一のあっせん機関になる。書類監査と訪問調査を年1回行って労働条件の監視をするものの、問題施設への罰則は「3年間の外国人受け入れ禁止」だけだ。
 インドネシアやベトナムから16万人の介護士を受け入れている台湾では、ブローカーに払ったあっせん料の借金を返すため、外国人介護士が無理な 残業を重ねるケースも表面化している。安里和晃・大阪大非常勤講師は「あっせん料の問題を始め、外国人労働者の弱みにつけ込むケースは必ず出る。年に一度 の訪問だけでは、日々の業務や生活の問題にも対応できないだろう」と指摘する。
        



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2008年3月14日(東京朝刊2社)「[開国・介護現場](4)看護師支援整わず(連載)」


 「看護師として働けない職場に魅力はない」「キャリアに見合う報酬は保証されるのか」。白衣姿のフィリピン人たちが口々に訴えた。昨年9月、九州大の平野裕子准教授らがマニラ市内などで、看護師や看護大学の教員に面接調査をした時のことだ。
 経済連携協定(EPA)では、今夏にもフィリピンとインドネシアから、介護士に加えて2年間で計800人の看護師が来日する。だが看護師は、自 国で資格があるにもかかわらず、日本の国家試験に合格するまでは看護師の助手としてしか働けない。医療現場で任されるのは、食事や入浴介助、ベッドメーキ ング程度。看護師が医者の指示で行う注射や薬を塗るなどの診療補助行為はできない。
 英語で教育を受けているフィリピン人看護師は、年間約8000人が中東や欧米に渡り、即戦力となっている。フィリピン看護師協会は「我々の専門的資格を過小評価している」としてEPAに反対している。
 龍谷大のカルロス・マリア・レイナルース准教授が昨秋、フィリピンの看護学生511人に調査したところ、8割以上が米国など英語圏を希望し、日 本と答えたのはわずか9人。「今の制度はメリットが少ない。『来たいなら勝手にどうぞ』という態度では、優秀な人材は来てくれない」        

 日本の看護師は2006年時点で約4万人不足していると推計されているが、日本看護協会は「資格があるのに働いていない潜在看護師は 55万人。働きやすい職場作りを優先すべきで、人手不足解消のための外国人受け入れには反対」との立場だ。楠本万里子常任理事は「医療事故で看護記録が証 拠になることもある。日本語能力は必須で、EPAで国家試験合格を課すのは当然だ」と話す。
 外国人看護師の受け入れを希望する病院は、療養病床への配置を考えているところが多いとみられるが、高齢者医療の現場では、床ずれの処置など 本来は看護師にしか許されていない仕事を介護職員が行っていたケースもあった。「技術を持つ外国人看護師に、日本の看護師資格が必要な行為まで委ねる違反 が起きないか」。楠本理事は懸念を口にした。       

 EPAは、来日後半年間の日本語研修があるものの、3年以内に看護師の国家資格を取れなければ帰国する仕組みだ。合格者が出るのかと危ぶむ声も強いが、EPAに先立ち、日本で56人もの看護師を生み出した国がある。ベトナムだ。
 ベトナム医療省と東京にある「AHPネットワーク協同組合」が提携し、1993年に厚生省(当時)の認可を受けて始まった看護師養成支援事業。 ハノイ市内で17か月間の日本語教育と受験指導を行った後、日本の看護学校や大学を受験させ、卒業後に日本の国家資格を取得するという仕組みだ。ベトナム 政府は、現在交渉中のEPAでも看護師受け入れを求めている。
 「助産師の資格も取って、将来はベトナムで仕事をしたい」。千葉県の袖ヶ浦さつき台病院で働く看護師ドティ・バックさん(26)が夢を語る。 矢田洋三理事長は「きちんと勉強する環境があれば、日本語で看護師資格も取れる。EPAの仕組みは言葉の壁を甘く見ており、もっと教育支援を充実させる必 要がある」と指摘している。




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2008年3月16日(東京朝刊2社)「[開国・介護現場](5)「安定した地位必要」(連載)」


 「漢字がいっぱいだけど、頑張って覚えようね」
 申請、訪問調査、要介護度。講師の元松敏彦さん(55)が黒板に向かうと、約20人の生徒が一斉に電子辞書を引き始めた。
 日本人と結婚するなどして定住している在日フィリピン人を対象にホームヘルパー養成講座を開いている「東京ケアギバーアカデミー」。ここ数年、 こうした講座が全国で開かれるようになった。きっかけは、経済連携協定(EPA)で、フィリピンから看護師と介護士が来日する見通しになったというニュー スだ。
 これを知った日本側関係者が「フィリピン人にはもてなしの心があり、介護に向いている」と着想した。養成講座を修了し、ヘルパー2級の資格を得た人は1200人以上に上る。
 2006年には、EPAで来日する同胞の精神的な支援を目的に「在日フィリピン人介護士協会」が設立された。来日21年目の佐川真理亜さん (40)は「日本で介護職員として受け入れてもらうために、苦労や悩みがいっぱいあった。経験を生かして、相談に乗りたい」と意気込む。          

 人口危機をロボットが救う?
 今年1月、米紙ワシントン・ポストに、日本の少子高齢化への対応を皮肉る見出しが躍った。記事は、家庭用介護ロボットの開発や、「移民」受け入れに消極的な政府の姿勢を紹介し、こう締めくくった。「日本では外国人を家庭に入れるより、ロボットが好まれているようだ」
 日本は戦後長い間、就労や定住目的の外国人を極めて限定的にしか受け入れてこなかった。00年の国の世論調査では、介護労働への受け入れを「認めない」が48・3%で、「認める」の42・8%を上回った。
 しかし、現在約1億2770万人の人口は50年後に9000万人を切り、高齢化率は今の2倍の約40%になると推計される。全国老人福祉施設協 議会会長の中村博彦参院議員は「介護を外国人に頼らざるを得ない時代に入ったと認め、受け入れ策を真剣に考えないと、将来困った時に誰も来てくれなくな る」と言う。
 外国人看護師や介護士のための新たな在留資格を作るべきだと提言するのは、元東京入国管理局長の坂中英徳・外国人政策研究所長。「安定した法 的地位と待遇を保障すれば、優秀な人が集まり、長く働いてくれるようになる。そうなれば親身に世話してもらった高齢者や家族は感謝し、日本人の外国人観も 好転する」         

 「イスラム教徒が多いインドネシア人は、食事やお祈りなど宗教面での配慮が必要。我々の文化を理解し、仲間として受け入れてほし い」。今月8日、福岡市で開かれた国際シンポジウムで、インドネシア・労働調査開発センター所長のフィフィ・パンチャウェダさんが訴えた。同国は1989 年以降、130万人以上の看護師、介護士を海外に送り出してきた。「送り出し国と受け入れ国が相互に利益をもたらすようにすることが、制度を成功させるカ ギ」とも強調した。
 EPAでは今夏にも、フィリピンとインドネシアから看護師と介護士が来日する。しかし、看護師は3年、介護士は4年以内に日本の国家資格を取らなければ帰国を余儀なくされる。
 「国家資格取得という高いハードルを課すなら、それをクリアした人には永住権や職業選択権を含めた『市民権』を保障するなど、魅力的な条件で応える必要がある」。九州大アジア総合政策センターの大野俊教授はそう語った。(おわり)
 (この連載は、小林篤子、マニラ支局・稲垣収一が担当しました)




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2008年4月9日(東京夕刊夕2社)「[開国・介護現場]読者より 職場の待遇改善を 日本語の力つけて」


 海外からの看護師や介護士の受け入れが今夏にも始まるのを前に、課題を追った連載「開国 介護現場」(3月11〜16日朝刊、計5回)には、読 者から多くの反響が寄せられた。「外国人受け入れより、日本人の待遇を良くするべきだ」という意見のほか、「日本語力」の必要性を強調する声も目立っ た。(小林篤子)

 経済連携協定(EPA)では、フィリピンやインドネシアから看護師と介護士が2年間に計2000人来日する。40歳代の女性介護福祉 士は「変則勤務で体はガタガタなのに年収300万円。やりがいはあるが、我が子には同じ思いをさせたくない」と訴え、「海外から来る人も、優秀であればこ そ日本に定着しないのでは」と危惧(きぐ)するメールを寄せた。「待遇の悪さが国際問題になる」「国内で人材を賄えないからといって安易に外国に頼ってい いのか」といった指摘も相次いだ。
 老人保健施設の施設長だった埼玉県の男性医師は「地方出身者が関東の施設で方言が通じず、うつ状態になることもある。もてなしの心があって も、十分な意思疎通が出来なければ最低限の介護も出来ない」と、言葉の壁を心配する。要介護5の母を介護する東京都内の女性は「会話を通じた精神安定が介 護の要。心のケアのためにも言葉は大切だ」と主張した。
 群馬県の介護福祉士は、日本で国家資格を取れなければ帰国を余儀なくされるEPAの仕組みに関し、「日本人でも簡単には合格出来ない。合格者には市民権を優遇すべきだ」と指摘した。      

 来日後の手助けをしようと意気込む人たちもいる。日本語教育新聞社(東京)の日本語教師養成講座では元看護師ら3人が学ぶ。同社の黒河内真理子さんは「EPAのニュースの影響か、最近、医療福祉職から日本語教師を目指すケースが目立つ」と指摘する。
 看護学校講師の堀部洋子さん(68)は「研修カリキュラム作りなどで協力したい」と、週1回6時間の講座に通う。中国人看護師を研修で受け入れ た経験がある元看護師・祖母井清美さん(74)も「言葉だけでなく、看護師の仕事の範囲など『医療文化』の違いも大きい。ギャップを埋める役目を果たせた らうれしい」と話している。




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2008年5月20日(東京朝刊3社)「インドネシアEPA 介護士ら500人、7月の来日決定」


 日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づき、7月下旬から8月初旬にかけ、インドネシア人看護師200人と介護士300人が来日する ことが19日、正式に決まった。来夏も同様で、2年間で計1000人を受け入れる。人手不足が深刻な医療・福祉分野で、初の本格的な外国人労働者の受け入 れとなる。
 EPAは昨年8月に両国政府が署名、今月16日に日本の国会で承認された。これを受け、インドネシア海外労働者派遣・保護庁と、日本側受け入 れ調整機関の厚生労働省の外郭団体「国際厚生事業団」(東京・新宿)が19日、ジャカルタで覚書を交わした。国内では同日、受け入れ施設の募集が始まり、 インドネシアでも候補者の募集が行われる。
 日本とフィリピンのEPAにもフィリピン人看護師、介護士の受け入れが盛り込まれているが、同国上院の批准が遅れており、厚生労働省は、今年度の受け入れは難しいとみている。〈関連記事15面〉



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2008年6月3日(東京朝刊3面)「[社説]外国人労働者 受け入れ促進へ論議深めよ」


 少子高齢化で働き手が減る中で日本が活力を維持していくために、外国人労働者の活用は重要な課題だ。
 福田首相は先月、専門的知識や技術を持つ「高度人材」の受け入れを拡大するため、官房長官の下に有識者会議を設置し、対策を検討するよう指示した。
 政府は、外国人について、単純労働者は認めないが、高度人材は積極的に受け入れている。
 研究者や技術者、教師など高度人材として在留資格を与えられている外国人は、歌手など興行分野を除くと約15・8万人いる。
 だが、半数は非正規社員の扱いで、大手企業に雇われている外国人はわずか5%に過ぎない。
 日本の企業や研究機関では外国人の昇進が難しい。家族の教育や医療などの問題もある。優秀な人材は欧米に流れがちだ。
 国際競争力を強化するには、産官学が連携し、人材を日本に集めなければならない。外国人留学生の日本での就職を促進していくなどの対策が必要だ。このため、在留資格の取得要件を広げることも検討すべきだろう。

 単純労働者の受け入れについても問題が多い。
 政府の方針とは異なり、現実には、農林、製造、建設などの現場で、すでに多くの外国人が働いている。就労が特別に認められた日系人や、国際協力を名目にした「外国人研修・技能実習制度」で来日した実習生たちだ。
 研修制度は、単純労働者を雇う"抜け道"となり、低賃金、長時間労働など不正雇用の温床になっている。違法行為を取り締まる一方、高い技能を身につけた実習生には、在留資格を与えて働き続けられるようにするなど、制度の抜本的な見直しが急務だ。
 低賃金で使い捨てにする発想では、有能な外国人は日本に来なくなる。インドネシアとフィリピンから経済連携協定で受け入れる看護師と介護福祉士も、日本の医療・福祉を担う人材として大切に育てなくてはならない。

 日本の15〜64歳の生産年齢人口は、1995年の8716万人をピークに急速に減っている。自民党の中川秀直元幹事長のように、単純労働者の受け入れの制度化を求める動きもある。
 国民の間には、外国人労働者の流入による日本人の雇用機会の縮小や、地域社会の混乱を懸念する声がある。
 海外からの労働者を、どんな分野で、どの程度、受け入れるのか。国民的な論議を深めたい。




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2008年7月1日(東京朝刊3社)「[開国・介護現場]来日を前に(上)「技術学ぶ」高いプロ意識(連載)」)


 日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づき、日本が初めて受け入れる外国人看護師、介護士計約300人が7月末から来日する。やってくるのはどんな人なのか。受け入れ側の準備は――。来日直前の現場を追った。
 60人のインドネシア人看護師が緊張気味に順番を待っていた。ジャカルタのインドネシア海外労働者派遣・保護庁で6月中旬に行われた面接。新しい日本語の参考書を抱えた人もいる。
 「日本語は出来ないが、半年の研修があるから大丈夫。日本の看護師資格をぜひ取りたい」。ジャカルタ近郊の病院で働くエファ・レフィアナさん (25)が笑顔で語った。月給は300万ルピア(約3万5000円)で、日本の看護師の平均月給の8分の1程度。「高い給与に関心がある」と本音ものぞか せた。

 応募したのは20〜35歳の看護師資格を持つ人で、約4割が男性。看護師コースは2年以上の実務経験が必要だが、救急など豊富な経験を持つ人も多い。面接した国際厚生事業団の野崎慎仁郎支援事業部長は「専門性を生かしたいという熱意が伝わってきた」と話す。
 誤算は応募が少なかったこと。今年の受け入れ枠は看護師200人、介護士300人だが、書類審査などを通ったのは看護師174人、介護士131 人。特に介護士は、インドネシア政府が新聞広告まで出して集めたのに、大幅に定員割れ。日本の受け入れ希望は看護師167人、介護士287人で、希望して も介護士が来ない施設が多数出る。
 応募が低調だったのは、協定の国会承認との関係で周知期間が1か月弱と短かったことや、日本向け介護士養成プログラムがまだなく、介護士コー スの応募者も看護師資格を持つ人に限られたことなどが影響したとみられる。インドネシア全国看護師協会は「看護師を介護士として派遣するのは反対」との立 場で、「本当は看護師に応募したかったが、(看護師コースに必要な)実務経験がないから、介護士にした」と話す女性(23)もいた。

 インドネシアは、中東や豪州などに5000人以上の看護師を送り出してきたが、国内では看護師資格を持つ人の約7割が看護師の仕事に就けずにいる。「パンクするほど応募がある」(海外労働者派遣・保護庁のジュムフル・ヒダヤット長官)との見方が多かったのはこのためだ。
 4年制看護大を卒業するなど教育レベルの高い看護師ほどプロ意識も強い。現地で看護師ら40人にインタビューした平野裕子・九大医学部准教授は 「彼らにとって日本で働く魅力がお金だけ、との見方は間違い。技術を学び、帰国後に生かしたいというキャリアアップ志向が強い」と指摘し、こう続けた。 「受け入れ施設が単なる下働きをさせれば、来日した看護師の間に失望が広がるだろう」   

 〈外国人看護師・介護士〉 
 インドネシアからは2年間で計1000人を上限に受け入れる。来日して半年間、日本語研修を受けた後、病院などで働く。看護師は3年、介護士は 4年以内に日本の国家試験に合格しなければ、帰国を余儀なくされる。日本はフィリピンとの協定にも署名したが、同国の批准が遅れ、受け入れの見通しが立っ ていない。




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2008年7月2日(東京朝刊3社)「[開国・介護現場]来日を前に(中)顔見ず採用「情報欲しい」(連載)」


 スカーフをかぶり、長袖・長ズボンで介護実習を受ける女性たちの姿が会議室の大画面に映し出された。
 インドネシアの看護師、介護士が7月末から来日するのを前に、千葉県袖ヶ浦市の社会福祉法人「さつき会」で先月下旬に開かれた報告会。素肌をさ らさないイスラム教徒の女性の働き方について、現地視察した職員が「入浴介助で服がぬれても、『着替えるから大丈夫』とのことでした」と説明した。「お祈 りは1日5回だが、忙しければ2回分を一度に続けることもある」とも。柔軟な対応が可能と分かり、出席者はほっとした表情を見せた。
 同法人は、老人保健施設で介護士2人の受け入れを希望している。インドネシアからの受け入れが5月に2国間で決定したのを受け、急きょ職員を インドネシアに派遣。病院や看護学校を視察し、応募者に会った今木康之副理事長は「皆、素直で心優しく、介護に向いている。宗教上の懸念も払しょく出来 た」と話す。

 だが、現地に足を運べる施設ばかりではない。都立駒込病院などで計8人の受け入れを希望している東京都。協議が先行していたフィリピ ンには昨秋、視察団を送ったものの、インドネシアまでは視察が間に合わなかった。日本にいるインドネシア人留学生を招いた勉強会を開くなどして理解に努め ているが、同病院の鍋倉あつ子看護部長は「実際にどんな人が来るのか。宗教上の制約の程度など、もう少し具体的な候補者の情報がほしい」と話す。
 来日した看護師、介護士がどの病院や施設で働くかは、双方の希望を基に、国際厚生事業団が今月中にコンピューターで決める。希望を聞くにあた り、病院などには候補者の簡単な履歴が配られたが、中身は性別、学歴、職歴、健康状態と、同事業団が現地で行った面接や適性試験の評価点だけ。ブローカー などが不正介入する余地をなくすため、名前や住所、顔写真は示されない。
 「採用は本来、顔を合わせて行うもの。一度も会わずに契約し、来日後にお互い『思っていたのと感じが違う』とならないか」との懸念を抱く関係者は多い。

 「準備が不十分なままでは、受け入れに責任が持てない」と、東京・板橋区の医療法人社団「翠会」は今年の応募を見送った。以前、日本語 学校で学んでいたインドネシア人看護師3人をアルバイトの看護助手で雇った経験があり、その献身的な働きぶりは知っているが、「国家試験のテキストをイン ドネシア語に訳すなど準備が必要。施設と候補者の組み合わせ方なども改善の余地がある」とする。
 全国老人福祉施設協議会の福間勉事務局長は「病院や施設が大挙して現地に行くのは非現実的だが、『政府が選んだ人を信頼してくれ』という現状 には、施設側の不満も大きい」とし、面接に施設側の代表を入れるなど「受け入れ側が主体的に候補者を選べるよう提案したい」と話している。




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2008年7月3日(東京朝刊3社)「[開国・介護現場]来日を前に(下)苦情相談、母国語で対応(連載)」


 台湾・台北市の中心部にある海外からの労働者向けの相談センター。ひっきりなしにかかってくる電話に、10人の市職員が、インドネシア語やタガログ語など4か国語で応対していた。
 「給料を不当に天引きされる」「冬の寒さで手が冷えて働けない」。年間2万2000件超の相談の多くは介護士から。中身は、契約上のトラブルか ら日常生活の悩みまで様々だ。蔡佩臻主任は「故郷を離れて暮らす労働者は、ささいなこともストレスになる。母国語できめ細かく対応する必要がある」と話 す。
 高齢化が進む台湾は、海外から多数の介護士を受け入れている。1992年には約300人だったが、人手不足を補う形で年々増え、今や16万 8000人。インドネシア人が約6割を占め、次いでベトナム、フィリピンと続く。台北市は、電話相談のほかにも、中国語とインドネシア語などを併記した介 護手引の作成、無料の語学教室、各国ごとの文化祭開催など、独自の取り組みを行ってきた。

 「おいしいですか」。台北市南部の老人ホーム「兆如老人安養護中心」で、インドネシア人介護士のブディ・カストリニさん(31)が、 入所者の男性におかゆを食べさせていた。母国で子供たちに歌や算数を教えていたが、より高い給料を求めて6年前に台湾に出稼ぎに来た。帰国したのは3年前 に1度だけ。月給1万7280台湾ドル(約6万円)の3分の1を、母国で待つ夫と2人の子に仕送りしている。
 同ホームで働く介護士は、台湾人90人のほか、インドネシアやベトナム、フィリピンから来た83人。「母国の仲間がいるから寂しくない」とカ ストリニさん。全く話せなかった中国語もずいぶん上達した。陳敏雄院長は「台湾人を雇いたいが、介護の仕事は大変だからと敬遠され、人が集まらない。出稼 ぎの外国人は休日や夜間も働いてくれるから大助かりだ」と話す。
 海外からの介護士急増に伴い、台湾では、技術レベルのばらつきや劣悪な労働環境、不法滞在の増加などが問題になっている。介護施設長で作る台 北市社区銀髪族服務協会の崔麟祥理事長は「若い女性が性的なトラブルに巻き込まれることもある。通訳は必要か、失跡したらどうするかなど、あらゆる問題を 想定する必要がある」と話す。

 日本にも今月末からインドネシア人看護師、介護士がやってくるが、日常生活の支援や国家試験に向けた指導は受け入れ施設に任されてい る。トラブル防止のため、国際厚生事業団が、インドネシア語で応対する相談電話を設けるほか、各施設を年に1度巡回する予定だ。こうした体制について、安 里和晃・龍谷大非常勤講師は「日常的に生じる問題に対処するには不十分。外国人を受け入れたことがある施設のノウハウを共有するとともに、自治体や地域 も、日本語教育や文化交流など積極的にかかわるべきだ」と話している。
 (この連載は、小林篤子、ジャカルタ支局・佐藤浅伸が担当しました)




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2008年7月7日(東京夕刊夕2社)「[記者ときどき私]介護と幸せ」


 高校2年でオーストラリアに留学していた時、白人が大多数を占める田舎町で、友人が先住民族・アボリジニのことをあからさまに差別する言葉に ショックを受けた。背が低く、黒髪、肌が黄色い日本人の自分も、同様に見下されていると感じたからだ。もう20年も前の出来事だが、胸に刺さったトゲは今 も抜けない。
 昨年来、日本が初めて受け入れることになった外国人介護士の問題を追いかけている。何人ものフィリピン、インドネシア人女性の話を聞いた。異 国で働くことへの期待と不安、偏見や差別という現実。ジャパゆきさん、風俗店での労働を引き合いに、「また日本人の下の世話をしに来るのか」と言われた と、悔し涙を流す人もいた。情けない思いでいっぱいになった。
 介護現場の人手不足をどう解消するか。言葉の不自由な外国人に介護を任せて大丈夫か。この問題がそんな観点から論じられることが多いのが残念 だ。しかし、事の本質は、彼女らが日本で幸せに働けるかどうかではないかと思う。そうでなければ、介護される側の幸せもないはずだから。
(小林篤子、37歳)




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2008年7月8日(大阪朝刊A経)「関経連など、EPA活用促進で意見書」


 関西経済連合会、大阪、京都、神戸の3商工会議所と関西経済同友会は7日、フィリピンなど9か国・地域と結んだ経済連携協定(EPA)につい て、中小企業の活用を促すため、情報提供の取り組み強化を求めた連名の意見書を関係省庁に提出した。インドやベトナム、韓国などとの早期締結も求めてい る。




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2008年7月17日(東京朝刊解説)「海外での日本語教育強化 増え続ける学習人口 「知日派」育成に期待(解説)」


 〈要約〉  
 ◇国際交流基金や政府が、海外での日本語教育の拠点づくりを本格化させている。
 ◇海外には漫画などに興味を持ち日本語を学ぶ若者も多く、「知日派」育成にも有効だ。  

 海外での日本語教育の拠点づくりが本格化する。アニメなどを通じて芽生えた日本への関心を「知日派」育成まで発展させる"触媒"役として期待がかかる。
 海外で日本語を教育する拠点づくりを進めているのは独立行政法人・国際交流基金で、16日には、名称を「JFにほんごネットワーク」(通称・さくらネットワーク)とすることを発表した。
 さくらネットワークは、日本語講座のある海外の大学を中心に「日本語専門家の派遣、教材や学習方法の提供、教師らの日本への招待研修などを行う とともに、各大学などの個別の事情に応じた支援プログラムを提供していく」(高鳥まな・日本語事業部次長)事業だ。現在は同基金の現地事務所19か所のほ か、21機関が参加している。
 外務省も同ネットワークを財政的に支援しており、今後3年間に海外拠点の数を約100か所に増やしたい考えだ。

 政府が海外での日本語教育に力を入れ出したのは、中国が近年、中国語教育の海外拠点「孔子学院」を急増させていることが契機だ。「日本のプレゼンス(存在感)が低下してくる」との危機感が底流にあるのは間違いない。
 外国人の受け入れを円滑に進める効果も期待している。経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアやフィリピンの看護師と介護士を受け入れる ことが既に決まっているが、受け入れの最大の障害が「言語の壁」と言われる。来日後、看護師は3年、介護福祉士は4年以内に日本語で試験を受けることを義 務づけているためだ。海外で日本語教育が普及すれば、試験に不合格で帰国を余儀なくされるケースを減らすことができるかもしれない。

 忘れてならないのは、決して熱心とは言えなかったこれまでの日本の取り組みをよそに、日本語を学ぶ外国人の数は一貫して増え続けている、という事実だ。
 同基金の調査によると、海外の日本語学習人口は2006年時点で133か国・地域の約298万人。調査が始まった1979年当時はわずか13万人弱で、27年間で約23倍に膨れ上がっている。
 特に注目されるのは、日本がバブル崩壊後の「失われた10年」にあえいでいた最中も、海外での日本語学習熱は冷めるどころか、逆に燃えさかって いた点だ。日本の漫画やアニメ、ファッションといったポップカルチャー、いわゆる「ジャパン・クール」ブームが若者たちの日本語学習熱を刺激しているよう だ。外務省幹部は「漫画やアニメを通じて日本そのものに興味を抱いて、小学校や中学・高校などの第2外国語の授業で日本語を選択するケースが目立つ」と指 摘する。

 こうした将来の「知日派」たちを育てていくことは、文化や経済の交流拡大、対日摩擦の緩和など様々な恩恵をもたらすに違いない。
 そのためには、日本語教育施設というハード面の拡充だけでは不十分だ。第2外国語の授業で日本語を教えている教師は、本来は他の言語の教育が専 門で、片手間で日本語を教えているようなケースも少なくない。同基金が現在、日本語教育の評価基準などを定めた「日本語教育スタンダード」の開発に取り組 んでいるのも、ソフト面の充実が欠かせないと認識しているからだ。
 日本語教師の海外への派遣は、独立行政法人・国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊とシニア海外ボランティアも実施している。青年海外協 力隊のOB・OGで組織する社団法人・青年海外協力協会(JOCA)も、今年度からハンガリーなど東欧4か国に日本語教師の派遣を始めた。
 既に海外で300万人近くが日本語を学習している現状を考えると、さくらネットワーク以外の取り組みも存分に活用していく必要がある。




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8月3日(東京朝刊3面)「[社説]外国人看護師 大切な人材として育てたい」


 専門的な技能を持つ外国人労働者の受け入れの一つのテストケースとも言えるだろう。
 日本とインドネシアの間で締結された経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシア人の看護師・介護士約200人が、今月7日に来日する。
 EPAにより医療や福祉分野の人材を受け入れるのは、初めてのことだ。言葉の問題をはじめ様々な課題が山積している。
 数多くの優秀な人材を集め、その能力を十分に発揮してもらうためには、国や自治体の積極的な支援が欠かせない。
 半年間の日本語研修などを経た上で、看護助手や介護職員として病院や施設で働く。看護師希望者は来日から3年以内、介護士の場合は4年以内に資格を取得しなければ、帰国を余儀なくされる。
 来日する全員がインドネシアの看護師資格を持っているが、わずか3、4年の滞在で、日本語による国家試験に合格出来るのか、疑問視する声もある。

 東京都では、インドネシア人向けの国家試験に向けた教材の開発など支援策の検討を始めた。自治体の積極対応は望ましいが、それだけでは限界がある。政府も早急に、具体策を示すべきだ。
 日本の医療、福祉の現場では、看護師や介護職員の人手不足が深刻化している。労働条件が厳しいために離職する人が多い。資格があるのに働いていない"潜在看護師"は55万人に上る。
 そのため、外国人を受け入れるよりも、日本人の看護師や介護職員への待遇改善に努めるべきだとする議論も根強くある。
 政府も「EPAの外国人労働者受け入れは、人手不足解消のためではない」との立場だ。

 しかし、日本社会の少子高齢化が進む中で、いずれ医療、介護の現場に外国人の働き手が必要となる時代が訪れる可能性は高い。
 EPAは、2年間で計1000人を受け入れるとしている。今年は、半数の500人を予定していたが、インドネシア側の応募者はこれを大幅に下回った。
 男性看護師が予想以上に多く、日本側の医療機関が受け入れを敬遠した。このために組み合わせがうまくいかず、来日を取りやめた事例も少なくない。
 政府はフィリピンとの間でもEPAの調印を済ませており、発効すれば、2年間に1000人の看護師・介護士が来日する。
 長期的視野に立って、外国人看護師・介護士の受け入れ策を検討していく必要がある。




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2008年10月3日(東京朝刊)「[超高齢・日本の発信](中)介護労働、低待遇のカナダ(連載」


 ◆外国人労働者、不足補う 
 9月にカナダ・モントリオールで開かれた高齢化に関する国際会議「IFA世界会議」では、介護労働者についての議論も活発に行われた。
 カナダの介護者支援団体から参加したフェイ・ポーターさんは、シンポジウムで「介護労働に就こうという若者が減っている。収入が低過ぎるからだ」と指摘、介護の担い手の高齢化にも触れ、「介護労働者の25%は65歳以上です」と訴えた。

 日本でも、介護労働に従事する人材をどう確保するかは、高い関心を集めている。財団法人介護労働安定センターの調査(2007年度)に よると、介護労働者の平均年収は270万円ほど。国会では今年5月に待遇改善に向けた「介護人材確保法」が成立したばかり。8月には、将来の担い手とし て、インドネシアから看護師・介護福祉士の候補者が来日し、資格取得などを目指して研修中だ。
 世界会議に参加したNPO法人「高齢社会をよくする女性の会」の樋口恵子さん(76)らも、会合の合間を縫って高齢者施設を複数見学し、設備やサービスとともに、介護労働者の待遇についても尋ねた。
 オンタリオ州にある民間高齢者施設「ベラ・シニア・ケア・レジデンス」は、入居者約160人の施設。寝たきりの高齢者はほとんど見られず、車いすやつえで自由に行き来する姿が見られた。

 同会メンバーの一人で、高齢者福祉施設の事務局長を務める杉啓以子(けいこ)さんは「日本の有料老人ホームのような位置付けでしょう」と話す。
 しかし、入居一時金はなく、2人部屋で1か月約16万円、個室で同21万円の料金を支払い、食事サービスや24時間の生活介助などを受けられる。州政府の認可を受け、毎年の利用実績やサービス内容に応じて補助金を得ているという。
 介護従事者の待遇はどうか。施設担当者によると、看護師は時給約2600円、介護士は同1700円。ボーナスはなくほとんどがフルタイムなので、年間労働時間を日本と同じ2000時間として年収換算すると、看護師で約520万円、介護士は約340万円になる。
 杉さんは「高齢者の要介護度の違いや施設の違いもあり単純比較は出来ないけれど、日本の介護労働者とそう大きく変わらない。つまり、良い待遇とは言えない」と話す。

 「ベラ」ではフィリピン人女性の介護士の姿が目立った。看護師は足りないが、介護士はそれほど不足していないという背景には、彼女たち 外国人労働者の存在があるようだ。「カナダでは英語が通じ、移民を積極的に受け入れるなど入国管理の仕組みが日本と異なる。日本より外国人を介護労働者と して受け入れやすいのでは」と樋口さんは話す。
 国際会議の場でも議論の的になった介護労働者の待遇問題。他国に先駆けて超高齢社会になった日本だが、この問題についてはなかなか「先進例」を示せない。世界各国で高齢化が進む中、日本でも試行錯誤が当分続きそうだ。




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2008年10月9日(東京朝刊2面)「日本とのEPA、批准を承認/比上院」


 【マニラ=稲垣収一】
 フィリピン上院は8日夜、日本との経済連携協定(EPA)の批准を承認した。2006年9月の協定調印以来、3年越しでようやく批准手続きが完了した。
 協定では、日本が今後2年間にフィリピンから看護師、介護士を最大1000人受け入れるほか、鉱工業品、農林水産品など両国の貿易額の約94% で関税を撤廃するとしている。EPAに基づく看護師、介護士受け入れはインドネシアに続き、2か国目となる。日比EPAは、比上院で投資の規制緩和をめぐ る条項が憲法違反にあたるなどとの批判が浮上、審議が長期化していた。


 

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2008年12月12日(東京朝刊2面)「日比EPAが発効 段階的に関税を撤廃」


 日本とフィリピンの経済連携協定(EPA)が11日発効した。両国は、今後10年間をめどに、段階的に双方の貿易額の9割以上の関税を撤廃す る。農産物や鉱工業品などモノの関税撤廃によって2国間の貿易の自由化を進めるほか、直接投資やサービス分野での自由化も目指す。さらにフィリピンの看護 師や介護士を日本に受け入れるなど労働力の受け入れでも関係を強化する。
 日本にとっては、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、東南アジア諸国連合(ASEAN)に続いて9番目の経済連携協定の発効となる。

*作成:吉澤あすな
UP: 20091117 REV:20091212

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