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ケア/国境 関連新聞記事2005(読売新聞より)






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2005年1月23日(東京朝刊外B)「[地球万華鏡]日本に行けないと死んじゃうー…日本のビザ規制に比ダンサー悲鳴」


◆経済支える出稼ぎマネー
 日本政府がフィリピンからの「芸能人」受け入れを大幅に抑制する方針を打ち出した。芸能人用の興行ビザで来日しながら、実際にはホステスとして 働く女性が多く、米国から「人身売買」批判を受けたためだ。だが、フィリピン国内では「仕事を奪わないで」との声が高まっている。(マニラ 中谷和義、写 真も)
 「日本に行けないと死んじゃうー」
 マニラの下町にある「ヤマリ芸能人事務所」で、ダンサーのアルマさん(32)=仮名=は舌足らずな日本語で嘆いた。
 来日歴五回、計二年半を日本で過ごしたベテラン。八人家族を養うため、埼玉や神奈川のフィリピンパブで働いた。月給は額面で20万円以上だが、 日比双方の仲介業者が手数料を取るので手取り8万円。それでも、マニラのファストフード店で働いていたときの十倍だ。稼いだカネでマニラ近郊カビテ州に家 も建った。
 興行ビザでは、接客は資格外活動にあたり、ご法度。だが、実際には当たり前に行われている。米国務省が昨年六月発表した人身売買に関する年次報告で指摘したのも、この点だ。
 だが、アルマさんは「お客さんにサービスするのは当然でしょ。人身売買なんて言わないで」と反論する。今は、日本の「恋人」からの月3万円の送金だけが頼りだ。幸い、恋人は三人いるので、当面食うには困らない。
 同事務所のロサンナ・レイエス社長(45)も、一九八〇年代に名古屋で歌手をしていた。事務所には芸能人養成学校も併設。三か月でダンスや歌、 日本語を教える。貧しい家庭の子が多く、食費や交通費は立て替え。教え子が日本で稼ぎ始めたら、給料から手数料を含めて月1万円ずつ返してもらう。
 半年前には百人の生徒がいたが、昨年末、ビザ発給条件を厳しくする日本の新方針が伝えられると、七十人が退学した。残った生徒にはせめて、条件の一つである「二年の芸歴」をつけさせようと、「地元テレビに無料出演させてもらっている」という。
 日本に向かう「女性芸能人」は、かつて外地に売られていった日本女性を指す「唐行(からゆ)き」になぞらえ、「ジャパユキ」と呼ばれる。フィリピン人なら誰でも知っている日本語だ。
 比国内にも「『売春婦の輸出国』というイメージを一掃すべきだ」(コラムニストのエミル・フラド氏)との意見はあるが、少数派。日本政府の新方 針が伝わると、官民そろって反対の声をあげた。芸能人団体は日本大使館前でデモを繰り広げた。アロヨ大統領は今月、国際会議で訪れたジャカルタで小泉首相 に直談判。猶予期間を置くなど激変緩和措置を講ずるよう求めた。
 現在、三十万人のフィリピン人が日本で働く。大半が夜の店で働く女性だ。年間仕送り額は2億6000万ドルで国内総生産(GDP)の0・3%に相当する。
 日比両国が昨年合意した自由貿易協定(FTA)で今後、フィリピン人看護師・介護士が日本で働けるようになる。だが、いずれも百人程度の見込みで、経済的にはとうてい興行ビザ取得者の穴は埋められない。
 もっとも、日本でひどい目にあった女性も少なくない。出稼ぎ女性の保護に当たるマニラの民間団体「ドーン」には、過去八年で二百五十人の女性が 駆け込んだ。ほとんどが日本人男性の子を身ごもり、捨てられたケースだ。カルメリタ・ヌクイ代表は「職を失いたくないと黙っている女性も多い。実態はもっ と深刻なはず」と指摘している。    
 〈日本の興行ビザ〉
 芸能人として働く外国人に日本政府が発給する。六か月有効。二〇〇三年、十三万人に発給され、うち八万人がフィリピン人だった。発給条件は、 〈1〉二年以上の芸歴〈2〉教育機関で芸能の専門科目を二年以上専攻〈3〉各国政府などが認定した資格保有――のいずれかだったが、政府は昨年十二月、 〈3〉の削除を決めた。「芸能人証明書」を乱発する比政府を念頭に置いた措置とされる。比国内では、日本に行く芸能人数は十分の一程度に激減するとの見方 が支配的だ。



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2005年2月2日(東京朝刊政治)外国人労働者受け入れ拡大 不法滞在など対策必要(解説)


法務省が外国人労働者の受け入れ拡大を本格的に検討するようになった背景には、急速な少子高齢化の進行による労働人口の減少と、日本の経済活力の低下に対する危機感がある。
 日本の労働市場開放という動きも始まっている。フィリピンとの経済連携協定交渉では、専門的な技能を持つ看護師と介護福祉士の受け入れが決まった。
 ただ、外国人労働者の受け入れ拡大には課題も少なくない。就労目的の外国人の新規入国者数は二〇〇三年は十五万五千人に上り、この五年間で一・ 五倍に増えた。このうち、約十三万人が興行目的だが、滞在期間を守らなかったり、人身売買の被害者となったりするケースもある。不法滞在などに目を光らせ る必要がある。また、日本経済が完全に立ち直っていない状態では、「外国人労働者が増えると、また失業率が高まる」との懸念もくすぶっている。
 外国人労働者の受け入れ拡大には、中長期的な問題も見据えた慎重な検討が求められる。(加藤淳、本文記事2面)



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2005年3月7日(東京朝刊解説)「[The数字]8.5% 新卒看護職員の離職率」


2003年度に採用された新卒の看護職員(看護師、助産師、准看護師、保健師)のうち8.5%、ほぼ12人に1人が、就職して1年以内に辞めていることが、日本看護協会の調査でわかった。
 調査したのは、全国の約1200病院。看護師3年課程の大学・短大・養成所の新規卒業生について聞いた。
 病院側は、離職の理由を、「学校で学んだ知識と看護現場で求められる能力とのギャップが大きい」(76.2%)、「現代の若者の精神的な未熟さ や弱さ」(72.6%)(複数回答)などと分析。「職場不適応による」早期(就職して1年以内)の離職が、「増加する傾向にある」とした病院が、 36.8%にも上った。
 一方、新卒看護職員も悩みとして、「専門知識や技術が不足していて自信がない」「医療事故を起こさないか不安」「自分のペースで仕事ができない」「患者や家族とうまくコミュニケーションがとれない」などを挙げている。
 昨秋のフィリピンとの経済連携協定(EPA)の合意を受けて、2006年4月にもフィリピン人看護師の日本への受け入れが始まる。
 国際競争にさらされる中、今後は看護職の質が厳しく問われることになるだろう。(峰)



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2005年3月8日(東京夕刊夕経A)「[大手町博士のゼミナール]FTA 障壁なくし貿易活性化」


◆日本への効果最大は中国
 政府が昨年末、東アジア地域を中心に自由貿易協定(FTA)の交渉を進める基本方針を閣議で決定しました。世界各地でFTAを結ぶ動きが活発に なる中、日本も具体的な戦略を練り、交渉を急ぐ必要に迫られているためです。FTAの仕組みや利点、課題を勉強しましょう。(山本航)
 受講生の主婦M子さん「FTAって何ですか」
 大手町博士「ある国や地域の間だけで、輸出入品にかかる関税や外資規制などを取り払い、貿易を活性化する取り決めだ。アメリカ、カナダ、メキシコが結ぶ北米自由貿易協定(NAFTA)や欧州連合(EU)などがある」
■WTO(世界貿易機関)に通報されているFTAは、1990年には31だったが、2004年には150に急増した。日本は、シンガポールと協定 を2002年に発効させ、メキシコとの間でも、今年4月に発効する予定だ。昨年11月にはフィリピンと締結することで基本合意に達している。
 受講生の自営業K平さん「日本がFTAを結ぶメリットは何ですか」
 外務省経済連携課の村上顕樹(けんじゅ)さん「日本は世界有数の貿易立国です。関税などの障壁をなくせば、締結国同士の輸出入が拡大し、経済活性化につながります。消費者から見れば、商品の選択の幅が広がりそうです。締結国間の政治や外交関係の強化も期待できます」
 K平さん「なぜ政府は東アジアを重視するのですか」
 日本貿易振興機構国際経済研究課の梶田朗(あきら)さん「日本の貿易額のうち、東アジアは半分近くを占めます。日本の製造業は電子機器や自動車 の部品などを東アジアに輸出し、現地の工場で組み立てている例が多く、部品の輸出にかかる関税をなくすことは、企業の増収につながります。中国などは経済 成長が著しく、国民所得も伸びており、市場としても今後、重要になってきます」
■日本はタイ、マレーシア、韓国などと早期合意を目指して現在も交渉を続けている。ただ、マレーシアとの非公式協議では、マレーシアが自動車産業を保護する姿勢を見せるなど難しい面もある。
 受講生の会社員Y雄さん「日本がこれまでに締結したFTAの特徴は何ですか」
 三菱総合研究所主任研究員の永野護さん「メキシコとの協定では、日本が豚肉やオレンジなどに低関税枠を設け、FTAとしては初めて農産物の市場 開放に踏み込みました。フィリピンとの大枠合意では、フィリピン人の看護師と介護福祉士を対象に日本の国家資格取得を条件に長期就労を認め、労働市場の開 放につなげた点も注目されます」
 Y雄さん「影響を受ける産業もありそうですね」
 全国農業協同組合中央会農政部長の冨士重夫さん「コメや乳製品は、日本の農業にとって重要分野で、守らなくてはならないと考えています。NAFTAも乳製品などは除外しています。日本も締結にあたって基本ルールを作り、交渉するべきでしょう」
 日本看護協会専務理事の岡谷恵子さん「フィリピン人看護師を一度に多く受け入れると、日本にいる看護師の給与水準などの労働条件が厳しくなる懸念を持っています」
■内閣府経済社会総合研究所の川崎研一上席主任研究官(当時)の試算で、FTAが日本経済に与える影響を見ると、最も効果が大きい相手は中国で、メキシコやシンガポールは効果が限られるという。
 永野さん「世界的な経済競争に勝つためには、日本を含めた東アジア地域は連携をもっと深めるべきで、人やモノの移動を促すFTAは有効な手段に なるはずです。少子高齢化時代を迎える日本にとって、労働力の確保は重要な課題で、今後のFTAは、人の移動が生む効果を優先して考える必要もあります」
 大手町博士「FTAは日本の経済構造を大きく変える要素を含んでいるだけに、政府は相手国を選ぶ基準をはっきりさせて、交渉を進める必要がありそうだね」



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2005年4月12日(東京朝刊道社A)「旭川市、「医療」「空港」特区を申請へ=北海道 」


旭川市の菅原功一市長は11日、「医療」「空港」を柱にした地域活性化構想の実現を目指し、5月下旬の構造改革特区申請について調査・検討を行うことを関係各部に指示した。
 同構想には市のほか、旭川商工会議所、三井物産などが参加する。「医療」構想の内容は、昨年11月の自由貿易協定(FTA)締結合意でフィリピンから看護師と介護士の受け入れが決まったことを受けたもの。
 留学生が日本の資格を習得できる研修センター、高度医療センターとその付属病院、新設6年制薬学部などを、産業団地「旭川リサーチパーク」(旭 川市緑が丘)に集積し、医療・福祉の拠点とする。同団地は地区計画の制限で医療施設などの設置が出来ない。このため必要な要件緩和を特区申請する。
 今後、旭川市や商工会議所、三井物産などが出資し特定目的会社を設立、事業費を調達する。構想に不可欠な医療系大学については、旭川医大と協議を進めている。構想段階での総事業費は267億円だが、市は申請までに事業をさらに絞り込む方針。
 一方、旭川空港については、市が、三井物産などと別の特定目的会社を設立、国か地方公共団体に限られている空港管理者を民間企業にも緩和するよう特区申請する。総事業費約60億円は特定目的会社が調達する。
 菅原市長は、「ハードルは高いが、うまくいけば旭川は根底から変わる。取り組めるものがあれば取り組みたい」と話している。


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2005年7月2日(東京朝刊3面)「[社説]通商白書 遅すぎないか労働市場の開放 」


少子高齢化・人口減少が進む中で、日本が活力を維持するために、外国からの積極的な人材受け入れは、重要な課題だ。
 経済産業省が、2005年版の通商白書で、政府の白書として、労働市場の開放促進に、初めて具体的に踏み込んだ。
 労働市場の開放促進を求める声は、これまでも、経済界などから強かった。
 企業経営者や学識経験者で構成する経済連携推進国民会議は昨年、外国人労働者の受け入れ促進へ、在留資格の職種の大幅拡大や資格要件の緩和などの実施を政府に要望した。日本商工会議所も一昨年に、同様の要望書を出している。
 白書は、遅ればせながら、それに応える姿勢を示したものと言えるだろう。
 少子高齢化が急速に進む日本は人口が2006年をピークに減少に向かう。
 労働力人口はそれを上回るペースで減っていく。減少を抑え、経済活動が委縮するのを避ける観点からも、政府は、女性や高齢者の就業を促進する政策を進めている。
 だが、政策が効果を上げたとしても2015年以降、労働力人口の減少を避けることは難しい、と白書は指摘する。
 日本経済が成長を続けるため、女性や高齢者の就労促進と並行して、高い技術や能力を持った人材を中心に、東アジアを含む外国からの受け入れを促進すべきだ、と白書は提言した。
 具体策として、まず、そうした人の入国・就労手続きの簡素化や、能力に見合った処遇の充実を図る。在留資格を認めていない職種への資格拡大も検 討することも例示している。研修終了者が能力を発揮できる職場の提供、外国人労働者と家族への健康保険など生活支援、教育支援の体制整備も、課題に挙げて いる。
 政府は1999年に、弁護士、医師、情報処理技術者など専門的・技術的分野の14業種にかぎって、在留資格などで優遇することを閣議決定した。
 だが、外国人に雇用を奪われることを懸念する関係団体や族議員、厚生労働省など所管省庁の消極的な姿勢に、いまだに大きな変化はみられない。
 政府の対応の遅れは、東アジア諸国と進めている自由貿易協定(FTA)の交渉にも影響を与えている。フィリピンとは、昨年11月に基本合意したが、看護師や介護士の受け入れ人数で調整が難航し協定署名のめどが立っていない。 
 東アジア地域のヒト、モノ、サービスのバランスの取れた自由な流れを確保し日本と地域の経済発展を確かなものにしていく。そのためにも、労働市場の開放を急がねばならない。



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2005年7月2日(東京朝刊B経)「2005年版通商白書発表 対中ビジネス、魅力とリスク 消費さらに拡大傾向 」


◆固定資産に投資偏る 
 政府は1日、日本の貿易や投資などの現状と将来展望をまとめた2005年版通商白書を発表した。急成長する中国経済の現状について多くのページ を割き、対中ビジネスの「チャンス(好機)」と「リスク(危険)」を初めて詳しく分析している。中国のほか、ブラジル、インド、ロシア、南アフリカの 「BRICS(ブリックス)」の成長や、自由貿易協定(FTA)などを軸にした東アジア経済との連携の重要性にも踏み込んだ。(実森出)
■対中投資 
 白書では、中国の03年の実質国内総生産(GDP)が1978年の9・4倍に達し、1人あたりGDPは深セン(しんせん)などでは10年前の日 本と同じ水準になったこと、都市部では携帯電話の普及度が9割を超え、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などはほぼ全家庭に普及したことを紹介。経営者やエンジニ ア、弁護士などのホワイトカラー層が「新中間層」として消費の主役に躍り出ており、さらに消費は拡大すると「チャンス」面を強調した。
 こうした商機をつかもうと、日本などの企業は対中投資を拡大している。しかし、中国が開発区を設け、外資を導入して自動車、建材、鉄鋼など製 造業の育成を急いだことから、投資は工場や不動産などの固定資産に偏り、固定資産投資は名目GDP比で約50%と、日本の高度成長期(35%)をも上回っ た。
 白書はこの投資の偏りが、労働力や電力の不足、素材や不動産価格の上昇などの「リスク」を生んだ、と分析した。ほかにも地方政府の成長至上主義、非効率な金融システムなどを「中国の構造的な課題」とし、中国政府が投資抑制策をとっても効果は疑問だと結論づけている。
 今年4月に起きた大規模な反日デモについても「中国政府は改善の努力を行っているが、リスクが顕在化する可能性がある」と警告している。成長する中国経済と連携を強め、中国経済を日本経済復活のテコにするよう説いた過去の白書と比較すると、慎重な内容といえる。
◆「将来の連携相手」
■BRICS 
 ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ共和国、中国の「BRICS」諸国の成長の可能性も初めて取り上げた。5か国のGDPの合計は世界の9% だが、人口は43%と大きな割合を占める。天然資源が豊富で、「存在感を高めていくと考えられる」と評価。将来の経済連携相手としてBRICSを紹介した ことには、中国一辺倒の投資姿勢を修正する意図もにじむ。
◆東アジア経済統合を強調
■経済連携 
 今後の通商政策の最優先課題としては、中国を含む東アジアとの自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の重要性を明記。「単に2国間だ けでなく、東アジア全体の経済統合という視点が重要」と、日本が主導する形で東アジア経済圏を形成する重要性を訴えた。フィリピンとのEPAの中に盛り込 まれた看護師、介護士の受け入れなど、外国人労働者の問題でも、「新しい受け入れ政策」を提案。世界規模で獲得競争が繰り広げられる技術者や研究者は、受 け入れやすくする法的制度に加え、生活面のバックアップの重要性を指摘した。



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2005年8月2日(東京朝刊A経)「日・タイFTA大筋合意 自動車は“玉虫色”決着 3リットル以下、再協議 」


◆ASEANと連携弾み
【バンコク=菊池隆】日本は自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定(EPA)交渉で1日、タイと大筋合意し、東南アジア諸国連合 (ASEAN)全体との連携強化に大きく踏み出した。日本にとって5か国目のFTA相手国となるタイは、貿易や投資の結びつきが深く、東南アジアでの 「FTA戦略の本命」とみられている。ただ、農水産分野の合意を急いだ結果、自動車や鉄鋼などの鉱工業品分野の交渉で難航し、タイの国内生産と競合する3 リットル以下の車については「再協議」となるなど一部“玉虫色”の決着を余儀なくされたことは、他のアジア諸国とのFTA交渉にも影響しそうだ。
 大筋合意を受けて、タイのタクシン首相が8月中に来日し、首脳間でFTA締結を基本合意する方向だ。
 大筋合意では、タイ側が自動車部品の関税を原則2011年までに撤廃し、鉄鋼は全品目の関税を10年以内に撤廃するという内容で、日本の自動 車、電機メーカーなどの製造業にとっては、タイでの現地生産コストの軽減に役立つ。また、ASEAN域内で完成品や部品の最適生産地を選べ、効率的な分業 体制がつくりやすくなる。
 タイは、日本にとって輸出で6位、輸入で11位の貿易相手国であり、輸出入を合わせた貿易額はASEAN加盟国で最大だ。
 FTA締結により、日本の国内総生産(GDP)は1兆円以上押し上げられるという政府の試算もある。
 今回、難航した自動車部品や鉄鋼の合意内容は、マレーシアやフィリピンとの基本合意と比べても見劣りしない。日本の次の課題は、ASEANを一 つの生産基地・市場として円滑に活用できるよう、ASEAN全体とのFTA交渉を成功させ、貿易・投資の整合性のあるルールを作ることになる。
 しかし、タイとの大筋合意では、自動車分野の成果が薄い。交渉最終段階の焦点は、排気量3リットル超の大型乗用車の扱いだったが、その陰に隠 れるようにして、タイ国内で生産される乗用車のほとんどを占める3リットル以下の車は手つかずのまま「再協議」となった。大型乗用車についても、 「2010年代半ばに関税撤廃もあり得るという前提で、09年に再協議する」という合意内容だ。
 合意を急ぎ玉虫色の決着を招いた交渉姿勢は、既に基本合意しているマレーシアとのFTA正式調印に向けた調整や、交渉開始が合意されたインドネシアとの協議にも影響する可能性がある。
 フィリピンとのFTAでは、首脳間の基本合意で看護師や介護士の受け入れを決めたものの、その後の詰めの交渉で受け入れ人数を巡る見解が分かれ、正式調印が当初想定していた9月より大幅にずれ込む見通しとなるなど、ほころびも出始めている。  
◇日本とタイで大筋合意した主な事項(●は日本、▼はタイが実施)
【自動車】
▼排気量3リットル超の大型乗用車は2009年までに関税率を60%(現在は80%)に引き下げ。2010年代半ばまでの関税撤廃に向け、09年に再協議
▼3リットル以下の車は5年以内に再協議。ただし、日本以外の国とのFTAなどで日本が不利にならないようにする
【自動車部品】
▼原則2011年までに関税を段階的撤廃。一部の品目は2013年までに関税撤廃
【鉄鋼】
▼原則として全品目の関税を10年以内に撤廃する
【投資・サービス】
▼製造業関連サービス(メンテナンス、卸・小売りなど)で出資要件を緩和し、日本企業の過半数の出資を可能にする
【農水産品】
●冷凍果実、加工エビの関税は発効後に即時撤廃
●加工鶏肉の関税率は発効後、5年で3%(現在は6%)に引き下げ。マグロ缶詰の関税は5年で撤廃
●バナナの輸入に無税枠を設ける
【人の移動】
●タイの料理人の在留要件の緩和、介護士の受け入れ拡大



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2005年8月4日(東京朝刊3面)「[社説]タイFTA 「質の高い協定」へ詰めを誤るな 」


日本とタイが、自由貿易協定(FTA)を柱とした経済連携協定(EPA)を締結することで基本合意した。だが、その内容には、今後に課題を残すものが少なくない。
 日本が最重要としていた自動車・自動車部品の輸入自由化で、タイは大型車では現在80%の高関税を2009年までに60%に引き下げることを受け入れた。
 しかし、中小型車は当面据え置きとなり、5年以内に再協議することにとどまった。部品の関税撤廃期限も、「原則として11年」まで先延ばしされた。
 即時引き下げか撤廃で自動車貿易を活発化する、当初の日本側の狙いからは大幅な後退だ。自動車部品の関税撤廃の道筋や、例外扱いにする部品の内容などでも、不明確な点を残している。
 日本がタイ側の譲歩を引き出すために追加提示した介護士や料理人の受け入れについても、年間の受け入れ人数などの詰めは、これからだ。
 FTAで欧米やアジア諸国に後れを取っていた日本は一昨年来、交渉のピッチを上げ、タイを含め5か国と合意している。だが、実際に協定を締結したのはシンガポールとメキシコだけだ。
 フィリピンとは、昨年11月に首脳レベルで大筋合意した。だが、看護師、介護士の日本側の受け入れ人数など具体的な調整が難航し、いまだに協定締結のめどが立たない。協定締結へのタイとの交渉が、二の舞いになってはならない。
 日本は、韓国、インドネシア、東南アジア諸国連合(ASEAN)との間でも締結交渉を進めている。
 これらの国との交渉を早期に決着させるための弾みとする上でも、タイとの交渉の詰めを急ぎ、協定を締結することが極めて重要だ。
 中国は東アジアの国々に対し、活発に協定締結を働きかけている。このままでは、中国にFTA網構築の主導権を握られかねない。
 日本は、協定について、質の高い内容を目指す戦略を掲げている。中国のようにモノの取引に限定せず、ヒトやサービスの自由化、経済・技術協力の強化などを包含する幅広い経済連携の協定にするというものだ。
 だが、いくら志が高くても、実際の協定締結、発効にこぎ着けられないのでは、意味がない。タイは無論、フィリピン、マレーシアなど基本合意した国々と交渉の最終決着を急がねばならない。
 鉱工業品や農林水産物など主要分野の詰めの段階では、相手国の譲歩を引き出すためにも、労働市場の開放など他の分野での前向きの対応が重要になる。



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2005年8月19日(東京夕刊札夕社)「旭川市の特区“3本柱”に黄信号 留学生研修センター構想、国が懸念=北海道」


◆「不法就労」懸念
 北海道旭川市が構造改革特区を活用し、アジアなどからの留学生を受け入れる全国初の医療・福祉関連の国際研修センター設置構想が、厚生労働省や 法務省の反対で、頓挫していることが19日明らかになった。監督官庁が、留学生による研修名目の不法就労を懸念、規制緩和に難色を示しているためだ。
 同センターは、アジアからの研修生が国内資格を取得したり、高度医療・IT関連留学生が技術の習得や研究をしたりするための施設。昨年11月 の自由貿易協定(FTA)締結でフィリピンから看護師と介護士の受け入れで合意したことなどを受けて、市が今年6月に提案申請した「国際交流拠点」特区構 想の3本柱の一つとしていた。市は実現のため、「海外研修生受け入れ人数制限の撤廃」「研修ビザによる在留期間の延長や新たな在留資格による就労の認定」 などの規制緩和を国に求めていた。
 しかし、全国で研修制度を“隠れみの”にして単純労働者として受け入れる事例が続発していることから、回答は否定的。先月下旬から今月初めに 行われた折衝でも、「緩和措置をとることは一切できない」(法務省)、「実現は困難」(厚生労働省)と姿勢に軟化は見られなかった。
 最終的な結論は9月以降に開かれる内閣府・構造改革特区推進本部の最終会合で決まるが、市関係者は「こうまで否定的な回答を覆すのは無理」と絶望視している。
 一方、「国際交流拠点」特区構想の3本柱のうち、高度医療センターについても、「株式会社による設置・運営と、保険診療の提供」を求めたが、厚 生労働省は、すでに特区制度で株式会社参入を認めている「(保険適用外の)自由診療で高度な医療」のみを認めると回答。旭川空港の国際化についても、市が 株式会社への空港管理業務の全面委託を求めているのに対し、国土交通省は「管理能力の担保」が必要とし、協議が続いている。



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2005年9月4日(東京朝刊1面)「[地球を読む]東アジア共同体 ASEAN軸に展開 白石隆(寄稿)」


◇政策研究大学院大学副学長
 この12月、マレーシアにて、ASEAN(東南アジア諸国連合)+3(日本、中国、韓国)にインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた 16か国で東アジア・サミットが開催される。おそらくそのためだろう、最近、東アジア共同体についていろいろ議論が行われている。
 自民党、民主党はいずれも、マニフェスト(政権公約)において、東アジア共同体の構築をうたっている。しかし、米国で中国を中心とした地域秩 序形成への懸念の声が高まり、これを受けて、日本でも、日米同盟と東アジア共同体構築の整合性をどうとるか、さらには中国における反日の機運を見て、相互 信頼のない国、政治経済体制の違う国とどうやって共同体をつくろうというのか、といった疑問も呈されている。
 こうした懸念は真っ当なものである。しかし、誤解のないよう確認しておけば、東アジア共同体において想定される「共同体」は欧州連合(EU) とは違う。欧州連合は、もう二度と戦争をしないという共通の政治的意思のもと、参加国がその主権の一部を欧州連合に委譲するかたちで実現された。
 これに対し、東アジア共同体は、この地域における事実上の経済統合の進展と1997〜98年の経済危機の教訓を踏まえ、地域共通の主として経済的な課題について、主権尊重と友好協力を原則として協力する、そういう地域協力の枠組みとして構想されている。
 さてそれでは、いま、東アジア共同体の構築ということで、どのような地域協力の仕組みが作られているのか。
 東アジア共同体構想は、1997年、アジア経済危機に直面して、地域共通の問題に地域として共同で取り組もうということではじまった。第1回 ASEAN+3首脳会議は97年に開催され、ついで99年の首脳会議で「東アジアにおける協力に関する共同声明」が合意された。今回の東アジア・サミット はその延長上にある。
 したがって、あたりまえのことながら、東アジア地域協力は、この7年あまり、ASEAN+3を枠として進展した。通貨・金融の分野では、 2000年のASEAN+3の首脳会議で、危機がおこったとき、これに対処するため、域内の資金供与の仕組みを作ることが合意され(チェンマイ・イニシア チブ)、これを受けて2国間のスワップ(通貨交換)協定の束として危機対処のメカニズムが作られた。さらに最近では、やはりASEAN+3を枠として、ア ジア債券市場の創設が試みられている。
◆米の関与 安全保障に必要
 貿易・投資の分野では、東アジア共同体の構築といいながら、実際には、ASEAN+1の束として経済連携が進んでいる。たとえば、日本は、 2002年、小泉首相が日本・ASEAN経済連携を提案した。その趣旨は、モノ、サービスの貿易、投資の自由化に加え、貿易・投資の促進・円滑化措置、知 的財産保護、人材育成、中小企業育成など、通常、自由貿易協定(FTA)では対象としない分野の協力もふくむということである。
 これを受けて、日本はすでにフィリピン、マレーシア、タイとは経済連携協定(EPA)について大筋で合意し、韓国とは現在、交渉中である。またインドネシア、ASEAN全体との交渉も今年、はじまった。
 一方、ASEAN・中国自由貿易協定は、2000年、中国がこの提案を行い、2004年にはモノの貿易に関する自由化が合意された。ASEANはまたインド、オーストラリア、ニュージーランド、韓国とも2006〜07年にFTA締結の見込みである。
 このように通商協力はASEANを中心として進展している。ASEANは1992年のASEAN自由貿易協定(AFTA)締結以来、域内関税障 壁・非関税障壁の除去による域内貿易推進にかなり実績をあげている。したがって、通商協力がASEANを中心として進むということは、実のところ、 AFTAの外延的拡大として東アジア、さらにはそれを超えた通商協力が進むということである。
 こうした経済連携は、通貨・金融においても、投資・貿易においても、これからますます進展する。東アジアの域内貿易が1980年から2003 年にかけて、輸入で34%から51%、輸出で35%から60%に拡大したことに見る通り、東アジアの事実上の経済統合は急速に進展している。その基本には 国境を超えた生産・流通ネットワークの拡大と深化があり、そうしたネットワークのハブ(拠点)として産業クラスター(集積)を育成することが経済発展の鍵 であることからすれば、域内諸国にとって経済連携の推進は大きな利益だからである。
 そこでの協力の仕組みは、通貨・金融協力のようにASEAN+3を枠とするものもあれば、投資・通商協力のようにASEAN+1の束として進 んでいるものもある。しかし、ASEANがハブであることは明らかであり、これはそれ以外の協力、たとえば、APEC(アジア太平洋経済協力会議)におけ る通商協力、ARF(ASEAN地域フォーラム)における信頼醸成、今回の東アジア・サミットなどがすべて、ASEAN+3+αのかたちで進んでいること にも見る通りである。
 つまり、東アジアの地域協力は、日本でもなければ中国でもない、ASEANを中心として進んでいる。
 これは日本にとって別に都合の悪いことではない。日本が中心でも中国が中心でも東アジア地域協力は進まない。一方、日本にとっても、 ASEAN、韓国にとっても、中国が東シナ海の海底資源開発のような一方的行動をとるのではなく、世界的、地域的なルールに従って協調行動をとることは大 きなプラスだからである。
 また東アジア共同体構築と日米同盟の整合性については、プラグマティックに対応すればよい。東アジアには米国の直接関与なしにこの地域の国々 が共通に対処すべき問題がある。たとえば東アジアにおける通貨危機再発をどう回避するかはこの地域の問題であり、そのためにチェンマイ・イニシアチブが作 られ、米国もこれを支持している。またASEAN+1の束として形成されつつある経済連携ネットワークには米国は望めばいつでも入ることができる。
 しかし、東アジアの安定と繁栄の両方にかかわる課題、たとえば安全保障、エネルギー協力などについては、米国の関与を求める必要がある。
 東アジアにおける共同体構築はヨーロッパとは違う。東アジアの地域協力においては、ASEANを中心として、分野別に、ネットワーク型に制度的仕組みが作られつつあり、肝心なことはそうしたさまざまの仕組みをどう組み合わせるかである。
 その意味で、今回の東アジア・サミットにおいては、通商協力ばかりでなく、米国が関与しなくとも米国の利益ともなる地域協力がありうることを示すためにも、テロ、海賊、武器密輸、麻薬、人身売買など「非伝統的」安全保障分野における地域協力の進展を期待したい。
     ◇
◇白石隆氏=1950年生まれ。米コーネル大学教授、京大東南アジア研究センター教授などを務め、今年4月から現職。専門はアジア政治、国際関係。



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2005年11月2日(東京夕刊)「[ズームアップWEEKLY]フィリピン人介護士急増中 笑顔に国境なし 」


「心が満たされる仕事ができます。今の仕事が一番いい」。今年の5月から東京・墨田区の特別養護老人ホーム「たちばなホーム」で介護職員として働く、日本 人と結婚した在日フィリピン人の常盤ニコリンダさん(46)はほほ笑んだ。忙しく動き回り、お年寄りの耳元に口を近づけ、ニコニコ顔で声をかける。話しか けられた方にも自然に笑みが浮かぶ。
 ニコリンダさんは、フィリピン・セブ島の出身で7人きょうだいの長女。12歳の時父親を亡くし、家計を支えるため様々な仕事をした。20年ほど前、興行ビザで来日し、故郷の家族のため仕送りもしてきた。7月からはホームの契約職員になり、「天職だ」と燃えている。
 昨年9月、在日フィリピン人を対象とした介護講座「ヘルス・ケア・サポート・ハクビ渋谷校」が開校した。現在、ホームヘルパー2級の取得を目指して男女12人(うち男1人)が受講。これまでに104人が資格を取得している。
 同校1期生の西村アーリンさん(30)は、今年1月から東京・八王子市の永生病院(安藤高朗理事長)に介護職員として正式採用された。一緒に働 く職員も彼女の働きに刺激され、意識が高まっているという。同病院の宮沢美代子看護部長は、「地味な仕事を熱心にする」と感心しきりだ。
 日本の少子高齢化は進む一方。介護士や看護師の不足が心配されることから、昨年11月に日比間で自由貿易協定(FTA)の話し合いがまとま り、人材受け入れの方向が決まった。外国人が日本で介護士や看護師になるには資格や言葉の壁もある。だが、現場のフィリピン女性は、介護や医療の前線で、 貴重な戦力になっているようだ。(カメラとペン 大久保忠司)



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2005年11月29日(東京朝刊A経)「[エコノ手帳]日比FTA両首脳合意」


小泉首相は2004年11月29日、アロヨ・フィリピン大統領と会談し、自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定を締結することで基本合意 した。日本は、フィリピン人の看護師や介護福祉士の受け入れを認め、労働市場の一部開放に初めて踏み込んだ包括的なFTA合意となった。

*作成:吉澤 あすな
UP: 20091203 REV:20091212
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