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ケア/国境 関連新聞記事2006(読売新聞より)






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日比EPA(看護師・介護士受け入れ)関連 新聞記事(2006年、読売)
2006年2月15日(東京朝刊6面)「[豊かさ再発見]第2部 世界シニア事情(6) 外国人が支える福祉国家(連載)」
 ◆国境を越える看護師 アフリカは流出深刻 
 昨年のクリスマス直前、英国南部の小さな町ベリーセントエドムンズにある教会で、奇妙な会合が開かれていた。集まったのは200人余のフィリピン人看護師。彼女たちは、英国内の病院で高齢者らの世話をしている。
 「ここは税金が高い」
 「米国なら英国の2倍稼げるわ」
 「どこかいい病院ないかしら」
 彼女たちは、看護師待遇の情報交換で集まっていたのだ。
 「中東のドバイから3年前、英国に来た」というグレイス・ジャランドニさん(36)は、現在はロンドンの病院勤務。てきぱきした話しぶりが印象的な彼女は、「2月には仲間と米イリノイ州の病院に行くわ。米国のほうが暖かいし楽しそう」と言う。
 英国では、グレイスさんのような外国人が今や全看護師の8%を占める。しかも、看護師たちにとっては、英国勤務も次への跳躍台でしかないようだ。
 欧州最大の港町、オランダ・ロッテルダムで働く、ポーランド人看護師のモニカ・ゴレフスカさん(30)も、そうした外国人看護師の1人だ。
 故郷ポーランドの病院で働いていた3年前、「オランダでの働き手募集」という人材派遣会社の広告を見て飛びついた。今の月給は1500ユーロ(約22万円)で、ポーランドの時の4倍だ。
 「ここは給料も治安もいい。故郷には帰らないわ」と、おかっぱの黒髪を揺らして言い切る。
 オランダは、日本の介護保険の原型を生んだ高福祉国だが、2000年以降、看護師の受け入れが本格化し、高齢者介護の現場は、東欧、南アフリカ、フィリピンなど10か国以上で混成される多国籍部隊になっている。
 今や西欧の福祉国家は、低賃金の途上国からやってきた人材に支えられていると言っても過言ではない。米国でさえ、長寿化の進行により、今後5年間で30万人近い看護師・介護士不足が生じる見通しだ。
 だが、その一方で、こうした看護師や介護労働者の国際的な移動のため、世界の医療業界では深刻な南北問題が起こっている。
 乏しい財源で医療労働者を育ててきた途上国にとって、人材流出は死活問題だ。特にアフリカへの影響は深刻で、国連人口基金(UNFPA)の報告による と、エイズ罹患(りかん)率の高いアフリカのサハラ以南では欧米諸国への人材流出により、医師72万人、看護師60万人が不足する。
 南アのエイズ専門医からオランダの地方病院勤務医に転身したステフ・ポットヒーターさん(44)は、「死に瀕(ひん)する母国の患者を見捨てて、申し訳 ないという心の葛藤(かっとう)はある」と告白する。しかし、同時に、「南アでは犯罪が横行している。息子の将来を考えると、祖国に帰る気になれない」と 話す。
 UNFPA報告によると、南アの医師・看護師のうち、「先進国で働きたい」と答えた人の割合は58%、ジンバブエでは68%にのぼった。
 高級時事月刊誌「ニュー・アフリカン」は、医療現場で進行する実態を次のように表現した。
 「アフリカはゆっくりと死んでいく」――。
 ◆日本は比・タイから受け入れへ 2007年に4万人不足の見通し 
 日本では現在、外国人の看護や介護分野での就労に高い規制を設けている。だが、自由貿易協定(FTA)締結交渉の過程で、フィリピン、タイ両国の看護、介護スタッフを受け入れる方向で議論が進められている。
 日比間では、2004年11月の首脳会談で、日本の国家試験に合格することなどを条件に、フィリピン人の看護師と介護福祉士の受け入れで大筋合意した。タイとの間では、05年9月の首脳会談で、介護福祉士の受け入れの可能性を議論することで基本合意している。
 財団法人「介護労働安定センター」の調査によると、介護労働に当たる職員の45%が非正社員で月の賃金は平均約17万円。5人に1人が過去1年間に離職しており、事業所の34%が「人手不足」と回答している。
 厚労省の需給予測では、07年には約4万人が不足する見通しだ。





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2006年9月9日(東京朝刊10面)「比とのEPA締結、閣議決定」   
 政府は8日、フィリピンとの2国間で、自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定(EPA)を締結することを閣議決定した。小泉首相とフィリピンの アロヨ大統領が9日、アジア欧州会議(ASEM)が開かれるフィンランドで署名する。日本にとっては、シンガポール、メキシコ、マレーシア(いずれも発 効)に次ぐ4番目の締結国になる。





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2006年9月10日(東京朝刊2面) 「看護師、条件付き受け入れ 比と「経済連携協定」締結」 
 【ヘルシンキ=飯塚恵子】小泉首相は9日夕(日本時間9日夜)、ヘルシンキ市のホテルで、フィリピンのアロヨ大統領と会談し、2国間の自由貿易協定 (FTA)を柱とする経済連携協定(EPA)を締結した。協定は、物品貿易の関税撤廃など13分野で連携を強化する内容で、日本側はフィリピンの看護師と 介護福祉士を、日本の国家資格の取得を条件に一定の枠内で受け入れる。日本が、EPAに労働市場の一部開放を盛り込んだのは初めてだ。
 日本がEPAを結ぶのは、シンガポール、メキシコ、マレーシア(いずれも発効)に続いて4か国目だ。
 協定は、物品貿易の関税撤廃のほか、〈1〉金融などサービス分野の貿易の各種規定の順守〈2〉双方の国民の入国や一時滞在の受け入れ――などが柱となっている。
 これに基づき、フィリピン側は、自国で生産していない種類の自動車部品を日本から輸入する際の関税を撤廃するほか、完成車の関税も2010年までに原則として取りやめる。鉄鋼・鉄鋼製品も大半の関税を撤廃し、ボルトや台所用品などは10年以内に撤廃する。
 日本側は、ほぼすべての鉱工業品を自由化するほか、砂糖や鶏肉には、一定量までの輸入に低い税率を適用する関税割当制度を導入し、関税の軽減を図る。
 看護師などの受け入れには、日本の業界団体や厚生労働省が「若者や女性の雇用機会の喪失につながる」などと強く反対したが、政府は最終的に条件付きで容 認した。その後、04年11月にEPAの概要については合意し、さらに細目を詰めていた。政府は秋の臨時国会に協定を提出し、承認を得たい考えで、早けれ ば来春にも発効することになる。〈関連記事9面〉
 
 〈EPA〉
 Economic Partnership Agreementの略。2国間の貿易自由化だけでなく、投資や労働力の受け入れ、知的財産権をめぐるルー ルなども含む包括的な経済協力を定める協定。工業品や農産品などの関税を撤廃する自由貿易協定(FTA=Free Trade Agreement)より 範囲が広い。





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2006年9月10日(東京朝刊9面)「日比経済連携協定 看護師受け入れ数示さず 言葉の壁など、日本に慎重論も」   
 日本とフィリピンの経済連携協定(EPA)は、初めて看護師などの受け入れを盛り込み、労働市場の一部開放に踏み込んだ。しかし、焦点だった具体的な受 け入れ人数については明示せず、結論は発効時まで先送りされた。協定は、来春にも発効する見通しで、日本政府はそれまでに具体的な受け入れ人数を決める必 要がある。(西沢隆之、本文記事2面)
 ■経緯
 フィリピンは予備協議の段階から、同国の看護師や介護福祉士が「世界で最も訓練された献身的な労働者」(アロヨ大統領)だとして、日本に積極的な受け入れを求めてきた。
 2004年2月に政府間交渉が始まると、要求を強めるフィリピン側に対し、日本の厚生労働省などが、「言葉の壁」による医療事故の懸念などを理由にあげ て抵抗する構図が鮮明になった。しかし、その後、日本の国内でも、看護師の確保に苦慮する地方病院などから海外労働者の受け入れを求める声が高まり、厚労 省も条件付き容認に転換した。
 ■隔たり
 協定などによると、フィリピン側は、現地の看護師資格保有者や4年制大学卒業者などを対象に、日本で看護師などの資格取得を目指す候補者を選抜する。選 抜された人たちは、看護師が3年、介護福祉士が4年を上限に日本での入国・滞在が認められ、国家試験に合格すれば在留期間の延長が可能となる。不合格者は 帰国しなければならない。
 ただ、日本では依然、治安問題を懸念して、外国人労働者の大量受け入れには慎重な意見が多い。このため、政府は、フィリピン側に対し、日本語の研修施設 の受け入れ能力などを理由に、看護師と介護福祉士の資格それぞれについて年間で100人程度、計200人程度の受け入れにとどめたい考えを示すと見られ る。
 看護師だけで世界で10万人が働いているともいわれるフィリピン側は、遠くない将来に年間1000人規模の受け入れを希望しており、両国の主張に隔たりは大きい。
 ■課題
 日本では2010年に看護師が1万5000人不足するとの試算もある。今回の協定によって、フィリピンから一定の看護師が来るようになれば、看護の現場で、労働環境の改善につながることは確かだ。
 また、経済界には、労働力人口が減少している日本の経済活力を維持するには、外国人労働者の受け入れを増やさざるを得ないとする見方も多い。フィリピン との経済連携協定は、21世紀の日本が外国人労働者を受け入れていくための試金石ともなるだけに、ルールや受け入れ態勢を早く的確に整備する必要がある。
  
 ◆比、「新たな市場」を歓迎 
 マニラ首都圏パサイ市に2002年に設立された介護士や看護助手の養成学校では、在校生の3割弱、約20人が介護、看護技術と共に日本語を学んでいる。 運営するエンカルナシオン・ラットさん(53)は「フィリピン人向けの新たな市場ができる」と日本とのEPAを歓迎する。
 フィリピンは人口の約1割、約800万人が海外で働く「労働力の輸出国」だ。2005年に働くために海外の国・地域に渡ったフィリピン人は約73万人。 在外就労者の本国への送金額は昨年で100億ドル強と実質国内総生産(GDP)の約1割に相当した。政府も国内の雇用不足を補い、外貨を獲得する手段とし て在外就労を後押ししている。
 インドネシアも日本に看護師などの受け入れを求め、タイは自国の国家資格を持つ調理師が日本で働く条件の緩和について日本と基本合意した。専門性の低い 労働力を含め、日本の労働市場開放を求めるASEAN(東南アジア諸国連合)の声が一段と強まりそうだ。(シンガポール 菊池隆、マニラ 遠藤富美子)
            ◇  
 ◆日比経済連携協定骨子 
 ▽フィリピンは排気量3000cc超の乗用車・バス・トラックを遅くとも2013年に関税撤廃。3000cc以下は段階的な関税削減後、09年に再協議
 ▽フィリピンは電気・電子製品を例外なく発効日から10年以内に関税撤廃
 ▽日本はバナナ(小さい種類)を協定発効後10年で関税撤廃。キハダマグロ、カツオについては協定発効後5年で関税撤廃
 ▽看護師、介護福祉士の入国及び一時的な滞在を相互に認める
 ▽知的財産権の侵害などに対する十分かつ効果的な行使を確保
 ▽人材養成、エネルギー及び環境など10分野で協力






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2006年9月12日(東京朝刊2面)「看護師らの受け入れ、比から最大1000人」
 厚生労働省は11日、日本とフィリピンが9日に署名した経済連携協定(EPA)に基づき、日本が受け入れるフィリピン人看護師・介護福祉士の人数枠を、2年間で最大1000人とすると発表した。内訳は、看護師400人、介護福祉士600人。
 受け入れ対象者は、フィリピンで看護師や介護福祉士の資格を持つ人。来日後、6か月間の日本語研修を経て、病院や介護施設などに就労し、日本人と同等以 上の報酬が約束される。看護師は3年、介護福祉士は4年の期限内に日本の国家試験に合格できなければ、フィリピンへ帰国することとなる。国家資格を取得す れば、希望する限り日本で働き続けることができる。





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2006年9月16日(東京朝刊15面)「[教育現論]フィリピン“日系大学”の活躍」
 ◇編集委員・勝方信一
 白く輝く河床。教室で学ぶ老若男女の真剣な顔。忘れられない光景だ。
 もう17年も前のことになる。フィリピン・ミンダナオ島を取材で訪れた。 島には戦前、マニラ麻栽培に入植した日本人の地域社会があった。だが、 1941年の日本軍によるダバオ占領で、在留邦人は軍に組み込まれた。4年後、米軍の反攻。邦人は渓谷で逃避行を続け、爆撃や飢えで多くの人が亡くなっ た。悲劇の地を歩き、河床に立ち尽くしたことを覚えている。
 終戦後、現地に取り残された日系2世は、戦時中の日本軍の行為に対する報復を受けた。日系人であることを隠し、日本語も使わず、ひっそりと暮らしてき た。日本語学校がダバオに設立されたとき、終戦から既に40年以上が経っていた。日系の誇りを取り戻すため言葉を学ぶ人々を取材し、「学ぶとはこういうこ となのか」と感動した。
 その後もダバオの日系人のことは、気に掛かっていた。NPO法人「日本フィリピンボランティア協会」(東京・調布市)と日系人会が4年前、ダバオにミンダナオ国際大学を開校したときは、望んでその賛助会員となった。
 ダバオでの教育活動に惹(ひ)かれるのは、そこに教育の大きな可能性が示されているからだ。日系人支援で始まった教育活動は、地域の課題解決への取り組みとなり、今、日本とフィリピンの架け橋となりつつある。
 日本語学校の実践は、幼稚園、小学校、ハイスクール設立へと発展した。
 同大学は学生250人余と規模は小さいが、国際、福祉、教員養成の3つのコースを持つ。日本語必修で、学生は、孤児院や貧困集落でのボランティア活動にも携わる。日本の福祉施設での活動も、実施されている。
 逆に同大を、学生の体験学習、英語学習の場とする日本の大学もある。介護が必要な日本のお年寄りのダバオ短期滞在受け入れも始まった。
 小泉首相は9日、フィリピンのアロヨ大統領と会談し、経済連携協定(EPA)を締結した。今後、日本で就労する人がダバオでも増えるだろう。だが、それは地域の担い手が流出することでもある。
 元中学教師で住職でもある網代正孝・同協会会長(67)は、「日本は高齢者問題、フィリピンは教育・貧困の問題という弱点を持つ。互いの弱点を克服するため、金だけでなく、人が行ったり来たりする関係構築を」と訴える。
 小さな大学が、2国間の歴史と課題を体現している。多くの人の思いがこもった大学である。





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2006年9月18日(東京朝刊3面)「高齢者介護の人手不足 仕事キツイ、給料安い 景気回復で人材他業種に」

 高齢者介護の現場で、人手不足が深刻になっている。景気が回復し、労働条件の良い他職種に人材が流れているためで、高齢者介護分野の7月の有効求人倍率 は、全産業平均の倍近い2・03倍。団塊世代の高齢化で介護需要の急増も見込まれるなか、国も介護職員の労働環境の改善に乗り出した。
(社会保障部 小山孝、中館聡子)
 ◆内定者6分の1
 「これほど人が集まらないとは思わなかった。質の良い介護が求められている折、誰でもいいというわけにもいかないし……」
 来春、東京都中野区にオープンする「江古田の森保健福祉施設」。特別養護老人ホームや老人保健施設などを併設する国内最大規模の施設で、介護職員など約330人を採用する予定だが、現段階で内定者は約50人にとどまっている。
 運営する社会福祉法人「南東北福祉事業団」では、これまで説明会を15回、試験を7回実施した。開設まであと半年と迫り、担当者は「説明会や試験の回数を大幅に増やさなければ」と危機感を募らせている。
 求人難に悩む施設からの要望で、ハローワーク池袋などでは、例年2月に開いている福祉職の合同面接会「ふくしワーク就職フェア」を今月3日、急きょ追加 開催した。参加した都内の特別養護老人ホームの担当者は、「数年前までは口コミで人が集まったのに、今はインターネットや求人雑誌で手を尽くしても集まら ない」。入所者の高齢化に伴う介護度の悪化で以前にも増して人手が必要なため、このホームでは常勤職員だけでは賄えず、「派遣も受け入れている」と話す。
 全国老人福祉施設協議会が今年4月に介護職員の充足状況を会員施設に調査したところ、6割が「不足している」と回答した。
 訪問介護事業所もホームヘルパー不足に見舞われている。大手の「やさしい手」(本社・東京)では、「景気がいい名古屋地区は特に厳しい。5年前なら採用 しなかった無資格者も採用し、資格を取らせて対応している」と話す。1人の採用にかかる経費は、5年前の約1万2000円から、今では3万9000円にま で上がっているという。
 全国の福祉関係の求人求職状況をまとめている「中央福祉人材センター」によると、高齢者介護分野の有効求人倍率は2004年度から急激に上昇し始め、今 年7月には過去最高となった。同センターでは、「景気回復の影響は予想以上。より条件のいい業種に人が流れている」と分析する。
 ◆時給 実質1000円
 人材難の要因は、仕事のきつさと、それに見合わない給与水準だ。
 厚生労働省によると、05年のフルタイム労働者の平均時給額は、施設介護職員が1210円、ホームヘルパーは1142円で、全産業平均(1830円)よ り低い。一方、パートタイムで働くホームヘルパーの平均時給額は1329円と低くはないが、移動や待機時間は賃金が支払われないケースが多く、実際は 1000円程度と言われている。
 「介護労働安定センター」の調査(05年)によると、ホームヘルパーの5割が腰痛を抱え、3割弱はコルセットを使用。施設職員の9割弱は夜勤時などに強 いストレスを感じている。こうした現状に都内の訪問介護事業所の人事担当者は、「責任は重いのに時給はファストフード店のアルバイトとほとんど変わらな い」と嘆く。
 介護分野の離職率も20・2%と、全産業平均(17・5%)より高い。「この分野は最近まで就職難の受け皿だった。景気が良くなり、福祉なら就職できると考えていた人が他産業に転職している」とハローワーク池袋の担当者は話す。
 
 ■魅力ある職場目指せ! 厚労省が検討会 外国人労働者の受け入れ論議も
 「雇用情勢が改善する中、人材確保は重要な課題」だとして、厚労省も今年度から対策に力を入れ始めた。
 6月には、離職率改善と魅力ある職場づくりを目指して検討会を発足させた。IT(情報技術)化による事務経費圧縮など、経営効率化のモデルケースづくり に取り組む。介護職員の賃金アップや、介護福祉士の資格を持ちながら働いていない「潜在的介護福祉士」(約32万人)の就労促進も検討している。
 ただし、賃金アップは介護報酬引き上げと、それに伴う介護保険料の増額につながる。日本ホームヘルパー協会会長で、第一福祉大の因(いん)利恵・助教授 (介護福祉学)は「高齢者の心身の状態をチェックする役割を担う介護の仕事は、誰にでもできる単純労働ではない。質の高い介護を受けるためには、保険料や 税金がかかることを国民に理解してもらわないと」と強調する。
 外国人労働者受け入れ論議も活発化している。
 今月9日、日本とフィリピンは経済連携協定(EPA)に署名し、フィリピン人介護福祉士を2年間で最大600人受け入れることが決まった。
 日本人の雇用機会喪失などへの懸念から受け入れに慎重な厚労省は、「人手不足解消というより、貿易政策上の決断」と受け止めている。
 だが、将来的な人手不足や規制緩和の観点から、さらなる受け入れ検討を政府に迫る声が高まっている。
 
 ●介護報酬増額もやむを得ず 
 急増する認知症への対応など、介護現場では今まで以上に専門性が求められている。人手不足だからといって、質の低い人材の採用や過労による職員の離職が続けば、介護を受ける高齢者に悪影響が出かねない。
 景気が再び悪くなれば人は集まるとの見方もあるが、今後の高齢化を思うと介護職員の労働問題にきちんと取り組んでおく必要がある。負担軽減や雇用管理の 工夫は欠かせないが、それだけでは不十分だ。賃金アップのためには介護報酬の増額もある程度はやむを得ない。費用を負担する国民の合意が得られるよう議論 を重ねたい。(社会保障部 安田武晴)
 
 〈介護福祉士〉
 1988年に始まった国家資格。約54万7000人が取得(2006年7月末現在)。介護施設職員の約4割、在宅介護サービス職員の約2割を占める。厚労省は介護職員の任用資格を、将来的には介護福祉士に限定する方針を示している。
  





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2006年10月2日(東京朝刊三面)「[社説]外国人看護師 体制を整え着実に受け入れたい」
 経済連携協定(EPA)により、外国との人材交流の拡大に踏み出した意義は大きい。
 政府は、日本とフィリピンが結んだEPAに基づき、フィリピン人の看護師や介護福祉士を、当初の2年間で最大1000人受け入れることを決めた。
 EPAの締結はシンガポール、メキシコ、マレーシアに次いで4か国目だが、日比協定で初めて、「人の移動」が盛り込まれた。
 看護師らを日本に受け入れる、と言っても、フィリピンでの資格をそのまま認めるわけではない。「候補者」として3〜4年の在留を認め、その間に日本の看護師または介護福祉士の資格を取ってもらう。合格できなければ帰国する。
 日本人と同じ国家試験を受けて合格した人が、その後、日本で看護師や介護福祉士として働き続けることを拒む理由はなかろう。
 フィリピンは国策として、看護師を米国などに年間1万数千人も送り出しており、能力も高いと評価されている。
 ただし、これまでは言葉の問題が少ない英語圏の国が大半だった。看護や介護は意思疎通が何より重要だ。その点は、日本語で行われる試験をパスするのなら問題ないだろう。
 だが、現実にはかなり高いハードルだと思われる。
 候補者として入国した人は、半年間の日本語研修を受けた後、学生の研修に実績のある病院や介護施設で、助手として働きながら国家試験の合格をめざす。
 この期間、受け入れた病院や施設は、給与などで日本人と同等の待遇を保障しつつ、日本語の学習環境も十分に用意する必要がある。多数のフィリピン人が、日本でも看護師・介護福祉士として活躍できるかどうかは、受け入れ側の姿勢にも左右される。
 EPAにより、人やモノの自由な移動が促されることは、互いの国に活力をもたらす。少子高齢化が進む日本にとって労働力の確保も重要な課題である。
 日本では看護、介護とも、現場の人手不足が深刻だ。看護師は4万人以上も不足している。老人福祉団体の調査で、介護職員が充足している、という施設は4割にも満たない。
 こうした看護、介護の現状を改善する一助として期待は大きい。看護師らの受け入れが秩序立って行われれば、他の職種の受け入れのモデルケースになる。
 外国人の看護師や介護福祉士を、日本の医療・福祉をともに担ってくれる貴重な人材として遇し、育てていくことが大切である。





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2006年10月4日(西部朝刊福岡28面)「フィリピンの看護師2人、日本の訪問介護を学ぶ 朝倉を訪問=福岡」
 日本とフィリピンの経済連携協定に伴い、早ければ2007年度にもフィリピンからの看護師と介護福祉士の受け入れが可能になるのを前に、フィリピン人看護師2人が3日、朝倉市の介護サービス業者を訪れ、訪問介護の現状などを見学した。
 エミリー・ラウダット・ナプラさん(34)とドナベル・カルデナスさん(29)。ともに約4年の看護師経験がある。地方都市での医療や介護の現場を見る ため、2日から福岡に来ており、この日は朝倉市の「にこにこ介護サービス」で訪問介護について勉強。寝たままの状態で乗り降り出来るよう電動リフトが取り 付けられた送迎車の操作方法などを教わった。
 厚生労働省によると、両国の国会で協定が承認されれば、日本の看護師資格を取得したフィリピン人は、自らの希望する期間日本で働けるようになる。





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2006年12月9日(東京夕刊夕二面) 日比首脳マニラで会談 北の核「重大な懸念」 共同声明を発表  

 【マニラ=村尾新一】安倍首相は9日午前(日本時間同)、フィリピンのアロヨ大統領とマニラのマラカニアン宮殿で会談し、「東アジア共同体」構想実現に 向けた連携などを盛り込んだ共同声明を発表した。共同声明は、北朝鮮の核実験を「重大な懸念」として厳しく非難し、北朝鮮に対して、核兵器と核開発計画を 放棄し、拉致問題を含む人道上の懸念に対応するよう求めた。
 また、東アジアの地域統合の促進に向け、「目に見える利益を生む地域協力を強化する」と明記。日本側は、日比両国間の人的交流を拡大するため、日本で実 施されている日本語教師訪日研修のフィリピン人招請枠の拡大を表明。両首脳は、安全保障、海事・海洋分野などの対話促進でも一致した。
 首相は、新規の円借款供与を検討していることを伝えた。会談後、両首脳の立ち会いで、両国は、河川改修のための85億円の円借款と、両国間の配当、利子などの税率引き下げを柱とする日比租税条約改正に関する署名式を行った。





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2006年12月20日(西部朝刊二宮崎) インドネシアから漁業研修 若者60人、南郷町で歓迎式=宮崎

 南郷町が受け入れているインドネシア人漁業研修生の歓迎式が18日、同町目井津のめいつ漁民センターで行われた。
 町は1993年、漁業の活性化と国際交流を目的に、研修生の受け入れを開始。これまでにフィリピンとインドネシアからの計663人が研修を受けた。今回は18〜22歳のインドネシア人60人が来日した。
 式には、南郷、外浦、栄松の3漁協の関係者や船主らが出席。阪元勝久町長が「言葉や習慣の違いに苦労するでしょうが、一日も早く日本の生活に慣れて頑 張ってください」と激励。南郷漁協の岩切正次組合長が「日本は寒い日が続いており、健康に気をつけてください」と呼びかけた。
 研修生を代表し、ショキフル・アルフィアントさん(18)が「一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします」と日本語で決意を述べた。この後、全員でインドネシア国歌を斉唱した。
 研修生は来年2月中旬まで日本語のほか、カツオ、マグロ漁や定置網漁の技術を学び、同月下旬から乗船研修を行う。その後、来年10月に行う技能評価試験に合格すれば、技能実習生として船主と雇用契約を結び、最長2年間滞在できる。
 
 写真=決意を述べるアルフィアントさん


*作成:永田 貴聖
UP: 20080412 REV:20091212
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