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死刑執行方法


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last update: 20160526


(以下、作成中のファイルです。より詳しくは、拙稿「日本における「死刑執行人」の歴史社会学」に書いておりますが、いずれ整理し、こちらのファイルにも掲載いたします)

死刑執行方法関連文献(年代順)

2008年4月27日現在の日本の死刑執行方法

死刑執行方法年表

死刑執行方法をめぐる裁判

■各国死刑執行方法 【


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■死刑執行方法関連文献(年代順)
◇木村 亀二 19491005 『死刑論』,弘文堂(アテナ文庫),63p. \32 c0134b
◇向江 璋悦 19601010 『死刑廃止論の研究』,法学書院, 544p. ASIN: B000JANUYO 1000 [amazon]
◇正木 亮 19680720 『現代の恥辱――わたくしの死刑廃止論』,矯正協会,385p. ASIN:B000J9K2EG \650 [amazon][kinokuniya] c0134
◇重松 一義 19850420 『図鑑 日本の監獄史』,雄山閣,514+8p. ISBN-10:4639004737 ISBN-13:978-4639004738 20000 [amazon]
◇Trombley, Stephen,1992,The Execlution Protocol, Century=1997, 藤田 真利子 訳『死刑産業──アメリカ死刑執行マニュアル』,作品社,411p ISBN-10:487893266X ISBN-13:978-4878932663 2730 [amazon]
◇Monestier, Martin, 1994, Peines de Mort,Le Cherche Midi Editeur, Paris=吉田 春美・大塚宏子 訳,『図説死刑全書』,原書房,405p. ISBN-10:456202769X ISBN-13:978-4562027699 3600+税 [amazon]
◇Moran, Richard, 2002, Executioner's Current,Alfred A. Knopf=岩舘 葉子 訳,『処刑電流――エジソン、電流戦争と電気椅子の発明』,みすず書房,389p. ISBN-10:4622071045 ISBN-13:978-4622071044 2800+税 [amazon]
◇ホミサイド・ラボ 20070115 『人殺し大百科』, DATA HOUSE,493p. ISBN-10: 4887188854 ISBN-13:978-4887188853 3800+税 [amazon]
◇重松 一義 20070710 『日本刑罰史年表 増補改訂版』, 柏書房,410p. ISBN-10: 4760131655 ISBN-13:978-4760131655 6800 [amazon]
◇浜本 隆志 20071220 『拷問と処刑の西洋史』,新潮社, 236p. ISBN-10:4106035952 ISBN-13:978-4106035951 1900+税 [amazon]


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■2008年4月27日現在の日本の死刑執行方法
・絞首刑

◆関連言及・引用

◇木村 亀二 19491005 『死刑論』,弘文堂(アテナ文庫),63p.

「死刑の執行方法の單一化といふことは、今日の人々には、別にめづらしいことではなく、當然のことのやうに感ぜられるかも知れないが、死刑の歴史においては畫期的な事實であつた。といふのは、刑法の歴史においては、死刑の執行方法は人間の残虐性が工夫・發明し得るところの、あらゆる形式を採つて來たのであつて、その方法は斬首・車裂き・絞首・石による撃殺・火刑・生き埋め・四つ裂き・墜落殺等、十指をもつてしても數へ切れない。しかも、それが犯罪の種類に從つて執行方法を異にして同一刑法の中に規定せられてゐたのである。(中略)>15>
 わが國でも同樣に、徳川時代には、その御定書百箇條では死刑の執行方法が區別せられ、一般庶民に對するものとしては鋸挽き・磔・獄門・火罪・死罪・下手人の種類が定められ、士分に對しては斬首の一種・切腹が用ひられてゐた。
 このやうに、死刑の執行方法が多樣に差別づけられてゐた上に、さらに既に右によつても知られるやうに、その執行方法には身分的區別が附せられ、フランスでは庶民に對しては絞首刑が、貴族に對しては斬首刑が、又、わが國では士族に對しては特に斬首の一種・切腹が用ひられた。わが國での、右の死刑執行方法の身分的差別は明治維新以後まで維持せられ、明治三年の新律綱領では士族に對して死刑を言渡すときは自裁に處し、自ら屠腹させることとなつてゐた」(pp.15-16)
→(補足:櫻井悟史)墜の字はエディタでは表示されなかったので現代語表記とした)

◇正木 亮 19680720 『現代の恥辱――わたくしの死刑廃止論』,矯正協会,385p.

「日本国憲法は、死刑問題に非常に大きな波紋を投げた。殊に第三六条は「残虐な刑罰は絶対にこれを禁ずる」というのである。太政官布告第六五号の規定、すなわち、「絞罪器械制式」にあげられているような絞首方法、すなわち、地上絞架式なら今日何人もこれを残虐であるというであろう。その残虐をさけるためにゆるやかにしたのが、今日の制度すなわち地下絞架式である。>296>しかし、その改良は旧憲法下においてゆるされた行刑当局の恣意であって、新憲法下に通ずるものではない。すなわち、憲法第三六条の残虐な刑罰は厳禁するという規定が効力を発生した日に、太政官は死んでしまったのである。その日から地下絞架方法は法根拠を失ったまよい子である。
 太政官を生かしたことは、そうしなければ、絞首刑の合憲性を結論づけることがむつかしいための窮余の弁であったとみることができる」(pp.295-296)

◇櫻井 悟史 20080331 「死刑存廃論における「死刑執行人」の位置についての一考察――日本の公文書に見る死刑執行現場の生成と消滅」『Core Ethics』4,立命館大学大学院先端総合学術研究科

「受刑者の身体に接触しない明治の絞架台式の絞首は、絞殺strangulationではなく、首吊りhangingの強制というほうが正確かもしれない。この点を指摘して、1958(昭和33)年7月に、弁護士の向江璋悦が、

「日本におけるじっさいの死刑執行法は『縊首』であって『絞首』ではない。つまり、刑法の定める執行方法とはちがう。したがって現在の死刑は憲法第三十一条『何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない』に反するものである」(村野2006:74)

と、裁判で主張したことがあった。これに対して司法は、どちらも「絞頸による窒息死」であるからたいした問題ではないという理由で、訴えを棄却した(村野2006:79-80)。 だが、絞首と縊首には、大きな違いがある。絞首とは、絞殺strangulationである。絞殺strangulationは、紐やコードを使った絞殺ligature strangulationと、手や腕を使った扼殺manual strangulationとに分かれる(ホミサイ>95>ド・ラボ2007:122)。死刑はロープを使うので前者である。ただし、上述したように、絞架台式を用いた死刑装置は、ロープで首を絞めて殺すのではなく、受刑者自身の体重で首が絞まるように出来ている。そこには首を絞める行為者は存在せず、首が絞まるように手助けした行為者が存在するのみである。これは、たしかに首吊りhanging=縊首に近い。だが、絞殺strangulationとは、自殺の意志のないものを、首を絞めることによって殺すことを指し(ホミサイド・ラボ2007:125)、首吊りhangingとは、明確な自殺意志のもと、自ら首を絞める行為を指している(ホミサイド・ラボ2007:172)。絞架台を用いた死刑は、物理的な行為者こそ存在していないが、殺人の意志──殺したいではなく、殺さなければならないではあっても──は明確に在るので、やはり絞殺strangulationといえるだろう。つまり、司法側の棄却理由は間違っているが、向江の訴えもまた正確とはいえないのである。
 首吊りhangingか、絞殺strangulationかを詳しく見ることに大した意義があるように思えないかもしれないが、自殺であるか他殺であるかは死刑において重要なポイントとなる。たとえば、1975(昭和50)年福岡拘置所で、前日に死刑を告知された受刑者がカミソリ自殺をするという事件が発生し、拘置所の責任問題となったことがあった(別冊宝島2007:10)。受刑者が自分で死んでしまうというのは、刑の執行ができなくなるということを意味する。元刑務官の坂本敏夫が、「当たり前のことだが、死刑は死んではじめて刑の執行が完了する。どんな状況にあっても絞首して殺さなければ死刑にならないのだ」(坂本2006b:68)といっているように、受刑者の生命を積極的に奪うことが、死刑なのである。上で紹介したように、首吊りhangingであっても絞殺strangulationであっても、「絞頸による窒息死」であるからたいした問題ではない、というのであれば、首吊りhangingであってもいい、ということになる。ところが、受刑者が首吊り自殺を謀っても、「手間が省けた」とは決してならないのだ。それは、「死んだ」のであって、「殺して」はいないからである。そのため、この事件以来、死刑を完全に遂行するため、死刑執行の言い渡しは、当日の朝9時ごろというのが暗黙のルールとなった」(pp.95-96)


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■死刑執行方法年表
(日本)
・仮刑律(明治元年五月)――刎、斬、磔、焚、梟
(参考)
◇布施 弥平治 19830820 『修訂 日本死刑史』, 巌南堂書店,730p. ASIN: B000J7C01G 22000 [amazon]
「仮刑律に於ける死刑の目は刎、斬の二等とするか絞首、刎首、梟首の三等とするかは遂に決定を見ないうちに仮刑律は用いられなくなった。刎と斬の二等とするときの刎は「身首処ヲ異ニス」つまり斬首することであり、斬は袈裟斬することであるので、この場合は、刎が重く斬は軽い死刑である。次に絞首、刎首、梟首の三等とするときは梟首は最も重く、次は身首処を異にする刎首、そして絞首は最も軽い死刑となるのである」(p565)
・新律綱領(明治三年一一月)――梟、斬、絞(絞柱器
・太政官布告第六五号(明治六年二月二〇日)――屋上絞架式の採用→参考
・元老院上奏(明治九年七月九日)――梟、斬の廃止訴えるも認められず
・梟首ノ刑ヲ廃スルノ意見書(明治一一年六月一四日)
・1879(明治12)年1月4日:梟首刑廃止(太政官布告第1号)
・1880(明治13)年7月17日:旧刑法公布(太政官布告第三六号)、1882(明治15)年1月1日施行――斬刑廃止、絞首刑のみ


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■死刑執行方法をめぐる裁判
(日本)
◇執行停止申請事件
◇死刑受執行義務不存在確認請求事件
(参考)
◇向江 璋悦 19601010 「絞首刑違憲論」『死刑廃止論の研究』,法学書院, pp347-382. ASIN: B000JANUYO 1000 [amazon]

*作成・担当者:櫻井 悟史 追加者:
UP:20080911 REV:20080912, 20090406, 20160526
犯罪/刑罰  ◇「死刑執行人」
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